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Patent Searching and Data


Title:
METHOD FOR GLYCOSYLATION OF FLAVONOID
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/088047
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a method for producing a glycoside of a flavonoid, which comprises the step of reacting the flavonoid and a sugar donor with an enzymatic agent having a glycosylation activity and derived from a bacterium belonging to the genus Trichoderma (preferably Trichoderma viride or Trichoderma reesei). The flavonoid includes catechin or a methylated form thereof. The sugar donor includes a saccharide having a maltotriose residue (preferably maltotriose, maltotetraose, maltopentaose, maltohexaose, maltoheptaose, dextrin, γ-cyclodextrin or a soluble starch). The glycoside produced by the method is highly soluble in water, is improved in taste, and has increased stability. Also disclosed is a novel catechin glycoside produced by the method.

Inventors:
OCHIAI MISA (JP)
FUKAMI HARUKAZU (JP)
NAKAO MASAHIRO (JP)
NOGUCHI AKIO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/050619
Publication Date:
July 24, 2008
Filing Date:
January 18, 2008
Export Citation:
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Assignee:
SUNTORY LTD (JP)
OCHIAI MISA (JP)
FUKAMI HARUKAZU (JP)
NAKAO MASAHIRO (JP)
NOGUCHI AKIO (JP)
International Classes:
C12P19/14; A23L1/30; A23L2/52; A61K8/60; A61K31/7034; A61K31/7048; A61P1/02; A61P1/14; A61P3/02; A61P3/04; A61P3/06; A61P7/02; A61P9/02; A61P9/12; A61P13/12; A61P17/18; A61P25/28; A61P29/00; A61P31/04; A61P31/12; A61P35/00; A61P37/08; A61P39/02; A61Q15/00; A61Q19/00; C07H15/203; C07H17/065; C12N9/30; C12N15/09
Domestic Patent References:
WO2001073106A12001-10-04
Foreign References:
JPH06284897A1994-10-11
JPH07179489A1995-07-18
JPH093089A1997-01-07
JPH05176786A1993-07-20
Other References:
GAO C. ET AL.: "Novel enzymatic approach to the synthesis of flavonoid glycosides and their esters", BIOTECHNOLOGY AND BIOENGINEERING, vol. 71, no. 3, 2001, pages 235 - 243, XP001010601
MEULENBELD G. ET AL.: "Enhanced (+)-catechin transglucosylating activity of Streptococcus mutans GS-5 glucosyltransferase-D due to fructose removal", APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY, vol. 65, no. 9, 1999, pages 4141 - 4147, XP002410550
See also references of EP 2128265A4
NIELSEN H., PROTEIN ENG., vol. 10, 1997, pages 1 - 6
Attorney, Agent or Firm:
SHAMOTO, Ichio et al. (Section 206 New Ohtemachi Bldg.,2-1, Ohtemachi 2-chom, Chiyoda-ku Tokyo 04, JP)
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Claims:
 フラボノイド類と糖供与体とに、 Trichoderma 属由来(好ましくは、 Trichoderma   viride 由来又は Trichoderma   reesei 由来)の配糖化活性を有する酵素剤を作用させる工程を含む、フラボノイド類の配糖体の製造方法。
 フラボノイド類が、カテキン類又はそのメチル化体であり;そして
 糖供与体が、マルトトリオース残基を含む糖質(好ましくは、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース及びデキストリン、γ-シクロデキストリン又は可溶性澱粉)である、請求項1に記載の製造方法。
 フラボノイド類の配糖体が、下式で表されるものである、請求項2に記載の製造方法:
 式中:
 R 1 ~R 5 は、少なくとも一つが糖残基であり、他はOH若しくはOCH 3 であるか、又は
 R 1 ~R 4 は、少なくとも一つが糖残基であり、他はOH若しくはOCH 3 であり、R 5 はHであり;そして
 Xは、H、CH 3 、ガロイル基又はメチル化されたガロイル基である。
 フラボノイド配糖体が、式(I)中、R 1 ~R 4 は、少なくとも一つがα結合したグルコース残基又はマルトース残基又はマルトオリゴ糖残基であり、他方はOHであり;
 R 5 は、OH又はHであり;そして
 Xは、H又はガロイル基である、請求項3に記載の製造方法。
 フラボノイド類の配糖体が、下記からなる群より選択されるものである、請求項4に記載の製造方法:
 5-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキン;
 7-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキン;
 5-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート;
 7-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート;
 7-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラノシル)-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート;
 4'-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラノシル)-(+)-カテキン;
 4'-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキン;
 3'-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラノシル)-(+)-カテキン;
 3'-O-α-D-グルコピラノシル- (+)-カテキン;
 3'-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート;及び
 3'-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラノシル)-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート。
 酵素が、固定化されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
 下式で表される化合物:
(式中、
 R 1 ~R 4 は、少なくとも一つがα結合したグルコース残基又はマルトース残基又はマルトオリゴ糖残基であり、他方はOHであり;
 R 5 は、OH又はHであり;そして
 Xは、H又はガロイル基である)。
 下記からなる群より選択されるものである、請求項7に記載の化合物:
 5-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキン;
 7-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキン;
 5-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート;
 7-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート;
 7-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラノシル)-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート;
 4'-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラノシル)-(+)-カテキン;
 4'-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキン;
 3'-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラノシル)-(+)-カテキン;
 3'-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート;及び
 3'-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラノシル)-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート。
 請求項7又は8に記載の化合物を含む、食品用、医薬用又は化粧用組成物。
 請求項9に記載の組成物を含む、飲料。
 フラボノイド類と糖供与体とに、 Trichoderma 属由来(好ましくは、 Trichoderma   viride 由来又は Trichoderma   reesei 由来)の配糖化活性を有する酵素剤を作用させる工程を含む、フラボノイド類の改質方法。
 フラボノイド類が、カテキン類又はそのメチル化体であり;そして
 糖供与体が、マルトトリオース残基を含む糖質(好ましくは、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース、デキストリン、γ-シクロデキストリン又は可溶性澱粉)である、請求項11に記載の方法。
  Trichoderma 属由来の配糖化活性を有する酵素を含む、フラボノイド類を配糖化するための酵素剤。
Description:
フラボノイド類の配糖化方法

 本発明は、フラボノイド類の配糖化に関 る。本発明により得られるフラボノイド類 配糖体は、食品、医薬品及び化粧品として いることができる。

従来技術

 プロアントシアニジン(ブドウ種子抽出物 )の血管治療薬としての有用性に関する研究 進んだ理由の一つに、対象となる物質が、 や酸に対し安定で水によく溶け、吸収性が いことから、生体内での吸収、代謝を追う ーカーとなり得たことが挙げられる。これ 対して、カテキン等のポリフェノール化合 は水に溶けにくいものが多く、また生体内 吸収されにくいという問題がある。

 水に対する溶解度の改善や安定性の向上 目的に、カテキン等を配糖化する技術が検 されてきた。

 例えば、特許文献1は、 Xanthomonas   campestris  WU-9701の培養液から回収した分子量約57,000の α-グルコシダーゼを開示する。この酵素は、 マルトース等を供与体とし(マルトトリオー 、サイクロデキストリン、澱粉等は供与体 しない)、特定の受容体にグルコースを転移 て配糖体を合成するものである。ここでは 受容体として、メントール、エタノール、1 -プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール イソブチルアルコール、1-アミルアルコー 、2-アミルアルコール、5-ノニルアルコール のアルコール性水酸基を有する化合物、及 カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノ ル酸バニリルアミド、カテキン、エピカテ ン、バニリン、ハイドロキノン、カテコー 、レゾルシノール、3,4-ジメトキシフェノー ル等のフェノール性水酸基を有する化合物が 挙げられている。また、生成が認められた配 糖体はモノグルコシドのみである。

 特許文献2は、カテキン類とグルコース-1-リ ン酸又はシュークロースとの混合液にシュー クロースホスホリラーゼを作用させ、カテキ ン類配糖体を製造する方法を開示する。ここ では、シュークロースホスホリラーゼの起源 として、 Leuconostoc   mesenteroides Pseudomonas   saccharophila Pseudomonas   putrefaciens Clostridium   pasteurianum Acetobacter   xylinum Pullularia   pullulans が挙げられている。ここでは、受容体として 、カテキン類としては、(+)-カテキン、(-)-エ カテキン、(-)-エピカテキン3-O-ガレート、(- )-エピガロカテキン、及び(-)-エピガロカテキ ン3-O-ガレートが挙げられているが、実施例 して記載されているのは、(+)-カテキンを受 体に用いて(+)-カテキン 3'-O-α-D-グルコピラ ノシドを製造した例のみである。

 特許文献3は、5、7、3'、4'、5'、3"、4"、5" の少なくとも1つにグルコース残基又は重合 度2~8のマルトオリゴ糖残基が結合しているエ ピガロカテキン3-O-ガレート誘導体を開示す 。ここで実施例として記載されているのは 特許文献2と同様、(-)-エピガロカテキンガレ ートとグルコース-1-リン酸又はシュークロー スとの混合液にシュークロースホスホリラー ゼを作用させ、4'-O-α-D-グルコピラノシル(-)- ピガロカテキンガレート及び4',4”-O-α-D-ジ- グルコピラノシル(-)-エピガロカテキンガレ トを製造した例のみである。

