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Patent Searching and Data


Title:
TIN-PLATED MATERIAL FOR ELECTRONIC PART
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/057707
Kind Code:
A1
Abstract:
A tin-plated material having a three-layer structure composed of a nickel layer, a copper-tin alloy layer, and a tin layer. The material is reduced in insertion force and improved in heat resistance. The tin-plated material comprises copper or a copper alloy and, formed by plating on the surface thereof in the following order, a primer deposit layer having a thickness of 0.2-1.5 µm made of nickel or a nickel alloy, an intermediate deposit layer having a thickness of 0.1-1.5 µm made of a copper-tin alloy, and a surface deposit layer having a thickness of 0.1-1.5 µm made of tin or a tin alloy. The copper-tin alloy constituting the intermediate deposit layer has an average crystal grain diameter, as determined through an examination of a section of the deposit layer, of 0.05-0.5 µm, excluding 0.5 µm.

Inventors:
TANAKA KOICHIRO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/069787
Publication Date:
May 07, 2009
Filing Date:
October 30, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NIPPON MINING CO (JP)
TANAKA KOICHIRO (JP)
International Classes:
C25D5/12; C25D7/00; C25D5/50; H01R13/03
Foreign References:
JP2005344188A2005-12-15
JP2007277715A2007-10-25
JP2003171790A2003-06-20
JP2001059197A2001-03-06
JPH06196349A1994-07-15
Other References:
See also references of EP 2216426A4
Attorney, Agent or Firm:
AXIS Patent International (13-11 Nihonbashi 3-chome, Chuo-k, Tokyo 27, JP)
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Claims:
 銅又は銅合金の表面に、厚さ0.2~1.5μmのNi又はNi合金からなる下地めっき層と、厚さ0.1~1.5μmのCu-Sn合金からなる中間めっき層と、厚さ0.1~1.5μmのSn又はSn合金からなる表面めっき層がこの順に形成されており、前記中間めっき層を形成するCu-Sn合金の平均結晶粒径が、該めっき層の断面を観察したときに、0.05μm以上、0.5μm未満であるSnめっき材。
 前記中間めっき層を形成するCu-Sn合金の結晶粒のうち、該めっき層に隣接する両側の層と同時に接する結晶粒の数の割合が60%以下である請求項1記載のSnめっき材。
 前記中間めっき層表面の平均粗さRaが0.1~0.5μmである請求項1又は2記載のSnめっき材。
 前記下地めっき層と前記中間めっき層の間に層状又は島状にCuめっき層が厚み0.3μm以下で形成されている請求項1~3何れか一項記載のSnめっき材。
 銅又は銅合金の表面に、厚さ0.2~1.5μmのNi又はNi合金めっき層、厚さ0.05~0.8μmのCu又はCu合金めっき層、及び厚さ0.3~1.7μmのSn又はSn合金めっき層をこの順に形成する工程と、次いで、めっき材の最高到達温度を250~350℃とし、表面Sn層が溶融してから冷却されて凝固するまでの時間を0.5~5秒とし、かつリフロー処理のトータルの時間を30秒以内とするリフロー処理を行う工程とを含むSnめっき材の製造方法。
Description:
電子部品用Snめっき材

 本発明は、電子部品、特にコネクタや端 等の導電性ばね材として好適なSnめっき材 関する。

 端子やコネクタ等の導電性ばね材として Snめっきを施した銅又は銅合金条(以下、「S nめっき材」という)が用いられている。Snめ き材は、一般的に、連続めっきラインにお て、脱脂及び酸洗の後、電気めっき法によ Cu下地めっき層を形成し、次に電気めっき法 によりSn層を形成し、最後にリフロー処理を しSn層を溶融させる工程で製造される。

 近年、電子・電気部品の回路数増大によ 、回路に電気信号を供給するコネクタの多 化が進んでいる。Snめっき材は、その軟ら さからコネクタの接点においてオスとメス 凝着させるガスタイト(気密)構造が採られる ため、金めっき等で構成されるコネクタに比 べ、1極当たりのコネクタの挿入力が高い。 のためコネクタの多極化によるコネクタ挿 力の増大が問題となっている。

 例えば、自動車組み立てラインでは、コ クタを嵌合させる作業は、現在ほとんど人 で行われる。コネクタの挿入力が大きくな と、組み立てラインで作業者に負担がかか 、作業効率の低下に直結する。さらに、作 者の健康を損なう可能性も指摘されている このことから、Snめっき材の挿入力の低減 強く望まれている。

