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Patent Searching and Data


Title:
SOLAR CELL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/123305
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a solar cell wherein a blended material, which contains (A) an acid-modified polypropylene resin and (B) a polypropylene resin having a density within the range of 0.85-0.89 g/cm3 at a weight ratio A:B of from 100:5 to 100:50, is used as a sealing material for bonding a metal electrode substrate and a glass electrode substrate. Consequently, the solar cell comprising the metal electrode substrate and the glass electrode substrate can be effectively prevented from problems such as cell cracks or separation of the sealing material due to thermal history even when thermal expansion coefficient difference between the metal substrate of the metal electrode substrate used as the counter electrode and the glass substrate is large. As a result, the solar cell can stably function as a battery.

Inventors:
SATO KAZUHIRO (JP)
KOSAKA YASUHIRO (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/056943
Publication Date:
October 08, 2009
Filing Date:
April 03, 2009
Export Citation:
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Assignee:
TOYO SEIKAN KAISHA LTD (JP)
SATO KAZUHIRO (JP)
KOSAKA YASUHIRO (JP)
International Classes:
H01M14/00; H01L31/04; H01M2/08
Domestic Patent References:
WO2008023848A12008-02-28
Foreign References:
JP2007194075A2007-08-02
JP2005213470A2005-08-11
JP2001307786A2001-11-02
JP2006310039A2006-11-09
Attorney, Agent or Firm:
ONO, Hisazumi et al. (JP)
Ono Pure in addition (JP)
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Claims:
 互いに対向するように配置された金属電極基板とガラス製電極基板とを有しており、これら基板の間に、電解質層と色素で増感された半導体多孔質層とによって発電領域が形成されており、
 前記発電領域を取り囲むように設けられた封止材によって金属電極基板とガラス製電極基板とが接合されて、該発電領域が封止されており、
 前記封止材は、接着性樹脂と応力緩和機能を有する樹脂とからなることを特徴とする太陽電池。
 前記接着性樹脂がプロピレン系樹脂であり、応力緩和機能を有する樹脂が前記接着性樹脂とは異なるプロピレン系樹脂であり、前記封止材がそれらのブレンド物からなる請求項1に記載の太陽電池。
 前記接着性樹脂が酸変性ポリプロピレン系樹脂(A)であり、前記応力緩和機能を有する樹脂が、密度が0.85乃至0.89g/cm 3 の範囲にあるプロピレン系樹脂(B)であり、前記封止材が、前記酸変性ポリプロピレン系樹脂(A)と前記ポリプロピレン系樹脂(B)とを、A:B=100:5乃至100:50の重量比で含むブレンド物からなる請求項2に記載の太陽電池。
 前記金属基板として、アルミニウム製基板、ステンレススチール製基板または銅基板が使用されている請求項1に記載の太陽電池。
Description:
太陽電池

 本発明は、金属電極基板と、ガラス製電 基板と、これら基板の間に設けられた電解 層とを備え、さらに色素で増感された半導 多孔質層を備えており、光によって発電す 色素増感型太陽電池に関する。

 現在、地球規模の環境問題や化石エネル ー資源枯渇問題などの観点から太陽光発電 対する期待が大きく、単結晶及び多結晶シ コン光電変換素子が太陽電池として実用化 れている。しかし、この種の太陽電池は、 価格であること、シリコン原料の供給問題 どを有しており、シリコン以外の材料を用 た太陽電池の実用化が望まれている。

 上記のような見地から、最近では、シリ ン以外の材料を用いた太陽電池として、色 増感型太陽電池が注目されている。この色 増感型太陽電池の代表的なものは、光電極 板と対極基板とが、電解質層を間に挟んで 峙した構造を有しており、光電極基板と対 基板との周縁部分は、電解質層が漏洩しな ように、封止材で封止されている。

 このような色素増感型太陽電池において 光電極基板は、アルミニウム製基板等の金 基板と、該金属基板上に形成された二酸化 タンなどの酸化物半導体の多孔質層とから っており、この多孔質層の表面には増感色 (例えばRu色素)が吸着担持されている。また 、対極基板は、光透過性であり、透明基板の 表面にITO等の透明導電膜が形成され、さらに その上には、プラチナや白金等の蒸着膜が電 子還元性導電層3cとして形成された構造を有 ている。

