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Patent Searching and Data


Title:
STACKED INDUCTOR AND POWER CONVERTER USING THE STACKED INDUCTOR
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/081984
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a stacked inductor comprising a coil buried in a magnetic material part and a magnetic gap comprising a non-magnetic material part and provided in a part of a magnetic path. The stacked inductor is characterized in that the magnetic material part is formed of a Ni-base ferrite which has a relative temperature coefficient (αμir) (frequency 1 MHz) of an initial magnetic permeability of more than +10 ppm/˚C and not more than +40 ppm/˚C as measured between -40˚C and +80˚C, the non-magnetic material part is formed of a Zn-base ferrite that contains a larger amount of Zn than the magnetic material part and has a Curie temperature (Tc) of -50˚C or below, and the Zn content continuously changes in the boundary region between the non-magnetic material part and the magnetic material part, whereby the size of the gap varies depending upon the temperature.

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Inventors:
TACHIBANA TAKESHI (JP)
TANAKA SATORU (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/073621
Publication Date:
July 02, 2009
Filing Date:
December 25, 2008
Export Citation:
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Assignee:
HITACHI METALS LTD (JP)
TACHIBANA TAKESHI (JP)
TANAKA SATORU (JP)
International Classes:
H01F17/04; C04B35/26; C04B35/30; H01F1/34; H01F17/00; H01F30/00; H02M3/155
Foreign References:
JP2006202880A2006-08-03
JPS4843716B11973-12-20
JPS3819686B1
JPH09270314A1997-10-14
JP2006151702A2006-06-15
JP2002141215A2002-05-17
JP2006232647A2006-09-07
JP2005097085A2005-04-14
Other References:
See also references of EP 2234126A4
Attorney, Agent or Firm:
TAKAISHI, Kitsuma (5F 67, Kagurazaka 6-chome,Shinjuku-ku, Tokyo 25, JP)
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Claims:
磁性体部と、前記磁性体部に埋設されたコイルと、前記コイルの磁気ギャップを構成する非磁性体部とを有する積層インダクタであって、
 前記磁性体部は、-40℃~+80℃の間で初透磁率の相対温度係数αμir(周波数1 MHz)が+10 ppm/℃超かつ+40 ppm/℃以下のNi系フェライトからなり、
 前記非磁性体部は、前記磁性体部より多くのZnを含有するキュリー温度Tcが-50℃以下のZn系フェライトからなり、
 前記非磁性体部と前記磁性体部との境界領域ではZn含有量が連続的に変化しており、もって温度に応じて前記磁気ギャップの厚さが変動することを特徴とする積層インダクタ。
複数の磁性体層からなる磁性体部と、前記磁性体部内で積層方向に接続してなる複数の導電体層からなるコイルと、前記コイルの磁気ギャップを構成するために前記コイルの内側及び/又は外側に設けられ非磁性体部とを有する積層インダクタであって、
 前記磁性体部がCoを含有するNi系フェライトからなり、
 前記非磁性体部が前記磁性体部より多くのZnを含有するとともに前記積層インダクタの使用温度で非磁性であるZn系フェライトからなり、
 前記磁性体部と前記非磁性体部との境界領域が前記積層インダクタの使用温度の上昇に伴って非磁性となることを特徴とする積層インダクタ。
磁性体部と、前記磁性体部に埋設されたコイルと、前記コイルの磁気ギャップを構成する非磁性体部とを有する積層インダクタであって、
 前記磁性体部は、-40℃~+80℃の間で初透磁率の相対温度係数αμir(周波数1 MHz)が+10 ppm/℃超かつ+40 ppm/℃以下のNi系フェライトからなり、
 前記非磁性体部は、前記磁性体部より多くのZnを含有するキュリー温度Tcが-50℃以下のZn系フェライトからなり、
 -40℃~+85℃の間でのインダクタンスの初期値(重畳電流0 A)の変化率が±7%以内であることを特徴とする積層インダクタ。
請求項1~3のいずれかに記載の積層インダクタにおいて、前記磁性体部は45~50 mol%のFe 2 O 3 、15~30 mol%のZnO、5~15 mol%のCuO、0 mol%超1.2 mol%以下のCoO、残部NiOを主成分とするNi系フェライトからなることを特徴とする積層インダクタ。
請求項4に記載の積層インダクタにおいて、前記磁性体部は副成分として、主成分100質量%に対して3質量%以下(SnO 2 換算)のSn及び/又は1質量%以下(MnO換算)のMnを含有することを特徴とする記載の積層インダクタ。
請求項1~5のいずれかに記載の積層インダクタにおいて、前記非磁性体部は43~50 mol%のFe 2 O 3 、37~50 mol%のZnO、及び0~15 mol%のCuOを主成分とするZn系フェライトからなることを特徴とする積層インダクタ。
 請求項1~6のいずれかに記載の積層インダクタと、スイッチング素子と、前記スイッチング素子の制御回路とを具備することを特徴とする電力変換装置。
Description:
積層インダクタ及びこれを用い 電力変換装置

