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Patent Searching and Data


Title:
STENT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/142977
Kind Code:
A1
Abstract:
A stent comprising a substantially non-biodegradable material as the stent base so that not only a reaction for repairing a physical damage occurring in a narrow part due to the stent implantation is inhibited but also inflammation caused by the degradation of a polymer employed in the stent is minimized to thereby enable the prevention of restenosis even in the chronic period and avoid serious side effects such as stent-associated thrombosis, wherein the stent to be used has a drug-containing coating layer at least on a part of the stent base surface.

Inventors:
NISHIDE TAKUJI
FUKAYA KOHEI
NAKANO RYOJI
KAWATSU MASAJI
Application Number:
PCT/JP2008/058360
Publication Date:
November 27, 2008
Filing Date:
May 01, 2008
Export Citation:
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Assignee:
KANEKA CORP (JP)
NISHIDE TAKUJI
FUKAYA KOHEI
NAKANO RYOJI
KAWATSU MASAJI
International Classes:
A61L31/00; A61F2/84
Domestic Patent References:
WO2006027994A12006-03-16
WO2006011523A12006-02-02
WO2005011796A12005-02-10
WO2006027992A12006-03-16
Foreign References:
JP2008119199A2008-05-29
Attorney, Agent or Firm:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK (2-6 Tenjinbashi 2-chome Kita,Kita-ku, Osaka-shi, Osaka, JP)
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Claims:
 生体内にて非分解性である材料からなるステント基材を含むステントであって、
 前記ステントの表面の少なくとも一部には、薬剤と生分解性高分子とを含むコーティング層が設けられており、当該ステントをブタ冠状動脈内に留置した場合に、以下の(a)~(c)の特性を有することを特徴とするステント。
  (a)留置28日後に前記ステントに隣接する前記冠状動脈組織中に前記薬剤が存在する
  (b)少なくとも90日以上にわたって前記薬剤が前記コーティング層中に存在する
  (c)少なくとも270日後には前記生分解性高分子が前記コーティング層中に存在しない
 前記ステントは、当該ステントをブタ冠状動脈内に留置した場合に、以下の(d)の特性を有することを特徴とする請求項1に記載のステント。
  (d)留置28日後に前記ステントに隣接する前記冠状動脈組織中に存在する前記薬剤量が、前記冠状動脈組織1mgあたり40ng以上である
 前記ステントは、当該ステントをブタ冠状動脈内に留置した場合に、以下の(e)の特性を有することを特徴とする請求項1または2に記載のステント。
  (e)留置84日後に前記ステントに隣接する前記冠状動脈組織中に前記薬剤が存在する
 前記ステントは、当該ステントをブタ冠状動脈内に留置した場合に、以下の(f)の特性を有することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のステント。
  (f)留置84日後に前記ステントに隣接する前記冠状動脈組織中に存在する前記薬剤量が、留置28日後に前記ステントに隣接する前記冠状動脈組織中に存在する前記薬剤量よりも多い
 前記ステントは、当該ステントをブタ冠状動脈内に留置した場合に、以下の(g)の特性を有することを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のステント。
  (g)留置28日後以降少なくとも留置84日後までの間、前記ステントに隣接する前記冠状動脈組織中に存在する前記薬剤量が増加し続ける
 前記ステントは、当該ステントをブタ冠状動脈内に留置した場合に、以下の(h)の特性を有することを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載のステント。
  (h)留置84日後に前記ステントに隣接する前記冠状動脈組織中に存在する前記薬剤量が、前記冠状動脈組織1mgあたり110ng以上である
 前記ステントは、当該ステントをブタ冠状動脈内に留置した場合に、以下の(i)の特性を有することを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載のステント。
  (i)少なくとも180日後には前記生分解性高分子の重量が、少なくとも10%にまで低減する
 前記ステントは、当該ステントをブタ冠状動脈内に留置した場合に、以下の(j)の特性を有することを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載のステント。
  (j)少なくとも180日後まで前記薬剤が前記ステントに隣接する血管組織中に存在する
 前記生分解性高分子が、乳酸、グリコール酸、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、テトラメチレンカーボネート、およびジオキサノンからなる群より選択される少なくとも1種類以上からなる重合体であることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載のステント。
 前記生分解性高分子が、乳酸-グリコール酸共重合体であることを特徴とする請求項9に記載のステント。
 前記乳酸-グリコール酸共重合体の標準ポリスチレン換算重量平均分子量が、80,000以上、100,000以下であり、
 前記乳酸-グリコール酸共重合体に、乳酸が70mol%以上、90mol%以下含まれ、グリコール酸が10mol%以上、30mol%以下含まれることを特徴とする請求項10に記載のステント。
 前記乳酸-グリコール酸共重合体の標準ポリスチレン換算重量平均分子量が、80,000以上、100,000以下であり、
 前記乳酸-グリコール酸共重合体に、乳酸が85mol%、グリコール酸が15mol%含まれることを特徴とする請求項11に記載のステント。
 前記薬剤が、平滑筋細胞の増殖を抑制するものであることを特徴とする請求項1~12の何れか1項に記載のステント。
 前記薬剤が、免疫抑制剤であることを特徴とする請求項1~12の何れか1項に記載のステント。
 前記免疫抑制剤が、タクロリムス(FK506)、シクロスポリン、シロリムス、アザチオプリン、マイコフェノレートモフェチル、もしくはこれらのアナログであることを特徴とする請求項14に記載のステント。
 前記免疫抑制剤が、タクロリムス(FK506)であることを特徴とする請求項15に記載のステント。
 前記コーティング層は、前記ステント基材の全表面を覆うように設けられていることを特徴とする請求項1~16の何れか1項に記載のステント。
 前記コーティング層が、単層構造であることを特徴とする請求項1~17の何れか1項に記載のステント。
 前記コーティング層が、内層および外層から構成される二層構造であり、
 前記内層および前記外層の両方に、前記薬剤が含まれ、
 前記内層の薬剤/生分解性高分子の重量比が、前記外層の薬剤/生分解性高分子の重量比よりも高いことを特徴とする請求項1~17の何れか1項に記載のステント。
Description:
ステント

 本発明は、血管の狭窄部分を拡張すると もに、その状態を維持することを目的とし 留置されるステントに関する。

 体内で血液が循環するための流路である 管に狭窄が生じ、血液の循環が滞ることに り、様々な疾患が発生することが知られて る。特に血液の循環の源である心臓に血液 供給する冠状動脈に狭窄が生じると、狭心 、心筋梗塞等の重篤な疾病をもたらし、死 至る危険性が極めて高いことが知られてい 。このような血管の狭窄部分を治療する方 の一つとして、バルーンカテーテルを用い 狭窄部分を拡張させる血管形成術(PTA、PTCA) ある。血管形成術は、バイパス手術のよう 開胸術を必要としない低侵襲療法であるこ から広く行われている。しかし、血管形成 の場合、約40%の頻度で拡張した狭窄部分に 狭窄が生じ、大きな問題として指摘されて る。再狭窄が発生する頻度(再狭窄率)を低 する治療法として、血管形成術に代わって テント留置術が広く行われている。

 ステントは、血管、胆管、尿道などの生 内管腔が狭窄した場合に、狭窄部位を拡張 、その状態を維持することを目的として留 される医療用具である。一般的に、ステン は、金属、高分子、あるいはそれらの複合 から構成され、最も一般的には、SUS316鋼、C o-Cr系合金、Ni-Ti系合金などの金属から構成さ れる。

