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Patent Searching and Data


Title:
UNFREEZABLE DNA LIGASE REACTION COMPOSITION
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/136263
Kind Code:
A1
Abstract:
[PROBLEMS] To study on an additive, and to provide: a ligase composition which does not freeze for at least one week when stored at -30˚C; use of the composition; a reagent/kit comprising the composition; and a method for producing the composition. [MEANS FOR SOLVING PROBLEMS] Disclosed is a DNA ligase reaction composition which does not freeze for at least one week when stored at -30˚C. The composition preferably comprises betaine and glycerol.

Inventors:
KUROITA TOSHIHIRO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/057411
Publication Date:
November 13, 2008
Filing Date:
April 16, 2008
Export Citation:
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Assignee:
TOYO BOSEKI (JP)
KUROITA TOSHIHIRO (JP)
International Classes:
C12N9/96; C12P19/34; C12Q1/25
Foreign References:
JP2006025637A2006-02-02
JP2002034558A2002-02-05
JPH01132362A1989-05-24
JPH0423987A1992-01-28
JPH07194378A1995-08-01
Other References:
"TaKaRa Bio Sogo Catalog 2002-2003", 2002, pages A-63 - A-64
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Claims:
-30℃保存で少なくとも1週間凍結しない、DNAリガーゼ反応組成物
ベタイン及びグリセロールを含有する、請求項1に記載のDNAリガーゼ反応組成物
2M以上のベタイン及び5%(V/V)以上のグリセロールを含有する、請求項2に記載のDNAリガーゼ反応組成物
請求項1に記載の組成物を用いてリガーゼ反応を行う、ライゲーション反応方法。
請求項1に記載の組成物を含有する試薬および/またはキット。
請求項1に記載の組成物を1液で供給することを特徴とする、試薬および/またはキット。
 
Description:
凍結しないDNAリガーゼ反応組成

 本発明は、その組成物が-30℃で少なくと 一週間凍結しないという性質を有する、DNA 相補末端を連結するための新規DNAリガーゼ 応組成物に関する。さらには、本組成物を 有する試薬・キットにも関する。

 DNAリガーゼは、隣接したDNAの5’側のリン 酸基と3’側の水酸基をホスホジエステル結 によって連結する酵素であり、様々な生物 来のものが知られている。その中でも、分 生物学実験で頻繁に用いられているのが、T4 バクテリオファージに由来する「T4 DNAリガ ゼ(E.C.6.5.1.1)」である。この酵素は、反応にM gイオンとATPを要求し、平滑末端、及び突出 端の2本鎖DNAの連結や、2本鎖DNAのニック部分 の修復に働くことが知られている。この他に も大腸菌に由来するE. coli DNA リガーゼや好 熱性菌由来のDNAリガーゼなども頻繁に使用さ れている。

 T4 DNA リガーゼとE. Coli DNAリガーゼが主 に分子生物学実験におけるDNAの連結反応に使 用される一方、好熱性菌由来のDNAリガーゼは 、リガーゼチェインリアクション法などの診 断用途に用いられることが多い。

 近年、様々な分子生物学用試薬やキット 販売されるに至っている。その中、リガー 試薬も様々な工夫がなされてきている。特 、DNA以外の反応に必要な全ての成分を含ん 組成物(DNAリガーゼ反応組成物)、すなわち1 タイプのリガーゼ試薬が世に出て久しい。1 液タイプのリガーゼ試薬は、一般的には連結 したいDNAを含むDNA溶液と2:1~1:0.5の比率で混合 してライゲーション反応を行う。しかし、現 在販売されているそれらの試薬は、保存安定 性のことを考えて凍結状態(通常-20℃~-30℃)で 供給され、使用直前に融解して使用する煩雑 さがある。また、リガーゼは凍結融解には強 いが、凍結融解を繰り返すうちに、徐々に活 性が低くなってしまう試薬も見られるようで ある。本発明において、1液タイプ、かつ-30 の保存でも凍結しないライゲーション試薬 検討を行った理由は、ここにある。

