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Patent Searching and Data


Title:
SINTERED BEARING
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/104441
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a sintered bearing having surface openings formed in a bearing surface by melting a Sn metal powder as a binder, the maximum diameter (d) of the surface openings being 0 µm < d ≤ 25 µm. To this end, a binder metal powder having a maximum particle diameter of not more than 25 µm is used.

Inventors:
OKAMURA KAZUO (JP)
ITO FUYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/050796
Publication Date:
August 27, 2009
Filing Date:
January 21, 2009
Export Citation:
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Assignee:
NTN TOYO BEARING CO LTD (JP)
OKAMURA KAZUO (JP)
ITO FUYUKI (JP)
International Classes:
F16C33/12; B22F1/00; B22F3/11; B22F5/00; B22F5/10; F16C17/10
Foreign References:
JPH10184690A1998-07-14
JPH0988960A1997-03-31
JP2006348379A2006-12-28
JP2000240653A2000-09-05
Attorney, Agent or Firm:
TANAKA, Hideyoshi et al. (JP)
Hideyoshi Tanaka (JP)
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Claims:
 主成分金属粉末及びバインダー金属粉末を含む混合粉末を焼結して得られる焼結軸受であって、
 バインダー金属粉末の溶融により軸受面に形成された表面開孔の最大径dが、0μm<d≦25μmの範囲内であることを特徴とする焼結軸受。
 最大粒径が25μm以下のバインダー金属粉末を用いた請求項1記載の焼結軸受。
 最大粒径が50μm以下の主成分金属粉末を用いた請求項1記載の焼結軸受。
 最小粒径が10μm以上の混合粉末を用いた請求項1記載の焼結軸受。
 混合粉末におけるバインダー金属粉末の混合比率が、0.2質量%以上、10質量%以下の範囲内である請求項1記載の焼結軸受。
 請求項1~5の何れかに記載の焼結軸受と、その内周に挿入した軸部材とを備え、焼結軸受の内周面と軸部材の外周面との間に形成されたラジアル軸受隙間に生じる潤滑膜の動圧作用で軸部材を支持する流体動圧軸受装置。
Description:
焼結軸受

 本発明は、金属粉末を圧縮成形した後、 結して得られる焼結軸受に関する。

 焼結軸受は、内部空孔に潤滑油等の潤滑 体を含浸させて使用され、支持すべき軸と 相対回転に伴い内部に含浸された潤滑流体 軸との摺動部に滲み出して潤滑膜を形成し この潤滑膜を介して軸を回転支持するもの ある。このような焼結軸受は、その高回転 度および静粛性から、自動車用軸受部品や 報機器用のモータスピンドル等、特に高い 受性能や耐久性が要求される箇所に好まし 利用されている。

 例えば特許文献1に示されている焼結軸受 は、Cu粉末、SUS(ステンレス鋼)粉末、Sn粉末等 を所定の比率で混合し、所定の形状(多くは 筒状)に圧縮成形した後、焼結することによ 形成される。このとき、比較的融点の低いS n粉末は、焼結時に溶融した後固化すること より、Cu粉末やSUS粉末を結合するバインダー として機能する。

特開2006-189081号公報

特開平11-62948号公報

 上記のような焼結軸受の製造において、S n粉末が溶融すると、Sn粉末があった場所に空 孔が形成される。このとき、Sn粉末の粒径が きかったり、混合粉末中でSn粉末が偏析し りすると、Sn粉末の溶融により形成される空 孔が大きくなる。このような空孔が軸受の表 面、特に軸受面に露出すると、潤滑流体が軸 受面の表面開孔から内部に浸入しやすくなる ため、摺動部に十分な潤滑膜が形成されず、 潤滑不良が生じる恐れがある。特に、このよ うな焼結軸受を潤滑膜の動圧作用で軸を支持 する流体動圧軸受装置に用いると、軸の回転 により圧力の高められた潤滑膜が軸受面の表 面開孔から内部に抜けるいわゆる動圧抜けが 生じ、十分な動圧作用が得られず、軸受性能 が大きく低下する恐れがある。

