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Patent Searching and Data


Title:
TRANSMISSION AND TRANSMITTING BODY
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/105345
Kind Code:
A1
Abstract:
[PROBLEMS] To provide a transmitting body in a closed-loop form to transmit power when threaded between direction changing means (e.g., pulleys), comprising a first sector smoothly turning along the path in contact with the direction changing means and a second sector having a rigid structure along an arc path between the direction changing means and to provide a transmission using such a transmitting body. [MEANS FOR SOLVING PROBLEMS] A transmission comprises direction changing means (P,...) and a closed-loop transmitting body (B) threaded between the direction changing means (P,...) and running along turning paths (R1) and paths (R2) between the direction changing means. The transmission is characterized in that the turning paths (R1) are formed into first arcs (A1) whose centers coincide with the centers of the direction changing means (P,...), the paths (R2) between the direction changing means are formed into second arcs (A2) between the direction changing means (P, P), and thus all the paths along which the transmitting body (B) runs are formed into arcs.

Inventors:
EGUCHI SHUICHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/053094
Publication Date:
September 04, 2008
Filing Date:
February 22, 2008
Export Citation:
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Assignee:
SENC GIJUTSU KOBO GODO KAISHA (JP)
EGUCHI SHUICHI (JP)
International Classes:
F16H9/24; F16G5/18
Foreign References:
JPH0167356U1989-04-28
JP2000161073A2000-06-13
JP2005147332A2005-06-09
JPH06185578A1994-07-05
JPH01500288A1989-02-02
Attorney, Agent or Firm:
OISHI, Yukio (No.3 Mitsuya Building19-15, Nisi-Nakajima 3-chome,Yodogawa-ku, Osaka-sh, Osaka 11, JP)
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Claims:
 複数の方向転換付与手段(P) ‥と、その方向転換付与手段(P) ‥間に架け渡す閉ループ状の伝動体(B) とからなり、
 前記伝動体(B) が、各方向転換付与手段(P) を転回する転回経路(R1)と、方向転換付与手段(P) ‥間に架かる方向転換付与手段間経路(R2)とからなる閉ループ経路上を走行する伝動装置において、
 (X)前記転回経路(R1)は、該転回経路(R1)の中心を中心点として伝動体(B) の外周側に凸になる第1アーク(A1)に形成され、
 (Y)前記方向転換付与手段間経路(R2)は、すべての方向転換付与手段間経路(R2)において伝動体(B) の外周側に凸になるか、またはすべての方向転換付与手段間経路(R2)において伝動体(B) の内周側に凸になる第2アーク(A2)に形成され、
 もって、前記伝動体(B) の走行する全経路がアークに形成されること、
を特徴とする伝動装置。
 前記伝動体(B) は、多数個の旋回子(1) ‥が拘束手段(2) により拘束部(S) において拘束されかつ旋回子(1) と拘束手段(2) とが同期して全経路を走行する閉ループ状に配列された配列体からなること、および、
 前記伝動体(B)を前記方向転換付与手段(P) ‥間に架け渡した状態においては、
 (x)前記転回経路(R1)は、拘束部(S)において拘束されている旋回子(1) ‥が展開(unfold)することにより、該転回経路(R1)の中心を中心点として伝動体(B) の外周側に凸になる第1アーク(A1)に形成され、
 (y)前記方向転換付与手段間経路(R2)は、拘束部(S) において拘束されている旋回子(1) ‥が互いの背腹部(1b), (1b)同士で接触するように重なって(foldして)、すべての方向転換付与手段間経路(R2)において伝動体(B) の外周側に凸状のアークとなるか、またはすべての方向転換付与手段間経路(R2)において伝動体(B) の内周側に凸状のアークとなる圧接集合体(1n)構造が自律的に形成されることにより、隣接する方向転換付与手段(P),(P)間に架かる第2アーク(A2)に形成され、
 もって、前記伝動体(B) の走行する全経路がアークに形成されること、
を特徴とする請求項1記載の伝動装置。
 前記方向転換付与手段(P) がV形溝を有するプーリーであり、
 前記伝動体(B) が前記方向転換付与手段(P) のV形溝に嵌まり込む大きさおよび形状を有するものであり、かつ、
 前記方向転換付与手段(P) ‥および前記伝動体(B) からなる伝動装置が無段変速機であること、
を特徴とする請求項2記載の伝動装置。
 複数の方向転換付与手段(P) ‥間に架け渡すことにより、各方向転換付与手段(P)を転回する転回経路(R1)と、方向転換付与手段(P) ‥間に架かる方向転換付与手段間経路(R2)とを走行させるための閉ループ状の伝動体(B) であって、
 前記伝動体(B) は、多数個の旋回子(1) ‥が拘束手段(2) により拘束部(S) において拘束されかつ旋回子(1) と拘束手段(2) とが同期して全経路を走行する閉ループ状に配列された配列体からなること、および、
 拘束部(S) において拘束された個々の旋回子(1) は、
 (M)その拘束部(S) 回りに揺動可能に構成されていると共に、
 (N)旋回子(1) ‥同士がそれらの背腹部(1b), (1b)が対向するように圧接したときに、伝動体(B) の外周側または内周側に凸のアークとなる圧接集合体(1n)構造が自律的に形成される形状または構造を有し、
 該伝動体(B) を方向転換付与手段(P) ‥間に架け渡した状態においては、
 (x)転回経路(R1)は、拘束部(S) において拘束されている旋回子(1) ‥が展開(unfold)することにより、該転回経路(R1)の中心を中心点として伝動体(B) の外周側に凸になる第1アーク(A1)に形成され、
 (y)方向転換付与手段間経路(R2)は、拘束部(S) において拘束されている旋回子(1) ‥が互いの背腹部(1b), (1b)同士で接触するように重なって(foldして)、すべての方向転換付与手段間経路(R2)において伝動体(B) の外周側に凸状のアークとなるか、またはすべての方向転換付与手段間経路(R2)において伝動体(B) の内周側に凸状のアークとなる圧接集合体(1n)構造が自律的に形成されることにより、隣接する方向転換付与手段(P),(P)間に架かる第2アーク(A2)に形成され、
 もって、前記伝動体(B) の走行する全経路がアークに形成されること、
 その結果、前記配列体は、前記転回経路(R1)においては第1アーク(A1)と同じ曲率を有する第1セクタ(sector)を形成し、前記方向転換付与手段間経路(R2)においては第2アーク(A2)と同じ曲率を有する第2セクタ(sector)を形成すること、
を特徴とする伝動体。
 伝動体(B) に組み立てられた旋回子(1) において、該旋回子(1) がその両サイド部(1a),(1a)の接触部(C) において方向転換付与手段(P) と接触するとき、該接触部(C) が旋回子(1) を拘束している拘束部(S) よりも伝動体(B) の外周側に位置するようにされていること、を特徴とする請求項4記載の伝動体。
 旋回子(1) が拘束部(S) 回りに揺動可能にされていること、および、それにより前記伝動体(B) を方向転換付与手段(P) ‥間に架け渡した状態において、
 ・転回経路(R1)においては、拘束部(S) において拘束されている旋回子(1)‥が展開(unfold)することにより、第1アーク(A1)の中心点(O 1 )から見て放射状の正姿勢を保ちつつ走行し、かつ、
 ・方向転換付与手段間経路(R2)においては、拘束部(S) において拘束されている旋回子(1) ‥が互いの背腹部(1b), (1b)同士で接触するように重なって(foldして)圧接した状態で、第2アーク(A2)の中心点(O 2 )から見て放射状の正姿勢を保ちつつ走行するようにしてあること、
を特徴とする請求項4記載の伝動体。
 前記方向転換付与手段(P) がV形溝を有するプーリーであり、
 前記伝動体(B) が前記方向転換付与手段(P) のV形溝に嵌まり込む大きさおよび形状を有するものであり、かつ、
 前記伝動体(B) が無段変速機用の伝動体であること、
を特徴とする請求項4記載の伝動体。
Description:
伝動装置および伝動体

〈発明の属する技術分野〉
 本発明は、複数の方向転換付与手段(たとえ ば、プーリー)と、該方向転換付与手段間に け渡す閉ループ状の伝動体とからなる伝動 置、殊に自動車分野をはじめとする種々の 野に用いられる閉ループ状の伝動体を用い 無段変速機(CVT; continuously variable transmission )、に関するものである。
 また、本発明は、複数の方向転換付与手段( たとえば、プーリー)間に架け渡す伝動体、 に自動車分野をはじめとする種々の分野に いられる無段変速機用の閉ループ状の伝動 、に関するものである。

〈従来の技術〉
[伝動体、特にベルト体]
 一方向に回転または往復運動を繰り返す機 の伝動装置に用いられる伝動体としては、 般にリング体や引張式ベルト体が用いられ いる。このうち汎用されている引張式ベル 体は、一般にプーリーやローラーなどの回 体からなる方向転換付与手段に架け渡され 該方向転換付与手段間をベルト体が走行す ことにより伝動が行われる。用途によって 、方向転換付与手段として、回転しない固 構造物が用いられる場合もある。

 このような伝動体の経路は、たとえば方 転換付与手段としてプーリーを用いた場合 プーリーと接触している経路と、プーリー 接触していないプーリー間経路とで構成さ る。伝動体が引張式ベルトである場合は、 ーリー間経路における往路と復路との間で 生する張力差によって伝動がなされる。

 このような張力差を利用した伝動方式に っては、種々の解説書においては、プーリ と接触していない経路が直線構造により構 されていることを前提として種々の解説が されている(たとえば、非特許文献1「新版  ベルト伝動・精密搬送の実用設計、編者:ベ ト伝動技術懇話会、発行所:養賢堂、発行日: 2006年8月19日第1版発行」)。なお、ベルト体が 走行するプーリー間経路部分を、「直線部」 または「弦部」という用語で表現している文 献が多い。

[各種方式のCVT]
 自動車に搭載する無段変速機(CVT)としては 上記のような特性を有する引張方式のベル を用いたベルト方式CVT(belt-CVT)のほか、フル ロイダル-CVT(full-toroidal traction-CVT) 、ハー トロイダル-CVT(half-toroidal traction-CVT)などの ラクションドライブ方式CVTなど、種々の方 のものが開発されている。
 現時点では、ベルト方式CVTが低トルク自動 向けの分野を中心に最も広く流通している

 上記のベルト方式CVTは、典型的には、一 が可変となっている2つシーブを1組とするV 溝を有するプーリー間に閉ループ状のVベル トを張設したものである。ここでVベルトと 、プーリーのV型溝に接触する部分がテーパ 断面を有するベルトのことである。

 なお、上記のトラクションドライブ方式C VTの範疇に含まれるものとして、モノリング 式CVTが研究されている。すなわち、特開2004 -263857(特許文献16)には、外周側が歯車状に形 されたリングを用いた方式が提案されてい 。このモノリング方式CVTについては、後に う少し詳しく説明する。

 非特許文献2(「無段変速機CVT入門、著者: 本佳郎、発行所:株式会社グランプリ出版、 発行日:2004年10月25日初版発行」)には、ベル 方式CVTをはじめとするCVT全般に関して詳細 解説がなされているので、CVTの全体像を知 ことができる。

[ベルト方式CVTの種々のタイプ]
 ベルト方式CVTに用いるVベルトには、いくつ かのタイプがある。過去に実用化したことの あるベルト、現在実用化しているベルト、あ るいは現在の実用化に影響を与えたと考えら れるベルトには、次のようなものがある。
 V1:ゴム製Vベルト
 V2:重層フープ式Vベルト(つまり、メタルフ プを入れ子状に多重に重層したVベルト)
 V3:重層フープ-エレメント併用式Vベルト(つ り、メタルフープを入れ子状に非固定状態 多重に重層した重層フープの全周にわたり 数のエレメントが嵌め込まれた構造のVベル ト)
 V4:チェーン式Vベルト
 V5:複合Vベルト(金属板の補強を入れた耐熱 脂ブロックを、芯線入りゴムベルト張力帯 挟んだ構造のVベルト)

[V1:ゴム製Vベルト]
 ゴム製Vベルトは、両サイド面が傾斜面とな った芯材入りのゴムベルトである。
 このゴム製Vベルトを用いたときには、ベル トの両サイド面がプーリーのV形溝の傾斜面 直接接触してベルト-プーリー相互間のトル の伝達が行われる。ベルトの引張力は芯材 より高められている。

[V2:重層フープ式Vベルト]
 重層フープ式Vベルトは、帯状のメタル薄板 の始端と終端とを溶接して作製されるフープ (環帯)を用いるものであって、周長がわずか つ異なると共に巾もわずかずつ異なるフー を作製し、それらのフープを両サイド面が 斜面になるように入れ子状に非固定状態で 重に重層したVベルトである。このベルトに あっては、重層フープの両サイド面がプーリ ーのV形溝の傾斜面に直接接触し、ベルト-プ リー相互間のトルクの伝達が行われる。ベ トの引張力は個々のフープが担っている。

 この重層フープ式Vベルトの代表例は、優 先日が1968年である米国特許第3604283号(特許文 献1)であり、次に述べる「V3:重層フープ-エレ メント式Vベルト」の直接的な前身技術にな ているものと思われる。

[V3:重層フープ-エレメント併用式Vベルト]
 重層フープ-エレメント併用式Vベルトは、 記に準じた重層メタルフープ(ただし、各フ プは周長がわずかずつ異なるものの巾は同 )と両サイド面がV形の傾斜面になった多数 エレメント(ブロック)とを組み合わせたベル トである。
 このVベルトにあっては、重層メタルフープ はプーリーのV形溝の傾斜面には接触せず、 レメントの両サイド面がプーリーのV形溝の 斜面に接触するので、ベルト-プーリー相互 間のトルクの伝達はエレメントを介して行わ れる。

 さて、前述したように2つのプーリー間にベ ルトを張設して作動させて力およびトルクの 伝達を行うと、張り側の経路と緩み側の経路 を生ずることになる。
 上記の重層フープ-エレメント併用式Vベル においてもベルトの引張力は個々のフープ 担っているので、引張力の点だけから見れ 、力およびトルクの伝達を行うときには張 側の経路と緩み側の経路を生ずるはずであ 。

 ところが、重層フープ-エレメント併用式 Vベルトにおいては、従動プーリー側に負荷 かけて駆動した場合、次のような現象が起 ている。すなわち、張り側の経路において 、引張力のみが働いている。緩み側の経路 ついては、駆動プーリーを出る少し前から み側の経路を経て従動プーリーを転回し終 る少し手前の段階において、エレメント同 が圧縮された状態になっているので、重層 ープによる引張力を利用しているものの、 レメントによる押し力も補完的に働いてい ように見える。

 従って、この重層フープ-エレメント併用 式Vベルトは、一般に「圧縮式」ベルト(エレ ント同士の圧縮で動力を伝達するタイプの ルト)と言われているが、主役はあくまで引 張力であって、緩み側の経路においてはエレ メントによる圧縮力が補完しているベルトで あると言うことができる。非特許文献3(「金 、北川、黒川、藤井:“CVT用金属ベルトのブ ロック間押し力及びリング張力の分布”,自 車技術協会論文集、Vol. 25, No. 4, October 199 4, p.125-130 」)の130頁の3.3の箇所を参照。

 この重層フープ-エレメント併用式Vベル には、1971年の出願にかかる米国特許第3720113 号(特許文献2)がある。また、その改良にかか るおびただしい数の出願がなされている。

 この方式のVベルトは、自動車メーカーが 現在多くの(というより大多数の)車種におい 採用している自動車用のベルト方式CVTの代 的なものということができる。

(V3ベルトの改良発明)
 V3ベルトについては、下記の(i),(ii),(iii)のよ うな改良出願がなされている。(i)はエレメン ト間の隙間を無くすための工夫にかかるもの 、(ii)と(iii)はエレメント同士の圧縮状態をよ り確実なものとするための工夫にかかるもの である。
 以下の3件の公報においては、プーリー間の 往復経路のうち、Vベルトに負荷がかかった 態において、重層フープの引張力が緩む方 (エレメントは圧縮)に力が働く経路を“緩み 側経路”と表現し、重層フープの引張力が増 す方向(エレメントは圧縮されない)に力が働 経路を“張り側経路”と表現している。

 (i) 国際公開wo02/053939(特表2004-517274)公報( 許文献13)には、エレメントの上部側厚みを 部側厚みに比して厚くして弧(アーク)を形 させることが記載されている。その図7にお ては、緩み側経路(図中の上側の経路)が実 の凸状アークで描かれ、張り側経路(図中の 側の経路)が実線の凹状アーク(エレメント 走行路)と一点鎖線の直線(重層フープの走行 路)とで描かれている。フープにより形成さ ている経路と、エレメント列により形成さ ている経路とは乖離しているのである。

 ちなみに、同じ出願人による同じ優先日 国際公開wo02/053935公報、国際公開wo02/053936( 表2004-517273)公報、国際公開wo02/053937公報、国 際公開wo02/053938公報、国際公開wo02/053939(特表2 004-517274)公報、およびヨーロッパ公開1219860( 開2002-227936)公報にも、同様のベルト経路(い れも図7)が描かれている。

 (ii)特開2001-59551公報(特許文献14)には、
 「無端状の金属リングを複数枚積層した金 リング集合体と、金属リング集合体が嵌合 るリングスロットを有する多数の金属エレ ントとから構成され、ドライブプーリおよ ドリブンプーリに巻き掛けられて両プーリ で駆動力の伝動を行う無段変速機用ベルト おいて、
 金属エレメントの主面の一部に前後方向の 縮荷重を伝達する3つの接触面の幾何学的中 心の半径方向位置を、リングスロットに嵌合 する金属リング集合体の厚さ方向中心と、リ ングスロットの半径方向外縁との間に設定し たことを特徴とする無段変速機用ベルト。」
が記載されている。
 その図8(B)においては、圧縮側弦部を外反り にする緩み側経路と、圧縮弦部の反対側を直 線にする張り側経路とが描かれ、同(C)には、 圧縮弦部を内反りにする緩み側経路と、圧縮 側弦部の反対側を直線にする張り側経路とが 描かれている。(弦部とは、プーリー間経路 ことである。)
 この(ii)の公報においては、「図8(A)は圧縮 の弦部が直線形状になった理想的な状態を しており、この状態では、金属エレメント の押し力を最も効果的に伝達することがで 、しかも金属リング集合体の内周面が金属 レメントのリングスロットのサドル面から ける荷重が小さくなって金属リング集合体 疲労寿命が延長される。」(段落番号0002、上 から5~11行)と記載されている。なお、張り側 部は原理上も直線になり、この張り側弦部 外反りにすることも内反りにすることもで ない。

 (iii) 特開2002-213539公報(特許文献15)には、 上記(ii)の金属エレメントに類似する構造のCV Tベルト用エレメントが記載され、「イヤー に形成された相互接触基準面と、ネック部 うちサドル部に近い部分に形成された相互 触基準面との間に板厚差等が生じた場合に 、上記ネック部逃げ面相当部が撓み変形す ことでイヤー部側の相互接触基準面とネッ 部側の相互基準面との板厚差を吸収するよ なはたらきをする。これにより、ベルト直 部では必ずしも完全なる直線状のものとは らず比較的曲率の大きな円弧状のものとな ものの、CVTベルトを形成しているエレメン 同士は少なくとも三つの相互接触基準面が 実に密着するかたちとなるため、そのCVTベ トの走行安定性が良好のものとなる。」(段 番号0011、上から8行~最下行)と記載されてい る。

 その図4においては、上下の両方の経路が 凸状のアークとハシゴ状の直線(平行な2本の 線とほぼ等間隔の仕切線とがエレメントの 列状態を表わしている。)とで描かれている が、これは上方の経路が凸状となる事例およ び下方の経路が凸状になる事例という2つの 例を1つの図面上に描いているにすぎない。

 この公報のCVTベルト用エレメントを用いたC VTベルトは、上記(ii)の無段変速機用ベルトと 同様のアーク構造を有するものになるから、 張り側経路が直線になることは明らかである 。
 この公報の図4は、負荷がかかると上下どち らの経路でも凸状のアーク(エレメントが圧 状態)で走行しうることを表わした図であり 緩み側経路と張り側経路との2つの経路が、 CVTベルトが走行する一組の経路であることを 示している。

[V4:チェーン式Vベルト]
 チェーン式Vベルトについても古くから提案 されている。
 一般にチェーンはプレートとピンとを主た 部品として構成されているものであるとこ 、チェーン式ベルトには、そのチェーンの の部分をプーリーのV形溝に接触させるかに よって、たとえば次のような機構のものがあ る。(なお、いずれのチェーンベルトにあっ も、往復経路のいずれも直線となる。)

 V4a:チェーンのプレートの部分をプーリーの V形溝に接触させる方式(つまり、チェーンの 成部材であるプレートの側面に設けた凸部 をプーリーに接触させる構造)
 このタイプのチェーン式Vベルトには、たと えば、1908年の出願にかかる米国特許第959532 (特許文献3)がある。

