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Patent Searching and Data


Title:
TAG PEPTIDE AND USE THEREOF
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/096112
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a tag peptide having an amino acid sequence represented by formula (I): X1-Tyr-X2-Gly-Gln-X3 [wherein X1, X2 and X3 independently represent any amino acid residue]. Also disclosed is an antibody directed against the tag peptide. By using the tag peptide and the antibody in combination, it becomes possible to construct a system which can purify a protein expressed from a cloned gene by a simple manipulation, with a high purity, and at a low cost.

Inventors:
TAKAGI JUNICHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/073069
Publication Date:
August 06, 2009
Filing Date:
December 18, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV OSAKA (JP)
TAKAGI JUNICHI (JP)
International Classes:
C07K4/00; C07K7/08; C07K16/28; C07K19/00; C12N5/10; C12N15/09; G01N33/53; C12P21/08
Domestic Patent References:
WO1999050415A21999-10-07
WO2005121178A22005-12-22
Other References:
SANGAWA, T. ET AL.: "Development of affinity- tag system using anti-GPCR monoclonal antibody 20.1: I. Establishment of antibody and epitope analysis", PROTEIN SCIENCE SOCIETY OF JAPAN NENKAI PROGRAM. YOSHISHU, vol. 7, 2007, pages 109, XP008138991
NOGI, T. ET AL.: "Development of affinity-tag system using anti-GPCR monoclonal antibody 20.1: II. X-ray crystallographic analysis of Fab-epitope complex", PROTEIN SCIENCE SOCIETY OF JAPAN NENKAI PROGRAM - YOSHISHU, vol. 7, 2007, pages 109, XP008142160
TABATA, S. ET AL.: "Development of affinity-tag system using anti-GPCR monoclonal antibody 20.1: III. Screening of high-affinity peptide sequence", PROTEIN SCIENCE SOCIETY OF JAPAN NENKAI PROGRAM. YOSHISHU, vol. 7, 2007, pages 110
XU, W-F. ET AL.: "Cloning and characterization of human protease-activated receptor 4", PROC. NATL. ACAD. SCI. USA, vol. 95, 1998, pages 6642 - 6646, XP002185202
KAHN, M.L. ET AL.: "Protease-activated receptors 1 and 4 mediate activation of human platelets by thrombin", J. CLIN. INVEST., vol. 103, no. 6, 1999, pages 879 - 887, XP002567151
ZHANG, L. ET AL.: "Multiple tandem epitope tagging for enhanced detection of protein expresed in mamalian cels", MOL. BIOTECH., vol. 19, 2001, pages 313 - 321, XP008137447
SANGAWA, T. ET AL.: "A murine monoclonal antibody that binds N-terminal extracellular segment of human protease-activated receptor-4", HYBRIDOMA, vol. 27, no. 5, October 2008 (2008-10-01), pages 331 - 335, XP008137449
DUELLMAN, S.J. ET AL.: "An epitope tag derived from human transcription factor IIB that reacts with a polyol-responsive monoclonal antibody", PROTEIN EXPRESS. PURIF., vol. 35, 2004, pages 147 - 155, XP004497034
THOMPSON, N.E. ET AL.: "Development of an epitope tag for the gentle purification of proteins by immunoaffinity chromatography: application to epitope-tagged green fluorescent protein", ANAL. BIOCHEM., vol. 323, 2003, pages 171 - 179, XP004476335
NOGI, T. ET AL.: "Novel affinity tag system using structurally defined antibody-tag interaction: application to single-step protein purification", PROTEIN SCIENCE, vol. 17, no. 12, December 2008 (2008-12-01), pages 2120 - 2126, XP008137451
See also references of EP 2239267A4
PROTEIN EXPRESSION AND PURIFICATION, vol. 41, 2005, pages 98 - 105
"Advance in Epitope Tagging Strategies", GENETIC ENGINEERING & BIOTECHNOLOGY NEWS, 1 April 2007 (2007-04-01)
XIAO ET AL., NATURE, vol. 432, 2004, pages 59 - 67
MIYAMOTO ET AL., ARCH. BIOCHEM. BIOPHYS., vol. 390, no. 1, 2001, pages 93 - 100
Attorney, Agent or Firm:
IWATANI, Ryo (1-31 Dojima 2-chome, Kita-k, Osaka-shi Osaka 03, JP)
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Claims:
 下記式(I);
X 1 -Tyr-X 2 -Gly-Gln-X 3    (I)
(式中、X 1 、X 2 及びX 3 は、同一又は異なって、任意のアミノ酸残基を表す。)で表わされるアミノ酸配列を有するタグペプチド。
 下記式(II);
(X 1 -Tyr-X 2 -Gly-Gln-X 3 )n   (II)
(式中、X 1 、X 2 及びX 3 は、同一又は異なって、任意のアミノ酸残基を表す。nは、2~6の整数を表す)で表わされるアミノ酸配列を有するタグペプチド。
 式(II)で表わされるアミノ酸配列が、下記式(III);
(Gly-Tyr-Pro-Gly-Gln-Val))m   (III)
(式中、mは、3~5の整数を表す)である請求項2に記載のタグペプチド。
 下記式(IV);
(Tyr-X 2 -Gly-Gln)   (IV)
(式中、X 2 は任意のアミノ酸残基を表す。)で表わされるアミノ酸配列を2箇所以上有する請求項1に記載のタグペプチド。
 請求項1~4のいずれかに記載のタグペプチドが結合したタグペプチド融合タンパク質。
 請求項1~4のいずれかに記載のタグペプチドをコードするポリヌクレオチド。
 請求項6に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
 請求項1~4のいずれかに記載のタグペプチドに対する抗体。
 配列番号3で表わされるアミノ酸配列を有する重鎖可変部及び配列番号5で表わされるアミノ酸配列を有する軽鎖可変部を有する請求項8に記載の抗体。
 配列番号7で表わされるアミノ酸配列を有する1本鎖抗体である請求項8に記載の抗体。
 マウス-マウス ハイブリドーマP20.1(FERM BP-11061)により産生されるモノクローナル抗体である請求項9に記載の抗体。
 下記(i)~(iii)の工程を含む、タンパク質の精製方法。
(i)請求項5に記載のタグペプチド融合タンパク質と、該タグペプチド融合タンパク質以外の物質とを含有する混合物を調製する工程
(ii)前記(i)の工程で得られた混合物に、請求項8~11のいずれかに記載の抗体を作用させて前記タグペプチド融合タンパク質と該抗体との結合物を形成させる工程
(iii)前記(ii)の工程で得られた結合物に溶離物質を作用させて前記タグペプチド融合タンパク質を抗体から遊離させる工程
 溶離物質が親水性の有機溶媒である請求項12に記載のタンパク質の精製方法。
 下記(i)~(iii)の工程を含む、タンパク質を検出又は定量する方法。
(i)請求項5に記載のタグペプチド融合タンパク質を含有する試料を調製する工程
(ii)前記(i)の工程で得られた試料に、請求項8~11のいずれかに記載の抗体を作用させて前記タグペプチド融合タンパク質と該抗体との結合物を形成させる工程
(iii)前記(ii)の工程で得られた結合物を検出又は定量する工程
 マウス-マウス ハイブリドーマP20.1(FERM BP-11061)。
 タンパク質を発現、精製、検出、もしくは、定量するためのキットであって、請求項7に記載の組換えベクター、又は、請求項8~11のいずれかに記載の抗体を含むキット。
Description:
タグペプチド及びその利用

 本発明は、タグペプチド及びその利用に し、より詳細には、タンパク質を精製、検 又は定量するために利用可能なタグペプチ 、該タグペプチドが結合したタグペプチド 合タンパク質、該タグペプチドをコードす ポリヌクレオチド及び該ポリヌクレオチド 含む組換えベクター、並びに、該タグペプ ドに対する抗体及び該抗体を用いるタンパ 質の精製方法、検出方法、定量方法、キッ に関する。

 ライフサイエンス分野において、遺伝子 換え技術を用いたタンパク質の生産は、基 研究、応用研究及び製品開発のすべての分 で行われている。しかしながら、生産され タンパク質を高純度で単離及び精製するた の技術は限られている。

 アフィニティー(親和性)クロマトグラフ ーは、最も強力なタンパク質の精製手段の1 である。このようなクロマトグラフィーと ては、タンパク質のN末端又はC末端に6~10残 のヒスチジンを含むペプチド(ヒスチジンタ グ)を付加し、このヒスチジンタグとニッケ などの金属との相互作用を利用してタンパ 質を分離精製する方法が知られている。ま 、タグペプチド(ペプチドタグ)とそれに対す る抗体の相互作用を利用する方法が知られて いる(例えば、非特許文献1及び非特許文献2)

 しかしながら、前者のヒスチジンタグを いる方法は、ニッケルとヒスチジンタグと 特異性が低く、目的とするヒスチジンタグ 付加されたタンパク質以外のタンパク質や タンパク質以外の化合物等も吸着する。従 て、一段階の精製で高純度のタンパク質を ることができないという問題点があった。

 後者のタグペプチドとそれに対する抗体 相互作用を利用するタンパク質の検出及び 製システムとして、シグマ社から販売され いるFLAG(登録商標)が広く利用されている。 の技術は、FLAGペプチドとこれに対する抗体 (M1抗体、M2抗体等)を使用するものであり、現 在最も特異性に優れていると考えられる。し かしながら、FLAG(登録商標)は高価であるため 、コスト的な面からその使用が制限される場 合がある。

 また、従来のタグペプチドとそれに対す 抗体とを用いる方法では、抗原(タグペプチ ド)-抗体の相互作用が強固であるため、抗体 結合した抗原を免疫アフィニティーカラム ら溶出させることは容易ではない。このた 、タンパク質のアフィニティー精製方法に いて、通常抗原の溶出には、強酸性(例えば pH3)又は強アルカリ性(例えばpH10)の溶液、タ パク質の変性剤(高濃度の尿素又は塩酸グア ジン)等の溶離液が用いられる。しかしなが ら、これらの溶離液は、目的とするタンパク 質を変性させ、又はその安定性を低下させる ものであり、特にマルチサブユニットの酵素 等の収率が非常に低くなるという問題があっ た。さらに、このような溶離液を用いると、 精製用カラムに使用されている抗体も劣化し やすく、繰り返し使用することができないと いう問題点があった。FLAG(登録商標)について も、精製等に用いるM1抗体及びM2抗体は繰り し使用すると抗原との特異性が低下するた 、繰り返し使用が限られている。

 従って、現在のところ、安価に、しかも容 な操作で純度の高いタンパク質を単離及び 製することができ、さらに繰り返し使用す ことができるタンパク質の精製システムは 発されていない。
Protein Expression and Purification 41 (2005)98-1 05 “Advance in Epitope Tagging Strategies”, Gene tic Engineering & Biotechnology News, April 1, 20 07

