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Title:
STACKED COIL COMPONENT AND MEHTOD FOR MANUFACTURING THE STACKED COIL COMPONENT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/034824
Kind Code:
A1
Abstract:
This invention provides a highly reliable stacked coil component which is free from the formation of any gap between a magnetic material ceramic layer and an internal conductor layer, can relax a problem of internal stress, is low in direct current resistance, and is less likely to cause disconnection of the internal conductor by surge or the like. A state is provided in which an interface (A) of an internal conductor (2) and a magnetic material ceramic (11) is rendered free from any gap while the interface of the internal conductor (2) and the magnetic material ceramic (11) is dissociated. An acidic solution is penetrated from the side face of a magnetic material ceramic element through a side gap part, which is a region between the side of the internal conductor and the side face of the magnetic material ceramic element, and is allowed to reach the interface of the internal conductor and magnetic material ceramic present around the internal conductor, whereby an interfacial bond between the internal conductor and the magnetic material ceramic around the internal conductor is broken. In this case, a plating liquid used in plating an external electrode is used as the acidic solution. The pore area ratio of the magnetic material ceramic in the side gap part between the side of the internal conductor and the side face of the magnetic material ceramic element is in the range of 6 to 28%.

Inventors:
KONOUE MASAHARU (JP)
MAEDA YUKIO (JP)
MIZUNO TATSUYA (JP)
HASHIMOTO HIROKI (JP)
UEDA MITSURU (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/065029
Publication Date:
March 19, 2009
Filing Date:
August 22, 2008
Export Citation:
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Assignee:
MURATA MANUFACTURING CO (JP)
KONOUE MASAHARU (JP)
MAEDA YUKIO (JP)
MIZUNO TATSUYA (JP)
HASHIMOTO HIROKI (JP)
UEDA MITSURU (JP)
International Classes:
H01F27/30; H01F17/00; H01F17/04; H01F41/04
Foreign References:
JP2005286353A2005-10-13
JP2005038904A2005-02-10
JP2004079994A2004-03-11
JPH0465807A1992-03-02
JP2000164455A2000-06-16
JP2001244116A2001-09-07
JP2005044819A2005-02-17
Attorney, Agent or Firm:
NISHIZAWA, Hitoshi (Daido Seimei Minami-kan1-2-11 Edobori,Nishi-k, Osaka-shi Osaka 02, JP)
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Claims:
 磁性体セラミック層を積層することにより形成され、Agを主成分とするコイル形成用の内部導体を備えたセラミック積層体を焼成することにより形成された磁性体セラミック素子の内部に、前記内部導体を層間接続させることにより形成された螺旋状コイルを有する積層コイル部品であって、
 前記内部導体と前記内部導体の周囲の磁性体セラミックとの界面には空隙が存在せず、かつ、
 前記内部導体と前記磁性体セラミックとの界面が解離していること
 を特徴とする積層コイル部品。
 前記内部導体の側部と、前記磁性体セラミック素子の側面との間の領域であるサイドギャップ部における、磁性体セラミックのポア面積率が6~20%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の積層コイル部品。
 前記サイドギャップ部における磁性体セラミックのポア面積率が、磁性体セラミック素子内の内部導体の上側最外層の上面と、磁性体セラミック素子の上面との間の外層領域、および、磁性体セラミック素子内の内部導体の下側最外層の下面と、磁性体セラミック素子の下面との間の外層領域における磁性体セラミックのポア面積率よりも大きいことを特徴とする請求項1または2記載の積層コイル部品。
 前記磁性体セラミックが、NiCuZnフェライトを主成分とするものであって、軟化点が500~700℃であるホウケイ酸亜鉛系低軟化点ガラスを0.1~0.5重量%含有するものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の積層コイル部品。
 前記磁性体セラミックが、NiCuZnフェライトを主成分とするものであって、軟化点が500~700℃であるホウケイ酸亜鉛系低軟化点ガラスを0.2~0.4重量%含有するものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の積層コイル部品。
 前記磁性体セラミックが、NiCuZnフェライトを主成分とするものであって、軟化点が500~700℃であるホウケイ酸亜鉛系低軟化点ガラスを0.1~0.5重量%含有するととともに、SnO2を0.3~1.0重量%含有するものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の積層コイル部品。
 前記磁性体セラミックが、NiCuZnフェライトを主成分とするものであって、軟化点が500~700℃であるホウケイ酸亜鉛系低軟化点ガラスを0.1~0.5重量%含有するととともに、SnO2を0.5~0.8重量%含有するものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の積層コイル部品。
 前記磁性体セラミックのポア面積率に係わるポアの直径の平均値が、0.1~0.6μmの範囲にあることを特徴とする請求項2~7のいずれかに記載の積層コイル部品。
 磁性体セラミック層と、Agを主成分とするコイル形成用の内部導体とを積層したセラミック積層体を焼成して、内部に螺旋状コイルを備えた磁性体セラミック素子を形成する工程と、
 前記磁性体セラミック素子の側面から、前記内部導体の側部と前記磁性体セラミック素子の側面との間の領域であるサイドギャップ部を経て酸性溶液を浸透させ、前記内部導体とその周囲の磁性体セラミックとの界面に酸性溶液を到達させることにより、前記内部導体とその周囲の磁性体セラミックとの界面の結合を切断する工程と
 を備えていることを特徴とする積層コイル部品の製造方法。
 積層された複数の磁性体セラミックグリーンシートと、Agを主成分とするコイル形成用の複数の内部導体パターンとを備えたセラミック積層体を焼成して、内部に螺旋状コイルを備え、かつ、互いに対向する一対の側面のそれぞれに、前記螺旋状コイルの両端部の一方が露出しているとともに、前記内部導体の側部と前記磁性体セラミック素子の側面との間の領域であるサイドギャップ部のポア面積率が6~20%の磁性体セラミック素子を形成する工程と、
 前記螺旋状コイルの一対の端部が露出した前記磁性体セラミック素子の前記一対の側面に外部電極を形成する工程と、
 酸性のめっき液を用いて前記外部電極の表面にめっきを施す工程と
 を備えていることを特徴とする積層コイル部品の製造方法。
Description:
積層コイル部品およびその製造 法