 このような構造の色素増感型太陽電池で 、対極基板(光透過性電極基板)側から可視 を照射すると、半導体の多孔質層に担持さ ている色素が励起され、基底状態から励起 態へと遷移し、励起された色素の電子は、 導体の多孔質層の伝導帯へ注入され、外部 路を通って対極基板に移動する。対極基板 移動した電子は、電解質層中のイオンによ て運ばれ、色素に戻る。このような過程の り返しにより電気エネルギーが取り出され わけである。このような色素増感型太陽電 の発電メカニズムは、pn接合型光電変換素子 と異なり、光の捕捉と電子伝導が別々の場所 で行われ、植物の光電変換プロセスに非常に 似たものとなっている。

 この場合、金属基板の代わりに透明基板 使用し、透明基板の変わりに金属基板を使 し、光電極基板を光透過性電極基板とする ともできる。何れにしろ、一方の電極には 透明基板が使用され、色素に光が照射され 色素が励起される構造となっている。

 このような色素増感型太陽電池において 透明基板としては、高強度であるなどの観 から、ガラス製基板が広く使用されている

 ところで、ガラス製基板を一方の電極基 に用いた場合、このガラス製基板の周縁部 封止材によって他方の電極基板に使用され いる金属基板の周縁部に接合され、この封 材によって電解質層と色素で増感されてい 半導体多孔質により形成されている発電領 が封止され、外部への電解液の漏洩等が防 される。このような封止材としては、各種 合成樹脂、特にヒートシール可能な熱可塑 樹脂や接着剤樹脂などが使用されている(特 許文献1,2参照)。

特開平01-220380号

特開2007-311218号

 しかしながら、接着剤樹脂等でガラス製 板と金属基板とを接合して周縁部を封止し 場合には、金属基板やガラス製基板の材質 制限されるという問題がある。即ち、ガラ 製基板と金属基板との線膨張係数が大きく なっていると、この太陽電池が熱履歴を受 たとき、両基板を接合している封止材に大 な剪断応力が発生し、この結果、セルの割 が発生したり、或いは封止材が剥がれてし うなどの不都合が生じてしまうという問題 ある。このような不都合が生じると、当然 がら、電解質層を形成している電解液が漏 してしまい、電池としての機能が損なわれ しまうこととなる。

 例えば、アルミニウム製基板の線膨張係 は、約23ppm/℃であり、Znは約33ppm/℃、ステ レススチール(SUS304)及び銅は約17ppm/℃、鉄は 約12ppm/℃、ニッケルは約11ppm/℃であるのに対 し、石英ガラスの線膨張係数は0.5ppm/℃、パ レックスガラスでは3.3ppm/℃、最も線膨張係 が大きい青板ガラスで9ppm/℃であり、特に 量で安価であるとの観点から金属基板とし 有用なアルミニウム製基板やステンレスス ール製基板などは、ガラス製基板との熱膨 係数が大きく異なっているため、上記のよ な問題を生じ易い。

 従って、本発明の目的は、ガラス製基板 透明基板として備えた電極基板を有する太 電池において、対極として使用される電極 板が有している金属基板とガラス製基板と 熱膨張係数差が大きい場合にも、熱履歴に るセルの割れや封止材の剥がれなどの不都 が有効に回避され、電池として安定に機能 得る太陽電池を提供することにある。

 本発明によれば、互いに対向するように配 された金属電極基板とガラス製電極基板と 有しており、これら基板の間に、電解質層 色素で増感された半導体多孔質層とによっ 発電領域が形成されており、
 前記発電領域を取り囲むように設けられた 止材によって金属電極基板とガラス製電極 板とが接合されて、該発電領域が封止され おり、
 前記封止材は、接着性樹脂と応力緩和機能 有する樹脂とからなることを特徴とする太 電池が提供される。
 尚、本発明において、応力緩和性を有する 脂とは、後述する実施例で示す動的粘弾性 験で測定したtanδのピーク値が0.5以上であ 樹脂をいう。

 本発明の太陽電池においては、
(1)前記接着性樹脂がプロピレン系樹脂であり 、応力緩和機能を有する樹脂が前記接着性樹 脂とは異なるプロピレン系樹脂であり、前記 封止材がそれらのブレンド物からなること、
(2)前記接着性樹脂が酸変性ポリプロピレン系 樹脂(A)であり、前記応力緩和機能を有する樹 脂が、密度が0.85乃至0.89g/cm 3 の範囲にあるプロピレン系樹脂(B)であり、前 記封止材が、前記酸変性ポリプロピレン系樹 脂(A)と前記ポリプロピレン系樹脂(B)とを、A:B =100:5乃至100:50の重量比で含むブレンド物から なること、
(3)前記金属基板として、アルミニウム製基板 、ステンレススチール製基板または銅基板が 使用されていること、
が好適である。

