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Title:
SLIDING MEMBER AND SLIDE BEARING
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/078323
Kind Code:
A1
Abstract:
This invention provides a sliding member, which can simultaneously realize excellent low friction properties and abrasion resistance for maintaining dimensional accuracy, and a slide bearing using the sliding member. The sliding member comprises a porous body (5) having open pores on a sliding face and a polymer gel (6) filled in the porous body (5). The polymer gel (6) is a swollen gel produced by impregnating an uncrosslinked polymer into the porous body (5) and crosslinking the polymer to form the swollen gel containing a lubricating component. The average pore diameter of the open pores formed in the porous body (5) is not less than 1 μm and not more than 1000 μm. The average open pore area ratio is not less than 25% and not more than 99%. The polymer gel (6) forms a film having a thickness of less than 1 mm on the sliding face.

Inventors:
SHIMAZU EIICHIROU
EGAMI MASAKI
Application Number:
PCT/JP2008/072445
Publication Date:
June 25, 2009
Filing Date:
December 10, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NTN TOYO BEARING CO LTD (JP)
SHIMAZU EIICHIROU
EGAMI MASAKI
International Classes:
F16C33/12; C08J5/16; C08J9/42
Domestic Patent References:
WO2006051671A12006-05-18
Foreign References:
JP2006266429A2006-10-05
JP2004232838A2004-08-19
JP2007046752A2007-02-22
JP2006250262A2006-09-21
JP2003120676A2003-04-23
JPH10182968A1998-07-07
JPS6241426A1987-02-23
Attorney, Agent or Firm:
WAKI, Misao (Toin-cho Inabe-gun, Mie 33, JP)
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Claims:
 少なくとも摺動面となる表面に開放孔を有する多孔質体と、該多孔質体に高分子ゲルを充填してなる摺動部材であって、
 前記高分子ゲルは、前記多孔質体に非架橋状態で含浸後に架橋された架橋高分子が潤滑成分を含んで膨潤したゲルであることを特徴とする摺動部材。
 前記開放孔の平均孔径が 1μm 以上、1000μm 以下であり、かつ平均空孔面積率が 25%以上、99%以下であることを特徴とする請求項1記載の摺動部材。
 前記高分子ゲルが前記摺動面に 1 mm 未満の厚さの被膜を形成していることを特徴とする請求項1記載の摺動部材。
 前記多孔質体が有機高分子多孔質体であることを特徴とする請求項1記載の摺動部材。
 前記有機高分子多孔質体がフッ素樹脂、ポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂から選ばれた少なくとも1つの樹脂多孔質体であることを特徴とする請求項4記載の摺動部材。
 前記高分子ゲルが親水性高分子ゲルであることを特徴とする請求項1記載の摺動部材。
 前記高分子ゲルの骨格となる前記架橋高分子が、ポリアクリルアミド類であることを特徴とする請求項6記載の摺動部材。
 前記高分子ゲルの骨格となる前記架橋高分子が、3 次元架橋構造を有することを特徴とする請求項1記載の摺動部材。
 前記高分子ゲルの骨格となる前記架橋高分子は、前記高分子ゲルにおいて(飽和吸水時の高分子ゲル重量/乾燥時の高分子ゲル重量)で求められる膨潤度が 2 倍以上、100 倍以下となる架橋高分子であることを特徴とする請求項6記載の摺動部材。
 前記摺動部材は、荷重 10 N を加えながら 200 時間静置した後の体積収縮率が 10%以下であることを特徴とする請求項1記載の摺動部材。
 滑り面を有する滑り軸受であって、この滑り面は請求項1記載の摺動部材により形成されてなることを特徴とする滑り軸受。
 請求項6記載の摺動部材からなる滑り軸受であって、該滑り軸受は水中で使用されることを特徴とする滑り軸受。
Description:
摺動部材および滑り軸受

 本発明は摺動部材およびこの摺動部材を り面に用いた滑り軸受に関する。

 高分子ゲルは他の固体物質と比べて摩擦 数が非常に小さいことが知られている(特許 文献1参照)。また、親水性の高分子ハイドロ ルは生体への毒性が低いことから、低摩擦 性を必要とする人工関節材料や、カテーテ 等の医療機器の摺動性表面処理材として適 が検討されてきた(特許文献2~特許文献4参照 )。

