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Title:
SILVER-CLAD COMPOSITE MATERIAL FOR MOVABLE CONTACTS AND PROCESS FOR PRODUCTION THEREOF
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/041481
Kind Code:
A1
Abstract:
A silver-clad composite material (100) for movable contacts which comprises a base (110) made of an iron- or nickel-base alloy, an under clad layer (120) formed out of any one selected from among nickel, cobalt, nickel alloys and cobalt alloys on at least part of the surface of the base (110), an intermediate clad layer (130) formed out of copper or a copper alloy on the under clad layer (120), and an outermost clad layer (140) formed out of silver or a silver alloy on the intermediate clad layer (130), with the proviso that the total thickness of the under clad layer (120) and the intermediate clad layer (130) is 0.025 to 0.20μm.

Inventors:
TOKUHARA NAOFUMI (JP)
OHNO MASATO (JP)
UNO TAKEO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/067275
Publication Date:
April 02, 2009
Filing Date:
September 25, 2008
Export Citation:
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Assignee:
FURUKAWA ELECTRIC CO LTD (JP)
TOKUHARA NAOFUMI (JP)
OHNO MASATO (JP)
UNO TAKEO (JP)
International Classes:
H01H1/04; C25D5/10; C25D5/12; C25D5/26; C25D7/00; H01H11/04
Domestic Patent References:
WO2007119522A12007-10-25
Foreign References:
JP2007138237A2007-06-07
JP2005174788A2005-06-30
JPS60251294A1985-12-11
JP2005133169A2005-05-26
JPS6123789A1986-02-01
JPS62256992A1987-11-09
Other References:
None
Attorney, Agent or Firm:
MATSUSHITA, Makoto (2-5-19 Shinyokohama, Kohoku-ku,Yokohama-sh, Kanagawa 33, JP)
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Claims:
 鉄またはニッケルを主成分とする合金からなる基材と、
 前記基材の表面の少なくとも一部に形成されたニッケル、コバルト、ニッケル合金およびコバルト合金の何れか1つからなる下地層と、
 前記下地層の上に形成された銅または銅合金からなる中間層と、
 前記中間層の上に形成された銀または銀合金からなる最表層とを備え、
 前記下地層の厚さと前記中間層の厚さの合計が0.025μm以上0.20μm以下となっていることを特徴とする可動接点用銀被覆複合材料。
 前記下地層が厚さ0.04μm以下となっていることを特徴とする請求項1に記載の可動接点用銀被覆複合材料。
 前記下地層が厚さ0.009μm以下となっていることを特徴とする請求項1に記載の可動接点用銀被覆複合材料。
 前記基材はステンレス鋼からなっていることを特徴とする請求項1に記載の可動接点用銀被覆複合材料。
 前記下地層と前記中間層との界面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可動接点用銀被覆複合材料。
 前記中間層と前記最表層との界面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の可動接点用銀被覆複合材料。
 前記中間層が前記基材の表面と直接接するように、前記下地層の複数個所に欠落部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可動接点用銀被覆複合材料。
 鉄またはニッケルを主成分とする合金からなる金属条の基材を電解脱脂し、塩酸で酸洗して活性化する第1工程と、
 次いで、前記基板上に、塩化ニッケルと遊離塩酸とを含む電解液で電解してニッケルめっきを施すか、塩化ニッケルと遊離塩酸とを含む電解液に塩化コバルトを添加してニッケル合金めっきを施すかのいずれかのめっき処理を施して下地層を形成する第2工程と、
 次いで、前記下地層上に、硫酸銅と遊離硫酸とを含む電解液で電解して銅めっきを施すか、シアン化銅、シアン化カリウムを基本とし、シアン化亜鉛またはスズ酸カリウムを加えて電解して銅合金めっきを施すかのいずれかのめっき処理を施して中間層を形成する第3工程と、
 次いで、前記中間層上に、シアン化銀とシアン化カリウムとを含む電解液で電解して銀めっきを施すか、シアン化銀とシアン化カリウムとを含む電解液に酒石酸アンチモニルカリウムを添加して銀合金めっきを施すかのいずれかのめっき処理を施して最表層を形成する第4工程と、を備え、前記下地層の厚さと前記中間層の厚さの合計が0.025μm以上0.20μm以下となっている可動接点銀被覆複合材料を製造することを特徴とする可動接点用銀被覆複合材料の製造方法。
 前記銅めっきまたは前記銅合金めっきのいずれかのめっき処理を施した後、前記銀めっきまたは前記銀合金めっきのいずれかのめっき処理を施す前に、シアン化銀とシアン化カリウムとを含む電解液で電解して銀ストライクめっきを施して、銀被覆複合材料を製造することを特徴とする請求項11に記載の可動接点用銀被覆複合材料の製造方法。
 鉄またはニッケルを主成分とする合金からなる基材と、該基材の表面の少なくとも一部に形成されたニッケル、コバルト、ニッケル合金およびコバルト合金の何れか1つからなる下地層と、前記下地層の上に形成された銅または銅合金からなる中間層と、前記中間層の上に形成された銀または銀合金からなる最表層とを備え、前記下地層の厚さと前記中間層の厚さの合計が0.025μm以上0.20μm以下となっている可動接点用銀被覆複合材料を製造する可動接点用銀被覆複合材料の製造方法であって、
 前記基材を電解脱脂し、その後ニッケルイオンとコバルトイオンの少なくとも一方を含有する酸性溶液で酸洗して活性化する活性化処理により、前記下地層を形成することを特徴とする可動接点用銀被覆複合材料の製造方法。
 鉄またはニッケルを主成分とする合金からなる基材を電解脱脂し、その後ニッケルイオンとコバルトイオンの少なくとも一方を含有する酸性溶液で酸洗して活性化する活性化処理により、ニッケル、コバルト、ニッケル合金およびコバルト合金の何れか1つからなる下地層を前記基材上に形成する第1工程と、
 次いで、前記下地層上に、硫酸銅と遊離硫酸とを含む電解液で電解して銅めっきを施すか、シアン化銅、シアン化カリウムを基本とし、シアン化亜鉛またはスズ酸カリウムを加えて電解して銅合金めっきを施すかのいずれかのめっき処理を施して中間層を形成する第2工程と、
 次いで、前記中間層上に、シアン化銀とシアン化カリウムとを含む電解液で電解して銀めっきを施すか、シアン化銀とシアン化カリウムとを含む電解液に酒石酸アンチモニルカリウムを添加して銀合金めっきを施すかのいずれかのめっき処理を施して最表層を形成する第3工程と、を備え、前記下地層の厚さと前記中間層の厚さの合計が0.025μm以上0.20μm以下となっている可動接点用銀被覆複合材料を製造することを特徴とする可動接点用銀被覆複合材料の製造方法。
 前記活性化処理時の陰極電流密度を2.0~5.0(A/dm 2 )の範囲内とすることを特徴とする請求項10または11に記載の可動接点用銀被覆複合材料の製造方法。
 前記活性化処理時の陰極電流密度を3.0~5.0(A/dm 2 )の範囲内とし、前記下地層が厚さ0.04μm以下となっている可動接点用銀被覆複合材料を製造することを特徴とする請求項12に記載の可動接点用銀被覆複合材料の製造方法。
 前記活性化処理時の陰極電流密度を2.5~4.0(A/dm 2 )の範囲内とし、前記下地層と前記中間層との界面に凹凸が形成されている可動接点用銀被覆複合材料を製造することを特徴とする請求項12に記載の可動接点用銀被覆複合材料の製造方法。
  前記活性化処理時の陰極電流密度を2.0~3.5(A/dm 2 )の範囲内とし、前記中間層が前記基材の表面と直接接するように、前記下地層の複数個所に欠落部が形成されている可動接点用銀被覆複合材料を製造することを特徴とする請求項12に記載の可動接点用銀被覆複合材料の製造方法。
 前記基材は金属条であることを特徴とする請求項10または11に記載の可動接点用銀被覆複合材料の製造方法。
 前記基材はステンレス鋼からなることを特徴とする請求項16に記載の可動接点用銀被覆複合材料の製造方法。
Description:
可動接点用銀被覆複合材料およ その製造方法

 本発明は、可動接点に用いられる銀被覆 合材料およびその製造方法に関し、特に長 命の可動接点が得られる銀被覆複合材料お びその製造方法に関する。

 コネクタ、スイッチ、端子などの電気接 部には皿バネ接点、ブラシ接点、クリップ 点などが用いられている。これら接点には 比較的安価で、耐食性、機械的性質などに れる銅合金やステンレス鋼をはじめとする ・ニッケル合金などの基材上にニッケルを 地めっきし、その上に導電性と半田付け性 優れる銀を被覆した銀被覆複合材料が多用 れている(特許文献1参照)。

 特にステンレス鋼基材を用いた銀被覆複 材料は、銅合金基材を用いたものより機械 性質、疲労寿命などに優れるため接点の小 化に有利であり、また動作回数の増加も可 なため長寿命のタクティルプッシュスイッ や検出スイッチなどの可動接点に使用され いる。

 しかしながら、ステンレス鋼基材上にニ ケルを下地めっきし、その上に銀を被覆し 銀被覆複合材料は、スイッチの接点圧力が きいため、繰り返しの接点開閉動作におい 、接点部の銀被覆層が剥離し易いという問 があった。この現象は以下のような理由で こると理解されている。

 図11に例示する銀被覆複合材料900は、ス ンレス鋼からなる基材901の上に、下地層902 び最表層903が形成されている(同図(a))。下地 層902を形成するニッケルと最表層903を形成す る銀とが互いに固溶しない性質を持っており 、かつ最表層903には大気から酸素が浸入して 拡散する現象が起こる。そのため、最表層903 に浸入し拡散した酸素が下地層902と最表層903 との界面に到達し、ここでニッケルの酸化物 904を生成するために、下地層902と最表層903と の間の密着力が低下する(同図(b))。

 上述した問題点を解決する手段として、ス ンレス鋼基材上に下地層(ニッケル層)、中 層(銅層)、最表層(銀層)をこの順に電気めっ した銀被覆複合材料(特許文献2~5参照)が提 されている。これらの技術を用いて形成さ た銀被覆複合材料の一例を図12に示す。銀被 覆複合材料910は、互いに固溶しないニッケル と銀とでそれぞれ形成された下地層912と最表 層914との間に、ニッケルと銀の両方と互いに 固溶する銅で形成された層を中間層913として 設けている(図12)。これにより、中間層913と 層912、914との間で相互拡散させるようにす ことで、各層間の密着性を高めることがで る。さらに、大気から浸入して最表層914中 拡散する酸素を、中間層113から最表層114に 溶してきた銅に捕獲させることで、界面で 酸素の蓄積による密着性の低下を防ぐ効果 あり、密着性の低下を防止することができ 。

