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Title:
SUCTION DEVICE, SUCTION SYSTEM, AND SUCTION METHOD
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/014026
Kind Code:
A1
Abstract:
A suction device (10) has an outer tube (36) connected at its base end to a liquid supply section (20) and having an open head section (37), and also has a suction tube (38) placed in the outer tube (36), connected at its base end to a negative pressure generation section (26), and having an open head section (39). An annular liquid supply path (40) is formed between the inner peripheral surface of the outer tube (36) and the outer peripheral surface of the suction tube (38). The open head section (39) of the suction tube (38) is located closer to the base ends than the open head end (37) of the outer tube (36).

Inventors:
UMEDA HIROO (JP)
KANEMARU SHIN-ICHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/062733
Publication Date:
January 29, 2009
Filing Date:
July 15, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV KYOTO (JP)
UMEDA HIROO (JP)
KANEMARU SHIN-ICHI (JP)
International Classes:
A61M1/00; A61F11/00
Foreign References:
JPS6198819A1986-05-17
JPS63219510A1988-09-13
JP2742765B21998-04-22
JPH0568545U1993-09-17
JPH06105903A1994-04-19
JP2001321435A2001-11-20
JP2001098761A2001-04-10
JPS57156208A1982-09-27
JP2005137463A2005-06-02
JP2742765B21998-04-22
Other References:
See also references of EP 2184079A4
Attorney, Agent or Firm:
TANAKA, Mitsuo et al. (IMP Building3-7, Shiromi 1-chome,Chuo-ku, Osaka-shi, Osaka 01, JP)
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Claims:
 基端部側において液体供給部に接続されるとともに開口先端部を有する外管と、
 前記外管内に設けられ、基端部側において陰圧発生部に接続されるとともに開口先端部を有する吸引管と、
を含んで構成され、
 前記外管の内周面と前記吸引管の外周面との間に環状の液体供給路が形成され、前記吸引管の開口先端部を前記外管の開口先端部より基端側に位置させてあることを特徴とする吸引器具。
 基端側において陰圧発生部に接続された吸引通路と、
 前記吸引通路の外周に環状に形成され、基端側において液体供給部に接続された液体供給路と、
を備え、
 前記吸引通路への吸引対象物の吸引時に前記液体供給路から供給された液体が前記吸引通路の全内周面に沿って薄層状に吸引されるように構成したことを特徴とする吸引器具。
 前記液体は水であることを特徴とする請求項1または2に記載の吸引器具。
 前記陰圧発生部は、医療用吸引装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の吸引器具。
 前記医療用吸引装置は、耳鼻科用吸引装置であることを特徴とする請求項4に記載の吸引器具。
 開口先端部を有する外管と、
 開口先端部が前記外管の開口先端部より基端側に位置するとともに、外周面と前記外管の内周面との間に環状の液体供給路を形成するように前記外管内に設けられた吸引管と、
 前記外管の基端部側に接続される液体供給部と、
 前記吸引管の基端部側に接続される陰圧発生部と、
を備える吸引システム。
 前記液体は水であることを特徴とする請求項6に記載の吸引システム。
 前記陰圧発生部は、医療用吸引装置であることを特徴とする請求項6に記載の吸引システム。
 前記医療用吸引装置は、耳鼻科用吸引装置であることを特徴とする請求項8に記載の吸引システム。
 陰圧の作用によって吸引対象物を吸引通路内に吸引する際に、前記吸引通路の全内周面に沿って形成される薄層状液体とともに前記吸引対象物を吸引することを特徴とする吸引方法。
 前記液体は水であることを特徴とする請求項10に記載の吸引方法。
Description:
吸引器具、吸引システムおよび 引方法

 本発明は、吸引器具、吸引システムおよ 吸引方法に関し、具体例として医療現場(例 えば耳鼻科)において粘性物質を吸引する際 好適に用いられる吸引器具、吸引システム よび吸引方法に関する。

