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Patent Searching and Data


Title:
SOLUTION COMPRISING BLENDED MATERIAL AND SOLVENT, FIBER COMPRISING THE BLENDED MATERIAL, SHEET-LIKE MATERIAL COMPRISING THE FIBER, METHOD FOR PRODUCTION OF THE FIBER, AND METHOD FOR PRODUCTION OF THE SHEET-LIKE MATERIAL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/143100
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed are: a solution comprising a blended material and a solvent, wherein the blended material comprises a resol resin having a weight average molecular weight of 3,000 to 50,000 and a poly(vinyl butyral) having a solution viscosity of 10 to 100 mPa•s blended in the resol resin in an amount of 0.5 to 5 wt% relative to the total weight of the blended material; a fiber comprising the blended material; a sheet-like material comprising the fiber; a method for producing the fiber; and a method for producing the sheet-like material. It becomes possible to improve the poor spinnability of a conventional resol resin and also improve the brittleness of a fiber produced from the resol resin. Thus, it becomes possible to provide a fiber and a sheet-like material both mainly composed of a resol resin and having improved handling properties.

Inventors:
OCHI TAKASHI (JP)
KAWAMATA CHIEKO (JP)
FUNATSU YOSHITSUGU (JP)
KAWASAKI SHINGO (JP)
ARITA YASUSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/058869
Publication Date:
November 27, 2008
Filing Date:
May 14, 2008
Export Citation:
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Assignee:
TORAY INDUSTRIES (JP)
SUMITOMO BAKELITE CO (JP)
OCHI TAKASHI (JP)
KAWAMATA CHIEKO (JP)
FUNATSU YOSHITSUGU (JP)
KAWASAKI SHINGO (JP)
ARITA YASUSHI (JP)
International Classes:
D01F6/76; C08L61/06; D01D5/04; D04H1/728
Domestic Patent References:
WO2005080679A12005-09-01
Foreign References:
JP2005256182A2005-09-22
JPS4811425B11973-04-13
JPH0913223A1997-01-14
Attorney, Agent or Firm:
BAN, Toshimitsu (Shinko Bldg. 1-9, Nishishinjuku 8-chome, Shinjuku-k, Tokyo 23, JP)
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Claims:
  重量平均分子量が3,000~50,000のレゾール樹脂に溶液粘度が10~100mPa・sのポリビニルブチラールをブレンド物全体に対し0.5~5重量%ブレンドしたブレンド物と溶媒から成る溶液。
 前記レゾール樹脂が触媒としてアミン系触媒を用いてなる、請求項1記載の溶液。
  レゾール樹脂に溶液粘度が10~100mPa・sのポリビニルブチラールをブレンド物全体に対し0.5~5重量%ブレンドしたブレンド物から成り、繊維径が0.001~10μmである繊維。
 前記レゾール樹脂が触媒としてアミン系触媒を用いてなる、請求項3記載の繊維。
  請求項3記載の繊維を含むシート状物。
  請求項1記載の溶液を、0.1~3kV/cmの電場でエレクトロスピニングする、繊維の製造方法。
  請求項1記載の溶液を、0.1~3kV/cmの電場でエレクトロスピニングし、繊維化するとともに、該繊維をシート状に捕集する、シート状物の製造方法。
Description:
ブレンド物と溶媒から成る溶液 よびブレンド物から成る繊維とその繊維を むシート状物ならびにそれら繊維およびシ ト状物の製造方法

  本発明は、曳糸性や脆性が改善された ゾール樹脂を主体とするブレンド物から成 繊維およびシート状物に関するものである

  近年、繊維材料の産業資材への適用が んでいるが、耐薬品性に優れ、さらに高温 曝されても溶融しない不溶不融の耐熱繊維 よびそれからなる耐熱シートが注目されて る。

  このような耐熱シートとしてはメタア ミド繊維から成る紙が広く用いられている 、高価であるという問題点があった。一方 低コストの耐熱ポリマーとしては、架橋型 ポリマーが適していると考えられ、特許文 1などに記載されているようにメラミン繊維 ども検討されたことがあった。しかしなが 、湿式紡糸の溶液処理などの設備費がかさ ことや架橋処理が煩雑なことから、事業と て広がらなかったようである。

  一方、活性炭繊維の原料として、やは 耐熱ポリマーとしてフェノール樹脂を用い 繊維が特許文献2などに記載されている。フ ノール樹脂はフェノールをメチロール成分 どで架橋することで、耐薬品性や耐熱性を 上させ不溶不融とするものである。フェノ ル樹脂は熱可塑型のノボラック樹脂と熱硬 型のレゾール樹脂に大別される。ノボラッ 樹脂は繊維化後改めて溶液中などで架橋剤 より架橋させて硬化させる必要があるが、 ゾール樹脂は熱処理のみで硬化が可能であ 、実際の生産プロセスを考えた場合には、 ゾール樹脂を選択することが好ましい。し しながら、レゾール樹脂は分子量が比較的 いことから、曳糸性が極めて低く、レゾー 樹脂単体では繊維化が難しい物であった。 らに、繊維にできたとしても非常に脆く、 げが不可能であり、非常に扱いづらいとい 致命的な欠点があった。

  以下、フェノール樹脂の繊維化に関す 従来技術について述べる。特許文献3には、 ゾール樹脂を島成分にポリビニルアルコー (以下、PVAと略称することもある。)などを 成分とした海島ブレンド繊維を得、これか 海ポリマーを除去することでレゾール樹脂 ら成る繊維を得ることが記載されている。 かし、これはレゾール樹脂単体から成る繊 であるので、非常に脆く取り扱い性が悪い であった。また、海ポリマーを除去する工 が必要なため、これがコストアップの要因 なっていた。

  また、特許文献4にはノボラック樹脂と ゾール樹脂の混合物をエレクトロスピニン (以下、ESPと略称することもある。)するこ で、ノボラック樹脂とレゾール樹脂のブレ ド物の極細繊維から成るシートを得ること 記載されている。これも、取り扱い性に劣 物であった。