 V4b:チェーンのプレート自体に凹凸を設け、 その凸部をプーリーのV形溝に接触させる方
 このタイプのチェーン式Vベルトには、たと えば、優先日が2002年の出願にかかる特開2004- 197948(特許文献4)がある。

 V4c:チェーンのプレートに設けた開口部に付 設の部材をプーリーのV形溝に接触させる方 (つまり、チェーンの構成部材であるプレー に設けた開口部に挿入した多数の薄板の束 、プーリーに接触させる構造)
 このタイプのチェーン式Vベルトには、たと えば、米国出願日が1934年である米国特許第20 38583号(特許文献5)がある。

 V4d:チェーンのプレートを囲んで設けた部材 をプーリーのV形溝に接触させる方式(つまり チェーンの構成部材であるプレートを囲ん 枠状の部材を設け、その部材をプーリーに 触させる構造)
 このタイプのチェーン式Vベルトには、たと えば、1980年の出願にかかる米国特許第4392843 (特許文献6)がある。

 V4e:チェーンのピンの両端面をプーリーのV 溝に接触させる方式
 このタイプのチェーン式Vベルトには、たと えば、優先日が1999年である米国特許第6293887 (特許文献7)がある。

 V4f:チェーンの下部(ベルトの内周側)に設け ブロックをプーリーのV形溝に接触させる方 式
 このタイプのチェーン式Vベルトには、たと えば、1995年の出願にかかる特開平9-42383号公 (特許文献8)がある。

 V4g:内部をチェーン構造としたブロックをプ ーリーのV形溝に接触させる方式
 このタイプのチェーン式Vベルトには、たと えば、1983年の出願にかかる特開平6-185578号公 報(特許文献9)がある。

[V5:複合Vベルト]
 複合Vベルトは、金属板の補強を入れた耐熱 樹脂ブロックを、芯線入りゴムベルト張力帯 で挟んだ構造のベルトである。
 このタイプの複合Vベルトは、1983年の出願 かかる特開昭60-49151号公報(特許文献10)を元 して、実用化のための改良がなされたもの 思われる。この複合ベルトにあっては、ゴ ベルト張力帯が引張力を受け持つ。力は、 として「プーリー→ブロック→ゴムベルト 力帯」で伝達するが、ゴムベルト張力帯も ーリーに接触するため、力の一部は「プー ー→ゴムベルト張力帯」と伝達される。

 1998年の出願にかかる特開平11-280849号公報 (特許文献11)にも、上記と同様の複合ベルト 示されている。ブロックに相当する部材は アーチ形状の上ビーム部と下方に伸びるピ ー(2つのサイドピラーおよび1つのセンター ラー)とからなり、ブロック側面とプーリー の接触部は、図面では、芯線入りゴムベル 張力帯に相当するセンターベルトの上半分 側であるように見える。(なおアーチ形状の 上ビーム部とは、上ビーム部の両脇側が面取 りされたブロックの正面視の形状のことであ る。)

[力およびトルクの伝達方式から見たベルト 式CVT]
 プーリー間に閉ループ状のVベルトを張設し たときには、ベルトがプーリーを転回する「 プーリー転回経路」においてプーリーとベル トとの間でトルクが伝達される。このときの トルクの伝達には、ベルトとプーリーとの間 に発生するクランプ力に基く摩擦力が利用さ れるわけであるが、そのためにはベルトに対 するプーリーの押し付け力(クランプ力)を所 の値以上に設定して、ベルトが滑らないよ にしなければならない。

 一方、プーリーとプーリーとの間の「プー ー間経路」においては、ベルトによって力 伝達される。そして、プーリー間経路にお る力の伝達方式には、
 1.プーリー間の往復経路において発生する ルトの張力差のみを利用する方式(「引張式 ルト」)と、
 2.上述の「V3:重層フープ-エレメント併用式V ベルト」のように、プーリー間の往復経路の うち片方の経路においては(より正確には、 動プーリーを出る少し前から緩み側の経路 経て従動プーリーを転回し終える少し手前 段階においては)フープに引張力を発揮させ つエレメント同士の圧縮力を補完的に利用 、他方の経路においてはベルトの引張力の を利用する方式(いわゆる「圧縮式ベルト」 )
との2つの方式がある。

 先に述べた5つのタイプのベルト方式CVTにお いて有効に利用している力の伝達方式をまと めると、次の表1のようになる。
 V3の重層フープ-エレメント併用式Vベルトは 、「圧縮式ベルト」として説明されているこ とが多いが、往復経路において引張力を担っ ている重層フープと、往復経路のうちの一方 の経路において圧縮力を発揮することにより 補完的に伝動に貢献しているエレメントとが 、それぞれの役割を果たすので、「圧縮力を 補完的に利用した引張式ベルト」という方が 正確である。

〈従来技術の問題点〉
[モノリング方式CVTの限界]
 先に[各種方式のCVT]の箇所で述べた特開2004- 263857(特許文献16)のモノリング方式CVTは、側 をテーパーに形成してある1つの歯付きベル をV形溝を有するプーリーで挟み込むもので あって、柔軟性を有するVベルトではなく剛 を有するリングを伝動体として用いている で注目に値する。
 しかしながら、このモノリング方式CVTは、 々のトラクションドライブ方式と同様に、 ングと駆動側プーリーとの間では一点接触 よるトルク伝動となるにもかかわらず、リ グ自体が大きな圧接に耐えられるような構 にすることが難しいという課題があり、効 や伝動力が中途半端になりやすいという問 点がある。このモノリング方式CVTは、排気 の小さい自動車に適しているものと見られ いる。

[引張式ベルトであることに共通の問題点]
 従来の技術の欄で述べたV1~V5の5つのタイプ ベルト方式CVTにあっては、V3タイプのベル 方式CVTのようにすでに広く実用化されてい ものも含めて、次に述べるような限界、問 点または解決課題を含んでいる。

-1-
 最大かつ本質的な問題点は、V3を含むV1~V5の Vベルトのいずれのベルトについても共通し 言えることであるが、これらのベルトにお る力の伝達方式が引張力を利用しているこ に起因する問題点である。

-2-
 すなわち、引張式ベルトにあっては、従動 に対する負荷が大きくなるほどベルトに加 る張力も大きくなることを考慮して、負荷 大きいときの張力にも耐えられるような耐 力部品を用いなければならない。
 そして、プーリーを転回することのできる レキシブル性を確保しながら自動車用(殊に 排気量の大きい自動車用)に使えるような高 張強度を有するベルトを製作するためには ベルトの材質やベルトの構造が制約された 、ベルトが大型化したり重量増となったり ることを免れない。これらの問題点は、ベ トの製作コストの増大、そのベルトを搭載 たCVTの重量増に基く燃費上の不利などに直 することになる。

 しかも引張方式ベルトは、初期に充分の 張力を有するものを使用しても、その引張 度の限界に近い条件下において使用するた 、使用期間の経過と共にベルト周長が徐々 伸びてくることを免れない。ベルトの伸び 吸収するためには、プーリーに加える油圧 大きくしてV形溝の巾を狭くする(つまりベ トをプーリーの外周側に張設させる)調整や ーリー間の間隔(軸間距離)を広げる調整を すことになるが、そのような調整を施して 再びベルトが伸びることになるので、いず は調整だけでは済まない事態になることが る(調整の限界に達することがある)。

-3-
 また、たとえば自動車用に用いる引張式ベ トにあっては、変速比が1:1以外でかつ負荷 加わった状態においては、駆動側(小径とす る)のプーリー入口でベルトに大きな引張力 加わってプーリーに対する噛み込み半径が さくなろうとし、一方、被駆動側(大径とす )のプーリー入口では緩み側となるため小さ な引張力となってベルトのプーリーへの噛み 込み半径が大きくなろうとする結果、勝手に ロー側に変速しようとする力が働くことを免 れない。なお、エンジンブレーキ時のような 逆駆動のときには、上記と逆になる。(先の 特許文献2(無段変速機CVT入門)の58頁の図3-21 126~127頁の図5-4および図5-5の箇所の説明を参 。)

 この問題については、それぞれのプーリ についての油圧制御に際して、上記のロー への変速傾向を打ち消すような項目を加味 た制御プラグラムを採用して押し付け力(ク ランプ力)を調節しなければならないところ そのプログラムが相当に複雑になる上、ク ンプ力が過大になってエネルギー的に不利 なる傾向がある。

 そのほか、引張式ベルトにあっては、プ リーの可動シーブには固定シーブとは反対 向に強い力が働くので、両シーブ間の平行 が損なわれてプーリーに変形を起こす傾向 あり、またプーリー軸にも大きな負担を与 ている。そのため、プーリー(およびその軸 )は頑丈に設計しなければならず、そのコン クト化、軽量化の余地は少ない。(先の非特 文献2(無段変速機CVT入門)の40~44頁の説明と 3-7、図3-9を参照。)

[V1~V5のベルトについての個別の問題点]
 次に、V1~V5のベルトの問題点につき、個別 見ていくことにする。

[V1:ゴム製Vベルト]
 V1のゴム製Vベルトは、上に述べた引張式で ることに起因する問題点をそのまま有する か、トルクの伝達および力の伝達に限界が り、また耐久性や耐熱性にも限界がある。 のため、二輪車用のCVTベルトとしては実用 されているものの、自動車用のCVTベルトに いては、検討の実績はあるものの実用化は 易ではない。

[V2:重層フープ式Vベルト]
 V2の重層フープ式Vベルトは、帯状のメタル 板の始端と終端とを溶接してフープを作製 ることが容易ではなく、またそのようなフ プとして周長がわずかずつ異なると共に巾 わずかずつ異なるものを正確に製作するこ も容易ではなく、製品ベルトの検査も容易 はなく、製造コストも大きいという不利が る。またこれらの問題点が製造技術の向上 より克服されても、上に述べた引張式ベル であることに起因する本質的な問題点は克 されない。
 ただし、このV2の重層フープ式VベルトがV3 重層フープ-エレメント式Vベルトを生み出し た、という歴史的意義は大きいものと考えら れる。

[V3:重層フープ-エレメント併用式Vベルト]
 V3の重層フープ-エレメント併用式Vベルトは 、重層フープにエレメントを組み合わせ、そ のエレメントにプーリーとベルトとの間のト ルクの伝達の役割を果たさせると共に、その エレメントにベルトのプーリー間の往復経路 のうちの片方の経路において(より正確には 駆動プーリーを出る少し前から緩み側の経 を経て従動プーリーを転回し終える少し手 の段階において、以下同様)補完的に圧縮力 発揮させるという役割を果たさせている点 、引張式Vベルトの中では独創的なものであ るということができる。

 しかしながら、このV3のベルトにあっても 引張力と共に発揮される圧縮力はベルトの ーリー間の往復経路のうちの片方の経路の に限られる上(他方の経路は引張力のみが発 される)、その圧縮力は緩み側に張力が残る という状態においてしか発現せず、上に述べ た引張式ベルトであることに起因する本質的 な問題点については充分には解消できない。
 先に[引張式ベルトであることに共通の問題 点]の-3-で述べた問題点は、V3のベルトにあっ ても解決が難しい。

 また、V3のベルトは、フープおよびエレ ントの製作に要求される精度に応えること 容易ではないため、不良率の低減や低コス 化に限界がある。すなわち、フープについ は周長がわずかずつ異なるものを正確に製 することが要求され、エレメントについて その表裏面には隣接するエレメントとの接 部(エレメントの巾×高さ1mm程度の領域)に高 度の平行度が要求されるところ、フープ、 レメントとも、最終的な検査工程で規格外 される率が大きい。

 加えて、このV3のベルトにあっては、
 ・重層フープとエレメントとがそれぞれ独 の働きおよび動きをし、重層フープの走行 エレメントの走行とは同期していないので( 1周走行すると必ず「ずれ」を起こす)、摩擦 よる伝達ロスが大きくなること、
 ・ベルトがプーリーを転回する経路におい 、エレメントがきれいに整列しないこと(た とえば、エレメント同士が棒状になるための 前後のエレメントの接触点と、プーリー転回 時の渋滞による前後のエレメントの接触点と が異なることに起因し、プーリーの中心から 見たときのエレメントの姿勢が前傾や後傾に 傾く傾向がある)、
 ・重層フープ(層数は10層前後とすることが い)を構成している各フープ間にもずれを生 ずること(1周走行すると必ずずれを生じ、そ ときのずれは外周側のフープほど大きい)、
 ・重層フープのうちの最内層のフープに最 応力がかかるので、その最内層のフープが も損傷を受けやすいこと、
などの問題点を包含しているため、エネルギ ーロスの点、ベルトの寿命の点で、限界があ る。

 たとえばエネルギーロスの観点から見ると このV3のベルトを用いたCVT(無段変速機)は、 CVTの有利さを有しながらも、ギヤ式の自動変 速機(AT(automatic transmission))を用いた場合に比 特に高速走行における燃費の点で優位性が ないという不利がある。
 そのほか、V3のベルトは、排気量の大きい への搭載に耐えるためにはベルトの重量や 法を大きくしなければならず、そのコンパ ト化、軽量化が容易ではないという問題点 ある。

 また、V3のベルトは、ベルトの組み立て あたり重層フープの全周にエレメントを嵌 込む作業も容易ではないという問題点があ 上、重層フープの全周にきっちりとエレメ トを嵌め込むことができないため、エレメ ト間に隙間があくことを防止できないとい 問題点もある。

(V3ベルトの改良発明)
 (i) 特表2004-517274公報(特許文献13)には、解 すべき課題が“エレメント間にできる隙間 無くす”ことである旨の記載がなされてい 。この課題を達成するためには、Vベルト製 上の寸法制約から、(a) エレメントの厚み 合計が重層フープの全周の長さと同じにす 方法、(b)エレメントの厚みの合計が全周の さよりも大きくする方法を採用しなければ らない。

 このような寸法制約のうち、(a) は製作誤 を考えれば実現不可能な方法であるので、(b ) が妥当な方法である。
 つまり、この(i)の公報のVベルトは、当然に エレメントの厚みの合計が重層フープの全周 の長さより大きくなるのであるから、負荷が かかった状態では、張り側経路においてエレ メント列がベルトの内周側に凸状のアークに ならざるを得ない。事実、図7には、張り側 路(図中、下側経路)において直線の一点鎖線 で重層フープ経路を、実線のアークでエレメ ント経路を描いているのである(エレメント とフープとが乖離していることがわかる)。
 したがって、この公報のVベルトは、負荷が かかると重層フープの引張力が増すベルトで あるから、V3のVベルトの問題点を十分には解 決することはできない。

 (ii)特開2001-59551公報(特許文献14)には、図8(A) ,(B),(C)共に張り側経路(図中、下側経路)が直 で描かれていることから、この公報のVベル は、(i)
と同様に負荷がかかると重層フープに加わる 引張力が増すベルトであって、V3のVベルトの 問題点を十分には解決することはできない。

 (iii) 特開2002-213539公報(特許文献15)のVベ トも、〈従来の技術〉の箇所で述べたよう 上記(ii)のVベルトと基本的に同じ構造であり 、(i)と同様に負荷がかかると重層フープに加 わる引張力が増すベルトであって、V3のVベル トの問題点を十分には解決することはできな い。

[V4:チェーン式Vベルト]
 V4のチェーン式Vベルトにあっても、上に述 た引張式ベルトであることに起因する本質 な問題点は克服されない。
 また、プレートとピンとを主たる部品とし 構成されたチェーン式でありかつ引張力で の伝達を図ることは、使用するプレートや ンを軽量化、小型化することが難しく、そ 結果ベルト全体の重量が大きくなり、騒音 低減も容易ではない、という不利にもつな っている。

[V5:複合Vベルト]
 V5の複合Vベルトも、他の方式に比しいくつ の利点はあるものの、上に述べた引張式ベ トであることに起因する本質的な問題点は 服されない上、ゴムを用いることによる耐 性の不足の問題点もあって、耐久性に疑問 ある。そのため、軽自動車のような排気量 小さい自動車への適用が精一杯で、さらに 気量の大きい自動車に搭載するベルト方式C VT用のVベルトとしての主流にはなれないとい う限界があるようである。

「新版 ベルト伝動・精密搬送の実用設 」、編者:ベルト伝動技術懇話会、発行所: 賢堂、発行日:2006年8月19日第1版発行 「無段変速機CVT入門」、著者:守本佳郎 発行所:株式会社グランプリ出版、発行日:200 4年10月25日初版発行 「金原、北川、黒川、藤井:“CVT用金属 ルトのブロック間押し力及びリング張力の 布”,自動車技術協会論文集、Vol. 25, No. 4, October 1994, p.125-130 」

米国特許3604283号

米国特許3720113号

米国特許959532号

特開2004-197948

米国特許2038583号

米国特許4392843号

米国特許6293887号

特開平9-42383号公報

特開平6-185578公報

特開昭60-49151公報

特開平11-280849公報

国際公開wo02/053939公報

特開2001-59551公報

特開2002-213539公報

特開2004-263857公報

[発明の目的]
 本発明は、従来の伝動体との対比で原理お び機構が根本的に相違し、かつ作用効果の からも格段にすぐれている伝動体を提供す ことを目的とするものである。より具体的 は、複数の方向転換付与手段(たとえば、プ ーリー)間に架け渡して伝動を図るための閉 ープ状の伝動体であって、方向転換付与手 と接触する経路においては円滑転回が可能 第1セクタを形成し、一方、方向転換付与手 間の経路においては、アーク経路に沿う剛 構造の第2セクタを形成する伝動体を提供す ることを目的とするものである。
 また、本発明は、そのような伝動体を用い 伝動装置を提供すること、特に無段変速機( CVT)を提供することを目的とするものである

[本発明の伝動装置]
 本発明の伝動装置は、
 複数の方向転換付与手段(P) ‥と、その方 転換付与手段(P) ‥間に架け渡す閉ループ状 の伝動体(B) とからなり、
 前記伝動体(B) が、各方向転換付与手段(P)  を転回する転回経路(R1)と、方向転換付与手 (P) ‥間に架かる方向転換付与手段間経路(R2 )とからなる閉ループ経路上を走行する伝動 置において、
 (X)前記転回経路(R1)は、該転回経路(R1)の中 を中心点として伝動体(B) の外周側に凸にな る第1アーク(A1)に形成され、
 (Y)前記方向転換付与手段間経路(R2)は、すべ ての方向転換付与手段間経路(R2)において伝 体(B) の外周側に凸になるか、またはすべて の方向転換付与手段間経路(R2)において伝動 (B) の内周側に凸になる第2アーク(A2)に形成 れ、
 もって、前記伝動体(B) の走行する全経路 アークに形成されること、
を特徴とするものである。

〈本発明の伝動体〉
 本発明の伝動体は、
 複数の方向転換付与手段(P) ‥間に架け渡 ことにより、各方向転換付与手段(P) を転回 する転回経路(R1)と、方向転換付与手段(P) ‥ 間に架かる方向転換付与手段間経路(R2)とを 行させるための閉ループ状の伝動体(B) であ って、
 前記伝動体(B) は、多数個の旋回子(1) ‥が 拘束手段(2) により拘束部(S) において拘束 れかつ旋回子(1) と拘束手段(2) とが同期し 全経路を走行する閉ループ状に配列された 列体からなること、および、
 拘束部(S) において拘束された個々の旋回 (1) は、
 (M)その拘束部(S) 回りに揺動可能に構成さ ていると共に、
 (N)旋回子(1) ‥同士がそれらの背腹部(1b), ( 1b)が対向するように圧接したときに、伝動体 (B) の外周側または内周側に凸のアークとな 圧接集合体(1n)構造が自律的に形成される形 状または構造を有し、
 該伝動体(B) を方向転換付与手段(P) ‥間に 架け渡した状態においては、
 (x)転回経路(R1)は、拘束部(S) において拘束 れている旋回子(1) ‥が展開(unfold)すること により、該転回経路(R1)の中心を中心点とし 伝動体(B) の外周側に凸になる第1アーク(A1) 形成され、
 (y)方向転換付与手段間経路(R2)は、拘束部(S)  において拘束されている旋回子(1) ‥が互 の背腹部(1b), (1b)同士で接触するように重な って(foldして)、すべての方向転換付与手段間 経路(R2)において伝動体(B) の外周側に凸状の アークとなるか、またはすべての方向転換付 与手段間経路(R2)において伝動体(B) の内周側 に凸状のアークとなる圧接集合体(1n)構造が 律的に形成されることにより、隣接する方 転換付与手段(P), (P)間に架かる第2アーク(A2) に形成され、
 もって、前記伝動体(B) の走行する全経路 アークに形成されること、
 その結果、前記配列体は、前記転回経路(R1) においては第1アーク(A1)と同じ曲率を有する 1セクタ(sector)を形成し、前記方向転換付与 段間経路(R2)においては第2アーク(A2)と同じ 率を有する第2セクタ(sector)を形成すること
を特徴とするものである。