 例えば、耳鼻科の診療において、中耳炎 鼻炎、副鼻腔炎などの炎症性疾患や、耳垢 塞といった疾患の診療の際に、耳漏、鼻汁 耳垢などを吸引除去する処置を施す必要が る。この処置は、一般に、耳鼻科ユニット 吸引装置に1.5~2メートル程度の長さの柔軟 のあるチューブ、および、チューブ先端に り付けたアダプタを介して装着された耳用 引管や鼻用吸引管を使用して吸引している しかし、これらの吸引管は、挿入経路が狭 という解剖学的理由から外径および内径が いため、粘稠な耳漏、鼻汁、耳垢などを吸 する際には、吸引管が頻繁に閉塞する事態 頻繁に生じていた。吸引管が吸引処置途中 閉塞すると、処置を中断して吸引管を交換 たり、あるいは、粘度の低い液体(例えば水) を吸引して吸引管内の閉塞状態を解消してか ら処置を再開するといった余計な労力と時間 を費やさなければならなかった。

 特許文献1には、例えば気管支にある痰等 の粘稠な物質または流体を吸引除去するため の吸引用カテーテルとして、1本の吸引管内 吸引管腔と側管腔とが中間隔壁で区画され 設けられ、前記中間隔壁に少なくとも1本の り込みを両管腔間の短絡路として形成した のが開示されている。この吸引用カテーテ では、側管腔から空気や生理食塩水等の液 を供給しながら吸引管腔に陰圧を作用させ ことで、カテーテル先端部の気管支内腔へ はまり込みを防止し、痰等の粘性物質を湿 させて吸引を行いやすくすることができる が記載されている(特許文献1:段落0009参照)

 しかしながら、後述するように本願発明者 が行った対比実験によれば、特許文献1に開 示される吸引用カテーテルでは、例えば500cps の高粘性の流体を吸引しようとした場合、吸 引処置を完了するまでに患者に過度の負担を 強いることになるような長時間を要すること が判明した。

特許第2742765号公報

 そこで、本発明は、管腔の閉塞を生じる となく粘性のある物質または流体(以下、単 に「粘性物質」と称す。)を短時間で且つ無 な労力を要せずに吸引除去することができ 吸引器具、吸引システムおよび吸引方法を 供することを課題とする。

 前記課題を解決するために、本発明の第1 態様の吸引器具は、基端部側において液体供 給部に接続されるとともに開口先端部を有す る外管と、この外管内に設けられ、基端部側 において陰圧発生部に接続されるとともに開 口先端部を有する吸引管とを含んで構成され 、前記外管の内周面と前記吸引管の外周面と の間に環状の液体供給路が形成され、前記吸 引管の開口先端部を前記外管の開口先端部よ り基端側に位置させてあることを特徴とする 。

 また、本発明の第2態様の吸引器具は、基 端側において陰圧発生部に接続された吸引通 路と、この吸引通路の外周に環状に形成され 、基端側において液体供給部に接続された液 体供給路とを備え、前記吸引通路への吸引対 象物の吸引時に前記液体供給路から供給され た液体が前記吸引通路の全内周面に沿って薄 層状に吸引されるように構成したことを特徴 とする。

 さらに、本発明の吸引システムは、開口 端部を有する外管と、開口先端部が前記外 の開口先端部より基端側に位置するととも 外周面と前記外管の内周面との間に環状の 体供給路を形成するように前記外管内に設 られた吸引管と、前記外管の基端部側に接 される液体供給部と、前記吸引管の基端部 に接続される陰圧発生部と、を備えること 特徴とする。

 さらにまた、本発明の吸引方法は、陰圧 作用によって吸引対象物を吸引通路内に吸 する際に、この吸引通路の全内周面に沿っ 形成される薄層状液体とともに前記吸引対 物を吸引することを特徴とする。

 本発明に係る吸引器具、吸引システムお び吸引方法において、前記液体は水であっ もよい。

 また、本発明に係る吸引器具および吸引 ステムにおいて、前記陰圧発生部は、医療 吸引装置、より詳しくは、耳鼻科用吸引装 であってもよい。

 本発明の吸引器具、吸引システムおよび 引方法によれば、吸引対象物である粘性物 が陰圧の作用によって吸引管内に吸引され 際に、吸引管の内周面全体が薄層状液体で われた状態になることで、ハイドロプレー ング現象(「自動車が一定以上の速度で走行 中にタイヤと路面との間に薄い水の膜が張り 、タイヤが路面をグリップしなくなってスリ ップなどが起こりやすくなる現象」、以下に 同じ。)と同様の原理で、吸引管内周面に対 る粘性物質の接触抵抗が著しく低下し、従 装置と同一の吸引力であっても吸引管の閉 を生じることなく粘性物質を短時間で、且 、無駄な労力を要せずに吸引除去すること できる。