 ステントの拡張機構は、ステント自体の 状記憶性や超弾性による自己拡張型と、バ ーンカテーテルによるバルーン拡張型とに 別される。冠状動脈狭窄部の治療には、主 バルーン拡張型が使用される。

 バルーン拡張型ステントにより冠状動脈 狭窄部分を治療する場合、ステントはバル ンカテーテルに保持された状態で挿入され これによって狭窄部位が拡張される。ステ ト留置術後の再狭窄率は約20%から30%程度で る。バルーン拡張型ステントを用いれば、 ルーンカテーテルのみによる血管形成術後 比べて有意に低減されているものの、依然 して再狭窄は高い頻度で生じている。

 ステントの留置により、狭窄部分には物 的な損傷が生じる。この損傷の修復反応と て生じる過度の新生内膜の肥厚がステント 置術後の再狭窄の原因とされている。新生 膜の肥厚は、血管中膜における平滑筋細胞 増殖、増殖した平滑筋細胞の内膜への遊走 T細胞やマクロファージの内膜への遊走等に より生じる。

 近年、特許文献1に示すようにステント留 置術後の再狭窄率低減を目的として、各種の 高分子を用いてステントに薬剤を被覆する技 術が開示されている。薬剤を被覆したステン トは薬剤コーティングステントと称され、抗 凝固薬、抗血小板薬、抗菌薬、抗腫瘍薬、抗 微生物薬、抗炎症薬、抗物質代謝薬、免疫抑 制剤等の多数の適応が検討されている。免疫 抑制剤に関して例を挙げると、シクロスポリ ン、タクロリムス(FK506)、シロリムス(ラパマ シン)、マイコフェノレートモフェチル、お よびそれらのアナログ(エバロリムス、ABT-578 CCI-779、AP23573等)をステントに被覆し、再狭 を低減する試みが提案されている。これら 薬剤コーティングステントを冠状動脈の狭 部分に留置することで、ステントが隣接す 冠状動脈組織中の薬剤量が高まり、結果と て再狭窄が抑制される。

 例えば特許文献2では免疫抑制剤で知られ るシロリムス(ラパマイシン)を被覆したステ トが開示され、例えば特許文献3では抗腫瘍 薬であるタキソール(パクリタキセル)を被覆 たステントが開示されている。さらに、例 ば特許文献4および特許文献5ではタクロリ ス(FK506)を被覆したステントが開示されてい 。

 タクロリムス(FK506)はCAS番号104987-11-3の化 物であり、例えば特許文献6で開示されてい る。タクロリムス(FK506)は細胞内のFK506結合蛋 白(FKBP)と複合体を形成して、主として分化・ 増殖因子であるIL-2やINF-γなどのサイトカイ のT細胞による産生を阻害することが示され いる。従って、タクロリムス(FK506)は、臓器 移植時の拒絶反応や自己免疫疾患の予防薬ま たは治療薬として使用されている。また、非 特許文献1には、タクロリムス(FK506)はヒト血 平滑筋細胞に対する抗増殖活性を有するこ が確認されている(非特許文献1)。

 ステントに薬剤を保持する方法として、 許文献1では高分子を用いて薬剤を担持する ことが開示されており、生分解性高分子を用 いることも開示されている。特許文献7にも 分解性高分子を用いることが開示され、ポ 乳酸等の高分子が具体的に例示されている

 非特許文献2において、生体内で分解しな い高分子を用いてシロリムスやパクリタキセ ルを被覆したステントをこれらの高分子に対 する過敏性を有する患者に留置した場合、慢 性期においてステント血栓症のような重篤な 副作用が生じることが報告されている。

 非特許文献3において、新生内膜の肥厚は、 薬剤コーティングステントの留置後3ヶ月程 から顕著になり、6ヶ月程度までは少なくと 継続することが示唆されている。
〔特許文献1〕
 特表平5-502179号公報
〔特許文献2〕
 特開平6-009390号公報
〔特許文献3〕
 特表平9-503488号公報
〔特許文献4〕
 国際公報第WO02/065947号公報
〔特許文献5〕
 欧州特許出願公開第EP1254674号公報
〔特許文献6〕
 特開昭61-148181号公報
〔特許文献7〕
 特表2002-531183号公報
〔非特許文献1〕
 Paul J. Mohacsi MD, et al. The Journal of Heart  and Lung Transplantation May 1997 Vol.16, No.5, 484-4 91
〔非特許文献2〕
 Jonathan R. Nebeker, et al. J Am Coll Cardiol. 20 06年, 47巻, 175
-181
〔非特許文献3〕
 R Virmani, et al. Heart. 2003年, 89巻, 133-138
 しかしながら、前記従来のステントでは、 管、胆管、尿道などの生体内管腔が再狭窄 生じるとともに、ステント血栓症などの重 な副作用を生じるという問題点を有してい 。

 生体内で分解しない高分子を用いてシロ ムスやパクリタキセル被覆したステントを 置した患者では、特に留置後の慢性期にお てステント血栓症などの重篤な副作用が生 得るため、生分解性高分子を使用したステ トが提案されてきている。しかしながら、 分解性高分子を医療用途に使用する場合、 解生成物によって炎症反応などが惹起され その結果、生体内管腔の再狭窄や各種副作 を生じるという問題点を有している。なお 生分解性高分子をステントに使用する場合 生分解性高分子の分解特性と薬物の放出特 、さらには炎症反応レベルの関連性は、現 のところ明らかにされていない。

 本発明は、前記従来の問題点に鑑みなさ たものであって、その目的は、ステント留 術によって狭窄部分に生じる物理的な損傷 修復反応を抑制するだけでなく、ステント 用いられる生分解性高分子の分解による炎 反応を最小限に抑制することによって、慢 期においても再狭窄を抑制可能で且つステ ト血栓症などの重篤な副作用を生じないス ントを提供することにある。

 本発明のステントは、前記課題を解決す ために、生体内にて非分解性である材料か なるステント基材を含むステントであって 前記ステントの表面の少なくとも一部には 薬剤と生分解性高分子とを含むコーティン 層が設けられており、当該ステントをブタ 状動脈内に留置した場合に、以下の(a)~(c)の 特性を有することを特徴としている。

  (a)留置28日後に前記ステントに隣接する前 記冠状動脈組織中に前記薬剤が存在する、
  (b)少なくとも90日以上にわたって前記薬剤 が前記コーティング層中に存在する、
  (c)少なくとも270日後には前記生分解性高 子が前記コーティング層中に存在しない。

 本発明のステントは、当該ステントをブ 冠状動脈内に留置した場合に、以下の(d)の 性を有することが好ましい。

  (d)留置28日後に前記ステントに隣接する 前記冠状動脈組織中に存在する前記薬剤量が 、前記冠状動脈組織1mgあたり40ng以上である

 本発明のステントは、当該ステントをブ 冠状動脈内に留置した場合に、以下の(e)の 性を有することが好ましい。

  (e)留置84日後に前記ステントに隣接する 前記冠状動脈組織中に前記薬剤が存在する。

 本発明のステントは、当該ステントをブ 冠状動脈内に留置した場合に、以下の(f)の 性を有することが好ましい。

  (f)留置84日後に前記ステントに隣接する 前記冠状動脈組織中に存在する前記薬剤量が 、留置28日後に前記ステントに隣接する前記 状動脈組織中に存在する前記薬剤量よりも い。