 本発明は、磁気ギャップを備えた積層イ ダクタ及びこれを用いた電力変換装置に関 る。

 携帯型の各種電子機器(携帯電話、携帯情 報端末PDA、ノート型コンピュータ、DVDプレイ ヤー、CDプレイヤー、MDプレイヤー、デジタ カメラ、デジタルビデオカメラ等)の多くは 源として電池を用いており、電源電圧を所 の動作電圧に変換する電力変換装置としてD C/DCコンバータを備えている。電源は従来入 端子付近に配置されて半導体(IC)等の負荷に 続しているが、最近では半導体の低電圧化 び大電流化、配線による電圧降下、及び回 インピーダンスの上昇による電流変化に対 る応答の遅れのような集中給電方式におけ 問題が顕在化してきた。このため、負荷近 に電源を配置するPOL(Point of Load)と呼ばれ 集中給電方式が使用されるようになった。 えば、入力端子付近に絶縁型のDC/DCコンバー タを配置し、負荷近くに非絶縁型のDC/DCコン ータを配置する。

 図19は非絶縁型DC/DCコンバータの回路の一 例を示す。このDC/DCコンバータは、入力コン ンサCin、出力コンデンサCout、インダクタ1(L out)、及び制御回路等を含む半導体集積回路IC からなる降圧型DC/DCコンバータである。直流 入力電圧Vinは、制御回路からのコントロー 信号に基づいて半導体集積回路IC内のスイ チング素子(電界効果トランジスタ)をスイッ チングする。スイッチング素子をオンしてい る時間をTon、オフしている時間をToffとする 、入力電圧Vinに対して出力電圧VoutはVout=Ton/( Ton+Toff)×Vinで表されるように降圧される。入 電圧Vinが変動しても、TonとToffの比率を調整 することにより安定した出力電圧Voutを得る とができる。

 従来のDC/DCコンバータ回路は、スイッチ グ素子と、制御回路を含む半導体集積回路( 動素子)と、インダクタ、コンデンサ等の受 動素子とをプリント配線基板等に搭載したデ ィスクリート回路であるが、電子機器の小型 化に伴い回路全体がモジュール化されるよう になった。また出力電圧の変動を低減するよ うにスイッチングの高速化が進み、最近では 1 MHzから5 MHzのスイッチング周波数で動作す るDC/DCコンバータも普及し、更なる高周波化 進められている。

 DC/DCコンバータは様々な環境で使用され 半導体集積回路ICや周辺回路の発熱に晒され るので、DC/DCコンバータ内のインダクタは安 した温度特性を有する必要があり、また三 波状の交流電流に重畳して直流電流が流れ ため、優れた直流重畳特性を有することも 要である。

 DC/DCコンバータの電圧変換効率はスイッ ング素子やインダクタで発生する損失に大 く影響されるので、インダクタに用いるフ ライト磁性体はスイッチング周波数付近で 損失であることが要求される。更に、イン クタにはモールド用樹脂の硬化時等に生じ 応力に対して特性変動が少なく、安定して 損失であることが求められる。

 このようなDC/DCコンバータ用インダクタ 多くは、従来フェライト磁心に銅線を巻設 た所謂巻線タイプであった。しかしながら 巻線タイプのインダクタが小型になるほど 心の加工は困難となり、強度も低下する。 た巻線タイプのインダクタは開磁路型で、 の漏洩磁束が周辺の回路素子に影響するの 、インダクタに近接して周辺の回路素子を 置することができず、実装面積の低減が困 である。

 携帯機器をはじめとする電子機器の小型 及び多機能化が進むにつれて、それに用い れる電源回路の小型化(省スペース化及び低 背化)も求められる。しかし、巻線タイプの ンダクタは占有面積が大きく背も高いため 高スイッチング周波数化による回路の小型 に対応しきれない。そのため、導体線路を ェライト磁性体に一体化して漏洩磁束を少 くした閉磁路型の積層インダクタが用いら るようになった。

 インダクタ用フェライト磁性体は、飽和磁 密度が高く、使用温度範囲において飽和磁 密度及び初透磁率の変化が小さいことが求 られる。このようなフェライト磁性体とし 、特開2005-97085号は、45.5~48.0 mol%のFe 2 O 3 、5~10 mol%のCuO、26~30 mol%のZnO、残部実質的に NiOの主成分100重量%に対して、副成分として 化コバルトをCoO換算で0.005~0.045重量%含有し -40℃~+20℃における初透磁率の相対温度係数( αμir)の絶対値、及び20℃~160℃におけるαμir 絶対値がともに3 ppm/℃以下であり、100 kHz おける品質係数(Q値)が170以上であり、抗応 特性の絶対値が5%以下であるNi系フェライト 開示している。このNi系フェライトは温度 性が安定したインダクタンスを有するが、DC /DCコンバータ用インダクタに重要な飽和磁束 密度Bsの温度特性が不十分である。

 図20はαμirの絶対値が小さいフェライト 性体の磁化曲線を概略的に示す。一般に、 ェライト磁性体の飽和磁束密度Bsは温度が高 くなり(温度:T3>T2>T1)、キュリー温度Tcに づくほど低下する。このため飽和磁束密度 温度変化は磁界Hが小さいときには僅かであ が、磁界Hが大きくなると急激に大きくなる 。

 このような磁化特性を有するフェライト 性体を用いたインダクタの直流重畳特性を 21に示す。重畳電流Idcが小さい場合、イン クタンスの温度変化は小さいが、重畳電流Id cが大きい場合、温度が高くなるに従いイン クタンスが著しく低下する。そのため、フ ードバック電流によるDC/DCコンバータの制御 が困難となり、安定した動作が得られなくな る。