 本発明においては、ガラス製電極基板(光透 過性電極基板)と金属電極基板(光不透過性電 基板)との間の電解質層と色素増感半導体多 孔質層とにより形成される発電領域を取り囲 むように設けられ、ガラス製電極基板と金属 電極基板とを接合する封止材として、接着性 樹脂(例えば、酸変性ポリプロピレン系樹脂(A ))と、応力緩和機能を有する樹脂(代表的には 、密度が0.85乃至0.89g/cm 3 の範囲にあるポリプロピレン系樹脂(B))とか なるものが使用される。即ち、このような 止材によって両電極基板が接合されて発電 域が封止されているため、金属基板として アルミニウム製基板等のガラス製基板と線 膨張係数が大きく異なるものを使用した場 にも、熱膨張差に起因する割れ、剥がれ等 不都合が有効に防止され、電池としての機 が安定して保持されるのである。

 例えば、後述する実施例1は、線熱膨張係数 が約23ppm/℃のアルミニウム製基板と線熱膨張 係数が約8.5ppm/℃のガラス製基板との周縁部 、上述した接着性樹脂と応力緩和機能を有 る樹脂とのブレンド物を用いて封止した仮 電池構造体について、-40℃~85℃の熱サイク を加え(詳細な条件は実施例参照)、その封止 部を観察したものであるが、封止部での割れ や剥がれは全く生じていない。
 一方、上記ブレンド物の代わりに、無水マ イン酸変性ポリプロピレンを使用した比較 1では、セルの割れが生じる。上記ブレンド 物の代わりに、カルボン酸変性ポリエチレン を使用した比較例2では、85℃の高温に長期に さらされた際に接着力が低下し封止部の剥離 を生じてしまう。
 このように、本発明によれば、上記のブレ ド物を封止材として使用することにより、 膨張差に起因する不都合を有効に防止する とができるのである。

 本発明において、上記のような封止材の使 によって熱膨張差に起因する不都合を有効 防止できる理由は、明確に解明されたわけ はないが、本発明者等は、次のように推定 ている。
 即ち、無水マレイン酸変性ポリプロピレン カルボン酸変性ポリエチレンなどの酸変性 ロピレン系樹脂に代表される接着性樹脂は ガラス基板や金属基板などに対して良好な 着性を示す。これらの酸変性プロピレン系 脂の内、無水マレイン酸変性ポリプロピレ は、融点が比較的高いため、85℃程度の高 下では、熱膨張差による剪断応力に対して れた耐久性を示すものの、低温領域ではガ ス状態になり、低温での耐久性が低く、例 ば、-45℃~85℃の熱サイクルが加えられた時 低温領域での剪断応力を吸収できず、比較 1に示されているように、セルの割れを発生 てしまう。一方、酸変性ポリエチレンは、T gが低く、低温領域での耐久性には優れてい ものの、融点が90~100℃程度であり、高温で 長期耐久性に乏しく、85℃程度での高温領域 では容易に剥離を生じてしまうのである。

 これに対して、本発明では、無水マレイ 酸変性ポリプロピレン等の接着性樹脂とブ ンドされている応力緩和性を有する樹脂(例 えば一定の密度を有するプロピレン系樹脂) 、高温に対する耐久性に優れているばかり 、低温領域では、熱膨張差による剪断応力 効果的に緩和する機能を示す。即ち、この うなプロピレン系樹脂等は、通常のポリプ ピレン系樹脂と比較すると、その密度が低 、低結晶性乃至非結晶性の軟質樹脂であり マトリックスである酸変性プロピレン系樹 との相溶性が高いため、1μm前後に微分散し ゴムの分散粒子として存在している。微分 したゴムの分散粒子が数多く存在すると、 イロン/ゴムブレンドで見られるように、粒 子の周囲での塑性変形であるせん断降伏によ る応力吸収が発現し、せん断降伏による応力 吸収は、ゴム粒子間距離が0.5μm以下になると 効果的に発現する。

 即ち、本発明では、一定密度のプロピレン 樹脂をブレンドした場合、微分散すること 、粒子間距離が、この距離より小さくなる とから、せん断降伏による応力吸収が効果 に発現されていると考えられる。図3には、 この実験結果が示されている。図3の縦軸は 動的粘弾性試験で測定した0℃付近でのtanδ あり、横軸は、粒子間距離を示している。ta nδは、応力緩和能力の指標であり、大きいほ ど応力緩和能力が高いことを示しており、本 発明では、このtanδのピーク値が0.5以上の樹 を、応力緩和機能を有する樹脂(応力緩和性 樹脂)として、接着性樹脂とブレンドして用 るわけである。
 例えば、一定密度のプロピレン系樹脂を応 緩和性樹脂として用いることができ、この うなプロピレン系樹脂を接着性樹脂とブレ ドとした場合には、粒子間距離が0.5μm以下 なり、せん断降伏による応力吸収が効果的 発現していることが分かる。従って、この うなブレンド物からなる封止材は、剪断応 に対しての応力緩和層として機能し、低温 域での割れも有効に防止されるものと推定 れる。

