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Title:
STEEL PRODUCTS FOR PISTON RINGS AND PISTON RINGS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/069762
Kind Code:
A1
Abstract:
A steel product having a composition which contains by mass C: 0.01 to 1.9%, Si: 0.01 to 1.9%, Mn: 5.0 to 24.0% with balance consisting of Fe and unavoidable impurities and a steel product described above which further contains Cr: 18.0% or below and/or Ni: 12.0% or below in addition to the above essential elements. The above steel products may each further contain Al: 1% or below and/or N: 0.3% or below and the above steel products may each further contain one or more elements selected from among Nb, Ti, Zr, Mo and Cu in a total amount of 4.0% or below. The steel products can sufficiently follow the thermal expansion of a cylinder made of an aluminum alloy and thus enables the production of a piston ring which is suitable for use as a piston ring to slide on the inner face of a cylinder bore made of an aluminum alloy in an internal combustion engine and which can retain excellent sealing properties.

Inventors:
ISHIKAWA YOSHIKI (JP)
TAKAKI SEISUKE (JP)
ONODA MOTONOBU (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/071680
Publication Date:
June 04, 2009
Filing Date:
November 28, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NIPPON PISTON RING CO LTD (JP)
ISHIKAWA YOSHIKI (JP)
TAKAKI SEISUKE (JP)
ONODA MOTONOBU (JP)
International Classes:
C22C38/00; C22C38/58; F02F5/00; F16J9/26
Foreign References:
JPH06306456A1994-11-01
JP2003042294A2003-02-13
JP2003254155A2003-09-10
JPS59215465A1984-12-05
JPH04333544A1992-11-20
JPS55104426A1980-08-09
Attorney, Agent or Firm:
KOBAYASHI, Eiichi (Funabashi-shi Chiba, 05, JP)
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Claims:
アルミニウム合金製シリンダボア内面を摺動するピストンリング用の鋼材であって、質量%で、C:0.01~1.9%、Si:0.01~1.9%、Mn:5.0~24.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする内燃機関ピストンリング用鋼材。
前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:18.0%以下および/またはNi:12.0%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関ピストンリング用鋼材。
前記組成に加えてさらに、質量%で、Al:1%以下含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の内燃機関ピストンリング用鋼材。
前記組成に加えてさらに、質量%で、N:0.3%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の内燃機関ピストンリング用鋼材。
前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb、Ti、Zr、Mo、Cuのうちから選ばれた1種または2種以上を合計で4.0%以下含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の内燃機関ピストンリング用鋼材。
アルミ二ウム合金製シリンダブロックを備える内燃機関で使用されるピストンリングであって、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のピストンリング用鋼材を用いて製造されたことを特徴とする内燃機関用ピストンリング。
前記ピストンリングの全周または外周に、表面処理層を有することを特徴とする請求項6に記載の内燃機関用ピストンリング。
前記表面処理層が、ビッカース硬さで700~1400HVであることを特徴とする請求項7に記載の内燃機関用ピストンリング。
前記表面処理層が、窒化層であることを特徴とする請求項7または8に記載の内燃機関用ピストンリング。
前記表面処理層の外周摺動面にダイヤモンドライクカーボン膜を有する層であることを特徴とする請求項7ないし9のいずれか1項に記載の内燃機関用ピストンリング。
Description:
ピストンリング用鋼材およびピ トンリング

 本発明は、内燃機関用のピストンリング 係り、とくにアルミニウム合金製シリンダ 相手材とするピストンリング用として好適 鋼材に関する。

 近年、地球環境の保全という観点から、 動車車体の軽量化が要望されている。自動 用の内燃機関についても例外ではなく、軽 化のために、鉄系材料製シリンダーブロッ に代えて、アルミニウム合金製シリンダー ロックの使用が一般化しつつある。従来か 、この種のシリンダブロックのシリンダボ 内面を摺動するピストンリングとしては、 摩耗性を考慮してマルテンサイト系ステン ス鋼等の鉄系材料を使用し、あるいはさら 表面に窒化処理、クロムめっきあるいは複 めっき等の表面処理を施したもの等が使用 れてきた。しかし、アルミニウム合金の熱 張係数は鉄系材料のそれに比べてはるかに きいため、鉄系材料製ピストンリングがア ミニウム合金製シリンダの熱膨張に追従で なくなり、ピストンリングの本来機能のひ つであるガスシール性が低下するという問 があった。

