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Patent Searching and Data


Title:
SOLUTION PREPARATION CONTAINING ANTIBODY AT HIGH CONCENTRATION
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/084659
Kind Code:
A1
Abstract:
A stable solution preparation containing an antibody, which is characterized by containing arginine and methionine, is provided as a stable antibody-containing preparation suitable for subcutaneous administration wherein dimer formation and deamidation are prevented during prolonged storage.

Inventors:
MORICHIKA TOSHIYUKI (JP)
KAMEOKA DAISUKE (JP)
IMAEDA YOSHIMI (JP)
MAEDA TERUTOSHI (JP)
STAUCH OLIVER BORIS (DE)
Application Number:
PCT/JP2008/073798
Publication Date:
July 09, 2009
Filing Date:
December 26, 2008
Export Citation:
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Assignee:
CHUGAI PHARMACEUTICAL CO LTD (JP)
HOFFMANN LA ROCHE (CH)
MORICHIKA TOSHIYUKI (JP)
KAMEOKA DAISUKE (JP)
IMAEDA YOSHIMI (JP)
MAEDA TERUTOSHI (JP)
STAUCH OLIVER BORIS (DE)
International Classes:
A61K39/395; A61K9/08; A61K47/18; A61P43/00
Domestic Patent References:
WO2002013860A12002-02-21
WO1996002576A11996-02-01
WO1993012227A11993-06-24
WO1992003918A11992-03-19
WO1994002602A11994-02-03
WO1994025585A11994-11-10
WO1996034096A11996-10-31
WO1996033735A11996-10-31
WO1992001047A11992-01-23
WO1992020791A11992-11-26
WO1993006213A11993-04-01
WO1993011236A11993-06-10
WO1993019172A11993-09-30
WO1995001438A11995-01-12
WO1995015388A11995-06-08
WO1992019759A11992-11-12
WO1998014580A11998-04-09
WO1998013388A11998-04-02
WO1999051743A11999-10-14
WO2005005636A12005-01-20
WO2002033072A12002-04-25
WO2001066737A12001-09-13
Foreign References:
JP2005527503A2005-09-15
JP2007511566A2007-05-10
JP2007204498A2007-08-16
EP0239400A21987-09-30
JPH0159878B21989-12-20
JP2005013103W2005-07-08
JPH0899902A1996-04-16
Other References:
KOHLER. G.; MILSTEIN, C., METHODS ENZYMOL., vol. 73, 1981, pages 3 - 46
SATO, K. ET AL., CANCER RES., vol. 53, 1993, pages 851 - 856
HUSTON, J. S. ET AL., PROC. NATL. ACAD. SCI. U.S.A., vol. 85, 1988, pages 5879 - 5883
CO, M. S. ET AL., T. IMMUNOL., vol. 152, 1994, pages 2968 - 2976
BETTER, M.; HORWITZ, A. H., METHODS ENZYMOL., vol. 178, 1989, pages 476 - 496
PLUCKTHUN, A.; SKERRA, A., METHODS ENZYMOL., vol. 178, 1989, pages 497 - 515
LAMOYI, E., METHODS ENZYMOL, vol. 121, 1986, pages 652 - 663
ROUSSEAUX, J. ET AL., METHODS ENZYMOL., vol. 121, 1986, pages 663 - 669
BIRD, R. E.; WALKER, B. W., TRENDS BIOTECHNOL., vol. 9, 1991, pages 132 - 137
Attorney, Agent or Firm:
ONO, Shinjiro et al. (Section 206New Ohtemachi Bldg.,2-1, Ohtemachi 2-chome,Chiyoda-k, Tokyo 04, JP)
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Claims:
 アルギニン及びメチオニンを含有することを特徴とする、安定な抗体含有溶液製剤。
 さらにヒスチジン緩衝剤を含む、請求項1に記載の溶液製剤。
 さらに界面活性剤を含む、請求項1または2に記載の溶液製剤。
 抗体の濃度が50mg/ml以上である、請求項1~3のいずれかに記載の溶液製剤。
 抗体の濃度が100mg/ml以上である、請求項1~3のいずれかに記載の溶液製剤。
 抗体の濃度が120mg/ml以上である、請求項1~3のいずれかに記載の溶液製剤。
 抗体が抗インターロイキン-6レセプター抗体である、請求項1~6のいずれかに記載の溶液製剤。
 アルギニンまたはメチオニンを含有することを特徴とする、安定な抗インターロイキン-6レセプター抗体含有溶液製剤。
 抗体がヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項1~8のいずれかに記載の溶液製剤。
 さらにトリプトファンを含む、請求項1~9のいずれかに記載の溶液製剤。
 溶液製剤のpHが4~8である、請求項1~10のいずれかに記載の溶液製剤。
 アルギニンの含有量が、50~1500mMである、請求項1~11のいずれかに記載の溶液製剤。
 粘度が、2~15mPa・sである、請求項1~12のいずれかに記載の溶液製剤。
 溶液製剤が22~28℃で少なくとも6ヶ月間安定である、請求項1~13のいずれかに記載の溶液製剤。
 抗体二量体の生成が抑制されることを特徴とする、請求項1~13のいずれかに記載の溶液製剤。
 抗体分子の脱アミド化が抑制されることを特徴とする、請求項1~13のいずれかに記載の溶液製剤。
 皮下投与される、請求項1~13のいずれかに記載の溶液製剤。
 溶液製剤の製造過程に凍結乾燥工程を含まないで製造される、請求項1~13のいずれかに記載の溶液製剤。
 溶液中にアルギニンを添加することを含む,抗体含有溶液製剤の抗体分子の脱アミド化を抑制する方法。
 溶液中にアルギニンとメチオニンを添加することを含む,抗体含有溶液製剤の抗体二量体生成を抑制する方法。
Description:
高濃度抗体含有溶液製剤

