Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
THERMOPLASTIC ACRYLIC RESIN COMPOSITION
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/130883
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a thermoplastic acrylic resin composition comprising a methacrylic resin (A) and a polyvinyl acetal resin (B). In the resin composition, the polyvinyl acetal resin (B) is produced by acetalizing a polyvinyl alcohol resin with an aldehyde having 4 or more carbon atoms and an aldehyde having 3 or less carbon atoms, the total number of vinyl alcohol units acetalized with an aldehyde having 4 or more carbon atoms and an aldehyde having 3 or less carbon atoms makes up 65 to 85 mol% of the total number of all repeating units, and the ratio of the quantity of a vinyl alcohol unit acetalized with an aldehyde having 4 or more carbon atoms to the quantity of a vinyl alcohol unit acetalized with an aldehyde having 3 or less carbon atoms is 90/10 to 0/100 by mole. Also disclosed is a molded article comprising the thermoplastic acrylic resin composition. Further disclosed is a method for producing a thermoplastic acrylic resin composition, which comprises the steps of: mixing a methacrylic resin (A) with a polyvinyl acetal resin (B); rising the temperature of the resin mixture to 160˚C or higher; and cooling the resin mixture to 120˚C or lower.

Inventors:
TOKUCHI KAZUKI (JP)
TSUJI WATARU (JP)
MORIGUCHI NOBUHIRO (JP)
HIGASHIDA NOBORU (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/001808
Publication Date:
October 29, 2009
Filing Date:
April 21, 2009
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
KURARAY CO (JP)
TOKUCHI KAZUKI (JP)
TSUJI WATARU (JP)
MORIGUCHI NOBUHIRO (JP)
HIGASHIDA NOBORU (JP)
International Classes:
C08L33/10; C08L29/14
Foreign References:
JP2001207010A2001-07-31
JP2004091493A2004-03-25
JP2003040653A2003-02-13
Other References:
See also references of EP 2284221A4
JOURNAL OF POLYMER SCIENCE PART B, POLYMER PHYSICS, vol. 25, 1987, pages 1459
MACROMOLECULES, vol. 34, 2001, pages 4277
J. IND. ENG. CHEM., vol. 8, no. 6, 2002, pages 530
Attorney, Agent or Firm:
KIKUMA, TADAYUKI (JP)
Tadayuki Kikuma (JP)
Download PDF:
Claims:
 メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを含有するアクリル系熱可塑性樹脂組成物であって、
 ポリビニルアセタール樹脂(B)がポリビニルアルコール樹脂を炭素数4以上のアルデヒドと炭素数3以下のアルデヒドとでアセタール化して得られたものであり、
 炭素数4以上のアルデヒドおよび炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位の合計が全繰返し単位に対して65~85モル%であり、且つ
 炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位/炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル比が90/10~0/100であるアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
 ポリビニルアセタール樹脂(B)は、炭素数4以上のアルデヒドおよび炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位の合計が全繰返し単位に対して70~85モル%であり、且つ
 炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位/炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル比が40/60~0/100である請求項1に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
 メタクリル系樹脂(A)が連続相を形成している請求項1または2に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
 メタクリル系樹脂(A)の主分散ピーク温度(Tα A )とポリビニルアセタール樹脂(B)の主分散ピーク温度(Tα B )との間に、90℃≦Tα B ≦Tα A または90℃≦Tα A ≦Tα B の関係を持つ請求項1~3のいずれか1項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
 アクリル系熱可塑性樹脂組成物におけるメタクリル系樹脂(A)に起因する主分散ピーク温度(Tα AP )と、メタクリル系樹脂(A)の主分散ピーク温度(Tα A )と、ポリビニルアセタール樹脂(B)の主分散ピーク温度(Tα B )との間に、Tα AP <Tα A 、又はTα AP <Tα B の関係を持つ請求項1~4のいずれか1項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
 アクリル系熱可塑性樹脂組成物の、メタクリル系樹脂(A)に起因する主分散ピーク温度Tα AP とポリビニルアセタール樹脂(B)に起因する主分散ピーク温度Tα BP との間にTα AP =Tα BP の関係を持つ請求項1~4のいずれか1項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
 アクリル系熱可塑性樹脂組成物におけるメタクリル系樹脂(A)に起因する主分散ピーク温度Tα AP およびポリビニルアセタール樹脂(B)に起因する主分散ピーク温度Tα BP と、メタクリル系樹脂(A)の主分散ピーク温度Tα A と、ポリビニルアセタール樹脂(B)の主分散ピーク温度Tα B との間に、Tα B <Tα AP =Tα BP <Tα A またはTα A <Tα AP =Tα BP <Tα B の関係を持つ請求項1~4のいずれか1項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
 メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)との質量比(A)/(B)が99/1~51/49である請求項1~7のいずれか1項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
 メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が40000以上である請求項1~8のいずれか1項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
 ポリビニルアルコール樹脂は、粘度平均重合度が200~4000である請求項1~9のいずれか1項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
 四酸化ルテニウムで電子染色したときに透過型電子顕微鏡にて観察される、染色された分散相の平均径が50nm以下である請求項1~10のいずれか1項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
 JIS K 7136に準拠して、厚さ4mmの試験片で測定した際のヘイズが0.3%以下である請求項1~11のいずれか1項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
 請求項1~12のいずれか1項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。
 メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを混合し、樹脂温度160℃以上にまで昇温し、次いで樹脂温度120℃以下に冷却する工程を含む請求項1~12のいずれか1項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物の製法。
 メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを、樹脂温度140℃以上で溶融混練し、次いで樹脂温度120℃以下に冷却する工程を含む請求項1~12のいずれか1項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物の製法。
Description:
アクリル系熱可塑性樹脂組成物

 本発明は、改善された靭性を持つ透明な 形体が得られるアクリル系熱可塑性樹脂組 物に関し、特に延伸した時、折り曲げた時 しくは衝撃を受けた時に白化しない成形体 得られるアクリル系熱可塑性樹脂組成物に する。また、本発明は、靭性と耐衝撃性若 くは剛性とのバランスに優れた透明な成形 が得られるアクリル系熱可塑性樹脂組成物 関する。

 ポリメタクリル酸メチルを主体とする熱 塑性重合体(メタクリル系樹脂)は透明性(可 光領域における全光線透過率が高いこと)お よび表面硬度に優れた特性を有しているため 様々な分野で使用されている。ところが、こ のメタクリル系樹脂は用途により機械的特性 、特に耐衝撃性や靭性が不足することがあり 、その改善が求められている。

 機械的特性を改善する方法として、エマ ジョン重合により合成されたゴム層とメタ リル系樹脂層とからなるコア-シェル型粒子 を、ポリメタクリル酸メチルを主体とする熱 可塑性重合体(メタクリル系樹脂)にブレンド る方法が一般に用いられている。しかし、 の方法により得られた組成物からなる成形 は、耐衝撃性の改善がみられるものの靭性 改良は不十分であり、しかも、ゴム成分の 合により、表面硬度の低下、剛性の低下お び耐熱性の低下を引き起こす。また、引張 応力や折り曲げ応力等がかかった際に応力 中部が白化することがある。さらに、衝撃 加わったり、長時間湿熱条件下に放置され 場合に白化することがある。該白化によっ 、透明性が失われ、成形体の有する意匠性 高級感が損なわれやすい。