  さらに、非特許文献1にはノボラック樹 の脆さを改善するためにポリビニルブチラ ルを少量ブレンドした物をESPすることが記 されている。これは取り扱い性は向上して るようであったが、ノボラック樹脂を用い いるため、実際の生産プロセスを考えた場 には、溶液中で架橋するための処理が必要 あり、設備が煩雑でしかも高コストであり 生産効率にも劣るものであった。

  このように、低コストでしかも脆さが改 され取り扱い性に優れたレゾール樹脂系の 維やシート状物は未だ得られていなかった

特開平10-317286号公報

特開2005-105452号公報

特開2004-43997号公報

特表2006-526085号公報 第61回繊維学会年次大会予稿集、p357(2006)

  そこで本発明の課題は、従来のレゾー 樹脂の低曳糸性を改善し、さらに得られた 維の脆さを改善することで取り扱い性も向 できるレゾール樹脂を主体とする繊維およ シート状物、それらを製造するためのブレ ド物と溶媒から成る溶液、および繊維およ シート状物の製造方法を提供することにあ 。

  上記課題を解決するために、本発明に るブレンド物と溶媒から成る溶液は、重量 均分子量が3,000~50,000のレゾール樹脂に溶液 度が10~100mPa・sのポリビニルブチラールをブ ンド物全体に対し0.5~5重量%ブレンドしたも からなる。上記レゾール樹脂としては、触 としてアミン系触媒を用いてなるものが好 しい。

  また、本発明に係る繊維は、レゾール 脂に溶液粘度が10~100mPa・sのポリビニルブチ ールをブレンド物全体に対し0.5~5重量%ブレ ドしたブレンド物から成り、繊維径が0.001~1 0μmであるものからなる。上記レゾール樹脂 しては、触媒としてアミン系触媒を用いて るものが好ましい。また、重量平均分子量 3,000~50,000のレゾール樹脂を用いることが好 しい。

  また、本発明に係るシート状物は、上 の繊維をシート状の形態にて含むものから る。

  また、本発明に係る繊維の製造方法は 上記のブレンド物と溶媒から成る溶液を、0. 1~3kV/cmの電場でエレクトロスピニングする方 からなる。

  さらに、本発明に係るシート状物の製 方法は、上記のブレンド物と溶媒から成る 液を、0.1~3kV/cmの電場でエレクトロスピニン し、繊維化するとともに、該繊維をシート に捕集する方法からなる。

  本発明に係るレゾール樹脂とポリビニ ブチラールのブレンド物を含む溶液および レンド物から成る繊維、該繊維を含むシー 状物によれば、従来レゾール樹脂で問題と っていた曳糸性の悪さを改善するとともに 維の脆さを改善し、低コストで取り扱い性 優れた耐熱繊維、耐熱シートを得ることが きる。これら繊維、シート状物は、適切な 度の電場でのエレクトロスピニングにより 効率よく製造することができる。

実施例4のシート状物の表面をSEMで観察 した結果を示す図である(ビーズ無し)。 実施例1のシート状物の表面をSEMで観察 した結果を示す図である(ビーズ若干有り)。 比較例1におけるSEMで観察した結果を示 す図である。

  以下に、本発明について、望ましい実施 形態とともに詳細に説明する。
  本発明で言うフェノール樹脂とは、フェ ールおよび/またはフェノール誘導体(以下、 フェノール類と総称する)を構成単位とする リマーであり、通常適切な架橋成分を含有 る。フェノール樹脂は成形後適切な架橋処 により、硬化され耐薬品性や耐熱性に優れ 不溶不融物とすることができる。フェノー 樹脂は、熱可塑型のノボラック樹脂と熱硬 型のレゾール樹脂に大別されるが、ノボラ ク樹脂は成形後改めて溶液中などで架橋剤 より架橋させて硬化させる必要があるが、 ゾール樹脂は熱処理のみで硬化が可能であ 、実際の生産プロセスを考えた場合には、 ゾール樹脂を選択することが重要である。

  本発明で言うレゾール樹脂とは、フェ ール類に加熱によって架橋反応を起こす官 基または置換基が導入されたモノマーまた ポリマーの混合物を言う。このため、熱処 のみで硬化が可能という利点を有する反面 曳糸性に劣り、紙や多孔体の含浸ポリマー してや、接着成分として用いられることが い。また、ポリマー自身が非常に脆いとい 欠点がある。

  レゾール樹脂は、通常、フェノール類 アルデヒド類とを塩基性触媒存在下で反応 せて得られるものである。前記フェノール としては、特に限定はないが、例えば以下 ような物を例示することができる。すなわ 、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール p-クレゾール等のクレゾール、2,3-キシレノ ル、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2, 6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシ ノール等のキシレノール、o-エチルフェノー ル、m-エチルフェノール、p-エチルフェノー 等のエチルフェノール、イソプロピルフェ ール、ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェ ール等のブチルフェノール、p-tert-アミルフ ェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニル ェノール、p-クミルフェノール等のアルキル フェノール、フルオロフェノール、クロロフ ェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノ ール等のハロゲン化フェノール、p-フェニル ェノール、アミノフェノール、ニトロフェ ール、ジニトロフェノール、トリニトロフ ノール等の1価フェノール置換体、および1- フトール、2-ナフトール等の1価フェノール 、レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロ ロール、カテコール、アルキルカテコール ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフ ェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシ フタリン等の多価フェノール類等を挙げる とができる。また、キシレン・ホルムアル ヒド重縮合物やジシクロペンタジエン、パ キシリレンアルコール誘導体、桐油、トー 油等を酸性条件下でフェノール類と反応さ たものを用いてもよい。これらを単独また 2種類以上組み合わせて使用してもよい。こ れらの中でも、高い力学物性が得られやすい ことから、フェノール、クレゾール類、ビス フェノールAを好ましく用いることができる

  また、前記アルデヒド類も特に限定は いが、例えば以下のような物を例示するこ ができる。すなわち、ホルムアルデヒド、 ラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセ アルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリ キシメチレン、クロラール、ヘキサメチレ テトラミン、フルフラール、グリオキサゾ ル、n-ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド 、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、ク ロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオ キシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、 o-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が げられる。これらを単独あるいは2種類以上 混合して使用してもよい。これらの中でも合 成時の反応性が高いことから、ホルムアルデ ヒド、パラホルムアルデヒドを好ましく用い ることができる。