 本発明は抗体含有製剤に関し、特に安定 高濃度抗体含有溶液製剤に関する。

 近年、種々の抗体製剤が開発され実用に されているが、多くの抗体製剤は静脈注射 製剤として用いられている。一方、医療現 のニーズにより、抗体含有製剤を自己注射 能な皮下注射用製剤として開発する要望が くなっている。

 皮下注射用の抗体含有製剤を設計するに たっては、1回あたりの抗体投与量が大量と なる一方で(100~200mg-程度)、皮下注射では一般 的に注射液量の制限があることから、投与液 中の抗体の高濃度化が必要となる。そこで、 凍乾前より少ない容量の水を用いて凍結乾燥 製剤を再溶解することにより高濃度溶液製剤 を調製する、いわゆる凍乾濃縮技術を利用し た高濃度製剤が使用されることが多い。しか し、再溶解の手間が要らない使い勝手のよい 溶液製剤への需要も大きい。また、凍結乾燥 製剤の製造において、糖などの凍結保護剤の 添加により製剤の粘度が増大することは、皮 下注射用の製剤としては好ましくないが、溶 液製剤であれば、この問題を回避することが できると思われる。

 高濃度の抗体含有溶液は、タンパク質の 大分子としての性質及び分子間相互作用に りそれ自体粘度の高い溶液を形成する傾向 ある。さらに、タンパク質を高濃度溶液に 保存する場合、不溶性及び/又は可溶性凝集 体の生成を始めとする劣化現象が問題となり 、それを防止する必要がある。特に、抗体製 剤では溶液状態で保存時に会合体が生成しや すく、不溶性凝集体が生じやすい。また、溶 液製剤を長期保存する場合、アスパラギンそ の他のアミノ酸残基の脱アミド化により抗体 分子の生理活性が喪失してしまう問題がある 。

 一般に、タンパク質製剤を長期保存した も活性成分の損失が少ない、安定化させた 剤とするための様々な工夫がなされており 活性成分と種々の添加剤を緩衝液に溶解し 製造される。しかし、特に高濃度の抗体含 溶液製剤においては、抗体の二量体生成や アミド化を防止するための技術はいまだ不 分である。

 長期保存時の二量体生成や脱アミド化が 制された、安定な、皮下投与に適した高濃 抗体含有製剤に対するニーズが存在する。

 本発明の目的は、長期保存時の二量体生 や脱アミド化が抑制された、安定な、皮下 与に適した高濃度抗体含有製剤を提供する とである。

 上記目的を達成するために鋭意研究した 果、本発明者らは、安定化剤としてアミノ であるアルギニンまたはその塩を添加する とにより、高濃度の安定な抗体含有溶液製 となしうることを見いだし、本発明を完成 た。

 すなわち、本発明は以下のものを提供する
(1)アルギニン及びメチオニンを含有すること を特徴とする、安定な抗体含有溶液製剤。
(2)さらにヒスチジン緩衝剤を含む、(1)に記載 の溶液製剤。
(3)さらに界面活性剤を含む、(1)または(2)に記 載の溶液製剤。
(4)抗体の濃度が50mg/ml以上である、(1)~(3)に記 の溶液製剤。
(5)抗体の濃度が100mg/ml以上である、(1)~(3)に記 載の溶液製剤。
(6)抗体の濃度が120mg/ml以上である、(1)~(3)に記 載の溶液製剤。
(7)抗体が抗インターロイキン-6レセプター抗 である、(1)~(6)に記載の溶液製剤。
(8)アルギニンまたはメチオニンを含有するこ とを特徴とする、安定な抗インターロイキン -6レセプター抗体含有溶液製剤。
(9)抗体がヒト化抗体またはヒト抗体である、 (1)~(8)に記載の溶液製剤。
(10)さらにトリプトファンを含む、(1)~(9)に記 の溶液製剤。
(11)pHが4~8である、(1)~(10)に記載の溶液製剤。
(12)アルギニンの含有量が、50~1500mMである、(1 )~(11)に記載の溶液製剤。
(13)粘度が、2~15mPa・sである、(1)~(12)に記載の 液製剤。
(14)溶液製剤が22~28℃で少なくとも6ヶ月間安 である、(1)~(13)に記載の溶液製剤。
(15)抗体二量体の生成が抑制されることを特 とする、(1)~(13)に記載の溶液製剤。
(16)抗体分子の脱アミド化が抑制されること 特徴とする、(1)~(13)に記載の溶液製剤。
(17)皮下投与される、(1)~(13)に記載の溶液製剤 。
(18)溶液製剤の製造過程に凍結乾燥工程を含 ないで製造される、(1)~(13)に記載の溶液製剤 。
(19)溶液中にアルギニンを添加することを含 ,抗体含有溶液製剤の抗体分子の脱アミド化 抑制する方法。
(20)溶液中にアルギニンとメチオニンを添加 ることを含む,抗体含有溶液製剤の抗体二量 生成を抑制する方法。

 凍乾濃縮による再構成の必要がなく、再 解の手間が要らない、高濃度抗体含有製剤 提供される。本発明の高濃度抗体含有製剤 溶液状態で安定に長期保存可能であり、製 過程に凍結乾燥工程を含まないで製造する とができるため、凍結保護剤としての糖な の添加が不要である。

