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Title:
X-RAY GENERATOR EMPLOYING HEMIMORPHIC CRYSTAL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/123301
Kind Code:
A1
Abstract:
An X-ray generator includes: a vacuum vessel (1) containing a low-pressure gas atmosphere; at least one hemimorphic crystal arranged in the vacuum vessel; temperature increasing means (3, 7, 8, 9) for increasing the temperature of the hemimorphic crystal; a cold cathode electron source (4) arranged within a reach of the electric field generated from the hemimorphic crystal thermally excited by the temperature increasing means in the vacuum vessel and emitting electrons by electric field emission; and a metal target (6) for generating X-rays arranged within a reach of the electric field generated from the hemimorphic crystal in the vacuum vessel. With this compact configuration, it is possible to stably generate X-rays having an intensity above a certain level for a long time without requiring a large-scale device such as a high-voltage power source or a vacuum pumping device. Moreover, no heat is generated when an electron source is operating and no contamination is caused in the vacuum vessel.

Inventors:
ITO YOSHIAKI (JP)
YOSHIKADO SHINZO (JP)
NAKANISHI YOSHIKAZU (JP)
FUKAO SHINJI (JP)
ITO SHIGEO (JP)
TONEGAWA TAKESHI (JP)
FUJIMURA YOHEI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/055710
Publication Date:
October 16, 2008
Filing Date:
March 26, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV KYOTO (JP)
DOSHISHA (JP)
FUTABA DENSHI KOGYO KK (JP)
ITO YOSHIAKI (JP)
YOSHIKADO SHINZO (JP)
NAKANISHI YOSHIKAZU (JP)
FUKAO SHINJI (JP)
ITO SHIGEO (JP)
TONEGAWA TAKESHI (JP)
FUJIMURA YOHEI (JP)
International Classes:
H01J35/06; G21K1/00; G21K5/02; H05G2/00
Domestic Patent References:
WO2006103822A12006-10-05
Foreign References:
JP2004095311A2004-03-25
JP2001176378A2001-06-29
JP2004087304A2004-03-18
Attorney, Agent or Firm:
MINORI Patent Profession Corporation (8F 200, Takamiya-cho, Oike-dori,Takakura Nishi-iru, Nakagyo-ku,Kyoto-sh, Kyoto 35, JP)
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Claims:
 内部に低圧ガス雰囲気を維持する真空容器と、
 前記真空容器内に配置された少なくとも1つの異極像結晶と、
 前記異極像結晶の温度を昇降させる温度昇降手段と、
 前記真空容器内における、前記温度昇降手段によって熱励起された前記異極像結晶から生じる電界の到達範囲内に備えられ、電界放出により電子を放出する冷陰極電子源と、
 前記真空容器内における前記異極像結晶から生じる電界の到達範囲内に配置されたX線発生用金属ターゲットと、を備えたことにより、前記異極像結晶の温度の昇降に伴って前記真空容器から外部にX線を放射するものであることを特徴とするX線発生装置。
 前記冷陰極電子源は、仕事関数が小さく、電界放出によって電子を放出し易い物質それ自体、あるいは、少なくとも1つの細い尖った突起部を有する表面形状とされた物質からなっていることを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置。
 前記冷陰極電子源は、少なくとも一方の面に、マイクロメートルオーダー又はそれ以下の大きさのファイバー又は先端が尖った突起を多数備えた基板の単体、又は組合せ体からなっていることを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置。
 前記異極像結晶の周囲に、1枚の前記基板が、前記ファイバー又は前記先端が尖った突起を備えた面を前記異極像結晶側に向けて配置されていることを特徴とする請求項3に記載のX線発生装置。
 前記異極像結晶を間に挟んでその両側に、2枚の前記基板が互いに対向して配置されていることを特徴とする請求項3に記載のX線発生装置。
 前記異極像結晶の周囲に、少なくとも2枚の前記基板が互いに隣接して配置されていることを特徴とする請求項3に記載のX線発生装置。
 前記基板は、平板状又は湾曲した板状に形成されていることを特徴とする請求項3~請求項6のいずれかに記載のX線発生装置。
 前記冷陰極電子源は、内側面及び外側面の少なくとも一方に、マイクロメートルオーダー又はそれ以下の大きさのファイバー又は先端が尖った突起を多数備えた円筒からなっており、前記円筒が、前記異極像結晶の周囲を取り巻くように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置。
 前記ファイバーは、筒状又はコイル状又はリボン状又は先端が尖った突起を有する針状であることを特徴とする請求項3~請求項8のいずれかに記載のX線発生装置。
 前記ファイバー又は前記先端が尖った突起は、炭素又は窒化硼素又は金属又は半導体材料又はそれらを少なくとも構成元素の1つとして含む化合物から形成されていることを特徴とする請求項3~請求項9のいずれかに記載のX線発生装置。
 前記冷陰極電子源は接地されていることを特徴とする請求項1~請求項10のいずれかに記載のX線発生装置。
 前記冷陰極電子源は、前記真空容器の周壁内面又は前記ターゲットの前記真空容器内に露出した面又は前記異極像結晶の表面に備えられていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載のX線発生装置。
 前記温度昇降手段は、ペルチェ素子が組み込まれた加熱・冷却用ステージを有しており、前記異極像結晶は、前記ステージ上に載置されていることを特徴とする請求項1~請求項12のいずれかに記載のX線発生装置。
 前記冷陰極電子源は、前記加熱・冷却用ステージの表面に備えられていることを特徴とする請求項13に記載のX線発生装置。
Description:
異極像結晶を用いたX線発生装置