 特許文献4は、ポリフェノール類を配糖化す ることにより渋みを低減した茶抽出物又は茶 飲料を開示する。ここでは、茶抽出物又は茶 飲料の渋みを低減する具体的な方法として、 茶抽出物又は茶飲料に、デキストリン、サイ クロデキストリン、澱粉又はこれらの混合物 を添加し、これにサイクロマルトデキストリ ングルカノトランスフェラーゼを作用させる 方法が記載されている。実施例においては、 緑茶抽出物とα-サイクロデキストリンに Bacillus   stearothermophilus 由来のサイクロマルトデキストリングルカノ トランスフェラーゼを作用させ、得られた反 応生成物には渋味が低減されたことが述べら れており、またこれはエピガロカテキン3-O- レートやエピカテキンといったポリフェノ ル類が配糖化されていたことを示すもので る旨が述べられている。しかしながら、反 生成物の具体的な構造は明らかにされてい い。

 特許文献5は、3'位、3'と5位及び3'と7位が配 化されたカテキン類の配糖体を開示する。 こでは、そのための具体的な方法として、 許文献4と同様、カテキン類及びデキストリ ン、サイクロデキストリン、澱粉又はこれら の混合物に、 Bacillus   stearothermophilus 由来のサイクロマルトデキストリングルカノ トランスフェラーゼを作用させる方法が記載 されている。そして、糖供与体としてデキス トリンを用いた上記方法による実施例におい ては、(-)-エピガロカテキン、(-)-エピガロカ キン3-O-ガレート、(-)-エピカテキン3-O-ガレ トの配糖体については、分子吸光係数から 各ポリフェノール1分子当り平均で6~8個グル コースが結合しているものも得られたと考察 している。また、上記方法で得られた配糖体 にリゾプス・ニベウス由来のグルコアミラー ゼを作用させることで、3',7-ジ-O-α-D-グルコ ラノシル(-)-エピガロカテキン、3',5-ジ-O-α-D- グルコピラノシル(-)-エピガロカテキン、3'-O- α-D-グルコピラノシル(-)-エピガロカテキン、 3',7-ジ-O-α-D-グルコピラノシル(-)-エピガロカ キン3-O-ガレート、3'-O-α-D-グルコピラノシ (-)-エピガロカテキン3-O-ガレート、3'-O-α-D- ルコピラノシル(-)-ガロカテキン、3'-O-α-D-グ ルコピラノシル(-)-エピカテキン3-O-ガレート 生成を確認している。

 また、カテキン配糖体の効果として、非特 文献1には、渋みの低減、水溶性の向上、安 定性の改善、チロシナーゼ阻害が、非特許文 献2には、変異原性抑制が記載されている。

特開2001-46096

特開平5-176786(特許第3024848号)

特開平7-10897(特許第3071610号)

特開平8-298930(特許第3579496号)

特開平9-3089(特許第3712285号) Biosci. Biotech. Biochem., 57 (10), 1666-1669 (1 993) Biosci. Biotech. Biochem., 57 (10), 1290-1293 (1 993)

 これらの配糖化技術は、用いる酵素の糖 与体特異性、配糖化可能な化合物について 特異性、配糖化効率等の観点からは充分な のとはいえず、より多様なフラボノイド類 配糖化できる製造方法、およびフラボノイ 配糖体が必要とされていた。

 本発明者らは、カテキンを含むフラボノイ 類の配糖化技術について鋭意検討してきた その結果、 Trichoderma属 由来の種々の酵素剤にフラボノイドへの糖転 移活性があることを見いだし、本発明を完成 した。

 本発明は、フラボノイド類と糖供与体とに Trichoderma 属由来の配糖化活性を有する酵素剤を作用さ せる工程を含む、フラボノイド類の配糖体の 製造方法を提供する。

 〔フラボノイド類〕
 本明細書で「フラボノイド類」というとき 、特別な場合を除き、フラボノイド及びエ クレチンを含む。

 本明細書で「フラボノイド」というとき 、特別な場合を除き、カテキン類(フラバノ ール)、フラバノン、フラボン、フラボノー 、フラバノノール、イソフラボン、アント アン及びカルコン、並びにそのメチル化体 いう。フラボノイドには、ナリンゲニン、 ルセチン、ダイゼイン、ゲニステイン、ケ フェロールが含まれる。本発明に用いるこ のできるフラボノイドは、天然物由来であ てもよく、合成されたものであってもよい

 本明細書で「カテキン類」というときは 特別な場合を除き、広義のカテキンの意味 用いており、3-オキシフラバンのポリオキ 誘導体をいう。これには、カテキン、ガロ テキン及びそれらの3-ガロイル体が含まれ、 またそれらの光学異性体((+)体、(-)体、(+)-epi 、(-)-epi体)及びラセミ体が含まれる。具体 には、カテキン、ガロカテキン(gallocatechin;GC )、カテキンガレート(catechin-3-O-gallate;CG)、ガ カテキンガレート(gallocatechin-3-O-gallate;GCG)、 エピカテキン(epicatechin;EC)、エピガロカテキ (epigallocatechin;EGC)、エピカテキンガレート(epi catechin-3-O-gallate;ECG)及びエピガロカテキンガ ート(epigallocatechin-3-O-gallate;EGCG)、並びにそれ らの光学異性体が含まれる。カテキン類のメ チル化体とは、上述したカテキン類において 、少なくとも一つのOH基のHがメチルで置き換 わったものをいう。カテキン類のメチル化体 の例としては、エピカテキン、エピガロカテ キン、エピカテキンガレート又はエピガロカ テキンガレートにおいて、3'位、4'位、3"位及 び4"位のいずれかのOH基のHがメチルで置き換 ったものを挙げることができる。本発明に いることのできるカテキン類及びカテキン のメチル化体は、天然物由来であってもよ 、合成されたものであってもよい。天然物 例としては、茶抽出物、その濃縮物及び精 物(例えば、テアビゴ(DSM  ニュートリショ  ジャパン)、ポリフェノン(三井農林)及び ンフェノン(太陽化学)等の緑茶抽出物)、及 ベニフウキ抽出物を挙げることができる。

 本発明には、フラボノイド類として、単 の化合物を用いることができ、また、2種以 上のフラボノイド類の混合物を用いることも できる。

 〔酵素剤〕
 本発明には、 Trichoderma 属由来の配糖化活性を有する酵素剤を用いる 。 Trichoderma 属には、 Trichoderma   viride Trichoderma   reesei Trichoderma   saturnisporum Trichoderma   ghanense Trichoderma   koningii 、  Trichoderma   hamatum Trichoderma   harzianum 及び Trichoderma   polysporum が含まれる。

 本明細書でいう酵素剤は、特別な場合を き、単一の酵素からなる場合もあり、複数 酵素の混合物である場合もある。酵素剤は 少なくとも配糖化活性を有する酵素を含む 、セルラーゼ又はグルカナーゼ(例えば、β- 1,3-glucanase)等として使用されている糖質分解 関連する他の酵素を含んでいてもよい。ま 、本発明の酵素剤は、酵素成分以外に適当 添加剤を含んでいてもよい。これには、例 ば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、緩 剤、保存剤がある。

 本発明に用いることができる酵素剤は、 なくとも配糖化活性を有する。

 本明細書で「配糖化活性」というときは フラボノイド類に糖残基を転移する活性を することをいう。ある酵素が、フラボノイ 類に糖残基を転移する活性を有するか否か 、特別な場合を除き、例えば、本明細書の 施例に示されているように、フラボノイド( 例えば、カテキン)と適切な糖供与体(例えば デキストリン)との混合液に、対象酵素を供 し、充分な時間反応させ、反応液を高速液体 クロマトグラフィー(HPLC)等に供して、分析す ることにより確認することができる。

 本発明の酵素剤は、配糖化活性とともに 他の活性、例えばデキストリナーゼ活性を していてもよい。本明細書で「デキストリ ーゼ」というときは、特別な場合を除き、 粉、デキストリン等、α-グルコシド結合し 糖質を加水分解することができる酵素をい 。デキストリナーゼは、アミラーゼの一種 ある。対象がデキストリナーゼ活性を有す か否かは、適切な条件下で、市販のデキス リン(例えば、澱粉を酸、熱又は酵素により 加水分解し、平均分子量を3,500程度としたも )に対して作用させ、デキストリンが加水分 解されているか否かにより、判断することが できる。当業者であれば、対象を作用させる 反応の適切な条件、及びデキストリンが加水 分解されているか否かを判断するための手法 を、適宜設計することができる。

 本発明においては、酵素剤として、 Trichoderma 属由来の配糖化活性を有するものを好適に用 いることができる。本発明においては、酵素 剤として、 Trichoderma   viride 由来のセルラーゼ酵素剤、及びβ-1,3-グルカ ーゼ酵素剤として使用されているものを有 に用いうる。本発明者らの検討によると、 ルラーゼ又はグルカナーゼ(例えば、β-1,3-glu canase)等として使用されている Trichoderma 属由来の種々の酵素剤が配糖化活性を共存し ており、そしてこのような酵素剤が、フラボ ノイド類の配糖化において、有効に使用でき ることが分かっている。例えば、本発明には 、本明細書の実施例2の表1に列記されている うなものとして市販されているものを用い ことができる。