 本発明は、磁性体セラミック層と、Agを 成分とするコイル形成用の内部導体とを積 したセラミック積層体を焼成することによ 形成される、磁性体セラミック素子の内部 螺旋状コイルが配設された構造を有する積 コイル部品に関する。

 近年、電子部品の小型化への要求が大き なり、コイル部品に関しても、その主流は 層型のものに移りつつある。

 ところで、磁性体セラミックと内部導体 同時焼成して得られる積層コイル部品は、 性体セラミック層と内部導体層との間で熱 張係数の違いから発生する内部応力が、磁 体セラミックの磁気特性を低下させ、積層 イル部品のインピーダンス値の低下やばら きを引き起こすという問題点がある。

 そこで、このような問題点を解消するた に、焼成後の磁性体セラミック素子を酸性 めっき液中に浸漬処理して、磁性体セラミ ク層と内部導体層との間に空隙を設けるこ により、内部導体層による磁性体セラミッ 層への応力の影響を回避して、インピーダ ス値の低下やばらつきを解消するようにし 積層型インピーダンス素子が提案されてい (特許文献1)。

 しかしながら、この特許文献1の積層型イ ンピーダンス素子においては、磁性体セラミ ック素子をめっき液中に浸漬して、内部導体 層が磁性体セラミック素子の表面に露出する 部分からめっき液を内部に浸透させることに より、磁性体セラミック層と内部導体層の間 に不連続な空隙を形成するようにしているこ とから、磁性体セラミック層間に、内部導体 層と空隙が形成されることになり、内部導電 体層が細って、セラミック層間に占める内部 導体層の割合が小さくならざるを得ないのが 実情である。

 そのため、直流抵抗の低い製品を得ること 困難になるという問題点がある。特に、寸 が、1.0mm×0.5mm×0.5mmの製品や、0.6mm×0.3mm×0.3m mの製品などのように小型の製品になると、 性体セラミック層を薄くすることが必要に り、磁性体セラミック層間に、内部導体層 空隙の両方を設けつつ、内部導体層を厚く 成することが困難になるため、直流抵抗の 減を図ることができなくなるばかりでなく サージなどによる内部導体の断線が発生し すくなり、十分な信頼性を確保することが きなくなるという問題点がある。

特開2004-22798号公報

 本発明は、上記課題を解決するものであ 、積層コイル部品を構成する磁性体セラミ ク層と内部導体層の間に従来のような空隙 形成することなく、磁性体セラミック層と 部導体層との間で、焼結収縮挙動や熱膨張 数の違いから発生する内部応力の問題を緩 することが可能で、直流抵抗が低く、かつ ージなどによる内部導体の断線が発生しに い、信頼性の高い積層コイル部品を提供す ことを目的とする。

 上記課題を解決するために、本発明(請求項 1)の積層コイル部品は、
 磁性体セラミック層を積層することにより 成され、Agを主成分とするコイル形成用の 部導体を備えたセラミック積層体を焼成す ことにより形成された磁性体セラミック素 の内部に、前記内部導体を層間接続させる とにより形成された螺旋状コイルを有する 層コイル部品であって、
 前記内部導体と前記内部導体の周囲の磁性 セラミックとの界面には空隙が存在せず、 つ、
 前記内部導体と前記磁性体セラミックとの 面が解離していること
 を特徴としている。

 本発明の積層コイル部品においては、前 内部導体の側部と、前記磁性体セラミック 子の側面との間の領域であるサイドギャッ 部における、磁性体セラミックのポア面積 を6~20%の範囲とすることが望ましい。

 また、前記サイドギャップ部における磁 体セラミックのポア面積率を、磁性体セラ ック素子内の内部導体の上側最外層の上面 、磁性体セラミック素子の上面との間の外 領域、および、磁性体セラミック素子内の 部導体の下側最外層の下面と、磁性体セラ ック素子の下面との間の外層領域における ア面積率よりも大きくすることが望ましい

 また、前記磁性体セラミックとしては、N iCuZnフェライトを主成分とするものであって 軟化点が500~700℃であるホウケイ酸亜鉛系低 軟化点ガラスを0.1~0.5重量%含有するものを用 ることが望ましく、さらには、前記ホウケ 酸亜鉛系低軟化点ガラスを0.2~0.4重量%含有 るものを用いることが望ましい。

 また、磁性体セラミックとしては、さら 、SnO2を0.3~1.0重量%含有するものを用いるこ が望ましく、さらには、SnO2を0.5~0.8重量%の 合で含有するものを用いることが望ましい

 また、前記磁性体セラミックのポア面積 に係わるポアの直径の平均値が、0.1~0.6μmの 範囲にあることが好ましい。

 また、本発明の積層コイル部品の製造方法 、
 磁性体セラミック層と、Agを主成分とする イル形成用の内部導体とを積層したセラミ ク積層体を焼成して、内部に螺旋状コイル 備えた磁性体セラミック素子を形成する工 と、
 前記磁性体セラミック素子の側面から、前 内部導体の側部と前記磁性体セラミック素 の側面との間の領域であるサイドギャップ を経て酸性溶液を浸透させ、前記内部導体 その周囲の磁性体セラミックとの界面に酸 溶液を到達させることにより、前記内部導 とその周囲の磁性体セラミックとの界面の 合を切断する工程と
 を備えていることを特徴としている。