 本発明は、異極像結晶を用いたX線発生装 置に関するものである。

 ニオブ酸リチウム(LiNbO 3 )等の異極像結晶の熱励起によるX線発生装置 、高圧電源装置や真空排気装置等を必要と ないので、小型軽量でありまた可搬性に優 ている(例えば、特許文献1、2参照)。
 この種の従来のX線発生装置において一定レ ベル以上のX線強度を安定して得るためには 装置内部を低圧ガス雰囲気に維持した状態 、異極像結晶の温度変化によって発生する 界と、装置内部の雰囲気ガス及び吸着ガス この電界により電離して発生する電子の個 密度とを同時に増大させる必要がある。

 しかし、これらのX線発生装置においては、 装置内部の雰囲気ガス及び吸着ガスは、一旦 装置内に封入された後は、補給されることが なく、よって、装置内部に発生する電子の個 数は次第に減少するのみである。加えて、こ れらのX線発生装置は真空排気装置を備えて ないので、装置の内部を一定の低圧ガス雰 気に維持することが難しく、外部から装置 部への大気のリークによって比較的短時間 うちに装置内部のガス圧が上昇する。そし 、ガス圧の上昇によってX線の発生効率が著 く低下する。
 こうして、これらのX線発生装置では、一定 レベル以上の強度のX線を安定的に発生させ ことができなかった。

 この問題を解消するため、X線発生装置の 内部に熱電子放出による電子源を設け、この 熱電子源から装置内部に電子を供給すること が考えられる(例えば、特許文献3参照)。しか しながら、この構成によれば、熱電子源を作 動させるのに少なくとも約10Wの電力を必要と し、消費電力が大きくなる。また、熱電子源 からの放熱によって異極像結晶の表面が加熱 されて異極像結晶の正常な温度昇降が妨げら れ、それによって異極像結晶の分極作用によ る電界が弱められ、さらには、熱電子源から の蒸発物が、異極像結晶表面に蒸着されるこ とによって、異極像結晶の分極作用による電 界が弱められ、その結果、一定強度のX線を 時間にわたって安定的に発生させることは きなかった。

特開2005-174556号公報

特開2005-285575号公報

国際公開WO2006/103822号パンフレット

 本発明の課題は、真空排気装置を備える となく、しかもパッケージの気密構造を従 と同程度として、小電力で、一定レベル以 の強度のX線を安定して発生させることがで きる小型軽量のX線発生装置を提供すること ある。

