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Title:
SPUTTERING TARGET OF NONMAGNETIC-IN-FERROMAGNETIC DISPERSION TYPE MATERIAL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/119812
Kind Code:
A1
Abstract:
A sputtering target consisting of a nonmagnetic-in -ferromagnetic dispersion type material. This sputtering target comprises a phase (A) composed of both a ferromagnetic Co-Cr alloy material consisting of 5 to 20 at% Cr and the balance Co and nonmagnetic material particles dispersed in the ferromagnetic Co-Cr alloy material and a flaky structure (B) of a Co-Cr alloy phase which is present in the phase (A) and 30 to 100 μm in breadth and 50 to 300 μm in length. The nonmagnetic material particles are each smaller than any imaginary circle formed with a radius of 1μm around an arbitrary point present within the particle, or alternatively the nonmagnetic material particles have each such shape and dimension that at least two contact or intersection points exist between the imaginary circle and the interface between the ferromagnetic material and the nonmagnetic material. The sputtering target attains high PTF (pass through flux) and enables high-speed film formation by a DC magnetron sputtering device. Further, the sputtering target is decreased in the quantity of particles (dust) or nodules generated in sputtering, so that the variation of quality is reduced to bring about improvement in the mass productivity. The sputtering target comprises fine crystal grains and has a high density.

Inventors:
SATO ATSUSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/056298
Publication Date:
October 01, 2009
Filing Date:
March 27, 2009
Export Citation:
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Assignee:
NIPPON MINING CO (JP)
SATO ATSUSHI (JP)
International Classes:
C23C14/34; C22C1/05; C22C1/10; C22C19/07; C22C32/00; C22C49/08; C22C49/14; G11B5/851; H01F10/16; H01F41/18
Domestic Patent References:
WO2005093124A12005-10-06
WO2007080781A12007-07-19
Foreign References:
JP2006176808A2006-07-06
JP2008163438A2008-07-17
JP2008169464A2008-07-24
Attorney, Agent or Firm:
OGOSHI, Isamu (JP)
Isamu Ogoshi (JP)
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Claims:
 Crが5at%以上20at%以下、残余がCoであるCo-Cr合金からなる強磁性材料の中に、酸化物からなる非磁性材粒子が分散した非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットにおいて、強磁性体材料の中に前記非磁性材粒子が分散した相(A)と、前記相(A)の中に、短片が30~100μmであり、長片が50~300μmのCo-Cr合金相からなる片状組織(B)を有しており、さらに前記非磁性材粒子は、非磁性材粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さいか又は該仮想円と強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法を備えていることを特徴とする非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
 組織(B)は、中心付近にCrが25at%以上濃縮し、外周部にかけてCrの含有量が中心部より低くなる組成のCo-Cr合金相を形成していることを特徴とする請求項1記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
 Crが5at%以上20at%以下、Ptが5at%以上30at%以下、残余がCoであるCo-Cr-Pt合金からなる強磁性材料の中に、酸化物からなる非磁性材粒子が分散した非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットにおいて、強磁性体材料の中に前記非磁性材粒子が分散した相(A)と、前記相(A)の中に、短片が30~100μmであり、長片が50~300μmのCo-Cr-Pt合金相からなる片状組織(B)を有しており、さらに前記非磁性材粒子は、非磁性材粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は該仮想円と強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法を備えていることを特徴とする非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
 組織(B)は、中心付近にCrが25at%以上濃縮し、外周部にかけてCrの含有量が中心部より低くなる組成のCo-Cr-Pt合金相を形成していることを特徴とする請求項3記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
 Crが5at%以上20at%以下、Ptが5at%以上30at%以下、Bが0.5at%以上8at%以下、残余がCoであるCo-Cr-Pt-B合金からなる強磁性材料の中に、酸化物からなる非磁性材粒子が分散した非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲットにおいて、強磁性体材料の中に前記非磁性材粒子が分散した相(A)と、前記相(A)の中に、短片が30~100mμであり、長片が50~300mμのCo-Cr-Pt-B合金相からなる片状組織(B)を有しており、さらに前記非磁性材粒子は、非磁性材粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも小さいか、又は該仮想円と強磁性材と非磁性材の界面との間で、少なくとも2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸法を備えていることを特徴とする非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
 組織(B)は、中心付近にCrが25at%以上濃縮し、外周部にかけてCrの含有量が中心部より低くなる組成のCo-Cr-Pt-B合金相を形成していることを特徴とする請求項5記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
 ターゲットのいずれの切断面においても、非磁性材粒子が分散した相(A)を含む切断面全体の面積において、組織(B)の占める面積の比率が4%以上30%以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
 非磁性材料が、Cr、Ta、Si、Ti、Zr、Al、Nb、Bから選択した1種以上の酸化物であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
 ターゲット中で、酸化物からなる非磁性材料の体積比率が、10%以上30%以下であることを特徴とする請求項8記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
 相対密度が97%以上であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット。
 
Description:
非磁性材粒子分散型強磁性材ス ッタリングターゲット

 本発明は、非磁性材粒子分散型強磁性材 パッタリングターゲットに関し、特にPTF(漏 れ磁束)を向上させて、DCマグネトロンスパッ タ装置を用いて効率的なスパッタリングを行 うことができるターゲットに関する。また、 スパッタリングによって膜を形成する際に、 安定したスパッタリングが可能で、最適な成 膜速度が得られ、スパッタ時のアーキングが 少なく、これに起因して発生するパーティク ル(発塵)やノジュールを低減でき、且つ高密 で品質のばらつきが少なく量産性を向上さ ることのできる非磁性材粒子分散型強磁性 スパッタリングターゲットに関する。