特開昭59-219945号公報

特開2004-263274号公報

特開2005-  2400号公報

特開2005-133169号公報

特開2005-174788号公報

 しかしながら、上記技術には以下の欠点 あることが明らかとなった。即ち、従来の ッケル層と銀層をこの順に電気めっきして 成した銀被覆複合材料にくらべ、銅からな 中間層を形成した場合には、長期間使用し ときの接触抵抗の上昇がより早くなるとい 問題がある。また、下地層(ニッケル層)ま は中間層(銅層)の少なくとも一方が厚すぎる と、これらの層の屈曲性が低下する結果、プ レス加工時などに下地層または中間層の少な くとも一方にクラックが入るなどの不具合の 原因となることも分かってきた。

 本発明の目的は、プレス加工等に対する高 加工性を有し、可動接点に用いて開閉動作 繰り返し行っても銀被覆層が剥離せず、さ に長期間の使用においても接触抵抗の上昇 抑えられて長寿命の可動接点が得られる、 動接点用銀被覆複合材料およびその製造方 を提供することにある。
 本発明の別の目的は、プレス加工等に対す 高い加工性を有し、可動接点に用いて開閉 作を繰り返し行っても銀被覆層が剥離せず かつ長期間の使用においても接触抵抗の上 が抑えられて長寿命の可動接点が得られ、 らに層間の密着性を飛躍的に向上できる、 動接点用銀被覆複合材料およびその製造方 を提供することにある。

 本発明者らはこのような状況に鑑み鋭意 究を行った結果、中間層から最表層中に固 した銅が最表層の表面に達し、これが酸化 て高電気抵抗の酸化物を生成するために接 抵抗の上昇が発生することを突き止めた(図 13)。このような課題の解決手段として、中間 層の厚さを小さくして最表層の表面に到達す る銅の量を少なくすることで、接触抵抗の上 昇を防止できることを見出した。また、下地 層および中間層を薄くすることで、プレス加 工時のひび割れを抑制し、さらに接点の繰り 返し開閉動作における接触抵抗の上昇を抑制 できることを見出した。さらに、下地層と中 間層との界面に例えば波状の凹凸を形成する ことで、下地層と中間層との界面における密 着性を大幅に向上できることを見出した。さ らに、中間層が基材に直接接するように下地 層(下地領域)を欠落させた部分を形成し、こ 下地欠落部で中間層と基材とが直接接する うにすることで、下地層と中間層との界面 おける密着性を大幅に向上できることを見 した。この発明は上述した知見に基づきな れたものである。

 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の 1の態様は、鉄またはニッケルを主成分とす る合金からなる基材と、前記基材の表面の少 なくとも一部に形成されたニッケル、コバル ト、ニッケル合金およびコバルト合金の何れ か1つからなる下地層と、前記下地層の上に 成された銅または銅合金からなる中間層と 前記中間層の上に形成された銀または銀合 からなる最表層とを備え、前記下地層の厚 と前記中間層の厚さの合計が0.025μm以上0.20μ m以下となっていることを特徴とする。

 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の第2 の態様は、前記下地層が厚さ0.04μm以下とな ていることを特徴とする。
 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の第3 の態様は、前記下地層が厚さ0.009μm以下とな ていることを特徴とする。
 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の第4 の態様は、前記基材はステンレス鋼からなっ ていることを特徴とする。
 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の第5 の態様は、前記下地層と前記中間層との界面 に凹凸が形成されていることを特徴とする。
 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の第6 の態様は、前記中間層と前記最表層との界面 に凹凸が形成されていることを特徴とする。
 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の第7 の態様は、前記中間層が前記基材の表面と直 接接するように、前記下地層の複数個所に欠 落部が形成されていることを特徴とする。

 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の製 方法の第1の態様は、鉄またはニッケルを主 成分とする合金からなる金属条の基材を電解 脱脂し、塩酸で酸洗して活性化する第1工程 、次いで、前記基板上に、塩化ニッケルと 離塩酸とを含む電解液で電解してニッケル っきを施すか、塩化ニッケルと遊離塩酸と 含む電解液に塩化コバルトを添加してニッ ル合金めっきを施すかのいずれかのめっき 理を施して下地層を形成する第2工程と、次 で、前記下地層上に、硫酸銅と遊離硫酸と 含む電解液で電解して銅めっきを施すか、 アン化銅、シアン化カリウムを基本とし、 アン化亜鉛またはスズ酸カリウムを加えて 解して銅合金めっきを施すかのいずれかの っき処理を施して中間層を形成する第3工程 と、
 次いで、前記中間層上に、シアン化銀とシ ン化カリウムとを含む電解液で電解して銀 っきを施すか、シアン化銀とシアン化カリ ムとを含む電解液に酒石酸アンチモニルカ ウムを添加して銀合金めっきを施すかのい れかのめっき処理を施して最表層を形成す 第4工程と、を備え、前記下地層の厚さと前 記中間層の厚さの合計が0.025μm以上0.20μm以下 となっている可動接点銀被覆複合材料を製造 することを特徴とする。

 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の 造方法の第2の態様は、この可動接点用銀被 覆複合材料の製造方法において、前記銅めっ きまたは前記銅合金めっきのいずれかのめっ き処理を施した後、前記銀めっきまたは前記 銀合金めっきのいずれかのめっき処理を施す 前に、シアン化銀とシアン化カリウムとを含 む電解液で電解して銀ストライクめっきを施 して、銀被覆複合材料を製造することを特徴 とする。

 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の 造方法の第3の態様は、鉄またはニッケルを 主成分とする合金からなる基材と、該基材の 表面の少なくとも一部に形成されたニッケル 、コバルト、ニッケル合金およびコバルト合 金の何れか1つからなる下地層と、前記下地 の上に形成された銅または銅合金からなる 間層と、前記中間層の上に形成された銀ま は銀合金からなる最表層とを備え、前記下 層の厚さと前記中間層の厚さの合計が0.025μm 以上0.20μm以下となっている可動接点用銀被 複合材料を製造する可動接点用銀被覆複合 料の製造方法であって、前記基材を電解脱 し、その後ニッケルイオンとコバルトイオ の少なくとも一方を含有する酸性溶液で酸 して活性化する活性化処理により、前記下 層を形成することを特徴とする。

 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の 造方法の第4の態様は、鉄またはニッケルを 主成分とする合金からなる基材を電解脱脂し 、その後ニッケルイオンとコバルトイオンの 少なくとも一方を含有する酸性溶液で酸洗し て活性化する活性化処理により、ニッケル、 コバルト、ニッケル合金およびコバルト合金 の何れか1つからなる下地層を前記基材上に 成する第1工程と、次いで、前記下地層上に 硫酸銅と遊離硫酸とを含む電解液で電解し 銅めっきを施すか、シアン化銅、シアン化 リウムを基本とし、シアン化亜鉛またはス 酸カリウムを加えて電解して銅合金めっき 施すかのいずれかのめっき処理を施して中 層を形成する第2工程と、次いで、前記中間 層上に、シアン化銀とシアン化カリウムとを 含む電解液で電解して銀めっきを施すか、シ アン化銀とシアン化カリウムとを含む電解液 に酒石酸アンチモニルカリウムを添加して銀 合金めっきを施すかのいずれかのめっき処理 を施して最表層を形成する第3工程と、を備 、前記下地層の厚さと前記中間層の厚さの 計が0.025μm以上0.20μm以下となっている可動 点用銀被覆複合材料を製造することを特徴 する。

 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の製 方法の第5の態様は、前記活性化処理時の陰 極電流密度を2.0~5.0(A/dm 2 )の範囲内とすることを特徴とする。
 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の製 方法の第6の態様は、前記活性化処理時の陰 極電流密度を3.0~5.0(A/dm 2 )の範囲内とし、前記下地層が厚さ0.04μm以下 なっている可動接点用銀被覆複合材料を製 することを特徴とする。

 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の製 方法の第7の態様は、前記活性化処理時の陰 極電流密度を2.5~4.0(A/dm 2 )の範囲内とし、前記下地層と前記中間層と 界面に凹凸が形成されている可動接点用銀 覆複合材料を製造することを特徴とする。
 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の製 方法の第8の態様は、前記活性化処理時の陰 極電流密度を2.0~3.5(A/dm 2 )の範囲内とし、前記中間層が前記基材の表 と直接接するように、前記下地層の複数個 に欠落部が形成されている可動接点用銀被 複合材料を製造することを特徴とする。

 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の製 方法の第9の態様は、前記基材は金属条であ ることを特徴とする。
 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の製 方法の第10の態様は、前記基材はステンレ 鋼からなることを特徴とする。

 本発明によれば、プレス加工等に対する高 加工性を有し、可動接点に用いて開閉動作 繰り返し行っても銀被覆層が剥離せず、さ に長期間の使用においても接触抵抗の上昇 抑えられて長寿命の可動接点が得られる、 動接点用銀被覆複合材料およびその製造方 を提供することができる。
 本発明によれば、下地層を所定の厚さとす ことにより、最表層中の銅量を所定の値以 に抑制することができ、接触抵抗の上昇を 制することができる。
 本発明によれば、プレス加工等に対する高 加工性を有し、可動接点に用いて開閉動作 繰り返し行っても銀被覆層が剥離せず、か 長期間の使用においても接触抵抗の上昇が えられて長寿命の可動接点が得られ、層間 密着性を飛躍的に向上できる、可動接点用 被覆複合材料およびその製造方法を提供す ことができる。
 本発明によれば、下地層と中間層との界面 凹凸が形成されているため、両者の接触面 が増大し、下地層と中間層との間の相互拡 による両者の密着性が向上する。さらに中 層と最表層との界面に凹凸が形成されてい 場合には、中間層と最表層との間の相互拡 による両者の密着性が向上する効果も得ら る。
 本発明によれば、中間層が基材の表面と直 接するように、下地層の複数個所に欠落部 形成されているため、下地領域と中間層と 接触面積が増大し、下地領域と中間層との の相互拡散による両者の密着性が向上する

図1は本発明の第1実施形態に係る可動 点用銀被覆複合材料を示す断面図である。 図2は本発明の第1実施形態に係る可動 点用銀被覆複合材料の製造方法(第1実施形態 に係る製造方法)を示す流れ図である。 図3は表1に示す実施例の可動接点用銀 覆複合材料を用いて形成したスイッチを示 平面図である。 図4(a)は図3に示したスイッチのA-A断面 でオフ状態を示す図、図4(b)は同スイッチの ン状態を示す断面図である。 図5(a)~(c)は本発明の第2実施形態に係る 動接点用銀被覆複合材料の製造方法(第2実 形態に係る製造方法)を説明するための模式 である。 図6は本発明の第2実施形態に係る可動 点用銀被覆複合材料を示す断面図である。 図7は本発明の第3実施形態に係る可動 点用銀被覆複合材料を示す断面図である。 図8(a)~(c)は本発明の第4実施形態に係る 動接点用銀被覆複合材料の製造方法(第4実 形態に係る製造方法)を説明するための模式 である。 図9は本発明の第4実施形態に係る可動 点用銀被覆複合材料を示す断面図である。 図10(a)~(c)は本発明の第6実施形態に係 可動接点用銀被覆複合材料の製造方法(第4実 施形態に係る製造方法)を説明するための模 図である。 図11(a),(b)は従来の銀被覆複合材料を示 す断面図である。 図12は従来の別の銀被覆複合材料を示 断面図である。 図13は従来の別の銀被覆複合材料で形 される酸化物を示す断面図である。