 また、本発明の積層コイル部品の製造方法 、
 積層された複数の磁性体セラミックグリー シートと、Agを主成分とするコイル形成用 複数の内部導体パターンとを備えたセラミ ク積層体を焼成して、内部に螺旋状コイル 備え、かつ、互いに対向する一対の側面の れぞれに、前記螺旋状コイルの両端部の一 が露出しているとともに、前記内部導体の 部と前記磁性体セラミック素子の側面との の領域であるサイドギャップ部のポア面積 が6~20%の磁性体セラミック素子を形成する工 程と、
 前記螺旋状コイルの一対の端部が露出した 記磁性体セラミック素子の前記一対の側面 外部電極を形成する工程と、
 酸性のめっき液を用いて前記外部電極の表 にめっきを施す工程と
 を備えていることを特徴としている。

 本発明(請求項1)の積層コイル部品は、磁 体セラミック層と、Agを主成分とするコイ 形成用の内部導体とを積層したセラミック 層体を焼成することにより形成された積層 イル部品において、Agを主成分とする内部導 体と、内部導体の周囲の磁性体セラミックと の界面には空隙が存在せず、かつ、内部導体 と磁性体セラミックとの界面が解離した状態 となるようにしているので、内部導体と磁性 体セラミックの界面に空隙を設けることなく (すなわち、内部導体を細らせることなく)応 緩和を図ることが可能になる。したがって 特性のばらつきが少なく、直流抵抗を低減 ることが可能で、サージなどによる内部導 の断線を抑制、防止することが可能な、信 性の高い積層コイル部品を提供することが 能になる。

 また、内部導体の側部と、磁性体セラミ ク素子の側面との間の領域であるサイドギ ップ部における、磁性体セラミックのポア 積率を6~20%の範囲とすることにより、積層 イル部品全体として大きい強度と高い透磁 を実現することが可能なフェライト系のセ ミックを磁性体セラミックとして用いた場 にも、酸性溶液を効率よく浸透させること 可能になり、内部導体層と磁性体セラミッ の界面に空隙を設けることなく、両者の界 の結合を切断することができる。

 また、前記サイドギャップ部における磁 体セラミックのポア面積率を、磁性体セラ ック素子内の内部導体の上側最外層の上面 、磁性体セラミック素子の上面との間の外 領域、および、磁性体セラミック素子内の 部導体の下側最外層の下面と、磁性体セラ ック素子の下面との間の外層領域における ア面積率よりも大きくすることにより、サ ドギャップ部から効率よく酸性溶液を浸透 せることが可能になる。また、外層領域で ポア面積率が小さいため、全体として所望 強度を有する積層コイル部品を得ることが 能になる。

 また、磁性体セラミックとして、NiCuZnフ ライトを主成分とするものであって、軟化 が500~700℃であるホウケイ酸亜鉛系低軟化点 ガラスを0.1~0.5重量%含有するものを用いるこ により、磁性体セラミックがポアを含み低 度である場合にも、積層コイル部品全体と ての強度が大きく、透磁率の高い積層イン クタを得ることが可能になる。また、ホウ イ酸亜鉛系低軟化点ガラスが結晶化ガラス あることから、磁性体セラミックの焼結密 を安定させることが可能になる。さらに、 性体セラミックとして、上記のホウケイ酸 鉛系低軟化点ガラスを0.2~0.4重量%の割合で 有するものを用いることにより、上述の効 をさらに向上させることができる。

 また、磁性体セラミックとして、NiCuZnフェ イトを主成分とし、ホウケイ酸亜鉛系低軟 点ガラスを上述の割合で含有するとととも 、SnO2を0.3~1.0重量%の割合で含有するものを いた場合、耐外部応力性と直流重畳特性に れた積層コイル部品を得ることが可能にな 。
 また、SnO2を0.5~0.8重量%の割合で含有するも を用いた場合、上記効果をより確実なもの することができる。
 また、SnO2を添加すると、磁性体セラミック の透磁率が低下し、強度も低下するが、ホウ ケイ酸亜鉛系低軟化点結晶化ガラスを添加す ることにより、その低下した透磁率と強度を 補うことができる。

 また、本発明においては、磁性体セラミ クのポア面積率に係わるポアの直径の平均 を、0.1~0.6μmの範囲とすることが好ましいが 、これは、ポア径が0.1μm未満になると、酸性 溶液がサイドギャップ部から内部導体とその 周囲の磁性体セラミックの界面に到達しにく くなり、また、0.6μmより大きくなると、磁性 体セラミック素子の強度が低下することによ る。

 また、本発明の積層コイル部品の製造方 は、磁性体セラミック素子の側面から、サ ドギャップ部を経て酸性溶液を浸透させ、 部導体とその周囲の磁性体セラミックとの 面に酸性溶液を到達させて、内部導体と、 の周囲の磁性体セラミックとの界面の結合 切断するようにしているので、磁性体セラ ック素子の端面を外部電極が覆っている場 にも、サイドギャップ部から酸性溶液を内 導体とその周囲の磁性体セラミックとの界 に確実に浸透させることが可能になり、内 導体とその周囲の磁性体セラミックとの界 の応力を緩和することができる。その結果 特性のばらつきが少なく、直流抵抗を低減 ることが可能で、サージなどによる内部導 の断線が発生しにくく、信頼性の高い積層 イル部品を製造することが可能になる。

