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Patent Searching and Data


Title:
Si KILLED STEEL WIRE MATERIAL HAVING EXCELLENT FATIGUE PROPERTY AND SPRING
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/081673
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a Si killed steel wire material for producing a spring having an excellent fatigue property. Also disclosed is a spring having an excellent fatigue property, which is produced from the steel wire material. The Si killed wire material comprises 0.03 to 20 ppm (“ppm” means “ppm by mass”, hereinbelow) of Sr, 1 to 30 ppm of Al and 0.2 to 4% (“%” means “% by mass”, hereinbelow) of Si, and additionally comprises Mg and/or Ca in a total amount of 0.5 to 30 ppm. The Si killed wire material contains an oxide inclusion comprising 30 to 90% of SiO2, 2 to 50% of Al2O3, 35% or less (more than 0%) of MgO, 50% or less (more than 0%) of CaO, 20% or less (more than 0%) of MnO and 0.2 to 15% of SrO, wherein the total content of CaO and MgO is 3% or more. A spring formed from the steel wire material has an excellent fatigue property.

Inventors:
SUGIMURA TOMOKO
SAKAMOTO KOICHI
Application Number:
PCT/JP2007/073336
Publication Date:
July 10, 2008
Filing Date:
December 03, 2007
Export Citation:
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Assignee:
KOBE STEEL LTD (JP)
SUGIMURA TOMOKO
SAKAMOTO KOICHI
International Classes:
C22C38/00; B21B3/00; C22C38/06; C22C38/58; C21C7/00; C21C7/04
Foreign References:
JPS63186852A1988-08-02
JPS63227748A1988-09-22
JP2006342400A2006-12-21
JP2006016639A2006-01-19
JPS63192846A1988-08-10
JP2006104506A2006-04-20
JPH05320827A1993-12-07
JPS63140068A1988-06-11
JPS63227748A1988-09-22
JPH09310145A1997-12-02
JPS629946A1987-01-17
JPS6299437A1987-05-08
JP2005029888A2005-02-03
Other References:
See also references of EP 2123784A4
"182nd and 183rd Nishiyama Memorial Technical Lecture", pages: 131 - 134
Attorney, Agent or Firm:
OGURI, Shohei et al. (7-13 Nishi-Shimbashi 1-chom, Minato-ku Tokyo 03, JP)
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Claims:
 Sr:0.03~20ppm(「質量ppm」の意味、以下同じ)、Al:1~30ppmおよびSi:0.2~4%(「質量%」の意味、以下同じ)を夫々含有する他、Mgおよび/またはCaを合計で0.5~30ppmの範囲で含むものであることを特徴とする疲労特性に優れたSiキルド鋼線材。
 Liを0.03~20ppmの範囲で含むものである請求項1に記載のSiキルド鋼線材。
 C:1.2%以下(0%を含まない)、Mn:0.1~2.0%を夫々含む鋼材からなるものである請求項1または2に記載のSiキルド鋼線材。
 線材中に存在する酸化物系介在物が、SiO 2 :30~90%、Al 2 O 3 :2~35%、MgO:35%以下(0%を含まない)、CaO:50%以下(0%を含まない),MnO:20%以下(0%を含まない)およびSrO:0.2~15%を夫々含み、且つ(CaO+MgO)の合計含有量が3%以上であることを特徴とする疲労特性に優れたSiキルド鋼線材。
 線材中に存在する酸化物系介在物が、更にLi 2 O:0.1~20%の範囲で含むものである請求項4に記載のSiキルド鋼線材。
 C:1.2%以下(0%を含まない)、Si:0.1~4.0%、Mn:0.1~2.0%、Al:0.01%以下(0%を含まない)を夫々含む鋼材からなるものである請求項4または5に記載のSiキルド鋼線材。
 更に、Cr,Ni,V,Nb,Mo,W,Cu,Ti,Coおよび希土類元素よりなる群から選択される1種以上の元素を含有するものである請求項3または6に記載のSiキルド鋼線材。
 残部がFeおよび不可避不純物である請求項3、6または7に記載のSiキルド鋼線材。
 請求項1~8のいずれかに記載のSiキルド鋼線材から得られたものであるばね。
Description:
疲労特性に優れたSiキルド鋼線 およびばね

 本発明は、疲労特性の優れたSiキルド鋼 材およびこの鋼線材から得られるばねに関 るものであり、例えば高強度ばね(特に弁ば )などとしたときに高い疲労特性が発揮でき 、こうした特性が要求される自動車用エンジ ンの弁ばねやクラッチばね、ブレーキばね、 更には懸架ばねやスチールコード等の素材と して有用なものである。

 最近、自動車の軽量化や高出力化の要請 高まるにつれて、エンジンやサスペンショ 等に使用される弁ばねや懸架ばね等におい も高応力設計が指向されている。そのため れらのばねには、負荷応力の増大に対応す ため、耐疲労性や耐へたり性に優れたもの 強く望まれている。とりわけ弁ばねについ の疲労強度増大の要請は非常に強く、従来 の中でも疲労強度に優れているとされてい SWOSC-V(JIS G 3566)でも対応が困難になってき いる。

