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Patent Searching and Data


Title:
ELECTRONIC MICROSCOPE, AND OBSERVING METHOD
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/099501
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided are an electronic microscope capable of measuring a measurement object having a three-dimensional structure, as a whole and in high precision, and an observing method using the electronic microscope. The electronic microscope comprises an electron gun (12) for generating an electron beam, an accelerator (14) for accelerating and introducing the electron beam generated by the electron gun (12), into a specimen (42), spectroscopes (24, 30) for selecting an electron beam of a specific energy, from the electron beams which have passed through the specimen (42) after they were made to lose the energy by the interactions with the specimen (42), and a detector (32) for detecting the electron beam of the specific energy selected by the spectroscopes (24, 30), thereby to acquire the transmission signal or the diffraction signal of the electron beam in such a depth of the specimen (42) as corresponds to the lost energy quantity of the electron beams.

Inventors:
SOEDA TAKESHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/052850
Publication Date:
August 21, 2008
Filing Date:
February 16, 2007
Export Citation:
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Assignee:
FUJITSU LTD (JP)
SOEDA TAKESHI (JP)
International Classes:
H01J37/26; H01J37/21; H01J37/244; H01J37/28
Foreign References:
JP2001266783A2001-09-28
JP2004227942A2004-08-12
JP2005121552A2005-05-12
JP2006059687A2006-03-02
JPH09119907A1997-05-06
Attorney, Agent or Firm:
KITANO, Yoshihito (9 Daikyo-ch, Shinjuku-ku Tokyo, JP)
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Claims:
 電子線を生成する電子銃と、
 前記電子銃により生成された前記電子線を加速して試料に入射する加速器と、
 前記試料との相互作用によりエネルギーを損失して前記試料を透過した前記電子線のうち、特定のエネルギーの電子線を選別する分光器と、
 前記分光器により選別された前記特定のエネルギーの前記電子線を検出し、前記電子線の損失エネルギー量に対応する前記試料の深さにおける前記電子線の透過信号又は回折信号を取得する検出器と
 を有することを特徴とする電子顕微鏡。
 請求の範囲第1項に記載の電子顕微鏡において、
 前記特定のエネルギーが定格加速エネルギーに一致するように、前記試料に入射する前記電子線の加速エネルギーを制御する制御装置と
 を更に有することを特徴とする電子顕微鏡。
 請求の範囲第1項又は第2項に記載の電子顕微鏡において、
 前記加速器により加速した前記電子線を前記試料上で走査する走査レンズを更に有する
 ことを特徴とする電子顕微鏡。
 請求の範囲第1項又は第2項に記載の電子顕微鏡において、
 前記試料を透過した前記電子線を多段レンズで拡大又は縮小する結像レンズを更に有する
 ことを特徴とする電子顕微鏡。
 電子線を生成する電子銃と、
 前記電子線を所定の加速電圧に加速して試料に入射する加速器と、
 前記試料を透過した前記電子線を検出する検出器と、
 前記電子線の前記加速電圧により、前記試料内における前記電子線の焦点位置を制御する制御装置と
 を有することを特徴とする電子顕微鏡。
 電子線を試料に入射し、前記試料を透過した電子線の透過像又は回折像を取得する電子顕微鏡を用いた観察方法であって、
 前記試料との相互作用によりエネルギーを損失して前記試料を透過した前記電子線のうち、特定のエネルギーの電子線を選択的に検出することにより、前記電子線の損失エネルギー量に対応する前記試料の深さにおける前記電子線の透過像又は回折像を取得する
 ことを特徴とする観察方法。
 請求の範囲第6項に記載の観察方法において、
 前記特定のエネルギーが、前記電子顕微鏡の定格加速エネルギーに一致するように、前記試料に入射する前記電子線の加速エネルギーを設定する
 ことを特徴とする観察方法。
 請求の範囲第6項に記載の観察方法において、
 前記試料の厚さ方向の焦点位置を変えることにより、厚さの異なるスライス像を取得し、相互演算することで、3次元画像を取得する
 ことを特徴とする観察方法。
 請求の範囲第6項に記載の観察方法において、
 前記電子線のエネルギー選択幅を大きくすることにより、前記試料の厚さ方向のすべての領域に焦点を合わせる
 ことを特徴とする観察方法。
 