 また、本発明の積層コイル部品の製造方法 、内部に螺旋状コイルを備え、かつ、互い 対向する一対の側面のそれぞれに螺旋状コ ルの両端部の一方が露出し、サイドギャッ 部のポア面積率が6~20%の磁性体セラミック 子を形成し、螺旋状コイルの一対の端部が 出した磁性体セラミック素子の一対の側面 外部電極を形成した後、酸性のめっき液を いて外部電極の表面にめっきを施すように ているので、磁性体セラミック素子の端面 外部電極が覆っている場合にも、ポア面積 が6~20%のポーラスなサイドギャップ部から、 めっき液(酸性溶液)を内部導体とその周囲の 性体セラミックとの界面に確実に浸透させ 、内部導体とその周囲の磁性体セラミック の界面の結合を切断して、磁性体セラミッ に加わる応力を緩和することができる。
 また、めっき液を酸性溶液として用い、め きを施す際に、同時にめっき液を磁性セラ ック素子に浸透させることにより、既存の 程に新たな工程を付加することを必要とせ に、効率よく信頼性の高い積層コイル部品 製造することが可能になる。

本発明の一実施例(実施例1)にかかる積 コイル部品の構成を示す正面断面図である 本発明の実施例1にかかる積層コイル部 品の要部構成を示す分解斜視図である。 本発明の実施例1にかかる積層コイル部 品の構成を示す側面断面図である。 本発明の実施例1および比較例の積層コ イル部品のポア面積率の測定方法を説明する 図である。 本発明の実施例1の積層コイル部品(表1 試料番号3の試料)の断面を鏡面研磨後、FIB より加工した面(W-T面)のSIM像を示す図である 。 本発明の実施例1の積層コイル部品(表1 試料番号3の試料)の三点曲げ試験による破 面のSEM像を示す図である。 磁性体セラミックに添加したホウケイ 亜鉛系低軟化点ガラスの軟化点とインピー ンスの関係を示す図である。

符号の説明

 1        磁性体セラミック層
 2        内部導体
 2a       内部導体の側部
 3        磁性体セラミック素子
 3a       磁性体セラミック素子の側面
 4        螺旋状コイル
 4a,4b    螺旋状コイルの両端部
 5a,5b    外部電極
 8        サイドギャップ部
 9        外層領域
 10       積層コイル部品(積層インピー ンス素子)
 11       磁性体セラミック
 21       セラミックグリーンシート
 21a      内部導体パターンを有しないセ ミックグリーンシート
 22       内部導体パターン(コイルパタ ン)
 23       積層体(未焼成の磁性体セラミ ク素子)
 24       ビアホール
 A        界面

 以下、本発明の実施例を示して、本発明 特徴とするところをさらに詳しく説明する

 図1は本発明の一実施例にかかる積層コイ ル部品(この実施例1では積層インピーダンス 子)の構成を示す断面図、図2はその製造方 を示す分解斜視図である。

 この積層コイル部品10は、磁性体セラミッ 層1と、Agを主成分とするコイル形成用の内 導体2とを積層した積層体3を焼成する工程を 経て製造されており、磁性体セラミック素子 3の内部に螺旋状コイル4を備えている。
 また、磁性体セラミック素子3の両端部には 、螺旋状コイル4の両端部4a,4bと導通するよう に一対の外部電極5a,5bが配設されている。

 そして、この積層コイル部品10において 、図1に模式的に示すように、内部導体2と、 その周囲の磁性体セラミック11との界面Aには 空隙が存在せず、内部導体2とその周囲の磁 体セラミック11とは、ほぼ密着しているが、 内部導体2と磁性体セラミック11とが界面Aで 離した状態となるように構成されている。

 また、この積層コイル部品10においては 内部導体層2と磁性体セラミック11が、その 面Aで解離しているため、内部導体層2と磁性 体セラミック11との結合を切断するために界 Aに空隙を設ける必要がなく、内部導体を細 らせることなく、応力が緩和された積層コイ ル部品10を得ることができる。したがって、 性のばらつきが少なく、直流抵抗を低減す ことが可能で、サージなどによる内部導体 断線が発生しにくい、高信頼性の積層コイ 部品を提供することが可能になる。

 次に、この積層コイル部品10の製造方法に いて説明する。
 (1)Fe2O3を48.0mol%、ZnOを29.5mol%、NiOを14.5mol%、Cu Oを8.0mol%の比率で秤量した磁性体原料を調製 、ボールミルにて48時間の湿式混合を行っ 。
それから、湿式混合したスラリーをスプレー ドライヤーにより乾操し、700℃にて2時間仮 した。
 得られた仮焼物をボールミルにて16時間湿 粉砕し、粉砕終了後にバインダーを所定量 合し、セラミックスラリーを得た。
 それから、このセラミックスラリーをシー 状に成形して厚み25μmのセラミックグリー シートを作製した。

 (2)次に、このセラミックグリーンシートの 定の位置にビアホールを形成した後、セラ ックグリーンシートの表面に内部導体形成 の導電性ペーストを印刷して、コイルパタ ン(内部導体パターン)を形成した。
 なお、上記導電性ペーストとしては、不純 元素が0.1重量%以下のAg粉末と、ワニスと、 剤とを配合してなり、Ag含有率が85重量%の 電性ペーストを用いた。コイルパターン(内 導体パターン)形成用の導電性ペーストとし ては、上述のように、Agの含有量が高いもの 例えば、Ag含有率が83~89重量%のものを用い ことが望ましい。なお、不純物が多いと、 性溶液により内部導体が腐食し、直流抵抗 増加するという不具合が生じる場合がある

