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Patent Searching and Data


Title:
SHEATH HEATER AND GLOW PLUG
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/084453
Kind Code:
A1
Abstract:
A sheath heater includes a tubular metallic sheath containing as a main composition nickel or iron, closed on the forward end side and extending in the axial direction, a heat generating coil arranged in the sheath along the axial direction and having the forward end connected electrically with the sheath, a lead member located in the sheath and having the forward end connected electrically with the heat generating coil and the rear end projecting to the rear end side of the sheath, insulating powder filling the periphery of the heat generating coil, in the sheath, and a sealing member for sealing the rear end of the sheath, characterized in that the internal atmosphere of the sheath sealed by the sealing member has a partial pressure of nitrogen higher than the partial pressure of oxygen , and the heat generating coil, including as a main composition iron, contains 5-20 wt.% of chromium, and 8-15 wt.% of aluminum. Such a sheath heater is suitably used in a glow lamp, and the like.

Inventors:
NARITA SAORI
MATSUTANI WATARU
SEGAWA MASAYUKI
YATSUYA YOSUKE
Application Number:
PCT/JP2008/073086
Publication Date:
July 09, 2009
Filing Date:
December 18, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NGK SPARK PLUG CO (JP)
NARITA SAORI
MATSUTANI WATARU
SEGAWA MASAYUKI
YATSUYA YOSUKE
International Classes:
F23Q7/00; H05B3/44
Foreign References:
JP2006038279A2006-02-09
JPH01167529A1989-07-03
JPH032356A1991-01-08
JPS62136758U1987-08-28
Attorney, Agent or Firm:
HASHIMOTO, Takeshi et al. (Ekisaikai Bldg. 1-29, Akashi-cho, Chuo-k, Tokyo 44, JP)
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Claims:
軸線方向に延び、ニッケル又は鉄を主成分としてなる先端側が閉塞した筒状の金属製のシースと、当該シース内に前記軸線方向に沿って配置され、先端が前記シースに電気的に接続された発熱コイルと、先端が前記発熱コイルと電気的に接続するとともに前記シース内に位置し、後端が当該シースの後端側へ突出するリード部材と、前記シース内の前記発熱コイルの周囲に充填される絶縁粉末と、前記シースの後端部を封止する封止部材と、を備え、当該封止部材によって封止された前記シースの内部雰囲気が分圧比で酸素分圧よりも窒素分圧が大きい内部雰囲気であり、前記発熱コイルは、鉄を主成分とし、クロムを5重量%以上20重量%以下、アルミニウムを8重量%を超えて15重量%以下含有してなることを特徴とするシースヒータ。
前記発熱コイルは、クロム含有量に対するアルミニウム含有量の比率N Al /N Cr について、0.65≦N Al /N Cr ≦1.4を満たすことを特徴とする請求項1に記載のシースヒータ。
前記発熱コイルは、1000℃におけるクロムの窒化物生成自由エネルギーよりも1000℃における窒化物生成自由エネルギーが少ない元素を少なくとも1種類含有し、その含有量を0.001重量%以上5重量%以下とすることを特徴とする請求項1に記載のシースヒータ。
前記シースヒータは、前記発熱コイルに電気的に接続される制御コイルを備えてなり、前記シースヒータへ通電を行い、前記制御コイルの位置する部位の前記シースの表面温度を900℃として20時間保持したときに、当該制御コイルの外表面に形成される酸化皮膜または当該シースの内周面に形成される酸化皮膜のうち、いずれか一方の酸化皮膜が5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のシースヒータ。
前記発熱コイルは隣接する他部材と互いの金属成分を相互に溶融して混じり合うことによって形成された接合領域を有し、前記接合領域中の、前記発熱コイルと前記他部材との接合境界における中心及び前記軸線を含む面を断面としてみたときに、前記発熱コイルと前記他部材とを仮想的に分断する直線(分断直線)に対して垂直で、前記分断直線から前記接合境界における中心を通る直線上の、前記分断直線から500μmの範囲内で、前記他部材側から前記発熱コイル側へ向けて長さ15μmの区間の平均アルミニウム濃度勾配が0.1重量%/μm以上の部位を有することを特徴とする請求項1に記載のシースヒータ。
前記発熱コイルの中心軸を含む断面における前記発熱コイルの外形線で囲まれた複数のコイル領域の1つである対象コイル領域について、当該対象コイル領域の面積を当該対象コイル領域の周長で除算した値をxとしたとき、45≦x≦160を満たす前記コイル領域を有することを特徴とする請求項1乃至5に記載のシースヒータ。
前記発熱コイルのアルミニウム含有量をy(重量%)としたとき、y≧(-7/5)x+78を満たすことを特徴とする請求項6に記載のシースヒータ。
前記発熱コイルは、マンガン、ケイ素、ホウ素、バナジウム、タンタル、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、及び、セリウム等の希土類元素を少なくとも1種類含有するとともに、これらの総含有量が0.001重量%以上5重量%以下であり、前記発熱コイルのアルミニウム含有量をy(重量%)としたときにy≦(-1/20)x+20を満たすことを特徴とする請求項6に記載のシースヒータ。
前記シースの先端及び前記発熱コイルの先端が接合された部位であって、前記シースを構成する金属成分及び前記発熱コイルを構成する金属成分が相互に溶融されて混じり合うことによって形成された先端側接合部位のうち、内側表面から5μm以内の表層領域であって、少なくとも前記発熱コイルの先端外周から前記先端側接合部位の内側表面に沿って100μmの範囲内におけるアルミニウムの含有量を3.5重量%以上としたことを特徴とする請求項1乃至5に記載のシースヒータ。
前記シースにおけるアルミニウム含有量を3.5重量%以上としたことを特徴とする請求項9に記載のシースヒータ。
前記表層領域のうち、少なくとも前記発熱コイルの先端外周から前記先端側接合部位の内側表面に沿って100μmの範囲内には、1000℃におけるクロムの窒化物生成自由エネルギーよりも1000℃における窒化物生成自由エネルギーが少ない元素を少なくとも1種類含有する領域が存在していることを特徴とする請求項9に記載のシースヒータ。
前記発熱コイルは、後端が制御コイルと接合され、前記発熱コイルを構成する金属成分及び前記制御コイルを構成する金属成分が相互に溶融されて混じり合うことによって形成された後端側接合部位を有し、当該後端側接合部位におけるアルミニウム含有量を3.5重量%以上としたことを特徴とする請求項1乃至5に記載のシースヒータ。
前記後端側接合部位には、1000℃におけるクロムの窒化物生成自由エネルギーよりも1000℃における窒化物生成自由エネルギーが少ない元素を少なくとも1種類含有する領域が存在していることを特徴とする請求項12に記載のシースヒータ。
前記発熱コイルはクロムを含有するとともに、ジルコニウムを0.005重量%以上2重量%以下、或いは、チタンを0.005重量%以上5重量%以下含有することを特徴とする請求項9に記載のシースヒータ。
請求項1に記載のシースヒータを具備することを特徴とするグロープラグ。
Description:
シースヒータ及びグロープラグ

 本発明は加熱用シースヒータ、及びその ースヒータを利用し、ディーゼルエンジン 始動補助にも用いられるグロープラグに関 る。

発明の背景

 ディーゼルエンジンでは、従来より、エ ジンの始動補助及び始動後の燃焼安定化や 気ガスの清浄化のためにグロープラグが用 られている。グロープラグには、金属製の ース内に発熱抵抗体(単に発熱コイルともい う)や制御抵抗体(単に制御コイルともいう)を 収容してヒータをなした、いわゆるメタルグ ロープラグと呼称されるものがある。また、 ヒータを、セラミック材料を主体に構成した セラミックグロープラグと呼称されるものも ある。ディーゼルエンジンの高出力化や環境 負荷の低減のためには、一般的にグロープラ グの使用温度が高温であることが有利である 。セラミックグロープラグの方がメタルグロ ープラグに比して高温耐久性に優れることか ら、近年ではセラミックグロープラグの需要 が高まりつつある。一方で、メタルグロープ ラグは製造の容易性から、また構成の面でも 費用を抑えやすく、依然として需要があるの が現状である。これに加え、エンジンの始動 までの待ち時間の短縮という需要もある。

 メタルグロープラグは使用時においてエ ジンの燃焼室内へヒータとしてシースが露 される。燃焼室内は非常に高温、かつ燃料 混合した未燃焼ガス・燃焼ガスの漂う雰囲 であるため、シースの耐高温腐食性、高温 度などの耐熱性が要求される。これに応え べく、シースにはSUS 310やInconel 601(商標名) といったNi(ニッケル)やFe(鉄)を主成分とした 熱耐食性に優れた材料が用いられたりして る。

 ところで、グロープラグの耐久性に関し は、燃焼室に晒されるシース以上にヒータ 能を成す発熱コイルについて重視されてお 、その材料開発が行われている。特にメタ グロープラグの発熱コイル材料としてはFe( )-Cr(クロム)-Al(アルミニウム)系の材料が用 られており、例えば、特許文献1では、Fe-7.5A l-28Crなる組成のコイル材料が開示されている 。このコイル材料は耐酸化性に優れることで 多くのグロープラグに用いられている材料で ある。また、非特許文献1では、図3に示すよ な『Fe-Cr-Al系発熱体(抵抗体合金材料)におけ るAl,Crの寿命特性に与える影響』が報告され いる。これによると、Alとの相乗効果もあ のであろうか、Crの含有量が20重量%を超えた あたりからCrの含有量の増加に伴う寿命値の 昇度合いが著しく、Crは20重量%以上含有さ ることが望ましいように見える。

 上記コイル材料は優れた耐酸化性を備え ものではあるが、近年のエンジンが求める1 100℃以上といった非常に高い温度では、実使 用には耐えず、発熱コイルが断線してしまう ことがある。この断線の要因としては、使用 に伴い発熱コイル材の内部に粒状のAlN(窒化 ルミニウム)が生成されることにあると考え れている。発熱コイルのうちのある断面を えたときに、その断面積に占める金属部分 割合(高電導率部分の割合)がAlNの生成によ て低下すると、これによって抵抗値が増大 、発熱コイルに局部的に異常加熱する部位 形成され、そこで断線してしまうと考えら るためである。

 発熱コイルの耐久性向上技術として、特許 献2では、メタルグロープラグのシースの後 端部をN 2 (窒素)透過性の小さい弾性体にて封止するこ が開示されている。この構成により、シー の外部からの窒素の侵入を効果的に防いでA lN生成を抑制することができるが、それでも お、発熱コイルの耐久性としては十分では いことがある。これは、製造過程にてシー 内へ絶縁粉末を充填する工程の際に、大気 に含まれる酸素や窒素がシース内に混入し るため、シース内にコイル材料を冒しうる 分が封入されているためとも考えられる。 来の発熱抵抗体材料を用いていたのではこ 問題を解消することは困難である。

 発熱抵抗体を別の材料とすることなく耐 性向上を図るため、特許文献3参照では、絶 縁粉末であるMgO(酸化マグネシウム)粉末中にT iO(酸化チタン)を混合し、酸素ドナーとして 役割によって積極的に発熱抵抗体の表層を 化させ、その酸化皮膜により窒素の発熱抵 体内部への侵入を防ぐことが開示されてい 。この構成により、一見すると、発熱抵抗 の耐久性の課題は解消されたようにも見え 。しかしながら、酸素ドナーを混合させる とにより次のような不具合を生じ得る。酸 ドナーとしての役割を果たし、酸素が乖離 た金属(Ti)により、絶縁粉末としての絶縁機 の低下が懸念される。また、TiOが混合され MgO絶縁粉末自体の熱伝導率の変化により、 ースの表面温度が所期のものとならず、グ ープラグとしての本来の性能を発揮できな なることがある。このような実情を鑑みる 、グロープラグとしての基本構成は従来同 とし、発熱抵抗体の耐久性のみを向上させ ような技術が好ましいとも言える。