Description:
電子顕微鏡及び観察方法

 本発明は、3次元構造を持つ測定対象物を 全体的且つ高精度に測定しうる電子顕微鏡及 びそれを用いた観察方法に関する。

 近年の電子デバイスの微細化に伴い、デ イス構造を評価する技術にも高精度化が求 られている。評価技術の中でも、とりわけ 過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:T EM)並びに走査透過型電子顕微鏡(Scanning Transmi ssion Electron Microscope:STEM)は、ナノメートルオ ーダまで電子線を絞れるため、高精密観察及 び分析に有効な技術である。しかしながら、 これらの手法は3次元デバイス構造の投影像 すなわち2次元情報しか得ることができず、 子の進行方向(試料の深さ方向)に関する情 を得ることはできない。

 このため現状では、3次元構造を持つ電子 デバイス構造を全体的に評価するためには、 試料の切り出し方向を変えて観察する方法や 、多方向から観察した像を3次元構築する方 (電子線トモグラフィ法)等が用いられていた 。しかしながら、前者は複数の試料が必要で あり、切り出すことにより情報量が不完全と なることが問題であった。また、後者も目標 物を中心に切り出す必要があり、加工時間の 長さと情報量の欠落が問題であった。

 一方、TEM以外の手法としては、レーザー共 点顕微鏡法や、集束イオンビームで加工し がらSEM観察して3次元構築する手法がある。 しかしながら、これらの手法は像分解能がTEM やSTEMに劣るため、微小構造の評価に用いる とは困難であった。

特開平10-246709号公報

特開2003-249186号公報

特開2006-059687号公報

 一般に、200kV程度の加速エネルギーを用 る汎用のTEMやSTEMを用いる場合、評価試料は2 00nm以下の厚さに加工される。これは、評価 料が厚くなると入射電子と材料との相互作 が増し、入射エネルギーが失われやすくな からである。エネルギーを損失した電子はTE M像やSTEM像において焦点ボケの成因となるた 、例えばミクロンオーダの厚い試料を上述 ような汎用のTEM装置やSTEM装置で従来通りに 観察すると、像が暈けてしまう。

 さらに、電子デバイスの構造やサイズは 々なため、評価試料の厚さがミクロンオー になると不必要な情報が混在する虞がある 例えば素子領域を評価する際の絶縁領域や 配線を評価する際の層間絶縁膜やカバー膜 どからの情報がそれに該当する。同様に、T EMやSTEMの試料を補強するのに用いられる支持 膜や包埋材料などは観察や分析に無関係なた め、機械強度以外にはまったく機能しないこ とが理想的である。しかしながら、これら材 料と入射電子との相互作用を避けることはで きない。

 このように、従来技術には、3次元構造を 持つ電子デバイス構造を全体的且つ高精度に 評価する手法が存在しなかった。このため、 更なる電子デバイスの微細化に向けて、3次 構造を持つ電子デバイス構造を全体的且つ 精度に評価しうる技術が待望されていた。

 本発明の目的は、3次元構造を持つ電子デ バイス構造等を全体的且つ高精度に評価しう る電子顕微鏡及びそれを用いた観察方法を提 供することにある。

 本発明の一観点によれば、電子線を生成 る電子銃と、前記電子銃により生成された 記電子線を加速して試料に入射する加速器 、前記試料との相互作用によりエネルギー 損失して前記試料を透過した前記電子線の ち、特定のエネルギーの電子線を選別する 光器と、前記分光器により選別された前記 定のエネルギーの前記電子線を検出し、前 電子線の損失エネルギー量に対応する前記 料の深さにおける前記電子線の透過信号又 回折信号を取得する検出器とを有する電子 微鏡が提供される。

 また、本発明の他の観点によれば、電子 を生成する電子銃と、前記電子線を所定の 速電圧に加速して試料に入射する加速器と 前記試料を透過した前記電子線を検出する 出器と、前記電子線の前記加速電圧により 前記試料内における前記電子線の焦点位置 制御する制御装置とを有する電子顕微鏡が 供される。