 また、当業者であれば Trichoderma 属に属する菌(例えば、 Trichoderma   viride Trichoderma   reesei Trichoderma   saturnisporum Trichoderma   ghanense Trichoderma   koningii 、  Trichoderma   hamatum Trichoderma   harzianum 又は Trichoderma   polysporum )の培養物から、従来技術を利用して配糖化 素を単離・精製し、酵素剤として本発明に いることができる。このような配糖化酵素 うち、特に好ましい例は、 Trichoderma   viride  IAM 5141株の培養上清から得られる配糖化酵 (本明細書では、「TRa2」ということもある )、及びそのホモログ、すなわち下記の(i)、( j)又は(k)を含有するタンパク質(好ましくは、 下記の(i)、(j)又は(k)であるタンパク質)であ :
(i)配列番号:10に記載のアミノ酸配列からなる タンパク質;
(j)配列番号:10に記載のアミノ酸配列において 1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿 、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり かつフラボノイド類の配糖化活性を有する ンパク質;
(k)配列番号:10に記載のアミノ酸配列と少なく とも60%以上の同一性を有するアミノ酸配列か らなり、かつフラボノイド類の配糖化活性を 有するタンパク質。

 特に好ましい別の例は、上述の新規配糖化 素タンパク質において推定分泌シグナル配 部分を除いた成熟タンパク質及びそのホモ グ、すなわち下記の(p)、(q)又は(r)を含有す タンパク質(好ましくは、下記の(p)、(q)又は (r)であるタンパク質)である:
(p)配列番号:26に記載のアミノ酸配列からなる タンパク質;
(q)配列番号:26に記載のアミノ酸配列において 1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿 、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり かつフラボノイド類の配糖化活性を有する ンパク質;
(r)配列番号:26に記載のアミノ酸配列と少なく とも60%以上の同一性を有するアミノ酸配列か らなり、かつフラボノイド類の配糖化活性を 有するタンパク質。

 配列番号:25には成熟タンパク質としてのT Ra2をコードするcDNAの塩基配列、すなわち配 番号9の61-1389番目の塩基配列が、配列番号:26 には成熟タンパク質としてのTRa2のアミノ酸 列、すなわち配列番号10の21-463番目のアミノ 酸配列が示されている。

 また、下記のタンパク質も、本発明に用い ことができる配糖化酵素の例として挙げる とができる:
Trichoderma 属由来であり、好ましくは Trichoderma   viride Trichoderma   reesei Trichoderma   saturnisporum Trichoderma   ghanense Trichoderma   koningii 、  Trichoderma   hamatum Trichoderma   harzianum 又は Trichoderma   polysporum 由来であり、配列番号:11~24のいずれか一に記 載の塩基配列を含むポリヌクレオチドによっ てコードされる、フラボノイド類の配糖化活 性を有するタンパク質。

 このようなタンパク質の好ましい例は、 列番号:11~24のいずれか一に記載の塩基配列 含み、配列番号:6、9又は25に記載の塩基配 と高い同一性を有するポリヌクレオチドに ってコードされる、フラボノイド類の配糖 活性を有するタンパク質である。

 なお、本明細書で「1若しくは複数の塩基 が置換、欠失、挿入、及び/又は付加された ミノ酸配列」というときの置換等されるア ノ酸の個数は、そのアミノ酸配列を有する ンパク質が所望の機能を有する限り特に限 されないが、1~9個又は1~4個程度であるか、 質の似たアミノ酸への置換であれば、さら 多くの個数の置換等がありうる。このよう アミノ酸配列に係るタンパク質を調製する めの手段は、当業者にはよく知られている ポリヌクレオチド配列又はアミノ酸配列の 一性に関する検索・解析は、当業者には周 のアルゴリズム又はプログラム(例えば、BLAS TN、BLASTX、BLASTP、ClustalW)により行うことがで る。プログラムを用いる場合のパラメータ は、当業者であれば適切に設定することが き、また各プログラムのデフォルトパラメ ターを用いてもよい。これらの解析方法の 体的な手法もまた、当業者には周知である また、本明細書において、塩基配列に関し 高い同一性というときは、少なくとも60%以 、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以 、さらに好ましくは90%以上、最も好ましく 95%以上の配列の同一性を指す。また、アミ 酸配列に関し、高い同一性というときは、 なくとも60%以上、好ましくは70%以上、より ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上 最も好ましくは95%以上の配列の同一性を指 。

 本発明には1種類のみの配糖化酵素を用い ることもでき、また複数種類の配糖化酵素を 組み合わせて用いることもできる。

 〔糖供与体〕
 本明細書で「糖供与体」というときは、特 な場合を除き、本発明の方法において酵素 基質となり、加水分解されてフラボノイド に対して糖残基を供給しうる糖質をいう。 発明に用いることができる糖供与体は、マ トトリオース残基を含む糖質であり、これ は、マルトトリオース、マルトテトラオー 、マルトペンタオース、マルトヘキサオー 、マルトヘプタオース、デキストリン、γ- クロデキストリン、及び可溶性澱粉が含ま る。本明細書で「デキストリン」というと は、特別な場合を除き、澱粉を加水分解し ものをいい、「可溶性澱粉」というときは 特別な場合を除き、澱粉の加水分解物であ て、熱水に可溶であるものをいう。加水分 は、酸、熱、酵素等のいずれの手法によっ もよい。本発明においては、デキストリン して、例えば平均分子量が約3,500のものを 可溶性澱粉として、例えば平均分子量が約10 0万のものを用いることができる。

 〔配糖体〕
 本発明によって提供されるフラボノイド類 配糖体は、下式で表されるものである:

 式中:
 R 1 ~R 5 は、少なくとも一つが糖残基であり、他はOH しくはOCH 3 であるか、又は
 R 1 ~R 4 は、少なくとも一つが糖残基であり、他はOH しくはOCH 3 であり、R 5 はHであり;そして
 Xは、H、CH 3 、ガロイル基又はメチル化されたガロイル基 である。

 これには、さらに、下記のフラボノイド類 配糖体が含まれる:
 式(I)中、
 R 1 ~R 4 は、少なくとも一つがα結合したグルコース 基又はマルトース残基又はマルトオリゴ糖 基であり、他方はOHであり;
 R 5 は、OH又はHであり;そして
 Xは、H又はガロイル基である。

 これには、さらに、下式で表されるフラボ イド類の配糖体が含まれる:
 5-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキン;
 7-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキン;
 5-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガロカテ ン-3-O-ガレート;
 7-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガロカテ ン-3-O-ガレート;
 7-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピ ノシル)-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート;
 4'-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピ ノシル)-(+)-カテキン;
 4'-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキン;
 3'-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピ ノシル)-(+)-カテキン;
 3'-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガロカテ ン-3-O-ガレート;及び
 3'-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピ ノシル)-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート びそれらの光学異性体。

 本発明により得られるフラボノイド類の 糖体は、対応するフラボノイド類に比較し 、水溶性が向上しうる。例えば、5-O-α-D-グ コピラノシル-(+)-カテキンは(+)-カテキンに べて少なくとも40倍以上の溶解性を示し、5- O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガロカテキン -3-O-ガレートも(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレ トに比べて著しく溶解性が向上することが 認できている(実施例参照)。そして、フラ ノイド類を配糖化することは、フラボノイ 類の呈味の改変にも寄与しうる。例えば、(- )-エピガロカテキン-3-O-ガレートを多く含む 茶抽出物を配糖化処理したところ、配糖化 理していないものに比べて、配糖化処理物 び単一に精製した各配糖体(5-O-α-D-グルコピ ノシル-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート、 7-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラ シル)-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート、7- O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガロカテキン -3-O-ガレート)ともに、渋味が著しく低い値を 示すことが確認でき、またパネラーによる官 能評価でも苦味・渋味が少なくなり飲みやす いという評価結果が得られている。さらに、 本発明者らの検討によると、カテキンに比べ て4'-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキンは熱 に対して安定であったことから、本発明によ り得られるフラボノイド類の配糖体は、対応 するフラボノイド類に比較して熱安定性が向 上しうる。

 したがって本発明は、フラボノイド類と糖 与体とに、 Trichoderma 属由来(好ましくは、 Trichoderma   viride 由来又は Trichoderma   reesei 由来)の配糖化活性を有する酵素剤を作用さ る工程を含む、フラボノイド類の改質方法 提供する。本明細書で「改質」というとき 、少なくとも水溶性の向上、呈味の改善及 安定性の向上のいずれかを意味する。

 本発明の改質方法においても、フラボノイ 類の例として、カテキン類又はそのメチル 体を挙げることができ、糖供与体の例とし 、マルトトリオース残基を含む糖質(好まし くは、マルトトリオース、マルトテトラオー ス、マルトペンタオース、マルトヘキサオー ス、マルトヘプタオース、デキストリン、γ- シクロデキストリン又は可溶性澱粉)を挙げ ことができる。フラボノイド類の水溶性を 上する際も、酵素剤としては、 Trichoderma 属由来の配糖化活性を有するものを好適に用 いることができ、また、 Trichoderma   viride 由来の、セルラーゼ酵素剤又はβ-1,3-グルカ ーゼ酵素剤として使用されているものを有 に用いうる。それぞれの用語についての説 は、上述したとおりである。

 〔本発明の配糖化酵素の酵素学的性質〕
 本発明に用いることのできる酵素剤中に含 れる配糖化酵素のうち、特に好ましい例は Trichoderma   viride 由来又は Trichoderma   reesei 由来の配糖化酵素である。この酵素は、フラ ボノイドと糖供与体との反応において、以下 のような酵素学的特徴を有する。

  糖供与体選択性:  
 本酵素は、実施例に示した条件では、マル トリオース、マルトテトラオース、マルト ンタオース、マルトヘキサオース、マルト プタオース、可溶性澱粉、デキストリン、 -シクロデキストリン等を糖供与体とするが セロビオース、デキストラン、マルトース 水和物、カルボキシメチルセルロースナト ウム、イソマルトオリゴ糖、α-シクロデキ トリン、β-シクロデキストリン等は糖供与 としない。また、グルコース1分子又は2分 からなる糖のみならず、グルコース3分子(G3) 以上の糖鎖長の配糖体を産生することができ る配糖化酵素である。

