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Patent Searching and Data


Title:
RICE VINEGAR HAVING IMPROVED STRENGTH AND PERSISTENCE OF SOURNESS AND METHOD OF PRODUCING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/066514
Kind Code:
A1
Abstract:
It is intended to provide a method of improving the strength of the characteristic and refreshing sourness derived from acetic acid and preventing the lowering of the sourness with the passage of time in rice vinegar, seasonings containing the same and foods and drinks produced by using the same. Namely, a rice vinegar characterized by containing ethyl 3-methylthiopropionate at a concentration ranging from 0.006 to 0.2 ppb is provided.

Inventors:
IHARA JUNICHIRO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/067828
Publication Date:
May 28, 2009
Filing Date:
October 01, 2008
Export Citation:
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Assignee:
MIZKAN GROUP CORP (JP)
MIZKAN NAKANOS CO LTD (JP)
IHARA JUNICHIRO (JP)
International Classes:
C12J1/00; C12J1/04
Foreign References:
JP2005130705A2005-05-26
JPH1057007A1998-03-03
JP2002153254A2002-05-28
JP2006094838A2006-04-13
JPS6293236A1987-04-28
Attorney, Agent or Firm:
HIRAKI, Yusuke et al. (3-20 Toranomon 4-chom, Minato-ku Tokyo 01, JP)
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Claims:
3-メチルチオプロピオン酸エチルを0.006~0.2ppbの濃度範囲で含有することを特徴とする米酢。
3-メチルチオプロピオン酸エチルが天然の3-メチルチオプロピオン酸エチル含有物またはその加工物から得られたものである、請求項1に記載の米酢。
3-メチルチオプロピオン酸エチル含有物またはその加工物が熟成酒粕またはその加工物である、請求項2に記載の米酢。
3-メチルチオプロピオン酸エチルまたは3-メチルチオプロピオン酸エチル含有物もしくはその加工物を、米酢中の3-メチルチオプロピオン酸エチルが0.006~0.2ppbの濃度範囲となるように少なくとも一つの工程で添加することを特徴とする、米酢の製造方法。
以下の工程:
(a) 原料米を蒸煮し、麹菌を接種して糖化する工程
(b) 糖化液に酵母を加えてアルコール発酵する工程
(c) アルコール含有液に酢酸菌を加えて酢酸発酵する工程
(d) 酢酸発酵液を熟成する工程
を含む米酢の製造方法において、3-メチルチオプロピオン酸エチルまたは3-メチルチオプロピオン酸エチル含有物もしくはその加工物を、酢酸発酵工程後もしくは熟成工程後の米酢か、あるいは、糖化工程後の醪もしくは酢酸発酵工程前のアルコール含有液に添加することを特徴とする、上記米酢の製造方法。
3-メチルチオプロピオン酸エチル含有物もしくはその加工物が熟成酒粕もしくはその加工物である、請求項4または5に記載の米酢の製造方法。
請求項1から3のいずれかに記載の米酢を含有する飲食品。
請求項4から6のいずれかに記載の方法で製造された米酢を含有する飲食品。
すし酢である、請求項7または8に記載の飲食品。
Description:
酸味の強さと持続性が改善され 米酢及びその製造方法

 本発明は、酸味の強さと持続性が改善さ た米酢及びその米酢の製造方法に関する。 らに詳細には、本発明は、酢酸由来の独特 すっきりとした酸味の強さと、その時間の 過による低下が改善された米酢及びその米 の製造方法に関する。

 食酢は、すし、酢の物、マリネなどの料 にそのまま使用されるほか、マヨネーズや レッシングといった調味料に配合して使用 れる。食酢は米や麦などの穀物や果汁を原 として生産され、その原料の種類によって 米酢」、「玄米酢」、「黒酢」、「粕酢」 「りんご酢」、「ぶどう酢」などに分類さ る。

 食酢中の主要成分は酢酸であり、グルコ 酸、コハク酸、乳酸、シュウ酸、リンゴ酸 クエン酸などの有機酸も含まれ、これらの 機酸は一体となって食酢を口に入れた時に じる酸味に影響を与える。酢酸の酸味は独 のすっきりとした酸味であり、口に入れた にグルコン酸などの遅効性酸味に比べて若 早めに感じられる(酢酸の先味)。

 しかしながら、食酢を使用した料理や飲 などの飲食品においては、上記のような酢 由来の独特のすっきりとした酸味の強さ(「 酸味の利き」とも言う。「利き」は、「▲利 ▼き」、「効き」、「きき」とも表現される ことがある。)が、飲食品の製造直後から時 の経過とともに弱くなり、期待されていた 味が得られにくくなる。このような酸味の 間の経過による低下は、いわゆる「酸味ぼ 」と呼ばれ、呈味上問題となる。この「酸 ぼけ」の現象は、食酢の中でも特に米や玄 を主原料として製造した米酢において顕著 みられる。従って、生酢(きず:水や調味料で 薄めていない純粋な食酢)の米酢を使用した し飯ではこの「酸味ぼけ」の問題の解決が きな課題となっている。