 メタクリル系樹脂の靭性を改善する他の 法として、メタクリル酸メチルにガラス転 温度を低下させる他のモノマーを共重合す 方法が提案されている。しかし、この方法 は剛性および耐熱性が大幅に低下するとい 問題がある。

 メタクリル系樹脂に他のポリマーをブレン することにより得られるメタクリル系樹脂 成物が提案されている。
 メタクリル系樹脂にブレンドする他のポリ ーとして、例えば、特定組成のスチレン-ア クリロニトリル共重合体、ポリ塩化ビニル、 ポリフッ化ビニリデンなどのポリマーが提案 されている。しかし、これらポリマーのブレ ンドでは靭性を十分に改良することができて いない。

 ポリエチレンオキサイドをブレンド用ポ マーとして用いることが提案されている。 のポリエチレンオキサイドは、ポリメタク ル酸メチルとの混和性に優れ、靭性の改善 期待できるが、ガラス転移温度が低いため ブレンド物の剛性・耐熱性の低下が避けら ない。

 また、靭性・耐熱性・透明性のバランス 改良することが期待できるポリマーとして リカーボネートが挙げられている。ビスフ ノールAのポリカーボネートとポリメタクリ ル酸メチルとの透明な組成物は、例えば、ポ リメタクリル酸メチルとポリカーボネートと をテトラヒドロフランに溶解し、その溶液を ヘプタンに添加して沈殿させ、該沈殿物をポ リメタクリル酸メチルおよびポリカーボネー トのガラス転移温度以上で熱処理することに よって得られると報告されている。しかし、 該組成物からなる成形体は表面硬度が低く、 組成物の調製に溶剤を使用するため、溶剤除 去に大きなエネルギーを必要とし、生産性が 低い。また、ポリカーボネートとポリメタク リル酸メチルとを溶融混練する方法も報告さ れている。しかし、溶融混練によって得られ た組成物は、ポリカーボネートとポリメタク リル酸メチルとが相分離して、真珠光沢を有 した不透明成形体になる(非特許文献1)。

 ポリメタクリル酸メチルと相溶する可能性 あるポリマーとしてポリビニルブチラール 挙げられる。
 メタクリル酸メチル樹脂とポリビニルブチ ールとを混合して得られるものは、それら 相溶性が弱いために、通常、相分離した2相 構造となるが、上記混合において分子量の低 いメタクリル酸メチル樹脂を用いた場合には 両者は相溶して単一相になる可能性があると 、非特許文献2は述べている。非特許文献2の 5にはビニルアルコール単位を様々な量で含 有するポリビニルブチラール50質量部とメタ リル酸メチル樹脂50質量部とのブレンド物 溶媒に溶解して、キャスト成形して得られ フィルムの光学顕微鏡観察像が示されてい 。このフィルムはメタクリル酸メチル樹脂 様々な大きさの分散相となった相分離構造 有しているものであった。

 非特許文献3には、重量平均分子量12万の リメタクリル酸メチルと、ポリビニルブチ ールとを様々な割合で溶融混練してブレン 物を得たことが記載されている。ポリビニ ブチラールの割合が多いブレンド物は、引 試験における破断時伸びが大きくなり、降 挙動が観察され、靭性が改良されると、非 許文献3に記載されている。しかし、非特許 文献3に記載のポリビニルブチラールの割合 多いブレンド物は力学物性が不十分であっ 。一方、ポリビニルブチラールが50質量%未 で混合されたブレンド物は、靭性の改良効 がほとんど見られず、力学物性も不十分で った。

 さらに、特許文献1には、メタクリル系共 重合体ブロックとアクリル系重合体ブロック とを含有するブロック共重合体、及び可塑化 ポリビニルアセタール樹脂からなる樹脂組成 物が開示されている。この樹脂組成物は、二 枚のガラス板を接着するために用いられ、大 気との接触による白化現象が抑えられている ものであると特許文献1に記載されている。 かし、この樹脂組成物は可塑剤を大量に使 しているため表面硬度が非常に低く、力学 性も不十分である。

特開2003-40653号公報

Journal of Polymer Science PART B, Polymer Phys ics, Vol.25,1459 (1987) Macromolecules, Vol.34, 4277 (2001) J. Ind. Eng. Chem., Vol.8, No.6, 530 (2002)

 本発明の目的は、メタクリル系樹脂が本来 している透明性、高い表面硬度・高剛性・ 候性・耐熱性などの特長を保持しつつ、且 靭性の改良されたアクリル系熱可塑性樹脂 成物を提供することであり、特に延伸した 、折り曲げたり若しくは衝撃が加わったり た際に白化しないアクリル系熱可塑性樹脂 成物を提供することである。
 また、本発明のもうひとつの目的は、剛性 耐衝撃性若しくは靭性とのバランスに優れ 透明な成形体が得られるアクリル系熱可塑 樹脂組成物を提供することである。

 本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意 討した結果、メタクリル系樹脂と特定のポ ビニルアセタール樹脂とを含有するアクリ 系熱可塑性樹脂組成物は、メタクリル系樹 が本来有している透明性、高い表面硬度・ 剛性・耐候性・耐熱性などの特長を保持し つ、且つ靭性および耐衝撃性が良好である とを見出した。そして、このアクリル系熱 塑性樹脂組成物から得られる成形体は、延 したり、折り曲げたり若しくは衝撃を与え りしても、白化しないことを見出した。本 明はこれらの知見に基づいてさらに検討し 完成するに至ったものである。

 すなわち、本発明は、メタクリル系樹脂(A) ポリビニルアセタール樹脂(B)とを含有する クリル系熱可塑性樹脂組成物であって、
 ポリビニルアセタール樹脂(B)がポリビニル ルコール樹脂を炭素数4以上のアルデヒドと 炭素数3以下のアルデヒドとでアセタール化 て得られたものであり、
 炭素数4以上のアルデヒドおよび炭素数3以 のアルデヒドでアセタール化されたビニル ルコール単位の合計が全繰返し単位に対し 65~85モル%であり、且つ
 炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化さ れたビニルアルコール単位/炭素数3以下のア デヒドでアセタール化されたビニルアルコ ル単位のモル比が90/10~0/100であるアクリル 熱可塑性樹脂組成物である。

 本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は メタクリル系樹脂が本来有している透明性 高表面硬度、高剛性、耐候性、耐熱性など 特長を保持しつつ、且つ靭性や耐衝撃性が 好である。
 このアクリル系熱可塑性樹脂組成物からな 成形体は、延伸したり、折り曲げたり若し は衝撃を与えたりしても白化しない。さら 、本発明の成形体は、メタクリル系樹脂が 来有している透明性、高表面硬度、高剛性 耐候性、耐熱性などの特長を保持しつつ、 つ靭性や耐衝撃性が良好である。
 このような特長を有する本発明のアクリル 熱可塑性樹脂組成物およびその成形体は、 り広範囲の用途に使用することができる。