  基質特異性:
 本酵素は、カテキン、エピガロカテキンガ ート、ナリンゲニン、ケルセチン、ダイゼ ン、ゲニステイン、ケンフェロール等の主 なフラボノイドやエスクレチンなどを含む リフェノールに対し、広く作用し、配糖化 ることができる。

  反応最適pH、温度:
 本酵素は、実施例に示した条件では、pH約4. 5~約7.0、特にpH約5.0~約6.5でよく反応し、また 30~約55℃、特に約45~約55℃でよく反応する。

 〔配糖体の用途〕
 本発明により得られた配糖体は、食品用組 物、医薬用組成物又は化粧用組成物として いることができる。より詳細には、例えば テキン類配糖体を配合したものは、カテキ と同様に、抗アレルギー、抗酸化、抗癌、 炎症、抗菌・抗う歯、抗ウイルス、解毒、 内フローラ改善、消臭、血漿コレステロー 上昇抑制、血圧上昇抑制、血糖上昇抑制、 小板凝集抑制、痴呆予防、体脂肪燃焼、体 肪蓄積抑制、持久力向上、抗疲労、腎機能 善のための剤として、あるいは食品用組成 、医薬用組成物又は化粧用組成物として用 ることができる。

 食品用組成物は、栄養補助食品、健康食 、食事療法用食品、総合健康食品、サプリ ント及び飲料を含む。飲料は、茶飲料、ジ ース、清涼飲料、ドリンク剤を含む。医薬 組成物は、医薬品又は医薬部外品とするこ ができ、経口製剤又は皮膚用外用剤である とが好ましく、液剤、錠剤、顆粒剤、丸剤 シロップ剤、又はローション剤、スプレー 、硬膏剤、軟膏剤の形態とすることができ 。化粧用組成物は、クリーム、液状ローシ ン、乳液状ローション、スプレーの形態と ることができる。

 本発明の食品用組成物、医薬用組成物又 化粧用組成物中における配糖体の配合量は 特に限定されないが、当業者であれば、対 するフラボノイド類の好ましい一日摂取量 参考に、溶解性、呈味等を考慮して、適宜 計することができる。例えば、組成物中に ける本発明の配糖体の配合量を0.01~99.9重量% とすることができ、また本発明の配糖体を一 日当たり100 mg~20 gを1~数回(例えば3回)に分け て摂取することができるように、組成物中の 配合量を決定することができる。

 本発明の食品用組成物、医薬用組成物又 化粧用組成物には、食品、医薬又は化粧品 して許容できる種々の成分を添加すること できる。これらの添加剤及び/又は成分の例 として、ビタミン類、糖類、賦形剤、崩壊剤 、結合剤、潤沢剤、乳化剤、緊張化剤(等張 剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化 、抗酸化剤、着色剤、矯味剤、香料、凝固 、pH調整剤、増粘剤、茶エキス、生薬エキ 、無機塩等が挙げられる。

 〔他の態様〕
 本発明において、酵素剤に含まれる酵素タ パク質は、適当な担体に固定化し、固定化 素として用いることができる。担体として 、同様の目的で使用される従来の樹脂、例 ば、塩基性樹脂(例えば、MARATHON WBA(Dow Chemi cal社製)、SAシリーズ、WAシリーズ又はFPシリ ズ(三菱化学)、及びアンバーライトIRA904(オ ガノ))、疎水性樹脂(例えば、ダイアイオンFP HA13(三菱化学)、HPシリーズ(三菱化学)、アン ーライトXAD7(オルガノ))等を用いることがで る。他に、エキスプレスイオンD(Whatman)、DEA E-トヨパール650M(東ソー)、DEAE-セファロースCL 4B(Amersham Biosciences)等も好適に用いうる。固 化の方法としては、従来の、物理的吸着、 オン結合又は共有結合を介して固定化する 合法、二価性官能基をもつ試薬で架橋固定 する架橋法、網目構造のゲル又は半透膜の に酵素を包埋する包括法のいずれも採りう 。例えば、まず各樹脂5mlに対し、蒸留水に 解した酵素20~2,000 mg、例えば50~400 mgを吸着 せた後、上清を除去し、乾燥することによ 。

 本発明により、 Trichoderma 属(例えば、 Trichoderma   viride Trichoderma   reesei Trichoderma   saturnisporum Trichoderma   ghanense Trichoderma   koningii 、  Trichoderma   hamatum Trichoderma   harzianum 又は Trichoderma   polysporum、好ましくはTrichoderma   viride )由来の配糖化活性を有する酵素を含む、フ ボノイド類を配糖化するための酵素剤も提 される。酵素剤は、1又は2以上の子嚢菌類の 糸状菌由来の糖質分解酵素を含み、それ以外 の添加物(例えば、酵素を安定化するための 分や、糖供与体成分、他の酵素)を含んでい もよい。

 本発明により、フラボノイド類を効率的 配糖化することができる。特に、カテキン の5位、7位、3'位、4'位の配糖化を効率的に うことができる。

 本発明によりフラボノイド類を配糖化す ことによって、水溶性を向上することがで る。そのため、本発明により、フラボノイ 類の経口吸収性を高めることができると考 られる。また、水溶性の向上は、水への溶 速度の向上、ひいては生体内での吸収速度 向上に資するものである。したがって、本 明により、フラボノイド類の有用な活性、 えば抗酸化活性を、生体内で効率よく発揮 せることが可能となる。

 また、本発明によりフラボノイド類を配 化することによって、フラボノイド類の呈 を改変することができる。特にフラボノイ 類としてカテキン類のように苦味、渋味を するものを本発明により配糖化する場合に 、そのような呈味を低減することができる

 また、本発明によりフラボノイドを配糖 することによって、熱安定性を向上するこ ができる。

図1は、 Trichoderma   viride  IAM 5141  粗酵素液でカテキンを処理した際 の、HPLC分析チャートである。 図2は、 Aspergillus   nidulans Neurospora   crassa Magnaporthe grisea Fusarium   graminearum  のゲノム情報データベースから抽出した、a lpha-amylase, catalytic domain(accession No. PF00128)の モチーフを持つ推定ORFのアミノ酸配列につい て、系統樹作成プログラムであるTree viewに り作成した系統樹を示した図である。 図3は、図2のグループ1の4つのアミノ酸 配列をアライメントし、保存性の高い部分( 線部)を示した図である。 図4は、TRa2のゲノムDNA配列(配列番号:6) cDNA配列(配列番号:9)を比較した図である。 図5は、TRa2のcDNA塩基配列、及びそれに 応する推定アミノ酸配列を示した図である 2重下線部は推定分泌シグナル配列。 図6は、TRa2の推定アミノ酸配列とタカ ミラーゼ前駆体アミノ酸配列(GBNo.BAA00336)の 次構造を比較した図である。下線部:TRa2の推 定分泌シグナル、破線下線部:タカアミラー の分泌シグナル、2重下線部:α‐アミラーゼ ァミリー酵素で高度に保存されている4つの 領域、*印アミノ酸残基:触媒部位に位置する ミノ酸残基。 図7は、形質転換体(TRa2-1株)の培養上清 原液、又はその濃縮液に、(+)-カテキン又は (-)-エピガロカテキン-3-O-ガレートと、デキス トリンを加えて反応させた際の、反応液のHPL C分析チャートである。 図8は、形質転換体(TRa2-1株)の培養上清 ら調製したTRa2の粗酵素溶液に、各糖受容体 基質((+)-カテキン、(-)-エピガロカテキン-3-O- レート、エスクレチン、ナリンゲニン、ケ セチン、ダイゼイン、ゲニステイン、ケン ェロール)、デキストリンを加えて反応させ た際の、配糖化活性を示したグラフである。 図9は、酵素剤の配糖化反応における至 適pH、及び至適温度を示したグラフである。 図10は、(+)-カテキン又は4'-O-α-D-グル ピラノシル-(+)-カテキンを含む溶液を4~100℃ 各温度で0~4時間処理した後の、それぞれの 存量を示したグラフである。 図11は、(+)-カテキン及びその配糖体、 並びに(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート及び その配糖体の、水への溶解性を示したグラフ である。 図12は、(-)-エピガロカテキン-3-(3"-O-メ チル)ガレート、デキストリン及び酵素剤を 合して反応した際の、反応液のHPLC分析チャ トである。 図13は、(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレ トを多く含む緑茶抽出物(TVG-1)、その配糖体 画分(BR-1)、及びBR-1に含まれる各配糖体の単 精製物(5-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガ カテキン-3-O-ガレート(5G-1)、5-O-(4-O-α-D-グル ピラノシル-α-D-グルコピラノシル)-(-)-エピ ロカテキン-3-O-ガレート(5GG-1)、7-O-α-D-グル ピラノシル-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレー ト(7G-1))についての、味センサーによる味質 ーダーチャートである。

 〔実施例1: Trichoderma 培養液のカテキン配糖化活性〕
  Trichoderma   viride  IAM 5141株のスラントから、酵母エキス(Difco) 1%、ポリペプトン(日本製薬)1%、デキストリン (ナカライテスク)2%の液体培地 10mlに植菌し 30℃で1日間振とう培養を行い、前培養液と た。さらに、上記液体培地900mlに前培養液を 全量植菌して30℃で3日間培養を行い、フィル ターろ過により培養上清液を調製した。培養 上清690mlに対して、硫酸アンモニウム387g(80% 和)を添加し攪拌した後、遠心分離により沈 を回収した。得られた沈殿に10mlの0.1M酢酸 ッファー(pH5.0)を加え、粗酵素液とした。