  本発明では、塩基性触媒として、アン ニア水や第3級アミン(トリエチルアミンなど )やヘキサメチレンテトラミンなどアミン系 媒を用いることが、反応性の観点から好ま い。

  合成反応時のフェノール類に対するア デヒドの反応モル比としては特に限定はな が、フェノール類1molに対し、アルデヒド類0 .5~3molとすることが好ましく、より好ましく アルデヒド類は0.7~2.5molである。

  レゾール樹脂は、フェノール類とアル ヒド類を反応させ、脱水した後、溶媒を添 し系内の沸点以下に保持して熟成を行い得 ことができる。この時、熟成の温度を高温 したり、時間を長く取ることにより、高分 量レゾール樹脂を得ることができる。熟成 間を制御すると、架橋反応を再現性良く制 できるため好ましく、熟成温度を高温にす と熟成時間を短くできるため好ましい。得 れたレゾール樹脂をエレクトロスピニング ることを考えた場合には、溶媒の蒸発速度 繊維化の重要なパラメータとなるため、適 な蒸気圧の溶媒を選択することが好ましい より具体的にはメタノールやエタノール、 ソプロパノールなどのアルコール類が好ま い。ただし、熟成温度を高温にする場合に 、高沸点のジメチルスルフォキシドなどを いてもよい。

  本発明の溶液におけるレゾール樹脂の分 量としては、高分子量の方が成形性、曳糸 や製品の脆さを改善できるため、ポリスチ ン(PS)換算の重量平均分子量として、3,000~50,0 00とすることが好ましい。重量平均分子量と ては、4,000~10,000とすると、さらに曳糸性が 上し、溶液とする時の溶解性も向上するた 好ましい。なお、この重量平均分子量は、 ルパーミエーションクロマトグラフィー(以 下、GPCと略称する)を用いて測定を行い、以 の条件でPS換算で算出したものである。
  GPC本体  :  TOSOH社製HLC-8120
  分析用カラム:  TOSOH社製G1000HLX1本、G2000HL X2本、
                  G3000HLX1本
  溶出溶媒    :  テトラヒドロフラン(以 下、THFと略称する)
  流量        :  1.0mL/分
  カラム温度  :  40℃
  検出器      :  示差屈折計

  また、レゾール樹脂に含有されるホル アルデヒドは少ない方が工程や製品化した のアウトガスが少なく好ましい。より具体 には、滴定法で測定されるホルムアルデヒ 含有量はレゾール樹脂全体に対し1重量%以下 であることが好ましい。

  本発明で言うレゾール樹脂には、レゾ ル樹脂の易硬化性を損なわない範囲で別の リマーを含有していてもよい。別のポリマ のブレンド率としては10重量%以下であるこ が好ましく、より好ましくは5重量%以下、さ らに好ましくは0重量%、すなわちレゾール樹 100%である。別のポリマーとしては、ノボラ ック樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性ポリ マーや光硬化性ポリマーなど、架橋により接 着性や高耐熱・高耐薬品性を発現するポリマ ーを挙げることができる。また、レゾール樹 脂の低い曳糸性を向上させる意味から、曳糸 性の良いポリマーとすることもできる。例え ば、ノボラック樹脂、セルロース、セルロー ス誘導体、高耐熱ポリオレフィン、ポリエス テル、液晶ポリエステル、ポリフェニレンス ルフィド、ポリケトン、ポリエーテルケトン 、ポリエーテルエーテルケトン、パラアラミ ド、メタアラミド、ポリイミド、ポリアミド イミドなどを例示することができる。ただし 、これらのポリマーはレゾール樹脂と共通の 溶媒に溶解できることが重要である。これら の中でも、低コストで架橋型のポリマーが耐 熱・耐薬品性の観点から好ましく、ノボラッ ク樹脂やエポキシ樹脂などが好ましい例とし て挙げられる。

  本発明で言うポリビニルブチラール(以 、PVBと略称する)とは、ブチラール基を主成 分とし、水酸基と少量のアセチル基を含む共 重合体であり、ポリビニルアルコール(PVA)を チラール化することで得ることができる。 た、ブチラール化する際にはPVAにブチルア デヒドを反応させるが、この時にアセトア デヒドなどの他のアルデヒド類を用いたり これらを混用する事も可能である。ただし ブチルアルデヒドを反応させることがレゾ ル樹脂の曳糸性向上の観点から好ましい。 お、本発明では他のアルデヒド類を反応さ たとしてもブチラール化という言葉を用い ものとする。レゾール樹脂の曳糸性や脆さ 改善する観点から、ブチラール化度は50~81.6 mol%が好ましく、より好ましくは60~68molとする とさらに曳糸性を向上できる。また、分子量 についてもレゾール樹脂の曳糸性や脆さを改 善する観点から大きい方が好ましく、分子量 が5万~100万であることが好ましく、より好ま くは8万~20万である。また、分子量や重合度 を反映するパラメータとして溶液粘度があり 、工程管理の上からは溶液粘度で管理する方 が簡便である。

  本発明においては、PVBの溶液粘度は、エ ノールにPVBを5重量%の濃度になるように溶解 し、以下の条件で溶液粘度を測定したもので ある。すなわち、東機産業(株)製のコーンプ ート型回転粘度計(E型粘度計ELD)を用い、25 で測定を行った。円錐角φ1゜34’、ローター 回転数100rpmで、ずり速度383sec -1 とした。なお、エタノールへの溶解性が不十 分なPVBの溶液粘度については、エタノール/ ルエン=1/1の混合溶媒などを用いることがで るが、この時にはエタノール、混合溶媒の 方に溶解性良好なPVBで溶媒による違いを補 する検量線を作成し、エタノールでの溶液 度に変換する。本発明で用いるPVBの溶液粘 としては、レゾール樹脂の曳糸性や脆さを 上させる観点から10~100mPa・sであることが重 要である。PVBは高粘度ほどレゾール樹脂の曳 糸性が向上するため、30mPa・s以上とすること が好ましく、50mPa・s以上とすることがより好 ましい。一方、PVBがあまりに高粘度になると 、ブレンド物溶液が過度に増粘しエレクトロ スピニングする際に、かえって曳糸性が低下 したり繊維径が太くなったり繊維径ばらつき が大きくなる場合があるので、PVBの溶液粘度 は好ましくは80mPa・s以下である。

