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Title:
SOFT MAGNETIC ALLOY, PROCESS FOR PRODUCTION THEREOF AND MAGNETIC PARTS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/133301
Kind Code:
A1
Abstract:
The invention provides a high-saturation-magnetic-flux-density and low-coercive-force soft magnetic alloy which exhibits a saturation magnetic flux density of as high as 1.7T or above, a small coercive force, and a small hysteresis loss; a process for production of the same; and magnetic parts. The nanocrystalline soft magnetic alloy of the invention has a structure wherein grains whose sizes exceed 0nm and are up to 60nm are dispersed in an amorphous phase with a grain volume fraction of 30% or above. The soft magnetic alloy is represented by the composition formula: Fe100-x-y-zAxMyXz (wherein A is at least one element selected from between Cu and Au; M is at least one element selected from among Ti, Zr, Hf, V, Nb, Ta, Cr, Mo and W; X is at least one element selected between B and Si; and x, y and z in terms of atomic percentage satisfy the relationships: 0

Inventors:
OHTA MOTOKI (JP)
YOSHIZAWA YOSHIHITO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/057966
Publication Date:
November 06, 2008
Filing Date:
April 24, 2008
Export Citation:
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Assignee:
HITACHI METALS LTD (JP)
OHTA MOTOKI (JP)
YOSHIZAWA YOSHIHITO (JP)
International Classes:
C22C38/00; B22D11/06; C21D6/00; C22C45/02; H01F1/153
Domestic Patent References:
WO2007032531A12007-03-22
Foreign References:
JPH05263197A1993-10-12
JPH0517819A1993-01-26
Attorney, Agent or Firm:
ASAMURA, Kiyoshi et al. (New Ohtemachi Bldg.2-1, Ohtemachi 2-chom, Chiyoda-ku Tokyo 04, JP)
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Claims:
 結晶粒径が0よりも大きく60nm以下の結晶粒がアモルファス相中に体積分率で30%以上分散した組織を有するナノ結晶の軟磁性合金であって、前記軟磁性合金は組成式がFe 100-x-y-z A x M y X z により表され、ここで、AはCuおよびAuから選ばれた少なくとも1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wから選ばれた少なくとも1種以上の元素、XはBおよびSiから選ばれた少なくとも一種以上の元素であり、原子%で、0<x≦5、0.4≦y<2.5、10≦z≦20であり、前記軟磁性合金の飽和磁束密度が1.7T以上、保磁力が15A/m以下である軟磁性合金。
 前記AはCuを含み、前記MはNbを含む請求項1に記載の軟磁性合金。
 前記軟磁性合金は、Fe量に対して、Fe量の10原子%未満のNiおよびCoから選ばれた少なくとも一種以上の元素、及び/又は、Fe量の5原子%未満を白金族元素、Ag、Zn、In、Sn、As、Sb、Sb、Bi、Y、N、O、Mn及び希土類元素から選ばれた少なくとも一種以上の元素を含む請求項1または請求項2に記載の軟磁性合金。
 前記軟磁性合金は、X量に対して5原子%未満のGa、Ge、C、Alから選ばれた少なくとも一種以上の元素を含む請求項1乃至請求項3に記載の軟磁性合金。
 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の軟磁性合金を用いた磁性部品。
 軟磁性合金の製造方法であって、組成式がFe 100-x-y-z A x M y X z により表され、ここで、AはCu,Auから選ばれた少なくとも1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wから選ばれた少なくとも1種以上の元素、XはBおよびSiから選ばれた少なくとも一種以上の元素であり、原子%で、0<x≦5、0.4≦y<2.5、10≦z≦20である合金溶湯を急冷して実質的にアモルファスの合金を鋳造する段階と、
 その後、300℃以上の温度領域における平均昇温速度が100℃/min以上となるように熱処理する段階とを含む、軟磁性合金の製造方法。
Description:
軟磁性合金、その製造方法、お び磁性部品

 各種トランス、リアクトル・チョークコ ル、ノイズ対策部品、レーザ電源や加速器 どに用いられるパルスパワー磁性部品、通 用パルストランス、モータ磁心、発電機、 気センサ、アンテナ磁心、電流センサ、磁 シールド、電磁波吸収シート、ヨーク材等 用いられるナノスケールの微細な結晶粒を む高飽和磁束密度でかつ優れた軟磁気特性 特に優れた交流磁気特性を示す軟磁性合金 その製造方法、および磁性部品に関する。