符号の説明

100,100A,200,100B  可動接点用銀被覆複合材料
110,210  基材
120,220  下地層
120a  ニッケル(Ni)の核
130,230  中間層
140,240  最表層
200  スイッチ
210  ドーム型可動接点
220  固定接点
230  充填材
240  樹脂ケース

 本発明の可動接点用銀被覆複合材料およ その製造方法について、望ましい実施の形 を詳細に説明する。

(可動接点用銀被覆複合材料の第1実施形態)
 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の第1 実施の形態を、図1に示す断面図を用いて説 する。本実施形態の可動接点用銀被覆複合 料100は、鉄またはニッケルを主成分とする 金からなる基材110と、基材110の表面の少な とも一部に形成された下地層120と、下地層12 0の上に形成された中間層130と、中間層130の に形成された最表層140とを備えている。

 本実施形態では、鉄またはニッケルを主 分とする合金からなる基材110としてステン ス鋼を使用する。ここで、鉄またはニッケ を主成分とする合金とは、鉄またはニッケ の少なくとも一方の質量比が50質量%以上で る合金を意味する。可動接点の機械的強度 担う基材110に用いるステンレス鋼として、 力緩和特性および耐疲労破壊特性に優れるS US301、SUS304、SUS305、SUS316などの圧延調質材ま はテンションアニール材が好適である。

 ステンレス鋼の基材110上に形成される下 層120は、ニッケル、コバルト、ニッケル合 、コバルト合金のいずれか1つで形成される 。下地層120は、基材110に用いられるステンレ ス鋼と中間層130との密着性を高めるために配 置される。中間層130は、銅または銅合金で形 成され、下地層120と最表層140との密着性を高 めるために配置される。なお、下地層120と基 材110との間に特定の目的でさらに別の層を設 けてもよい。

 下地層120を形成する金属として、ニッケ 、コバルト、またはこれらを主成分(全体の 質量比として50質量%以上)とする合金が用い れるが、なかでもニッケルを用いるのが好 しい。この下地層120は、ステンレス鋼から る基材110を陰極にして、例えば塩化ニッケ 及び遊離塩酸を含む電解液を用いて電解す ことにより形成することができる。なお、 下では、下地層120の金属としてニッケルを いた例について説明するが、ニッケルに限 ず、コバルト、ニッケル合金およびコバル 合金のいずれを用いた場合でも、以下の説 と同様の効果が得られる。

 従来の銀被覆複合材料における加工性悪 の原因は、下地層または中間層の少なくと 一方が厚すぎるために、これらの層の屈曲 が低下することによるものであった。その 策として、本実施形態では基材110の表面と 地層120、下地層120と中間層130、中間層130と 表層140の各層間の密着性が維持される範囲 、下地層120および中間層130を薄くすること より、高い加工性を有する可動接点用銀被 複合材料100を形成している。

 一方、従来の接触抵抗上昇の原因は、最 層の銀被覆層中に拡散した中間層の銅が最 層の表面に達し、これが酸化することによ ものであった。すなわち、図12に一例を示 ように、中間層913から最表層914中に固溶し 銅が最表層914の表面に達し、これが酸化し 高電気抵抗の酸化物915(図13参照)を生成する めに接触抵抗の上昇が発生していた。

 このような課題を解決するために、本実 形態では基材110の表面と下地層120、下地層1 20と中間層130、中間層130と最表層140の各層間 密着性が維持される範囲で、中間層130の銅 最表層140の表面に達しないような中間層130 好適な厚さを決定している。本実施形態で 、下地層120の厚さD1に中間層130の厚さD2を加 えた合計厚さDTが0.025~0.20μmの範囲となるよう に、中間層130の厚さD2を決定している。

 また、図1に示す下地層120の厚さD1を、本 施形態では0.04μm以下としている。下地層120 の厚さD1にこのような上限を設けることによ 、下地層120が厚すぎることによる加工性の 化を防止している。より好ましくは、下地 120の厚さD1を0.009μm以下とするのがよく、こ の場合には高い加工性を得る効果がより一層 顕著に現れるようになる。

 これにより、各層間で高い密着性を維持 つつ、最表層140の表面への銅の拡散及びそ に伴う酸化を抑えることができる。最表層 して最も望ましい形態は、中間層近傍にの 銅を含み、表面付近には銅を含まない銀ま は銀合金層が形成されている構成である。 表層の厚さD3は、導電性、コスト、曲げ加 性などを考慮すると、0.5~1.5μmであることが ましい。

 加工性を改善する観点からは、下地層120 よび中間層130を薄くするのが好ましいが、 地層120の厚さと中間層130の厚さの合計DTに 限値0.025μmを設けているのは、この値を下回 ると、基材110の表面と下地層120、下地層120と 中間層130、中間層130と最表層140の各層間の密 着性を高める効果が低下することによるもの である。また、下地層120の厚さと中間層130の 厚さの合計DTに上限値0.20μmを設けているのは 、この値を上回ると、使用環境における接触 抵抗の上昇が起こりやすくなることによるも のである。下地層120の厚さD1および中間層130 厚さD2を上述した範囲内にすることによっ 、プレス加工時の各層の割れを防止するこ ができる。

 本実施形態の可動接点用銀被覆複合材料1 00の下地層120、中間層130、および最表層140の 層は、電気めっき法、無電解めっき法、物 ・化学的蒸着法など任意の方法を用いて形 できるが、中でも電気めっき法が生産性お びコストの面から最も有利である。上述し 各層は、ステンレス鋼の基材110の全面に形 してもよいが、接点部のみに限定して形成 るのがより経済的である。また、各層間の 着強度を向上させるために、加熱処理など 公知の方法を適用することもできる。

 なお、銅または銅合金で形成された中間 130以外の層にも、銅を合金化させるように てもよい。その場合は、合金化された銅に 当する量だけ中間層130の銅の量を減らすよ にすればよい。また、他の目的でニッケル の下にさらに下地層を設けてもよい。この 合、ニッケル層の下に形成した下地層の中 銅が含まれていても、ニッケル層の下に形 された下地層の銅は、最表層の銀層への拡 には殆ど寄与しない。

(可動接点用銀被覆複合材料の製造方法の第1 施形態)
 上記第1実施形態に係る可動接点用銀被覆複 合材料100を製造する可動接点用銀被覆複合材 料の製造方法の第1実施形態(実施形態に係る 造方法)について、図2に示す流れ図を用い 以下に説明する。図2では、第1実施形態の製 造方法を、可動接点用銀被覆複合材料100を例 に説明している。

 本実施形態の製造方法は、第1の工程とし て、基材110となるステンレス条をオルトケイ 酸ソーダまたは苛性ソーダなどのアルカリ性 溶液中で陰極電解脱脂し、その後塩酸で酸洗 して活性化する(図2のS1)。

 次の第2工程では、塩化ニッケルと遊離塩酸 とを含む電解液で、陰極電流密度(2~5A/dm 2 )で電解してニッケルめっきを施すことで、 地層120を形成する(図2のS2)。なお、上記のニ ッケルめっきの電解液として、スルファミン 酸ニッケル(100~150g/リットル)とホウ素(20~50g/ ットル)を添加し、pHを2.5~4.5の範囲で調整し 電解液を用いてもよい。

 次の第3工程では、硫酸銅と遊離硫酸とを含 む電解液で、陰極電流密度(2~6A/dm 2 )で電解して銅めっきを施すことで、中間層13 0を形成する(図2のS3)。

 最後の第4工程では、シアン化銀とシアン化 カリウムとを含む電解液で、陰極電流密度(2~ 15A/dm 2 )で電解して銀めっきを施すことで最表層140 形成する(図2のS4)。このような第1工程S1から 第4工程S4までの処理により、可動接点用銀被 覆複合材料100を製造することができる。

 なお、下地層120を形成する第2工程S2におい 、上記のニッケルめっきの代わりに、塩化 ッケルと遊離塩酸とを含む電解液に塩化コ ルトを添加し、陰極電流密度(2~5A/dm 2 )で電解することでニッケル合金(ニッケル-コ バルト合金)めっきを施してもよい。また、 間層130を形成する第3工程S3において、上記 銅めっきの代わりに、シアン化銅、シアン カリウムを基本とし、シアン化亜鉛または ズ酸カリウムを加えて陰極電流密度(2~5A/dm 2 )で電解して銅合金(銅-亜鉛合金または銅-ス 合金)めっきを施してもよい。

 また、第3工程S3に先立って、または第3工程 S3の代替工程として、硫酸銅と遊離硫酸とを む電解液で、陰極電流密度(1~3A/dm 2 )で電解して銅ストライクめっきを施しても い。中間層130のうち少なくとも下地層120と する部分について銅ストライクめっきを施 ことにより、下地層120と中間層130との密着 が向上するほか、中間層130が緻密に形成さ るため、その後に形成される最表層140も緻 に形成され、各層の界面における表面粗さ 、プレス加工時などに割れを引き起こすほ に大きくなることを防ぐことができる。す わち、銅ストライクめっきを施すことによ 、プレス加工時の各層の割れを防止する効 がより一層発揮されることになる。

 さらに、最表層140を形成する第4工程S4にお て、上記の銀めっきの代わりに、シアン化 とシアン化カリウムとを含む電解液に酒石 アンチモニルカリウムを添加し、陰極電流 度(2~5A/dm 2 )で電解して銀合金(銀-アンチモン合金)めっ を施してもよい。あるいは、第3工程S3の銅 っきまたは銅合金めっきの後に、シアン化 とシアン化カリウムとを含む電解液で、陰 電流密度(1~5A/dm 2 )で電解して銀ストライクめっきを施し、そ 後銀めっきまたは銀合金めっきを施しても い。

(第1実施形態に係る製造方法の実施例1)
 上記一実施形態の可動接点用銀被覆複合材 100を製造する上記第1実施形態に係る製造方 法について、実施例1を用いて更に詳細に説 する。
 以下の実施例1では、基材110として条形状の ステンレス鋼SUS301(以下ではSUS301条と記す)を い、SUS301条の寸法を、厚さ0.06mm、条幅100mm する。SUS301条を連続的に通板して巻き取る っきラインにおいて、SUS301条を電解脱脂し 水洗し、電解活性化しかつ水洗する第1工程 ニッケルめっき(又はニッケル-コバルトめ き)および水洗の処理を行う第2工程、銅めっ きおよび水洗の処理を行う第3工程、および 銀ストライクめっき、銀めっき、水洗およ 乾燥の各処理を行う第4工程、のそれぞれが 施される。

 各工程の処理条件は次のとおりである。
1.第1工程(電解脱脂、電解活性化)
 ステンレス条をオルトケイ酸ソーダ70~150g/ ットル(本実施例では100g/リットル)または苛 ソーダ50~100g/リットル(本実施例では70g/リッ トル)の水溶液で陰極電解脱脂し、10%塩酸で 洗して活性化する。