 (3)次に、図2に模式的に示すように、この内 部導体パターン(コイルパターン)22が形成さ たセラミックグリーンシート21を複数枚積層 して圧着し、さらにその上下両面側にコイル パターンが形成されていないセラミックグリ ーンシート21aを積層した後、1000kgf/cm2で圧着 ることにより、積層体(未焼成の磁性体セラ ミック素子)23を得た。
 この未焼成の磁性体セラミック素子23は、 の内部に、各内部導体パターン(コイルパタ ン)22がビアホール24により接続されてなる 層型の螺旋状コイルを備えている。なお、 イルのターン数は7.5ターンとした。

 (4)それから圧着ブロックを所定のサイズに ットした後、脱バインダーを行い、820℃~910 ℃の間で、焼成温度を変えて、焼結させるこ とにより、内部に螺旋状コイルを備えた磁性 体セラミック素子を得た。
 このときの磁性体セラミック(フェライト) 内部導体の焼成時の焼結収縮率は、磁性体 ラミックが13~20%であるのに対して、内部導 は8%である。なお、焼成温度が820℃~910℃の 囲では内部導体の焼結収縮率はほぼ一定に るものである。

 なお、導体パターンである内部導体の収 率より磁性体セラミック(フェライト)の収 率の方が大きいことを前提として、導体パ ーンである内部導体の焼結収縮率を0~15%とし 、かつ所定の温度で焼成すると、磁性体セラ ミック素子の内部にポア面積率の分布が生じ 、図3に示す、内部導体2の側部2aと、磁性体 ラミック素子3の側面3aとの間の領域である イドギャップ部8の方が、磁性体セラミック 子3内の内部導体2の上側最外層の上面と、 性体セラミック素子3の上面との間の外層領 9、および、磁性体セラミック素子3内の内 導体2の下側最外層の下面と、磁性体セラミ ク素子3の下面との間の外層領域9よりもポ 面積率が高くなる。すなわち、前記外層領 9の方が緻密に焼結し、サイドギャップ部8の 方が、ポアの分布が多くなる。

 このように、前記外層領域9の方が緻密に焼 結し、サイドギャップ部8にポアの分布が多 なるのは、内部導体2の焼結収縮率を磁性体 ラミック11よりも所定の割合だけ小さくす ことにより、内部導体2と磁性体セラミック1 1の焼結収縮率に差が生じて、内部導体2が磁 体セラミック11の焼結収縮を抑制すること よる。
 なお、内部導体の焼結収縮率は、例えば、 部導体形成用の導電性ペースト中の導電成 (Ag粉末)の含有率と、導電性ペーストに含ま れるワニスおよび溶剤の種類を適宜選択する ことにより制御することができる。

 内部導体の焼結収縮率が0%未満である場合 焼成中に内部導体が収縮しないか、焼成前 りも膨張することになり、構造欠陥やチッ 形状に影響し好ましくない。
 また、内部導体の焼結収縮率が15%以上にな と、磁性体セラミック素子内部にポア率の 布が生じなくなり、前記外層領域9を所定の 高密度にしつつ、Niめっき液をサイドギャッ から浸入させることができなくなる。
 したがって、内部導体の焼結収縮率は0~15% 範囲とすることが望ましく、5~11%とすること がさらに好ましい。
 磁性体セラミックの焼結収縮率の測定は、 ラミックグリーンシートを積み重ね、実際 積層コイル部品を製造する際の条件と同じ 力条件で圧着し、所定の寸法にカットした 焼成し、積層方向に沿う方向の焼結収縮率 熱機械分析装置(TMA)にて測定することによ 行った。

 また、内部導体の焼結収縮率の測定は以下 方法で行った。
 まず、内部導体形成用の導電性ペーストを ラス板上に薄く延ばして乾燥した後に、乾 物をかきとって乳鉢で粉末状に粉砕した。 れから金型に入れて積層コイル部品を製造 る際の条件と同じ圧力条件で一軸プレス成 し、所定の寸法にカットした後焼成し、プ ス方向に沿う方向の焼結収縮率をTMAにて測 した。

 (5)それから、内部に螺旋状コイル4を備えた 磁性体セラミック素子(焼結素子)3の両端部に 外部電極形成用の導電性ペーストを塗布して 乾燥した後、750℃で焼き付けることにより外 部電極5a,5b(図1参照)を形成した。
 なお、外部電極形成用の導電性ペーストと ては、平均粒径が0.8μmのAg粉末と耐めっき に優れたB-Si-K系の平均粒径が1.5μmのガラス リットとワニスと溶剤とを配合した導電性 ーストを用いた。そして、この導電性ペー トを焼き付けることにより形成された外部 極は、以下のめっき工程でめっき液によっ 侵食されにくい緻密なものであった。

 (6)それから、形成された外部電極5a,5bに Niめっき、Snめっきを行い、下層にNiめっき 層、上層にSnめっき膜層を備えた2層構造の っき膜を形成した。これにより、図1に示す うに、磁性体セラミック素子3の内部に、螺 旋状コイル4を備えた構造を有する積層コイ 部品(積層インピーダンス素子)10が得られる

 なお、上記めっき工程では、Niめっき液と て、硫酸ニッケルを約300g/L、塩化ニッケル 約50g/L、ホウ酸を約35g/Lの割合で含み、pHが4 酸性の溶液を用いた。
 また、Snめっき液として、硫酸スズを約70g/L 、クエン酸水素アンモニウムを約100g/L、硫酸 アンモニウムを約100g/Lの割合で含み、pHが5の 酸性の溶液を用いた。