 以下、本発明を詳細に説明する。
 本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセター 樹脂(B)とを含有するものである。

 本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は アルキルメタクリレートを含有する単量体 合物を重合することによって得られる。
 アルキルメタクリレートとしては、メチル タクリレート、エチルメタクリレート、プ ピルメタクリレート、イソプロピルメタク レート、n-ブチルメタクリレート、sec-ブチ メタクリレート、tert-ブチルメタクリレー 、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタ リレート、オクチルメタクリレート、2-エチ ルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタク リレート、ミリスチルメタクリレート、パル ミチルメタクリレート、ステアリルメタクリ レート、ベヘニルメタクリレート、シクロヘ キシルメタクリレート、フェニルメタクリレ ートなどが挙げられる。これらのアルキルメ タリレートは1種単独で又は2種以上を組み合 せて用いることができる。これらのうち、 ルキル基の炭素数が1~4であるアルキルメタ リレートが好ましく、メチルメタクリレー が特に好ましい。

 単量体混合物にはアルキルメタクリレート 外にアルキルアクリレートが含まれていて よい。
 アルキルアクリレートとしては、メチルア リレート、エチルアクリレート、プロピル クリレート、イソプロピルアクリレート、n -ブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレー 、tert-ブチルアクリレート、ペンチルアク レート、ヘキシルアクリレート、オクチル クリレート、2-エチルヘキシルアクリレート 、ドデシルアクリレート、ミリスチルアクリ レート、パルミチルアクリレート、ステアリ ルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シ クロヘキシルアクリレート、フェニルアクリ レートなどが挙げられる。これらのうち、ア ルキル基の炭素数が1~8であるアルキルアクリ レートが好ましい。これらのアルキルアクリ レートは1種単独で若しくは2種以上を組み合 せて用いることができる。

 また、前記の単量体混合物には、アルキル タクリレート及びアルキルアクリレートに 重合可能な他のエチレン性不飽和単量体が まれていてもよい。
 アルキルメタクリレート及びアルキルアク レートに共重合可能なエチレン性不飽和単 体としては、1,3-ブタジエン、イソプレンな どのジエン系化合物;スチレン、α-メチルス レン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレ 、ハロゲンで核置換されたスチレン、1-ビ ルナフタレン、4-メチルスチレン、4-プロピ スチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ド デシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレ 、4-(フェニルブチル)スチレンなどのビニル 芳香族化合物;アクリロニトリル、メタクリ ニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル ;アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミ 、メタクリルアミド、無水マレイン酸、マ イン酸イミド、モノメチルマレエート、ジ チルマレエートなどを挙げることができる これらのエチレン性不飽和単量体は1種単独 で若しくは2種以上を組み合わせて用いるこ ができる。

 本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は アルキルメタクリレート単位の割合が、耐 性の観点から、50~100質量%であることが好ま しく、80~99.9質量%であることがより好ましい
 また、耐熱性の観点から、メタクリル系樹 (A)は0.1~20質量%の範囲でアルキルアクリレー ト単位を含有することが好ましい。

 本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は 強度特性および溶融性の点から、重量平均 子量(Mwと表記、以下同じ)が、好ましくは40, 000以上、より好ましくは40,000~10,000,000であり 特に好ましくは80,000~1,000,000である。
 本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は 分子鎖が、線状を成したものであっても良 し、分岐を有するものであっても良いし、 状構造を有するものであっても良い。

 本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A) 、エチレン性不飽和化合物を重合させるこ ができる方法であれば特にその製法によっ 制限されないが、ラジカル重合によって製 されたものが好ましい。重合法としては、 状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合な が挙げられる。

 重合時に用いられるラジカル重合開始剤 しては、アゾビスイソブチロニトリル、ア ビスγ-ジメチルバレロニトリルなどのアゾ 合物;ベンゾイルパーオキサイド、クミルパ ーオキサイド、オキシネオデカノエート、ジ イソプロピルパーオキシジカーボネート、t- チルクミルパーオキサイド、クメンヒドロ ーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサ ド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メ ルエチルケトンパーオキサイド、ジクミル ーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド どの過酸化物が挙げられる。重合開始剤は 全単量体100質量部に対して通常0.05~0.5質量部 用いられる。重合は、通常50~140℃の温度で、 通常2~20時間で行われる。

 メタクリル系樹脂(A)の分子量を制御する めには、連鎖移動剤を使用することができ 。連鎖移動剤としては、メチルメルカプタ 、エチルメルカプタン、イソプロピルメル プタン、n-ブチルメルカプタン、t-ブチルメ ルカプタン、n-ヘキシルメルカプタン、n-オ チルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン 、エチルチオグリコエート、メルカプトエタ ノール、チオ-β-ナフトール、チオフェノー 等が挙げられる。連鎖移動剤は、全単量体 対し通常0.005~0.5質量%の範囲で使用できる。

 本発明に用いられるポリビニルアセター 樹脂(B)は、ポリビニルアルコール樹脂を炭 数4以上のアルデヒドと炭素数3以下のアル ヒドとでアセタール化して得られたもので る。

 ポリビニルアセタール樹脂(B)は、例えば、 1で表される樹脂である。
 化1中、R 3 はアセタール化反応に用いた炭素数3以下の ルデヒドのアルキル残基または水素原子、R 4 はアセタール化反応に用いた炭素数4以上の ルデヒドのアルキル残基(なお、アルキル残 R 3 およびR 4 の炭素数は、アセタール化反応に用いたアル デヒドの炭素数から1を引いた整数iとなる。i がゼロのときはR 3 は水素原子である。)、k 3 は炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化 れたビニルアルコール単位のモル割合、k 4 は炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化 れたビニルアルコール単位のモル割合、lは セタール化されていないビニルアルコール 位のモル割合、mは酢酸ビニル単位のモル割 合である。ただし、mはゼロであってもよい 各単位は、化1に示す配列順序によって特に 限されず、ランダムに配列されていてもよ し、ブロック状に配列されていてもよいし テーパー状に配列されていてもよい。

 ポリビニルアセタール樹脂(B)の製造に用 られるポリビニルアルコール樹脂は、粘度 均重合度が通常200~4,000、好ましくは300~3,000 より好ましくは500~2,500である。ポリビニル ルコール樹脂の粘度平均重合度が200未満で ると、得られるポリビニルアセタール樹脂 力学物性が不足し、本発明のアクリル系熱 塑性樹脂組成物の力学物性、特に靭性や耐 撃性が不足する傾向がある。一方、ポリビ ルアルコール樹脂の粘度平均重合度が4,000 超えると本発明のアクリル系熱可塑性樹脂 成物を作製する際の粘度が高くなり、本発 のアクリル系熱可塑性樹脂組成物の製造が 難になる傾向がある。特に、本発明のアク ル系熱可塑性樹脂組成物を溶融混練で作製 る場合にその傾向が顕著となる。