 従って本発明の第一の目的は、温度によ インダクタンスの変化が小さく、磁気特性 温度特性に優れ、直流重畳特性にも優れた 層インダクタ及び電力変換装置を提供する とである。

 本発明の第二の目的は、スイッチング周 数付近で低損失な積層インダクタ及び電力 換装置を提供することである。

 本発明の第一の積層インダクタは、磁性 部と、前記磁性体部に埋設されたコイルと 前記コイルの磁気ギャップを構成する非磁 体部とを有し、前記磁性体部は、-40℃~+80℃ の間で初透磁率の相対温度係数αμir(周波数1 MHz)が+10 ppm/℃超かつ+40 ppm/℃以下のNi系フ ライトからなり、前記非磁性体部は、前記 性体部より多くのZnを含有するキュリー温度 Tcが-50℃以下のZn系フェライトからなり、前 非磁性体部と前記磁性体部との境界領域で Zn含有量が連続的に変化しており、もって温 度に応じて前記磁気ギャップの厚さが変動す ることを特徴とする。

 Zn含有量が連続的に変化する境界領域に いて、Zn含有量が増大するにつれてキュリー 温度Tcが低下し初透磁率が増大するので、磁 体部側より非磁性体部側の方が高透磁率と る傾向にある。

 本発明の第二の積層インダクタは、複数 磁性体層からなる磁性体部と、前記磁性体 内で積層方向に接続してなる複数の導電体 からなるコイルと、前記コイルの磁気ギャ プを構成するために前記コイルの内側及び/ 又は外側に設けられ非磁性体部とを有し、前 記磁性体部がCoを含有するNi系フェライトか なり、前記非磁性体部が前記磁性体部より くのZnを含有するとともに前記積層インダク タの使用温度で非磁性であるZn系フェライト らなり、前記磁性体部と前記非磁性体部と 境界領域が前記積層インダクタの使用温度 上昇に伴って非磁性となることを特徴とす 。

 本発明の第三の積層インダクタは、磁性 部と、前記磁性体部に埋設されたコイルと 前記コイルの磁気ギャップを構成する非磁 体部とを有し、前記磁性体部は、-40℃~+80℃ の間で初透磁率の相対温度係数αμir(周波数1 MHz)が+10 ppm/℃超かつ+40 ppm/℃以下のNi系フ ライトからなり、前記非磁性体部は、前記 性体部より多くのZnを含有するキュリー温度 Tcが-50℃以下のZn系フェライトからなり、-40 ~+85℃の間でのインダクタンスの初期値(重畳 電流0 A)の変化率が±7%以内であることを特徴 とする。

 第一~第三の積層インダクタにおいて、上記 磁性体部は45~50 mol%のFe 2 O 3 、15~30 mol%のZnO、5~15 mol%のCuO、0 mol%超1.2 mol %以下のCoO、残部NiOを主成分とするNi系フェラ イトからなるのが好ましい。

 磁性体部は副成分として、主成分100質量%に 対して3質量%以下(SnO 2 換算)のSn及び/又は1質量%以下(MnO換算)のMnを 有しても良い。

 非磁性体部は磁性体部よりZnを多く含有す Zn系フェライトからなる。このようなZn系フ ライトの好ましい主成分組成は、43~50 mol% Fe 2 O 3 、37~50 mol%のZnO、及び0~15 mol%のCuOからなる。 Zn系フェライトのキュリー温度Tcは-50℃以下 好ましい。非磁性体部を磁性体部と同じス ネルとすれば、境界で熱膨張係数の差異に るクラックが生じ難くなる。

 本発明の電力変換装置は、上記積層イン クタと、スイッチング素子と、前記スイッ ング素子の制御回路とを具備することを特 とする。

 温度により実効的な厚さが変化する磁気 ャップを有するとともに、フェライト磁性 の初透磁率の相対温度係数αμirを所望の範 に設定した本発明の積層インダクタは、温 変化に対して安定したインダクタンス及び れた直流重畳特性を有するとともに、スイ チング周波数付近で低損失であり、応力に る特性変動が少ない。

本発明の一実施形態による積層インダ タの外観を示す斜視図である。 本発明の一実施形態による積層インダ タを示す断面図である。 本発明の一実施形態による積層インダ タの積層構造を示す分解斜視図である。 本発明の焼成前の積層インダクタの 磁性体部を含む領域を示す部分断面図であ 。 本発明の焼成後の積層インダクタの 磁性体部を含む領域を示す部分断面図であ 。 本発明の積層インダクタの磁気ギャッ を含む領域におけるZnOの拡散状態を示すグ フである。 初透磁率の相対温度係数が大きいフェ イトの磁化曲線を示すグラフである。 初透磁率の相対温度係数が大きいフェ イトを用いたインダクタの直流重畳特性を すグラフである。 本発明の積層インダクタの直流重畳特 を示すグラフである。 本発明の積層インダクタに用いる第 の複合シートを示す断面図である。 本発明の積層インダクタに用いる第 の複合シートを示す断面図である。 CoO含有量と初透磁率の相対温度係数α irとの関係を示すグラフである。 MnO含有量と初透磁率の相対温度係数α irとの関係を示すグラフである。 本発明の積層インダクタ(試料S3)にお るZnOの拡散状態を示すグラフである。 焼成のピーク温度とZn含有量の分布と 関係を示すグラフである。 本発明の積層インダクタ(試料S1)の直 重畳特性を示すグラフである。 本発明の積層インダクタ(試料S2)の直 重畳特性を示すグラフである。 本発明の積層インダクタ(試料S3)の直 重畳特性を示すグラフである。 比較例1に用いる第三の複合シートを す断面図である。 比較例1の従来の積層インダクタの直 重畳特性を示すグラフである。 DC/DCコンバータの等価回路を示す図で る。 初透磁率の相対温度係数が小さいフェ ライトの磁化曲線を示すグラフである。 初透磁率の相対温度係数が小さいフェ ライトを用いたインダクタの直流重畳特性を 示すグラフである。