 また、本発明の更に他の観点によれば、 子線を試料に入射し、前記試料を透過した 子線の透過像又は回折像を取得する電子顕 鏡を用いた観察方法であって、前記試料と 相互作用によりエネルギーを損失して前記 料を透過した前記電子線のうち、特定のエ ルギーの電子線を選択的に検出することに り、前記電子線の損失エネルギー量に対応 る前記試料の深さにおける前記電子線の透 像又は回折像を取得することを特徴とする 察方法が提供される。

 本発明によれば、任意のエネルギー帯の 子線を選択して結像するので、試料の像観 したい任意の深さにおいて、焦点暈けの少 い明瞭な画像を得ることができる。また、 料に入射する電子線の加速エネルギーを、 料を透過した電子線の損失エネルギー分だ 増加することにより、試料を透過した電子 の電子エネルギーを電子顕微鏡の定格加速 ネルギーに近づけるので、最適なレンズ条 で像観察を行うことができる。これにより より焦点暈けの少ない明瞭な画像を得るこ ができる。

図1は、本発明の一実施形態による電子 顕微鏡の構造を示す概略図(その1)である。 図2は、本発明の一実施形態による電子 顕微鏡の構造を示す概略図(その2)である。 図3は、試料を透過した電子線のエネル ギー損失スペクトルを示すグラフである。 図4は、試料を透過した電子線における 試料厚さと電子エネルギーとの関係を示すグ ラフである。 図5は、加速電圧に損失エネルギー分の 電圧を上乗せしない場合とした場合とにおけ るエネルギー損失スペクトルを示すグラフで ある。 図6は、測定対象の試料のモデルを示す 概略図である。 図7は、図6の試料の測定例を示す概略 である。 図8は、本発明の一実施形態の変形例に よる電子顕微鏡の構造を示す概略図である。

符号の説明

10…鏡筒
12…電子銃
14…加速電圧制御装置
16…収束レンズ系制御装置
18…走査レンズ系制御装置
20…結像レンズ系制御装置
22…試料台制御装置
24…電子プリズム
26…レンズ系制御用入力装置
28…試料台制御用入力装置
30…エネルギー選択絞り
32…検出器
34…処理装置
36…入力装置
38…外部記憶装置
40…表示装置
42…試料
50…電子線
52,54…構造体

 本発明の一実施形態による電子顕微鏡及 観察方法について図1乃至図7を用いて説明 る。

 図1及び図2は本実施形態による電子顕微 の構造を示す概略図、図3は電子強度と電子 ネルギーとの関係を示すグラフ、図4は試料 による電子線のエネルギー損失を示すエネル ギー損失スペクトル、図5は加速電圧に損失 ネルギー分の電圧を上乗せしない場合とし 場合のエネルギー損失スペクトルを示すグ フ、図6は測定対象の試料のモデルを示す概 図、図7は図6の試料の測定例を示す概略図 ある。

 はじめに、本実施形態による電子顕微鏡 構造について図1及び図2を用いて説明する

 図1に示すように、電子ビーム光学系を構 成する鏡筒10には、電子線を発生する電子銃1 2と、電子銃から発せられた電子線の加速電 を制御する加速電圧制御装置14と、電子線を 収束して試料に照射する収束レンズ系を制御 する収束レンズ系制御装置16と、試料に照射 る電子線を走査する走査レンズ制御装置18 、試料を透過した電子線を結像する結像レ ズ系を制御する結像レンズ系制御装置20と、 電子線に対する試料の位置を制御する試料台 制御装置22と、試料を透過した電子線をその ネルギーに応じて分散させる電子プリズム2 4とが設けられている。

 収束レンズ系制御装置16及び結像レンズ 制御装置20には、各レンズ系を制御する情報 を入力するためのレンズ系制御用入力装置26 接続されている。試料台制御装置22には、 料台を制御する情報を入力するための試料 制御用入力装置28が接続されている。

 電子プリズム24の出力側には、エネルギ 選択絞り30を介して、CCDカメラあるいはSTEM 出器等の検出器32が設けられている。エネル ギー選択絞り30は、電子プリズム24を通過し 所定範囲のエネルギーを有する電子線を選 的に透過して検出器32に導入するためのもの である。なお、本明細書では、電子プリズム 24及びエネルギー選択絞り30を一括して分光 と呼ぶこともある。

