山田茂男 (〒30 千葉県市原市五井南海岸12-8 日本曹達株式会社 千葉工場内 Chiba, 〒2908530, JP)
日本曹達株式会社 (〒65 東京都千代田区大手町二丁目2番1号 Tokyo, 〒1008165, JP)
YAMADA, Shigeo (Nippon Soda Co. Ltd., 12-8, Goiminamikaigan, Ichihara-sh, Chiba 30, 〒2908530, JP)
| 基材上に積層するためのITO膜及びFTO膜からなる透明導電膜であって、FTO膜の表面の結晶構造の一部又は全部が斜方晶であることを特徴とする透明導電膜。 |
| 350℃で1時間加熱後のシート抵抗値の変化率が1.5倍以下であることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜。 |
| シート抵抗値が300ω/□以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の透明導電膜。 |
| パイロゾル法によりITO膜を基材上に成膜した後、連続的にITO膜上にFTO膜を成膜することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。 |
| 基材上に積層するためのITO膜及びFTO膜からなる透明導電膜であって、FTO膜の膜厚が5nm~20nmであり、かつFTO膜が連続膜であることを特徴とする透明導電膜。 |
| 350℃で1時間加熱後のシート抵抗値の変化率が1.5倍以下であることを特徴とする請求項5記載の透明導電膜。 |
| シート抵抗値が300ω/□以下であることを特徴とする請求項5又は6記載の透明導電膜。 |
| パイロゾル法によりITO膜を基材上に成膜した後、連続的にITO膜上にFTO膜を成膜することを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。 |
本発明は、透明電極板等に使用される透明
電膜に関し、特に色素増感太陽電池の透明
極などに好適なFTO/ITO積層膜に関する。
本願は、2008年6月24日に、日本に出願された
特願2008-164417号に基づき優先権を主張し、そ
内容をここに援用する。
色素増感太陽電池は、太陽光を吸収する色 が光を吸収して電子を放出することにより 電する方式の太陽電池のことである。1991年 、スイスEcole Polytechnique Federale de Lausanne (E PFL)のMichael Gratzel氏が発表した論文を契機に 究が進んできた。その機構は、電池に光が たると電池中の色素が励起状態となり、電 を放出する。この電子は酸化チタン(TiO 2 )を経由して透明電極に達し、外部に流れる 一方、電子を放出して陽イオンになった色 は、もう片方の電極から供給される電子を 電解液中のヨウ素(I)を経由して受け取り、 の状態に戻るというものである。
このような太陽電池に用いられる透明電 に必要な条件として、低抵抗、熱安定性、 学的安定性、高透過性、耐湿性、低コスト どが挙げられる。このような条件を満たす 極用の透明導電性膜としては、一般にスズ ドープした酸化インジウム膜(ITO膜)より、 、化学的条件に強いフッ素をドープした酸 スズ膜(FTO膜)が好ましい。
しかしながら、ITO膜は透明性、導電性に優
ていることから、液晶表示素子や太陽電池
広く使用されていることもあるため、ITO膜
上にFTO膜を積層した膜も開発されている。
の一例として、特許文献1がある。
特許文献1には、ITO膜の膜厚が100nm~1000nm、FTO
膜の膜厚は少なくとも30nm~350nmが良いこと、
び、FTO膜がこの膜厚であると、温度250~700℃
の1時間の加熱によっても導電性は低下しな
いことが記載されている。また、FTO膜の成膜
はITO膜の成膜後に連続して行う必要があるこ
とが記載されている。そのため、ITO膜を形成
した直後の、いまだ400~500℃程度にある硝子
に直ちにFTO膜となる原料化合物溶液を噴霧
て、ITO膜が劣化する前にスプレー熱分解法(S
PD法)によってFTO膜を成膜する必要があると記
載されている。
しかしながら、上記方法では、膜全体が厚
ためにコスト上の課題があること、FTO膜の
厚が厚いためにITOの有するメリットが十分
かせないなどの点で十分ではなかった。
そこで、太陽電池の透明電極板等、特に 素増感太陽電池の透明電極などに使用でき 、FTO及びITOの有するメリットを生かせ、コ ト的に見合うFTO/ITO積層膜を有する透明導電 膜を作製することが課題であった。