 上記課題を解決するため、本発明は、内部 低圧ガス雰囲気を維持する真空容器と、前 真空容器内に配置された少なくとも1つの異 極像結晶と、前記異極像結晶の温度を昇降さ せる温度昇降手段と、前記真空容器内におけ る、前記温度昇降手段によって熱励起された 前記異極像結晶から生じる電界の到達範囲内 に備えられ、電界放出により電子を放出する 冷陰極電子源と、前記真空容器内における前 記異極像結晶から生じる電界の到達範囲内に 配置されたX線発生用金属ターゲットと、を えたことにより、前記異極像結晶の温度の 降に伴って前記真空容器から外部にX線を放 するものであることを特徴とするX線発生装 置を構成したものである。
 ここで、低圧ガス雰囲気とは、1~10 -4 Pa程度の低真空雰囲気、あるいは、空気また 炭化水素系ガスまたは窒素または不活性ガ またはそれらの2種以上の混合ガスを含む1~1 0 -4 Pa程度の低圧雰囲気をいう。

 本発明の好ましい実施例によれば、前記 陰極電子源は、仕事関数が小さく、電界放 によって電子を放出し易い物質それ自体、 るいは、少なくとも1つの細い尖った突起部 を有する表面形状とされた物質からなってい る。

 あるいは、前記冷陰極電子源は、少なく も一方の面に、マイクロメートルオーダー はそれ以下の大きさのファイバー又は先端 尖った突起を多数備えた基板の単体、又は 合せ体からなっている。この場合、前記異 像結晶の周囲に、1枚の前記基板が、前記フ ァイバー又は前記先端が尖った突起を備えた 面を前記異極像結晶側に向けて配置されてい ることが好ましく、あるいは、前記異極像結 晶を間に挟んでその両側に、2枚の前記基板 互いに対向して配置されていることが好ま く、あるいは、前記異極像結晶の周囲に、 なくとも2枚の前記基板が互いに隣接して配 されていることが好ましい。

 本発明の別の好ましい実施例によれば、前 基板は、平板状又は湾曲した板状に形成さ ている。
 本発明のさらに別の好ましい実施例によれ 、前記冷陰極電子源は、内側面及び外側面 少なくとも一方に、マイクロメートルオー ー又はそれ以下の大きさのファイバー又は 端が尖った突起を多数備えた円筒からなっ おり、前記円筒が、前記異極像結晶の周囲 取り巻くように配置されている。

 本発明のさらに別の好ましい実施例によ ば、前記ファイバーは、筒状又はコイル状 はリボン状又は先端が尖った突起を有する 状である。あるいは、前記ファイバー又は 記先端が尖った突起は、炭素又は窒化硼素 は金属又は半導体材料又はそれらを少なく も構成元素の1つとして含む化合物から形成 されている。

 本発明のさらに別の好ましい実施例によれ 、前記冷陰極電子源は接地されている。
 本発明のさらに別の好ましい実施例によれ 、前記冷陰極電子源は、前記真空容器の周 内面又は前記ターゲットの前記真空容器内 露出した面又は前記異極像結晶の表面に備 られていることを特徴とする請求項1~請求 3のいずれかに記載のX線発生装置。

 本発明のさらに別の好ましい実施例によれ 、前記温度昇降手段は、ペルチェ素子が組 込まれた加熱・冷却用ステージを有してお 、前記異極像結晶は、前記ステージ上に載 されている。
 本発明のさらに別の好ましい実施例によれ 、前記冷陰極電子源は、前記加熱・冷却用 テージの表面に備えられている。