本発明が適用される色素増感型太陽電 の代表的な構造を示す図。 実施例で行った熱サイクル試験におけ 熱サイクルを示す図。 各種のブレンド物について、動的粘弾 試験で測定したtanδ(縦軸)と粒子間距離(横 )との関係を示す図。

<封止材>
 本発明においては、ガラス製基板を備えた 透過性電極基板と、金属基板を備えた光不 過性基板とを接合し、これらの電極基板間 形成される発電領域を封止する封止材とし 、上記で述べたように、接着性樹脂と応力 和性樹脂とからなるものが使用される。

 接着性樹脂は、この封止材の主成分であり 種々のものを使用することができるが、特 酸変性ポリプロピレン系樹脂(A)が好適に使 される。この酸変性ポリプロピレン系樹脂 、ポリプロピレン系重合体を不飽和カルボ 酸乃至その無水物でグラフト変性し、この うなグラフト変性によるカルボキシル基乃 その無水物基の導入により、各種の基材に する接着性を向上させたものである。
 変性に供するポリプロピレン系重合体は、 ロピレンの単独重合体に制限されず、プロ レンと少量の他のプロピレン、例えば、エ レン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1 -デセン、4-メチル-1-ペンテンなどの1種また 2種以上との共重合体であってもよい。

 また、酸変性に用いる不飽和カルボン酸乃 その無水物としては、アクリル酸、メタク ル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸 イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロ タル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジ ルボン酸及びこれらの無水物を挙げること でき、これらは、1種単独で使用することも できるし、2種以上の組み合わせでグラフト 性に供することもできる。
 本発明においては、無水マレイン酸により ラフト変性されているものが最も好適であ 。

 また、このような不飽和カルボン酸等に るグラフト率は、一般に0.01乃至10重量%、特 に0.05乃至5重量%の範囲にあるのがよい。グラ フト率が低すぎると各種基材に対する接着性 が低下する傾向があり、また、グラフト率が 高すぎると、後述するポリプロピレン系樹脂 (B)に代表される応力緩和性樹脂との相溶性が 低下し、熱履歴に対する耐性が低下し、熱膨 張差に起因する割れや剥離等を生じ易くなる 傾向がある。

 このような酸変性ポリプロピレン系樹脂(A) 、一般に、90乃至170℃程度の融点を示し、23 0℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MF R)は、0.4乃至10g/10分の範囲にあり、さらに、 の密度は0.88乃至0.95g/cm 3 程度の範囲にある。

 本発明で用いる封止材は、上記の酸変性ポ プロピレン系樹脂(A)と共に応力緩和機能を する樹脂(応力緩和性樹脂)を有している。
 この応力緩和性樹脂は、先にも述べたよう 、動的粘弾性試験で測定したtanδのピーク が0.5以上の樹脂であり、例えば、各種の熱 塑性エラストマーのようなゴム的性質を有 るものが相当するが、本発明では特に密度 通常のポリプロピレンよりも小さいポリプ ピレン系樹脂(B)が好適に使用される。この うな樹脂の併用により、後述する実施例の 験結果にも示されているように、熱履歴に る封止材の割れや剥離を効果的に抑制する とができ、例えば-40℃~85℃の熱サイクルに しても優れた耐性が発揮されることとなる
 即ち、上記の酸変性ポリプロピレン系樹脂( A)は、融点が高く、高温時の耐性は満足し得 ものであり、例えば85℃~100℃程度に加熱さ た場合には、基材の熱膨張係数差による剪 応力によって剥離等が生じることがないが 低温条件下での剪断応力に対する耐性が低 、上記のような熱サイクル試験に供すると 割れが生じてしまう。しかるに、この酸変 ポリプロピレン系樹脂(A)にプロピレン系樹 (B)を併用することにより、高温時の耐性を なうことなく、低温条件下での剪断応力に する耐性が高められ、上記の熱サイクル試 に供した場合にも割れを発生することがな のである。