 一方、Snめっき材では、経時的に、母材や 地めっきの成分がSn層に拡散して合金相を形 成することによりSn層が消失し、接触抵抗、 田付け性といった諸特性が劣化する。銅又 銅合金へのCu下地Snめっきの場合、この合金 相は主としてCu 6 Sn 5 、Cu 3 Sn等の金属間化合物であり、特性の経時劣化 、高温ほど促進される。

 コネクタメーカーの生産拠点の海外への 転により、素材がめっきされた後、長期間 置されてから使用されるケースがある。こ ため、長期間保存しても、めっき材の諸特 が劣化しない材料、すなわち耐時効性が高 材料が求められてきている。めっき材の特 劣化は高温下で促進される。したがって高 下での特性劣化が少ない、すなわち耐熱性 高い材料は長期間保存しても特性が劣化し い材料と言い換えることができる。

 さらに、環境対策として、半田のPbフリ 化が進んできている。半田の実装温度は従 のPb-Sn半田に比べ、高温であるため、この観 点からも高い耐熱性が必要になる。

 以上のように、Snめっき材においては、 入力の低減及び耐熱性の改善が近年の課題 なっている。

 Snめっき材においては、Snめっき層を薄く することで挿抜力が低減する。一方、Snめっ 層を厚くすることで耐熱性が向上する。そ で、Snめっき材において低挿入力と高耐熱 を両立させるために、下地めっき層をNi及び Cuの2層にし、表面Snめっき後にリフロー処理 ることで、Ni層、Cu-Sn合金層及びSn層を有す 3層構造のSnめっき材とすることで、Snめっ の厚みを薄くしながら耐熱性を向上させる 夫がなされている。

 特開2002-226982号公報には、素材表面上に 表面側から順にNiまたはNi合金層、Cu層、Snま たはSn合金層を被覆した後にリフロー処理を すことにより耐熱性皮膜を製造する方法が 載されている(請求項6)。該耐熱性皮膜は、 表面に厚さXが0.05~2μmのSnまたはSn合金層、 の内側に厚さYが0.05~2μmのCu-Snを主体とする 属間化合物を含む合金層、更にその内側に さZが0.01~1μmのNiまたはNi合金層が形成されて なる(請求項1)。該文献には素材表面の粗さを 所定範囲にすべきことも記載されており、こ れによって素材上に被覆する各層の表面平滑 度が安定し、密着性や外観が向上することな どが記載されている(段落0010)。リフロー処理 条件は、300~900℃の温度、1~300秒間の条件が望 ましいことが記載されている(段落0011)。

 特開2004-68026号公報には、Cu又はCu合金から る母材表面に、Ni層、Cu-Sn合金層、Sn層から る表面めっき層がこの順に形成され、かつ 記Ni層の厚さが0.1~1.0μm、前記Cu-Sn合金層の厚 さが0.1~1.0μm、そのCu濃度が35~75at%、前記Sn層 厚さが0.5μm以下であることを特徴とする接 部品用導電材料が記載されている(請求項2) また、該文献ではSnめっきの均一電着性など の観点からSn層中のカーボン量を0.001~0.1質量% に規制すべきことが記載されている(段落0013) 。
 また、該文献には、Cu又はCu合金からなる母 材表面に、厚さ0.1~1.0μmのNiめっき層、厚さ0.1 ~0.45μmのCuめっき層及び0.001~0.1質量%のカーボ を含有する厚さ0.4~1.1μmのSnめっき層からな 表面めっき層をこの順に形成した後、熱処 を行ってCu-Sn合金層を形成し、前記表面め き層をNi層、Cu-Sn合金層及びSn層とすること 特徴とする接続部品用導電材料の製造方法 記載されている(請求項10)。熱処理としてリ ロー処理を行う場合、230~600℃の温度で3~30 間とすることが記載されている(段落0019)。