 本発明は、クローニングされた遺伝子か 発現されるタンパク質を、容易な操作で高 度に、しかも安価に精製できるシステムに 用可能な新規なタグペプチド、及びこのタ ペプチドが結合したタグペプチド融合タン ク質を提供することを目的とする。また、 のタグペプチドをコードするポリヌクレオ ド、このポリヌクレオチドを含む組換えベ ター、このタグペプチドに対する抗体を提 することを目的とする。さらに、このタグ プチド及びそれに対する抗体の相互作用を 用する、安価に簡便に実施可能なタンパク の精製方法、タンパク質の検出方法及びタ パク質の定量方法、並びにタンパク質を発 、精製、検出、もしくは、定量するための ットを提供することを目的とする。

 本発明者は、タグペプチドと、該タグペ チドを認識する抗ペプチド抗体とを利用す アフィニティータグシステムについて鋭意 究した。その結果、ヒトトロンビン受容体P AR4のN末端20残基に相当する配列(配列番号2:以 下、「P4ペプチド」ともいう)からなるペプチ ドを抗原として作製した抗体(以下、「P20.1抗 体」ともいう)と該抗体の認識配列を有する プチドとを、タンパク質のアフィニティー 製システムに応用できることを見出した。 らに研究を進め、P20.1抗体が、ヒトトロンビ ン受容体PAR4のN末端20残基のうちのC末端側の6 残基(Gly-Tyr-Pro-Gly-Gln-Val:配列番号1)を認識して いること、該6残基の中でもN末端側から2番目 のチロシン、4番目のグリシン及び5番目のグ タミンが抗体との相互作用に不可欠である とを見出した。さらに、タグペプチドにお てこの6残基の配列(以下、「P4配列」ともい う)を複数回繰り返すことにより、タグペプ ドとP20.1抗体との親和性が増大することを見 出し、このような重複配列を有するタグペプ チドとP20.1抗体とを用いると、クローニング れた遺伝子から発現されるタンパク質を1段 階で高純度に精製することができることに想 到した。

 また、アフィニティー精製の条件をさらに 討したところ、このような重複配列を有す タグペプチドとP20.1抗体との相互作用は、 リオール等の親水性の有機溶媒により容易 解離できることを見出した。
 従来の抗原抗体相互作用を利用するアフィ ティー精製システムでは、溶離液に強酸性 は強アルカリ性溶媒等を用いる必要があっ が、本発明の精製システムでは、溶離物質 ポリオール等の親水性の有機溶媒を使用で ることから、穏やかな条件下でタンパク質 精製可能である。従って、目的とするタン ク質を変性等させることなく精製可能であ 、しかも抗体の劣化が起こりにくいため、 製システムを繰り返し利用することができ という利点を有する。また、溶離物質とし 用いられる親水性の有機溶媒は、従来の溶 液(例えば、FLAG(登録商標)の溶離液等)と比 して安価であるため、タンパク質の精製に かるコストを削減することが可能であるこ を見出した。なお、本明細書中、「溶離物 」とは、抗体とタグペプチドとを解離させ 作用を有する物質を意味する。

 さらに、このような重複配列を有するタグ プチドと抗体とを用いると、X線結晶構造解 析のための高品質な組換えタンパク質を、一 段階の精製操作で十分量得ることができるこ とを見出した。タンパク質の結晶化のために は極めて精製度の高い、化学的に均一な、し かも生物活性を100%保ったタンパク質をミリ ラムオーダーで調製する必要があるが、本 明の技術は、X線結晶構造解析のためのタン ク質の調製に好適なものである。
 さらに、このような重複配列を有するタグ プチド及び抗体を、タンパク質の検出や定 に利用することができることを見出した。 発明者はさらに研究を重ね、本発明を完成 せるに至った。

 すなわち、本発明は以下の(1)~(16)に関する
(1)下記式(I);
X 1 -Tyr-X 2 -Gly-Gln-X 3    (I)
(式中、X 1 、X 2 及びX 3 は、同一又は異なって、任意のアミノ酸残基 を表す。)で表わされるアミノ酸配列を有す タグペプチド。
(2)下記式(II);
(X 1 -Tyr-X 2 -Gly-Gln-X 3 )n   (II)
(式中、X 1 、X 2 及びX 3 は、同一又は異なって、任意のアミノ酸残基 を表す。nは、2~6の整数を表す)で表わされる ミノ酸配列を有するタグペプチド。
(3)式(II)で表わされるアミノ酸配列が、下記 (III);
(Gly-Tyr-Pro-Gly-Gln-Val))m   (III)
(式中、mは、3~5の整数を表す)である前記(2)に 記載のタグペプチド。
(4)下記式(IV);
(Tyr-X 2 -Gly-Gln)   (IV)
(式中、X 2 は任意のアミノ酸残基を表す。)で表わされ アミノ酸配列を2箇所以上有する前記(1)に記 のタグペプチド。
(5)前記(1)~(4)のいずれかに記載のタグペプチ が結合したタグペプチド融合タンパク質。
(6)前記(1)~(4)のいずれかに記載のタグペプチ をコードするポリヌクレオチド。
(7)前記(6)に記載のポリヌクレオチドを含む組 換えベクター。
(8)前記(1)~(4)のいずれかに記載のタグペプチ に対する抗体。
(9)配列番号3で表わされるアミノ酸配列を有 る重鎖可変部及び配列番号5で表わされるア ノ酸配列を有する軽鎖可変部を有する前記( 8)に記載の抗体。
(10)配列番号7で表わされるアミノ酸配列を有 る1本鎖抗体である前記(8)に記載の抗体。
(11)マウス-マウス ハイブリドーマP20.1(FERM BP -11061)により産生されるモノクローナル抗体 ある前記(9)に記載の抗体。
(12)下記(i)~(iii)の工程を含む、タンパク質の 製方法。
(i)前記(5)に記載のタグペプチド融合タンパク 質と、該タグペプチド融合タンパク質以外の 物質とを含有する混合物を調製する工程
(ii)前記(i)の工程で得られた混合物に、前記(8 )~(11)のいずれかに記載の抗体を作用させて前 記タグペプチド融合タンパク質と該抗体との 結合物を形成させる工程
(iii)前記(ii)の工程で得られた結合物に溶離物 質を作用させて前記タグペプチド融合タンパ ク質を抗体から遊離させる工程
(13)溶離物質が親水性の有機溶媒である前記(1 2)に記載のタンパク質の精製方法。
(14)下記(i)~(iii)の工程を含む、タンパク質を 出又は定量する方法。
(i)前記(5)に記載のタグペプチド融合タンパク 質を含有する試料を調製する工程
(ii)前記(i)の工程で得られた試料に、前記(8)~( 11)のいずれかに記載の抗体を作用させて前記 タグペプチド融合タンパク質と該抗体との結 合物を形成させる工程
(iii)前記(ii)の工程で得られた結合物を検出又 は定量する工程
(15)マウス-マウス ハイブリドーマP20.1(FERM BP -11061)。
(16)タンパク質を発現、精製、検出、もしく 、定量するためのキットであって、前記(7) 記載の組換えベクター、又は、前記(8)~(11)の いずれかに記載の抗体を含むキット。

 本発明によれば、タグペプチドとタグペ チドに対する抗体の相互作用を利用して、 グペプチドが結合しているタグペプチド融 タンパク質を容易な操作で高純度に精製す ことができる。従って、本発明によれば、 熟練者であってもクローニングされた遺伝 から発現される不安定かつ微量な組換えタ パク質の精製を容易に行うことができる。 た、本発明において精製に用いる溶離物質 比較的安価であり、さらに抗体を繰り返し 用できることから、タンパク質精製のコス を削減できる。さらに、上記タグペプチド それに対する抗体を用いると、タグペプチ が結合したタグペプチド融合タンパク質を 率よく検出及び/又は定量することができる 。

ヒトフィブロネクチンの第9-第10Fn3ドメ イン部分(Fn9-10)のN末端又はC末端に種々の長 のP4ペプチド配列を付加したタグペプチド融 合タンパク質(P4-Fn)を模式的に示した図であ 。 P4配列を付加したヒト成長因子(hGH)と ヒトフィブリノーゲンγ鎖Cドメインとの融合 タンパク質を動物細胞で発現するベクターを 模式的に示した図である。 hGHのミニジーンにつなげたビオチン 配列(BAS)とフィブリノーゲンγ鎖フラグメン ト(γC)の後に、P4配列(6残基)が1、3又は5回繰 返されているコンストラクトを模式的に示 た図である。 P4配列を付加したタグペプチド融合タ パク質(hGH-BAS-γC-P4)をコードするDNA配列の一 及び該タンパク質のアミノ酸配列の一部を した図である。 P4配列を付加したタグペプチド融合 ンパク質(hGH-BAS-γC-P4×3)をコードするDNA配列 一部及び該タンパク質のアミノ酸配列の一 を示した図である。 P4配列を付加したタグペプチド融合 ンパク質(hGH-BAS-γC-P4×5)をコードするDNA配列 一部及び該タンパク質のアミノ酸配列の一 を示した図である。 モノクローナル抗体(P20.1抗体)に対する P4ペプチド又はその部分ペプチドとFnとの融 タンパク質の反応性を、ELISA法によって調べ た結果を示す図である。 P4配列(6残基)中のアミノ酸残基をアラ ンに置換した改変配列をもつタグペプチド/F n融合タンパク質(Ala mutant)のP20.1抗体に対す 反応性を、ELISA法によって調べた結果を示す 図である。 P20.1抗体のP4(20)-Fnに対する親和性を ビアコアによる表面プラズモン共鳴解析に り解析した結果を示す図である。 市販の抗Flag抗体M2のFlag-Fnに対する親 和性を、ビアコアによる表面プラズモン共鳴 解析により解析した結果を示す図である。 P4(C8)ペプチドの部分ペプチドによって P20.1抗体とP4(20)-Fnとの結合が競合的に解離 ること示す実験結果である。 P20.1抗体を用いたウェスタンブロッテ ングによって、P4ペプチド融合タンパク質(P4 (20)-Fn)を検出した結果を示す図である。 ファージディスプレイ法の概略を示す 模式図である。 ファージディスプレイライブラリの作 製のために構築したファージミドを模式的に 示した図である。 P20.1抗体によって認識されるペプチド 列の配列パターンを調べた結果を示す図で る。 P20.1抗体 Fabフラグメントの重鎖可変 のDNA/アミノ酸配列を示した図である。 P20.1抗体 Fabフラグメントの軽鎖可変 のDNA/アミノ酸配列を示した図である。 P20.1抗体のFabフラグメントとP4(C8)ペプ ドとの複合体の結晶の模式図(左)及び結晶 拡大写真である。 P4(C8)ペプチドとP20.1抗体のFabフラグメ トとの結合部付近のX線結晶解析図の拡大図 である。 P20.1抗体の一本鎖Fvフラグメント(scFV) DNA/アミノ酸配列を示した図である。 scFv四量体を発現するコンストラクト 模式図である。 P20.1抗体のFabフラグメントのペプチ 結合能を、P4(20)-Fnを固定化したセンサーチ プを用いたビアコア試験により調べた結果 示す図である。 scFvのペプチド結合能を、P4(20)-Fnを 定化したセンサーチップを用いたビアコア 験により調べた結果を示す図である。 scFv四量体のペプチド結合能を、P4(20 )-Fnを固定化したセンサーチップを用いたビ コア試験により調べた結果を示す図である P4配列を1回繰り返したタグをもつタ グペプチド融合タンパク質の抗体との親和性 を測定した結果を示す図である。 P4配列を3回繰り返したタグをもつタ グペプチド融合タンパク質の抗体との親和性 を測定した結果を示す図である。 P4配列を5回繰り返したタグをもつタ グペプチド融合タンパク質の抗体との親和性 を測定した結果を示す図である。 P20.1抗体を検出抗体として用いたサン イッチELISAにより、P4配列又はその重複配列 を検出した結果を示す図である。 P20.1抗体をキャプチャー抗体として用 たサンドイッチELISAにより、P4配列又はその 重複配列を検出した結果を示す図である。 P20.1抗体固定化ビーズからの、(P4配 ×3)融合タンパク質の溶出条件を検討した結 果を示す図である。 P20.1抗体固定化ビーズからの、(P4配 ×3)融合タンパク質の溶出条件を検討した結 果を示す図である。 F-spondin-(P4配列×3)融合タンパク質をコ ドするDNA配列の一部及び該融合タンパク質 アミノ酸配列の一部を示した図である。 本発明の抗体を固定化したビーズを用 いて精製したF-spondinをSDSゲル電気泳動により 分析した結果を示す図である。 精製F-spondinの結晶の拡大写真である。 分解能1.45Åで得られたF-spondinの電子 度図(部分)である。 リーリンのN末端に(P4配列×3)タグを融 した発現コンストラクトを模式的に示した である。 P20.1抗体カラムで精製したリーリンタ パク質をSDSゲル電気泳動、及びウェスタン ロッティングにより分析した結果を示す図 ある。 4残基(YPGQ)を繰り返したタグ配列を付 したタグペプチド/フィブロネクチン融合タ パク質の発現コンストラクトを模式的に示 た図である。 4残基(YPGQ)を繰り返したタグ配列を付 したタグペプチド/フィブロネクチン融合タ パク質の電気泳動結果を示す図である。 4残基(YPGQ)を1~5回繰り返したタグ配列 付加したタグペプチド/フィブロネクチン融 タンパク質の表面プラズモン共鳴によるキ ティクス解析結果を示した図である。 蛍光タンパク質GFPuvのN末端に(P4配列×3 )タグを付加したタグペプチド融合タンパク の発現コンストラクトを模式的に示した図 ある。 P20.1抗体-セファロースを用いたGFPuvタ パク質の繰り返し精製の結果を示した図で る。