 一般に、「酸味ぼけ」の問題を解消する めには、食酢の使用量を増やして酢酸を飲 品に多く含有させることが最も簡単な解決 段ではあるものの、料理が水っぽくなった 、飲食品の風味のバランスが壊れるなどし 好ましくない。また、食酢の酸味や旨みを 善するために、例えばクエン酸を総酸度に して1/20~1/5の割合で食酢に添加する方法が 案されている(特許文献1)。しかし、この方 では酢酸由来の独特のすっきりとした酸味 クエン酸の酸味によって変化して、クエン の固有のクセが飲食物に移行し、望ましく い呈味が生じる。

 一方、3-メチルチオプロピオン酸エチルは 味噌を想起させるような香りがあり、主に 薬品、化粧品、食品用の香料として使用さ ている。3-メチルチオプロピオン酸エチルは 、天然には耐塩性酵母発酵液(非特許文献1)、 マンドレイクの果実(非特許文献2)、泡盛(非 許文献3)のほか、ブドウやメロンなどの果実 、ワインなどにその存在が知られている。し かしながら、3-メチルチオプロピオン酸エチ 単体や3-メチルチオプロピオン酸エチル含 物もしくはその加工物を用いて食酢の品質 改善させることはこれまで全く知られてい い。

特開2005-130705号公開公報 石原 和夫, 本間 伸夫, 内山 夫、生物 工学会誌、Vol.73、No.6、p.463-472 (1995) The Journal of Essential Oil Research, Vol.4、N o.2, p.187-188 (1992) Journal of fermentation technology, Vol.64, No.2,  p.129-136 (1986)

 本発明の目的は、米酢やそれを含む調味 、ならびにそれらを用いて製造される飲食 において、酢酸由来の独特のすっきりとし 酸味の強さと、その時間の経過による低下 改善する手段を提供することにある。

 本発明者らは、上記課題を解決するため 、果実や穀物などの天然の食品素材やその 造物に含まれる約120種の香気物質に着目し それらを食酢に含有させた場合の酸味に対 る影響を調べた結果、熟成酒粕などに含ま る3-メチルチオプロピオン酸エチルが、酢 由来の独特のすっきりとした酸味をシャー に感じさせ、かつ、その酸味の時間の経過 よる低下を改善できること見出し、本発明 完成させるに至った。

 即ち、本発明は以下の発明を包含する。

(1) 3-メチルチオプロピオン酸エチルを0.006 ~0.2ppbの濃度範囲で含有することを特徴とす 米酢。

(2) 3-メチルチオプロピオン酸エチルが天 の3-メチルチオプロピオン酸エチル含有物ま たはその加工物から得られたものである、(1) に記載の米酢。

(3) 3-メチルチオプロピオン酸エチル含有 またはその加工物が熟成酒粕またはその加 物である、(2)に記載の米酢。

(4) 3-メチルチオプロピオン酸エチルまた 3-メチルチオプロピオン酸エチル含有物もし くはその加工物を、米酢中の3-メチルチオプ ピオン酸エチルが0.006~0.2ppbの濃度範囲とな ように少なくとも一つの工程で添加するこ を特徴とする、米酢の製造方法。

(5) 以下の工程:
(a) 原料米を蒸煮し、麹菌を接種して糖化す 工程
(b) 糖化液に酵母を加えてアルコール発酵す 工程
(c) アルコール含有液に酢酸菌を加えて酢酸 酵する工程
(d) 酢酸発酵液を熟成する工程
を含む米酢の製造方法において、3-メチルチ プロピオン酸エチルまたは3-メチルチオプ ピオン酸エチル含有物もしくはその加工物 、酢酸発酵工程後もしくは熟成工程後の米 か、あるいは、糖化工程後の醪もしくは酢 発酵工程前のアルコール含有液に添加する とを特徴とする、上記米酢の製造方法。

(6) 3-メチルチオプロピオン酸エチル含有 もしくはその加工物が熟成酒粕もしくはそ 加工物である、(4)または(5)に記載の米酢の 造方法。

(7) (1)から(3)のいずれかに記載の米酢を含 する飲食品。

(8) (4)から(6)のいずれかに記載の方法で製 された米酢を含有する飲食品。

(9) すし酢である、(7)または(8)に記載の飲 品。

 本願は、2007年11月19日に出願された日本 特許出願2007-299511号の優先権を主張するもの であり、該特許出願の明細書に記載される内 容を包含する。

 本発明の米酢やそれを含む調味料、なら にそれらを用いて製造される飲食品は、酢 由来の独特のすっきりとした酸味の強さ(酸 味の利き)が良好で、またはその酸味の時間 経過による低下(酸味ぼけ)が改善される。

3-メチルチオプロピオン酸エチル検出 の熟成酒粕10%水溶液のパルス式炎光光度検 器によるクロマトグラムを示す(RT=27.5の矢印 は3-メチルチオプロピオン酸エチルを示す)。