 このような問題に対し、例えば実開昭63-6435 0号公報には、アルミニウム合金製シリンダ ロックを備え、ピストンリングをオーステ イト系ステンレス鋼より構成した内燃機関 提案されている。なお、実開昭63-64350号公報 には、オーステナイト系ステンレス鋼として 、JIS SUS304鋼が例示されている。また、特開2 000-145963号公報には、アルミニウム合金製の リンダを相手材として摺動するピストンリ グとして、15×10 -6 /℃以上の熱膨張係数を有し、好ましくは3.5~1 7%のNiと15~20%のCrを含有するオーステナイト系 ステンレス鋼からなるピストンリングが提案 されている。

 また、アルミ二ウム合金製シリンダ用に 定はしていないが、例えば、特開2005-345134 公報には、Niを6.50~8.50%、Crを16.00~18.00%、Alを0 .75~1.50%含有する析出硬化型のセミオーステナ イト系組成を採用したピストンリング用線材 も提案されている。特開2005-345134号公報に記 された技術は、コイリング後に熱処理を施 ても、リング径の寸法変化が起こりにくい ストンリング用線材が提供できるとしてい 。

 しかしながら、実開昭63-64350号公報、特 2000-145963号公報に記載された技術では、高価 なNi、さらにはCrを多量含有させる必要があ 、ピストンリングが高価となり、経済的に 題を残していた。また、実開昭63-64350号公報 、特開2000-145963号公報にピストンリング用材 として記載されたオーステナイト系ステン ス鋼は、ピストンリング形状に加工する際 熱膨張係数が低下しやすく、所望の熱膨張 数を安定して確保できにくいという問題も った。また、特開2005-345134号公報に記載さ た技術では、アルミニウム合金製シリンダ 熱膨張に追従できる熱膨張係数を安定して 保できないという問題があるうえ、高価なNi を多量含有させる必要があり、経済的に問題 を残していた。

 本発明は、かかる従来技術の問題を有利に 決し、内燃機関のアルミニウム合金製シリ ダボア内面を摺動するピストンリング用と て好適な、シール性を改善できる、安価な ストンリング用鋼材およびその鋼材を使用 たピストンリングを提供することを目的と る。
 本発明者らは、上記した目的を達成するた 、ピストンリングのシール性に影響する各 要因について、ピストンリング用鋼材の熱 張係数に着目して鋭意研究した。その結果 C含有量とMn含有量とを適正な範囲で組み合 せることにより上記した目的が達成できる とに想到した。そして、C含有量とMn含有量 を従来より高い、適正な範囲内に調整する とにより、室温と200℃の間の平均で、14.0×1 0 -6 /℃以上の、アルミニウム合金の熱膨張係数 近い熱膨張係数を有する鋼材になることを 見した。

 本発明はかかる知見に基づき、さらに検討 加えて完成されたものである。すなわち、 発明の要旨は次のとおりである。
 (1)アルミニウム合金製シリンダボア内面を 動するピストンリング用の鋼材であって、 量%で、C:0.01~1.9%、Si:0.01~1.9%、Mn:5.0~24.0%を含 し、残部Feおよび不可避的不純物からなる 成を有することを特徴とする内燃機関ピス ンリング用鋼材。

 (2)(1)において、前記組成に加えてさらに、 量%で、Cr:18.0%以下および/またはNi:12.0%以下 含有する組成とすることを特徴とする内燃 関ピストンリング用鋼材。
 (3)(1)または(2)において、前記組成に加えて らに、質量%で、Al:1%以下含有する組成とす ことを特徴とする内燃機関ピストンリング 鋼材。

 (4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組 に加えてさらに、質量%で、N:0.3%以下を含有 する組成とすることを特徴とする内燃機関ピ ストンリング用鋼材。
 (5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記組 に加えてさらに、質量%で、Nb、Ti、Zr、Mo、C uのうちから選ばれた1種または2種以上を合計 で4.0%以下含有する組成とすることを特徴と る内燃機関ピストンリング用鋼材。

 (6)アルミニウム合金製シリンダブロックを える内燃機関で使用されるピストンリング あって、(1)ないし(5)のいずれかに記載のピ トンリング用鋼材を用いて製造されたこと 特徴とする内燃機関用ピストンリング。
 (7)(6)において、前記ピストンリングの全周 たは外周に、表面処理層を有することを特 とする内燃機関用ピストンリング。

 (8)(7)において、前記表面処理層が、ビッカ ス硬さで700~1400HVであることを特徴とする内 燃機関用ピストンリング。
 (9)(7)または(8)において、前記表面処理層が 窒化層であることを特徴とする内燃機関用 ストンリング。
 (10)(7)ないし(9)のいずれかにおいて、前記表 面処理層の外周摺動面にダイヤモンドライク カーボン膜を有する層であることを特徴とす る内燃機関用ピストンリング。