 加速電圧制御装置14、エネルギー選択絞 30及び検出器32には、処理装置34が接続され いる。処理装置34は、加速電圧制御装置14、 束レンズ系制御装置16、結像レンズ系制御 置20、試料台制御装置22、エネルギー選択絞 30等を制御する制御装置として、また、検 器32から入力される測定データの分析を行う 分析装置として機能する。

 処理装置34には、外部から測定等に必要 情報を入力するための入力装置36、測定デー タの分析に用いられるデータベース等を記憶 する外部記憶装置38、分析結果等を表示する 示装置40等が接続されている。

 このように、本実施形態による電子顕微 は、基本的にはSTEM機能を有する電子顕微鏡 である。本実施形態による電子顕微鏡の主た る特徴は、検出器32の前段に、試料を透過し 電子線を分光する電子プリズム24と、電子 リズム24により分光された電子線のうち特定 エネルギー範囲の電子線を選択的に透過する エネルギー選択絞り30とが設けられているこ にある。

 なお、電子顕微鏡の基本構成は、STEMでは なくTEMであってもよい。この場合、走査レン ズ系(走査レンズ制御装置18等)は不要である

 次に、本実施形態による電子顕微鏡を用 た観察方法について図1及び図2を用いて説 する。

 まず、評価対象の試料42を用意し、鏡筒10 内の試料台44上に設置する。なお、本実施形 による観察方法では、通常のTEMやSTEMの測定 では厚すぎると考えられている1μm以上の膜 、例えば1.5μm程度の膜厚を有する試料42を用 いることができる。

 次いで、電子銃12から放出された電子を 加速電圧制御装置14により、汎用のTEMやSTEM 用いられている加速電圧、例えば100~200kVで 速し、電子ビームを得る。なお、試料42に与 えるダメージを抑制する観点からは、汎用の TEM等で用いられている200kV程度以下の加速電 を用いることが望ましいが、それ以上の加 電圧、例えば1MV程度の加速電圧を用いても い。

 次いで、試料台制御用入力装置28及び試 台制御装置22を介して試料台44の位置を制御 、試料42の電子ビームに対する傾斜角やユ セントリックを調整する。これにより、試 42の関心領域の明(暗)視野STEM像或いは明(暗) 野TEM像を撮影できる状態にする。

 次いで、試料42を透過した電子ビームを 子プリズム24に通し、エネルギー損失スペク トルを得る。

 試料42を透過した電子ビームは、試料42内 において様々な散乱過程を経ており、様々な エネルギーを有している。ここでは、このよ うな電子を総称して、エネルギー損失電子と 呼ぶこととする。電子線に磁場を印加すると 、電子は磁場によるローレンツ力の影響を受 け、各電子が有するエネルギーに応じて偏向 される。すなわち、エネルギー損失の大きい エネルギー損失電子ほど偏向角は大きく、エ ネルギー損失の小さいエネルギー損失電子ほ ど偏向角は小さくなる(図2参照)。この原理が 光の波長を分散するプリズムによく似ている ことから、磁場の印加により電子線のエネル ギー分光を行うこのような装置を電子プリズ ムと呼んでいる。

 図3は、電子プリズム24により分光された 子線の電子強度と電子エネルギーとの関係 一例を示すグラフ(エネルギー損失スペクト ル)である。横軸は、入射エネルギー(加速エ ルギー)から損失エネルギーを差し引いたエ ネルギー、すなわち試料42通過後の電子エネ ギーである。

 次いで、電子プリズム24を通過した電子 を、エネルギー選択絞り30に導入する(図2参 )。電子プリズム24で分光された電子線は、 ネルギー損失の大きい電子ほど偏向角は大 く、エネルギー損失の小さい電子ほど偏向 は小さくなる。したがって、電子プリズム2 4の出力側に、所定の偏向角に対応する位置 スリットを有する絞り(エネルギー選択絞り3 0)を設けることで、任意のエネルギーを有す 電子線を選択的に取り出すことができる。

 次いで、エネルギー選択絞り30を通過し 任意のエネルギーを有する電子線を、検出 32により検出する。

 TEMやSTEMにおける焦点ボケは、エネルギー のズレ、すなわち色収差に起因する。したが って、結像に寄与する電子エネルギーを単エ ネルギー化することで、焦点ボケを低減する ことができる。この効果は、STEMよりもTEMに いて大きく現れる。TEMでは、電子が試料を 過した後も多段レンズにより拡大操作が行 れるため、色収差の影響を受けやすいから ある。