 以下、本発明を詳細に説明する。

 本発明の米酢は、3-メチルチオプロピオ 酸エチルを0.006~0.2ppbの濃度範囲で含有する とを特徴とする。

 本発明の米酢とは、米もしくは玄米、ま はそれらの加工品(糠、細米、粉米、破砕米 など)を主原料として通常の方法で製造され 食酢をいい、いわゆる市販の米酢のほか、 米酢、糠酢も含む意味で用いられる。

 本発明の米酢に用いる3-メチルチオプロピ ン酸エチル(慣用名:3-(メチルチオ)プロピオ 酸エチル, 3-(メチルチオ)プロパン酸エチル 英文表記:Ethyl 3-methylthiopropanoate, Ethyl 3-meth ylthiopropionate, Ethyl β-methylthiopropionate))は、分 子式C 6 H 12 O 2 S(分子量:148.22)を有し、下記に示される構造 で表される公知の化合物である。また、CAS 録番号は13327-56-5である。

 上記3-メチルチオプロピオン酸エチルは 公知の合成方法、例えば、3-メチルチオプロ ピオン酸とエタノールの縮合反応によって得 ることができる。

 また、3-メチルチオプロピオン酸エチル 、天然には耐塩性酵母発酵液(石原 和夫,  間 伸夫, 内山 夫、生物工学会誌、Vol.73、N o.6、p.463-472 (1995):文献値36 ppb)、マンドレイ の果実(The Journal of Essential Oil Research, Vol .4、No.2, p.187-188 (1992))、泡盛(Journal of ferment ation technology, Vol.64, No.2, p.129-136 (1986):文献 値67.2~196.0ppb)にその存在が知られている。従 て、3-メチルチオプロピオン酸エチルは、 記の天然物質から抽出し、抽出物を必要に り減圧濃縮した後、常用される精製手段(例 ば、イオン交換樹脂、膜分画、吸着クロマ グラフィー、(高速)液体クロマトグラフィ 、逆相クロマトグラフィー、親和性クロマ グラフィーなど)を単独でまたは組合せて用 て精製することによって得ることもできる 抽出は、水、水溶性溶媒又はこれらの混合 媒を用いる。水溶性溶媒としては、エタノ ル、n-プロピルアルコール、イソプロピル ルコール等の低級アルコール類、ジメチル セトンアミド、ジメチルホルムアミド等が げられる。

 本発明の米酢における3-メチルチオプロ オン酸エチルの含有量は、好ましくは0.006~0. 2ppb、より好ましくは0.01~0.1ppb(重量割合)であ 。3-メチルチオプロピオン酸エチルの含有 が0.006ppbよりも少ないと、酢酸由来の独特の すっきりとした酸味の強さ(酸味の利き)が弱 、またはその酸味の時間の経過による低下( 酸味ぼけ)が改善されず、好ましくない。ま 、3-メチルチオプロピオン酸エチルの含有量 が0.2ppbを超えると、3-メチルチオプロピオン エチル自身の香りを感じるようになり、風 に違和感が生じて好ましくない。

 本発明において、「酸味の利き」とは、 ルコン酸などの遅効性酸味に比べて若干早 に感じられる、酢酸由来の独特のすっきり した酸味の強さ(酸刺激)をいう。また、「 味ぼけ」とは、食酢を使用した料理や飲料 どの飲食品を製造した当初から、時間の経 とともに酢酸由来の独特のすっきりとした 味が弱くなることをいう。例えば、すし飯 は一日経過すると酸味が明らかに低下する 象である。

 本発明の米酢は、3-メチルチオプロピオ 酸エチルまたは3-メチルチオプロピオン酸エ チル含有物もしくはその加工物を米酢中の3- チルチオプロピオン酸エチルが上記の濃度 囲となるように添加することによって製造 きる。

 本発明の米酢の製造は、米酢中の3-メチ チオプロピオン酸エチルまたは3-メチルチオ プロピオン酸エチル含有物もしくはその加工 物を上記の濃度範囲になるように米酢に添加 する工程を含む以外は、通常の手法で製造す ればよい。例えば、原料米を蒸煮し、麹菌を 接種して糖化させ、糖化液を得る。得られた 糖化液を圧搾またはろ過して清澄にした後、 酵母を加えてアルコール発酵させ、アルコー ル含有液を得、次いで酢酸発酵を行い、熟成 する。3-メチルチオプロピオン酸エチルまた 3-メチルチオプロピオン酸エチル含有物も くはその加工物の米酢への添加は、上記の 酢の製造工程における酢酸発酵終了後また 熟成終了後の米酢に添加することによって ってもよく、あるいは、酢酸発酵前のアル ール含有液や原料醪(もろみ)に直接添加して から酢酸発酵を行ってもよい。

 3-メチルチオプロピオン酸エチル単体を 用する場合は、化学合成によって得られた のを使用してもよいが、天然の3-メチルチオ プロピオン酸エチル含有物から抽出し、単離 精製して得られたものを使用してもよい。