 磁気記録の分野では、磁性体薄膜中に非磁 材料を共存させることにより磁気特性を向 する技術が開発されている。その例として 磁性材薄膜中に非磁性材料の微粒子を存在 せることにより、透磁率などの軟磁気特性 向上させるものや、磁性体薄膜材料中の金 微粒子間の磁気的相互作用を非磁性材料に り遮断、または弱めることにより保磁力な 磁気記録媒体としての各種特性を向上させ ものなどがある。
 このような薄膜材料は通常スパッタリング より作製されるが、絶縁性若しくは高抵抗 ある非磁性材料と低抵抗である金属からな 強磁性材料とを同時にスパッタリングする 要がある。

 スパッタリング法とは、正の電極となる基 と負の電極となるターゲットを対向させ、 活性ガス雰囲気下で、該基板とターゲット に高電圧または高周波を印加して電場を発 させるものである。
 この時、不活性ガスが電離し、電子と陽イ ンからなるプラズマが形成され、このプラ マ中の陽イオンがターゲット(負の電極)表 に衝突してターゲット構成原子が叩き出さ るが、この飛び出した原子が対向する基板 面に付着して膜が形成されるという原理を いたものである。
 一般的なスパッタリング法としては、RF(高 波)スパッタリング法とDC(直流)スパッタリ グ法があるが、上記のように抵抗の大きく なる材料を同時にスパッタリングするため は、絶縁体がスパッタリングできるRFスパッ タリング法が使用される場合が多い。

 ところが、このRF(高周波)スパッタリング装 置は、装置自体が高価であるばかりでなく、 スパッタリング効率が悪く、電力消費量が大 きく、制御が複雑であり、成膜速度も遅いと いう多くの欠点がある。また、成膜速度を上 げるため、高電力を加えた場合、基板温度が 上昇し、基板及び成膜材料の変質を起こすな どの問題がある。
 もう一方のDCスパッタリング法は、ターゲ トの裏側に磁石を配置し、ターゲット表面 漏れ出る磁束によって、プラズマをターゲ ト近傍に封じ込めることを可能としたDCマグ ネトロンスパッタ装置を使用すれば、RFスパ タリング法と比べて、消費電力が少なくか 高速成膜が可能であり、量産性に優れると う特徴をもつ。また、プラズマが基板に与 る影響が少ないため一般的には高品質の膜 作製できるとされる。
 したがって、非磁性材と強磁性材を同時に パッタリングするためのスパッタリングタ ゲットにおいても、極力DCマグネトロンス ッタリング装置によって成膜が可能となる うな工夫がなされる。ただしDCスパッタリン グ法を用いる場合、ターゲット自体が導電性 を備えていることが必要となる。

 ターゲットが導電性を備えていたとしても 酸化物、珪化物等の非導電性材料が多量に まれるターゲットは、ターゲットのバルク 抗値が高くなるため、DCスパッタリング法 よる成膜が難しくなる。
 そのため、酸化物等の非磁性材料を細かく 状に分散させた組織をもつスパッタリング ーゲットの工夫がなされている。しかし、 のような工夫がなされても、パーティクル 大量に発生するという問題があり、またPTF( 漏れ磁束)が少なく、成膜速度が低いという 題があった。

 いくつか公知技術があるので、以下にそ を紹介する。その1として、急冷凝固法で作 製した合金相を持つ合金粉末とセラミック相 の粉末をメカニカルアロイングする方法が提 案されている(特許文献1参照)。そして、この 方法は、セラミックス相粉末を合金粉末中に 均質に分散させた合金粉末を作製した後、ホ ットプレスにより成形するという磁気記録媒 体用スパッタリングターゲットを得るという ものである。

 また、その2として、シリカ相が線分法で求 めた平均幅が0.5~5μmの範囲にあるシリカ相とC r、Pt相を含有するCo基合金が提案されている( 特許文献2参照)。この場合のシリカ粉末は、 温火炎加水分解法で製造するという特殊な 法が用いられている。
 しかし、これらの方法で得られた材料は、 者(その1)では、単に極力均質な粒子の作製 目途とするものであり、また後者(その2)は 網目状に分散したターゲット組織が得られ いるが、ところどころに粗大粒が存在して るという状況が見られる。このような方法 は、後述するようにスパッタリングによっ 膜を形成する際にパーティクルが極端に増 し、ターゲット材料には適合しないことが く予想される。

 また、磁性材ターゲットの例として、CoPt系 スパッタリングターゲット(特許文献3参照)、 あるいはPTFを高めたスパッタリングターゲッ ト(特許文献4)が開示されている。しかし、こ れらはいずれも、金属(合金)をターゲットと るもので、非磁性材粒子が分散したターゲ トの課題を有していない。
 特許文献6、7、8に、平均粒径20μmのCo-Cr合金 粉末、Co-Cr-B合金粉末又はCo-Cr-Pt合金粉末を原 料粉に用い、焼結時の拡散を極力抑えて、タ ーゲットの組織を複相構造にすることによっ て、PTF(漏れ磁束)を向上させる技術が開示さ ている。しかし、この場合、焼結温度を低 設定する必要があり、その結果、密度が低 なり、パーティクル発生等の、別の問題が じるため、ターゲット特性の向上を期待で ないという問題を有している。
 このようなことから、本特許出願人は、強 性材の中に非磁性材の粒子が分散した相の 善を図って、スパッタ時に発生するパーテ クル(発塵)やノジュールを低減させ、品質 ばらつきが少なく量産性を向上させること できる高密度の非磁性材粒子分散型強磁性 スパッタリングターゲットを開発した(特許 献5参照)。本願発明は、これをさらに改良 るものである。