吸引システムの全体概略構成図。 吸引器具の縦断面図。 図2におけるA-A線断面図。 外管の開口先端部が開放されていると きの液体供給路内の水の状態を示す図。 外管の開口先端部が吸引対象物に接触 または侵入して吸引対象物が吸引されている 状態を示す図。 コニカルチューブを倒立させたときに 下方に移動した高粘性水溶液の表面状態の 化行程を示す図。

 以下に、本発明の実施の形態について添付 面を参照して説明する。
 図1は、本発明の一実施形態である耳鼻科用 の吸引システム1の全体概略構成を示す。

 吸引システム1は、吸引器具10を備えてい 。吸引器具10の基端側は二股に分岐してお 、一方の分岐端31aには液体供給部20が接続さ れ、他方の分岐端31bには、ほぼL字状に曲が たパイプ状ハンドル部22の一端部が接続され ている。ハンドル部22は、例えば医師が吸引 置を行う際に手で把持するものである。な 、ハンドル部22は、使用者の使い勝手のよ 形状に適宜の変更が可能である。

 液体供給部20には、粘性の低い液体を収 した点滴バッグ12、点滴筒14、ローラー流量 整弁16、柔軟な樹脂製チューブ18からなる、 一般に使用される点滴セットを用いることが できる。ここで、前記液体は、安価で入手容 易で環境にも優しいことから、水であること が好ましい。ただし、前記液体は水(水溶液 含む)に限定されるものではなく、本発明の 用機能を発揮し得るものであれば水以外の かなる液体を用いてもよい。また、本実施 態の吸引システム1では、液体供給部として 点滴セットを用いているが、これに限定され るものではなく、吸引器具10に液体を連続的 供給可能なものであれば何を用いてもよい

 前記ハンドル部22の他端部は、例えば、 さ1.5~2メートルの柔軟なPVC製チューブ24を介 て陰圧発生部26に接続されている。陰圧発 部26は、通常、コンプレッサ等の陰圧発生源 と、容器等の吸引物貯留部を有している。陰 圧発生部26としては、例えば、耳鼻科ユニッ の吸引装置を用いることができる。これに り、陰圧発生部26を作動させることで、後 するように吸引器具10の先端部から粘性物質 を吸引することができるようになっている。

 図2は吸引器具10の断面を示す。吸引器具1 0は、上述したように基端側が二股に分岐し アダプター部30と、このアダプター部30に各 端部がそれぞれ固定された外管36および吸 管38とからなっている。アダプター部30は、 えば樹脂やゴム等の材料で一体に成形する とができる。

 アダプター部30は、前記液体供給部20に接 続される一方の分岐端31aに液体供給ポート32 有し、前記陰圧発生部26に接続される他方 分岐端31bに吸引ポート34を有している。また 、アダプター部30の先端部31cには、開口先端 37を有する外管36の基端部が接続固定されて いる。ここで、外管36には、例えば14Gサーフ ー(登録商標)針外套(内径1.73mm:テルモ(株)製) を用いることができる。

 その内腔が吸引通路になっている前記吸 管38は、外管36の内腔に外管36と同心状(また は略同心状)に配設され、外管36と共に二重管 構造をなしている。これにより、図3にも示 れるように、外管36の内周面と吸引管38の外 面との間に環状の液体供給路40が形成され おり、この液体供給路40がアダプター部30の 体供給ポート32に連通している。また、吸 管38は、基端部においてアダプター部30の吸 ポート34に連通しており、これにより陰圧 生部26によって生じた陰圧がチューブ24およ ハンドル部22を介して吸引管38の開口先端部 39に作用するようになっている。ここで、吸 管38には、例えば、鋭利な先端部を切除し 16Gサーフロー(登録商標)針内針(外径1.20mm、 径0.83mm:テルモ(株)製)を用いることができる また、外管36および吸引管38は、金属製のも のに限定されるものではなく、他の材質、例 えば樹脂製、ゴム製のものであってもよい。