〈発明の詳細な説明〉
 以下、本発明を詳細に説明する。

[伝動装置]
[伝動装置における伝動体(B) の走行経路]
 本発明の伝動装置は、複数の方向転換付与 段(P) ‥と、その方向転換付与手段(P) ‥間 に架け渡した閉ループ状の伝動体(B) とから る。この伝動体(B) が、各方向転換付与手 (P) を転回する転回経路(R1)と、方向転換付 手段(P) ‥間に架かる方向転換付与手段間経 路(R2)とを閉ループ状に走行する。

[方向転換付与手段(P) ]
 方向転換付与手段(P) としては、たとえば 歯車、ローラー、プーリーのように方向転 付与手段(P) 自身が回転可能な構造のものが 挙げられ、特にプーリーが重要である。
 伝動体(B) の外表面をたとえば圧着などの 的に使用するときは、方向転換付与手段(P)  自身は回転しない固定物であってもよい。
 方向転換付与手段(P) は、必要に応じて、 熱装置、冷却装置、送風装置、加圧装置な を用いた付加手段を内蔵または外装された のであってもよい。
 方向転換付与手段(P) は、伝動装置として 求される機能を満たすものであれば、たと ば、プーリーに挟持された伝動体(B) であっ てもよい。

 方向転換付与手段(P) が歯車であるときは 伝動体(B) の内周側または/および側面を歯 との伝達のための接触部とすることができ 。また、伝動体(B) に歯車の歯形に見合った 係合部を設けておき、その係合部と歯車とが かみ合うようにすることもできる。
 このような歯車としては、たとえば、平歯 、はすば歯車、やまば歯車、かさ歯車が挙 られる。歯車の歯形は、インボリュート歯 など一般的に用いられる形状のものでよい 、伝動体(B) の接触部分とのかみ合いを考 てJIS規格などには記載されていない特殊形 のものであってもよい。歯数は、歯形と同 に規格品であっても規格品以外の数であっ もよい。
 歯車は、それ単独で方向転換手段(P) とし 用いることもできるが、それらの複数個を 組として方向転換手段(P) とすることもでき る。

 方向転換付与手段(P) がローラーの場合は たとえば伝動体(B)の内周側または/および側 をローラーとの伝達のための接触部とする とができる。
 このようなローラーの形状としては、たと ば、円柱形、円錐台形、円錐形などが挙げ れ、場合によっては、断面形状が楕円形や 角形となるようなものであってもよい。
 ローラーは、それ単独で方向転換付与手段( P)として用いることもできるが、それらの複 個を一組として方向転換手段(P) とするこ もできる。

 方向転換付与手段(P) がプーリーの場合は たとえば伝動体(B)の内周面または/および側 をプーリーとの伝達のための接触部とする とができる。
 このようなプーリーとしては、V形溝を有す るものなど種々のタイプのものが用いられる が、伝動装置が無段変速機(CVT)であるときは 少なくとも一方が可変状態となっている2つ のシーブを用いたV形溝を有するプーリーが 適に用いられる。以下においては、このよ な可変V形溝を有するプーリーを用いる場合 ついて説明する。

 可変V形溝を有するプーリーの典型例は、図 3のように、プーリー軸に対して固定シーブ(P fs) と可動シーブ(Pms) とをそれぞれのコーン 面(円錐面)が対向するように配置したもので る。それぞれのシーブのコーン面の傾斜角( シーブ角)をαとすると、プーリーのV形溝の 度は2αとなる。
 V形溝を有するプーリーには、これ以外にも 種々のタイプのものがある。

 無段変速のためには、
 ・プーリーとプーリーとの間の軸間距離は 定にすると共に、駆動側および従動側の双 のプーリーのV形溝の巾を可変とする方式、
 ・プーリーとプーリーとの間の軸間距離を 変にすると共に、駆動側または従動側の一 または双方のプーリーのV形溝の巾を可変と する方式、
のいずれの方式も採用可能であるが、たとえ ば自動車用の無段変速機の場合には前者の軸 間距離一定方式を採用することが多い。

 上に述べたシーブ角αは、プーリーの材質 プーリーの表面状態、旋回子(1) の材質、旋 回子(1) の両サイド面の表面状態、旋回子(1) -拘束手段(2) 間の係合機構、プーリー-伝動 (B) 間の摩擦低減用のオイルの使用の有無 どを総合考慮して最適値を選ぶべきである
 オイルの使用によりプーリー-伝動体(B) 間 摩擦係数がたとえば0.08~ 0.2またはその前後 となるときには、シーブ角αはたとえば11°程 度(たとえば11°±3°)とすることが多い。
 オイルを使用しないときは、摩擦係数が高 なるので、シーブ角αはたとえば13°程度(た とえば13°±2°)とすることもある。

 なお、プーリーのシーブ角αは上記のよ に設定することが多いが、変速時の伝動体(B ) の追随性を円滑にするために、プーリーを 構成するシーブ(固定シーブ(Pfs) および可動 ーブ(Pms) )のコーン面を、わずかに凸にな ような曲面に形成したり、徐々に傾斜角が わるような曲面に形成したりすることもで る。

 方向転換付与手段(P) の数は、通常は2つ するが、3つあるいはそれより多くすること もできる。以下においては、主として2つの 向転換付与手段(P), (P)間に伝動体(B) を架け 渡す場合について説明する。

[伝動体(B) ]
 本発明の伝動体(B) は、伝動体(B) 自体の重 力を利用する方法、方向転換付与手段(P) ‥ の軸間距離を拡げる方法、方向転換付与手 (P) ‥間の隙間を狭める方法、方向転換付 手段(P) 間にある伝動体(B) をローラーなど 押す方法、これらの方法を組み合わせる方 などにより、方向転換付与手段(P) ‥間に かる部分を簡単に剛体構造の第2セクタにす ことができる。
 この剛体構造の第2セクタ(sector)は、一方の 向転換付与手段(P) から他方の方向転換手 (P) へ動力を伝える手段として利用すること ができる。また、方向転換付与手段(P) ‥間 第2セクタの外周側上面を他の物体と接触さ せることにより、方向転換付与手段(P)以外へ 動力を伝える手段としても利用することがで きる。前者の手段を利用する伝動装置として は、たとえば、CVT用装置、送風装置、駆動装 置が挙げられ、後者の手段を利用する伝動装 置としては、たとえば、印刷用紙・コピー用 紙・建築資材・土木資材・食品・その他の工 業製品などを搬送させるための装置、歯車・ ローラー・伝動ベルトなどを介して動力伝達 するシステムに供給するための装置が挙げら れる。

 本発明の伝動体(B) は閉ループ状のもので り、本発明の伝動装置においてはこの伝動 (B) を複数の方向転換付与手段(P) ‥間に架 渡して、各方向転換付与手段(P) を転回す 転回経路(R1)と、方向転換付与手段(P) ‥間 架かる方向転換付与手段間経路(R2)とを走行 せる。
 そして、本発明の伝動体(B) は、多数個の 回子(1) ‥が拘束手段(2) により拘束部(S)  おいて拘束されて閉ループ状に配列された 列体からなるので、転回経路(R1)においては 1アーク(A1)と同じ曲率を有する第1セクタ(sec tor)を形成し、方向転換付与手段間経路(R2)に いては第2アーク(A2)と同じ曲率を有する第2 クタ(sector)を形成する。
 該伝動体(B) を構成する旋回子(1) および拘 束手段(2) については、後に項を改めて詳述 る。

[経路の形]
-1-
 本発明の伝動装置にあっては、
(X)前記転回経路(R1)は、該転回経路(R1)の中心 中心点として伝動体(B) の外周側に凸にな 第1アーク(A1)に形成され、
(Y)前記方向転換付与手段間経路(R2)は、すべ の方向転換付与手段間経路(R2)において伝動 (B) の外周側に凸になるか、またはすべて 方向転換付与手段間経路(R2)において伝動体( B) の内周側に凸になる第2アーク(A2)に形成さ れ、
 もって、前記伝動体(B) の走行する全経路 アークに形成される(図1、図2を参照)。

-2-
 上記(X)のように転回経路(R1)を各方向転換付 与手段(P) の中心を中心点として伝動体(B)  外周側に凸となるアークに形成することは 従来の引張式ベルトと類似している(ただし 後の説明を参照)。しかしながら、方向転換 付与手段間経路(R2)につき、すべての方向転 付与手段間経路(R2)において伝動体(B) の外 側に凸になるアークに形成するか、または べての方向転換付与手段間経路(R2)において 動体(B) の内周側に凸になるアークに形成 せることにより、前記伝動体(B) の走行する 全経路がアークに形成されるようにしたこと は、本発明の伝動装置の独自かつ最大の特徴 点である。
 ちなみに、従来の技術の説明と箇所で述べ V1~V5のVベルト(ベルトCVT用のVベルト)におけ 方向転換付与手段間経路(R2)は、原理上いず れも少なくとも張り側の経路が直線になる。

-3-
 なお、上記においては、上記(X)のように「 回経路(R1)を各方向転換付与手段(P) の中心 中心点として伝動体(B) の外周側に凸とな アークに形成することは、従来の引張式ベ トと類似している。」と述べたが、転回経 (R1)における伝動体(B) の巻き付け角θは従来 の引張式ベルトとは相違しており、その相違 は作用効果に大きな影響を与えているので、 その意味では伝動体(B) は従来の引張式ベル とは転回経路(R1)の点でも相違している。

[伝動体(B) が走行する経路の詳細な説明]
 上記のように本発明においては、第1アーク に形成された転回経路(R1)および第2アークに 成された方向転換付与手段間経路(R2)に沿っ て伝動体(B) が走行するわけであるが、この きには、前記伝動体(B) を前記方向転換付 手段(P) ‥間に架け渡して初期設定した状態 においては、第1アーク(A1)と第2アーク(A2)と 間の移行点(tr)が、第1アーク(A1)の中心点(O1) 第2アーク(A2)の中心点(O2)との双方を通る直 上に位置するように設定される(図1、図2を 照)。伝動装置を作動させた状態においても 、基本的には同じ関係が維持される。

(図を参照しての説明)
 図1は、伝動体(B) が描く経路の形を説明す ための模式的な説明図である。
 本発明によれば、第1アーク(A1)と第2アーク( A2)との間の移行点(tr)(図1においては、4箇所 る)においても伝動体(B) は円滑に走行する で、力およびトルクの伝達に際してのエネ ギーロスが最小限になり、伝動体(B) の寿命 の点でも有利となり、騒音低減の点でも好ま しいものとなる。

 ここで、図1(および後述の図2)における線お よび符号の意味は次の通りである。
 ・太い破線:転回経路(R1)(第1アーク(A1)を形 している)
 ・太い実線:方向転換付与手段間経路(R2)(第2 アーク(A2)を形成している)
 ・(O 11 ) : 左の第1アーク(A1)の中心点(方向転換付与 手段(P) の中心でもある)
 ・(O 12 ) : 右の第1アーク(A1)の中心点(方向転換付与 手段(P) の中心でもある)
 ・(O 2 ):  第2アーク(A2)の中心点(2箇所ある)
 ・(tr):  第1アーク(A1)と第2アーク(A2)との間 の移行点
 ・t:   移行点(tr)における接線(tangent)
 ・c:   左右の内接円における移行点(tr), ( tr)を結ぶ弦(chord)
 ・γ:   左右の内接円における移行点(tr),  (tr)を結ぶ弦cと、その移行点(tr)にお
      ける接線tとのなす角度(ラジアン)
 ・r 11 :  左の方向転換付与手段(P) 側の第1アーク( A1)の半径
 ・r 12 :  右の方向転換付与手段(P) 側の第1アーク( A1)の半径
 ・R:   第2アーク(A2)の半径
 ・β:   第2アーク(A2)の両端点と第2アーク( A2)の中心点(O2)とを結ぶ線のなす
      角度(ラジアン)
 ・θ 11 :  左の方向転換付与手段(P) に対する伝動 (B) の巻き付け角(ラジアン)
 ・θ 12 :  右の方向転換付与手段(P) に対する伝動 (B) の巻き付け角(ラジアン)
 ・D:   2つの方向転換付与手段(P), (P)の軸 距離(O 11 -O 12  間の距離)
 ・L:   伝動体(B) の周長(拘束部(S) の位置 を基準にした周長)

(関係式/基本式)
 まず、伝動体(B) の周長Lは次の式1で表わさ れる。式1の右辺第1項は第2アーク(A2)の弧長 2倍、右辺第2項は図中の左側の方向転換付与 手段(P) 側の第1アーク(A1)の弧長、右辺第3項 図中の右側の方向転換付与手段(P) 側の第1 ーク(A1)の弧長である。
   L=2Rβ+r 11 θ 11 +r 12 θ 12                 (式1)
 次に、(O 11 ) 、(O 12 ) 、(O 2 )を3頂点とする三角形の内角の和はπ(ラジア )であるから、次の式2が成り立つ。
   β+θ 11 /2+θ 12 /2=π
    つまり、2β+θ 11 12 =2π              (式2)

 一方、軸間距離Dは次の式3で表わされる((O 11 ) 、(O 12 ) 、(O 2 )を3頂点とする三角形の底辺の長さが軸間距 Dになることに着目すればよい)。
   D=(R-r 11 )cos(θ 11 /2) +(R-r 12 )cos(θ 12 /2)   (式3)

(変速比が1:1のとき)
 今、変速比=1:1、つまり、r 11 =r 12 =r、θ 11 12 =θのときは、先の式1、式2、式3は次のように 簡単化される。
   L=2Rβ+2rθ                       (式1a)
   β+θ=π                           (式2a)
   D=2(R-r)cos(θ/2)                   (式3a)
 ここで伝動体(B) の周長L、方向転換付与手 (P), (P)の軸間距離D、第2アーク(A2)の半径Rは 予め定める設定値であり、かつ式1a、式2bお び式3aの3つの式において変数はβ、θ、rの3 であるから、式1a、式2bおよび式3aの3式から 、θ、rが求められる。

(変速比が任意のとき)
-1-
 上に述べた基本式1、2、3、すなわち、
   L=2Rβ+r 11 θ 11 +r 12 θ 12                   (式1)
   2β+θ 11 12 =2π                      (式2)
   D=(R-r 11 )cos(θ 11 /2) +(R-r 12 )cos(θ 12 /2)     (式3)
においてL、D、Rを設定すれば、式1、2、3の変 数は次のようになる。
  式1: β、r 11 、r 12 、θ 11 、θ 12
  式2: β、θ 11 、θ 12
  式3: r 11 、r 12 、θ 11 、θ 12

-2-
 この場合、図1からも容易に理解できるよう に、半径Rの上下2つのアーク(A2), (A2)の双方 内接する半径r 11 の左側の内接円を決めると、その内接円の中 心点(O 11 ) および巻き付け角θ 11 が決まる。そうすると、その左側の内接円か ら中心点間距離がDだけ離れたところに中心 (O 12 ) を持つ内接円の半径r 12 および巻き付け角θ 12 も決まる。そして、θ 11 、θ 12 が決まれば式2からβが直ちに決まる。

 すなわち、半径Rの上下2つの円弧で形成さ る図形から見た場合、変速比が変わると、 径Rの上下2つの円弧の双方に内接する2つの 接円が、その中心点間距離Dを保ちながら左 方向に揺動する形になる。
 実際には図1の2つの内接円の中心点の位置(O 11 ) 、(O 12 ) (つまり方向転換付与手段(P), (P)の軸の位 )は固定されているので、左右の内接円の半 r 11 、r 12 および巻き付け角θ 11 、θ 12 が変化し、それに応じて転回経路(R1)におけ 第1アーク(A1)の弧長および方向転換付与手段 間経路(R2)における第2アーク(A2)の弧長が変化 し、第2アーク(A2)の見かけの角度βおよびそ 第2アーク(A2)の中心点(O 2 )の位置も変化することになる。

-3-
 上記のように、図1においては、前記の伝動 体(B) を前記の方向転換付与手段(P), (P)間に け渡して初期設定した状態および作動させ 状態において、第1アーク(A1)と第2アーク(A2) との間の移行点(tr)が、第1アーク(A1)の中心点 (O1)と第2アーク(A2)の中心点(O 2 )とを結ぶ直線上に位置するようになる。換 すると、第1アーク(A1)の終点(または始点)に ける接線と第2アーク(A2)の始点(または終点) における接線とは同一になる(共通接線にな )。
 その結果、図1の場合には、第1アーク(A1)と 2アーク(A2)との間の移行点(tr)(4箇所ある)に いても、伝動体(B) の円滑走行が確保され ことがわかる。

[アークの曲率]
 第1アーク(A1)の曲率は、方向転換付与手段(P ) の中心から見て、V形溝のどの深さの位置 伝動体(B) が位置するかによって決まる。
 第2アーク(A2)の曲率に関しては、図1におい 、第2アーク(A2)の中心点(O 2 )と左右の内接円における移行点(tr), (tr)とを 3つの頂点とする半径Rの扇形の図形を考えた き、2つの移行点(tr), (tr)を結ぶ弦cとその移 行点(tr)における接線tとのなす角度γ(ラジア )が
   0<γ<π/2
の関係を満たすように設定する。好ましい範 囲は
   0<γ<π/4
である。さらに好ましい範囲は
   π/200≦γ≦π/6
であり、特に好ましい範囲は
   π/100≦γ≦π/9
である。
 後に述べる図2のケースにおける第2アーク(A 2)の曲率も、上記と同様になる。ただし、角 はマイナスとなり、また上下の第2アーク(A2 )同士の間で干渉を起こさないという制約が わる。 

[伝動体(B) が描く経路の他の形]
-1-
 先に述べた図1においては、方向転換付与手 段間経路(R2)(2箇所ある)を伝動体(B) の「外周 側」に凸のアークとなる第2アーク(A2)に形成 た場合を示してあるが、方向転換付与手段 経路(R2)(2箇所ある)を伝動体(B) の「内周側 に凸のアークとなる第2アーク(A2)に形成す こともできる。
 図2はこの場合を示した模式的な説明図であ る。

-2-
 この態様を採用するときは、方向転換付与 段(P), (P)に伝動体(B) を最初に架け渡すと あるいは伝動装置が作動停止の状態にある きに伝動体(B) が(ちょうどダイアフラム弁 ように)反転して、緩んでしまうおそれがあ 。反転防止のための手段の一例は、回転体 ガイド体などの適当な部材をたとえば図2の 白抜き矢印の位置に適当な付勢力で接当させ ることである。従動側の方向転換付与手段(P)  の軸に負荷が加わった状態で伝動体(B) が 行しているときはそのような伝動体(B) の緩 みは生じないが、運転開始時や運転停止時に は伝動体(B) の緩みを生ずるおそれがあるの 、確実な機能維持のためにも、白抜き矢印 らの回転体やガイド体の接当は常時維持し おくことが望ましい。

 また、伝動体(B) が、方向転換付与手段(P ) との接触状態を解除される移行点(tr)付近 上述の反転防止手段を設けることもできる このように移行点(tr)付近に反転防止手段を けるときは、伝動体(B) を方向転換付与手 (P) に押し付けることが可能な位置にその反 転防止手段を設けることが好ましい。反転防 止手段の設置は、伝動体(B)が方向転換付与手 段(P)から離れる4箇所の移行点(tr)付近の全箇 に設けることが好ましい。このような位置 反転防止手段を設けることは、前記の白抜 の矢印の位置に反転防止手段を設けること できない場合の代替設置手段として利用す こともできる。

-3-
 図2の態様は、方向転換付与手段(P), (P)に対 する伝動体(B) の巻き付け角θ 11 12 を大きくとることができるので、転回経路(R1 )における方向転換付与手段(P), (P)-伝動体(B) 間の滑り防止がより確実になり、方向転換 与手段(P) -伝動体(B) 間のトルク伝達の点で 好ましい。ただし、走行中の伝動体(B) のア クの曲率が、転回経路(R1)(第1アーク(A1))に しかかったときにはプラス、方向転換付与 段間経路(R2)(第2アーク(A2))にさしかかったと きにはマイナスというように変化するので( まり、1周走行する間にアークの曲率がプラ -マイナス-プラス-マイナスというように変 するので)、全経路を高速走行させる用途に は必ずしも向いてはいない。つまり、図2の 様は、力強さが優先し、速度は低速でもよ とする用途に向いているということができ 。

-4-
 なお、方向転換付与手段間経路(R2)を伝動体 (B) の「内周側」に凸のアーク(つまり、「外 周側」に凹のアーク)となる第2アーク(A2)に形 成した図2のタイプの伝動体(B)
と、方向転換付与手段間経路(R2)を伝動体(B)  の「外周側」に凸のアークとなる第2アーク(A 2)に形成した図1のタイプの伝動体(B) とを組 合わせ、これらの凹のアークと凸のアーク が接触または近接するように対向させて用 ることもできる(図48の(i)、(ii)を参照)。