実施例1の典型的なクロマトグラフであ る。 実施例1のゲルろ過クロマトグラフ法(SE C)の評価結果を示す。 実施例1のゲルろ過クロマトグラフ法(SE C)の評価結果を示す。 実施例2の典型的なクロマトグラフであ る。 実施例2のイオン交換クロマトグラフ法 (IEC)の評価結果を示す。 実施例2のイオン交換クロマトグラフ法 (IEC)の評価結果を示す。 実施例3のゲルろ過クロマトグラフ法(SE C)の評価結果を示す。 実施例3のイオン交換クロマトグラフ法 (IEC)の評価結果を示す。

 以下、本発明を詳細に説明する。

 本発明において、抗体含有溶液製剤とは 活性成分として抗体を含み、ヒト等の動物 投与できるように調製された溶液製剤を言 、好ましくは製造過程に凍結乾燥工程を含 ないで製造された溶液製剤を言う。

 本発明の抗体含有溶液製剤は、高濃度の 体を含有する溶液製剤であり、抗体濃度が5 0mg/mL以上であるものが好ましく、さらには100 mg/mL以上であるものが好ましく、120mg/mL以上 あるものがさらに好ましく、150mg/mLがさらに 好ましい。特に、今まで120mg/mL以上、好まし は150mg/mL以上の抗体含有溶液製剤が実用化 れた例はなく、本発明の処方により初めて のような高濃度の抗体含有溶液製剤の実用 が可能となった。

 また、本発明の抗体含有溶液製剤の抗体 度の上限は、製造の観点から、一般的に300m g/mLであり、好ましくは250mg/mLであり、さらに 好ましくは200mg/mLである。よって、本発明の 濃度抗体溶液製剤の抗体濃度は50~300mg/mLが ましく、さらに100~300mg/mLが好ましく、さら 120~250mg/mLが好ましく、特に150~200mg/mLが好ま い。

 本発明に使用される抗体は、所望の抗原 結合する限り特に制限はなく、ポリクロー ル抗体であってもモノクローナル抗体であ てもよいが、均質な抗体を安定に生産でき 点でモノクローナル抗体が好ましい。

 本発明で使用されるモノクローナル抗体 しては、ヒト、マウス、ラット、ハムスタ 、ウサギ、ヒツジ、ラクダ、サル等の動物 来のモノクローナル抗体だけでなく、キメ 抗体、ヒト化抗体、bispecific抗体など人為的 に改変した遺伝子組み換え型抗体も含まれる 。また、抗体の免疫グロブリンクラスは特に 限定されるものではなく、IgG1、IgG2、IgG3、IgG 4などのIgG、IgA、IgD、IgE、IgMなどいずれのク スでもよいが、IgG及びIgMが好ましい。

 さらに本発明の抗体としてはwholeの抗体だ でなく、Fv、Fab、F(ab) 2 などの抗体断片や、抗体の可変領域をペプチ ドリンカー等のリンカーで結合させた1価ま は2価以上の一本鎖Fv(scFv、sc(Fv) 2 やscFvダイマーなどのDiabody等)などの低分子化 抗体なども含まれる。

 上述した本発明の抗体は、当業者に周知 方法により作製することができる。

 モノクローナル抗体を産生するハイブリ ーマは、基本的には公知技術を使用し、以 のようにして作製できる。すなわち、所望 抗原や所望の抗原を発現する細胞を感作抗 として使用して、これを通常の免疫方法に たがって免疫し、得られる免疫細胞を通常 細胞融合法によって公知の親細胞と融合さ 、通常のスクリーニング法により、モノク ーナルな抗体産生細胞(ハイブリドーマ)を クリーニングすることによって作製できる ハイブリドーマの作製は、たとえば、ミル テインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C., Met hods Enzymol. (1981) 73: 3-46 )等に準じて行うこ とができる。抗原の免疫原性が低い場合には 、アルブミン等の免疫原性を有する巨大分子 と結合させ、免疫を行えばよい。

 また、抗体遺伝子をハイブリドーマから ローニングし、適当なベクターに組み込ん 、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術 用いて産生させた遺伝子組換え型抗体を用 ることができる(例えば、Carl, A. K. Borrebaec k, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIE S, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBL ISHERS LTD, 1990 参照)。具体的には、ハイブリ ドーマのmRNAから逆転写酵素を用いて抗体の 変領域(V領域)のcDNAを合成する。目的とする 体のV 領域をコードするDNA が得られれば これを所望の抗体定常領域(C領域)をコード るDNA と連結し、これを発現ベクターへ組み 込む。または、抗体のV 領域をコードするDNA  を、抗体C 領域のDNA を含む発現ベクター 組み込んでもよい。発現制御領域、例えば エンハンサー、プロモーターの制御のもと 発現するよう発現ベクターに組み込む。次 、この発現ベクターにより宿主細胞を形質 換し、抗体を発現させることができる。

 本発明では、ヒトに対する異種抗原性を 下させること等を目的として人為的に改変 た遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chi meric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体などを使用で る。これらの改変抗体は、既知の方法を用 て製造することができる。キメラ抗体は、 ト以外の哺乳動物、例えば、マウス抗体の 鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽 の定常領域からなる抗体であり、マウス抗 の可変領域をコードするDNA をヒト抗体の 常領域をコードするDNA と連結し、これを発 現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生さ せることにより得ることができる。

 ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体と も称され、ヒト以外の哺乳動物、たとえばマ ウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity  determining region)をヒト抗体の相補性決定領域 移植したものであり、その一般的な遺伝子 換え手法も知られている。具体的には、マ ス抗体のCDR とヒト抗体のフレームワーク 域(framework region;FR)を連結するように設計し DNA 配列を、末端部にオーバーラップする 分を有するように作製した数個のオリゴヌ レオチドからPCR 法により合成する。得られ たDNA をヒト抗体定常領域をコードするDNA  連結し、次いで発現ベクターに組み込んで これを宿主に導入し産生させることにより られる(欧州特許出願公開番号EP 239400 、国 特許出願公開番号WO 96/02576 参照)。CDR を して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定 領域が良好な抗原結合部位を形成するものが 選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の 相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成 するように抗体の可変領域のフレームワーク 領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et a l., Cancer Res. (1993) 53, 851-856)。

 また、ヒト抗体の取得方法も知られてい 。例えば、ヒトリンパ球をin vitroで所望の 原または所望の抗原を発現する細胞で感作 、感作リンパ球をヒトミエローマ細胞、例 ばU266と融合させ、抗原への結合活性を有す る所望のヒト抗体を得ることもできる(特公 1-59878 参照)。また、ヒト抗体遺伝子の全て レパートリーを有するトランスジェニック 物を抗原で免疫することで所望のヒト抗体 取得することができる(国際特許出願公開番 号WO 93/12227, WO 92/03918,WO 94/02602, WO 94/25585,W O 96/34096, WO 96/33735参照)。さらに、ヒト抗体 ライブラリーを用いて、パンニングによりヒ ト抗体を取得する技術も知られている。例え ば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)と してファージディスプレイ法によりファージ の表面に発現させ、抗原に結合するファージ を選択することができる。選択されたファー ジの遺伝子を解析すれば、抗原に結合するヒ ト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定 することができる。抗原に結合するscFvのDNA 列が明らかになれば、当該配列を含む適当 発現ベクターを作製し、ヒト抗体を取得す ことができる。これらの方法は既に衆知で り、WO 92/01047, WO 92/20791, WO 93/06213, WO 93/1 1236, WO 93/19172, WO 95/01438, WO 95/15388を参考 することができる。

 抗体遺伝子を一旦単離し、適当な宿主に 入して抗体を作製する場合には、適当な宿 と発現ベクターの組み合わせを使用するこ ができる。真核細胞を宿主として使用する 合、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を用い ことができる。動物細胞としては、(1) 哺 類細胞、例えば、CHO, COS,ミエローマ、BHK (b aby hamster kidney ),HeLa,Vero,(2) 両生類細胞、例 えば、アフリカツメガエル卵母細胞、あるい は(3) 昆虫細胞、例えば、sf9, sf21, Tn5などが 知られている。植物細胞としては、ニコティ アナ(Nicotiana)属、例えばニコティアナ・タバ ム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が知られてお 、これをカルス培養すればよい。真菌細胞 しては、酵母、例えば、サッカロミセス(Sacc haromyces )属、例えばサッカロミセス・セレビ シエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えば、 アスペルギルス(Aspergillus )属、例えばアスペ スギルス・ニガー(Aspergillus niger )などが知 れている。原核細胞を使用する場合、細菌 胞を用いる産生系がある。細菌細胞として 、大腸菌(E. coli )、枯草菌が知られている これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を 質転換により導入し、形質転換された細胞 in vitroで培養することにより抗体が得られ 。

 さらに、本発明の抗体は、その抗体断片や 分子化抗体、並びに抗体修飾物であってよ 。例えば、抗体断片や低分子化抗体として Fab、F(ab')2、Fv又はH鎖とL鎖のFvを適当なリン カーで連結させた一価又は二価以上のシング ルチェインFv(scFv、sc(Fv) 2 など) (Huston, J. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sc i. U.S.A. (1988) 85, 5879-5883) が挙げられる。 体的には、抗体を酵素、例えば、パパイン ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか 又は、これら抗体断片をコードする遺伝子 構築し、これを発現ベクターに導入した後 適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co, M.  S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976 ; Be tter, M. and Horwitz, A. H., Methods Enzymol. (1989)  178, 476-496 ; Pluckthun, A. and Skerra, A., Metho ds Enzymol. (1989) 178, 497-515 ; Lamoyi, E., Method s Enzymol. (1986) 121, 652-663 ; Rousseaux, J. et a l., Methods Enzymol. (1986) 121, 663-669 ; Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol. (1991) 9, 132-137参照)。

 抗体修飾物として、ポリエチレングリコ ル(PEG)等の各種分子と結合した抗体を使用 ることもできる。本発明の「抗体」にはこ らの抗体修飾物も包含される。このような 体修飾物を得るには、得られた抗体に化学 な修飾を施すことによって得ることができ 。これらの方法はこの分野において既に確 されている。

 本発明の製剤に含まれる抗体としては、 組織因子抗体、抗IL-6レセプター抗体、抗IL- 6抗体、HM1.24抗原モノクローナル抗体、抗副 状腺ホルモン関連ペプチド抗体(抗PTHrP抗体) 抗グリピカン-3 抗体、抗ガングリオシドGM3 抗体、抗TPO受容体アゴニスト抗体、凝固第VII I因子代替抗体、抗CD3抗体、抗CD20抗体、抗GPII b/IIIa抗体、抗TNF抗体、抗CD25抗体、抗EGFR抗体 抗Her2/neu抗体、抗RSV抗体、抗CD33抗体、抗CD52 抗体、抗IgE抗体、抗CD11a抗体、抗VEGF抗体、抗 VLA4抗体、抗AXL抗体などを挙げることができ が、これに限定されない。