 このような事態を回避すべく、例えば特 文献2に示されている焼結軸受は、軸受面に ショットブラストや回転サイジング等による 封孔処理を施すことにより、軸受面の表面開 孔を潰している。これにより、軸受面の表面 開孔からの潤滑流体の浸入は抑えられるが、 かかる封孔処理を別途設けることにより軸受 の製造コストが高騰することとなる。

 本発明の課題は、コストを高騰させるこ なく焼結軸受の表面開孔を減じることによ 、潤滑不良や動圧作用の低下を防止するこ にある。

 前記課題を解決するために、本発明は、 成分金属粉末及びバインダー金属粉末を含 混合粉末を焼結して得られる焼結軸受であ て、バインダー金属粉末の溶融により軸受 に形成された表面開孔の最大径dが、0μm<d ≦25μmの範囲内であることを特徴とする。

 このように、バインダー金属粉末の溶融 より軸受面に形成される表面開孔の最大径( 直径)dを25μm以下に設定することで、潤滑膜 形成する潤滑流体の軸受内部への抜けを低 し、潤滑不良や動圧作用の低下を防止する とができる。尚、焼結金属において、バイ ダー金属粉末の溶融による表面開孔の最大 が0になること、すなわち、バインダーの溶 により表面開孔が全く形成されないことは 常考えにくいため、d>0とした。

 例えば、粒径が小さいバインダー金属粉 を使用すれば、バインダー金属粉末の溶融 より形成される孔の大きさを抑えることが きる。また、粒径が小さいバインダー金属 末を使用することにより、バインダー粉末 混合粉末中で均一に分散させやすくなるた 、バインダー金属粉末が偏析して大きな孔 形成する事態を回避することができる。図6 に、粒径の異なる2種のバインダー金属粉末 用いた焼結軸受の軸受面の表面性状を拡大 て示す。具体的には、図6(a)は最大粒径が50μ m以下のSn粉末を用いた焼結軸受(比較品)であ 、図6(b)は最大粒径が25μm以下のSn粉末を用 た焼結軸受(本発明実施品)である。図6(a)及 (b)において、黒色部分は表面開孔を表して る。これらの図を比較すると、比較品であ 図6(a)の焼結軸受は粗大な表面開孔が形成さ ているのに対し、本発明の実施品である図6 (b)の焼結軸受は表面開孔の大きさが小さく、 且つ表面開孔が均一に分散していることが分 かる。このことから、最大粒径が25μm以下の インダー金属粉末を用いることにより、別 の工程を要することなく、すなわちコスト 高騰させることなく、軸受面に形成される 面開孔の大きさを抑えることができ、潤滑 良や動圧作用の低下を防止することができ と言える。尚、「最大粒径が25μm以下の金 粉末」とは、粒径が25μmを超える粒子を一粒 でも含むものを完全に排除する趣旨ではなく 、粉末の製造上の都合等により粒径が25μmを える粒子を極少量有するものを含むものと る(以下の説明において同様)。

 このようにバインダー金属粉末の粒径を さくしても、主成分金属粉末の粒径が大き と、主成分金属粉末の粒子間に粗大な空孔 形成される恐れがある。この点に鑑み、最 粒径が50μm以下の主成分金属粉末を使用す ば、金属粉末を密な状態で焼結し、粒子間 隙間を減じることができるため、軸受表面 開孔を抑え、潤滑不良や軸受性能の低下を 実に防止することができる。

 一方、上記のバインダー金属粉末及び主 分金属粉末を含む混合金属粉末の粒径が小 すぎると、焼結軸受を圧粉成形する金型内 金属粉末が流動しにくくなり、成形性が低 する恐れがある。例えば、粒径が10μm未満 あるような細かい粉末を含む混合粉末で焼 軸受を形成すると、上記のような不具合が じる恐れが高い。従って、混合粉末は、最 粒径が10μm以上のものを使用することが好ま しい。ここで、「最小粒径が10μm以上の粉末 とは、粒径が10μm未満の粒子を一粒でも含 ものを完全に排除する趣旨ではなく、粉末 製造上の都合等により粒径が10μm未満の粒子 が極少量含まれたものを含むものとする(以 の説明において同様)。

 また、混合粉末におけるバインダー金属 末の混合比率は0.2質量%以上、10質量%以下の 範囲内とすることが望ましい。バインダー金 属粉末の配合量が10質量%を超えると、バイン ダー金属粉末が偏析しやすくなるためバイン ダー金属の溶融により大きな表面開孔が形成 されるおそれがあり、バインダー金属粉末の 配合量が0.2質量%未満であると、主成分金属 結合するバインダーとして十分に機能を果 すことができないためである。