 本発明によれば、異極像結晶の温度昇降 繰り返しにより異極像結晶から生じた電界 使用して、冷陰極電子源から真空容器内に 子を放出させるとともに、真空容器内の電 を加速してターゲットに衝突させるように たので、高圧電源装置や真空排気装置等の 掛かりな装置を一切備えることなく、また 電子源用の付加的な電源を使用することな 、コンパクトな構成でもって一定レベル以 の強度のX線を長時間にわたって安定的に発 生させることができる。また、電子源の作動 時に熱が発生することもなく、しかも、真空 容器内に不都合な汚染を生じさせることもな い。そして、本発明によるX線発生装置は、 型で可搬なX線発生装置として、医療分野、X 線分析の分野及びその他の各種産業分野にお いて幅広く利用することができる。

本発明の1実施例による異極像結晶を用 いたX線発生装置の概略構成を示す図であり (A)は縦断面図であり、(B)は(A)のX-X線に沿っ 断面図である。 冷陰極電子源の2つの例を示す平面図で ある。 冷陰極電子源の異なる配置例を示す図1 (B)に類似の図である。 冷陰極電子源の別の配置例を示す縦断 図である。 異極像結晶の温度上昇時におけるX線発 生装置の動作を説明した図である。 異極像結晶の温度下降時におけるX線発 生装置の動作を説明した図である。 異極像結晶の加熱・冷却を一定周期で り返しながら、真空容器内のガス圧を変化 せたときの、真空容器内に生じる電子の個 、異極像結晶から生じる電界の強度、発生 るX線の強度の変化の様子を定性的に説明す るグラフであり、実線は真空容器内にCNTを備 えた場合のグラフを、破線は真空容器内にCNT が備えられない場合のグラフをそれぞれ示し ている。 冷陰極電子源の有無による発生X線強度 の相違を比較したグラフである。 本発明の別の実施例によるX線発生装置 の概略構成を示す図である。 本発明のX線発生装置を利用した蛍光X 分析装置の一例の原理図である。

符号の説明

1 真空容器
2 異極像結晶
3 加熱・冷却用ステージ
4 冷陰極電子源
5a 基板
5b CNT
6 金属ターゲット
7 ペルチェ素子
8 電源
9 スイッチング回路
10 X線透過窓

 以下、本発明の好ましい実施例について説 する。図1は、本発明の1実施例による異極 結晶を用いたX線発生装置の概略構成を示す であり、(A)は縦断面図であり、(B)は(A)のX-X に沿った断面図である。図1を参照して、本 発明によれば、内部に低圧ガス雰囲気を維持 する真空容器1が備えられる。真空容器1は、 密性に優れた、例えばステンレス等のX線遮 蔽材料から形成され、一端開口が閉じた円筒 形状を有している。真空容器1は、他端開口 下向きになるようにして、ペルチェ素子7が み込まれた加熱・冷却用ステージ3の上面に 気密シールされた状態で接合される。
 真空容器1の内部は、1~10 -4 Pa程度の低真空雰囲気に維持され、あるいは 空気または炭化水素系ガスまたは窒素また 不活性ガスまたはそれらの2種以上の混合ガ スを含む1~10 -4 Pa程度の低圧雰囲気に維持される。

 ペルチェ素子7には、電源8からスイッチ グ回路9を介して電圧が印加される。ペルチ 素子7に対する印加電圧は、スイッチング回 路9によって、極性が交互に反転せしめられ る。ペルチェ素子7を作動させるための電源8 としては、市販の乾電池を使用すれば十分で ある。

 真空容器1の内部であって、加熱・冷却用ス テージ3の上面には、異極像結晶2が載置され 。異極像結晶2は焦電結晶とも呼ばれる。本 発明では、ニオブ酸リチウム(LiNbO 3 )、タンタル酸リチウム(LiTaO 3 )、硫酸グリシン(TGS)及びチタン酸バリウム(Ba TiO 3 )等のすべての公知の異極像結晶を使用する とができる。この実施例では、ニオブ酸リ ウム(LiNbO 3 )が使用される。
 この実施例では、異極像結晶2は、負の電気 面が上向きとなるように加熱・冷却用ステー ジ3の上面に置かれるが、異極像結晶2を、そ 正の電気面が上向きになるように置いても い。