 高い疲労強度が要求されるばね用線材で 、線材中に存在する折損起点となる非金属 在物を極力低減することが必要である。こ した観点から、上記の様な用途に用いられ 鋼材としては、上記非金属介在物の存在を 力低減した高清浄鋼が用いられるのが一般 である。また、素材の高強度化が図られる つれて、非金属介在物に起因する断線、疲 折損の危険性が高まることから、その主要 となる非金属介在物の低減・小型化の要求 一段と厳しいものとなっている。

 鋼材中における硬質の非金属介在物の低減 小型化を図るという観点から、これまでに 様々な技術が提案されている。例えば非特 文献1には、介在物をガラス質に保つことで 、圧延時に介在物が微細化すること、および CaO-Al 2 O 3 -SiO 2 系の成分でガラスが安定な組成に介在物が存 在することが記載されている。またガラス部 分の変形を促進するために、介在物の融点を 下げることが有効であることが提案されてい る(例えば、特許文献1)。

 また特許文献2には、Ca,Mg,(La+Ce)の量を適切 範囲に制御しつつ鋼材の化学成分組成を適 に調整し、且つ鋼中の非金属介在物の平均 組成の構成比(SiO 2 ,MnO,Al 2 O 3 ,MgOおよびCaOの構成比)を適切な範囲とするこ によって、疲労特性に優れたばね鋼が得ら ることが示されている。

 一方、特許文献3には、C,Si,Mn,Cr等の基本 分を制御すると共に、Ca,Mg,Ba,Srのうちの1種 上を0.0005~0.005%の範囲で含有させ、且つ非金 介在物の大きさを20μm以下とすること等に って、優れた「へたり特性」を発揮させた 強度ばね用線材が提案されている。

 これまで提案されている各種従来技術では 介在物組成を低融点領域に制御して、微細 を図ることを目指すことが中心となってい 。例えばCaO-Al 2 O 3 -SiO 2 三成分系介在物では、一般的に知られている 三元系状態図において、三成分が或る組成範 囲に低融点領域が存在することが知られてい るが、いずれかの成分が高くなるような組成 では、融点が高くなって線材の疲労強度が低 下することになる。こうした傾向は、MgO-Al 2 O 3 -SiO 2 三成分系介在物の場合であっても同様である 。

 上記各種技術では、疲労特性等の特性を めるための方向性は示されている。しかし がら、熱間加工時の加熱時間や温度におい は、例えば非特許文献1に示されたような組 成に制御するだけでは、必ずしも完全なガラ ス状態を保つことはできず、結晶が生成する ことがある。また、近年の更なる鋼疲労強度 化のニーズに対応するためには、ガラス部の 変形もより促進する必要がある。

 更に、鋼の高強度化に伴って、鋼の成分は Si化しており、従来知られているCaO-Al 2 O 3 -SiO 2 系での目標組成へのピンポイント制御の難度 は高くなる傾向にあり、例えば特許文献4に されているように、トータルだけでなく、 存成分を制御するなど、高度な制御が必要 なっている。

 また、介在物を無害化(疲労に対して)する めの技術としては、介在物組成を制御する 術が開示されている。例えば非特許文献1に 、弁ばね用鋼では、融点が1400~1500℃程度よ も低いCaO-Al 2 O 3 -SiO 2 三成分系介在物に制御すると、疲労破壊の起 点とはならず疲労特性が向上することが開示 されている。

 また特許文献5には、圧延鋼材のL断面にお て、長さ(l)と幅(d)の比が1/d≦5の非金属介在 の平均組成が、SiO 2 :20~60%、MnO:10~80%に、CaO:50%以下、MgO:15%以下の 方または両方を含むことによって、冷間加 性と疲労特性に優れた清浄度鋼が得られる とが示されている。

 特許文献6には、圧延鋼材のL断面において 長さ(l)と幅(d)の比が1/d≦5の非金属介在物の 均組成が、SiO 2 :35~75%、Al 2 O 3 :30%以下、CaO:50%以下、MgO:25%以下からなるもの とすることによって、冷間加工性と疲労特性 に優れた清浄度鋼が得られることが示されて いる。

 特許文献2には、介在物中のSiO 2 :25~75%、Al 2 O 3 :35%以下、CaO:50%以下、MgO:40%以下の一方あるい は両方含み、MnO:60%以下に制御することで、 労強度が向上することが開示されている。

 特許文献1には、介在物のうち最も融点の 高いものの融点を1500℃以下に制御すること 、疲労強度が向上することが開示されてい 。

 また特殊な成分を用いた技術では、特許文 7のLi 2 O組成への介在物制御や、特許文献3の鋼材中 Ba,Sr,Ca,Mgを含有させるものがある。

 これらの従来技術では、熱延時の介在物の 形を促進するため、ガラス化しやすい組成 制御することや、更に変形を促進するため 在物を低融点組成に制御することが記載さ ている。また、具体的な介在物組成として 、ガラスの安定なSiO 2 系複合酸化物系が示されている。