 本発明のステントは、当該ステントをブ 冠状動脈内に留置した場合に、以下の(g)の 性を有することが好ましい。

  (g)留置28日後以降少なくとも留置84日後 での間、前記ステントに隣接する前記冠状 脈組織中に存在する前記薬剤量が増加し続 る。

 本発明のステントは、当該ステントをブ 冠状動脈内に留置した場合に、以下の(h)の 性を有することが好ましい。

  (h)留置84日後に前記ステントに隣接する 前記冠状動脈組織中に存在する前記薬剤量が 、前記冠状動脈組織1mgあたり110ng以上である

 本発明のステントは、当該ステントをブ 冠状動脈内に留置した場合に、以下の(i)の 性を有することが好ましい。

  (i)少なくとも180日後には前記生分解性 分子の重量が、少なくとも10%にまで低減す 。

 本発明のステントは、当該ステントをブ 冠状動脈内に留置した場合に、以下の(j)の 性を有することが好ましい。

  (j)少なくとも180日後まで前記薬剤が前 ステントに隣接する血管組織中に存在する

 本発明のステントでは、前記生分解性高 子が、乳酸、グリコール酸、γ-ブチロラク ン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン テトラメチレンカーボネート、およびジオ サノンからなる群より選択される少なくと 1種類以上からなる重合体であることが好ま しい。

 本発明のステントでは、前記生分解性高 子が、乳酸-グリコール酸共重合体であるこ とが好ましい。

 本発明のステントでは、前記乳酸-グリコ ール酸共重合体の標準ポリスチレン換算重量 平均分子量が、80,000以上、100,000以下であり 前記乳酸-グリコール酸共重合体に、乳酸が7 0mol%以上、90mol%以下含まれ、グリコール酸が1 0mol%以上、30mol%以下含まれることが好ましい

 本発明のステントでは、前記乳酸-グリコ ール酸共重合体の標準ポリスチレン換算重量 平均分子量が、80,000以上、100,000以下であり 前記乳酸-グリコール酸共重合体に、乳酸が8 5mol%、グリコール酸が15mol%含まれることが好 しい。

 本発明のステントでは、前記薬剤が、平 筋細胞の増殖を抑制するものであることが ましい。

 本発明のステントでは、前記薬剤が、免 抑制剤であることが好ましい。

 本発明のステントでは、前記免疫抑制剤 、タクロリムス(FK506)、シクロスポリン、シ ロリムス、アザチオプリン、マイコフェノレ ートモフェチル、もしくはこれらのアナログ であることが好ましい。

 本発明のステントでは、前記免疫抑制剤 、タクロリムス(FK506)であることが好ましい 。

 本発明のステントでは、前記コーティン 層は、前記ステント基材の全表面を覆うよ に設けられていることが好ましい。

 本発明のステントでは、前記コーティン 層が、単層構造であることが好ましい。

 本発明のステントでは、前記コーティン 層が、内層および外層から構成される二層 造であり、前記内層および前記外層の両方 、前記薬剤が含まれ、前記内層の薬剤/生分 解性高分子の重量比が、前記外層の薬剤/生 解性高分子の重量比よりも高いことが好ま い。

 本実施の形態のステントの形状は特に限 されないが、例えば、管状体に形成される とが好ましい。更に、前記管状体は、当該 状体の半径方向の外方に向かって伸長可能 あることが好ましい。

 〔1.冠状動脈組織中の薬剤濃度〕
 本実施の形態のステントでは、当該ステン をブタ冠状動脈に留置した場合に、留置28 後(好ましくは留置84日後)に前記ステントに 接する前記冠状動脈組織中に前記薬剤が存 する。留置28日後(好ましくは留置84日後)に 記冠状動脈組織中に前記薬剤が存在しない 合は、狭窄部分に生じる物理的な損傷の修 反応やステントに用いられる高分子の影響 よる炎症反応を抑制することが著しく困難 なり、狭窄率が上昇し易くなる傾向を示す 逆に、本実施の形態のステントであれば、 症反応を抑制することができるとともに、 窄率を低下させることができる。

 なお、本明細書中において「ステントに 接する冠状動脈組織」とは、留置されたス ントに接触している冠状動脈組織が意図さ る。

 また、本実施の形態のステントは、留置2 8日後にステントに隣接する冠状動脈組織中 存在する薬剤量が冠状動脈組織1mgあたり40ng 上であることが好ましい。薬剤量が40ngを下 回れば、狭窄部分に生じる物理的な損傷の修 復反応やステントに用いられる高分子の影響 による炎症反応を抑制することが困難となり 、狭窄率が上昇し易くなる傾向を示す。逆に 、本実施の形態のステントであれば、炎症反 応を抑制することができるとともに、狭窄率 を低下させることができる。

 また、本実施の形態のステントは、留置8 4日後にステントに隣接する冠状動脈組織中 存在する薬剤量が、留置28日後にステントに 隣接する冠状動脈組織中に存在する薬剤量よ りも多いことが好ましい。より好適な実施の 形態としては、留置28日後以降少なくとも留 84日後までの間、ステントに隣接する冠状 脈組織中に存在する薬剤量が増加し続ける とが好ましい。留置28日後以降に薬剤量が顕 著に減少する場合、ステントに用いられる高 分子の影響による炎症反応の抑制が困難とな り、留置28日後と比較して留置84日後で狭窄 が上昇する傾向を示す。逆に、本実施の形 のステントであれば、留置84日後でも、留置 28日後と同等以上に炎症反応を抑制すること できるとともに、狭窄率を低下させること できる。

 また、本実施の形態のステントは、留置8 4日後にステントに隣接する冠状動脈組織中 存在する薬剤量が冠状動脈組織1mgあたり110ng 以上であることが好ましい。110ngを下回る場 、ステントに用いられる高分子の影響によ 炎症反応の抑制が困難となり、留置28日後 比較して留置84日後で狭窄率の上昇する傾向 を示す。逆に、本実施の形態のステントであ れば、留置84日後でも、留置28日後と同等以 に炎症反応を抑制することができるととも 、狭窄率を低下させることができる。

 血管組織中(例えば、冠状動脈組織中)に 在する薬剤量を定量する方法は、本発明の 果を何ら制限しない。当該定量方法の一例 以下に示す。例えば、ステントを留置後所 の期間飼育した動物(例えば、ブタ)を麻酔下 で屠殺する。当該動物から心臓等を摘出し、 ステントが留置された血管(例えば、冠状動 )を切り出す。当該血管を長手方向に切開し 展開し、ステントが隣接する血管組織(例え ば、冠状動脈組織)とステントとに分離する 血管組織の湿重量を秤量後、当該ステント 使用されている薬剤の特性に応じた溶媒お び条件を用いて血管組織を抽出する。そし 、抽出液中に含まれる薬剤を任意の方法で 量することによって、血管組織1mg中に存在 る薬剤量を算出することができる。抽出液 に含まれる薬剤を定量する方法としては、 々な分析方法が使用可能であって特に限定 れない。一例を挙げると、酵素免疫測定法(E LISA法)、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC )等を用いることが可能である。

 血管組織中の薬剤量は、予め秤量してお た血管組織の湿重量に基づいて、単位重量 たりの薬剤重量として表記しても良く、ス ントが隣接する血管組織あたりの薬剤重量 して表記しても良い。

 また、本実施の形態のステントは、当該 テントを血管内(例えば、ブタ冠状動脈内) 留置した場合に、少なくとも90日以上にわた って薬剤がコーティング層中に存在するとと もに、少なくとも270日後には生分解性高分子 がコーティング層中に存在しないものである 。

