前田 優 (〒35 東京都小平市小川西町2-20-2-203 Tokyo, 1870035, JP)
独立行政法人科学技術振興機構 (〒12 埼玉県川口市本町四丁目1番8号 Saitama, 3320012, JP)
MAEDA, Yutaka (203 20-2, Ogawanishimachi 2-chome Kodaira-sh, Tokyo 35, 1870035, JP)
| 金属性の単層カーボンナノチューブ(m-SWNTs)と半導体性の単層カーボンナノチューブ(s-SWNTs)とが混在する単層カーボンナノチューブを沸点が20~400℃のアミンを分散剤として含有するアミン溶液に分散する工程と、得られた分散液を遠心分離または濾過することによりm-SWNTsを濃縮し、m-SWNTs高含有の分散液を得る工程と、得られたm-SWNTs高含有の分散液を基材に塗布して薄膜形成する工程とを含むことを特徴とする透明導電性薄膜の製造方法。 |
| アミンは、1級アミン、2級アミン、3級アミン、および芳香族アミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電性薄膜の製造方法。 |
| アミンは、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、1-メチルプロピルアミン、トリエチルアミン、およびN,N,N’,N’-テトラメチレンジアミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電性薄膜の製造方法。 |
| 単層カーボンナノチューブをアミン溶液に分散させる際に超音波処理を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の透明導電性薄膜の製造方法。 |
| エアブラシを用いてm-SWNTs高含有の分散液を基材に噴霧して薄膜形成することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の透明導電性薄膜の製造方法。 |
| m-SWNTs高含有の分散液を基材に塗布した後、薄膜を塩酸で処理する工程を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の透明導電性薄膜の製造方法。 |
| 40,000~100,000Gかつ1~168時間の条件で分散液を遠心分離することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の透明導電性薄膜の製造方法。 |
| 実質的に、金属性の単層カーボンナノチューブ(m-SWNTs)を含有する単層カーボンナノチューブからなり、波長400~800nmの範囲の可視光線の透過率が96~97%であり、表面抵抗率が5×10 4 ω/sq.未満であることを特徴とする透明導電性薄膜。 |
| 実質的に、金属性の単層カーボンナノチューブ(m-SWNTs)を含有する単層カーボンナノチューブからなり、波長400~800nmの範囲の可視光線の透過率が85~96%であり、表面抵抗率が1×10 4 ω/sq.未満であることを特徴とする透明導電性薄膜。 |
本発明は、透明導電性薄膜とその製造方 に関するものである。
ITO(Indium Tin Oxide)は、酸化インジウム(In 2 O 3 )に数%の酸化スズ(SnO 2 )を添加した化合物であり、導電性を有する 共に可視光透過率が約90%程度と透明性が高 ため、主にフラット・パネル・ディスプレ (FPD)向けの電極として用いられ、近年、FPDの 出荷量が増加しているためITO透明導電性薄膜 の需要も拡大している。
しかしながら、ITOの主成分であるインジ ムは希少金属であるためインジウムの資源 渇は深刻な問題であり、危機感が高まって ると共に、インジウムの価格の高騰が続い いる。
そのため、ITOの廃材を回収してインジウ をリサイクルする手法が提案され、さらに 収率を高める試みもなされているが、抜本 な解決方法として、ITO透明導電性薄膜に代 る材料開発が強く求められている。
ITO透明導電性薄膜に代わる材料として、カ ボンナノチューブの透明導電性薄膜が提案 れている(特許文献1参照)。この特許文献1で は、カーボンナノチューブを分散した状態で 透明性基材上に配置することによって、波長 550nmの光透過率95%で10 5 ~10 11 ω/sq.の表面抵抗となることが開示されている 。