 しかし、上記の従来の方法だけでは、今後 更なる高疲労特性化のニーズに対応できな 。また、変形をより促進するために、介在 を更に低融点化させようとして、従来多数 告されているSiO 2 -Al 2 O 3 -CaO-MgO-MnO等の系で、格段の低融点化をねらっ ても、これ以上は困難なレベルに達している 。

 また上記特許文献3では、Ba,Ca,Mg,Sr等の利 に言及しているが、これらの低融点化効果 みに着目し、また各々の成分の差異や複合 の効果を活用できておらず、その結果現在 高い要求に耐え得る疲労強度を実現できな 技術となっている。

 尚、非金属介在物のうち、Al 2 O 3 を多く含むものでは、低融点介在物を得るこ とが困難であることから、こうした線材を得 るための鋼材は、Alキルド鋼ではなく、Siを いて脱酸する所謂「Siキルド鋼」を素材とし た線材が用いられるのが一般的である。
「第182・183回西山記念技術講座」、(社) 本鉄鋼協会編、第131~134頁

特開平5-320827号公報

特開昭63-140068号公報

特開昭63-227748号公報

特開平9-310145号公報

特開昭62-99436号公報

特開昭62-99437号公報

特開2005-29888号公報

 本発明はこうした状況の下になされたも であって、その目的は、介在物の全体を低 点にして変形し易くすることで、又は、介 物を低融点で変形し易くすることで、疲労 性に優れたばね等を得るためのSiキルド鋼 材、およびこうした鋼線材から得られる疲 特性に優れたばねを提供することにある。

 このような状況下において、本発明者ら 、Sr,Si,Al,Mg,Caの濃度をバランス良く制御す ことによって、溶鋼中の介在物を適切な組 に制御し、なおかつ鋳造時にも有害な介在 の生成を防止できることを見出した。

 一般論としては、酸化物の複合化による低 点化は考え得ることである。しかしながら 鋼中介在物として制御できる限られた成分 よって、Siキルド鋼の介在物融点を低下さ 、しかもガラスを安定に保つことは容易で なく、具体的な手段はこれまで実現できて なかった。これに対して、本発明者らは、Sr ,Si,Al,Mg,Caを最適なバランスで制御することで それを実現したのである。特に、従来類似と 考えられていたSr,Ca,Mgのなかでも、Sr,(Mg+Ca)を 夫々制御すること、およびいずれも含有させ ることが重要である。なおかつ、SiO 2 系のガラスの安定性に対して複雑な影響を発 現するAlを適切に制御することによって、著 く疲労強度を向上させることが可能となっ のである。

 即ち、上記目的を達成し得た本発明のSi ルド鋼線材の第一の態様は、Sr:0.02~20ppm(「質 量ppm」の意味、以下同じ)、Al:1~30ppmおよびSi:0 .2~4%(「質量%」の意味、以下同じ)を夫々含有 る他、Mgおよび/またはCaを合計で0.5~30ppmの 囲で含むものである点に要旨を有するもの ある。

 上記の各種Siキルド鋼線材においては、Li を0.03~20ppmの範囲で含むものも好ましい実施 態である。

 本発明のSiキルド鋼線材の化学成分組成 ついては、「ばね」として用いられるもの あれば特に限定されるものではないが、好 しいものとして、例えば、C:1.2%以下(0%を含 ない)、Mn:0.1~2.0%、を夫々含む鋼材が挙げら る。また、こうした鋼材においては、更に Cr,Ni,V,Nb,Mo,W,Cu,Ti,Coおよび希土類元素よりな 群から選択される1種以上を含むものであっ もよい。これらを含有させるときの好まし 含有量は、各々の元素によって異なるが、C r:0.5~3%、Ni:0.5%以下、V:0.5%以下、Nb:0.1%以下、Mo :0.5%以下、W:0.5%以下、Cu:0.1%以下、Ti:0.1%以下 Co:0.5%以下である。また介在物粘性を下げ、 り効果を発揮する元素としてREMを0.05%以下 度添加しても良い。

 また、本発明の第二の態様として、本発明 らは、介在物中のSiO 2 ,Al 2 O 3 ,MgO,CaO,MnO,SrOをバランス良く制御することに って、介在物の融点を著しく低下させるこ を見出した。

 一般論としては、酸化物の複合化による低 点化は考え得ることである。しかしながら 鋼中介在物として制御できる限られた成分 よって、ガラスの安定なSiO 2 系介在物の融点を低下させることは容易では なく、具体的な手段はこれまで実現できてい なかった。これに対して、本発明者らは、SiO 2 ,Al 2 O 3 ,MgO,CaO,MnO,SrOを最適なバランスで制御するこ で実現できることを見いだしたのである。 に、従来類似と考えられていたBa,Ca,Mgのなか でも、Sr,(Mg+Ca)を夫々制御すること、および ずれも含有させることが重要である。なお つ、SiO 2 系のガラスの安定性に対して複雑な影響を発 現するAl(Al 2 O 3 )を適切に制御することによって、著しく疲 強度を向上させることが可能となったので る。

