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Title:
SURFACE-TREATED TIN-PLATED STEEL SHEET FOR WELDED CAN AND WELDED CAN MADE THEREOF
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/025179
Kind Code:
A1
Abstract:
A surface-treated tin-plated steel sheet which comprises: a tin-plated steel sheet obtained by forming a tin deposit layer on a steel sheet; and a surface treatment layer comprising a silane coupling agent as the main ingredient and formed on the surface of the tin deposit layer. It is characterized in that the free-tin amount (X g/m2) in the tin deposit layer and the silicon amount (Y mg/m2) in the surface treatment layer satisfy all the following relationships. 0.2≤X≤13 Y≥1.0 Y≤1.58X+6.92 Y≤-0.36X+10.70 This surface-treated tin-plated steel sheet has undergone a chromium-free surface treatment and, despite this, has excellent weldability, in particular, high-speed weldability. It further has excellent adhesion in processing and corrosion resistance.

Inventors:
KUROKAWA WATARU (JP)
YOSHIMURA YUMI (JP)
TADAKI YASUFUMI (JP)
MATSUBARA MASANOBU (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/064101
Publication Date:
February 26, 2009
Filing Date:
August 06, 2008
Export Citation:
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Assignee:
TOYO SEIKAN KAISHA LTD (JP)
TOYO KOHAN CO LTD (JP)
KUROKAWA WATARU (JP)
YOSHIMURA YUMI (JP)
TADAKI YASUFUMI (JP)
MATSUBARA MASANOBU (JP)
International Classes:
C23C28/00; C25D5/26; C25D5/48
Foreign References:
JP2002285354A2002-10-03
JP2006001630A2006-01-05
JP2001079489A2001-03-27
JP2005256014A2005-09-22
JP2005146388A2005-06-09
JPH10245655A1998-09-14
JP2001262371A2001-09-26
JP2002275657A2002-09-25
JP2006001630A2006-01-05
Other References:
See also references of EP 2180085A4
Attorney, Agent or Firm:
ONO, Hisazumi et al. (1-21 Nishi-shimbashi,1-chome, Minato-ku, Tokyo 03, JP)
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Claims:
 鋼板に錫めっき層が形成されてなる錫めっき鋼板の錫めっき層の表面にシランカップリング剤を主剤とする表面処理層が形成されて成る表面処理錫めっき鋼板において、
 前記錫めっき層におけるフリー錫量(Xg/m 2 )及び表面処理層中のケイ素量(Ymg/m 2 )が下記式、
  0.2≦X≦13
  Y≧1.0
  Y≦1.58X+6.92
  Y≦-0.36X+10.70
のすべてを満たす範囲にあることを特徴とする溶接缶用表面処理錫めっき鋼板。
 前記鋼板表面と錫めっき層の間に錫-鉄合金層が形成されている請求項1記載の溶接缶用表面処理錫めっき鋼板。
 前記錫-鉄合金層中にニッケルが含有されている請求項2記載の溶接缶用表面処理錫めっき鋼板。
 前記シランカップリング剤が、アミノシランを含む水溶性シランカップリング剤である請求項1記載の溶接缶用表面処理錫めっき鋼板。
 前記鋼板が、炭素量が0.10重量%以下の鋼から成る請求項1記載の溶接缶用表面処理錫めっき鋼板。
 前記表面処理層上に有機樹脂被覆が形成されている請求項1記載の溶接缶用表面処理錫めっき鋼板。
 請求項1記載の溶接缶用表面処理錫めっき鋼板から成形されて成る溶接缶。
Description:
溶接缶用表面処理錫めっき鋼板 びこれから成る溶接缶

 本発明は、溶接缶用表面処理錫めっき鋼 及びこの表面処理錫めっき鋼板から成る溶 缶に関し、より詳細には溶接性、有機樹脂 覆の密着性、及び耐食性に優れた溶接缶用 面処理錫めっき鋼板及び溶接缶に関する。

 従来、錫めっき鋼板(ぶりき)、ティンフ ースチール(TFS)、ティンニッケルスチール(TN S)、ローティンコーテッドスチール(LTS)等の 属容器用材料は、鋼板輸送時の鋼面や錫め き表面の酸化を防止すると共に、塗膜の密 性を向上し、更に耐食性を向上する目的で クロム水和酸化物や金属クロム層から成る ロム系表面処理被膜が形成されているのが 般的である。特に溶接缶においては、抵抗 接により行うため、すずの酸化が進むと溶 に必要なフリー錫量が不足し、或いは酸化 が溶接抵抗となるため、溶接性に劣るよう なる。