特開昭54-141314号公報

特開平1-167529号公報

特表2005-507068号公報 工業加熱 Vol.20,No.4

 このように、従来公知のメタルグロープ グは発熱抵抗体の耐久性の向上について十 に検討されてきたとも言える。しかしなが 、上述の特許文献1-3及び非特許文献1に開示 される発熱抵抗体材料をそのまま流用しても グロープラグとしての発熱性能や耐久性につ いては必ずしも十分とは言えない。また信頼 性の面から、メタルグロープラグとしての基 本構成を変更することは好まれないという市 場の動向もある。年々高まる環境保護の観点 から、また利用者の利便性から、例えば2秒 度の短時間で例えば1000℃程度の高温域に達 るという急速昇温も可能であることが望ま ている。

発明の概要

 本発明は、従来同等の基本構成でありな ら、発熱性能・急速昇温性能や信頼性の課 を解消し、発熱抵抗体の耐久性を向上させ ことによって、シースヒータ、またグロー ラグとしての高耐久性を実現することを目 とする。

 本発明によれば、軸線方向に延び、ニッ ル又は鉄を主成分としてなる先端側が閉塞 た筒状の金属製のシースと、シース内に軸 方向に沿って配置され、先端がシースに電 的に接続された発熱コイルと、先端が発熱 イルと電気的に接続するとともにシース内 位置し、後端がシースの後端側へ突出する ード部材と、シース内の発熱コイルの周囲 充填される絶縁粉末と、シースの後端部を 止する封止部材と、を備え、封止部材によ て封止されたシースの内部雰囲気が分圧比 酸素分圧よりも窒素分圧が大きい内部雰囲 であり、発熱コイルは、鉄を主成分とし、 ロムを5重量%以上20重量%以下、アルミニウ を8重量%を超えて15重量%以下含有してなるこ とを特徴とするシースヒータが提供される。

 また、本発明によれば、上記構成のシー ヒータを具備したグロープラグが提供され 。

本発明の実施形態におけるシースヒー を備えたグロープラグの正面図である。 本発明の実施形態におけるグロープラ のシースヒータの取付構造を示す一部破断 面図である。 非特許文献1から抜粋の「Fe-Cr-Al系発熱 におけるAl,Crの寿命特性に与える影響(大気 )」を示すグラフである。 評価試験後のサンプル(比較例)の断面 察図である。 評価試験後のサンプル(実施例)の断面 察図である。 評価試験において各サンプルの断面を 察するために測定対象を樹脂ブロック中に 設した状態を示す模式図である。 本発明の実施形態におけるグロープラ のシースヒータ先端部の部分拡大断面図で る。 シースヒータの発熱コイルとシースを 合する先端側接合部位を示す部分拡大断面 である。 シースヒータの発熱コイルと制御コイ を接合する後端側接合部位を示す部分拡大 面図である。 接合領域における平均Al濃度勾配につ て説明するためのグラフである。 接合領域における平均Al濃度勾配につ て説明するためのグラフである。 接合領域における平均Al濃度勾配につ て説明するためのグラフである。 平均Al濃度勾配の測定方法を説明する めの所定サンプルの断面写真図である。 所定サンプルのAl濃度及びAl変化率を すグラフである。 発熱コイル中のAl及びCrの含有量を示 三角図である。 発熱コイルと制御コイルとの接合部位 の変形例を示す部分拡大断面図である。 発熱コイル及び制御コイルとの接合部 位の変形例を示す部分拡大断面図である。 発熱コイル及び制御コイルとの接合部 位の変形例を示す部分拡大断面図である。 発熱コイル及び制御コイルとの接合部 位の変形例を示す部分拡大断面図である。 シースヒータ先端部の断面図である。 発熱コイルの対象コイル領域の面積を その周長で除算した値x及びAl含有量yの関係 示すグラフである。 より好適な発熱コイルの対象コイル領 域の面積をその周長で除算した値x及びAl含有 量yの関係を示すグラフである。 より好適な発熱コイルの対象コイル領 域の面積をその周長で除算した値x及びAl含有 量yの関係を示すグラフである。 評価試験で用いたサンプルの対象コイ ル領域の面積をその周長で除算した値x及びAl 含有量yの関係を示すグラフである。 発熱コイルとシースとの接合部位の表 層領域を示す部分拡大断面図である。

詳細な説明

 以下、本発明の実施形態を図面を参照し つ説明する。

 図1,2に示すように、グロープラグ1は、筒 状のハウジング2と、ハウジング2に装着され シースヒータ3とを備えている。

 ハウジング2は、軸線C1方向に貫通する軸 4を有するとともに、その外周面には、ディ ーゼルエンジンへの取付用のねじ部5と、ト クレンチ等の工具を係合させるための断面 角形状の工具係合部6とが形成されている。

 シースヒータ3は、シース7と、電力を伝 するためのリード部材としての中軸8と、発 コイル9(発熱抵抗体)と、制御コイル(制御抵 抗体)10とが軸線C1方向に一体化されて構成さ ている。

 シース7は、先端部が閉じたNi又はFeを主 分とする金属製(例えばSUS 310やInconel 600,601 どからなる)の筒状シースであって、ハウジ ング2の先端側から自身の先端部を突出させ 状態で、ハウジング2に固定される。シース7 の内側には、シース7先端に溶融接合された 熱コイル9と、当該発熱コイル9の後端に直列 接続された制御コイル10とがMgOなどの絶縁粉 11とともに封入されている。

 シース7の後端は、中軸8との間でフッ素 ム製の環状ゴム17により封止されている。前 述のように、発熱コイル9は、その先端にお てシース7と導通しているが、発熱コイル9及 び制御コイル10の外周面とシース7の内周面と は、絶縁粉末11の介在により絶縁された状態 なっている。

 発熱コイル9は、Feを主成分とし、Cr,Alを 有するFe-Cr-Al系合金から形成しており、詳細 については後述する。また、制御コイル10は 熱コイル9の材質よりも電気比抵抗の温度係 数が大きい材質、例えばCo(コバルト)-Ni-Fe合 等に代表されるCo又はNiを主成分とする抵抗 熱線により構成されている。これにより、 御コイル10は、自身の発熱及び発熱コイル9 らの発熱を受けることにより電気抵抗値を 大させ、発熱コイル9に対する電力供給量を 制御する。従って、通電初期においては発熱 コイル9には比較的大きな電力供給がなされ 発熱コイル9の温度は急速に上昇する。する 、その発熱により制御コイル10が加熱され 電気抵抗値が増大し、発熱コイル9への電力 給が減少する。これにより、シースヒータ3 の昇温特性は、通電初期に急速昇温した後、 以降は制御コイル10の働きにより電力供給が 制されて温度が飽和する形となる。つまり 制御コイル10の存在により、急速昇温性を めつつ発熱コイル9の温度の過昇(オーバーシ ュート)も生じにくくすることができるよう なっている。

 また、シース7には、スウェージング加工 等によって、その先端側に発熱コイル9等を 容する小径部7aが形成されるとともに、その 後端側において小径部7aより径の大きい大径 7bが形成されている。そして、この大径部7b が、ハウジング2の軸孔4に形成された小径部4 aに対し圧入接合されることにより、シース7 ハウジング2の先端より突出した状態で保持 される。尚、スウェージング加工を経ること によって、発熱コイル9の最先端部分を除い 大部分(シース7の最先端付近はスウェージン グ加工によっては押圧されないため)が断面 円形状に変形させられている(図20参照;但し 図示はあくまでも模式図であり誇張して示 たものである)。

 中軸8は、自身の先端がシース7内に挿入 れ、制御コイル10の後端と電気的に接続され るとともに、ハウジング2の軸孔4に挿通され いる。中軸8の後端はハウジング2の後端か 突出しており、このハウジング2の後端部に いては、ゴム製等のOリング12、樹脂製等の 縁ブッシュ13、絶縁ブッシュ13の脱落を防止 するための押さえリング14、及び、通電用の ーブル接続用のナット15がこの順序で中軸8 嵌め込まれた構造となっている。

 本実施形態におけるシースヒータ3の特徴 1~14について更に詳細に説明する。

 特許文献1に開示される従来の発熱抵抗体材 料であるFe-7.5Al-28Cr材料は、大気下等、十分 酸素が存在する環境下ではその外表面にAl 2 O 3 (アルミナ)を形成し、保護性酸化膜として奏 する。より具体的には、比較的に厚めのAl 2 O 3 が発熱抵抗体(発熱コイル)の外表面に形成さ るが、多量に含有されているCr成分がAl 2 O 3 直下にてごく僅かに酸化する事により合金内 部への酸素の移動を抑制し、表面のみに緻密 なAl 2 O 3 を生成させる。しかしながら、分圧比におい て酸素分圧よりも窒素分圧が大きい雰囲気を なすとともに酸素の絶対量が少ないグロープ ラグのシース内部においては、十分な量の酸 素が存在しないために酸化速度が遅く、発熱 抵抗体の外表面に形成されるAl 2 O 3 膜は薄く形成されうる。このため、Al 2 O 3 膜が薄く形成された状態で酸素が枯渇し、窒 素過剰の雰囲気となる。この局面において、 発熱抵抗体中のCr量が多いと、Al 2 O 3 の薄膜の直下に、保護性については比較的劣 るCr 2 N(窒化クロム)膜を形成しつつ、また発熱抵抗 体内部には粒状のAlNが析出してしまうという 不具合が生じる。

 そこで本実施形態では、特徴1として、シ ース7の内部は、分圧比で酸素分圧よりも窒 分圧が大きい雰囲気とし、発熱コイル9中のC r含有量を5重量%以上20重量%以下、Al含有量を8 重量%を超えて15重量%以下としている。

 シースヒータ3の発熱コイル9中のCr含有量を 20重量%以下という比較的Cr含有量の少なくす ことで、Al 2 O 3 膜の直下ではAlNが僅かしか生成されないよう にすることができる。従来の発熱抵抗体材料 に比してCrに対するAl量が多いため、Al 2 O 3 膜の直下にはAlN膜(層状のものを含む)が形成 れる。このAlN膜は、自身を越えて発熱コイ 9内部への窒素の侵入を阻止する作用を有す るために、発熱コイル9内部における粒状のAl Nは生成されない。これにより発熱コイル9の 期断線を防ぐことが可能となり、耐久性の 上を実現しうるのである。発熱コイル9中の Cr含有量の低下により抵抗値が小さくなりす ると、十分な発熱性能を得ることができな 等の懸念が生じる。また、抵抗値が小さく りすぎると、十分な抵抗値を得るためには 熱コイル9を細くする必要が生じ、耐久性の 低下につながるおそれがある。このため、発 熱コイル9中のCr含有量は5重量%程度を下限と るとよい。

 一方、Al含有量を8重量%を超えて15重量%以下 とすることで、良好なAl 2 O 3 膜を形成し、その直下にAlN膜が形成されるよ うにすることができる。Al含有量が8重量%以 では、良好な皮膜が形成されず、内部に窒 が進行してしまい、早期断線の原因となる それがある。Al含有量が15重量%を超えてしま うと、コイル形状を成すことが極端に困難と なってしまう。また、コイル形状を形成でき たとしてもシース7を縮径するスウェージン 工程において、発熱コイル9が均一に変形し い不具合を生じ、使用時には局所的な発熱 招くおそれがあり、好ましくない。

 また、特徴2として、Cr含有量に対するAl含 量の比率(N Al /N Cr )については、0.65≦N Al /N Cr ≦1.4とすることが望ましい。

 含有比N Al /N Cr が0.65を下回ると、発熱コイル9の外表面に形 される膜の中にCr 2 Nが生成されやすくなってしまう。すると、 熱コイル9の外表面に形成された膜は均一な のとなりにくく、発熱コイル9の内部へ窒化 の進行を有効に防げず、耐久性の面で難が出 ることがある。一方で含有比N Al /N Cr が1.4を超えると、耐久性の面では問題が生じ にくいものの、ヒータ3の急速昇温が困難と ったり、またコイル9の線径を細くしなけれ 初期の抵抗値が得られなかったりして、そ 結果として却って耐久性が低下してしまう いうおそれもある。

 さらに、特徴3として、発熱コイル9が、10 00℃におけるクロムの窒化物生成自由エネル ーよりも1000℃における窒化物生成自由エネ ルギーが小さい元素を少なくとも1種類含有 、その含有量を0.001重量%以上5重量%以下とす ることが望ましい。