上本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果 パイロゾル法によりガラス基材上にFTO/ITO積 層膜を作製する場合に、成膜炉の中で、ガラ ス板をコンベアで移動させる間に連続してITO 膜とFTO膜を積層することにより、FTO膜の表面 が斜方晶を有する膜となり、FTO膜の膜厚が20n m以下と薄い場合でも、耐熱性に優れた積層 が得られることを見出し、発明を完成した
すなわち、本発明は、
(1)基材上に積層するためのITO膜及びFTO膜から
なる透明導電膜であって、FTO膜の表面の結晶
構造の一部又は全部が斜方晶であることを特
徴とする透明導電膜、
(2)350℃で1時間加熱後のシート抵抗値の変化
が1.5倍以下であることを特徴とする(1)記載
透明導電膜、
(3)シート抵抗値が300ω/□以下であることを特
徴とする(1)または(2)に記載の透明導電膜に関
する。
また、本発明は、
(4)パイロゾル法によりITO膜を基材上に成膜し
た後、連続的にITO膜上にFTO膜を成膜すること
を特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の透
明導電膜の製造方法に関する。
また、本発明は、
(5)基材上に積層するためのITO膜及びFTO膜から
なる透明導電膜であって、FTO膜の膜厚が5nm~20
nmであり、かつFTO膜が連続膜であることを特
とする透明導電膜、
(6)350℃で1時間加熱後のシート抵抗値の変化
が1.5倍以下であることを特徴とする(5)記載
透明導電膜、
(7)シート抵抗値が300ω/□以下であることを特
徴とする(5)または(6)に記載の透明導電膜に関
する。
また、本発明は、
(8)パイロゾル法によりITO膜を基材上に成膜し
た後、連続的にITO膜上にFTO膜を成膜すること
を特徴とする(5)から(7)のいずれかに記載の透
明導電膜の製造方法に関する。
本発明のFTO/ITO積層膜からなる透明導電膜 はFTO膜表面の一部又は全部が斜方晶の結晶構 造を有することから、膜厚が5nm~20nmと薄い場 でも、耐熱性に優れ、350℃で1時間加熱後の シート抵抗値の変化率が1.5倍以下という好結 果が得られた。そのため、液晶表示素子や太 陽電池などの透明電極板等に使用可能である ことはもちろんのこと、特に、色素増感太陽 電池の透明電極としても使用可能であること が本発明の優れた点である。
(透明導電膜)
本発明の透明導電膜は、基材側にITO膜が設
られ、その上にFTO膜が積層されている。FTO
の表面の一部又は全部が斜方晶の結晶構造
有している。
本発明において、表面の一部が斜方晶とは
少なくとも、シート抵抗値の変化率が1.5倍
下となるために必要な量だけ斜方晶が含ま
ている状態をいう。結晶構造の一部が斜方
を有している場合、残りは正方晶又はその
の結晶系であり、通常、混晶状態となる。
斜方晶とは、結晶学の分野で一般に用いら
ている7つの結晶系(立方晶、六方晶、菱面
晶、正方晶、斜方晶、単斜晶、三斜晶)のう
、軸長の関係がa≠b≠cであり、軸角の関係
α=β=γ=90°であるものをいう。結晶系の同定
は、単結晶および粉末のX線回折、中性子線
折、電子線回折等により行われる。
斜方晶の結晶構造を生成させるためには 特にパイロゾル法により成膜する場合、後 するように、複数の成膜炉を連結した成膜 内においてベルト上を移送される基材上にI TO膜の成膜後に、連結した成膜炉内で引き続 連続的にFTO膜を成膜することが必要である ここで、連続膜とは、結晶が隙間なく並ん いる膜をいう。成膜炉でITO膜を成膜後、一 成膜炉外に出した後、再度成膜炉でFTO膜を 膜すると、FTO膜の表面構造は正方晶になる ともに、シート抵抗値の変化率は1.5倍を超 る。
また、ITO膜及びFTO膜の膜厚は、液晶表示素
や太陽電池などの透明電極板等として使用
能である限り制限はないが、FTO、ITOの有す
メリットを生かすことができ、かつコスト
どの点からFTO膜の膜厚は、5nm~20nmが好まし
、10nm~20nmがより好ましい。一方、ITO膜の膜
は20nm~60nmが好ましく、30nm~50nmがより好まし
。
FTO膜及びITO膜は各々、少なくとも1層からな
り、前記膜厚を越えない限り、多層に積層で
きる。
前記特許文献1に記載されたITO膜とFTO膜の 積層膜は、ITO膜の膜厚が100nm~1000nm、FTO膜の膜 厚は30nm~350nmである。同文献では、FTO膜の膜 はITOの保護のために少なくとも30nm必要とさ ているに比べて、本発明の透明導電膜は膜 がITO膜、FTO膜共に薄くすることもできるこ が特徴である。