 特許第3880877号公報には、銅または銅合金の 表面上に、NiまたはNi合金層が形成され、最 面側に厚さ0.25~1.5μmのSnまたはSn合金層が形 され、前記NiまたはNi合金層と前記SnまたはSn 合金層の間にCuとSnを含む中間層が1層以上形 され、これらの中間層のうち前記SnまたはSn 合金層と接している中間層のCu含有量が50重 %以下、Ni含有量が20重量%以下であり且つ平 結晶粒径が0.5~3.0μmであることを特徴とする めっきを施した銅または銅合金が記載され いる。但し、中間層の平均結晶粒径は電解 膜厚計を使用し、Sn層を剥離した後の材料 面についてSEMにより表面観察して、JIS H0501( 求積法)により求めている(段落0063)。
 また、該文献には、銅または銅合金の表面 に、厚さ0.05~1.0μmのNiまたはNi合金めっきを し、次いで厚さ0.03~1.0μmのCuめっきを施し、 最表面に厚さ0.15~3.0μmであるめっき厚のSnま はSn合金めっきを施した後、少なくとも1回 上の加熱処理を行って冷却することによっ 、前記NiまたはNi合金めっきと前記SnまたはSn 合金層の間にSnとCuを含む中間層を1層以上形 する、めっきを施した銅または銅合金の製 方法であって、400~900℃の温度で前記加熱処 理を行い且つ前記SnまたはSn合金層が溶融し から凝固するまでの時間が0.05~60秒になるよ に前記冷却を行うことによって、前記中間 のうち前記SnまたはSn合金層と接している中 間層の平均結晶粒径を0.5~3.0μmにすることを 徴とする、めっきを施した銅または銅合金 製造方法が記載されている。

特開2002-226982号公報

特開2004-68026号公報

特許第3880877号公報

 このように、Ni層、Cu-Sn合金層及びSn層を する3層構造のSnめっき材は、各めっき層の みのほか、素材の粗さ、層中の特定元素の 有量、Sn層を剥離してめっき面からみたと のCu-Sn拡散層の平均結晶粒径などを制御する ことによって、その特性向上を図ってきた。 しかしながら、Ni層、Cu-Sn合金層及びSn層を有 する3層構造のSnめっき材は未だ改良の余地が 残されている。

 そこで、本発明はNi層、Cu-Sn合金層及びSn を有する3層構造のSnめっき材において、こ までとは異なる観点から挿入力の低減及び 熱性の改善を図ることを課題とする。

 本発明は、該3層構造のSnめっき材の挿入力 び耐熱性に影響を与える他の因子について 討したところ、Cu-Sn合金層を断面から観察 たときの平均結晶粒径が重要であることを 出した。
 本発明者の実験結果によれば、Cu-Sn合金層 断面から観察したときのCu-Sn合金層の平均結 晶粒径を0.05μm以上、0.5μm未満とすることに り、耐熱性が向上することが分かった。

 また、Cu-Sn合金層を形成する結晶粒径が っき厚み方向に長くなると、1個の結晶粒がC u-Sn合金層を厚み方向に貫通するようになる 、このような粒子が形成する粒界は、Ni層が Sn層へ拡散するパイプとなるため、貫通粒の 合が増加するにつれて耐熱性が低下する。 発明者の実験結果によれば、Cu-Sn合金層を 通する結晶粒の数の割合を60%以下にするこ で有意に耐熱性が向上することが分かった

 更に、Cu-Sn合金層表面の平均粗さRaは挿入 力の低減に寄与し、一定程度粗さを高くする のがよいことが分かった。これは、形成され る拡散層の凹凸が大きくなると、拡散層の凸 な部分が支えのような役割を果たすため、コ ネクタ嵌合時に必要以上にSnめっき材が削り られることを防止し、挿入力が低下するこ によるものと考えられる。但し、極端に粗 が大きい場合、Sn層とCu-Sn層の接する面積が 増えるため、Cu層のSn層への拡散が促進され 耐熱性が低下する。本発明者の実験結果に れば、Cu-Sn層表面の平均粗さRaは0.1~0.5μmとす るのがよい。

 特許文献3には確かにCu-Sn拡散層の平均結 粒径について規定しているが、そこで規定 れているのはSn層を剥離した後のCu-Sn拡散層 表面の平均結晶粒径である。本発明ではCu-Sn 散層を断面からみたときの平均結晶粒径を 題としている。Cu-Sn拡散層はNi又はNi合金か なる下地めっき層とSn又はSn合金からなる表 面めっき層の中間に位置し、熱によるNiやSn 厚み方向の拡散を抑制する役割をするもの あるから、Cu-Sn拡散層の結晶粒径を断面から 観察して規定する方がより耐熱性の制御に優 れていると考えられる。また、Sn-Cu層はこぶ に成長している。そのため、Sn-Cu層の表面 観察するためにSn層を除去して観察した場合 こぶがじゃまになって結晶粒の観察は困難で あり、その平均径は正確に把握できない。