  PVBのブレンド率としては、レゾール樹 の曳糸性向上の観点から0.5重量%以上とする とが重要である。また、好ましくは1重量% 上であれば得られた繊維の脆さ改善にも効 が認められ、より好ましくは1.5重量%以上で る。一方、硬化後のレゾール樹脂の優れた 熱性・耐薬品性を活かす観点からはPVBブレ ド率は低い方が好ましく、5重量%以下であ ことが重要である。好ましくは3重量%以下で ある。また、特にエレクトロスピニングを行 う場合には、PVBブレンド率は3重量%以下とす ことで、繊維径ばらつきを低減できる傾向 あり、好ましい。エレクトロスピニングに いて、繊維化できる範囲でPVBブレンド率を 減することで繊維径ばらつきを低減できる はブレンド物溶液の粘度を低減できる効果 一因と考えられる。ここで言うブレンド率 は、レゾール樹脂とPVBを合わせた重量に対 るブレンドPVBの重量比を言うものである。

  本発明は、レゾール樹脂にPVBを少量ブ ンドすることによりレゾール樹脂の欠点を 決するものであるが、この理由は定かでは いが以下のように推定される。すなわち、 ゾール樹脂の曳糸性の悪さや脆さは、レゾ ル樹脂が低分子量体であり、しかも紡糸の めの原料の時から部分的に架橋しているた 、直鎖ポリマーのような分子鎖の絡み合い 少ないためではないかと考えられる。ここ PVBを少量ブレンドすると、PVBの水酸基によ レゾール樹脂の鎖延長が行われ分子鎖長が びるだけでなく、PVBが多数保有する嵩高い チラール基がレゾール樹脂の分子鎖の過度 凝集を抑制することで、変形追従性が向上 曳糸性や脆性が向上するのではないかと考 られる。実はPVBの原料となるPVAでは、PVBの うな効果はあまり見られない。これは、PVA 、側鎖のほとんどが水酸基であり、鎖連結 果というよりも架橋を進め分子鎖として伸 にくくなること、またブチラール基のよう 嵩高い側鎖を持たないため、PVBのような効 が発現し難いのではないかと思われる。こ ような観点から、前記したようにPVBの組成 してもブチラール化度に適正範囲があるも と考えられる。すなわち、ブチラール化度 低過ぎると、嵩高いブチラール基がレゾー 樹脂の分子鎖の過度の凝集を抑制する効果 低下し、逆にブチラール化度が高過ぎると 酸基量が減少し、これによるレゾール樹脂 鎖連結効果が低下するのではないかと考え れる。また、ブチラール化する際にアセト ルデヒドよりもブチルアルデヒドを用いた が曳糸性が向上したり繊維径ばらつきが改 するのは、ブチラール基の嵩高性の効果が れているものと考えられる。

  本発明で言うブレンド物とは、レゾー 樹脂とPVBから成り、固体でも液体でもよい ブレンド物は繊維とすることで、シート状 の原料となるだけでなく、耐熱繊維として 由に繊維構造体を作製することで幅広く活 することができる。また、シート状物とす ことで耐熱シートとして活用することもで る。

  また、ブレンド物は適切な溶媒に溶解 溶液とすることで、エレクトロスピニング 原料として利用することができる。この時 溶媒は、レゾール樹脂を含有するポリマー PVBの双方を溶解できればよいが、例えばア コール類、ケトン類、エーテル類、セロソ ブ類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチル アセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシト(DMS O)など、またこれらとトルエンなど非極性溶 との混合溶媒を挙げることができる。この でも、環境低負荷の観点からはアルコール やアセトンなどが好ましく、特にメタノー 、エタノールやイソプロパノールが好まし 。また、蒸発が速い溶媒を用いてエレクト スピニングを行うと、ノズル詰まりが発生 易いため適度な蒸発速度の物を選定するこ が好ましい。具体的にはメタノール、エタ ールやイソプロパノールなどが好ましい。 た、PVBの溶解性の観点からもアルコール類 好ましい。ブレンド物溶液の粘度について 制限は無いが、低粘度過ぎると成形や紡糸 した際、溶液が繋がり難く、逆に高粘度過 ると伸長性が低下するためやはり成形性や 糸性が低下するので、適切な粘度を選択す ことが好ましい。例えば、エレクトロスピ ングする際は比較的低粘度の方が曳糸性が 好となり、また繊維径も細くし易く、繊維 ばらつきも低減できる傾向がある。具体的 は7~150mPa・sであることが好ましい。より好 しくは30mPa・s以下、さらに好ましくは15mPa s以下である。また、成形や紡糸の際に溶液 繋がり易くする観点からは9mPa・s以上であ ことが好ましい。なお、溶液粘度測定装置 PVBで用いたものを適用することができる。

  また、本発明のブレンド物は繊維の形 とすると様々な用途に応用でき好ましい。 発明の繊維は、レゾール樹脂特有の脆さを 善し、しなやかさを向上させる観点から、 さと直径の比であるL/Dが10以上であることが 好ましい。長さについては特に制限は無いが 、後述するシートを形成させやすくする観点 から50μm以上であることが好ましい。また、 ゾール樹脂特有の脆さを改善ししなやかさ 向上させつつ単繊維1本の力学特性を確保す る観点から、繊維直径は0.001~10μmの範囲とす ことが重要である。しなやかさを向上させ 観点からは、繊維直径は好ましくは5μm以下 、より好ましくは3μm以下である。一方、繊 直径の下限としては単繊維1本の力学特性を 保する観点から0.1μm以上とすることが好ま い。また、繊維径バラツキは小さい方が、 ート状物とした時の均一性の観点から好ま く、0.1~5μmとすることが好ましい。より好 しくは、0.5~3μmである。