 異極像結晶2の形状は特に限定されず、直 方体形状や円柱形状等の任意の形状のものを 用いることができるが、異極像結晶2を直方 形状とすれば、その角の部分に電荷が貯ま やすく、円柱形状とした場合よりも放電が じやすい。よって、安定化のために、放電 抑制する必要がある場合には、円柱形状の 極像結晶を用いることが好ましい。

 ペルチェ素子7が組み込まれた加熱・冷却 用ステージ3と、ペルチェ素子7に対する電源8 と、スイッチング回路9とから、異極像結晶2 温度を昇降させるための温度昇降手段が構 される。そして、スイッチング回路9を切り 替えることで、加熱・冷却用ステージ3の上 を交互に発熱面又は吸熱面として機能させ 異極像結晶2の温度を、種々の温度勾配で、 々の周期であるいは非周期的に昇降させる とができる。この場合、各温度昇降過程毎 、温度の上昇時間と下降時間は同じである とが好ましく、また、室温と、異極像結晶 キューリー点以下の適当な高温度との間で 度昇降が繰り返されることが好ましい。

 この実施例では、加熱・冷却用ステージ3 を真空容器1の外側に設けたが、真空容器1の 部の低圧ガス雰囲気中に適当な気密維持構 を介して配置することもできる。また、こ 実施例では、異極像結晶2に対する温度昇降 手段としてペルチェ素子7が使用されている 、本発明の構成はこれに限定されるもので なく、発熱及び吸熱作用を繰り返し奏しう 適当な公知の手段を、温度昇降手段として 用することができる。

 異極像結晶2は、定常状態においても分極 していて、その電荷量と等量で異符号の電荷 が結晶表面に吸着しているため、常時は電気 的に中性である。そして、異極像結晶2が加 及び冷却を繰り返されると、その温度変化 伴って結晶内部の自発分極が増減し、表面 着電荷がその変化に追従できなくなって、 気的な中和が破られ、結晶の周囲に強い電 を生じさせる。この場合、通常、電界の強 は、異極像結晶2の厚みに比例して大きくな 。

 そして、真空容器1の上端側の壁には、加熱 ・冷却用ステージ3によって熱励起された異 像結晶2から生じる電界の到達範囲内に開口 設けられ、この開口に、板状又は箔状のX線 発生用金属ターゲット6が気密シールされた 態で取付けられている。金属ターゲット6と ては、発生させるべきX線の性質、用途に応 じて適当な材料を選択することができる。例 えば、本発明のX線発生装置をX線分析装置に 用する場合には、分析目的に適合するAl、Mg 、Cu等の金属箔又は金属薄板を使用すること できる。
 また、金属ターゲット6の外側には、例えば 、Be又はX線透過性プラスチックから形成され たX線透過窓10が備えられている。X線透過窓10 にも気密シールがなされている。

 さらに、真空容器1の内部には、加熱・冷却 用ステージ3によって熱励起された異極像結 2から生じる電界の到達範囲内に、電界放出 より電子を放出する冷陰極電子源4が備えら れる。
 冷陰極電子源4は、仕事関数が小さく、電界 放出によって電子を放出し易い物質それ自体 、又は、少なくとも1つの細い尖った突起部 有する表面形状とされた物質から構成する とができる。あるいは、冷陰極電子源4を、 なくとも一方の面に、マイクロメートルオ ダー又はそれ以下の大きさのファイバー又 先端が尖った突起を多数備えた基板の単体 又は組合せ体から構成してもよい。この場 、ファイバー又は先端が尖った突起を、炭 又は窒化硼素又は金属又は半導体形成材料 はそれらを少なくとも構成元素の1つとして 含む化合物から形成し、ファイバーを、筒状 又はコイル状又はリボン状又は先端が尖った 突起を有する針状とすることが好ましい。フ ァイバーとしては、例えば、カーボンナノチ ューブ又はカーボンナノコイル、先端が尖っ た突起としては、例えば、ウィスカーが挙げ られる。また、基板は、金属又は半導体又は ガラス又はセラミック等を形成材料として、 平板状又は湾曲した板状に形成される。