 即ち、上記目的を達成し得た本発明のSiキ ド鋼線材の第二の態様は、線材中に存在す 酸化物系介在物が、SiO 2 :30~90%(「質量%」の意味)、Al 2 O 3 :2~35%、MgO:35%以下(0%を含まない)、CaO:50%以下(0% を含まない),MnO:20以下(0%を含まない)およびSrO :0.2~15%を夫々含み、且つ(CaO+MgO)の合計含有量 3%以上である点に要旨を有するものである

 上記の各種Siキルド鋼線材においては、線 中に存在する酸化物系介在物が、更にLi 2 O:0.1~20%の範囲で含むものも好ましい実施形態 である。

 本発明のSiキルド鋼線材の化学成分組成 ついては、ばね用鋼であれば特に限定され ものではないが、好ましいものとして、例 ば、C:1.2質量%以下(0%を含まない)、Si:0.1~4.0% Mn:0.1~2.0%、Al:0.01%以下(0%を含まない)を夫々含 む鋼材が挙げられる。また、こうした鋼材に おいては、更に、Cr,Ni,V,Nb,Mo,W,Cu,Ti,Coおよび希 土類元素よりなる群から選択される1種以上 元素を含有するものであってもよい。

 上記成分の他(残部)は、基本的にFeおよび 不可避不純物である。尚、介在物に大きな影 響を与えない成分(例えば、B,Pb,Bi等)は鋼特性 向上のために加えても、本発明の効果を発揮 するものである。

 上記のようなSiキルド鋼線材を用いて、 ねに成形することによって、疲労強度の優 たばねが実現できる。

 本発明の第一の態様によれば、Srを含有さ つつ化学成分組成を適切に調整することに って、介在物の全体を低融点化して変形し くすると共に、熱延前や熱延中の加熱時に 分離してもSiO 2 が生成しにくいものとでき、疲労特性に優れ たばねを得るためのSiキルド鋼線材が実現で た。
 また、本発明の第二の態様によれば、酸化 系介在物の組成を適切に制御する(最適なバ ランスで複合する)ことにより、低融点且つ 延時にガラス状態を保たせることによって 熱延時の介在物微細化を促進し、疲労特性 優れたSiキルド鋼線材が実現できた。

<第一の実施形態>
 熱間圧延時の変形比の大きい線材では、介 物は熱間圧延時に延伸分断させて微細化す ことが有用であることは知られている。本 明者らは、こうした情況の下で、凝固後の 熱、熱間圧延による介在物形態の変化をも 慮して、ばねの疲労特性を向上させるため 個々の介在物の組成と形態について、様々 角度から検討した。その結果、Sr,Al,Si,Mg,Ca 濃度を適切に制御することで、酸化物系介 物の熱延時の変形が著しく促進されて微細 され易くなることを見出した。

 従来においても、Sr,Mg,Ca等のアルカリ土類 属元素の微量添加がばねの特性向上に有効 あることは知られているが(例えば、前記特 文献3)、どの成分であっても微量添加しさ すれば良いというわけではなく、これらを ランス良く含有させることによって、Siキル ド鋼線材の疲労特性が格段に向上し得ること が判明したのである。例えば、CaO-Al 2 O 3 -SiO 2 三成分系介在物では、一般的に知られている 三元系状態図において、三成分が或る組成範 囲に低融点領域が存在することが知られてい るが、いずれかの成分が高くなるような組成 では、介在物の融点が却って高くなって、線 材の疲労特性が低下することになる。これに 対して、Sr,Al,Si,Mg,Caの濃度を適切に制御する とによって、上記三成分系介在物中の何れ 成分も高くなり過ぎず、またいずれかの成 がない場合と比べてより変形し易い介在物 なるものと考えられる。

 本実施形態のSiキルド鋼線材は、上記の くSr,Al,Si,Mg,Ca等の成分をバランスよく含有さ せることを特徴とするものであるが、これら の成分の範囲限定理由は次の通りである。

 [Sr:0.03~20ppm]
 Srは、介在物を複合化して低融点化するた になくてはならない成分である。介在物中 SrOを含有させると、ガラスの安定性はあま 低下させずに、低融点化させる効果がある また、Si濃度の高い鋼中に酸素との結合力の 強いSrを含有させることで、凝固時に、著し SiO 2 濃度の高い介在物が生成しても、ある程度の 融点に保つ効果がある。これらの効果を発現 するためには、最低でも0.03ppmのSrが必要であ る。好ましくは0.2ppm以上含有させるのが良い 。一方、Sr濃度が高くなり過ぎると、介在物 ほかの成分(Mg,Ca,Al,Si,Mn等)の濃度を下げ、最 も融点が低くなる組成に制御できなくなる。 従って、Sr濃度は20ppm以下とする必要があり 好ましくは8ppm以下とするのが良い。