 その一方クロム系表面処理においては、処 工程で6価クロムが使用されるため、環境負 荷、或いは作業環境性の点からノンクロム表 面処理化が要望されている。
 ノンクロム系の表面処理も種々提案されて り、例えばNiめっき及びその上に有機樹脂 主体とする化成被膜を使用して耐食性を向 させたラミネート鋼板から成るシームレス や(特許文献1)、或いは錫合金層を有し、上 にPとSiを含有する化成被膜を有し、該化成 膜中のP及びSiの付着量が特定範囲にある表 処理鋼板が提案されている(特許文献2)。
 また溶接缶用の表面処理錫めっき鋼板とし 錫めっき層上にシランカップリング剤処理 が形成されたものも本出願人から提案され いる(特許文献3)。

特開2001-262371号公報

特開2002-275657号公報

特開2006-001630号公報

 しかしながら、従来の表面処理鋼板を溶接 の用途に用いた場合には、表面処理被膜と てシランカップリング剤のような有機物含 表面処理被膜が形成されていると、被膜の 気抵抗のために電気伝導性が不良になり、 接可能範囲が狭くなるという問題がある。 た高速溶接性の点で充分満足するものでは かった。
 一方、溶接缶においても、ネックイン加工 ビード加工、フランジ加工などの過酷な加 に施されることから、これらの加工によっ 樹脂被膜に欠陥を生じないことが耐食性の から必須であり、そのため有機樹脂被膜の 工密着性が要求されるが、溶接性を満足し る従来の表面処理鋼板では、加工密着性は 分満足するものではなかった。
 また上記特許文献3に記載された、本出願人 によるシランカップリング剤処理層を有する 溶接缶においては、硫化物を含有する魚貝類 ・畜肉類等を主な内容物とするものであるこ とから、レトルト処理時あるいは缶詰保管時 に内容物から発生する硫化水素による錫の変 色や鉄の硫化物化を防止するため亜鉛が表面 処理鋼板の必須の構成要件であり、このため 金属溶解タイプの腐食性の強い酸性の内容物 には対応することができず、しかも飲料缶に 特有のトリプルネックイン加工のような過酷 な加工に施された場合には樹脂被膜の加工密 着性を満足することができない。また、30m/mi n.以上での高速での溶接性に劣ることが分か た。

 従って本発明の目的は、ノンクロム系の表 処理でありながら、優れた溶接性、特に高 溶接性を有すると共に、加工密着性、耐食 に優れた溶接缶用錫めっき鋼板を提供する とである。
 また本発明の他の目的は、耐食性に優れ、 観特性に優れた溶接缶を提供することであ 。

 本発明によれば、鋼板に錫めっき層が形成 れてなる錫めっき鋼板の錫めっき層の表面 シランカップリング剤を主剤とする表面処 層が形成されて成る表面処理錫めっき鋼板 おいて、前記錫めっき層におけるフリー錫( Sn)量(Xg/m 2 )及び表面処理層中のケイ素(Si)量(Ymg/m 2 )が下記式(1)~(4)、
  0.2≦X≦13      ・・・(1)
  Y≧1.0         ・・・(2)
  Y≦1.58X+6.92  ・・・(3)
  Y≦-0.36X+10.70・・・(4)
のすべてを満たす範囲にあることを特徴とす る溶接缶用表面処理錫めっき鋼板が提供され る。

 本発明の溶接缶用表面処理錫めっき鋼板に いては、
1.鋼板表面と錫めっき層の間に錫-鉄合金層が 形成されていること、特に錫-鉄合金層中に ッケルが含有されていること、
2.シランカップリング剤が、アミノシランを む水溶性シランカップリング剤であること
3.鋼板が、炭素量が0.10重量%以下の鋼から成 こと、
4.表面処理層上に有機樹脂被覆が形成されて ること、
が好適である。
 本発明によればまた、上記溶接缶用表面処 錫めっき鋼板から成形されて成る溶接缶が 供される。

 本発明の溶接缶用表面処理錫めっき鋼板は 溶接性に優れており、特に30m/min.という高 溶接においても確実に溶接することができ 高速溶接性を有している。
 また耐食性にも優れており、金属溶解タイ の腐食性の強い酸性飲料などを充填した場 にも優れた耐食性を有している。
 更に、樹脂被覆の密着性に優れ、トリプル ックイン加工等の過酷な加工に付された場 の加工密着性にも優れている。
 また本発明においては、印刷における顔料 度を高くしても樹脂被覆の密着性に優れて るため、溶接缶が有するシート印刷による 麗な印刷が可能であるという特徴と相俟っ 優れた外観特性を有している。