 上記のような焼結軸受と、その内周に挿 した軸部材とを備え、焼結軸受の内周面と 部材の外周面との間に形成されたラジアル 受隙間に生じる潤滑膜の動圧作用で軸部材 支持する流体動圧軸受装置は、動圧抜けが えられ、優れた軸受性能を発揮することが きる。

 以上のように、本発明によると、コスト 高騰させることなく焼結軸受の表面開孔を じ、潤滑不良や動圧作用の低下を防止する とができる。

 以下、本発明の一実施形態を図面に基づ て説明する。

 図1は、本発明の実施形態に係る焼結軸受 を有する流体動圧軸受装置1を組込んだ情報 器用スピンドルモータの一構成例を概念的 示している。このスピンドルモータは、HDD のディスク駆動装置に用いられるもので、 部材2を回転自在に非接触支持する流体動圧 受装置1と、軸部材2に装着されたディスク ブ3と、例えば半径方向のギャップを介して 向させたステータコイル4およびロータマグ ネット5とを備えている。ステータコイル4は ラケット6の外周に取付けられ、ロータマグ ネット5は、ディスクハブ3の内周に取付けら ている。ディスクハブ3は、その外周に磁気 ディスク等のディスク状情報記憶媒体(以下 単にディスクという。)Dを一枚または複数枚 (図1では2枚)保持している。このように構成 れたスピンドルモータにおいて、ステータ イル4に通電すると、ステータコイル4とロー タマグネット5との間に発生する励磁力でロ タマグネット5が回転し、これに伴って、デ スクハブ3およびディスクハブ3に保持され ディスクDが軸部材2と一体に回転する。

 図2は、流体動圧軸受装置1を示している この流体動圧軸受装置1は、軸部材2と、ハウ ジング7と、本発明に係る焼結軸受としての 受スリーブ8と、シール部材9とを主な構成要 素として構成されている。なお、説明の便宜 上、軸方向でハウジング7の底部7bの側を下側 、開口側を上側として以下説明する。

 軸部材2は、ステンレス鋼等の金属材料で 形成され、軸部2aと軸部2aの下端に一体又は 体に設けられたフランジ部2bとを備えている 。軸部2aの外周面には、ラジアル軸受部R1、R2 のラジアル軸受隙間に面する円筒状の外周面 2a1と、シール空間Sに面する上方へ向けて漸 縮径したテーパ面2a2とが形成される。軸部 2は、全体を金属で形成する他、軸部2aを金 で形成すると共に、フランジ部2bの全体ある いはその一部(例えば両端面)を樹脂で成形す こともできる。

 ハウジング7は、例えば液晶ポリマー(LCP) ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエ テルエーテルケトン(PEEK)等の結晶性樹脂、 るいはポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリ ーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド (PEI)等の非晶性樹脂をベース樹脂とする樹脂 成物で射出成形され、側部7aと底部7bとを一 体に有するコップ状に形成される。ハウジン グ7を形成する上記樹脂組成物としては、例 ば、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン カリウム等のウィスカ状充填材、マイカ等 鱗片状充填材、カーボン繊維、カーボンブ ック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、各 金属粉等の繊維状または粉末状の導電性充 材を、目的に応じて上記ベース樹脂に適量 合したものが使用可能である。ハウジング7 射出材料は上記に限らず、例えば、マグネ ウム合金やアルミニウム合金等の低融点金 材料が使用可能である。また、金属紛とバ ンダーの混合物で射出成形した後、脱脂・ 結するいわゆるMIM成形や、金属材料、例え 真ちゅう等の軟質金属のプレス成形、ある は金属材料の機械加工でハウジング7を形成 することもできる。

 底部7bの上側端面7b1の全面又は一部環状 域には、スラスト動圧発生部として、例え 図示は省略するが、複数の動圧溝をスパイ ル形状に配列した領域が形成される。この 圧溝は、例えばハウジング7の型成形と同時 成形することができる。