 冷陰極電子源4は、異極像結晶2から生じ 電界の到達範囲内であれば、真空容器内の 意の場所に配置可能であり、冷陰極電子源4 、例えば、真空容器1の壁と異極像結晶2と 間のスペース内、又は加熱・冷却用ステー 3の上面又は真空容器1の周壁内面、又は金属 ターゲット6の真空容器1内に露出した面、又 異極像結晶2の表面に配置することができる 。

 この実施例では、冷陰極電子源4は、ガラス 板の一方の面上にITO(酸化インジウムスズ)を 層し、ITOの表面上にカーボンナノチューブ( CNT)5bを塗布することによって形成された基板 5aからなっている。この場合、CNT5bは異極像 晶が作る電界のパターンに適した任意のパ ーン、例えば、円状パターン(図2(A)参照)又 基板5aの全面にわたる四角形状パターン(図2( B)参照)で塗布される。なお、CNTの代わりにカ ーボンナノコイルを塗布してもよい。
 そして、この実施例では、一枚の基板5aが 異極像結晶2の周囲であって、異極像結晶2か ら生じる電界の到達範囲内に、CNT5bを備えた を異極像結晶2側に向けて配置される。

 図5は、異極像結晶の温度上昇時における X線発生装置の動作を説明した図であり、図6 、異極像結晶の温度下降時におけるX線発生 装置の動作を説明した図である。図5を参照 て、異極像結晶2は、定常状態においても分 していて、その電荷量と等量で異符号の電 が結晶表面に吸着しているため、常時は電 的に中性である(図5(A)参照)。異極像結晶2の 温度が上昇せしめられると、負の電気面2aで 、自発分極が小さくなり、よって、負の電 の表面電荷密度が減少するが、負の電気面2 aに吸着している正の電荷量はすぐには減少 ない。その結果、表面2aは正に帯電し、異極 像結晶2から金属ターゲット6に向かう強い電 が生じる(図5(B)参照)。

 この電界により、真空容器中の残留ガス のガス原子・分子が電離されて、正イオン 電子が生成される。それと同時に、電界に り、CNT5bから電子が放出される。これらの 子は、異極像結晶2の負の電気面2aに衝突す か、あるいは、負の電気面2aに吸着している 正イオン(外部から見ると、自発分極の負極 吸着しているので電気的に中性になってい )に吸着される。電子が異極像結晶2の負の電 気面2aに衝突すると、制動輻射によって、異 像結晶2の特性X線及び連続X線が発生する(図 5(C)参照)。

 一方、電子が正イオンに吸着すると、異 像結晶2の負の電気面2aに吸着していた正イ ンが電気的に中和されて、異極像結晶2が生 じさせる電界が弱くなる。電子が吸着した正 イオンは全体として電気的に中性であるから 、異極像結晶2の負の電気面2aに引き寄せられ にくくなり、負の電気面2aから離れるか、も くは、残留ガス原子・分子と衝突すること よって負の電気面2aから弾き飛ばされる(図5 (D)参照)。

 次に図6を参照して、異極像結晶の温度が 下降せしめられると、負の電気面では、自発 分極が大きくなり、よって負の電荷の表面電 荷密度が増加するが、負の電気面に吸着して いる正の電荷量はすぐには増加しない。その 結果、表面は負に帯電し、金属ターゲットか ら異極像結晶に向かう強い電界が生じる(図6( A)、(B)参照)。

 このとき、電界は、異極像結晶2の温度上 昇時の電界と逆向きなので、CNTから電子は放 出されない。一方、この電界により、ガス原 子・分子が電離して電子が生成される。また 、電子が吸着した正イオンが電界によって再 び電離して、正イオンと電子の状態に戻る。 これらの電子が金属ターゲットに向けて加速 され、金属ターゲットに衝突し、制動輻射に よって、金属ターゲットを形成する物質に固 有の特性X線及び連続X線が発生する(図6(C)参 )。異極像結晶2の温度がさらに下降すると、 異極像結晶2は、再び定常状態に戻り、分極 電荷量と等量で異符号の電荷が結晶表面に 着し、電気的に中和状態となる(図6(D)参照)