本発明の溶接缶用表面処理錫めっき鋼 における錫めっき層中のフリー錫量(X)とシ ンカップリング剤処理層中のSi量(Y)の関係 示す図である。 溶接方法を説明するための図である。 実施例における密着性評価試験の方法 説明するための図である。

 前述したとおり、溶接缶用の表面処理錫め き鋼板においては、溶接性、加工密着性、 食性を満足することが必要であり、表面処 被膜にシランカップリング剤を用いた場合 は、溶接性、特に高速溶接性の点で満足す ものではなかった。その一方シランカップ ング剤処理は、錫めっき鋼板と有機樹脂被 の密着性を向上し、厳しい加工に付された 合にも有機樹脂被膜の加工密着性を向上し 優れた耐食性を得る上では有効であること ら、本発明においては、シランカップリン 剤を用いた場合にも優れた溶接性を得るべ 鋭意研究を行った結果、シランカップリン 剤処理層の厚みとフリー錫量が特定の関係 満足することが重要であることを見出した
 本発明者等はシランカップリング剤表面処 層のSi量、及び錫めっき層のフリー錫量を 々変化させて、溶接性、密着性、耐食性を 価した結果、フリー錫量に対応したSi量の上 限に一定の条件があることがわかった。すな わち本発明者等の実験の結果を示す図1にお て、錫めっき層中のフリー錫量(X)及びシラ カップリング剤処理層中のSi量(Y)が、上記式 (1)~(4)のすべてを満足する範囲(図1に示す斜線 の範囲)内にあることにより、優れた溶接性 加工密着性、耐食性を発現し得ることを見 したのである。

 すなわち図1からも明らかなように、錫めっ き層中のフリー錫量が上記式(1)を満足しない 場合、すなわちXが0.2g/m 2 よりも小さい場合には、溶接に利用可能な錫 量が不足しているために、充分な溶接を行う ことができず溶接性に劣り、また錫による鋼 板表面の被覆が不十分であるため耐食性にも 劣ることになる。一方、Xが13g/m 2 よりも大きくても経済的に不利なだけで、溶 接性や耐食性の更なる向上を得ることはでき ない。
 シランカップリング剤処理層のSi量が1.0mg/m 2 よりも小さい場合には、シランカップリング 剤による酸化膜抑制効果が低下するとともに 、有機樹脂被覆の密着効果を充分得ることが できなくなり、経時密着性、加工密着性に劣 っている(上記式(2))。
 またシランカップリング剤処理層のSi量の 限を定める上記式(3)及び(4)は、フリー錫の Xが1.95g/m 2 の近傍で交差し、この交差点を境にフリー錫 量Xに対応するSi量の上限の傾向が変化してい ることが理解される。すなわち、フリー錫量 Xが約1.95g/m 2 まで増加する場合にはSi量の上限も増加する 、フリー錫量Xが約1.95g/m 2 を超えるとSi量の上限は減少し、これを超え 場合には、満足する溶接性を得ることがで ない。更に、フリー錫量Xが1.95g/m 2 を超えた範囲では、Si量が上限を超えると密 性の低下も生じてしまうのである。

(溶接缶用錫めっき鋼板)
 本発明の溶接缶用表面処理錫めっき鋼板に いては、鋼板の少なくとも一方の表面に錫 っき層、シランカップリング剤処理層が形 されてなるものであり、シランカップリン 剤処理層の上には有機樹脂被覆層、特に有 塗膜が形成されていることが好適である。

[鋼板]
 本発明に用いる鋼板は、溶接缶の用途に用 られていた従来公知の冷延鋼板等を使用す ことができるが、本発明においては特に炭 (C)量が0.10重量%以下の低炭素鋼板を好適に いることができる。溶接性は、上述したシ ンカップリング剤処理層中のSi量の他に鋼板 中のC量にも影響を受け、特にC量は高速溶接 に影響を与える。すなわち、C量が増えると 溶接時にスプラッシュが出やすい傾向があり 、その一方C量が少ないとネックショルダー に凹みが生じやすい等の傾向があることか 、本発明においては、C量が0.10重量%以下、 に0.03~0.1重量%の範囲にある鋼板を用いるこ が好適である。
 また用いる低炭素鋼板の板厚は0.1~0.4mm程度 ものが好ましい。