 軸受スリーブ8は円筒状を成し、主成分金 属粉末及びバインダー金属粉末を含む混合粉 末を圧縮成形した後、焼結して得られた多孔 質体である。本実施形態では、主成分金属粉 末としてCu(あるいはCu合金)粉末およびSUS粉末 、バインダー金属粉末としてSn粉末が使用さ る。また、Sn粉末の溶融により軸受面に形 される表面開孔は、最大径dが25μm以下に設 される。尚、このような表面開孔がSn粉末の 溶融により形成されたか否かは、表面開孔の 周辺の主成分金属に溶融したSnが付着してい か否かを確認することにより推定すること できる。

 ラジアル軸受面となる軸受スリーブ8の内 周面8aには、ラジアル動圧発生部としての動 溝が形成される。この実施形態では、例え 図3(a)に示すように、内周面8aの軸方向に離 した2箇所に、ヘリングボーン形状の動圧溝 8a1、8a2が形成される。図3(a)のクロスハッチ グで示す領域は、周辺領域より内径向きに 出した丘部を示し、この丘部のうち、環状 平滑部から軸方向両側に斜めに延びた部分 円周方向間に前記動圧溝8a1、8a2が設けられ 。上側の動圧溝8a1は、上側の丘部の軸方向 中央部に設けられた環状の平滑部に対して 方向非対称に形成されており、環状平滑部 り上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方 向寸法X2よりも大きくなっている(X1>X2)。下 側の動圧溝8a2は、軸方向対称に形成されてい る。上下に離隔した動圧溝8a1、8a2形成領域の 軸方向間の領域は、動圧溝8a1、8a2と同一径に 形成され、これらと連続している。スラスト 軸受面となる軸受スリーブ8の下側端面8cには 、スラスト動圧発生部として、例えば図3(b) 示すように、スパイラル形状の動圧溝8c1が 成される。また、軸受スリーブ8の外周面8d は、1本又は複数本の軸方向溝8d1(図示例では 3本)が形成される。

 シール部材9は、例えば樹脂材料又は金属 材料で環状に形成され、ハウジング7の側部7a の上端部内周に配設される。シール部材9の 周面9aは、軸部2aの外周に設けられたテーパ 2a2と半径方向で対向し、これらの間に下方 向けて半径方向寸法を漸次縮小した楔状の ール空間Sが形成される。軸部材2の回転時 は、シール空間Sが毛細管力シールおよび遠 力シールとして機能し、軸受内部の潤滑油 外部への漏れ出しを防止する。

 軸受スリーブ8の内周に軸部材2を挿入し この軸受スリーブ8及び軸部材2をハウジング 7の内周に収容し、軸受スリーブ8の外周面8d ハウジング7の内周面7cに固定する。このと 、ハウジング7に対する軸受スリーブ8の位置 決めは、例えば、次のようにして行われる。 まず、フランジ部2bの上側端面2b1に軸受スリ ブ8の下側端面8cを当接させると共に、フラ ジ部2bの下側端面2b2にハウジング7の内底面7 b1を当接させ、フランジ部2bの両端面2b1、2b2 面するスラスト軸受隙間を0の状態とする。 の後、軸部材2をハウジング7の開口側へ引 張って、前記二つのスラスト軸受隙間の隙 幅の合計分だけ軸受スリーブ8を上方へ相対 動させる。この状態で軸受スリーブ8をハウ ジング7に固定することにより、スラスト軸 隙間の幅設定が行われる。

 その後、シール部材9の下側端面9bを軸受 リーブ8の上側端面8bに当接させ、この状態 シール部材9をハウジング7の内周面7cに固定 する。そして、ハウジング7の内部空間に潤 油を充満させることで、流体動圧軸受装置1 組立が完了する。このとき、潤滑油はシー 部材9で密封されたハウジング7の内部空間( 受スリーブ8の内部空孔を含む)に充満し、 面はシール空間Sの範囲内に維持される。

 軸部材2が回転すると、軸受スリーブ8の 周面8aと軸部2aの外周面2a1との間にラジアル 受隙間が形成される。そして、軸受スリー 8の内周面8aに形成された動圧溝8a1、8a2が、 ジアル軸受隙間の潤滑油に動圧作用を発生 せ、これにより軸部材2を支持する第1ラジ ル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2がそれぞれ 構成される。