  また、本発明のブレンド物から成る繊 はシート状の形態とすると、耐熱シートや ニカム構造体への応用のための前駆体とな 好ましい。本発明で言うシート状物とは2次 平面構造を主体とするものであり、紙、不 布などを例示することができ、レゾール樹 特有の脆さを、細い繊維による形状効果(断 面2次モーメントの減少)で改善できるため好 しい。

  本発明のシート状物の好ましい製造方 については特に制限は無いが、例えば以下 ようなエレクトロスピニング(ESP)法を用いる と、シート状物を効率よく製造することがで き好ましい。また、ESP法では極細繊維(原理 には連続繊維)から成る不織布あるいは紙状 を比較的容易に作製することができるため 溶液キャストなどによるフィルム状物に比 、極細繊維によるしなやかさを活かしレゾ ル樹脂特有の脆さをより改善することがで る。

  以下、ESP法について詳述する。ESP法と 、特許文献4などに記載されているように、 液と対電極の間に0.1~3kV/cm程度の高電場を印 加し、溶液を対電極に向けて飛行させる過程 で、溶液の蒸発と伸長、また溶液の分岐など により極細繊維とし、それを極細繊維から成 る不織布あるいは紙状物として捕集する紡糸 法である。本発明では、触媒としてアミン系 触媒を用い、重量平均分子量が3,000~50,000のレ ゾール樹脂に溶液粘度が10~100mPa・sのポリビ ルブチラールをブレンド物全体に対し0.5~5重 量%ブレンドしたブレンド物と溶媒から成る 液を、電場0.1~3kV/cmでエレクトロスピニング る繊維および/またはシート状物の製造方法 を採用すると、レゾール樹脂を主体とするポ リマーから成るシート状物を効率的に得るこ とができる。

  原料となる本発明のブレンド物と溶媒 ら成る溶液において、レゾール樹脂の重量 均分子量は高い方がESP時の曳糸性や得られ シート状物のしなやかさが向上し好ましい より具体的には、レゾール樹脂の重量平均 子量は3,000以上であることが重要であり、4,0 00以上であると好ましい。また、PVBブレンド については、0.5重量%以上ブレンドすること でESPとして充分な曳糸性が得られる。なお、 添加するPVB種やブレンド物溶液の粘度によっ てはビーズが発生し易い場合もあるが、この 時でもブレンド率や印可電場を適正化するこ とでビーズの発生を抑制できる。なお、ビー ズとは後述の図2に示したように液滴状のポ マー溜まりが繊維で繋がっている物を言い ESPとしては欠点となる場合がある。また、 ーズの前後では繊維径が細くなり易く、繊 径の均一性を向上させる観点からもビーズ 発生は抑制する方が好ましい。なお、後述 図3のように、液滴状のポリマー溜まりが繊 で繋がっていない物を粒子状と呼び、この は単にポリマーが液滴状に吹き付けられて るに過ぎず、繊維化されていないため本発 の目的を達成することはできない。ただし PVBブレンド率が過多となるとブレンド物溶 の増粘が著しくなり、得られる極細繊維の 維径やそのばらつきが大きくなる場合があ ので、PVBブレンド率は5重量%以下とするこ が重要であり、3重量%以下とすることが好ま しい。

  この時、原料となる溶液を吐出する方 としては、均一性や安定性を重視し、ノズ を用いる方法が好ましい。ノズル径として 特に限定はないが、太過ぎると過剰溶液の れなどが、細すぎると溶媒蒸発によるノズ 詰まりが発生しやすいため、溶液の種類や 加電圧などにより適切なノズル径を選択す 必要がある。これらの観点から、本発明で 18~24ゲージ・ニードル相当のノズル径を採用 することが好ましい。また、ノズルを用いず 溶液に直接電圧を印加し、溶液を引き出すこ とも可能であり、この時はノズル詰まりの問 題を解消できるという利点がある。

  また、印加電場は直接ポリマー溶液を 引する力となるため重要なプロセスパラメ タである。印加電場が低すぎるとノズルか 溶液を引き出すことができずESPが起こらな 、一方高すぎると放電が起こってしまい危 であるため、適切な電場を選択することが 要である。本発明では0.1~3kV/cmであることが 要である。好ましくは1~2kV/cmである。また 印加電場は強い方が溶液の表面張力に打ち ってESPを起こすために好ましく、特に溶液 度や溶液の表面張力が高い場合にはこのよ な傾向が見られる場合もある。さらに、印 電場が強い方が、一般に細い繊維が得られ い場合がある。しかし、ポリマーの曳糸性 印加電場、すなわちポリマー溶液を牽引す 力のバランスがあるようで、繊維径の極小 を示す電場が現れる場合もある。また、電 が強すぎると得られる繊維径のバラツキが 大する場合もある。

  捕集装置としては、板状物のみならず 回転式ローラーやコンベアネット、さらに 転ディスクやギャップを設けた物など、所 の形態を得るため適宜選択することができ 。例えば、コンベアネットを用いることで 続生産を可能とすることができ、回転ディ クや、ギャップを設けた捕集装置により極 糸がランダムに捕集された紙状物では無く 極細繊維を配向させることも可能となる。

  また、捕集装置の材質としては、アル 箔などの金属や離型紙、フィルター支持体 の紙、不織布、織編物、フィルムなど用途 応じて適宜選択することができる。ブレン 物の自己支持シート状物を得る場合にはア ミ箔や離型紙、フィルムが好ましい。

  ノズルと捕集装置の距離についても特に 限は無いが、近過ぎると溶媒の蒸発が不完 なまま捕集されるので、繊維状とし難くビ ズ状や粒子状となり易い。一方、遠過ぎる 印加電圧に高電圧が必要となり、安全上の 慮が過大になる。これらは溶媒の蒸発速度 ノズルからの吐出量に密接に関係するが、 点が比較的低く蒸気圧も比較的高いアルコ ル(メタノール、エタノール、イソプロパノ ルなど)やアセトン、またはそれらの混合溶 媒の場合には、1ノズル当たりの吐出量0.01~0.2 0cm 3 /分の場合には、ノズルと捕集装置の距離は5~ 30cmの範囲が好ましい。