[錫めっき層]
 鋼板の少なくとも一方の面に設ける錫めっ 層は、前述した通り、フリー錫量が0.2~13g/m 2 となるように、鋼板上に錫めっき層を構成す る。
 尚、本明細書において「フリー錫」とは、 やニッケルと合金化していない金属錫のこ である。
 本発明においては、フリー錫量が上記範囲 なるように、鋼板上に錫めっき層を形成し リフロー処理温度や処理時間及び有機樹脂 覆後の加熱焼付け条件を制御することによ 、鋼板自体の耐食性を向上させると共に、 ランカップリング剤表面処理層との組み合 せにより、溶接性、有機樹脂被覆との加工 着性及び経時密着性を向上させ、更に加工 の耐食性の向上を図ることが可能となるの ある。なお、錫めっき層は鋼板表面を一様 被覆していても、島状に存在していても良 。
 また鋼板の少なくとも一方の面、すなわち 内面側となるべき面に錫めっき層を設ける 、缶外面側となるべき他方の面にも錫めっ 層を設けることが望ましく、錫量は缶内面 となるべき面と同様の量であっても、異な 量であっても構わない。缶内面側と缶外面 の錫めっき量の差は、6g/m 2 以下であることが経済性の面で好ましい。

 本発明においては、鋼板上に設ける錫めっ 層の鋼板側の一部を錫鉄合金とすることに って錫めっき層/錫-鉄合金層の二層構成に ることもできる。錫-鉄合金層を形成するこ によって、加工密着性が向上すると共に、 板自体の耐食性も向上させることが可能に る。
 錫めっき層を、錫めっき層/錫鉄合金層の二 層構成に形成するには、鋼板上に所定量の錫 めっきを行った後、錫の融点以上に加熱した 後冷却を行う(リフロー処理)ことによって錫 っき層の鋼板側の一部を鉄-錫合金層に変化 させることができる。
 本発明においては、錫めっき前の鋼板表面 薄ニッケルめっきや薄いニッケル拡散層を め設けておくことにより、鋼板側の一部を -ニッケル-鉄合金とすることが特に好まし 。これにより合金層を微細化することが可 となり、フリー錫の合金化を抑制すること できる。尚、前述したように、本発明にお ては、合金層を形成した場合でも合金化さ ていないフリー錫量が上述した範囲内にあ ことが重要である。
 尚、錫めっき層には、亜鉛が含有されてい いことが望ましい。前述したように、亜鉛 含有されていると、特に金属溶解タイプの 食性の内容物に適用可能な耐食性を得るこ ができず、また加工密着性の点で劣るよう なる。更に、高速溶接時にスプラッシュや ローホールが発生し溶接性が低下する。

 [シランカップリング剤処理層]
 錫めっき層上に形成されるシランカップリ グ剤処理層は、シランカップリング剤が有 る反応基により、錫めっき層あるいは錫-鉄 合金層と有機樹脂被膜の密着性を向上させる ことが可能となる。またシランカップリング 剤処理層自体が耐久性と耐水性を向上させる 一方、錫めっき層へのガス透過を抑制し、こ れにより錫めっき層の酸化皮膜の形成を抑制 するため、酸化皮膜の生成・成長による有機 樹脂被覆層の密着性の低下を防止できる。
 本発明においては、前述したとおり、錫め き層のフリー錫量との関係において、シラ カップリング剤処理層中のSi量の上限が決 される。フリー錫量が2.0g/m 2 付近(X=1.95g/m 2 )を境に、フリー錫量がこの値以下の場合に 上記式(3)及びフリー錫量がこの値以上の場 には上記式(4)を満足するSi量であることが重 要である。またSi量の下限は1.0mg/m 2 である。

 シランカップリング剤表面処理層を形成す ために用いるシランカップリング剤は、有 樹脂被覆と化学結合する反応基と錫めっき 板と化学結合する反応基を有するものであ 、ビニル基、スチリル基、アクリロキシ基 ウレイド基、クロロプロピル基、スルフィ 基、イソシアネート基、アミノ基、エポキ 基、メタクリロキシ基、メルカプト基等の 応基と、メトキシ基、エトキシ基等の加水 解性アルコキシ基を含むオルガノシランか 成るものや、メチル基、フェニル基、等の 機置換基と加水分解性アルコキシ基を含有 るシランを使用することができる。
 本発明において、好適に用いることができ シランカップリング剤の具体例としては、 -APS(γ-アミノプロピルトリメトキシシラン) γ-GPS(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシ ラン)、BTSPA(ビストリメトキシシリルプロピ ルアミノシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミ プロピルトリメトキシシラン等を挙げるこ ができる。