 高分子ゲルは液中での摺動時、摺動界面 液体を保持することで低摩擦係数となると れる(特許文献1および特許文献2参照)。また 液体を介して摺動する場合は、耐摩耗性が問 題となることもほとんどない。しかし高分子 ゲルは一般に弾性率が 1 MPa 以下の低弾性 であるため小さな荷重でも大変形を起こす 合が多い。また高分子ゲル内に保持されて る溶媒の放出性も有しているため、高分子 ルに荷重を負荷すると溶媒を放出し非常に きな体積収縮を起こすという問題がある。

 また、摺動部材表面に高分子ゲル層を形 した場合であっても、高分子ゲルの膨張収 による体積変化のため摺動部材表面から剥 するという問題がある。

 滑り軸受などに用いられる摺動部材は、 摩擦特性および寸法精度を維持するための 摩耗性の両立が要求される。高分子ゲルを 動部材に適用すると、体積収縮を起こすな の問題から、優れた低摩擦特性と耐摩耗性 有していながら、寸法精度の要求される摺 部材や滑り軸受として高分子ゲルを使用す ことが困難であった。

 一方、低摩擦特性および耐摩耗性を両立さ るため、潤滑油を含浸することができ、摺 材として使用することができる連通孔を有 る樹脂製多孔質体が知られている(例えば特 許文献5~特許文献9参照)。
 しかし、樹脂製多孔質体内に流動性のない 分子ゲルを含浸することは困難であるとい 問題がある。

特開2002-212452号公報

特許第3936180号公報

特開平10-158375号公報

特表平10-502855号公報

WO2005/103128号公報

WO2005/116468号公報

WO2005/121288号公報

WO2005/121578号公報

WO2006/093181号公報

 本発明はこのような問題に対処するため なされたものであり、優れた低摩擦特性と 寸法精度を維持するための耐摩耗性とを両 させることができる摺動部材およびこれを いた滑り軸受の提供を目的とする。

 本発明の摺動部材は、少なくとも摺動面と る表面に開放孔を有する多孔質体と、該多 質体に高分子ゲルを充填してなる摺動部材 あって、上記高分子ゲルは多孔質体内に非 橋状態で含浸後に架橋された架橋高分子が 滑成分を含んで膨潤したゲルであることを 徴とする。
 また、上記開放孔の平均孔径が 1μm 以上 1000μm 以下であり、かつ平均空孔面積率が  25%以上、99%以下であることを特徴とする。
 また、上記高分子ゲルが摺動部材の摺動面  1 mm 未満の厚さの被膜を形成しているこ を特徴とする。

 上記多孔質体が有機高分子多孔質体であ ことを特徴とする。特に、フッ素樹脂、ポ エチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂か 選ばれた少なくとも1つの樹脂多孔質体であ ることを特徴とする。

 上記高分子ゲルが親水性高分子ゲルであ ことを特徴とする。特に、上記高分子ゲル 骨格となる架橋高分子がポリアクリルアミ 類であることを特徴とする。

 上記高分子ゲルの骨格となる架橋高分子は 3 次元架橋構造を有することを特徴とする
 また、上記高分子ゲルの骨格となる架橋高 子は、上記高分子ゲルにおいて(飽和吸水時 の高分子ゲル重量/乾燥時の高分子ゲル重量) 求められる膨潤度が 2 倍以上、100 倍以下 となる架橋高分子であることを特徴とする。

 上記摺動部材は、荷重 10 N を加えなが  200 時間静置した後の体積収縮率が 10%以 であることを特徴とする。

 本発明の滑り軸受は、該滑り軸受の滑り が上記本発明の摺動部材で形成されている とを特徴とする。特に、親水性架橋高分子 ゲル骨格材である場合、該滑り軸受が水中 水が散布される環境で使用されることを特 とする。

 本発明の摺動部材は、少なくとも摺動面 開放孔を有する多孔質体と、該多孔質体に 架橋状態で含浸後に架橋された架橋高分子 潤滑成分を含んで膨潤した高分子ゲルを充 しているので、高分子ゲルによる優れた低 擦特性と、多孔質体による寸法精度を維持 るための耐摩耗性とを両立させることがで る。その結果、荷重負荷時の変形量が小さ 、かつ低摩擦係数を有することで優れた低 擦特性と、寸法精度を維持するための耐摩 性とが両立する摺動部材を得ることができ 。