 再構成ヒト化抗体としては、ヒト化抗イ ターロイキン6(IL-6)レセプター抗体(hPM-1ある いはMRA)(国際特許出願公開番号WO92-19759を参照 )、ヒト化抗HM1.24抗原モノクローナル抗体(国 特許出願公開番号WO98-14580を参照)、ヒト化 副甲状腺ホルモン関連ペプチド抗体(抗PTHrP 体)(国際特許出願公開番号WO98-13388を参照)、 ト化抗組織因子抗体(国際特許出願公開番号 WO99-51743を参照)、抗グリピカン-3 ヒト化IgG1κ 抗体(国際特許出願番号PCT/JP05/013103を参照)な が本発明で使用する好ましい抗体である。 発明で使用するヒト化抗体として特に好ま いのは、ヒト化抗IL-6レセプター抗体である 。

 ヒトIgM抗体としては、抗ガングリオシドG M3 組み換え型ヒトIgM抗体(国際特許出願公開 号WO05-05636を参照)などが好ましい。

 低分子化抗体としては、抗TPO受容体アゴ ストDiabody(国際特許出願公開番号WO02-33072を 照)、抗CD47アゴニストDiabody(国際特許出願公 開番号WO01-66737を参照)などが好ましい。

 本発明者らは、高濃度抗体含有試料の保 時の安定性を評価するために、熱加速試験 び光加速試験により種々の添加剤の効果を 討した。その結果、アミノ酸であるアルギ ンを含有する緩衝液中に高濃度の抗体を溶 した溶液は、アルギニン非添加の溶液に比 て、二量体生成量が低いことから、二量体 成を抑制する安定化剤としてアルギニンが 効であることを見出した。さらに、アルギ ンに加えてメチオニンを含有する緩衝液中 高濃度の抗体を溶解した溶液において、ア ギニンとメチオニンの合計濃度にしてアル ニン単独の場合よりも低濃度で同様の二量 生成の抑制効果が観察されたことから、ア ギニンとメチオニンの併用による相乗効果 発揮されることを見出した。また、アルギ ンの添加により抗体分子の脱アミド化が抑 されることを見出した。これらの検討結果 、本明細書中の後述の実施例において、180m g/mlのヒト化抗IL-6レセプター抗体を含有する 料を用いた試験結果として例示されている

 すなわち、安定化剤としてアルギニンを 有することにより、抗体の二量体の生成が なく、脱アミド化が防止された安定な抗体 剤とすることができる。したがって、本発 の第一の態様は、溶液中にアルギニンを添 することを特徴とし、これにより抗体含有 液製剤の抗体分子の二量体生成または脱ア ド化を抑制することに関する。そして、安 な抗体含有溶液製剤としての態様は、抗体 よびアルギニンを緩衝液中に含有すること 特徴とするものである。また、上述のよう 、本発明の抗体含有溶液製剤は、さらにメ オニンを含むことにより、アルギニンとメ オニンの併用による相乗効果が発揮される したがって、本発明の第二の態様は、溶液 にアルギニンとメチオニンを添加すること 特徴とし、特に、抗体含有溶液製剤の抗体 量体生成を抑制することに関する。そして 安定な抗体含有溶液製剤としての態様は、 体およびアルギニンおよびメチオニンを緩 液中に含有することを特徴とするものであ 。

 本発明で使用するアルギニンとしては、 品、その誘導体、その塩のいずれを用いて よく、特に、L-アルギニンまたはその塩が ましい。本発明で使用するメチオニンとし は、単品、その誘導体、その塩のいずれを いてもよく、特に、L-メチオニンまたはその 塩が望ましい。

 本発明の抗体含有溶液製剤中にメチオニ 非添加でアルギニンのみが含まれるときは アルギニンの量は、50~1500mMであることが好 しく、100~1000mMであることがより好ましく、 200~700mMであることがさらに好ましい。本発明 の抗体含有溶液製剤中にアルギニンおよびメ チオニンが含まれるときは、アルギニンとメ チオニンの合計濃度が50~1200mMであること、例 えばアルギニンの量が40~1000mMであり且つメチ オニンの量が10~200mMであることが好ましく、 ルギニンの量が50~700mMであり且つメチオニ の量が10~100mMであることがより好ましく、ア ルギニンの量が100~300mMであり且つメチオニン の量が10~50mMであることがさらに好ましい。

 緩衝液は、溶液のpHを維持するための物 である緩衝剤を使用して調製する。本発明 高濃度抗体含有溶液製剤においては、溶液 pHが4~8であることが好ましく、5.0~7.5である とがより好ましく、5.5~7.2であることがさら 好ましく、6.0~6.5であることがなおさらに好 ましい。本発明で使用可能な緩衝剤は、この 範囲のpHを調整でき、且つ医薬的に許容可能 ものである。このような緩衝剤は溶液製剤 分野で当業者に公知であり、例えば、リン 塩(ナトリウムまたはカリウム)、炭酸水素 トリウムなどの無機塩;クエン酸塩(ナトリウ ムまたはカリウム)、酢酸ナトリウム、コハ 酸ナトリウムなどの有機酸塩;または、リン 、炭酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、 ルコン酸などの酸類を使用できる。さらに Tris類及びMES、MOPS、HEPESのようなグッド緩衝 剤、ヒスチジン(例えばヒスチジン塩酸塩)、 リシンなどを使用してもよい。本発明の高 度抗体含有溶液製剤においては、緩衝液が スチジン緩衝液またはグリシン緩衝液であ ことが好ましく、特にヒスチジン緩衝液が ましい。緩衝液の濃度は、一般には1~500mMで あり、好ましくは5~100mMであり、さらに好ま くは10~20mMである。ヒスチジン緩衝液を使用 る場合、緩衝液は好ましくは5~25mMのヒスチ ン、さらに好ましくは10~20mMのヒスチジンを 含有する。