 図1は、実施例で用いた摩耗試験機の概要 を模式的に示す説明図である。

 本発明のピストンリング用鋼材は、アルミ ウム合金製シリンダブロックを備える内燃 関で使用され、アルミニウム合金製シリン ボア内面を摺動するピストンリングの製造 好適に使用できる。本発明のピストンリン 用鋼材は、室温と200℃の間の平均で、14.0×1 0 -6 /℃以上の熱膨張係数を有する鋼材である。 ず、本発明のピストンリング用鋼材の組成 定の理由について説明する。以下、とくに らないかぎり質量%は単に%と記す。

 C:0.01~1.9%
 Cは、鋼材の強度増加に寄与し、さらにMnと 存するとオーステナイト相を著しく安定化 せ、鋼材の熱膨張係数を高める作用を有し 本発明では重要な元素である。このような 果は、0.01%以上の含有で顕著となるが、1.9% 超える多量の含有は、炭化物や黒鉛の生成 顕著となり、延性が低下し、冷間加工性、 らには生産性の低下を招く。このため、Cは 0.01%~1.9%に限定した。なお、好ましくは0.03%以 上であり、より好ましくは0.03~1.5%で、さらに 好ましくは0.05~1.2%である。

 Si:0.01~1.9%
 Siは、溶鋼の脱酸剤として作用し、溶鋼の 造性を向上させるとともに、鋼材の強度増 に寄与する元素であり、熱間加工性の確保 観点からも0.01%以上含有することが好ましい 。一方、1.9%を超える多量の含有は、鋳造性 上効果が飽和するとともに、フェライトが 成する。このため、Siは0.01~1.9%に限定した。 なお、好ましくは0.2~1.2%である。

 Mn:5.0~24.0%
 Mnは、鋼材の強度増加に寄与し、さらに適 量のCと共存するとオーステナイト相を著し 安定化させ、鋼材の熱膨張係数を高める作 を有し、本発明では重要な元素である。こ ような効果は5.0%以上の含有で認められる。 5.0%未満の含有では、オーステナイト相が不 定となり、顕著な熱膨張係数の増加が認め れない。一方、24.0%を超える多量の含有は、 オーステナイト粒の粗大化を招く。このため 、Mnは5.0~24.0%の範囲に限定した。なお、好ま くは7.0~22.0%であり、さらに好ましくは7~19% ある。

 上記した成分が基本の組成であるが、本発 ではこのような基本の組成に加えてさらに 必要に応じてCr:18.0%以下および/またはNi:12.0 %以下を含有する組成とすることができる。
 Cr:18.0%以下
 Crは、鋼材の強度増加、耐食性向上、表面 理性向上に寄与する元素であり、本発明で 必要に応じて含有できる。とくに、ピスト リングの表面に窒化層を形成する場合には Crの含有は、表面処理性、とくに表面処理層 の密着性向上に有効に寄与する。このような 効果は0.01%以上の含有で認められるが、18.0% 超える含有は、炭化物やσ相の生成が顕著と なり、耐食性、加工性を低下させる。このた め、含有する場合、Crは18.0%以下に限定する とが好ましい。なお、より好ましくは2.0~15.0 %、さらに好ましくは5.0~15.0%である。

 Ni:12.0%以下
 Niは、強力なオーステナイト安定化元素で り、必要に応じて含有できる。このような 果は0.01%以上の含有で認められるが、12.0%を える多量の含有は、オーステナイト安定化 果が飽和し、含有量に見合う効果が期待で なくなり経済的に不利となる。このため、 有する場合、Niは12.0%以下に限定することが 好ましい。なお、好ましくは0.01~8.0%である。

 さらに、本発明では上記した各組成に加え さらに、必要に応じてAl:1%以下を含有でき 。
 Al:1%以下
 Alは、溶鋼の脱酸剤として作用するととも 、鋼材中では結晶粒の微細化に寄与する元 であり、必要に応じて0.05%以上含有させるこ とが望ましい。一方、1%を超えて含有すると 介在物が増加する傾向を示し、延性が低下 るとともに、内部欠陥が多発する傾向とな 。このため、Alは1%以下に限定することが好 ましい。

 さらに、本発明では上記した各組成に加え さらに、必要に応じてN:0.3%以下を含有でき 。
 N:0.3%以下
 Nは、Cと同様に、鋼材の強度増加に寄与し さらにオーステナイト相を安定化させ、鋼 の熱膨張係数を高める作用を有する元素の つである。このような効果は0.01%以上の含有 で顕著となるが、0.3%を超えて含有しても、 ーステナイト相の安定化効果が飽和すると もに、ピンホール等の内部欠陥が多発する このため、Nは0.3%以下に限定することが好ま しい。なお、より好ましくは0.1~0.2%である。