特開平10-88333号公報

特開2004-339586号公報

特開2000-282229号公報

特開2005-530925号公報

特願2006-6575号

特開2009-1860号公報

特開2009-1861号公報

特開2009-1862号公報

 本発明は、スパッタリングによって膜を 成する際に、PTF(漏れ磁束)を高め、DCマグネ トロンスパッタ装置による高効率な成膜が可 能であり、さらにスパッタ時に発生するパー ティクル(発塵)やノジュールを低減させ、品 のばらつきが少なく量産性を向上させるこ ができ、かつ結晶粒が微細であり高密度の 磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリング ーゲット、特に磁気記録層としての使用に 適であるスパッタリングターゲットを得る とを目的とする。

 上記の課題を解決するために、本発明者 は鋭意研究を行った結果、磁性材料である 属(合金)の組織・構造及び非磁性材粒子分 の形態を調整して、導電性を保有させてDCス パッタを可能とし、さらにPTF(漏れ磁束)を向 させてDCマグネトロンスパッタ装置による 効率な成膜を実現し、かつ密度を高めるこ により、スパッタ時に発生するパーティク やノジュールを大幅に低減できるとの知見 得た。

 このような知見に基づき、本発明の非磁 材粒子分散型強磁性材スパッタリングター ットは、Crが5at%以上20at%以下、残余がCoであ るCo-Cr合金からなる強磁性材料の中に酸化物 らなる非磁性材粒子が分散した非磁性材粒 分散型強磁性材スパッタリングターゲット おいて、強磁性体材料の中に前記非磁性材 子が分散した相(A)と、前記相(A)の中に、短 が30~100μmであり、長片が50~300μmのCo-Cr合金 からなる片状組織(B)を有しており、さらに 記非磁性材粒子は非磁性材粒子内の任意の を中心に形成した半径1μmの全ての仮想円よ も小さいか、又は該仮想円と強磁性材と非 性材の界面との間で、少なくとも2点以上の 接点又は交点を有する形状及び寸法を備えて いることを特徴とする非磁性材粒子分散型強 磁性材スパッタリングターゲットを提供する ものである。

 すなわち、非磁性材料粒子内の任意の点に 心を持つ半径1μmの仮想円よりも大きい粒子 又は界面との間に接点又は交点を一箇所も持 たずに、仮想円が非磁性材料粒子に内包され るような粗大化した粒子は、本願発明には含 まれない。
 上記条件を満たせば、非磁性材料粒子の形 、および大きさに特に制限はない。たとえ 、長さが2μm以上ある紐状や細かく枝分かれ したような形態であっても、上記条件を満た せば、目的の効果を得る事ができる。このよ うな粒子形状又は微細粒子は、パーティクル の発生には殆んど影響しない。

 強磁性材の中に分散した非磁性材の粒子は 必ずしも球状である必要はない。球状より むしろ紐上又はヒトデ状若しくは網目状が ましいとすら言える。研磨面で観察される 型の球状物は脱粒を起こし易く、かつ脱粒 た場合にパーティクル発生量はその影響を く受けるからである。
 表面の研磨で観察される紐状又はヒトデ状 しくは網目状組織は、当然ながらターゲッ の厚み方向にも存在している。このように ターゲットの厚み方向に結合した紐状又は トデ状若しくは網目状組織は、脱粒を起こ ことが少なくなる。また、強磁性材料と酸 物等の非磁性材料との接触面積の増加は、 粒防止に効果がある。したがって、紐上又 網目状の幅が小さく、かつ分散しているこ が望ましいと言える。
 本願発明の、非磁性材料粒子内の任意の点 中心に形成した半径1μmの全ての仮想円より も小さいか、又は該仮想円と強磁性材と非磁 性材の界面との間で、少なくとも2点以上の 点又は交点を有するという規定は、このよ な紐状又はヒトデ状若しくは網目状組織を 含するものである。

 上記非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタ ングターゲットにおいて、Co-Cr合金相から る片状組織(B)の存在は、PTF(漏れ磁束)を高め る大きな要因となる。
 この片状組織(B)は、SEMで明確に確認できる 片状組織(B)は、多くは片状であり、中心付 にCrが25at%以上濃縮し、外周部にかけてCrの 有量が中心部より低くなるという合金相を 成している。すなわち、片状組織(B)は中心 と外周部では不均一な組成となっている。
 Co-Cr合金相からなる片状組織(B)におけるCr濃 度の分布状態は、焼結温度や原料粉の性状に よって変化するので、特に明確に規定するこ とはできないが、多くの場合、このようなCo- Cr合金相の形成が確認できる。片状の粒子の イズは、かなり変動はあるが、多くの場合 短片が30~100μmであり、長片が50~300μmの範囲 ある。
 ここでいう短片とは、片状組織(B)に内接す 任意の円のうち、最大の内接円の直径であ 、また長片は、片状組織(B)の輪郭線(外周) 任意の2点を結ぶ線分のうち、長さが最長で つ輪郭線と交点を持たない線分の長さと定 する。