 前記薬剤がコーティング層中に存在する 間が90日よりも短い場合、ステントの留置 よって生じる過度の新生内膜の肥厚を薬剤 よって抑制することが困難となる傾向を示 。また、270日よりも長い期間にわたってコ ティング層中に薬剤を存在させるような分 特性、すなわち極めてゆっくりとした分解 性を有する生分解性高分子を用いる場合、 テント留置直後の薬剤放出量が極めて少な なり、急性期の炎症反応を効果的に抑制し くなる傾向を示す。逆に、本実施の形態の テントであれば、適切な期間、適切な量の 剤を放出し続けることができるので、炎症 応を抑制し、狭窄率を低下させることがで る。

 また、本実施の形態のステントは、当該 テントを血管内(例えば、ブタ冠状動脈内) 留置した場合に、少なくとも180日後には生 解性高分子の重量が少なくとも10%にまで低 するものであることが好ましい。10%にまで 減しないような分解特性を有する生分解性 分子を用いた場合、ステント留置直後の薬 放出量が極めて少なくなり、急性期の炎症 応を効果的に抑制し難くなる傾向を示す。 に、本実施の形態のステントであれば、適 な期間、適切な量の薬剤を放出し続けるこ ができるので、炎症反応を抑制することが きるとともに、狭窄率を低下させることが きる。

 コーティング層中の薬剤および生分解性 分子を定量する方法は本発明の効果を何ら 限しない。当該定量方法の一例を以下に示 。まず、薬剤および生分解性高分子の両方 溶解させ得る溶媒を準備する。あらかじめ 量を測定しておいた容器に前記溶媒を入れ ステントを浸漬させる。一定時間後にステ トを除去し、残った溶液を乾固させる。続 て薬剤のみを選択的に溶解させる溶媒を容 内に加え、薬剤のみが溶解された溶液を得 。当該溶液中の薬剤を任意の方法で定量す ことで薬剤量が算出される。なお、薬剤を 量する方法としては様々な分析方法が使用 能である。例えば、酵素免疫測定法(ELISA法) 、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)等が 好適に使用されるが、これらに限定されない 。また、当該溶液を除去した容器を乾固させ た後、重量を測定する。予め測定しておいた 容器の重量を、当該測定値から差引くことで 生分解性高分子の重量を得ることも可能であ る。

 また、本実施の形態のステントは、当該 テントをブタ冠状動脈内に留置した場合に 少なくとも180日後まで薬剤がステントに隣 する血管組織中に存在するものであること 好ましい。少なくとも180日後まで薬剤がス ントに隣接する血管組織中に存在しない場 、狭窄部分に生じる物理的な損傷の修復反 やステントに用いられる高分子の影響によ 炎症反応を抑制することが困難となり、再 窄を起こし易くなる傾向を示す。

 〔2.ステント基材〕
 本実施の形態のステントは、ステント基材 含んでいる。

 前記ステント基材は、例えば、筒状の材 チューブをレーザーカットなどによってス ントデザインにカットすることで作製可能 ある。

 前記ステント基材は、生体内で実質的に 分解性である材料によって構成されている このとき、前記ステント基材は、生体内で く分解しないわけではない。すなわち、5年 から10年程度の長期間にわたって形状と機能 を維持することが可能であれば足りるもの あり、これらを含めて「生体内で実質的に 分解性の材料」、「生体内で非分解性の材 」と呼ぶ。

 前記ステント基材の材料としては、ステ レススチール、Ni-Ti合金、Cu-Al-Mn合金、タン タリウム、Co-Cr合金、イリジウム、イリジウ オキサイド、ニオブ等の金属材料、セラミ クス、ハイドロキシアパタイトなどの無機 料が好適に使用される。

 ステント基材の作製は、当業者が通常作 する方法が採用可能であり、例えば、前述 たとおり、筒状の材料チューブをレーザー ット等によりステントデザインにカットす ことで作製することが可能である。レーザ カット後に電解研磨を施しても良い。また シート状に加工したステント基材をレーザ カット等によりステントデザインにカット た後、筒状に丸め、溶接等によって接合し も良い。つまり、丸線、角線、平線形状に 工したステント基材からステントデザイン 状を形成させた後、必要に応じて任意箇所 溶接等により接合しても良い。いずれの作 方法においても、バフ研磨や電解研磨など 研磨処理、酸洗浄、熱処理等を組み合わせ ことができる。

 また、本実施の形態における生体で実質 に非分解性である材料、つまりステント基 の材料は、金属材料あるいは無機材料に限 されず、ポリオレフィン、ポリオレフィン ラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラ トマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラ トマー、ポリエステル、ポリエステルエラ トマー、ポリイミド、ポリアミドイミド、 リエーテルエーテルケトン等の高分子材料 使用され得る。これらの高分子材料を用い ステント基材の作製方法は、本発明の効果 制限するものではなく、それぞれの材料に した加工方法を任意に選択することができ 。尚、本願発明のステント基材は生体内で 質的に非分解性の材料から構成されるため ステント基材が生分解性の材料から構成さ るステントと比較した場合、十分なステン 強度が長期間にわたって維持され、狭窄部 の拡張維持効果は極めて高いものとなる。

 〔3.コーティング層〕
 本実施の形態のステントは、ステント基材 面の少なくとも一部に、薬剤と生分解性高 子とを含むコーティング層を有している。

 また、前記ステント基材の外表面、内表 および側表面のほぼ全面に前記コーティン 層を有することが好ましい。このようにス ント基材のほぼ全ての表面にコーティング を有する場合には、ステント留置術後に前 ステントの表面に血小板が付着しにくくな 。このような血小板の付着の抑制により、 テント留置術後の急性期における過度の血 形成や血管の閉塞が生じる危険性を著しく 減させることができる。

 前記生分解性高分子の特性やコーティン 層中の生分解性高分子重量と薬剤重量との 率を変化させることによって、コーティン 層からの薬剤の放出挙動を当該ステントが 的とする治療部位の性状に合わせて容易に 整できる。生分解性高分子を用いることで テント留置後の慢性期には当該高分子はす て生分解により消失し、ステント基材のみ 体内に残留することになる。ステント基材 して実績のある金属材料(例えば、SUS316L、Co -Cr合金、またはNi-Ti合金など)を使用すること により、慢性期においても安全性や信頼性の 高いステントを容易に実現可能である。

 〔4.生分解性高分子〕
 生分解性を示す高分子(生分解性高分子)の 類は多岐にわたるが、本実施の形態におけ 生分解性高分子は、生分解性高分子自体の 体適合性、分解産物の安全性を考慮すると 乳酸、グリコール酸、γ-ブチロラクトン、δ -バレロラクトン、ε-カプロラクトン、テト メチレンカーボネート、ジオキサノンの少 くとも1種類以上からなる重合体であること 好ましい。

 ステントを拡張した際のコーティング層 割れや剥がれを防止する観点を考慮すると 前記重合体は乳酸-グリコール酸共重合体で あることが好ましい。前記乳酸-グリコール 共重合体に含まれる乳酸は、D-体の乳酸のみ の場合、L-体の乳酸のみの場合、D-体の乳酸 L-体の乳酸の両方を含む場合があるが、本発 明の目的を達成するにはいずれの乳酸を含む 共重合体であってもよい。