2.第2工程
(1)ニッケルめっきの場合
 塩化ニッケル六水和物10~50g/リットル(本実 例では25g/リットル)と遊離塩酸30~100g/リット (本実施例では50g/リットル)とを含む電解液 陰極電流密度2~5A/dm 2 (本実施例では3A/dm 2 )で電解してめっきする。
 (2)ニッケル合金めっきの場合
 上述しためっき液に、塩化コバルト六水和 または第二塩化銅二水和物を、めっき液中 コバルトイオン濃度または銅イオン濃度が ニッケルイオンとコバルトイオンまたは銅 オンとを加えた濃度の5~20%に相当する濃度( 実施例では10%)となるように添加してめっき する。

3.第3工程
(1)銅ストライクめっきの場合
 硫酸銅五水和物10~30g/リットル(本実施例で 15g/リットル)と遊離硫酸50~150g/リットル(本実 施例では100g/リットル)とを含む電解液で陰極 電流密度1~3A/dm 2 (本実施例では2A/dm 2 )で電解してめっきする。
(2)銅めっきの場合
 硫酸銅五水和物20~60g/リットル(本実施例で 40g/リットル)と遊離硫酸50~150g/リットル(本実 施例では100g/リットル)とを含む電解液で陰極 電流密度2~6A/dm 2 (本実施例では5A/dm 2 )で電解してめっきする。
(3)銅合金めっきの場合
 シアン化銅30~70g/リットル(本実施例では50g/ ットル)、シアン化カリウム50~100g/リットル( 本実施例では75g/リットル)、水酸化カリウム3 0~50g/リットル(本実施例では40g/リットル)を基 本とし、シアン化亜鉛0.2~0.4g/リットル(本実 例では0.3g/リットル)またはスズ酸カリウム0. 5~2g/リットル(本実施例では1g/リットル)を加 て陰極電流密度2~5A/dm 2 (本実施例では3A/dm 2 )で電解してめっきする。

4.第4工程
(1)銀ストライクめっきの場合
 シアン化銀3~7g/リットル(本実施例では5g/リ トル)とシアン化カリウム30~70g/リットル(本 施例では50g/リットル)とを含む電解液で陰 電流密度1~3A/dm 2 (本実施例では2A/dm 2 )で電解してめっきする。
(2)銀めっきの場合
 シアン化銀30~100g/リットル(本実施例では50g/ リットル)とシアン化カリウム30~100g/リットル (本実施例では50g/リットル)とを含む電解液で 陰極電流密度2~15A/dm 2 (本実施例では5A/dm 2 )で電解する。なお、必要に応じて炭酸カリ ム20~40g/リットル(本実施例では30g/リットル) 加えてもよい。
(3)銀合金めっきの場合
上記電解液に酒石酸アンチモニルカリウム0.3 ~1g/リットル(本実施例では0.6g/リットル)を添 して電解してめっきする。

 実施例のサンプルとして、下地領域120の さ、中間層130の厚さ、最表層140の厚さをそ ぞれ種々に変化させたものを表1に示す。な お、表1に示す実施例のサンプルNo.49~52の試料 については、アルゴン(Ar)ガス雰囲気中で250 、2時間の熱処理を行った。

 上記の処理条件で製造された表1の可動接 点用銀被覆複合材料を用いて、図3および図4 示す構造のスイッチ200を製造した。図3は、 スイッチ200の平面図であり、図4は、図3に示 A-A線におけるスイッチ200の断面図を示して る。

 同図に示すドーム型可動接点210は、表1に 示した実施例の可動接点用銀被覆複合材料を 用いて直径4mmφに加工して形成したものであ 、固定接点220a、220bは、黄銅条に銀を1μm厚 にめっきして形成したものである。ドーム 可動接点210は樹脂の充填材230で被われ、固 接点220とともに樹脂ケース240に収納されて る。スイッチ200は、図4(a)に示すドーム型可 動接点210が上に凸状態のときがオフの状態で あり、図4(b)に示すように、ドーム型可動接 210が押下されて固定接点220aと220bとが電気的 に接続されたときがオンの状態となる。

上記のようなスイッチ200を用い、図4(a),(b)に したオン/オフ状態を繰り返すことで打鍵試 験を行なった。打鍵試験では、接点圧力:9.8N/ mm 2 、打鍵速度:5Hzで最大200万回の打鍵を行って る。ドーム型可動接点210について、打鍵試 中の接触抵抗の経時変化を測定した結果を 初期値、100万回の打鍵後(打鍵後1)、200万回 打鍵後(打鍵後2)について、それぞれ表2に示 ている。また、200万回の打鍵試験を終了し 後、ドーム型可動接点210に対しクラックの 無等の状況を観察し、その結果も表2に記し ている。なお、接触抵抗の値は、100mω以下で あれば実用上差し支えないとされる。

 加熱試験は、すべてのサンプルについて 85℃のエアバスで1000時間の加熱を行って、 触抵抗の変化を測定し、その結果を表2に示 した。

 表1に示した実施例のサンプルNo.1~52は、 2に示すように、何れも200万回の打鍵試験を っても接触抵抗の増加は少なく、200万回打 後の接点部には下地層120及び中間層130の露 は見られなかった。さらに、1000時間の加熱 後も接触抵抗の上昇は小さく、すべてのサン プル1~52について接触抵抗の値が100mω以下と り、実用上問題のない値であった。

 これに対して、下地層120の厚さと中間層1 30の厚さの合計が0.025μmを下回る比較例のサ プルNo.101(表1参照)では、各層の密着性が低 することに起因する加工性の劣化がみられ 下地層120の厚さが本発明の範囲の上限より 大きい(0.05μm以上)の比較例のサンプルNo.102~1 08(表1参照)では、加工性が劣る傾向がみられ 。また、比較例のサンプルNo.101~108において 、加工性が劣ることに起因すると思われる接 触抵抗の上昇(具体的には、接触抵抗の値が10 0mωを超える状態)が200万回の打鍵後に検知さ た。

 さらに、比較例のサンプルNo.101~108におい て、加工性が劣ることに起因すると思われる 接点部のクラックが発見され、下地層120の厚 さが0.3μmの比較例のサンプルNo.106~108におい は、接点部の最表層が剥離し、下地層が露 していた。

 一方、中間層120の厚さが0.3μmのサンプル1 03、105、108(表1参照)では、加熱試験後に接触 抗の大幅な上昇(具体的には、接触抵抗の値 が100mωを超える状態)が見られ、打鍵試験後 クラックが確認された。

(第1実施形態に係る製造方法の実施例2)
 ここで、上記可動接点用銀被覆複合材料100 製造する第1実施形態に係る可動接点用銀被 覆複合材料の製造方法の実施例2について説 する。
 下地層120について:ニッケルのうち10質量%を 銅またはコバルトに置き換えたニッケル合金 めっきとした場合について、表1のサンプルNo .1~52およびNo.101~108と同様の試験を実施したが 、その試験結果は表2に示された結果と実質 に差異がなかった。ニッケルを完全にコバ トに置き換えた例についても同様であった

 中間層130について:銅のうち0.5質量%をス または亜鉛に置き換えた銅合金めっきとし 場合について、表1のサンプルNo.1~52およびNo. 101~108と同様の試験を実施したが、その試験 果は表2に示された結果と実質的に差異がな った。

 最表層140について:銀のうち1質量%をアンチ ンに置き換えた銀合金めっきとした場合に いて、表1のサンプルNo.1~52およびNo.101~108と 様の試験を実施したが、その試験結果は表2 に示された結果と実質的に差異がなかった。
 また、表1に示す各実施例を適宜組み合わせ たが、その試験結果は表2に示された結果と 質的に差異がなかった。

(可動接点用銀被覆複合材料の製造方法の第2 施形態)
 次に、図1に示す可動接点用銀被覆複合材料 100を製造する可動接点用銀被覆複合材料の製 造方法の第2実施形態(第2実施形態に係る製造 方法)を、図5(a)~(c)に基づいて説明する。

 本実施形態に係る可動接点用銀被覆複合材 の製造方法は、次の工程を有する。
 (第1工程) 鉄またはニッケルを主成分とす 合金からなるステンレス条である基材(金属 の基材)110を電解脱脂し、その後ニッケルイ オンを含有する酸性溶液で酸洗して活性化す る活性化処理により、ニッケルからなり、厚 さ0.04μm以下の下地層120を基材110上に形成す 。

 この第1工程では、基材110を活性化する活性 化処理を、例えば、次の条件で行う。
(1)ニッケルイオンを含有する酸性溶液として 、遊離塩酸を120g/リットル、塩化ニッケル六 和物を12g/リットル添加した酸性溶液を使用 する。なお、ニッケルイオンを含有する酸性 溶液として、遊離塩酸を80~200g/リットル(より 好ましくは100~150g/リットル)、塩化ニッケル 水和物を5~20g/リットル(より好ましくは10~15g/ リットル)の範囲で添加することが好ましい 遊離塩酸および塩化ニッケル六水和物の添 量が上記範囲外の場合は、いずれも基材と 地層との密着性が低下する傾向がある。
(2)活性化処理時の陰極電流密度を3.5(A/dm 2 )とする。なお、活性化処理時の陰極電流密 は2.0~5.0(A/dm 2 )の範囲内が好ましく、下地層を平坦にする 点からは3.0~5.0(A/dm 2 )の範囲内とすることがより好ましい。さら 好ましくは3.0~4.0(A/dm 2 )の範囲内である。活性化処理時の陰極電流 度が2.0(A/dm 2 )より低いと、基材と下地層との密着性が低 する傾向があるため好ましくない。また、 性化処理時の陰極電流密度が5.0(A/dm 2 )より高くなると、基材がステンレス鋼の場 は基材の発熱による影響が出る場合があり あまり好ましいとはいえない。

 このような条件で図5(a)に示す基材110の活 性化処理を行うことにより、基材110の表面全 体にニッケル(Ni)の核120aが隙間無く緻密にで (図5(b)参照)、さらに、基材110の表面全体に さ0.04μm以下の下地層120が形成される(図5(c) 照)。なお、本実施形態では、ニッケルから なる下地層120を活性化処理により形成してい るが、コバルトからなる下地層を同様の活性 化処理により形成する場合には、上記第1工 において、コバルトイオンを含有する酸性 液で基材110の活性化処理を行う。

 (第2工程) 下地層120上に、硫酸銅と遊離硫 とを含む電解液で、陰極電流密度(5A/dm 2 )で電解して銅めっきを施すことで、中間層13 0を形成する。
 (第3工程) 中間層130上に、シアン化銀とシ ン化カリウムとを含む電解液で電解して銀 っきを施して最表層140を形成する。