[1] 積層インダクタ
(a) 構造
 図1~3に示す本発明の一実施形態による積層 ンダクタは、積層体1内部に埋設された導体 パターン5a~5eを接続してなるコイルを備えて り、コイルの両端は、積層体1の表面にAg等 導体ペーストを焼き付けた外部端子20a、20b 接続している。図2に示すように、積層体1 、コイルを構成する複数の導体パターン5a~5e を有する磁性体部2と、導体パターン5cと接す る位置に設けられてコイルの磁気ギャップを 形成する非磁性セラミック層(非磁性体部)15 を有する。非磁性体部15の端部は積層体1の 面に露出している。この積層インダクタは イルの内側及び外側の両方に磁気ギャップ 備えた開磁路構造を有するが、コイルの内 又は外側のみに非磁性体部15を形成しても良 く、また複数の非磁性体層を設けても良い。 外部端子の形成位置は積層体1の両端部に限 されない。

 磁性体部2は、周波数1 MHzで-40℃~+80℃の間 初透磁率の相対温度係数αμirが+10 ppm/℃超 つ+40 ppm/℃以下のNi系フェライトにより形成 するのが好ましい。このNi系フェライトは、4 5~50 mol%のFe 2 O 3 、15~30 mol%のZnO、5~15 mol%のCuO、0 mol%超1.2 mol %以下のCoO、残部NiOを主成分とするのが好ま い。

 Fe 2 O 3 が45 mol%未満ではコアロスが大きく、透磁率 低い。Fe 2 O 3 が50 mol%を超えると960℃以下で焼結不足とな 、機械的強度が低下する。Fe 2 O 3 はより好ましくは47~49.5 mol%である。

 ZnOは透磁率の向上に寄与する。ZnOが15 mol %未満では-40℃~+80℃でαμirが+40 ppm/℃より大 く、温度によるインダクタンス変化が大き 。ZnOが30 mol%を超えるとコアロスが大きく るとともに、高温(120℃)での飽和磁束密度が 300 mT未満に低下する。ZnOはより好ましくは17 ~27mol%である。

 CuOが5 mol%未満又は15 mol%超であると飽和 束密度Bsが低い。またCuOは焼結温度の低下 寄与するが、5 mol%未満であると焼結密度が 十分になり易い。CuOはより好ましくは7~12 m ol%である。

 CoOは磁歪定数を増加させ、無応力時の初透 率を低下させ、温度及び応力による初透磁 の変化を大きくする。またCo 2+ は正の結晶磁気異方性定数を有するので、負 の磁気異方性定数を有するNi系フェライトに 溶すると、Ni系フェライトの磁気異方性定 が低減され、特に1 MHz以上の高周波でのコ ロスが低減する。従って、CoOの添加により 透磁率の相対温度係数αμirを調整し、高周 数でのコアロスを低減することができる。 かしCoOが1.2 mol%を超えると、磁気異方性定 が正の側に大きくなりすぎるので、コアロ が大きくなり、-40℃~+80℃でのαμirが+40 ppm/ より大きくなる。CoOはより好ましくは0.2~1.2 mol%である。

 NiOは、主成分組成からFe 2 O 3 、ZnO、CuO及びCoOの量を引いた残量である。所 望の透磁率と高い飽和磁束密度を得るには、 NiO/CuOのモル比を0.3~5.8とするのが好ましい。

 Ni系フェライトは副成分として、主成分100 量%に対して3質量%以下(SnO 2 換算)のSn及び/又は1質量%以下(MnO換算)のMnを 有しても良い。

 Snは安定な4価イオンとして結晶粒内に固溶 、格子歪を低減させることにより飽和磁歪 数λs及び磁気異方性定数を小さくし、もっ 応力によるインダクタンスの変化やコアロ の増加を抑制する。3質量%以下のSnO 2 の添加により、使用温度において磁気異方性 定数が急激に変化するのを抑制し、かつ飽和 磁束密度の減少に応じて磁気異方性定数の減 少を調整することができるため、初透磁率の 相対温度係数αμirを調整することができる。 SnO 2 が3質量%超であると焼結性が不足し、透磁率 の磁気特性が劣化する。SnO 2 はより好ましくは0.2~2.0質量%である。

 Mnの添加により格子歪が低減し、初透磁 μiが増加し、B-Hループの非線形性が改善さ 、マイナーループにおける保磁力Hcが低下す る。MnOが1質量%を超えると焼結性が低下し、 アロスの応力特性が悪化する傾向にある。M nOはより好ましくは0.2~0.8質量%である。

 磁気ギャップを設けた小型の積層インダ タの場合、初透磁率が小さいと所望のイン クタンスを得るためにコイルの巻数を増加 ざるを得ず、直流抵抗Rdcが増加するので、 性体部を構成するNi系フェライトの初透磁 は70以上が好ましく、100以上がより好ましい 。