 各種トランス、リアクトル・チョークコイ 、ノイズ対策部品、レーザ電源、加速器用 ルスパワー磁性部品、各種モータ、各種発 機等に用いられる、高飽和磁束密度でかつ れた交流磁気特性の磁性材料には、珪素鋼 フェライト、アモルファス合金やFe基ナノ 晶合金材料等が知られている。
 珪素鋼板は、材料が安価で磁束密度が高い 、高周波の用途に対しては磁心損失が大き という問題がある。作製方法上、アモルフ ス薄帯並に薄く加工することは極めて難し 、渦電流損失が大きいため、これに伴う損 が大きく不利であった。また、フェライト 料は飽和磁束密度が低く、温度特性が悪い 題があり、動作磁束密度が大きいハイパワ の用途にはフェライトは磁気的に飽和しや く不向きであった。

 また、Co基アモルファス合金は、飽和磁 密度が実用的な材料では1T以下と低く、熱的 に不安定である問題がある。このため、ハイ パワーの用途に使用した場合、部品が大きく なる問題や経時変化のために磁心損失が増加 する問題があり、さらに、Coが高価なことか 価格的な問題もある。

 また、特開平5-140703号公報に記載されてい ようなFe基アモルファス軟磁性合金は、良い 角型特性や低い保磁力を有し、非常に優れた 軟磁気特性を示す。しかし、Fe基アモルファ 合金においては、飽和磁束密度は、原子間 離と配位数およびFe濃度との兼ね合いで決 し、1.65Tがほぼ物理的上限値となっている。 また、Fe基アモルファス合金は、磁歪が大き 応力により特性が劣化する問題や、可聴周 数帯の電流が重畳するような用途では騒音 大きいという問題がある。さらに、従来のF e基アモルファス軟磁性合金において、Feを他 の磁性元素Co、Ni等で大幅に置換した場合は 干の飽和磁束密度の増加も認められるが、 格の面からこれらの元素の含有量(重量%)を るべく少量にすることが望まれる。これら 問題から、特開平1-156451号公報に記載される ような、ナノ結晶を持つ軟磁性材料が開発さ れ、様々な用途に使用されている。
 また、高透磁率かつ高飽和磁束密度の軟磁 成形体として、特開2006-40906号公報に記載さ れるような技術も開示された。
 上記のFe基アモルファス合金およびFe基ナノ 結晶合金では飽和磁束密度が1.7Tに達してい いが、それ以上の飽和磁束密度を持つ磁性 金が要求されている。

特開平5-140703号公報

特開平1-156451号公報

特開2006-40906号公報

 上記に記載した従来技術に記載されたナノ 晶合金は、靭性に優れたアモルファス合金 帯を製造した後に、熱処理によって、平均 晶粒径が30nm以下となるbccFe-Si相を析出させ ことによって、実効的な結晶磁気異方性を 少させ、軟磁性の発現を実現している。ナ 結晶粒の成長はアモルファスマトリクスに って抑えられるため、アモルファス相の安 性が重要である。そのため、ナノ結晶組織 実現には優先的にアモルファス相に入りや いNbやZr等の元素を多く含むことが必須であ り、at%で2.5%、wt%では実に約4%以上をFeと置換 る必要がある。これらの元素は原子量が大 く、実質的な磁性の担い手であるFeの大量 置換は、飽和磁束密度B s の減少につながる。また、この合金系の特徴 として、bccFeナノ結晶相に優先的にSiが分配 れ、熱処理による規則化でナノ結晶相の磁 が大きく減少する。さらに、NbやSi等を多く むことにより、磁化の小さいアモルファス の割合の増加し、Fe量の減少に伴い加速度 にB s は減少する。この様な系では、1.7Tを超える いB s は望めない。

 よって本発明の目的は、Coを実質的に含 ず安価であり、かつ高飽和磁束密度が1.7T以 で、かつ保磁力が小さくヒステリシス損失 小さい高飽和磁束密度低保磁力の軟磁性合 、その製造方法、および磁性部品を提供す ことである。

 本発明者らの検討の結果、BやSiの含有量を 適にすることでSiが少なくFe含有量が高い結 晶粒が高密度に析出するようにした。また、 Nb等の含有量を最小限に抑えるとともに、Nb が有する結晶粒の粗大化を抑える効果を、 処理の工夫によって高めた。その結果、高 Fe含有量とナノ結晶相の発現の両立を実現し 、軟磁気特性に優れ、B s が1.7T以上となる軟磁性合金を開発するに至 た。