 さらに本願発明は、Crが5at%以上20at%以下、Pt が5at%以上30at%以下、残余がCoであるCo-Cr-Pt合 からなる強磁性材料の中に、酸化物からな 非磁性材粒子が分散した非磁性材粒子分散 強磁性材スパッタリングターゲットにおい 、強磁性体材料の中に前記非磁性材粒子が 散した相(A)と、前記相(A)の中に、短片が30~10 0μmであり、長片が50~300μmのCo-Cr-Pt合金相から なる片状組織(B)を有しており、さらに前記非 磁性材粒子は、非磁性材粒子内の任意の点を 中心に形成した半径1μmの全ての仮想円より 小さいか、又は該仮想円と強磁性材と非磁 材の界面との間で、少なくとも2点以上の接 又は交点を有する形状及び寸法を備えてい ことを特徴とする非磁性材粒子分散型強磁 材スパッタリングターゲットを提供する。
  この場合も、組織(B)は、中心付近にCrが25a t%以上濃縮し、外周部にかけてCrの含有量が 心部より低くなるという合金相を形成して る。すなわち、片状組織(B)は中心部と外周 で不均一な組成となっている。

 また本願発明は、Crが5at%以上20at%以下、Ptが 5at%以上30at%以下、Bが0.5at%以上8at%以下、残余 CoであるCo-Cr-Pt-B合金からなる強磁性材料の に、酸化物からなる非磁性材粒子が分散し 非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリン ターゲットにおいて、強磁性体材料の中に 記非磁性材粒子が分散した相(A)と、前記相( A)の中に、短片が30~100μmであり、長片が50~300 mのCo-Cr-Pt-B合金相からなる片状組織(B)を有し ており、さらに前記非磁性材粒子は、非磁性 材粒子内の任意の点を中心に形成した半径1μ mの全ての仮想円よりも小さいか、又は該仮 円と強磁性材と非磁性材の界面との間で、 なくとも2点以上の接点又は交点を有する形 及び寸法を備えていることを特徴とする非 性材粒子分散型強磁性材スパッタリングタ ゲットを提供する。
 この場合も、組織(B)は、中心付近にCrが25at% 以上濃縮し、外周部にかけてCrの含有量が中 部より低くなるという合金相を形成してい 。すなわち、片状組織(B)は中心部と外周部 不均一な組成となっている。

 本願発明の非磁性材粒子分散型強磁性材ス ッタリングターゲットは、該ターゲットの ずれの切断面においても、マトリックスと る非磁性材粒子が分散した相(A)を含む切断 全体の面積において組織(B)の占める面積の 率が4%以上30%以下とすることが、同様に高PT F(漏れ磁束)ターゲットとして有効である。
 分散する非磁性材料としては、酸化物を使 するが、特にCr、Ta、Si、Ti、Zr、Al、Nb、Bか 選択した1種以上の酸化物が有効である。本 願発明の非磁性材粒子分散型強磁性材スパッ タリングターゲットは、これらを包含する。
 そして、これらの酸化物からなる非磁性材 は、ターゲット中の体積比率で10%以上30%以 とすることが望ましい。これにより、高PTF( 漏れ磁束)非磁性材粒子分散型強磁性材スパ タリングターゲットとしてより有効に作用 る。

 本願発明の非磁性材粒子分散型強磁性材ス ッタリングターゲットは、非磁性材料が、 空中又は不活性雰囲気中で強磁性金属材料 共に800~1200°Cに強熱しても、還元又は分解 ない酸化物であることが望ましいが、上記 酸化物からこれに適合する材料を任意に選 することが可能である。これは、ターゲッ 製造時に還元または分解することにより、 成の変動という不測の影響を及ぼすことを けるためである。
 本願発明の非磁性材粒子分散型強磁性材ス ッタリングターゲットの密度は、次式で計 される計算密度に対し97%以上とすることが ましい。
式:計算密度=σ(分子量×モル比)/σ(分子量×モ 比/密度)

 このように、調整したターゲットは、高PTF( 漏れ磁束)ターゲットとなり、DCマグネトロン スパッタ装置で使用したとき、荷電粒子のサ イクロイド運動による不活性ガスの電離促進 が効率的に進み、成膜速度を高くすることが できる。
 そのため、スパッタガスの圧力を高め、あ いは印加電圧を高くしなくても、DCスパッ リングによる高速成膜が可能となる。また DCスパッタリング装置はRFスパッタリング装 に比べ、価格が安く、制御が容易であり、 力の消費量も少なくて済むという利点があ 。したがって、本発明のスパッタリングタ ゲットを使用することにより、品質の優れ 材料得ることができ、特に磁性材料を低コ トで安定して製造できるという著しい効果 ある。
 さらに、本発明のスパッタリングターゲッ の密度向上は、非磁性材と強磁性材との密 性を高めることにより、非磁性材の脱粒を 制することができ、また、空孔を減少させ 晶粒を微細化し、ターゲットのスパッタ面 平滑にすることができるので、スパッタリ グ時のパーティクルやノジュールを低減さ 、さらにターゲットライフも長くすること できるという著しい効果を有する。

球状の粒子の模式図である。 紐状の粒子の模式図である。 網目状粒子の模式図である。 ひょうたん型の粒子の模式図である。 実施例1によって得られたターゲット研 磨面のマトリックス部分の拡大SEM画像である 。 実施例1によって得られたターゲット研 磨面のSEM画像である。 実施例2によって得られたターゲット研 磨面のSEM画像である。 比較例1によって得られたターゲット研 磨面のSEM画像である。 比較例2によって得られたターゲット研 磨面のSEM画像である。 実施例3によって得られたターゲット 磨面のマトリックス部分の拡大SEM画像であ 。 実施例3によって得られたターゲット 磨面のSEM画像である。 比較例3によって得られたターゲット 磨面のSEM画像である。 実施例3によって得られたターゲット 磨面のEPMAで測定した元素分布画像である。 実施例4によって得られたターゲット 磨面のマトリックス部分の拡大SEM画像であ 。 実施例4によって得られたターゲット 磨面のSEM画像である 比較例4によって得られたターゲット 磨面のSEM画像である。