しかしながら、カーボンナノチューブの ち単層カーボンナノチューブ(single-walled car bon nanotubes:SWNTs)には、その合成過程において 不可避的に金属性のもの(m-SWNTs)と半導体性の もの(s-SWNTs)とが混在しているが、SWNTsを用い 従来の薄膜においてはm-SWNTsとs-SWNTsとの混 については考慮されていない。そのため、 膜の導電性と光透過性の両立には限界があ た。
また、SWNTsを用いた従来の薄膜形成技術 はSWNTsの分散剤として酸性ポリマーのアルキ ルアンモニウム塩やポリオキシエチレン-ポ オキシプロピレン共重合体などのポリマー( 分子)を用いていることから、その薄膜はSWN Ts含有高分子薄膜として特徴づけられるもの あり、特許文献1の場合にもその事情は同じ である。このような薄膜では高分子分散剤が 薄膜中に残存するため、薄膜の導電性と光透 過性の両立および薄膜形成工程において一定 の制約があった。
なお、本発明者らはアミンを分散剤として
いた単層カーボンナノチューブの分散につ
て研究を進めており、これまでに遠心分離
との組み合わせによってm-SWNTsを濃縮する技
術を提案しているが(特許文献2参照)、それを
用いた薄膜形成とその光透過性や導電率など
の諸物性についてはこれまでに検討を行って
おらず、具体的な事実は何ら明らかにされて
いない。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてな れたものであり、導電性および光透過性の らなる向上を可能とし、薄膜形成プロセス 簡便化も図ることができる単層カーボンナ チューブの透明導電性薄膜とその製造方法 提供することを課題としている。
本発明は、上記の課題を解決するために 以下のことを特徴としている。
第1:金属性の単層カーボンナノチューブ(m -SWNTs)と半導体性の単層カーボンナノチュー (s-SWNTs)とが混在する単層カーボンナノチュ ブを沸点が20~400℃のアミンを分散剤として 有するアミン溶液に分散する工程と、得ら た分散液を遠心分離または濾過することに りm-SWNTsを濃縮し、m-SWNTs高含有の分散液を得 る工程と、得られたm-SWNTs高含有の分散液を 材に塗布して薄膜形成する工程とを含むこ を特徴とする透明導電性薄膜の製造方法。
第2:アミンは、1級アミン、2級アミン、3 アミン、および芳香族アミンから選ばれる なくとも1種であることを特徴とする上記第1 の透明導電性薄膜の製造方法。
第3:アミンは、イソプロピルアミン、ジ チルアミン、プロピルアミン、1-メチルプロ ピルアミン、トリエチルアミン、およびN,N,N ,N’-テトラメチレンジアミンから選ばれる なくとも1種であることを特徴とする上記第 1または第2の透明導電性薄膜の製造方法。
第4:単層カーボンナノチューブをアミン 液に分散させる際に超音波処理を行うこと 特徴とする上記第1から第3のいずれかの透明 導電性薄膜の製造方法。
第5:エアブラシを用いてm-SWNTs高含有の分 液を基材に噴霧して薄膜形成することを特 とする上記第1から第4のいずれかの透明導 性薄膜の製造方法。
第6:m-SWNTs高含有の分散液を基材に塗布し 後、薄膜を塩酸で処理する工程を含むこと 特徴とする上記第1から第5のいずれかの透 導電性薄膜の製造方法。
第7:40,000~100,000Gかつ1~168時間の条件で分散 液を遠心分離することを特徴とする上記第1 ら第6のいずれかの透明導電性薄膜の製造方 。
第8:実質的に、金属性の単層カーボンナノ ューブ(m-SWNTs)を含有する単層カーボンナノ ューブからなり、波長400~800nmの範囲の可視 線の透過率が96~97%であり、表面抵抗率が5×10 4 ω/sq.未満であることを特徴とする透明導電性 薄膜。
第9:実質的に、金属性の単層カーボンナノ ューブ(m-SWNTs)を含有する単層カーボンナノ ューブからなり、波長400~800nmの範囲の可視 線の透過率が85~96%であり、表面抵抗率が1×10 4 ω/sq.未満であることを特徴とする透明導電性 薄膜。
本発明の製造方法によれば、アミンを分 剤として用いることで束状の単層カーボン ノチューブをほぐして分散することが可能 あることから、この分散液を塗布して成膜 ることで導電性の高い薄膜が得られると共 、遠心分離または濾過によってm-SWNTsを濃縮 してm-SWNTs高含有の分散液としていることか 、単層カーボンナノチューブの使用量を少 くしても薄膜の導電性を大幅に高めること でき、高い導電性と光透過性を両立した薄 を得ることができる。具体的には、m-SWNTsを 縮しない場合に比べて例えば薄膜の表面抵 率を50倍も高めることができる。