 一般的に生分解性高分子の分子量は単一 はなく分布があるため、分子量を表す指標 して数平均分子量、重量平均分子量、Z-平 分子量、粘度平均分子量など複数の指標が 在するとともに、複数の測定法が存在する 一例を挙げると、ゲル浸透クロマトグラフ ー(GPC)で測定される分子量分布から標準ポリ マー換算値として数平均分子量、重量平均分 子量、Z-平均分子量が求められる。希薄溶液 粘度測定からは粘度平均分子量が求められ 。また、光散乱法、沈降速度法(超遠心法) は重量平均分子量が求められる。

 乳酸-グリコール酸共重合体の重量平均分 子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測 する場合、標準ポリスチレン換算値として8 0,000以上、100,000以下であることが好ましく、 80,000以上、90,000以下であることが更に好まし い。且つ、前記乳酸-グリコール酸共重合体 乳酸が70mol%以上、90mol%以下含まれ、グリコ ル酸が10mol%以上、30mol%以下含まれることが ましく、乳酸が85mol%、グリコール酸が15mol% まれることが更に好ましい。このような乳 -グリコール酸共重合体を使用することで、 実施の形態のステントを例えばブタ冠状動 内に留置した場合に、前記ステントに隣接 る前記冠状動脈組織中に存在する前記薬剤 が本発明の前記各特性となるように調整す ことが可能となる。

 乳酸-グリコール酸共重合体の生分解挙動 は、重量平均分子量と、乳酸およびグリコー ル酸のモル比率とによって決定される。重量 平均分子量が一定の場合、乳酸が50mol%、グリ コール酸が50mol%含まれるときに最も分解速度 が速くなり、乳酸が増加するほど、あるいは グリコール酸が増加するほど分解速度は遅く なる。また、乳酸およびグリコール酸のモル 比が一定の場合、重量平均分子量が大きいほ ど分解速度は遅くなる。

 乳酸-グリコール酸共重合体の重量平均分 子量が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に 測定した場合に標準ポリスチレン換算値と て80,000以上、100,000以下であっても、乳酸が 90mol%よりも多く、グリコール酸が10mol%よりも 少ない場合には、分解速度が比較的遅いため 分解に伴う薬剤の放出量が極めて少なくなる 。つまり、前記特性として例示した生分解性 高分子の分解特性よりも分解速度が遅くなる 傾向を示す。また、ステント留置直後の薬剤 放出量が極めて少なくなり、急性期の炎症反 応を効果的に抑制し難くなる傾向を示す。

 さらに、乳酸が70mol%よりも少なく、グリ ール酸が30mol%よりも多い場合には、分解速 が比較的速いので分解に伴う薬剤の放出量 多くなり、留置28日後または84日後までには 大半の薬剤の放出が完了する。結果として留 置28日後または84日後に冠状動脈組織中に存 する薬剤量は前記特性として例示したよう 上昇し難くなる傾向を示す。また、乳酸が70 mol%よりも少なく、グリコール酸が30mol%より 多い場合には、分解速度が比較的速いので 解に伴う薬剤の放出量が多くなり、血管組 中の薬剤濃度が180日後まで持続し難くなる 向を示す。

 これらの観点から、乳酸が85mol%、グリコ ル酸が15mol%であることが最も好ましい。

 また、乳酸-グリコール酸共重合体に含ま れる乳酸が70mol%以上、90mol%以下、グリコール 酸が10mol%以上、30mol%以下であっても、重量平 均分子量がゲル浸透クロマトグラフィーにて 測定する場合、標準ポリスチレン換算値とし て80,000未満の場合には、分解速度が比較的速 いため分解に伴う薬剤の放出量が多くなり、 留置28日後または84日後までには大半の薬剤 放出が完了する。結果として留置28日後また は84日後に冠状動脈組織中に存在する薬剤量 前記特性として例示したように上昇し難く る傾向を示す。また、血管組織中の薬剤濃 が180日後まで持続し難くなる傾向を示す。

 さらに、重量平均分子量が100,000を超える 場合には、分解速度が比較的遅いため分解に 伴う薬剤の放出量が極めて少なくなる。結果 として留置28日後または84日後に冠状動脈組 中に存在する薬剤量は前記特性として例示 たように上昇し難くなる傾向を示す。また 急性期の炎症反応を効果的に抑制し難くな 傾向を示す。

 〔5.薬剤〕
 本実施の形態に用いる薬剤は特に限定され いが、平滑筋細胞の増殖を抑制する特性を するものであることが好ましい。また、前 薬剤は、免疫抑制剤であることが更に好ま い。なお、前記免疫抑制剤としては特に限 しないが、タクロリムス(FK506)、シクロスポ リン、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオ リン、マイコフェノレートモフェチルもし はこれらのアナログであることがより好ま く、タクロリムス(FK506)であることが特に好 ましい。

 〔6.コーティング層(単層構造)〕
 コーティング層は単層構造であり得る。単 構造の場合、前記コーティング層に含まれ 薬剤の重量を前記コーティング層に含まれ 生分解性高分子の重量で割った値(薬剤/生 解性高分子重量比)は、0.10以上、0.40以下で ることが好ましい。0.10を下回る場合、ステ トへの薬剤保持量を高くするために必要な ーティング層の厚さが厚くなり、ステント 柔軟性が大きく低下する傾向を示す。一方 0.40を超える場合、ステント拡張時にコーテ ィング層の割れや剥がれが生じやすくなる傾 向を示す。

 〔7.コーティング層(多層構造)〕
 コーティング層は、例えば内層および外層 ら構成される二層構造であり得る。このと 、前記内層および前記外層の両方に薬剤が まれ、前記内層および前記外層のそれぞれ おいて定義される薬剤/生分解性高分子重量 比では、前記内層の方が高いことが好ましい 。

 薬剤/生分解性高分子重量比の低い外層の はたらきにより、ステント拡張時のコーティ ング層の割れや剥がれの発生は効果的に低減 される。前記内層と比較して前記外層の薬剤 /生分解性高分子重量比が低いため、ステン 留置初期には薬剤の溶出が徐放化される。 層の薬剤が溶出し終わった後に内層の薬剤 溶出するため、外層に含まれる生分解性高 子がバリア層の役割を果たし、薬剤/生分解 高分子重量比が比較的高い内層の薬剤に関 ても溶出の徐放化が実現される。また、内 の薬剤/生分解性高分子重量比が高いため、 ステント全体としての薬剤保持量を高くする ことが可能である。

 前記内層と前記外層との重量比は目的と るステントの仕様に応じて任意に決定され 。例えば、薬剤保持量を高くすることに主 を置いた仕様の場合は、前記内層の重量を 記外層に比べて高めに設定することが好ま く、薬剤溶出の徐放性付与に主眼を置いた 様の場合は、前記外層の重量を前記内層に べて高めに設定することが好ましい。

 前記内層における薬剤/生分解性高分子重 量比は0.50以上1.60以下であることが好ましい 0.50未満の場合、薬剤保持量を効率よく高め ることが困難となる傾向を示す。一方、1.60 りも大きい場合、ステントの拡張に伴う前 内層および前記外層の割れや剥離を生じる 能性が高くなる傾向を示す。

 前記における薬剤/高分子重量比は0.10以 0.40以下であることが好ましい。0.10未満の場 合、前記外層における薬剤保持量が低く、再 狭窄の予防に有効な薬剤溶出量を実現するこ とが困難となる傾向を示す。一方、0.40より 大きい場合、ステントの拡張に伴う前記外 の割れや剥離を生じる可能性が高くなるば りか、薬剤の溶出徐放性が十分に獲得でき い傾向を示す。より好ましい実施の形態と ては、前記内層における薬剤/高分子重量比 0.50以上1.60以下であり、かつ前記外層にお る薬剤/高分子重量比が0.10以上0.40以下であ 生体留置用ステントが挙げられる。