 上記のプロピレン系樹脂(B)としては、密度 0.85乃至0.89g/cm 3 の範囲にあるものが使用される。即ち、一般 に使用されているアイソタクティックポリプ ロピレンの密度が0.91g/cm 3 程度にあることから理解されるように、本発 明で用いるポリプロピレン系樹脂(B)の密度は かなり低く、このことは、このポリプロピレ ン系樹脂(B)が低結晶性乃至非晶質であること を意味している。このため、このようなポリ プロピレン系樹脂(B)が前記の酸変性ポリプロ ピレン系樹脂(A)とブレンドされている封止材 は、剪断応力に対して高い応力緩和性を示す 。さらに、このポリプロピレン系樹脂(B)は、 一般にガラス転移温度(Tg)が0℃乃至―18℃程 である。このため、前述した-40℃~80℃の熱 歴を加えたとき、ガラス転移温度よりも低 領域では、酸変性ポリプロピレン系樹脂(A) マトリックス中にガラス相の分散粒子とし 存在しているが、先にも述べたように、酸 性ポリプロピレン系樹脂(A)との相溶性が高 、親和性に富んでいるため、これに剪断応 が発生したときにも酸変性ポリプロピレン 樹脂(A)のマトリックスと分散粒子との間に 隙が形成されず、分散粒子が密着した状態 保持され、剪断応力に対して高い耐性を示 、割れの発生を有効に防止することができ のである。

 本発明において、上記のような密度の低 ポリプロピレン系樹脂(B)は、不飽和カルボ 酸やその無水物によるグラフト変性はされ いないものであり、例えば、プロピレン単 を主体とし、これに少量のα-プロピレン、 えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1- クテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテン等が ランダムに共重合されたものであり、これら プロピレン以外の他のα-プロピレンの含量は 1乃至30モル%程度の範囲にある。また、融点 90乃至170℃程度の範囲にある。さらにMFR(230 、2160g)は0.1乃至10g/10minの範囲にあることが ましい。

 本発明において、上記の接着性樹脂と応 緩和性樹脂とは、種々の形態で併用するこ ができ、例えば、接着性樹脂層の間に応力 和性樹脂の層を設けた3層構造のフィルム乃 至シートを封止材として使用することもでき るが、一般的にはブレンド物の形で使用する ことが好ましい。特に、上記の酸変性ポリプ ロピレン系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B) とを、重量比(A:B)が100:5乃至100:50、特に100:10 至100:40の範囲でブレンドしたブレンド物を 止材として使用するのがよい。酸変性ポリ ロピレン系樹脂(A)の量が上記範囲よりも多 場合には、低温領域での剪断力に対する耐 が低くなってしまい、また、上記範囲より 少ない場合には、ガラス製基板や金属製基 などに対する接着性が損なわれてしまうか である。

 また、上記のような量割合で酸変性ポリ ロピレン系樹脂(A)及びポリプロピレン系樹 (B)を含むブレンド物(封止材)は、その動的 弾性測定において、横軸に温度、縦軸に損 正接δをプロットすると、約5℃付近に大き ピークを示す。このことからも、この封止 は、剪断能力の緩和に有効に機能している とが判る。

<太陽電池の構造>
 本発明の色素増感型太陽電池は、上述した 止材を用いて封止されており、その代表的 構造は、図1に示されている通りである。

 即ち、図1の構造において、光電極基板1 対極基板3とが、電解質層5を間に挟んで対峙 した構造を有しており、電解質層5を両基板 に存在させることにより、発電領域Xが形成 れている。この発電領域Xを取り囲むように 封止材7(例えば、酸変性ポリプロピレン系樹 (A)及びポリプロピレン系樹脂(B)を含むブレ ド物)を設け、この封止材7によって光電極 板1と対極基板3とを接合することにより、発 電領域Xが封止されているわけである。

 光電極基板1は、光不透過性であり、金属 基板1aとその上に形成された酸化物半導体の 孔質層1bとから形成されており、この多孔 層1bの表面には増感色素1cが吸着担持されて る。

 金属基板1aは、低電気抵抗の金属材料から 成されたものであれば特に制限されないが 一般的には、6×10 -6 ω・m以下の比抵抗を有する金属乃至合金、例 えばアルミニウム、鉄(スチール)、銅、ニッ ルなどが使用される。
 また、金属基板1aの厚みは特に制限されず 適度な機械的強度が保持される程度の厚み 有していればよい。
 さらに、生産性を考慮しないのであれば、 属基板1aは、例えば蒸着等により、樹脂フ ルム等に形成されていてもよい。勿論、こ 樹脂フィルム等の基材は透明である必要は い。
 本発明においては、金属基板1aがアルミニ ム、ステンレススチール(SUS304)、銅等のガラ ス製基板と線熱膨張係数が大きく異なる材料 を用いた場合にも熱履歴に起因する種々の不 都合を回避することができ、特に軽量であり 且つ安価なアルミニウム製基板を用い得るこ とは、本発明の大きな利点である。