 図2に示すように、吸引管38は、その開口先 部39が外管36の開口先端部37よりも若干(例え ば約1mm程度)基端側に位置するように配置さ ている。このように吸引管38の開口先端部39 外管36の開口先端部37よりも少しだけ内側に 位置させることで、外管36の開口先端部37が 引対象物である粘性物質に当接して塞がれ ときにでも、液体供給路40から吸引管38の開 先端部39上を回り込んで吸引管38内に吸引さ れるような構成になっている。
 なお、吸引管38の開口先端部39近傍に、吸引 対象物を吸引直前に細かく破砕するための破 砕部材(例えば、回転するプロペラ状部材)を けてもよい。

 続いて、上述した構成からなる吸引シス ム1による吸引動作について説明する。液体 供給部20から吸引器具10の液体供給ポート32に 、低粘性の液体、例えば、水が供給されると 、図4Aに示すように、水は毛管現象によって 体供給路40の先端まで移動する。液体供給 40の先端まで移動した液体(水)は、図4Aに示 状態に留まっていてもよいし、あるいは、 圧非作用時にも液体供給路40からごく僅かに 漏れ出ている状態であってもよい。この状態 で、陰圧発生部26を作動させても外管36の開 先端部37が開放された状態(すなわち吸引対 物である粘性物質に接触または侵入してい い状態)であれば、吸引管38には空気が吸引 れるだけで吸引管38の開口先端部39近傍に所 の陰圧は作用しない。したがって、液体供 路40にある水は、吸引管39にほとんど吸引さ れることはなく、水が無駄に消費されてしま うことはない。

 なお、上記低粘性の液体の例として、水 挙げたが、この水は超純水、純水(蒸留水、 イオン交換水)等に限られず、生理食塩水、 酸リンゲル液等の水溶液であってもよい。 らに、低粘性の液体としては、水に限られ 、有機溶剤等の他の低粘性の液体を用いて よい。

 次いで、図4Bに示すように、外管36の開口 先端部37が粘性物質50内に侵入して塞がれる 、吸引管38の開口先端部39近傍に所定の陰圧 作用し、これにより粘性物質50が吸引管38の 内腔に吸引される。このとき、液体供給路40 ある水もまた、前記陰圧の作用によって吸 管38の内周面全体を薄層状に覆ったような 態で粘性物質50と一緒に吸引されることにな る。これにより、ハイドロプレーニング現象 と同様の原理で、吸引管38の内周面に対する 性物質50の接触抵抗は、吸引管38の内周面に 直に接触する場合に比べて著しく低下する。 その結果、陰圧発生部26による吸引力が従来 置と同一であっても吸引管38の閉塞を生じ ことなく粘性物質50を短時間で且つ無駄な労 力を要せずに吸引除去することができる。

 また、本実施形態の吸引システム1では、 吸引に要する吸引力(すなわち陰圧力)を従来 比べて低下させることができるので、陰圧 生部26に用いられるコンプレッサの出力も いもので足り、陰圧発生部26ひいては吸引シ ステム1をその分だけ安価にすることができ とともに消費電力を抑えることができる。

 また、上述したように吸引器具10は、市 されて広く普及しているサーフロー針を応 して製造することができるので、製造コス を抑制する又は安価にすることができ、そ 結果として使い捨て可能なものにもできる

 さらに、下記の実験結果からも明らかな うに、粘性物質50の吸引時に消費される前 液体としての水の量は、従来技術で述べた うな吸引管の閉塞状態解消のための水吸引 吸引後の吸引管洗浄などに使用する水の量 比べて、極めて少量で済み、経済的で且つ 境に優しいといえる。

[実験I、II、III]
 本実施形態の吸引システム1の効果を検証す るための実験Iを行った。この実験Iでは、吸 器具として、外管には14Gサーフロー針の外 を用い、吸引管には16Gサーフロー針内針を 端切除して用い、点滴セットにおいてサー ロー針基端部と点滴チューブとを連結して るゴム製のジョイント部材をアダプター部 して代用した。また、液体供給部として小 用点滴セットを用い、供給される液体とし 水を用いた。さらに、陰圧発生源としてア バック機工社製のダイアフラム型ドライ真 ポンプDAP-30を使用し、吸引物貯留部として 角フラスコを使用した。

 吸引対象物である粘性物質には、重量%で それぞれ2%、3%、4%の3種類のアルギン酸ナト ウム水溶液を用いた。以下、各水溶液を、2% 水溶液、3%水溶液、4%水溶液という。アルギ 酸ナトリウム粉末は、ナカライテスク社製 商品コード:31131-85を用いた。アルギン酸ナ リウムを溶かす水には、milliQ水(超純水)を用 いた。