[特性の評価]
 上述のようにして作製した積層コイル部品 ついて、以下の方法でインピーダンスの測 、三点曲げ試験による抗折強度の測定を行 た。
 また、上記(6)の工程で、外部電極にめっき 施す前の段階の磁性体セラミック素子につ て、以下の方法でポア面積率の測定を行っ 。

 (a)インピーダンスの測定
 50個の試料について、インピーダンスアナ イザ(ヒューレット・パッカード社製HP4291A) 用いてインピーダンスの測定を行い平均値(n =50pcs)を求めた。

 (b)抗折強度の測定
 50個の試料について、EIAJ-ET-7403に規定の試 方法にて測定を行い、ワイブルプロットし 場合における破壊確率=1%のときの強度を抗 強度とした(n=50pcs)。

 (c)ポア面積率の測定
 めっき前の磁性体セラミック素子の幅方向 厚み方向で規定される断面(以下、「W-T面」 という)を鏡面研磨し、収束イオンビーム加 (FIB加工)した面を走査電子顕微鏡(SEM)により 察し、焼結後の磁性体セラミック中のポア 積率を測定した。

 具体的には、ポア面積率は画像処理ソフト WINROOF(三谷商事(株)」により測定した。その 具体的な、測定方法は、以下の通りである。
  FIB装置           :FEI製FIB200TEM
  FE-SEM(走査電子顕微鏡) :日本電子製JSM-7500F A
  WinROOF(画像処理ソフト):三谷商事株式会社 、Ver.5.6

 <収束イオンビーム加工(FIB加工)>
 図4に示すように、上述の方法で鏡面研磨し た試料の研磨面に対し、入射角5°でFIB加工を 行った。

 <走査電子顕微鏡(SEM)による観察>
 SEM観察は、以下の条件で行った。
  加速電圧   :15kV
  試料傾斜   :0゜
  信号     :二次電子
  コーティング :Pt
  倍率     :5000倍

 <ポア面積率の算出>
 ポア面積率は、以下の方法で求めた
 a)計測範囲を決める。小さすぎると測定箇 による誤差が生じる。
 (この実施例では、22.85μm×9.44μmとした)
 b)磁性体セラミックとポアが識別しにくけ ば明るさ、コントラストを調節する。 c)2値 化処理を行い、ポアのみを抽出する。画像処 理ソフトWinROOFの「色抽出」では完全でない 合には手動で補う。
 d)ポア以外を抽出した場合はポア以外を削 する。
 e)画像処理ソフトの「総面積・個数計測」 総面積、個数、ポアの面積率、計測範囲の 積を測定する。
 本発明におけるポア面積率は、上述のよう して測定した値である。

 表1に、上述のようにして測定したサイド ギャップ部のポア面積率および外層領域のポ ア面積率、インピーダンス(|Z|)の値、抗折強 の値を示すとともに、焼成温度、FIB加工面 SEM観察による磁性体セラミックと内部導体 の界面の空隙の有無、積層コイル部品を破 したときの磁性体セラミックと内部導体と 界面における剥離の発生の有無を併せて示 。

 表1において、FIB加工面のSEM観察で、磁性 体セラミックと内部導体との界面に空隙が認 められず、かつ、積層コイル部品を破断した ときに磁性体セラミックと内部導体との界面 に剥離が認められる試料(試料番号1~6の試料) 、「Agを主成分とする内部導体と、内部導 の周囲の磁性体セラミックとの界面には空 が存在せず、かつ、内部導体と磁性体セラ ックとの界面が解離している」という本発 の要件を備えた試料であり、試料番号7は、 部導体と磁性体セラミックとの界面が結合 ている試料であって、本発明の要件を備え いない試料である。

 上述のように、磁性体セラミック(フェラ イト)と内部導体の焼成時の焼結収縮率は、 性体セラミックが13~20%であるのに対して、 部導体は8%であり、内部導体の焼結収縮率が フェライトの焼結収縮率よりも小さいので、 焼成が終了した後の段階では、内部導体と磁 性体セラミックの界面は強固に結合している 。

 ところが、これらの、内部導体と磁性体セ ミックの界面が強固に結合している試料に 例えばNiめっきを施すことにより、サイド ャップ部のポア面積率がある程度大きい場 、めっきが行われると同時に、Niめっき液が 磁性体セラミック素子(積層コイル部品)の外 電極が覆っていない領域のポアから内部に 透し、内部導体と磁性体セラミックの界面 到達して、内部導体と磁性体セラミックの 面における結合の切断が行われる。
 これに対し、サイドギャップ部のポア面積 が小さい場合、めっき液が内部に浸透でき 、内部導体と磁性体セラミックの界面で結 を切断することができなくなる。

 表1の、試料番号7の試料は、サイドギャ プ部のポア面積率が、2%と低く、積層コイル 部品を破断したときに磁性体セラミックと内 部導体との界面に剥離が認められない試料で あって、めっき工程を経た後も内部導体と磁 性体セラミックの界面が結合しており、内部 導体の焼結収縮により磁性体セラミックに応 力が加わるため、インピーダンスが著しく低 下している。

 一方、サイドギャップ部のポア面積率が6 %以上の試料番号1~6の試料の場合、めっき液 磁性体セラミック素子の内部に浸透し、内 導体と磁性体セラミックの界面における結 が十分に切断されることから、インピーダ スの低下の少ない特性の良好な積層コイル 品が得られることがわかる。

 なお、試料番号1~6の試料の場合、FIB加工 のSEM観察で、磁性体セラミックと内部導体 の界面に空隙は認められないものの、積層 イル部品を破断したときに磁性体セラミッ と内部導体との界面に剥離が認められてい 。このことから、Niめっき液が磁性体セラ ック素子(積層コイル部品)の外部電極が覆っ ていない領域のポアから内部に浸透し、内部 導体と磁性体セラミックの界面に到達して、 内部導体と磁性体セラミックの界面の結合が 切断されていることがわかる。