 金属基板1aの上に形成される多孔質層1bは、 色素増感型太陽電池において従来から使用さ れているもの、具体的には、チタン、ジルコ ニウム、ハフニウム、ストロンチウム、タン タル、クロム、モリブデン、タングステンな どの金属の酸化物、或いはこれら金属を含有 する複合酸化物、例えばSrTiO 3 、CaTiO 3 などのペロブスカイト型酸化物などにより形 成され、その厚みは、通常、3乃至15μm程度で ある。

 また、かかる酸化物半導体の多孔質層1b 、増感色素1cを担持させるため、多孔質であ ることが必要であり、例えば、アルキメデス 法による相対密度が50乃至90%、特に50乃至70% 度であることが好ましく、これにより、大 な表面積を確保し、有効量の色素を担持さ ることができる。

 このような多孔質層1bは、例えば上述した 導体の微粒子を、有機溶媒やキレート反応 を有する有機化合物に分散させて調製した ースト、若しくは、チタンアルコキシド(例 ばテトライソプロポキシチタンなど)等のバ インダー成分とともに有機溶媒中に分散させ たスラリー乃至ペーストを金属基板1a上に塗 し、600℃以下の温度で、前述した相対密度 なる程度の時間、焼成することにより容易 形成することができる。即ち、焼成により 上記バインダー成分のゲル化(脱水縮合)に り形成されたTiO 2 ゲルが半導体微粒子同士を接合し、多孔質化 される。

 尚、上記のようなスラリー乃至ペースト 形成に用いる半導体微粒子は、多孔質化の で、その粒径が5~500nm、特に5~350nmの範囲に るのがよい。

 また、キレート反応性の有機化合物とし は、β-ジケトン、β-ケトアミン、β-ケトエ テルが代表的であり、易揮発性であれば特 制限なく使用することができるが、β-ジケ ンであるアセチルアセトンが特に好適であ 、半導体微粒子重量に対して5乃至35重量%の 量で使用するのがよい。

 バインダー成分のチタンアルコキシドは 二酸化チタン微粒子100重量部当り、10乃至60 重量部、特に20乃至50重量部の量で使用する がよい。

 有機溶媒としては、易揮発性であれば特に 限なく使用することができるが、一般的に 、炭素数が4以下の低級アルコール、例えば メタノール、エタノール、イソプロパノール 、n-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノー などが好適である。これらの有機溶媒は、 独で使用してもよいし、2種以上を組み合わ せた混合溶媒の形で使用することもできる。
 有機溶媒量は、スラリー乃至ペーストが適 なコーティング性を示す程度の量で使用す ばよく、一般的には、スラリー乃至ペース の固形分濃度が、5乃至50重量%、特に15乃至4 0重量%の範囲となる程度の量で使用するのが い。溶媒量が多すぎると、スラリー乃至ペ ストが低粘性となり、垂れ等により安定な みのコーティング層を形成することが困難 なり、また、溶媒量が少ないと、高粘性と り作業性が低下してしまうからである。

 増感色素1cは、上記のようにして形成さ た多孔質1bに色素溶液を接触させることによ り、吸着担持される。色素溶液の接触は、通 常は、ディッピングにより行われ、吸着処理 時間(浸漬時間)は、通常、30分~24時間程度で り、吸着後、乾燥して色素溶液の溶媒を除 することにより、表面に増感色素1cが形成さ れた酸化物半導体の多孔質層1bを有する光電 基板1を得ることができる。

 用いる増感色素は、カルボキシレート基 シアノ基、ホスフェート基、オキシム基、 オキシム基、ヒドロキシキノリン基、サリ レート基、α-ケト-エノール基などの結合基 を有するそれ自体公知のものが使用される。 例えばルテニウム錯体、オスミウム錯体、鉄 錯体などを何ら制限なく使用することができ る。特に幅広い吸収帯を有するなどの点で、 ルテニウム-トリス(2,2’-ビスピリジル-4,4’- カルボキシラート)、ルテニウム-シス-ジア ア-ビス(2,2’-ビスピリジル-4,4’-ジカルボ シラート)などのルテニウム系錯体が好適で る。

 このような増感色素の色素溶液は、溶媒と てエタノールやブタノールなどのアルコー 系有機溶媒を用いて調製され、その色素濃 は、通常、3×10 -4 乃至5×10 -4 mol/l程度とするのがよい。

 また、対極基板3は、光透過性電極であり 、この基板側から光が照射されて発電が行わ れるものである。ガラス製基板3aを有してお 、このガラス製基板3aの上に、透明導電膜3b と電子還元性導電層3cが、この順に形成され いるものである。