 本発明の「安定な」高濃度抗体含有溶液 剤は、冷蔵温度(2~8℃)で少なくとも12ヶ月、 好ましくは2年間、さらに好ましくは3年間;ま たは室温(22~28℃)で少なくとも3ヶ月、好まし は6ヶ月、さらに好ましくは1年間、有意な 化が観察されない。例えば、5℃で2年間保存 後の二量体量及び分解物量の合計が5.0%以下 好ましくは2%以下、さらに好ましくは1.5%以 、あるいは25℃で6ヶ月保存後の二量体量及 分解物量の合計が5.0%以下、好ましくは2%以 、さらに好ましくは1.5%以下である。

 本発明の製剤は、さらに界面活性剤を含 することができる。

 界面活性剤としては、非イオン界面活性剤 例えばソルビタンモノカプリレート、ソル タンモノラウレート、ソルビタンモノパル テート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリ セリンモノカプリレート、グリセリンモノミ リテート、グリセリンモノステアレート等の グリセリン脂肪酸エステル;デカグリセリル ノステアレート、デカグリセリルジステア ート、デカグリセリルモノリノレート等の リグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエ レンソルビタンモノラウレート、ポリオキ エチレンソルビタンモノオレエート、ポリ キシエチレンソルビタンモノステアレート ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミ ート、ポリオキシエチレンソルビタントリ レエート、ポリオキシエチレンソルビタン リステアレート等のポリオキシエチレンソ ビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン ソルビットテトラステアレート、ポリオキシ エチレンソルビットテトラオレエート等のポ リオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル ;ポリオキシエチレングリセリルモノステア ート等のポリオキシエチレングリセリン脂 酸エステル;ポリエチレングリコールジステ レート等のポリエチレングリコール脂肪酸 ステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテ ル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル ;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン リコールエーテル、ポリオキシエチレンポ オキシプロピレンプロピルエーテル、ポリ キシエチレンポリオキシプロピレンセチル ーテル等のポリオキシエチレンポリオキシ ロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチ レンノニルフェニルエーテル等のポリオキ エチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオ キシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン 硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン水素ヒマ 油)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポ リオキシエチレンソルビットミツロウ等のポ リオキシエチレンミツロウ誘導体;ポリオキ エチレンラノリン等のポリオキシエチレン ノリン誘導体;ポリオキシエチレンステアリ 酸アミド等のポリオキシエチレン脂肪酸ア ド等のHLB6~18を有するもの;陰イオン界面活 剤、例えばセチル硫酸ナトリウム、ラウリ 硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム の炭素原子数10~18のアルキル基を有するアル キル硫酸塩;ポリオキシエチレンラウリル硫 ナトリウム等の、エチレンオキシドの平均 加モル数が2~4でアルキル基の炭素原子数が10 ~18であるポリオキシエチレンアルキルエーテ ル硫酸塩;ラウリルスルホコハク酸エステル トリウム等の、アルキル基の炭素原子数が8~ 18のアルキルスルホコハク酸エステル塩;天然 系の界面活性剤、例えばレシチン、グリセロ リン脂質;スフィンゴミエリン等のフィンゴ ン脂質;炭素原子数12~18の脂肪酸のショ糖脂 酸エステル等を典型的例として挙げること できる。本発明の製剤には、これらの界面 性剤の1種または2種以上を組み合わせて添加 することが
できる。

 好ましい界面活性剤はポリオキシエチレ ソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシ チレンポリオキシプロピレンアルキルエー ルであり、特に好ましいのはポリソルベー 20、21、40、60、65、80、81、85並びにプルロニ ック型界面活性剤であり、最も好ましいのは ポリソルベート20、80及びプルロニックF-68(ポ ロキサマー188)である。

 本発明の抗体製剤に添加する界面活性剤 添加量は、一般には0.0001~10%(w/v)であり、好 しくは0.001~5%であり、さらに好ましくは0.005 ~3%である。

 本発明の別の態様として、本発明の製剤は ましくは以下の成分:
A)抗IL-6レセプター抗体
B)アルギニンおよび/またはメチオニン、およ び任意の追加成分としてさらに別のアミノ酸 (例えばトリプトファン)
C)緩衝剤、及び
D)界面活性剤
から実質的に構成される。

 「実質的に構成される」とは、後述する 意の添加成分である懸濁剤、溶解補助剤、 張化剤、保存剤、吸着防止剤、希釈剤、賦 剤、pH調整剤、無痛化剤、含硫還元剤、酸 防止剤等の通常製剤に添加される成分以外 成分を含まないことを意味する。

 上記(B)の「アルギニンおよび/またはメチ オニン、および任意の追加成分としてさらに 別のアミノ酸(例えばトリプトファン)」とは 製剤に含有し得る添加剤としてのアミノ酸 種類が、(b-1)アルギニン;(b-2)アルギニンお びメチオニン;(b-3)メチオニン、の場合を含 、さらに別のアミノ酸を含む場合があるこ を意味する。別のアミノ酸として、好まし 例はトリプトファンであり、トリプトファ としては、単品、その誘導体、その塩のい れを用いてもよく、特に、L-トリプトファン またはその塩が望ましい。

 本発明の製剤には、必要に応じて、懸濁 、溶解補助剤、等張化剤、保存剤、吸着防 剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤 含硫還元剤、酸化防止剤等を適宜添加する とができる。