 さらに、本発明では上記した各組成に加え さらに、Nb、Ti、Zr、Mo、Cuのうちから選ばれ た1種または2種以上、を必要に応じて含有で る。
 Nb、Ti、Zr、Mo、Cuのうちから選ばれた1種ま は2種以上:合計で4.0%以下
 Nb、Ti、Zr、Mo、Cuは、いずれも鋼材の組織を 微細化し、それを介して高温強度増加に寄与 する元素であり、必要に応じて選択して1種 たは2種以上含有することができる。このよ な効果は合計で0.05%以上の含有で顕著とな 。一方、これら元素が合計で4.0%を超える多 の含有は、靭性が低下する。このため、含 する場合は、Nb、Ti、Zr、Mo、Cuのうちから選 ばれた1種または2種以上を合計で4.0%以下に限 定することが好ましい。なお、より好ましく は合計で0.01~2.0%である。

 上記した成分以外の残部は、Feおよび不可 的不純物である。不可避的不純物としては P:0.06%以下、S:0.05%以下が許容できる。
 P:0.06%以下
 Pは、多量に含有すると、鋼材の強度を増加 させ、延性、靭性等を低下させるため、鋼材 の加工性が低下する。本発明では不純物とし てできるだけ低減することが望ましいが、0.0 6%までの含有は許容できる。なお、より好ま くは0.01%以下である。

 S:0.05%以下
 Sは、鋼中では硫化物として存在し、延性を 低下させ、鋼材の加工性を低下させ、さらに は耐食性を低下させる。このため、本発明で は不純物としてできるだけ低減することが望 ましいが、0.05%までの含有は許容できる。な 、より好ましくは0.03%以下である。

 なお、本発明のピストンリング用鋼材の 造方法は、とくに限定する必要はなく、常 の方法がいずれも適用できる。例えば、上 した組成の溶鋼を、高周波電気炉等の常用 方法で溶製し、インゴット等に鋳造したの 、熱間鍛造、熱間圧延等の常用の方法で棒 状に加工し、ついで冷間で線形状に加工し ピストンリング用鋼材とする工程を採用す ことが好ましい。

 また、本発明のピストンリングは、上記し 組成の鋼材を素材として所定形状に製造さ たピストンリングである。本発明のピスト リングは、上記した鋼材を使用すること以 、その製造方法をとくに限定する必要はな 、通常の加工方法を適用して、所望形状の ストンリングに成形することが好ましい。
 なお、得られたピストンリングの全周また 外周に表面処理を施し、表面処理層を形成 ることが、耐摩耗性、耐食性の観点から好 しい。表面処理層としては、窒化処理によ 窒化層、クロムめっき処理、複合めっき処 による硬質めっき層、溶射処理による溶射 、物理蒸着(PVD)処理による物理蒸着層、化 蒸着(CVD)処理による化学蒸着層などが例示で き、いずれも本発明のピストンリングの表面 処理層として好適である。なかでも、表面処 理層を窒化層とすることが耐摩耗性、相手攻 撃性の観点から好ましい。また、物理蒸着層 あるいは化学蒸着層の一つとしてダイアモン ドライクカーボン膜(DLC膜)を用いてもよい。D LC膜は、表面処理層の外周摺動面に形成する とが、相手攻撃性の観点から好ましい。DLC の存在により、とくに相手攻撃性を緩和す 傾向が強くなる。このようなことから、例 ば、ピストンリング基材の表面に窒化層、D LC膜とその順に形成することが好ましい。

 なお、表面処理層の硬さは700~1400HVとする ことが、相手攻撃性の観点から好ましい。硬 さがビッカース硬さで700HV未満では、耐摩耗 が低下し、一方、表面処理層の硬さが1400HV 超えて高くなると、化合物を形成し、化合 による相手攻撃性が高くなる。本発明のピ トンリングでは、表面に形成される表面処 層は、化合物を形成することがないように 硬さを高くしすぎないようにすることが、 手攻撃性の観点からも肝要となる。なお、 面処理層の好ましい硬さとしては900~1200HVで ある。なお、ビッカース硬さを測定する場合 は、荷重100gf又は200gfとすることが好ましい