 上記多孔質体に形成される開放孔の平均孔 が 1μm 以上、1000μm 以下であり、かつ平 空孔面積率が 25%以上、99%であるので、多孔 質体に対する高分子ゲルの密着性を確保する ことができ、表面に高分子ゲル層を形成する 場合にも多孔質体から高分子ゲル層が剥離す ることもないため、優れた低摩擦特性と、寸 法精度を維持するための耐摩耗性とが両立す る。
 また、高分子ゲルが摺動部材の摺動面に 1 mm 未満の厚さの被膜を形成しているので、 れた低摩擦特性と、寸法精度を維持するた の耐摩耗性とが両立する。
 特に、多孔質体が有機高分子多孔質体であ 、高分子ゲルの骨格材が親水性の架橋高分 である場合、水中や水が散布される環境で 用される摺動材料に好適に使用できる。

 本発明のすべり軸受は滑り面を有する滑 軸受であって、この滑り面が上記摺動部材 より形成されてなるので、優れた低摩擦特 と、寸法精度を維持するための耐摩耗性と 両立することができる。

体積膨張率測定試験機示す模式図であ 。 滑り軸受の断面形状を示す図である。

符号の説明

  1  円筒状の部品
  2  底板
  3  押し棒
  4  摺動部材試験片
  5  多孔質体
  6  高分子ゲル

 本発明に使用できる多孔質体は、摺動部材 して使用する場合において、少なくとも摺 面となる表面に開放孔を有する多孔質体で る。この多孔質体は微小空孔が内部に多数 成され、摺動部材表面に存在する微小空孔 表面に開口して開放孔を形成する。
 多孔質体に形成される空孔は、多孔質体内 空孔が相互につながっている連通孔、つな っていない独立孔、または連通孔および独 孔が混在しているものを使用することがで る。本発明においては、高分子ゲルとの密 性が得やすいことから特に連通孔であるこ が好ましい。また、摺動部材の摺動面に存 する開口部を有する開放孔は、独立孔であ ても使用することができる。

 上記多孔質体に形成される開放孔の平均孔 は 1μm 以上、1000μm、好ましくは 10μm 以 、200μm 以下である。開放孔の平均孔径が  1μm 未満であると、後述する高分子ゲルの原 料溶液の粘度によっては、多孔質体の連通孔 へ含浸するときに非常に高い圧力を必要とし たり、表面独立孔の場合では、孔の形状や多 孔質体表面の平均空孔面積率によっては表面 の高分子ゲル層が十分な密着力を得られない 場合がある。また、1000μm をこえると、表面 の高分子ゲル層が十分な密着力を得られない 場合や摺動表面に非常に大きな凹凸が発生す る場合がある。
 なお、開放孔の平均孔径は、多孔質体の摺 部表面に開口して存在する立体形状の微小 孔の孔直径の平均値を表し、摺動部表面に 在する単位面積当たりの開口数と、開口孔 径の総和とから算出することができる。

 また、上記多孔質体に形成される開放孔の 均空孔面積率が 25%以上、99%以下、好まし は 30%以上、80%以下である。平均空孔面積率 が 25%未満であると、多孔質体と高分子ゲル の密着性が確保できなくなる場合が生じる また、99%をこえると、摺動部材の機械的強 と寸法精度が保持できなくなる場合が生じ 。
 平均空孔面積率は、多孔質体の摺動部表面 開口して存在する立体形状の微小空孔の存 する単位表面積当たりの開放孔の開口数と 開口孔の平均直径(平均孔径)とから算出す ことができる。均質な多孔質体の場合は全 積に占める空孔部の体積率である空孔率と 値である。

 上記多孔質体の材質としては、金属、有 高分子、無機物等特に制約はなく、また多 質体の製造方法にも特に制約はない。摺動 が使用される用途、要求される強度や弾性 、後述する高分子ゲル材料との親和性、溶 に対する耐食性等を考慮して材質および製 方法を選択することができる。