 粗酵素液100μlに対して、カテキン3mg、デ ストリン10mgを添加し、50℃で24時間攪拌し 酵素反応を行った。反応液を0.1%トリフルオ 酢酸(TFA)で10倍希釈し、10μlを高速液体クロ トグラフィー(HPLC)で分析を行った。

 分析条件
 カラム:Develosil C30-UG-5(4.6x150mm)
 グラジエント条件: 5%B液 → 50%B液 / 20分
 溶離液A:0.1%TFA / 蒸留水
 溶離液B:90%アセトニトリル/ 0.08%TFA
 流量:1ml/min
 検出波長:280nm
 図1に示したとおり、上記反応によるカテキ ン配糖体の生成を確認できた。また、糖供与 体としてγ-サイクロデキストリンを用いた場 合にも同様の配糖体の生成を確認できた。こ のことから、 T.   viride  IAM5141株はデキストリン又はγサイクロデキ トリンを糖供与体として、カテキンを配糖 する酵素を分泌生産していることが示唆さ た。

 〔実施例2: Trichoderma 属由来の種々の酵素剤の性質〕
 (+)-カテキン 3mgを0.1M 酢酸バッファー(pH5)  100μlに溶解して、各酵素剤 10mg又は10μl及び 溶性澱粉(ナカライテスク) 10mg又はデキス リン 10mgを混合し、50℃で1日撹拌した。反 後、その遠心上清を10倍希釈してHPLC分析を った。分析条件は実施例1の通りとした。

 用いた酵素剤及び実験結果を下表に示し 。

 メーカーに拠らず広く、セルラーゼとして 販されている Trichoderma 属由来の酵素剤に、カテキン類の配糖化活性 が認められることを見出した。

 〔実施例3:フラボノイド配糖体の製造(1)〕
  a. 5-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カ テキン及び7-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテ ンの製造:
 (+)-カテキン60mgに対して、可溶性澱粉(ナカ イテスク)200mg、セルラーゼT「アマノ」4 ( 野エンザイム) 200mg、0.1M 酢酸バッファー(pH 5) 2 mlを混合し、50℃、3日間撹拌した。反応 後、その遠心上清をカラム:Develosil C30-UG-5(20 250 mm, 野村化学)、A液: 0.1% TFA/蒸留水, B液 : 90% アセトニトリル/0.08%TFA, 溶出条件:20% B 液、流速:4 ml/min、検出波長:280 nmで分画精製 を行った。生成した主ピーク画分を回収して 凍結乾燥標品を調製した。

 7-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキン:m/z 45 0.9、NMR :δppm (D 2 O);2.48 (1H, dd), 2.80 (1H, dd), 3.42 (1H, t), 3.4- 3.7 (4H, m), 3.80 (1H, t), 4.14 (1H, q), 4.69 (1H,  d), 5.47 (1H, d), 6.23 (1H, d), 6.27 (1H, d), 6. 78 (1H, dd), 6.84 (1H, d), 6.86 (1H, d)。

 5-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキン:m/z 45 0.8、NMRδppm (D 2 O);2.62 (1H, dd), 2.81 (1H, dd), 3.43 (1H, t), 3.45 -3.55 (1H, m), 3.6-3.7 (3H, m), 3.83 (1H, t), 4.18 (1H, dd), 4.76 (1H, d), 5.61 (1H, d), 6.09 (1H, d ), 6.31 (1H, d), 6.77 (1H, d), 6.8-6.9 (2H, m)。

  b. 5-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エ ピガロカテキン-3-O-ガレートの製造:
(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート120 mgに対 て、デキストリン(ナカライテスク)400 mg、 ルラーゼ“オノズカ”RS(ヤクルト薬品工業)4 00 mg、0.1 M 酢酸バッファー(pH 5) 3 mlを混 し、50 ℃、 3日間撹拌した。反応後、その 心上清をカラム:Develosil C30-UG-5(20×250 mm)、 出条件:40%メタノール、流速:3 ml/min、検出 長:280 nmで分画精製を行った。主ピーク画分 は5-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガロカテ ン-3-O-ガレートであった。

 5-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガロカ キン-3-O-ガレート:m/z  621.0、NMRδppm (D2O);2.8-  3.1 (2H, m), 3.52 (1H, t), 3.7-3.8 (4H, m), 3.91 (1H, t), 5.01 (1H, s), 5.54 (1H, s), 5.6 (1H, bro ad s), 6.35 (1H, s), 6.43 (1H, s), 6.57 (2H, s),  6.95 (2H, s)。

  c. 7-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エ ピガロカテキン-3-O-ガレート及び7-O-(4-O-α-D- ルコピラノシル-α-D-グルコピラノシル)-(-)- ピガロカテキン-3-O-ガレートの製造:
 エピガロカテキンガレート3gに対して、パ セラーゼBR(ヤクルト薬品工業)5g、デキスト ン 10g、0.1M 酢酸バッファー(pH5) 100mlを混合 し、50℃,4時間撹拌した。反応後、その遠心 清をセファロースLH20(Amersham Biosciences)100mlカ ラムに吸着させた。蒸留水200ml、30%エタノー 200ml、40%エタノール 200mlでステップワイズ 出を行い、配糖体画分を回収・凍結乾燥品 調製した。さらに50mgを蒸留水 5mlに溶解し 、カラム:DevelosilC30-UG-5(20×250mm)、A液:0.1%TFA/ 留水,B液:90%メタノール/0.1%TFA、溶出条件:30%B 、流速:3ml/min、検出波長:280nmで分画精製を行 た。主成分として、7-O-α-D-グルコピラノシ -(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート及び7-O-(4 -O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラノシ )-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレートを得た

 7-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガロカテ ン-3-O-ガレート:m/z 621.1, NMRδppm (D 2 O);2.98 (1H, d), 3.08 (1H, d), 3.53 (1H, t), 3.68  (1H, s), 3.7-3.9 (3H, m), 3.92 (1H, t), 5.14 (1H,  s), 5.62 (2H, broad s), 6.40 (1H, s), 6.48 (1H, s) , 6.61 (2H, s), 6.99 (2H, s)。

 7-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコ ラノシル)-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート :m/z 783.1、NMRδppm (D2O);2.93 (1H, dd), 3.00 (1H,  dd), 3.43 (1H, t), 3.60 (1H, dd), 3.7-3.9 (9H, m), 4.18 (1H, t), 4.96 (1H, s), 5.21 (1H, d), 5.51 (1 H, bs), 5.59 (1H, d), 6.35 (1H, d), 6.43 (1H, d), 6.57 (2H, s), 6.96 (2H, s)。

 〔実施例4:フラボノイド配糖体の製造(2)〕
  1. PCRによるα-アミラーゼホモロ の部分配列のクローニング:
 デキストリン及びγ‐サイクロデキストリ は、グルコースがα-1,4結合で結合したポリ ーであり、目的とする酵素はこれを分解す 活性を有していることから、α-アミラーゼ ァミリー様の酵素である可能性が示唆され 。

 そこで、トリコデルマと同じ子嚢菌類の糸 菌でゲノム配列が明らかになっている微生 のうち、 Aspergillus   nidulans Neurospora   crassa Magnaporthe grisea Fusarium   graminearum  のゲノム情報データベースから、プロテイ ファミリーデータベース(PFAM)のalpha-amylase,  catalytic domain(accession No. PF00128)のモチーフを 持つ推定ORFのアミノ酸配列をそれぞれ9個、6 、8個、6個抽出した。これらを配列相同性 索プログラムであるClustalWによりアライメン トを作成し、系統樹作成プログラムであるTre e viewにより系統樹を作成し、相同性をもと グループ分けを行った。図2のグループ1の4 のアミノ酸配列(括弧内はGenebank アクセッシ ョンNo.)MG02772.4(EAA47529)、MG10209.4(EAA48146)、AN3388 .2(EAA63356)、FG03842.1(EAA71544)をアライメントし 保存性の高い部分(図3 下線部)のアミノ酸配 列に対応するオリゴDNAを合成した。

 AMY-12f:
 5'-TAYTGYGGNGGNACNTTYAARGGNYT-3'(配列番号:1)
 AMY-15r:
 5'-TTYTCNACRTGYTTNACNGTRTCDAT-3'(配列番号:2)
 AMY-17r:
 5'-GGTNAYRTCYTCNCKRTTNGCNGGRTC-3'(配列番号:3)
 先に培養した T.   viride  IAM5141菌体約1gの湿菌体よりDNeasy plant Maxi K it(QIAGEN)により、ゲノムDNAを抽出した。この ノムDNA50ngを鋳型として、プライマーAMY-12fと プライマーAMY-15r、又はプライマーAMY-12fとプ イマーAMY-17rを用いてPCR反応を行った。すな わち、ExTaq(タカラバイオ社製)を用いて、94℃  2分、(94℃ 1分、50℃1分、72℃ 1分)を30サイ ル、72℃ 10分の反応を行った。PCR産物をア ロースゲル電気泳動で分析したところ、プ イマーAMY-12fとプライマーAMY-15rの組み合わ で約0.6kbp、プライマーAMY-12fとプライマーAMY- 17rの組み合わせで約1.0kbpの断片が確認できた 。そこで、これらのDNA断片をアガロースゲル から切り出し、GFX PCR DNA and Gel Band Purifica tion Kit(アマシャムバイオサイエンス)によりD NAを精製した。これをTOPO-TA cloning kit(インビ トロジェン)にてクローニングし、塩基配列 解析をABI3100Avant(アプライドバイオシステム 社製)にて行った。前者で得られた塩基配列 は後者で得られた塩基配列に含まれていた。 この塩基配列をGenBankに登録されているアミ 酸配列に対してBlastxにより相同性検索を行 たところ、MG10209.4(EAA48146)と最も高い相同性 示した。