 ポリビニルアルコール樹脂は、その製法 よって特に限定されず、例えば、ポリ酢酸 ニル等をアルカリ、酸、アンモニア水等に りけん化することにより製造されたものが げられる。ポリビニルアルコール樹脂は、 全けん化されたものであってもよいが、部 的にけん化されたもの(すなわち、部分けん 化ポリビニルアルコール樹脂)であってもよ 。けん化度は、80モル%以上が好ましく、97モ ル%以上がさらに好ましい。本発明のアクリ 系熱可塑性樹脂組成物を溶融混練で作製す 場合には、けん化度99.5モル%以上のものを用 いることが特に好ましい。

 また、上記ポリビニルアルコール樹脂と て、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹 脂や部分けん化エチレン-ビニルアルコール 重合体樹脂などのビニルアルコールとビニ アルコールに共重合可能なモノマーとの共 合体を用いることができる。さらに、一部 カルボン酸等が導入された変性ポリビニル ルコール樹脂を用いることができる。これ ポリビニルアルコール樹脂は、1種単独で若 くは2種類以上を組み合わせて用いてもよい 。

 ポリビニルアセタール樹脂(B)の製造に用 られる炭素数3以下のアルデヒドとしては、 例えば、ホルムアルデヒド(パラホルムアル ヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセト アルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド 挙げられる。これら炭素数3以下のアルデヒ は1種単独で若しくは2種以上を組み合わせ 用いることができる。これら炭素数3以下の ルデヒドのうち、製造の容易さの観点から アセトアルデヒドおよびホルムアルデヒド( パラホルムアルデヒドを含む)を主体とする のが好ましく、アセトアルデヒドが特に好 しい。

 ポリビニルアセタール樹脂(B)の製造に用 られる炭素数4以上のアルデヒドとしては、 ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、 n-オクチルアルデヒド、アミルアルデヒド、 キシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2 -エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシ アルデヒド、フルフラール、グリオキザー 、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド 2-メチルベンズアルデヒド、3-メチルベンズ ルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、p-ヒ ドロキシベンズアルデヒド、m-ヒドロキシベ ズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド β-フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げ れる。これら炭素数4以上のアルデヒドは1 単独で若しくは2種以上を組み合わせて用い ことができる。これら炭素数4以上のアルデ ヒドのうち、製造の容易さの観点から、ブチ ルアルデヒドを主体とするものが好ましく、 ブチルアルデヒドが特に好ましい。

 本発明に用いられるポリビニルアセタール 脂(B)は、炭素数4以上のアルデヒドおよび炭 素数3以下のアルデヒドでアセタール化され ビニルアルコール単位の合計が、力学物性 観点から、全繰返し単位に対して、65~85モル %、好ましくは70~85モル%、より好ましく80~85モ ル%である。アセタール化されたビニルアル ール単位の合計が全繰返し単位に対して65モ ル%を下回ると、本発明のアクリル系熱可塑 樹脂組成物の力学物性、特に靭性と耐衝撃 が不足する。一方、85モル%を超えるポリビ ルアセタール樹脂を製造する場合には非常 長い時間を要するため、経済的に不利であ 。なお、繰返し単位のモル%は、ポリビニル セタール樹脂の製造原料であるポリビニル ルコール樹脂中の主鎖の炭素2個からなる単 位(例えば、ビニルアルコール単位、酢酸ビ ル単位、エチレン単位など)を一繰返し単位 して計算されたものである。例えば、化1に 示すポリビニルアセタール樹脂では、全繰返 し単位(k 3 +k 4 +l+m)に対する、炭素数3以下のアルデヒドでア セタール化されたビニルアルコール単位のモ ル%(k (AA) )が、式: k 3 /(k 3 +k 4 +l+m)×100 によって求められ、炭素数4以上の ルデヒドでアセタール化されたビニルアル ール単位のモル%(k (BA) )が、式: k 4 /(k 3 +k 4 +l+m)×100 によって求められ、アセタール化さ れていないビニルアルコール単位のモル%(k (VA) )が、式: l/(k 3 +k 4 +l+m)×100 によって求められ、酢酸ビニル単位 のモル%(k (AV) )が、式: m/(k 3 +k 4 +l+m)×100 によって求められる。

 本発明に用いられるポリビニルアセタール 脂(B)は、力学物性の観点から、炭素数4以上 のアルデヒドでアセタール化されたビニルア ルコール単位/炭素数3以下のアルデヒドでア タール化されたビニルアルコール単位のモ 比が、90/10~0/100、好ましくは80/20~0/100、より 好ましくは50/50~0/100、特に好ましくは40/60~1/99 である。
 このようなポリビニルアセタール樹脂を用 ることで、メタクリル系樹脂が本来有して る透明性、高表面硬度、高剛性、耐候性、 熱性などの特長を保持しつつ、且つ靭性や 衝撃性が良好なアクリル系熱可塑性樹脂組 物を得ることができる。

 また、本発明に用いられるポリビニルアセ ール樹脂(B)は、炭素数4以上のアルデヒドお よび炭素数3以下のアルデヒドでアセタール されたビニルアルコール単位の合計が70~85モ ル%である場合、または炭素数4以上のアルデ ドでアセタール化されたビニルアルコール 位/炭素数3以下のアルデヒドでアセタール されたビニルアルコール単位のモル比が40/60 ~0/100である場合に、靭性や耐衝撃性などが向 上する。
 さらに、炭素数4以上のアルデヒドおよび炭 素数3以下のアルデヒドでアセタール化され ビニルアルコール単位の合計が70~85モル%で 且つ炭素数4以上のアルデヒドでアセタール されたビニルアルコール単位/炭素数3以下 アルデヒドでアセタール化されたビニルア コール単位のモル比が40/60~0/100である場合に は、靭性や耐衝撃性などがさらに向上するの で好ましい。

 ポリビニルアルコール樹脂のアルデヒドに るアセタール化反応は、公知の方法で行う とができる。例えば、ポリビニルアルコー 樹脂の水溶液とアルデヒドとを酸触媒の存 下でアセタール化反応させて樹脂粒子を析 させる水媒法;ポリビニルアルコール樹脂を 有機溶媒中に分散させ、酸触媒の存在下でア ルデヒドとアセタール化反応させ、この反応 液をポリビニルアセタール樹脂に対して貧溶 媒である水等により析出させる溶媒法などが 挙げられる。これらのうち水媒法が好ましい 。
 アセタール化に用いられるアルデヒドは、 べてを同時に仕込んでも良いし、1種類づつ を別々に仕込んでも良い。アルデヒドの添加 順序および酸触媒の添加順序を変えることで 、ポリビニルアセタール樹脂中のビニルアセ タール単位のランダム性を変化させることが できる。

 アセタール化に用いられる酸触媒は特に 定されず、例えば、酢酸、p-トルエンスル ン酸等の有機酸類;硝酸、硫酸、塩酸等の無 酸類;炭酸ガス等の水溶液にした際に酸性を 示す気体、陽イオン交換体や金属酸化物等の 固体酸触媒などが挙げられる。