 これと同時に、フランジ部2bの上側端面2b 1と軸受スリーブ8の下側端面8cとの間、およ フランジ部2bの下側端面2b2とハウジング底部 7bの上側端面7b1との間にスラスト軸受隙間が 成される。そして、軸受スリーブ8の下側端 面8cの動圧溝8c1及びハウジング7の内底面7b1の 動圧溝が、スラスト軸受隙間の潤滑油に動圧 作用を発生させ、これによりフランジ部2bを スラスト方向に回転自在に支持する第1スラ スト軸受部T1及び第2スラスト軸受部T2が構成 れる。

 このとき、軸受スリーブ8の内部に含浸し た潤滑油がラジアル軸受面(内周面8a)及びス スト軸受面(下側端面8c)の表面開孔から滲み すことにより、ラジアル軸受隙間及びスラ ト軸受隙間に常に潤沢な潤滑油を供給する とができる。また、潤滑油が軸受スリーブ8 の内部空孔を含めた軸受の内部空間を流動す ることにより、潤滑油が局部的に劣化する事 態を回避することができる。さらに、本発明 では、ラジアル軸受面及びスラスト軸受面の 表面開孔の最大径dが25μm以下に設定されてい ることにより、いわゆる動圧抜けが生じる事 態を防止し、優れた軸受性能を発揮すること ができる。特に本実施形態のように、ディス クハブ3に複数枚(2枚)のディスクDを装着する 合は、軸部材2には大きな負荷荷重が加わる ため、本発明に係る焼結軸受を適用して、軸 受性能を向上させることが好ましい。

 また、ハウジング7の閉塞側に位置する第 1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間と、ハ ウジング7の開口側に形成されるシール空間S の間が、軸方向溝8d1を介して連通状態とな 。これによれば、例えば何らかの理由でハ ジング7の閉塞側の流体(潤滑油)の圧力が過 に高まり、あるいは低下するといった事態 避けて、軸部材2をスラスト方向に安定して 非接触支持することが可能となる。

 また、この実施形態では、第1ラジアル軸 受部R1の動圧溝8a1が軸方向非対称(X1>X2)に形 成されているため(図3参照)、軸部材2の回転 、動圧溝8a1の上側の溝による潤滑油の引き み力(ポンピング力)は、下側の溝の引き込み 力に比べて相対的に大きくなる。そして、こ の引き込み力の差圧によって、軸受スリーブ 8の内周面8aと軸部2aの外周面2a1との間の隙間 満たされた潤滑油を下方に流動させること より、軸受内部の潤滑油を強制的に循環さ ることができる。このように、潤滑油が軸 の内部空間を流動循環するように構成する とで、より確実に軸受内部の圧力バランス 適正に保つことができる。

 以下、本発明に係る焼結軸受(軸受スリー ブ8)の製造方法を説明する。

 図4は、軸受スリーブ8の原材料となる混 金属粉末Mを所定形状(図示例では円筒形状) 圧縮成形し、焼結体15を形成する工程を概念 的に示すものである。この実施形態における 成形装置は、ダイ11と、コアロッド12と、下 ンチ13と、上パンチ14とを備える。

 コアロッド12はダイ11の内周に挿入され、 下パンチ13は内周にコアロッド12を挿入する 共に、ダイ11の内周に挿入される。このとき 、下パンチ13のダイ11に対する軸方向位置に り、混合金属粉末Mの充填量が所定の値に設 される。混合金属粉末Mを充填する型領域( ャビティ)は、ダイ11の内周面11aと、コアロ ド12の外周面12aと、下パンチ13の上端面13aと 画成され、この型領域内に所定量の金属粉 Mが充填される(図4(a)参照)。

 このときキャビティ内に充填される混合 属粉末Mは、主成分金属粉末としてのCu粉末 びSUS粉末と、バインダー金属粉末としてのS n粉末を配合したものである。Cu粉末及びSUS粉 末は、最大粒径が50μm以下のもの(例えば、粒 度-350meshとして市販されているもの)が使用さ れる。Sn粉末は、最大粒径が25μm以下のもの( えば、粒度-600meshとして市販されているも )が使用される。また、成形性の低下を回避 るために、混合金属粉末Mは、最小粒径が10 m以上であるものが使用される。さらに、圧 成形時の成形性、あるいは完成品の摺動特 を改善する目的で、上記混合金属粉末Mに黒 鉛(グラファイト)などの固体潤滑剤を配合し もよい。また、混合金属粉末におけるSn粉 の混合比率は0.2質量%以上、10質量%以下、好 しくは2質量%以上、5質量%以下の範囲内に設 定される。