〔タグペプチド〕
 本発明のタグペプチドは、下記式(I);
X 1 -Tyr-X 2 -Gly-Gln-X 3    (I)
(式中、X 1 、X 2 及びX 3 は、同一又は異なって、任意のアミノ酸残基 を表す。)で表わされるアミノ酸配列を有す ものであればよい。
 また、本発明のタグペプチドは、下記式(II) ;
(X 1 -Tyr-X 2 -Gly-Gln-X 3 )n   (II)
(式中、X 1 、X 2 及びX 3 は、同一又は異なって、任意のアミノ酸残基 を表す。nは、2~6の整数を表す)で表わされる ミノ酸配列を有するものであってもよい。

 さらに、本発明のタグペプチドは、上記式( I)で表わされるアミノ酸配列(以下「配列(I)」 ともいう)を有し、かつ下記式(IV);
(Tyr-X 2 -Gly-Gln)   (IV)
(式中、X 2 は任意のアミノ酸残基を表す。)で表わされ アミノ酸配列を2箇所以上有すことが好まし 。
 例えば、配列(I)が2回繰り返されたタグペプ チドでは、式(IV)で表わされるアミノ酸配列( 下、「配列(IV)」ともいう)は、2個のアミノ 残基(X 3 とX 1 )を挟んで2箇所に存在する。一方、配列(IV)が 3回繰り返されたタグペプチドには、X 1 がGlnでX 3 がTyrである配列(I)が1回含まれる。なお、配 (IV)を2箇所以上有するタグペプチドは、配列 (I)を少なくとも1回有するタグペプチドにお て配列(IV)が少なくとも2箇所に存在すればよ く、その間隔や配置は限定されない。

 配列(I)において、X 1 は特に限定されないが、例えば、グリシンが 好ましい。X 2 としては、セリン、バリン、システイン、ア ラニン、トレオニン、グルタミン酸、グリシ ン、アスパラギン酸等の小さい側鎖を有する アミノ酸やプロリンが好ましく、プロリンが より好ましい。X 3 としては、疎水性アミノ酸が好ましい。例え ば、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラ ニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプ トファン、プロリン、メチオニンが挙げられ 、中でもバリンが好ましい。特に好ましい配 列は、Gly-Tyr-Pro-Gly-Gln-Val(配列番号1)である。 お、本発明におけるタグペプチドを構成す アミノ酸は、L-アミノ酸である。

 本発明のタグペプチドは、配列(I)のみか なるものでもよく、配列(I)と配列(I)以外の ミノ酸残基を含むものでもよい。好ましく 、配列(I)を2箇所以上有するものであり、よ り好ましくは、配列(I)を2回以上繰り返した ミノ酸配列を有するものである。配列(I)を2 所以上有する場合、その回数は限定されな 。また、配列(I)を2回以上繰り返したアミノ 酸配列を有する場合も、その繰り返し回数は 限定されない。本発明のタグペプチドは、配 列(I)が繰り返し回数が増加するにつれて、該 タグペプチドに対する抗体との親和性が向上 することが確認されている。本発明のタグペ プチドのアミノ酸残基数の上限は特に限定さ れないが、実用性の点から50残基以下が好ま く、より好ましくは40残基以下、さらに好 しくは30残基以下である。

 本発明のタグペプチドとしては、下記繰り し単位;
Gly-Tyr-Pro-Gly-Gln-Val(配列番号1;「P4配列」とも う)を3~5回繰りかえしたアミノ酸配列を有す タグペプチド、
又は下記繰り返し単位;
Tyr-Pro-Gly-Gln(配列番号18)を3~5回繰りかえした ミノ酸配列を有するタグペプチドが特に好 しい。

 本発明のタグペプチドは、遺伝子工学的 任意のタンパク質と結合させてタグペプチ と任意のタンパク質との融合タンパク質と ることができる。この場合、タグペプチド タンパク質のN末端及びC末端のいずれに結 していてもよい。このようなタグペプチド そのN末端及びC末端に結合したタグペプチド 融合タンパク質は、本発明のタグペプチドと 特異的に結合する抗体を用いて1段階で高純 に精製することができる。また、該抗体を いて検出、定量等することができる。

 本発明のタグペプチドは、任意の物質に 学的に結合させることができる。このよう 本発明のタグペプチドが化学結合した物質 、本発明のタグペプチドと特異的に結合す を用いて簡便かつ高純度に精製することが き、また検出、定量等することができる。 発明のタグペプチドを化学的に結合させる 手の物質は限定されないが、例えば、タン ク質、核酸、糖類、有機高分子、金属など 挙げられる。

〔タグペプチド融合タンパク質〕
 本発明のタグペプチド融合タンパク質は、 記で説明した本発明のタグペプチド(以下、 単に「タグペプチド」ともいう)と任意のタ パク質との融合タンパク質であり、本発明 タグペプチドが任意のタンパク質に結合し 状態で存在するものであればよい。本発明 タグペプチド融合タンパク質において、タ ペプチドはタンパク質のN末端及びC末端のい ずれに結合していてもよい。このようなタグ ペプチドがそのN末端又はC末端に結合したタ ペプチド融合タンパク質は、該タグペプチ と特異的に結合する抗体を用いて1段階で高 純度に精製される。

 本発明のタグペプチド融合タンパク質は、 知の遺伝子組換え技術により製造すること できる。以下に、その概略を説明する。
 まず、本発明のタグペプチドをコードする チヌクレオチドを、公知の方法により合成 る。ポリヌクレオチドとしては、DNA、RNAが げられるが、DNAが好ましい。ポリヌクレオ ドがDNAの場合には、DNA合成機によりDNAを合 することができる。また、DNAは、いくつか 部分に分けて合成した後、それらを連結し もよい。タグペプチドのDNA配列は、遺伝子 号の縮重により多くの種類がありうるが、D NAから発現されるペプチドが本発明のタグペ チドのアミノ酸配列を有することになる限 、特に限定されない。P4配列をコードするDN Aとして、例えば、配列番号9に記載のDNA配列 使用することができる。P4配列を3回繰りか したアミノ酸配列からなるタグペプチドを ードするDNAの一例を配列番号11に、P4配列を 5回繰りかえしたアミノ酸配列からなるタグ プチドをコードするDNAの一例を配列番号13に 、それぞれ示す。

 合成したタグペプチドをコードするDNAの3 ’末端又は5’末端に、目的とするタンパク をコードするDNAを連結する。あるいは、目 とするタンパク質のDNAをPCR等の手法によっ 得る際に、DNAの3’末端又は5’末端のプライ マーにタグペプチドをコードするDNAを使用す ると、タグペプチドをコードするDNAが目的タ ンパク質の遺伝子に連結された遺伝子を、PCR 産物として得ることができる。

 本発明のタグペプチド融合タンパク質に いては、タグペプチドと目的とするタンパ 質との間に、スペーサーペプチドが挿入さ ていてもよい。スペーサーペプチドは、後 する本発明のタグペプチドに対する抗体に 合又は会合しないものであり、かつタグペ チドと該抗体との相互作用の障害とならな ものであればどのようなペプチドでもよい 例えば、プロテアーゼ切断配列を有するペ チド等が挙げられる。スペーサーペプチド 挿入する場合には、タグペプチドをコード るDNAと目的タンパク質をコードするDNAとの にスペーサーペプチドをコードするDNAを連 したDNAを作製する。

 上記のようにDNAを合成した後、得られたタ ペプチド及びタンパク質をコードするDNAを んだDNAを発現ベクターに適宜挿入する。ベ ターとしては、公知の発現ベクター(細菌由 来、酵母由来、ウイルス由来など)を好適に いることができ、特に限定されない。発現 クターに含まれるプロモーターは、発現に いる宿主に対応して適切なプロモーターで ればよい。発現ベクターにはこれ以外に、 ンハンサー、スプライシングシグナル、ポ A付加シグナル、選択マーカー、複製オリジ などを含有しているものを用いることがで る。このように得られた発現ベクターを宿 細胞に導入する。宿主細胞としては特に限 されず、大腸菌、酵母等の微生物;動物細胞 等を用いることができる。好ましい宿主細胞 は、動物細胞である。発現ベクターを宿主細 胞に導入する方法は、公知の形質転換の中か ら宿主細胞に応じて適宜選択して用いればよ い。得られた組換え微生物又は細胞を適当な 培地で培養し、タグペプチドが結合した融合 タンパク質を発現させる。タグペプチドが結 合した融合タンパク質は、組換え微生物若し くは細胞中、又は培養液中から、後述する抗 体を用いて一段階で精製され得る。
 上記タグペプチド融合タンパク質の製造方 において説明した本発明のタグペプチドを ードするポリヌクレオチド及び該ポリヌク オチドを含む組換えベクターも本発明に含 れる。なお、本発明の組換えベクターはタ ペプチドと目的のタンパク質との融合タン ク質(タグペプチド融合タンパク質)を発現 能な組み換えベクターに限定されず、本発 のタグペプチドをコードするポリヌクレオ ドを含むものであればよい。