 1000℃におけるクロムの窒化物生成自由エ ネルギーよりも小さい元素は、Crより窒化し すい元素であるため、発熱コイル9の表層に おいていわば窒素ゲッターとして機能し、窒 素の発熱コイル9内部への侵入を効果的に抑 することができる。このような窒素ゲッタ として機能し得る元素(以下、窒素ゲッター 素と称する)としては、イットリウム(Y)、セ リウム(Ce)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr) 等の希土類元素や、ニオブ(Nb)、モリブデン(M o)、シリコン(Si)、マンガン(Mn)、バナジウム(V )、ボロン(B)、チタン(Ti)等の元素が挙げられ 。窒素ゲッターの総含有量が0.001重量%以上5 重量%以下であれば、加工性の低下等を防止 きる。

 特徴4として、シース7の内部雰囲気は、 ースヒータ3へ通電を行い、制御コイル10の 置する部位のシース7の表面温度を900℃とし 20時間保持したときに、制御コイル10の外表 面に形成される酸化皮膜またはシース7の内 面に形成される酸化皮膜のうち、いずれか 方の酸化皮膜が5μm以下となるような雰囲気 あることが望ましい。

 上述の特徴1~4により、発熱コイル9自身の 耐久性や急速昇温性を含む性能を向上される が、その根底にある思想は発熱コイル9と窒 が何らかの反応を起こそうとした際の対策 あるとも言える。つまり、発熱コイル9が窒 と反応しにくくなるような構成をも採用す ば、その性能のさらなる向上を実現するこ も可能となる。

 シースヒータ3では、発熱コイル9への窒 の移動(移動)経路として発熱コイル9と接続 れている部材が媒体となっていることが考 られる。そこで特徴5では、「発熱コイル9が 窒素と反応しにくくなるような構成」として 、発熱コイル9は隣接する他部材(シース7、制 御コイル10、中軸8)と互いの金属成分を相互 溶融して混じり合うことによって形成され 接合領域を有し、接合領域中の発熱コイル9 他部材との接合境界における中心及び軸線 含む面を断面としてみたときに、発熱コイ 9と他部材とを仮想的に分断する直線(分断 線)に対して垂直で、分断直線から接合境界 おける中心を通る直線上の、分断直線から5 00μmの範囲内(便宜的に、「所定区間」と称す る)で、他部材側から発熱コイル9側へ向けて さ15μmの区間の平均Al濃度勾配が0.1重量%/μm 上の部位を有するような構成が挙げられる

 接合領域の所定区間において、他部材か 発熱コイル9側へ向けて長さ15μmの区間にお る平均Al濃度勾配が0.1重量%/μm以上の部分が 存在していれば、AlN層を形成するためにAlが 費されてしまったとしても、発熱コイル9側 からAlN層形成領域周辺へとAlを次から次へと 動させる(供給する)ことができる。これに り、さらに窒素が侵入してきたとしても、 該窒素は供給されてきたAlと結びついてAlNが 次々と形成され、最終的には広範囲にわたっ て強固なAlN層を形成することができる。その 結果、発熱コイル9近傍の接合領域から発熱 イル9内部への窒素の侵入を効果的に抑制す ことができ、ひいては発熱コイル9内部にお ける窒化物の生成を防止することができる。

 「平均Al濃度勾配が0.1重量%/μm以上の部分 」とあるのは、例えば、図10のグラフに示す うに、シース7(制御コイル10)側から発熱コ ル9側へと平均してAl濃度が15μmの区間にわた って変化していてもよいし、図11のグラフに すように、シース7(制御コイル10)側から発 コイル9側へと曲線的にAl濃度が変化してい もよい。また、図12のグラフに示すように、 シース7(制御コイル10)側から発熱コイル9側へ と急激にAl濃度が変化していてもよい。いず にせよ、勾配形成区間N1,N2内のいずれかに いて、平均Al濃度勾配が0.1重量%/μm以上の区 が存在していればよいという趣旨である。

 ところで、接合領域に平均Al濃度勾配が0. 1重量%/μm以上の区間を設けるには、必ずしも 発熱コイル9中のAl含有量を単に多くするだけ で実現できるとは限らない。すなわち、平均 Al濃度勾配は、接合領域を形成する際の発熱 イル9とシース7や制御コイル10等の隣接する 他部材との溶接方法や溶接条件によって種々 異なったものとなる。ここで、接合領域にお ける平均Al濃度勾配が0.1重量%/μm以上の区間 設けるための方策としては、例えば、抵抗 接を採用したり、比較的弱い電流で、かつ 比較的短い時間で行うアーク溶接を採用し りすること等、溶融量を比較的少なくする とが挙げられる。但し、溶融量の減少は接 強度の低下を招いてしまうため、十分な接 強度を確保できる程度の溶融量を確保して くことは必要である。

 具体的には、図7,8に示すように、発熱コ ル9の先端と、これに隣接するシース7とが 例えばアーク溶接により、互いの金属成分 相互に溶融して混じり合うことによって接 領域(以下、「先端側接合部位」)21が形成さ 、先端側接合部位21において、先端側勾配 成区間N1におけるシース7(先端側接合部位21) から発熱コイル9側へ向けて所定方向(A)に沿 った長さ15μmの区間の平均Al濃度勾配が0.1重 %/μm以上の部分を設けることができる。ここ で、先端側勾配形成区間N1とは、軸線C1と発 コイル9の先端の中心とを通る断面(すなわち 、本実施形態においては図8の断面に等しい) おける、先端側接合部位21の外形線G1及び発 熱コイル9の外形線G2の境界点である第1境界 K1と第2境界点K2とを結ぶ境界点連結線分R1の 心点X1から、境界点連結線分R1の垂直二等分 線S1に沿って先端側接合部位21側に500μmの長 を有する区間をいう。また、所定方向(A)と 、境界点連結線分R1の垂直二等分線S1が延び 方向をいう。先端側接合部位21を形成する 際しては、発熱コイル9の先端に金属製のチ プ部材を接合した上で、当該チップ部材と ース7とを溶融することで形成することとし てもよい。

 発熱コイル9内部の窒化を防止するという 観点からは、シース7のAl含有量を比較的多く することが考えられる。ところが、Al含有量 増大に伴い、シース7の加工性が低下してし まうおそれがある。このため、良好な加工性 を確保するためには、シース7のAl含有量を比 較的少量(例えば、13重量%以下)とすることが ましい。換言すれば、このようにAl含有量 最小限に抑えられたシース7を用いた上で、 端側接合部位21の所定区間に長さ15μmの区間 の平均Al濃度勾配が0.1重量%/μm以上の部分を けることにより、シース7の加工性が低下す ことなく、発熱コイル9内部の窒化を効果的 に防止することができるといえる。

 また、図9に示すように、発熱コイル9の 端と、制御コイル10とが、例えばアーク溶接 により、互いの金属成分を相互に溶融して混 じり合うことによって接合領域(後端側接合 位)22が形成され、後端側接合部位22において 、後端側勾配形成区間N2における制御コイル1 0(後端側接合部位22)側から発熱コイル9側へ向 けての所定方向(B)に沿った長さ15μmの区間の 均Al濃度勾配が0.1重量%/μm以上の部分を設け ることができる。ここで、後端側勾配形成区 間N2とは、軸線C1と発熱コイル9の後端の中心 を通る断面(すなわち、本実施形態において は図9の断面に等しい)における、発熱コイル9 の外形線G2及び後端側接合部位22の外形線G3の 境界点である後端側第1境界点K3と後端側第2 界点K4とを結ぶ後端側境界点連結線分R2の垂 二等分線たる後端側垂直二等分線S2に沿っ 、後端側境界点連結線分R2の中心点X2から発 コイル9側及び制御コイル10(後端側接合部位 22)側にそれぞれ500μmの長さを有する区間をい う。また、所定方向(B)とは、後端側垂直二等 分線S2が延びる方向をいう。後端側接合部位2 2を形成するに際しては、先端側接合部位21を 形成する場合に用いうるチップ部材と同様に 、発熱コイル9及び制御コイル10間にチップ部 材を介した上で、両コイル9,10及び当該チッ 部材を溶融することで形成してもよい。

 発熱コイル9と制御コイル10とは、図16に すように、抵抗溶接によって接合して、後 側勾配形成区間N3において、制御コイル10側 ら発熱コイル9側へ向けての次述する後端側 垂直二等分線S3が延びる方向に沿った長さ15μ mの区間の平均Al濃度勾配が0.1重量%/μm以上の 分が設けることとしてもよい。尚、後端側 配形成区間N3は、軸線C1と発熱コイル9後端 中心とを通る断面における、後端側接合部 形成前の発熱コイル9の仮想外形線KG1のうち 後端側接合部位形成時に制御コイル10に対 て当接する仮想当接線分KT1と、後端側接合 位形成前の制御コイル10の仮想外形線KG2のう ち、後端側接合部位形成時に発熱コイル9に して当接する仮想当接線分KT2との中間に位 する仮想中間線分Mの垂直二等分線である後 側垂直二等分線S3に沿って、仮想中間線分M 中心点X3から発熱コイル9側及び制御コイル1 0側にそれぞれ500μmの長さを有する区間とな 。図17に示すように、発熱コイル9の仮想当 線分及び制御コイル10の仮想当接線分が重な り合う場合には、重なり合った両仮想当接線 分が仮想中間線分Mとされる。

 図9では、発熱コイル9及び制御コイル10が 離間した状態で両者を接合するように後端側 接合部位22が形成されているが、後端側接合 位22の形態はこれに限定されるものではな 。例えば、図18,19に示すように、後端側接合 部位22の形態を、発熱コイル9及び制御コイル 10が接した状態で両者を接合する形態として よい。尚、図19において、後端側第2境界点K 4と、発熱コイル9及び制御コイル10の接触端 K5との間で発熱コイル9及び制御コイル10が接 しているが、両者は溶着していないものであ る。

 先端側接合部位21及び後端側接合部位22に おいて、平均Al濃度勾配が0.1重量%/μm以上の 間がそれぞれ設けてもよいが、先端側接合 位21及び後端側接合部位22のうちいずれか一 において、平均Al濃度勾配が0.1重量%/μm以上 の区間を設けることとしてもよい。

 発熱コイル9への窒素の別の侵入経路とし て、発熱コイル9と接続された部材を介する となく直接的に発熱コイル9と窒素が反応す も存在する。このような発熱コイル9と窒素 との直接反応を抑制するため、特徴6として 図20に示すように、軸線C1(発熱コイル9の中 軸X1)を含む断面における発熱コイル9の外形 Gで囲まれた複数のコイル領域K(コイル9の断 面)の1つである対象コイル領域TKについて、 象コイル領域TKの面積を対象コイル領域TKの 長で除算した値をxとしたとき、45≦x≦160を 満たすことが望ましい。

 除算値xが「45≦x≦160」と比較的小さい場 合、発熱コイル9の単位表面積当たりの発熱 イル9の体積量が比較的小さいものとなるた 、発熱コイル9の単位表面積当たりに供給可 能なAl量が少ないものとなってしまうおそれ ある。そのため、発熱コイル9表層における Al皮膜の生成・剥離の繰り返しにより、比較 短期間の使用であっても連続的なAl皮膜を 成できないほどにAl量が減少してしまうこと が懸念される。「x>160」である場合には、 象コイル領域TKの面積が十分に大きく、ま 、外形が真円に近いものであるため、Alをさ ほど含有させなくても、必要な耐窒化性を実 現しやすい。しかしながら、「x>160」とす ためには、発熱コイル9の断面積を増大させ る必要があり、これに起因して抵抗値が低下 してしまう。その結果、消費電力の増大を招 いてしまうおそれがあり、好ましくない。一 方で、「x<45」である場合には、発熱コイ の線径が過度に小さいものとなったり、コ ル領域TKの周長が面積に対して過度に大きく 、外形が真円から大きく歪んだものとなった りするため、耐久性の低下を招いてしまうお それがある。また、このような発熱コイル9 、製造自体が困難であるとともに、製造コ トの増大を招いてしまうおそれがあり、実 性に乏しい。すなわち、「45≦x≦160」の発 コイル9は、比較的断面積の大きい発熱コイ や断面真円状の発熱コイル等と比較して、 素が侵入してしまいやすく、ひいては耐久 の低下がより一層懸念されるものである断 形状を呈するときに有効であるといえる。