 シランカップリング剤処理層を錫めっき層 に形成するには、上述したシランカップリ グ剤溶液を錫めっき層上に塗布、若しくは ランカップリング剤溶液中に、錫めっき層 形成された鋼板を浸漬し、その後絞りロー で過剰な溶液を除去することにより形成す ことができる。好適なシランカップリング 溶液の組み合わせ及び処理の順序は以下の りである。
(1)アミノ基含有シランカップリング剤溶液及 び/又はエポキシ基含有シランカップリング 溶液を用いて処理生成する。
(2)アミノ基含有シランカップリング剤溶液及 び/又はエポキシ基含有シランカップリング 溶液と、有機置換基と加水分解性アルコキ 基を含有したシランから成る混合溶液を用 て処理生成する。この混合処理によって、 トルト処理後においても、密着性をより高 レベルに維持する効果が期待できる。
(3)有機置換基と加水分解性アルコキシ基を含 有したシランで処理した後、次いでアミノ基 含有シランカップリング剤溶液及び/又はエ キシ基含有シラン溶液から成るシランカッ リング剤溶液を用いて処理生成する。この 段処理によって、混合処理にはない処理液 経時安定性を維持しつつ、レトルト処理後 おいても、密着性をより高いレベルに維持 る効果が期待できる。

[有機樹脂被覆]
 本発明において、シランカップリング剤処 層上に形成される有機樹脂被覆は、熱可塑 樹脂フィルムの被覆或いは熱硬化性塗料に る塗膜の何れであってもよいが、密着性の で有機樹脂塗料により形成された有機塗膜 あることがより好適である。
 有機樹脂塗料としては、金属缶の塗装に用 られていた従来公知の熱硬化性塗料を用い ことができ、エポキシ系塗料、フェノール 塗料、アクリル系塗料、ウレタン系塗料等 挙げることができる。特に作業性等の観点 ら有機溶剤を用いない水溶性の塗料を用い ことが望ましいことから、エポキシ・アク ル系水性塗料を用いることが好ましい。

 有機樹脂被覆に使用し得る樹脂フィルム しては、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性ポ エステル樹脂等従来公知の熱可塑性樹脂を げることができるが、最も好適には、熱可 性ポリエステル樹脂を用いることが望まし 。熱可塑性ポリエステル樹脂は、内容物中 芳香成分の吸着が少なく、腐食成分に対す バリア性や耐衝撃性にも優れたものである

 熱可塑性ポリエステル樹脂としては、従来 知のカルボン酸成分とアルコール成分とか 誘導されたポリエステル樹脂を使用するこ ができ、ホモポリエステルでも、共重合ポ エステルでも、或いはこれらの2種以上のブ レンド物であってもよい。
 本発明においては、従来公知の熱可塑性ポ エステル樹脂の中でも、特にポリエチレン レフタレート系の共重合樹脂、すなわちカ ボン酸成分の50モル%以上がテレフタル酸で アルコール成分の50モル%以上がエチレング コール成分であるエチレンテレフタレート の共重合ポリエステル樹脂を用いることが ましい。好適には、カルボン酸成分として ソフタル酸を3~18モル%を含有するポリエチ ンテレフタレート/イソフタレートを使用で る。
 用いるポリエステル樹脂は、フィルムを形 し得る分子量を有し、オルトクロロフェノ ル中25℃で測定した固有粘度[η]が0.6~1.2の範 囲にあることが好ましい。
 また、必要に応じて、エポキシフェノール 樹脂、エポキシアクリル系樹脂などの接着 ライマー樹脂を介して上記熱可塑性フィル を配置することもできる。

 樹脂フィルム層をシランカップリング剤処 層が形成された鋼板に形成するには、従来 知の任意の手段を行うことができ、例えば 押出コート法、キャストフィルム熱接着法 フィルム熱接着法等により行うことができ 。
 フィルムを用いる場合は、フィルムはT-ダ 法や、インフレーション製膜法により得る とができる。フィルムとしては、押出した ィルムを急冷した、キャスト成形法による 延伸フィルムであることが、フィルムの歪 がなく、加工性、密着性に優れているので ましいが、このフィルムを延伸温度で逐次 いは同時二軸延伸し、延伸後のフィルムを 固定することにより製造される二軸延伸フ ルムを用いることもできる。