 金属材料としては、例えば、鉄やステンレ 、銅、銅合金、Ni基合金、Co基合金、金、銀 等を例示することができる。
 有機高分子材料としては、超高分子量ポリ チレン樹脂や高密度ポリエチレン樹脂等の リエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂、 リアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、6ナ イロン樹脂や66ナイロン樹脂、11ナイロン樹 等のポリアミド樹脂類、ポリエチレンテレ タレート樹脂やポリブチレンテレフタレー 樹脂等のポリエステル樹脂類、ポリカーボ ート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂 ポリテトラフロオロエチレン樹脂やエチレ -テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、テ ラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピ レン共重合体樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹 脂等のフッ素樹脂類、ポリフェニレンサルフ ァイド樹脂やポリアミドイミド樹脂、ポリエ ーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエ ーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケ トン樹脂等のスーパーエンジニアリングプラ スチック、フェノール樹脂、シリコーン樹脂 などを例示することができる。
 無機物としては、ガラスやシリカ、ゼオラ ト、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素等のセ ミック類、活性炭や黒鉛等のカーボン類等 例示することができる。またこれら無機物 粒子を樹脂等の有機物のバインダー等を用 て固めたものでもよい。

 水中で使用される軸受の場合、耐食性に れる有機高分子材料であることが好ましい 有機高分子材料の中でも、それ自身摺動性 耐水性に優れるフッ素樹脂、ポリエチレン 脂、ポリプロピレン樹脂が好ましい。

 多孔質体の製造方法としては、例えば、粉 状の原料粒子を焼結する焼結方法、原料に や油、有機溶剤、超臨界流体等の溶媒に可 な粒子を添加して複合体を形成した後、複 体中に取り込まれた添加粒子を用いた溶媒 抽出する抽出法、分解・気化しやすい成分 添加した複合体を形成した後/または形成過 程で、添加成分を分解、気化する分解法、発 泡剤を混入して成形した後に発泡させる発泡 法等が挙げられる。
 なおこれら多孔質体に、必要に応じて耐食 付与や高分子ゲルとの密着力向上等を目的 するような表面改質を行なってもよい。
 本発明に使用できる有機高分子材料を原料 する多孔質体としては、表面に開口した独 孔を得やすく、また連通孔を得やすい抽出 が好ましい。

 上記多孔質体に高分子ゲルを充填すること 、多孔質体の表面に存在する独立孔/もしく は連通孔にも高分子ゲルが充填され、多孔質 体と高分子ゲルとの密着性が確保され、溶媒 による膨潤処理時や摺動部材の摺動時に基材 から高分子ゲル被膜が剥離することを防ぐこ とができる。
 本発明における高分子ゲルとは、高分子を ちょう剤とした粘ちょうな液状物ではなく その骨格となる高分子が架橋構造、好まし は 3 次元架橋構造を有し、自重の数倍~1000  倍程度の溶媒を吸収して膨潤した固体状物 ことをいう。

 高分子ゲルの骨格となる架橋された高分 は、目的とする溶媒を吸収して膨潤できる 橋高分子であれば使用できる。特に膨潤度  2 倍以上、好ましくは 3 倍以上、100 倍 下とできる架橋高分子が好ましい。なお膨 度は、骨格となる架橋高分子と溶媒との親 性や架橋点密度等により制御することがで る。膨潤度が 2 倍未満の場合、その高分 ゲルを充填した摺動材の摩擦係数が著しく 加する場合がある。

 高分子ゲルとしては、水を溶媒として膨潤 るハイドロゲル、エチレングリコールやグ セリン等の親水性有機溶媒を含んで膨潤す 親水性オルガノゲル、または疎水性の有機 媒や油等を溶媒として含んで膨潤するオル ノゲル等が挙げられる。
 ハイドロゲルおよび親水性オルガノゲルの 格となる高分子の例としては、親水性高分 が好ましく、例えば、ポリアクリルアミド ポリジメチルアクリルアミド、ポリイソプ ピルアクリルアミド、ポリアクリルアミド- 2-メチルプロパンスルホン酸やポリアクリル ミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウ などのポリアクリルアミド類、ポリビニル ルコール類、ポリアクリル酸もしくはポリ タクリル酸、ポリヒドロキシアクリル酸エ テル類もしくはポリヒドロキシメタクリル エステル類等の親水性のポリアクリル酸エ テル類もしくはポリメタクリル酸エステル 、およびスルホン酸基やカルボン酸基等の 水基やこれらの電解質基を側鎖や末端基と て有するような高分子が挙げられる。また これらの高分子の共重合体や複合体を用い もよい。さらにスルホン酸基やカルボン酸 等の酸性基は、ナトリウム、リチウム、マ ネシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土 金属等との塩としたものでもよい。
 また上記のような合成高分子だけでなく、 えば多糖類であるアルギン酸ナトリウム等 アルギン酸類、寒天やゼラチン、セルロー 等の天然高分子を用いることもできる。

