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Title:
SOLID SUPPORT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/066502
Kind Code:
A1
Abstract:
The object is to provide a solid support for achieving the isolation of a cell or the extraction/purification of a nucleic acid in a safe, simple and efficient manner in a high yield in the genetic testing for determining the presence or absence of the infection with a pathogenic bacterium. Thus, disclosed is a solid support to which a cell is to be bound, which comprises a carrier and a polypeptide that is capable of binding to a glycolipid containing mycolic acid and that is immobilized on the surface of the carrier. Also disclosed is a solid support to which a nucleic acid is to be bound, which comprises a carrier and a polypeptide that is capable of binding to a nucleic acid and that is immobilized on the surface of the carrier.

Inventors:
YAMAMOTO NORIAKI (JP)
TAMAKI KEIGO (JP)
MIYAZAKI KOJI (JP)
NAKAJIMA AKIHISA (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/066664
Publication Date:
May 28, 2009
Filing Date:
September 16, 2008
Export Citation:
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Assignee:
KONICA MINOLTA MED & GRAPHIC (JP)
YAMAMOTO NORIAKI (JP)
TAMAKI KEIGO (JP)
MIYAZAKI KOJI (JP)
NAKAJIMA AKIHISA (JP)
International Classes:
C07K17/14; C12M1/00; G01N33/543
Domestic Patent References:
WO2005116654A12005-12-08
Foreign References:
JP2003064100A2003-03-05
JP2006133137A2006-05-25
JP2000219699A2000-08-08
Other References:
FURUGEN, M. ET AL.: "Identification of the mycobacterial DNA-binding protein 1 region which suppresses transcription in vitro", MICROB. PATHOG., vol. 30, no. 3, 2001, pages 129 - 138
KATSUBE, T. ET AL.: "Control of cell wall assembly by a histone-like protein in Mycobacteria", J. BACTERIOL., vol. 189, no. 22, November 2007 (2007-11-01), pages 8241 - 8249
Attorney, Agent or Firm:
HATTA & ASSOCIATES (11-9 Nibanch, Chiyoda-ku Tokyo, JP)
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Claims:
 ミコール酸含有糖脂質との結合能を有するポリペプチドが、担体表面に固定化されてなる、固体支持体。
 前記担体が、磁性担体であることを特徴とする、請求項1に記載の固体支持体。
 核酸との結合能を有するポリペプチドが、担体表面に固定化されてなる、固体支持体。
 前記担体が、磁性担体であることを特徴とする、請求項3に記載の固体支持体。
 前記ポリペプチドが、ミコール酸含有糖脂質および核酸との結合能を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の固体支持体。
 前記ポリペプチドが、MDP1またはMDP1を構成するアミノ酸の少なくとも1つが置換、付加、もしくは欠失したポリペプチドであることを特徴とする、請求項5に記載の固体支持体。
 請求項1、2、5、および6のいずれか1項に記載の固体支持体と、ミコール酸含有糖脂質を細胞壁に有する細菌細胞を含む試料とを接触させる段階を含むことを特徴とする、細胞の単離方法。
 前記固体支持体に含まれる担体が磁性担体である場合、磁気作用を利用して固液分離を行うことをさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の細胞の単離方法。
 前記細菌細胞が、結核菌細胞であることを特徴とする、請求項7または8に記載の細胞の単離方法。
 請求項1、2、5、および6のいずれか1項に記載の固体支持体と、ミコール酸含有糖脂質を細胞壁に有する細菌細胞を含む試料とを接触させて細胞を単離する段階および単離した細胞内の核酸を抽出する段階とを含むことを特徴とする、核酸の抽出方法。
 前記固体支持体に含まれる担体が磁性担体である場合、磁気作用を利用して固液分離を行う段階をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の核酸の抽出方法。
 前記核酸を抽出する段階が、加熱、超音波照射、または化学的処理により細胞を溶解して核酸を遊離させる工程を含むことを特徴とする、請求項10または11のいずれか1項に記載の核酸の抽出方法。
 請求項3~6のいずれか1項に記載の固体支持体と、核酸を含む試料とを接触させる段階を含むことを特徴とする、核酸の単離方法。
 前記固体支持体に含まれる担体が磁性担体である場合、磁気作用を利用して固液分離を行う段階をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の核酸の単離方法。
 前記核酸が、GCリッチな配列を有することを特徴とする、請求項13~16のいずれか1項に記載の、核酸の単離方法。
 請求項1、2、5、および6のいずれか1項に記載の固体支持体と、ミコール酸含有糖脂質を細胞壁に有する細菌細胞を含む試料とを接触させて細胞を単離する段階、単離した細胞内の核酸を抽出する段階、および抽出した核酸を含む試料と、請求項3~6のいずれか1項に記載の固体支持体とを接触させる段階を含むことを特徴とする、核酸の単離方法。
 請求項1~6のいずれか1項に記載の固体支持体を含むことを特徴とする、キット。
Description:
固体支持体

 本発明は、固体支持体に関する。より詳 くは、本発明は、担体表面にポリペプチド 固定化されてなる固体支持体に関する。

 病原性細菌の感染の有無を調べる遺伝子 査は、患者より採取した臨床検体中に該病 性細菌の核酸が存在するか否かを判別する とにより行われる。その検査工程は、主と て(1)病原性細菌の集菌(細胞の単離)、(2)溶 (核酸の抽出・精製)、(3)遺伝子増幅・検出の 3過程よりなる。それぞれの工程における病 性細菌細胞および/または核酸の収率が、検 の感度・精度に大きく影響する。

 上記(1)病原性細菌の集菌の工程において 病原性細菌として例えば結核菌を集菌する 合には、従来、高速遠心分離操作によって 細菌の集菌が行われていた。しかしながら 高速遠心分離操作は以下のような問題点を することが知られている。第一に、高速遠 分離操作によると、エアロゾルが発生しや く、また、試料容器の開閉作業を伴う。こ ため、検体間でクロスコンタミネーション 起こる可能性があり、加えて、作業者の接 感染や環境汚染などのバイオハザードが懸 される。第二に、高速遠心分離機という比 的大型の独立した装置が必要であることか 、上記一連の検査工程を連続的に自動化す ことが困難である。第三に、回収効率を高 するためには、高速遠心分離に長時間を要 る。

 このような高速遠心分離操作に代わる方 として、結核菌などの病原性細菌を安全か 簡便に、短時間で単離するための、多糖類 リガンドとした固体支持体を用いた集菌技 が開発されている。特に、支持体(担体)に 性粒子を用いた場合には、磁気作用を利用 た固液分離により容易に集菌することがで うる、としている(特表2003-520048号公報)。

 また、上記(2)溶菌(核酸の抽出・精製)工 においては、工程(1)などで集菌した細菌細 を適当な方法により溶菌した後、酵素、そ 以外のタンパク質、多糖類、および脂質な の核酸増幅反応の阻害物質やその他の汚染 質を含む試料から、核酸を抽出・精製する 要がある。核酸を含む試料から核酸を抽出 る方法としては、例えば、フェノール/クロ ホルム抽出法などが従来から汎用されてい 。その後の、フェノール/クロロホルム抽出 溶液から核酸を回収する方法としては、エタ ノール沈殿法が用いられている。