 図4(a)に示す状態から上パンチ14を下降さ 、金属粉末Mを軸方向上側から圧縮する(図4( b)参照)。このように、キャビティに充填され た金属粉末Mは、径方向を拘束された状態で 方向に圧縮され、円筒状の圧縮成形体Maに成 形される。その後、ダイ11を圧縮成形体Maに して下方へ相対移動させることにより、金 から圧縮成形体Maを離型する(図4(c)参照)。

 こうして金型から離型した圧縮成形体Ma 所定の焼結温度で焼結することで、焼結体15 が得られる。焼結時の温度(焼結温度)は、750 以上1000℃以下であることが好ましく、800℃ 以上950℃以下であればより好ましい。これは 、焼結温度が750℃未満だと各粉末間の焼結作 用が十分でないことから焼結体の強度が低下 し、1000℃を超えると、焼結体15の硬度が高く なりすぎ、動圧溝の成形性に支障を来す恐れ があるためである。

 上記サイジング工程を経た焼結体15の内 面に、図3に示す動圧溝8a1、8a2を型成形する 以下、図5に基づいて、焼結体15に対する動 溝の型成形加工(動圧溝サイジング)の一例 説明する。この動圧溝成形工程は、焼結体15 の内周面15aに、完成品の動圧溝8a1、8a2の形成 領域に対応した形状の成形型を加圧すること によって、動圧溝8a1、8a2を成形する工程であ る。この動圧溝成形工程で使用する加工装置 は、図5(a)に示すように、ダイ16と、コアロッ ド17と、上パンチ18および下パンチ19とを備え る。

 コアロッド17の外周には、例えば図5(b)に すように凹状の成形型17aが設けられ、この 形型17aは、完成品である軸受スリーブ8の内 周面8aに設けられる動圧溝8a1、8a2間の丘部(図 3(a)のクロスハッチング領域)の形状に対応し いる。この成形型17aの凹部の深さHは、成形 しようとする動圧溝8a1、8a2の溝深さ(すなわ 、丘部の高さ)と同程度である。なお、通常 の成形型17aの凹部の深さは数μm~数十μm程度 であり、他の構成要素の寸法に比べれば微小 であるが、図5では理解の容易化のため深さ 誇張して描いている。

 この動圧溝成形工程では、まず図5(a)に示 すように下パンチ19の上に焼結体15を載置す 。この状態で、図5(b)に示すように、軸受ス ーブ8の内周に上方よりコアロッド17を挿入 、軸受スリーブ8の両端面8b、8cを上パンチ18 及び下パンチ19で拘束する。このとき、焼結 15の内周面15aとコアロッド17の成形型17aの凸 部との間には内径すき間Gが存在する。その 、図5(c)に示すように、焼結体15をダイ16の内 周に圧入することにより、焼結体15がダイ16 上下パンチ18、19とから圧迫力を受けて変形 、径方向にサイジングされる。これに伴い 焼結体15の内周面15aがコアロッド17の成形型 17aに押し当てられ、内周面15aから所定深さま での表層部分が塑性変形を起こして成形型17a に食い付く。これにより、成形型17aの凹部形 状が焼結体15の内周面15aに転写され、動圧溝8 a1、8a2が成形される。

 上記工程が完了した後、図5(d)に示すよう に、上下パンチ18、19による軸方向拘束状態 保持した状態でダイ16を下降させて焼結体15 ダイ16から抜き、径方向の圧迫力を解除す 。このとき、焼結体15に径方向のスプリング バックが発生し、焼結体15の内周面15aがコア ッド17の外周面17aから剥離する。これによ 、コアロッド17を抜き取り可能な状態となり 、焼結体15からコアロッド17が引き抜かれ、 受スリーブ8が完成する。