  雰囲気温度や雰囲気湿度も溶媒の蒸発 関係するが、雰囲気温度としては5~40℃が好 しく、雰囲気湿度は10~75%RHが好ましい。ESP では高電圧を使用するため、漏電防止の観 からは湿度は75%RH以下が好ましい。一方、静 電気による蒸発溶媒への引火防止の観点から は、湿度は10%以上が好ましい。いずれにして も、高電圧を用いるので、アースを確実に取 ることや、大きな抵抗を組み込むことで電流 をほとんど流さないことが肝要である。

  原料となる溶液は、前記した本発明の レンド物溶液を用いることが重要である。 の時のレゾール樹脂の溶液全体に対する濃 は、濃い方がESPでの生産性を向上できるが 薄い方がノズルが詰まりにくく、また低粘 となるため得られる繊維を極細化し、繊維 ばらつきも低減し易い。また、高濃度は溶 度からの制約も有る。レゾール樹脂の溶媒 してアルコールを用いる場合には25~40重量% することが好ましい。なお、レゾール樹脂 対してアルコールを使用する場合には、あ 臨界濃度より低濃度となると逆に溶解性が 下する場合があり、濃度を慎重に選ぶこと 好ましい。また、レゾール樹脂を主体とす ポリマーとPVBをブレンドする際は、それぞ の溶液を作製しておき、その溶液を混合す 方が溶解、ブレンドし易いため好ましい。 た、PVBは一度に大量に溶媒に投入すると、PV Bが膨潤するだけのゲル類似状態になり溶解 なくなる場合があるため、PVBは溶媒に少し つ投入し溶解することが好ましい。また、 料の溶液粘度としては比較的低粘度の方が 糸性が良好となり、また繊維径も細くし易 、繊維径ばらつきも低減し易い傾向がある 、低粘度にしすぎると曳糸性を失う場合も る。具体的には7~150mPa・sであることが好ま く、30mPa・s以下であることがより好ましく さらに好ましくは15mPa・s以下である。また 成形や紡糸の際に溶液を繋がり易くする観 からは9mPa・s以上であることが好ましい。

  以下、本発明を実施例に基づいて詳細に 明する。なお、実施例中の測定方法は以下 方法を用いた。
A.レゾール樹脂の重量平均分子量
  重量平均分子量はGPCを用いて測定を行い 以下の条件でPS換算で算出したものである。
  GPC本体  :  TOSOH社製HLC-8120
  分析用カラム:  TOSOH社製G1000HLX1本、G2000HL X2本、
                  G3000HLX1本
  溶出溶媒    :  テトラヒドロフラン
  流量        :  1.0mL/分
  カラム温度  :  40℃
  検出器      :  示差屈折計

B.ポリマーの溶液粘度
  ポリマーの溶液粘度は東機産業(株)製のコ ーンプレート型回転粘度計(E型粘度計ELD)を用 い、25℃で測定を行った。円錐角φ1゜34’、 ーター回転数100rpmで、ずり速度Ds=383sec -1 とした。また、PVBの溶液粘度は、濃度5重量% エタノール溶液で測定を行った。

C.走査型電子顕微鏡(SEM)観察
  繊維に白金-パラジウム合金を蒸着し、日 社製S-4000型SEMで観察した。この時の加速電 は15kVとした。

D.繊維の状態
  エレクトロスピニングにより得られたシ ト状物の表面をSEMで観察し、500倍の写真(視 範囲:165μm×228μm)で評価を行った。後述の 図2 のように液滴状のポリマー溜まりが繊維で繋 がっている物をビーズとしてその個数を数え 、以下のように評価した。
  ビーズ無し:ビーズ個数が0個
  若干有り  :ビーズ個数が1~20個
  多い      :ビーズ個数が21個以上
  また、後述の 図3 のように、液滴状のポリマー溜まりが繊維で 繋がっていない物を粒子状と評価した。

E.繊維直径
  エレクトロスピニングにより得られたシ ト状物の表面をSEMで観察し、2,000倍の写真か ら繊維直径を測定した。また、視野内の最小 繊維径と最大繊維径の範囲を繊維径のバラツ キとした。なお、最大繊維直径が5μmを超え 場合には500倍の写真を用いて測定を行った

F.曳糸性
  曳糸性を以下のように評価し、○以上を 格とした。
  ビーズ無し          :◎
  若干有り            :○
  多い                :△
  粒子状と繊維状の混合:×
  粒子状のみ          :××

G.自己支持性
  エレクトロスピニング・シートの捕集に いた離型紙からの剥がれ性と形状保持性か 評価を行い、○以上を合格とした。
  シートが離型紙から容易に剥がれ、崩壊 難い物            :○
  シートを離型紙から何とか剥がすことは きるが、崩壊する物:△
  シートとして離型紙から剥がすことがで ない物            :×

参考例1(レゾール樹脂の合成)
  攪拌装置、環流冷却器および温度計を備 た反応容器に、フェノール1000部、濃度37%の ルマリンを1550部、濃度27%のアンモニア水32 を加え、80℃で1時間反応させた。その後650m mHgの真空下で脱水を行いながら、系内の温度 が70℃に達したところでメタノール480部を加 熟成を行った後冷却し、レゾール樹脂を得 。これの重量平均分子量をGPCで測定したと ろ4500であり、残存ホルムアルデヒドは0.4% あった。

参考例2(レゾール樹脂の合成)
  熟成時間を変更して参考例1と同様にレゾ ル樹脂を得た。これの重量平均分子量2800、 残存ホルムアルデヒド量が1.1%であった。

参考例3(レゾール樹脂の合成)
  熟成時間を変更して参考例1と同様にレゾ ル樹脂を得た。これの重量平均分子量9900、 残存ホルムアルデヒド量が1%であった。

実施例1~9
  参考例1で合成した重量平均分子量4500のレ ゾール樹脂をメタノールに溶解した物と、溶 液粘度65mPa・sのPVB(積水化学工業株式会社製 S-LEC B:BH-3)をメタノールに溶解した物をブレ ンドし、レゾール樹脂濃度29wt%、レゾール樹 とPVBの和に対する所望のPVB濃度の溶液を調 した。なお、ここで用いたPVBの計算分子量 11万、ブチラール化度は65mol%であった。な 、計算分子量とは、積水化学工業株式会社  S-LECシリーズのカタログ(JUL.2005)記載の値であ る。