 さらに、抽出した核酸を精製する方法と ては、核酸を二酸化ケイ素、シリカポリマ 、ケイ酸マグネシウムなどの吸着媒体表面 吸着させ、これを洗浄した後、核酸を脱離 せるなどの操作によって精製する方法があ (例えば、特公平7-51065号公報および特開2004- 340839号公報参照)。該方法は、吸着媒体の分 性能は優れているものの、同一性能の吸着 体を工業的に大量生産することが困難なこ や、吸着媒体の取扱いが不便であるために 々の形状に加工することが難しいといった 題点を有していた。そこで、上記のケイ素 化物系の吸着媒体に代わって、アセチルセ ロースの表面ケン化物(表面にヒドロキシ基 有する有機高分子)からなる固相に核酸を脱 着させる工程を含む、核酸の分離精製方法が 開発された。該技術によると、アセチルセル ロースの表面ケン化物はケイ素酸化物系の吸 着媒体に比べて、分離性能に優れ、洗浄効率 が良く、加工が容易であり、実質的に同一の 分離性能を有するものを大量に生産できる、 としている(特開2003-128691号公報)。しかし、 記のいずれの方法においても、吸着媒体に 酸を捕捉する際に、過塩素酸などのカオト ピック剤を使用することが必要であり、さ に、可溶化した核酸混合液に水溶性有機溶 を混合することや、得られた核酸混合液中 塩が存在することを要するといった問題点 あった。核酸吸着能を有する多孔質担体(ガ ス繊維、セルロース繊維、およびヒドロキ アパタイトなど)を用いることで、カオトロ ピック剤などの危険な試薬の使用を回避する 方法も開発されているが(特開2005-80555号公報) 、該方法は乾燥工程を含むので、操作が煩雑 であり、また大掛かりな装置を必要とした。 一方で、近年、組織から核酸を抽出し、オリ ゴdT配列を固定化した担体を用いることによ mRNAなどを回収する方法が開発されている( 表2006-506089号公報)。

 上記の病原性細菌からの核酸の単離技術 は別に、病原性抗酸菌に対して免疫原性を するポリペプチドであるMDP1(Mycobacterium DNA-B inding Protein 1)、および該MDP1のワクチンまた 治療剤への利用が開示されている(特開2000-2 19699号公報)。

 しかしながら、特表2003-520048号公報に記載 固体支持体による集菌は、細菌の細胞壁に 在するタンパク質と担体に固定化された多 類との非特異的な相互作用を利用している めに、高速遠心分離法と比べると、その効 が低いという問題点を有しており、特定の 菌細胞を高収率で集菌することが困難であ た。また、核酸の精製方法においても、操 の煩雑さや、所望の収率を得られないとい 問題点を有していた。このような背景から 病原性細菌の感染の有無を調べる遺伝子検 における、集菌または核酸の抽出・精製工 の更なる改善が求められていた
 そこで、本発明は、病原性細菌の感染の有 を調べる遺伝子検査において、細胞の単離 菌または核酸の抽出・精製工程を、安全で 簡便で、効率的で、かつ高収率に行うため 固体支持体を提供することを目的とする。

 本発明者らは上記の問題を解決すべく、 意研究を行った。その結果、病原性細菌の 胞壁に含まれるミコール酸含有糖脂質また 核酸との結合能を有するポリペプチドを固 化した固体支持体を用いることによって、 伝子検査における細胞の単離または核酸の 出・精製工程が、安全で、簡便で、効率的 、かつ高収率で行えることを見出し、本発 を完成させた。

 すなわち、上記目的を達成するための本 明の固体支持体は、ミコール酸含有糖脂質 の結合能を有するポリペプチドが、担体表 に固定化されてなる。

 また、上記目的を達成するための本発明 他の固体支持体は、核酸との結合能を有す ポリペプチドが、担体表面に固定化されて る。

 本発明の固体支持体によれば、臨床検体 ら、ミコール酸含有糖脂質を細胞壁に有す 病原性細菌の単離を、安全で、簡便で、効 的で、かつ高収率で行うことができる。つ り、従来のように、コンタミネーションや イオハザードの虞もなく、煩雑な操作も要 ずに、高感度・高精度の検査が可能となる

 また、本発明の他の固体支持体によれば 核酸の抽出・精製を、安全で、簡便で、効 的で、かつ高収率で行うことができる。つ り、従来のように、カオトロピック試薬や 機溶媒などの危険な試薬を用いることない で、その精製工程全体を通じて安全であり 単離される核酸の変性も実質的にない。さ に、遠心分離・ろ過・減圧処置といった操 を行うことなく、高感度・高精度の検査が 能となる。

 以下、本発明の好ましい実施の形態を詳 に説明する。

 [固体支持体]
 本発明の一実施形態に係る固体支持体は、 コール酸含有糖脂質との結合能を有するポ ペプチドが、担体表面に固定化されてなる 該固体支持体(以下、「細胞結合用固体支持 体」とも称する)によると、細菌細胞の細胞 に存在するミコール酸含有糖脂質と固体支 体の担体表面に固定化されたポリペプチド が結合し、細菌細胞が結合した固体支持体 得ることができる。この細菌細胞が結合し 固体支持体を試料中から回収することによ て、細胞を単離することができる。そして 細胞を単離した後に、固体支持体に結合し 細菌細胞を溶菌処理して核酸を遊離させ、 体支持体に結合した細菌の細胞壁を取り除 ことによって、核酸を抽出することができ 。

 また、本発明の他の実施形態に係る固体 持体は、核酸との結合能を有するポリペプ ドが、担体表面に固定化されてなる。該固 支持体(以下、「核酸結合用固体支持体」と も称する)によると、核酸と固体支持体の担 表面に固定化されたポリペプチドとが結合 、核酸が結合した固体支持体を得られる。 の核酸が結合した固体支持体を試料中から 収することによって、高純度の核酸を得る とができる。

 (ポリペプチド)
 上記細胞結合用固体支持体におけるポリペ チドは、ミコール酸含有糖脂質との結合能 有する。本明細書において、「ポリペプチ 」とは、アミノ酸がペプチド結合により重 したポリマー分子であって、高次構造を有 るタンパク質及び修飾タンパク質も含む。 た、本明細書において、「結合」とは、イ ン結合、および水素結合などの他、双極子 相互作用、ファンデルワールス力、および 水性相互作用などの分子間相互作用による 着・吸着なども含む。該ポリペプチドは、 コール酸含有糖脂質との結合能を有するも であれば、特に制限なく用いることができ 。ミコール酸含有糖脂質はマイコバクテリ ム属(Mycobacterium属:抗酸菌属)やその近縁菌で あるノカルディア属(Nocardia属)、ロドコッカ 属(Rhodococcus属)などの細胞壁に含まれる糖脂 であり、一般に種々の分子量を持つ類似体 混合物の状態で存在する。マイコバクテリ ム(抗酸菌)属には、ヒト型結核菌(Mycobacterium  tuberculosis)、ライ菌(Mycobacterium leprae)などの 原性を有する細胞内寄生菌が含まれており 増殖が極めて緩慢なため、細胞内寄生を可 にし、また薬剤に対する抵抗性が獲得され 。ミコール酸含有糖脂質としては、例えば アビミコール酸I、ホミノミコール酸I、ミ ール酸IIa、ミコール酸IIb、ミコール酸IIIa、 コール酸IIIb、コリノミコール酸、トレハロ ース-6-モノミコレート、トレハロース-6,6’- ミコレート、およびメロミコール酸などが られている。このうち、トレハロース6,6’- ジミコレートは、トレハロースの6,6’位にミ コール酸が2分子、エステル結合した抗酸菌 特異的な糖脂質であり、マイコバクテリウ の細胞壁を特徴づける主要糖脂質である。