本発明の透明導電膜は、FTO膜が5nm~20nmと い場合でも350℃以上の温度に対する耐熱性 優れており、350℃の温度で1時間の加熱後の ート抵抗値の変化率が1.5倍以下、好ましく 、1.2倍以下である。また、シート抵抗値は 特に色素増感太陽電池の透明電極として使 する場合は300ω/□以下であることが要求さ ているが、膜厚を調整することにより300ω/ 以下とすることが可能である。
(透明電極用基材)
本発明の透明導電膜は基材上に積層される
基材は、通常、透明基材が使用されるが、
明でなくてもよい。
透明基材は、具体的には、アルカリガラス
石英ガラス等のガラス、ポリカーボネート
ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレ
ト等のポリエステル、ポリエーテルスルホ
系樹脂、アモルファスポリオレフィン、ポ
スチレン、アクリル樹脂等が挙げられる。
れらの材質は、最終的に用いる製品の用途
応じて最適なものが適宜選択される。
基材と透明導電膜との間には必要に応じて
明導電膜にアルカリ成分等が侵入するのを
止するために無機酸化物膜を形成すること
できる。無機酸化物膜として具体的には、
イ素酸化物(SiO X
),アルミニウム酸化物(Al 2
O X
),チタン酸化物(TiO X
),ジルコニウム酸化物(ZrO X
),イットリウム酸化物(Y 2
O X
),イッテルビウム酸化物(Yb 2
O X
),マグネシウム酸化物(MgO X
),タンタル酸化物(Ta 2
O X
),セリウム酸化物(CeO X
)またはハフニウム酸化物(HfO X
)、有機ポリシラン化合物から形成されるポ
シラン膜、MgF 2
膜、CaF 2
膜、SiO X
とTiO X
の複合酸化物等からなる膜を例示することが
できる。
(透明導電膜の製法)
透明導電膜の製造方法としては、本発明の
的とする物性値を有する膜を成膜できる方
であればよく、具体的には、スパッター法
電子ビーム法、イオンプレーテイング法、
クリーン印刷法又は化学的気相成長法(CVD法
)、スプレー熱分解法(SPD法)、パイロゾル法等
を例示することができるが、特にパイロゾル
法を好ましく例示することができる。
以下に、パイロゾル法による本発明の製法
ついて具体的に説明する。
ITO膜形成溶液に用いられるインジウム化合
としては、熱分解して酸化インジウムにな
物質が好ましく、具体的には、インジウム
リスアセチルアセトナート(In(CH 3
COCHCOCH 3
) 3
)、インジウムトリスベンゾイルメタネート(I
n(C 6
H 5
COCHCOC 6
H 5
) 3
)、三塩化インジウム(InCl 3
)、硝酸インジウム(In(NO 3
) 3
)、インジウムトリイソプロポキシド(In(OPr-i) 3
)等を例示することができる。
また、スズ化合物としては、熱分解して酸 第2スズになるものを好ましく用いることが でき、具体的には、塩化第2スズ、ジメチル ズジクロライド、ジブチルスズジクロライ 、テトラブチルスズ、スタニアスオクトエ ト(Sn(OCOC 7 H 15 ) 2 )、ジブチルスズマレエート、ジブチルズズ セテート、ジブチルスズビスアセチルアセ ナート等を挙げることができる。
なお、前記インジウム化合物及びスズ化 物に加えて、第3成分として、Mg、Ca、Sr、Ba の周期律表第2族元素、Sc、Y等の第3族元素 La、Ce、Nd、Sm、Gd等のランタノイド、Ti、Zr、 Hf等の第4族元素、V、Nb、Ta等の第5族元素、Cr Mo、W等の第6族元素、Mn等の第7族元素、Co等 第9族元素、Ni、Pd、Pt等の第10族元素、Cu、Ag 等の第11族元素、Zn、Cd等の第12族元素、B、Al Ga等の第13族元素、Si、Ge、Pb等の第14族元素 P、As、Sb等の第15族元素、Se、Te等の第16族元 素等の単体若しくはこれらの化合物を添加し てITO膜を形成することもできる。
FTO膜形成溶液に用いられるフッ素化合物 しては、フッ化水素、フッ化ナトリウム、 リフルオロ酢酸、ジフルオロエタン、ブロ トリフルオロメタンなどを挙げることがで る。また、スズ化合物としては、上記ITO膜 製造に用いられるスズ化合物を用いること できる。
上記化合物を、メタノール、エタノール のアルコール類、アセトン、メチルブチル トン、アセチルアセトン等のケトン類等の 機溶媒に溶解して、FTO膜形成溶液及びFTO膜 成溶液を調製する。
パイロゾル法により透明基材上にITO膜及びF