 疎水性の有機溶媒や油等を溶媒として含 で膨潤するオルガノゲルの骨格となる高分 の例としては、例えばアクリル酸エステル 、メタクリル酸エステル類、ビニルエステ 類、ポリスチレン類、ポリエチレン等の脂 族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ポリエ テル類、シリコーン樹脂類、エポキシ樹脂 、ウレタン樹脂類等が挙げられる。

 高分子ゲルは、3 次元網目構造を有した上 高分子を用いるか、網目構造、好ましくは 3 次元の網目構造を有する高分子構造に変 して、これに溶媒を含浸して得られる。
 網目構造の架橋点としては、化学結合によ 形成された化学的架橋点、熱やpH等の外部 激により可逆的に形成されると共に乖離可 な物理的架橋点のいずれも使用できる。
 化学的架橋としては、化学結合により形成 きるなら特に架橋方法に制約はないが、例 ば、主成分となるポリマーやオリゴマーま は原料モノマーと共有結合を作ることが可 な少なくとも 2 つ以上の官能基を有する 橋剤や、過酸化物を用いた酸素架橋、硫黄 合物を用いた加硫、電子線や放射線を用い 電子線架橋、放射線架橋により 3 次元架橋 構造を形成することができる。
 物理架橋としては、その架橋点を、水素結 、イオン結合や配位結合による架橋、へリ クス形成による架橋、疎水結合による架橋 結晶形成による架橋等により形成すること 可能である。このような架橋を起こすこと できる分子構造を、少なくとも骨格となる 分子 1 分子中に 2 ヶ所以上有する高分子 を用いることで、3 次元架橋構造体を有する 高分子物理ゲルを得ることができる。

 有機高分子多孔質体の多孔質部分に高分 ゲルを充填することで本発明の摺動部材が られる。例えば、上記高分子の原料モノマ やオリゴマーもしくはポリマーと架橋剤ま は硬化剤、触媒および/または重合開始剤を 溶媒に混合したものを高分子ゲルの原料溶液 とし、この原料溶液を多孔質体に含浸または 塗布したのち重合および架橋し、その後必要 に応じて溶媒を含浸させて膨潤させることで 、高分子ゲルを多孔質体表面に形成し、およ び多孔質体内に充填した摺動部材を得ること ができる。

 多孔質体への高分子ゲルの原料溶液の含浸 法や塗布方法は、十分な密着性が得られる らば特に限定されない。例えば含浸方法と て、真空中で多孔質体を原料溶液に浸漬し その後大気開放することで含浸する真空含 法や、さらに大気開放したのち気体部を加 する真空加圧含浸法、これらの含浸方法と 熱処理を組み合わせた含浸方法、さらには 料溶液中への浸漬による含浸法、基材の任 の表面から原料溶液を加圧により基材内部 浸透・透過させることによる含浸法などを 示することができる。
 また、多孔質体表面に高分子ゲルの原料溶 をはけ塗りなどで塗布した後に、上記含浸 を採用して少なくとも多孔質体表面に原料 液層を形成することができる。

 原料溶液を多孔質体へ含浸または多孔質体 面に塗布した後に上述した化学的架橋法ま は物理的架橋法により原料が架橋され高分 ゲル骨格が得られる。
 架橋後の膨潤処理は、高分子ゲルが充填さ ている高分子多孔質体を溶媒となる液中に 漬することで処理可能である。なお必要に じて、例えばこれらの膨潤処理や乾燥処理 、摺動部材中に含まれる未反応モノマーや リゴマー、触媒等を溶媒または大気中に抽 または放出する除去処理・低減処理として いることもできる。