 本発明の非磁性材粒子分散型強磁性材スパ タリングターゲットの製造に際しては、Co Cr、Ptから選択した2種以上の金属粉末を使用 する。あるいはこれらの金属の合金粉を用い る。
 これらの粉末と、非磁性材としてCr、Ta、Si Ti、Zr、Al、Nb、Bから選択した1種以上の平均 粒径1μm前後の酸化物粉末を用いて20~100時間 度、ボールミル等で混合した後、HP(ホット レス)法を用いて1000~1250°Cの温度で焼結する これにより、相対密度が97%以上を達成する とができる。

 金属材料としては、アトマイズ粉を使用す こともできる。また、粉砕・混合は、ボー ミルだけでなく、メカニカルアロイングを 用しても良い。
 さらに、焼結は、ホットプレスに限らず、 ラズマ放電焼結法、熱間静水圧焼結法を使 することもできる。このようにして製造さ た本願発明のターゲットは、材料の研磨面 観察される組織の非磁性材の全粒子が、前 相(A)の中で、非磁性材料粒子内の任意の点 中心に形成した半径1μmの全ての仮想円より も小さいか、又は該仮想円と強磁性材と非磁 性材の界面との間で、少なくとも2点以上の 点又は交点を有する形状及び寸法を有して 在していることを特徴とする。非磁性材粒 の多くは、微細な球状の粒子か又は細い紐 あるいはヒトデ状若しくは網目状の粒子と っている。

 さらに、本願発明の非磁性材粒子分散型強 性材スパッタリングターゲットは、前記Co-C r合金、Co-Cr-Pt合金又はCo-Cr-Pt-B合金の強磁性 材料に前記酸化物からなる非磁性材粒子が 散した相(A)の中に、短片が30~100μmであり、 片が50~300μmのCo-Cr合金相、Co-Cr-Pt合金相又はC o-Cr-Pt-B合金相からなる片状組織(B)を有してい る。換言すれば、片状組織(B)が、前記非磁性 材粒子が分散した相(A)により包囲された組織 を有している。これが本願発明の大きな特徴 の一つである。
  上記片状組織(B)は、その組成は必ずしも 様ではない。すなわち、片状組織(B)の中心 近ではCrが25at%以上濃縮し、外周部にかけてC rの含有量が漸次低くなるという独特の組成 合金相を形成している。その傾斜濃度は、 々の片状組織(B)によってばらつきがあるの 、一概に特定できないが、片状組織(B)の中 付近の濃度が周辺部よりも、Cr濃度が高くな っていた。

 しかしながら、片状組織(B)は非磁性材粒子 散型強磁性材ターゲット構造の中で、多量 存在するものではなく、非磁性材粒子が分 した相(A)が中心成分となる。その量は、タ ゲットのいずれの切断面においても、非磁 材粒子が分散した相(A)を含む切断面全体の 積において、組織(B)の占める面積の比率が4 %以上30%以下とするのが望ましい。他は全て 非磁性材粒子分散型強磁性材から構成され 。
 また、非磁性材粒子が分散した相(A)中の非 性材料は、ターゲット中の体積比率で、10% 上30%以下とすることが望ましい。

 このように、調整した本願発明の非磁性 粒子分散型強磁性材ターゲットは、高PTF(漏 れ磁束)ターゲットとなり、DCマグネトロンス パッタ装置で使用したときに、荷電粒子のサ イクロイド運動による不活性ガスの電離促進 が効率的に進み、成膜速度を高くすることが できる大きな効果を発揮する。ここで、PTF( れ磁束)について説明を行う。強磁性体ター ットで漏れ磁場が小さくなるのは、系のエ ルギーを小さくするため、マグネットの磁 の向き(N極→S極)にターゲット内の磁化が揃 うためである。仮に、ターゲットが磁化反応 のない非磁性な物質であれば、マグネットの 磁力線はターゲットの有無に関係なく同じ軌 道を描く。

 磁場に対する磁化のし易さを示すパラメー ーとしては透磁率があり、ターゲットの透 率が低ければ、漏れ出てくる磁場は大きく ると予想される。実際、高PTFターゲットか 採取した小片のB-Hループを測定したところ 透磁率が、通常製法のものに比べ低い傾向 あった。
 透磁率が低くなる(=磁化が磁場方向へ揃い くくなる)一つの理由として、片状組織(B)中 Crリッチな非磁性相の存在により、強磁性 が分断され、強磁性相間の交換相互作用が まることが挙げられる。

 また、片状組織(B)中の組成変動は結晶格 中に、局所的な格子歪みを引き起こす。磁 に寄与する電子は結晶構造と密接に関係し おり、格子歪みが発生した領域では、磁気 ーメントも互いに非平行な状態となってい 。従って、これらの電子の磁気モーメント 揃えるには、より強い磁場が必要となる。 間圧延によりターゲットに歪みを加え、PTF 向上させる試みはあるが、それと同様の効 がもたらされると考えられる。