 以上のような構成をもつNi層、Cu-Sn合金層 及びSn層の3層構造のSnめっき材を製造するに 、リフロー処理の条件が重要である。具体 には、材料表面にNi層、Cu層及びSn層を形成 た後のリフロー処理時に、めっき材の最高 達温度を250~350℃とし、表面Sn層が溶融して ら冷却されて凝固するまでの時間を0.5~5秒 し、かつリフロー処理のトータルの時間を30 秒以内とすることが肝要である。

 以上の知見を基礎として完成した本発明 一側面において、銅又は銅合金の表面に、 さ0.2~1.5μmのNi又はNi合金からなる下地めっ 層と、厚さ0.1~1.5μmのCu-Sn合金からなる中間 っき層と、厚さ0.1~1.5μmのSn又はSn合金からな る表面めっき層がこの順に形成されており、 前記中間めっき層を形成するCu-Sn合金の平均 晶粒径が、該めっき層の断面を観察したと に、0.05μm以上、0.5μm未満であるSnめっき材 ある。

 本発明に係るSnめっき材は一実施形態に いて、前記中間めっき層を形成するCu-Sn合金 の結晶粒のうち、該めっき層に隣接する両側 の層と同時に接する結晶粒の数の割合が60%以 下である。

 本発明に係るSnめっき材は別の一実施形 において、前記中間めっき層表面の平均粗 Raが0.1~0.3μmである。

 本発明に係るSnめっき材は更に別の一実 形態において、前記下地めっき層と前記中 めっき層の間に層状又は島状にCuめっき層が 厚み0.3μm以下で形成されている。

 また、本発明は別の一側面において、銅 は銅合金の表面に、厚さ0.5~1.5μmのNi又はNi 金めっき層、厚さ0.05~1.2μmのCu又はCu合金め き層、及び厚さ0.3~1.7μmのSn又はSn合金めっき 層をこの順に形成する工程と、次いで、めっ き材の最高到達温度を250~350℃とし、表面Sn層 が溶融してから冷却されて凝固するまでの時 間を0.5~5秒とし、かつリフロー処理のトータ の時間を30秒以内とするリフロー処理を行 工程とを含むSnめっき材の製造方法である。

 本発明によれば、Ni層、Cu-Sn合金層及びSn を有する3層構造のSnめっき材において、挿 力の低減及び耐熱性の改善を図ることが可 となる。

No.3の試験片ついて、FIB加工し、露出さ せためっき断面を観察したTEM像である。 図1に各めっき層界面及び結晶粒界を書 き足したものである。

符号の説明

1  母材
2  Ni層
3  Cu層
4  Cu-Sn合金層
5  Sn層

 本発明に係るSnめっき材は、銅又は銅合 母材表面にNi又はNi合金からなる下地めっき と、Cu-Sn合金からなる中間めっき層と、Sn又 はSn合金からなる表面めっき層がこの順に形 されているSnめっき材であることを基本と る。このような構成のSnめっき材の基本的な 製造方法は、銅又は銅合金母材表面にNi又はN i合金めっき、Cu又はCu合金めっき、Sn又はSn合 金めっきの順でめっきを行い、次いでリフロ ー処理を行うことである。

銅又は銅合金母材
 本発明に使用することのできる銅又は銅合 母材は、特に制限はなく、公知の任意の銅 は銅合金母材を使用することができる。例 ば、銅合金としては黄銅、りん青銅、ベリ ウム銅、洋白、丹銅、チタン銅及びコルソ 合金などが挙げられ、端子やコネクタ等の 種電子部品の要求特性に従い、適宜選択で 、何等制限されない。

Ni又はNi合金からなる下地めっき
 銅又は銅合金母材の表面にはNi又はNi合金か らなる下地めっき層が形成される。Ni合金と ては、例えばNi-Pd合金、Ni-Co合金、Ni-Sn合金 挙げられる。下地めっきの中ではめっき速 が早い、コストが低い等の理由から特にNi 独めっきが好ましい。下地めっき層は例え 電気ニッケルめっきや無電解ニッケルめっ のような湿式めっき、或いはCVDやPVDのよう 乾式めっきにより得ることができる。生産 、コストの観点から電気めっきが好ましい
 リフロー処理後の下地めっき層の厚みは0.2~ 1.5μm、好ましくは0.3~1.0μmとする。下地めっ 層の厚みが0.2μm未満では、加熱したときの 材成分の拡散を抑制できず、接触抵抗が増 する。一方、リフロー後の下地めっき層の みが1.0μmを超えると曲げ加工で割れ発生の 因となる。下地めっき層はリフロー処理に ってもほとんど厚みが変わらないので、リ ロー処理後に下地めっき層の厚みを上記範 とするためにはリフロー処理前に上記範囲 厚みで下地めっきを行えば足りる。