 ガラス製基板3aとしては、高い光透過性 有している限り、特に制限されず、石英ガ ス、パイレックスガラス等、任意のガラス 料から形成されているものを使用すること でき、また、その厚みや大きさは、最終的 形成される色素増感型太陽電池の用途に応 て適宜決定される。

 ガラス製基板3aの上に形成される透明導 膜3bとしては、酸化インジウム-酸化錫合金 らなる膜(ITO膜)、酸化錫にフッ素をドープし た膜(FTO膜)などが代表的であるが、電子還元 が高く、特にカソードとして望ましい特性 有していることから、ITO膜が好適である。 れらは蒸着により上記のガラス製基板3a上 形成され、その厚みは、通常、500nm乃至700nm 度である。

 また、上記の透明導電膜3b上に形成され 電子還元導電層3bは、一般に白金の薄層から なり、透明導電膜3bに流れ込んだ電子を電解 層5に速やかに移行せしめる機能を有するも のである。このような電子還元導電層3bは、 透過性が損なわれないように、その平均厚 が0.1乃至1.5nm程度となるように蒸着により く形成される。

 上述した光電極基板1と対極基板(光透過性 板)3との間の電解質層5は、公知の太陽電池 同様、リチウムイオン等の陽イオンや塩素 オン等の陰イオンを含む種々の電解質溶液 より形成される。また、この電解質層5中に 、酸化型構造及び還元型構造を可逆的にと 得るような酸化還元対を存在させることが ましく、このような酸化還元対としては、 えばヨウ素-ヨウ素化合物、臭素-臭素化合 、キノン-ヒドロキノンなどを挙げることが きる。
 このような電解質層5は、前述した封止材7 より封止され、電極間から漏洩しないよう 構成されることとなるわけである。

 即ち、上記のような構造を有する本発明 色素増感型太陽電池は、例えば、光電極基 1と対極基板3との周縁部の三方を、前述し ブレンド物からなる封止材7によって接合し 封止されていない部分(開口部)から電解質 5を形成する電解質液を注入し、次いで、こ 開口部を、封止材7によって接合することに より製造される。

 この場合において、ブレンド物からなる 止材7を用いての封止は、例えば押出成形等 により、前述したブレンド物からなるフィル ムを成形し、このフィルムを、接合すべき周 縁部の間に挟んで加熱圧着することにより容 易に行うことができる。また、光電極基板1 対極基板3との周縁部の四方を、上記のよう して接合した後に電解質液を注入すること 可能であり、この場合には、封止材7に注入 管などを挿入し、この注入管から電解質液を 注入すればよい。

 上記の構造の太陽電池は、先に述べた従 公知の太陽電池と全く同様にして、対極基 3側からの可視光の照射によって発電するも のであるが、本発明は、当然ながら、光電極 1側からの光照射によって発電するタイプの 素増感型太陽電池にも適用することができ 。即ち、このような場合には、光電極1側の 属基板1aの代わりにガラス製基板を使用し 対極基板3側のガラス製電極3aの代わりに金 基板を使用し、上記と全く同様にして封止 7を用いて発電領域X(電解質層5)が封止される ように、両基板を接合すればよい。

 また、本発明においては、封止材7を用い ての接合に際して、光電極基板1及び対極基 3の周縁部分にエポキシ接着剤などを予め塗 しておき、このような接着剤が塗布された を封止材7によって接合することも勿論可能 である。

 上述した本発明の色素増感型太陽電池は ガラス製基板と金属基板との線熱膨張係数 に起因する不都合を有効に回避することが きるため、ガラス製基板や金属基板の材質 制限されず、これら基板として種々の材質 ものを使用することができる。特にアルミ ウム製基板のように、ガラス製基板との線 膨張係数差の著しく大きい金属基板も好適 使用することができるため、工業的価値は しく大きい。

 本発明を次の実験例により説明する。
 尚、以下の実験において、動的粘弾性試験 よりtanδの測定は、以下のようにして行っ 。

<tanδの測定>
 所定の組成になるように目標膜厚0.05mmに成 した封止材をマシン方向に幅10mm、長さ15mm 上の長さで切り出し、セイコーインスツル ンツ社製粘弾性測定装置DMS6100にて、下記条 にて貯蔵弾性率E’と損失弾性率E’’を測 した。尚、計算には実測膜厚を用いた。
  チャック間距離:5mm
  測定周波数:1Hz
  昇温速度:2℃/min
  測定開始温度:-60℃
  測定終了温度:180℃
  サンプリング時間:1sec
 この測定した貯蔵弾性率E’と損失弾性率E ’から下記式にて得たtanδからピーク値を求 めた。
   tanδ=E’’/E’