 ポリビニルアセタール樹脂の総アセタール 度は、JIS K6728(1977年)に記載の方法に則って 、アセタール化されていないビニルアルコー ル単位の質量割合(l 0 )および酢酸ビニル単位の割合(m 0 )を滴定によって求め、アセタール化された ニルアルコール単位の質量割合(k 0 )をk 0 =1-l 0 -m 0 によって求め、これからアセタール化されて いないビニルアルコール単位のモル割合(l)お よび酢酸ビニル単位のモル割合(m)を計算し、 k=1-l-mの計算式によりアセタール化されたビ ルアルコール単位のモル割合(k)を計算し、 アセタール化度(mol%)=k/{k+l+m}×100によって求 ても良いし、ポリビニルアセタール樹脂を 水素化ジメチルスルフォキサイドに溶解し 1 H-MMR、または 13 C-NMRを測定して算出しても良い。

 また、 1 H-MMRまたは 13 C-NMRを測定して算出する方法を用いることに り、それぞれのアルデヒド(1)、(2)、・・・ および(n)に対するアセタール化されたビニ アルコール単位のモル割合を算出できる。 して、例えば、アルデヒド(n)によるアセタ ル化度(mol%)は、式: k (n) /{k (1) +k (2) +・・・+k (n) +l+m}×100 によって求めることができる。なお 、k (1) 、k (2) 、・・・、およびk (n) は、それぞれ、アルデヒド(1)、(2)、・・・、 および(n)でアセタール化されたビニルアルコ ール単位のモル割合である。

 ブチルアルデヒドでアセタール化されたビ ルアルコール単位のモル割合は特にブチラ ル化度と呼ばれる。また、アセトアルデヒ でアセタール化されたビニルアルコール単 のモル割合は特にアセトアセタール化度と ばれる。さらに、ホルムアルデヒドでアセ ール化されたビニルアルコール単位のモル 合はホルマール化度と呼ばれる。
 例えば、ポリビニルアルコール樹脂をブチ アルデヒド、アセトアルデヒドおよびホル アルデヒドでアセタール化して得られたポ ビニルアセタール樹脂において、ブチルア デヒドでアセタール化されたビニルアルコ ル単位のモル割合をk (BA) 、アセトアルデヒドでアセタール化されたビ ニルアルコール単位のモル割合をk (AA) 、ホルムアルデヒドでアセタール化されたビ ニルアルコール単位のモル割合をk (FA) 、アセタール化されていないビニルアルコー ル単位のモル割合をl、および酢酸ビニル単 のモル割合をmであるとしたとき、ブチラー 化度は、式:k (BA) /{k (BA) +k (AA) +k (FA) +l+m}×100 で求められる。アセトアセタール化 度は、式:k (AA) /{k (BA) +k (AA) +k (FA) +l+m}×100 で求められる。ホルマール化度は、 式:k (FA) /{k (BA) +k (AA) +k (FA) +l+m}×100 で求められる。

 水媒法及び溶媒法等において生成したスラ ーは、通常、酸触媒によって酸性を呈して る。酸触媒を除去する方法として、該スラ ーの水洗を繰り返し、pHを通常5~9、好まし は6~9、さらに好ましくは6~8に調整する方法; スラリーに中和剤を添加して、pHを通常5~9 好ましくは6~9、さらに好ましくは6~8に調整 る方法;アルキレンオキサイド類等を添加す 方法などが挙げられる。
 上記酸触媒除去のために用いる化合物とし は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カ ウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、 酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアル リ金属化合物やアンモニア、アンモニア水 液が挙げられる。また、アルキレンオキサ ド類としては、エチレンオキサイド、プロ レンオキサイド;エチレングリコールジグリ シジルエーテル等のグリシジルエーテル類が 挙げられる。

 次に中和により生成した塩、アルデヒドの 応残渣などを除去する。除去方法は特に制 されず、脱水と水洗を繰り返すなどの方法 通常用いられる。
 残渣等が除去された含水状態のポリビニル セタール樹脂は、必要に応じて乾燥され、 要に応じてパウダー状、顆粒状あるいはペ ット状に加工され、成形材料として供され 。パウダー状、顆粒状あるいはペレット状 加工される際に、減圧状態で脱気すること よりアルデヒドの反応残渣や水分などを低 しておくことが好ましい。

 本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)お びポリビニルアセタール樹脂(B)は、メタク ル系樹脂(A)の主分散ピーク温度(Tα A )とポリビニルアセタール樹脂(B)の主分散ピ ク温度(Tα B )との間に、90℃≦Tα B ≦Tα A または90℃≦Tα A ≦Tα B の関係を持つものが好ましく、95℃≦Tα B ≦Tα A または95℃≦Tα A ≦Tα B の関係を持つことがさらに好ましく、110℃≦ Tα B ≦Tα A または110℃≦Tα A ≦Tα B の関係を持つものが特に好ましい。Tα A またはTα B が90℃を下回ると、本発明のアクリル系熱可 性樹脂組成物の耐熱性が低下する傾向とな 。

 メタクリル系樹脂(A)として二つ以上のメタ リル系樹脂を組み合わせて用いた場合は、 の組み合わせたもののうちのいずれか一つ 主分散ピーク温度をTα A とし、ポリビニルアセタール樹脂(B)として二 つ以上のポリビニルアセタール樹脂を組み合 わせて用いた場合は、その組み合わせたもの のうちのいずれか一つの主分散ピーク温度を Tα B とする。
 なお、主分散ピーク温度(Tα)は、動的粘弾 測定によって求めることができる。例えば 株式会社レオロジー製DVE RHEOSPECTOLER DVE-V4を 用いて、長さ20mm×幅3mm×厚さ120~200μmの試験片 を正弦波振動10Hz、昇温速度3℃/min.の条件に いて測定した損失正接(tan δ)から求めるこ ができる。主分散ピーク温度(Tα)は、損失正 接(tan δ)の主分散のピークを示す温度である 。広義にはガラス転移温度(Tg)と呼ばれるこ がある。

 本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物 、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタ ル樹脂(B)との質量比(A)/(B)が、通常99/1~1/99で あり、好ましくは99/1~51/49であり、より好ま くは95/5~60/40であり、特に好ましくは90/10~60/4 0である。ポリビニルアセタール樹脂(B)の割 が1質量%を下回ると、本発明のアクリル系熱 可塑性樹脂組成物の靭性・耐衝撃性などの力 学物性の改善効果が低下傾向になる。一方、 ポリビニルアセタール樹脂(B)の割合が99質量% を上回ると、本発明のアクリル系熱可塑性樹 脂組成物の表面硬度(および剛性)が不足する 向になる。

 本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物の 分散ピーク温度には、アクリル系熱可塑性 脂組成物中のメタクリル系樹脂(A)に起因す 主分散ピーク温度(Tα AP )と、アクリル系熱可塑性樹脂組成物中のポ ビニルアセタール樹脂(B)に起因する主分散 ーク温度(Tα BP )とがある。