Cu-Sn合金からなる中間めっき層
 リフロー処理後のCu-Sn合金からなる中間め き層の厚みは0.1~1.5μm、好ましくは0.3~1.0μmと する。Cu-Sn合金は硬質なため、中間めっき層 0.1μm以上の厚さで存在すると、挿入力の低 に寄与する。一方、中間めっき層の厚さが1 .5μmを超えると、曲げ加工で割れ発生の原因 なる。
 このような厚みの中間めっき層を得るには リフロー処理前のCu又はCu合金めっき層の厚 さを0.05~1.2μm、好ましくは0.1~0.5μmとするのが よい。Cu又はCu合金めっき層の厚さが0.05μm未 だと得られるCu-Sn合金層の厚みが不充分と り、逆にCu又はCu合金めっき層の厚さが1.2μm 超えるとCu-Sn合金層が厚くなり過ぎてしま か、リフロー処理後にもCuめっき層が残存し やすくなる。

 Cu又はCu合金めっき層は、リフロー処理時 にCu-Sn合金層形成に消費され、その最大厚み 0.3μm未満となるのが好ましく、ゼロになる がより好ましい。Cu又はCu合金めっき層が残 存すると、長時間高温下に置かれることによ り表面のSnめっき層を消費してCu-Sn合金層を 成し、接触抵抗や半田付け性を劣化させる らである。しかし、Cuめっき層が全て消費さ れた後もSnめっき層が溶融状態(オーバーリフ ロー)であると、Niめっき層が溶融したSnめっ 層に拡散してしまい、好ましくない結果を たらすことがある。そこで、Cuめっき層を0 はしない、すなわち0を超えて0.3μm未満でCu っき層を積極的に残すこともできる。Cuめ き層が残存する場合、層状に残存する場合 島状に残存する場合がある。

 リフロー処理前の「Cu又はCu合金めっき」と してはCu単独めっきのほか、例えばCu-Ni合金 Cu-Zn合金、Cu-Sn合金のような銅合金めっきが げられる。これらの中でもめっき浴管理が やすく、均一な皮膜が得られ、コストが安 という理由から、特にCu単独めっきが好ま い。Cu又はCu合金のめっき層は例えば電気銅 っきや無電解銅めっきのような湿式めっき 或いはCVDやPVDのような乾式めっきにより得 ことができる。生産性、コストの観点から 気めっきが好ましい。
 従って、Cu又はCu合金めっきとしてCu合金め きを採用した場合や、後述するようにSn又 Sn合金めっきとしてSn合金めっきを採用した 合には、Cu-Sn合金めっきにはCu及びSn以外の 素が含まれることもあるが、本発明におい は、そのような場合でも「Cu-Sn合金めっき と呼ぶこととする。

  中間めっき層を形成するCu-Sn合金の結晶 粒の平均粒径はSnめっき材の耐熱性に影響を える。平均粒径は小さい方が好ましく、具 的には、中間めっき層を断面から観察した きのCu-Sn合金の平均結晶粒径を0.05μm以上0.5 m未満とする。Cu-Sn合金の結晶粒の平均結晶 径は好ましくは0.4μm未満である。但し、結 粒径が小さすぎるとCu-Sn合金層の強度が増し 、曲げ加工性が悪くなるといったような不具 合が生じることから、該結晶粒の平均粒径は 0.05μm以上であるのが好ましい。本発明に係 中間めっき層を形成するCu-Sn合金の平均結晶 粒径は典型的には0.2~0.4μmである。

 また、中間層を形成するCu-Sn合金の結晶 のうち、中間層を貫通する結晶粒の数の割 が増加するにつれて耐熱性が低下する。従 て、そのような貫通粒子の割合は低い方が ましく、具体的には、Cu-Sn合金層を貫通する 結晶粒の数の割合を60%以下、好ましくは50%以 下とする。貫通粒子の割合は典型的には30~60% である。本発明において、貫通粒子の割合と いうのは、前記中間めっき層を形成するCu-Sn 金の結晶粒のうち、該めっき層に隣接する 側の層と同時に接する結晶粒の数の割合の とを指す。