〔抗体〕
 本発明は、上記本発明のタグペプチドに対 る抗体を提供する。本発明の抗体は、本発 のタグペプチドを認識し、特異的に相互作 する抗体であれば特に限定されない。例え 、配列(I)のN末端から2番目のチロシン、4番 のグリシン及び5番目のグルタミンを認識し 、上記本発明のタグペプチドと相互作用する 抗体が挙げられる。このような抗体としては 、抗体の抗原結合部において、本発明のタグ ペプチド中の配列(I)のチロシンと抗体中のト リプトファンとが疎水性相互作用により相互 作用し、配列(I)のグリシンのα炭素が抗体中 H鎖のTrp50と疎水性相互作用により相互作用 、かつ配列(I)のグルタミンの窒素原子と酸 原子とが、抗体H鎖中の主鎖のカルボニル酸 素及びアミド窒素原子とそれぞれ水素結合す ることにより、タグペプチドと抗体とが相互 作用する抗体が挙げられる。このようなペプ チド-抗体の相互作用におけるアミノ酸残基 具体的な立体配置の一例を示したペプチド- 体結合部位のX線結晶構造解析図を、図16に す。

 上記抗体の具体例として、ヒトトロンビ 受容体PAR4のN末端20残基に相当するペプチド を抗原として、マウス、ウサギ等の哺乳動物 を免疫することにより得られる抗体が挙げら れ、より具体的には、(a)配列番号3で表わさ るアミノ酸配列を有する重鎖可変部及び配 番号5で表わされるアミノ酸配列を有する軽 可変部を有する抗体、又は、(b)配列番号7で 表わされるアミノ酸配列を有する1本鎖抗体 好適に挙げられる。また、(a)の抗体として マウス-マウス ハイブリドーマP20.1(受託番 FERM BP-11061として、独立行政法人産業技術総 合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城 つくば市東1丁目1番1号 中央第6(郵便番号305- 8566))に国際寄託済み。受託日:2007年12月11日) より産生されるモノクローナル抗体が挙げ れる。さらに、該モノクローナル抗体をパ インで消化することにより得られるFabフラ メントも、(a)の抗体に含まれる。(b)の抗体 、(a)の抗体の可変部領域を利用して得られ 1本鎖抗体である。(b)の1本鎖抗体は、遺伝子 組換え技術等により2~4量体として使用するの が好ましい。

 上記(a)の抗体は、例えば、後述する実施例 記載するように、マウス-マウス ハイブリ ーマP20.1(FERM BP-11061)を用いて製造すること できる。なお、本発明の抗体を産生するマ ス-マウス ハイブリドーマP20.1(FERM BP-11061) 、本発明の1つである。
 また、上記(a)及び(b)の抗体は、遺伝子組換 技術によって製造することができる。遺伝 組換え技術により(a)の抗体を製造する場合 は、まず、配列番号4で表わされるアミノ酸 配列をコードするDNA(配列番号3)及び配列番号 6で表わされるアミノ酸配列をコードするDNA( 列番号5)を合成する。また、遺伝子組換え 術により(b)の抗体を製造する場合には、ま 、配列番号8で表わされるアミノ酸配列をコ ドするDNA(配列番号7)を合成する。これらのD NAを適当な発現ベクターに挿入し、該ベクタ を宿主細胞に導入してタンパク質を発現さ る。次に、発現したタンパク質を分離及び 製することによって、上記(a)又は(b)の抗体 得ることができる。

〔タンパク質の精製方法〕
 本発明は、上記本発明の抗体を用いたタン ク質の精製方法を提供する。本発明のタン ク質の精製方法は、以下の(i)~(iii)の工程を む方法であればよい。
(i)本発明のタグペプチド融合タンパク質と、 該タグペプチド融合タンパク質以外の物質と を含有する混合物を調製する工程
(ii)前記(i)の工程で得られた混合物に、本発 の抗体を作用させてタグペプチド融合タン ク質と抗体との結合物を形成させる工程
(iii)前記(ii)の工程で得られた結合物に溶離物 質を作用させてタグペプチド融合タンパク質 を抗体から遊離させる工程
 本発明の抗体は、本発明のタグペプチド融 タンパク質中のタグペプチドと特異的に相 作用することから、該抗体を用いると、本 明のタグペプチド融合タンパク質を一段階 高純度に精製することができる。

 (i)の工程において混合物を調製する方法 、特に限定されない。例えば、目的とする グペプチドが結合したタグペプチド融合タ パク質が細胞中に存在する場合には、培養 た組換え微生物又は細胞を公知の方法によ て溶解又は粉砕等して、タグペプチド融合 ンパク質と該タグペプチド融合タンパク質 外の物質とを含む混合物(細胞溶解液)を得 。タグペプチド融合タンパク質が封入体等 不溶性画分として得られる場合には、(ii)の 程を行う前に、タンパク質の可溶化工程、 溶化したタンパク質の折りたたみ(巻き戻し )工程等を適宜行ってもよい。タグペプチド 合タンパク質が細胞外、すなわち培地中に 泌される場合には、培養液の上清を採取し これを混合物として(ii)の工程に用いる。細 溶解液や培養液上清は遠心分離して固形成 を除去し、必要に応じてpHを中性(7~8)に合わ せるが、その他に塩などを添加する必要は特 にない。また、これら混合物中の目的タンパ ク質の濃度は0.2μg/mL以上であることが好まし い。

 (ii)の工程では、本発明の抗体を担体に固 定化した固定化抗体を用いることが好ましい 。抗体を固定する担体としては、本発明の効 果を奏することになる限り特に限定されず、 公知の担体を用いることができる。例えば、 セファロース(GEヘルスケア社)、アフィゲル(B IO-RAD社)等が好適である。抗体を担体に固定 る方法は、担体の種類等に応じて適宜選択 ればよく、特に限定されない。例えば、セ ァロースを用いる場合には、抗体をカップ ングバッファーで透析し、次いでCNBr活性化 ファロース(GEヘルスケア)と抗体とを室温で 約1~2時間混合することにより、セファロース 固定化抗体を作製することができる。

 本発明のタンパク質の精製方法において 、上記固定化抗体をカラムに充填して使用 るカラム法、試料と混合して懸濁状態で結 させるバッチ法をともに利用できる。前者 場合には、固定化抗体をカラムに充填し、 ラムに工程(i)で調製した混合物を流して本 明の抗体をタグペプチドに作用させる。こ により、タグペプチドと抗体とが結合し、 グペプチド融合タンパク質と抗体との結合 が形成される。後者の場合は、試料溶液10mL あたり100μL程度の固定化抗体を加えて穏やか に混和し、タグペプチド融合タンパク質と抗 体との結合物を形成させてからカラムに充填 する。

 次いで、工程(iii)において、(ii)の工程で得 れた結合物に溶離物質を作用させてタグペ チド融合タンパク質を抗体から遊離させる すなわち、結合物に溶離物質を作用させる とにより抗体とタグペプチドとを解離させ タグペプチドを介して固定化抗体に結合し タグペプチド融合タンパク質を、抗体から 離させる。
 溶離物質としては、本発明のタグペプチド 本発明の抗体との結合を解離させる作用を する物質であればよい。このような物質と て、ポリオールなどの親水性の有機溶媒、 発明のタグペプチドが挙げられる。本発明 タンパク質の精製方法においては、目的と るタンパク質の種類等に応じて溶離物質を 宜選択することができるが、親水性の有機 媒が好ましい。中でも、プロピレングリコ ルとジメチルスルフォキシドが特に好まし 。またエチレングリコールも使用可能であ 。

 タグペプチド融合タンパク質と抗体との 合物に溶離物質を作用させる方法としては 溶離物質を水又は適当な緩衝液と混合して 離液とし、該溶離液をカラムに流す方法が ましい。この場合、溶離液中の溶離物質に り抗体から遊離したタグペプチド融合タン ク質は、溶離液とともにカラムから溶出す 。水又は緩衝液は、タンパク質の種類に応 て選択すればよい。

 溶離液中の溶離物質の含有量は、目的と るタグペプチド融合タンパク質又は溶離物 の種類等により適宜変更するのが好ましい 例えば、溶離物質として親水性の有機溶媒 用いる場合には、水又は緩衝液と親水性の 機溶媒との合計体積を100として、親水性の 機溶媒を約40%(v/v)以上で混合することが好 しく、水又は緩衝液と親水性の有機溶媒と 体積比(水又は緩衝液:親水性の有機溶媒)を 60:40~40:60とすることが好ましい。

 タグペプチドを溶離物質とする場合には 水又は緩衝液中にタグペプチド濃度が約0.1~ 1mg/mLとなるように溶離液を調製することが好 ましい。溶離物質とするタグペプチドとして は、本発明のタグペプチドであれば限定され ないが、配列(I)を含むものが好ましい。本発 明のタグペプチドは、公知のペプチド合成法 によって製造することができる。

 溶離液には、得られるタグペプチド融合タ パク質を安定化させるために塩を添加して よい。塩の種類は、タンパク質の種類等に り選択すればよく、特に限定されない。塩 濃度も、タンパク質の種類に応じて適宜調 すればよく、特に限定されない。
 タグペプチド融合タンパク質を精製した後 固定化抗体は、溶離物質を含む溶離液で洗 することにより、繰り返し使用することが 能である。

 本発明のタンパク質の精製方法は、(i)~(ii i)の工程の後に、さらに(iv)タグペプチド融合 タンパク質からタグペプチドを切断する工程 を含んでいてもよい。例えば、タグペプチド と目的タンパク質との間にプロテアーゼ切断 配列を有するスペーサーペプチドを挿入した 場合には、精製後の融合タンパク質に該プロ テアーゼ切断配列を認識するプロテアーゼを 適当な条件で作用させることにより、タグペ プチドが結合していない目的タンパク質を得 ることができる。

 本発明のタンパク質の精製方法において 、タグペプチドと抗体とが特異的に相互作 し、該相互作用は親水性の有機溶媒等の溶 物質により容易に解離することから、タグ プチドが結合した融合タンパク質を一段階 高純度に精製することができる。また、溶 物質に親水性の有機溶媒等を用いることか 、目的とする融合タンパク質及び抗体を変 させることなく精製することができる。従 て、本発明によれば、X線結晶構造解析のた めの高品質な組換えタンパク質を、一段階の 精製操作で十分量得ることができる。結晶化 のためには極めて精製度の高い、化学的に均 一な、しかも生物活性を100%保ったタンパク をミリグラムオーダーで調製する必要があ が、本発明の技術は、X線結晶構造解析のた のタンパク質の調製に好適である。