 上記核酸結合用固体支持体におけるポリ プチドは、トレハロース6,6’-ジミコレート などのミコール酸含有糖脂質と結合していな い場合は、核酸との結合能を有する。すなわ ち、該ポリペプチドは、水素結合、イオン結 合、疎水性相互作用といった非共有的相互作 用を介して、高いアフィニティで核酸と結合 する。本明細書において、「核酸」とは、DNA 、RNA、および修飾核酸塩基を含むポリヌクレ オチドを意味し、一本鎖または二本鎖を問わ ず、それらのポリペプチドの組み合わせ(部 的なdsまたはss)であってもよく、さらにペプ チド核酸(PNA)なども含まれる。核酸結合能を するポリペプチドは、核酸を可逆的に結合 解離することができる既知のものであれば に限定されず、DNA結合タンパク質、RNA結合 ンパク質などの公知の核酸結合タンパク質 適宜採用することができる。使用される核 結合タンパク質としては、例えば、ヒスト 系タンパク質(またはヒストン様のタンパク 質)、転写因子、遺伝子修復タンパク質(ポリ( ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)、Kuタンパク など)、リボソームタンパク質などが総称的 挙げられる。DNAに結合して転写の開始、伸 、終結などの転写調節に関わる転写因子の 類は、50種類以上を超えている。DNA結合タ パク質として具体的には公知のλファージ転 写因子croタンパク質、ATF2、c-Fos、DP-1、c-Myb、 c/EBP、CREB、FosB、E2F-1、c-Myc、Egr-1、c-Jun、E2F-2 Infl 1、Infl 2、Onc 1、Onc 2、Onc 3、Max、HIF-1 α、c-Rel、JunD、Rb、USF1、HIF-1β、NFκB p50、Sp-1 p107、USF2、Oct I、NFκB p65、 STAT1、Sp-1、p53 Oct IIなどが挙げられる。なお、ここでいう DNA結合タンパク質」とは、生理的意義が知 れた狭義の「DNA結合タンパク質」に限定さ るものではなく、細胞の核物質中でDNA分子 の特定部位に特異的に結合し、あるいはDNA 特異的に直接相互作用することでDNAの機能 影響を及ぼすタンパク質を意味する。これ は、遺伝子発現を起動する転写因子、特化 れた機能を付与するステロイドホルモン受 体、およびゲノムの完全性を維持するDNA修 タンパク質として、正常細胞の活性におい 中心的役割を果たしている。また、RNA結合 ンパク質としては、DRBP(dsRNA binding proteins) どがあり、例えば、DRBP76、PACT、RAXなどが挙 げられる。本発明において上記「核酸結合タ ンパク質」は、どのように調製されたもので もよい。例えばそのタンパク質をコードする 遺伝子を用いて、公知の遺伝子工学的手法に より試験管内で発現させた遺伝子組換え体で あってもよい。あるいは該タンパク質を含む 分画を生体や細胞から抽出してもよい。また タンパク質、ペプチドライブラリーから得ら れるサンプルを使用してもよい。核酸結合能 を有するポリペプチドは、上記「核酸結合タ ンパク質」を化学修飾、部分切断(プロテア ゼ部分消化、ブロムシアン開裂、ジスルフ ドリル基還元など)などによって得られ、核 結合能を保持しているポリペプチドも含む

 本発明の細胞結合用固体支持体または核 結合用固体支持体に用いるポリペプチドは ミコール酸含有糖脂質および核酸の両方と 結合能を有することが好ましい。かような リペプチドを用いることによって、遺伝子 査における病原性細菌細胞の単離および該 菌中の核酸の抽出・精製を1種の固体支持体 で行うことが可能となる。該ポリペプチドと しては、ミコール酸含有糖脂質および核酸の 両方と結合することができるポリペプチドで あれば、特に制限なく用いることができる。 かようなポリペプチドとしては、例えば、マ イコバクテリウム属に属するBCG東京株から分 離されたMDP1(Mycobacterium DNA-Binding Protein 1)が げられる。

 MDP1は、抗酸菌に特異的なヒストン様タン パク質であり、核酸コンフォーメーションを 認識してDNA、RNA両方に結合することができる 。またMDP1は、遺伝子の発現制御に関与して 酸菌の遅発育性の原因となるとの報告があ (特開2000-219699号公報)。結核菌などの細胞壁 は、MDP1が存在することが知られ、これはグ リコサミノグリカンと強力に相互作用する。 さらに本発明者らの研究から、結核菌細胞壁 成分のミコール酸含有糖脂質と遊離状態のMDP 1とが強い相互作用をすること、ならびに細 壁においてもミコール酸含有糖脂質とMDP1と 実際に結合している可能性が示された。MDP1 は、BCG東京株から得ることができるが、該株 に限定されず、BCG東京株以外のBCG株、結核菌 などのマイコバクテリウム属の菌から分離精 製することによっても得られる。

 MDP1は、205個のアミノ酸を有するポリペプ チドであるが、MDP1の1個または複数個、好ま くは1個~数個のアミノ酸が特定の位置また ランダムに置換、付加もしくは欠失したポ ペプチドであってもよい(本明細書では、こ らも「MDP1」として言及する)。「1個~数個」 の範囲は特には限定されないが、例えば、1~2 0個、好ましくは1~10個、さらに好ましくは1~5 、特に好ましくは1~3個程度を意味する。こ でアミノ酸残基の修飾である「置換」、「 加」、「欠失」は、通常の意味であり、MDP1 の機能を保持する修飾が許容される。アミノ 酸の置換、欠失および/または付加といった 異を導入するには、例えば部位特異的突然 異/PCR法などの周知の技術(S.N.Hoら、Gene 77、5 1(1989);西郷薫と佐野弓子共訳、Current protocols ンパクト版、分子生物学実験プロトコールI 、1997年6月、丸善)を用いることによって可能 である。

 上記MDP1として、6×ヒスチジン融合タンパ ク質、GST融合タンパク質といった組換えタン パク質の態様が好適に用いられる。このよう な組換えタンパク質を作製する場合には、ま ず該タンパク質をコードするDNAを入手するこ とが必要である。MDP1をコードするDNAの入手 その塩基配列などについては特開2000-219699号 公報に記載されている。このDNAを適当な発現 系に導入することにより、組換えタンパク質 として発現させ、これを抽出しアフィニティ クロマトグラフィーによって分離することが できる。例えば、MDP1をコードするDNAを適当 ベクター、例えば、pQE30、pGEXなどに組み込 、これを大腸菌、BCGなどの細菌、酵母など 細胞に導入して形質転換体として培養する とによって所望のポリペプチドが産生され (特開2000-219699号公報)。

 MDP1は、グアニン(G)あるいはシトシン(C)の認 識を通じた核酸結合活性をもっている。その 結果、核酸は、その配列中に含まれるGある はCを介して本発明の固定化支持体表面のMDP1 結合することとなる。肝要なことは、MDP1がG C塩基を認識することで、GCリッチな核酸を 異的に捕捉することに優れることである
 (担体)
 本発明において担体は、上記ポリペプチド 固定化するための基材の役割を果たす。以 、担体の好ましい形態を説明するが、以下 形態は、上述の細胞結合用および核酸結合 のいずれの固体支持体においても特に制限 く採用することができる。担体は、細菌細 の単離および核酸の抽出・精製工程におい 固液分離による分離を行うことから、水不 性の材料からなることが好ましい。ここで う水不溶性とは、具体的に水、他のいかな 水溶液にも溶解しないことを意味する。担 は、固定、分離などの用途に現在広く使用 れ、提案されている公知の担体(支持体)ま はマトリックスのいずれであってもよい。

 担体に用いられる材料としては、例えば 無機化合物、金属、金属酸化物、有機化合 またはこれらを組み合わせた複合材料を含 。担体は、抗酸性細菌細胞を結合させ得る のであれば、材質、形状、サイズは特に限 されない。好ましいものは、細胞の結合ま は核酸の結合のために高い表面積を与える 料である。

 担体に用いられる具体的な材料としては 特に限定されるものではないが、一般にポ スチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレ ト、ポリメチルメタクリレート、ポリエチ ン、ポリアミド、ラテックスといった有機 リマーなどの高分子材料、ガラス、シリカ 二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ジルコニ ム、酸化アルミニウム、酸化ナトリウム、 化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜 などの無機物またはステンレス、ジルコニ などの金属が挙げられる。これらのうち、 ラス、シリカ、ラテックス、または高分子 料が好ましく、なかでも有機ポリマー、特 ポリスチレンが好ましい。これらの材料は 般に多孔性を有するなど不規則な表面を持 、また、粒子、繊維、ウェブ、または焼結 などの様々な形態に加工することが可能で る。

 担体は、全体が同一の材料から構成され いる場合の他に、必要に応じて複数の素材 ら構成されるハイブリッド体であってもよ 。例えば、分析の自動化に対応するために コア部分は酸化鉄、または酸化クロムのよ な磁気応答性材料で作られ、その表面を有 ポリマーで被覆された粒子が挙げられる。 ような磁気応答性材料を含む担体を、本明 書においては、「磁性担体」とも称する。 た、磁性担体を担体として用いた固体支持 を、以下、「磁性固体支持体」とも称する