また、分散剤やバインダーとしての有機 分子の使用を必須とせず、分散剤として低 点のアミンを用いているので、単層カーボ ナノチューブの分散、m-SWNTsの濃縮、および 成膜操作をより一連の工程として簡便に行う ことが可能となる。そして分散剤として低沸 点のアミンを用いているので、分散液を基材 に塗布した後、加熱や洗浄等によって容易に アミンを薄膜から除去することができ、導電 性の低下に繋がり得る不純物としての分散剤 を容易に除去することができるため導電性の 高い薄膜を簡便に得ることができる。さらに 、アミンを用いた単層カーボンナノチューブ の分散と濃縮は化学反応を伴わないためm-SWNT sの導電性が低下することがない。
また、低沸点アミンを用いることで、ア ンの種類および濃度、遠心分離等の各条件 変更することにより分散液におけるm-SWNTsの 濃縮率を容易に制御でき、その結果として薄 膜の導電性を低導電率から高導電率まで広い 範囲で容易に調整することができる。
本発明の透明導電性薄膜は、ポリマー分 剤やバインダー等の高分子を実質的に含有 ず、アミンを分散剤としてm-SWNTsを濃縮した 単層カーボンナノチューブを塗布することに より形成したものであるので、単層カーボン ナノチューブの使用量を少なくしても薄膜の 導電性を大幅に高めることができ、高い導電 性と光透過性を有している。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、単層カーボンナノチュ ブとしては市販されているものなど各種の 成法によるものを用いることができる。一 的に用いられている単層カーボンナノチュ ブの直径は、例えば0.8~2.0nm程度である。ま 、単層カーボンナノチューブの種類によっ は予め精製処理を行ったものを用いること 好ましい。例えば、単層カーボンナノチュ ブの合成法によっては、無定形炭素や金属 媒等の不純物が単層カーボンナノチューブ 含まれてくるが、空気中における加熱処理 主とする酸化精製法を前処理として行うこ で、m-SWNTsの濃縮度を調整した高純度SWNTs分 液が容易に調整でき、これを用いることで m-SWNTsの含有量が調整されたSWNTs透明導電性 膜を作製することができる。
単層カーボンナノチューブの形態に特に 限はないが、薄膜の導電性を高める点から より長いものが好ましい。すなわち、1本の 単層カーボンナノチューブの導電性は高いが 、単層カーボンナノチューブ間の電子移動の 際の抵抗値が高いために薄膜の導電性として は理論予測されている程の性能は実際には出 ない。しかし、単層カーボンナノチューブが 長いほど広い範囲を1本でカバーでき、また 層カーボンナノチューブ同士の重なりの確 が高くなり、結果として1本1本の単層カーボ ンナノチューブの各々が導電性の向上に寄与 するため、薄膜の導電性が向上する。
通常の合成法による単層カーボンナノチ ーブは、金属性の単層カーボンナノチュー (m-SWNTs)の含有率が約30%であるといわれてい が、本発明においては、その割合は任意で ってよい。
本発明では、単層カーボンナノチューブ アミンとの電子的相互作用、そして金属性 単層カーボンナノチューブ(m-SWNTs)と半導体 の単層カーボンナノチューブ(s-SWNTs)とのア ンに対する相互作用の相違を利用して、束 の単層カーボンナノチューブを分離すると にm-SWNTsを濃縮する。
m-SWNTsとs-SWNTsとのアミンに対する相互作 は、アミンの種類にもよるが、典型的には m-SWNTsの強い電子受容性によってm-SWNTsとアミ ンとの間にs-SWNTsとアミンとの間よりも強い 互作用が生じるものと考えられる。より詳 には、m-SWNTsはアミンの窒素原子の電子に対 て強い電子受容性を有するので両者間に強 相互作用が生じる。このような強い相互作 によって、m-SWNTsは束状から非束状の1本ず 孤立したm-SWNTsに分散する。一方、非分散状 で固まっている比重が大きいs-SWNTsは沈殿物 として沈むため、m-SWNTsが分散した上澄み液 分離することでm-SWNTsを濃縮することができ 。
分散剤のアミンとしては、沸点20~400℃、 ましくは20~300℃のアミン、例えば脂肪族ア ン、環式アミン、酸アミドなどの1~3級アミ 、芳香族アミンなどを用いることができる これらは1種単独で用いてもよく、2種以上 併用してもよい。