 本発明の積層インダクタでは、温度に応 て磁気ギャップ長が変化する。磁気ギャッ 長の変化と磁性体部の初透磁率の相対温度 数αμirとを整合させることによりインダク ンスの温度変化を小さくすることができる 温度により磁気ギャップ長が変化する本発 の構造の場合、磁性体部の初透磁率の相対 度係数αμirが+10 ppm/℃以下又は+40 ppm/℃超 あると、インダクタンスの変化が大きい。

 磁束φを遮る磁気ギャップを形成する非磁 体部15は、磁性体部2よりZnを多く含有し、キ ュリー温度Tcが-50℃以下のZn系フェライトに り形成するのが好ましい。このようなZn系フ ェライトの好ましい主成分組成は、43~50 mol% Fe 2 O 3 、37~50 mol%のZnO、及び0~15 mol%のCuOからなる。 Zn系フェライトのより好ましい主成分組成は 47~49.5 mol%のFe 2 O 3 、40~50 mol%のZnO、及び7~12 mol%のCuOからなる。 非磁性体部を磁性体部と同じスピネルとすれ ば、境界で熱膨張係数の差異によるクラック が生じ難くなる。更に磁性体部2から拡散す Coを含み得る。

 直流重畳特性を改善するために積層イン クタに非磁性Zn系フェライトからなる磁気 ャップを設けることは従来から行なわれて るが、本発明のような構造によりインダク の温度特性を改善した例はなかった。

 磁性体部と非磁性体部との境界領域は、 ンダクタの非磁性体部となる非磁性材料に まれるZnの一部が焼成時に磁性体部に拡散 ることにより形成される。非磁性体部と磁 体部との境界では、Zn含有量が非磁性体部か ら磁性体部へ連続的に変化(減少)するので、 ュリー温度Tcも連続的に変化し、もって磁 回路中の磁気ギャップ長も温度により変化 る。

 図4(a) 及び図4(b) は本発明の積層インダ タに用いる焼成前後の積層体の断面を示す 非磁性体部Aを磁性体部Cで挟む図4(a) に示 積層体を焼成すると、非磁性体部Aから磁性 部CへZnが拡散し、非磁性体部AのZn含有量が 少し、磁性体部CのZn含有量が増加する。そ 結果、非磁性体部Aと磁性体部Cとの境界で 、Zn含有量が連続的に変化する境界領域Bが 成される[図4(b)]。

 図5は磁気ギャップを含む領域におけるZn 有量の分布を示す。Zn含有量は、非磁性体 Aと磁性体部Cとの境界領域Bでは、相対的に 濃度の非磁性体部Aから低濃度の磁性体部Cに 向けて緩やかに減少する。図中実線で示す試 料S1と破線で示す試料S2は、非磁性体部Aにお るZn含有量が異なる。非磁性体部Aとフェラ ト磁性体部CとのZn含有量の差を大きくすれ 、境界領域BでのZn含有量の傾斜が大きくな ため、キュリー温度Tcの変化は急峻となる 試料S2の場合、非磁性体部A近傍ではZnが多い ため、低温での磁気キャップは試料S1より厚 なる。

 図6は、磁性体部Cに用いるαμirの絶対値 大きいフェライト磁性体の磁化曲線を概略 に示す。このようなフェライト磁性体の飽 磁束密度は、低印加磁界では高温であるほ 大きく、高印加磁界では低温であるほど大 くなる傾向を示す。

 このような磁化特性を有するフェライト 性体を用いたインダクタの直流重畳特性を 7に示す。重畳電流Idcが大きくなりかつ温度 が高くなるに従って、インダクタンスは低下 する。αμirが大きいため、重畳電流Idcが小さ い場合でもインダクタンスの温度変化は大き く、安定した特性が得られない。しかし、非 磁性体部Aと磁性体部Cとの境界においてキュ ー温度Tcが連続的に変化する構造とし、非 性体部Aと境界領域BにおけるZn含有量による 気ギャップの厚さの温度変化と、磁性体部C に用いるフェライト磁性体の初透磁率の相対 温度係数αμirとを適宜整合させることにより 、図8に示すように、低~高重畳電流において ンダクタンスの温度変化が小さいインダク とすることができる。また温度とともに磁 ギャップの実効的な厚さが変化するので、 記境界領域Bがない磁気ギャップを有するイ ンダクタと比較して、高温及び/又は大電流 でのインダクタンスの低下を防ぐことがで る。

 本実施形態による積層インダクタは、図3 に示すように、主に導体ペーストで帯状の導 体パターンを形成した第一及び第二の複合シ ート50a、50bからなる層L2~L6と、磁性体シート1 0からなる層L1,L7とにより構成されている。例 えば層L2を構成する第一の複合シート50aは、 9(a) に示すように、キャリアフィルム(図示 せず)上に形成した磁性体シート10aに導体パ ーン5aを印刷し、導体パターン5aが形成され いない磁性体シート10aの全面に磁性体ペー トを印刷して導体パターン5aと同じ厚さの 性体層10bを形成することにより形成される 第一の複合シート50aからなる他の層L3,L5及び L6は、導体パターン5b,5d,5eの形状が異なる点 及び各導体パターン5b,5d,5eの末端部に磁性体 シート10aを貫通するビアホール6b,6d,6eを設け 点以外、層L2と同じである。