 また、本発明のタンパク質の精製方法に いては、固定化抗体を繰り返し精製に用い ことができる。実際に、本発明者は、P20.1 体をセファロースに固定化した固定化抗体 、本発明のタグペプチド融合タンパク質(GFPu v-P4×3融合タンパク質)の精製に繰り返し使用 てその影響を検討したところ、21回繰り返 て使用してもその収量はわずかに低下する 過ぎないことを確認している(実施例の〔10 参照)。しかも溶離物質として用いる親水性 有機溶媒は比較的安価であるため、本発明 タンパク質の精製方法を用いれば、タンパ 質を安価に、かつ簡便に精製することが可 となる。

〔タンパク質を検出又は定量する方法〕
 本発明は、上記本発明の抗体を用いたタン ク質の検出又は定量方法を提供する。本発 のタンパク質を検出又は定量する方法は、 下の(i)~(iii)の工程を含む方法であればよい
(i)本発明のタグペプチド融合タンパク質を含 有する試料を調製する工程
(ii)前記(i)の工程で得られた試料に、本発明 抗体を作用させてタグペプチド融合タンパ 質と抗体との結合物を形成させる工程
(iii)前記(ii)の工程で得られた結合物を検出又 は定量する工程
 本発明の抗体は、本発明のタグペプチド融 タンパク質中のタグペプチドと特異的に相 作用することから、該抗体を用いると、タ ペプチドが結合した融合タンパク質を検出 は定量することができる。
 本発明のタンパク質を検出又は定量する方 は、ウェスタンブロッティング、サンドイ チELISA、フローサイトメトリー、免疫沈降 免疫組織化学等の各種免疫学的手法に適用 ることができる。

 本発明のタンパク質を検出又は定量する 法において、(i)の工程における試料の調製 法は特に限定されず、例えば、目的とする グペプチド融合タンパク質を発現した細胞 溶解又は粉砕することにより、タグペプチ 融合タンパク質を含有する試料を調製する とができる。

 (i)の工程で得られた試料に、(ii)の工程に おいて本発明の抗体を作用させてタグペプチ ド融合タンパク質と抗体との結合物を形成さ せる方法、及び(iii)の工程において結合物を 出又は定量する方法について、サンドイッ ELISA又はウェスタンブロッティングを行う 合を例に挙げて以下に説明する。

(A)サンドイッチELISA
 サンドイッチELISAにおいては、本発明の抗 を検出抗体は又はキャプチャー抗体として いて、タグペプチド融合タンパク質を検出 は定量することができる。

(A-1)本発明の抗体を検出抗体とする場合
(1)予め本発明の抗体を何らかの手段により修 飾又は標識しておく。修飾又は標識手段は特 に限定されず、例えば、ビオチン化、ペルオ キシダーゼ等の酵素標識、フルオレセインな どの蛍光色素標識、125Iなどの放射性同位元 による標識などが挙げられる。
(2)本発明の抗体とは別に、融合タンパク質中 のタグペプチド以外のタンパク質部分と特異 的に相互作用する抗体を用意し、この抗体を マイクロタイタープレートに固相化する。
(3)(2)で固相化した抗体上に、(i)の工程で得ら れた試料を流し、タグペプチド融合タンパク 質を抗体にキャプチャー(捕獲)させる。
(4)次いで、キャプチャーされたタグペプチド 融合タンパク質に、本発明の抗体を作用させ てタグペプチド融合タンパク質と本発明の抗 体との結合物を形成させる。本発明の抗体を 酵素標識して用いた場合には、次に(6)の操作 を行う。
(5)本発明の抗体をビオチン化して用いた場合 には、形成された結合物に酵素標識したスト レプトアビジンを作用させ、抗体中のビオチ ンとストレプトアビジンとを結合させる。
(6)酵素の発色又は発光基質(例えば、ペルオ シダーゼであればABTS)を加える。酵素により 基質が分解されて発色反応産物が得られるた め、試料の吸光度を測定することによりタグ ペプチド融合タンパク質と抗体との結合物を 検出することができる。また、吸光度は試料 中のタグペプチド融合タンパク質量に定量的 に相関することから、融合タンパク質と抗体 との結合物を定量することができる。更に、 この場合に発色基質とともに基質増感剤を併 用することにより、検出感度を上げることが 可能である。

(A-2)本発明の抗体をキャプチャー抗体とする 合
(1)本発明の抗体をマイクロプレート等に固相 化する。
(2)固相化した抗体に、(i)の工程で得られた試 料を加えて抗体にタンパク質をキャプチャー させ、融合タンパク質と抗体との結合物を形 成させる。
(3)形成された結合物に、融合タンパク質中の タグペプチド以外のタンパク質部分と特異的 に相互作用する抗体を作用させ、(2)で形成さ れた結合物とこの抗体とを結合させる。
(4)(3)で作用させた抗体が酵素で標識されてい ない場合には、(3)で加えた抗体と特異的に反 応する抗体(酵素標識抗体:二次抗体)を更に作 用させる。
(5)酵素の基質(通常、発色又は発光基質)を加 、酵素反応の生成物を検出する。

(B)ウェスタンブロッティング
 ウェスタンブロッティングにおいては、以 の方法により、結合物を検出する。
(1)(i)の工程で得られた試料をSDS電気泳動に供 し、タグペプチド融合タンパク質を分離して 、ニトロセルロース膜又はPDVF膜に転写する
(2)膜上の融合タンパク質に、本発明の抗体を 作用させて結合物を形成させる。本発明の抗 体を酵素標識して用いた場合には、次に(4)の 操作を行う。
(3)(2)で作用させた本発明の抗体を酵素で標識 していない場合には、(2)で加えた抗体と特異 的に反応する抗体(酵素標識抗体:二次抗体)を 更に作用させる。
(4)酵素の基質(通常、発色又は発光基質)を加 、酵素反応の生成物を検出する。

 本発明のタグペプチド融合タンパク質及 本発明の抗体は、蛍光抗体法、免疫沈降法 や、検出試薬の開発、細胞イメージング、 ンサー開発等にも応用可能である。

〔キット〕
 本発明は、タンパク質の発現、精製、検出 は定量のためのキットを提供する。本発明 キットは、本発明の組換えベクター又は本 明の抗体を含むものであればよい。本発明 キットを用いることにより、タンパク質の 現、精製、検出又は定量を簡便に行うこと できる。発現用キットには本発明の組換え クターが必須に含まれ、精製、検出又は定 用キットには、本発明の抗体が必須に含ま る。本発明の組換えベクター及び本発明の 体の両方を含むキットとすることが好まし 。

 キットに含まれる組換えベクターは、キ トのユーザーが目的のタンパク質をコード るDNAを組み込むことにより本発明のタグペ チドと目的のタンパク質が結合したタグペ チド融合タンパク質の発現ベクターが作製 きる形態で提供されることが好ましい。ユ ザーは、作製した発現ベクターを適当な宿 細胞に導入して宿主細胞を培養することに り、所望のタグペプチド融合タンパク質を 便に発現させることができる。

 キットに含まれる抗体は、適当な担体に固 化された状態(精製用キットの場合)、適当 標識(酵素標識、放射性標識、蛍光標識等)や 修飾(ビオチン化等)された状態(検出用キット 、定量用キットの場合)が好ましい。本キッ を用いてタンパク質を精製、検出又は定量 る方法は、上記本発明のタンパク質の精製 法、及び本発明のタンパク質を検出又は定 する方法に従えばよい。
 なお、キットには、本発明の組換えベクタ 又は本発明の抗体以外に、二次抗体、反応 緩衝液、基質、使用説明書等の構成を含ん いてもよい。

〔本発明の優位性〕
 本発明のタグシステムは、以下の点で優れ いる。
(I)認識配列が短く、しかも非特異的吸着の原 因となる荷電性のアミノ酸がない。
(II)標的となるタグ配列と、その抗体(P20.1抗 )との相互作用は、タンパク質の1段階精製が 可能な親和性を有する。
(III)(II)の相互作用は、タンパク質に影響を与 えない条件(例えば、40%エチレングリコール )で解離するものであるので、高品質な抗原 製とカラムの繰り返し使用とが同時に可能 ある。
(IV)抗体とタグペプチドとの複合体の原子分 能立体構造を取得しているので、さらなる 変及び改良が可能である。
(V)免疫ブロッティング、蛍光抗体法、免疫沈 降法等にも応用可能であり、タンパク質の精 製だけでなく、検出試薬の開発、細胞イメー ジング、センサー開発等の応用可能性が高い 。
 上記(I)~(V)の中でも、(III)は、これまで市販 び量産されてきた抗体を用いるタンパク質 製システムには全く見られないものである

〔実施例〕
 次に本発明を実施例によって具体的に説明 るが、本発明はこれらに限定されるもので ない。

〔1〕モノクローナル抗体作製
 抗PAR4ペプチド抗体は定法により以下のよう に作製した。
(1-1)ペプチド合成、及びペプチドによる免疫
 ヒトトロンビン受容体PAR4のN末端20残基に相 当する以下の配列のペプチド(配列番号2)をFmo c固相法により合成した。
NH 2 -GGDDSTPSILPAPRGYPGQVC-COOH

 逆相HPLCにより精製した上記ペプチドを、シ ステイン(Cys)残基を介してキャリアータンパ 質であるkeyhole limpet hemocyanin(KLH)に結合さ 、これを免疫原とした。
 上記ペプチド-KLH複合体を、アジュバントと ともにBalb/cマウスに免疫し、ELISA法にて抗体 を測定したところ、25μg×5回の免疫で高い 体価が得られた。このマウスの脾臓細胞を 合に供した。

(1-2)細胞融合、ハイブリドーマ樹立
 上記マウス脾臓細胞よりB細胞を採取し、こ れとマウスミエローマ細胞(SP2/0株)とをポリ チレングリコール法にて融合したのち、HAT 択培地にて培養した。
 コロニーを生じたウェルの上清をELISA法に スクリーニングし、陽性の強かったものを 次スクリーニングにまわした。二次スクリ ニングでは、抗原として後に述べる融合タ パク質(PAR4-Fn)を使用した。その結果、反応 の高い一つのクローンを得た。同クローン 限界希釈法によりクローニングし、最終的 マウス-マウス ハイブリドーマP20.1(受託番 FERM BP-11061として、独立行政法人産業技術総 合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城 つくば市東1丁目1番1号 中央第6(郵便番号305- 8566))に国際寄託済み。受託日:2007年12月11日) 樹立した。

(1-3)抗体の精製、Fabフラグメント、及びセフ ロース固定化抗体の調製
(1)抗体の精製
 1-2で樹立したマウス-マウス ハイブリドー P20.1(FERM BP-11061)を、10%のウシ胎児血清を含 RPMI1640培地にて培養した。この培養上清か プロテインAセファロースを用いてP20.1抗体 精製した。精製抗体のアイソタイプはIgG1、 鎖はλであった。