 有機樹脂被覆として有機塗膜を形成する場 、その厚みは1~16μm、特に3~10μmの範囲にあ ことが好ましく、また樹脂フィルム層を形 する場合、その厚みは8~42μm、特に10~40μmの 囲にあることが表面処理錫めっき鋼板の保 及び加工性とのバランスの点で好ましい。 機樹脂被覆の厚みが上記範囲より小さい場 は、バリア性が低下し、内容物浸透による 食が発生したり、加工時に被膜にキズが入 やすくなり、腐食が発生する確率が高くな 。また、厚みが上記範囲より大きい場合に 、被膜自体の剛性が高くなり、ネックイン 、巻締部等の厳しい加工を受ける部分にお て加工密着性が劣るようになる。
 また、有機樹脂被覆は、溶接性の点から溶 部及びその近傍を除いたシランカップリン 剤処理層上に施される。

[層構成]
 本発明に用いる溶接缶用表面処理錫めっき 板は、上述した通り、鋼板の少なくとも一 の表面に、錫めっき層、シランカップリン 剤処理層、有機樹脂被覆の順に設けて成る のであり、また好適には、鋼板表面と錫め き層の間に更に、錫鉄合金層或いは錫鉄ニ ケル合金層が形成されるが、必要によりこ ら以外の他の層を設けることも可能である すなわち、缶外面側となる鋼板の他方の表 にも内面側と同様に錫めっき層及び有機樹 被覆を設けることは勿論、有機樹脂被覆の にホワイトコート層、印刷層等を設けるこ もできる。特に本発明の溶接缶用表面処理 めっき鋼板は、密着性に優れているので、 刷層や下地層の顔料の含有量を高くするこ ができ、外観特性にも優れている。

(溶接缶)
 本発明の溶接缶は、上述した有機樹脂被覆 面処理錫めっき鋼板からなる缶胴ブランク 両端縁部を1mm以下、特に0.4mm以下のオーバ ラップ幅で重ね合わせた状態で溶接を行う 溶接条件は、30乃至120m/min.の範囲の溶接速度 、40乃至60kgfの範囲の溶接加圧力であること 好ましく、特に55m/min.以上の高速溶接でも優 れた溶接性を発現することができる。
 図2は溶接を説明するための図であり、電極 ロール20a、20b又は電極ロール20a,20bでバック ップした溶接銅線21a,21bで有機樹脂被覆表面 理鋼板22のオーバーラップ部23をはさんでシ ーム溶接を行った後、溶接部を上述した熱硬 化性塗料等を用いて溶接部の金属露出を補修 する。
 次いで、ネックイン加工、ビード加工、フ ンジ加工を施すことにより、缶胴部が形成 れる。次いで、別途形成された缶端部(缶蓋 及び缶底)を巻締め加工することにより溶接 が成形される。尚、本発明の溶接缶は、飲 缶に好適に使用できることから、ネックイ 加工において、トリプルネックイン加工の うな高度に縮径することもできる。
 また、必要に応じて、上記のネックイン加 をする前や加工後の缶内面に、部分的ある は全面にスプレー塗装をすることもできる スプレー用の塗料としては、エポキシアク ル系塗料、エポキシフェノール系塗料など 好適に使用できる。

 本発明の溶接缶は、耐食性に優れており 金属腐食性の酸性飲料などの飲料缶に好適 使用することができる。またこれ以外にも アゾール缶、溶剤等を内容物とする18リッ ル缶等に好適に使用できるが、これに限定 れるものではない。

(表面処理錫めっき鋼板の作成)
 炭素量0.04重量%で板厚0.22mmの低炭素鋼板を いて、リフロー処理後のフリーSn量が表1及 表2に示す値となるようにSnめっきを施した 次いで、リフロー処理を行った材料に、乾 後のSi量が表1になるように希釈濃度を変え アミノシランカップリング剤(γ-アミノプロ ルトリメトキシシラン)液を50m/min.でロール ートにより塗布し、150℃の熱風で乾燥する とにより、表面処理錫めっき鋼板を得た(試 料番号1~76)。
 試料番号77の材料は、リフロー処理を行わ かった以外は、上記と同様に処理して錫め き鋼板を得た。

 尚、表1及び表2中の各数値の測定方法は以 のとおりである。
(1)シランカップリング剤処理層中のSi量の測
シランカップリング剤を塗布する前後の試験 片について、蛍光X線法でSi量を測定し、両者 の差からSi量を計算して求めた。
(2)鋼板中の炭素量の測定
 るつぼ中に入れた試料を高周波加熱により 素気流中で燃やし、発生するCO 2 濃度を赤外線分析計で分析して、鋼中のC量 求めた。測定装置は、「固体中炭素分析装  EMIA-921V 堀場製作所(株)製」であった。
(3)錫めっき層中のフリー錫量の測定
 樹脂被覆をする前の表面処理錫めっき鋼板 ついて、JIS G3303に準じて、電気化学的に金 属錫(フリー錫)を溶解する前後の試験片につ て、蛍光X線法で錫量を測定し、両者間の差 から、フリー錫量を計算して求めた。