[伝動体(B) の具体的構成]
-1-
 前記伝動体(B) は、典型的には、多数個の 回子(1) ‥が拘束手段(2) により拘束部(S)  おいて拘束されて閉ループ状に配列された 列体からなる。
 より具体的には、拘束部(S) において拘束 れた個々の旋回子(1) は、
 (M)その拘束部(S) 回りに揺動可能に構成さ ていると共に、
 (N)旋回子(1) ‥同士がそれらの背腹部(1b), ( 1b)が対向するように圧接したときに、ベルト の外周側または内周側に凸のアークとなる圧 接集合体(1n)構造が自律的に形成される形状 たは構造を有している、
ようにされることが特に好ましい。
 なお、拘束手段(2) は旋回子(1) とは別の部 材で構成するのが通常であるが、旋回子(1)  形状または構造を工夫することにより旋回 (1) の一部を拘束手段(2) とすることもでき る。

-2-
 伝動体(B) をこのように構成すると、該伝 体(B) を前記方向転換付与手段(P) ‥間に架 渡した状態において、
 (x)転回経路(R1)は、拘束部(S) において拘束 れている旋回子(1) ‥が展開(unfold)すること により、該転回経路(R1)の中心を中心点とし 伝動体(B) の外周側に凸となる第1アーク(A1) 形成され、
 (y)方向転換付与手段間経路(R2)は、拘束部(S)  において拘束されている旋回子(1) ‥の背 部(1b)、(1b)同士で接触するように重なって(fo ldして)、すべての方向転換付与手段間経路(R2 )において伝動体(B) の外周側に凸状のアーク となるか、またはすべての方向転換付与手段 間経路(R2)において伝動体(B) の内周側に凸の アークとなる圧接集合体(1n)構造が自律的に 成されることにより、隣接する方向転換付 手段(P), (P)間に架かる第2アーク(A2)に形成さ れる、
ようになる。

-3-
 前記の方向転換付与手段(P) ‥および前記 伝動体(B) からなる伝動装置が無段変速機で あって、該方向転換付与手段(P) ‥がV形溝を 有するプーリーであるときは、伝動体(B) も のプーリーのV形溝に嵌まり込む大きさおよ び形状を有するものにする。
 以下においては、特に断りのない限り、方 転換付与手段(P) ‥がV形溝を有するプーリ であって、伝動体(B) もそのプーリーのV形 に嵌まり込む大きさおよび形状を有し、伝 体(B) に組み立てられた旋回子(1) もV形溝 嵌まり込む大きさおよび形状を有する場合 例にとって、詳細に説明することにする。

[V形溝に嵌まり込む大きさおよび形状]
-1-
 ここで、方向転換付与手段(P) のV形溝に嵌 り込む大きさおよび形状を有する伝動体(B) について、伝動体(B) のどの部位が方向転換 付与手段(P) のV形溝のどの部位に接触するか について述べる。この場合、その接触の態様 は、当然ながら変速が円滑に達成できるもの でなければならない。

-2-
 その1つは、方向転換付与手段(P) がプーリ である場合、旋回子(1) の両サイド部(1a), ( 1a)を、プーリーのシーブ角α(図3参照)に見合 角度の傾斜面に形成しておくことである。 こで「シーブ角αに見合う角度」とは、シ ブ角αと実質的に同一の角度という意味であ る。旋回子(1) は、その両サイド部(1a), (1a) 傾斜面の少なくとも1箇所または1領域におい て、方向転換付与手段(P) のV形溝の傾斜面と 、1点接触、複数点接触、線接触または面接 の状態で接触することになる。

 なお、すでに述べた方向転換付与手段(P)  説明の箇所においては、変速時の旋回子(1)  の動きを円滑にするために、方向転換付与手 段(P) のシーブ面(固定シーブ(Pfs) および可 シーブ(Pms) が互いに対向する面)をわずかに 凸のコーン面に形成することもできると述べ たが、次のような工夫をすることもできる。
 (i)方向転換付与手段(P) のシーブ面をコー 面にすると共に、旋回子(1) の両サイド部(1a ), (1a)の傾斜面を外側にわずかに凸の曲面に る。
 (ii)方向転換付与手段(P) のシーブ面をわず に凸のコーン面に形成すると共に、旋回子( 1) の両サイド部(1a), (1a)の傾斜面を外側にわ ずかに凸の曲面にする。

-3-
 他の1つは、個々の旋回子(1) は拘束手段(2) により拘束部(S) において拘束されているわ けであるが、旋回子(1) の特定部位の1以上と 拘束手段(2) の特定部位の1以上とを方向転換 付与手段(P) のV形溝と接触させることである 。

 ここで、方向転換付与手段(P) のV形溝に まり込む大きさおよび形状を有する伝動体( B) について、伝動体(B) のどの部位が方向転 換付与手段(P) のV形溝のどの部位に接触する かについて述べる。この場合、その接触の態 様は、当然ながら変速が円滑に達成できるも のでなければならない。

[接触部(C) と拘束部(S) との位置関係]
 次に、伝動体(B) に組み立てられた旋回子(1 ) において、該旋回子(1) の両サイド部(1a),  (1a)における方向転換付与手段(P) のV形溝と 接触部(C) と、旋回子(1) を拘束している拘 部(S) との位置関係について述べる。
 この位置関係については、図7に模式図を示 したように、前記接触部(C) が伝動体(B) の 外周側」に位置し、かつ前記拘束部(S) が伝 動体(B) の「内周側」に位置するように設計 れることが特に好ましい。
 というのは、接触部(C) が伝動体(B) の内周 側に位置しかつ拘束部(S) が伝動体(B)の外周 に位置したり、伝動体(B) の同じ位置に接 部(C) と拘束部(S) とが位置したりすると、 向転換付与手段間経路(R2)における第2アー (A2)の形成が不安定になるおそれがあるから ある。

[接触部(C) の位置と背腹部(1b), (1b)同士の接 位置との関係]
 旋回子(1) の外周面側、内周面側または断 上に想起される仮想平面が、背腹部(1b), (1b) 同士の接触位置および少なくとも一部の接触 部(C) の位置を含む面に仮想されることが好 しい。
 このような仮想平面上に背腹部(1b), (1b)同 の接触位置および少なくとも一部の接触部(C ) の位置を含むことは、旋回子(1) 上にモー ント力が発生させることを防止する効果が り、旋回子(1) の姿勢がズレることによる 動体(B) 内部で発生するエネルギーロスを最 小限に止めることができる。
 このような仮想平面が旋回子(1) の上面に づいているときは、第2セクタに対する伝動 伴う力の影響を小さくすることができる。
 上述の仮想平面が拘束手段(2) 側に近づい くると、伝導に伴う力が強くなったときは たとえば、外見上、伝動体(B) の第2セクタ 方向転換付与手段間経路(R2)の往路と復路と 外周側に膨らむ現象と萎む現象とを交互に っくり繰り返す状態が見られることがある これらの現象は、第2セクタが往路で第2セ タの曲率が大きくなると復路で第2セクタの 率が小さくなり、往路で第2セクタの曲率が 小さくなると復路で第2セクタの曲率が大き なって、このような第2セクタの曲率変化は 伝動体(B) の平面付近における旋回子(1) の 隙間量の広狭変化、または/および、拘束手 (2) 間の距離の広狭変化が原因ではないかと 思われる。
 なお念のため述べると、このような第2セク タ(sector)の曲率の変化は、その振幅の中心と る曲率が第2アーク(A2)の曲率に相当すると えられるので、走行路の振幅現象が本願発 を逸脱するものではない。

[旋回子(1) の動きと拘束手段(2) の動きとの 係]
-1-
 拘束手段(2) は、多数個の旋回子(1) ‥を拘 束部(S) において閉ループ状に配列するため 手段である。従って、旋回子(1) を閉ルー 状に配列できるのであれば、拘束手段(2) の 動きは旋回子(1) の動きとは原則的には別々 あっても差し支えない。ただし、この場合 は、伝動体(B) が方向転換付与手段(P) ‥を 周回するごとに(特に転回経路(R1)において)旋 回子(1) と拘束手段(2) との間にずれないし りを生ずることがあるので、相応のエネル ーロスを生ずることになる。

 ちなみに、「従来の技術」、「従来の技 の問題点」の箇所で述べた「V3の重層フー -エレメント併用式Vベルト」にあっては、エ レメントは重層フープによって拘束されては いるものの、エレメントの動きと重層フープ の動き(さらには重層フープにおけるそれぞ の層のフープの動き)は本質的には別々であ ため、ベルトがプーリーを周回する間に必 ずれを生じる結果、エレメントの姿勢が崩 て前傾や後傾姿勢になったり、エレメント- 重層フープ間でおよび重層フープを構成する 各フープ間で滑りに基く摩擦が発生すること を免れず、無視しえないエネルギーロスを生 ずる。

-2-
 従って、本発明においては、上記のように 触部(C) が伝動体(B) の外周側に位置し、前 記拘束部(S) がベルトの内周側に位置するよ に設計するのみならず、旋回子(1) の動き 拘束部(S) の動きとが別々にならないような 工夫を施すことが特に好ましい。

-3-
 すなわち、旋回子(1) が拘束部(S) 回りに揺 動可能にされているようにすれば、伝動体(B)  を方向転換付与手段(P) ‥間に架け渡した 態において、
 ・転回経路(R1)においては、拘束部(S) にお て拘束されている旋回子(1) ‥が展開(unfold) することにより、各方向転換付与手段(P) の 心でもある第1アーク(A1)の中心点(O1)から見 放射状の正姿勢を保ちつつ走行し、かつ、
 ・方向転換付与手段間経路(R2)においては、 拘束部(S) において拘束されている旋回子(1) ‥が互いの背腹部(1b), (1b)同士で接触するよ うに重なって(foldして)圧接した状態で、第2 ーク(A2)の中心点(O2)から見て放射状の正姿勢 を保ちつつ走行する、
ようになるので、旋回子(1) の動きと拘束部( S) との動きとが常に「同期(連動)」すること になって、無駄な動きや無駄な摩擦がなくな り、エネルギーロスが最小となる。

[旋回子(1) が閉ループ状に配列された配列体 ]
 伝動体(B) は、多数個の旋回子(1) ‥が拘束 手段(2) により拘束部(S) において拘束され 閉ループ状に配列された配列体からなる。 束手段(2) が旋回子(1) とは別部材であると は、旋回子(1) の側も拘束手段(2) の拘束を 受けることのできる形状または構造にする。

[旋回子(1) ]
(旋回子(1) の両サイド部(1a), (1a))
 すでに述べたように、旋回子(1) の両サイ 部(1a), (1a)は、方向転換付与手段(P) がV形溝 形状を有する場合、方向転換付与手段(P) の 斜面との接触部(C) となる。
 旋回子(1) の両サイド部(1a), (1a)は、方向転 換付与手段(P) のV形溝の傾斜面との摩擦係数 の調整のため、摩擦抵抗が少ない表面にした り、逆に摩擦抵抗が大きい表面にしたり、あ るいは方向によって摩擦係数が異なるような 表面としたりすることができる。たとえば、 鏡面加工面;粗面;凹凸、エンボス、溝、盛り がり等の非平面加工面;とすることができる 。このうち非平面加工面の例は、#状、波線 、散点状、斜線状、T字状、十字状、基端-遊 端方向の直線状、厚み方向(背-腹方向)の直線 ないし曲線状などである。
 このような接触部(C) は、その表面状態に じて1箇所または複数箇所とすることもでき 。

(旋回子(1) の背腹部(1b), (1b))
 旋回子(1) の背腹部(1b), (1b)は、平面、曲面 、段差面などとすることができる。
 旋回子(1) の背腹部(1b), (1b)の表面は、上記 の旋回子(1) の両サイド部(1a)の説明の箇所で 述べたように、鏡面加工面;粗面;凹凸、エン ス、溝、盛り上がり等の非平面加工面;とす ることもできる。

(他の工夫)
 旋回子(1) には、種々の配慮(たとえば応力 の配慮や軽量化の配慮)から、貫通孔、窓、 窪みなどを設けることもできる。

(旋回子(1) の形状)
 旋回子(1) の側面視(サイド部(1a)側から見た とき)の形状は、楔形、四角形、凹レンズ形 凸レンズ形、逆台形などとすることができ 。
 旋回子(1) の正面視(背腹部(1b)側からの見た とき)の形状は、逆三角形状、逆台形状、扇 、野球ベース状などとする。両サイド部(1a),  (1a)が方向転換付与手段(P) のV形溝に接触す る面になるので、正面視ではベルトの内周側 に向かって狭くなる形状とするのである。

(旋回子(1) の材質)
 旋回子(1) の材質は、必要な強度や耐摩耗 を有する限りにおいて(オイル使用下に使用 るときには耐油性も)、任意の材質とするこ とができる。材質の例は、金属、プラスチッ クス、セラミックス、炭素材、天然物(石、 質材、竹材、貝殻、甲羅、牙等)などである

 プラスチックスの場合には、長繊維や短 維と組み合わせて繊維強化プラスチックス( FRP)や繊維強化熱可塑性プラスチックス(FRTP) したり、樹脂にウイスカー、フィラー等を 合したものを成形材料とすることも多い。 素材(木炭、竹炭など)の場合は、これに樹脂 成分を含浸、硬化させるなどして強化するこ ともできる。金属の場合も、繊維やカーボン を配合して強度やその他の性質を上げること ができる。木質材や竹材の場合には、強化木 や強化竹としたものを用いることができる。

 旋回子(1) は、1つの材料で構成するだけで く、2以上の材料を組み合わせて複合構造と することもできる。たとえば、内部-外部、 層-内層-外層のような多層構造である。また 、1つの材料であっても、必要に応じて、内 側と表面側との比重が異なるような多層構 とすることもできる。旋回子(1) の表面には 、各種のコーティング処理やメッキ加工を施 すこともできる。
 旋回子(1) が金属であるときは、熱処理、 工硬化処理、表面処理などの加工または処 を施すことも多い。

 旋回子(1) は、1ピース(1片)で構成するだ でなく、複数のピースで構成することもで る。たとえば、巾方向(サイド部(1a)-サイド (1a)方向)にスライスした形の複数個のピー を準備し、それらのピースを積層して旋回 (1) とすることができる。また、厚み方向( 腹部(1b)-背腹部(1b)方向)にスライスした形の 数個のピースを準備し、それらのピースを 層して旋回子(1) とすることができる。こ らの場合の各ピースは、同一の材料で構成 てもよく、異種の材料で構成してもよい。

(旋回子(1) の作製法)
 旋回子(1) を作製する方法には制限はない 材質が金属であるときは、打ち抜き、鋳造 切削加工、研磨加工、曲げ加工、折り畳み 工、メタルインジェクションモールディン (MIM)法をはじめとする任意の方法を採用する ことができる。パイプを押し潰して変形させ る方法も可能であり、そのときにはパイプに 芯材を挿入してから変形させることもできる 。各部に分割したものを作製してから、接着 、嵌め合い、溶接などにより組み立てる方法 も採用できる。

 材質がプラスチックスであるときは、切削 工、打ち抜き加工などの加工法;射出成形、 押出成形、圧縮成形などの成形法;光造形法; はじめとする任意の方法を採用することが きる。
 その他の材質である場合も、それぞれの材 に見合った作製法ないし成形法が採用され 。

[拘束手段(2) ]
-1-
 拘束手段(2) は、旋回子(1) ‥を拘束して閉 ループ状にする手段である。
 この場合、旋回子(1) は拘束手段(2) との拘 束部(S) 回りに揺動するようにすることが特 好ましい。なお、拘束手段(2) が柔軟なと には、拘束部(S) を起点にして屈曲により揺 動させることもできる。
 拘束手段(2) が旋回子(1) とは別部材である ときは、そのような拘束手段(2) としては、 ンジ(蝶番)機構を利用した手段、チェーン 構を利用した手段、フープ(つまり閉ループ のベルト)を利用した手段などがあげられる 。

-2-
 拘束手段(2) がヒンジ(蝶番)機構を利用した 手段であるときは、拘束手段(2) はピンのみ またはピンと筒状軸受けとの組み合わせだ で足りることが多い。旋回子(1) 側には、 のピンや筒状軸受けを受ける部分である軸 け孔を用いればよい。軸受け孔は、たとえ 、旋回子(1) の一部に貫通孔を設ける方法、 パイプを用いる方法、折り曲げによる「6」 字状の部分を設ける方法など、任意の手段 採用できる。

 上記のピンとしては、断面形状が、円、 円、半円、三日月状、多角形(三角形、四角 形、六角形、八角形等)、十字形、星形など ある棒状物またはパイプ状物が用いられる 半円や三日月状の断面形状の棒状物を背中 わせに2つ組み合わせて用いることもある。 ンの両端または片端は、ストレートのほか 先細り、ストレート、頭付きなどであって よい。ピンを抜け止め構造とするために、 終的にはピンの両端を膨頭状にしたり、割 ピン、クリップ、ねじなどにより固定した 、かしめたりしてもよい。

 また、たとえば、旋回子(1) の軸受け孔周 の一方の側面には、一方に隣接する旋回子(1 ) 同士が50°程度傾けられたとき抜け防止機 が解除される位置に抜け止めツメを設け、 方の側面には、隣接する旋回子(1) の傾きに 関係なく常に抜け防止ができる位置に抜け止 めツメを設ける方法によって、ピンが抜け落 ちない構造とすることもできる。
 このとき、常時抜け防止作用を有する側の け止めツメに代えて、軸受け孔の一部また 全部塞ぐ壁を設けてもよい。
 このような方法の利点は、旋回子(1) は片 の軸受け孔でピンの挿入を可能にしつつ、 動体(B) として組み立てた後は、両方の軸受 け孔の側面ともツメの存在によりピンが抜け 落ちることがなく、しかも、ピン挿入に伴う 旋回子(1) およびピンの傷つきなど伝動体(B) 製造時の破損を可能な限り防止することが きる点にある。

-3-
 拘束手段(2) がチェーン機構を利用した手 であるときは、外プレート、内プレート、 ン、ブッシュ、筒状軸受けなどのパーツを み合わせて用いる。
 拘束手段(2) がチェーン機構を利用した手 であるときの変形例として、旋回子(1) を拘 束補助部(2’)を介して拘束手段(2) と連絡す ことも可能である(図50を参照)。

-4-
 拘束手段(2) がフープ(閉ループ状のベルト) を利用した手段であるときのフープとしては 、必要な強度、フレキシブル性、巾方向の形 状維持性を兼ね備えたフープが用いられる。
 そのようなフープの例としては、
 ・織布製の閉ループ状のベルトであって、 方向の糸に相当する材料が、ピンの役割を たす棒状物やパイプ状物であるもの;
 ・高強力繊維でできた糸を巻回すると共に 方向の散開を防止する手段を施した閉ルー 状のベルトであって、旋回子(1) の基端側 連結または拘束する手段を備えたもの;
 ・高強力繊維でできた織布製ベルト、金属 フープ、芯線入りのゴムベルトなどのフー であって、旋回子(1) の基端側を連結また 拘束する手段を備えたもの;
 ・腕時計のベルトに類似のものであって、 回子(1) の基端側を連結または拘束する手 を備えたもの;
 ・立体織布でできたフープであって、その 布の織り目の空隙にピンの役割を果たす棒 物やパイプ状物を挿入設置できるもの;
などがあげられる。これらのフープは、2層 上の積層または重層フープであってもよい 、フレキシブル性や強度を満足させた単層 フープが好ましい。

[旋回子(1) および拘束手段(2) の具体例]
 旋回子(1) および拘束手段(2) については、 後述の実施例の箇所において、そのいくつか を図と共に例示する。

[伝動体(B) の組み立て]
 多数個の旋回子(1) ‥を閉ループ状に配列 て伝動体(B) を組み立てるときの旋回子(1)  配列は、同じ形状の旋回子(1) を配設する とが多く(たとえば、AAAAA・・というように) その方が旋回子(1) の製造コストや品質管 の点においても好ましいことが多い。
 しかしながら、2種あるいはそれ以上の種類 の形状のものを、一定の規則で組み合わせて (たとえば、ABABAB・・、ABCABC・・・、AABAAB・ というように)またはランダムな順序で組み わせて、伝動体(B) に組み立てることも多 。

 なお、拘束手段(2) による旋回子(1) の拘 束は、隣接する旋回子(1), (1)間を連結する態 様のみならず、一つ飛ばしや二つ飛ばしのよ うに、ある旋回子(1) から見て1個ないし数個 前方(または後方)の旋回子(1) を連結するよ にすることも可能である。