 なお、試料番号1の試料は、ポア面積率が26% と高いことから、インピーダンスの低下は少 ないものの、抗接強度の低下が認められる。
 したがって、インピーダンスの低下の抑制 つつ、高い抗折強度を確保する見地からは 試料番号2~6のように、サイドギャップ部の ア面積率を6~20の範囲とすること望ましい。
 また、試料番号3~5のように、ポア面積率を8 ~16%とした場合、インピーダンス、および抗 強度がより安定しており、さらに好ましい とがわかる。

 なお、図5に、本発明の実施例の積層コイル 部品(表1の試料番号3の試料)の断面を鏡面研 後、FIBにより加工した面(W-T面)のSIM像を示す 。
 このSIM像は、めっき後の積層コイル部品のW -T面を鏡面研磨した後、FIBで加工した面を、S IMにより5000倍で観察したものであり、磁性体 セラミックと内部導体の界面に空隙が認めら れないことがわかる。

 また、図6に、実施例の積層コイル部品(表1 試料番号3の試料)の三点曲げ試験による破 面のSEM像を示す。
 破断面のSEM観察では、図6からわかるように 、隙間が認められるが、これは、内部導体と 磁性体セラミックの界面が解離しているので 、破断時に内部導体が延びて、手前に引き出 されるときに隙間が形成されたものと考えら れる。なお、試料をニッパで破断した場合に も、同様の隙間が認められる。

 この実施例2では、ガラスを添加した磁性体 セラミックを用いて作製した積層コイル部品 の実施例を示す。
 Fe2O3:48.0mol%、ZnO:29.5mol%、NiO:14.5mol%、CuO:8.0mol% の比率で秤量した磁性体原料を、ボールミル にて48時間湿式混合してスラリーとした。
 そして、このスラリーをスプレードライヤ により乾操し、700℃にて2時間仮焼して仮焼 物を得た。

 それから、この仮焼物に、ホウケイ酸亜鉛 の低軟化点結晶化ガラスを0~0.6重量%の割合 添加し、ボールミルにて16時間の湿式粉砕 おこなった後、バインダーを所定量混合し セラミックスラリーを得た。なお、ホウケ 酸亜鉛系低軟化点結晶化ガラスは、仮焼前 添加してもよい。
 ここで添加したホウケイ酸亜鉛系結晶化ガ スは、12重量%SiO2-60重量%ZnO-28重量%B2O3の組成 からなるガラスで、軟化点580℃、結晶化温度 690℃、粒径1.5μmのガラスである。
 なお、ガラスの組成としては、上記基本組 に、BaO、K2O、CaO、Na2O、Al2O3、SnO2、SrO、MgOな どの添加物が含まれていてもよい。

 それから、このセラミックスラリーをシー 状に成形して厚み25μmのセラミックグリー シートを得た。
 その後、上記実施例1の場合の(2)~(4)の工程 同じ方法で、内部に積層型の螺旋状コイル 備えた未焼成の積層体(磁性体セラミック素 )を作製した。
 そして、この積層体を、サイドギャップ部 ポア面積率が11%となるように、焼成温度を 整して、焼結させた。

 それから、上記実施例1の場合と同様の方法 および条件で、インピーダンス、三点曲げ試 験により抗折強度を測定した。
 表2に、ガラスの添加量を変えた磁性体セラ ミックを用いた各試料のインピーダンス(|Z|) 値、抗折強度の値を示す。

 表2に示すように、ホウケイ酸亜鉛系結晶化 ガラスを添加することにより、所定のポア面 積率を有し、低密度である場合にも、機械的 強度が高く、透磁率の高い磁性体セラミック を得ることが可能になる。したがって、イン ピーダンスの低下を招くことなく、抗折強度 の高い積層コイル部品を得ることが可能にな る。
 なお、ホウケイ酸亜鉛系結晶化ガラスの添 量は0.1~0.5重量%の範囲とすることが好まし 、0.2~0.4重量%の範囲とすることがさらに好ま しい。

 また、この実施例2で用いたホウケイ酸亜 鉛系結晶化ガラスの組成を変更して、軟化点 が400~770℃の範囲にあるホウケイ酸亜鉛系結 化ガラスを作製した。そして、このホウケ 酸亜鉛系結晶化ガラスの添加量を0.3重量%と て、他は上記実施例1の場合と同じ方法およ び条件で積層コイル部品を作製し、得られた 積層コイル部品のインピーダンスを測定した 。その結果を、図7に示す。

 図7からわかるように、使用するガラスの軟 化点を500~700℃の範囲とすることにより高い ンピーダンス(|Z|)値を得ることができる。
 なお、ガラス軟化点が500℃未満になると、 動性が低下して磁性体セラミックの焼結を 害したり、ガラスが蒸発して透磁率の低下 招いたりするため好ましくない。
 また、ガラス軟化点が700℃を超えた場合も やはり磁性体セラミックの焼結が阻害され 透磁率が低下し、インピーダンスが低下す ため好ましくない。

 なお、本発明において、サイドギャップの ア面積率を制御する方法に特別の制約はな 、
 (1)磁性体セラミックと内部導体の焼結収縮 差を5~20%の範囲で調整する方法、
 (2)磁性体セラミックシートの厚み(例えば10~ 50μm)に対する内部導体の厚みを、例えば5~50μ mの範囲で調整する方法、
 (3)磁性体セラミックシートを構成するセラ ックの粒径を、例えば0.5~5μmの範囲で調整 る方法、
 (4)磁性体セラミックシートのバインダー含 率を、例えば8~15重量%の範囲で調整する方 、
 (5)上記(1)~(4)を組み合わせる方法など
 によりサイドギャップのポア面積率を制御 ることが可能である。