 あるいは、3-メチルチオプロピオン酸エ ル単体に代えて、天然の3-メチルチオプロピ オン酸エチル含有物またはその加工物を用い てもよい。ここで、3-メチルチオプロピオン エチル含有物としては、マンドレイク果汁 ぶどう果汁、メロン果汁、泡盛(米を原料に 、米麹(黒麹菌)によって発酵させる蒸留酒の 種)、耐塩性酵母発酵液などが挙げられる。 本明細書において、「3-メチルチオプロピオ 酸エチル含有物」は、上記に挙げた3-メチ チオプロピオン酸エチル含有物の抽出液や 釈液を含む意味で用いられ、また、「3-メチ ルチオプロピオン酸エチル含有物の加工物」 とは、上記の抽出液や希釈液に対して種々の 処理を施し、種々の形態に加工したものをい う。

 また、製造直後の酒粕は、3-メチルチオ ロピオン酸エチルが検出されないが、それ 貯蔵槽に隙間なく投入し、空気との接触を った状態で3ケ月から1年以上、好ましくは2~3 年間常温で貯蔵した「熟成酒粕」は3-メチル オプロピオン酸エチルを3~10ppb程度含んでい ることが本発明者らにより確認された。酒粕 は熟成が進むと褐色を呈し香りも熟成酒粕特 有の芳醇な香りに変化し、このときに3-メチ チオプロピオン酸エチルも著量生成されて 加する。従って、3-メチルチオプロピオン エチル含有物として「熟成酒粕」を用いて よい。3-メチルチオプロピオン酸エチル含有 物として「熟成酒粕」を用いる場合は、上記 のようにして酒粕を一定期間保存して得られ た熟成酒粕を水、酒、食酢などで抽出した液 やそれらを加工したもの(例えば、熟成酒粕 抽出液に酢酸菌を加えて発酵したもの)を用 ることが好ましい。

 本発明の米酢は、これを含む飲食品とし 提供できる。本発明の米酢を含む飲食品に 、米酢を原料に用いて製造される加工食酢( すし酢、甘酢、ポン酢など)、清涼飲料、ド ッシング・マヨネーズ・たれなどの調味料 含まれる。また、本発明の米酢を含む飲食 には、上記の米酢や加工食酢を用いて調理 れるすし、ピクルス、酢の物、マリネ、し 鯖、南蛮漬けなども含む。

 これらの飲食品の製造は、食品加工の分 で用いられている通常の方法で行うことが きる。例えば、清涼飲料の場合は、本発明 米酢に果汁や蜂蜜などを加え、適宜希釈す ことにより製造できる。また、ポン酢の場 は、本発明の生酢の米酢に砂糖、塩、醤油 油、柑橘果汁、香辛料などを加えることに り製造することができる。また、すし酢の 合は、本発明の米酢に砂糖、塩、みりんな の調味料を適量加えることにより製造する とができる。また、すし酢は、市販の米酢 上記調味料と3-メチルチオプロピオン酸エ ルまたは3-メチルチオプロピオン酸エチル含 有物もしくはその加工物を同時に混合するこ とによって製造することもできる。

 本発明においては、最終品として得られ 米酢中の3-メチルチオプロピオン酸エチル 前記の濃度範囲内に包含されるように正確 調整するために、使用する米酢(3-メチルチ プロピオン酸エチルを含まないことが明ら にされているものを除く)や、前記の天然の3 -メチルチオプロピオン酸エチル含有物にお る3-メチルチオプロピオン酸エチル濃度が不 明な場合は、その濃度測定して適宜調整すれ ばよい。

 試料中の3-メチルチオプロピオン酸エチ の含有量の測定は、American Society of Brewing  Chemists, Vol.65, No.3, p.129-137(2007)の分析方法に 準じ、以下のGC/MS分析法とパルス式炎光光度 出器との組み合わせによって行うことがで る。

 まず、試料から香気成分を抽出する。抽 方法としては、溶媒抽出法やSBSE法などが好 ましく、例えば、試料(固形物の場合は適当 の水などによく均質化したもの)を20ml平底の バイアルに計り取った後、ポリジメチルシロ キサンコーティングされたスターラーバーを 投入して密閉し、1時間撹拌する。その後、 気成分を吸着したスターラーバーを、加熱 着システムを用いて処理することで液中の 気成分を得ることができる。

 次に、上記のようにして得られた試料を スクロマトグラフィー分析装置に導入し、 析を行う。ガスクロマトグラフィー分析装 としては、キャピラリーカラムが接続でき 一般的なガスクロマトグラムの性能を有す ものであればよいが、例えばAgilent 6890 Seri es GC System(Agilent社製)を使用することができ 。キャピラリーカラムは一般的な分析に用 ることのできるものであればよいが、内膜 ジメチルポリシロキサン及び/又はジフェニ ル及び/又はシアノプロピルフェニル及び/又 ポリエチレングリコール及び/又はテレフタ ル酸修飾ポリエチレングリコールを含むもの が好ましい。例えばINERTCAP-WAX(内径0.25mm、長 60m、膜厚0.25μm)(Gl-Sciences社製)を使用するこ ができる。キャリアガスとしては、ヘリウ ガスを用いる。昇温プログラムは40℃にて5 保持し、その後、5℃/分にて230℃まで昇温し た後、230℃にて20分保持する。