(2)Fabフラグメント
 P20.1抗体のFabフラグメントは、PIERCE社のImmun opure Fab preparation kitを用いて調製した。す わち、固定化されたパパインによって精製 たP20.1抗体(IgG)を37℃で、16時間消化し、消化 物をプロテインAセファロースにかけて未結 物をさらにゲルろ過によって精製した。

(3)セファロース固定化抗体の調製
 精製したP20.1抗体(約30mg)をカップリングバ ファー(0.1M NaHCO 3 、0.3M NaCl、pH 8.3)で透析した。次いで、この 精製したP20.1抗体と、1mM塩酸で洗ったCNBr-activ ated Sepharose 4B(GEヘルスケア)とを室温で1時間 混合することにより、セファロース固定化抗 体を作製した。未反応の活性基を0.1Mトリス(T ris)によってブロックし、0.1M Gly-HCl、pH2.2で 特異的に結合した抗体を除去した。未結合 抗体の定量結果から、セファロースレジン1m Lあたり約2mgのP20.1抗体を固定化することがで きたことが分かった。

〔2〕タグペプチド融合タンパク質の作製
(2-1)タグペプチド/フィブロネクチン融合タン パク質の作製
 ヒトフィブロネクチンの第9-第10Fn3ドメイン 部分の185残基を発現するコンストラクトを用 い、そのN末端又はC末端に種々の長さのP4ペ チド配列(PAR4のN末端20残基の一部又は全部) 付加した6種類のタグペプチド融合タンパク を作製した(図1の上から6種類)。インサート はextension PCRにて調製し、これを発現ベクタ pET11c(Novagen)のNdeI-BamHIサイトに挿入した。ま た、P4ペプチド配列のC末端側6残基のアミノ をアラニンに置換した変異体(Ala変異体)のコ ンストラクト(図1の下から6種類)を、Quick Chan ge Mutagenesis kit (Stratagen)を用いて作製した。
 上記各コンストラクトを大腸菌BL21(DE3)株に 質転換し、定法に従って発現誘導を行った 生成したタグペプチド融合タンパク質を、 腸菌可溶化物から陰イオン交換クロマトグ フィーによって精製した。

(2-2)ヒト成長因子/ヒトフィブリノーゲン/タ ペプチド融合タンパク質の作製
 ヒト成長因子(hGH)とヒトフィブリノーゲンγ 鎖Cドメインとの融合タンパク質を動物細胞 発現するベクターはすでに報告されている(X iao et al. Nature 432, 59-67, 2004)。この融合タ パク質のコンストラクトのC末端に、P4ペプ ド由来の6残基ペプチド(GYPGQV:P4配列(配列番 1))を1回、3回又は5回繰り返したペプチドを ードするDNAを付加したものをextension PCRで 製した。図2(a)に、P4配列を付加したヒト成 因子(hGH)とヒトフィブリノーゲンγ鎖Cドメイ ンとの融合タンパク質を動物細胞で発現する ベクターを示す。図2(b)には、hGHのミニジー につなげたビオチン化配列(BAS)とフィブリノ ーゲンγ鎖フラグメント(γC)の後に、P4配列(6 基)が1、3又は5回繰り返されているコンスト ラクトを示す。
 P4配列を付加したタグペプチド融合タンパ 質(hGH-BAS-γC-P4)をコードするDNA配列の一部を 列番号15及び図3に示す。なお、配列番号15 示す塩基配列では、P4配列を付加したタグペ プチド融合タンパク質(hGH-BAS-γC-P4)をコード る全DNA5424塩基のうち、1~2100番目の塩基及び3 121~5424番目の塩基は省略している。つまり、 列番号15で表わされるDNA配列は、hGH-BAS-γC-P4 をコードするDNA5424塩基のうちの2101~3120番目 塩基配列である。図3中、下線部は、hGHの配 を表す。シャドウ(影)をかけた箇所は、His グ配列である。斜字体は、リンカー部分を す。太い下線部は、TEVプロテアーゼサイト ある。破線部は、BAS配列である。太字は、P4 タグ部分である。箱で囲んだアミノ酸配列は 、P4配列である。その他は、フィブリノーゲ γC部分である。
 P4配列を3回繰りかえしたアミノ酸配列(P4×3) からなるタグペプチドをコードするDNA配列を 配列番号11に、P4配列を5回繰りかえしたアミ 酸配列(P4×5)からなるタグペプチドをコード するDNA配列を配列番号13に、それぞれ示す。P 4×3配列をコードするDNAを付加したコンスト クトのDNA配列の一部を図4(a)に示す。P4×5配 をコードするDNAを付加したコンストラクト DNA配列の一部を図4(b)に示す。図4(a)に示す塩 基配列では、5460塩基のうち、1~3000番目の塩 部分及び3181~5460番目の塩基部分は省略され いる。図4(b)に示す塩基配列では、5496塩基の うち、1~3000番目の塩基部分及び3181~5496番目の 塩基部分は省略されている。図4(a)及び図4(b) おいて、太字は、P4タグ部分、箱で囲んだ ミノ酸配列はP4配列、その他はフィブリノー ゲンγC部分である。
 作製したプラスミドをヒト線維芽細胞株HEK2 93Tにトランスフェクションし、この細胞を10% のウシ胎児血清を含むDMEM培地にて培養した 得られた培養上清からNi-NTAアガロース(Qiagen) クロマトグラフィーによってヒト成長因子/ トフィブリノーゲン/タグペプチド融合タン ク質を精製した。このタグペプチド融合タ パク質の検出には、マウス抗hGHモノクロー ル抗体HGH-B(American Type Culture Collection)及び オチン化配列(BAS)に対する抗血清(ウサギ)を 用いた。

〔3〕モノクローナルP20.1抗体の性状解析
(3-1)エピトープの解析
 P20.1抗体によって認識される必要最小のペ チド配列を、2-1で作製した各種のP4-Fnタンパ ク質に対するELISA法にて調べた。プロトコー は以下のとおりである。
(1)10μg/mLに希釈したP4-Fn(又はその変異体)溶液 50μLを96wellプレートに加えて静置した(4℃、16 時間)
(2)アスピレーターで吸引し、1%BSA in Tris-buffe red saline (TBS; 20mM Tris-HCl, 150mM NaCl, pH7.5)を 200μL/well加えて室温で1時間静置した。
(3)2-5μg/mLのP20.1抗体を50μL加えて室温で1時間 置した。
(4)200μL/wellのTBSで3回洗浄した。
(5)ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG(1/1000希 )を50μL加えて室温で30分静置した。
(6)200μL/wellのTBSで4回洗浄した。
(7)ペルオキシダーゼ発色基質(ABTS)を100μL/well 加え、室温で5~10分静置後、各well中の溶液 405nmの吸光度を測定した。

 ELISAの結果、P4ペプチドはFnのN末端に融合 させてもC末端に融合させてもP20.1抗体によっ て認識されることが分かった。P4ペプチドをF nのN末端に融合させた5種類のタグペプチド融 合タンパク質のELISAの結果を図5に示す。この 結果から、認識にはP4ペプチドのC末端側の6 基の部分(GYPGQV:P4配列(配列番号1))だけで十分 であることが分かった。また、この6残基を1 ずつAlaに変えた変異体について同様に調べ 結果を図6に示す。図6中、コントロールは コーティングなし、WTはP4(20)-Fnをコートした ウェルの値を、それぞれ表わす。G、Y、P、G Q及びVは、これらの各アミノ酸をそれぞれア ラニンに置換した改変融合タンパク質を表す 。図6から明らかなように、Y2、G4及びQ5は必 であるが、G1、P3又はV6はAlaに変えても反応 が残っていることが分かった。

(3-2)P20.1抗体の結合親和性
 P20.1抗体のP4ペプチド配列への結合における 親和性を調べるため、ビアコアによる表面プ ラズモン共鳴解析を行った。2-1で精製したP4( 20)-Fn(図1参照)をビオチン化し、ストレプトア ビジン固定化センサーチップで捕捉した後、 精製P20.1抗体を種々の濃度で流した。結果を 7及び表1に示す。P20.1抗体は、P4(20)-Fnに対し て見かけ上の解離平衡定数約3.4nMという親和 を示した。市販のFlag抗体であるM2と、タグ してFlag(DYKDDDDV(配列番号19))を使用したFlag(DY KDDDDV(配列番号19))-Fnとの親和性を同様に解析 ると、解離平衡定数2.7nMという値が得られ 。

(3-3)ペプチドによる競合的解離
 P20.1抗体の結合が過剰の遊離ペプチドによ て解離できるかどうかを調べるため、P4(20)-F nタンパク質を用いる3-1のELISA実験において最 後の洗浄の際に種々の濃度のP4(C8)ペプチド(PR GYPGQV(配列番号20)の8残基ペプチド、Fmoc法で合 成)を含む緩衝液中で30分反応させた。図8に した結果から、0.1mg/mLの濃度のペプチドによ って、ほぼ完全に解離が引き起こされること がわかった。

(3-4)P20.1抗体のウェスタンブロッティングへ 応用
 2-1で精製したP4(20)-Fn(0.12-0.87pmol/lane)をSDS電 泳動で分離し、PDVF膜に転写後、1μg/mLのP20.1 体と反応させ、続いてペルオキシダーゼ標 抗マウスIgGとケミルミネッセンス基質によ て検出した。結果を図9に示す。図9から明 かなように、P20.1抗体は約0.2pmolのP4ペプチド 融合タンパク質をウェスタンブロッティング で検出できることがわかった。

〔4〕P20.1抗体によって認識されるペプチド配 列のランダムスクリーニング
(4-1)ファージディスプレイライブラリの作製
 P20.1抗体によって認識されるペプチド配列 さらに大規模に探索するため、ファージデ スプレイ法を用いた。図10にファージディス プレイ法の概略を示す。M13ファージのgIIIコ トタンパク質のN末端にランダム化した7アミ ノ酸(ただしそのうちTyr2とGln5は固定)のライ ラリーを挿入するべく、図11に示すファージ ミドの構築を行い、10 7 の多様性を持つライブラリーを作製した。

(4-2)P20.1抗体反応性クローンの選択
 P20.1抗体を固定化した磁気ビーズパニング より、多数の結合クローンを得た。これら クローンの可変部の配列をDNAシークエンシ グにより解読し、図12に示すような配列パタ ーンを得た。この結果から、N末端から2番目 チロシン(Tyr2ともいう)、4番目のグリシン(Gl y4ともいう)及び5番目のグルタミン(Gln5ともい う)の要求性とともにN末端から3番目のプロリ ン(Pro3ともいう)の高い選択性が示されたが、 6番目の部位は疎水性アミノ酸なら許容され こと、そして1及び7番目のアミノ酸残基には 特に強い選択性のないことがわかった。すな わちP20.1抗体は、一般に下記ペプチド配列に 和性が高いことがわかった。
X1-Tyr2-Pro3-Gly4-Gln5-X6
(上記ペプチド配列中、X1は、任意のアミノ酸 残基を表す。Pro3はS、V、C、A、T、E、G、D等の 小さい側鎖をもつアミノ酸でも可であり、X6 疎水性アミノ酸であれば可である。)