 [Al:1~30ppm]
 Alは、Siキルド鋼の介在物組成を低融点化す る効果がある。また、介在物中のCaOなどの濃 度が高くなったときにガラス化を制御する効 果もある。更に、Alは、Ca,Sr等と比べて鋼中 溶存しやすい成分であり、凝固時に著しくSi O 2 濃度の高い介在物が生成するのを抑制する効 果が高い。これらの効果を発揮するためには 、1ppm以上含有させる必要がある。しかしな ら、Al含有量が高くなると、凝固時に純粋な Al 2 O 3 が生成する危険があるため、30ppm以下とする 要がある。尚、介在物の融点を最も下げる 適な組成に制御するためには、20ppm以下と ることが好ましい。

[Si:0.2~4%]
 Siは、Siキルド鋼の製鋼時における主たる脱 酸剤であり、本実施形態の線材を得るための 必須の元素である。また高強度化にも寄与し 、本実施形態の疲労特性向上効果が顕著にあ らわれる点からも重要な元素である。更には 、軟化抵抗を高め耐へたり性を向上させるの にも有用な元素である。こうした効果を発揮 させるためには、Si含有量は0.2%以上(好まし は2%以上)とする。しかしながら、Si含有量が 過剰になると、凝固中に純粋なSiO 2 が生成する可能性があり、表面脱炭や表面疵 が増加するため疲労特性が却って低下するこ とになる。こうしたことから、Siは4%以下、 ましくは3%以下とする。

[Mgおよび/またはCa:合計で0.5~30ppm]
 MgやCaは、介在物を最適な複合組成にし、低 融点化するために必須の成分である。Ba単独 Mg単独、Ca単独、Al単独を含有させれば、高 点の介在物となる。従って、いずれかは必 含有させる必要がある。また、MgやCaは酸素 との親和力が強く、純粋なSiO 2 がまれに生成した場合に、それらを複合組成 に改質しやすいという効果もある。これらの 効果を発揮させるためには、MgやCa(Mg、Ca単独 または併用)の含有量(併用する場合は合計含 量)は、0.5ppm以上とする必要がある。尚、好 ましくは各元素を少なくとも0.1ppm以上(但し 合計含有量は0.5ppm以上)含有させて併用する が良い。しかしながら、これらの元素が過 になると、介在物中の他の成分の濃度が低 なり、最適な低融点組成が保てなくなる。 って、その上限は30ppm(好ましくは、20ppm以 )とする。

 本実施形態のSiキルド鋼線材においては 上記各成分をバランスよく含有させること よって、疲労特性が向上したものとなるが 必要によってLiを含有させることも有用であ る。Liは介在物中の結晶を微細にする効果が り、ガラスを安定でなおかつ低融点に制御 た本実施形態の鋼において、万が一結晶が 成した場合にも、結晶を粗大にしない効果 ある。従って、Liを含有させることも有用 ある。こうした作用を発揮させるためには Liは0.2~20ppm含有させることが好ましいが、0.0 3ppm程度の添加によっても、多少の効果は発 すると考えられ、低濃度の添加によって少 くとも悪影響を及ぼさないと推定される。

 本実施形態では、ばねの素材として有用 Siキルド鋼線材を想定してなされたもので り、その鋼種については特に限定するもの はないが、Mnは鋼の脱酸に寄与する元素であ り、また焼入れ性を高めて強度向上に寄与す る。こうした観点からMnは0.1%以上含むもので あることが好ましい。但し、Mn含有量が過剰 なると、靭性、延性が悪くなるので2%以下 すべきである。

 ばね用鋼としての基本成分であるC含有量 については、1.2%以下であることが好ましい C含有量が1.2%を超えると、鋼材が脆化し、実 用的でなくなる。

 上記基本成分の他は、Feおよび不可避不 物(例えば0.02%以下のS,0.02%以下のP等)である 、必要によってCr,Ni,V,Nb,Mo,W,Cu,Ti,Coおよび希 類元素(REM)よりなる群から選択される1種以 を含むものであってもよい。これらを含有 せるときの好ましい含有量は、各々の元素 よって異なるが、Cr:0.5~3%、Ni:0.5%以下、V:0.5% 下、Nb:0.1%以下、Mo:0.5%以下、W:0.5%以下、Cu:0. 1%以下、Ti:0.1%以下、Co:0.5%以下、REM:0.05%以下 ある。

<第二の実施形態>
 本発明者らによる検討の結果、SrO,Al 2 O 3 ,SiO 2 ,MgO,CaOおよびMnOの濃度を適切に制御して、酸 物系介在物中の各酸化物成分の割合を適切 するようにすれば、酸化物系介在物の熱延 の変形が著しく促進されて微細化され易く ることも見出された。

 従来においても、酸化物系介在物系中の各 化物の割合を適切にすることは、鋼材の特 向上に有効であることは知られているが(例 えば、前記特許文献1~3、5~7)、必ずしも疲労 度が良好になるとは限らず、これらの成分 バランス良く含有させることによって、Siキ ルド鋼線材の疲労特性が格段に向上し得るこ とが判明したのである。例えば、CaO-Al 2 O 3 -SiO 2 三成分系介在物では、一般的に知られている 三元系状態図において、三成分が或る組成範 囲に低融点領域が存在することが知られてい るが、いずれかの成分が高くなるような組成 では、介在物の融点が却って高くなって、線 材の疲労特性が低下することになる。