脂肪族アミンの具体例としては、n-プロ ルアミン、イソプロピルアミン、1-メチルプ ロピルアミン、n-オクチルアミン、ジエチル ミン、ジプロピルアミン、ジオクチルアミ 、トリエチルアミン、トリプロピルアミン トリオクチルアミン、N,N-ジメチル-n-オクチ ルアミン等のモノアミン;エチレンジアミン N,N,N’,N’-テトラメチレンジアミン、N,N-ジ チルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメ チルエチレンジアミン等のジアミン;ジエチ ントリアミン、N-(3-アミノプロピル)-1,3-プロ パンジアミン、ペンタエチレンヘキサミン等 のトリアミンなどが挙げられる。
環式アミンの具体例としては、シクロヘ シルアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、 1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセンなどが げられる。
芳香族アミンの具体例としては、ピペリ ン、1-メチルピペリジンなどが挙げられる
酸アミドの具体例としては、N,N-ジメチル ホルムアミドなどが挙げられる。
中でも、m-SWNTsの濃縮を効率的に行うこと ができる点からは、イソプロピルアミン、ジ エチルアミン、プロピルアミン、1-メチルプ ピルアミン、トリエチルアミン、およびN,N, N’,N’-テトラメチレンジアミンから選ばれ 少なくとも1種を用いることが好ましい。
本発明において、アミン溶液の溶媒とし は、アミンと親媒性があるものであれば特 制限はないが、その具体例としてはテトラ ドロフラン(THF)、アルコール、グリコール ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられ 。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上 を併用してもよい。
また、アミン溶液には界面活性剤や消泡 等の添加剤を加えることもできる。但し、 リマー分散剤や、熱可塑性樹脂等のバイン ーなどの有機高分子は、薄膜物性を低下さ たり薄膜形成プロセスを複雑化したりする 合があり、有機高分子は薄膜物性や薄膜形 プロセスの簡便化の観点からは使用を避け ことが望ましい。
単層カーボンナノチューブをアミン溶液 分散させる際には超音波処理を行うことが ましい。超音波処理は、例えば1分~168時間 音波照射することにより行うことができる
アミン溶液におけるアミン濃度は、特に 限はないが、例えば1~5Mの範囲内である。
単層カーボンナノチューブの分散液を遠 分離または濾過することによりm-SWNTsを濃縮 し、m-SWNTs高含有の分散液を得ることができ 。遠心分離は、好ましくは100~100,000G、より ましくは40,000~100,000Gのパワーにて、好まし は1分~168時間、より好ましくは1~168時間で行 ことができ、遠心分離のパワーや時間を調 することによって、m-SWNTsの含有率を調整す ることもできる。遠心分離のパワーを上げる か、あるいは時間を長くすることで、m-SWNTs 含有率が増加する。
また、溶媒の比重を変更することで、分 液に対する非分散s-SWNTsの相対的な比重を変 えることができるため、溶媒の比重によって もm-SWNTsの含有率を制御することができる。
このようにして得られたm-SWNTs高含有の分 散液を基材に塗布して成膜する際には、エア ブラシ等を用いて噴霧塗布する方法、LB(ラン グミュア・ブロジェット、Langmuir Blodgett)法 ディップコーティング、スピンコーティン 、乾燥法、濾過法等を用いることができる 中でも、エアブラシを用いることで、m-SWCNT 含有の分散液から薄膜を直接に形成でき、 らに薄膜の透過率を容易に調整することが きる。
基材としては、固体基板、透明性(例えば 可視光透過率が80%以上)の樹脂のフィルムや ート、ガラス板等が例示される。
m-SWNTs高含有の分散液を基材に塗布した後 、加熱、減圧、溶剤による洗浄などによりア ミンを除去することができる。溶剤としては 、例えばエタノール、エーテル、脂肪族炭化 水素系溶剤などを用いることができる。
なお、m-SWNTs高含有の分散液を基材に塗布 した後、薄膜を塩酸で処理することにより、 薄膜の導電性をさらに高めることができる。 特に、s-SWNTs含有量の高い薄膜において塩酸 理により大幅に導電性が向上するが、これ 塩酸処理によって薄膜中のs-SWNTsに対するド ピングが起きることによるものと考えられ 。