[変速を行うための装置]
 本発明の伝動装置が無段変速機であるとき 、方向転換付与手段(P) にはV形溝を有する のを用い、伝動体(B) にはその方向転換付 手段(P) のV形溝に嵌まり込む大きさおよび 状を有するものを用いるのが通常である。

 変速を行うためには、方向転換付与手段( P) に対して伝動体(B) ができるだけスリップ をしないように、必要な押し付け力(クラン 力)が得られるような制御を行う。制御とは 方向転換付与手段(P) のV形溝の間隙の制御 ことである。この制御は、通常は油圧で行 、必要に応じてスプリングによる押し付け を併用する。油圧制御に代えまたは油圧制 と共に、モーターを用いて電動制御するこ も可能であり、また、スプリングと、遠心 を利用してV形溝を調節するボール(遠心錘) を用いることも可能である。なお、方向転 付与手段(P) のV形溝の間隙の制御に代えて るいはその制御と共に、方向転換付与手段( P), (P)の軸間距離の制御を行うこともある。

 現行のベルト方式CVTにおけるプライマリー ーリーおよびセカンダリープーリーの可動 ーブへの油圧供給方式には、
 ・片調圧方式:セカンダリープーリーにライ ン圧を供給し、プライマリープーリーに変速 のための変速圧を供給する方式、
 ・両調圧方式:ロー変速比側では、セカンダ リープーリーにライン圧を供給し、プライマ リープーリーに変速のための変速圧を供給し 、ハイ変速比側では、プライマリープーリー にライン圧を供給し、セカンダリープーリー に変速のための変速圧を供給する方式)など あるが(非特許文献2(「無段変速機CVT入門」) 128~130頁の説明を参照)、本発明の伝動装置( 段変速機)においても、そのような既存の油 圧制御法を含め任意の油圧制御法を採用する ことができる。

 本発明の伝動装置(無段変速機)にあって 、後述のように、伝動体(B) に加わる引張力 が従来のベルト(引張式ベルト)に比し格段に さいので、それに応じて装置を小型化した 、油圧による力を小さくしたり、油圧室を さくしたり、油圧制御のための電子制御プ グラムを簡単化したりすることができる。 た、油圧以外のアクチュエータによる変速 構を用いることもできる。これらの利点は 車両重量の軽量化、燃費の低減にも貢献す 点である。

 たとえば自動二輪車やスノーモービル用 CVTに適用する場合には、遠心錘(遠心力を利 用するウエイトローラ)に働く遠心力を利用 て、方向転換付与手段(P) のV形溝の間隙(固 シーブ(Pfs) と可動シーブ(Pms) との間の間 )を制御することにより変速を行う方式も採 できる。

 たとえば自転車用のCVTに適用する場合に 、ハンドル操作やスロットル操作により手 で、またはセンサを利用して自動で、方向 換付与手段(P) のV形溝の間隙を変更し、変 を行うこともできる。

 無段変速機に代表される伝動装置に搭載 る各方向転換付与手段(P) ‥の配置の仕方 、水平方向、上下方向、斜め上下方向をは め任意である。

〈用途〉
-1-
 本発明の伝動装置および伝動体は、下記に 示するような用途に好適に用いることがで る。
 この場合、本発明の伝動装置が変速機でか 本発明の伝動体が変速機用の伝動体である 合に限らず、変速を伴わない使い方をする 途(たとえば、従来のVベルト、平ベルト、 イミングベルト、チェーンなどが使われて る各種の用途)であっても差し支えない。

-2-
 ・大型自動車、普通乗用車、小型乗用車、 自動車、バス、トラックなどの内燃機関・ ーター・圧縮空気等を駆動力とする自動車 。
 ・軌道車、無限軌道車用。
 ・自動二輪車用。
 ・自転車;三輪自転車;電動アシスト機能付 自転車;原動機付き自転車用。
 ・電動または手動の車椅子用。
 ・農業用機械器具(耕耘機、収穫機(刈り取 機、脱穀機)等)、漁業用機械器具。
 ・化学機械器具、繊維機械器具、金属加工 械器具、鉱山機械器具、土木機械器具、荷 機械器具、食品加工機械器具、製材・木工 械器具、製紙用機械器具、印刷機械器具な の産業用機械器具用。
 ・事務用・民生用の機械器具用。
 ・エレベーター;エスカレーター;移動歩道; 物用リフト、鉱山用リフト;クレーン;コン ア;巻き上げ機(ウインチなど);索道;揚重装置 ;牽引装置などの搬送装置または牽引装置用
 ・船舶関連装置、船外推進装置(スクリュー 駆動装置)、航空機関連装置、発電システム( 水力発電機を含む)、建築または土木関連装 置。
 ・これらに属さない動力伝動装置

〈従来技術としてのV1~V5のVベルト〉
 背景技術の箇所の〈従来の技術〉の項にお ては、無段変速機(CVT)のうちベルト方式CVT 属する従来技術として、次のV1~V5のVベルト あることを述べた。
   V1:ゴム製Vベルト
   V2:重層フープ式Vベルト
   V3:重層フープ-エレメント併用式Vベルト
   V4:チェーン式Vベルト
   V5:複合Vベルト

 そして、背景技術の箇所の〈従来技術の問 点〉の項においては、これらのV1~V5の5つの イプのベルトがいずれも引張式ベルトであ ことに起因する共通の問題点を有している とを述べた。
 なお、上記5つのタイプのベルトのうちV3の イプのベルトは、「緩み側経路に生ずるエ メント間の圧縮力を補完的に利用した引張 ベルト」である点で他の4つのタイプのベル トとは相違しているが、基本はあくまで引張 式であるので、引張式であることの限界を有 している。V3タイプの改良発明として挙げた3 つの発明(i),(ii),(iii)のベルトも、同様の限界 有している。

〈本発明の作用効果〉
 以下、本発明の作用または効果を詳細に述 る。
 以下の説明においては、説明上の紛らわし を避けるため、第1セクタを第1アーク(A1)と 現し、第2セクタを第2アーク(A2)と表現して セクタ(sector)とアークとを区別せずに述べ いる場合がある。

[第1の特徴点(その1):アーク(円弧)構造]
(方向転換付与手段間経路(R2)における第2アー ク(A2))
-1-
 本発明の伝動装置および伝動体における第1 の特徴点は、すべての方向転換付与手段間経 路(R2)をアーク(円弧)(第2アーク(A2))に形成し ことである。この特徴点は従来技術とは構 の点で決定的に異なる上、作用効果の点で 決定的に異なる。

-2-
 本発明の伝動装置において方向転換付与手 間経路(R2)を第2アーク(A2)に形成するための 体的手段の代表例は、本発明の伝動体(B)  次のように構成することである。
 1.伝動体(B) は、多数個の旋回子(1) ‥が拘 手段(2) により拘束部(S) において拘束され て閉ループ状に配列された配列体からなるこ と。(ここで拘束手段(2) は旋回子(1) とは別 部材で構成してもよく、旋回子(1) の一部 拘束手段(2) としてもよい。)
 2.そして、拘束部(S) において拘束された個 々の旋回子(1) は、
 (M)その拘束部(S) 回りに揺動可能に構成さ ていると共に、
 (N)旋回子(1) ‥同士がそれらの背腹部(1b), ( 1b)が対向するように圧接したときに、伝動体 (B)の外周側または内周側に凸のアークとなる 圧接集合体(1n)構造が自律的に形成される形 または構造を有していること。

[第1の特徴点(その1)に基く作用効果]
-1-(第2アーク(A2)による押し力)
-1.1- 
 方向転換付与手段間経路(R2)をアーク(第2ア ク(A2))に形成するという特徴点を有する本 明にあっては、拘束部(S) において拘束され た旋回子(1) が方向転換付与手段間経路(R2)に おいてアーク状の圧接集合体(1n)構造(剛体構 )を自律的に形成するため、方向転換付与手 段間経路(R2)における力の伝達は本質的には 押し力」によりなされる。たとえばプーリ 数が2つで方向転換付与手段間経路(R2)が往路 と復路とからなるときは、力の伝達は往路お よび復路の双方とも「押し力」によりなされ る。以下に種々の観点から説明するように、 本発明においては、方向転換付与手段間経路 (R2)における力の伝達には引張力はそれほど 与しないのである。
 なお、従来の引張方式のベルトとの違いを 調するために、ここでは「押し力」にスポ トを当てているが、後述の[別な視点からの 考察]の説明も参照されたい。

 すなわち、本発明にあっては、上流の方 転換付与手段(P) のV形溝から吐き出された1 つの旋回子(1) は、方向転換付与手段間経路( R2)に形成されているアーク状の圧接集合体(1n )からなる第2アーク(A2)をその始端側から押し 、もともと始端側にあった旋回子(1) の席を める。これにより、第2アーク(A2)は旋回子(1 ) 1個分だけ該アークの中心点(O2)回りに回転 動し、当初の第2アーク(A2)の終端側に位置 ていた旋回子(1) は、当初のアークから押し 出されて下流の方向転換付与手段(P) のV形溝 に噛み込み、その下流の方向転換付与手段(P)  を回転させる。このようにして、上流の方 転換付与手段(P) の回転力は、第2アーク(A2) による押し力に変換された後、直ちに下流の 方向転換付与手段(P) を回転させる力に変換 れるので、円滑なトルクの伝達が図られる 簡単に図解すると、以下のようになる。

-1.2- 
 付言するに、本発明においては、伝動体(B) を方向転換付与手段(P), (P)間に閉ループ状 架け渡す初期設定段階においてすでに方向 換付与手段間経路(R2)には剛体アーム状の第2 アーク(A2)構造が完成している。言い換えれ 、すでにクランプ力を発揮させるための初 設定段階において、第2アーク(A2)による「押 し力」を介して、上流の方向転換付与手段(P)  から下流の方向転換付与手段(P) への回転 の伝達(つまりトルクの伝達)がなされる体制 にある(スタンバイの状態にある)。

-1.3- 
 これに対し、従来の技術の箇所で述べたV3 ベルトにあっては、エレメントとフープと 間が固定されていないため、初期設定段階 おいてはまだエレメント間に圧縮力は発生 ていない。V3のベルトにおいて「引張力」と 共に発揮させようとしている「圧縮力」は、 ベルトが稼働しはじめたときに、緩み側経路 において先行のエレメントに後行のエレメン トが次々と追い付いて渋滞することによりエ レメント間の圧縮力がゼロから所定の程度に までしだいに蓄積されていく現象を利用する ものであるので、ベルトが稼働してからはじ めて圧縮力が生ずるのである。

-1.4- 
 一般の引張式ベルトにおいては、従動側プ リーに負荷がかかった状態でベルトが稼働 たときには、往復経路のうち張り側の張力T x と緩み側の張力Ty との張力差δTに基くエ ルギーEが負荷Rに打ち勝つようになったとき に力の伝達がなされる。

 従動側プーリーの負荷が大きくなればな ほど大きな張力差δTが必要となるので、Tx  もそれに合わせて大きくしなければならない が、ベルトには強度上の限界があるので(ベ トの破壊、または破壊にまで至らなくても 久伸びを生ずる)、余り負荷が大きくなると 処しえなくなる。

 ここで、引張式ではあるがエレメント間に 縮力を発生させているV3のベルトと関連さ ながら考察してみる。
 模式的に述べると、V3のベルトにおける引 力の発現は、一般の引張式ベルトと同じく 張り側の張力Tx と緩み側の張力Ty との間に 張力差δTがあることに起因している(この張 差δTに基くエネルギーをEとする)。ところが V3ベルトにおいては、その張力差δTに起因し 、引張力だけでなく、エレメント間の圧縮 も生じている(その圧縮力に基くエネルギー をeとする)。このように、同じ張力差δTに起 して圧縮力に基くエネルギーeが発現するの で、引張力に基くエネルギーは(E-e)にまで減 ることになる(このエネルギー(E-e)は、新た バランスした張り側の張力Tx'と緩み側の張 Ty'との間に張力差δT’に基いている)。

 結局、V3のベルトにおいては「(E-e)+e=E」 エネルギーが負荷Rに抗してベルトを稼働さ ていることになり、圧縮力が発現しない一 の引張式ベルトに比してエネルギー上の得 はないが、引張力に基くエネルギー(E-e)は 新たにバランスした張り側の張力Tx'と緩み の張力Ty'との間に張力差δT’に基いている で(Tx'はTx より小さくすることができるので )、ベルトの耐久性にとって有利である。こ 場合、ベルトの引張強度の上限まで張り側 引張力を上げれば、より大きな負荷に対処 ることも可能となる。

-1.5- 
 これに対し、本発明において方向転換付与 段間経路(R2)に形成される第2アーク(A2)は、 路も復路も「押し力」である(引張力はそれ ほどは関係していない)ので、一般の引張式 ルトとは力の発生機構が相違している。(こ 点については、後に視点を変えて説明する )

 また、張力差を引張力に利用すると共にエ メント間の圧縮力も補完的に発現させてい V3のVベルトとも、力の発生機構が相違して る。
 さらに、本発明において方向転換付与手段 経路(R2)に形成される第2アーク(A2)に基く「 し力」には上限がないので、方向転換付与 段(P) として十分な推力を有し、かつ伝動 (B) としてクランプ力に堪えられる拘束手段 (2) を選定すれば、V3のVベルトを含む引張式 ルトでは対処しえないような格段に大きな 荷に対しても対応可能になる。

-2-(第2アーク(A2)により発揮される押し力の伝 達と向き)
 次に、本発明において第2アーク(A2)により 揮される押し力の伝達と向きについて検討 てみるが、その前に理解を容易にするため アナローグとして、次に述べる図4のモデル 考えてみる。
 図4(i)のように、同じ長さRの糸でつないだ くつかの球を同一の中心点(O 2 )から1つの垂直平面に並べてみると、球1~球7 互いに密接して集合体となりアークを描く この状態で図の左側から新たな球0を押し当 てることにより力Qを入力して各球を1ピッチ だけ動かしたならば、図4(ii)のように、力Q 、球1から球2に、球2から球3にというように 次々に伝達され(そのときのベクトルの向き アークの接線方向に沿う)、最後に球7から力 Qが出力される。このときには、各球の位置 1ピッチずつ右側に移り、当初の座標におい 球1~球7の集合体が占めていた位置は球0~球6 集合体が占めるようになる。観点を変えて ると、各球は互いに接触してアーク状の集 体になっているので、球列からなるアーク 、力の方向をアーク方向に変えつつ力を無 なく伝達する変換機の役割を果たしている
 図4のモデルにおいては、球の集合体で形成 されているアークは安定であり、力Qの伝達 向はアークの接線方向であり、かつその力Q 伝達が円滑であることは容易に理解できる あろう。

-3-(第2アーク(A2)のメンバーである個々の旋回 子(1) に加わる力)
 本発明にあっては、方向転換付与手段間経 (R2)において、アーク状の圧接集合体(1n)か なる第2アーク(A2)が形成されているので、そ の第2アーク(A2)における力の伝達について、 記-2-の状態を念頭におきながら、具体的に 察してみる。
 まず、方向転換付与手段(P), (P)間に伝動体( B) を架け渡した初期設定段階において、す にプーリー間経路(R2)には圧接集合体(1n)から なる第2アーク(A2)が形成される。この第2アー ク(A2)は、従動側の方向転換付与手段(P) に負 荷がかかった状態において駆動側の方向転換 付与手段(P) を駆動させたときにも維持され 。

 方向転換付与手段間経路(R2)に形成された圧 接集合体(1n)からなるからなる第2アーク(A2)は 、図5に模式図を描いたように、旋回子(1) が 楔(くさび)のように配列されて(楔の頂角を2δ とする)アーク状になったものである。この 態は、図4のモデルと非常に良く似ている。
 このように、本発明においても図1のように 旋回子(1) ‥の圧接集合体(1n)により、(O 2 )を中心点とする半径Rの第2アーク(A2)が形成 れており、力Qの伝達はそのアークの接線方 になされるので、図4のモデルと同様の挙動 がなされると共に力Qの円滑な伝達がなされ わけである。

 では、もし圧接集合体(1n)を構成する旋回子 (1) に、アークの接線方向以外に向く力が働 たときはどうなるであろうか。このような として起こりうるのは、図6に模式図を示し たアークから旋回子(1) が飛び出す方向に働 力である。
 図6において、両隣に位置する旋回子(1), (1) に挟まれた旋回子(1) は、その両隣に位置す 旋回子(1), (1)から楔の斜面に垂直なQ,Qの力 受けているため、伝動体(B) の外周方向に かう分力Pが働くことが考えられる。

 今、旋回子(1) の頂角(旋回子(1) の背腹部 斜面がなす角度)を2δ(その角度の1/2はδ)とす ると、図6において、
   P/2=Q sinδ
の関係にあるから、
 ・δが 0.9°(0.005 ラジアン)のときは、P≒Q/2 00、
 ・δが 1.8°(0.01ラジアン)のときは、P≒Q/100
 ・δが 3.6°(0.02ラジアン)のときは、P≒Q/50
となる。

 すなわち、圧接集合体(1n)からなる第2ア ク(A2)を構成メンバーである旋回子(1) をベ トの外周側にはじき出そうとする分力Pが働 たとしても、その力Pは上記の力Qに比し圧 的に小さいので、旋回子(1) を拘束する拘束 手段(2) または拘束部(S) をそのPに耐えうる うに設計することは容易である。ちなみに 上記のPに耐える力は、従来の引張式Vベル に要求される引張耐性に比すれば非常に小 い。

-4-(旋回子(1) 、拘束手段(2) の製作上の制約)
 先に述べたように、本発明においては、方 転換付与手段間経路(R2)における力の伝達は 、本質的には「押し力」になり、引張力はほ とんど関与しない。拘束手段(2) による拘束 (S) における旋回子(1) の飛び出しを防ぐ力 Pの源泉として、引張力が関与する場合も考 られるが、その力Pは押し力に直接関与する Qに比しては格段に小さい。本発明において は、従来の引張式のVベルトの場合のような 張力は、原理上ほとんど発生しないのであ 。

 そして、第2アーク(A2)構造を介して方向 換付与手段間経路(R2)の一端から他端に伝え れる力Qが大きくなればなるほど、むしろ第 2アーク(A2)構造は安定化し、しかもその安定 は原理上も旋回子(1) の背腹部(1b), (1b)表面 の製作精度にはそれほど影響しないばかりか 、第2アーク(A2)の形成は、隣接する旋回子(1) 同士の背腹部(1b), (1b)のみでの面接触である 必要すらなく、旋回子(1) 同士の背腹部(1b),  (1b)における2点接触;旋回子(1) と拘束部(S)  の2点ないし3点接触;をはじめ、アーク構造 維持できる接触であれば任意の接触態様が 能である。

 ちなみに、従来のV3のVベルトにあっては エレメントの背腹面の製作精度がほんのわ かでも狂うと圧縮体の構造が崩れ、フープ らエレメントがはじき出されてしまう場合 ある。

 従来の技術の箇所で挙げたV3のVベルトに する3件の改良発明(i),(ii),(iii)は、上述のよ なエレメントのはじき出され現象を防止す ことを念頭に置いた構造であると思われる 、V3のVベルトの耐久性はフープの耐久性能 左右されるという欠点を克服することはで ない。つまり、これら3件の改良発明は、緩 み側の経路を凸状のアークにすることの利点 と、フープ(ひいてはベルト全体)の耐久性を 牲にしなければならない欠点とをバランス せなければならず、張り側の経路をも凸状 アークに形成させることは到底できない構 である。

 さらに、本発明において方向転換付与手 間経路(R2)に形成された第2アーク(A2)構造に っては、拘束部(S) にはそれほどの引張力 かからないので、旋回子(1) 間の拘束に関与 する拘束手段(2) および拘束部(S) について 、V3のVベルトを含む従来の引張式Vベルトに し、その製作に際しての引張強度上の制約 少なくなる。

-5-(引張応力と圧縮応力)
 何度も述べるように、本発明にあっては、 束部(S) において拘束された旋回子(1) によ り、方向転換付与手段間経路(R2)においてア ク状の圧接集合体(1n)構造が自律的に形成さ るようにしてあるため、方向転換付与手段 経路(R2)における力の伝達は本質的には「押 し力」になる。従って、従動側の方向転換付 与手段(P)にかかる負荷が大きくなればなるほ ど、圧接集合体(1n)を構成する各旋回子(1) に は大きな圧縮力がかかることになる。

 さて、ある物体に「引張応力」をかけたと と「圧縮応力」をかけたときとを比較する 、一般に、圧縮強度は引張強度に比べては かに高いということができる。
 たとえば、「おはなし科学・技術シリーズ 金属材料試験のおはなし、財団法人日本規 協会発行、2002年8月5日第1版第1刷発行」の10 7~108頁および図4.2.5には、「ねずみ鋳鉄のよ にミクロの亀裂が内部に存在する材料は、 張応力が作用すると引張強さが低いもと考 られているが、ひとたび圧縮に用いると引 りのときとは比べものにならないほど高い 度値が得られる。」とあり、また「コンク ートの場合にも、圧縮強度は引張強度に比 て約6倍程度高く、また圧縮による変形量も 常に小さいことが知られている。」とある