  2. アミラーゼホモログのゲノム 列の決定:
 得られた約1.0kbpの塩基配列をもとに、以下 プライマーを設計し、Inverse PCR(逆PCR)を行 た。

 TRa2-2:
 5'-CCAACCTGGTATCTACATAC-3'(配列番号:4)
 TRa2-3:
 5'-AGATGGCATCAAATCCCAT-3'(配列番号:5)
 まず、 T.   viride  IAM5141より調製したゲノムDNAをHindIIIあるい PstIで完全消化し、ligation high(東洋紡)により 、16℃で一晩反応させ、セルフライゲーショ により閉環させた。これらのDNA  0.1μgを鋳 型として、上記プライマーTRa2-2及びTRa2-3を用 いてPCR反応を行った。PCRは、LA Taq(タカラバ オ)を使用して、94℃ 2分、(95℃ 30秒、66℃ 15分)を30サイクル、72℃ 10分の反応を行った 。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動 で分析したところ、HindIIIで消化したゲノムDN Aを鋳型としたものでは約2kb、PstIで消化した ノムを鋳型としたものでは約4.5kbのDNA断片 確認できた。これらをそれぞれアガロース ルから切り出し、前述と同様にクローニン した。挿入された断片の両端からそれぞれ 基配列を決定した。HindIIIで消化したゲノム 来のものとPstIで消化したゲノム由来のもの は、当該制限酵素サイトまでの塩基配列が一 致していた。こうして得られた塩基配列を、 先に得られた部分配列と連結した。この塩基 配列を図4(TRa2-gDNA)及び配列番号:6に示す。図2 グループ1の4つの配列との比較及び、開始コ ンや終始コドンの出現などからα-アミラー ホモログのコード領域を推定した。開始コ ンは塩基番号423-425のATG、終始コドンは1926-1 928のTAAであると考えられた。

  3. α-アミラーゼホモログのcDNAの ローニング:
 先に培養した T.   viride  IAM5141株の菌体約0.1gより、RNeasy plant mini ki tにより全RNAを抽出した。1μgの全RNAをスーパ スクリプトファーストストランドシステム for RT-PCR(インビトロジェン)でランダムヘキ マーを用いて、cDNAを合成した。

 先に得られたゲノム配列をもとに、以下 プライマーを設計した。

 TRa2EcoRI-f2:
 5'-GGAATTCATGAAGCTTCGATCCGCCGTCCC-3'(配列番号:7)
 TRa2XhoI-r2:
 5'-CCGCTCGAGTTATGAAGACAGCAGCACAAT-3'(配列番号:8)
 合成されたcDNAを鋳型として、上記プライマ ーTRa2EcoRI-f2及びTRa2XhoI-r2を用いて、PCR反応を った。PCRは、Ex Taq(タカラバイオ)を使用し 94℃ 2分、(94℃ 1分、55℃ 1分、72℃ 2分)を 30サイクル、72℃ 10分の反応を行った。得ら たPCR産物をアガロースゲル電気泳動で分析 たところ、約1.5kbのDNA断片が確認できた。 れをアガロースゲルより切り出し、GFXにて 製した。得られたDNA断片をTOPO-TA cloning kit( ンビトロジェン)にてクローニングして、プ ラスミドpCRTRa2-cDNAを構築し、cDNAの塩基配列 決定した(図4、図5及び配列番号:9)。先に得 れたゲノムDNA配列とcDNA配列を比較したとこ 、ゲノム配列には2つのイントロンが含まれ ていた(図4)。cDNA配列には、1392bpのORFがあり 463アミノ酸残基からなるタンパク質をコー していた(図5及び配列番号:10)。この遺伝子 TRa2と命名した。本遺伝子によりコードされ 推定アミノ酸配列をSignalP(Nielsen H. et.al., P rotein Eng., 10, 1-6, 1997 )で解析した結果、N 端から20アミノ酸残基は分泌シグナル配列で あると考えられた。さらに、TRa2によりコー される推定アミノ酸配列を前述の方法に従 て相同性検索を行ったところ、AN3388.2(EAA63356 )ともっとも高い相同性を示した。TRa2タンパ 質の推定アミノ酸配列を、既知のα-アミラ ゼであるタカアミラーゼのアミノ酸配列と 較した。その結果、α-アミラーゼファミリ 酵素の4つの保存領域が本酵素においても保 存されており(図6、2重下線)、活性中心とさ るアスパラギン酸残基、グルタミン酸残基 アスパラギン酸残基がすべて保存されてい (図6、*印アミノ酸残基)。

  4. TRa2タンパク質の酵母での分泌 現系の構築:
 プラスミドpCRTRa2-cDNAを制限酵素EcoRI及びXhoI 消化して得られた約1.5kbの断片を、プラス ドpYE22m(Biosci. Biotech. Biochem., 59(7), 1221-1228, 1995)を制限酵素EcoRI及びSalIで消化した断片と ligation high(東洋紡)を用いて連結し、プラス ドpYETRa2を得た。

 プラスミドpYETRa2により、酵母 S.   cerevisiae  EH1315株を酢酸リチウム法により、形質転換 た。得られた形質転換株をTRa2-1株とした。T Ra2-1株をYPD(Difco)液体培地 10mlに一白金耳植菌 し、30℃で2日間振とう培養した。TRa2タンパ 質はN末に20アミノ酸残基からなる分泌シグ ル配列が存在するので、培養液中に分泌さ ると考えられた。そこで遠心分離により、 体を沈殿させ培養上清を回収した。

  5. TRa2の糖分解活性の測定:
 培養上清500μlをMicrocon YM-30(アミコン)を用 て、約5倍に濃縮した。上記濃縮液10μlを、0. 5%のマルトース、マルトトリオース、マルト トラオース、デキストリン、α-サイクロデ ストリン、β-サイクロデキストリン、又は γ-サイクロデキストリンを含む20mM 酢酸バ ファー(pH5.0)100μlに添加し、50℃で1時間反応 せた。

 反応終了後、以下のとおりTLCにて分析し 。プレートは、シリカゲルG-60プレート(メ ク)を使用し、展開液として、2-プロパノー :アセトン:0.5M乳酸=2:2:1を使用した。検出は 硫酸:エタノール=1:9を噴霧して風乾したのち 、ホットプレートで熱することにより行った 。その結果、ベクターpYE22mにて形質転換した コントロール株(C-1株)の培養液では、いずれ 糖の分解も確認できなかった。一方、TRa2-1 の培養液ではマルトトリオース、マルトテ ラオース、デキストリン及びγ-サイクロデ ストリンが分解されて主にマルトース及び ルコースが生成することが確認できたが、 ルトース、α-サイクロデキストリン及びβ- イクロデキストリンの分解は確認できなか た。

  6. TRa2の糖転移活性の測定:
 培養上清の原液、又はVIVASPIN 10,000MWCO/PES製( VIVASCIENCE社)にて約5倍に濃縮した培養上清濃 液100μlに(+)-カテキン又は(-)-エピガロカテキ ン-3-O-ガレート 3mgと、デキストリン10mgを加 て、50℃にて1日間攪拌しながら反応させた 反応終了後、反応液を0.1%トリフルオロ酢酸 溶液にて10倍希釈し、高速液体クロマトグラ ィー(HPLC)にて、実施例1と同様の条件で分析 した。その結果、ベクターpYE22mにて形質転換 したコントロール株(C-1株)の培養上清と反応 せた反応液には、反応生成物が確認できな ったのに対し、TRa2-1株では、カテキン配糖 及びエピガロカテキン-3-O-ガレート配糖体 生成が確認できた(図7)。

  7. TRa2によるカテキン配糖体の製 :
 TRa2-1株をYPD液体培地200mlに植菌し30℃で3日 振とう培養した。遠心分離により菌体を集 、培養上清を得た。この培養上清100mlを限外 ろ過ディスク:NMWL30000/再生セルロースで0.1M  酸バッファー(pH5) 100mlを加えながら50mlにな るまで濃縮し、TRa2酵素液とした。上記TRa2酵 液50mlに(+)-カテキン1.5gとデキストリン 5gを 混合し、45℃,18hr撹拌した。反応液を遠心分 し、上清をLH20(Amersham Biosciences)樹脂60ml/ф2.5 20cmカラムに吸着させた。蒸留水120ml、10%エ ノール240mlで溶出し、配糖体画分を回収・凍 結乾燥し、凍乾末530mgを得た。その50mgをとっ て蒸留水 5mlに溶かし、DevelosilC30-UG-5カラム20 ×250mm、A:0.1%TFA/蒸留水,B:90%メタノール/0.1%TFA,3 0%B、3ml/min、280nmで分取した。HPLCの保持時間 早い順にピーク1~6を回収・凍結乾燥した。MS 及びNMR解析から、ピーク1は5-O-(4-O-α-D-グルコ ピラノシル-α-D-グルコピラノシル)-(+)-カテキ ン、ピーク2は5-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カ テキン、ピーク3は4'-O-(4-O-α-D-グルコピラノ ル-α-D-グルコピラノシル)-(+)-カテキン、ピ ク4は4'-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキン ピーク5は3'-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D- グルコピラノシル)-(+)-カテキン、ピーク6は3' -O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキンである とが示唆された。