 上述の通り、対象コイル領域TKについて 発熱コイル9中のAl含有量であるy(重量%)は「8 <y≦15」と比較的多いため、発熱コイル9の 位表面積当たりに供給可能なAl量を増加さ ることができる。従って、Al皮膜の生成・剥 離が繰り返されたとしても、比較的長期間に 亘って連続的なAl皮膜を形成し続けることが きる。その結果、発熱コイル9内部への窒素 の侵入を長期間に亘って抑制することができ 、長寿命化を図ることができる。「45≦x≦160 」であっても「y≦8」であれば、Alが不足し 上述の作用効果が十分に奏されないおそれ ある。一方、「y>15」であれば、加工性の 下を招いてしまうおそれがある。このため Al含有量は肝要である。所定量(「8<y≦15 )のAlを含有した上で、45≦x≦160を満たす対 コイル領域TKが存在することによって、発熱 コイル9内部への窒素の侵入を長期間に亘っ 防ぐことが可能となる。複数のコイル領域K うちのより多くの領域が、対象コイル領域T Kとしての構成を有する程、長寿命を達成し すくなる。例えば、複数のコイル領域Kのう 70%以上の領域を対象コイル領域TKとするこ が例示できる。これにより、耐久性の一層 向上を図ることができるとともに、飛躍的 長寿命化を図ることができる。

 対象コイル領域TKが、複数のコイル領域K うちの70%を占めているか否かについては、 数のコイル領域Kのうち、シース7の先端か 中心軸X1を挟んで一方側に位置する10のコイ 領域K1~K10について値xをそれぞれ測定し、当 該10の領域のうち、少なくとも7の領域におい て値xが「45≦x≦160」を満たすかどうかによ 判定してもよい。尚、値xを測定する領域の は、8つ程度であっても十分に信頼性に足る 。但し、発熱コイル9のうち、シース7と接合 れる部位については、コイル領域Kとしては 扱わない。

 シースヒータ3は、特徴5の条件を満たす とに加えて、特徴6として、y≧(-7/5)x+78を満 すことがさらに望ましい。

 特徴5の「45≦x≦160」且つ「8<y≦15」を たすx,yの領域は、図21において散点模様が された領域である。これに対して、特徴6の y≧(-7/5)x+78」を満たすx,yの領域は、図22にお いて散点模様が付された領域となる。除算値 x及びAl含有量yが図22の領域の範囲内という条 件を満たすことで、より優れた耐久性を発揮 することができる。上述の通り、製造等に際 して発熱コイル9の断面形状が変形してしま たり、発熱コイル9の周長が比較的大きなも となってしまったりすることがある。また 抵抗値を増大させ、十分な発熱性能を実現 るとともに、消費電力を比較的低く抑える いう観点から、発熱コイル9が細径化される ことがある。一方で、発熱コイル9の周長の 大や細径化に伴い、発熱コイル9の単位表面 当たりの体積は減少し、Al不足に陥りやす なる。これに対し、特徴7では、xの値が比較 的小さい場合(xが50未満である場合)において 、さらに多くのAlを含有させることになる 従って、発熱コイル9内部への窒素の侵入を 期間に亘って抑制することができ、長寿命 を図ることができるという作用効果がより 実に奏されることとなる。このように、発 コイル9の細径化を図りつつ、周長が比較的 増大した発熱コイル9に関しても、より優れ 耐久性を実現するという意味において、上 x及びyの関係を上記領域の範囲内とすること がより望ましいとえる。

 特徴6,7の条件を満たす場合、特徴8として 、発熱コイル9は、マンガン(Mn)、ケイ素(Si)、 ホウ素(B)、バナジウム(V)、タンタル(Ta)、チ ン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、 び、セリウム(Ce)等の希土類元素を少なくと 1種類含有するとともに、これらの総含有量 が0.001重量%以上5重量%以下であり、且つy≦(-1 /20)x+20を満たすことが望ましい。

 MnやSi等の元素は、1000℃におけるCrの窒化 物生成自由エネルギーよりも1000℃における 化物生成自由エネルギーが少ない元素、す わち、Crより窒化しやすい元素である。Crが 有されている場合においては、MnやSi等の元 素が窒素ゲッター元素として機能して、Crの 化を防止して、耐久性のより一層の向上を ることができる。

 また、特に、Ti、Zr、Hf、及び、Ce等の希 類元素は、Alよりも窒化しやすい元素である ため、発熱コイル9内部におけるAlNの形成を 果的に抑制することができる。さらに、こ ような元素が含有されることで、発熱コイ 9を形成するAl等の金属組織に格子歪が生じ ため、Al等の金属組織に歪み負荷が発生する 。これにより、Alの移動(拡散)が促進され、Al がより速やかに発熱コイル9表層へと移動す (供給される)こととなる。結果として、Al皮 がより一層確実に形成されるため、発熱コ ル9内部への窒素の侵入を一層確実に抑制す ることができる。

 上記窒素ゲッター元素及び/又は希土類元 素の総含有量が0.001重量%未満の場合には、上 記作用効果が十分に奏されないおそれがある 。一方で、総含有量が5重量%を超える場合に 、加工性が低下してしまうとともに、発熱 イル9内部に比較的大きな窒化物が生成され てしまい、これらを起点として腐食ガスが侵 入してしまうおそれがある。

 併せて、特徴8では、x,yの領域が、図23に ける直線y=(-1/20)x+20よりも下側の領域となる 。MnやSi等の元素を含有することによって耐 性の向上を図ることができるため、除算値x 比較的大きい(x≧100)場合においては、さほ Alを含有させなくとも、発熱コイル9内部へ 窒素の侵入を長期間に亘って抑制すること でき、長寿命化を図ることができる。従っ 、十分な耐久性を維持しつつ、Al含有量の 制を図ることができる。その結果、コスト 減少を図ることができるとともに、加工性 向上を図ることができる。

 上述の通り、発熱コイル9への窒素の侵入 経路として、シース7内部の窒素が発熱コイ 9と直接反応して侵入する直接的な経路と、 部材を通じて発熱コイル9に到る間接的な経 路とがあることは上述の通りである。間接的 な経路を辿る際は、シース7内部が窒素雰囲 であるので、その窒素がシース7自身を経由 るようにも考えられる。しかしながら、窒 の侵入は拡散にも似た現象であり、無制限 長い距離を伝搬してくるわけではない。

 そこで、間接的な窒素侵入経路として、 熱コイル9とシース7との接合部の近傍にお て窒素がシース7を伝って発熱コイル9へ侵入 してくる経路を考えた場合、特徴9として、 25に示すように、発熱コイル9の先端とシー 7との先端側接合部位21のうち、内側表面か 5μm以内の表層領域31であって、少なくとも 熱コイル9の先端外周から先端側接合部位21 内側表面に沿って100μmの範囲内におけるア ミニウムの含有量を3.5重量%以上とすること 望ましい。

 発熱コイル9を構成する成分として十分な量 のAlが含有されていれば、発熱コイル9への直 接的な窒素の侵入は回避できることは上述し た通りである。一方、発熱コイル9の先端部 シース7とが相互に溶融して形成された溶融 1を鑑みると、シース7にはAlが含有されてい ない場合が一般的であるため、溶融部におけ るAlの含有量は比較的少ないものとなってし う。このため、発熱コイル9の先端部近傍で ある溶融部へ侵入した窒素が発熱コイルへ9 進入することが懸念されるのである。窒素 侵入が最も懸念される発熱コイル9の近傍部 、すなわち先端側接合部位21の表層領域31の 所定範囲内におけるアルミニウムの含有量が 3.5重量%以上であれば、発熱コイル9の近傍部 の表層においてAl系被膜(Al 2 O 3 やAlNの被膜)を形成することができ、発熱コ ル9内部への窒素の侵入を効果的に防止する とができる。

 以上のように、発熱コイル9表層からの窒 素の侵入、及び、発熱コイル9近傍の先端側 合部位21からの窒素の侵入を一挙に抑制でき ることから、発熱コイル9内部における窒化 の生成をより確実に防止することができ、 いては耐久性の飛躍的な向上及び長寿命化 図ることができる。

 特徴9を満たす場合、特徴10として、シー 7におけるAl含有量を3.5重量%以上とすること がさらに望ましい。

 Al含有量が3.5重量%以上のシース7を用いる ことで、発熱コイル9とシース7との先端側接 部位21におけるAl含有量を確実に3.5重量%以 とすることができる。従って、先端側接合 位21の表層全域においてAl系被膜を形成する とができるとともに、シース7においてもAl 被膜を形成することができる。その結果、 熱コイル9内部への窒素の侵入をより効果的 に抑制することができ、耐久性の一層の向上 を図ることができる。

 また、特徴9を満たす場合、特徴11として 先端側接合部位21の表層領域31のうち、少な くとも発熱コイル9の先端外周から先端側接 部位21の内側表面に沿って100μmの範囲内には 、1000℃におけるクロム(Cr)の窒化物生成自由 ネルギーよりも1000℃における窒化物生成自 由エネルギーが少ない元素を少なくとも1種 含有する領域が存在していることが望まし 。

 発熱コイル9にはCrが含有されるため、発 コイル9の抵抗値を十分に増大させることが できる。このため、発熱コイル9に過度の細 化を施すことなく、十分な発熱性能を実現 ることができる。また、発熱コイル9の過度 細径化を図る必要がないことから、発熱コ ル9を比較的太いものとすることでき、その 結果、発熱コイル9の耐久性の向上を図るこ ができる。一方で、Crは比較的窒化しやすい 元素であるため、Crの窒化が進行してしまい 発熱コイル9の耐久性が低下してしまうこと が懸念される。また、先端側接合部位21の形 によって、先端側接合部位21中にCrが溶融さ れ得るが、当該Crが窒化してしまうことによ て、発熱コイル9近傍の先端側接合部位21の 層におけるAl系被膜中にCr窒化物が散在して しまい、不連続なAl系被膜が形成されてしま おそれがある。その結果、発熱コイル9内部 への窒素の侵入を十分に抑制できないことが 懸念される。

 これに対して、少なくとも発熱コイル9の 先端外周から先端側接合部位21の内側表面に って100μmの範囲内に、1000℃におけるクロム (Cr)の窒化物生成自由エネルギーよりも1000℃ おける窒化物生成自由エネルギーが少ない 素を少なくとも1種類含有する領域が存在し ていれば、シースヒータ3使用時を想定した 温環境下(1000℃)において、当該元素がいわ る窒素ゲッター元素として機能し、発熱コ ル9内部におけるCrの窒化を防止することが きる。また、Cr窒化物の生成を抑制すること ができるため、発熱コイル9近傍の先端側接 部位21において連続的なAl系被膜を形成する とができる。その結果、窒素の侵入を一層 果的に防止することができ、耐久性のより 層の向上を図ることができる。尚、窒素ゲ ター元素としては、例えば、マンガン、ケ 素、ボロン、バナジウム、タンタル、マグ シウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウ 、及び、セリウム等の希土類元素等を挙げ ことができる。

 別の間接的な窒素侵入経路として、発熱 イル9に接合された制御コイル10を経由する 路を考えた場合、特徴12として、図9に示す うな発熱コイル9と制御コイル10との後端側 合部位22におけるアルミニウムの含有量を3. 5重量%以上とすることが望ましい。

 発熱コイル9に十分なAlが含有されていれ 、発熱コイル9表層にAl系被膜を形成するこ ができ、発熱コイル9表層からの窒素の侵入 を防止することができる。さらに、後端側接 合部位21におけるAl含有量が3.5重量%以上であ ば、後端側接合部位21の表層においてAl系被 膜を形成することができる。これにより、後 端側接合部位21から発熱コイル9内部への窒素 の侵入を効果的に抑制することができ、耐久 性の一層の向上を図ることができる。

 特徴12を満たす場合、特徴13として、後端 側接合部位22には、1000℃におけるCrの窒化物 成自由エネルギーよりも1000℃における窒化 物生成自由エネルギーが少ない元素を少なく とも1種類含有する領域が存在していること 望ましい。