 その後、試料の一部を質量分析計にかけ マススペクトルを求め、3-メチルチオプロ オン酸エチルの関連イオンで確認する。質 分析計は、一般的な質量スペクトル解析の 能を有するものであればよく、四重極型、 オントラップ型、飛行時間型、タンデム型 いずれでもよい。例えば5973 Mass Selective Det ector(Agilent社製)を用いることができる。イオ 化法としては、電子イオン化法(EI)、エレク トロスプレーイオン化法(ESI)、マトリックス 援レーザー脱離イオン化法(MALDI)、化学イオ ン化法(CI)、電解脱離法(FD)などいずれの方法 もよいが、電子イオン化法(EI)が好ましい。 EI法では、電圧条件も一般的な条件でよく、7 0eV程度が例示できる。結果はスキャンモード で取り込み、3-メチルチオプロピオン酸エチ に特徴的な61、74、148のイオンを関連イオン として用いて同定を行う。

 また、試料の一部をAnalytical and Bioanalytic al Chemistry, Vol.381, p.1272-1280(2005)に記載の方 に準じてパルス式炎光光度検出器に導入し 試料中の硫黄化合物を分析する。パルス式 光光度検出器としては、例えばOI Analytical 5 380 Pulsed Flame Photometric Detector(OI Analytical社 )を用いることができる。試料の分析はSモ ドにて行うことができる。

 また、試料とは別に、上記の条件にて、 販の3-メチルチオプロピオン酸エチルの標 を0.5%エタノール溶液によって適当な濃度に 釈したものを分析に供する。パルス式炎光 度検出器は物質を還元水素炎中で燃焼させ その際発生する394nmの特定波長の光を検出 ることで硫黄化合物のみを選択的に検出す ことができ、極微量の硫黄成分をも検出す ことができる。また、その高い選択性を利 して、炭素系の有機物に含まれる極微量の 黄化合物の検出、定量に使用することがで る。このパルス式炎光光度検出器による高 度硫黄成分検出能と質量分析計のマススペ トルパターンに基づく定性的な分析を組合 ることで、保持時間27.5分付近のピークを3- チルチオプロピオン酸エチルと判定し、そ らのピーク面積の比較によって、試料中の 分の定量を行うことができる。

 以下、実施例により本発明をさらに具体 に説明する。但し、本発明はこれらに限定 れるものではない。

(実施例1)米酢中の3-メチルチオプロピオン酸 チル濃度の測定
 市販の米を主原料として糖化、必要に応じ アルコール発酵、続いて酢酸発酵により製 された米酢である「ミツカン米酢」(ミツカ ン社製)を試料とし、この3-メチルチオプロピ オン酸エチル濃度を以下の方法により測定し 、検出限界以下であることを確認した。

 「ミツカン米酢」を20ml平底のバイアルに 計り取り、SBSE(Stir Bar Sorptive Extraction)法に 試料中の香気成分を抽出した。ポリジメチ シロキサンでコーティングしたスターラー ー(Gestel社製)に吸着した香気成分を、加熱脱 着システムを用いて加熱脱着させ、得られた 試料をガスクロマトグラフィー分析装置に導 入し、ガスクロマトグラフィー分析を行った 。

 ガスクロマトグラフィー分析装置はAgilent  6890 Series GC System(Agilent社製)を用い、カラ はINERTCAP-WAX(内径0.25mm、長さ60m、膜厚0.25μm)( Gl-Sciences社製)を用い、キャリアガスはヘリウ ムガスを用いた。昇温プログラムは40℃にて5 分間保持し、その後、5℃/分にて230℃まで昇 した後、230℃にて20分間保持した。

 その後、試料の一部を質量分析計に導入し マススペクトル分析を行った。質量分析計 5973 Mass Selective Detector(Agilent社製)を用い、 イオン化法:EI + 、イオン化電圧:70eVの条件で行った。マスス クトルはスキャンモードで取り込み、3-メ ルチオプロピオン酸エチルに特徴的な61、74 148のイオンを関連イオンとして用いて同定 行った。

 また、残りの試料をパルス式炎光光度検 器に導入し、試料中の硫黄化合物を分析し 。パルス式炎光光度検出器は、OI Analytical  5380 Pulsed Flame Photometric Detector(OI Analytical社 製)を用い、Sモードで試料中の硫黄化合物を 析した。

 また、別途、3-メチルチオプロピオン酸 チルの標品(和光純薬工業社製)を0.5%エタノ ル溶液によって1ppb、0.1ppb、0.01ppbに希釈した ものを上記の条件にて分析に供した。そのマ ススペクトルパターンからRI値1560付近のピー クを3-メチルチオプロピオン酸エチルと判定 、それらのピーク面積との比較によって、 記試料中の成分の定量を行った結果、3-メ ルチオプロピオン酸エチル濃度は検出限界(0 .0005ppb)以下であった。