(実施例1)
 酸化チタンペースト(触媒化成社製、PST-18NR) をスクリーン印刷によってアルミ基板(厚み0. 28mm)に印刷し焼結後、色素を溶解した溶媒中 浸して色素を酸化チタン膜に担時させた。 の酸化チタン膜の周囲に以下の封止材をの 、Ptを蒸着した導電性ガラス(日本板硝子社 、厚み3mm)で挟み込んでヒートシールした。 ヒートシールによる接着は200℃に設定した金 属板を3kgf/cm 2 の圧力で10秒間押しつけることによって行っ 。
 封止材の作成は、東洋精機製作所製2軸セグ メント押出機(ラボプラストミル50C150)に、予 所定の比率にブレンドしたペレットを供給 、コートハンガー式Tダイから水冷したキャ ストロール上に押出し行った。この時の条件 は目標膜厚0.05mm、押出機設定温度200℃、スク リュー回転数150rpm、Tダイ温度200℃で行った

封止材(ブレンド物)の組成;
  接着性樹脂 100重量部
   無水マレイン酸変性ポリプロピレン
     融点;140℃
     MFR(230℃、2160g); 7g/10分
     密度;0.896g/cm 3
     グラフト変性率;0.5%
  応力緩和性樹脂 30重量部
  プロピレン・1-ブテンコポリマー
     密度;0.870g/cm 3
     融点;135℃
     MFR(230℃、2160g); 3g/10分
     tanδ:0.9

 こうして作成したセルを恒温槽に入れ、J IS C 8938に定められている規格に準じてサイ ル試験を行った(図2参照)。その結果、接着 の剥離やセルの破壊は見られなかった。

(比較例1)
 封止材として、応力緩和性樹脂がブレンド れていない上記の無水マレイン酸変性ポリ ロピレン単体を用いた以外は、実施例1と同 様にしてセルを作成し、サイクル試験を行っ た。その結果、ガラスの基材が破壊してセル が壊れた。

(比較例2)
 封止材として、下記の接着性樹脂を用いた 外は、実施例1と同様にしてセルを作成した 。
封止材;
  接着性樹脂
    酸変性ポリエチレン(三井デュポンポリ ケミカル社製、ニュクレル
    N1525)
     融点;93℃
     MFR(230℃、2160g); 25g/10分
     密度;0.94g/cm 3
     酸含有量;15%(質量百分率)

 作成されたセルについて、実施例1と同様 にサイクル試験を行ったところ、85℃で接着 の剥離が生じた。

(実施例2)
 応力緩和性樹脂 40重量部
  プロピレン・1-オクテンコポリマー
     密度;0.87g/cm 3
     融点;120℃
     MFR(230℃、2160g); 5g/10分
     tanδ:1.0
 この応力緩和性樹脂を接着性樹脂とブレン した封止材を用いた以外は、実施例1と同様 にしてセルを作成し、サイクル試験を行った 。その結果、その結果、接着部の剥離やセル の破壊は見られなかった。

(実施例3)
 応力緩和性樹脂 10重量部
  プロピレン・1-ヘキセンコポリマー
     密度;0.85g/cm 3
     融点;130℃
     MFR(230℃、2160g); 2g/10分
     tanδ:0.5
 この応力緩和性樹脂を接着性樹脂とブレン した封止材を用いた以外は、実施例1と同様 にしてセルを作成し、サイクル試験を行った 。その結果、その結果、接着部の剥離やセル の破壊は見られなかった。

(参考実験)
 プロピレン/1ブテン共重合体(tanδ0.9)、エチ ン/オクテン共重合体(tanδ0.2)及びエチレン/ ロピレン共重合体(tanδ0.3)の3種の樹脂のそ ぞれについて、コモノマー量を変え、動的 弾性の異なるものを用意した。
 これらの樹脂について、0℃でのtanδを測定 、さらに、100重量部の接着性樹脂(無水マレ イン酸変性ポリプロピレン)に10乃至30重量部 ブレンドして、スクリュー回転を30乃至140rp mとし実施例1と同様にブレンド物を調製した
 このブレンド物について、SEMによりブレン し分散した樹脂の粒径とブレンド樹脂の体 分率から粒子間距離を計算し、tanδと粒子 距離との関係を図3に示した。

  1:光電極基板
  1a:金属基板
  1b:多孔質半導体層
  1c:増感色素
  3:対極
  3a:ガラス基板
  3b:透明導電膜
  3c:電子還元性導電層
  5:電解質層
  7:封止材