 このように、本実施形態に係る可動接点用 被覆複合材料の製造方法では、基材110を電 脱脂し、その後ニッケルイオンを含有する 性溶液で酸洗して活性化する活性化処理時 、基材110の表面全体に厚さ0.04μm以下の下地 層120を基材110上に形成するようにしている。 このため、図2を用いて説明した上記一実施 態に係る可動接点用銀被覆複合材料の製造 法における、下地層120を形成するためのニ ケルめっき或いはニッケル合金めっきの工 (図2のS2)が不要になる。従って、製造工程が 簡略され、作業時間が短縮されるので、可動 接点用銀被覆複合材料を低コストで製造する ことができる。
 また、ステンレス鋼からなる基材110の活性 処理時に、厚さが0.04μm以下の下地層120を基 材110上に形成することができる。このように 下地層120を形成すると、基材110と下地層120と の密着性が向上するだけでなく、下地層120と 中間層130との密着性も向上し、さらに長寿命 の可動接点用銀被覆複合材料を得ることがで きる。

 上記第2実施形態に係る製造方法で製造し たサンプルとして、下地層120の厚さ、中間層 130の厚さ、最表層140の厚さをそれぞれ表1に す実施例の試料と同様に種々に変化させた のを作成し、これらをサンプルNo.201~252(表3 照)とした。なお、表3に示した実施例のサン プルNo.249~252の試料については、アルゴン(Ar) ス雰囲気中で250℃、2時間の熱処理を行った 。また、比較例として、サンプルNo.301~308(表3 参照)を作成した。なお、表3のサンプルNo.201~ 252は、表1のサンプルNo.1~52とそれぞれ層構造 同一のサンプルであり、表3に示した比較例 のサンプルNo.301~308は、表1に示した比較例の ンプルNo.101~108とそれぞれ層構造が同一のサ ンプルである。対応関係は、表1に示した実 例のサンプルNo.に200を加えたサンプルNo.が 表3に示した実施例のサンプルNo.となる。

 上記の処理条件で製造されたサンプルNo.2 01~252およびサンプルNo.301~308の可動接点用銀 覆複合材料を用いて、図3および図4に示す構 造のスイッチ200と同様のスイッチを製造した 。その他の条件は、前述のサンプルNo.1~52お びサンプルNo.101~108の可動接点用銀被覆複合 料を用いた場合と同様とした。

 上記のようなスイッチを用い、図4に示した オン/オフ状態を繰り返すことで打鍵試験を なった。打鍵試験では、接点圧力:9.8N/mm 2 、打鍵速度:5Hzで最大200万回の打鍵を行って る。ドーム型可動接点210について、打鍵試 中の接触抵抗の経時変化を測定した結果を 初期値、100万回の打鍵後(打鍵後1)、200万回 打鍵後(打鍵後2)について、それぞれ表3に示 ている。また、200万回の打鍵試験を終了し 後、ドーム型可動接点210に対しクラックの 無等の状況を観察し、その結果も表3に示し ている。

 加熱試験は、すべてのサンプルについて 85℃のエアバスで1000時間の加熱を行って、 触抵抗の変化を測定し、その結果を表3に示 した。

 表3に示した実施例のサンプルNo.201~252は 表3に示すように、何れも200万回の打鍵試験 行っても接触抵抗の増加は少なく、200万回 鍵後の接点部には下地層120及び中間層130の 出は見られなかった。さらに、1000時間の加 熱後も接触抵抗の上昇は小さかった。特に、 表3に示す実施例のサンプルNo.201~252は、表1に 示す実施例のサンプルNo.1~52と比較して、200 回の打鍵試験における接触抵抗の増加およ 1000時間の加熱後の接触抵抗の増加が少なく すべてのサンプルについて接触抵抗の値が3 0mω以下となり、接点材料としての性能がき めて優れていることがわかった。なお、上 第1実施形態に係る製造方法の実施例1、2で 明した各種変形例は、上記第2実施形態に係 製造方法でも適用することができる。

(可動接点用銀被覆複合材料の第2実施形態)
 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の第2 実施形態を、図6に示す断面図を用いて説明 る。本実施形態の可動接点用銀被覆複合材 100Aは、鉄またはニッケルを主成分とする合 からなる基材110と、基材110の表面の少なく も一部に形成された下地層120と、下地層120 上に形成された中間層130と、中間層130の上 形成された最表層140とを備えている。本実 形態は、前述の可動接点用銀被覆複合材料 第1実施形態と共通点があるため、相違点を 中心に説明する。

 下地層120を形成する金属として、ニッケ 、コバルト、またはこれらを主成分(全体の 質量比として50質量%以上)とする合金が用い れるが、なかでもニッケルを用いるのが好 しい。この下地層120は、ステンレス鋼から る基材110を陰極にして、例えば塩化ニッケ 及び遊離塩酸を含む電解液を用いて電解す ことにより形成することができる。

 本実施形態では、下地層120と中間層130と 密着性を高めるために、両者の界面に凹凸1 50を形成するようにしている。凹凸150を形成 ることで、下地層120と中間層130との接触面 を増大させることができ、これにより両者 間の相互拡散による密着性の向上を図るこ ができる。図6に示す可動接点用銀被覆複合 材料100Aでは、一例として下地層120と中間層13 0との界面を波状の凹凸150に形成している。

 また、本実施形態では、接触抵抗の上昇を 制するために、基材110の表面と下地層120、 地層120と中間層130、中間層130と最表層140の 層間の密着性が維持される範囲で、中間層1 30の銅が最表層140の表面に達しないような中 層130の好適な厚さを決定している。本実施 態では、下地層120の平均厚さD1に中間層130 平均厚さD2を加えた合計の平均厚さDTが0.025~0 .20μmの範囲となるようにしている。さらに、 下地層120の厚さについては、平均値を0.001~0.0 4μmとすることが好ましい。さらに好ましく 、0.001~0.009μmである。なお、以下では、下地 層120の金属としてニッケルを用いた例につい て説明するが、ニッケルに限らず、コバルト 、ニッケル合金およびコバルト合金のいずれ を用いた場合でも、以下の説明と同様の効果 が得られる。
 これにより、各層間で高い密着性を維持し つ、最表層140の表面への銅の拡散及びそれ 伴う酸化を抑えることができる。最表層と て最も望ましい形態は、前述の可動接点用 被覆複合材料の第1実施形態と同様である。

 加工性を改善する観点からは、下地層120 よび中間層130を薄くするのが好ましいが、 地層120の平均厚さと中間層130の平均厚さの 計DTに下限値0.025μmを設けているのは、この 値を下回ると、基材110の表面と下地層120、下 地層120と中間層130、中間層130と最表層140の各 層間の密着性を高める効果が低減することに よるものである。また、下地層120の平均厚さ と中間層130の平均厚さの合計DTに上限値0.20μm を設けているのは、この値を上回ると、使用 環境における接触抵抗の上昇が起こりやすく なることによるものである。下地層120の平均 厚さD1および中間層130の平均厚さD2を上述し 範囲内にすることによって、プレス加工時 各層の割れを防止することができる。

 本実施形態の可動接点用銀被覆複合材料1 00Aの下地層120、中間層130、および最表層140の 各層は、電気めっき法、無電解めっき法、物 理・化学的蒸着法など任意の方法を用いて形 成できる。具体的には、前述の可動接点用銀 被覆複合材料の第1実施形態と同様に実施可 である。なお、銅または銅合金で形成され 中間層130以外の層にも、銅を合金化させる うにしてもよい。具体的には、前述の可動 点用銀被覆複合材料の第1実施形態と同様に 施可能である。

(可動接点用銀被覆複合材料の第3実施形態)
 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の第3 実施形態を、図7に示す断面図を用いて説明 る。第3実施形態に係る可動接点用銀被覆複 材料200は、図6に示す第2実施形態に係る可 接点用銀被覆複合材料100Aと同様に、鉄また ニッケルを主成分とする合金からなる基材2 10と、基材210の表面の少なくとも一部に形成 れた下地層220と、下地層220の上に形成され 中間層230と、中間層230の上に形成された最 層240とを備えている。

 本実施形態でも、下地層220と中間層230と 密着性を高めるために、両者の界面に凹凸2 50を形成しているが、これに加えて中間層230 最表層240との界面にも凹凸260を形成してい 。これにより、中間層230と最表層240との接 面積を増大させることができ、両者の間の 互拡散による密着性の向上を図ることがで る。

 上記のように、図7に示す第3実施形態の 動接点用銀被覆複合材料200では、下地層220 中間層230との界面に凹凸250を形成するとと に、中間層230と最表層240との界面にも凹凸26 0を形成することで、それぞれの界面におけ 密着性を向上させることができる。

(可動接点用銀被覆複合材料の製造方法の第3 施形態)
 図6に示す上記第2実施形態に係る可動接点 銀被覆複合材料100Aを製造する可動接点用銀 覆複合材料の製造方法の第3実施形態(第3実 形態に係る製造方法)について、図2に示す れ図を用いて以下に説明する。その具体例 前述の可動接点用銀被覆複合材料の製造方 の第1実施形態とほぼ同様であるが、下地層1 20を形成する段階で相違点がある。

 第3実施形態に係る製造方法は、第1の工 として、基材110となるステンレス条をオル ケイ酸ソーダまたは苛性ソーダなどのアル リ性溶液中で陰極電解脱脂し、その後塩酸 酸洗して活性化する(図2のS1)。

 次の第2工程では、塩化ニッケルと遊離塩酸 とを含む電解液で、陰極電流密度(2~5A/dm 2 )で電解してニッケルめっきを施すことで、 地層120を形成する(図2のS2)。ここで、例えば 基材110に流れる電流の電流密度をコントロー ルして、基材110の表面に下地層120として表面 に凹凸150のあるニッケルめっきを施すことが 可能となる。それ以外の方法、例えばめっき 液の流れを制御するなどの方法でも基材110の 表面に下地層120として表面に凹凸150のあるニ ッケルめっきを施すことは可能であり、どの ような方法によっても、下地層120の最大厚さ が0.04μm以下の場合に再現性が高まる。この 合の下地層120の表面粗さ(最大粗さ:Rmax)は、 地領域120の最大厚さの値より小さな値とな 。なお、上記のニッケルめっきの電解液と て、スルファミン酸ニッケル(100~150g/リット ル)とホウ素(20~50g/リットル)を添加し、pHを2.5 ~4.5の範囲で調整した電解液を用いてもよい

 次の第3工程では、硫酸銅と遊離硫酸とを含 む電解液で、陰極電流密度(5A/dm 2 )で電解して銅めっきを施すことで、中間層13 0を形成する(図2のS3)。

 最後の第4工程では、シアン化銀とシアン化 カリウムとを含む電解液で、陰極電流密度(2~ 15A/dm 2 )で電解して銀めっきを施すことで最表層140 形成する(図2のS4)。このような第1工程S1から 第4工程S4までの処理により、可動接点用銀被 覆複合材料100Aを製造することができる。

 なお、下地層120、中間層130、最表層140を 成する工程において、製造方法の第1実施形 態と同様の変形例の適用が可能である。

(第3実施形態に係る製造方法の実施例1)
 上記実施形態の可動接点用銀被覆複合材料1 00A及びその製造方法について、実施例を用い て更に詳細に説明する。
 以下の実施例では、基材110として条形状の テンレス鋼SUS301(以下ではSUS301条と記す)を い、SUS301条の寸法を、厚さ0.06mm、条幅100mmと する。SUS301条を連続的に通板して巻き取るめ っきラインにおいて、製造方法の第1実施形 と同様、SUS301条を電解脱脂し、水洗し、電 活性化しかつ水洗する第1工程、ニッケルめ き(又はニッケル-コバルトめっき)および水 の処理を行う第2工程、銅めっきおよび水洗 の処理を行う第3工程、および銀ストライク っき、銀めっき、水洗および乾燥の各処理 行う第4工程、のそれぞれが実施される。