 5-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピ ノシル)-(+)-カテキン:m/z 615.2、NMRδppm (D 2 O);2.71 (1H, dd), 2.85 (1H, dd), 3.42 (1H, t), 3.56 -3.85 (9H, m), 4.19 (1H, t), 4.26 (1H, dd), 4.87 ( 1H, d), 5.70 (1H, d), 6.19 (1H, d), 6.39 (1H, d), 6.83 (1H, dd), 6.90-6.93 (2H, m) 。

 5-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキン:m/z 45 3.2、NMRδppm (D 2 O);2.62 (1H, dd), 2.81 (1H, dd), 3.43 (1H, t), 3.45 -3.55 (1H, m), 3.6-3.7 (3H, m), 3.83 (1H, t), 4.18 (1H, dd), 4.76 (1H, d), 5.61 (1H, d), 6.09 (1H, d ), 6.31 (1H, d), 6.77 (1H, d), 6.8-6.9 (2H, m) 。

 4'-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピ ノシル)-(+)-カテキン:m/z 615.2、NMRδppm (D 2 O);2.54 (1H, dd), 2.81 (1H, dd), 3.43 (1H, t), 3.60  (1H, dd), 3.68-3.94 (9H, m), 4.19-4.28 (2H, m), 4. 82 (1H, d), 5.44 (1H, d), 5.62 (1H, d), 6.04 (1H, d), 6.11 (1H, d), 6.91 (1H, dd), 7.00 (1H, d), 7. 22 (1H, d)。

 4'-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキン:m/z 4 53.2、NMRδppm (D 2 O);2.45 (1H, dd), 2.73 (1H, dd), 3.45 (1H, t), 3.65 -3.75 (4H, m), 4.11 (1H, dd), 4.7-4.75 (2H, m), 5.5 3 (1H, d), 5.95 (1H, d), 6.02 (1H, d), 6.83 (1H,  dd), 6.91 (1H, d), 7.15 (1H, d) 。

 3'-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピ ノシル)-(+)-カテキン:m/z 615.2、NMRδppm (D 2 O);2.54 (1H, dd), 2.80 (1H, dd), 3.44 (1H, t), 3.59  ( 1H, dd), 3.67-3.90 (9H, m), 4.17-4.24 (2H, m),  4.83 (1H, d), 5.41 (1H, d), 5.55 (1H, d), 6.03 (1H , d), 6.10 (1H, d), 7.10 (1H, d), 7.06 (1H, d), 7 .26 (1H, d)。

 3'-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキン:m/z 4 53.2、NMRδppm (D 2 O);2.43 (1H, dd), 2.73 (1H, dd), 3.27 (1H, s), 3.44  (1H, t), 3.6-3.7 (4H, m), 3.88 (1H, t), 4.10 (1H,  dd), 4.69 (1H, d), 5.46 (1H, d), 5.93 (1H, s), 6 .01 (1H, s), 6.89 (1H, d), 6.94 (1H, dd), 7.18 (1H , d) 。

  8. TRa2によるエピガロカテキン-3-O -ガレート配糖体の製造:
 TRa2-1株をYPD液体培地100mlに植菌し30℃で3日 振とう培養した。遠心分離により菌体を集 、培養上清を得た。この培養上清45mlを限外 過ディスク:NMWL30000/再生セルロースで0.1M  酸バッファー(pH5) 50mlを加えながら20mlにな まで濃縮し、TRa2酵素液とした。TRa酵素液 20 mlに(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート600mgと キストリン 2gを混合し、50℃、1日撹拌した 反応液を遠心し、上清をLH20樹脂25ml/ф1.5×30c mカラムに吸着させた。蒸留水100ml、10%エタノ ール100ml、20%エタノール100ml、30%エタノール20 0mlで溶出し、30%エタノール画分を回収・凍結 乾燥した。凍乾末120mgを蒸留水12mlに溶かし、 DevelosilC30-UG-5カラム20×250mm、A:0.1%TFA/蒸留水,B: 90%メタノール/0.1%TFA,40%B、3ml/min、280nmで分取 た。MS及びNMR解析から、ピーク2は7-O-(4-O-α-D- グルコピラノシル-α-D-グルコピラノシル)-(-)- エピガロカテキン-3-O-ガレート、ピーク5は3'- O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラノ シル)-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート、ピ ク6は3'-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガロ カテキン-3-O-ガレートであることが示唆され 。一方、ピーク3はMS(m/z 621.2、1107.3)から、 ルコシドとマルトテトラオシドの混合物で ることが示唆され、保持時間からグルコシ は7-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガロカ キン-3-O-ガレートであると考えられた。

 7-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピ ノシル)-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート:m/ z 783.2、NMRδppm (CD 3 OD); 2.88 (1H, dd), 2.01 (1H, dd), 3.26 (1H, t), 3 .46 (1H, dd), 3.6-3.9 (9H, m), 4.08 (1H, t), 5.00  (1H, s), 5.20 (1H, d), 5.43 (1H, d), 5.54 (1H, s),  6.27 (1H, d), 6.34 (1H, d), 6.51 (2H, d), 6.94 ( 2H, d)。

 3'-O-α-D-グルコピラノシル-(-)-エピガロカ キン-3-O-ガレート:m/z 621.1, δppm (CD3OD);2.88  (1H, dd), 2.99 (1H, dd), 3.42 (1H, dd), 3.51 (1H,  t), 3.69 (1H, m), 3.8-3.9 (3H, m), 4.88 (1H, d), 4 .98 (1H, s), 5.49 (1H, broad s), 5.95 (1H, d), 5.9 6 (1H, d), 6.65 (1H, d), 7.01 (2H, s), 7.11 (1H,  d) 。

 3'-O-(4-O-α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコ ラノシル)-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレー :m/z 783.2, δppm (CD3OD);2.87 (1H, broad d), 2.99  (1H, dd), 3.27 (1H, t), 3.44-3.48 (2H, m), 3.6-3.8  (4H, m), 3.85 (2H, d), 3.98 (1H, dd), 4.06 (H, t),  4.85 (1H, d), 4.99 (1H, s), 5.28 (1H, d), 5.49 ( 1H, broad s), 5.94 (1H, d), 5.96 (1H, d), 6.64 (1H , d), 7.01 (2H, s), 7.09 (1H, d) 。

  9.His-tagを付加したTRa2タンパク質(T Ra2-His)の発現:
   TRa2-His発現用プラスミドの構築と 質転換酵母の取得
 TRa2タンパク質のC末端にHis-tagを付加して酵 で発現させるために、以下のプライマーを 計した。
TRa2HisXhoI-r2: Gctcgagttagtggtggtggtggtggtgtgaagacagcagcaa (配列番号:27)
プラスミドpCRTRa2-cDNAを鋳型として、プライマ ーTraEcoRI-f2とプライマーTRa2HisXhoI-r2を用いて PCR反応を行った。PCRは、Ex Taq(タカラバイオ )を使用し、94℃ 2分、(94℃ 1分、58℃ 1分、7 2℃ 2分)を25サイクル、72℃ 10分の反応を行 た。得られたPCR産物をアガロースゲル電気 動で分析したところ、約1.5kbのDNA断片が確認 できた。これをアガロースゲルより切り出し 、GFXにて精製した。得られたDNA断片をTOPO-TA  cloning kit(インビトロジェン)にてクローニン して、塩基配列を確認しプラスミドpCRTRa2-cD NA-Hisとした。pCRTRa2-cDNA-HisをEcoRIとXhoIで消化 て約1.5kbのDNA断片を、プラスミドpYE22mを制限 酵素EcoRI及びSalIで消化した断片とligation high( 東洋紡)を用いて連結し、プラスミドpYE-TRa2-Hi sを得た。プラスミドpYE-TRa2-Hisにて酵母 S.   cerevisiae  EH1315株を形質転換した。得られた形質転換 をTRa2-3株とした。

   培養
 TRa2-3株をSD(-Trp) 20 mlにて30℃、16 hr培養し 。前培養液をSD(-Trp) + 100 mM KH 2 PO 4 -KOH (pH 6.0) 1 Lに植菌し、30℃、3 days培養し た。遠心分離により培養液上清を回収した。

   精製
 培養液上清をBuffer S1[20 mM NaH 2 PO 4 -NaOH (pH 7.4)、10 mM イミダゾール、0.5 M NaCl 、15 mM 2-メルカプトエタノール]にて平衡化 たNi 2+ キレート済みのChelating Sepharose Fast Flow (5 m l、Pharmacia Biotech)カラムにアプライし、同バ ファー(40 ml)で洗浄した。続いてBuffer E1[20 mM NaH 2 PO 4 -NaOH (pH 7.4)、200 mM イミダゾール、0.5 M NaC l、15 mM 2-メルカプトエタノール]によりカラ ムに結合したタンパク質を溶出した。活性画 分を集め、VIVASPIN(30,000 MWCO、VIVASCIENCE)を用い て脱塩、濃縮した。

 続いて、酵素溶液をBuffer S2[20 mM KH 2 PO 4 -KOH (pH 7.4)、15 mM 2-メルカプトエタノール 0.1% CHAPS]にて平衡化したResource Q (1 ml、Phar macia Biotech)カラムにアプライ(1.5 ml/min)し、 バッファー(10 ml)で洗浄した。続いてBuffer E 2[20 mM KH 2 PO 4 -KOH (pH 7.4)、0.6 M NaCl、15 mM 2-メルカプト タノール、0.1% CHAPS]の0-100%直線濃度勾配(60  ml)によりカラムに結合したタンパク質を溶出 した。活性画分を集め、VIVASPIN(30,000 MWCO、VIV ASCIENCE)を用いて脱塩、濃縮した。