〔5〕P20.1抗体のFabフラグメント-ペプチド複 体のX線結晶解析
(5-1)P20.1抗体の可変部のアミノ酸配列決定
ハイブリドーマからDNAクローニング
 構造決定に必要なP20.1抗体 Fabフラグメント の正確なアミノ酸配列を決定するため、マウ ス-マウス ハイブリドーマP20.1(FERM BP-11061)か ら、Total RNA Isolation System(Promega)を用いて全R NAを抽出し、22.7ng/μLの濃度で100μLを得た。こ れをテンプレートに用い、Mouse Ig-Primer Set(No vagen)を用いてRT-PCRを行った。その産物の中で 、増えたものをpDrive Cloning Vector(QIAGEN PCR Cl oning Kit)とライゲーションし、大腸菌DH5aを形 質転換した。これをLBプレート(アンピシリン 、X-gal及びIPTG添加)に播き、コロニーを得た

 得られたDNAクローンについて、可変部に いてはRT-PCRに使用したプライマーを用いてD NA配列を決定した。また、その配列を基に内 プライマーを設計し、定常部についても順 配列決定を行った。その結果得られたDNA/ア ミノ酸配列を配列表の配列番号3及び5、並び 図13及び14に示す。配列番号3及び図13は、P20 .1抗体Fabフラグメントの重鎖可変部のDNA/アミ ノ酸配列であり、配列番号5及び図14は、軽鎖 可変部のDNA/アミノ酸配列である。

(5-2)複合体の結晶化
 1-3で調製したP20.1抗体のFabフラグメント28μL (10mg/mL in 5mM Tris、50mM NaCl、pH7.4)と4μLのP4(C8 )ペプチド溶液(10mg/mL)とを混合して一晩静置 た。結晶化は Emerald Biostructures社のWizard I IIキットを用い、ハンギングドロップ法によ り合計96条件での結晶化を試みた。その結果 20%(w/v)PEG3000を含む100mM酢酸緩衝液(pH4.5)の条 で柱状の結晶が見られたため、その周辺でP EG3000の濃度を振って最適な条件を模索し、最 終的に23%PEGに決定した。得られたタンパク質 の結晶を図15に示す。図15において、左の円 は、P20.1抗体のFabフラグメントとP4(C8)ペプチ ドとの複合体の結晶の模式図であり、右が結 晶の拡大写真である。

(5-3)構造決定
 5-2で得た結晶を用い、放射光施設Spring-8の ームラインBL-44XUを用いて1.8Åの分解能でX線 結晶構造解析を行った。データの統計値を表 2に示す。

 得られたデータを元に、分子置換法を用 て立体構造の決定を行った。分子置換法の ンプレートとしては、P20.1抗体と同じIgG1で 鎖がλであるMonoclonal Antibody 2D12.5 Fab Comple xed with Gd-DOTA (PDB ID:1NC4)を用いた。その結 、単位格子中の2分子のFabの配置を決めるこ ができた。

 位相の改良と構造の精密化のために、5-1 決定したP20.1抗体の一次構造を利用した。 の一次構造のデータと分子置換法の解を用 て、ARP/wARPで自動モデリングを行い、結果と して、884残基中の736残基のモデルを構築し、 さらにそのうちの650残基の側鎖の構造もアサ インすることができた。改良されたマップに 対して、モデルのフィッティングを行い、構 造の精密化を行った。統計値は表3の通りで る。

 電子密度を観察した結果、非対称単位中 2分子のFab双方にペプチドが結合しているこ とが分かった。どちらも信頼性の高いモデル が組めたのは、P4(C8)ペプチドのうち、C末側 GYPGQV(P4配列、配列番号1)に対応する部分であ った。2つの複合体のうち一方の全体構造と 原認識部位のクローズアップを図16に示す。 明らかになった立体構造から、認識ペプチド 配列の特異性(Tyr2、Gly4、Gln5の要求性)の理由 極めて明らかになった。

 本発明の抗体によるペプチド抗原(本発明の タグペプチド)認識の構造化学的基盤が原子 標により特定されたことは、タンパク質工 的手法によって以下の2つのことを可能にす 機会が与えられたことになる。
(A)認識能力をそのままに保ったままで抗体に 他の性質を賦与する。
(B)現在のものより特異性や親和性を望ましい ものに改変する。
具体的には、タグ認識に関与しないアミノ酸 残基を改変して特異的な標識を可能にしたり 、コアとなる上記の認識部分の外側に存在す る抗体側、ペプチド側のアミノ酸残基を改変 して新たな相補性を導入し、より強く結合す る抗体やより長い特定のペプチドを優先的に 結合する抗体を創出することが可能である。

〔6〕P20.1抗体由来scFvの作製
(6-1)コンストラクトの作製、発現及び精製
 マウス-マウス ハイブリドーマP20.1(FERM BP-1 1061)由来のP20.1抗体だけでなく、簡便に組換 発現及び精製のできる試薬として利用する め、同抗体の一本鎖Fvフラグメント(scFv)を作 製した。5-1で同定したP20.1抗体の可変部のア ノ酸配列を利用して配列番号7及び図17に示 ような配列の発現コンストラクトを構築し pET11cベクター及び大腸菌BL21株を用いてscFv 発現させた。scFvは封入体として得られるた 、不溶性分画から塩酸グアニジンによって 解させ、Ni-NTAレジンにより精製した後、段 透析によって巻き戻しを行った。1L培養液 ら約2mgのscFvを得た。

 scFvは一価のため結合力が弱い。そこでscF vの下流にストレプトアビジンを融合した組 えタンパク質を作製し、ストレプトアビジ が四量体化する性質を利用して実質的な親 性の向上を図った。図18に示すコンストラク トを用いてscFvのときと同様にタンパク質の 現及び精製を行い、4量体のscFv(tetra-scFv)を得 た。

(6-2)scFvの活性
 調製したscFv抗体及びtetra-scFv抗体のペプチ 結合能を、P4(20)-Fn固定化センサーチップを いたビアコア試験により調べた。比較のた に、Fabフラグメントについても同様にビア ア試験に供した。Fabフラグメント、scFv抗体 及びtetra-scFv抗体の結果を、それぞれ図19(a) (b)及び(c)に示す。図19(a)、(b)及び(c)から明 かなように、scFv抗体はFabフラグメントとほ 同様な結合活性を示し、scFvであるにも関わ らず抗原結合能の低下はないことが確認され た。また、tetra-scFv抗体は、ほとんど解離が られず、もとのIgG分子(P20.1抗体)をも遙かに 駕する強い結合能を獲得した。

〔7〕P4配列(GYPGQV(配列番号1))重複によるP20.1 体の実効親和性の向上
(7-1)表面プラズモン共鳴によるキネティクス 析
 P20.1抗体に対する実効親和性の向上を目指 、P4配列を1、3又は5回繰り返した重複配列タ グ(それぞれP4×1、P4×3、及びP4×5と呼ぶ)をも タグペプチド融合タンパク質を作製した(2-2 参照)。これらを、P20.1抗体を固定化したセン サーチップ上に流速20μL/分で流し、ビアコア X-100(GEヘルスケア社)でキネティクス解析を行 った。P4配列を1回繰り返したタグをもつ融合 タンパク質の結果を図20(a)に、P4配列を3回繰 返したタグをもつ融合タンパク質の結果を 20(b)に、P4配列を5回繰り返したタグをもつ 合タンパク質の結果を図20(c)に、それぞれ示 す。P4配列を1回しか持たないもの(図20(a))はP2 0.1抗体に対して極めて弱い親和性しか持たな かったが、複数回重複させたものは最大結合 能で4倍以上の増大が見られた。P4×3(図20(b)) 対して、P4×5(図20(c))はさらなる結合能の増 が見られ、この効果がP4配列(6残基)の繰り返 し回数に依存することが明らかとなった。

(7-2)サンドイッチELISA系の構築
7-2-1:P20.1抗体を検出抗体として用いる場合
 抗hGHモノクローナル抗体HGH-Bをマイクロタ タープレートに固相化し、ブロッキング後 P4×1、P4×3、又はP4×5が結合しているhGH-γC-P4 合タンパク質(図3及び図4並びに配列番号15 参照)を一過性発現した細胞の上清を種々の 釈率で加えて融合タンパク質を4℃で一晩キ ャプチャーさせた。洗浄後、ビオチン化した P20.1抗体(5μg/mL)を室温で30分反応させ、3回洗 後にペルオキシダーゼ標識ストレプトアビ ン(Zymed)を加えてさらに室温で15分静置し、 ルオキシダーゼ基質(ABTS)を加えて405nmの吸 度を測定した。結果を図21に示す。図21に示 たように、P4配列(6アミノ酸)1回だけでは1/3 釈以上の濃度の上清で弱いシグナルが認め れるに留まったのに対し、P4×3(18アミノ酸) はP4×5(30アミノ酸)の重複配列を融合したタ パク質では1/30希釈以上の上清で濃度依存的 なシグナルが認められた。

7-2-2:P20.1抗体をキャプチャー抗体として用い 場合
 P20.1抗体を10μg/mLでマイクロタイタープレー トに固相化し、ブロッキング後7-2-1と同様にh GH-γC-P4融合タンパク質をキャプチャーした。 検出にはBAS配列に対するウサギ抗血清(1:100希 釈)とペルオキシダーゼ標識抗ウサギIgG二次 体とを用いた。結果を図22に示す。図22に示 たように、このケースでもP4配列を繰り返 たタグ付加によって十分な検出感度が得ら た。

(7-3)P20.1抗体固定化ビーズを用いたタグペプ ド融合タンパク質のプルダウン効率
 P4×1、P4×3、又はP4×5をもつ3種類のhGH-γC-P4 合タンパク質をHEK293T細胞で発現させ、その 清の該融合タンパク質濃度をサンドイッチE LISA(P20.1抗体への反応性に依存しない、hGH抗 キャプチャー+抗BAS血清検出システムを使用) にて定量した(プルダウン前)。さらに、この 清1mLに対して20μLのP20.1抗体-セファロース( ーズ状)を加えて4℃、1時間反応させた。遠 によりビーズを沈降させ、上清中のhGH-γC-P4 融合タンパク質をサンドイッチELISA(P20.1抗体 の反応性に依存しない、hGH抗体キャプチャ +抗BAS血清検出システムを使用)にて定量し (プルダウン後)。標準物は別にNi-NTAアガロー スにて精製したものを使用し、検量線を書い てP20.1抗体プルダウン前後の融合タンパク質 度を見積もった。結果を表4に示す。表4か 明らかなように、P4配列の3~5回の繰り返しに よって80%程度の結合効率が得られることがわ かった。

〔8〕P20.1抗体固定化ビーズを用いたP4重複配 タグ付きタンパク質の精製
(8-1)溶出条件
 P4×3タグ付きhGH融合タンパク質を発現する 胞の培養上清8mLに、100μLのP20.1抗体-セファ ース(0.2mg P20.1抗体相当、ビーズ状)を混和し 、4℃で3時間反応させた。反応後のビーズを3 mLのTris-buffered saline (TBS、20mM Tris-HCl、150mM N aCl、pH 7.5)で洗浄した後、以下に示すような 離液を300μL加え、室温で10分混和した。溶 物を濃縮後、それぞれの等量をSDSゲル電気 動で分析した。比較のためにNi-NTAビーズと 結合を同じ条件で行い、イミダゾールで溶 したものも同時に分析した。