 層L4を構成する第二の複合シート50bは、 9(b) に示すように、キャリアフィルム(図示 ず)上に形成した非磁性体シート15に導体パ ーン5cを印刷し、導体パターン5cが形成され ていない非磁性体シート15の全面に磁性体ペ ストを印刷して導体パターン5cと同じ厚さ 磁性体層10bを形成することにより形成され 。なお、第一及び第二の複合シート50a、50b おいて、導体パターン5a~5eと磁性体層10bの印 刷順序を逆にしても良い。

(b) 製造方法
(1) 磁性体シート層10(L7)の形成
 キャリアフィルム(図示せず)上に形成した 性体シート10aをキャリアフィルムとともに 定の形状に切断し、プレート(図示せず)上に 配置し、キャリアフィルム側を吸引保持する 。同様に形成したキャリアフィルム付き磁性 体シート10aをキャリアフィルムを上にしてプ レート上の磁性体シート10aに重ねて圧着した 後、キャリアフィルムを剥離する。この操作 を複数回数繰り返して、所定の厚さの磁性体 シート層10(L7)を形成する。

(2) 第一の複合シート50aからなる層L6,L5の積
 層L7に、キャリアフィルム上に形成した第 の複合シート50aを重ねて圧着し、キャリア ィルムを剥離することにより、第一の複合 ート50aからなる層L6を積層し、同様にして層 L5を積層する。

(3) 第二の複合シート50bからなる層L4の積層
 層L5に、キャリアフィルム上に形成した第 の複合シート50bを重ねて圧着し、キャリア ィルムを剥離することにより、第二の複合 ート50bからなる層L4を積層する。

(4) 第一の複合シート50aからなる層L3,L2の積
 層L4に、キャリアフィルム上に形成した第 の複合シート50aを重ねて圧着し、キャリア ィルムを剥離する工程を繰り返すことによ 、第一の複合シート50aからなる層L3,L2を積層 する。これにより、ビアホール6b~6eを介して 体パターン5a~5eが接続され、導体パターン5b ,5c間に非磁性体層15による磁気ギャップが形 されたコイルが形成される。
(5) 磁性体シート層10(L1)の積層
 層L2に、工程(1) と同様にして複数の磁性体 シート10aを圧着し、所定の厚さの磁性体シー ト層10(L1)を形成する。

 キャリアフィルムは約50~250μmの厚さで、 面に剥離材としてシリコーン樹脂をコーテ ングしたポリエステルフィルムが好ましい キャリアフィルム上に、ドクターブレード 、ダイコータ法、ロールコータ法等により 成する磁性体シート10a又は非磁性体シート1 5を形成する。磁性体シート10aの厚さは10~300μ mが好ましく、非磁性体シート15の厚さは所望 の磁気ギャップが得られるように5~200μmが好 しい。

 工業的には多数の積層インダクタが連結 た積層体を形成し、個々の積層インダクタ 切断し、850~950℃で1~6時間焼結した後、バレ ル研磨し、コイルの両端が現れた各積層イン ダクタの両側面にAgペーストを塗布及び焼き けて外部端子20a、20bを形成するのが好まし 。

 磁性体部Cに用いるNi系フェライトの初透 率の相対温度係数αμir及び飽和磁束密度の 度特性に応じて、焼成条件(ピーク温度、保 持時間等の温度プロファイル)を適宜調整す ことにより、境界領域BにおけるZnの拡散状 を制御する。

 焼成雰囲気は導体パターンの金属材料に応 て決める。金属材料の酸化が問題となる場 、焼成雰囲気を酸素分圧が8%以下の低酸素 囲気、又はN 2 ,Ar等の不活性ガス雰囲気とするのが好ましい 。

 導体パターンや外部端子を構成する低抵 率の金属材料はAg、Pt,Pd,Au,Cu,Ni、又はこれら の合金が好ましい。また磁性体シート10a及び 磁性体層10bは上記Ni系フェライトにより形成 、非磁性体シート15は上記Zn系フェライトに より形成する。

 導体パターン5a~5eが形成されたコイル部 おける磁性体シート10a及び磁性体層10bと、 イル部の上下に位置する磁性体シート層10,10 は、実質的に同じNi系フェライトにより形成 るのが好ましい。「実質的に同じ」とは、 成分が同じという意味で、副成分が異なっ いても結晶粒径が異なっていても良い。必 に応じて異なるフェライトを用いてもよい 例えば磁性体シート層10,10をNi系フェライト より高飽和磁束密度のMn系フェライトとする 、局部的な磁気飽和を低減することができ 。

 磁気ギャップとして機能する非磁性体層1 5は、セラミックグリーンシートにより構成 るので厚さ精度が良く、コイルのインダク ンスのばらつきを小さく抑制することがで る。また複数の第二の複合シート50bを用い ことにより、複数の磁気ギャップを分散し 設けても良い。

[2] 電力変換装置
 本発明の電力変換装置は、上記積層インダ タと、スイッチング素子と、前記スイッチ グ素子の制御回路とを具備する。インダク 、スイッチング素子等は回路基板に実装し も良いし、樹脂基板上に実装してモジュー 化しても良い。またインダクタ上にスイッ ング素子等を実装してモジュール化しても い。