 本実施形態のSiキルド鋼線材は、線材中 存在する酸化物系介在物の組成を適切に調 した点に特徴を有するものであるが、酸化 系介在物を構成する各酸化物の含有率を定 た理由は次の通りである。

 [SrO:0.2~15%]
 SrOは、介在物を複合化し低融点化するため はなくてはならない成分である。介在物中 SrOを含有させると、ガラスの安定化はあま 低下させずに、低融点化させる効果がある この効果を発現させるためには、最低でも0 .2%のSrOが必要であり、好ましくは1%以上とす のが良い。一方、SrO濃度が高くなり過ぎる 反対に介在物の融点が高くなる。従って、S rOは15%以下とする必要がある。

 [SiO 2 :30~90%]
 SiO 2 は、ガラスを安定な介在物とするのに必要不 可欠な成分であり、最低でも30%は必要である 。一方、SiO 2 含有量が過剰になり過ぎると、硬質なSiO 2 結晶相が生成し、熱延時の延伸分断が阻害さ れるため、90%以下とする必要がある。

 [Al 2 O 3 :2~35%]
 Al 2 O 3 は、Siキルド鋼の介在物組成を低融点化する 果がある。また、介在物中のCaO等の濃度が くなったときに結晶化を抑制する効果もあ 。これらの効果を発現するためには、2%以 含有させる必要がある。しかしながら、Al 2 O 3 の含有量が高くなり過ぎると、介在物中にAl 2 O 3 結晶が生成し、熱延時の延伸分断が阻害され るため、35%以下とする必要がある。

 [MgO:35%以下(0%を含まない)、CaO:50%以下(0%を含 まない)、MgO+CaO:合計含有量が3%以上]
 MgOおよびCaOは、介在物を最適な複合組成に 、低融点化するために必須の成分である。M gOおよびCaOのいずれも、単独では高融点であ が、SiO 2 酸化物の融点を低下させる効果がある。その 効果を発現させるためには、いずれか或は合 計で3%以上含有させ必要がある。但し、これ の濃度が高くなり過ぎると、介在物の融点 高くなったり、MgO,CaOの結晶が生成したりし て、熱延時の延伸分断を阻害する。従って、 上限がある。MgOとCaOでは、結晶生成能に差が あるので上限は異なり、MgOは35%以下、CaOは50% 以下とする。

 [MnO:20%以下(0%を含まない)]
 MnOは、SiO 2 系酸化物の融点を低下させる効果があるが、 高Si鋼においてあまり高濃度に制御すること 現実的でないため、20%以下とした。

 本実施形態のSiキルド鋼線材においては、 記各成分をバランスよく含有させることに って、疲労特性が向上したものとなるが、 要によってLi 2 Oを含有させることも有用である。Li 2 Oを含有させる場合の範囲設定理由は次の通 である。

 [Li 2 O:0.1~20%]
 Li 2 Oは、介在物中の結晶を微細にする効果があ 、ガラスを安定でなおかつ低融点に制御し 本実施形態の鋼において、万が一結晶が生 した場合にも、結晶を粗大にしない効果が る。従って、Li 2 Oを含有させることも有用である。こうした 用を発揮させるためには、Li 2 Oは2%程度以上含有させることが好ましいが、 0.1%程度の添加によっても、多少の効果は発 すると考えられ、低濃度の添加によって少 くとも悪いことは起こらないと推定される しかしながら、Li 2 Oの含有量が20%を超えて過剰に含有されても の効果が飽和する。

 上記のように介在物中の各成分割合を適 に調整したSiキルド鋼線材を用いてばね成 することによって、疲労特性に優れたばね 実現できる。

 本実施形態は、ばねの素材として有用なS iキルド鋼線材を想定してなされたものであ 、その鋼種については特に限定するもので ないが、介在物組成を制御するためには、 酸成分であるSiやMnを0.1%以上含むものである ことが好ましい。より好ましくはSi:1.4%以上 更に好ましくは1.9%以上である。但し、これ の成分は、過剰に含有されると、鋼材が脆 しやすくなるので、Siで4.0%以下、Mnで2.0%以 とすべきである。

 Alは酸化物系介在物の組成制御を行うため 積極的に含有させることも可能であるが、 過ぎると介在物中のAl 2 O 3 濃度が高くなり断線の原因となる粗大Al 2 O 3 が生成する可能性があるので、0.01%以下であ ことが好ましい。

 ばね用鋼としての基本成分であるC含有量 については、1.2%以下であることが好ましい C含有量が1.2%を超えると、鋼材が脆化し、実 用的でなくなる。

 上記基本成分の他は、Feおよび不可避不 物(例えば0.02%以下のS,0.02%以下のP等)である 、必要によってCr,Ni,V,Nb,Mo,W,Cu,Ti,Coおよび希 類元素(REM)よりなる群から選択される1種以 を含むものであってもよい。これらを含有 せるときの好ましい含有量は、各々の元素 よって異なるが、Cr:0.5~3%、Ni:0.5%以下、V:0.5% 下、Nb:0.1%以下、Mo:0.5%以下、W:0.5%以下、Cu:0. 1%以下、Ti:0.1%以下、Co:0.5%以下である。また 在物粘性を下げ、より効果を発揮する元素 してREMを0.05%以下程度添加しても良い。