 さらなる薬剤保持量の増加、薬剤溶出の 放性付与、ステント拡張時のコーティング の割れや剥がれの抑制等を目的として、前 内層および前記外層以外の層を設けてもよ 。一例をあげると、ステント拡張時のコー ィング層の割れや剥がれを抑制するために 記内層とステント表面との間に中間層を設 てもよい。

 〔8.コーティング層の形成方法〕
 前記コーティング層が単層構造である場合 および前記コーティング層が内層および外 から構成される二層構造である場合のいず であっても、各層を形成する方法は特に制 されない。

 以下、前記コーティング層が内層および 層から構成される二層構造の場合を例とし 詳細に説明する。

 コーティング層を形成する方法の好適な としては、まず、前記内層を構成する薬剤 よび生分解性高分子を任意の溶媒に溶解し 当該溶液を前記ステント基材表面に付着さ た後に、溶媒を除去する、次いで、前記外 を構成する薬剤および生分解性高分子を任 の溶媒に溶解し、当該溶液を前記内層の外 に付着させた後に、溶媒を除去する。これ よって、二層構造を有するコーティング層 形成することができる。

 また、コーティング層を形成する方法の の例としては、まず、前記内層を構成する 剤および生分解性高分子からなるフィルム 別途作製し、当該フィルムをステント基材 貼り付ける。次いで、前記外層を構成する 剤および生分解性高分子からなるフィルム 別途作製し、当該フィルムを前記内層の外 に貼り付けてもよい。

 また、コーティング層を形成する方法の の例としては、まず、前記内層を構成する 剤および生分解性高分子を任意の溶媒に溶 し、当該溶液を前記ステント基材表面に付 させた後に、溶媒を除去する。次いで、前 外層を構成する薬剤および生分解性高分子 らなるフィルムを別途作製し、当該フィル を前記内層の外面に貼り付けることで、コ ティング層を形成することも可能である。

 また、コーティング層を形成する方法の の例としては、まず、前記内層を構成する 剤および生分解性高分子からなるフィルム 別途作製し、当該フィルムをステント基材 貼り付ける。次いで、前記外層を構成する 剤および生分解性高分子を任意の溶媒に溶 し、当該溶液を前記内層の外面に付着させ 後、溶媒を除去することによってコーティ グ層を形成することも可能である。なお、 記内層および前記外層を形成する方法によ て本発明の効果は制限されるものではなく 各種の方法が好適に使用できる。

 前記内層および前記外層を構成する生分 性高分子および薬剤を任意の溶媒に溶解し 液状態で付着させる場合、その方法は本発 の効果を制限するものではない。つまり、 溶液にステント基材をディッピングする方 、各溶液をスプレーによりステント基材に 霧する方法等の各種の方法が使用可能であ 。使用する溶媒の種類は特に限定されない 所望の溶解度を有する溶媒が好適に使用可 であり、揮発性等を調整するために2種類以 上の溶媒を用いた混合溶媒としてもよい。ま た、溶質である薬剤や生分解性高分子の濃度 も特に制限を受けず、前記内層および前記外 層の表面性等を勘案して任意の濃度とするこ とが可能である。

 前記表面性を調整するために、前記内層 構成する薬剤および生分解性高分子を任意 溶媒に溶解し、当該溶液を付着させる途中 よび/または付着させた後、あるいは前記外 層を構成する薬剤および生分解性高分子を任 意の溶媒に溶解し、当該溶液を付着させる途 中および/または付着させた後、余剰の溶液 除去してもよい。除去する手段としては、 に限定されず、振動、回転、減圧等が挙げ ことが可能である。また、これらを複数組 合わせて用いることも可能である。

 上述した内容から明らかなように、本発明 ステントによれば、狭窄部分に生じる物理 な損傷の修復反応を抑制することによって 狭窄を低減することが可能になるという効 を奏する。また、本発明のステントによれ 、ステントに隣接する組織(例えば、冠状動 脈組織など)中に、ステントに用いられる高 子の影響による炎症反応を抑制することが 能な量の薬剤を投与することが可能となり これによっても再狭窄を低減することが可 になるという効果を奏する。
〔実施例〕
 以下の各実施例および各比較例では、薬剤 してタクロリムスを例示して説明する。た し、タクロリムス以外の上述の薬剤、また 免疫抑制剤を使用してもよい。

 〔1.実施例1〕
 (生分解性高分子:乳酸-グリコール酸共重合 (製品番号:85DG065、標準ポリスチレン換算重 平均分子量85,000)、コーティング層:多層)
 ステント基材は、当業者が通常作製する方 と同様に、ステンレス鋼(SUS316L)の内径1.50mm 外径1.80mmの筒状チューブをレーザーカット よりステントデザインにカットし、電解研 を施すことで作製した。ステント長さが13mm 、厚みが120μm、拡張後の公称径が3.5mmとなる ザインとした。ステント基材の内表面、外 面、側表面を合わせた全表面積は88.5mm 2 であった。

 生分解性高分子としての乳酸-グリコール 酸共重合体(製品番号:85DG065、Absorbable Polymers International社、乳酸/グリコール酸=85mol%/15mol% 標準ポリスチレン換算重量平均分子量85,000) と、薬剤としてのタクロリムス(アステラス 薬株式会社)とをクロロホルム(和光純薬株式 会社)に溶解させ、薬剤濃度/生分解性高分子 度=0.50wt%/0.50wt%である溶液を作製した。直径 100μmのステンレス製ワイヤをステントの一端 に固定し、他端を直径2mmのステンレス棒に固 定した。ステントを接続していない側のステ ンレス棒端部をモーター攪拌機に接続するこ とでステントを長さ方向に鉛直に保持した。 モーター攪拌機を用いてステントを100rpmで回 転させながら、作製した溶液をノズル径0.3mm スプレーガンを用いてステントに吹き付け 溶液をステントに付着させた。スプレーガ のノズルからステントまでの距離は75mm、吹 き付け時のエアー圧力は0.15MPaとした。吹き け後に室温で1時間真空乾燥した。スプレー 間を調整することによって、ステント1個あ たりの生分解性高分子の重量が160μg、薬剤の 重量が160μgの内層(薬剤/生分解性高分子重量 =1.00)を形成した。

 生分解性高分子としての乳酸-グリコール 酸共重合体(製品番号:85DG065、Absorbable Polymers International社、乳酸/グリコール酸=85mol%/15mol% 標準ポリスチレン換算重量平均分子量85,000) と、薬剤としてのタクロリムス(アステラス 薬株式会社)とをクロロホルム(和光純薬株式 会社)に溶解させ、薬剤濃度/高分子濃度=0.13wt %/0.50wt%である溶液を作製した。内層が形成さ れたステントの一端に直径100μmのステンレス 製ワイヤを固定し、他端を直径2mmのステンレ ス棒に固定した。ステントを接続していない 側のステンレス棒端部をモーター攪拌機に接 続することでステントを長さ方向に鉛直に保 持した。モーター攪拌機を用いてステントを 100rpmで回転させながら、作製した溶液をノズ ル径0.3mmのスプレーガンを用いてステントに き付け、溶液をステントに付着させた。ス レーガンのノズルからステントまでの距離 75mm、吹き付け時のエアー圧力は0.15MPaとし 。吹き付け後に室温で1時間真空乾燥した。 プレー時間を調整し、ステント1個あたりの 生分解性高分子の重量が139μg、薬剤の重量が 36μgの外層(薬剤/生分解性高分子重量比=0.26) 形成した。