 DNAリガーゼ試薬には、反応バッファーと 素が別々に供給される場合もあり、そのと DNAリガーゼは50%グリセロールなどを含む保 液で供給され、その時のDNAリガーゼ溶液は- 20℃~-30℃で凍結しないが、本発明はそのよう な現象を意図しているのではない。本発明に おいては、DNA成分以外のライゲーションに必 要な成分をすべて含むDNAリガーゼ反応組成物 が凍結しないことが重要である。

 凍結しない状況を作り出すためには、添 剤等を工夫することが考えられるが、反応 阻害しないという条件を満たす必要がある そこで文献調査により、添加剤開発を調査 た。分子生物学実験におけるT4 DNA リガー の使用の歴史は古く、1970年代まで遡ること ができる。また、添加剤の検討も種々行われ ており、歴史は古い。以下に例を列挙する。

 特許文献1には、ポリエチレングリコールな どの体積排除効果があり、かつDNAと相互作用 しないポリマーを、ライゲーション反応に添 加することによる反応促進効果が記載されて いる。しかし、この組成を用いて調製したDNA リガーゼ組成物は冷蔵庫での-30℃~-30℃での 存中に容易に凍結してしまう。

US4582802

 また、特許文献2には、(A)ポリエチレングリ コール、(B)ポリアミン、一価カチオン及び二 価カチオンから成る群から選択した少なくと も1種のもの、が添加剤として挙げられてお 、(A)と(B)をリガーゼと共存させることによ 、反応効率を格段に向上させることができ ことが記載されている。しかし、この組成 用いても、-20℃~-30℃での保存中に凍結して まうことが我々の実験から分かっていた。

特開昭62-36187

 さらに、特許文献3には、ベタインを添加す ることによるTAクローニングの効率の向上の 果が記載されている。TAクローニングとは Taq DNA ポリメラーゼなどを使用したPCR(Polyme rase chain reaction)での増幅DNA断片の3’末端に デニン(dA)が一塩基付加されることを利用す るクローニング方法である。この一塩基付加 は、Taq DNA ポリメラーゼなどが有する、Termi nal deoxynucleotidyl transferase(TdT)活性による。通 常3’端にチミン(dT)の一塩基突出を有するベ ター(通常Tベクターと呼ばれる)とPCRプロダ トを混合し、リガーゼを反応させことによ て行うことにより、ベクターとDNA断片を連 させる。本方法は、従来の制限酵素付着末 や、平滑末端を利用する方法にくらべ、迅 で簡便であるという利点があり、従来の方 に加えて頻繁に利用される方法のひとつと っている。この方法は付着末端を用いる方 のカテゴリーに分類されるが、手法的には 許文献1及び2の時代にはなかった方法であ 。
 この発明に用いられているベタインの高濃 溶液は、-20℃~-30℃での保存で凍結しにくい ことが分かっている。しかし、その凍結しに くい濃度は4M以上と、かなり飽和濃度に近く 現実的な濃度とはいえない。実際に、その 度でDNAリガーゼ反応組成物を調製した場合 ライゲーション反応が阻害されてしまうこ が我々の検討で明らかになっている。

特開2006-25637

 上記をまとめると、様々な添加剤の検討 行われてきたが、ほとんどが使用時に添加 るものであり、かつライゲーションの効率 向上させる目的で検討されているようであ 。また、それらを添加した状態でのライゲ ション効率や液の形状(凍結するか否か)に いては、ほとんど検討されていない。また 我々の事前の調査から、上記発明を用いて -20℃~-30℃保存で凍結せず、かつ実際の1液タ イプのライゲーション試薬として使用できる 発明は皆無であると考えられた。

 よって、本発明においては、様々な添加 を加えたリガーゼ組成物(DNA成分のみ添加せ ず)を調製し、-30℃保存で凍結するか否かに え、反応効率についても検討をおこなった