 つまり本発明は、結晶粒径が60nm以下(0を含 ず)の結晶粒がアモルファス相中に体積分率 で30%以上分散した組織を有するナノ結晶の軟 磁性合金であって、前記軟磁性合金は組成式 がFe 100-x-y-z A x M y X z により表され、ここで、AはCu,Auから選ばれた 少なくとも1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、 Nb、Ta、Cr、Mo、Wから選ばれた少なくとも1種 上の元素、XはB,Siから選ばれた少なくとも一 種以上の元素であり、原子%で、0<x≦5、0.4 y<2.5、10≦z≦20であり、かつ飽和磁束密度 が1.7T以上、保磁力が15A/m以下である。

 前記AはCuを含み、前記MはNbを必須的に含 ことが好ましい。

 本発明の一具体例によれば、前記軟磁性合 は、Fe量に対して、その10原子%未満のNi、Co ら選ばれた少なくとも一種以上の元素、及 /又は、その5原子%未満を白金族元素、Ag、Zn 、In、Sn、As、Sb、Bi、Y、N、O、Mn及び希土類元 素から選ばれた少なくとも一種以上の元素を 含むことができる。
 また、X量に対して、その5原子%未満のGa、Ge ,C,Alから選ばれた少なくとも一種以上の元素 含むことができる。

 本発明の他の観点によれば、本発明は、 れらの軟磁性合金を用いた磁性部品を提供 る。

 また、本発明の更に他の観点によれば、軟 性合金の製造方法が提供され、この製造方 は、組成式がFe 100-x-y-z A x M y X z により表され、ここで、AはCu,Auから選ばれた 少なくとも1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、 Nb、Ta、Cr、Mo、Wから選ばれた少なくとも1種 上の元素、XはB,Siから選ばれた少なくとも一 種以上の元素であり、原子%で、0<x≦5、0.4 y≦2.5、10≦z≦20である合金溶湯を急冷して 質的にアモルファスの合金を鋳造する段階 、その後、300℃以上の平均昇温速度が100℃/ min以上となるように熱処理する段階とを含む 。

 本発明によれば、大電流用の各種リアクト 、アクティブフィルタ用チョークコイル、 滑チョークコイル、各種トランス、電磁シ ルド材料などのノイズ対策部品、レーザ電 、加速器用パルスパワー磁性部品、モータ 発電機等に用いられる高飽和磁束密度で特 低い磁心損失を示す高飽和磁束密度で、か 優れた磁気特性、特に優れた低損失の軟磁 微結晶合金およびそれを用いた高性能磁性 品を実現することができるため、その効果 著しいものがある。
 また、本発明の軟磁性合金へ高温短時間の 処理を施すことにより、結晶粒成長を抑制 きるうえ、保磁力が小さくなり、低磁界で 磁束密度が向上し、ヒステリシス損失も減 するという効果が得られる。一般的に必要 される高い磁気特性が得られ、好適である

 本発明では、Feを高濃度に含む合金で、軟 性と飽和磁束密度B S が1.7T以上を両立させることを目的に、高いFe 濃度でも安定にアモルファス相が得られるFe- M-BおよびFe-M-Si-B(MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、 Mo、Wから選ばれた少なくとも1種以上の元素) 中心に微細結晶材料の開発を試みたもので る。具体的には、アモルファス相を主相と る軟磁性合金が安定に得られるFe濃度88%(原 %)以下の組成の合金に、Feと非固溶であるCu Auなどの元素を添加することにより、微細 晶の核を与え、熱処理によって微細結晶を 出させ、結晶粒成長により微細結晶材料を る。合金作製の初期段階でアモルファス相 形成することで、均質な微細結晶粒を得る とができる。一方、本発明の軟磁性微細結 合金はB S が1.7T以上になるには、組織全体がbccFeの微細 結晶となった場合、少なくともFe濃度が約75( 子%)以上、重量%で約90%以上が望ましい。そ ため、Nb,Zr等のM量を低く抑えることが望ま い。

 上記の検討により発明された本発明の高飽 磁束密度低保磁力の磁性合金は、組成式がF e 100-x-y-z A x M y X z により表され、ここで、AはCu,Auから選ばれた 少なくとも1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、 Nb、Ta、Cr、Mo、Wから選ばれた少なくとも1種 上の元素、XはB,Siから選ばれた少なくとも一 種以上の元素であり、原子%で、0<x≦5、0.4 y<2.5、10≦z≦20である。Fe量は原子%で75%以 上が好ましく、77%以上、さらには78%以上がな お好ましい。