 得られたステント1個あたりの内層と外層 を合わせた全体の生分解性高分子の平均重量 は299μg、薬剤の平均重量は196μg(薬剤/生分解 高分子重量比=0.66)であった。ステントは計2 1個作製された。

 〔2.実施例2〕
 (生分解性高分子:乳酸-グリコール酸共重合 (製品番号:85DG065、標準ポリスチレン換算重 平均分子量85,000)、コーティング層:単層)
 ステント基材は、実施例1と同様に作製した 。

 生分解性高分子としての乳酸-グリコール 酸共重合体(製品番号:85DG065、Absorbable Polymers International社、乳酸/グリコール酸=85mol%/15mol% 標準ポリスチレン換算重量平均分子量85,000) と、薬剤としてのタクロリムス(アステラス 薬株式会社)とをクロロホルム(和光純薬株式 会社)に溶解させ、薬剤濃度/生分解性高分子 度=0.13wt%/0.50wt%である溶液を作製した。直径 100μmのステンレス製ワイヤをステントの一端 に固定し、他端を直径2mmのステンレス棒に固 定した。ステントを接続していない側のステ ンレス棒端部をモーター攪拌機に接続するこ とでステントを長さ方向に鉛直に保持した。 モーター攪拌機を用いてステントを100rpmで回 転させながら、作製した溶液をノズル径0.3mm スプレーガンを用いてステントに吹き付け 溶液をステントに付着させた。スプレーガ のノズルからステントまでの距離は75mm、吹 き付け時のエアー圧力は0.15MPaとした。吹き け後に室温で1時間真空乾燥した。スプレー 間を調整し、ステント1個あたりの生分解性 高分子の重量が325μg、薬剤の重量が85μgのコ ティング層(薬剤/生分解性高分子重量比=0.26 )を形成した。ステントは計21個作製した。

 〔3.実施例3〕
 (生分解性高分子:乳酸-グリコール酸共重合 (製品番号:B6006-1P、標準ポリスチレン換算重 量平均分子量93,000)、コーティング層:単層)
 ステント基材としてCo-Cr合金(登録商標:Elgilo y)を使用した以外は実施例1と同様に作製した 。

 生分解性高分子として乳酸-グリコール酸 共重合体(製品番号:B6006-1P、DURECT社、乳酸/グ コール酸=85mol%/15mol%、標準ポリスチレン換 重量平均分子量93,000)を使用した以外は実施 2と同様に作製した。スプレー時間を調整す ることによって、ステント1個あたりの生分 性高分子の平均重量が350μg、薬剤の平均重 が91μgのコーティング層(薬剤/生分解性高分 重量比=0.26)を形成した。なお、ステントは 21個作製した。

 〔4.比較例1〕
 (生分解性高分子:乳酸-グリコール酸共重合 (製品番号:RG502H、標準ポリスチレン換算重 平均分子量11,000)、コーティング層:単層)
 生分解性高分子として乳酸-グリコール酸共 重合体(製品番号:RG502H、Boehringer Ingelheim社、 酸/グリコール酸=50mol%/50mol%、標準ポリスチ ン換算重量平均分子量11,000)を使用した以外 は実施例2と同様に作製し、ステント1個あた の生分解性高分子の重量が313μg、薬剤の重 が82μgのコーティング層(薬剤/生分解性高分 子重量比=0.26)を形成させた。ステントは計18 作製した。

 〔5.比較例2〕
 (生分解性高分子:乳酸-グリコール酸共重合 (製品番号:PLGA7520、標準ポリスチレン換算重 量平均分子量18,000)、コーティング層:単層)
 生分解性高分子として乳酸-グリコール酸共 重合体(製品番号:PLGA7520、和光純薬株式会社 乳酸/グリコール酸=75mol%/25mol%、標準ポリス レン換算重量平均分子量18,000)を使用した以 は実施例2と同様に作製し、ステント1個あ りの生分解性高分子の重量が321μg、薬剤の 量が84μgのコーティング層(薬剤/生分解性高 子重量比=0.26)を形成させた。ステントは計1 8個作製した。

 〔6.比較例3〕
 (ステント基材のみ)
 実施例1で使用したステント基材のみからス テントを計18個作製した。

 〔7.ミニブタへの留置実験1〕
 実施例1、実施例2、比較例1、比較例2の各ス テントを3個ずつ用いて、6頭のミニブタ(クラ ウン、雌、月齢8から12ヶ月)へのステント留 実験を実施し、評価を行った(表1参照)。な 、留置後短時間の組織中のタクロリムス量 変化を詳細に検討するために、評価期間は 留置1日後、3日後、7日後、14日後、28日後、5 6日後、84日後とし、評価期間ごとに6頭のミ ブタ(合計42頭)を使用した。全てのステント あらかじめバルーンサイズが3.5×15mmのバル ンカテーテルのバルーン部分に保持させた 態でEOG(エチレンオキサイドガス)滅菌を行 た。

 また、実施例1~実施例3のステントを18個 つ、合計54個を用いて18頭のミニブタ(クラウ ン、雌、月齢8から12ヶ月)へのステント留置 験を実施し、評価を行った(表2参照)。なお 留置後長時間の組織中のタクロリムス量の 化を詳細に検討するために、評価期間は留 3日後、14日後、30日後、90日後、180日後、270 後とし、評価頭数はいずれの期間において 3頭とした。全てのステントはあらかじめバ ルーンサイズが3.5×15mmのバルーンカテーテル のバルーン部分に保持させた状態でEOG(エチ ンオキサイドガス)滅菌を行った。

 麻酔下でミニブタの右大腿動脈に6Frのシ スイントロデューサーを挿入し、シースか 挿入した6Frのガイディングカテーテルの先 を左冠状動脈入口部にエンゲージさせた。 イディングカテーテル経由で左冠状動脈前 行枝、左冠状動脈回旋枝、右冠動脈へとス ントをデリバリーした後、拡張・留置した ガイディングカテーテルおよびシースを抜 した後、右大腿動脈を結紮し止血した。ス ントを留置する部分は血管径が約2.80mmの部 とし、ステント拡張径を3.50mmとすることで 置部分におけるステント径/血管径の比を約 1.25とした。血管径2.80mmの部位が選定できな 場合には、ステントを拡張・留置する際の ルーンの拡張圧力を変化させ、ステント径/ 管径の比を約1.25とするように調整した。本 実験においては、ステントの内径をステント 拡張径と定義した。血管径および血管走行上 の問題により、左冠状動脈前下行枝あるいは 左冠状動脈回旋枝にステントの拡張・留置が 困難と判断された場合にはその部分へのステ ント留置を取りやめ、追加的に右冠状動脈に 留置した。1頭あたりの最大ステント留置数 3個とし、左冠状動脈前下降枝、左冠状動脈 旋枝、右冠状動脈のそれぞれに対する最大 テント留置数は1個とした。

 留置実験を実施する前日より剖検日まで アスピリン330mg/day、チクロピジン250mg/dayを 餌投与した。評価期間経過後にミニブタを 楽死させ心臓を摘出後、ステントが留置さ た冠状動脈を心臓から取り出した。取り出 た冠状動脈を長手方向に切開して展開し、 テントが隣接する冠状動脈組織とステント 分離した。