(樹脂被覆表面処理錫めっき鋼板の作成)
 試料番号1~73及び77の材料は、上記錫めっき 板を用いて、エポキシアクリルフェノール 水性塗料を缶胴の継目部分にあたる溶接マ ジン部を除いて、焼付け後の膜厚が内面側5 μm、外面側3μmになるようにマージン塗装し 熱風乾燥炉中でそれぞれ185℃10分、205℃10分 焼付け硬化させた後、外面側も同様に溶接 ージン部を残して外面塗装印刷を行って樹 被覆錫めっき鋼板を得た。
 試料番号74の材料は、缶内面側となる側に リエステル樹脂(イソフタル酸10mol%共重合の リエチレンテレフタレート樹脂)を、溶接マ ージン部を残して押出しコートし、内面樹脂 膜厚28μmとした以外は、試料番号1~73と同様に して樹脂被覆錫めっき鋼板を得た。
 試料番号75の材料は、缶内面になる側に予 エポキシフェノール系接着プライマを塗布 た厚み20μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタ レート/イソフタレートフィルム(融点230℃)を 、溶接マージン部を残してラミネートした以 外は、試料番号1~73と同様にして樹脂被覆錫 っき鋼板を得た。
 試料番号76の材料は、缶内面になる側にエ キシフェノール系塗料を65mg/dm 2 の塗膜厚となる様に塗装した以外は、試料番 号1~73と同様にして樹脂被覆錫めっき鋼板を た。

(溶接缶の作成)
 試料番号1~77の材料は、樹脂被覆表面処理錫 めっき鋼板を、ブランクエッジ近傍が溶接マ ージン部になるように切断し、そのブランク をSoudronic社製銅ワイヤシーム溶接機にて、溶 接部同士を0.3mmの幅で円筒状に重ね合わせて 接した。溶接条件は、溶接速度が55m/min.、 接加圧力が50kgfで行った。
 次に、試料番号1~73,76,77の材料は、缶胴の溶 接継ぎ目部の内外面側に溶剤型エポキシフェ ノール系補修塗料を、乾燥後の塗膜厚みが35 mになるようにスプレー塗装した後、熱風乾 炉中で220℃40秒間焼付けることにより継ぎ 部分を被覆し、溶接缶胴(缶径65.4mm、缶胴高 122mm)を作成し、片側に蓋を巻き締めた後、 う一方の開口端を3段階のダイネック加工に より、60.3mmまでネッキングした。
 試料番号74,75の材料は、缶胴の溶接継ぎ目 の内面側にポリエステルパウダーにより乾 膜厚が70μmになるようにパウダー塗装し、熱 風乾燥炉中で、パウダー塗装部が240℃3秒間 なるようにパウダー塗装部のみを焼付けた 外は、上記と同様にして溶接缶胴を得た。

(容器評価)
1.溶接性評価
 溶接電圧は、スプラッシュ・ブローホール 発生により上限とし、溶接部引き剥がし試 で溶接されていない部分が僅かでも存在し 場合を下限とし、その間の電圧ポイント数 、下記の基準により溶接性を評価した。溶 缶としての安定生産できる許容範囲は、評 ◎と○である。尚、スプラッシュ発生は肉 観察、ブローホール発生はX線の透過観察に より判断した。
  ◎:溶接可能範囲が4ポイント以上
  ○:溶接可能範囲が3ポイント以上~4ポイン 未満
  △:溶接可能範囲が2ポイント以上~3ポイン 未満
  ×:溶接可能範囲が2ポイント未満
 尚、缶体評価を行うにあたり、評価×の材 については、溶接条件をより溶接しやすい 件(溶接加圧力55kgf、溶接速度15m/min.)に変更 て溶接し、評価に供試した。この条件でも 溶接できなかった材料については、缶体評 を中止した。