 上記の組成の範囲内で、0<x≦1.5、0.4≦y≦ 2.0、10≦z≦18で表される領域では、飽和磁束 度が1.74T以上となるため、軟磁性材料とし 望ましい。
 さらに、上記組成の範囲内で、0<x≦1.5、0 .4≦y≦1.5、10≦z≦18で表される領域では、飽 磁束密度が1.76T以上となるため、軟磁性材 としてさらに望ましい。
 さらに、上記組成の範囲内で、0.5≦x≦1.5、 0.4≦y≦1.0、10≦z≦16で表される領域では、飽 和磁束密度が1.78T以上となるため、軟磁性材 として極めて望ましいものである。

 Cu,AuのA元素量xは0<x≦5.0とする。5.0%を超 ると液体急冷時にアモルファス相を主相と る薄帯が得にくくなる。さらに好ましいA元 量は0.7≦x≦1.3である。A元素はCuを用いるほ うがコスト的に好ましく、Auを用いる場合はC u量に対して1.3原子%以下の範囲とすることが ましい。
 また、M元素量y(MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr Mo、Wから選ばれた少なくとも1種以上の元素) は0.4≦y<2.5とする。M量が2.5%以上であると 飽和磁束密度が1.7T以下となる。
 X元素(XはB,Siから選ばれた少なくとも一種以 上の元素)の量zは10%未満であるとアモルファ 相を主相とする薄帯を得るのが極めて困難 なり、また20%を超えると飽和磁束密度が1.7T 以下となる。
 さらに好ましいA元素量x、M元素量y、X元素 zは0.7≦x≦1.3、0.4≦y≦1.5、12≦z≦18、さらに は、0.7≦x≦1.3、0.4≦y≦1.0、12≦z≦16であり x、y、zをこの範囲とすることで保磁力が12A/m 以下の高飽和磁束密度低保磁力の軟磁性微結 晶合金が得られる。

 Bはアモルファスの形成を促進するために有 用な元素である。
 Siを添加することで、結晶磁気異方性の大 いFe-P、Fe-Bが析出開始する温度が高くなるた め、熱処理温度を高温にできるようになる。 高温の熱処理を施すことで微結晶相の割合が 増え、B S が増加し、B-H曲線の角形性が改善される。ま た、試料表面の変質、変色を抑える効果があ る。

 Xの一部をBe、P、Ga、Ge、C及びAlから選ば た少なくとも一種の元素で置換しても良い これらの元素を置換することにより磁歪や 気特性を調整することができる。

 Feの一部をFeとA元素と共に固溶するNi、Co ら選ばれた少なくとも一種以上の元素で置 した場合、アモルファス相の形成能が高く り、A元素の含有量を増加させることが可能 である。A元素の含有量が増加することで、 晶組織の微細化が促進され軟磁気特性が改 される。また、Ni,Coを置換した場合には飽和 磁束密度が増加する。これらの元素を多く置 換すると、懸案事項の1つである価格の高騰 つながるため、Niの置換量は10%未満、好まし くは5%未満、さらには2%未満が適当であり、Co の場合は10%未満、好ましくは2%未満、より好 しくは1%未満が適当である。

 MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wから選ば た少なくとも1種以上の元素であり、A元素や メタロイド元素と共に熱処理後も残留するア モルファス相に優先的に入るため、Fe濃度の い微細結晶粒の粒成長を抑制する働きがあ 。そのため、ナノ結晶の平均粒径が減少し B-H曲線の飽和性の向上や軟磁気特性の改善 寄与する。一方、本発明合金における実質 な磁性の担い手はFeであるため、Feの含有量 を高く保つ必要があるが、これら、原子量の 大きい元素を含有することは、単位重量あた りのFeの含有量が低下することになる。特に 置換する元素がNb,Zrの場合、置換量は2.5%未 程度、より好ましくは1.5%以下が適当であり 、置換する元素がTa,Hfの場合、置換量は1.5%以 下、より好ましくは0.8%以下が適当である。M 一部をRe、白金族元素、Ag、Zn、In、Sn、As、S b、Sb、Bi、Y、N、O、Mn及び希土類元素から選 れた少なくとも一種以上の元素で置換した 合でも上記の効果は得られる。Mnを置換する 場合は飽和磁束密度の低下がおこるため、置 換量は2.5%未満が妥当であり、より好ましく 2%未満である。
 但し、特に高い飽和磁束密度を得るために 、これらの元素の総量が1.5原子%以下とする ことが好ましい。また、総量が1.0原子%以下 することがさらに好ましい。