 摺動部材は、多孔質体表面に高分子ゲル 存在する場合、高分子ゲル被膜の厚みは、 1 mm 以下、好ましくは 500μm 以下である。 被膜の厚みを 1 mm 以下とすることにより、 本発明の摺動部材が荷重を受け、表面のゲル 被膜が大変形を起こした場合や、溶媒放出に よる体積収縮を起こした場合でも、摺動部材 としての変形量を小さく抑えることができる 。

 本発明の摺動部材は、高分子ゲルの架橋 造および膨潤性を阻害しない範囲において 高分子ゲルに例えばモンモリロナイトやヘ トライト等の粘土鉱物等の補強材、酸化防 剤、紫外線安定剤、防腐剤、防黴剤、着色 等を配合することができる。補強材を配合 る場合、補強材の粒子径は多孔質体の平均 径より小さいものであるなら特に問題なく 用することができる。なおこれら高分子ゲ に配合する添加剤、補強材は溶媒に可溶も くは均一混合可能であることが好ましい。

 本発明の滑り軸受は、滑り面を上記本発明 摺動部材で形成する。滑り面としては、例 ばブッシュ型滑り軸受の場合は内径面や外 面、つば付きブッシュ型滑り軸受の場合は らに内径面、外径面に加えてつば面が挙げ れる。
 高分子ゲルを滑り軸受の摺動層に使用する とにより低摩擦係数で、かつ多孔質体と複 化することで寸法変化を小さくした滑り軸 が得られる。
 また、本発明で使用される高分子ゲルが親 性の高分子ゲルの場合、水中もしくは水分 塗布または散布される用途で使用される滑 軸受に好適である。この用途で用いられる り軸受は、軸精度の維持、低摩擦に加えて 耐腐食性が必要となるが、水溶媒の高分子 ルの場合は、溶媒分の蒸発による寸法変化 摩擦係数の増大が発生するため、水中や十 湿度の高い環境下でのみ軸受として使用可 となる。
 一方、高分子ゲルに潤滑油が含まれる高分 オルガノゲルの場合、水溶媒時のような蒸 の問題が起こり難いことから、大気中から 中までの広い範囲で用いることが可能な滑 軸受となる。

実施例1
 高分子ゲルとして、N,N-ジメチルアクリルア ミド(主原料モノマー: 25℃で液体)とメチレ ビスアクリルアミド(架橋剤)との原料溶液を 重合して得られるポリジメチルアクリルアミ ドゲルを用いた。
 多孔質体として、抽出法により得られたポ プロピレン樹脂多孔質体を用いた。このポ プロピレン樹脂多孔質体は、平均孔径が 30 μm 、平均空孔面積率が 30%の独立孔を有し いる。
 N,N-ジメチルアクリルアミド 97 モル%と、 チレンビスアクリルアミド 3 モル%とを水 溶解して濃度 10 重量%の水溶液を得た。こ 水溶液にラジカル重合開始剤として、 2,2 -アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン ]ジハイドロクロライド を水溶液の 0.3 重 %添加して原料モノマー溶液を得た。
 直径φ8 mm×厚み 3 mm の円盤状に加工した リプロピレン樹脂多孔質体に、上記原料モ マー溶液を真空加圧含浸後、窒素雰囲気下 50℃にて 10 時間以上静置し重合させた。そ の後 1 週間超純水中に浸漬する処理(以後、 膨潤処理と記す)を施すことで高分子ゲルを 衡吸水状態とした摺動部材試験片を得た。
 この摺動部材試験片を以下に示す動摩擦係 測定および体積収縮率測定試験にそれぞれ し、動摩擦係数測定および体積収縮率を測 した。また、上記原料モノマー溶液を窒素 囲気下 50℃にて 10 時間以上静置し重合さ せた高分子ゲルの膨潤度を測定した。結果を 表1に示す。

<膨潤度測定試験>
 用いた高分子ゲルを飽和吸水させた後の重 と、絶乾状態時の重量とを測定し、飽和吸 時の重量と絶乾時の重量とから、式(1)によ 膨潤度を求める。なお、飽和吸水は 25℃に て 100 時間超純水中に浸漬することで、絶 状態は 100℃にて 50 時間乾燥することで求 めた。
 