 こうして形成された軸受スリーブ8は、最 大粒径が25μm以下の細かなバインダー金属粉 を用いて成形しているため、表面に径が25μ mを超えるような粗大気孔の形成を抑えるこ ができる。これにより、軸受スリーブ8の軸 面8aに回転サイジング等の封孔処理を施す とが不要となり、製造の簡略化及び低コス 化を図ることができる。尚、封孔処理は必 しも省略しなければならないわけではなく 生産効率やコスト面で問題なければ、動圧 サイジングを施す前の焼結体15の内周面15aに 回転サイジングやショットブラスト等の封孔 処理を施しても良い。この場合、軸受面の表 面開孔をさらに減じることができ、軸受性能 をより一層向上させることができる。

 以上、本発明の一実施形態を説明したが 本発明はこの実施形態に限定されるもので ない。尚、以下の説明において、上記の実 形態と同一の構成、機能を有する部分には 一の符号を付して説明を省略する。

 以上の実施形態では、軸受スリーブ8の材 料としての主成分金属粉末として、Cu粉末及 SUS粉末を使用した場合を示したが、これに らず、例えば他のFe系粉末やCu-Zn粉末等を使 用することもできる。あるいは、バインダー 金属粉末としてSn粉末を使用した場合を示し が、これに限らず、例えばSbやZn等を使用す ることもできる。

 また、以上の実施形態では、ラジアル動 発生部としてヘリングボーン形状の動圧溝8 a1、8a2が形成されているが、これに限らず、 えばスパイラル形状の動圧溝やステップ軸 、あるいは多円弧軸受を採用してもよい。 圧発生部を設けず、軸部2aの外周面2a1及び 受スリーブ8の内周面8aを共に円筒面とした わゆる真円軸受を構成してもよい。

 また、以上の実施形態では、スラスト動 発生部としてスパイラル形状の動圧溝が形 されているが、これに限らず、例えばヘリ グボーン形状の動圧溝やステップ軸受、あ いは波型軸受(ステップ型が波型になったも の)等を採用することもできる。

 また、以上の実施形態では、動圧発生部 軸受スリーブ8の内周面8a、下側端面8c、お びハウジング底部7bの上側端面7b1に形成され ているが、それぞれと軸受隙間を介して対向 する面、すなわち軸部2aの外周面2a1、フラン 部2bの上側端面2b1、および下側端面2b2に動 発生部を設けてもよい。

 また、以上の実施形態では、ラジアル軸 部R1、R2が軸方向で離隔して設けられている が、これらを軸方向で連続的に設けてもよい 。あるいは、これらの何れか一方のみを設け てもよい。

 また、以上の実施形態では、流体動圧軸 装置1の内部に充満し、ラジアル軸受隙間や 、スラスト軸受隙間に動圧作用を生じる流体 として、潤滑油を例示したが、それ以外にも 各軸受隙間に動圧作用を発生可能な流体、例 えば空気等の気体や、磁性流体、あるいは潤 滑グリース等を使用することもできる。

 また、本発明の方法で製造された流体動 軸受装置は、上記のようにHDD等のディスク 動装置に用いられるスピンドルモータに限 ず、光ディスクの光磁気ディスク駆動用の ピンドルモータ等の高速回転下で使用され 情報機器用の小型モータや、レーザビーム リンタのポリゴンスキャナモータ、あるい 電気機器のファンモータ等に好適に使用す ことができる。

流体動圧軸受装置1を組み込んだモータ を示す断面図である。 流体動圧軸受装置1の断面図である。 軸受スリーブ8の断面図である。 軸受スリーブ8の下面図である。 焼結体の成形工程を示す断面図である 。 焼結体の成形工程を示す断面図である 。 焼結体の成形工程を示す断面図である 。 軸受スリーブの溝サイジング工程を示 す断面図である。 軸受スリーブの溝サイジング工程を示 す断面図である。 軸受スリーブの溝サイジング工程を示 す断面図である。 軸受スリーブの溝サイジング工程を示 す断面図である。 比較品としての焼結軸受の表面性状を 示す拡大平面図である。 本発明の実施品としての焼結軸受の表 面性状を示す拡大平面図である。

符号の説明

1 流体動圧軸受装置
2 軸部材
3 ディスクハブ
4 ステータコイル
5 ロータマグネット
6 ブラケット
7 ハウジング
8 軸受スリーブ(焼結軸受)
9 シール部材
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
S シール空間