 本発明合金と同組成のアモルファス合金 は、磁気体積効果により、比較的大きな磁 が現れるが、体心立方構造のFeでは磁気体 効果が小さく、磁歪もはるかに小さい。組 の多くの部分がbccFeを主体とする微細結晶粒 からなる本発明合金はノイズ低減の観点から も有望である。

 上記の軟磁性の微結晶合金を得るには、F eおよび半金属元素を含む合金溶湯を急冷し アモルファス相中に平均粒径30nm以下(0nmを含 まず)の結晶粒がアモルファス相中に体積分 で10%未満で分散した組織からなるFe基アモル ファス合金を作製する工程と、前記Fe基合金 熱処理を行い平均粒径60nm以下の体心立方構 造の結晶粒がアモルファス相中に体積分率で 30%以上分散した組織とする工程からなる製造 方法を用いることが好ましい。

 合金溶湯を急冷する際、アモルファス相中 平均粒径30nm以下の結晶粒がアモルファス相 中に体積分率で10%未満で分散した組織のFe基 金を作製することにより、靭性が向上する 結晶粒は、5%以下であることが好ましく、1% 以下であることがなお好ましい。アモルファ スマトリクス中(薄帯表面から0.2μmの範囲は く)に微結晶が10%以上分布した合金では靭性 低下し、熱処理後に得られるナノ結晶相の 均粒径、粒度分布、粒密度が板厚や製造条 に影響を受けやすくなり、安定した特性の 磁性合金が得にくくなる。アモルファスマ リクス中の微結晶を減少させ、熱処理工程 均質な核生成を促進することで上記の問題 解決される。
 熱処理後のナノ結晶合金ではアモルファス 中に分散する体心立方構造の結晶粒は、平 粒径60nm以下、体積分率で30%以上分散してい る必要がある。結晶粒の平均粒径が60nmを超 ると軟磁気特性が劣化し、結晶粒の体積分 が30%未満では、非晶質の割合が多く高飽和 束密度が得にくいためである。より好まし 熱処理後の結晶粒の平均粒径は、30nm以下、 り好ましい結晶粒の体積分率は50%以上であ 。より軟磁性が優れ、Fe基非晶質の軟磁性 帯に比べて磁歪の低い合金を実現できる。

 本発明において、溶湯を急冷する方法とし は、単ロール法、双ロール法、回転液中防 法、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法な があり、薄片や薄帯、粉末を製造すること できる。また、溶湯急冷時の溶湯温度は、 金の融点よりも50℃~300℃程度高い温度とす のが望ましい。
 単ロール法などの超急冷法は、活性な金属 含まない場合は大気中あるいは局所Arある は窒素ガスなどの雰囲気中で行うことが可 であるが、活性な金属を含む場合はAr,Heなど の不活性ガス中、窒素ガス中あるいは減圧中 、あるいはノズル先端部のロール表面付近の ガス雰囲気を制御する。また、CO 2 ガスをロールに吹き付ける方法や、COガスを ズル近傍のロール表面付近で燃焼させなが 合金薄帯を製造する。
 単ロール法の場合の冷却ロール周速は、15m/ sから50m/s程度の範囲が望ましく、冷却ロール 材質は、熱伝導が良好な純銅やCu-Be、Cu-Cr、Cu -Zr、Cu-Zr-Crなどの銅合金が適している。大量 製造する場合、板厚が厚い薄帯や広幅薄帯 製造する場合は、冷却ロールは水冷構造と た方が好ましい。

 保持温度は430℃以上が好ましい。430℃未満 あると、保持時間を適宜調整しても上記の 果が得られにくい。結晶化温度(T X1 )以上とすることが好ましい。
 また保持時間が1時間以上であると、上記の 効果が得られにくく、かつ処理時間が長くな り、生産性が悪い。好ましい保持時間は30分 内であり、20分以内であり15分以内である。
 最大昇温速度は100℃/min以上とすることが好 ましい。また、平均昇温速度が100℃/min以上 することがさらに好ましい。
 また、この熱処理による製造方法は、高温 での熱処理速度が特性に大きな影響を与え ため、熱処理温度が300℃以上の平均昇温速 が100℃/min以上であることが好ましく、350℃ 以上の温度領域における平均昇温速度が100℃ /min以上であることがなお好ましい。
 また、冷却過程においては、300℃以上での 度領域での平均冷却速度が100℃/min以上とな るようにすることが好ましい。
 上記の加熱にあたっては、熱容量が小さく るように重量を調整した試料を予め目標温 以上の高温に保たれた炉内に投入する方法 ある。これ以外にも、ランプ加熱(赤外線集 中)炉を用いる方法、試料に直接電流を流し ジュール熱で加熱する方法、電磁誘導によ 加熱する方法、レーザーで加熱する方法、 容量の大きい物質に試料を接触あるいは近 けて加熱する方法などがあり、いずれの方 でも連続熱処理を施すことで生産性向上で る。