 細胞を結合させた磁性担体を含む固体支 体を、試料液から磁石の磁力によって容易 (固液)分離・固体支持体の回収をすること できる点で、その磁性担体が常磁性体、強 磁性体および強磁性体などの磁性体が含有 れてなるものであることが好ましく、常磁 体および強常磁性体の両方またはいずれか 方が含有されてなることがより好ましい。 に、残留磁化がないかまたは少ない点で、 常磁性体を用いることが好ましい。

 かかる磁性体の具体例としては、四三酸化 (Fe 3 O 4 )、γ-重三二酸化鉄(γ-Fe 2 O 3 )、各種フェライト、鉄、マンガン、コバル 、クロムなどの金属、コバルト、ニッケル マンガンを含む各種合金を挙げることがで 、これらのうち、四三酸化鉄が特に好まし 。また、コバルト、ニッケルはヒスチジン グと親和性を有するという点において好ま い。

 本発明において用いられる磁性担体は、 れた磁気分離性(すなわち磁気によって短時 間で分離する性能)を有し、かつ、ゆるい上 振盪の操作によって再分散し得るものであ ことが好ましい。

 磁性担体における磁性体の含有割合は、 磁性体の含有割合が30質量%以上であること ら、70質量%以下とされるが、好ましくは20~7 0質量%、より好ましくは30~70質量%である。磁 体の含有割合が20質量%未満であると、充分 磁気応答性が発現されず、所要の磁力によ て短時間で固体支持体を分離することが困 となることがある。一方、この割合が70質 %を超えると、担体表面に露出する磁性体の が多くなるため、該磁性体の構成成分、例 ば鉄イオンの溶出などが生じ、使用時に他 材料に悪影響を及ぼすことがあり、また、 体が脆くなって実用的な強度が得られない とがある。

 従来からも、磁性担体を含む固体支持体 用いた細胞分離法(特表2003-520048号公報)が開 発されているが、これらの固体支持体は、細 菌の細胞壁のタンパク質と非特異的に結合す る糖をリガンドとして用いていたために、細 菌細胞の中には、該固体支持体に付着しない 細菌もあった。たとえ、付着する場合であっ ても、非特異的な結合であっては、目的とす る細菌細胞だけを効率よくその表面上に集積 することは非常に困難であった。本発明では ミコール酸含有糖脂質を細胞壁に有する病原 性抗酸菌(特に結核菌)を確実に単離するため 担体(好ましくは磁気担体)の表面にミコー 酸含有糖脂質と結合能を有する基として、MD P1を支持体表面に結合(好ましくは共有結合) せている。その固定化量は、支持体材料、 定化方法、必要とする核酸回収量などに基 いて適宜設定される。

 また、固体支持体として磁性支持体を用 る核酸精製法も、これまでに多数、開発さ ている。例えば、有毒な溶媒を使用しない 離方法として、カオトロピック試薬を利用 てタンパク質、脂質などの夾雑物を水相に 溶化し、核酸をシリカビーズに吸着させて 相で回収した後、その核酸を再び水相に溶 するBoom法(Boomら、J.Clin.Microbiol.第28巻、第495 ~503頁(1990))がある。この方法では、過塩素酸 どのカオトロピックイオンが必要とされる したがって抽出された核酸は、短く断片化 れているものが多い。本発明の好ましい実 形態では、そのような過酷な試薬を用いな 生理的条件下で、磁気ビーズなどの磁気粒 を用いた磁性固体支持体への核酸の結合を 進するため、核酸に対して親和性を有する として、MDP1を担体表面に固定化(好ましく 共有結合)させ、固定化されたMDP1を介して結 合させている。そのMDP1の固定化量は、担体 料、固定化方法、必要とする核酸回収量な に基づいて適宜設定される。好ましい態様 して、特にヒスチジンタグを付した組換えMD P1(rMDP1)の調製を、遺伝子工学技術に基づいて 行うことができ、磁気ビーズ表面上への固定 化は、ヒスチジンタグを介して磁気ビーズ上 の活性化基への共有結合の形成による。

 本発明の固体支持体に用いられる担体の 状としては、特に限定されるものではない 、粒状、棒状、板状、シート、ゲル、膜、 維、毛細管、ストリップ、フィルターなど 挙げられ、好ましくは粒状である。粒状担 、例えばビーズは、結合能力が大きいため 一般に好ましく、特にポリマーのビーズが ましい。

 本発明の固体支持体に用いられる担体は 子状であることが好ましく、粒子状の形態 しては、例えば球形、楕円体形、錐体、立 形、直方体形などが考えられる。このうち 形粒子の担体は製造がしやすく、各種精製 程において、固体支持体の回転撹拌がしや いことからも好ましい。細胞を結合させる 体支持体としての担体のサイズは、平均粒 径として0.5~10μm、好ましくは2~6μmであるこ が好ましい。平均粒子径が0.5μm未満である 合、該担体が上述のように磁性体を含有し なるものは、充分な磁気応答性を発現せず 該担体を含む固体支持体を分離するために 当に長い時間を要し、また、分離するため 相当に大きい磁力が必要となる。一方、平 粒子径が10μmを超える場合には、該担体が 性媒体中で沈降しやすいものとなるため、 胞を捕捉する際に水性媒体中を撹拌する操 が必要となる。また、担体の質量当たりの 面積が小さくなるため、充分な量の細胞を 捉することが困難となることがある。なお 本明細書中において、「粒子径」とは、粒 の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最 の距離Lを意味する。また、「平均粒子径」 の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過 電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数~数 視野中に観察される粒子の粒子径の平均値 して算出される値を採用するものとする。

 本発明の固体支持体は、上記ポリペプチ を上記担体の表面に固定化することによっ 製造できる。固定化の方法は、従来公知の 術を適用することによる。固体支持体の好 しい形態のうち、ポリペプチドとしてMDP1を 用い、担体として磁気ビーズを用いる場合に おいては、例えば、磁気ビーズのトシル基に 、ヒスチジンタグを介してペプチドを共有結 合させることにより固定化させる。磁気ビー ズのコバルトあるいはニッケルと、ヒスチジ ンタグとを配位結合させて固定化することも できる。または磁気ビーズのトシル基あるい はエポキシ基にポリペプチドのアミノ基を共 有結合させることで固定化してもよい。水溶 性カルボジイミドなどの脱水縮合剤の存在下 、該ポリペプチド分子のアミノ基を支持体表 面に露出するカルボキシル基(アンカーされ 無水マレイン酸など)に反応させてアミド結 を形成することにより該ポリペプチドを固 化することができる。ポリスチレンにアン ーされた活性マレイミド基とタンパク質の ルフヒドリル基とのチオエーテル結合形成 もよい。あるいはポリスチレン系のラテッ ス粒子に該ポリペプチドを物理的に吸着さ る方法でもよい。なお、担体上に固定化す ポリペプチド量やポリペプチドの種類を当 者が選択することによって、固体支持体に 合させる細胞または核酸の量や特異性を適 変更することができる。

 [細胞の単離方法]
 本発明の細胞の単離方法は、上記細胞結合 固体支持体と、ミコール酸含有糖脂質を細 壁に有する細菌細胞を含む試料とを接触さ る段階を含むことを特徴とする。本発明の 胞の単離方法によると、ミコール酸含有糖 質を細胞壁に有する細胞を単離することが きる。細胞は、ミコール酸含有糖脂質を細 壁に有する細胞であれば特に制限はないが 例えば、病原性抗酸菌細胞であることが好 しい。「病原性抗酸菌」(以下、単に「抗酸 菌」とも称する)は、抗酸菌(Mycobacterium sp.)に 属するグラム陽性菌で病原性を有する細菌で ある。特にマイコバクテリウム(Mycobacterium属) に属する微生物細胞の単離に好適である。結 核菌群およびMycobacterium leprae(らい菌)以外の 養可能な抗酸菌は、非定型抗酸菌(atypical My cobacteria)と呼ばれることもある。