 上述の通り、発熱コイル9にはCrが含有さ るため、発熱コイル9の抵抗値を十分に増大 させることができる。このため、発熱コイル 9に過度の細径化を施すことなく、十分な発 性能を実現することができる。また、発熱 イル9の過度の細径化を図る必要がないこと ら、発熱コイル9を比較的太いものとするこ とでき、その結果、発熱コイル9の耐久性の 上を図ることができる。一方で、Crは比較的 窒化しやすい元素であるため、Crの窒化が進 してしまい、発熱コイル9の耐久性が低下し てしまうことが懸念される。また、後端側接 合部位22の形成によって、後端側接合部位22 にCrが溶融され得るが、当該Crが窒化してし うことによって、後端側接合部位22の表層 おけるAl系被膜にCr窒化物が散在してしまい Al系被膜が不連続なものとなってしまうお れがある。

 これに対して、後端側接合部位22に1000℃ おけるCrの窒化物生成自由エネルギーより 1000℃における窒化物生成自由エネルギーが ない元素を少なくとも1種類含有する領域が 存在していれば、シースヒータ使用時を想定 した高温環境下(1000℃)において、当該元素が いわゆる窒素ゲッター元素として機能し、発 熱コイル9内部におけるCrの窒化を防止するこ とができる。また、後端側接合部位22におい 連続的なAl系被膜を形成することができる め、窒素の侵入を一層効果的に防止するこ ができる。

 さらに、特徴9を満たす場合、特徴14とし 、先端側接合部位21の表層領域の所定範囲 におけるAl含有量が3.5重量%以上とするのに して、発熱コイル9はCrを含有するとともに ジルコニウム(Zr)を0.005重量%以上2重量%以下 或いは、チタン(Ti)を0.005重量%以上5重量%以 含有することが望ましい。

 発熱コイル9が、窒素ゲッター元素として 機能するZr又はTiを所定量含有することによ 、Crの窒化をより確実に抑制することができ る。Zr或いはTiの含有量が0.005重量%未満であ 場合には、Crの窒化を十分に抑制できないお それがある。一方で、Zrの含有量が2重量%を える場合、或いは、Tiの含有量が5重量%を超 る場合には、発熱コイル9の加工が困難とな ってしまうおそれがある。

 上記構成のグロープラグ1は、下記の方法 により製造することができる。尚、特に明記 しない部位については、従来公知の方法によ り製造している。

 まず、Crが5重量%以上20重量%以下、Alが8重 量%を超えて15重量%以下含有されているFe-Al系 合金の抵抗発熱線をコイル形状に加工し、発 熱コイル9を得る。

 次いで、発熱コイル9の後端部分と、Co-Ni- Fe系合金等の抵抗発熱線をコイル形状に加工 た制御コイル10の先端部分とを接合する。 合に際しては、例えば、アーク溶接によっ 両コイル9,10を構成する合金成分が溶融され 後端側接合部位22を形成することにより、 コイル9,10が接合される。このとき、十分な 合強度を確保しつつ、後端側接合部位22に ける平均Al濃度勾配が0.1重量%/μm以上の区間 形成すべく、所定の溶接条件(例えば、30Aで 100ms間アークを飛ばして溶接する等)でアーク 溶接が行われる。

 次いで、最終寸法より加工代分だけ大径 形成され、かつ、先端の閉じていない筒状 シース7内に、中軸8の先端と、当該中軸8と 体となった発熱コイル9及び制御コイル10と 配置される。そして、例えば、アーク溶接 よって、シース7の先端部分を閉塞させると ともに、当該シース7の先端部分と発熱コイ 9の先端部分とを接合すべく、シース7を構成 する金属及び発熱コイル9を構成する金属を 互に溶融させて、先端側接合部位21が形成さ れる。このとき、十分な接合強度を確保しつ つ、先端側接合部位21における平均Al濃度勾 が0.1重量%/μm以上の区間を形成すべく、所定 の溶接条件(例えば、90Aで300ms間アークを飛ば した後、40Aで50ms間アークを飛ばして溶接す こと等)でアーク溶接が行われる。

 その後、シース7内に絶縁粉末11を充填し 後、当該シース7にスウェージング加工を施 す。これにより、大径部7bを有するシース7が 形成されるとともに、当該シース7が中軸8と 体となってシースヒータ3が完成する。

 そして、上記のように形成されたシース ータ3がハウジング2の軸孔4に圧入固定され とともに、ハウジング2の後端部分において 、Oリング12や絶縁ブッシュ13等が中軸8に嵌め 込まれることで、グロープラグ1が完成する

 以下、実施例により本発明をさらに具体的 説明するが、本発明はこれらの実施例に限 されるものではない。
(評価試験1)

 9種の発熱コイル(実施例:サンプルNo.1,3~5,7,8 比較例:サンプルNo.2,6,9)を次のように作製し た。まず、原料を秤量・混合し、溶解合金を 作製する。次いで、熱間加工にてφ30mmの円柱 状の鋳塊とし、線引き加工にてφ0.3mmの素線 作製した。作製した素線を従来公知の手法 よりコイリングし、コイル形状とした。サ プルNo.1~9の組成を表1に示す。サンプルNo.1~9 ついてはCrを段階的に変化させて含有させ それぞれAlの配合量を変化させた。表1に示 各組成の割合は重量%であり、各組成の合計 100重量%となる。また、その組成は作製した サンプルについてEPMAを用いて分析を行った( 件 ビーム径:10μm、電圧:20kV、電流:2.5×10 -8 A)。

 各サンプルにつき熱耐久試験を行った。試 では、グロープラグにおける使用を模擬す ため、ガス置換可能な電気炉に各サンプル 載置し、1200℃を5時間保持した。電気炉内 の雰囲気は初期酸素分圧を0.2×10 5 Paとし、3分後、1.0×10 -13 Paとしている。また、試験は、酸素分圧調整 ためのCO(一酸化炭素),H 2 (水素)等の還元性ガスを含んだ、窒素ガスを いて行った。

 本耐久試験における環境温度を1200℃とし た点については、次の通りである。高い耐久 性が求められるディーゼルエンジンでは使用 時においてシースの表面温度が900℃~1000℃と った高温状態となる。グロープラグでは、 熱コイルが位置するシースの表面温度と制 コイルが位置するシースの表面温度との間 最大で100℃程度の温度差が生じる。また、 れらの表面温度と、内部に収容される発熱 イル及び制御コイルとの間にもまた100℃以 の温度差が生じる。これら及び温度誤差を 味すると、高温時における発熱コイルの耐 性を評価するには、1200℃としておけば十分 に使用状態を想定した試験を行うことができ るのである。

 試験後の各サンプルについて観察した。 察に際して、図6に示すように、各サンプル を樹脂ブロックP1中に埋設し、サンプルの長 方向C2に沿って樹脂ブロックP1及びサンプル を切断し研磨を施した(勿論、切断すること く研磨だけを行うこととしてもよい)。研磨 際して、先ずはSiC耐水研磨紙(#1500)で粗研磨 を施し、その後ダイヤモンドペースト1μmで 面化仕上げを行った。例えば、サンプルがφ 0.3mmである場合には、当該サンプルの0.1~0.15mm 位内部までに研磨を抑えることが望ましい。 鏡面化されたサンプルにつき、アセトンなど の有機溶剤により脱脂洗浄を行い、金属顕微 鏡又はSEMなどにより組織観察を行い、サンプ ルの表層で変質した部位の厚さを測定した。 観察した画像の代表例としてサンプル2及び4 図4,図5に示す。また、酸化皮膜の性状の分 については、各サンプルに対して、EPMA(X線 イクロアナライザ)を用いた元素マッピング を行い、生成物を特定した。この分析の結果 につき、皮膜がAlを主体とする酸化物もしく 窒化物であったものについては「表層生成 」の欄に「Al」、Al,Crの混合した酸化物もし くは窒化物であったものについては「Al,Cr」 示す。皮膜を含む表層部位の厚さ及びその 層部位の性状についての測定・分析結果を 1に示す。

 サンプルNo.1~9については、変質した表層部 はAlのみもしくはAlとCrが混合した酸化膜及 窒化膜であった。Alの含有量が8重量%以下の サンプルNo.2については、表層のAl 2 O 3 膜の直下に保護性に劣るCr 2 Nが層状に形成されてしまい、内部へ窒素が 入してしまった。また、Crの含有量が20重量% を超えたサンプルNo.9については、表層にAl 2 O 3 、AlN及びCr 2 Nが混合した皮膜が形成されており、このた に良好な皮膜として形成されず、内部窒化 生じてしまっていた。これは、Al 2 O 3 皮膜とは異なりCr 2 N皮膜は窒素ガスの透過性が高く、内部への 素の侵入を有効に防ぐことができなかった めであると考えられる。また、Cr 2 N皮膜が形成されてしまうが故に緻密なAl 2 O 3 皮膜が連続的に形成されず、Cr 2 N皮膜とAl 2 O 3 皮膜とが断片的に隣り合った皮膜となってし まったためとも推察する。

 以上の結果から、グロープラグのシース内 ように分圧比において酸素分圧よりも窒素 圧の方が高い雰囲気であって、酸素分圧が 々に低くなる(発熱コイルの酸化により、シ ース内の酸素が消耗される)環境下において 、発熱コイルを、Crを5重量%以上20重量%以下 Alを8重量%超15重量%以下という組成とするこ とで、粒状AlNの生成及びCr 2 Nの生成を抑制して、発熱コイルの耐久性を 上させ、シースヒータひいてはグロープラ としての高耐久性を実現することが可能で ることが確認された。
(評価試験2)

 評価試験1と同様に、10種の発熱コイル(実 施例:サンプルNo.5,7,10~14、比較例:サンプルNo.2 ,9)を作製した。各サンプルの組成を表2に示 。評価試験2のサンプルNo.2,5,7,9は評価試験1 用いたサンプルNo.2,5,7,9と同じであるが、サ プルNo.10~14については評価試験2のために新 に作製したものである。

 各サンプルにつき通電耐久試験を行い、耐 線性を測定した。通電耐久試験では、通電 ターンを"直流11V6秒-直流14V180秒"を1サイク とし、耐断線性の指標としてサンプルが断 した時のサイクル数を500サイクル刻みで取 した。試験結果を表2に示す。

 Crの含有量を5重量%以上20重量%以下とし、Al 含有量を8重量%を超えて15重量%以下とした ンプルNo.5,7,10~14についてはいずれも6000サイ ルを超え、優れた耐久性を有していたこと 確認された。このうち、Crの含有量に対す Alの含有量比率N Al /N Cr が0.65を下回ってしまったサンプルNo.7は、耐 性は6000サイクル以上であったものの、外表 面に形成される膜中にCr 2 Nが生成されやすく、上記評価試験1において Al 2 O 3 とCr 2 Nとが混合した酸化膜及び窒化膜が形成され しまったように、N Al /N Cr が0.65以上となる他のサンプル(例えばサンプ No.5等)に比較すると耐久性の面で難がある 向があった。一方、N Al /N Cr が1.40を超えてしまったサンプルNo.10もまた、 耐久性は6000サイクル以上であったが、比較 にCrが少ないことから抵抗値が低くなりがち であり、速熱性を得ることが困難であったり 、コイル線径を細くしたりしなければならず 、これらの影響を受けて耐久性がサンプルNo. 5等に比較して低いものとなってしまった。

 以上の結果から、Crは適度に含有されてい 方がグロープラグとしての速熱性を実現し すく、5重量%以上含有されていることが好ま しいと言える。また、含有比N Al /N Cr が0.65以上1.40以下であると、より一層優れた 久性を得ることができることが確認された
(評価試験3)

 評価試験1のサンプルNo.5(実施例)とサンプ ルNo.2(比較例)と同様の2種の発熱コイル(サン ルNo.2,5)を作製した。別途作成した制御コイ ルを用いて、5本のシースヒータを作製した サンプルNo.2の発熱コイルを使用したシース ータをサンプルNo.2-1,2-2、サンプルNo.5の発 コイルを使用したシースヒータをサンプルNo .5-1,5-2、及びサンプルNo.5の発熱コイルを使用 し、制御コイルを有さないシースヒータをサ ンプルNo.5-3とした。尚、制御コイルはCo-25wt%N i-4wt%Fe製のもの、シースはInconel 601製のもの 使用した。