 前記2%、3%、4%の各水溶液は、次のように て調製したものを用いた。0.4g、0.6g、0.8gの ルギン酸ナトリウム粉末をそれぞれ秤量し 3本のコニカルチューブ(容量50cc)内に収容し た20mlの水に前記秤量したアルギン酸ナトリ ム粉末をそれぞれ投入して十分に攪拌し、 暗所で一昼夜保存した。その後、粉末が完 に溶解しているのを目視にて確認してから 濃度むらをなくすためにさらに十分に攪拌 、紫外線で約20~30分滅菌して、また冷暗所に 6日間保存した後に実験に用いた。

 実験に使用したアルギン酸ナトリウムの1 %水溶液の粘度は約500cpsであることはメーカ( カライテクス社)側のデータとして存在する 。しかし、2%、3%、4%の各水溶液の粘度データ はメーカにも存在せず、粘度計での測定もで きなかったので、各水溶液の粘度を具体的数 値で表すことはできない。ただ、2%水溶液は 記1%水溶液よりも粘度が高いことは確実で る。さらに、2%水溶液よりも3%水溶液、3%水 液よりも4%水溶液の方がより高粘度であるこ とが目視でも確認できた。

 ちなみに、常温下で、調製した各水溶液 入ったコニカルチューブ52を図5(a)に示す状 から図5(b)に示す状態に倒立させ、その倒立 時から水溶液表面Wが図5(c)に示す状態(表面中 央部が水平)になるまでに要した第1の時間、 よび、図5(d)に示す状態(表面全体が水平)に るまでの第2の時間をそれぞれ測定した。そ の結果、2%水溶液については第1の時間が約30 、第2の時間が約2分、3%水溶液については第 1の時間が約60秒、第2の時間が約3分、4%水溶 については第1の時間が約120秒、第2の時間が 約6分であった。各水溶液の粘度を推察する えで参考になる。

 比較実験として、実験Iと同じ吸引器具で 水を供給せずに吸引を行う実験IIと、実験Iの 吸引器具の吸引管と同じ長さ(88mm)で内径2mmの アルミパイプだけを吸引管としてハンドル部 に直接取り付けて吸引を行う実験IIIも併せて 実施した。

 前記各実験I、II、IIIでは、各20mlのアルギ ン酸ナトリウムの2%水溶液、3%水溶液、4%水溶 液を吸引完了するのに要した時間を測定した 。その所要時間を下記表1に示す。

 表1に示される結果から明らかなように、 本実施形態の吸引システム1は、高粘度の吸 対象物を短時間で吸引除去する性能に優れ いることが確認できた。特に、実験IIとの対 比において、水が吸引管の内周面を薄膜状に 覆って流れていることで吸引管内周面に対す る吸引対象物の接触抵抗が大きく低減されて いることが検証された。

 また、前記実験Iにおいて消費された水の 量は、2%水溶液で1ml未満、3%水溶液で3ml、4%水 溶液で6~8ml程度であり、いずれの場合も水の 費量が極めて少なくて済むことが確認され 。

[実験IV]
 本実施形態の吸引システム1との効果上の差 異を検証すべく、特許文献1(特許第2742765号) 記載される吸引用カテーテルと実質的に同 構造の吸引器具を作製して、前記実験Iと同 のアルギン酸ナトリウムの2%水溶液の吸引 験IVを行った。

 この実験IVで用いた吸引器具は次のよう 作製した。まず、吸引管としての16Gサーフ ー針外套に対して、側管として3Frポリエチ ン管(外径約1mm、内径約0,5mm)を平行に接着固 した後、先端部位を切断することによって2 つの管の各開口先端部の位置を揃えた。そし て、これら2つの管の各管壁が接触する部分 おいて両管壁に鋭利な刃物で切り込みを入 て、両管腔を連通させる短絡路を形成した

 このように作製した吸引器具をハンドル に連結して、実験Iと同様の2%水溶液(20ml)で 引実験を行ったところ、最初は側管に空気 供給しつつ吸引していたが約5mlを吸引する に637秒も要したため、そこで吸引実験を中 した。これからすると、20mlの2%水溶液を吸 完了するには、単純計算すると、その4倍で ある2548秒を要することになる。