 「技能ブックス20、金属材料のマニュア 、株式会社大河出版発行、平成17(2005)年5月15 日発行」の42頁には、金属材料の圧縮試験に して、「圧縮試験は引張試験の反対である とは理解できるが、実際には圧縮ではめっ に壊れないので規格もない。」とある。

 従って、本発明においては、旋回子(1)  は大きな引張力は働かないので引張力につ てはさほど顧慮するまでもなく、一方旋回 (1) には大きな圧縮力が加わるものの、その 圧縮力に耐えるように設計することは容易で ある。

-6-(静的アーチ構造との対比)
 付言するに、古来より建築・土木分野にお ては、トンネル、橋、窓などを構築するた の工夫として、煉瓦や石造りのアーチ構造( 上方に凸のアーチ構造)が知られている。こ アーチ構造は、静的状態で構造を維持する のであって、煉瓦や石の自重(つまり重力)に より発生する圧縮力が構造物の安定に巧みに 利用されている。この静的アーチ構造に上部 からさらに加重が加わっても、依然として極 めて安定である。
 ただし、この静的アーチ構造にあっては、 ーチの脚部には極めて大きな力がかかるの 、脚部の位置する土台部分をそれに耐える 造にしないとアーチが壊れてしまう。

 一方、本発明において方向転換付与手段 経路(R2)に自律的に形成される第2アーク(A2) 、旋回子(1) ‥の圧接集合体(1n)からなるの 、上記の静的アーチ構造の場合と同様に安 な構造を有する。 そして、本発明の伝動 置における伝動体(B) は、閉ループとして走 行する場合でも、駆動側の方向転換付与手段 (P) から方向転換付与手段間経路(R2)(第2アー (A2))を経て送られた押し力Qは小さくても大 くても従動側の方向転換付与手段(P) の回 (つまり、転回経路(R1)における伝動体(B) -方 向転換付与手段(P) 間のトルクの伝達)に無駄 なく有効利用されるので、Qが大きくなって 第2アーク(A2)の破壊につながることはない。 というより、Qが大きくなればなるほど第2ア ク(A2)の安定性は高まるようになる。

-7-(従来のV3のVベルトとの対比)
 先にも述べたように、従来の技術の箇所で べたV3のVベルトにおいて引張力と共に発揮 せている「圧縮力」は、従動プーリーを転 する経路内でエレメントが渋滞することに り後行のエレメントが次々と追い付いてエ メント間の圧縮力が蓄積されていく現象を 用して方向転換付与手段(P), (P)間のトルク 伝達の一助とするものである。

 このとき、圧縮状態は定常状態において 発生せず、負荷が発生した段階で初めて発 する。ベルトが1回転する間のエレメントの 挙動は、ベルトが駆動プーリーを出る少し手 前の時点から圧縮の程度が徐々に高まって、 駆動プーリーを出るときにはほぼ一定の圧縮 力になり、その圧縮状態は往路である従動プ ーリーに至る経路および従動プーリーを転回 する経路を経てから、その従動プーリーから 離れる手前になって徐々に小さくなり、従動 プーリーを離れたときには圧縮がゼロになっ て、その圧縮ゼロの状態は復路である駆動プ ーリーに戻る経路および駆動プーリーにおい て圧縮状態がはじまるまで続くものと解析さ れている。(非特許文献3を参照)

 ここで忘れてならないことは、エレメン を支えながら旋回するフープに働く「引張 」である。V3のVベルトにおいてエレメント に圧縮力を発揮させるためには、全周にわ り(エレメント間の圧縮がなされないルート のみならず、エレメント間の圧縮がなされる ルートにおいても)フープに引張力が働かな ればならないことである。換言すれば、全 にわたりフープの引張力がゼロになる部位 ないことである。このときのベルト全周に ける「引張力」の挙動は、負荷をかけてベ トを稼働させたときにおいて、ベルトが駆 プーリーを出るあたりから従動プーリーを し転回する所までが比較的小さく、従動プ リーを転回するにつれて徐々に高まり、従 プーリーを出てから駆動プーリーを転回す 時点で最大になり、駆動プーリーを転回す 間に徐々に小さくなるものと解析されてい 。

 そして、V3のVベルトにあってはプーリー 経路は直線となるが、直線では寸法精度の 差から真っ直ぐの方向に圧縮力を働かせる とは難しく、圧縮力が発揮されるときにエ メント列にほんの少しでも寸法精度の誤差 あると、力の方向が分散されて走行に乱れ 生じるためエネルギーロスとなるばかりか そのわずかの誤差(エレメントの背腹面の製 作精度)がフープからエレメントをはじき飛 してしまうという致命的な問題を招くおそ がある。このように、従来のV3のベルトは、 圧縮力を働かせながら直線を維持しなければ ならないという難しさをかかえており、その 構造上かなり無理をしている。

 V3のベルトにおける上記のようなエレメ トの圧縮挙動およびフープの引張挙動は、 発明とは本質的に相違している。本発明は V3のベルト(および他の従来の引張式ベルト) は、原理も機構も相違しているのである。

(V3の改良発明)
 V3の改良発明である(i),(ii),(iii)の発明は、上 述のV3のVベルト挙動の解析を考慮すれば、エ レメント列は重層フープの張力差が生じたと きにのみに凸-凹のアーク状構造、または一 の経路のみに凸状のアーク状構造になるこ が理解できる。
 したがって、上述の3つの改良発明により出 現するとされている凸状のアーク状構造は、 重層フープの張力状態により律せられるもの であり、初期の緊張された重層フープの張力 を考えれば出現するアーク高さ設定には限界 があり、耐久性や重層フープとの構造上の問 題などからも、見た目にはほとんど直線状態 に見えるアーク高さが許容されるだけである ことが容易に想像できる。

 加えて、これらの改良発明は、いずれも レメントにより緩み側経路で出現する押し を安定させてエレメント列の崩壊を防ぐこ が究極の目的と考えられ、その目的を達成 せるために結果として緩み側の経路にアー 経路が出現されているに過ぎず、経路をア ク状にすること自体を本来の狙いとするも ではない。事実、いずれの公報においても フープの耐久性維持の観点から、ベルトは ーリー間経路では直線またはできるだけ直 に近い構造がよい」と解釈できる趣旨の記 がある。

[第1の特徴点(その2):アーク(円弧)構造]
(転回経路(R1)における第1アーク(A1))
-1-
 本発明の伝動装置において転回経路(R1)がア ーク(第1アーク(A1))を形成するのは、従来のV1 ~V5のVベルトを用いた場合と類似しているよ に見える。
 しかしながら、本発明の伝動装置において 転回経路(R1)における第1アーク(A1)は、方向 換付与手段間経路(R2)における第2アーク(A2) よる拘束を受けているので、従来のV1~V5のV ルトを用いた場合の転回経路とは質的に相 している。
 そこで、本発明における転回経路(R1)の第1 ーク(A1)に働く引張力について検討する。

-2-
 まず従来の引張式のVベルトの場合には、そ の作動時にプーリーとの間で滑りを生じない ように、極めて大きな引張力がベルトにかか っている。
 これをプーリーの立場から見ると、2つのプ ーリーには互いに近づく方向の大きな力をベ ルトから受けているため、各プーリーの軸に は極めて大きな力がかかっていることになる 。また、各プーリーにおいても、その固定シ ーブ-可動シーブ間の平行関係を変形させよ とする(歪ませようとする)極めて大きな曲げ モーメントがかかっており、その曲げモーメ ントにより小径のプーリー側の方にベルトが 必要以上に食い込んでロー側に変速しやすく なるという傾向がある。

 従来の引張式のVベルトのうちV3のVベルトに あっても、重層フープに働く引張力が大きい ので、駆動プーリーと従動プーリーとは互い に近づく方向の大きな力をベルトから受けて いる。そのため、特に小径のプーリー側にお いてプーリーのV形溝にベルトが深く噛み込 やすくなり、固定シーブ-可動シーブ間の平 性が損なわれ、そのままでは勝手にロー側 変速するような力が働いてしまうという現 が起きる。
 そのような予期せぬロー側への変速を防止 るためには、プーリーに加える油圧を必要 上に過大にせざるをえないが、このことは ネルギー的に見て不利となる。ベルトの走 は、プーリーとの間で滑りを起こさない範 において油圧が小さい方が円滑であり、か エネルギー的にも有利であるからである。

-3-
 これに対し、本発明においては、拘束部(S) において拘束された旋回子(1) は、方向転換 付与手段間経路(R2)において自律的にアーク の圧接集合体(1n)構造に形成されている。そ 結果、各方向転換付与手段(P) は、その圧 集合体(1n)によるアーク状の腕でかかえられ いるようになっており、かつ各方向転換付 手段(P) を転回する転回経路(R1)の第1アーク (A1)も、同様にその両端側をアーク状の腕で かえられているようになっている。

 このような状態は、図1によっても理解で きる。図1において如何ように変速作動させ も、2つの内接円は、第1アーク(A1)および第2 ーク(A2)で囲まれた経路に内接するようにな っているので、各方向転換付与手段(P) には 端に無理な力は働かず、転回経路(R1)におい て方向転換付与手段(P) のV形溝に挟まれてい る状態の個々の旋回子(1) 間の間隙を離そう するような無理な力も働かない。

-4-
 図1において、もし左側の内周円の第1アー (A1)を構成している旋回子(1) ‥に対してた えば半径方向外周側に滑動するような強い がかかったとしても、それは隣接する旋回 (1) ‥の間隙が開いて隣接する旋回子(1) 間 強い引張力が働くことにはならず、方向転 付与手段間経路(R2)における第2アーク(A2)の 長および角度βの変化、左側の内周円の第1 ーク(A1)の弧長およびθ11の変化、第2アーク( A2)および第1アーク(A1)における旋回子(1) の の増減、に吸収され、結局は転回経路(R1)に いて方向転換付与手段(P) のV形溝に挟まれ いる状態の個々の旋回子(1) 間の距離を離 うとするような無理な力は発生しないので る。
 つまり、伝動装置の一例である無段変速機 図1の状態になるように初期設定すれば、そ の無段変速機の作動後も図1の関係が保たれ ように働くのである。

[第2の特徴点:アークからアークへの移行点]
 本発明の伝動装置における第2の特徴点は、 伝動体(B) を方向転換付与手段(P) ‥間に架 渡した状態において(そして作動させた状態 おいても)、第1アーク(A1)と第2アーク(A2)と 間の移行点(tr)が、第1アーク(A1)の中心点(O1) 第2アーク(A2)の中心点(O2)との双方を通る直 上に位置するように設定されることである
 そのため、第1アーク(A1)と第2アーク(A2)との 間の移行点(tr)においても伝動体(B) の走行が 最も円滑になり、上記の第1の特徴点を採用 たことによる利点が最大限に生かされる。

[第3の特徴点:接触部(C) と拘束部(S) との位 関係の工夫]
 本発明における第3の特徴点は、伝動体(B)  組み立てられた旋回子(1) において、図7に 式図を示したように、該旋回子(1) の両サ ド部(1a), (1a)における方向転換付与手段(P)  V形溝との接触部(C) が伝動体(B) の外周側 位置し、該旋回子(1) を拘束する拘束部(S)  ベルトの内周側に位置するようにすること ある。
 このようにすると、方向転換付与手段間経 (R2)において第2アーク(A2)の形成がさらに安 してなされるようになり、上記の第1の特徴 点、さらには上記第2の特徴点を採用したこ による利点が最大限に生かされる。

[第4の特徴点:旋回子(1) の動きと拘束部(S)  動きとの関係の工夫]
 本発明における第4の特徴点は、
 ・旋回子(1) が拘束部(S) 回りに揺動可能に されていること、および、それにより伝動体 (B) を方向転換付与手段(P) ‥間に架け渡し 状態において、
 ・転回経路(R1)においても方向転換付与手段 間経路(R2)においても、拘束部(S) において拘 束されている旋回子(1) が、第1アーク(A1)の 心点(O1)、第2アーク(A2)の中心点(O2)から見て 放射状の正姿勢を保ちつつ走行するように てあること
である。

 このようにすると、旋回子(1) の動きと 束部(S) の動きとが常に「同期(連動)」する とになって、ベルト走行時の無駄な動きや 駄な摩擦が著減し、エネルギーロスが最小 なる。そのため、上記の第1の特徴点、上記 第2の特徴点、さらには上記第3の特徴点を採 したことによる利点が最大限に生かされる

[まとめ]
 よって、本発明の伝動体を使用すれば、動 伝達に引張力を利用していた従来の各種の 張式のベルトにおける種々の制約および限 から解放されるので、伝動体構成部材の材 の選択肢の拡大、伝動体構成部材の製作精 の緩和、伝動体の長寿命化、伝動体の小型 、伝動体の軽量化が図れるようになり、さ には関連部材ないし装置(方向転換付与手段 、油圧制御機構、電子制御機構など)の簡単 やシンプル化が図られ、ひいては本発明の 動体および伝動装置を搭載した自動車等の 量化、燃費向上、振動や騒音の抑制なども られる。

[別の視点からの考察]
 さて、伝動体を用いた伝動にあっては、伝 体が走行することにより伝動が行われてい 。
 本発明者は、このような観点からリングを む伝動体の走行状態を考慮しつつ、以下に いては、2つのプーリー間に架け渡された閉 ループ状の伝動体に加わる力の関係について 考察し、プーリーにより回転する円板ないし リング状の伝動体に加わる力の関係について も言及する。

(1)引張方式ベルトにおける力の解釈
-1-
 引張方式ベルトには、クランプ力を発生さ るため(滑りを生じさせないため)の引張力A 、動力を伝えるための引張力Bとがあると考 える。
 前者の引張力Aは、直接には動力の伝達には 関与していないので負荷時(負荷を受ける状 での作動時)においては引張力Bがベルトを走 行させるための力として作用する。
 ただし、引張力Aは、負荷の大きさに準じて その負荷に見合うだけの引張力が得られるよ うに設定ないし調節しなければならない。

-2-
 たとえば、発進時においては、その動力源 ら供給される駆動側プーリーの回転がベル 走行を規制し、従動プーリーはそのベルト 行により回転されているのであるから、ベ トの走行状態を理解するためには駆動プー ーを中心に解釈する必要があると考えられ 。
 駆動プーリーは、一方でベルトを送出させ がら(送り出しながら)他方でベルトを送入 ている(引き込んでいる)。従動プーリーは、 駆動プーリーにより送出され(送り出され)て たベルトを送入させられ、かつ駆動プーリ により送入される(引き込まれる)ベルトを 送出させられているのである。
 つまり、ベルトから見ると、一方では駆動 ーリーから押し出される力(引張力Bとは逆 向の力)が供給され、他方では駆動プーリー 引き込まれる力(引張力Bと同じ方向の力)が 給されていると考えることができる。
 従来は、このような押し出される力および き込まれる力は、負荷によるベルト走行を 止する力が働く従動プーリーを中心に解釈 れ、「緩み側張力」および「張り側張力」 して前述の引張力Aおよび引張力Bとを区別 ない形で理論化されている。
 上述の本発明者の解釈にしたがって押し出 れる力および引き込まれる力を考えた場合 あっても、駆動プーリーから見て、下流の 路においては引張力Aが押し出される力(マ ナスの引張力B)の影響を受けて「緩み側張力 (A-B)」を形成し、上流の経路においては引張 Aが引き込まれる力(プラスの引張力B)の影響 を受けて「張り側張力(A+B)」を形成すること なるので、上記従来の理論を説明している とになる。

-3-
 このような本発明者による力の解釈によれ 、V3のベルトは引張方式ベルトで活用でき かった押し出される力を押し力として利用 きる構造になっていると理解できる。しか ながら、従来の張力のみから説明されてい 理論による解釈では、V3のベルトにおける緩 み側経路に発生する圧縮力の源泉を理論的に 説明することが難しい。

(2)本発明の伝動体およびリング体を含む上位 概念の伝動体における力の解釈
-1-
 上述のプーリーを使った一方から他方への 力伝達媒体として利用されている伝動体は より広い概念から見ると、引張方式ベルト どの「柔軟構造体」とリング体などの「剛 造体」とに分けることができる。
 前者の柔軟構造体が張力のみで動力伝達を い、後者の剛構造体は押し力のみで動力伝 を行っているように見えるため、両者には 通点がないと思われているが、駆動側プー ーにおいて、一方で伝動体を送出させなが 他方で伝動体を送入している点に着目すれ 、両者共に同一のメカニズムに基づいて走 し、動力を伝達していることが分かる。
 よって、駆動側プーリーが、伝動体を送出 る力を「緩み側張力」と称しかつ伝動体を 入する力を「張り側張力」と称すれば、引 方式ベルトの力の伝達を指す。同様に、送 する力および送入する力をそのまま理解す ばリング体の力の伝達を指すことになる。
 このような観点から、本発明の伝動体、引 方式ベルトおよびリング体を含む上位概念 伝動体が、一つの理論で説明できるのであ 。
 ちなみに、両者に差が見られるのは、柔軟 造体が送入する力のみを張力(引張力B)とし 力の伝達に利用しているのに対し、剛構造 は送出する力および送入する力(両者で引張 力Bに相当)を同時に力の伝達に利用している である。剛構造体は、引張力Bに相当する力 を送出する力および送入する力の2つに分散 ている点で柔軟構造体よりも伝動体の寿命 対して有利に働くことが予想される。
 また、柔軟構造体はクランプ力(引張力Aに 当)を多数箇所で受け止めることができるの 対し、剛構造体はクランプ力を一箇所でし 受け止めることができない構造になってい い点を挙げることもできる。柔軟構造体は クランプ力を多数箇所に分散して受け止め ことができる点で剛構造体よりも伝動体の 命に対して有利に働くことが予想される。
 しかるに、本発明の伝動体(B) は、第2セク が剛体構造を形成している点で送出する力 よび送入する力を同時に利用でき、併せて 1セクタが柔軟構造を形成している点でクラ ンプ力を多数箇所に分散して受け止めること ができる。

 なお、本発明の伝動体を説明するにあた 、送出する力を押し力、送入する力を引張 として記述している箇所もあるが、これは 上述のような上位概念に基づく力関係の考 方で記述するよりも、従来の力関係の考え に準じて記述した方が分かり易い場合もあ と考えたからである。

 以下、実施例をあげて本発明をさらに説 する。

[図の説明]
 図8は、本発明の伝動体(B) の一例を示した 面図であり、方向転換付与手段(P), (P)とし の2つのプーリー間に架け渡してクランプ力 を発生させるように調整した状態を示してあ る。
 図9は、図8の伝動体(B) の構成部材である旋 回子(1) の一例を示した説明図である。
 図10は、図8の伝動体(B) の構成部材である 束手段(2) の一例を示した説明図である。

[伝動体(B) ]
-1-(旋回子(1) 、拘束手段(2) )
 金属の一例としてのアルミニウム合金2017( ュラルミン)の板材を切削加工することによ 、図9に示した形状を有する旋回子(1) を作 した。
 図9中、(1) は旋回子であり、(1a)はサイド部 、(1b)は背腹部、(1c)は、図10の拘束手段(2) の ピン(2c)を挿入するための貫通孔である。

 旋回子(1) の背腹部(1b), (1b)は、わずかに テーパーを有する形状にしてある。これは、 方向転換付与手段間経路(R2)において旋回子(1 ) ‥の圧縮集合体(1n)からなる第2アーク(A2)が 形成されるようにするためである。

 上記の旋回子(1) は、「b」と「d」の形の2 を「bd」のように向かい合わせにしてピンを 通した構造の通常のヒンジ(蝶番)から一旦ピ を外し、順序を入れ替えて「db」のように 中合わせにすると共にその背中合わせの部 を一体化してからピンを嵌め直した構造に 似するものである。
 拘束手段(2) として、上記の旋回子(1) の貫 通孔(1c)に挿入するピン(2c)を準備した(図10を 照)。

-2-(伝動体(B) の組み立て)
 上記で準備した旋回子(1) の多数個を用い その貫通孔(1c)に上記で準備した拘束手段(2) (ピン(2c))を挿入設置することにより(その挿 設置部位が拘束部(S) となる)、閉ループ状 連結した。これにより、図8に示した伝動体 (B) が作製された。

-3-(方向転換付与手段(P), (P)の準備)
 シーブ角αがいずれも11°である固定シーブ( Pfs) と可動シーブ(Pms) とからなる方向転換 与手段(P) (V形溝の角度はシーブ角αの2倍の2 α)としてのプーリーを2組準備し、一方のプ リーは駆動側の軸に装着し、他方のプーリ は従動側の軸に装着した。従動側の軸には ブレーキによる負荷をかけることができる うにした。なお、架け渡して伝動体(B) の様 子が見えるようにするため、可動シーブ(Pms) は半透明のプラスチックス製のものを用い 。