 本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物で 、アクリル系熱可塑性樹脂組成物中のメタ リル系樹脂(A)に起因する主分散ピーク温度T α AP 、メタクリル系樹脂(A)の主分散ピーク温度(T A )、およびポリビニルアセタール樹脂(B)の主 散ピーク温度(Tα B )の間に、Tα AP <Tα A 、又はTα AP <Tα B の関係を満たしていることが好ましい。
 さらに、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂 成物では、アクリル系熱可塑性樹脂組成物 のメタクリル系樹脂(A)に起因する主分散ピ ク温度Tα AP が、メタクリル系樹脂(A)の主分散ピーク温度 (Tα A )とポリビニルアセタール樹脂(B)の主分散ピ ク温度(Tα B )との中間の値を示すことが好ましい。すな ち、Tα B <Tα AP <Tα A 、又はTα A <Tα AP <Tα B の関係を満たしていることが好ましい。この ような関係を満たすTα AP を持つ本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成 物は、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセ タール樹脂(B)とが部分的にまたは完全に相溶 した状態になっていると考えられる。

 また、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組 物は、Tα AP =Tα BP であることが好ましい。さらに、Tα B <Tα AP =Tα BP <Tα A 、又はTα A <Tα AP =Tα BP <Tα B の関係を満たすことが好ましい。このような 関係を満たすTα AP を持つ本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成 物は、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセ タール樹脂(B)とが完全に相溶した状態になっ ていると考えられる。

 詳細な理由は明らかではないが、メタクリ 系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)と 部分的にまたは完全に相溶した状態になっ いると考えられる場合には、本発明のアク ル系熱可塑性樹脂組成物は、耐熱性、表面 度及び剛性がメタクリル系樹脂とほぼ同等 あり、且つ延伸した時、折り曲げた時若し は衝撃を受けた時に白化し難くなっている また、靭性、耐衝撃性、取扱い性なども優 ている。
 なお、Tα BP =Tα B 、Tα AP =Tα A となる場合には、メタクリル系樹脂(A)とポリ ビニルアセタール樹脂(B)とが完全非相溶にな っていると考えられる。このような場合には 、強度が低下したり、靭性や耐衝撃性が不足 したり、白化したりする傾向になる。

 本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は 連続相がメタクリル系樹脂(A)によって形成 れていることが好ましい。本発明のアクリ 系熱可塑性樹脂組成物は、四酸化ルテニウ で電子染色したときに透過型電子顕微鏡に 観察される、染色された分散相が存在する とが好ましい。該分散相は小さい方が好ま い。分散相の平均径は、通常、200nm以下、 ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下 ある。なお、50nm以下という場合には、二つ 成分が互いに完全相溶して、分散粒子が観 されない場合をも含む。
 染色された分散相は、ポリビニルアセター 樹脂(B)が含まれていると考えられる。一方 染色されていない連続相はメタクリル系樹 (A)によって形成されていると考えられる。
 なお、アクリル系熱可塑性樹脂組成物の相 造の観察は、先ずウルトラミクロトーム(RIC A社製 Reichert ULTRACUT-S)を用いて超薄切片を作 製し、次いで四酸化ルテニウムで電子染色し 、株式会社日立製作所製透過型電子顕微鏡H-8 00NAを用いて行う。

 本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物を るための好適な製法は、メタクリル系樹脂( A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを混合、 ましくは溶融条件下で混合し、次いで樹脂 度160℃以上にまで昇温し、その後、樹脂温 120℃以下に冷却する工程を含むものである
 別の好適な製法は、メタクリル系樹脂(A)と リビニルアセタール樹脂(B)とを樹脂温度140 以上で溶融混練し、次いで樹脂温度120℃以 に冷却する工程を含むものである。
 特に好適な製法は、メタクリル系樹脂(A)と リビニルアセタール樹脂(B)とを、樹脂温度1 60℃以上で溶融混練する工程に、せん断速度1 00sec -1 以上のせん断を印加する段階と、該せん断を せん断速度50sec -1 以下にする段階とをそれぞれ少なくとも2回 る工程を含むものである。

 メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタ ル樹脂(B)との溶融混練は、一軸押出機、二 押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダ 、オープンロール、ニーダーなどの公知の 練機を用いて行うのが好ましい。これら混 機のうち、メタクリル系樹脂(A)が連続相を 成しやすく、生産性に優れることから二軸 出機が好ましい。

 溶融混練する際の樹脂温度は、140℃以上が ましく、140~270℃がより好ましく、160~250℃ 特に好ましい。
 溶融混練する際にアクリル系熱可塑性樹脂 成物に与える剪断は、剪断速度が100sec -1 以上であることが好ましく、200sec -1 以上であることがより好ましい。

 本発明の製法では、樹脂温度160℃以上に で昇温、あるいは、樹脂温度140℃以上で溶 混練した後、樹脂温度120℃以下の温度に冷 する。冷却は溶融状態のストランドを冷水 溜めた槽に浸すなどの方法で自然放冷に比 て急速に行うことが好ましい。急速冷却す ことによって、メタクリル系樹脂(A)が連続 を形成し、且つメタクリル系樹脂(A)とポリ ニルアセタール樹脂(B)とが部分相溶または 全相溶しやすくなる。さらに、分散相の大 さが非常に小さくなる。分散相の大きさは 通常、200nm以下、好ましくは100nm以下、特に 好ましくは50nm以下である。

 本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物に 必要に応じて各種の添加剤、例えば、酸化 止剤、安定化剤、滑剤、加工助剤、帯電防 剤、着色剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤 艶消し剤などを添加してもよい。なお、ア リル系熱可塑性樹脂組成物の力学物性およ 表面硬度の観点から軟化剤や可塑剤は多量 添加しないことが好ましい。
 さらに、耐候性を向上させる目的で紫外線 収剤を添加することができる。紫外線吸収 の種類は特に限定されないが、ベンゾトリ ゾール系、ベンゾフェノン系、または、ト アジン系のものが好ましい。紫外線吸収剤 添加量は、アクリル系熱可塑性樹脂組成物 対して、通常0.1~10質量%、好ましくは0.1~5質 %であり、さらに好ましくは0.1~2質量%である 。
 なお、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組 物に添加される上記添加剤は、原料となる タクリル系樹脂(A)または/およびポリビニル アセタール樹脂(B)に添加してもよいし、アク リル系熱可塑性樹脂組成物を製造する際に添 加してもよいし、アクリル系熱可塑性樹脂組 成物を成形する際に添加してもよい。

 本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は 例えば、ペレット形状や粉体形状の成形材 として使用される。そして、この成形材料 用いて、押出成形、射出成形、真空成形、 空成形、ブロー成形、トランスファー成形 回転成形、パウダースラッシュ等公知の成 方法を行うことによって様々な成形体を製 することができる。
 本発明の好適な態様のアクリル系熱可塑性 脂組成物は、JIS K7136に準拠して、厚さ4mmの 試験片で測定した際のヘイズが0.3%以下であ 。