 また、他の市販米酢4種(K社製、M社製、O 製、Y社製)についても上記と同様にして、3- チルチオプロピオン酸エチル濃度の測定を ったところ、いずれも検出限界(0.0005ppb)以 であった。以上の結果から、これまで文献 て報告のないように、米酢には3-メチルチオ プロピオン酸エチルが含まれないことが確認 できた。

(実施例2)3-メチルチオプロピオン酸エチル添 量の検討
(1)「熟成酒粕」の調製
 酒粕((株)小林晴吉商店製)を常温暗所にて1 間熟成した。購入直後の酒粕には3-メチルチ オプロピオン酸エチルは検出限界以下であっ たが、1年間熟成した酒粕(熟成酒粕)は、実施 例1と同様な方法で測定すると、3-メチルチオ プロピオン酸エチル濃度が5ppbになっていた とが確認できた(図1)。

(2)各種濃度の3-メチルチオプロピオン酸エチ 含有米酢の調製
 上記熟成酒粕を10%の割合で0.5%エタノールに 浸漬し、常温でよく撹拌することによって「 熟成酒粕」中の成分を抽出した。この0.5%エ ノール抽出液を、実施例1で3-メチルチオプ ピオン酸エチル濃度が検出限界以下である とを確認した「ミツカン米酢」に対して任 の量を添加し、3-メチルチオプロピオン酸エ チルを、0.0005ppb(試験区A)、0.001ppb(試験区B)、0 .006ppb(試験区C)、0.01ppb(試験区D)、0.1ppb(試験区 E)、0.2ppb(試験区F)、0.4ppb(試験区G)、0.6ppb(試験 区H)の各濃度になるように含有させた米酢を 製した。

(3)官能評価
 (2)で調製した3-メチルチオプロピオン酸エ ル濃度が異なる米酢を熟練した官能検査員 べ50名(食品の官能評価を日々行っている熟 した官能検査員20名を必要数繰り返してのべ 50名)による官能検査に供し、3-メチルチオプ ピオン酸エチルを添加していない米酢を対 サンプルとして比較し、食酢のすっきりと た酸味の強さ(酸味の利き)について相対的 評価した。また、香りの違和感についても 官能検査員により相対的に評価した。その 果を下記表1に示す。

 なお、酸味の評価は、試験区サンプルと対 サンプルを評価者に隠した状態で提示し、 味の強さが強い方を選択させ、試験区サン ルの方が酸味の強さが強いと評価した人数 集計し、試験区サンプルと対照サンプル間 統計学的に有意な差(試験区サンプルと対照 サンプルの酸味の強さが同じであるという帰 無仮説を棄却する際の危険率によって判定) みられるかどうかによって行った。表中の 欄の上段には、上記官能検査員のべ50名中、 試験区サンプルの方が酸味の強さが強いと評 価した人数を記載し、下段にはその結果から 試験区サンプルと対照サンプル間に統計学的 有意差について記載した。また、香りの違和 感の評価についても同様に記載した。

 表1から明らかなように、3-メチルチオプ ピオン酸エチルが0.006ppb以上含まれる米酢 、3-メチルチオプロピオン酸エチルを含有し ない米酢に比べ、「酸味の利き」を強く有し ていることが確認された。

 また、3-メチルチオプロピオン酸エチル 由来する香りの違和感は、0.2ppbでわずかに 題になるものの、0.006~0.2ppb(試験区C~E)におい てほとんど問題ないことが確認された。また 、3-メチルチオプロピオン酸エチルの含有量 増えるにつれて徐々に香りの違和感が強く り、0.4ppb以上であるとそれが無視し難くな 、好ましくない香りになってしまうことが 明した。

 以上の結果から、3-メチルチオプロピオ 酸エチルの添加量の好ましい範囲は0.006~0.2pp bであり、より好ましい範囲は0.01~0.1ppbである ことが確認された。

(実施例3)3-メチルチオプロピオン酸エチル添 の効果試験(1)
 市販の代表的な米酢である「華撰」(ミツカ ンナカノス社製:3-メチルチオプロピオン酸エ チル検出限界以下)に、実施例2と同様にして 造した熟成酒粕を0.4%添加し、最終的な米酢 中の3-メチルチオプロピオン酸エチル濃度が0 .04ppbになるように含有させた。

 調製した3-メチルチオプロピオン酸エチル 0.04ppb含有させた米酢(試験区I)及び対照サン ルとして3-メチルチオプロピオン酸エチル 添加していない米酢を官能検査員のべ50名に よる官能検査に供し、実施例2と同様にして 味の評価と香りの違和感の評価を行った。 の結果を下記表2に示す。

 表2から明らかなように、3-メチルチオプ ピオン酸エチルを0.04ppb含有させた米酢は、 3-メチルチオプロピオン酸エチルを含有しな 米酢に比べ「酸味の利き」を強く有してお 、かつ、香りの違和感もないことが確認さ た。

(実施例4)3-メチルチオプロピオン酸エチル添 の効果試験(2)
 実施例3で調製した3-メチルチオプロピオン エチルを0.04ppb含有する米酢、及び対照とし て無添加の米酢をそれぞれ生酢として用い、 すし酢(すし飯1升用、米酢:200ml、砂糖:大さじ 2.5杯、塩:大さじ2.5杯)を調製した。