 なお、表面処理層の厚みは1~150μmとするこ が、耐食性、密着性などの観点から好まし 。また、窒化処理、硬質めっき処理、溶射 理、物理蒸着処理、あるいは化学蒸着処理 、通常の方法がいずれも好適に使用できる
(実施例)
(実施例1)
 表1に示す組成の溶鋼を、溶解炉で溶製し、 インゴット(12kg)に鋳造した。得られたインゴ ットを熱間鍛造で丸棒(15mmφ)とした。ついで 得られた丸棒の黒皮を除去し12 mmφとした 、線引加工を施し、線材(7mmφ)とした。なお 従来例として、マルテンサイト系ステンレ 鋼(SUS 410J)線材を使用した。

 これら線材から、熱膨張試験片(大きさ:5m mφ×長さ15mm)を採取し、熱膨張試験を実施し 室温(20℃)~200℃の平均の熱膨張係数を求めた 。得られた結果を表1(表1-1~表1-4)に示す。

 本発明例はいずれも、14.0×10 -6 /℃以上の熱膨張係数を有し、アルミニウム 金の熱膨張係数に近い値を安定して確保で ている。本発明の鋼材を用いたピストンリ グは、アルミニウム合金製シリンダを相手 として摺動するピストンリングに加工した 合にも、十分なシール性を確保できること 推察される。一方、本発明の範囲を外れる 較例は、14.0×10 -6 /℃未満の熱膨張係数しか有しておらず、シ ル性が不足し、ブローバイが増加すること 懸念されるほか、他の特性が劣化すること 懸念される。
(実施例2)
 表1に示す線材(No.14、No.75、No.89、No.90)を素 として、所定寸法形状のピストンリング相 材を作製し、図1に模式的に示すアムスラー 摩耗試験機を用いて、耐摩耗性を調査した なお、ピストンリング相当材には、表面処 層として、表2に示すような厚さを有する、 積層硬質めっき層、窒化層単独、あるいは窒 化層とその上層としてDLC層、からなる表面処 理層をそれぞれ形成した。積層硬質めっき層 は、特開2003-221695号公報に記載された方法を いて形成した。また、窒化層は、アンモニ 分解ガス雰囲気中で550℃×5hの処理を施しさ らに仕上を行って形成した。なお、窒化層の 厚さは約100μmであった。
 また、DLC層は、CVD法でC 2 H 2 ガスを分解し、WとNiを含むターゲットをスパ ッタ法で蒸発させて皮膜を形成した。
 表面処理層の形成は、摺動面または全周と た。表面処理層の硬さについて、ピストン ング相当材から硬さ試験片を採取し、表面 理層の硬さをビッカース硬さ計(試験力:1.96N (荷重200gf))を用いて測定した。

 なお、従来例であるNo.89は、SUS 410J製線材 ある。
 ピストンリング相当材の表面粗さは、JIS B 0601(1994)に規定するRzで0.85~0.95(μm)、DIN 4776に 規定されるRpkで0.06~0.15(μm)とした。
 耐摩耗性試験は、図1に模式的に示すアムス ラー型摩耗試験機を用いて行った。耐摩耗性 試験は、試験材1を、回転する相手材2に所定 荷重wで所定時間押圧する試験とした。ここ で、3は潤滑油である。なお、相手材2はJIS B 0601(1994)に規定される表面粗さRzで0.70~0.88(μm) 、DIN 4776に規定されるRkで0.20~0.38(μm)、Rpkで0. 05~0.10(μm)、Rvkで0.08~0.2(μm)のシリンダライナ 当材(24.0%Si-0.8%Mg-3.0%Cu-0.15%Fe-0.01%Ni-Al組成の過 共晶アルミ-シリコン系材料)とした。試験条 はつぎのとおりとした。

  相手材周速:1m/s
  荷重   :784N
  潤滑油  :タービン油
  試験時間 :8hr
  オイル温度:80℃
 試験後、試験材(ピストンリング相当材)、 手材(シリンダライナ相当材)の摩耗量(μm)を 定し、耐摩耗性を評価した。

 得られた結果を表2に示す。

 本発明例はいずれも、比較例のマルテンサ ト系ステンレス鋼製ピストンリング(線材No. 89)に比較し、著しく高い耐摩耗性を有してい た。なお、本発明例における表面処理層の硬 さは1100~1200HV程度であった。
 なお、表2には耐スカッフ性の評価を示して いないが、本発明例は従来と同じ表面処理層 を形成しており、問題のない耐スカッフ性を 有していることは言うまでもない。

産業上の利用の可能性

 本発明によれば、アルミニウム合金製シ ンダの熱膨張に十分追従でき、優れたシー 性を維持できる内燃機関用ピストンリング 容易に、しかも安価に製造でき、産業上格 の効果を奏する。また、本発明によれば、 ローバイガスの発生も抑制でき、しかも耐 耗性にも優れるという効果もある。