 Tダイ法、カレンダー法、インフレーショ ン法等のアクリル系熱可塑性樹脂組成物に高 いせん断力の掛かる溶融押出成形法および射 出成形法は、透明性に優れ、改善された靭性 を持ち、耐衝撃性に優れ、取扱い性に優れ、 靭性と表面硬度若しくは剛性とのバランスに 優れ、延伸した時、折り曲げた時若しくは衝 撃を受けた時に白化しにくい成形体を得るた めに好ましい。特に、フィルム状成形体を得 るためには経済性の観点等からTダイ法が好 しい。

 アクリル系熱可塑性樹脂組成物を溶融成 するにあたっての、好ましい樹脂温度は、1 60~270℃である。成形後は、成形体を自然放冷 に比べて急速に冷却することが好ましい。例 えば、押し出された直後のフィルム状成形体 を冷却ロールに接触させて急速冷却すること が好ましい。このような急速な冷却を行うこ とによって、メタクリル系樹脂(A)が連続相を 形成し、且つメタクリル系樹脂(A)とポリビニ ルアセタール樹脂(B)とが部分相溶または完全 相溶した成形体を得ることができる。

 本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物 よびそれからなる成形体は、各種用途の部 にすることができる。具体的な用途として 、例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板 欄間看板、屋上看板等の看板部品やマーキ グフィルム;ショーケース、仕切板、店舗デ ィスプレイ等のディスプレイ部品;蛍光灯カ ー、ムード照明カバー、ランプシェード、 天井、光壁、シャンデリア等の照明部品;家 、ペンダント、ミラー等のインテリア部品; ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階 段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物 の屋根等の建築用部品;航空機風防、パイロ ト用バイザー、オートバイ、モーターボー 風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイ ー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッ ライトカバー、自動車内装部材、バンパー どの自動車外装部材等の輸送機関係部品;音 映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護 スク、自動販売機、携帯電話、パソコン等 電子機器部品;保育器、レントゲン部品等の 医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実 装置、定規、文字盤、観察窓等の機器関係 品;液晶保護板、導光板、導光フィルム、フ ネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種 ィスプレイの前面板、拡散板等の光学関係 品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音 壁等の交通関係部品;その他、温室、大型水 、箱水槽、浴室部材、時計パネル、バスタ 、サニタリー、デスクマット、遊技部品、 具、熔接時の顔面保護用マスク;パソコン、 帯電話、家具、自動販売機、浴室部材など 用いる表面材料等が挙げられる。

 本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物 用いると、靭性、耐衝撃性、表面硬度およ 剛性とのバランスに優れ、取扱いが容易で しかも延伸した時、折り曲げた時および/ま たは衝撃を受けた時に白化しないので意匠性 に優れた成形体を得ることができる。本発明 のアクリル系熱可塑性樹脂組成物からなるフ ィルム状またはシート状成形体を、鋼材、プ ラスチックシート、木材、ガラス等からなる 基材に接着、ラミネート、インサート成形、 あるいはインモールド成形などで成形すると 、それら基材の意匠性を向上させ、また基材 を保護することができる。さらに、基材に複 合させた本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組 成物の上に紫外線(UV)または電子線(EB)の照射 よって硬化してなるコーティング層を付与 ることによって、さらに意匠性と保護性を めることができる。本発明のアクリル系熱 塑性樹脂組成物と、鋼材、プラスチック、 材、ガラス等からなる基材とを共押し出し ることによって基材の意匠性を向上させる とができる。また、優れた意匠性を活かし 、壁紙;自動車内装部材表面;バンパーなど 自動車外装部材表面;携帯電話表面;家具表面 ;パソコン表面;自動販売機表面;浴槽などの浴 室部材表面等にも好適に用いることができる 。

 次に実施例を示して、本発明をさらに具 的に説明するが、本発明は実施例によって んら限定されるものではない。なお、実施 中の「部」は、特に断りのない限り「質量 」を表し、「%」は、特に断りのない限り「 質量%」を表す。

 アクリル系熱可塑性樹脂組成物等の成形材 の物性評価を以下の方法に従って行った。
(1)重量平均分子量
 テトラヒドロフランを溶媒に用い、昭和電 株式会社製Shodex(商標)GPCSYSTEM11に、ゲルパー ミエーションクロマトグラフィー用カラムと してShodex(商標)KF-806Lを繋ぎ、検出器としてSho dex(商標)示差屈折率検出器RI-101を用いて測定 た。試料溶液は、重合体を3mg精秤し、これ 3mlのテトラヒドロフランに溶解し、0.45μmの メンブランフィルターでろ過することにより 調製した。測定の際の温度を40℃、流量を1.0m l/min.とし、ポリマーラボラトリーズ製標準ポ リメタクリル酸メチルで作製した検量線に基 づいて、ポリメタクリル酸メチル換算分子量 として重量平均分子量(Mw)を算出した。

(2)透過電子顕微鏡によるモルフォロジー観察
 アクリル系熱可塑性樹脂組成物を溶融混練 、冷却した。ウルトラミクロトーム(RICA社 ReichertULTRACUT-S)を用いて超薄切片を作製した 該切片を四酸化ルテニウムで電子染色し、 料を作製した。アクリル系熱可塑性樹脂組 物中のポリビニルアセタール樹脂(B)部分が 色された。こうして作製した試料のモルフ ロジーを株式会社日立製作所製透過型電子 微鏡H-800NAを用いて観察した。観察されたモ ルフォロジーにおいて非染色部(メタクリル 樹脂(A))が
 連続相を形成していたものを○、
 メタクリル系樹脂(A)が不連続であったもの ×
として評価した。また、染色されたポリビニ ルアセタール樹脂(B)部分の平均分散粒子径を 計測した。

(3)引張り試験における弾性率、降伏点伸度、 破断伸度、靭性及び白化状態の観察
 厚さ120~200μmの薄膜成形体を、Dumb Bell Ltd. スーパーダンベルカッターで打抜いて、JIS  K6251に記載のダンベル状2号形の試験片を得た 。株式会社島津製作所製オートグラフAG-5000B 用いて、該試験片を引張り速度5mm/min.で引 り、引張弾性率、降伏点伸度および破断伸 を測定した。
 靭性は、試験片が破断するまでに要するエ ルギーで評価した。なお、本発明において 性は、本実施例に代表されるような比較的 遅い変形速度下での物性をいうものとする
 白化状態は、破断した試験片を目視で観察 ることにより行った。試験片の長さ方向の 化している部分の長さが
 10mm以上であるものを×、
 1mm以上かつ10mm未満であるものを△、
 1mm未満であるものを○、
 全く白化が見られないものを◎
として評価した。

(4)引裂き試験における引裂き強度、白化状態 の観察
 厚さ120~200μmの薄膜成形体を、Dumb Bell Ltd. スーパーダンベルカッターで打抜いて、JIS  K6252規格に準拠した切込みありアングル形試 片を得た。株式会社島津製作所製オートグ フAG-5000Bを用いて、試験片を引張り速度5mm/m in.で引き裂き、この時の最大引裂き強さを試 験片厚さ換算することによって引裂き強度( 位:N/mm)を求めた。
 白化状態は、引き裂かれた試験片を目視で 察することにより行った。試験片の長さ方 の白化している部分の長さが
 10mm以上であるものを×、
 1mm以上かつ10mm未満であるものを△、
 1mm未満であるものを○、
 全く白化が見られないものを◎
として評価した。