 抗酸菌のうち、本発明では特に結核菌群( M.tuberculosis complex)、すなわち結核菌(Mycobacteri um tuberculosis、ヒト型結核菌)、ウシ型結核菌( M.bovis、ウシ型菌、ウシ菌)、マイコバクテリ ム・アフリカンス(M.africans)、ネズミ型結核 (M.microti)の4菌種を対象とする。いずれも遅 育菌群であり、またその遺伝子も極めて類 しているため、遺伝学上は区別できない。 れら以外にもエム・アビウム(M.avium)、エム イントラセルラレエ(M.intracellularae)、エム・ ケロネエ(M.chelonae)、エム・マリヌム(M.marinum) パラ結核菌(M.paratuberculosis)は、疫学的およ 臨床的観点から重要である。

 本発明の細胞の単離方法は、試料液中に まれる病原性細菌、例えば、病原性抗酸菌 胞を、上記の固体支持体、好ましくは磁気 ーズなどの磁性担体を含む磁性固体支持体 結合させ、該細胞を試料液、不純物から分 して病原性抗酸菌細胞を単離するものであ 。

 試料は、上記細菌細胞を含有する生体由 の試料であれば、特に制限はないが、生物 来の検体、培養液もしくは細胞含有溶液が 当する。生物由来の検体としては、例えば 血、血漿、血清、バフィーコート、尿、糞 、唾液、喀痰、脳脊髄液、精液、組織(例え ば、癌組織、リンパ節等)、細胞培養液(例え 、細菌培養物等)もしくは細胞含有溶液など 生体由来のほとんどの試料が該当する。試料 の形態は、好ましくは流体の試料であり、通 常は溶液もしくは懸濁液などの液体である。

 本方法におけるその具体的な操作手順は 上記固体支持体として磁性固体支持体を使 する次の態様が例示されるが、これに限定 れるものではない。細胞含有試料と磁性担 (好ましくは磁性ビーズ)を含む磁性固体支 体とを混ぜて撹拌し、試料液中の病原性抗 菌細胞を、その磁性担体表面に固定化され ポリペプチド(好ましくはMDP1)に結合させる その際、磁性固体支持体への該細胞の結合 促進するために、適当な結合バッファーを 用してもよい。上記磁性固体支持体を試料 から固液分離すれば、試料中に含まれる不 物、不要物などが分離除去され、病原性抗 菌細胞が表面に固定化されたポリペプチド 結合した磁性固体支持体が得られる。

 次いで、該磁性固体支持体を洗浄バッフ ーとともに撹拌し、洗浄する操作、引き続 て再び固液分離操作をすることにより、磁 固体支持体に付着する不純物をさらに除去 ることが好ましい。このように本発明の方 において固液分離の過程が含まれる。その の固液分離の方法については特に制限はな が、例えば、遠心分離操作や、磁気作用を 用した方法が挙げられ、磁気作用により行 れることが好ましい。より好ましくは、そ 磁性固体支持体を含む容器に外部磁石によ 磁気を作用させることにより、完全閉鎖系 固液分離が実施される。該方法によれば、 作は遠心分離操作よりも簡便で、コンタミ ーションの虞もない。

 固体支持体が磁気ビーズを用いた磁性固 支持体である場合、磁性固体支持体を試料 と混合する前、混合した後、磁性固体支持 の洗浄時のうち、少なくともいずれかの段 において懸濁させることが好ましい。この うに懸濁させる意義は、次の通りである。 合する前においては、磁性固体支持体は、 存中に担体である磁気ビーズ同士の磁力作 で凝集してしまう。そこで懸濁によって磁 固体支持体を分散させると、試料液と混合 る際に磁性固体支持体と細胞との接触表面 、接触回数が増大する。試料と混合した後 も懸濁状態を保つと、懸濁によって試料液 で磁性固体支持体が分散し、磁性固体支持 と細胞との接触表面積、接触回数が増える また洗浄時にあっては、懸濁によって洗浄 ッファー中で磁性固体支持体が分散し、洗 バッファーの洗浄有効物質と磁性固体支持 中の磁気ビーズ(その表面に細胞が付着して いる)との接触表面積、接触回数が増える。 れらの効果によって、それぞれの段階で試 液から細胞、核酸を分離し、回収できる量 純度の向上が期待される。

 [核酸の抽出方法]
 本発明の核酸の抽出方法は、上記細胞結合 固体支持体と、ミコール酸含有糖脂質を細 壁に有する細菌細胞を含む試料とを接触さ て細胞を単離する段階および単離した細胞 の核酸を抽出する段階とを含むことを特徴 する。

 本方法における、上記固体支持体と、ミ ール酸含有糖脂質を細胞壁に有する細菌細 を含む試料とを接触させて細胞を単離する 階は、上述の細胞の単離方法で用いた方法 同様の方法を用いることができるので、こ では説明を省略する。その後の、単離した 胞内の核酸を抽出する段階は、細菌細胞を 体支持体に結合させた状態で、超音波処理 加熱、または化学試薬処理などによりその 胞壁および細胞膜や核膜などの生体膜を破 (溶菌)して核酸を細胞外に放出させ、細胞 が結合した固体支持体を取り除き、残りの 液を核酸溶液として分離回収するものであ 。この方法ではろ過、減圧処置といった操 を含まず、簡便かつ迅速に核酸を単離する とができる。さらに、磁性支持体を用いた 合は遠心分離操作を行わずに固液分離が可 である。

 前記の細胞壁および生体膜の破壊は、公 の様々な物理的方法または化学的方法を用 ることができる。物理的方法には、超音波 射法、凍結・溶融法、加熱法などがあり、 学的方法として化学試薬を用いる処理、例 ば酵素消化法、カオトロープ試薬、界面活 剤または溶菌剤などによる変性法などが知 れている。特開平06-319527号公報の表1および 2には、マイコバクテリウムなどの細胞を溶 するための様々のプロトコールがまとめら ている。

 本発明の方法では、溶菌処理として超音 照射法、凍結・溶融法、加熱法などの物理 方法、または化学試薬処理あるいはこれら 組み合わせにより細胞膜破壊が行われるこ が好ましい。特に、物理的な方法は操作が 便であり、化学試薬処理のように細胞膜破 に使用した薬剤(カオトロープ試薬、界面活 性剤、または溶菌剤など)を後で除く必要が いため、望ましい。後工程で行われる反応 処理に悪影響を及ぼすそのような薬剤を使 しなければ、単離された核酸は、そのままDN A増幅反応、ハイブリダイゼーション、制限 素反応、検出反応または電気泳動分析など 適用することができる。したがってサンプ 量が微量であっても、本発明の方法によれ 、細胞から核酸を高収率で単離することが きる。

 上記の超音波処理または加熱処理、超音 および加熱の併用処理は、溶菌に有効な処 条件であり、少なくとも核酸が、超音波ま は熱により変性しない範囲で行う。超音波 理の場合、溶菌に有効である超音波の照射 件、照射時間を適宜設定する。照射量は、 用する超音波分散機の定格出力、照射する 濁液の量、照射する時間から計算すること できる。例えば、超音波強度は、製剤の容 、撹拌条件などによって選択されるが、周 数10~100kHz、好ましくは15~45kHzの超音波を、 なくとも5分間、好ましくは5~30分間程度照射 することが好ましい。加熱処理の場合、その 温度範囲、すなわち70~120℃、好ましくは80~120 ℃、さらに好ましくは80~100℃で、20秒~10分間 好ましくは20秒~300秒間の加熱による。加熱 件(温度、時間)は細胞または菌の種類(大き 、細胞膜の組成と厚さなど)によって異なる ため、上記の範囲で適宜選択する。加熱は、 あらゆる適切な加熱手段により行われるが、 ドライ・ヒートブロック、湯浴、マイクロウ ェーブ・オーブン、各種ヒーターなどが例示 される。しかし、これらに限定されるもので はない。前記病原性抗酸菌細胞を溶解して核 酸を遊離させるためのより好ましい処理は、 加熱および超音波照射の処理による態様であ る。超音波照射と加熱を組み合わせた併用処 理では、上記のそれぞれの処理条件よりもさ らに温和な条件で溶菌が達成できる。