 各シースヒータにつき評価試験1と同様の装 置を用いて熱耐久試験を行った。これら5本 シースヒータは試験を行うために、シース ータとして完成させた後、シース後端の封 部材を含む部位を切削により取り除き、シ スの内部と外部とが気密の状態にないもの した。試験では、各サンプルを1200℃で20時 保持した。サンプルNo.2-1及び5-1の2本につい は大気雰囲気に等しく、酸素分圧を0.2×10 5 Paとした。一方サンプルNo.2-2,5-2及び5-3の3本 ついては、グロープラグとして使用するシ ス内部の雰囲気を想定して酸素分圧を1.0×10 -13 Paとした。

 20時間電気炉にて保持した後、各サンプル 分解・切削等を行い、発熱コイル、制御コ ル及びシースの断面観察をする。断面観察 際は評価試験1と同様に観察する各部材を樹 ブロックに埋設させて観察している(図6参 )。この観察結果を表3に示す。

 サンプルNo.2-1と5-1は大気雰囲気、すなわ 酸素が十分に存在し、窒素過剰な雰囲気と らない環境における発熱コイルの組成の違 による窒化の度合いを比較するものである これによると、比較例のサンプルNo.2-1であ ても本発明の実施例のサンプルNo.5-1であっ も、発熱コイルの窒化度合いは0%と進行し おらず、両者の間に格別な差異はなく、い れも優れた耐久性を有するものと判断でき 。このときの制御コイルの酸化皮膜の厚み びシース内周面の酸化皮膜の厚みは、サン ルNo.2-1では113μm、17μmであり、サンプルNo.5-1 では117μm、19μmであった。

 一方、酸素が十分に存在せず、窒素過剰な 囲気であるシースの内部を想定したサンプ No.2-2,5-2,5-3を比較すると、比較例であるサ プルNo.2-2では発熱コイルの窒化度合いが82% 進行するものの、本発明の実施例であるサ プルNo.5-2及び5-3については窒化度合いが0%と 進行しておらず、優れた耐久性を有するもの と判断できる。従って、発熱コイル9は、酸 分圧よりも窒素分圧が大きい内部雰囲気を つシース内において優れた耐久性を実現す ものであることが検証された。このときの 御コイルの酸化皮膜の厚みは、サンプルNo.2- 2では0.7μm、サンプルNo.5-2では0.8μmであり、 ース内周面の酸化皮膜の厚みはいずれも1μm あり、すべてが5μm以下であった。
(評価実験4)

 主成分をFeとする発熱コイルのAl、Cr、及 、ZrやTi等の窒素ゲッター元素の各含有量と 、先端側接合部位における平均Al濃度勾配、 は、後端側接合部位における平均Al濃度勾 とを種々変更したグロープラグのサンプルNo .1~28を作製した。ここで、発熱コイルの先端 接合部位はアーク溶接又は抵抗溶接によっ 形成し、発熱コイルの後端側接合部位は各 ンプルともに同一の溶接方法及び同一の溶 条件により形成することとした。また、発 コイルが所定の抵抗値を有するように必要 応じて発熱コイルの細径化処理を行うこと した。各サンプルの発熱コイル中のAlやCr等 の含有量、先端側接合部位における平均Al濃 勾配、及び、溶接方法・条件を表5に示す。 さらに、特にAl及びCrの含有量に着目した際 、各サンプルにおける発熱コイルの組成比 布を図15の三角図に示す。ここで、図15の三 図の左斜辺はCrの含有量(重量%)を示し、右 辺はAlの含有量(重量%)を示すものである。

 尚、表5中の「平均Al濃度勾配」について( 参考)と記したのは、耐久性評価試験を行っ 各サンプルとは別に、各サンプルと同様の 成を有するとともに、同一の溶接方法及び 接条件によって作製されたサンプル(すなわ 、厳密には各サンプルとは異なるもの)につ いて、勾配形成区間を分析して得られた平均 Al濃度勾配を示しているためである。従って 表中の「平均Al濃度勾配」は、各サンプル 実際に有する「平均Al濃度勾配」とは厳密に は等しいといえない可能性があるが、実際の 値に非常に近い値を示すものである。

 平均Al濃度勾配の測定は次のように行った まず、図13に示すように、シースの軸線及び 発熱コイル先端の中心を通るようにサンプル を切断した後、切断面を観察し、先端側接合 部位21の外形線G1と発熱コイルの外形線G2とを 特定した(図13の左側部位が先端側接合部位21 あり、右側部位が発熱コイル9である)。そ て、両外形線G1,G2の境界点K1,K2(K2は図示せず) 同士を結ぶ線分(境界点連結線分)R1の垂直二 分線S1に沿ってシース側(図の左側)に500μmの 間を勾配形成区間N1とし、当該勾配形成区 に対して任意の間隔でEPMAを用い、Al濃度の 化が比較的大きい区間(詳細測定対象区間)を 特定した(すなわち、Al濃度の変化量が比較的 大きな区間についてあたりをつけた)。次い 、EPMAを用い、当該詳細測定対象区間に対し ビーム径3μmのビーム(電圧値20kV、電流値2.5 10 -8 A)をビームスポットが重複しないように(詳細 測定対象区間に対して3μm毎に)照射し、表4及 び図14に示すように、詳細測定対象区間の始 D1から詳細測定対象区間の終点D35までの各 のAl濃度を測定した。さらに、5点間のAl濃度 変化量を15μmで除算することで、15μmの長さ 有する複数の区間(Dn~Dn+4)について1μm当たり Al濃度変化量(すなわち、Al変化率)を算出し 。尚、図14において、Al濃度を黒四角点でプ ロットし、Al変化率を黒三角点でプロットし いる。そして、各区間のAl変化率のうち、 の最大値をサンプルの平均Al濃度勾配とした 。すなわち、当該サンプルの平均Al濃度勾配 、各Al変化率のうちの最大値である0.259重量 %/μmであった。尚、当該サンプルにおいて、A l濃度の変化が隣接点と比較してほとんどな なった部分(D28近傍;図14中の境界線)が、発熱 コイル及び先端側接合部位の境界(図13中の境 界線)であった。

 各サンプルについて耐久性評価試験を行っ 。耐久性評価試験では、11Vで6秒間通電した 後、14Vで180秒間通電することを1サイクルと て、発熱コイルが断線するまでのサイクル (断線サイクル数)を測定した。ここで、断線 サイクル数が6000サイクル以上のサンプルに いては、耐久性に優れるとして「B」の評価 下すこととし、断線サイクル数が7000サイク ル以上のサンプルについては、耐久性に非常 に優れるとして「A」の評価を下すこととし 。一方で、断線サイクル数が6000サイクル未 のサンプルについては、耐久性が良好では いとして「C」の評価を下すこととした。尚 、Alが15重量%を超えて含有される場合、及び 窒素ゲッター元素の総含有量が5重量%を超 て含有される場合には、発熱コイルを所定 に細径化することが困難であったため、評 試験を行わなかった。試験結果を表5に示す

 表5に示すように、Alの含有量が8重量%以 のサンプルNo.1~4は、平均Al濃度勾配が0.1重量 %/μm以上であっても、断線サイクル数が6000サ イクル未満となってしまい、耐久性が不十分 となってしまうことがわかった。これは、先 端側接合部位におけるAlN層の形成に伴ってAl 不足してしまったため、強固なAlN層が形成 れるまでには至らなかったことに起因する 考えられる。また、Alの含有量が8重量%を超 えていても、平均Al濃度勾配が0.1重量%/μm未 のサンプルNo.5については、耐久性が良好で なかった。これは、Alの移動(供給)速度が比 較的遅いことから、先端側接合部位における AlN層の形成が不十分となってしまったことに よると考えられる。

 これに対して、Alの含有量が8重量%を超え て15重量%以下であり、かつ、平均Al濃度勾配 0.1重量%/μm以上のサンプルNo.6~28については 断線サイクル数が6000サイクル以上となり、 優れた耐久性を有することが認められた。こ れは、Alが含有されることで発熱コイル表層 AlN等の被膜が形成されたこと、及び、発熱 イルにAlが8重量%を超えて15重量%以下含有さ れるとともに、平均Al濃度勾配が0.1重量%/μm 上とされたことで、Alが不足することなく、 侵入してきた窒素と供給されてきたAlとでAlN 次々と形成され、広範囲にわたる強固なAlN が形成されたことにより、発熱コイル近傍 先端側接合部位から発熱コイル内部への窒 の侵入がより確実に抑制されたことに起因 ると考えられる。尚、この場合において、A l含有量を15重量%を限度としてより大きくす こと、或いは、平均Al濃度勾配をより大きく することによって、耐久性のより一層の向上 を図ることができるといえる。

 さらに、Alの含有量が8重量%を超えて15重 %以下であり、かつ、Crの含有量が5重量%以 20重量%以下である、すなわち、図15中の太線 で囲まれた領域内の組成比で形成され、さら に、平均Al濃度勾配が0.1重量%/μm以上のサン ルNo.7~28については、非常に優れた耐久性を することが明らかとなった。これは、Crが 有されたことで発熱コイルを比較的太くす ことができたため、耐久性のより一層の向 を図ることができたことによると考えられ 。また、この場合において、Cr含有量が15重 %以下のサンプルNo.10~28については、断線サ クル数が8000サイクル以上となり、耐久性の より一層の向上が認められた。

 併せて、Hf、Zr、Ti、Si、Mn等の窒素ゲッター 元素が0.001重量%以上5重量%以下含有されたサ プルNo.22~28については、AlやCrの含有量及び 均Al濃度勾配が等しいサンプルNo.15と比較し て耐久性のより一層の向上が認められた。こ れは、当該元素によって、Crの窒化が抑制さ たこと、及び、発熱コイルの金属組織に金 歪みを生じさせたことによって、Alがより やかに移動することとなり、ひいてはAlN層 より一層確実に形成されたことに起因する 考えられる。
(評価試験5)

 評価試験4と同様に、発熱コイルのAlやCr の含有量、及び、後端側接合部位における 均Al濃度勾配を種々変更したグロープラグの サンプルNo.41~60を作製した。尚、この場合に いて、後端側接合部位は、アーク溶接又は 抗溶接によって形成するとともに、先端側 合部位は、各サンプルともに同一の溶接方 及び同一の溶接条件によって形成すること した。各サンプルの発熱コイル中のAlやCrの 含有量、後端側接合部位における平均Al濃度 配、及び、溶接方法・条件を表6に示す。平 均Al濃度勾配は、基本的には上述した測定方 と同様の測定方法によって測定した。但し シースの軸線及び発熱コイル後端の中心を るようにして切断したサンプルの切断面に ける、発熱コイルの外形線及び後端側接合 位の外形線の境界点である後端側第1境界点 と後端側第2境界点とを結ぶ後端側境界点連 線分の垂直二等分線たる後端側垂直二等分 に沿って、後端側境界点連結線分の中心点 ら発熱コイル側及び制御コイル側にそれぞ 500μmの長さを有する区間を、勾配形成区間 した。

 各サンプルにつき、評価試験4と同様に、耐 久性評価試験を行った。試験結果を表6に示 。

 表6に示すように、Alの含有量が8重量%以 のサンプルNo.41,42、及び、平均Al濃度勾配が0 .1重量%/μm未満のサンプルNo.43については、耐 久性が不十分であることがわかった。それぞ れ上述した理由と同様の理由によるものであ ると考えられる。

 これに対して、Alを8重量%を超えて15重量% 以下含有するとともに、平均Al濃度勾配が0.1 量%/μm以上であるサンプルNo.44~60については 、耐久性に優れていることが明らかとなった 。これは、後端側接合部位において広範囲に わたる強固なAlN層が形成されたため、後端側 接合部位から発熱コイル内部への窒素の侵入 がより確実に抑制されたこと等に起因すると 考えられる。