 懸濁剤の例としては、メチルセルロース ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセル ース、アラビアゴム、トラガント末、カル キシメチルセルロースナトリウム、ポリオ シエチレンソルビタンモノラウレート等を げることができる。

 溶液補助剤としては、ポリオキシエチレ 硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、ニコチ 酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタン ノラウレート、マグロゴール、ヒマシ油脂 酸エチルエステル等を挙げることができる

 等張化剤としては例えば、塩化ナトリウ 、塩化カリウム、塩化カルシウム等を挙げ ことができる。

 保存剤としては例えば、パラオキシ安息 酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、ソ ビン酸、フェノール、クレゾール、クロロ レゾール等を挙げることができる。

 吸着防止剤としては例えば、ヒト血清ア ブミン、レシチン、デキストラン、エチレ オキサイド・プロピレンオキサイド共重合 、ヒドロキシプロピルセルロース、メチル ルロース、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ 、ポリエチレングリコール等を挙げること できる。

 含硫還元剤としては例えば、N-アセチル ステイン、N-アセチルホモシステイン、チオ クト酸、チオジグリコール、チオエタノール アミン、チオグリセロール、チオソルビトー ル、チオグリコール酸及びその塩、チオ硫酸 ナトリウム、グルタチオン、炭素原子数1~7の チオアルカン酸等のスルフヒドリル基を有す るもの等が挙げられる。

 酸化防止剤としては例えば、エリソルビ 酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチル ドロキシアニソール、α-トコフェロール、 酸トコフェロール、L-アスコルビン酸及び の塩、L-アスコルビン酸パルミテート、L-ア コルビン酸ステアレート、亜硫酸水素ナト ウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリア ル、没食子酸プロピルあるいはエチレンジ ミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸 トリウム、メタリン酸ナトリウム等のキレ ト剤が挙げられる。

 本発明の抗体含有溶液製剤は通常非経口 与経路で、例えば注射剤(皮下注、静注、筋 注など)、経皮、経粘膜、経鼻、経肺などで 与されるが、経口投与も可能である。皮下 射用としては、1回あたりの抗体投与量が大 となる一方で(100~200mg-程度)、注射液量の制 があるため、本発明の製剤は皮下注射用と て特に適している。

 好ましくは、本発明の抗体含有溶液製剤 浸透圧比は、約0.5~4、より好ましくは、約0. 7~2、さらに好ましくは、約1である。

 好ましくは、本発明の抗体含有溶液製剤 粘度は、約2~15mPa・s、さらに好ましくは約4~ 10mPa・sである。ただし,本発明の粘度はコー プレート型粘度計を用いた回転粘度計法(第1 5改正 日本薬局方 一般試験法 2.53 粘度測 法)で測定したものである。

 本発明では、後述する実施例の結果から アルギニン単独、または、アルギニンとメ オニン、またはメチオニン単独を添加する とにより、長期保存時も抗体の二量体生成 脱アミド化が少ない安定な溶液製剤を得る とができる。

 本発明のさらに別の態様として、溶液中 アルギニンまたはその塩を添加することを む,抗体含有溶液製剤の脱アミド化を抑制す る方法が提供される。

 さらに別の態様として、溶液中にアルギ ンとメチオニンを添加することを含む、抗 含有溶液製剤の抗体二量体生成を抑制する 法が提供される。

 前記の二つの方法において、抗体は、好 しくはヒト化抗体またはヒト抗体である抗 ンターロイキン-6レセプター抗体である。

 本発明を以下の実施例によってさらに詳 く説明するが、本発明の範囲はこれらのみ 限定されるものではない。

 [実施例]
抗体試料
 抗IL-6レセプターヒト化抗体は国際特許出願 公開番号WO92/19759号公報の実施例10に記載され たヒトエロンゲーションファクターIαプロモ ーターを利用し、特開平8-99902号公報の参考 2に記載された方法に準じて作成したヒト化 体である。なお、実施例の表中ではMRAと記 することもある。

  アルギニンとメチオニンとの組合 せによる安定化効果
 抗IL-6レセプターヒト化抗体を含む溶液製剤 について、アルギニンとメチオニンの組合せ が製剤の安定化に及ぼす影響を評価した。

 本検討では、アルギニンとメチオニンの 合せ効果を評価するために、試料No.A1~A9の 価試料を調製した。各評価試料の処方は以 の通りである。

 溶液製剤の安定性を評価するために、各試 の熱加速試験(40℃-3ヶ月及び25℃-6ヶ月保存) を行った。そして、熱加速前後における抗体 の純度を、ゲルろ過クロマトグラフ法(SEC)に り評価した。分析条件は以下の通りである
[ゲルろ過クロマトグラフ法]
 試料をそのまま測定溶液とする。

 測定溶液1μLにつき、以下の条件で液体ク ロマトグラフ法により試験を行い、二量体(Di mer)、単量体(Monomer)、低分子量分解物(LMW)のピ ーク面積を自動分析法により測定し、その量 (%)を求める。

 典型的なクロマトグラフを図1に示す。

 本実施例で得られたゲルろ過クロマトグ フ法(SEC)の評価結果を表1及び図2、図3に示 た。このように、アルギニンを添加した試 (試料No. A2~A6)について、40℃-3ヶ月間及び25 -6ヶ月間の加速による二量体量はアルギニン 非添加の試料(試料No. A1)に比べて低く、アル ギニンによる二量体生成の抑制効果を確認す ることができた。また、アルギニン添加量に 比例して二量体量は低くなることも確認する ことができた。一方、アルギニン(100 mM)にメ チオニンを添加した試料(試料No. A7~A9)につい て、40℃-3ヶ月間及び25℃-6ヶ月間の加速によ 二量体量は、全安定化剤濃度としてほぼ同 であるアルギニン濃度が150 mMの試料(試料No . A3, A4)より低く、アルギニン濃度が300 mMの 試料(試料No. A6)と同等であった。この結果は 、アルギニンとメチオニンの組合わせによる 相乗効果としての二量体生成の抑制効果を示 すと考えられる。