 また、試料の強度を向上するために利用 れる支持膜や包埋材料、或いはデバイス構 に多用されるカバー膜などに電子線を入射 ると、例えば図4に示すように、電子エネル ギーは膜の厚さと相関を持つようになる。す なわち、図4に示すスペクトルの横軸は、試 の厚さの関数となる。

 ここでいう試料の厚さとは、試料表面か の電子の侵入距離と同義である。したがっ 、エネルギー選択絞り30によって任意のエ ルギー帯の電子線を選択することで、焦点 置を試料の任意の深さに設定することがで る。すなわち、試料42の像観察したい深さに 対応したエネルギー帯をエネルギー選択絞り 30により選択して像観察を行うことにより、 料42の任意の深さにおける焦点ボケの少な 明瞭な画像を得ることができる。

 さらに、試料が厚くなると電子は相互作 を起こしやすくなるため、エネルギー損失 子の強度は増大する。それに伴い、TEMやSTEM の検出器に導入される電子信号が増加し、ひ いては厚い試料の観察や分析に有利になる。

 汎用の電子顕微鏡では、例えば120keVや200k eVなどの特定の加速エネルギーを持つ電子に してその光学的性能を最大限に引き出すこ ができるように、レンズ条件が設計されて る。この加速エネルギーは、電子顕微鏡毎 固有のものであり、定格加速エネルギーと ばれている。定格加速エネルギーは、換言 れば、電子顕微鏡の光学的性能を最大限に き出すことができる加速エネルギーである

 そのため、損失エネルギー量がゼロでは い総ての電子は、レンズ条件に対してエネ ギー的に最適とはいえない。試料を透過し エネルギー損失電子も多段レンズで集光す ことはできるが、最適レンズ条件ではない め定格加速エネルギーの電子線によって得 れる分解能には及ばない。また、加速エネ ギーを変更する度毎にレンズ条件を調整す のは時間を要するため実用的ではない。

 そこで、本実施形態による観察方法では 加速エネルギーを損失エネルギー量と同期 て昇圧することで、最適なレンズ条件を維 する。具体的には、観察対象の深さに対応 るエネルギーを損失した透過電子線の電子 ネルギーが電子顕微鏡の定格加速エネルギ になるように、透過電子線の損失エネルギ 分の電圧を上乗せして電子線の加速エネル ーとする。

 例えば、定格加速電圧が200kVの電子顕微 において、焦点を合わせたい位置(試料42へ 侵入深さ)に対応する透過電子線の電子エネ ギーが、例えば図5(a)に示すように199.97keV( 料42内で電子が0.03keVのエネルギーを失った 態)の場合、試料42による損失分のエネルギ 0.03keVを上乗せして、加速電圧を200.03kVに昇 する。ここで、加速エネルギーの上乗せは 図3のエネルギー損失スペクトルを高エネル ー側にシフトすることを意味する。これに り、焦点を合わせたい位置に対応する透過 子線の電子エネルギーは、例えば図5(b)に示 すように200.0keVとなり、レンズ系の調整を行 ことなく、当該電子顕微鏡に最適なレンズ 件で像観察を行うことができる。

 なお、このときのエネルギー選択絞り30 、損失エネルギーがゼロ付近の電子線(加速 ネルギーが電子顕微鏡の定格加速エネルギ に一致する電子線)を選択的に通過するよう に、エネルギー選択幅を設定すればよい。す なわち、試料42の深さ方向の構造を観察する 合、エネルギー選択絞り30が選択的に透過 る電子線のエネルギー帯を電子顕微鏡の定 加速エネルギー近傍に固定しておき、試料42 の観察したい深さに応じて、加速電圧制御装 置14により加速する電子線の加速エネルギー 増加する。

 このようにして試料42の観察を行うこと より、試料42の任意の深さにおいて焦点ボケ の少ない明瞭な画像を得ることができる。

 なお、試料42内における焦点位置は、対 レンズによって制御してもよい。但し、こ 場合には、レンズ条件がエネルギー的に最 ではなくなるため、加速電圧を制御する場 と比較して分解能は劣化する。