 密度を低くし、又は非磁性材を多く分散さ ることでも、PTFを高くすることができる。 かし、この場合には、パーティクルの発生 どの、別の問題が生じる。
 本発明は、磁性材の組織構造を変え、相構 を分けて、ターゲット中に不均一な磁場応 性を導入することにより解決するもので、 記のような問題は生じない。これが、本願 明の大きな特徴である。本願発明では、同 密度では、PTFを5%~20%程度高くすることがで るという大きな利点がある。

 本願発明は、上記に述べた通り、文献5(特 2006-6575号)の改良に係るものである。したが て、該文献5において説明した内容の一部が 共通するので、ここでも使用することとする 。
 材料の研磨面で観察される組織の非磁性材 全粒子が、非磁性材料粒子内の任意の点を 心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも 小さいか、又は該仮想円と強磁性材と非磁性 材の界面との間で、少なくとも2点以上の接 又は交点を有する、具体例を示すと次の通 である。
 例えば、球状の非磁性材の粒子であれば、 1の模式図の通りであり、図1の左は粒子の に半径1μmの仮想円が包含される場合で、粗 化した粒子であり、本願発明には該当しな 。図1の右が半径1μmの仮想円よりも粒子の 径が1μm以下である小さいサイズの粒子の場 であり、本願発明に含まれる。

 このような微細粒子は、ターゲットのパー ィクルの発生に特に問題となることはなく また高密度のターゲットを得ることが可能 ある。
 紐状の非磁性材の粒子であれば、図2の模式 図の通りである。非磁性材料粒子の断面上任 意の点から半径1μm以内の仮想円に入ってい ば、その長さや曲がり方に制限は無い。細 紐状の粒子の場合には、本願発明の目的に うものであり、特に問題とならないからで る。

 次に、網目状の粒子の模式図を、図3に示す 。原則として前記細紐状の粒子と同様である 。この場合は、網目の結節部が、粗大化して 半径1μmの仮想円を超える場合があるが、こ 場合は本願発明の範囲外である。
 表面の研磨で観察される紐状又はヒトデ状 しくは網目状組織は、当然ながらターゲッ の厚み方向にも存在しているが、このよう ターゲットの厚み方向に結合したヒトデ状 しくは網目状組織は、脱粒を起こすことが めて少なくなるので、より好ましいと言え 。また、ヒトデ状若しくは網目状の粒子と トリックスとなる強磁性材料との接触面積 増加は、脱粒防止により効果があると言え 。したがって、紐上又はヒトデ状若しくは 目状の幅が小さく、かつ分散していること 望ましいと言える。
 その他の形状として、ひょうたん型の粒子 状も考えられる。その模式図を図4に示す。 この場合もくびれた部分については特に問題 とならないが、膨らんだ部分の半径が1μm以 とする必要がある。その意味では、球状の 子と同様のことが言える。

 以上に説明した本願発明の非磁性材粒子分 型強磁性材ターゲットの組織構造は、マト ックス(Co-Cr合金、Co-Cr-Pt合金又はCo-Cr-Pt-B合 の強磁性体材料に前記酸化物からなる非磁 材粒子が分散した相(A))の中に、短片が30~100 μmであり、長片が50~300μmのCo-Cr合金相、Co-Cr-P t合金相又はCo-Cr-Pt-B合金相からなる片状組織( B)が形成されている。
 片状組織(B)における短片及び長片の寸法が 上記数値範囲より大きい場合には、PTF(漏れ 磁束)はさらに向上するが、焼結の駆動力が さく高密度のターゲットを得られないとい 問題が生じる。また上記数値範囲より小さ 場合には、高密度のターゲットを得ようと ると、均一な組成分布となってしまいPTF(漏 磁束)の向上が期待できない。

 上記文献6、7、8では、平均粒径20μmのCo-Cr合 金粉末、Co-Cr-Pt合金粉末又はCo-Cr-Pt-B合金粉末 を原料粉に用い、焼結時の拡散を極力抑えて 、ターゲットの組織を複相構造にすることに よって、PTF(漏れ磁束)を向上させているが、 の場合、焼結温度を低く設定する必要があ 、その結果、密度が低くなり、パーティク の発生等別の問題が生じる可能性がある。
 このことから、本願発明においては、上記 値範囲内の片状組織(B)が生ずるようにする とが、特に有効である。

 この片状組織(B)は、後述する図6に示すよう に、サイズはまちまちであり、決して一様で はない。また、各片状組織の組成も一様では なく、片状組織(B)の中心付近ではCrが25at%以 濃縮し、外周部にかけてCrの含有量が漸次低 くなり、ばらつきのあるCo-Cr合金相若しくはC o-Cr-Pt合金相又はCo-Cr-Pt-B合金相を形成してい 。
 これは、本願発明ターゲットの、独特の組 構造を示すもので、本願発明のPTF(漏れ磁束 )向上に大きく寄与していると考えられる。
 さらに、以上の組織構造を持つ本発明の非 性材粒子分散型強磁性材スパッタリングタ ゲットは相対密度で97%以上とすることがで る。

 以下、実施例および比較例に基づいて説 する。なお、本実施例はあくまで一例であ 、この例によって何ら制限されるものでは い。すなわち、本発明は特許請求の範囲に ってのみ制限されるものであり、本発明に まれる実施例以外の種々の変形を包含する のである。