 また、低分子量分解物量について、アル ニン及びメチオニンの影響は認められなか た。

  アルギニンによる脱アミド化の抑 制効果
 抗IL-6レセプターヒト化抗体を含む溶液製剤 について、アルギニンによる脱アミド化の抑 制効果を評価した。

 本検討では、アルギニン及びメチオニン ついて、添加量の異なる試料No.A10~A15及び試 料No.A16~A18の評価試料を調製した。各評価試 の処方は以下の通りである。

 溶液製剤の安定性を評価するために、各試 の熱加速試験(40℃-3ヶ月及び25℃-6ヶ月保存) を行った。そして、熱加速前後における抗体 の純度を、イオン交換クロマトグラフ法(IEC) より評価した。分析条件は以下の通りであ 。

 [イオン交換クロマトグラフ法]
 試料に精製水を加えて1mL中に抗IL-6レセプタ ーヒト化抗体を約1mg 相当量含む液を調製し ものを各試料の測定溶液とする。

 測定溶液30μLにつき、以下の条件で液体 ロマトグラフ法により試験を行い、各々の ーク面積を自動分析法により測定し、面積 分率法によりMRA Pre, MRA Main, MRA Sub-1, MRA  Sub-2, MRA R-1, 1Q(H)-MRA, 2Q(H)-MRA及びその他の 縁物質(Others)の量(%)を求める。

 MRA Preは主成分よりも短い保持時間で溶 されるピークの総和であり、抗IL-6レセプタ ヒト化抗体の脱アミド体を中心とした複数 分解物が含まれる。このPreピークの生成量 少ないことは本抗体の脱アミド化が抑制さ ていることを意味する。

 典型的なクロマトグラフを図4に示す。MRA P reはMRA Mainより前に出てくる全てのピークの 和である。

 本実施例によるイオン交換クロマトグラ 法(IEC)の評価結果を表2及び図5、図6に示し 。このように、アルギニンを添加した試料( 料No. A11~A15)について、40℃-3ヶ月間及び25℃ -6ヶ月間の加速によるPreピーク量は、アルギ ン非添加の試料(試料No. A10)に比べて低く、 アルギニンによるPreピーク生成の抑制効果を 確認することができた。また、アルギニン添 加量に比例してPreピーク量は低くなることも 確認することができた。一方、メチオニンを 添加した試料(試料No. A16~A18)について、40℃-3 ヶ月間及び25℃-6ヶ月間の加速によるPreピー 量はアルギニン非添加の試料(試料No. A10)と 等であり、メチオニン添加の影響は認めら なかった。

  アルギニンとメチオニンとの組合 せによる安定化効果 (2)
 実施例1と同様に抗IL-6レセプターヒト化抗 を含む溶液製剤について、アルギニンとメ オニンの組合せが製剤の安定化に及ぼす影 を評価した。

 本検討では、アルギニンとメチオニンの 合せ効果を評価するために、試料No.A19~A27の 評価試料を調製した。各評価試料の処方は以 下の通りである。

 溶液製剤の安定性を評価するために、各試 の光加速試験(総照度 120万lux及び総近紫外 射エネルギー 200 W・h/m 2 )を行った。そして、光加速前後における抗 の純度を、実施例1、2と同様のゲルろ過クロ マトグラフ法(SEC)及びイオン交換クロマトグ フ法(IEC)により評価した。

 本実施例におけるゲルろ過クロマトグラ 法(SEC)の評価結果を表3及び図7に示した。こ のように、アルギニンを添加した試料(試料No . A20~A24)について、光加速による二量体量は ルギニン非添加の試料(試料No. A19)に比べて 低く、アルギニンによる二量体生成の抑制効 果を確認することができた。また、アルギニ ン添加量に比例して二量体量は低くなること も確認することができた。一方、アルギニン (100 mM)にメチオニンを添加した試料(試料No.  A25~A27)について、光加速による二量体量は、 安定化剤濃度としてほぼ同じであるアルギ ン濃度が150 mMの試料(試料No. A22)より低く また、アルギニン濃度が200mM及び300 mMの試 (試料No. A23, A24)よりも低かった。この結果 、アルギニンとメチオニンの組合わせによ 相乗効果としての二量体生成の抑制効果を すと考えられる。

 低分子量分解物量について、アルギニン びメチオニンの影響は認められなかった。

 次に、イオン交換クロマトグラフ法(IEC)の 価結果を表4及び図8に示した。

 このように、アルギニンを添加した試料( 試料No. A20~A24)について、光加速によるPre pea k量はアルギニン非添加の試料(試料No. A19)に べて低く、アルギニンによるPre peak生成の 制効果を確認することができた。また、ア ギニン添加量に比例してPre peak量は低くな ことも確認することができた。一方、アル ニン(100 mM)にメチオニンを添加した試料(試 料No. A25~A27)について、光加速による二量体 は、全安定化剤濃度としてほぼ同じである ルギニン濃度が150 mMの試料(試料No. A22)より 低く、また、アルギニン濃度が200mM及び300 mM の試料(試料No. A23, A24)よりも低かった。こ 結果は、アルギニンとメチオニンの組合わ による相乗効果としてのPre peak生成の抑制 果を示すと考えられる。