  これをカトーテック社製ESP装置を用い、 囲気温度18℃、雰囲気湿度40%RHでESPを行った この時、ノズルとしては21ゲージのニード (先端をカットした物)を1本用い、捕集装置 しては直径10cm、幅15cmの回転ローラーに離型 紙を貼り付けた物を用いた。回転ローラーは 66rpmで回転させ、吐出量は0.05cm 3 /分とした。そして、表1のように条件を変更 てESPを行ったところ、いずれも離型紙上に 一にポリマーが堆積した均一なシート状と った。さらにこれらは容易に離型紙から剥 れ、自己支持のシートとすることができ、 らに折り曲げ可能でありレゾール樹脂特有 脆さがかなり改善されていた。また、これ の表面をSEM観察したところ、いずれも極細 維が形成され、曳糸性が大きく向上してい ことが分かった(図1に実施例4における観察 果を、図2に実施例1における観察結果を、 れぞれ示す)。ただし、PVBブレンド率が低い 施例1、3では図2に示したようにビーズが散 されたが、PVBブレンド率が高い実施例4~7で 図1に示したようにビーズは全く観察されず 、PVBブレンド率が高い方が曳糸性が優れる傾 向を示した。ただし、実施例2のようにPVBブ ンド率が低くともビーズが観察されない場 があり、実施例1ではポリマーの曳糸性に対 て電場が弱いためエレクトロスピニングが 安定となり、実施例3では逆にポリマーの曳 糸性に対して電場が強すぎるためエレクトロ スピニングが不安定となったが、実施例2で ポリマーの曳糸性に合った電場となった可 性がある。また、PVBブレンド率が低くとも 施例8のようにノズルと捕集装置の距離を拡 ることにより溶媒を完全に蒸発させ、ビー の発生を抑制することができた。一方、PVB レンド率が高くなるとビーズが観察されな なり、曳糸性が向上するが、原料の溶液粘 が高くなりポリマーが伸長されにくくなる め繊維径が大きなる傾向が見られた。また PVBブレンド率が高い実施例6,7では繊維径バ ツキも大きくなったが、これはポリマーの 糸性に対して電場が強すぎるためである可 性がある。

比較例1~3
  参考例1で合成したレゾール樹脂にPVBをブ ンドすることなく、濃度29wt%のメタノール 液を調整した。 表1 記載の条件で実施例1と同様にESPを行ったが 捕集装置にまだらにポリマーが吹き付けら るだけでシート状となることはなかった。 だら模様は電場を高くするとやや改善する 向であったが、実施例のように均一なシー 状になることはなかった。また、これらの 面をSEM観察したが、いずれも繊維化そのも が不能であり液滴から溶媒が蒸発しただけ 粒子状であった(比較例1における観察結果を 図3に示す)。さらに、これらのESPされたレゾ ル樹脂は離型紙から剥がれず、自己支持と ることはできなかった。

比較例4
  溶媒をメタノール/アセトン=1/3.8(容積比) 混合溶媒とし、レゾール樹脂濃度を19wt%とし て比較例1と同様にESPを行ったが、捕集装置 まだらにポリマーが吹き付けられるだけで ート状となることはなかった。まだら模様 電場を高くするとやや改善傾向であったが 実施例のように均一なシート状になること なかった。また、これらの表面をSEM観察し が、繊維化そのものが不能であり液滴から 媒が蒸発しただけの粒子状であった。さら 、このESPされたレゾール樹脂は離型紙から がれず、自己支持とすることはできなかっ 。

実施例10
  吐出量を0.02cm 3 /分として実施例1と同様にESPを行ったところ 離型紙上に均一にポリマーが吹き付けられ 一なシート状となった。これの繊維径は0.7~ 2.3μmであり、ビーズの発生は観察されなかっ た。さらにこれは容易に離型紙から剥がれ、 自己支持のシートとすることができ、さらに 折り曲げ可能でありレゾール樹脂特有の脆さ がかなり改善されていた。また、これらの表 面をSEM観察したところ、いずれも極細繊維が 形成され、曳糸性が大きく向上していること が分かった。

比較例5
  PVBを溶液粘度5mPa・sの物(積水化学工業株 会社製、S-LEC B:BL-1)に変更し、実施例5と同 にESPを行ったところ、繊維化そのものが不 であり液滴から溶媒が蒸発しただけの粒子 であった。なお、ここで用いたPVBの計算分 量は1.9万、ブチラール化度は63mol%であった

[規則26に基づく差替え 13.06.2008]

比較例6
  参考例2で作製した重量平均分子量2800のレ ゾール樹脂を用い、実施例4と同様にESPを行 たところ、繊維化そのものが不能であり液 から溶媒が蒸発しただけの粒子状であった

比較例7
  PVBブレンド率を7重量%として実施例6と同 にESPを行ったところ、繊維化可能であった ノズル詰まりが発生し易く、繊維径も実施 6の場合よりも太くなった。

実施例11
 参考例3で合成したレゾール樹脂をメタノー ルに溶解した物と、実施例1で用いたPVBをメ ノールに溶解した物をブレンドし、レゾー 樹脂濃度30wt%、レゾール樹脂とPVBの和に対す るPVB濃度0.7wt%の溶液(溶液粘度12mPa・s)を調整 た。これをカトーテック社製ESP装置を用い 雰囲気温度18℃、雰囲気湿度50%RH、距離10cm 印可電圧15kV、吐出量0.025cm 3 /分でESPを行った。この時、ノズルとしては22 ゲージのニードル(先端をカットした物)1本を 用い、捕集装置としては直径10cm、幅33cmの回 ローラーに離型紙を貼り付けた物を用いた また、回転ローラーは12rpmで回転させた。 られたシート状物をSEMで観察した結果、レ ール樹脂ブレンド物は繊維化しており、ビ ズの発生も見られず良好な曳糸性であった また、繊維径は0.8~1.6μmと細く、繊維径ばら きも小さいものであった。さらに、繊維は 易に離型紙から剥がれ自己支持のシートと ることができた。ただし、実施例1~4で得た ート状物と比べると若干脆さのある物であ た。