 この実施例3では、NiCuZnフェライトにSnO2 添加した磁性体セラミックを用いて作製し 積層コイル部品の実施例を示す。

 Fe2O3を48.0mol%、ZnOを29.5mol%、NiOを14.5mol%、Cu Oを8.0mol%、およびSnO2を主成分に対し0~1.25重量 %の割合(すなわち外掛けで0~1.2重量%の割合)で 秤量した磁性体原料を、ボールミルにて48時 、湿式混合してスラリー化した。

 得られたスラリーをスプレードライヤーに り乾操し、700℃にて2時間仮焼して仮焼物を 得た。
 この仮焼物に、ホウケイ酸亜鉛系低軟化点 晶化ガラスを0.3重量%加え、ボールミルにて 16時間の湿式粉砕を行った後、バインダーを 定量添加して混合することによりセラミッ スラリーを得た。

 その後、上記実施例2と同じ方法で、内部に 積層型の螺旋状コイルを備えた未焼成の積層 体(磁性体セラミック素子)を作製した。
 そして、この積層体を、サイドギャップ部 ポア面積率が11%となるように、焼成温度を 整して、焼結させた。

 そして、実施例2と同じようにして、インピ ーダンス、三点曲げ試験により抗折強度を測 定した。また、各試料それぞれ50個について -55℃~125℃の熱衝撃試験を2000サイクル行い 試験前後のインピーダンスの変化率を測定 、その最大値を求めた。
 表3に、SnO2の添加量を変えた各試料のイン ーダンス(|Z|)の値、抗折強度、および熱衝撃 試験の前後のインピーダンス(|Z|)の変化率の 大値を示す。

 表3からわかるように、SnO2添加量が増える したがって、熱衝撃試験の前後のインピー ンスの変化率が低減する。
 ただし、抗折強度とインピーダンスも低下 るため、SnO2添加量は、0.3~1.0重量%の範囲と ることが望ましい。
 さらに、試料番号16,17のように、SnO2添加量 0.5~0.8重量%の範囲とした場合、より特性の 定した積層コイル部品を得ることが可能に り特に望ましい。

 なお、上記の各実施例では、いずれもセ ミックグリーンシートを積層する工程を備 たいわゆるシート積層工法により製造する 合を例にとって説明したが、磁性体セラミ クスラリーおよび内部導体形成用の導電性 ーストを用意し、これらを、各実施例で示 たような構成を有する積層体が形成される うに印刷してゆく、いわゆる逐次印刷工法 よっても製造することが可能である。

 さらに、例えば、キャリアフィルム上に ラミックスラリーを印刷(塗布)することに り形成されたセラミック層をテーブル上に 写し、その上に、キャリアフィルム上に電 ペーストを印刷(塗布)することにより形成さ れた電極ペースト層を転写し、これを繰り返 して、各実施例で示したような構成を有する 積層体を形成する、いわゆる逐次転写工法に よっても製造することが可能である。

 本発明の積層コイル部品は、さらに他の 法によっても製造することが可能であり、 の具体的な製造方法に特別の制約はない。

 また、本発明は、非磁性体セラミックを 部に含む開磁路構造の積層インダクタなど も適用することが可能である。

 また、上記各実施例では、外部電極をめ きする際のめっき液を酸性溶液として利用 、積層コイル部品をこのめっき液に浸漬す ことにより、内部導体と、その周囲の磁性 セラミックとの界面の結合を切断するよう しているが、例えば、めっき工程よりも前 段階で、NiCl2溶液(PH3.8~5.4)に積層コイル部品 を浸漬するように構成することも可能である 。また、さらに他の酸性溶液を用いることも 可能である。

 また、上記の各実施例では、1個ずつ積層 コイル部品を製造する場合(個産品の場合)を にとって説明したが、量産する場合には、 えば、多数のコイル導体パターンをマザー ラミックグリーンシートの表面に印刷し、 のマザーセラミックグリーンシートを複数 積層圧着して未焼成の積層体ブロックを形 した後、積層体ブロックをコイル導体パタ ンの配置に合わせてカットし、個々の積層 イル部品用の積層体を切り出す工程を経て 数個の積層コイル部品を同時に製造する、 わゆる多数個取りの方法を適用して製造す ことが可能である。

 また、上記各実施例では、積層コイル部 が積層インピーダンス素子である場合を例 とって説明したが、本発明は、積層インダ タや積層トランスなど種々の積層コイル部 に適用することが可能である。

 本発明はさらにその他の点においても上 実施例に限定されるものではなく、内部導 の厚みや磁性体セラミック層の厚み、製品 寸法、積層体(磁性体セラミック素子)の焼 条件などに関し、発明の範囲内において種 の応用、変形を加えることができる。

 上述のように、本発明によれば、積層コイ 部品を構成する磁性体セラミック層と内部 体層の間に従来のような空隙を形成するこ なく、磁性体セラミック層と内部導体層と 間で、焼結収縮挙動や熱膨張係数の違いか 発生する内部応力の問題を緩和することが 能で、直流抵抗が低く、かつサージなどに る内部導体の断線が発生しにくい、信頼性 高い積層コイル部品を提供することが可能 なる。
 したがって、本発明は、磁性体セラミック にコイルを備えた構成を有する積層インピ ダンス素子や積層インダクタなどをはじめ する種々の積層コイル部品に広く適用する とが可能である。