 各工程の処理条件は次のとおりである。
1.第1工程(電解脱脂、電解活性化)
 製造方法の第1実施形態と同様である。

2.第2工程
(1)ニッケルめっきの場合
 塩化ニッケル六水和物10~50g/リットル(本実 例では25g/リットル)と遊離塩酸30~100g/リット (本実施例では50g/リットル)とを含む電解液 陰極電流密度2~5A/dm 2 (本実施例では3A/dm 2 )で電解してめっきする。下地層120に凹凸150 形成されるように、陰極電流密度やめっき の流れなどを適宜変化させる。
(2)ニッケル合金めっきの場合
 上述しためっき液に、塩化コバルト六水和 または第二塩化銅二水和物を、めっき液中 コバルトイオン濃度または銅イオン濃度が ニッケルイオンとコバルトイオンまたは銅 オンとを加えた濃度の5~20%に相当する濃度( 実施例では10%)となるように添加してめっき する。

3.第3工程
 製造方法の第1実施形態と同様である。

4.第4工程
 製造方法の第1実施形態と同様である。

 実施例のサンプルとして、下地層120の厚 、中間層130の厚さ、最表層140の厚さをそれ れ種々に変化させたサンプルを表4に示す。 ここで、下地層120の厚さの最大値と最小値と の差を下地層120の厚さの平均値(任意の10点で 測定した算術平均値とする)で割った値を凹 差(%)とし、この凹凸差が30%となるように、 2工程において基材110に流れる電流の電流密 をコントロールした。凹凸差の値を表4にあ わせて示す。なお、表4に示す実施例のサン ルNo.49A~52Aの試料については、アルゴン(Ar)ガ ス雰囲気中で250℃、2時間の熱処理を行った

 上記の処理条件で製造された表4の可動接 点用銀被覆複合材料を用いて、図3および図4 示す構造のスイッチ200を製造した。スイッ の構造、可動接点用銀被覆複合材料の評価 法は、前述の可動接点用銀被覆複合材料の 1実施形態と同様である。

 上記のようなスイッチ200を用い、前述の 動接点用銀被覆複合材料の第1実施形態に記 載された条件と同様の条件で、図4に示した ン/オフ状態を繰り返すことで打鍵試験を行 た。ドーム型可動接点210について、打鍵試 中の接触抵抗の経時変化を測定した結果を 初期値、100万回の打鍵後(打鍵後1)、200万回 打鍵後(打鍵後2)について、それぞれ表5に示 している。また、200万回の打鍵試験を終了し た後、ドーム型可動接点210に対しクラックの 有無等の状況を観察し、その結果も表5に記 ている。なお、接触抵抗の値は、100mω以下 あれば実用上差し支えないとされる。

 加熱試験は、すべてのサンプルについて 85℃のエアバスで1000時間の加熱を行って、 触抵抗の変化を測定し、その結果を表5に示 した。

 表4に示した実施例のサンプルNo.1A~52Aは、 表5に示すように、何れも200万回の打鍵試験 行っても接触抵抗の増加は少なく、200万回 鍵後の接点部には中間層及び下地層の露出 見られなかった。さらに、1000時間の加熱後 接触抵抗の上昇は小さく、すべてのサンプ について接触抵抗の値が100mω以下となり、 用上問題のない値であった。

 これに対して、下地層120の厚さと中間層1 30の厚さの合計が0.025μmを下回る比較例のサ プルNo.101Aでは、各層の密着性が低下するこ に起因する加工性の劣化がみられ、下地層1 20の厚さが本発明の範囲の上限よりも大きい( 0.05μm以上)の比較例のサンプルNo.102A~108Aでは 加工性が劣る傾向がみられた。また、比較 のサンプルNo.101A~108Aにおいて、加工性が劣 ことに起因すると思われる接触抵抗の上昇( 具体的には、接触抵抗の値が100mωを超える状 態)が200万回の打鍵後に検知された。

 さらに、比較例のサンプルNo.101A~108Aにお て、加工性が劣ることに起因すると思われ 接点部のクラックが発見され、下地層120の さが0.3μmの比較例のサンプルNo.106A~108Aにお ては、接点部の最表層が剥離し、下地層が 出していた。

 一方、中間層120の厚さが0.3μmのサンプル1 03A、105A、108Aでは、加熱試験後に接触抵抗の 幅な上昇(具体的には、接触抵抗の値が100mω を超える状態)が見られ、打鍵試験後にクラ クが確認された。

(第3実施形態に係る製造方法の実施例2)
 ここで、上記可動接点用銀被覆複合材料100A を製造する第3実施形態に係る製造方法の実 例2について説明する。
 下地層120について:ニッケルのうち10質量%を 銅またはコバルトに置き換えたニッケル合金 めっきとした場合について、表4のサンプルNo .1A~52AおよびNo.101A~108Aと同様の試験を実施し が、その試験結果は表5に示された結果と実 的に差異がなかった。ニッケルを完全にコ ルトに置き換えた例についても同様であっ 。

 中間層130について:銅のうち0.5質量%をス または亜鉛に置き換えた銅合金めっきとし 場合について、表4のサンプルNo.1A~52AおよびN o.101A~108Aと同様の試験を実施したが、その試 結果は表5に示された結果と実質的に差異が なかった。

 最表層140について:銀のうち1質量%をアンチ ンに置き換えた銀合金めっきとした場合に いて、表4のサンプルNo.1A~52AおよびNo.101A~108A と同様の試験を実施したが、その試験結果は 表5に示された結果と実質的に差異がなかっ 。
 また、表4に示す各実施例を適宜組み合わせ たが、その試験結果は表5に示された結果と 質的に差異がなかった。

(可動接点用銀被覆複合材料の製造方法の第4 施形態)
 次に、図6に示す可動接点用銀被覆複合材料 100Aを製造する可動接点用銀被覆複合材料の 4実施形態を、図8(a)~(c)に基づいて説明する なお、この製造方法は、図7に示す可動接点 銀被覆複合材料200を製造する方法にも適用 きることはいうまでもない。

 本実施形態に係る可動接点用銀被覆複合材 の製造方法は、次の工程を有する。
 (第1工程) 鉄またはニッケルを主成分とす 合金からなるステンレス条である基材(金属 の基材)110を電解脱脂し、その後ニッケルイ オンを含有する酸性溶液で酸洗して活性化す る活性化処理により、ニッケルからなり、表 面に凹凸150を有する下地層120を基材110上に形 成する。

 この第1工程では、基材110を活性化する活性 化処理を、例えば、次の条件で行う。
(1)ニッケルイオンを含有する酸性溶液として 、遊離塩酸を120g/リットル、塩化ニッケル六 和物を12g/リットル添加した酸性溶液を使用 する。なお、ニッケルイオンを含有する酸性 溶液として、遊離塩酸を80~200g/リットル(より 好ましくは100~150g/リットル)、塩化ニッケル 水和物を5~20g/リットル(より好ましくは10~15g/ リットル)の範囲で添加することが好ましい 遊離塩酸および塩化ニッケル六水和物の添 量が上記範囲外の場合は、いずれも基材と 地層との密着性が低下する傾向がある。
(2)活性化処理時の陰極電流密度を3.0(A/dm 2 )とする。なお、活性化処理時の陰極電流密 は2.0~5.0(A/dm 2 )の範囲内が好ましく、下地層に凹凸を効果 に形成する観点からは2.5~4.0(A/dm 2 )の範囲内とすることがより好ましい。活性 処理時の陰極電流密度が2.0(A/dm 2 )より低いと、基材と下地層との密着性が低 する傾向があるため好ましくない。また、 性化処理時の陰極電流密度が5.0(A/dm 2 )より高くなると、基材がステンレス鋼の場 は基材の発熱による影響が出る場合があり あまり好ましいとはいえない。

 このような条件で図8(a)に示す基材110の活性 化処理を行うことにより、基材110の表面全体 にニッケル(Ni)の核120bが間隔をおいてでき(図 8(b)参照)、さらに、基材110の表面全体に、表 に凹凸150を有する下地層120が形成される(図 8(c)参照)。なお、本実施形態では、ニッケル らなる下地層120を活性化処理により形成し いるが、コバルトからなる下地層を同様の 性化処理により形成する場合には、上記第1 工程において、コバルトイオンを含有する酸 性溶液で基材110の活性化処理を行う。
 (第2工程) 下地層120上に、硫酸銅と遊離硫 とを含む電解液で、陰極電流密度(5A/dm 2 )で電解して銅めっきを施すことで、中間層13 0を形成する。
 (第3工程) 中間層130上に、シアン化銀とシ ン化カリウムとを含む電解液で電解して銀 っきを施して最表層140を形成する。

 このように、本実施形態に係る可動接点用 被覆複合材料の製造方法では、基材110を電 脱脂し、その後ニッケルイオンを含有する 性溶液で酸洗して活性化する活性化処理時 、表面に凹凸150を有する下地層120を基材110 に形成するようにしている。このため、図2 を用いて説明した上記第3実施形態に係る製 方法における、下地層120を形成するための ッケルめっき或いはニッケル合金めっきの 程(図2のS2)が不要になる。従って、製造工程 が簡略され、作業時間が短縮されるので、可 動接点用銀被覆複合材料を低コストで製造す ることができる。
 また、ステンレス鋼からなる基材110の活性 処理時に、表面に凹凸150を有する下地層120 基材110上に形成することができる。このよ に下地層120を形成すると、基材110と下地層1 20との密着性が向上するだけでなく、下地層1 20と中間層130との密着性も向上し、さらに長 命の可動接点用銀被覆複合材料を得ること できる。

 上記第4実施形態に係る製造方法で製造し たサンプルとして、下地層120の厚さ、中間層 130の厚さ、最表層140の厚さをそれぞれ表4に す実施例の試料と同様に種々に変化させた のを作成し、これらをサンプルNo.201A~252A(表6 参照)とした。なお、表6に示した実施例のサ プルNo.249A~252Aの試料については、アルゴン( Ar)ガス雰囲気中で250℃、2時間の熱処理を行 た。また、比較例として、サンプルNo.301A~308 A(表6参照)を作成した。なお、表6のサンプルN o.201A~252Aは、表4のサンプルNo.1A~52Aとそれぞれ 層構造が同一のサンプルであり、表6に示し 比較例のサンプルNo.301A~308Aは、表4に示した 較例のサンプルNo.101A~108Aとそれぞれ層構造 同一のサンプルである。対応関係は、表4に 示した実施例のサンプルNo.に200を加えたサン プルNo.が、表6に示した実施例のサンプルNo. なる。