 図19は、積層インダクタと半導体集積回 ICとを組み合わせた電力変換装置としての降 圧型DC/DCコンバータの等価回路を示す。積層 ンダクタの上面に設けられた実装用電極に イッチング素子及び制御回路を含む半導体 積回路ICが実装され、積層インダクタの裏 に出力電圧制御用端子Vcon、出力のON/OFF制御 端子Ven、スイッチング素子のON/OFF制御用端 Vdd、入力端子Vin、出力端子Vout、及びグラン ド端子GND等の外部端子が設けられている。外 部端子は、積層インダクタの側面及び内部に 形成された接続電極により、半導体集積回路 IC及び内蔵コイルと接続している。本発明の 層インダクタを具備するDC/DCコンバータは 高温及び高直流重畳電流でも優れた変換効 で安定動作することができる。

 本発明を以下実施例により具体的に説明 るが、本発明はこれらに限定されるもので ない。ただし、積層体の各層の厚さは特に りがない限り焼成後の厚さをいう。

実施例1
[1] 磁性体部を構成するNi系フェライト
(a) 製造
 Fe 2 O 3 、ZnO、CuO、CoO及びNiOからなる主成分粉末と、 SnO 2 及びMnOからなる副成分粉末とを湿式混合し、 乾燥し、800℃で2時間仮焼した。仮焼粉をイ ン交換水とともにボールミルに投入し、BET 表面積が6.5m 2 /gとなるまで約20時間粉砕した。この仮焼粉 粉にポリビニルアルコールを加えてスプレ ドライヤー法で顆粒化した後成形し、大気 900℃で2時間焼成し、表1に示す組成を有し、 外径8 mm、内径4 mm、厚さ2 mmのトロイダル磁 心状試料を作製した。主成分及び副成分の含 有量の測定は蛍光X線分析法及びICP発光分光 析法により行った。まず蛍光X線分析により 有元素を同定し、標準サンプルとの比較に る検量線法により定量した。

(b) 磁気特性の測定
 各試料の初透磁率μi、飽和磁束密度Bs、残 磁束密度Br、保磁力Hc及びコアロスを下記の 法により測定した。
(1) 初透磁率μi
 各トロイダル磁心試料に銅線を7ターン巻い てインダクタとし、LCRメータを用いて周波数 1 MHz及び電流1 mAでインダクタンスを測定し 下記式により初透磁率μiを算出した。
 初透磁率μi=(le×L)/(μ 0 ×Ae×N 2 )
(le:磁路長、L:試料のインダクタンス、μ 0 :真空の透磁率=4π×10 -7  H/m、Ae:試料の断面積、N:コイルの巻数)

 次にトロイダルコア磁心試料のインダクタ スを-40℃~+80℃の範囲で測定し、初透磁率の 相対温度係数αμirを下記式により算出した。
 初透磁率の相対温度係数αμir=[(μi2-μi1)/μi12 ]/(T2-T1)

 -40℃~+20℃の範囲では、T1は20℃、T2は-40℃ 、μi1は-40℃における初透磁率、μi2は+20℃に ける初透磁率である。また+20℃~+80℃の範囲 では、T1は+20℃、T2は+80℃、μi1は20℃におけ 初透磁率、μi2は80℃における初透磁率であ 。測定温度範囲を2つに分けたのは、αμirの 号が温度範囲に応じて逆転することがある めである。

(2) 飽和磁束密度Bs、残留磁束密度Br及び保磁 力Hc
 B-Hアナライザを用いて、4 KA/mの磁場中10 kH zの周波数で各試料の飽和磁束密度Bs、残留磁 束密度Br及び保磁力Hcを測定した。

(3) コアロスPcv
 トロイダル磁心試料に1次側2次側ともに5タ ンの銅線を巻き、室温(25℃)で5 MHz及び30 mT の条件、及び10 MHz及び30 mTの条件でコアロ Pcvを測定した。

 表1に各試料の組成、初透磁率μi、及びα irを示し、表2にコアロスPcv、飽和磁束密度Bs 、残留磁束密度Br及び保磁力Hcを示す。なお *を付した試料は本発明の範囲外である。

 図10は、試料8~16におけるCoO量とαμirとの 係を示す。Co量が増大するとαμirも正側に 大する関係を利用して、αμirを所望の値に 御することができる。-40℃~+20℃におけるαμ irはCoOが1.0 mol%以上になると急に大きくなり +20℃~+80℃におけるαμirはCoOが1.5 mol%以上に なると急に大きくなる。

 図11は、試料11及び19~22におけるMnO量とαμ irとの関係を示す。Coが少ない場合、Mn量が増 大するとαμirが低減するので、コア損失を抑 制しながらαμirを所望の値に調整することが できることが分かる。

[2] 非磁性体部を構成するZn系フェライト
 48.5 mol%のFe 2 O 3 粉末、42.7 mol%のZnO粉末、及び8.8 mol%のCuO粉 を湿式混合し、乾燥し、800℃で2時間仮焼し 。仮焼粉をイオン交換水とともにボールミ に投入し、BET比表面積が4.5 m 2 /gとなるまで約20時間粉砕した。仮焼粉砕粉 ポリビニルアルコールを加えてスプレード イヤー法で顆粒化した後成形し、大気中900 で2時間焼成して、外径8 mm、内径4 mm、厚さ 2 mmのZn系フェライトのトロイダル磁心状試 を得た。主成分の含有量の測定は磁性体部 構成するNi系フェライトと同様に行った。各 試料のキュリー温度Tcは-60℃以下であり、初 磁率μiは実質的に1であった。