このようにして、導電性、光透過性が共 優れた透明導電性薄膜が得られる。薄膜は 目立つ不純物のない密で均一な単層カーボ ナノチューブのネットワークとして電子顕 鏡などにより観察できる。膜厚は、特に制 はないが例えば10~100nmとすることができる
本発明の方法により得られる単層カーボン
ノチューブ薄膜は、条件を適切に制御する
とで導電性を広範囲で制御できるが、本発
によれば例えば次の薄膜を得ることができ
。
i) 実質的に、金属性の単層カーボンナノチ
ーブ(s-SWNTs)を含有する単層カーボンナノチ
ーブからなり、波長400~800nmの範囲の可視光
の透過率が96~97%であり、表面抵抗率が5×10 4
ω/sq.未満、好ましくは1×10 4
ω/sq.未満である透明導電性薄膜。
ii) 実質的に、金属性の単層カーボンナノチ
ーブ(s-SWNTs)を含有する単層カーボンナノチ
ーブからなり、波長400~800nmの範囲の可視光
の透過率が85~96%であり、表面抵抗率が1×10 4
ω/sq.未満である透明導電性薄膜。
なお、ここで「実質的に」とは不揮発性 高分子量成分、例えばポリマー分散剤や、 可塑性樹脂等のバインダーなどを多量に含 しないことを意味する。
例えば実施例に示す単層カーボンナノチュ ブのように直径分布の広いSWNTs(一例として 0.9~1.3nmの直径分布をもつもの)の場合には、 ラマンスペクトルのピーク面積比からm-SWNTs 見かけの濃縮率を算出することが可能であ が、この場合、m-SWNTsの濃縮処理によって、 マンスペクトルのRBMにおけるm-SWNTsの割合:(m -SWNTs RBM /( m-SWNTs RBM + s-SWNTs RBM )×100)が励起波長514.5nmの測定で94%以上、かつ 起波長633nmの測定で80%以上である分散液と ることが考慮される。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく
明するが、本発明はこれらの実施例に何ら
定されるものではない。
<実施例1>
m-SWNTsとs-SWNTsとが束状に混合した単層カー
ンナノチューブ(HiPcoチューブ、Carbon Nanotechn
ologies, Inc.製)4mgを5Mのプロピルアミン溶液(溶
媒:テトラヒドロフラン)に添加した後、超音
処理を5~10℃で2時間行い単層カーボンナノ
ューブを均一に分散した。次いで45,620Gの遠
分離を12時間行い分散液を調製した(以下「
散液1」と言う。)。
一方、上記の単層カーボンナノチューブ4 mgを1Mのプロピルアミン溶液(溶媒:テトラヒド ロフラン)に添加した後、超音波処理を5~10℃ 2時間行い単層カーボンナノチューブを均一 に分散した。次いで14,000Gの遠心分離を1時間 い分散液を調製した(以下「分散液2」と言 。)。
これらの分散液1、2の単層カーボンナノ ューブについて分光分析を行った。図1は波 400~1600nmの吸収スペクトルを示している。吸 収スペクトルの測定は分光光度計(UV-3150、(株 )島津製作所製)を用いて行った。分散液1の単 層カーボンナノチューブ(点線)では400~650nmに いてシャープなピークが現れているが、こ はTHF溶液にプロピルアミンを添加すること m-SWNTsが1本ずつほぐれて非バンドル化する とを示している。また、分散液2の単層カー ンナノチューブ(実線)に比べてm-SWNTsの第一 ンド遷移(400~650nm)における吸収が増大しs-SWN Tsの第二バンド遷移(550~900nm)における吸収が 衰していることから、分散液1ではm-SWNTsが濃 縮されていることが分かる。
図2は514.5nm励起と633nm励起のラマンスペクト ルを示している。ラマンスペクトルの測定は ラマン分光器(HR-800、(株)堀場製作所製)を用 て行った。分散液1の単層カーボンナノチュ ブ(点線)ではm-SWNTsに起因するRadical Breathing Modes(RBM)のピークが260cm -1 と200cm -1 の付近に現れた。一方、分散液2の単層カー ンナノチューブ(実線)ではs-SWNTsに起因するRB Mのピークが180cm -1 と260cm -1 の付近に現れた。
1600cm -1 付近のtangential G bandは、m-SWNTsとs-SWNTsとを容 易に識別できる特徴的なバンドであり、分散 液1の単層カーボンナノチューブの場合にtange ntial G bandにおける強いBreit-Winger-Fano線形成 が観察されたことによりm-SWNTsが濃縮されて ることが分かる。