 上記のすし酢を用いてすし飯を作製した 米(コシヒカリ)を家庭用炊飯器を用いて炊 し、上記すし酢を米1升分の米飯に対して全 使用し、団扇で扇ぎ荒熱を取りながらしゃ じですし酢と米飯をよく馴染ませた。

 このようにして作製したすし飯を常温で3 時間放置したもの(試験区J1)と24時間放置した もの(試験区J2)をサンプルとして官能検査に 試し、すし飯の酸味について評価した。ま 、対照サンプルとして無添加の米酢を用い 上記と同様にして作製したすし飯を常温で3 間放置したもの(対照区K1)と24時間放置した の(対照区K2)についても官能検査に供試し、 すし飯の酸味を評価した。その結果を下記表 3に示す。

 酸味の評価は、試験区サンプルと対照区サ プルを評価者に隠した状態で提示し、酸味 強さが弱い方を選択させ、試験区サンプル 方が酸味の強さが弱いと評価した人数を集 し、試験区サンプルと対照区サンプル間に 計学的に有意な差がみられるかどうかによ て行った。表中の各欄の上段には、上記官 検査員のべ50名中、試験区サンプルの方が 味の強さが弱いと評価した人数を記載し、 段にはその結果から試験区サンプルと対照 サンプル間に統計学的有意差について記載 た。

 表3から明らかなように、3-メチルチオプ ピオン酸エチルを0.04ppb含有する米酢を生酢 として用いたすし酢から作製したすし飯(試 区J1,J2)は、3-メチルチオプロピオン酸エチル を含有しない米酢を生酢として用いたすし酢 から作製したすし飯(対照区K1,K2)に比べて、 味の時間の経過による低下(酸味ぼけ)が改善 された。

(実施例5)3-メチルチオプロピオン酸エチル添 の効果試験(3)
 食酢には、アルコールを主な原料として酢 発酵を行うことにより得られる「酒精酢」 米、小麦、大麦、とうもろこし、稗、粟、 といった穀物やその加工品を主な原料とし 液化糖化を行い、必要に応じて酒精発酵を い、次いで酢酸発酵を行うことにより得ら る「穀物酢」、ぶどう搾汁液やその加工品 主な原料として酒精発酵を行い、次いで酢 発酵を行うことにより得られた「ぶどう酢 、ワインやその加工品を主な原料として酢 発酵を行うことにより得られる「ワインビ ガー」などの種類がある。

 これらの食酢の種類による3-メチルチオ ロピオン酸エチル添加の効果の違いを検討 た。試験には、酒精酢、穀物酢、ぶどう酢 ワインビネガーとして、「清泉-10」(ミツカ ナカノス社製)、「ミツカン穀物酢」(ミツ ン社製)、「ミツカンぶどう酢」(ミツカン社 製)、「ワインビネガー」(ミツカンナカノス 製)をそれぞれ用いた。これらの食酢に、実 施例3と同様の方法で3-メチルチオプロピオン 酸エチルを添加し(0.04ppb)、無添加の対照サン プルと比較して酸味の評価を行った。なお、 食酢の酸味の評価は、実施例2と同様の手法 より行い、○:試験区サンプルと対照サンプ に統計学的な差が見られる(酸味の強さが強 くなる)、×:試験区サンプルと対照サンプル 統計学的な差が見られない(酸味の強さに明 な違いはない)、の2段階で行った。

 また、上記の各種の食酢を用いてすし酢 調製し、実施例4と同様にしてすし飯を作製 し、すし飯の酸味を評価した。なお、すし飯 の酸味の評価は、実施例4と同様の手法にて い、○:酸味の強さが変わらない、×:酸味の さが低下する、の2段階で行った。

 上記の評価結果を、米酢(実施例3、4のデー を使用、試験区L)、酒精酢(試験区M)、穀物 (試験区N)、ぶどう酢(試験区O)、ワインビネ ー(試験区P)として下記表4に示す。

 表4から、3-メチルチオプロピオン酸エチ の添加による酸味の強さ(酸味の利き)と酸 の時間の経過による低下(酸味ぼけ)に対する 改善の効果は、米酢においてのみ顕著に見ら れることがわかった。

(実施例6)3-メチルチオプロピオン酸エチル添 の効果試験(4)
 泡盛の3-メチルチオプロピオン酸エチル濃 は、67.2~196.0ppbであることが報告されている( Journal of fermentation technology, Vol.64, No.2, p.12 9-136 (1986))。そこで、市販の泡盛(KO社製)の3- チルチオプロピオン酸エチル濃度を実施例1 と同様の方法にて測定したところ、23.9ppbで った。実施例1で3-メチルチオプロピオン酸 チル濃度が検出限界以下であることを確認 た「ミツカン米酢」に、上記の泡盛を添加 、最終的な米酢中の3-メチルチオプロピオン 酸エチル濃度が0.15ppbとなるように含有させ 。