番号 溶離液
(1)0.1mg/mL P4(C8)ペプチド in TBS
(2)1mg/mL P4(C8) ペプチド in TBS
(3)0.1M グリシン-塩酸、pH2.2
(4)50mM トリエタノールアミン(in TBS)、pH11.5
(5)2M ヨウ化カリウム(in TBS)
(6)40%(v/v)プロピレングリコール+1M 塩化ナト ウムin TBS
(7)40%(v/v)プロピレングリコール+1M ヨウ化カ ウムin TBS
(8)TBS

 結果を図23(a)に示す。なお、上記番号は 図23(a)のレーン番号である。また、NiはNi-NTA ーズからの溶出物である。図23(a)に示した うに、結合したタグ付き融合タンパク質は0. 1mg/mL以上のペプチド濃度で溶出するだけでな く、プロピレングリコールと塩化ナトリウム との組み合わせによっても完全に溶出した。 モノクローナル抗体を用いたアフィニティー クロマトグラフィーでしばしば用いられるい くつかの溶離条件(pH2.2の酸性条件、高濃度の 沃化物イオンのようなカオトロピックイオン )では全く溶出せず、pH11.5の塩基性条件での 出も部分的であった。従って、タグペプチ が結合した融合タンパク質は、穏やかな条 で溶出することが分かった。また、Ni-NTAビ ズからの溶出物(右端のレーンNi)と比べると P20.1抗体ビーズからの溶出物には不純物が 切なく、1段階で極めて高純度の精製が達成 れていることがわかった。

 さらに、以下の溶離液を用いて同様の実験 行った。
番号 溶離液
(1)TBS
(2)0.5mg/mL P4(C8) ペプチド in TBS
(3)20%(v/v)プロピレングリコール in TBS
(4)30%(v/v)プロピレングリコール in TBS
(5)40%(v/v)プロピレングリコール in TBS
(6)60%(v/v)プロピレングリコール in TBS
(7)40%(v/v)エチレングリコール in TBS
(8)40%(v/v)DMSO in TBS
 結果を図23(b)に示す。なお、上記番号は、 23(b)のレーン番号である。図23(b)に示した結 から、プロピレングリコールの濃度は40%以 が好ましく、また高濃度のNaClは必要ないこ とも明らかとなった。

(8-2)結晶化品質のF-spondin組換えタンパク質の 製
 胎児期の脳における軸索ガイダンスをつか どるタンパク質であるF-spondinをP4×3タグ配 と融合し、P20.1抗体セファロースによる精製 を行った。発現コンストラクトは、マウスナ イトジェン(nidogen)のシグナル配列にP4×3配列( 18残基)をつなぎ、TEVプロテアーゼ切断配列(7 基)をはさんでF-spondinのN末端ドメイン146ア ノ酸部分を融合した。作製したF-spondin組換 タンパク質をコードするDNA配列6045塩基中の 901~1560番目の塩基配列を配列番号16及び図24 示す。配列番号16及び図24においては、1~900 び1561~6045番目の塩基配列は省略されている また、配列番号16のDNA配列がコードする組 えタンパク質のアミノ酸配列を配列番号16及 び17並びに図24に、それぞれ示す。なお、F-spo ndinをコードするDNA塩基配列は、例えば、Miyam oto et al. Arch. Biochem. Biophys. 390(1), 93-100, 2 001等に記載されている。

 上記のコンストラクトを用いてHEK293T細胞 によるタグペプチド/F-spondin融合タンパク質 一過性発現を行い、1週間後に400mLの培養上 を得た。これを2mLのP20.1抗体-セファロース 吸着させ、TBSで洗浄したのち、40%プロピレ グリコール及び1M NaClを含む緩衝液で溶出さ せ、SDSゲル電気泳動に供した。結果を図25に す。図25において、レーン1:マーカー、レー ン2:発現培養上清、レーン3及び4:洗浄分画、 ーン5~8:溶出分画である。図25から明らかな うに、P20.1抗体-セファロースに吸着させ、4 0%プロピレングリコール及び1M NaClを含む緩 液で溶出させることにより、タグペプチド/F -spondin融合タンパク質のみが特異的に溶出し 。

 精製したF-spondinタンパク質を濃縮後に結 化スクリーニングにかけたところ、0.1M Tris  pH8.5、0.2M trimethylamine n-oxide dihydrate、20% PE G2000という条件で良好な単結晶が得られた。 26に精製F-spondinの結晶の拡大写真を示す。 れを用いて高エネルギー研究所のビームラ ンAR-NW12AにてX線結晶回折実験を行い、1.85Å 解能のデータを取得した。図27に示すよう 、極めて明瞭な電子密度マップが得られ、 常1日~数週間かかるモデル構築はわずか1時 で終了した。未知であったF-spondinのN末端ド インの立体構造が明らかになったとともに P20.1抗体とP4×3タグの組み合わせを用いた高 品質タンパク質精製が非常に優れたものであ ることを証明した。

(8-3)巨大タンパク質リーリンの精製
 リーリンはほ乳類の脳の発生に必須な巨大 胞外タンパク質であり、分子量400kDa以上と う巨大さと不安定さの故にこれまで世界的 も精製に成功した例はない。このリーリン N末端にP4×3タグを融合した発現コンストラ トを作製した。図28に、リーリンのN末端に( P4配列×3)タグを融合した発現コンストラクト を示す。

 図28のコンストラクトを用いてHEK923T細胞 よってタグペプチド/リーリン融合タンパク 質の一過性発現を行い、800mLの培養上清を得 。F-spondinのときと同様にP20.1抗体-セファロ スを用いて精製し、最終的に約30μgのタン ク質を得た。得られたタンパク質をSDSゲル 気泳動及びウェスタンブロッティングによ 分析した結果を図29に示す。図29中、Rは還元 条件を表し、NRは非還元条件を表す。図29か 明らかなように、SDSゲル電気泳動において 非還元条件では分子量1000万以上の巨大な多 体として存在することが確認され、還元条 下では430及び330kDaの主要なバンドと170kDa以 のいくつかのフラグメントが観察された。 リーリン抗体とP20.1抗体とを用いたウェス ンブロッティングの結果、これらは全て全 リーリン、あるいはその部分分解フラグメ トであることが示され、95%以上の純度をも 組換えリーリンタンパク質を1段階で精製で ることがわかった。

〔9〕YPGQ(配列番号18)の4残基を繰り返したタ 配列の有効性
(9-1)タグペプチド/フィブロネクチン融合タン パク質の作製
 P20.1抗体による認識の最小単位であるYPGQ(配 列番号18)の4残基を繰り返したタグ配列を付 したタグペプチド/フィブロネクチン融合タ パク質を作製した。具体的には、図30に示 ように、コンストラクトをHis-X(n)-Fn(ただしn 繰り返しの回数)と命名し、繰り返し回数1~5 回の種類のコンストラクトを作製した。これ らのコンストラクトを大腸菌BL21(DE3)株に形質 転換し、定法に従って発現誘導を行った。生 成したタグペプチド/フィブロネクチン融合 ンパク質をNi-NTAアガロースを用いて精製し 。図31に精製したタンパク質の電気泳動像を 示す。

(9-2)表面プラズモン共鳴によるキネティクス 析
 9-1により得られたYPGQ(配列番号18)の4残基配 を1,2,3,4,5回繰り返した重複配列タグ(X(1)、X( 2)、X(3)、X(4)及びX(5)と呼ぶ)をもつタグペプチ ド/フィブロネクチン融合タンパク質を、P20.1 抗体を固定化したセンサーチップ上に流速20 L/minで流し、ビアコア2000(GEヘルスケア社)で ネティクス解析を行った。結果を図32に示 。図32からわかるように、P4配列(6残基)を繰 返したときと同様に、4残基配列の繰り返し によっても結合能の増大が認められた。特に 、5回繰り返したX(5)タグにおいてはP4×3より 高い親和性(解離定数10nM)を示すことが明ら となった。

〔10〕P20.1抗体-セファロースの繰り返し使用 影響
(10-1)タグペプチド/GFPuv融合タンパク質の作製
 蛍光タンパク質GFPuvのN末端にP4×3タグ配列 付加したタグペプチド/GFPuv融合タンパク質 発現コンストラクトを作製した(図33参照)。 ンサートはextension PCRにて調製し、発現ベ ターpET16b(Novagen)のNcoI-BamHIサイトに挿入した このコンストラクトを大腸菌BL21(DE3)株に形 転換し、定法に従って発現誘導を行ったの 、大腸菌可溶化物を調製した。

(10-2)P20.1抗体-セファロースを用いたタグペプ チド/GFPuv融合タンパク質の繰り返し精製
 10-1で調製したタグペプチド/GFPuv融合タンパ ク質を含む大腸菌可溶化物0.25mLを、0.5mLのP20. 1抗体-セファロースにアプライし、4℃で20分 置した後、2mLのTris-buffered saline (TBS, 20mM T ris-HCl, 150mM NaCl, pH 7.5)で洗浄した。続いて 2.5mLの溶出液(40% (v/v) propylene glycol/TBS)で溶 出し、さらに5mLのTBSで洗浄した。この一連の 精製サイクルを、21回行った。それぞれの溶 画分に含まれるGFPuvの量を、励起波長390nm/ 光波長510nmの蛍光値を測定することで見積も った。

 結果を図34に示す。図34から明らかなよう に、結合して溶出されるタグペプチド/GFPuv融 合タンパク質の量は溶出/再生のサイクルで とんど変化せず、21回のサイクルの後でもそ の収量は最大でも10%程度低下したにすぎなか った。このことは、溶出の後になんらかの変 性条件でレジンを再生させる必要のある多く の市販のシステムに比べ、プロピレングリコ ールによる溶出を用いる本システムが、長期 /多数回使用を可能にする極めて経済的なも であることを示している。

 なお、本発明は上述した各実施形態及び 施例に限定されるものではなく、請求項に した範囲で種々の変更が可能であり、異な 実施形態にそれぞれ開示された技術的手段 適宜組み合わせて得られる実施形態につい も本発明の技術的範囲に含まれる。また、 明細書中に記載された学術文献及び特許文 の全てが、本明細書中において参考として 用される。

産業上の利用の可能性

 本発明のタグペプチド、タグペプチド融 タンパク質及びタグペプチドに対する抗体 、組換えタンパク質を、容易な操作で高純 に、しかも安価に精製できるシステムに使 できるものとして有用である。また、本発 のタンパク質の精製方法は、組換えタンパ 質を容易な操作で高純度に、しかも安価に 製できる方法として有用である。本発明の ンパク質を検出又は定量する方法は、組換 タンパク質を効率よく検出又は定量するこ ができる方法として有用である。