 膨潤度(倍)=飽和吸水時のゲル重量/乾燥時の ゲル重量 ・・・・(1)
 

<ゲル被膜の厚み測定試験>
 重合前の摺動部材試験片の厚みと、膨潤処 後の同試験片の厚みとの差から、式(2)によ 摺動部材試験片表面のゲル被膜の厚みを求 た。
 
 ゲル被膜の厚み=膨潤処理後の試験片の厚み -処理前の試験片の厚み・・・(2)
 

<動摩擦係数測定試験>
  試験機:ピンオンディスク型摩擦試験機
  摺動部材試験片形状: 内径φ8 mm×厚み約  3 mm (ピン形状)
  ディスク相手材質: ガラス(Ra:0.005μm )
  荷重     : 2 N
  速度     : 10 m/分
  時間     : 30分間
  雰囲気    : 常温、水中
 上記条件で、試験開始 30分経過時の動摩擦 係数を測定した。摩擦係数 0.1 未満のもの 合格、0.1 以上のものを不合格とする。

<体積収縮率測定試験>
 試験機の概要を図1に示す。図1は試験機の 面図である。試験機は内径 8.0 mm の穴を有 する円筒状の部品1と、直径 7.95 mm の円柱 の底板2および押し棒3とからなる。上記寸法 を有する摺動部材試験片4(内径φ8 mm×厚み約 3 mm)を底板2と押し棒3との間にセットし、か つ外径面を部品1で拘束した状態で、押し棒3 介して試験片4に荷重 10 N を加えたまま 2 00 時間静置し、試験前後の試験片4の厚さ寸 から体積収縮率を測定した。試験片4の体積 収縮率が 10%以下のものを合格、10%をこえた のを不合格とする。

<総合評価>
 動摩擦係数および体積収縮率のいずれも合 の場合は優れた摺動部材であるとして「○ を、それ以外を不適格な摺動部材であると て「×」をそれぞれ記録する。

実施例2
 多孔質体として、三菱樹脂社製の商品名フ ルダスS HP の超高分子量ポリエチレン樹脂 多孔質体を用いて、実施例1と同一の形状に 形した。この超高分子量ポリエチレン樹脂 孔質体は、平均孔径が 98μm 、平均空孔面 率が 52%の連通孔を有している。
 この多孔質体を用いた以外は実施例1と同一 の高分子ゲルを用いて実施例1と同様の処理 よび測定を実施した。結果を表1に併記する

実施例3
 多孔質体として、抽出法により得られた4フ ッ化エチレン樹脂多孔質体を用いて、実施例 1と同一の形状に成形した。この4フッ化エチ ン樹脂多孔質体は、平均孔径が 30μm 、平 空孔面積率が 50%の連通孔を有している。
 この多孔質体を用いた以外は実施例1と同一 の高分子ゲルを用いて実施例1と同様の処理 よび測定を実施した。結果を表1に併記する

実施例4
 N,N-ジメチルアクリルアミド 98 重量%と補 材兼架橋剤として親水性の合成ヘクトライ (和光純薬社製) 2 重量%とからなる原料を水 に溶解して濃度 10 重量%の水溶液を得た。 の水溶液にラジカル重合開始剤として、 2,2 ’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパ ]ジハイドロクロライド を水溶液の 0.3 重 量%添加して原料モノマー溶液を得た。
 実施例2で用いた形状の超高分子量ポリエチ レン樹脂多孔質体に、上記原料モノマー溶液 を真空加圧含浸後、窒素雰囲気下 50℃にて  10 時間以上静置し重合させた。その後、膨 処理をすることで高分子ゲルを平衡吸水状 とした摺動部材試験片を得た。この摺動部 試験片を用いて、実施例1と同様の測定を実 した。結果を表1に併記する。

比較例1
 親水性粘土鉱物のヘクトライト(和光純薬社 製) 6 重量%水溶液の無機物ゲルを実施例1で いた形状のポリプロピレン樹脂多孔質体表 に厚み 500μm で含浸・塗布して摺動部材試 験片を得た。この摺動部材試験片を用いて、 実施例1と同様の測定を実施した。結果を表1 併記する。