また、分散液2について、遠心分離前後の 各分散液の単層カーボンナノチューブの吸収 スペクトル測定を行ったところ、m-SWNTsとs-SWN Tsの特性吸収の強度比には差が見られず、ラ ンスペクトル測定の結果も同様にm-SWNTsとs-S WNTsの特性吸収の強度比には差が見られなか たことから、分散液2では遠心分離前後にお てm-SWNTsの含有率に差がないことが示された 。
なお、ラマンスペクトルのRBMにおけるm-SWNTs の割合:(m-SWNTs RBM /( m-SWNTs RBM + s-SWNTs RBM )×100)は、分散液1では94%(励起波長514.5nm)、87%( 励起波長633nm)であり、分散液2では91%(励起波 514.5nm)、43%(励起波長633nm)であった。
次に、約85℃のホットプレート上に設置 た厚さ100μmの市販のPETシート(透過率:86.5%)の 表面に、エアブラシを用いて分散液1を均一 塗布し、ホットプレートの加熱により溶媒 テトラヒドロフランと分散剤のプロピルア ンを蒸発除去した。その後、薄膜をメタノ ルで洗浄してアミン残渣を除去することに り単層カーボンナノチューブ薄膜付きPETシ トを得た。
単層カーボンナノチューブ薄膜を走査型 子顕微鏡および原子間力顕微鏡で観察した ころ、単層カーボンナノチューブの凝集塊 存在しておらず、多数の単層カーボンナノ ューブが一本ずつ分離した状態で均一に分 し、ランダムに交差した状態で接触してい ことが確認された。
この単層カーボンナノチューブ薄膜の表面 抗率を四探針法抵抗率測定装置(ロレスター 、三菱化学(株)製)により室温、大気中にて測 定したところ、表面抵抗率は9.0×10 3 ω/sq.であった。
また、単層カーボンナノチューブ薄膜付 PETシートと、元のPETシートのそれぞれの波 400~800nmの可視光線の範囲における透過率を 光光度計(UV-3150、(株)島津製作所製)を用い 測定し、それらの差から単層カーボンナノ ューブ薄膜の透過率を導出したところ、透 率は97.1%であった。
一方、分散液2についても上記と同様の方 法によりPETシート表面に成膜して単層カーボ ンナノチューブ薄膜を得た。単層カーボンナ ノチューブ薄膜を走査型電子顕微鏡および原 子間力顕微鏡で観察したところ、単層カーボ ンナノチューブの凝集塊は存在しておらず、 多数の単層カーボンナノチューブが一本ずつ 分離した状態で均一に分散し、ランダムに交 差した状態で接触していることが確認された 。
この単層カーボンナノチューブ薄膜の表面 抗率を四探針法抵抗率測定装置(ロレスター 、三菱化学(株)製)により室温、大気中にて測 定したところ、表面抵抗率は2.15×10 5 ω/sq.であった。
また、単層カーボンナノチューブ薄膜付きP
ETシートと、元のPETシートのそれぞれの波長4
00~800nmの可視光線の範囲における透過率を分
光度計(UV-3150、(株)島津製作所製)を用いて
定し、それらの差から単層カーボンナノチ
ーブ薄膜の透過率を導出したところ、透過
は96.6%であった。
<実施例2>
約85℃のホットプレート上に設置した厚さ2m
mの市販の石英ガラス(透過率:93.3%)の表面に、
エアブラシを用いて実施例1で得た分散液1を
一に塗布し、ホットプレートの加熱により
媒のテトラヒドロフランと分散剤のプロピ
アミンを蒸発除去した。その後、薄膜をメ
ノールで洗浄してアミン残渣を除去するこ
により単層カーボンナノチューブ薄膜付き
英ガラスを得た。
単層カーボンナノチューブ薄膜の膜厚は 表面形状測定装置により測定した値で28nmで あった。また、単層カーボンナノチューブ薄 膜を走査型電子顕微鏡および原子間力顕微鏡 で観察したところ、単層カーボンナノチュー ブの凝集塊は存在しておらず、多数の単層カ ーボンナノチューブが一本ずつ分離した状態 で均一に分散し、ランダムに交差した状態で 接触していることが確認された。
この単層カーボンナノチューブ薄膜の表面 抗率を四探針法抵抗率測定装置(ロレスター 、三菱化学(株)製)により室温、大気中にて測 定したところ、表面抵抗率は8.0×10 2 ω/sq.であった。
また、単層カーボンナノチューブ薄膜付 石英ガラスと、元の石英ガラスのそれぞれ 波長400~800nmの可視光線の範囲における透過 を分光光度計(UV-3150、(株)島津製作所製)を いて測定し、それらの差から単層カーボン ノチューブ薄膜の透過率を導出したところ 透過率は80.7%であった。