 [核酸の精製方法]
 本発明の核酸の単離方法は、上記核酸結合 固体支持体と、核酸を含む試料とを接触さ る段階を含むことを特徴とする。

 本発明の単離方法の対象とする核酸は、DNA たはRNAであり、DNAとしてゲノムDNA、cDNAなど 、またRNAとしてmRNA、t RNA、r RNAなどが含ま る。さらには一本鎖または二本鎖を問わな 。単離されるDNA量は、0.0005ng~2mg、好適な範 として0.001ng~1mg(200~2×10 11  copies)である。

 精製の対象とする核酸を含む試料として 、細胞溶解により抽出された核酸を含む溶 、電気泳動後の泳動ゲル中から抽出された 酸を含む溶液、酵素反応後の核酸含有溶液 どが該当する。ここで細胞溶解により抽出 れた核酸を含む溶液とは、生物由来の検体 培養液もしくは細胞含有溶液から抽出され 核酸を含む溶液であって、細胞膜破壊処理 より遊離してきた核酸が存在している。生 由来の検体は特に限定されず、広く生物起 の材料、生体からの試料など、細胞(細菌細 胞、真菌細胞、植物細胞、動物細胞など)を む被験物が挙げられる。培養液は、微生物 細胞、組織などを培養した培養液である。 た、酵素反応後の核酸含有溶液における酵 反応とは、酵素反応として特に限定されな が核酸が基質などとして関与する酵素反応 あり、その結果生じる反応溶液には核酸ま はその断片が含有されている。例えば制限 素、逆転写酵素、DNAポリメラーゼなどを使 する酵素反応である。

 本発明において、上記核酸はGCリッチな 酸であることが好ましい。ここで「GCリッチ な核酸」とは、GCに富む核酸、換言するとGC 量が高い核酸をいい、特にGCリッチ(rich)な配 列を多く含む核酸が該当する。GC含量は核酸 塩基組成を表す場合、GとCが全体の中で占 る割合(%)をいう。DNAのGC含量は生物ごとに異 なり、高等動物では42%を中心とした狭い範囲 の値をとる。核酸塩基としてGとCが多く含ま る遺伝子には細胞の生存に必要な基本的な 伝子が多いとされる。GCリッチな配列は、 象とする核酸の塩基配列において、部分的 G(グアニン)とC(シトシン)の含量が高い配列 いう。具体的にはGC含量が60%以上、好ましく は70%以上、特に好ましくは80%以上である。例 えば遺伝子のプロモーター領域に多い「CpG島 」が示される。しかしながら、必ずしも「CpG 島」のようにグアニン(G)とシトシン(C)が隣り 合っている配列でなくともよい。

 本発明の核酸の単離方法に従えば、「核 結合タンパク質」として予め「核酸結合能 持つタンパク質」を選定しておくことによ 、核酸結合タンパク質が認識する特異的な 基配列を含む核酸またはその断片を「該タ パク質に結合する核酸」として探索するこ ができる。この場合、結合する核酸は、非 異的な相互作用に基づいて結合することも るが、特異的なタンパク質結合部位(protein-b inding site)を有する核酸であってもよい。

 本発明の核酸の単離方法の好ましい態様 、生物由来の検体、培養液もしくは細胞含 溶液に含まれる細胞の細胞膜破壊により細 溶解して抽出された核酸、電気泳動後の泳 ゲル(例えばアガロースゲル、ポリアクリル アミドゲルなど)から抽出された核酸、また 酵素反応後の核酸含有溶液中の核酸を前記 体支持体と接触させることにより、その表 上のMDP1に結合させ、該核酸を回収して精製 ることを特徴とする方法である。さらに好 しい態様では、磁性固体支持体表面のMDP1に 結合した核酸を、磁石、磁気選別機などの手 段によって固液分離することにより、細胞膜 、その他の細胞内成分、アガロースゲル成分 もしくはポリアクリルアミドゲル成分、また はタンパク質などの夾雑物、さらに化学試薬 を含んでいる溶解バッファーから分離し、所 望する核酸を分離して精製することができる 。この方法による核酸の精製では、核酸を捕 捉した固体支持体を洗浄する操作、捕捉され た核酸を固体支持体から溶離する操作におい て、遠心分離、ろ過、デカンテーションなど の代替として、磁気作用を利用した固液分離 をする。遠心分離、ろ過、減圧処置といった 操作を含まないために、簡便かつ迅速に核酸 を単離・精製することができる。

 本発明の好ましい態様としては、上記の 胞の単離、核酸の抽出、核酸の精製方法を み合わせて病原性細菌細胞を含む試料から 酸を精製する方法すなわち、ミコール酸含 糖脂質との結合能を有するポリペプチドが 体表面に固定化されてなる固体支持体と、 コール酸含有糖脂質を細胞壁に有する細菌 胞を含む試料とを接触させて細胞を単離す 段階、単離した細菌細胞の核酸を抽出する 階、および核酸との結合能を有するポリペ チドが担体表面に固定化されてなる固体支 体と、核酸を含む試料とを接触させる段階 含む、核酸の単離方法が挙げられる。本方 によると、固体支持体に結合したまま核酸 抽出および抽出された核酸の精製を連続的 進めることができる。細胞の単離、核酸の 出、核酸の精製の各段階の好ましい操作方 は上述の通りであるので、ここでは説明を 略する。

 本方法の好ましい態様としては、固体支 体のMDP1に病原性抗酸菌細胞を結合させた後 、物理的方法または化学的方法などにより結 合している該細胞を溶解して核酸を遊離させ 、固体支持体のMDP1に結合させて分離する核 の精製方法が挙げられる。核酸の精製に用 る固体支持体は、細胞の単離に用いたもの 再度核酸の精製に用いてもよいし、別の固 支持体を用いてもよい。すなわち、試料に まれる細胞を固体支持体に一旦結合させ、 いで細胞溶解によって遊離する核酸を同一 または別の固体支持体上に回収する態様で ってもよい。

 上記病原性抗酸菌を結合した磁性固体支 体を溶解バッファーに懸濁させ、必要であ ばさらに加熱、超音波などの変性処理によ て細胞膜を破壊する。該細胞から遊離し、 性固体支持体表面のMDP1に結合した核酸を、 上記手段によって固液分離することにより細 胞膜、その他の細胞内成分、さらに化学試薬 を含んでいる溶解バッファーから分離し、所 望する核酸を単離することができる。しかし ながら、細胞の単離、核酸の抽出、核酸の精 製の各段階の具体的な方法については、上記 の形態に制限されることなく、上述したいか なる方法をも適宜採用することができる。こ の方法では遠心分離、ろ過、減圧処置といっ た操作を含まないために、簡便かつ迅速に核 酸を単離・精製することができる。

 本方法により、細胞から核酸を抽出した に、電気泳動などにより目的の核酸を抽出 る工程を含む場合には、電気泳動に用いた ガロースゲルの溶解は、公知の化学試薬と 熱処理によって行うことができる。本発明 方法では、Promega社のPCR purification kitを用 て、60℃で加熱処理することが好ましい。な お、核酸の抽出後に遊離した核酸を固体支持 体上のMDP1が効果的に捕捉する条件を設定す 必要がある。この段階に先立ち、例えば固 支持体を含む懸濁液全体を透析することに り、細胞膜破壊に使用した上記溶解バッフ ー、アガロースゲル溶解液あるいは酵素反 溶液を除去してもよい。固体支持体上のMDP1 結合して残留している核酸を洗浄して不要 を除き、次いで固体支持体から分離するこ によって精製された核酸は、そのままDNA増 反応、ハイブリダイゼーション、制限酵素 応、検出反応または電気泳動分析などに適 することができる。したがって試料量が微 であっても、本発明の方法によれば、細胞 ら高収量でしかも純度が高い核酸を単離す ことができる。具体的には、前記の細胞膜 壊処理は、溶菌に有効な処理条件であり、 たアガロースの溶解処理は、アガロース溶 に有効な処理であり、少なくとも遊離する 酸が変性しない範囲である。固体支持体か 核酸を溶出するには、低イオン強度の溶媒 緩衝液を固体支持体に作用させ、必要なら 温する。核酸溶出のための温度は、好まし は50~90℃、より好ましくは70~80℃である。こ のような溶出液としては、水、トリス塩酸緩 衝液、リン酸緩衝液などが例示される。溶出 された核酸は、上記固液分離操作などにより 固体支持体を除去して回収される。