 上記の処理条件で製造されたサンプルNo.2 01A~252AおよびサンプルNo.301A~308Aの可動接点用 被覆複合材料を用いて、図3および図4に示 構造のスイッチ200と同様のスイッチを製造 た。その他の条件は、前述のサンプルNo.1A~52 AおよびサンプルNo.101A~108Aの可動接点用銀被 複合材料を用いた場合と同様とした。

 上記のようなスイッチを用い、図4に示した オン/オフ状態を繰り返すことで打鍵試験を なった。打鍵試験では、接点圧力:9.8N/mm 2 、打鍵速度:5Hzで最大200万回の打鍵を行って る。ドーム型可動接点210について、打鍵試 中の接触抵抗の経時変化を測定した結果を 初期値、100万回の打鍵後(打鍵後1)、200万回 打鍵後(打鍵後2)について、それぞれ表6に示 ている。また、200万回の打鍵試験を終了し 後、ドーム型可動接点210に対しクラックの 無等の状況を観察し、その結果も表6に示し ている。

 加熱試験は、すべてのサンプルについて 85℃のエアバスで1000時間の加熱を行って、 触抵抗の変化を測定し、その結果を表6に示 した。

 表6に示した実施例のサンプルNo.201A~252Aは 、表6に示すように、何れも200万回の打鍵試 を行っても接触抵抗の増加は少なく、200万 打鍵後の接点部には下地層120及び中間層130 露出は見られなかった。さらに、1000時間の 熱後も接触抵抗の上昇は小さかった。特に 表6に示す実施例のサンプルNo.201A~252Aは、表 4に示す実施例のサンプルNo.1A~52Aと比較して 200万回の打鍵試験における接触抵抗の増加 よび1000時間の加熱後の接触抵抗の増加が少 く、すべてのサンプルについて接触抵抗の が30mω以下となり、接点材料としての性能 きわめて優れていることがわかった。なお 上記第3実施形態に係る製造方法の実施例1、 2で説明した各種変形例は、上記第4実施形態 係る製造方法でも適用することができる。

(可動接点用銀被覆複合材料の第4実施形態)
 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の第4 実施形態を、図9に示す断面図を用いて説明 る。本実施形態の可動接点用銀被覆複合材 100Bは、鉄またはニッケルを主成分とする合 からなる基材110と、基材110の表面に形成さ た下地層としての下地領域120と、下地領域1 20の上に形成された中間層130と、中間層130の に形成された最表層140とを備えている。本 施形態は、前述の可動接点用銀被覆複合材 の第1実施形態と共通点があるため、相違点 を中心に説明する。

 下地領域120を形成する金属として、ニッ ル、コバルト、またはこれらを主成分(全体 の質量比として50質量%以上)とする合金が用 られるが、なかでもニッケルを用いるのが ましい。この下地領域120は、ステンレス鋼 らなる基材110を陰極にして、例えば塩化ニ ケル及び遊離塩酸を含む電解液を用いて電 することにより形成することができる。下 領域120の厚さについては、平均値を0.001~0.04 mとすることが好ましい。さらに好ましくは 0.001~0.009μmである。なお、以下では、下地 域120の金属としてニッケルを用いた例につ て説明するが、ニッケルに限らず、コバル 、ニッケル合金およびコバルト合金のいず を用いた場合でも、以下の説明と同様の効 が得られる。

 本実施形態では、下地領域120と中間層130 の密着性を高めるために、下地領域120の一 に下地欠落部(欠落部)121を形成し、下地欠 部121で中間層130と基材110とが直接接するよ にしている。そして、その下地欠落部121を けることで、下地領域120と中間層130との接 面積を増大させている。これにより、下地 域120と中間層130との間の相互拡散による密 性の向上を図ることができる。図9に示す可 接点用銀被覆複合材料100Bでは、下地領域120 と中間層130との界面を波状の凹凸に形成し、 下地欠落部121で中間層130が基材110の表面と直 接接するようにしている。

 接触抵抗の上昇を抑制するために、本実施 態では基材110の表面と下地領域120、下地領 120と中間層130、中間層130と最表層140の各層 の密着性が維持される範囲で、中間層130の が最表層140の表面に達しないような中間層1 30の好適な厚さを決定している。また、本実 形態では、下地領域120の平均厚さD1に中間 130の平均厚さD2を加えた合計の平均厚さDTが0 .025~0.20μmの範囲となるようにしている。
 これにより、各層間で高い密着性を維持し つ、最表層140の表面への銅の拡散及びそれ 伴う酸化を抑えることができる。最表層と て最も望ましい形態は、中間層近傍にのみ を含み、表面付近には銅を含まない銀また 銀合金層が形成されている構成である。最 層の厚さD3は、0.5~1.5μmであることが望まし 。

 加工性を改善する観点からは、下地領域1 20および中間層130を薄くするのが好ましいが 下地領域120の平均厚さと中間層130の平均厚 の合計DTに下限値0.025μmを設けているのは、 この値を下回ると、基材110の表面と下地領域 120、下地領域120と中間層130、中間層130と最表 層140の各層間の密着性を高める効果が低下す ることによるものである。また、下地領域120 の平均厚さと中間層130の平均厚さの合計DTに 限値0.20μmを設けているのは、この値を上回 ると、使用環境における接触抵抗の上昇が起 こりやすくなることによるものである。また 、下地領域120の平均厚さD1および中間層130の 均厚さD2を上述した範囲内にすることによ て、プレス加工時の各層の割れを防止する とができる。

 本実施形態の可動接点用銀被覆複合材料1 00Bの下地領域120、中間層130、および最表層140 の各層は、電気めっき法、無電解めっき法、 物理・化学的蒸着法など任意の方法を用いて 形成できるが、具体例は前述の可動接点用銀 被覆複合材料の第1実施形態と同様である。 お、銅または銅合金で形成された中間層130 外の領域、具体的には下地領域120や最表層14 0に銅を合金化させるようにしてもよい。具 例は前述の可動接点用銀被覆複合材料の第1 施形態と同様である。

(可動接点用銀被覆複合材料の製造方法の第5 施形態)
 この発明の可動接点用銀被覆複合材料の製 方法の第5実施形態について、図2に示す流 図を用いて以下に説明する。その具体例は 述の可動接点用銀被覆複合材料の製造方法 第1実施形態および第3実施形態とほぼ同様で あるが、下地領域120(製造方法の第1実施形態 よび製造方法の第3実施形態における下地層 120に相当)を形成する段階で相違点がある。

 第5実施形態に係る製造方法は、第1の工 として、基材110となるステンレス条をオル ケイ酸ソーダまたは苛性ソーダなどのアル リ性溶液中で陰極電解脱脂し、その後塩酸 酸洗して活性化(図2のS1)する。

 次の第2工程では、塩化ニッケルと遊離塩酸 とを含む電解液で、陰極電流密度(2~5A/dm 2 )で電解して基材110となるステンレス条の表 の一部にニッケルめっきを施すことで、下 領域120を形成する(図2のS2)。ここで、例えば 基材110に流れる電流の電流密度をコントロー ルして、基材110の表面の一部にのみニッケル めっきを施すことが可能となる。それ以外の 方法、例えばめっき液の流れを制御するなど の方法でも基材110の表面の一部にのみニッケ ルめっきを施すことは可能であり、どのよう な方法によっても、下地領域120の最大厚さが 0.04μm以下の場合に再現性が高まる。この場 の下地領域120の表面粗さ(最大粗さ:Rmax)は、 地領域120の最大厚さの値以下の値となる。 お、上記のニッケルめっきの電解液として スルファミン酸ニッケル(100~150g/リットル) ホウ素(20~50g/リットル)を添加し、pHを2.5~4.5 範囲で調整した電解液を用いてもよい。

 次の第3工程では、硫酸銅と遊離硫酸とを含 む電解液で、陰極電流密度(2~6A/dm 2 )で電解して銅めっきを施すことで、中間層13 0を形成する(図2のS3)。

 最後の第4工程では、シアン化銀とシアン化 カリウムとを含む電解液で、陰極電流密度(2~ 15A/dm 2 )で電解して銀めっきを施すことで最表層140 形成する(図2のS4)。このような第1工程S1から 第4工程S4までの処理により、可動接点用銀被 覆複合材料100Bを製造することができる。

 なお、下地領域120、中間層130、最表層140 形成する工程において、製造方法の第1実施 形態と同様の変形例の適用が可能である。こ の場合、下地層120は下地領域120と読み替える 。

(第5実施形態に係る製造方法の実施例1)
 図9に示す上記第4実施形態の可動接点用銀 覆複合材料100Bを製造する上記第5実施形態に 係る製造方法について、実施例を用いて更に 詳細に説明する。
 以下の実施例では、基材110として条形状の テンレス鋼SUS301(以下ではSUS301条と記す)を い、SUS301条の寸法を、厚さ0.06mm、条幅100mmと する。SUS301条を連続的に通板して巻き取るめ っきラインにおいて、SUS301条を電解脱脂し、 水洗し、電解活性化し、かつ水洗する第1工 、ニッケルめっき(又はニッケル-コバルトめ っき)および水洗の処理を行う第2工程、銅め きおよび水洗の処理を行う第3工程、および 銀ストライクめっき、銀めっき、水洗および 乾燥の各処理を行う第4工程、のそれぞれが 施される。

 各工程の処理条件は次のとおりである。
1.第1工程(電解脱脂、電解活性化)
 製造方法の第1実施形態と同様である。

2.第2工程
(1)ニッケルめっきの場合
 塩化ニッケル六水和物10~50g/リットル(本実 例では25g/リットル)と遊離塩酸30~100g/リット (本実施例では50g/リットル)とを含む電解液 陰極電流密度2~5A/dm 2 (本実施例では3A/dm 2 )で電解してめっきする。下地領域120に欠落 121が形成されるように、陰極電流密度やめ き液の流れなどを適宜変化させる。
(2)ニッケル合金めっきの場合
 上述しためっき液に、塩化コバルト六水和 または第二塩化銅二水和物を、めっき液中 コバルトイオン濃度または銅イオン濃度が ニッケルイオンとコバルトイオンまたは銅 オンとを加えた濃度の5~20%に相当する濃度( 実施例では10%)となるように添加してめっき する。

3.第3工程
 製造方法の第1実施形態と同様である。

4.第4工程
 製造方法の第1実施形態と同様である。

 実施例のサンプルとして、下地領域120の さ、中間層130の厚さ、最表層140の厚さをそ ぞれ種々に変化させたサンプルを表7に示す 。ここで、基材110の表面に被覆された下地領 域120の割合(面積比)を被覆率とし、この被覆 が80%となるように基材110に流れる電流の電 密度をコントロールした。被覆率の値を表7 にあわせて示す。なお、表7に示す実施例の ンプルNo.49B~52Bの試料については、アルゴン( Ar)ガス雰囲気中で250℃、2時間の熱処理を行 た。

 上記の処理条件で製造された表7の可動接 点用銀被覆複合材料を用いて、図3および図4 示す構造のスイッチ200を製造した。スイッ の構造、可動接点用銀被覆複合材料の評価 法は、前述の可動接点用銀被覆複合材料の 1実施形態と同様である。