-4-(初期設定)
 上記のプーリーのうちの一方(プライマープ ーリーと称することにする)を、モーターを 力源とする駆動軸に装着した。また、上記 プーリーのうちの他方(セカンダリープーリ と称することにする)を、ブレーキにより負 荷をかけることができる従動軸に装着した。
 続いて、上記で作製した伝動体(B) を各プ リーのV形溝に嵌め込み、まず各プーリーのV 形溝の間隙を調節してからプーリー間の軸間 距離を調節することにより、伝動体(B) が各 ーリーのV形溝の同じ位置になるように(つ り変速比=1:1となるように)きっちりと架け渡 し、クランプ力が発生するようにした。

-5-(作動実験1)
 このようにして調整した伝動体(B) につき 変速比を1:1に保った状態で、従動側のプー ー軸に対する負荷(ブレーキ)を、0(負荷なし) からはじめて、A、B、Cと段階的に高めて走行 させる実験を行った。(装置の関係上、負荷 変更は手動により行った。)
 なお、伝動体(B) の各プーリー との接触面 には適宜潤滑油を吹き付けて潤滑した。その 結果、従動側のプーリー軸に対する負荷(ブ ーキ)が0の状態はもとより、A、B、Cのいずれ の状態であっても、安定して滑らかに走行さ せることができた。伝動体(B) の上下動、軋 、騒音は、無視できるほどであった。

 走行時の伝動体(B) の状態は図1の如くであ 、
 ・左右の転回経路(R1)においては、左右の各 プーリーのそれぞれの中心を中心点とする第 1アーク(A1)が形成され、
 ・上下の方向転換付与手段間経路(R2)におい ては、中心点(O 2 ), (O 2 )を中心点とする第2アーク(A2)に形成され、
 ・両経路(R1), (R2)の移行点(tr)における両経 (R1), (R2)の接線は、共通接線となっていた

-6-(作動実験2)
 次に、左右の各プーリーのV形溝に嵌め込む ときの伝動体(B) の位置を変更することによ 、変速比(従動側伝動体(B) 半径:駆動側伝動 体(B) 半径)を、上記の1:1のほか、ロー変速比 (およそ2:1)およびハイ変速比(およそ1:2)の水 に設定、また従動側のプーリー軸に対する 荷を上記のA、B、Cの水準に変更して、伝動 (B)
を作動させる実験を行った。

 なお、伝動体(B) の各プーリーとの接触面 は適宜潤滑油を吹き付けて潤滑した。
 ハイ変速比でかつ従動軸への負荷が水準Cの 高負荷の場合については、評価を行っていな い。というのは、実際の車の走行にあたって は、「ロー変速比/高負荷」の組みわせがベ スとなっており、場合により「中間変速比/ 負荷」の組みあわせはありえても、「ハイ 速比/高負荷」の組み合わせはありえないか らである。
 結果を、作動実験1の結果と共に次の表2に す。表2中、○は「円滑走行」であり、-は「 評価を行っていない」ことを意味する。

[図の説明]
 図11は、本発明の伝動体(B) の一例を示した 側面図であり、方向転換付与手段(P), (P)とし ての2つのプーリー間に架け渡してクランプ を発生させるように調整した状態を示して る。
 図12は、図11の伝動体(B) の構成部材である 回子(1) の一例を示した説明図である。
 図13は、図11の伝動体(B) の構成部材である 束手段(2) の一例を示した説明図である。

[伝動体(B) ]
-1-(旋回子(1) )
 金属の一例としてのアルミニウム合金2017( ュラルミン)の板材を切削加工することによ 、図12に示した形状を有する旋回子(1) を作 製した。図12中の符号の意味は実施例1の場合 と同じである。

-2-(拘束手段(2) )
 図13に示した拘束手段(2) 用のパーツとして 、外プレート(2a)、内プレート(2b)、ピン(2c)を 準備した。外プレート(2a)および内プレート(2 b)には、貫通孔を各2つ設けてある。各プレー ト(2a), (2b)のそれぞれにおける2つの貫通孔間 の中心間距離がピッチである。

-3-(伝動体(B) の組み立て)
 上記で準備した旋回子(1) の多数個と拘束 段(2) 用のパーツを用い、旋回子(1) の貫通 (1c)には拘束手段(2) のピン(2c)を挿入設置す るようにして(その挿入設置部位が拘束部(S)  となる)、閉ループ状に連結した。これによ 、図11に示した伝動体(B) が作製された。

-4-(初期設定)
 実施例1の場合と同じ方向転換付与手段(P),  (P)として2つのプーリーを用い、上記で作製 た伝動体(B) を図11のように各プーリーのV形 溝に嵌め込み、まず各プーリーのV形溝の間 を調節してから、プーリー間の軸間距離を 節することにより、伝動体(B) が各プーリー のV形溝の同じ位置になるように(つまり変速 =1:1となるように)きっちりと架け渡し、ク ンプ力が発生するように調整した。

-5-(作動実験1)
 この状態で実施例1の場合と同様の作動実験 1を行った。走行時の伝動体(B) の状態は、図 1の如くであった。従動側のプーリー軸に対 る負荷(ブレーキ)が0の状態はもとより、A、B 、Cのいずれの状態であっても、安定して滑 かに伝動体(B) を走行させることができた。 伝動体(B) の上下動、軋み、騒音は、無視で るほどであった。

-6-(作動実験2)
 続いて実施例1の場合と同様の作動実験2を ったが、実施例1の表2の場合と同様の好まし い結果が得られた。実施例1と実施例2との対 では、拘束手段(2) の構造が簡単な実施例1 方がより好ましい結果が得られた。

[図の説明]
 図14は、本発明の伝動体(B) の一例を示した 側面図であり、方向転換付与手段(P), (P) と ての2つのプーリー間に架け渡してクランプ 力を発生させるように調整した状態を示して ある。
 図15は、図14の伝動体(B) の構成部材である 回子(1) の一例を示した説明図である。

[伝動体(B) ]
 実施例2にかかる図12に準じて、図15の旋回 (1) を作製した。ただし、この実施例3にお ては、図15のように旋回子(1) の厚み方向に 通孔(1d)を2つ設けると共に、その貫通孔(1d),  (1d)に針金(1e)を通して捻って絞ることによ 、旋回子(1) ‥が圧縮状態になったときに隣 接する旋回子(1) ‥間にスペースが形成され ようにして、方向転換付与手段間経路(R2)に 第2アーク(A2)が形成されるようにした。
 拘束手段(2) については、実施例2にかかる 13と同じものを用いた。
 針金(1e)を種々の太さのものに交換すること により、方向転換付与手段間経路(R2)に形成 れる第2アーク(A2)の曲率を簡単に変更できる 。また、針金(1e)を外すことにより、方向転 付与手段間経路(R2)を直線にすることができ 。

 上記の旋回子(1) を多数個準備し、その ち1つおきの旋回子(1) の貫通孔(1d)に針金(1e) を挿入して絞った。ついで、旋回子(1) の貫 孔(1d)に上記で準備した拘束手段(2) のピン( 2c)を挿入設置することにより(その挿入設置 位が拘束部(S) となる)、閉ループ状に連結 た。これにより、図14に示した伝動体(B) が 製された。

(初期設定)
 実施例1、2の場合と同じ方向転換付与手段(P ), (P)としての2つのプーリーを用い、上記で 製した伝動体(B) を図14のように各プーリー のV形溝に嵌め込み、まず各プーリーのV形溝 間隙を調節してから、プーリー間の軸間距 を調節することにより、伝動体(B) が両プ リーのV形溝の同じ位置になるように(つまり 変速比=1:1となるように)きっちりと架け渡し クランプ力が発生するように調整した。

(作動実験1)
 この状態で実施例1、2と同様の作動実験1を った。走行時の伝動体(B) の状態は、図1の くであった。従動側のプーリー軸に対する 荷(ブレーキ)が0の状態はもとより、A、B、C いずれの状態であっても、安定して滑らか ベルトを走行させることができた。伝動体( B) の上下動、軋み、騒音は、無視できるほ であった。実施例1と実施例2との対比では、 拘束手段(2) の構造が簡単な実施例1の方がよ り好ましい結果が得られた

(比較)
 比較のため、旋回子(1) の貫通孔(1d)に針金( 1e)を挿入しない場合についても試験を行った 。この場合には方向転換付与手段間経路(R2) 直線となり、第2アーク(A2)は形成されない。 この比較例の伝動装置は引張ベルト方式にな り、上下の方向転換付与手段間経路(R2)のい れにおいても隣接する旋回子(1) 間に押し力 ないし圧縮力は働かない。隣接する旋回子(1)  間に押し力ないし圧縮力が働かないことは 旋回子(1) 間に挟んだ紙が落下することか も確かめられる。
 作動実験1の結果を次の表3に示す。

(表3の説明)
-変速比-
 1:1に設定。
-巻き付け角θ-
 伝動体(B) をプーリー間に変速比=1:1になる うに架け渡し、初期張力を掛けた状態で、 動体(B) がプーリー(可動シーブ(Pms) は半透 明樹脂製)に接触している部分を目視し、分 器で実測した。

-伝動体(B) の上下動-
 上下の方向転換付与手段間経路(R2), (R2)に ける走行中の伝動体(B) の挙動を観察し、伝 動体(B) の張設位置が高くなったり低くなっ りする上下動を起こすかどうかを観察した 上下動を起こす原因は、伝動体(B) のプー ー離れの非円滑性(つまり、伝動体(B) が各 ーリーの出口付近でV形溝に食い込まれたま プーリーの回転に追随し、ついでそのV字溝 から外れること)に起因するためと思われる

(作動実験2)
 続いて、針金の直径が0.35mm、0.45mm、0.70mm、0 .90mm、1.20mmのそれぞれ場合につき、実施例1の 場合と同様の作動実験2を行ったが、実施例1 表2の場合と同様の好ましい結果が得られた 。

(実施例4~28についての注記)
 以下の実施例4~28においては、旋回子(1) の 接集合体(1n)が第2アーク(A2)を形成する手段 ついて説明または対応図面上の記載を省略 ている場合があるが、実際には旋回子(1)  作製に際しその背腹部(1b), (1b)に段差や膨出 部を設けたりスペーサーに相当する部材を設 置したりするなどの工夫を講じて第2アーク(A 2)を形成している。

(ヒンジ型/一体タイプの例)
 図16は、旋回子(1) の一例を示した説明図で ある。この旋回子(1) の多数個を拘束手段(2) の一例であるピンを用いて連結すれば、伝 体(B) に組み立てることができる。

(ヒンジ型/一体タイプの例)
 図17は、旋回子(1) の一例を示した説明図で ある。この旋回子(1) の多数個を拘束手段(2) の一例であるピンを用いて連結すれば、伝 体(B) に組み立てることができる。

(製造例1)
 鋼材(SCM415)を用いてメタルインジェクショ モールディング成型法(通称:MIM法)にてベル の全周が約637.5mm になるよう図17に示す幅約 30mm、高さ約12.5mmの旋回子(1) を多数製作し、 そのうち85個を拘束手段(2) として直径約3.65m mのピン(2c)を用いて連設させることにより伝 体(B) を作製した。なお、本実施例におい は、伝動体(B) 作製時のアーク(a2)は、外周 を旋回子(1) 同士で、内周側を旋回子(1) と 示せざるピン(2c)とで接触させるように設計 され、旋回子(1) の側断面形状は楔型形状で る。該楔型形状における外周側接触位置と 周側接触位置との設計上の厚み差は、伝動 (B) 作製時に約0.35mmになるように設定した また、方向転換付与手段(P) としてのプーリ ーと接触する旋回子(1) の側面の傾斜角は、 ーリーとの接触位置が旋回子(1) 同士の背 部(1b), (1b)における接触位置と概略同じ最外 周側になるように11°よりやや大きく設定し 。

(製造例1の作動実験)
 この伝動体(B) を同志社大学工学部に依頼 、同大学所有のモーター駆動方式CVT用試験 を用いて、最大伝達トルク、転回時の軸間 、スリップ率、変速特性を確認した。なお 最大伝達トルクおよびスリップ率は、入力 転数=100rpm、速度比=1.0、従動側推力=5000N前後 の条件で、負荷トルクを伝動体(B) とプーリ との間に全滑りが生じるまで与えることに り測定し、転回時の軸間力は、入力回転数= 100,300,600,900,1200,1500,1800rpm、速度比=1.0、従動 推力=4900N前後、負荷トルク=0Nmの条件で行い 変速特性は、入力回転数=100rpm、速度比=0.6~1 .6、従動側推力=3000N、負荷トルク=0Nmの条件で 行った。最大伝達トルクの結果は図51に、軸 力の測定結果は図52に、スリップ率の測定 果は図53に、変速特性の結果は図54に示す。
 これらの試験結果から、この伝動体(B) は 騒音も現行ベルトと遜色なくCVT用Vベルトの 替として十分に利用できることを確認した

 なお、変速比1.0 、負荷トルク比0.8 にお けるV3のVベルトのプーリー側とセカンダリー 側との押付け力比は約1.5~1.6(非特許文献1、127 頁の図5-5から読み取った値)であるのに対し 伝動体(B)の同比は約1.05であった。

(製造例2)
 鋼材(SCM415)を用いてメタルインジェクショ モールディング成型法(通称:MIM法)にてベル の全周が約616mm になるよう図17に示す幅約22 mm、高さ約8mmの旋回子(1) を多数製作し、そ うち140個用意し、拘束手段(2) として直径約 2.31mmのピン(2c)を用いて連設させることによ 伝動体(B) を作製した。なお、本実施例にお いては、伝動体(B) 作製時のアーク(a2)は、外 周側を旋回子(1) 同士で、内周側を旋回子(1) とピン(2c)とで接触させるように設計され、 回子(1) の側断面形状は楔型形状である。 楔型形状における外周側接触位置と外周側 触位置との設計上の厚み差は、ベルト作製 に約 0.1mmになるように設定した。また、方 転換付与手段(P) としてのプーリーと接触 る旋回子(1) の側面の傾斜角は、プーリーと の接触位置が旋回子(1) 同士の背腹部(1b), (1b )における接触位置と概略同じ最外周側にな ように11°よりやや大きく設定した。

 このとき、旋回子(1) の一方の側面に、 接する旋回子(1) の軸受け孔に約50°以内の けではピン(2c)が抜けないように長さ約 4.4mm のツメを設け、他方の側に傾け角に関係なく ピン(2c)が抜けないように同様の寸法および 状のツメを設けた。

(製造例2の作動実験)
 この伝動体(B) を同志社大学工学部に依頼 、同大学所有のモーター駆動方式CVT用試験 を用いて、最大伝達トルク、転回時の軸間 、スリップ率を確認した。なお、最大伝達 ルクおよびスリップ率は、入力回転数=100rpm 速度比=1.0、従動側推力=5000N前後の条件で、 負荷トルクを伝動体(B) とプーリーとの間に 滑りが生じるまで与えることにより測定し 転回時の軸間力は、入力回転数=100,300,600,900 ,1200,1400rpm、速度比=1.0、従動側推力=4900N前後 負荷トルク=0Nmの条件で行った。最大伝達ト ルクの結果は図51に、転回時の軸間力の測定 果は図52に、スリップ率の測定結果は図53に 示す。
 これらの試験結果から、この伝動体(B) は 騒音も現行ベルトと遜色なくCVT用Vベルトの 替として十分に利用できることを確認した
 ちなみに、非特許文献2の49頁式3-4を用いて 摩擦係数を 0.1およびプーリーへの押付け (従動側推力に相当)を5000Nとした場合の計算 の伝達トルクは46.86Nmである。また、通常の V3のVベルトを含む引張方式ベルトでは、回転 数の増加と共に軸間力が大きくなると言われ ている。

(ヒンジ型/合体タイプの例)
 図18は、旋回子(1) の一例を示した説明図で ある。
 この実施例6においては、方向転換付与手段 (P) としてのプーリーとの接触部(1a)を有する 旋回子の遊端側部分と、拘束手段(2) の一例 してのピン(2c)を挿入させるための旋回子の 基端側部分とを別々に作製し、これらの遊端 側部分および基端側部分とを嵌め合うと共に 接合して、1つの旋回子(1) に構成してある。
 伝動体(B) は、このようにして作製した旋 子(1) の多数個を拘束手段(2) としてのピン 用いて連結することにより組み立てること できる。

(ヒンジ型/拘束手段(2) と一体タイプの例)
 図19は、旋回子(1) および拘束手段(2) の一 を示した説明図である。
 この実施例7においては、旋回子(1) 自体に 束手段(2) (ピン(2c))が一体化して設けてあ ので、別途拘束手段(2) を用意することなく 伝動体(B) を作製することができる。

(ヒンジ型/カップタイプの例)
 図20は、旋回子(1) の一例を示した説明図で ある。
 伝動体(B) は、この旋回子(1) の多数個を拘 束手段(2) の一例であるピンを用いて連結す ことにより作製することができる。

(ヒンジ型/折り曲げタイプで内曲げの例)
 図21は、旋回子(1) の一例を示した説明図で ある。
 図22は、図21の旋回子(1) の作製工程の一例 示した説明図である。
 この実施例9においては、平板(金属板)を素 として用いて、図22の(a),(b),(c)の工程に従っ て図21の旋回子(1) を作製してある。
 伝動体(B) は、このようにして得られた図21 の旋回子(1) の多数個を拘束手段(2) の一例 あるピンを用いて連結することにより作製 ることができる。

 図23は、旋回子(1) の作製工程に用いる打ち 抜き平板の他の一例を示した説明図である。
 図24は、図21の旋回子(1) の作製工程に用い 打ち抜き平板のさらに他の一例を示した説 図である。
 図21に類似の旋回子(1) は、図23に示した形 打ち抜き平板を折り曲げていくことによっ も作製することができ、また図24に示した の打ち抜き平板を折り曲げていくことによ ても作製することができる。

(ヒンジ型/折り曲げタイプで外曲げの例)
 図25は、旋回子(1) の一例を示した説明図で ある。
 この実施例10の旋回子(1) は、実施例9と同 図22(a)に示すような形の打ち抜き平板を、図 22(b)とは逆の方向に折り曲げていくことによ 作製してある。
 伝動体(B) は、このようにして得られた図25 の旋回子(1) の多数個を拘束手段(2) の一例 あるピンを用いて連結することにより作製 ることができる。

(ヒンジ型/折り曲げタイプで内曲げの例)
 図26は、旋回子(1) の一例を示した説明図で ある。
 この実施例11の旋回子(1) は、実施例9と同 図22(a)に示すような形の打ち抜き平板に、図 26の形になるように切り欠きを入れ、実施例9 と同様の手順で折り曲げていくことにより作 製してある。
 伝動体(B) は、このようにして得られた図26 の旋回子(1) の多数個を拘束手段(2) の一例 あるピンを用いて連結することにより作製 ることができる。

(ヒンジ型/折り曲げタイプ+補助キャップの例 )
 図27は、旋回子(1) の一例を示した説明図で ある。
 この実施例12の旋回子(1) は、長方形の板に 図27の形になるように切り欠きを入れたもの 折り曲げ、上部側にその形状に合わせて切 加工した断面形状がコの字型の部材(キャッ プ)を被せることによって作製してある。
 伝動体(B) は、このようにして得られた図27 の旋回子(1) の多数個を拘束手段(2) の一例 あるピンを用いて連結することにより作製 ることができる。

(ヒンジ型/箱潰しタイプの例)
 図28は、旋回子(1) の一例を示した説明図で ある。
 この実施例13の旋回子(1) は、板を2枚介在 せた筒状物を扁平に変形することにより作 してある。
 伝動体(B) は、このようにして得られた図28 の旋回子(1) の多数個を拘束手段(2) の一例 あるピンを用いて連結することにより作製 ることができる。

(ヒンジ型/箱タイプの例)
 図29は、旋回子(1) の一例を示した説明図で あり、第1部品、第2部品のそれぞれの斜視図 および第1部品と第2部品とを組み合わせた の完成品の斜視図を示してある。
 この実施例14においては、長方形の板に図29 (b)の形になるように切り込みを入れた段階( の部分が真っ直ぐな段階)の第1部品を、図29( c)の第2部品にその上方側から挿入し、最後に 図29(b)の第1部品の足の部分を広げるように折 り曲げて、図29(a)に示す旋回子(1) の完成品 作製してある。
 伝動体(B) は、このようにして得られた図29 (a)の旋回子(1) の多数個を拘束手段(2) の一 であるピンを用いて連結することにより作 することができる。