[3] インダクタ
 試料6のNi系フェライトの組成となるように 原料粉末を混合、仮焼及び粉砕し、仮焼粉 にポリビニルブチラールとエタノール溶媒 加えてボールミル中で混練してスラリーと た。粘度を調整した後、スラリーをPETフィ ム上にドクターブレード法で塗布し、乾燥 て厚さ30μmの磁性体シート10aを作製した。 様に上記Zn系フェライトからなる厚さ10μm、2 0μm及び30μmの非磁性体シート10bを作製した。 これらの磁性体シート10a及び非磁性体シート 10bに、図3に示すように、Agペーストにより厚 さ30μmの導体パターン5a~5eを形成した後、導 パターン5a~5eと同じ厚さの磁性体層10bを形成 し、両側に磁性体シート層10を設けて、積層 着した。得られた積層集合体を2.5 mm×2.0 mm ×1.0 mmの寸法に切断し、500℃で脱バインダー した後、大気中で900℃に3時間保持して焼成 た。焼成積層体に外部端子20a,20bを形成した 焼き付け、4.5ターンのコイルを備えた積層 ンダクタを作製した。このようにして得ら た積層インダクタ(試料S1~S3)を表3に示す。

 図12は、試料S3の磁気ギャップ(非磁性体部) 含む領域でのZn含有量の分布を示す。磁性 部C、非磁性体部A及び境界領域BにおけるZnO,F e 2 O 3 ,CuO,NiO及びCoOの含有量は、EPMA(Electron Probe X-r ay Microanalysis)及びSEM-EDX(走査型電子顕微鏡エ ルギー分散型X線分析)により測定した。非 性体部Aと磁性体部Cとの境界は明確ではなく 、Zn含有量は連続的に変化している。またCo 非磁性体部Aに拡散している。

 境界領域Bは非磁性体部AからのZnの拡散に より形成されるので、非磁性体部Aを形成す 非磁性体シート15の厚さは重要なパラメータ である。非磁性体シート15の厚さが10μmの試 S1の場合、Zn含有量は最大でも33 mol%(ZnO換算) しかなく、非磁性体部Aを形成することがで なかった。また焼成のピーク温度とZn含有量 の分布との関係を示す図13から明らかなよう 、ピーク温度が890℃から920℃まで上昇する つれてZnの拡散が進み、境界領域Bが広る。 のように非磁性体部A及び境界領域Bの厚さ 非磁性体シート15の厚さ及びZn含有量、並び 焼成条件により変化するので、それらを適 設定する必要がある。例えば試料S1の場合 も、非磁性体シート15のZn含有量及び焼成条 を適宜設定することにより非磁性体部Aを形 成することができる。

 図14~16は、試料S1~S3の直流重畳特性を示す 。図14に示すように非磁性体シート15の厚さ 10μmの試料S1では、磁気ギャップ効果が得ら ず、低重畳電流時(0~700 mA)に温度に対して 定したインダクタンスが得られない。図15及 び図16に示すように、非磁性体シート15の厚 が20μmの試料S2及び30μmの試料S3では、広い重 畳電流範囲において温度に対して安定したイ ンダクタンスが得られた。試料S2では500 mA以 上の重畳電流で試料S1より大きなインダクタ スが得られ、試料S3では700 mA以上の重畳電 で試料S1より大きなインダクタンスが得ら た。

 表4は試料S1の直流重畳特性を示し、表5は試 料S2の直流重畳特性を示し、表6は試料S3の直 重畳特性を示す。-40℃~+85℃におけるインダ クタンスの変化率は下記式により算出した。
 インダクタンスの変化率=(L2-L1)/L1
(ただし、-40℃~+25℃の温度範囲では、L1は+25 におけるインダクタンスであり、L2は-40℃に おけるインダクタンスである。また+25℃~+85 の温度範囲では、L1は+25℃におけるインダク タンスであり、L2は+85℃におけるインダクタ スである。)

 インダクタに1つの非磁性体部(磁気ギャッ )を設ける代りに、複数の非磁性体シート15 用いて磁気ギャップを積層方向に分散して けても良い。この場合、一部の磁気ギャッ にZrO 2 等の非磁性セラミックスを用いても良い。

比較例1
 図17に示すように、実施例1と同じ厚さ30μm 磁性体シート10aに厚さ10μmの導体パターン5f 形成し、導体パターン5fの外側に、導体パ ーン5fと同じ厚さの磁性体ペーストを印刷す るとともに、導体パターン5fの内側に導体パ ーン5fと同じ厚さのZrO 2 ペーストを印刷し、第三の複合シート50cを形 成した。第三の複合シート50cを3枚重ねて用 ることにより、合計30μmの3つの磁気ギャッ (ZrO 2 )を有する積層インダクタ(試料S4)を作製した

 実施例1と同様にEPMAによりZnを定量した結果 、比較例1ではZrO 2 からなる非磁性体部Aに磁性体部CのZnが拡散 、境界領域Bでは本発明と逆に磁性体部側でZ n含有量が少ないことが分った。試料S4の直流 重畳特性を図18及び表7に示す。500~1000 mAの直 流重畳電流の範囲以外では、温度に対するイ ンダクタンスの変化が大きかった。