 また、昇温速度の制御や温度を変えて何段 かで一定時間保持する多段階の熱処理等に って核生成を制御することも可能である。 た、結晶化温度よりも低い温度で一定時間 持し、核生成に十分な時間を与えた後、結 化温度よりも高い温度で1h未満保持する熱 理により結晶粒成長を行えば、結晶粒同士 互いの成長を抑制しあうため、均質で微細 結晶組織が得ることができる。例えば、250 程度の熱処理を1h以上行い、その後、高温短 時間、例えば熱処理温度が300℃を超える際の 昇温速度が100℃/min以上の条件で熱処理を行 ば、上記の製造方法と同じ効果を得ること できる。
 炉内温度を高く設定することで、300℃以上 らには400℃以上の高温域における昇温速度 高く保つことができ、合金薄帯が炉内温度 到達しない場合でも、目的温度に到達した 点で、すみやかに熱処理を終了することで 高Bs化、低保磁力化の軟磁性合金が得るこ ができる。目的温度は、結晶化温度よりも い温度が好ましく、結晶化温度よりも高い 度域に1秒以上おかれていることが好ましい
 上記のような熱処理行程を経ることで、Nb のM元素を高濃度に含まない場合でも、結晶 成長が抑えられ、微細なナノ結晶粒を高濃 に析出させることが可能となり、今までに ることができなかった1.7T以上の高い残留磁 束密度B s と低い保磁力H c が実現できる。

 熱処理は大気中、真空中、Ar、窒素ヘリウ 等の不活性ガス中で行うことができるが、 に不活性ガス中で行うことが望ましい。熱 理により体心立方構造のFeを主体とする結晶 粒の体積分率が増加し、飽和磁束密度が上昇 する。また、熱処理により磁歪も低減する。 本発明の軟磁性合金は、磁界中熱処理を行う ことにより、誘導磁気異方性を付与すること ができる。磁界中熱処理は、熱処理期間の少 なくとも一部の期間合金が飽和するのに十分 な強さの磁界を印加して行う。合金磁心の形 状にも依存するが、一般には薄帯の幅方向( 状磁心の場合:磁心の高さ方向)に印加する場 合は8 kAm -1 以上の磁界を、長手方向(環状磁心の場合は 路方向)印加する場合は80Am -1 以上の磁界を印加する。印加する磁界は、直 流、交流、繰り返しのパルス磁界のいずれを 用いても良い。磁界は200℃以上の温度領域で 通常20分以上印加することが好ましい。昇温 、一定温度に保持中および冷却中も印加し 方が、良好な一軸の誘導磁気異方性が付与 れるので、より望ましい直流あるいは交流 ステリシスループ形状が実現される。磁界 熱処理の適用により高角形比あるいは低角 比の直流ヒステリシスループを示す合金が られる。磁界中熱処理を適用しない場合、 発明合金は中程度の角形比の直流ヒステリ スループとなる。熱処理は、通常露点が-30 以下の不活性ガス雰囲気中で行うことが望 しく、露点が-60℃以下の不活性ガス雰囲気 で熱処理を行うと、ばらつきが更に小さく り好ましい結果が得られる。