 上記第一及び第二実施形態のように化学 分を適切に調整したSiキルド鋼線材を用い ばね成形することによって、疲労特性に優 たばねが実現できる。

 以下、実施例を挙げて本発明をより具体 に説明するが、本発明はもとより下記実施 によって制限を受けるものではなく、前・ 記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を えて実施することも勿論可能であり、それ はいずれも本発明の技術的範囲に含まれる のである。

<実施例1>
 実験は、実機(または実験室レベル)で実施 た。すなわち、実機では転炉で溶製した溶 を取鍋に出鋼し(実験室では、転炉から出鋼 れる溶鋼を模擬した500kgの溶鋼を溶製し)、 種フラックスを添加して成分調整、電極加 、およびアルゴンバブリングを実施し、溶 処理(スラグ精錬)を実施した。また他の成 を調整した後、Ca,Mg,Ce,Ba,Liなどを必要に応じ て溶鋼処理中に添加し、5分以上保持した。 られた鋼塊を鍛造および熱間圧延して直径:8 .0mmの線材とした。

 得られた、各線材について、鋼中のSrお びLiの含有量を下記の方法で測定すると共に 、弁ばねを模擬した回転曲げ疲労試験による 評価試験を行った。

[鋼中のSrおよびLiの含有量]
1)含有量が0.2ppm(mg/kg)以上の場合(定量下限値 0.2ppm)
 対象となる線材から試料0.5gを採取してビー カーに取り、純水、塩酸および硝酸を加えて 加熱分解した。放冷後、100mL(ミリリットル) メスフラスコに移し入れ、測定溶液とした この測定溶液を純水で希釈し、ICP質量分析 置(型式 SPQ80 00:セイコーインスツルメント 製)を用い、SrおよびLiを定量分析した。

2)含有量が0.2ppm(mg/kg)未満の場合(定量下限 が0.03ppm)対象となる線材から試料0.5gを採取 てビーカーに取り、純水、塩酸および硝酸 加えて加水分解を行った。その後塩酸を加 て酸濃度を調整し、メチルイソブチルケト (MIBK)を加えて振とうし、鉄分をMIBK相に抽出 た。静置後、水相のみを取り出し、100mLの スフラスコに移し入れ、測定溶液とした。 の測定溶液を純水で希釈し、ICP質量分析装 (型式 SPQ8000:セイコーインスツルメント社製 )を用い、上記の条件でSrおよびLiを定量分析 た。

 [疲労強度試験(破断率)]
 各熱間圧延線材(直径:8.0mm)について、皮削 (直径:7.4mm)→パテンティング→冷間線引き加 工(直径:4mm)→オイルテンパー[油焼入れと鉛 (約450℃)焼戻し連続工程]にて直径4.0mm×650mm ワイヤを作製した。得られたワイヤについ 、歪取焼鈍相当処理(400℃)→ショットピーニ ング→低温焼鈍200℃を行った後、中村式回転 曲げ試験機を用いて、公称応力908MPa、回転数 :4000~5000rpm、中止回数:2×107回で試験を行った そして、破断したもののうち介在物折損し ものについて、下記式により破断率を求め 。
破断率(%)=[介在物折損本数/(介在物折損本数+ 定回数に達し中止した本数)]×100

 これらの結果を、各線材の化学成分組成と に、下記表1に示す。尚、SrおよびLi以外の 素については、下記の方法によって測定し 。
 C:燃焼赤外線吸収法
 Si,Mn,Ni,Cr,VおよびTi:ICP発光分光分析法
 Al,Mg,ZrおよびREM:ICP質量分析法
 Ca:フレームレス原子吸光分析法
 O:不活性ガス融解法

 これらの結果から、次のように考察でき 。試験No.1~3,5,6,9,10,13,18~27のものでは、化学 分組成が適切であり、介在物組成も適切な 囲に制御されたものとなり、良好な疲労強 が得られていることが分かる。

 これに対して、試験No.4,7,8,11,12,14~17のも では、化学成分組成が適切な範囲を外れ、 在物組成が適切な範囲に制御されたものと っていないので、疲労試験結果が良くない

 試験No.4、7では、Sr,CaおよびMgは適切に制 されているが、Al濃度が高かったり低かっ りして破断率が高くなっている。

 試験No.8,11,12では、Sr濃度が高かったり低 ったりして破断率が高くなっている。

 試験No.14,16では、BaおよびAl濃度は適切で るが、CaやMgの濃度が低く破断率が高くなっ ている。

 試験No.15,17では、BaおよびAl濃度は適切で るが、CaやMgの濃度が高過ぎて析損率が高く なっている。尚、試験No.18は、Li濃度が好ま い上限を外れているものであるが、試験No.19 のものと比べて効果が飽和している。