一方、分散液2についても上記と同様の方 法により石英ガラス表面に成膜して単層カー ボンナノチューブ薄膜を得た。単層カーボン ナノチューブ薄膜の膜厚は、表面形状測定装 置により測定した値で30nmであった。また、 層カーボンナノチューブ薄膜を走査型電子 微鏡および原子間力顕微鏡で観察したとこ 、単層カーボンナノチューブの凝集塊は存 しておらず、多数の単層カーボンナノチュ ブが一本ずつ分離した状態で均一に分散し ランダムに交差した状態で接触しているこ が確認された。
この単層カーボンナノチューブ薄膜の表面 抗率を四探針法抵抗率測定装置(ロレスター 、三菱化学(株)製)により室温、大気中にて測 定したところ、表面抵抗率は8.6×10 3 ω/sq.であった。
また、単層カーボンナノチューブ薄膜付きP
ETシートと、元のPETシートのそれぞれの波長4
00~800nmの可視光線の範囲における透過率を分
光度計(UV-3150、(株)島津製作所製)を用いて
定し、それらの差から単層カーボンナノチ
ーブ薄膜の透過率を導出したところ、透過
は78.2%であった。
<実施例3>
実施例1の分散液1、2について、エアブラシ
よる噴霧量を調整して薄膜の膜厚を制御し
実施例1と同様の方法でPETシート表面に膜厚
の異なる複数の単層カーボンナノチューブ薄
膜を成膜した。
これらの単層カーボンナノチューブ薄膜 光透過率と表面抵抗率の測定値の関係を図3 、図4、および表1に示す。
アミンを分散剤として用いてm-SWNTsを濃縮 し、このm-SWNTs高含有の分散液を用いて成膜 ることにより、単層カーボンナノチューブ 使用量を少なくしても薄膜の導電性を大幅 高めることができ、高い導電性と光透過性 両立した薄膜を得ることができた。さらに アミン濃度、遠心分離等の各条件を変更す ことにより分散液におけるm-SWNTsの濃縮率を 易に制御でき、その結果として薄膜の導電 を低導電率から高導電率まで広い範囲で容 に調整することができた。
なお、m-SWNTs高含有の分散液を成膜した後 、メタノールで洗浄後に12N塩酸に30分間浸漬 たものでは、薄膜の導電性をさらに高める とができた。特に、s-SWNTs含有量の高い薄膜 である分散液2による薄膜において塩酸処理 より大幅に導電性が向上した。
なお、m-SWNTsが濃縮された分散液1を用いて
膜した単層カーボンナノチューブ薄膜の電
顕微鏡写真を図6、図7に(図6:透過率99.4%、表
抵抗率360×10 3
ω/sq.、図7:透過率98.7%、表面抵抗率24×10 3
ω/sq.)に、原子間力顕微鏡写真を図8に(透過率
99.4%、表面抵抗率360×10 3
ω/sq.)示す。また、m-SWNTsが濃縮されていない
散液2を用いて成膜した単層カーボンナノチ
ューブ薄膜の電子顕微鏡写真を図9に(透過率9
8.8%、表面抵抗率1190×10 3
ω/sq.)示す。
<実施例4>
実施例2の分散液1、2について、エアブラシ
よる噴霧量を調整して薄膜の膜厚を制御し
実施例2と同様の方法で石英ガラス表面に膜
厚の異なる複数の単層カーボンナノチューブ
薄膜を成膜した。
これらの単層カーボンナノチューブ薄膜の
透過率と表面抵抗率の測定値の関係を図5お
よび表1に示す。アミンを分散剤として用い
m-SWNTsを濃縮し、このm-SWNTs高含有の分散液を
用いて成膜することにより、単層カーボンナ
ノチューブの使用量を少なくしても薄膜の導
電性を大幅に高めることができ、高い導電性
と光透過性を両立した薄膜を得ることができ
た。さらに、アミン濃度、遠心分離等の各条
件を変更することにより分散液におけるm-SWNT
sの濃縮率を容易に制御でき、その結果とし
薄膜の導電性を低導電率から高導電率まで
い範囲で容易に調整することができた。
<実施例5>
360℃にて熱処理をしたm-SWNTsとs-SWNTsとが束
に混合した単層カーボンナノチューブ(CarboLe
x AP-Grade、CarboLex, Inc.製)10mgを3Mのプロピルア
ミン溶液(溶媒:テトラヒドロフラン)に添加し
た後、超音波処理を5~10℃で2時間行い単層カ
ボンナノチューブを均一に分散した。次い
45,620Gの遠心分離を12時間行い分散液を調製
た(以下「分散液1」と言う。)。
一方、上記の熱処理をした単層カーボン ノチューブ10mgを1Mのプロピルアミン溶液(溶 媒:テトラヒドロフラン)に添加した後、超音 処理を5~10℃で2時間行い単層カーボンナノ ューブを均一に分散した。次いで14,000Gの遠 分離を12時間行い分散液を調製した(以下「 散液2」と言う。)。