 図7は、異極像結晶の温度昇降を一定周期 で繰り返しながら、真空容器内のガス圧を変 化させたときの、真空容器内に生じる電子の 個数、異極像結晶から生じる電界の強度、発 生するX線の強度の変化の様子を定性的に説 するグラフであり、実線は真空容器内にCNT 備えた場合のグラフを、破線は真空容器内 CNTが備えられない場合のグラフをそれぞれ している。図7からわかるように、CNTを備え 場合には、CNTを備えない場合と比べて、常 、真空容器内に生じる電子の個数が多く、 のため、異極像結晶から生じる電界の強度 小さくなる。ところが、発生する度を比較 ると、CNTを備えない場合には、かなり狭い 力範囲内でしか安定した強いX線が得られな いのに対し、CNTを備えた場合には、より広い 圧力範囲内で強いX線強度が安定して得られ 。

 次に、この実施例によるX線発生装置の作用 効果を確認すべく実験を行った。実験では、 異極像結晶として、縦10mm、横10mm、厚さ5mmの 方体形状のニオブ酸リチウム単結晶(不定比 結晶)を使用し、15mm角のペルチェ素子を備え 加熱・冷却用ステージ上に載置した。また 冷陰極電子源として、ガラス板の一方の面 ITO(酸化インジウムスズ)を積層し、その上 、CNTを、1cm 2 当たり約3億本(各チューブの径は約20nm)の表 密度で直径5mmの円形パターンに塗布した基 を準備した。そして、この基板をCNTの塗布 を結晶側に向けてかつ結晶の分極軸に平行 配置し、結晶及び冷陰極電子源を内径31mmの 製の真空容器内に配置した。さらに、厚さ1 0μmの銅箔からなる金属ターゲットを使用し 金属ターゲットと結晶上端面との距離を16mm した。また、比較例として、冷陰極電子源 取り外した点以外は、同じ構成を有する装 を準備した。なお、この実験では、真空容 内のガス圧を連続的に変化させるため、真 容器に真空ポンプを接続して排気を行える うにした。

(実験1)
 実施例の装置及び比較例の装置のそれぞれ ついて、真空容器内のガス圧を10 -4 Paに維持し、ペルチェ素子に対して2V‐1Aの電 力を供給することによって、異極像結晶の温 度を5~80℃の範囲で昇降させ、発生するX線の ネルギー(keV)と強度(cps)を測定した。図8(A) 、それらの測定値をプロットしたグラフで る。図8(A)中、Yは実施例のグラフを、Zは比 例のグラフをそれぞれ示している。図8(A)の ラフから、実施例の装置では、比較例の装 と比べて、広いエネルギー範囲にわたって いX線が発生することがわかった。

(実験2)
 実施例の装置及び比較例の装置のそれぞれ ついて、ペルチェ素子に対して2V‐1Aの電力 を供給することによって、異極像結晶の温度 を5~80℃の範囲で昇降させながら、真空容器 のガス圧を10~10 -4 Paの範囲で変化させ、発生するX線の強度(cps) 測定した。図8(B)は、それらの測定値をプロ ットしたグラフである。図8(B)中、Yは実施例 グラフを、Zは比較例のグラフをそれぞれ示 している。図8(B)のグラフから、実施例の装 では、1~10 -4 Paの広いガス圧の範囲内で安定した強いX線を 発生するのに対し、比較例の装置では、非常 に狭いガス圧の範囲内でしか安定した強いX が発生しないことがわかった。