 また、Alを8重量%を超えて15重量%以下含有 するとともに、平均Al濃度勾配が0.1重量%/μm 上であり、かつ、Crが5重量%以上20重量%以下 有されたサンプルNo.45~60については、非常 優れた耐久性を有することが明らかとなっ 。これは、Crが添加されたことによって、発 熱コイルを比較的太くできたことに起因する と考えられる。また、この場合において、Cr 有量が15重量%以下のサンプルNo.47~60につい は、断線サイクル数が8000サイクル以上とな 、耐久性のより一層の向上が認められた。 だし、Crが20重量%を越えてしまったサンプ No.44については、Alが同量でCrが20重量%以下 あるサンプルNo.45に比して僅かながら断線サ イクル数が短くなるという結果であった。

 また、HfやZr等の窒素ゲッター元素が0.001 量%以上5重量%以下含有されたサンプルNo.56~6 0については、AlやCrの含有量及び平均Al濃度 配が等しいサンプルNo.48と比較して耐久性が より一層向上することが認められた。

 以上より、発熱コイルにAlが8重量%を超えて 15重量%以下含有されるとともに、接合領域に おける平均Al濃度勾配が0.1重量%/μm以上の区 が設けられることで、発熱コイル内部の窒 を効果的に抑制でき、ひいては耐久性の向 を十分に図ることができるといえる。さら 、Crが5重量%以上20重量%以下含有されること 、断線サイクル数が7000サイクル以上となり 、非常に優れた耐久性を実現することができ るといえる。また、この場合において、Cr含 量が15重量%以下とされることで、耐久性を り効果的に向上させることができるといえ 。加えて、HfやZr等の窒素ゲッター元素が0.0 01重量%以上5重量%以下含有されることで、耐 性のより一層の向上を図ることができると える。
(評価試験6)

 発熱コイルの接合部位における溶接方法及 溶接条件と平均Al濃度勾配との関係を下記 通り検証した。
(試験6-1)

 溶接方法(アーク溶接或いは抵抗溶接)及 溶接条件(電流値及び放電時間)を種々変更し て発熱コイルとシースを接合することにより サンプルNo.1~18を作製した。ここで、発熱コ ルは、Feを主成分とするとともに、Crを9.4重 %含有し、さらに、Alを8重量%を超えて15重量 %以下と比較的多く含有して構成されるもの 用いた。また、シースはFe-25Cr-20Ni(SUS 310s)若 しくはNi-23Cr-14.4Fe-1.4Al〔Inconel 601(登録商標) によって構成されるものを使用した。尚、 ーク溶接では、90Aで300msの間アークを飛ばし た後、40Aで50msの間アークを飛ばすことで溶 することとした。また、抵抗溶接では、1.7kA の電流を15msの間通電することで溶接するこ とした。抵抗溶接を行う際には、発熱コイ 先端部をSUS 310s製の円柱状のチップ部材に 抗溶接した後、当該発熱コイルの溶接され チップ部材とシースとをアーク溶接により 合することとした。

 各サンプルについて、発熱コイルとシー との接合領域における平均Al濃度勾配を測 した。平均Al濃度勾配を測定するに際しては 、EPMAを用い、ビーム径3μmのビームを勾配形 区間に対して3μmごとに照射し、各部位のAl 度を測定した。そして、15μmの長さを有す 複数の区間について平均Al濃度勾配をそれぞ れ算出し、それらの中の最大値を各サンプル の平均Al濃度勾配とした。

 溶接方法をアーク溶接或いは抵抗溶接とし 場合の平均Al濃度勾配を表7に示す。

 表7に示すように、アーク溶接によって溶 接されたサンプルNo.1~6、及び、抵抗溶接によ って溶接されたサンプルNo.7~12ともに平均Al濃 度勾配が0.1重量%/μm以上の区間を形成するこ ができたが、抵抗溶接によって溶接された ンプルNo.7~12は、アーク溶接によって溶接さ れたサンプルNo.1~6と比較して平均Al濃度勾配 より大きくできることがわかった。これは アーク溶接によって形成された先端側接合 位の溶融量と比較して、抵抗溶接によって 成された先端側接合部位の溶融量が少なく ったため、より急峻なAl濃度勾配が形成さ たためであると考えられる。

 アーク溶接において溶接条件(電流値及び放 電時間)を種々変更した場合の平均Al濃度勾配 を表8に示す。

 表8に示すように、110Aで350msの間アークを 飛ばした後、80Aで80msの間アークを飛ばして 接されたサンプルNo.13,14,15は、90Aで300msの間 ークを飛ばした後、40Aで50msの間アークを飛 ばして溶接されたサンプルNo.1,2,3と発熱コイ 等の組成が同一であるにも関わらず、平均A l濃度勾配が0.1重量%/μm未満となってしまうこ とがわかった。これは、先端側接合部位の溶 融量が多くなり過ぎた結果、Al濃度勾配がよ 緩やかなものとなってしまったことによる 考えられる。

 一方、70Aで200msの間アークを飛ばした後、55 Aで150msの間アークを飛ばし、次いで、30Aで50m sの間アークを飛ばして溶接されたサンプルNo .16,17,18については、平均Al濃度勾配をより一 大きくすることができた。これは、比較的 いアークを3回飛ばして溶接することで溶融 量をより少なくすることができたことに起因 すると考えられる。
(試験6-2)

 溶接方法(アーク溶接或いは抵抗溶接)及 溶接条件(電流値及び放電時間)を種々変更し て発熱コイルと制御コイルを接合することに よりサンプルNo.1~9を作製した。ここで、発熱 コイルは上記同様のものを用いた。制御コイ ルはコバルト(Co)を主成分とするとともに、Ni 及びFeを含有して構成されるものを用いた。 た、アーク溶接では、30Aで100msの間アーク 飛ばして溶接することとし、一方で、抵抗 接では、1.5kAで10ms間通電することで溶接す こととした。

 各サンプルについて、発熱コイルと制御 イルとの接合領域における平均Al濃度勾配 上記同様に測定した。

 溶接方法をアーク溶接或いは抵抗溶接とし 場合の平均Al濃度勾配を表9に示す。

 表9に示すように、アーク溶接によって溶 接されたサンプルNo.1,2,3,4、及び、抵抗溶接 よって溶接されたサンプルNo.5,6,7,8ともに平 Al濃度勾配が0.1重量%/μm以上の区間を形成す ることができたが、抵抗溶接によって溶接さ れたサンプルNo.5,6,7,8は、アーク溶接によっ 溶接されたサンプルNo.1,2,3,4と比較して平均A l濃度勾配をより大きくできることがわかっ 。これは、アーク溶接によって形成された 端側接合部位の溶融量と比較して、抵抗溶 によって形成された後端側接合部位の溶融 が比較的少なくなったためであると考えら る。

 アーク溶接において溶接条件(電流値、放電 時間)を種々変更した場合の平均Al濃度勾配を 表10に示す。

 表10に示すように、50Aで200msの間アークを 飛ばして溶接されたサンプルNo.9は、30Aで100ms の間アークを飛ばして溶接されたサンプルNo. 1と発熱コイル等の材質が同一であるにも関 らず、平均Al濃度勾配が0.1重量%/μm未満とな てしまうことがわかった。これは、後端側 合部位の溶融量が多くなり過ぎた結果、Al 度勾配がより緩やかなものとなってしまっ ことによると考えられる。

 以上より、発熱コイルの接合領域に平均Al 度勾配が0.1重量%/μm以上の区間を設けること は、発熱コイル中のAl含有量を単に多くする けで実現できるとは限らず、溶接方法及び 件を適宜変更することが必要であると言え 。
(評価試験7)

 発熱コイルのAl含有量yと、Cr、及び、Siや Ti等の窒素ゲッター元素の各含有量と、対象 イル領域TKの面積をその周長で除算した値 あるxとを種々変更したグロープラグのサン ルNo.1~30を作製した。これらのサンプルは、 それぞれスウェージングの程度や絶縁粉末の 充填密度を適宜変更するなどして比較できる ように作製した。各サンプルのCr,Al等の含有 及び除算値xを表11に示す。

 尚、各サンプルにおける対象コイル領域T Kの周長及び面積は次のようにして測定した すなわち、まず、前述の図6同様に、各サン ルのシース7を樹脂ピースP1内に埋設し、シ ス7の長手方向に沿って切断した。より詳し くは、シース7内の発熱コイルの中心軸を含 べく、シース7の中心軸C2に沿ってシース7(発 熱コイル)を切断し、切断面を撮像した。そ て、対象コイル領域TKの周長を求めるにあた っては、前記撮像データをコンピュータで分 析することで、対象コイル領域TKについて輪 をトレースし、当該輪郭のピクセル数を測 した。その後、当該ピクセル数と、予め算 した1ピクセル当たりの実際の長さとを乗算 することで対象コイル領域TKの周長を算出し 。また、対象コイル領域TKの面積を求める あたっては、前記撮像データをコンピュー で二階調化することで、対象コイル領域TKを 抽出し、対象コイル領域TKの占めるピクセル を測定した。そして、当該測定されたピク ル数と、予め算出した1ピクセル当たりの実 際の面積とを乗算することで対象コイル領域 TKの面積を算出した。

 各サンプルの発熱コイルのAl含有量は、EPMA 用い、発熱コイルの所定部位に対して、ビ ム(電圧値20kV、電流値2.5×10 -8 A)を照射することによって計測した。加えて 各サンプルの添加元素の含有量は、ICP分析 よって測定した。

 各サンプルについて耐久性評価試験及び 温特性評価試験を行った。各試験の概要は の通りである。

 耐久性評価試験では、各サンプルについ 、11Vで5秒間通電した後、14Vで100秒間通電し 、その後180秒間空冷することを1サイクルと て、発熱コイルが断線するまでのサイクル (断線サイクル数)を測定した。ここで、断線 サイクル数が7500サイクル以上のサンプルに いては、耐久性に優れるとして「B」の評価 下すこととし、断線サイクル数が8000サイク ル以上のサンプルについては、耐久性に非常 に優れるとして「A」の評価を下すこととし 。一方で、断線サイクル数が7500サイクル未 のサンプルについては、耐久性が良好では いとして「C」の評価を下すこととした。

 昇温特性評価試験は、まず、シースヒー の先端から軸線方向に沿って後端側に5mmま の測定対象部分における最も高い温度とな 位置(最高温度位置)を予め特定した。そし 、当該最高温度位置に熱電対(Pt/Pt-Rh)を取付 、シースヒータに連続通電し、当該最高温 位置における温度と通電時間との関係を求 、800℃に到達するまでの通電時間を算出し 。ここで、800℃に到達するまでの通電時間 7秒以下のサンプルについては、優れた昇温 性能を有するとして「A」の評価を下すこと し、一方で、800℃に到達するまでの通電時 が7秒を超えるサンプルについては、昇温性 がやや不十分であるとして「B」の評価を下 すこととした。

 耐久性評価試験及び昇温特性評価試験の結 を表11に示す。但し、Alが15重量%を超えて含 有される場合、及び、窒素ゲッター元素の総 含有量が5重量%を超えて含有される場合には 発熱コイルの加工が困難であったため、評 試験を行わなかった。また、いずれのサン ルについてもシースの先端側から4番目の発 熱コイルの断面を対象コイル領域TKとし、当 対象コイル領域TKについての値xを上記の算 法により算出した。

 表11に示すように、「x<45」であるサン ルNo.1,2や「y<8」であるサンプルNo.3,4につ ては、断線サイクル数が7500サイクル未満と なってしまい、耐久性が良好ではないことが わかった。これは、発熱コイルの過度の細径 化や周長の増大、又は、Al含有量の不足等に って、発熱コイル表層におけるAl皮膜の生 ・剥離のサイクルに伴い、比較的短期間の 用で連続的なAl皮膜を形成できないほどにAl が減少してしまったことに起因すると考え れる。

 これに対して、上記xが「45≦x≦160」の範 囲内であり、かつ、Al含有量yが「8<y≦15」 サンプルNo.5~30(図24の太線で囲まれた領域内 のサンプル)については、断線サイクル数が75 00サイクル以上となり、優れた耐久性を実現 きることが明らかとなった。

 また、特に「y≧(-7/5)x+78」の式を満たす うに構成されたサンプルNo.6~30(図24の散点模 を付した領域内のサンプル)においては、断 線サイクル数が8000サイクル以上となり、非 に優れた耐久性を有することがわかった。 れは、発熱コイルの周長の増大や細径化等 より種々変化する上記xの値に対応した、よ 適切な量のAlが含有されたことによると考 られる。