 本発明の目的は、添加剤を検討し、-30℃ 存で少なくとも一週間凍結しないリガーゼ 成物、および使用方法を提供することであ 。また、それらを含有する試薬・キットお び製造法を提供することである。

 今まで様々なライゲーションの効率化方 や1液試薬の検討がなされてきたが、上でも 述べたように、ライゲーション組成物の保存 方法や液状形状(すなわちマイナス温度で液 を保つ)についての検討は皆無であるといえ 。

 よって、本発明においては、様々な添加 を用いて、液の形状とDNAの連結効率につい 評価を行った。今回、主に-30℃で凍結しな 性質について調べたが、これは一般手Kに用 いられている-20℃のフリーザーでの長期保存 を念頭においたためである。

 様々な条件を検討した結果、ベタインと リセロールを共存させることで、少なくと -30℃で一週間凍結せず、かつ効率を保つ組 を見出すことができた。

本発明は以下の構成からなる。
[項1]-30℃保存で少なくとも1週間凍結しない DNAリガーゼ反応組成物
[項2]ベタイン及びグリセロールを含有する、 項1に記載のDNAリガーゼ反応組成物[項3]2M以上 のベタイン及び5%(V/V)以上のグリセロールを 有する、項2に記載のDNAリガーゼ反応組成物
[項4]項1に記載の組成物を用いてリガーゼ反 を行う、ライゲーション反応方法。
[項5]項1に記載の組成物を含有する試薬およ /またはキット。
[項6]項1に記載の組成物を1液で供給すること 特徴とする、試薬および/またはキット。

 本発明によって、リガーゼ活性を低下さ ない温度(すなわち-20℃~-30℃保存)で凍結し い1液タイプのDNAリガーゼ反応組成物を供給 できるようになる。使用に当たっての煩雑性 を低減することができる。

 本発明は、-30℃保存で少なくとも1週間凍 結しないことを特徴とする、DNAリガーゼ反応 組成物である。ここでいうリガーゼ反応組成 物とは、DNA成分のみを含まない、リガーゼ反 応に必要な成分を含む組成物を指す。

 DNAリガーゼ反応組成物の保存容器として 、特に限定されないが、一般的に用いられ プラスチック製のチューブやボトル類が好 しく用いられる。更に好ましくは、ポリプ ピレン製のチューブやボトル類が用いられ 。実際に、本発明においては、ポリプロピ ン製の1.5mlマイクロチューブを用いて検討 行った。

 本発明におけるDNAリガーゼ反応組成物は ベタイン及びグリセロールを含有する。グ セロールは、別名グリセリン。ベタインは リメチルグリシンを指す。本発明は、好ま くは、2M以上のベタイン及び5%(V/V)以上のグ セロールをDNAリガーゼ反応組成物である。 らに好ましくは、2~2.5Mベタイン、5~10%(V/V)グ リセロールが用いられる。

 ここで言うDNAリガーゼ反応組成物は、連 させたいDNA溶液と任意の比率で混合して連 反応(ライゲーション反応)を起こさせる組 物を指し、その組成物は1液から校正される その混合比率は特に限定されないが、DNA:組 成物比が、1:4~1:0.5の間で用いられることが好 ましく、さらに好ましくは、1:2~1:0.5で用いら れる。よって、実際の反応を行う溶液中での ベタインやグリセロールの濃度は混合比率に よって変化する。例えば、2Mベタインを含む 応組成物を1:1の混合比率でDNA溶液と混合し 場合、反応時のベタイン濃度は1Mとなる。0. 5:1の場合は、0.33Mとなる。

 本発明においてDNAリガーゼの種類は、特に 定されるものではないが、好ましくはT4フ ージ由来のT4 DNA リガーゼを用いる。この 素は、ファージを感染させた大腸菌の破砕 から調製したものや、T4ファージのリガーゼ 遺伝子を大腸菌に組み換えて発現させ、その 破砕物から調製されたものなど様々なものを 用いることができる。特
に、DNA分解酵素などの混入の少ない高純度の 高度を用いることが重要である。