これらの分散液1、2の単層カーボンナノ ューブについて分光分析を行った。図10は波 長400~1400nmの吸収スペクトルを示している。 収スペクトルの測定は分光光度計(UV-3150、( )島津製作所製)を用いて行った。分散液1の 層カーボンナノチューブ(点線)では500~800nmに おいてシャープなピークが現れているが、こ れはTHF溶液にプロピルアミンを添加すること でm-SWNTsが1本ずつほぐれて非バンドル化する とを示している。また、分散液2の単層カー ボンナノチューブ(実線)に比べてm-SWNTsの第一 バンド遷移(600~800nm)における吸収が増大しs-SW NTsの第二バンド遷移(850~1200nm)における吸収が 減衰していることから、分散液1ではm-SWNTsが 縮されていることが分かる。
また、分散液2について、単層カーボンナ ノチューブ(実線)の吸収スペクトルを行った ころ、分散液1の単層カーボンナノチューブ (点線)に比べてm-SWNTsの第一バンド遷移(600~800n m)における吸収が減少しs-SWNTsの第二バンド遷 移(850~1200nm)における吸収が増加していること から、分散液2ではm-SWNTsが濃縮されていない とが分かる。
次に、約85℃のホットプレート上に設置 た厚さ100μmの市販のPETシート(透過率:86.5%)の 表面に、エアブラシを用いて分散液1を均一 塗布し、ホットプレートの加熱により溶媒 テトラヒドロフランと分散剤のプロピルア ンを蒸発除去した。その後、薄膜をメタノ ルで洗浄してアミン残渣を除去することに り単層カーボンナノチューブ薄膜付きPETシ トを得た。
この単層カーボンナノチューブ薄膜の表 抵抗率を四探針法抵抗率測定装置(ロレスタ ー、三菱化学(株)製)により室温、大気中にて 測定したところ、表面抵抗率は920ω/sq.であっ た。
また、単層カーボンナノチューブ薄膜付 PETシートと、元のPETシートのそれぞれの波 400~800nmの可視光線の範囲における透過率を 光光度計(UV-3150、(株)島津製作所製)を用い 測定し、それらの差から単層カーボンナノ ューブ薄膜の透過率を導出したところ、透 率は81.9%であった。
一方、分散液2についても上記と同様の方法 によりPETシート表面に成膜して単層カーボン ナノチューブ薄膜を得た。この単層カーボン ナノチューブ薄膜の表面抵抗率を四探針法抵 抗率測定装置(ロレスター、三菱化学(株)製) より室温、大気中にて測定したところ、表 抵抗率は1.8×10 3 ω/sq.であった。
また、単層カーボンナノチューブ薄膜付きP
ETシートと、元のPETシートのそれぞれの波長4
00~800nmの可視光線の範囲における透過率を分
光度計(UV-3150、(株)島津製作所製)を用いて
定し、それらの差から単層カーボンナノチ
ーブ薄膜の透過率を導出したところ、透過
は80.5%であった。
<参考例1>
各種アミンについてテトラヒドロフランを
媒として1M、3M、5Mのアミン溶液を調製し、
施例1と同様の条件で単層カーボンナノチュ
ーブ(精製HiPco)の分散および遠心分離を行っ
。
得られた分散液について、実施例1と同様に 吸収スペクトルを測定し、波長400nmにおける 光度(λ 400nm )、波長550nmにおける吸光度(λ 550nm )、および波長800nmにおける吸光度(λ 800nm )を導出した。ここで、λ 400nm はSWNTsの分散度を示し、λ 550nm はm-SWNTsの分散度を示し、λ 800nm はs-SWNTsの分散度を示す指標となる。λ 550nm とλ 800nm の値からm-SWNTsの濃縮度が推定できる。
1Mアミン溶液の結果を表2に、3Mアミン溶 の結果を表3に、5Mアミン溶液の結果を表4に す。
表2~4より、アミンの種類および濃度を変 することにより分散液におけるm-SWNTsの濃縮 率を広範囲で容易に制御できることが分かる 。
図11は、オクチルアミンを用いて、遠心 離時間を変更した場合の単層カーボンナノ ューブ分散液の吸収スペクトル変化を示す 遠心分離時間を7時間、12時間、24時間とする ことで、m-SWNTs含有率も変化することが吸収 ペクトルから確認できる。
図12は、プロピルアミンを用いて、プロ ルアミン濃度を1Mから9Mまで変更した場合の 層カーボンナノチューブ分散液の吸収スペ トル変化を示す。濃度を1M、3M、5M、7M、9Mと することで、m-SWNTs含有率も変化することが 収スペクトルから確認できる。