 更に、Cu-Sn合金の中間めっき層表面の平 粗さRaは挿入力に影響を与え、一定程度粗さ を高くするのがよい。但し、極端に粗さが大 きい場合、Sn層とCu-Sn層の接する面積が増え ため、Cu層のSn層への拡散が促進され、耐熱 が低下する。そこで、中間めっき層表面の 均粗さRaは0.1~0.5μmとする。中間めっき層表 の平均粗さRaは好ましくは0.1~0.3μm、より好 しくは0.15~0.25μmとする。

 Snが溶融状態である間、CuはSnへ溶解、拡 する。このとき、Cuが波状に拡散すること ら表面粗さの大きいCu-Sn合金層表面が形成さ れる。Snが溶融状態である時間が長ければ、 りCuの拡散は進行し、粗さは大きくなる。 融から凝固までの時間が5秒を超えると、Cu-S n合金層の表面粗さは0.5μmを超えやすい。従 て、溶融から凝固までの時間は5秒以下とす のが好ましい。一方、ラインでの製造を考 た場合、溶融から凝固の時間を0.5秒未満に ると、溶融しない部分が生じる可能性が高 なり、一定の厚みをもつCu-Sn合金層を得る と自体が難しい。なお、Cu-Sn合金表面粗さは 光沢剤や添加剤を加えるようなことをしない 限り一般に0.1μm以上である。

 リフローのトータル時間が長ければ長い どCuのSnへの拡散は進み、形成されたCu-Sn合 粒子は成長する。トータル時間が30秒を越 るリフローではCu-Sn合金層を断面からみたと きの結晶粒径は0.5μm以上となる。

 リフローの条件はできるだけ低温である とが好ましい。比較的低い温度のリフロー は、過剰なCuの溶融、拡散の進行を抑制し 純Snの消耗を抑えるだけでなく、拡散する過 程で新たな結晶粒が形成されやすく、Ni層か Sn層に貫通する結晶粒が形成されにくい。 だし、温度が低すぎるとリフロー不良を生 るため、めっき材の最高到達温度が250~350℃ なるようなリフロー条件がよい。

 従って、中間めっき層を形成するCu-Sn合金 平均結晶粒径、貫通粒子の割合及び平均粗 Raを制御するには、リフロー処理時に、めっ き材の最高到達温度を250~350℃、好ましくは28 0~320℃とし、表面Sn層が溶融してから冷却さ て凝固するまでの時間を0.5~5秒、好ましくは 0.5~2秒とし、かつリフロー処理のトータルの 間を30秒以内、好ましくは5~15秒とすること 肝要である。
 表面Sn層が溶融してから冷却されて凝固す までの時間は、反射濃度計で表面の光沢度 測定し、Snの溶融を確認してから、冷却を開 始し、めっき材の温度がSnの融点を下回るま の時間を測定することで与えられる。
 リフロー処理のトータルの時間は、めっき の温度が50℃に到達したときからリフロー 度に達した後再び50℃に戻るまでの時間を計 測することで与えられる。

Sn又はSn合金からなる表面めっき
 リフロー処理後のSn又はSn合金からなる表面 めっき層の厚みは0.1~1.5μm、好ましくは0.2~1.0 mとする。厚みが0.1μm未満となると高温環境 における半田濡れ性や接触抵抗の劣化が著 く促進され、1.5μmを超えると、挿入力が顕 に増大する。リフロー処理後に表面めっき の厚みを上記の範囲にするためには、リフ ー処理前の表面めっき層の厚さを0.3~1.7μm、 好ましくは0.4~1.2μmとするのがよい。リフロ 処理前の表面めっき層の厚さが0.3μm未満だ 、リフロー処理によってSn成分がCu又はCu合 めっき層へ拡散して消費されるため、リフ ー処理後に必要な厚さの表面めっき層が残 しなくなる。また、厚さが1.7μmを超えると フロー処理後にも必要以上に厚い表面めっ 層が残存することになる。

 「Sn又はSn合金」としてはSn単独めっきの か、例えばSn-Ag合金、Sn-Bi合金、Sn-Zn合金、S n-Pb合金のようなSn合金めっきが挙げられる。 これらの中でもめっき浴の安全性、管理のし やすさ、比較的低い温度での熱処理が可能で あるなどの理由から特にSn単独めっきが好ま い。Sn又はSn合金のめっき層は例えば電気Sn っきや無電解Snめっきのような湿式めっき 或いはCVDやPVDのような乾式めっきにより得 ことができる。生産性、コストの観点から 気めっきが好ましい。