 本発明における-30℃でのDNAリガーゼ反応 成物の保存方法は一般的な研究室でしよう れているフリーザーを用いることができる 本発明においては、三洋電機社製のフリー ー(BIOMEDICAL FREEZER MDF-U537(商標))を-30℃に設 して用いたが、同等の性能を示すフリーザ であれば特に限定されない。凍結試験時に 極力温度変化を少なくするために、ドアの 閉を極力少なくする必要があり、必要に応 て温度を定期的にモニターしても良い。ま 、冷気の噴出し口やファンの近くは設定温 よりも温度が低下する可能性があり、正確 評価ができないので、気をつける。

 本組成物に含まれる成分は、ライゲーシ ン反応の必須成分、バッファー・塩成分に えて、様々な添加剤を加えてよい。必須成 としては、DNAリガーゼ、ATP、及びマグネシ ム、バッファー・塩成分としては、バッフ ー、塩化ナトリウムなどの塩、及び還元剤 どを挙げることができるが、限定されるも ではない。

 本発明においてDNAリガーゼの種類は、特 限定されるものではないが、好ましくはT4 ァージ由来のT4 DNA リガーゼを用いる。こ 酵素は、ファージを感染させた大腸菌の破 物から調製したものや、T4ファージのリガー ゼ遺伝子を大腸菌に組み換えて発現させ、そ の破砕物から調製されたものなど様々なもの を用いることができるが、高度に精製された 高純度のものを用いることが重要である。特 に、DNA分解酵素などの混入の少ないものを用 いることが重要である。

 本発明に用いられるATP(アデノシン5’-三 ン酸)は、アデノシンのリボースの5’位の 酸基にリン酸が3分子連続して結合したヌク オチドのことを指す。ATPの濃度としては、 応時の濃度として、0.01~0.2mMが好ましく用い られる。最も好ましくは、0.02~0.1mMが好適に いられる。

 本発明に用いられるマグネシウムは、様 な塩を用いることができ、特に限定されな 。好ましくは、塩化マグネシウムを用いる 塩化マグネシウムの濃度は、反応時の濃度 して、1~10mMが好ましく用いられる。最も好 しくは、2~4mMが好適に用いられる。

 緩衝液成分はpHを至適条件に保つのに重 である。T4 DNA リガーゼの反応は、pH7.5前後 が最も至適とされており、pH7.5前後のpHを保 ことのできるバッファー成分を含むことが ましい。バッファーとしては特に限定され ものではないが、トリス緩衝液やHEPES緩衝液 が好適に用いられる。特に、トリス-塩酸緩 液が最も好ましい。緩衝液の濃度は、反応 の濃度として、10~100mMが好適に用いられるが 、20~50mMが用いられる。

 塩成分としては、塩化ナトリウムや塩化 リウムなどの一般的なアルカリ土類金属の を用いることができる。特に、塩化ナトリ ムが好適に用いることができる。塩化ナト ウムの濃度は、反応時の濃度として、10~100m Mが好適に用いられ、特に、好ましくは20~50mM 用いられる。

 還元剤成分としては、2-メルカプトエタ ールやジチオスレイトール(DTT)など、一般的 に生化学実験で用いられている還元成分を用 いることができ、特に限定されない。特に好 ましくは、還元維持能力の高いDTTが用いられ る。DTTの濃度は、反応時の濃度として、0.5~10 mMが好適に用いられる。特に好ましくは、1~5m Mが用いられる。

 本発明における添加剤としては、ポリエ レングリコール、スペルミジン、ベタイン 及びグリセロールなどを挙げることができ が、限定されるものではない。上で述べた うにポリエチレングリコール、スペルミジ 、ベタインは、ライゲーション反応の効率 向上させることのできる成分である。