 これらの実験の結果から、冷陰極電子源 備えることによって、広いエネルギー範囲 わたって一定レベル以上の強いX線を得るこ とができるとともに、真空容器内への大気の リークが生じて真空容器内のガス圧が徐徐に 高くなっても、比較的長時間にわたって強い X線を安定的に発生させることができること わかった。しかも、この場合、冷陰極電子 の作動電力を必要とせず、ペルチェ素子を 動させるための高々1W程度の小電力のみでX を発生させることができ、非常に経済的で る。また、冷陰極電子源の作動中に異極像 晶の表面が加熱されることがないので、異 像結晶の温度昇降は妨げられず、また、異 像結晶から余計な蒸発物が生じることがな 、よって異極像結晶の分極作用による電界 発生が妨げられることはない。

 本発明の構成は、上述の実施例に限定さ るものではなく、種々の変形例が可能であ 。例えば、上述の実施例では、CNT5bを備え 基板5aを1枚だけ、異極像結晶2の周囲に配置 たが、図3(A)に示されるように、異極像結晶 2を間に挟んでその両側に、2枚の基板5aを互 に対向させて配置してもよいし、図3(B)に示 れるように、異極像結晶2の周囲に、2枚の 板5aを互いに隣接させて配置してもよい。ま た、図3(C)に示されるように、3枚の基板5aを 極像結晶2の周囲に隣接配置してもよい。そ て、図3(A)~(C)のいずれの構成においても、 べての基板5aを、CNT5bの備えられた面が異極 結晶2側に向くように配置してもよいし、異 極像結晶2と反対側に向くように配置しても いし、あるいは、CNT5bの備えられた面が異極 像結晶2側に向く基板5aと、それと反対側に向 く基板5aを組み合わせて配置してもよい。

 また、冷陰極電子源4を接地すれば、電界 放出によって冷陰極電子源4から放出された 子数が、アースから供給される電子数で補 れるため、冷陰極電子源4からの電子の放出 安定的に継続させることができ、それによ てX線の発生量が増大する。

 また、上述の実施例では、CNT5bを備えた 板5aを、異極像結晶2の分極軸に平行に配置 ているが、図4に示されるように、基板5aを 極像結晶2の分極軸に対して傾斜させて配置 てもよい。

 また、図9(A)に示されるように、冷陰極電 子源4’を、内側面及び外側面の少なくとも 方に、マイクロメートルオーダー又はそれ 下の大きさのファイバー11b又は先端が尖っ 突起を多数、例えば、CNTやカーボンナノコ ル等を多数備えた円筒11aから構成し、この 筒11aを異極像結晶2の周囲を取り巻くように 置してもよい。この場合、ファイバー11bは 異極像結晶2が作る電界のパターンに適合し た任意のパターン、例えば、互いに対向する 一対の半円筒状のパターン(図9(B)参照)、又は 一定長さの円筒状のパターン(図9(C)参照)、又 は周方向に一定の間隔をあけて配列された多 数の円形パッチからなるパターン(図9(D)参照) で、円筒11aに塗布される。

 本発明によるX線発生装置は、非常にコン パクトであり、小電力で作動する。したがっ て、従来の蛍光X線分析装置、X線回折装置、 療用X線診断装置、及び非破壊検査装置等に おいて、X線管球の代わりに本発明のX線発生 置をX線源として使用することによって、こ れらの装置をコンパクト化、省電力化するこ とができる。

 図10は、本発明のX線発生装置を使用した 光X線分析装置の一例の原理図であり、(A)は 平面図であり、(B)は側面図である。図10にお て、20は、試料が置かれる試料台であり、 料台20を中心とする円周上には、本発明によ るX線発生装置21が複数個互いに等しい間隔を あけて配置される。また、試料台20の上方に 、その中心軸上に、例えば半導体検出器か なるX線検出器22が(図示されない)支持ユニ トによって支持されている。さらに、各X線 生装置21は、(図示されない)駆動機構によっ て支持されていて、試料台20の中心と当該X線 発生装置22とを結ぶ線を半径として、試料台2 0の中心軸に対し、同時に同じ角度だけ回動 能になっている。こうして、各X線発生装置2 1から試料に対してX線が照射され、試料から 射される蛍光X線がX線検出器22で測定され、 得られたデータに基づいて元素の定性・定量 分析がなされる。