 調製した3-メチルチオプロピオン酸エチル 0.15ppb含有させた米酢(試験区Q)及び対照サン ルとして3-メチルチオプロピオン酸エチル 添加していない米酢を官能検査員のべ50名に よる官能検査に供し、実施例2と同様にして 味の評価と香りの違和感の評価を行った。 の結果を下記表5に示す。

 表5から明らかなように、泡盛を添加する ことによって3-メチルチオプロピオン酸エチ を0.15ppb含有させた米酢は、3-メチルチオプ ピオン酸エチルを含有しない米酢に比べ、 酸味の利き」を強く有しており、かつ、香 の違和感もないことが確認された。

(実施例7)3-メチルチオプロピオン酸エチル添 の効果試験(5)
 実施例6で調製した3-メチルチオプロピオン エチルを0.15ppb含有する米酢、及び対照とし て無添加の米酢をそれぞれ生酢として用い、 すし酢(すし飯1升用、米酢:200ml、砂糖:大さじ 2.5杯、塩:大さじ2.5杯)を調製した。

 上記のすし酢を用いてすし飯を作製した 米(コシヒカリ)を家庭用炊飯器を用いて炊 し、上記すし酢を米1升分の米飯に対して全 使用し、団扇で扇ぎ荒熱を取りながらしゃ じですし酢と米飯をよく馴染ませた。

 このようにして作製したすし飯を常温で3 時間放置したもの(試験区R1)と24時間放置した もの(試験区R2)をサンプルとして官能検査に 試し、すし飯の酸味について評価した。ま 、対照サンプルとして無添加の米酢を用い 上記と同様にして作製したすし飯を常温で3 間放置したもの(対照区S1)と24時間放置した の(対照区S2)についても官能検査に供試し、 すし飯の酸味を評価した。その結果を下記表 6に示す。

 酸味の評価は、試験区サンプルと対照区サ プルを評価者に隠した状態で提示し、酸味 強さが弱い方を選択させ、試験区サンプル 方が酸味の強さが弱いと評価した人数を集 し、試験区サンプルと対照区サンプル間に 計学的に有意な差がみられるかどうかによ て行った。表中の各欄の上段には、上記官 検査員のべ50名中、試験区サンプルの方が 味の強さが弱いと評価した人数を記載し、 段にはその結果から試験区サンプルと対照 サンプル間に統計学的有意差について記載 た。

 表6から明らかなように、泡盛を添加し、 3-メチルチオプロピオン酸エチルを0.15ppb含有 する米酢を生酢として用いたすし酢から作製 したすし飯(試験区R1,R2)は、3-メチルチオプロ ピオン酸エチルを含有しない米酢を生酢とし て用いたすし酢から作製したすし飯(対照区S1 ,S2)に比べて、酸味の時間の経過による低下( 味ぼけ)が改善された。

(実施例8)3-メチルチオプロピオン酸エチル添 の効果試験(6)
 実施例6で調製した3-メチルチオプロピオン エチルを0.15ppb含有する米酢、及び対照とし て無添加の米酢をそれぞれ生酢として用い、 すし酢(すし飯1升用、米酢:200ml、砂糖:大さじ 2.5杯、塩:大さじ2.5杯)を調製した。

 上記のすし酢に対して300mlの水を添加し 食べやすい大きさに切ったきゅうりを一晩 け込んだ。このようにして調製したピクル を常温で3時間保管したもの(試験区T1)と24時 保管したもの(試験区T2)をサンプルとして官 能検査に供試し、ピクルスの酸味について評 価した。また、対照サンプルとして無添加の 米酢を用い、上記と同様にして調製したピク ルスを常温で3時間保管したもの(対照区U1)と2 4時間保管したもの(対照区U2)についても官能 査に供試し、ピクルスの酸味を評価した。 の結果を下記表7に示す。

 酸味の評価は、試験区サンプルと対照区サ プルを評価者に隠した状態で提示し、酸味 強さが弱い方を選択させ、試験区サンプル 方が酸味の強さが弱いと評価した人数を集 し、試験区サンプルと対照区サンプル間に 計学的に有意な差がみられるかどうかによ て行った。表中の各欄の上段には、上記官 検査員のべ50名中、試験区サンプルの方が 味の強さが弱いと評価した人数を記載し、 段にはその結果から試験区サンプルと対照 サンプル間に統計学的有意差について記載 た。

 表7から明らかなように、泡盛を添加し、 3-メチルチオプロピオン酸エチルを0.15ppb含有 する米酢を生酢として用いたすし酢に漬け込 んで調製したピクルス(試験区T1,T2)は、3-メチ ルチオプロピオン酸エチルを含有しない米酢 を生酢として用いたすし酢に漬け込んで調製 したピクルス(対照区U1,U2)に比べて、酸味の 間の経過による低下(酸味ぼけ)が改善された 。

 本発明は、食酢および食酢含有食品・飲 の製造分野において利用できる。

 本明細書で引用した全ての刊行物、特許 び特許出願をそのまま参考として本明細書 組み入れるものとする。