 本発明におけるポリエチレングリコール 、様々な分子量のものを使用することがで るが、好ましくは分子量が200-20,000、好まし くは5,000-10,000、最も好ましくは6,000を用いる ポリエチレングリコールの濃度は、反応時 濃度として、0.5~3%(W/V)が好ましく用いられ 。最も好ましくは0.75~1.5%の濃度で使用する が良い。

 本発明におけるスペルミジンは、ポリア ンの一種であり、様々な由来のものが販売 れているが起源は特に限定されない。スペ ミジンの濃度は、反応時の濃度として、0.1~ 10mMが好ましく用いられる。最も好ましくは 0.5~2mMで使用するのが良い。

 本発明におけるベタインは、具体的には リメチルグリシンを指す。この分子は、グ シンのアミノ基にメチル基が3つ結合した構 造を持つ。ベタインの濃度としては、反応時 の濃度として、0.1~1.5Mが好ましく用いられる 最も好ましくは、0.5~1.25Mが好適に用いられ 。さらにベタインは、ライゲーション反応 成物の凍結を妨げる成分であり、反応組成 中で2.5~3Mの濃度で用いることが好ましい。

 また本特許は、上記組成物を用いてリガ ゼ反応を行うことを特徴とする、ライゲー ョン反応方法をも含むものである。

 具体的には、上記組成物に連結させたいD NA断片を混合し、反応させる。DNA断片は、基 的には2本鎖であり、末端が相補的である必 要がある。様々なパターンの連結反応が予想 されるが、大きく分けると、突出末端を有す るDNA同士、及び平滑末端を有するDNA同士の連 結が考えられる。突出末端には、5’側のDNA の突出したものと、3’側のDNA鎖の突出した のの2種類が考えられる。それらの多くは、 制限酵素によって作り出される末端である。 一方、平滑末端を有する断片は、末端の配列 に関わらず連結することが可能である。

 また、DNAポリメラーゼの作用により作り される、3’末端にアデニンが一塩基基突出 したDNA断片を、3’側にチミンが一塩基基突 したベクター(Tベクター)に連結するクロー ング方法(TAクローニング)が近年盛んに行わ るようになっている。この方法にも本発明 用いることができる。

 上でも述べたが、リガーゼによる連結反 が生じるには、DNAの5’側の末端がリン酸化 されている必要がある。2本鎖の連結が連結 れるには、最低片方の鎖が連結される必要 ある(片方のみが連結された場合は、もう片 は連結されないが、DNA断片としては連結さ たことになる)。少なくとも片方のDNA断片の 5’末端がリン酸化されていることが、2本鎖D NAの連結反応には必要である。多くの場合、 方だけが連結されたDNAは、大腸菌などへ導 すると、大腸菌の修復機構で連結されるこ が知られている。