 上記のようなスイッチ200を用い、前述の 動接点用銀被覆複合材料の第1実施形態に記 載された条件と同様の条件で、図4に示した ン/オフ状態を繰り返すことで打鍵試験を行 た。ドーム型可動接点210について、打鍵試 中の接触抵抗の経時変化を測定した結果を 初期値、100万回の打鍵後(打鍵後1)、200万回 打鍵後(打鍵後2)について、それぞれ表8に示 している。また、200万回の打鍵試験を終了し た後、ドーム型可動接点210に対しクラックの 有無等の状況を観察し、その結果も表8に記 ている。なお、接触抵抗の値は、100mω以下 あれば実用上差し支えないとされる。

 加熱試験は、すべてのサンプルについて 85℃のエアバスで1000時間の加熱を行って、 触抵抗の変化を測定し、その結果を表8に示 した。

 表7に示した実施例のサンプルNo.1B~52Bは、 表8に示すように、何れも200万回の打鍵試験 行っても接触抵抗の増加は少なく、200万回 鍵後の接点部には下地領域120及び中間層130 露出は見られなかった。さらに、1000時間の 熱後も接触抵抗の上昇は小さく、すべての ンプルについて接触抵抗の値が100mω以下と り、実用上問題のない値であった。

 これに対して、下地領域120の厚さと中間 130の厚さの合計が0.025μmを下回る比較例の ンプルNo.101Bでは、各層の密着性が低下する とに起因する加工性の劣化がみられ、下地 域120の厚さが本発明の範囲の上限よりも大 い(0.05μm以上の)比較例のサンプルNo.102B~108B は、加工性が劣る傾向がみられた。また、 較例のサンプルNo.101B~108Bにおいて、加工性 劣ることに起因すると思われる接触抵抗の 昇(具体的には、接触抵抗の値が100mωを超え る状態)が200万回の打鍵後に検知された。

 さらに、比較例のサンプルNo.101B~108Bにお て、接点部のクラックが発見され、下地領 120の厚さが0.3μmの比較例のサンプルNo.105B~10 8Bにおいては、接点部の最表層が剥離し、下 層が露出していた。

 一方、中間層120の厚さが0.3μmのサンプル1 03B、105B、108Bでは、加熱試験後に接触抵抗の 幅な上昇(具体的には、接触抵抗の値が100mω を超える状態)が見られ、打鍵試験後にクラ クや下地層の露出が確認された。

(第5実施形態に係る製造方法の実施例2)
 ここで、上記可動接点用銀被覆複合材料100B を製造する第5実施形態に係る製造方法の実 例2について説明する。
 下地領域120について:ニッケルのうち10質量% を銅またはコバルトに置き換えたニッケル合 金めっきとした場合について、表7のサンプ No.1B~52BおよびNo.101B~108Bと同様の試験を実施 たが、その試験結果は表8に示された結果と 質的に差異がなかった。ニッケルを完全に バルトに置き換えた例についても同様であ た。
 中間層130について:銅のうち0.5質量%をスズ たは亜鉛に置き換えた銅合金めっきとした 合について、表7のサンプルNo.1B~52BおよびNo.1 01B~108Bと同様の試験を実施したが、その試験 果は表8に示された結果と実質的に差異がな かった。

 最表層140について:銀のうち1質量%をアンチ ンに置き換えた銀合金めっきとした場合に いて、表7のサンプルNo.1B~52BおよびNo.101B~108B と同様の試験を実施したが、その試験結果は 表8に示された結果と実質的に差異がなかっ 。
 また、上記の変形例を適宜組み合わせたが その試験結果は表8に示された結果と実質的 に差異がなかった。

(可動接点用銀被覆複合材料の製造方法の第6 施形態)
 次に、図9に示す可動接点用銀被覆複合材料 100Bを製造する可動接点用銀被覆複合材料の 造方法の第6実施形態について説明する。

 第6実施形態に係る可動接点用銀被覆複合材 料の製造方法は、次の工程を有する。
 (第1工程) 鉄またはニッケルを主成分とす 合金からなるステンレス条である基材(金属 の基材)110を電解脱脂し、その後ニッケルイ オンを含有する酸性溶液で酸洗して活性化す る活性化処理により、ニッケルからなり、複 数個所に下地欠落部121を有する下地領域120を 基材110上に形成する。

 この第1工程では、基材110を活性化する活性 化処理を、例えば、次の条件で行う。
(1)ニッケルイオンを含有する酸性溶液として 、遊離塩酸を120g/リットル、塩化ニッケル六 和物を12g/リットル添加した酸性溶液を使用 する。なお、ニッケルイオンを含有する酸性 溶液として、遊離塩酸を80~200g/リットル(より 好ましくは100~150g/リットル)、塩化ニッケル 水和物を5~20g/リットル(より好ましくは10~15g/ リットル)の範囲で添加することが好ましい 遊離塩酸および塩化ニッケル六水和物の添 量が上記範囲外の場合は、いずれも基材と 地領域との密着性が低下する傾向がある。
(2)活性化処理時の陰極電流密度を2.5(A/dm 2 )とする。なお、活性化処理時の陰極電流密 は2.0~5.0(A/dm 2 )の範囲内が好ましく、下地領域に欠落部を 果的に形成する観点からは2.0~3.5(A/dm 2 )の範囲内とすることがより好ましい。活性 処理時の陰極電流密度が2.0(A/dm 2 )より低いと、基材と下地層との密着性が低 する傾向があるため好ましくない。また、 性化処理時の陰極電流密度が5.0(A/dm 2 )より高くなると、基材がステンレス鋼の場 は基材の発熱による影響が出る場合があり あまり好ましいとはいえない。

 このような条件で図10(a)に示す基材110の活 化処理を行うことにより、基材110の表面全 に、下地領域120となるニッケル(Ni)の核120cが 、図8(b)のニッケル(Ni)の核120bの間隔よりも大 きな間隔をおいてでき(図10(b)参照)、さらに 基材110の表面全体に下地欠落部121を有する 地領域120が形成される(図10(c)参照)。
 (第2工程) 下地領域120上に、硫酸銅と遊離 酸とを含む電解液で、陰極電流密度(5A/dm 2 )で電解して銅めっきを施すことで、中間層13 0を形成する。
 (第3工程) 中間層130上に、シアン化銀とシ ン化カリウムとを含む電解液で電解して銀 っきを施して最表層140を形成する。

 このように、本実施形態に係る可動接点 銀被覆複合材料の製造方法では、基材110の 性化処理時に、下地欠落部121を有する下地 域120を基材110の表面全体に形成するように ている。このため、図2を用いて説明した上 記一実施形態に係る可動接点用銀被覆複合材 料の製造方法における、下地領域120を形成す るためのニッケルめっき或いはニッケル合金 めっきの工程(図2のS2)が不要になる。従って 製造工程が簡略され、作業時間が短縮され ので、可動接点用銀被覆複合材料を低コス で製造することができる。

 また、鉄またはニッケルを主成分とする合 、例えばステンレス鋼からなる基材110の表 の一部が下地欠落部121の箇所で露出するが 基材110は、上記第1工程で電解脱脂され、ニ ッケルイオンを含有する酸性溶液で酸洗して 活性化されているので、銅または銅合金で形 成された中間層130との密着性が低下しない。
 また、ステンレス鋼からなる基材110の活性 処理時に、複数個所に下地欠落部121を有す 下地領域120を基材110上に形成することがで る。このように下地領域120を形成すると、 材110と下地領域120との密着性が向上する。
 また、下地領域120の複数個所に下地欠落部( 欠落部)121を形成し、下地欠落部121で中間層13 0と基材110とが直接接するようにしているの 、下地領域120と中間層130との密着性を高め ことができ、さらに長寿命の可動接点用銀 覆複合材料を得ることができる。

 上記第6実施形態に係る製造方法で製造し たサンプルとして、下地領域120の厚さ、中間 層130の厚さ、最表層140の厚さをそれぞれ表7 示す実施例の試料と同様に種々に変化させ ものを作成し、これらをサンプルNo.201B~252B( 9参照)とした。なお、表9に示した実施例の ンプルNo.249B~252Bの試料については、アルゴ (Ar)ガス雰囲気中で250℃、2時間の熱処理を った。また、比較例として、サンプルNo.301B~ 308B(表9参照)を作成した。なお、表9のサンプ No.201B~252Bは、表7のサンプルNo.1B~52Bとそれぞ れ層構造が同一のサンプルであり、表9に示 た比較例のサンプルNo.301B~308Bは、表7に示し 比較例のサンプルNo.101B~108Bとそれぞれ層構 が同一のサンプルである。対応関係は、表7 に示した実施例のサンプルNo.に200を加えたサ ンプルNo.が、表9に示した実施例のサンプルNo .となる。

 上記の処理条件で製造されたサンプルNo.2 01B~252BおよびサンプルNo.301B~308Bの可動接点用 被覆複合材料を用いて、図3および図4に示 構造のスイッチ200と同様のスイッチを製造 た。その他の条件は、前述のサンプルNo.1B~52 BおよびサンプルNo.101B~108Bの可動接点用銀被 複合材料を用いた場合と同様とした。

 上記のようなスイッチを用い、図4に示した オン/オフ状態を繰り返すことで打鍵試験を なった。打鍵試験では、接点圧力:9.8N/mm 2 、打鍵速度:5Hzで最大200万回の打鍵を行って る。ドーム型可動接点210について、打鍵試 中の接触抵抗の経時変化を測定した結果を 初期値、100万回の打鍵後(打鍵後1)、200万回 打鍵後(打鍵後2)について、それぞれ表9に示 ている。また、200万回の打鍵試験を終了し 後、ドーム型可動接点210に対しクラックの 無等の状況を観察し、その結果も表9に示し ている。

 加熱試験は、すべてのサンプルについて 85℃のエアバスで1000時間の加熱を行って、 触抵抗の変化を測定し、その結果を表9に示 した。

 表9に示した実施例のサンプルNo.201B~252Bは 、表9に示すように、何れも200万回の打鍵試 を行っても接触抵抗の増加は少なく、200万 打鍵後の接点部には下地領域120及び中間層13 0の露出は見られなかった。さらに、1000時間 加熱後も接触抵抗の上昇は小さかった。特 、表9に示す実施例のサンプルNo.201B~252Bは、 表7に示す実施例のサンプルNo.1B~52Bと比較し 、200万回の打鍵試験における接触抵抗の増 および1000時間の加熱後の接触抵抗の増加が なく、すべてのサンプルについて接触抵抗 値が30mω以下となり、接点材料としての性 がきわめて優れていることがわかった。な 、上記第5実施形態に係る製造方法の実施例1 、2で説明した各実施例は、上記第6実施形態 係る製造方法でも適用することができる。

 上述したように、この発明によれば接点 繰り返し開閉動作においても最表層(銀被覆 層)が剥離せず、かつ長期間の使用において 接触抵抗の上昇が抑えられる、可動接点用 被覆複合材料およびその製造方法を提供す ことができる。本発明の可動接点用銀被覆 合材料を用いて長寿命の可動接点を製造す ことができ、産業上の利用可能性が大きい




 
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