 以下、本発明の実施例を示すが、これら 例示のためであって本発明が限定されるこ を意図するものではない。

1.評価方法
 各試験片の評価は以下のようにして行った

[めっき厚み]
 リフロー処理前のNiめっき層の厚みは蛍光X 膜厚計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株 式会社製、型式SEA5100)で測定した。Cuめっき の厚みは、Niめっき上にCuめっきを行った状 で電解式膜厚計(電測株式会社製、型式CT-3) よって測定した。Snめっき層の厚みは蛍光X 膜厚計(同上)によって測定した。各めっき につき、5箇所の平均値をめっき層の厚みと た。
 リフロー処理後のNiめっき層の厚みは蛍光X 膜厚計(同上)で測定した。Cuめっき層、Snめ き層の厚みは電解式膜厚計(同上)で測定し 。各めっき層につき、5箇所の平均値をめっ 層の厚みとした。また、TEMによる断面観察 行い、観察視野を幅方向に9等分し、幅全体 を9として0、1、2、3、4、5、6、7、8、9のとこ のCu-Sn拡散層の厚み(計10点)を実測し、その 均値をCu-Sn拡散層の厚みとした。

[中間めっき層を形成するCu-Sn合金の平均結晶 粒径]
 各試験片を日立製の集束イオンビーム加工 察装置FB-2100にて加工し、めっき断面を露出 させた後、日立製の走査透過電子顕微鏡(TEM)H D-2700(加速電圧:200kv、ビームサイズ:0.2nm)でCu-S n合金の中間めっき層の断面を観察した(倍率2 7800倍、観察視野1.3μm×1.3μm)。Cu-Sn合金の各結 晶粒についてめっき厚み方向に引ける最も長 い直線と、めっき厚み方向と垂直方向に引け る最も長い直線の長さを実測し、両者の平均 から個々の結晶粒径を算出した。このように して視野中のすべてのCu-Sn合金の結晶粒径を 出しその平均をCu-Sn合金の平均結晶粒径と た。図1にNo.3についてCu-Sn合金の中間めっき の断面を観察したときのTEM画像を例示的に す。

[中間めっき層を貫通するCu-Sn合金粒子の割合 ]
 各試験片を日立製の集束イオンビーム加工 察装置FB-2100にて加工し、めっき断面を露出 させた後、日立製の走査透過電子顕微鏡(TEM)H D-2700(加速電圧:200kv、ビームサイズ:0.2nm)でCu-S n合金の中間めっき層の断面を観察した(倍率2 7800倍、観察視野1.3μm×1.3μm)。隣接するめっ 層(Niめっき層又はCuめっき層とSn層)両方と接 している結晶粒を貫通粒とし、視野中のすべ てのCu-Sn合金の結晶粒の数とそのうちの貫通 の数をカウントし、貫通粒の割合を算出し 。図1にNo.3についてCu-Sn合金の中間めっき層 の断面を観察したときのTEM画像を例示的に示 す。また、図2は図1にめっき層界面及び結晶 界を書き足して、各結晶粒にアルファベッ を付けたものである。19個の結晶粒A~Sのう 、A、C、D、H、L、R及びSの7個は貫通粒である から、この場合、貫通粒の割合は7/19=36.8%(約3 5%)である。

[Cu-Sn合金めっき層表面の平均粗さ(Ra)]
 各試験片の表面Sn層を化学的に研磨し、完 に除去した後、三鷹光器製の非接触型3次元 状測定装置NH-3(He-Neレーザー、波長:633nm出力 :1.8mW)でCu―Sn合金層表面の粗さを測定した。

[半田付け性]
 各試験片を155℃で16時間大気加熱した後に 田付け性を測定した。レスカ社製ソルダー ェッカーSAT-5000を使用し、メニスコグラフ法 で半田濡れ時間T 2 を測定した。試料サイズ:幅10mm×長さ20mm、フ ックス:25%ロジン‐メタノール溶液、半田温 度:250℃、半田組成:Sn-3.0Ag-0.5Cu(千住金属製705M )、浸漬速さ:20mm/sec、浸漬時間:10秒間、浸漬 さ:2mm。

[接触抵抗]
 各試験片を155℃で1000時間大気加熱した後に 接触抵抗を測定した。山崎精機社製の電気接 点シミュレータCRS-1を使い、四端子法で測定 た。プローブ:金プローブ、接触荷重:50g、 動速度:1mm/min、摺動距離:1mm。

[挿入力]
 各試験片を090型オス端子(幅:2.3mm、厚さ:0.64m m)の形状にプレス加工した後に、アイコーエ ジニアリング製の卓上荷重測定器1310NRを使 して、メス端子と嵌合させたときの荷重を 定。メス端子:住友電装製090型SMTS端子、挿 速度:50mm/min、挿入距離:5mm/min。