(実施例1、2、比較例1、2)
 焼結原料粉末として、各サイズの目開きの で分別したCo-Cr合金粉末と、Coおよび酸化シ リコン(SiO 2 )の微粉末(平均粒径1~2μm)を使用した。
 実施例1は75μm以上150μm未満のCo-Cr合金粉末 実施例2は20μm以上75μm未満のCo-Cr合金粉末で る。
 また、比較例1では20μm未満のCo-Cr合金粉末 、比較例2では、Co-Cr合金粉末は使用せず20μm 未満のCr粉末を使用した。
 なお、ここで使用したCo-Cr合金粉末は、Crを 40原子%以上含有する組成のものである。

 これらの粉末を用いて、組成が77.28Co-14.72Cr- 8SiO 2 (mol%)となるように秤量し、これらを湿式ボー ルミルで20時間混合した。次に、この混合粉 カーボン製の型に充填し、ホットプレス(HP) により1050°Cで2時間焼結後、さらに熱間等方 圧(HIP)加工を行って、焼結体を製造し、さ にこれを機械加工して直径180mm、厚さ7mmの円 盤状のターゲットを得た。
 こうして得られたターゲットの相対密度は ずれも97%以上であり、中には98%を超えるも もあった。この結果を表1に示す。

 このようにして得た実施例1のマトリックス の拡大SEM画像を図5に示す。この図5に示すよ に、マトリックスには細紐状の微細なSiO 2 粒子が分散していた。
 この場合の、非磁性材であるSiO 2 粒子内の任意の点から界面に向けて垂線を下 ろした場合の、界面までの距離は2μm以下の 囲内にあった。すなわち、非磁性材料粒子 の任意の点を中心に形成した半径1μmの全て 仮想円よりも小さいか、又は該仮想円と強 性材と非磁性材の界面との間で、少なくと 2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸 法を備えるという本願発明の条件を満たして いた。
一方、上記実施例1において、極めて特徴的 のは、図6に示すように、微細なSiO 2 粒子が分散したマトリックスの中に、大きな 片状組織としてCo-Cr合金相が分散しているこ である。このCo-Cr合金相の面積を、全体の 積に対する比で表すと7%となる。この場合、 PTFは、60%であり、高い値を示した。
 さらにEPMAでCo-Cr合金相の元素分布を観察し ところ、多くの場合、Crが25at%以上濃縮され たCrリッチ相がCo-Cr合金相の中心付近に存在 、外周に近づくにつれてCrの濃度は低くなっ ていることが確認された。

 図7は、実施例2によって得られたターゲッ 研磨面のSEM画像である。この図7に示すよう 、マトリックスには細紐状の微細なSiO 2 粒子が分散していた。
 実施例1と同様に、非磁性材であるSiO 2 粒子内の任意の点から界面に向けて垂線を下 ろした場合の、界面までの距離は2μm以下の 囲内にあった。すなわち、非磁性材料粒子 の任意の点を中心に形成した半径1μmの全て 仮想円よりも小さいか、又は該仮想円と強 性材と非磁性材の界面との間で、少なくと 2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸 法を備えるという本願発明の条件を満たして いた。

 一方、図7に示すように、上記実施例2にお て、微細なSiO 2 粒子が分散したマトリックスの中に、大きな 片状組織としてCo-Cr合金相が分散していた。 のCo-Cr合金相の面積を、全体の面積に対す 比で表すと4%となった。この場合、PTFは54%で あり、高い値を示した。
 さらにEPMAでCo-Cr合金相の元素分布を観察し ところ、実施例1と同様に、Crが25at%以上濃 されたCrリッチ相がCo-Cr合金相の中心付近に 在し、外周に近づくにつれてCrの濃度は低 なっていることが確認された。

 これに対して、比較例1では、SiO 2 粒子が分散したマトリックスの中に片状のCo- Cr合金相は一切観察されなかった。図8は、比 較例1によって得られたターゲット研磨面のSE M画像であるが、この図8から片状組織を見出 ことができなかった。
 また、図9は、比較例2によって得られたタ ゲット研磨面のSEM画像であるが、比較例2で 、同様にSiO 2 粒子が分散したマトリックスとCo-Cr合金相の 別がつかず、Co-Cr合金相の観察は困難であ た。
 そして、PTFの値は比較例1が49%、比較例2が47 %であり、PTFの向上は認められなかった。

 (実施例3、比較例3)
 実施例3では、実施例1でも使用した75~150μm Co-Cr合金粉末と、Co、PtおよびSiO 2 の微粉末(平均粒径1~2μm)を焼結粉末原料とし 用いた。また、比較例3では、20μm未満のCr 末とCo、Pt、およびSiO 2 の微粉末(平均粒径1~2μm)を焼結粉末原料とし 用いた。
 これらをそれぞれ組成が60Co-16Cr-16Pt-8SiO 2 (mol%)となるように秤量し、湿式ボールミルで 20時間混合し、この混合粉をカーボン製の型 充填し、ホットプレス(HP)により1050°Cで2時 焼結後、さらに熱間等方加圧(HIP)加工を行 て、焼結体を製造し、さらにこれを機械加 して直径165.1mm、厚さ7mmの円盤状のターゲッ を得た。こうして得られたターゲットの相 密度は97%以上であった。この結果を、表2に 示す。

 図10は、このようにして得た実施例3のマト ックスの拡大SEM画像である。図10に示すよ に、マトリックスには細紐状の微細なSiO 2 粒子が分散していた。
 この場合の、非磁性材であるSiO 2 粒子内の任意の点から界面に向けて垂線を下 ろした場合の、界面までの距離は2μm以下の 囲内にあった。
 すなわち、非磁性材料粒子内の任意の点を 心に形成した半径1μmの全ての仮想円よりも 小さいか、又は該仮想円と強磁性材と非磁性 材の界面との間で、少なくとも2点以上の接 又は交点を有する形状及び寸法を備えると う本願発明の条件を満たしていた。