 上記の核酸精製方法により得られた核酸 、PCR、SDA、LCR、LAMP、TMA、TAS、3SR、NASBAなど DNA増幅法に用いたり、例えば塩基配列決定 ハイブリダイゼーション法、サザンブロッ 分析などの解析に用いたりすることもでき 。

 本発明の核酸の単離方法は、上述の具体 な記載に限定されるものでなく、任意の核 結合タンパク質と任意の核酸との結合に基 く単離精製をする際にも利用可能であるこ はいうまでもない。

 [キット]
 本発明に係るキットは、ミコール酸含有糖 質および/または核酸との結合能を有するポ リペプチドが、担体表面に固定化されてなる 固体支持体を含む。該キットは、本発明の細 胞の単離方法、核酸の抽出方法、または核酸 の単離方法あるいはこれらを組み合わせた核 酸の単離方法に使用されうる。このため、該 キットは、本発明の固体支持体の他にも、本 発明の方法を実施するために必要とされる器 材一式、具体的には、各種試薬、固体支持体 (好ましくは磁気担体を含む固体支持体)、細 単離および核酸抽出・精製に必要な器具を みうる。これらの試薬の中には、試料を溶 (または希釈)するための溶解(または希釈)液 、洗浄液、各種の緩衝液なども含まれる。本 発明の方法を実施するための磁気ビーズ、結 合バッファー、細胞洗浄バッファー(細胞洗 液)、溶解バッファー(再懸濁液)、核酸洗浄 ッファー(核酸洗浄液)、核酸溶出バッファー (溶出液)がそれぞれ容器に予め封入されてい 態様のキットが好ましい。必要な器材一式 中には、さらに細胞を固体支持体に付着も くは結合させ、その細胞膜を破壊して内部 含まれる核酸を抽出する専用の器具を、キ ト要素として含めてもよい。これらの器具 用いて上記の本発明の核酸抽出・精製方法 実施することができる。

 後述する本発明の方法を実施するために 上記以外の用具または機器を必要とするこ もあるが、これらは適宜、本発明のキット 構成要素として含められる。固液分離には 気選別機を使用するが、遠心分離機を利用 てもよく、その場合小型遠心機などを使用 る。

 本発明の細胞の単離方法または核酸の抽 方法では、少なくとも2種の緩衝液が使用さ れる。結合バッファーは、塩として塩化ナト リウム、酢酸カリウム、またEDTA、界面活性 などを含んでもよいリン酸系、酢酸系、ト ス系、またはHEPES系の緩衝液が挙げられ、例 えばPBS、TBS、HBSが示される。洗浄バッファー は、上記結合バッファーを4~5倍に希釈したも のを用いてもよいが、異なる種類のバッファ ーを別途に用意してもよい。溶解バッファー としては、水または緩衝液、または塩を含有 する緩衝液が例示され、特にTE緩衝液が好適 ある。上記のように、本キットには、従来 術において核酸抽出に用いられてきたクロ ホルム、フェノールなどの有機溶媒、カオ ロープ試薬、溶菌剤などを含まないことが ましいが、必要によってはこれらの試薬を 宜採用することも可能である。

 また、上記細胞の単離、核酸の抽出、核 の精製方法を組み合わせて病原性細菌細胞 含む試料から核酸を精製する方法では、少 くとも4種の緩衝液が使用される。結合バッ ファーは、塩として塩化ナトリウム、酢酸カ リウム、またEDTA、界面活性剤などを含んで よいリン酸系、酢酸系、トリス系またはHEPES 系の緩衝液が挙げられ、例えばPBS、TBS、HBSが 示される。細胞洗浄バッファーは、上記結合 バッファーを4~5倍に希釈したものを用いても よいが、異なる種類のバッファーを別途に用 意してもよい。溶解バッファーとしては、SDS などを含むPBS、TBS、HBSなどが例示され、特に 核酸がMDP1と結合するのに最適なものが良い 核酸洗浄バッファーは、上記溶解バッファ を4~5倍に希釈したものを用いてもよいが、 なる種類のバッファーを別途に用意しても い。核酸溶出バッファーとしては、水また 緩衝液、または塩を含有する緩衝液が例示 れ、特にTE緩衝液が好適である。上記のよう に、本キットには、従来技術において核酸抽 出に用いられてきたクロロホルム、フェノー ルなどの有機溶媒などは含まないことが好ま しいが、必要によってはこれらの試薬を適宜 採用することも可能である。

 必要な器具一式と試薬類を一つのセット して、本発明の核酸抽出・精製方法専用の ットを構成する。いずれの用具も通常は1回 分析用の消耗品として構成されることが好ま しい。バッファーなどを含む容器は予め滅菌 処理され、雑菌の汚染を防止することが好ま しい。

 本発明の方法を実施する際には、上記の 耗品とともに撹拌のためのミキサー、撹拌 、加熱するためのヒーターもしくは超音波 生器、磁気処理による固液分離に使用する 石、磁気選別機なども使用される。具体的 は、撹拌は試験管ミキサーによる振動、ま は容器を回転する転倒混和が好ましく、磁 は棒磁石であってもよい。磁石の種類は電 石、永久磁石のどちらでもよいが、簡便性 操作性から永久磁石、特に磁力の強さから オジム磁石が好ましい。

 これらは、通常、検査室に備えられてい 機器であり、それらの機器を本キットとと に使用して本発明方法を実施することがで る。さらに必要であれば、そうした機器の 部をキットの構成物として含めてもよい。

 上記固体支持体、キットの全体または一 についても、構造、構成、配置、形状形態 寸法、材質、方式、方法などを本発明の趣 に合致する限り、種々のものにすることが きる。

 予め特定の「核酸結合タンパク質」を選 して、「該タンパク質を結合する核酸」を 索する場合、「核酸」は、前記「核酸結合 ンパク質」を特異的もしくは非特異的に結 することが予測される任意の核酸であり得 。本発明のこのような局面において、上記 キットおよび核酸単離方法を利用して、目 とする核酸または特異的な遺伝子の効率的 探索にも供することができる。また、DNA-タ ンパク質相互作用を標的とする化合物、タン パク質および試薬のスクリーニングのために も利用することができる。この場合、特定の DNA-タンパク質相互作用に対して影響を及ぼ 作用は、DNAの結合量の測定で評価すること できる。

 本方法の一例として、GCリッチな塩基配 を有するDNAもしくは遺伝子の探索に利用す 態様がある。GCリッチな配列を有する遺伝子 の遺伝子産物は、サイトカイン、成長因子、 キナーゼ、転写因子など重要な生理的意義を 持つものが多い。また、上記の「CpG島」メチ ル化現象は、遺伝子の転写活性調節と発現制 御に関与し、また疾患と治療に関わるSNP(一 基多型)解析にも関係してくる。さらに「ト プレットリピート病」という遺伝子レベル 規定される疾病に関係する既知のトリプレ トにGとCが占める割合が高い。このようにGC リッチな塩基配列、リピート配列を有するDNA もしくは遺伝子(「GCリッチ遺伝子」)の調査 研究は、ゲノム機能と調節、疾患、再生医 、発生、老化などの分野で極めて重要な位 を占めている。それにもかかわらず、GCリッ チな塩基配列を有する核酸、遺伝子の研究は 、強固な2次構造や配列多様性の低下による いホモロジーが原因となり、増幅効率の低 、プライマーにおける制約、塩基配列解析 おける障害、低い翻訳効率、SNP検出効率の 下などの障害に直面する。本発明の精製方 およびキットは、G、C塩基を認識するMDP1な を利用するために、GCリッチ核酸のスクリー ニングおよびその単離が容易であり、また特 異的な遺伝子の探索と同定にも有用である。

 本発明の作用効果を、以下の実施例を用 て説明する。ただし、本発明の技術的範囲 以下の実施例のみに制限されるわけではな 。

 [実施例1]
 <MDP1の調製および磁気ビーズへの固定化&g t;
 (MDP1タンパク質)
 MDP1タンパク質(以下「MDP1」)は、BCG東京株( 下「BCG」)より特許文献2に記載された方法に 従って調製した。その概要は次の通りである 。