2.試験片の作製
 Zn:30質量%-残部Cu及び不可避的不純物の組成 有する銅合金条(板厚0.32mm×幅30mm×長さ100mm) 17枚用意し、それぞれに対して以下の手順 めっきを施した。
(手順1)アルカリ水溶液中で試料をカソードと して、電解脱脂を行った。
(手順2)10質量%硫酸水溶液を用いて酸洗した。
(手順3)硫酸ニッケル250g/L、塩化ニッケル45g/L ホウ酸40g/Lを含有するニッケルめっき浴を いて、温度55℃、電流密度4.0A/dm 2 の条件でNiめっきを施した。Niめっき層の厚 は、電着時間により調整した。この時点に ける各試験片のNiめっき層の厚みは表1に示 た。
(手順4)硫酸銅200g/L、硫酸60g/Lを含有する銅め き浴を用いて、温度30℃、電流密度2.3A/dm 2 の条件でCuめっきを施した。Cuめっき層の厚 は、電着時間により調整した。この時点に ける各試験片のCuめっき層の厚みは表1に示 た。
(手順5)酸化第一錫40g/L、フェノールスルホン 270g/L、界面活性剤5g/Lを含有するSnめっき浴 用いて、温度45℃、電流密度4.0A/dm 2 の条件でSnめっきを施した。Snめっき層の厚 は、電着時間により調整した。この時点に ける各試験片のSnめっき層の厚みを表1に示 た。
(手順6)表1に記載の条件でリフロー処理を行 た。リフロー処理後の各試験片のめっき厚 も表1に示した。

3.結果
 以上の手順で得られた各試験片について、 特性を評価した結果を表2に示す。

 No.1~No.5はリフロー後の各層のめっき厚みに えて、Cu-Sn合金めっき層の粒径、貫通粒及 粗さがすべて好ましい範囲にあり、加熱後 良好な半田付け性と接触抵抗を示し、挿抜 も高い。
 No.6はCu-Sn合金めっき層表面の粗さが小さい である。No.2とNo.6を比較すると、これらは フロー後の各めっき厚みが近似し、Cu-Sn合金 めっき層の結晶粒の粒径及び貫通粒の割合も 近似している。しかしながら、No.2の方がCu-Sn 合金めっき層表面の粗さが大きく、挿入力が 小さい。
 No.7はCu-Sn合金めっき層表面の粗さが高い例 ある。このため、加熱後の接触抵抗が高い
 No.8はCu-Sn合金めっき層の貫通粒の割合が高 例である。No.1とNo.8を比較すると、これら リフロー後の各めっき厚みが近似し、Cu-Sn合 金めっき層の結晶粒の粒径及び表面粗さも近 似している。しかしながら、No.8はCu-Sn合金め っき層を貫通する結晶粒の割合が大きく、加 熱後の接触抵抗が高い。
 No.9はCu-Sn合金めっき層の結晶粒の平均粒径 大きい例である。No.2とNo.9を比較すると、 れらはリフロー後の各めっき厚みは近似し Cu-Sn合金めっき層を貫通する結晶粒の割合も 近似している。しかしながら、Cu-Sn合金めっ 層を形成する結晶粒の大きさがNo.2と比べて かなり大きかったため、接触抵抗が悪化した 。
 No.10はCu-Sn合金めっき層の結晶粒の平均粒径 が更に大きい例である。No.1とNo.10を比較する と、これらはリフロー後の各めっき厚みは近 似し、Cu-Sn合金めっき層を貫通する結晶粒の 合も近似している。しかしながら、Cu-Sn合 めっき層を形成する結晶粒の大きさがNo.1と べてかなり大きかったため、接触抵抗が悪 した。
 No.11はNiめっき層の厚みが小さすぎた例であ り、No.12はCuめっき層の厚みが大きすぎた例 あり、No.13はCu-Sn合金めっき層の厚みが小さ ぎた例であり、No.14はSnめっき層の厚みが小 さすぎた例である。何れも、耐熱性が著しく 低い。
 No.15はSnめっき層の厚みが大きすぎた例であ る。挿入力が著しく高い。
 No.16はCu下地めっきとSn表面めっきのみ行っ 例である。耐熱性が低い。
 No.17はNi下地めっきとSn表面めっきのみ行っ 例である。半田付け性も耐熱性が低い。