 本発明は、上記組成物を含有する試薬・ ットにも関する。

 また、本発明の実施の一態様としては、D NA以外のライゲーション反応に必要な上述の 分を含む1液のライゲーション試薬を挙げる ことができる。

 以下に本発明の実施例を挙げることによ 、本発明による効果をより一層明瞭なもの する。ただし、これらの実施例によって本 明の範囲は限定されるものではない。

実施例1:添加剤の効果の検討(TAクローニング よる評価)
 50mM Tris-HCl(pH7.5)、8mM 塩化マグネシウム(ナ ライテスク製)、0.1mM ATP(東洋紡製)、4mM DTT( ナカライテスク製)、100mM NaCl(ナカライテス 製)、2.5%(W/V)PEG6,000、1mM スペルミジン、0.1U/ l T4 DNA リガーゼ(東洋紡製)からなる基本組 成に、表1に示す様々な添加剤を添加したDNA ガーゼ反応組成物を調製した。調製したDNA ガーゼ組成物(200μl)を-30℃に設定した冷凍庫 (三洋電機社製BIOMEDICAL FREEZER MDF-U537(商標))で 1ヶ月保存した後、以下の方法を用いてTAクロ ーニング効率の評価を行った。DNAリガーゼ反 応組成物の保存は、ポリプロピレン製の1.5ml イクロチューブ(エッペンドルフ社製)を用 た。また同時に、保存期間中の各組成物の 凍結の有無についての確認を行った。
 TAクローニングする挿入DNAはPCR法を用いて 製した。具体的には、2種類のプライマー(5 -GAT-GAG-TTC-GTG-TCC-GTA-CAA-CT-3’、および:5’-GGT-T AT-CGA-AAT-CAG-CCA-CAG-CGC-C-3’)を使用し、λファー ジDNA(東洋紡製)を鋳型として、rTaq DNA polymera seを用いて増幅し、約0.5kbのDNA断片を準備し (Taq DNA polymeraseを用いて増幅したDNA断片の3 末端には、主にアデニンが一塩基付加され いる)。増幅反応は、rTaq DNA polymeraseの取扱 い説明書に従い、増幅後、1%アガロースゲル 用いた電気泳動解析でバンドが生じている とを確認した。増幅したDNA断片は、精製キ ト(MagExtractor -PCR & Gel Clean up-:東洋紡 )を用いて精製し、濃度測定の後、使用した
 一方、クローニングベクターは、TAクロー ングキット(TArget Clone:東洋紡製)に添付され いるTベクター(pTA2)を用いた。
 ライゲーションは、以下のように実施した 上記DNA断片(75 fmol)とベクター(25 fmol)を溶 した7.5μlの溶液に、上記リガーゼ反応組成 7.5μlを添加し、16℃で30分間反応させ実施し 。
 評価は、連結産物でDH5αを形質転換し、生 てくるコロニー数で評価を行った。今回用 たpTA2ベクターは、目的DNAが挿入された場合 X-Galを含むLB寒天培地上で白いコロニーを形 成し、目的DNAが挿入されなかった場合は青い コロニーを形成する性質を有している。
 形質転換は、具体的には、以下のように実 した。すなわち、連結反応の終了したベク ー溶液10μlを大腸菌DH5αコンピテントセル( 洋紡製)100μlと混和後、氷上に30分間放置し 後、42℃で30秒間ヒートショックを行い、そ 一部を、50μg/mlアンピシリン(ナカライテス 製)、及び0.25%X-Gal(5-Bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-ga lactosidase:ナカライテスク製)を含むLB寒天培地 に塗布し、37℃で16時間培養した後、生じた ロニー数をカウントした。結果を表1に示し 。

 結果、基本組成に加えて、3Mベタイン、2.5M タイン+5%(V/V)グリセロール、及び2.5Mベタイ +10%(V/V)グリセロールを添加剤として添加し 組成物は、-30℃で少なくとも一週間凍結せ 、かつ高効率でTAクローニング可能である とが明らかとなった。
 3Mベタインは、-30℃で1ヶ月では凍結した。
 一方、酵素の保存などでよく用いられる50% リセロールは、凍結しないがリガーゼ反応 阻害することが分かった。
 また、2.5Mベタイン+5%グリセロール、及び2.5 Mベタイン+10%グリセロールを添加したリガー 組成物は、-30℃・1ヶ月の保存でも凍結しな いことが分かり、試薬としてより有望である ことが明らかとなった。
 上の検討では、DNA溶液7.5μlに対して、リガ ゼ組成物を等量の7.5μl添加して行ったが、 量の3.75μlを用いてもほぼ同等のクローニン グ効率が得られることも確認した。
 また、本実施例では示さなかったが、制限 素Hind IIIの切断によって生じる突出末端を いたライゲーション実験、及びHinc IIによ 切断によって生じる平滑末端を用いたライ ーション実験においても実証実験を行って り、高い効率を示すことを確かめている。

 分子生物学実験に用いられるライゲーショ 試薬・キットに好適に用いられる。特に、1 液タイプの高効率ライゲーション試薬・キッ トは幅広く実験に用いられているものであり 、本技術を用いることにより利便性の向上は 、産業上の大きな進歩であると考えられる。 また、臨床用途などについても好適に用いる ことができる。