 併せて、Si、Ti等の窒素ゲッター元素が0.0 01重量%以上5重量%以下含有されたサンプルNo.1 9~23については、窒素ゲッター元素が含有さ ず、かつ、上記x及びAlやCrの含有量が等しい サンプルNo.14~16と比較して耐久性のより一層 向上が認められた。これは、当該窒素ゲッ ー元素によって、Crの窒化が抑制されたこ 、及び、発熱コイルの金属組織に金属歪み 生じさせたことによって、Alがより速やかに 移動することとなり、ひいてはAl皮膜がより 層確実に形成されたことに起因すると考え れる。

 特に、窒素ゲッター元素が含有されると もに、「y≦(-1/20)x+20」の式を満たすように 成されたサンプルNo.19~22は、断線サイクル が14000サイクル以上となり、上記xの値が等 く、Alが比較的多く含有されたサンプルNo.16 比較して、遜色ない耐久性を有するもので ることがわかった。すなわち、窒素ゲッタ 元素を含有するとともに、「y≦(-1/20)x+20」 式を満たすように構成することで、優れた 久性を実現しつつ、Al含有量の抑制を図る とができ、ひいては加工性の向上を図るこ ができるといえる。

 加えて、Crの含有量が5重量%未満のサンプ ルNo.24,25については、優れた耐久性を有する のの、昇温性能がやや不十分であることが かった。また、Crの含有量が20重量%を超え サンプルNo.26については、優れた耐久性を有 するものの、Al含有量及び上記xの値が同様で ある一方で、Cr含有量が5重量%以上20重量%以 のサンプルNo.12,27~30と比較して、耐久性が若 干低下してしまうことが認められた。従って 、十分な昇温性能を実現しつつ、非常に優れ た耐久性を維持するためには、Crの含有量を5 重量%以上20重量%以下とすることがより望ま いといえる。

 さらに、サンプルNo.9及びサンプルNo.12につ て詳細に比較すると次のような事実が明ら となった。すなわち、この2つのサンプルは 、いずれも組成は同様であるが、シースに対 するスウェージング加工の方法を異ならせる ことにより、コイル形状に僅かな差異をもた せたものである。ここで、最先端に位置する コイル領域K1から、後端側に8番目のコイル領 域K8までの8のコイル領域K1~K8について、それ れ値xを測定・算出した結果を、サンプルNo. 9については表12に示し、サンプルNo.12につい は表13に示す。

 表12及び表13に示すように、サンプルNo.9 ついては、8箇所のコイル領域のうち、5箇所 の領域(すなわち約63%の領域)においてしか、 xが「45≦x≦160」を満たしていなかったのに 対し、サンプルNo.12については、8箇所のコイ ル領域のうち、6箇所の領域(すなわち75%の領 )において値xが上記式を満たしていた。両 ンプルともに良好な耐久性を有していたも の、この70%を挟んだ差異が断線に至るサイ ル数として、1500サイクルの差異を生じさせ といえる。

 以上より、窒素が侵入しやすい断面形状を する発熱コイルであっても、x,yの値を適宜 整することにより、耐久性の向上を図るこ ができると言える。
(評価試験8)

 発熱コイルの組成比、シースの組成比、及 、先端側接合部位21の表層領域31(図25参照; 端側接合部位21の表層領域31とは、先端側接 部位21のうち発熱コイル9側の内側領域から5 μm以内の領域を表す)のうち、Al含有量が3.5重 量%以上となっている部位の発熱コイル先端 周からの平均長さ(「表層Al長さ」という)を 々変更したグロープラグのサンプルNo.1~13を 作製した。尚、発熱コイルを構成する合金と しては、Fe-22Cr-5.3Al[カンタル(登録商標)]、Fe-2 6Cr-7.5Al[パイロマックス(登録商標)]、或いは カンタルに窒素ゲッター元素としてのZrやTi 含有した合金を用いた。また、シースを構 する合金としては、Fe-25Cr-20Ni(SUS 310)、Ni-23C r-14.4Fe-1.4Al〔Inconel 601(登録商標)〕、Ni-18.7Co-1 4.5Cr-5Mo-4Al-3Ti(Udimet700)、或いは、Ni-15Cr-14Co-5Al- 4Ti〔Nimonic 115(登録商標)〕を用いた。加えて サンプルNo.1~4,7,8,11,12については、発熱コイ ル及びシースを直接接合して先端側接合部位 を形成し、サンプルNo.5,6,9,19,13については、 熱コイル及びシースを、Feを主成分とし、Al を2重量%、3重量%、或いは10重量%含有するチ プ部材を介して接合して先端側接合部位を 成した。さらに、サンプルNo.4においては、 熱コイル先端2mmに厚さ100μmのAlメッキを施 た上で、サンプルNo.7においては、発熱コイ 先端2mmに厚さ200μmのAlメッキを施した上で 発熱コイル及びシースを接合して先端側接 部位を形成した。表層Al長さの計測に際して は、表面より3μm内側の箇所を、スポット径3 m、10μm間隔でAl濃度を測定し、当該Al濃度が3 .5重量%以上を満たす領域の長さを計測するこ ととした。また、Al濃度については、EPMAのWDS により定量分析にて、電圧20kV、電流2.5×10 -8 Aの条件下で算出することとした。

 各サンプルについて耐久性評価試験を行っ 。耐久性評価試験では、14Vで300秒間通電し 後、100秒間冷却することを1サイクルとして 、発熱コイルが断線するまでのサイクル数( 線サイクル数)を測定した。で、断線サイク 数が7000サイクル以上のサンプルについては 、耐久性に優れるとして「B」の評価を下す ととし、断線サイクル数が8000サイクル以上 サンプルについては、耐久性に非常に優れ として「A」の評価を下すこととした。一方 で、断線サイクル数が7000サイクル未満のサ プルについては、耐久性が良好ではないと て「C」の評価を下すこととした。試験結果 表14に示す。

 表14に示すように、発熱コイルのAl含有量 が5重量%以上であっても、表層Al長さが100μm 満のサンプルNo.1~5は、断線サイクル数が7000 イクル未満となってしまい、耐久性があま 良好とはいえないことが明らかとなった。 れは、発熱コイル表層にAl系被膜が形成さ 、当該発熱コイル表層からの窒素の侵入を 制できたとしても、発熱コイル先端近傍の 端側接合部位において十分なAl系被膜が形成 されず、その結果、窒素の侵入を十分に防止 することができなかったことに起因すると考 えられる。

 一方で、発熱コイルのAl含有量が5重量%を 超え、表層Al長さが100μm以上のサンプルNo.6~13 については、断線サイクル数が7000サイクル 上となり、優れた耐久性を発揮できること わかった。これは、発熱コイル表層に加え 発熱コイル近傍の先端側接合部位(図25にお る発熱コイル9の先端外周GSから先端側接合 位21の内側表面に沿って少なくとも100μmの範 囲)においてもAl系被膜が形成されたため、窒 素の侵入を効果的に抑制できたことに起因す ると考えられる。

 特に、シースにAlが3.5重量%以上含有され サンプルNo.8,11,12は、先端側接合部位の全域 においてAl含有量が3.5重量%以上となり、極め て優れた耐久性能を実現することができた。 また、Alを10重量%含有するチップ部材を介し 接合して先端側接合部位を形成したサンプ No.13については、表層Al長さが500μmと長いも のとなり、優れた耐久性能を実現することが できた。

 また、発熱コイルにTiやZrが含有されたサン プルNo.9,10については、断線サイクル数が8000 イクル以上となり、TiやZrの有無を除いて、 発熱コイルの組成比等が略等しいサンプルNo. 6と比較して、耐久性の一層の向上が認めら た。これは、次の理由によるものと考えら る。すなわち、ZrやTiが含有された発熱コイ とシースとが溶融接合されたことで、先端 接合部位の表層領域のうち、少なくとも発 コイルの先端外周から先端側接合部位の内 表面に沿って少なくとも100μmの範囲内にTi Zrを含有する領域が存在することとなる。そ の結果、当該TiやZrが窒素ゲッター元素とし 機能し、Crの窒化を抑制できたこと、及び、 発熱コイル先端近傍の先端側接合部位におい て連続的なAl系被膜を形成することができた め、窒素の侵入をより一層効果的に防止で たことによると考えられる。
(評価試験9)

 制御コイルの組成比、発熱コイルの組成 、及び、後端側接合部位のAl含有量を種々 更したグロープラグのサンプルNo.21~24を作製 した。尚、制御コイルとしては、Y-Ni合金〔Ni をベースとし、Y(イットリウム)を微量に分散 させた合金〕、又は、Y-Ni-3Al合金を用いるこ とした。一方、発熱コイルとしては、Fe-22Cr -5.3Al(カンタル)を用い、サンプルNo.24におい は、カンタルにZrを含有することとした。ま た、サンプルNo.21,22,24においては、発熱コイ 及び制御コイルを直接接合して後端側接合 位を形成し、サンプルNo.23については、発 コイル及び制御コイルを、Feを主成分とし、 Alを10重量%含有するチップ部材を介して接合 ることで後端側接合部位を形成した。

 各サンプルについて、評価試験8と同様の耐 久性評価試験を行った。試験結果を表15に示 。

 表15に示すように、発熱コイルのAl含有量 が5重量%以上であっても、後端側接合部位に けるAl含有量が3.5重量%未満のサンプルNo.21 ついては、断線サイクル数が7000サイクル未 となり、耐久性が不十分であることがわか た。これは、後端側接合部位におけるAl系 膜の形成が不十分であったため、当該後端 接合部位から発熱コイル内部に窒素が侵入 てしまったことに起因すると考えられる。

 一方、発熱コイルのAl含有量が5重量%以上 であって、後端側接合部位におけるAl含有量 3.5重量%以上のサンプルNo.22,23,24については 断線サイクル数が7000サイクル以上となり、 優れた耐久性能を実現できることが明らかと なった。これは、発熱コイル表層に加え、後 端側接合部位の表層においてもAl系被膜が形 されたことにより、発熱コイル内部への窒 の侵入が効果的に抑制できたことによると えられる。

 また、発熱コイルにZrが含有されたサン ルNo.24については、断線サイクル数が8000サ クル以上となり、窒素ゲッター元素の有無 除いて、発熱コイルや制御コイルの組成比 が略等しいサンプルNo.22と比較して、耐久性 をより一層向上できることがわかった。これ は、Zrが含有された発熱コイルと制御コイル が溶融接合されたことで、後端側接合部位 Zrを含有する領域が存在することとなり、 該Zrが窒素ゲッター元素として機能し、Crの 化を抑制できたこと、及び、後端側接合部 において連続的なAl系被膜が形成されたた 、窒素の侵入をより一層効果的に防止でき ことによると考えられる。

 また、サンプルNo.21,22,24では、発熱コイ と制御コイルとは、両者を構成する金属が 互に溶融されて混じり合うことで形成され 後端側接合部位によって接合している。後 側接合部位を形成するに際して、十分なAlを 含有するチップ部材を発熱コイル及び制御コ イル間に介した上で形成したサンプルNo.23は 窒素の侵入をより一層効果的に防止するこ が可能であり、4つのサンプル中で最も優れ た断線サイクル数であった。

 尚、上記評価試験はそれぞれの評価試験 で比較を行うものであり、異なる評価試験 のサンプルの結果のみを単純比較して優劣 判定することは必ずしも有効ではない。こ は、それぞれの評価試験の試験条件および 定基準がそれぞれで異なるためである。

 本発明を具体的な実施例に基づいて説明 てきたが、本発明は上記実施例に限定され ものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲 種々の変形・変更を含むものである。

 上記実施形態においては、制御コイル10 備えたいわゆる自己制御型のグロープラグ1 例示しているが、これに限定されないこと いうまでもない。

 上記実施形態では、シースヒータ3を具備 するグロープラグ1を具体例として説明して るが、ディーゼルエンジン用のグロープラ 1以外の各種分野において液体や気体を加熱 るための加熱手段としてシースヒータ3を利 用してもよい。