 また、上記実施例3において、微細なSiO 2 粒子が分散したマトリックスの中に、大きな 片状組織としてCo-Cr-Pt合金相が分散している とが観察できた。
 この結果を、図11に示す。この図11に示すCo- Cr-Pt合金相の面積を、全体の面積に対する比 表すと10%に達した。この場合、PTFは、69%で り、非常に高い値を示した。
 一方、図12に、比較例3の組織を示すが、マ リックスの中に片状組織は一切観察されず PTFは53%であった。
 さらに上記実施例3において、EPMAで元素分 を測定した結果を図13に示す。ここでは、白 く見えている箇所が、当該元素が多く分布し ている領域である。
 図13に示す画像から、片状組織(B)の中心付 はCrリッチになっており、外周部にかけてCr 濃度が低くなっている。このように片状組 (B)は、不均一な組成のCo-Cr-Pt合金相を形成 ていることが分かる。

 (実施例4、比較例4)
 実施例4では、実施例1でも使用した75~150μm Co-Cr合金粉末と、平均粒径5μmのB粉末と、Co PtおよびTiO 2 の微粉末(平均粒径0.5μm~2μm)を焼結粉末原料 して用いた。また、比較例4では、20μm未満 Cr粉末と、平均粒径5μmのB粉末と、Co、Ptおよ びTiO 2 の微粉末(平均粒径0.5μm~2μm)とを焼結粉末原 として用いた。
 これらを、それぞれ組成が57Co-16Cr-16Pt-3B-8TiO 2 (mol%)となるように秤量し、これらをボールミ ルで20時間混合し、この混合粉をカーボン製 型に充填し、ホットプレス(HP)により1050°C 2時間焼結後、さらに熱間等方加圧(HIP)加工 行って、焼結体を製造し、さらにこれを機 加工して直径165.1mm、厚さ6.4mmの円盤状のタ ゲットを得た。こうして得られたターゲッ の相対密度は98%以上であった。この結果を 表3に示す。

 図14は、このようにして得た実施例4のマト ックスの拡大SEM画像である。図14に示すよ に、マトリックスには細紐状の微細なTiO 2 粒子が分散していた。
 この場合の、非磁性材であるTiO 2 粒子内の任意の点から界面に向けて垂線を下 ろした場合の、界面までの距離は2μm以下の 囲内にあった。すなわち、非磁性材料粒子 の任意の点を中心に形成した半径1μmの全て 仮想円よりも小さいか、又は該仮想円と強 性材と非磁性材の界面との間で、少なくと 2点以上の接点又は交点を有する形状及び寸 法を備えるという本願発明の条件を満たして いた。
 また、上記実施例4において、微細なTiO 2 粒子が分散したマトリックスの中に、大きな 片状組織としてCo-Cr-Pt-B合金相が分散してい ことが観察できた。この結果を、図15に示す 。この図15に示すCo-Cr-Pt-B合金相の面積を、全 体の面積に対する比で表すと7%に達した。こ 場合、PTFは、65%であった。
 一方、図16に、比較例4の組織を示すが、マ リックスの中に片状組織は一切観察されず PTFは59%であった。

 以上から明らかなように、非磁性材粒子が 散したマトリックス相(A)と、該相(A)に包囲 れた、短片が30~100μmであり、長片が50~300μm Co-Cr合金相(B)(あるいはCo-Cr-Pt合金相(B)若し はCo-Cr-Pt-B合金相(B))が存在することは、PTFを 向上させるために非常に重要な役割を有する ことが分かる。
 このように、マトリックス相(A)から分離し 相(B)の存在は、相(A)間の交換相互作用を断 切るとともに、さらに相(B)中のCrの濃度差 格子ひずみを発生させ、PTFをより高める効 を有するものと考えられる。実施例1、2、3 4において、いずれもCo-Cr合金相(B)若しくはCo -Cr-Pt合金相(B)又はCo-Cr-Pt-B合金相(B)の存在が 瞭であり、これとPTFの増加とに相関がある とが分かる。

 上記実施例には、全てを示してはいないが 同様の実験において、相(B)の面積比率が4%~3 0%の場合において、より確実にPTFの向上が確 できた。
 相(B)の面積比率が4%未満の場合には、PTFの 上がそれほど大きくならないので、相(B)の 積比率を4%以上とするのが望ましく、また、 非磁性粒子の配合量にもよるが、相(B)の面積 比率が30%を超えるとマトリックス相中で、非 磁性材粒子の体積割合が相対的に大きくなり 、非磁性材粒子を微細分散させることが難し いので、相(B)の面積比率が4%~30%とするのが、 好ましい条件と言える。
 また、本願発明に記載する条件は、上記実 例の延長線上にあるものであり、当業者な ば、当然に実施することが可能であり、ま 本願発明の効果を十分に認識できるもので る。

 本発明は、非磁性材料を高分散させること 及び非磁性材料が分散した強磁性相の中に 組成の不均一な片状組織を存在させてPTF(漏 れ磁束)を高めること、さらに相対密度を97% 上に高密度化することによって、DCマグネト ロンスパッタリング装置による、非磁性在粒 子分散型強磁性スパッタリングターゲットの 、安定した、かつ効率の高いスパッタリング を実現する。
 したがって磁気記録材料の分野、特に磁気 録層の成膜において、量産性と歩留まりの 上に大きく貢献する。
 




 
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