実施例12
 PVB濃度を1.0wt%(溶液粘度22mPa・s)として、実 例11と同様にESPを行った。得られたシート状 物をSEMで観察した結果、レゾール樹脂ブレン ド物は繊維化しており、ビーズの発生も見ら れず良好な曳糸性であった。また、繊維径は 0.7~1.3μmと細く、繊維径ばらつきも小さいも であった。さらに、繊維は容易に離型紙か 剥がれ自己支持のシートとすることができ 。

実施例13
 PVB濃度を3.0wt%(溶液粘度123mPa・s)、印可電圧1 7kV、吐出量0.010cm 3 /分として、実施例11と同様にESPを行ったとこ ろ、綿状物が捕集装置にシート状に堆積し実 施例12のようなきれいなシート状とはならな った。これは吐出量が低く、印可電場が高 ため溶液が微細化し過ぎ溶媒が過度に蒸発 たことが一因ではないかと考えられる。こ 観点から、溶液粘度が高い場合には印可電 や吐出量に注意を払うことが好ましい。得 れた綿状物をSEMで観察した結果、レゾール 脂ブレンド物は繊維化しており、ビーズの 生も見られなかった。また、繊維径は0.7~3.1 μmであった。さらに、繊維は容易に離型紙か ら剥がれ自己支持のシートとすることができ た。

実施例14
 印可電圧10kV、吐出量0.050cm 3 /分として、実施例13と同様にESPを行ったとこ ろ、実施例13とは異なり、きれいなシート状 が得られた。これは吐出量を増加させ、さ に印可電場を下げることで、溶液の微細化 抑制し溶媒の蒸発を抑制したためではない と考えられる。得られたシート状物をSEMで 察した結果、レゾール樹脂ブレンド物は繊 化しており、ビーズの発生も見られず良好 曳糸性であった。また、繊維径は1.8~3.3μmと 実施例11~13と比べるとやや繊維径が太いが、 維径ばらつきは小さいものであった。さら 、繊維は容易に離型紙から剥がれ自己支持 シートとすることができた。

実施例15
 PVBとして溶液粘度23mPa・sの積水化学工業株 会社製 S-LEC B BH-6(計算分子量9.2万、ブチ ール化度69mol%)を用い、これのレゾール樹脂 PVBの和に対するPVB濃度3wt%の溶液(溶液粘度91 mPa・s)を実施例11と同様に調整した。これを 施例11と同様にして、印可電圧10kV、吐出量0. 038cm 3 /分でESPを行った。得られたシート状物をSEM 観察した結果、レゾール樹脂ブレンド物は 維化しており、ビーズの発生は無く良好な 糸性であった。また、繊維径は1.3~2.6μmと細 、繊維径ばらつきも小さいものであった。 らに、繊維は容易に離型紙から剥がれ自己 持のシートとすることができた。

実施例16
 PVB濃度を2wt%(溶液粘度56mPa・s)として、実施 15と同様にESPを行った。得られたシート状 をSEMで観察した結果、繊維化は可能であっ がビーズが若干有り(ビーズ個数15個)、本実 例で用いたブチラール化度が69mol%のPVB(BH-6) 、ブチラール化度が65mol%の実施例9で使用し たPVB(BH-3)よりも曳糸性に不利な場合があった 。これは、嵩高いブチラール基量の低下によ りレゾール樹脂の凝集を抑制する効果が低下 したためではないかと考えられる。なお、繊 維径は0.6~3.0μmと細いものであった。さらに 繊維は容易に離型紙から剥がれ自己支持の ートとすることができた。

実施例17
PVBとして溶液粘度63mPa・sの積水化学工業株式 会社製 S-LEC B BX-1(計算分子量10万、ブチラ ル化度66mol%(ただし、ブチラールとアセター の共重合物))を用い、これのレゾール樹脂 PVBの和に対するPVB濃度1wt%の溶液(溶液粘度15m Pa・s)を実施例11と同様に調整した。これを実 施例11と同様にして、印可電圧15kV、吐出量0.0 5cm 3 /分でESPを行った。得られたシート状物をSEM 観察した結果、レゾール樹脂ブレンド物は 維化しており、ビーズの発生は無く良好な 糸性であった。しかし、繊維径は2.0~6.1μmと 施例12に比べると若干太く、繊維径ばらつ もやや大きいものであった。これは、PVBに 部アセタールが共重合されているため、PVB 嵩高性が低下し、レゾール樹脂の凝集を抑 する効果が低下したためではないかと考え れる。

実施例18
 印可電圧を12kVとして実施例17と同様にESPを った。得られたシート状物をSEMで観察した 果、レゾール樹脂ブレンド物は繊維化して り、ビーズの発生は無く良好な曳糸性であ た。しかし、繊維径は0.6~9.2μmと若干太く、 繊維径ばらつきもやや大きいものであった。 なお、繊維は容易に離型紙から剥がれ自己支 持のシートとすることができた。

比較例8
 PVBの代わりにPVA(日本合成化学社製、ゴーセ ノール GM-14L)を用い、これのレゾール樹脂と PVAの和に対するPVA濃度0.7wt%の溶液を実施例11 同様に調整した。これを実施例11と同様に て、印可電圧15kV、吐出量0.025cm 3 /分でESPを行った。得られたシート状物をSEM 観察した結果、ブレンド物は粒子状であり 繊維化することはできなかった。

比較例9
 吐出量を0.05cm 3 /分として比較例8と同様にESPを行った。得ら たシート状物をSEMで観察した結果、ブレン 物は粒子状であり、繊維化することはでき かった。

比較例10
 PVA(日本合成化学社製、ゴーセノール NM-11) メタノールへの溶解テストを行ったが、ほ んど溶解せず、参考例1で合成したレゾール 樹脂との溶液を作製することができなかった 。