比較例2
 実施例1と同一の原料モノマー溶液を内径 8  mm のガラス管中で実施例1と同一の条件で 合させて高分子ゲルを得た。膨潤処理後、 み 3 mm に加工した高分子ゲル自体を摺動 材試験片とした。この摺動部材試験片を用 て、実施例1と同様の測定を実施した。結果 表1に併記する。

比較例3
 実施例1と同一形状であって多孔質体でない 、超高分子量ポリエチレン樹脂を用いた以外 は実施例1と同様の処理および測定を実施し 。結果を表1に併記する。

比較例4
 実施例2で用いた形状の超高分子量ポリエチ レン樹脂多孔質体を用いて、高分子ゲル層の 厚みを 1 mm にした以外は実施例2と同様の 理および測定を実施した。結果を表1に併記 る。

比較例5
 N,N-ジメチルアクリルアミド 90 モル%と、 チレンビスアクリルアミド 10 モル%とを混 してモノマー溶液を得た。この水を含まな モノマー溶液にラジカル重合開始剤として  2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プ ロパン]ジハイドロクロライドを溶かした 5  重量%水溶液をモノマー溶液に 5 重量%添加 て原料モノマー溶液を得た。
 実施例2で用いた形状の超高分子量ポリエチ レン樹脂多孔質体に、上記原料モノマー溶液 を真空加圧含浸後、窒素雰囲気下 50℃にて  10 時間以上静置し重合させた。その後 1 週 間超純水中に浸漬する処理することで高分子 ゲルを平衡吸水状態とした摺動部材試験片を 得た。この摺動部材試験片を用いて、実施例 1と同様の測定を実施した。結果を表1に併記 る。

 実施例1~実施例4は 0.05 未満の優れた低摩 係数を示し、また摩擦試験時に摺動部材か 高分子ゲル膜が剥離することもなく、かつ  5~7%という優れた低体積収縮率を示したこ から優れた摺動部材であるといえる。
 比較例1は膨潤度が約 16 倍であり、高分子 ゲルではなく、無機物によるゲルであるため 、水中での摩擦係数測定時、溶出によりゲル 被膜が消失し摩擦係数も 0.1 より大きくな た。また体積収縮率も 10%よりも大きかった 。これらのことから摺動部材として不合格と なった。
 比較例2は試験片の摩擦係数は 0.05 未満と 施例と同様の優れた低摩擦係数を示したが 多孔質体と複合化していないため体積収縮 が 40%をこえた。このことから摺動部材と て不合格となった。
 比較例3は非多孔質体を使用したため、高分 子ゲルの密着性が十分でなく、膨潤処理時に 基材から高分子ゲル被膜が剥離した。このた め摩擦特性および溶媒非放出性を評価するこ とができず、摺動部材として不合格となった 。
 比較例4は摩擦係数では 0.05 未満と実施例 同様の優れた低摩擦係数を示したが、体積 縮率が 10%をこえたことから摺動部材とし 不合格となった。
 比較例5は試験片の体積収縮率は 10%以下で ったが、ゲルの膨潤度は 2 倍未満であり 試験片の摩擦係数が 0.1 をこえたことから 動部材として不合格となった。

 上記摺動部材を用いて滑り軸受を製造した 滑り軸受の断面形状を図2(a)~(d)に示す。図2 おいて、実施例1の摺動部材試験片と同様に して形成され、5は多孔質体を、6は高分子ゲ をそれぞれ示す。高分子ゲル6の厚みは実際 よりも誇張してある。
 これら滑り軸受は、摺動面において、高分 ゲル6が剥離することなく、 0.05 未満の優 た低摩擦係数を示した。

 本発明の摺動部材は、多孔質体と高分子ゲ との複合化により、荷重負荷時の変形量が さく、かつ低摩擦係数を有するとともに、 潤処理時および摺動時に多孔質基材から高 子ゲル被膜が剥離することもないため、液 、特に水中に浸漬されるか、または液が摺 部に塗布や散布される条件下で用いられる 動部材として好適に利用できる。
 また本発明の滑り軸受はこの摺動部材を用 ているため、液中、特に水中に浸漬される 、または液が摺動部に塗布や散布される条 下で用いられる滑り軸受として好適に利用 きる。