 BCGは、50mlTMNSH(10mMトリス-HCl pH=7.5、10mM MgCl 2 、60mM NH 4 Cl、および6mM 2-メルカプトエタノール)に再 濁し、超音波により破砕した。30000gで2時間 心分離して得たペレットを、0.25N HClに4℃ 終夜撹拌することにより再懸濁し、20000gで20 分間遠心分離した。上清に0.1倍量の100%(w/v)TCA を激しく撹拌しながら加えた。4℃で4時間静 して形成した沈殿を遠心分離により回収し アセトン(20ml)に0.01mlの濃塩酸を加えた酸性 セトンで1回洗浄し、アセトンで2回洗浄し 真空デシケーターで乾燥した。乾燥された 殿を0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)に再懸 濁した。次に、酸可溶性タンパク質を0.2Mリ 酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)中のグアニジン塩 塩GdnClの直線グラジエントによりファース フローカラム(ベッドボリューム5mL、HiTrap CM  FF、GEヘルスケア バイオサイエンス株式会 製)を用い、室温でクロマトグラフィーにか けて分画した。グラジエントは、それぞれ0% よび5%GdnCl溶液(15mL)を充填したグラジエント 装置で行った。流速を1mL/minに維持し、1mLの フラクションを集めた。精製されたMDP1を含 フラクションを、5%GdnClを含む0.2Mのリン酸 衝液に対して透析し、濃縮した。最後に、 ルろ過クロマトグラフィーカラム(HiLoad 16/60  Superdex 200pg、GEヘルスケア バイオサイエン ス株式会社製)によりさらに精製した。タン ク質の純度は220nmの吸光度の測定またはSDS-PA GEによる分析でモニターした。

 MDP1は、インビトロジェン株式会社製の磁 気ビーズであるエポキシ基活性化ビーズ(Dynab eads M-270)のエポキシ基に、MDP1中のアミノ基 介して共有結合させることにより固定化さ た(MDP1-Epoxy BEADS)。MDP1タンパク質の固定化量 は、1~1.5μg/1mg BEADSであった。

 (組換えMDP1タンパク質)
 ヒスチジンタグを付加した組換えMDP1(rMDP1) 、以前報告された方法(Aokiら、J.Biol.Chem.、279 巻:39798~39806頁(2004年))に従って調製した。そ 概要は次の通りである。

 まず、rMDP1発現ベクター(pET22B-MDP1)を、大 菌のコンピテント細胞(BL21(DE3)pLysSコンピテ トセル、インビトロジェン株式会社製)に導 入し形質転換させた。この形質転換体を、50 g/mLのカルベニシリン(carbenicillin)と34μg/mLの ロラムフェニコールとを含むLB液体培地中、 22℃で培養し、600nmでの吸光度が0.3~0.6になっ とき、最終濃度が0.1mMになるようにIPTG(イソ プロピル-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド)を 加した。16時間培養することで、rMDP1を発現 せた。

 遠心分離で回収した該大腸菌を、超音波 細胞破砕装置(Bioruptor UCD-200T、東ソー株式 社製)により超音波処理を行うことによって 砕し、再び8000g、30分間の遠心分離を行った 後、上清を溶出タンパク質として回収した。 この上清を、メンブレンフィルター(0.22μm)に 通すことで、ゴミなどを除去した後、50mMの ン酸二水素ナトリウム(pH8.0)と、10mMのイミダ ゾールと、0.5MのNaClと、0.01%のTweenとにより平 衡化された金属キレートアフィニティークロ マトグラフィー担体(Ni-NTA Agarose、キアゲン 式会社製)に添加した。カラムを洗浄するこ で、非特異的に吸着しているタンパク質を り除いた後に、50mMのリン酸二水素ナトリウ ム(pH8.0)と、300mMのイミダゾールと、0.5MのNaCl 、0.01%のTweenとからなる溶出バッファーによ り、rMDP1を溶出した。その後、透析により、 溶出バッファーをPBSに置換した。SDS-PAGEし 後に、クマシーブリリアントブルー(CBB)染色 することで測定した結果、得られたrMDP1の濃 は、1mg/mLであった。

 rMDP1は、インビトロジェン株式会社製の 気ビーズ(Dynabeads M-TALON)のBD TALONに、ヒスチ ジンタグを介して配位結合させることにより 固定化させた(rMDP1-His-TALON BEADS)。rMDP1タンパ 質の固定化量は、30μg/1mg BEADSであった。

 [実施例2]
 <MDP1とrMDP1固定化磁気ビーズを用いた結核 菌(BCG)の回収>
 ルシフェラーゼ発現BCG(BCG-Luc)溶液50μl[5×10 4 cfu]を、結合バッファー(PBS)に懸濁した本発明 のMDP1-Epoxy BEADSもしくはrMDP1-His-TALON BEADS 7.5 gと攪拌混合した。一方で、同量のBCG-Lucを推 奨された溶液条件下において、Genpoint社の磁 ビーズBUGS’n BEADS version TB 7.5μgと50μl中 撹拌混合した。これを15分間、25℃で放置し 後、磁気選別機を用いて磁気ビーズと上清 分離することで、BCG-Lucを該磁気ビーズ上に 回収した。BCG-Lucの回収効率は、Luciferase assay  kit(Promega社)を用いて、菌数を測定すること より算出した。結果を表1に示す。

 MDP1-Epoxy BEADSは、Genpoint社磁気ビーズ(BUGS n BEADS)の2倍以上の集菌効率を示した。また 、rMDP1-His-TALON BEADSは、Genpoint社磁気ビーズの 4倍以上の集菌効率を示した。

 [実施例3]
 <MDP1固定化磁気ビーズを用いた結核菌(BCG) の回収と核酸抽出>
 BCG溶液50μl[7.5×10 4 cfu]を、結合バッファー(PBS)に懸濁した本発明 のMDP1-Epoxy BEADS 7.5μgと攪拌混合した。一方 、同量のBCGを推奨された溶液条件下におい 、Genpoint社の磁気ビーズBUGS’n BEADS version T B 7.5μgと50μl中で撹拌混合した。これを15分 、25℃で放置した後、磁気選別機を用いて磁 気ビーズと上清を分離することで、BCGを該磁 気ビーズ上に回収した。次いで、回収された BCGを溶解バッファー(TE)50μlに再懸濁し、10分 25℃で28kHzの超音波処理をすることで、細胞 を溶解し、DNAを抽出した。得られたDNA溶液を 定量PCRにかけることで核酸の抽出効率の比較 を行った。定量PCRはRoche社のマイコバクテリ ム核酸キット(コバスTaqMan MTB、ロシュ・ダ アグノスティクス株式会社製)を用いて行っ た。核酸抽出効率は、BUGS’n BEADSの回収効率 を1として算出した。結果を表2に示す。

 MDP1磁気ビーズによる核酸抽出効率は、Gen point社磁気ビーズの効率と比べ3倍以上だった 。

 [実施例4]
 <MDP1固定化磁気ビーズを用いた核酸精製&g t;
 プラスミドDNA溶液50μl[2×10 6 copies/μl]を、結合バッファー(PBS)に懸濁した 発明のMDP1-Epoxy BEADSもしくはMDP1を固定化し いないEpoxy BEADS(10mg/ml)7.5μlに添加し、撹拌 合し、これを15分間、25℃で放置した。その 、上清は磁気選別機を用いて、新たなチュ ブに採取した(Sup)。一方で、DNA-磁気ビーズ 合体を洗浄バッファー(PBS)で洗浄後、溶出 ッファー(ミリQ水+0.005%SDS)50μlに再懸濁し、5 間98℃で加熱することで、DNAを溶出した(Elut e)。得られたDNA溶液(Sup,Elute)を定量PCRにかけ ことで核酸回収量を算出した。定量PCRはRoche 社のマイコバクテリウム核酸キット(コバスTa qMan MTB、ロシュ・ダイアグノスティクス株式 会社製)を用いて行った。結果を表3に示す。

 MDP1を固定化した磁気ビーズを用いること で、核酸を回収することができた。