 本発明の軟磁性合金は、必要に応じてSiO 2 、MgO、Al 2 O 3 等の粉末あるいは膜で合金薄帯表面を被覆す る、化成処理により表面処理し、絶縁層を形 成する、アノード酸化処理により表面に酸化 物絶縁層を形成し層間絶縁を行う、等の処理 を行うとより好ましい結果が得られる。これ は特に層間を渡る高周波における渦電流の影 響を低減し、高周波における磁心損失を改善 する効果があるためである。この効果は表面 状態が良好でかつ広幅の薄帯から構成された 磁心に使用した場合に特に著しい。更に、本 発明合金から磁心を作製する際に必要に応じ て含浸やコーティング等を行うことも可能で ある。本発明合金は高周波の用途として特に パルス状電流が流れるような応用に最も性能 を発揮するが、センサや低周波の磁性部品の 用途にも使用可能である。特に、磁気飽和が 問題となる用途に優れた特性を発揮でき、ハ イパワーのパワーエレクトロニクスの用途に 特に適する。
 使用時に磁化する方向とほぼ垂直な方向に 界を印加しながら熱処理した本発明合金は 従来の高飽和磁束密度の材料よりも低い磁 損失が得られる。更に本発明合金は薄膜や 末でも優れた特性を得ることができる。

 前記の磁性合金により磁性部品を構成す ことにより、アノードリアクトルなどの大 流用の各種リアクトル、アクティブフィル 用チョークコイル、平滑チョークコイル、 種トランス、磁気シールド、電磁シールド 料などのノイズ対策部品、レーザ電源、加 器用パルスパワー磁性部品、モータ、発電 等に好適な高性能あるいは小型の磁性部品 実現することができる。

(実施例1)
 表1に示す組成で1300℃に加熱した合金溶湯 周速30m/sで回転する外径300mmのCu-Be合金ロー に噴出し軟磁性薄帯を作製した。作製した 金薄帯は幅5mm、厚さ約21μmである。X線回折 よび透過電子顕微鏡(TEM)観察の結果、アモル ファス相中に微結晶の析出は確認されなかっ た。いずれも、180°曲げが可能であり、金型 刃物による打ち抜きが可能であった。
 これらの単板状試料を、300℃以上の平均昇 速度が100℃/min以上で急激に昇温し、450℃で 10分間保持後、室温まで急激に冷却した。350 における昇温速度は170℃/min程度であった。 保磁力、最大透磁率のデータを表1に記す。 ずれの組成でもB 8000 が1.7T以上ある。また、瞬間的に加熱するこ により、微結晶組織を出すための核となるCu が低い濃度の合金においても、核の均一生成 が促進されて残留アモルファス相が減少し、 B 8000 は増加して1.70 T以上となる組成範囲が拡大 た。本合金系はH C が小さいだけでなくB 80 も大きく、軟磁性材料として有望である。こ れらの磁性合金は、いずれも組織の少なくと も一部が結晶粒径60nm以下(0を含まず)の結晶 を含むものであった。また、ナノ結晶粒相 アモルファス相中に体積分率で50%以上を占 ていた。
 また、Fe bal Cu 1.0 Nb y Si 4 B 12 の合金組成でNb量を変えたとき(加熱速度は4 /秒)の保磁力HcとB 8000 を図1、図2に示す。

(実施例2)
 M元素および他の元素を含む本発明の合金組 成について検討した。実施例1と同様にして 軟磁性薄帯を製造し、熱処理を施し、組織 少なくとも一部が結晶粒径60nm以下(0を含ま )の結晶粒をアモルファス相中に体積分率で5 0%以上含む軟磁性薄帯とした。表2に製造した 各軟磁性薄帯の合金組成と飽和磁束密度B s  (B s  ≒ B 8000 )、保磁力H c を示す。いずれの組成でもB s が1.7T以上であり、かつ保磁力Hcが10A/m以下と い値となり、高B s 、低損失の軟磁性材料として有望である。

(実施例3)
 表3に示す組成の1300℃に加熱した合金溶湯 周速30m/sで回転する外径300mmのCu-Be合金ロー に噴出し合金薄帯を作製した。作製した合 薄帯は幅5mm、厚さ約21μmである。X線回折お び透過電子顕微鏡(TEM)観察の結果、アモルフ ァス相中に微結晶の析出は1%以下であった。 ずれも、180°曲げが可能であり、金型等刃 による打ち抜きが可能であった。
 これらの単板状試料を、300℃以上の平均昇 速度が200℃/min、100℃/min、50℃/minのそれぞ で昇温し、450℃で10分間保持後、室温まで冷 却した。保磁力、最大透磁率のデータを表3 記す。
 比較例のように300℃以上での平均昇温速度 100℃/minを下回る場合には、有望な軟磁気特 性は得にくく、Nb量が2.5%以上になると、B 8000 の減少が著しくなり、B s が1.7Tを満たすのが困難になる。また、保磁 について見ると、Nb量が2.5%未満の合金組成 、本発明の軟磁性薄帯は保磁力が低い値で るのに対し、昇温速度の遅い比較例は保磁 Hcが15A/mを超えていることが解る。このこと ら、本発明の合金組成で目的とする高飽和 束密度低保磁力の軟磁性合金を得るために 昇温速度を制御することが重要であること 解る。
 また、Fe bal Cu 1.0 Nb 1.0 Si 4 B 12 の合金組成で昇温速度を200℃/min、25℃/minと た時のヒステリシスカーブを図3に示す。