(5)耐衝撃性
 長さ25mm×幅25mm×厚さ200μmのフィルムを得た 東洋精機社製デュポン衝撃試験機(No.C-3516016 02)を用いて、0.3~1.0kgの錘を用いて落球衝撃試 験を行った。落球によってフィルムが破砕し ない最大衝撃(単位:J)を求めた。なお、試験 用いる錘の重さ(単位:kg)と落下する距離(単 :m)から、フィルムに与える衝撃(単位:J)を下 の計算式によって算出することができる。
 フィルムに与える衝撃[J]=
    錘の重さ[kg]×重力加速度[m/s 2 ]×落下する距離[m]

(6)表面硬度
 JIS K5600-5-4に従って、厚さ200μmの薄膜成形 の鉛筆硬度を東洋精機社製鉛筆硬度試験機(N o.C-282700200)を用いて測定した。

(7)主分散ピーク温度(Tα)
 株式会社レオロジー製DVE RHEOSPECTOLER DVE-V4 用いて、長さ20mm×幅3mm×厚さ200μmの試験片を 、チャック間距離10mm、正弦波振動10Hzおよび 温速度3℃/min.の条件で測定し、損失正接(tan  δ)の主分散ピーク温度(Tα)を求めた。

(8)ヘイズ
 JIS K7136に従い、長さ10mm×幅10mm×厚さ4mmの試 験片を、日本電色工業社製 ヘイズメーター NDH5000を用いて測定し、ヘイズを求めた。

(9)可視光線透過率
 株式会社島津製作所製 UV-VIS-NIR SPECTROPHOTOME TER Solidspec-3700を用いて、厚さ200μmのフィル の波長380nmから780nmにおける透過率を測定し JIS R3106に従って可視光線透過率を算出した 。

製造例1 〔メタクリル系樹脂〕
 表1に示す割合のメタクリル酸メチル単位お よびアクリル酸メチル単位からなるメタクリ ル系樹脂をバルク重合法によって作製した。 メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)およ 主分散ピーク温度Tα A を表1に示す。

製造例2 〔ポリビニルアセタール樹脂〕
 ポリビニルアルコール樹脂を溶解した水溶 に、所定量のブチルアルデヒドおよび/また はアセトアルデヒドならびに塩酸を添加し、 攪拌してアセタール化し、樹脂を析出させた 。公知の方法に従ってpH=6になるまで水洗浄 た。次いでアルカリ性にした水性媒体中に 加し撹拌して懸濁させた。再びpH=7になるま 水洗浄した。揮発分が1.0%になるまで乾燥す ることにより、表2に示す繰返し単位組成を するポリビニルアセタール樹脂を得た。

 ポリビニルアセタール樹脂の組成は、 13 C-NMRを測定することで、炭素数4以上のアルデ ヒドでアセタール化されたビニルアルコール 単位の全繰返し単位に対するモル%(k (BA) )、炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化 れたビニルアルコール単位の全繰返し単位 対するモル%(k (AA) )、アセタール化されていないビニルアルコ ル単位の全繰返し単位に対するモル%(k (VA) )、そして酢酸ビニル単位の全繰返し単位に するモル%(k (AV) )を算出した。

実施例1
 メタクリル系樹脂(A-1)75部、及びポリビニル アセタール樹脂(B-1)25部を、東洋精機製LABO PL ASTOMILL 2D30W2 二軸押出機を用いてシリンダー 温度230℃、スクリュー回転数100rpmで混練し、 アクリル系熱可塑性樹脂組成物を得た。混練 を終える直前の樹脂温度は260℃であった。得 られたアクリル系熱可塑性樹脂組成物のモル フォロジー観察を行い、これらの結果を表3 示した。
 さらに、得られたアクリル系熱可塑性樹脂 成物のペレットを東洋精機製LABO PLASTOMILL D 2025を用いて押出し成形することで薄膜試料 作製した。その物性評価結果を表3に示す。

実施例2~5
 ポリビニルアセタール樹脂(B-1)に代えてポ ビニルアセタール樹脂(B-2)~(B-5)を用いた以外 は、実施例1と同じ方法でアクリル系熱可塑 樹脂組成物を得た。得られたアクリル系熱 塑性樹脂組成物の物性評価・モルフォロジ 観察を実施例1と同じ方法で行った。これら 結果を表3に示す。

実施例6~7
 ポリビニルアセタール樹脂(B-1)に代えてポ ビニルアセタール樹脂(B-2)を用い、メタクリ ル系樹脂(A-1)に代えてメタクリル系樹脂(A-2) たは(A-3)を用いた以外は、実施例1と同じ方 でアクリル系熱可塑性樹脂組成物を得た。 られたアクリル系熱可塑性樹脂組成物の物 評価・モルフォロジー観察を実施例1と同じ 法で行った。これらの結果を表3に示す。

実施例8~12
 メタクリル系樹脂(A-1)およびポリビニルア タール樹脂(B-1)に代えて、メタクリル系樹脂 (A-4)およびポリビニルアセタール樹脂(B-2)を 4に示す割合で用いた以外は、実施例1と同じ 方法でアクリル系熱可塑性樹脂組成物を得た 。得られたアクリル系熱可塑性樹脂組成物の 物性評価・モルフォロジー観察を実施例1と じ方法で行った。これらの結果を表4に示す

比較例1~4
 ポリビニルアセタール樹脂(B-1)に代えて、 リビニルアセタール樹脂(B-6)~(B-9)を用いた以 外は、実施例1と同じ方法でアクリル系熱可 性樹脂組成物を得た。得られたアクリル系 可塑性樹脂組成物の物性評価・モルフォロ ー観察を実施例1と同じ方法で行った。これ の結果を表5に示す。

比較例5~8
 実施例1で得たアクリル系熱可塑性樹脂組成 物に代えて、メタクリル系樹脂(A-1)~(A-4)のみ らなる樹脂材料を用いた以外は、実施例1と 同じ方法で試験片を作製した。得られた試験 片の物性評価・モルフォロジー観察を行った 。これらの結果を表5に示した。

 以上の結果から、炭素数4以上のアルデヒ ドおよび炭素数3以下のアルデヒドでアセタ ル化されたビニルアルコール単位の合計が 繰返し単位に対して65~85モル%で且つ炭素数4 上のアルデヒドでアセタール化されたビニ アルコール単位/炭素数3以下のアルデヒド アセタール化されたビニルアルコール単位 モル比が90/10~0/100であるポリビニルアセター ル樹脂(B)を、メタクリル系樹脂(A)に配合して 得られるアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、 透明性、高い表面硬度・高剛性・耐候性・耐 熱性などの特長を保持しつつ、靭性および耐 衝撃性が大幅に改良されていることがわかる 。