(ヒンジ型/箱タイプの例)
 図30は、旋回子(1) の一例を示した説明図で あり、第1部品、第2部品、第3部品のそれぞれ の斜視図、および第1部品、第2部品、第3部品 を組み合わせた後の完成品の斜視図を示して ある。
 この実施例15においては、長方形の板に図30 (b)の形になるように切り込みを入れた段階( の部分が真っ直ぐな段階)の第1部品の両側か ら、図30(c)に示すような板状の第2部品を挟み 込むような形で、図30(d)の第3部品にその上方 側から挿入し、最後に図30(b)の第1部品の足の 部分を広げるように折り曲げて、図30(a)に示 旋回子(1) の完成品を作製してある。
 伝動体(B) は、このようにして得られた図30 (a)の旋回子(1) の多数個を拘束手段(2) の一 であるピンを用いて連結することにより作 することができる。

(ヒンジ型/箱タイプの例)
 図31は、旋回子(1) の一例を示した説明図で あり、第1部品、第2部品、第3部品、第4部品 それぞれの斜視図、および第1部品、第2部品 、第3部品、第4部品を組み合わせた後の第1お よび第2完成品の斜視図を示してある。

 この実施例16においては、図31(c)の第1部品 2個と図31(d)の第2部品の1個とを交互に配置し て、図31(e)の第3部品に下方側から挿入し、最 後に図31(f)の第4部品を横から差し込んで、図 31(a)の第1完成品を作製した。
 同様に、図31(c)の第1部品の1個と図31(d)の第2 部品の2個とを交互に配置して、図31(e)の第3 品に下方側から挿入し、最後に図31(f)の第4 品を横から差し込んで、図31(b)の第2完成品 作製した。
 伝動体(B) は、上記の第1完成品と第2完成品 とを交互に組み合わせるようにして拘束手段 (2) の一例であるピンを用いて連結すること より作製することができる。

(ヒンジ型/箱タイプの例)
 図32は、旋回子(1) の一例を示した説明図で あり、第1部品、第2部品、第3部品、第4部品 それぞれの斜視図、および第1部品、第2部品 、第3部品、第4部品を組み合わせた後の第1お よび第2完成品の斜視図を示してある。

 この実施例17においては、図32(c)の第1部品 2個と図32(d)の第2部品の1個とを交互に配置し て、図32(e)の第3部品に下方側から挿入し、最 後に図32(f)の第4部品を横から差し込んで、図 32(a)の第1完成品を作製した。
 同様に、図32(c)の第1部品の1個と図32(d)の第2 部品の2個とを交互に配置して、図32(e)の第3 品に下方側から挿入し、最後に図32(f)の第4 品を横から差し込んで、図32(b)の第2完成品 作製した。
 伝動体(B) は、上記の第1完成品と第2完成品 とを交互に組み合わせるようにして拘束手段 (2) の一例であるピンを用いて連結すること より作製することができる。

(ヒンジ型/箱タイプの例)
 図33は、旋回子(1) の一例を示した説明図で あり、第1部品、第2部品、第3部品、第4部品 それぞれの斜視図、および第1部品、第2部品 、第3部品、第4部品を組み合わせた後の第1お よび第2完成品の斜視図を示してある。
 この実施例18においては、図33(c)の第1部品 2個と図33(d)の第2部品の1個とを交互に配置し て、図33(e)の第3部品に下方側から挿入し、最 後に図33(f)の第4部品を横から差し込んで、図 33(a)の第1完成品を作製した。
 同様に、図33(c)の第1部品の1個と図33(d)の第2 部品の2個とを交互に配置して、図33(e)の第3 品に下方側から挿入し、最後に図33(f)の第4 品を横から差し込んで、図33(b)の第2完成品 作製した。
 伝動体(B) は、上記の第1完成品と第2完成品 とを交互に組み合わせるようにして拘束手段 (2) の一例であるピンを用いて連結すること より作製することができる。

(ヒンジ型/箱タイプの例)
 図34は、旋回子(1) の一例を示した説明図で あり、第1部品、第2部品、第3部品、第4部品 それぞれの斜視図、および第1部品、第2部品 、第3部品、第4部品を組み合わせた後の第1お よび第2完成品の斜視図を示してある。

 この実施例19においては、図34(c)の第1部品 2個と図34(d)の第2部品の1個とを交互に配置し て、図34(e)の第3部品に後方側から挿入し、最 後に図34(f)の第4部品を横から差し込んで、図 34(a)の第1完成品を作製した。
 同様に、図34(c)の第1部品の1個と図34(d)の第2 部品の2個とを交互に配置して、図34(e)の第3 品に後方側から挿入し、最後に図34(f)の第4 品を横から差し込んで、図34(b)の第2完成品 作製した。
 伝動体(B) は、上記の第1完成品と第2完成品 とを交互に組み合わせるようにして拘束手段 (2) の一例であるピンを用いて連結すること より作製することができる。

(ヒンジ型/ボルトどめタイプの例)
 図35は、旋回子(1) の一例を示した説明図で あり、第1部品、第2部品、第3部品、第4部品 それぞれの斜視図、および第1部品、第2部品 、第3部品、第4部品を組み合わせた後の第1お よび第2完成品の斜視図を示してある。

 この実施例20においては、図35(c)の第1部品 2個と図35(d)の第2部品の1個とを交互に配置し 、さらに図35(e)の第3部品の2個を両端側に配 し、最後に図35(f)の第4部品を横から差し込 で固定することにより、図35(a)の第1完成品 作製した。
 同様に、図35(c)の第1部品の1個と図35(d)の第2 部品の2個とを交互に配置し、さらに図35(e)の 第3部品の2個を両端側に配置し、最後に図35(f )の第4部品を横から差し込んで固定すること より、図35(b)の第2完成品を作製した。
 伝動体(B) は、上記の第1完成品と第2完成品 とを交互に組み合わせるようにして拘束手段 (2) の一例であるピンを用いて連結すること より作製することができる。

(ピンを使用しない伝動体(B) の例)
 図36は、拘束手段(2) 兼用の旋回子(1) の連 体からなる伝動体(B) の一例を示した説明 であり、斜視図で示してある。
 図37は、拘束手段(2) 兼用の旋回子(1) の作 に用いるシート状の第1部品の例を示した説 明図である。
 図38は、図37のシート状の第1部品と、別途 備しておいた芯体の役割を果たす第2部品と ら完成品である旋回子(1) を作製する方法 例を示した説明図である。

 図37(a)のスリット付の長尺シート状の第1 品を折り曲げ線に沿って次々に折り曲げる 共に立体状に変形させることにより空間を り、ついでその空間に、別途準備しておい 芯体の役割を果たす板状の第2部品を図38(a) ように挟み込んでいくことにより連接体を 製し、最後にその連接体の両端を接合して 図36に示した拘束手段(2) 兼用の旋回子(1)  らなる伝動体(B) を作製した。この伝動体(B ) にあっては、ピンは使用していない。

 上述のようなピンを使用しない伝動体(B)  、
 ・図37(b)のシート状の第1部品と、別途準備 ておいた芯体の役割を果たす板状の第2部品 とを用いて、図38(b)の組み立て方法に従って あるいは、
 ・図37(c)の1組のシート状の第1部品と、別途 準備しておいた芯体の役割を果たす板状の第 2部品とを用いて、図38(c)または図38(d)の組み て方法に従って、
作製することもできる。なお、図38(d)の組み て方法は、図37(c)を用いて拘束部(S) が図38( c)とは逆になるように配列させたものである

(複数のピースで作製した旋回子(1) の例)
 図39は、複数のピースで作製した旋回子(1)  の例を示した説明図である。
 この実施例22においては、旋回子(1) の作製 のために、両端側の第1部品とその両端側の 1部品-第1部品間に配置される第2部品との2種 類の部品を用いている。

 伝動体(B) は、拘束手段(2) としてピン(2c )を用いることにより作製される。第1部品は 組み立て後の旋回子(1) の両端側に位置し 、方向転換付与手段(P) のV形溝と接触する 第1部品の伝導体の周長方向の長さは、第2部 品の周長方向の長さの1/2になっている。なお 、第2部品は、周長方向で同列となる部品の 後で接触させているので、その接触により ークが形成されるように外周側の周長方向 長さが内周側のそれに比して長くなってい 。第2部品においては、アーク形成のための 触はさせていない。

(1本足タイプの旋回子(1) の例)
 図40は、1本足タイプの旋回子(1) の例を示 た説明図であり、斜視図で示してある。
 この実施例23においては、拘束手段(2) とし てチェーン機構を利用したものを用いること により、伝動体(B) を作製できるようにして る。
 なお、先に述べた実施例2においては、図12 ように、図40の1本足タイプの旋回子(1) を いて伝動体(B) を作製している。

(2本足タイプの旋回子(1) の例)
 図41は、2本足タイプの旋回子(1) の例を示 た説明図であり、斜視図で示してある。
 この実施例24においては、拘束手段(2) とし てチェーン機構を利用したものを用いること により、伝動体(B) を作製できるようにして る。

(1本足タイプの旋回子(1) +リング状の拘束手 (2) の例)
 図42は、1本足タイプの旋回子(1) を用いて 動体(B) を作製する様子を示した説明図であ る。
 旋回子(1) として図42(a)に示したものを用い 、かつ拘束手段(2) として四角形のリングを いて組み立てることにより、図42(b)に示し 伝動体(B) を作製することができる。

(2本足タイプの旋回子(1) +フープ状の拘束手 (2) の例)
 図43は、2本足タイプの旋回子(1) を用いて 動体(B) を作製する様子を示した説明図であ る。
 旋回子(1) として図43(a)に示したものを用い 、かつ拘束手段(2) として重層フープを用い 組み立てることにより、図43(b)に示した伝 体(B) を作製することができる。
 また、旋回子(1) として図43(a)に示したもの を用い、かつ拘束手段(2) として時計の金属 ンド様のフープを用いて組み立てることに り、図43(c)に示した伝動体(B) を作製するこ とができる。

(引っ掛けタイプの例)
 図44は、旋回子(1) の一例を示した説明図で あり、斜視図で示してある。
 伝動体(B) は、図44の旋回子(1) を、図示せ る拘束手段(2) としてフープを用いること より作製することができる。

(バンドタイプの例)
 図45は、旋回子(1) の一例を示した説明図で あり、斜視図で示してある。
 伝動体(B) は、図45の旋回子(1) を、図示せ る拘束手段(2) としてフープを用いること より作製することができる。

参考例1

 図46は、手軽に入手できる市販の蝶番を利 して本発明のヒンジ型の旋回子(1) を作製す るための手順を示す説明図であり、正面図お よび側面図で示してある。
 この図46において、(i) は市販されているヒ ンジ(蝶番)を示し、(ii)はそのヒンジのピンの 頭を削った後の状態を示し、(iii) はピンを いた左右の部品のサイド部分とピン挿入部 とを削った後に、背中合わせにすることを し、(iv)は背中合わせした部分を固着して旋 子(1) が完成した状態を示している。

 図47は、伝動体(B) の一例を示した説明図で あり、方向転換付与手段(P), (P)として2つの ーリー間に架け渡した状態を示してある。
 図47の伝動体(B) は、実施例9にかかる図21の 旋回子(1) と拘束手段(2) の一例であるピン(2 c)とを用いて作製したものである。

 図48は、方向転換付与手段間経路(R2)を伝 体(B) の外周側に凸のアークに形成した図1 タイプの伝動体(B) または/および方向転換 与手段間経路(R2)を伝動体(B) の内周側に凸 アークに形成した図2のタイプの伝動体(B)  用いたときの使い方の例を示した説明図で る。ただし、方向転換付与手段(P) は図示 省略してある。

 図48(i)は図1のタイプの伝動体(B) 1本と図2の タイプの伝動体(B)1本とを組み合わせて用い 場合、図48(ii)は図1のタイプの伝動体(B)2本と 図2のタイプの伝動体(B)1本とを組み合わせて いた場合、図48(iii) は図1のタイプの伝動体 (B)2本を組み合わせて用いた場合、図48(iv)は 2のタイプの伝動体(B)1本をロールと組み合わ せて用いた場合である。
 図48の使い方は、紙、織布、プラスチック シート、金属シートをはじめとするの任意 シート材料に対して任意の加工を施すとき 採用することができる。

(旋回子(1) の他の例)
 図49は、旋回子(1) の他の例を示した説明図 であり、側面図の部分図で示してある。図中 の1点鎖線は、それより下側が図示を省略し いることを示す。
 図49(a),(b),(c)は、2種の形状の旋回子(1) を交 互に用いた場合である。図49(d),(e)は、側面視 で屈曲または湾曲した形状の旋回子(1) を用 た場合である。

(拘束手段(2) の他の例)
 図50は、拘束手段(2) の他の例を示した説明 図である。
 この拘束手段(2) はチェーン機構を利用し ものであるが、拘束補助部(2')を設けて、そ 拘束補助部(2')で旋回子(1) を拘束すること できるようにしてある。この態様は、拘束 段(2) の1単位に2つの旋回子(1) を設けるこ ができるので、旋回子(1) として背腹間の みの薄いものを用いることができるという 徴がある。

(作動実験)
 実施例5の製造例2で作製した伝動体(B) を方 向転換付与手段(P) としての直径約100mmのロ ラーに架け渡し、クランプ力を発生させる うに調整して回転させたところスムーズに 転した。

 (作動実験)
 実施例5の製造例2で作製した伝動体(B) を方 向転換付与手段(P) としての直径約100mmの歯 (歯形や歯数は、伝動体(B) の接触部分とか 合うように設定したもの)に架け渡して回転 せたところスムーズに回転した。

図1は、伝動体(B) が描く経路の形の模 的な説明図である。 図2は、伝動体(B) が描く経路の他の形 模式的な説明図である。 図3は、V形溝を有する方向転換付与手 (P) としてのプーリーの一例を示した説明図 である。 図4は、第2アーク(A2)により発揮される し力の伝達と向きについて説明を行うため モデルである。 図5は、第2アーク(A2)の模式図である。 図6は、圧縮集合体(1n)を構成する旋回 (1) に働く力を示した模式図である。 図7は、接触部(C) と拘束部(S) との位 関係を示した模式図である。 図8は、本発明の伝動体(B) の一例を示 た側面図であり、方向転換付与手段(P), (P) としての2つのプーリー間に架け渡してクラ プ力を発生させるようにした状態を示して る。 図9は、図8の伝動体(B) の構成部材であ る旋回子(1) の一例を示した説明図である。 図10は、図8の伝動体(B) の構成部材で る拘束手段(2) の一例を示した説明図であ 。 図11は、本発明の伝動体(B) の一例を した側面図であり、方向転換付与手段(P), (P )に) としての2つのプーリー間に架け渡して ランプ力を発生させるようにした状態を示 てある。 図12は、図11の伝動体(B) の構成部材で ある旋回子(1) の一例を示した説明図である 図13は、図11の伝動体(B) の構成部材で ある拘束手段(2) の一例を示した説明図であ 。 図14は、本発明の伝動体(B) の一例を した側面図であり、方向転換付与手段(P), (P )に) としての2つのプーリー間に架け渡して ランプ力を発生させるようにした状態を示 てある。 図15は、図14の伝動体(B) の構成部材で ある旋回子(1) の一例を示した説明図である 図16は、旋回子(1) の一例を示した説 図である。 図17は、旋回子(1) の一例を示した説 図である。 図18は、旋回子(1) の一例を示した説 図である。 図19は、旋回子(1) および拘束手段(2)  の一例を示した説明図である。 図20は、旋回子(1) の一例を示した説 図である。 図21は、旋回子(1) の一例を示した説 図である。 図22は、図21の旋回子(1) の作製工程の 一例を示した説明図である。 図23は、旋回子(1) の作製工程に用い 打ち抜き平板の他の一例を示した説明図で る。 図24は、旋回子(1) の作製工程に用い 打ち抜き平板のさらに他の一例を示した説 図である。 図25は、旋回子(1) の一例を示した説 図である。 図26は、旋回子(1) の一例を示した説 図である。 図27は、旋回子(1) の一例を示した説 図である。 図28は、旋回子(1) の一例を示した説 図である。 図29は、旋回子(1) の一例を示した説 図であり、第1部品、第2部品のそれぞれの斜 視図、および第1部品と第2部品とを組み合わ た後の完成品の斜視図を示してある。 図30は、旋回子(1) の一例を示した説 図であり、第1部品、第2部品、第3部品のそ ぞれの斜視図、および第1部品、第2部品、第 3部品を組み合わせた後の完成品の斜視図を してある。 図31は、旋回子(1) の一例を示した説 図であり、第1部品、第2部品、第3部品、第4 品のそれぞれの斜視図、および第1部品、第 2部品、第3部品、第4部品を組み合わせた後の 第1および第2完成品の斜視図を示してある。 図32は、旋回子(1) の一例を示した説 図であり、第1部品、第2部品、第3部品、第4 品のそれぞれの斜視図、および第1部品、第 2部品、第3部品、第4部品を組み合わせた後の 第1および第2完成品の斜視図を示してある。 図33は、旋回子(1) の一例を示した説 図であり、第1部品、第2部品、第3部品、第4 品のそれぞれの斜視図、および第1部品、第 2部品、第3部品、第4部品を組み合わせた後の 第1および第2完成品の斜視図を示してある。 図34は、旋回子(1) の一例を示した説 図であり、第1部品、第2部品、第3部品、第4 品のそれぞれの斜視図、および第1部品、第 2部品、第3部品、第4部品を組み合わせた後の 第1および第2完成品の斜視図を示してある。 図35は、旋回子(1) の一例を示した説 図であり、第1部品、第2部品、第3部品、第4 品のそれぞれの斜視図、および第1部品、第 2部品、第3部品、第4部品を組み合わせた後の 第1および第2完成品の斜視図を示してある。 図36は、拘束手段(2) 兼用の旋回子(1)  の連接体からなる伝動体(B) の一例を示した 明図であり、斜視図で示してある。 図37は、拘束手段(2) 兼用の旋回子(1)  の作製に用いるシート状の第1部品の例を示 た説明図である。 図38は、図37のシート状の第1部品と、 途準備しておいた芯体の役割を果たす第2部 品とから完成品である旋回子(1) を作製する 法の例を示した説明図である。 図39は、複数のピースで作製した旋回 (1) の例を示した説明図である。 図40は、1本足タイプの旋回子(1) の例 示した説明図であり、斜視図で示してある 図41は、2本足タイプの旋回子(1) の例 示した説明図であり、斜視図で示してある 図42は、1本足タイプの旋回子(1) を用 て伝動体(B) を作製する様子を示した説明 である。 図43は、2本足タイプの旋回子(1) を用 て伝動体(B) を作製する様子を示した説明 である。 図44は、旋回子(1) の一例を示した説 図であり、斜視図で示してある。 図45は、旋回子(1) の一例を示した説 図であり、斜視図で示してある。 図46は、市販の蝶番を利用して本発明 ヒンジ型旋回子(1) を作製するための手順 示す説明図であり、正面図および側面図で してある。 図47は、伝動体(B) の一例を示した側 図であり、方向転換付与手段(P), (P) として の2つのプーリー間に架け渡してクランプ力 発生させるようにした状態を示してある。 図48は、図1のタイプの伝動体(B) また /および図2のタイプの伝動体(B) を用いたと きの使い方の例を示した説明図である。 図49は、旋回子(1) の他の例を示した 明図であり、側面図の部分図で示してある 図50は、拘束手段(2) の他の例を示し 説明図である。 図51は、実施例5における製造例1およ 2の伝動体(B) の作動実験結果であり、最大 達トルクの結果を示したグラフである。縦 は効率、横軸は負荷トルクで示してある。 図52は、実施例5における製造例1およ 2の伝動体(B) の作動実験結果であり、転回 の軸間力の測定結果を示したグラフである 縦軸は軸間力、横軸は入力回転数で示して る。 図53は、実施例5における製造例1およ 2の伝動体(B) の作動実験結果であり、スリ プ率の結果を示したグラフである。縦軸は リップ率、横軸は負荷トルクで示してある 図54は、実施例5における幅約30mmの旋 子(1) から作製した伝動体(B) の作動実験結 であり、変速特性の結果を示したグラフで る。縦軸は回転数、横軸は測定時間で示し ある。

符号の説明

 (1) …旋回子、
  (1a)…サイド部、(1b)…背腹部、(1c)…貫通 、(1d)…貫通孔、(1e)…針金、
 (2) …拘束手段、
  (2a)…外プレート、(2b)…内プレート、(2c) ピン、
  (2')…拘束補助部、
 (P) …方向転換付与手段、
  (Pfs) …固定シーブ、(Pms) …可動シーブ、
 (B) …伝動体、
 (S) …拘束部、
 (C) …接触部、
 (R1)…転回経路、
 (R2)…方向転換付与手段間経路、
 (A1)…第1アーク、
 (A2)…第2アーク、
 (O11), (O12)…第1アーク(A1)の中心点、
 (O2)…第2アーク(A2)の中心点、
 (tr)…第1アーク(A1)と第2のアーク(A2)との間 移行点