 図4はFe bal Cu 1.0 Nb 1.0 Si 4 B 12 合金を1300℃に加熱した合金溶湯を周速30m/sで 回転する外径300mmのCu-Be合金ロールに噴出し 製した合金薄帯を300℃以上の平均昇温速度 100℃/min以上となるように加熱し、450℃で10mi n保持した試料の断面TEM像である。図5にその 式図を示す。作製した合金薄帯は幅5mm、厚 約21μmである。組織は平均結晶粒径が20nm以 であり、アモルファスマトリクス中に50%以 存在する。一方、同様に作製した合金薄帯 300℃以上の平均昇温速度が50℃/minとなるよ に加熱し、450℃で10min保持した試料の断面TE M像を図6に示す。図7は図6の模式図である。 のように平均結晶粒径は40nm以上となり結晶 の割合も30%未満となる。以上のように、300 以上で平均昇温速度が100℃/min以上となるよ うに加熱することで、Nb等の元素を増やすこ なく、ナノ結晶相が得られ、両者の保持力 比較すると、本発明による試料では、H c が4A/m以下、B 8000 が1.78Tとなるのに対し、図6の状態の試料では 、Hcが80A/m以上、B 8000 が1.72Tとなる。

(実施例4)
 表4に示す組成で1300℃に加熱した合金溶湯 周速30m/sで回転する外径300mmのCu-Be合金ロー に噴出し軟磁性薄帯を作製した。作製した 磁性薄帯は幅5mm、厚さ約21μmである。X線回 および透過電子顕微鏡(TEM)観察の結果、アモ ルファス相中に微結晶が1%以下で析出してい 。また、この軟磁性薄帯は、いずれも180° げが可能であり、かつ、金型等刃物による ち抜きが可能であった。
 これらの単板状試料を、実施例1と同様にし て熱処理を行った。保磁力、最大透磁率のデ ータを表4に記す。いずれの組成でもB 8000 が1.7T以上ある。また、瞬間的に加熱するこ により、核の数密度が不足し易いCu低濃度の 合金においても、核の均一生成が促進されて 残留アモルファス相が減少し、B 8000 は増加して1.70 T以上となる組成範囲が拡大 た。本合金系はH C が小さいだけでなくB 80 も大きく、軟磁性材料として有望である。こ れらの磁性合金は、いずれも組織の少なくと も一部が結晶粒径60nm以下(0を含まず)の結晶 を含むものであった。また、ナノ結晶粒相 アモルファス相中に体積分率で50%以上を占 ていた。

 表5に示す組成の合金薄帯で作製した、φ19- 15-5 mm 3  のリング状コアに急加熱熱処理を施した試 の軟磁気特性および鉄損を示す。商用周波 よりも高い周波数帯域で極めて良い鉄損特 が得られる。

 表6には、Fe bal. Cu 1.0 Nb 1.0 Si 4 B 12 P 合金で作製した、φ19-φ15-0.02 mm 3  のリング状単板試料に急加熱熱処理を施し 25枚積層したコアの軟磁気特性および鉄損 示す。商用周波数よりも高い周波数帯域で めて良い鉄損特性が得られる。

Fe bal Cu 1.0 Nb y Si 4 B 12 合金におけるNb量(M元素量)と保磁力の関係を す図である。 Fe bal Cu 1.0 Nb y Si 4 B 12 合金におけるNb量(M元素量)と磁束密度B 8000 の関係を示す図である。 Fe bal Cu 1.0 Nb 1.0 Si 4 B 12 合金におけるナノ結晶化の昇温速度によるヒ ステリシスカーブの違いを示す図である。 Fe bal Cu 1.0 Nb 1.0 Si 4 B 12 合金を300℃以上の平均昇温速度が100℃/min以 で昇温した組織観察写真である。 図4の模式図である。 Fe bal Cu 1.0 Nb 1.0 Si 4 B 12 合金を300℃以上の平均昇温速度が100℃/min未 で昇温した組織観察写真(比較例)である。 図6の模式図である。