TO膜を成膜するには、以下のようにして行う
予め400~750℃、好ましくは400~550℃に加熱し
コンベア式成膜炉を複数基連結し、基材を
内に投入する。第1基目の炉内でITO膜形成溶
を、第2基目の炉内でFTO膜形成溶液を、それ
ぞれ超音波で霧滴状にして空気をキャリアガ
スとしてコンベア炉の中に吹き込み、基材の
表面に接触させて熱分解させることにより、
膜を作製する。膜厚はコンベアの速度を変え
ることにより調整することができる。
成膜炉を3基以上連結することにより、ITO膜
、FTO膜の少なくともいずれかを多層膜とする
こともできる。また、第1基目でSiO 2
膜などの他の無機酸化物膜を成膜することも
できる。
以下に、実施例について示すが、本発明 技術的範囲は、これに限定されるものでは い。
(実施例1) ガラス/SiO 2
/ITO/FTO積層体 (連続成膜)
500℃に加熱したコンベアー炉を3基(炉(1)~(3))
連結し、ソーダライムガラス基材(320×420×0.7m
m)をコンベアー炉内に投入し、第1基において
はSiO 2
膜形成溶液(テトラエトキシシラン(溶液I))、
2基においてはITO膜形成溶液(塩化第2スズを5
モル%含むインジウムアセチルアセトンを0.2
ル/L含むアセチルアセトン溶液(溶液II))、第3
基においてはFTO膜形成溶液(フッ素を150モル%
むジブチルスズジアセテートを0.5モル/L含
エタノール溶液(溶液III))をそれぞれ用い、
音波で霧滴状にして空気をキャリアガスと
てコンベアー炉の中に吹き込み、ガラス基
の表面に接触させて熱分解させることによ
、積層体を連続的に作製した。得られた積
体は、ガラス/SiO 2
膜(40nm)/ITO膜(40nm)/FTO膜(13nm)であった。
(比較例1) ガラス/SiO 2
/ITO/FTO積層体 (非連続成膜法)
比較のために、実施例と同じ組成のITO膜を
ラス基材に成膜後、一旦ガラス基材を取り
し、その後再度成膜炉にガラス基材を投入
てITO膜の上にFTO膜を成膜して実施例とほぼ
じ膜厚の積層体を作製した。
1回目の成膜では、500℃に加熱したコンベア
ー炉を2基(炉(1)~(2))連結し、ソーダライムガ
ス基材(320×420×0.7mm)をコンベアー炉内に投入
し、第1基においてはSiO 2
膜形成溶液(テトラエトキシシラン(溶液I))、
2基においてはITO膜形成溶液(塩化第2スズを5
モル%含むインジウムアセチルアセトンを0.2
ル/L含むアセチルアセトン溶液(溶液II))をそ
ぞれ用いた以外は実施例1と同じ方法で積層
体を作製した。得られた積層体は、ガラス/Si
O 2
膜(40nm)/ITO膜(40nm)であった。
2回目の成膜では500℃に過熱したコンベアー
炉1基を使用し、1回目で得られたガラス/SiO 2
/ITO積層体をコンベアー炉に投入し、FTO膜形
溶液(フッ素を150モル%含むジブチルスズジア
セテートを0.5モル/L含むエタノール溶液(溶液
III))を用いた以外は実施例1と同じ方法で積層
体を作製した。得られた積層体は、ガラス/Si
O 2
膜(40nm)/ITO膜(40nm)/FTO膜(17nm)であった。
(比較例2) ガラス/SiO 2
/ITO/FTO積層体
1回目の成膜は、比較例1と同じ方法で積層
を作製した。得られた積層体は、ガラス/SiO 2
膜(40nm)/ITO膜(40nm)であった。
2回目の成膜は、搬送速度を比較例1よりも
くした以外は同じ方法で積層体を作製した
得られた積層体は、ガラス/SiO 2
膜(40nm)/ITO膜(40nm)/FTO膜(54nm)であった。
上記実施例1、比較例1及び比較例2につき、
厚、350℃で1時間加熱前後のシート抵抗値、
変化率、可視光透過率、FTO膜の結晶系、断面
構造の評価を行ない、結果を表1及び図1に示
。
尚、膜厚はエリプソメータ(アイメック社製
SE800)を用い、シート抵抗値は4端子法により
可視光透過率(550nm)は分光光度計(日立社製U40
00)を用い、結晶系は薄膜評価用試料水平型X
回折装置(リガク社製SmartLab)を用い、断面構
は断面TEM法によりそれぞれ評価した。
その結果、本発明品は、従来品と比較して
FTO膜厚が薄いにも関わらず耐熱性が向上し
いることがわかった(表1)。
また、本発明品のFTO膜の結晶系は斜方晶と
り、従来品のFTO膜の結晶系(正方晶)とは異
ることがわかった(図1)。さらに本発明品のFT
O膜の表面は、微細凹凸はあるものの、表面
坦性が良好であったが(図2)、従来品のFTO膜
表面は、表面凹凸があり、表面平坦性が良
ないことがわかった(図3)。