 再度、同手順でResource Qカラムクロマト ラフィーを行い、活性を示しかつSDS-PAGE上で 単一バンドの画分を集め、VIVASPIN(30,000 MWCO、 VIVASCIENCE)を用いて脱塩、濃縮した。

  酵素活性測定:
   糖転移活性
 反応液(10 mM エピガロカテキン-3-O-ガレー 、10 mg デキストリン、100 mM Acetate-NaOH(pH 5 .3)、酵素溶液)100 μlを45℃、24 hr攪拌し、0.5%  TFA 100 μlを添加することで反応を停止した 。反応停止後のサンプルを遠心分離し、上清 を回収した。生成物を以下のような条件でHPL Cにて分析し、エピガロカテキン-3-O-ガレート 配糖体の生成を確認した。HPLC条件:溶離液A、 0.1% TFA;溶離液B、90% アセトニトリル、0.08% T FA;分析カラム、Devolosil C30-UG-5 (4.6 x 150 mm NOMURA CHEMICAL);流速、1 ml/min;分離モード、0 m in-5%B、20 min-50%B、20.5 min-5%B、25 min-5%B
〔実施例5:糖選択性及び糖鎖長特異性〕
  糖供与体選択性1:
 (+)-カテキン6mgに対して、セルラーゼ「オノ ズカ」RS 20mg、各種糖供与体 20mg、0.1M 酢酸 ッファー(pH5) 200μlを混合し、50℃,1日撹拌 た。反応後、その遠心上清を10倍希釈しHPLC 析を行った。糖供与体はセロビオース(Sigma) デキストラン(Sigma)、マルトース(ナカライ スク)、カルボキシメチルセルロースナトリ ム(ナカライテスク)、可溶性澱粉(ナカライ スク)、デキストリン(ナカライテスク)、イ マルトオリゴ糖(和光純薬)、α-シクロデキ トリン(和光純薬)、γ-シクロデキストリン( 光純薬)、トレハロース二水和物(ナカライテ スク)を使用した。

 可溶性澱粉、デキストリン、γ-シクロデ ストリンに作用してカテキン配糖体を生成 たが、他の糖類には作用しなかった。

  糖供与体選択性2:
 (+)-カテキン3mgに対して、セルラーゼ「オノ ズカ」RS 10mg、各種糖供与体10 mg、0.1 M 酢 バッファー(pH5) 100μlを混合し、50℃で1日撹 した。糖供与体はマルトース、マルトトリ ース、マルトテトラオース、マルトペンタ ース、マルトヘキサオース、マルトヘプタ ース及びデキストリン(ナカライテスク)、γ -シクロデキストリン(和光純薬)を使用した。 反応後、その遠心上清を10倍希釈しHPLC分析を 行った。

 結果を下表に示した。

 〔実施例6:基質特異性〕
 TRa2-1株をYPD培地10 mlにて、30℃で一晩振と 培養した。静止期に達した培養液を同培地 接種し(2%(v/v))、30℃で3日間振とう培養した 培養後、遠心分離にて上清を回収し、5倍に 縮してTRa2の粗酵素溶液を得た。酵素反応溶 液(0.5 mM 及び 10 mM 糖受容体基質((+)-カテ ン、(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート、エ クレチン、ナリンゲニン、ケルセチン、ダ ゼイン、ゲニステイン、ケンフェロール)、1 0 mg デキストリン、100 mM 酢酸バッファー  (pH 5.2)、粗酵素溶液)100μlにて45℃、24 hr反応 させ、HPLCにて分析した。結果を図8に示した

 受容体基質と配糖体生成物の面積比(%)は (+)-カテキン:10%、(-)-エピガロカテキン-3-O- レート:17.7%、エスクレチン:3.5%、ナリンゲニ ン:4.4%、ケルセチン:9.4%、ダイゼイン:10.7%、 ニステイン:6.8%、ケンフェロール:3.1%であっ 。

 〔実施例7:最適pH、温度の検討〕
 (+)-カテキン6mgに対して、パンセラーゼBR(ヤ クルト薬品工業) 20mg、デキストリン(ナカラ テスク)20mg、各種緩衝液 200ulを混合し、50 、6時間撹拌した。緩衝液は0.1M 酢酸バッフ ー(pH4~5.5)、0.1M リン酸バッファー(pH6~7)、0.1 M トリス塩酸バッファー(pH7.6~9)を用いた。反 応後、その遠心上清を10倍希釈しHPLC分析を行 った。結果を図9(左)に示した。

 (+)-カテキン6mgとデキストリン(ナカライ スク)20mgを0.1M 酢酸バッファー(pH5) 200ulに50 で溶かし、放冷後パンセラーゼBR(ヤクルト 品工業)20mgを混合し、20~60℃、6時間撹拌し 。反応後、その遠心上清を10倍希釈しHPLC分 を行った。結果を図9(右)に示した。

 〔実施例8:配糖体の熱安定性〕
 100μMの(+)-カテキン又は実施例4で得た4'-O-α- D-グルコピラノシル-(+)-カテキンを含む10mM  ン酸カリウムバッファー(pH7.0) 30μlを4~100℃ 各温度で0~4時間処理した後、氷中に移し、 いて0.1% TFA 60μlを加えて実施例1と同様にHP LCで分析した。各温度で処理したときの(+)-カ テキン又は4'-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテ キンの残存量を図10に示した。カテキンに比 4'-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキンは熱 対して安定であった。

 〔実施例9:配糖体の溶解性〕
 (+)-カテキン又は実施例3で得た5-O-α-D-グル ピラノシル-(+)-カテキンを10~450mg/mlの各濃度 なるよう水に添加し、激しく攪拌すること より溶解させた。その後、遠心分離により 殿物を除去し上清をHPLCにより分析し、(+)- テキン及び5-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテ キンの量を定量した。また、(-)-エピガロカ キン-3-O-ガレート又は5-O-α-D-グルコピラノシ ル-(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレートを同様 溶解性の検討を行った。その結果を図11に示 した。

 (+)-カテキンはほとんど水に溶けないのに 対し、5-O-α-D-グルコピラノシル-(+)-カテキン 少なくとも40倍以上の溶解性を示した。(-)- ピガロカテキン-3-O-ガレートも同様に配糖 化することで、著しく溶解性が向上するこ を確認した。

 〔実施例10:固定化酵素の調製〕
 固定化樹脂としてエキスプレスイオンD(Whatm an)、ダイアイオンFPHA13(三菱化学)、DEAE-トヨ ール650M(東ソー)、DEAE-セファロースCL4B(Amersha m Biosciences)、アンバーライトIRA904(オルガノ) ついて検討を行った。まず各樹脂5mlを蒸留 8mlに溶解したセルラーゼRS 240 mgに添加し 30分間撹拌した後、蒸留水で2回洗浄して凍 乾燥を行い固定化酵素とした。各固定化酵 5 mlをカラム(12 x 150 mm)につめて、カテキ 450 mgに対してデキストリン1500 mg、0.1 M 酢 酸バッファー(pH 5)15 mlを循環させ、50℃、4 間反応を行った。反応後、反応液を10倍希釈 しHPLC分析を行った。その結果を表4に示した

 〔実施例11:メチル化カテキンの配糖化〕
 (-)-エピガロカテキン-3-(3"-O-メチル)ガレー  2.7mgに対して、パンセラーゼBR 9mg、デキス トリン 9mg、0.1M酢酸バッファー(pH5)90μlを混 し、50℃、18時間撹拌した。反応後、その遠 上清を10倍希釈しHPLC分析を行った。その結 を図12に示した。

 〔実施例12:酵素剤併用による配糖化〕
 (-)-エピガロカテキン-3-O-ガレートを多く含 緑茶抽出物(商品名テアビゴ、DSM  ニュー リション ジャパン)30gに対して、パンセラ ゼBR 100g、クラスターデキストリン(江崎グ コ)100g、α-サイクロデキストリン 100g、サイ クロデキストリングルカノトランスフェラー ゼ(天野エンザイム)100mlを0.1M酢酸バッファー( pH5)1000mlに混合し、50℃、3.5時間撹拌した。反 応後、その遠心上清をセファロースLH20(Amersha m Biosciences)1000mlカラムに吸着させた。蒸留水 6000mlで洗浄後、30%エタノール6000mlでステップ ワイズ溶出を行い、濃縮・凍結乾燥して配糖 体画分13.9gを調製した。

 〔実施例13:配糖体の味に関する評価〕
 実施例12で調製した配糖体(BR-1)、単一に精 した各配糖体;5-O-α-D-グルコピラノシル-(-)- ピガロカテキン-3-O-ガレート(5G-1)、5-O-(4-O-α- D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラノシル)-(- )-エピガロカテキン-3-O-ガレート(5GG-1)、7-O-α- D-グルコピラノシル-(-)-エピガロカテキン-3-O- ガレート(7G-1)及び原料である緑茶抽出物(TVG-1 )を各200ppmとなるように蒸留水に溶解し、人 の舌を模した「人工脂質膜」電極の電位差 味の強弱として表す味センサー(味香り戦略 究所)により味質の評価を行った。その結果 を図13に示す。コントロールである緑茶抽出 (TVG-1)に比べて、各配糖体ともに渋味が著し く低い値を示し、配糖体とすることで味質が 改善された。またパネラーによる官能評価で も苦味・渋味が少なくなり飲みやすいといっ た評価結果であった。