2.耐食性評価
 缶胴を切り開いてから、溶接部以外から60mm ×60mmの試験片を切り出し、缶内面について耐 食性を評価した。試験片端部から腐食が進行 しない様に、エッジを保護テープで被覆後、 1.5%NaCl+1.5%クエン酸溶液に浸漬し、37℃で12日 管し、腐食状態を目視により5段階評価した 。評価基準は次のとおりである。評価◎と○ が、製品としての許容範囲である。
  ◎:腐食面積が全面積の20%未満
  ○:腐食面積が全面積の20%以上~40%未満
  △:腐食面積が全面積の40%以上~60%未満
  ×:腐食面積が全面積の60%以上

3.密着性評価
(a)缶胴部密着性
 耐食性評価の場合と同様に缶胴平坦部から6 0mm×60mmの試験片を切り出した後、缶内面側塗 膜にカッターで8方向に切り込みを入れて(図3 参照)試験片とした。その後、水中で116℃-60 レトルト処理をした。レトルト処理後は、 きるだけ迅速に試験片の評価を行った。評 直前まで試験片は水中に入れておき、水分 拭き取ってからニチバン製セロテープ(登録 標)(24mm巾)を貼った後剥離試験を2回繰り返 、密着性評価を行った。
(b)ネック部密着性
 3段ネック加工された側の缶胴開口部を4分 し、1/4円の試験片を4つ作った。缶胴ネック の内面側各段差に沿って円周方向に平行に ッターで3本切り込みを入れた後、水中で116 ℃で60分間のレトルト処理を行った。レトル 処理後の試験片はできるだけ迅速に評価を った。評価直前まで試験片は水中に入れて き、水分を拭き取ってからニチバン製セロ ープ(登録商標)(24mm巾)を貼った後剥離試験 2回繰り返し、密着性評価を行った。

 缶胴部密着性、ネック部密着性の各評価と 、以下の基準に基づいて評価した。
 5点:周辺に剥離を生じている切り込み部分 、切り込み全体の0%
 4点:周辺に剥離を生じている切り込み部分 、切り込み全体の3%未満
 3点:周辺に剥離を生じている切り込み部分 、切り込み全体の3%以上~10%
   未満
 2点:周辺に剥離を生じている切り込み部分 、切り込み全体の10%以上~20
   %未満
 1点:周辺に剥離を生じている切り込み部分 、切り込み全体の20%以上~50
   %未満
 0点:周辺に剥離を生じている切り込み部分 、切り込み全体の50%以上
 密着性の総合評価にあたり、両評価の合計 点が4点以下を×、5~6点を△、7~8点を○、9点 以上を◎とした。製品化許容範囲は、◎と○ である。

4.経時密着性評価
 表面処理後の鋼板を樹脂被覆なしの状態で 温6ヶ月間経時保管した材料を用いて、樹脂 被覆後に、上記の缶胴部密着性評価と同様に して評価を行った。評価が2点以下を×、3~4点 を○、5点を◎とした。製品としての許容範 は、◎と○である。

5.総合判定
 溶接性評価、耐食性評価、密着性総合評価 経時密着性評価を基に、次の基準により総 判定を行った。製品としての許容範囲は、 か○である。
  ◎:いずれの評価も、◎
  ○:いずれの評価も、◎か○
  ×:いずれかの評価に、△か×が含まれる

 以上の5種類の評価・判定結果を表1に示し 。溶接不能により評価を行わなかった項目 「-」の記号で示した。
 表1及び表2の結果から、フリーSn量とSi量の 関図を作成し、図1に総合評価結果を示した 。良好な性能を示すのは、フリーSn量(Xg/m 2 )及び表面処理層中のSi量(Ymg/m 2 )が下記式、
  0.2≦X≦13
  Y≧1.0
  Y≦1.58X+6.92
  Y≦―0.36X+10.70
のすべてを満たす範囲内にあるものであるこ とがわかる。

(鋼中炭素量変更の実験例)
 表3に示すC量を有する鋼板の表面に、リフ ー処理後のフリーSn量が2.1g/m 2 となる様にSnめっきを施し、リフロー処理を た後、アミノシランカップリング剤(γ-アミ ノプロピルトリメトキシシラン)液を塗布後 燥し、Si量5.0mg/m 2 の表面処理鋼板を得た。試料番号1~73と同様 溶接マージン部を残して、内面塗装、外面 装印刷をし、ブランクにしたのち、これら 料の溶接性を比較した。その他の鋼板の条 、溶接性評価方法及び評価基準は、試料番 1~73と同様である。溶接缶としての安定生産 きる許容範囲は、評価◎と○である。
 ここで、低速溶接条件は、溶接加圧力55kgf 溶接速度15m/min.であり、高速溶接条件は、溶 接加圧力50kgfで溶接速度55m/min.で行った。