 このように、Sr,Ca,MgおよびAlのすべてを適 切に制御することが必要であることが分かる 。

<実施例2>
 実験は、実機または実験室レベルで実施し 。すなわち、実機では転炉で溶製した溶鋼 取鍋に出鋼し(実験室では、転炉から出鋼さ れる溶鋼を模擬した500kgの溶鋼を溶製し)、各 種フラックスを添加して成分調整、適宜電極 加熱(およびアルゴンバブリング)を実施し、 鋼処理(スラグ精錬)を実施した。またCa、Mg Ce、Sr、Liなどの合金元素を必要に応じて溶 処理中に添加した。次いで、該溶鋼を鋳造 て鋼塊とした(実験室レベルでは、実機と同 等の冷却速度が得られる鋳型にて鋳造した) 得られた鋼塊を鍛造および熱間圧延して直 :8.0mmの鋼線材とした。

 得られた各鋼線材について、線材中の酸 物系介在物の組成を測定すると共に、弁ば を模擬した回転曲げ疲労試験による評価試 を行った。これらの測定方法は、下記の通 である。

[介在物組成(但し、LiO 2 を除く)]
 熱間圧延した各鋼線材のL断面(軸心を含む 面)を研磨し、該研磨断面に存在する酸化物 介在物300個について、EPMA(Electron Probe Micro analyzer)で組成分析を行い、酸化物に換算し 平均値を求めた。尚、S濃度が5%以下のもの 酸化物系介在物とした。このときの、EPMAの 定条件は下記の通りである。
EPMA装置:JXA-8621MX(日本電子株式会社製)
分析装置(EDS):TN-5500(Tracor Northern社製)
加速電圧:20kV
走査電流:5nA
測定方法:エネルギー分散分析で定量分析(粒 全域を測定)

[Li 2 Oの測定]
 介在物中のLi 2 O濃度はEPMAでは測定できないため、SIMS(Secondar y Ion Mass Spectroscopy:2次イオン質量分析法)に る分析法を独自に開発し、下記の手順で測 した。

(1)一次標準試料
1)まず、鋼中介在物のCaO,MgO,Al 2 O 3 ,MnO,SiO 2 ,SrO等の各濃度を、EDX、EPMA等によって分析す 。
2)Li 2 Oを除く介在物組成と同組成の合成酸化物と これらに各種Li 2 Oを加えた合成酸化物を多数作製し、それら Li 2 O濃度を化学分析によって定量分析し、標準 料を作製する。
3)作製した各合成酸化物のSiに対するLiの相対 2次イオン強度を測定する。
4)Siに対するLiの相対2次イオン強度と、上記1) で化学分析したLi 2 O濃度の検量線を引く。

(2)二次標準試料(測定環境補正用)
5)測定時の環境補正用として、別途Siウエハ 上にLiイオンをイオン注入した標準試料を作 製し、Siに対するLiの相対2次イオン強度を測 し、上記2)を実施する際に補正する。

(3)実際の測定
6)鋼中介在物のSiに対するLiの相対2次イオン 度を測定し、上記4)で求めた検量線によって Li 2 O濃度を求める。

[疲労強度試験(破断率)]
 各熱間圧延線材(直径:8.0mm)について、皮削 (直径:7.4mm)→パテンティング→冷間線引き加 工(直径:4mm)→オイルテンパー[油焼入れと鉛 (約450℃)焼戻し連続工程]にて直径4.0mm×650mm ワイヤを作製した。得られたワイヤについ 、歪取焼鈍相当処理(400℃)→ショットピーニ ング→低温焼鈍を行った後、中村式回転曲げ 試験機を用いて、公称応力908MPa、回転数:4000~ 5000rpm、中止回数:2×107回で試験を行った。そ て、破断したもののうち介在物折損したも について、下記式により破断率を求めた。
破断率(%)=[介在物折損本数/(介在物折損本数+ 定回数に達し中止した本数)]
×100

 鋼線材の化学成分組成を、溶製時のスラ 組成と共に下記表1に、各鋼線材の介在物組 成および疲労特性(破断率)を下記表2に夫々示 す。

 これらの結果から、次のように考察でき 。試験No.31~34,36,37,40,41,46~53のものでは、介 物組成が適切に制御されたものであり、良 な疲労強度が得られていることが分かる。

 これに対して、試験No.35,38,39,42~45のもの は、介在物中の組成が本発明で規定する範 を外れたものとなっているので、疲労試験 果が良くない。

詳しくは、試験No.35、38では、SiO 2 ,CaOおよびMgOの濃度は適切に制御されている 、Al 2 O 3 濃度が高かったり低かったりして破断率が高 くなっている。

 試験No.39,42では、SrO高かったり低かった して破断率が高くなっている。

 試験No.43では、SiO 2 ,CaOおよびAl 2 O 3 の濃度は適切に制御されているが、MgO濃度が 高すぎて破断率が高くなっている。

試験No.44では、SiO 2 ,MgOおよびAl 2 O 3 の濃度は適切に制御されているが、CaO濃度が 高すぎて破断率が高くなっている。

 試験No.45では、MgO,Al 2 O 3 およびSrO濃度は適切に制御されているが、CaO +MgOの合計が低く、破断率が高くなっている