 次に、側管に水を供給しつつ同様の吸引 験を行ったところ、吸引完了までに321秒を し、このときの水消費量は7mlであった。こ に対して、本実施形態の吸引器具では、上 表1に示すように所要時間38秒で水消費量1ml 満であったことからして、本実施形態の吸 器具の方が高粘度物質の吸引性能に極めて れており、かつ、水消費量も格段に少ない とが判明した。

 この実験IVでは、3%水溶液および4%水溶液 ついては吸引困難が容易に予想されたため 吸引実験を行わなかった。

 なお、前記特許文献1の吸引用カテーテル は、気管支内腔へのカテーテル先端部のはま り込みという問題を解消する一方で、前記短 絡路を介して側管から吸引管に流体が短絡し て流れることで吸引力の相対的低下を招いて いると考えられる。また、この構成の吸引用 カテーテルでは、1つ(または複数)の短絡路を 介して吸引管内に引き込まれた液体が吸引管 の内周面全体を覆った薄膜状態で吸引される ことはあり得ず、本発明にかかる吸引器具と は本質的に相違するものである。

[実験V、VI、VII]
 本実施形態の吸引システム1の効果を検証す るための別の実験Vとして、上記実験Iと同様 外管(内径1.73mm)36の内腔に外管36と同心状(ま たは略同心状)に吸引管(外径1.20mm、内径0.83mm) 38が配設された二重管構造を有する吸引器具1 0を用いて吸引実験を行った。吸引対象物で る粘性物質には、重量%でそれぞれ2%、3%、4% 3種類のアルギン酸ナトリウム水溶液を用い た。さらに、実験Iと同様に液体供給部20から 液体供給ポート32、液体供給路40を介して、 管36と吸引管38との間に水を供給しながら吸 実験を行った。

 なお、比較実験として、実験Vの吸引器具 の吸引管と同じ長さ(88mm)で内径2mmのアルミパ イプだけを吸引管としてハンドル部22に直接 り付けて吸引を行う「対比同じ長さで径大( 実験VI)」と、実験Vと同じ吸引器具で水を供 せずに吸引を行う「水なし(実験VII)」も併せ て実施した。なお、「対比同じ長さで径大( 験VI)」の場合も外管なしで吸引管のみでの 引であるので水は供給しない。

 以上の「実験V」、「対比同じ長さで径大 (実験VI)」、「水なし(実験VII)」のそれぞれに ついて、各20mlのアルギン酸ナトリウムの2%水 溶液、3%水溶液、4%水溶液を吸引完了するの 要した時間を測定した。その所要時間を下 表2に示す。なお、この実験V、VI、VIIでは上 実験I、II、III等と比べて、気温、湿度、吸 器具等の実験条件が全く同一ではないので 上記実験I、II、III等の実験結果と同列に対 すべきではなく、同一条件下で行われたそ ぞれの実験群(I、II、III)と実験群(V、VI、VII) の中で対比すべきものである。

 また、上記各濃度について、実験V、VI、V IIの所要時間の平均値と標準偏差を表3に示し た。

 上記実験V、VI、VIIの実験結果に示すよう 、本実施形態の吸引システムによれば、高 度の吸引対象物を短時間で吸引除去する性 において有意に優れていることが確認でき 。特に、「水なし(実験VII)」との対比にお て、水が吸引管の内周面を薄膜状に覆って れていることで吸引管内周面に対する吸引 象物の接触抵抗が大きく低減されているこ が検証された。また、「対比同じ長さで径 (実験VI)」との対比において、径が大きく吸 が容易となると思われる場合と比べても、 験Vの吸引システムのほうが、吸引管の内周 面に薄層状の水を流すことによって、高粘度 の吸引対象物を吸引しやすいことが明確に示 されている。

 また、前記実験Vにおいて消費された水の 量は、2%水溶液で約1ml、3%水溶液で1~3ml、4%水 液で3~5ml程度であり、いずれの場合も水の 費量が極めて少なくて済むことが確認され 。

 上記では本発明の一実施形態として、耳 科用の吸引器具、吸引システムおよび吸引 法について説明したが、本発明に係る吸引 具等は耳鼻科以外の医療現場(例えば外科) の吸引処置に適用されてもよい。

 また、本発明の吸引器具等は、医療現場 の適用に限定されるものではなく、例えば 泥や油等の粘性物質を吸引する作業現場に いても好適に用いられることができ、広範 分野での適用が可能である。