 得られた冠状動脈組織のうちの約20mgを正 確に秤量後、0.02%EDTAを含むリン酸緩衝液2mL中 でホモジナイズした。ここに抽出溶媒(ヘキ ンと酢酸エチルを体積比で7:3で混合)10mLを加 え、15分間室温で振盪抽出した。4℃・760×gで 10分間遠心分離して得られた上層を分取し、 らに上記抽出溶媒10mLを加え、15分間室温で 盪抽出した。4℃・760×gで10分間遠心分離し 得られた上層を分取後、濃縮遠心器にて乾 させた。乾固後、1%ウシ血清アルブミン、0. 05%Tween20を含むリン酸緩衝液2mLで再溶解後、30 0倍に希釈したものを検体とした。得られた 体中のタクロリムス濃度を市販のELISAキット を用いて測定した。得られた濃度値から冠状 動脈組織1mgあたりに含まれるタクロリムス量 を算出した。測定値は、3つのステントから られたデータの平均値±標準偏差値とし、表 1または表2に結果を示した。

 得られたステントに付着した組織をでき だけ除去した後、各ステントをアセトン3mL に浸漬させ、ステントに残存する乳酸-グリ コール酸共重合体とタクロリムスとを溶解さ せた。風袋重量をあらかじめ秤量しておいた 軽量アルミ容器に、得られたアセトン溶液の 全量を移して乾固させた。乾固後、ヘキサン 1mLを軽量アルミ容器に入れ、タクロリムスの みを選択的に溶解・抽出させた。得られたタ クロリムスを含有するヘキサン溶液を別の軽 量アルミ容器に移し、乾固させた。ヘキサン によるタクロリムスの抽出は3回繰り返した 乳酸-グリコール酸共重合体のみが残存する 量アルミ容器を真空乾燥させた後秤量し、 該値から風袋重量を差引くことで乳酸-グリ コール酸共重合体の残存量を算出した。留置 実験を実施する前の乳酸-グリコール酸共重 体重量と比較して、残存率を算出した。3つ ステントから得られたデータの平均値±標 偏差値を測定値とし、表3に結果を示した。

 得られたタクロリムスを含有するヘキサ 溶液を乾固させた軽量アルミ容器に1%ウシ 清アルブミン、0.05%Tween20を含むリン酸緩衝 2mLを加えて再溶解させた。さらに、再溶解 を300倍に希釈したものを検体とし、当該検 中のタクロリムス濃度を市販のELISAキットを 用いて測定した。得られた濃度値からタクロ リムスの残存量を算出した。留置実験を実施 する前のタクロリムスの重量と比較して、残 存率を算出した。3つのステントから得られ データの平均値±標準偏差値を測定値とし、 表4に結果を示した。

 〔8.ミニブタへの留置実験2〕
 比較例1から比較例3のステントを15個ずつ、 合計45個を用いて15頭のミニブタ(クラウン、 、月齢8から12ヶ月)へのステント留置実験を 実施し、評価を行った(表2参照)。なお、評価 期間を留置1日後、3日後、7日後、14日後、30 後とした以外はミニブタへの留置実験1と同 に実施した。

 〔9.ミニブタへの留置実験3〕
 実施例1~実施例3および比較例1~比較例3のス ントを3個ずつ、合計18個を用いて、6頭のミ ニブタ(クラウン、雌、月齢8から12ヶ月)への テント留置実験を実施し、評価を行った。 てのステントはあらかじめバルーンサイズ 3.5×15mmのバルーンカテーテルのバルーン部 に保持させた状態でEOG(エチレンオキサイド ガス)滅菌を行った。

 ミニブタへのステント留置は(ミニブタへ の留置実験1)と同様に実施した。留置3ヶ月後 (表5参照)、または留置30日後(表6参照)にミニ タを安楽死させ心臓を摘出した。ステント 留置した冠状動脈を心臓より摘出し、10%中 緩衝ホルマリン溶液中で浸漬固定した。樹 包埋後、各ステントの中央部の切片を作製 、H.E.染色(ヘマトキシリン・エオジン染色) およびE.V.G.染色(エラスチカ・ワン・ギーソ ン染色)を行い、拡大観察を実施した。各ス ント断面の血管内腔面積(LA:Lumen Area)、血管 弾性板内側面積(IELA:Area within the Internal El astic Lamina)を測定した。血管内腔面積(LA)およ び血管内弾性板内側面積(IELA)を用いて各サン プルの血管閉塞率を次式に従い算出した。

  血管閉塞率(%)=[1-(LA/IELA)]×100
 実施例および比較例のいずれも3つのステン トから得られたデータの平均値±標準偏差値 測定値とし、表5および表6にその結果を示 た。

 表1に示すように実施例1および実施例2で 、留置28日後にタクロリムスが存在してお 、実施例1ではステントに隣接する冠状動脈 織1mgあたりタクロリムスが41ng、実施例2で 43ng含まれていた。また、いずれにおいても 接する冠状動脈組織中のタクロリムス量は 置28日後以降、84日後まで増加する傾向が見 られた。留置84日後において、実施例1ではス テントに隣接する冠状動脈組織1mgあたりタク ロリムスが276ng、実施例2では110ng含まれてい 。一方、比較例1および比較例2では、留置28 日後以降はステントに隣接する組織にタクロ リムスは検出されなかった。

 表2~表4および表6に示すように本発明にか かる実施例1から実施例3では、少なくとも90 以上にわたって薬剤がコーティング層中に 在すること、少なくとも270日後には生分解 高分子がコーティング層中に存在しないこ 、少なくとも180日後には生分解性高分子の 量が少なくとも10%にまで低減すること、少 くとも180日後まで薬剤が隣接する血管組織 に存在することを達成しており、これらの 果により血管閉塞率がおよそ30%程度と優れ 狭窄抑制効果を示した。狭窄抑制効果は比 例3として示したステント基材のみから構成 れるステントよりも極めて高く、臨床上有 と判断された。

 一方、比較例1から比較例3では血管閉塞 が高く、狭窄が生じていると判断された。 に比較例1および比較例2では肥厚した新生内 膜中にマクロファージのような炎症性細胞の 浸潤が顕著に認められたことから、ステント 留置に伴う物理的な損傷の修復反応や生分解 性高分子の分解による炎症反応がタクロリム スにより効果的に抑制されていないことが示 唆された。

 また、表5に示すように、本発明に係る実 施例1および実施例2では、血管閉塞率が40%を 回っており、ステント留置後の狭窄の発現 明確に認められなかった。染色切片を詳細 検討した結果、生分解性高分子の分解に起 すると判断される炎症を示唆する所見は認 られなかった。

 一方、比較例1および比較例2では血管閉 率が高く、狭窄が生じていると判断された 肥厚した新生内膜中に炎症性細胞の浸潤が 著に認められており、タクロリムスにより 分解性高分子の分解による影響(炎症反応)を 完全には抑制できていないと判断された。

 なお本発明は、以上説示した各構成に限 されるものではなく、特許請求の範囲に示 た範囲で種々の変更が可能であり、異なる 施形態や実施例にそれぞれ開示された技術 手段を適宜組み合わせて得られる実施形態 実施例についても本発明の技術的範囲に含 れる。

産業上の利用の可能性

 各種疾患の治療に用いることが可能な医 器具として利用することができるのみなら 、各種疾患の治療に用いることができる医 器具を製造する分野に広く利用することが きる。