 図6は、試料42の一例を示す概略図である 図6に示す試料42は、深さAの位置に形成され た直方体状の構造物52と、深さBの位置に形成 された円筒状の構造物54とを有している。

 図6に示す試料において、電子線50を入射 、深さAに対応する透過電子線の電子エネル ギーが電子顕微鏡の定格加速エネルギーとな るように電子線の加速エネルギーを制御した 場合、例えば図7(a)に示すような画像が得ら る。すなわち、構造物52の鮮明な画像と、構 造物54のぼけた画像とが重なった画像を得る とができる。一方、深さBに対応する透過電 子線の電子エネルギーが電子顕微鏡の定格加 速エネルギーとなるように電子線の加速エネ ルギーを制御した場合、例えば図7(b)に示す うな画像が得られる。すなわち、構造物54の 鮮明な画像と、構造物52のぼけた画像とが重 った画像を得ることができる。これら画像 ら鮮明な画像を抜き出す画像処理を行うこ により、試料42の深さ方向の情報を分離す ことができる。

 このように、本実施形態によれば、任意 エネルギー帯の電子線を選択して結像する で、試料の像観察したい任意の深さにおい 、焦点暈けの少ない明瞭な画像を得ること できる。また、試料に入射する電子線の加 エネルギーを、試料を透過した電子線の損 エネルギー分だけ増加することにより、試 を透過した電子線の電子エネルギーを電子 微鏡の定格加速エネルギーに近づけるので 最適なレンズ条件で像観察を行うことがで る。これにより、より焦点暈けの少ない明 な画像を得ることができる。

 [変形実施形態]
 本発明は上記実施形態に限らず種々の変形 可能である。

 例えば、上記実施形態では、試料42を透 した電子線を、電子プリズム24及びエネルギ ー選択絞り30を介して検出器32に導入したが 電子プリズム24及びエネルギー選択絞り30は ずしも必要はない。

 STEMの場合、電子線が試料42を透過した後 はTEMのような拡大レンズが存在しないため TEMの場合と比較して色収差の影響が小さい このため、試料42を透過した電子線を検出 32によって直接検出した場合にも、TEMと比較 して良好な画像を得ることができる。ただし 、STEMの場合にも、上記実施形態に記載した うに電子プリズム24及びエネルギー選択絞り 30を用いて電子線のエネルギー帯を絞った方 、像の暈け除去効果は高い。

 電子プリズム24及びエネルギー選択絞り30 を用いない電子顕微鏡としては、例えば図8 示す装置構成を適用することができる。

 また、電子線の加速エネルギーの昇圧幅 小さくすることで、焦点位置の移動量が減 する。この条件で焦点位置を連続的に変化 せ、各条件で厚さの異なるスライス像を取 し、公知の方法で相互演算することで3次元 画像を取得することができる。

 また、上記実施形態では、厚さが1μmを超 えるような厚い試料の場合を例に説明したが 、本発明による観察方法は、通常のTEMやSTEM 測定に用いられる0.3μm程度以下の試料の測 に適用することもできる。このように試料 薄い場合、エネルギー損失する確率が減少 、厚い場合に比べてエネルギー分散幅がエ ルギー選択幅に対して小さくなる。このと 本発明による観察方法を適用すると、すべ の厚さで焦点を合わせることができる。電 は試料が厚くなるほどエネルギーを失いや くなるが、例えば0.3μm以下の厚さではエネ ギーをまったく失わない電子も微量ながら 在する。いま選択するエネルギー値を定格 200kVとすると、試料表面から裏面まですべて の領域で焦点を合わせることができる。シグ ナル・ノイズ(S/N)比は表面ほど良く、厚くな ほど悪くなる。同様に、200kV以外のエネル ーを選択しても、すべての領域で焦点を合 せることができる。選択エネルギーを変化 せることで、S/N比の最高値を深さ方向に制 することができる。試料が1μm以上になると エネルギー分散幅がエネルギー選択幅に対 て十分に大きくなるので、試料全体で焦点 合わせることはできなくなる。

 本発明による電子顕微鏡及びこれを用いた 察方法は、試料の像観察したい任意の深さ おいて、焦点暈けの少ない明瞭な画像を得 ことができるものである。したがって、3次 元構造を持つ電子デバイス構造等を全体的且 つ高精度に評価するためにきわめて有用であ る。