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Title:
NOVEL CRYSTAL OF PIPERACILLIN SODIUM
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/093650
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed are a novel crystal of piperacillin sodium which has diffraction angles of 3.7°, 5.5°, 7.3°, 11.6°, 14.5° and 18.0° and a novel crystal of piperacillin sodium which has diffraction angles of 5.6°, 7.8°, 12.3°, 15.5°, 17.5°, 23.3°, 24.8° and 28.5° expressed by 2θ in the powder X-ray diffraction analysis. The crystals have excellent stability and solubility and a low water-absorbing property, is extremely easy to be handled in the production process for a medicinal substance and in the packing during the preparation process for a pharmaceutical product. A pharmaceutical preparation for injection comprising any one of the crystals is useful.

Inventors:
MOURI MASARU (JP)
NISHIKAWA DAI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/051232
Publication Date:
August 07, 2008
Filing Date:
January 29, 2008
Export Citation:
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Assignee:
TOYAMA CHEMICAL CO LTD (JP)
MOURI MASARU (JP)
NISHIKAWA DAI (JP)
International Classes:
C07D499/68; A61K9/14; B01D9/00; B01D9/02
Foreign References:
US20030028016A12003-02-06
JP2007246514A2007-09-27
JP2007099763A2007-04-19
JPH0232082A1990-02-01
US20030028016A12003-02-06
JPS5123284A1976-02-24
Other References:
See also references of EP 2128162A4
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Claims:
粉末X線回折において、2θで表される3.7、5.5、7.3、11.6、14.5及び18.0°の回折角度を有する(2S,5R,6R)-6-((2R)-2-((4-エチル-2,3-ジオキソピペラジン-1-カルボニル)アミノ)-2-フェニルアセチルアミノ)-3,3-ジメチル-7-オキソ-4-チア-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン-2-カルボン酸ナトリウム・1水和物結晶。
粉末X線回折において、2θで表される5.6、7.8、12.3、15.5、17.5、23.3、24.8及び28.5°の回折角度を有する(2S,5R,6R)-6-((2R)-2-((4-エチル-2,3-ジオキソピペラジン-1-カルボニル)アミノ)-2-フェニルアセチルアミノ)-3,3-ジメチル-7-オキソ-4-チア-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン-2-カルボン酸ナトリウム・1水和物結晶。
Description:
ピペラシリンナトリウムの新規 結晶

 本発明は、(2S,5R,6R)-6-((2R)-2-((4-エチル-2,3- オキソピペラジン-1-カルボニル)アミノ)-2- ェニルアセチルアミノ)-3,3-ジメチル-7-オキ -4-チア-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン-2-カル ン酸(以下、ピペラシリンと称する。)ナト ウムの新規な結晶に関する。

 ピペラシリン又はその塩は、広い抗菌活性 特にグラム陰性微生物、シュードモナスア ギノーサ、尋常変形菌、セラチア種、腸バ テリア及びその他の臨床上重要な嫌気性菌 対し、効果があることが知られている。例 ば、肺炎、化膿性髄膜炎及び敗血症等の治 にピペラシリンのナトリウム塩が効果的に 用されている。
 一般に薬物の注射剤としては、水をはじめ する液体に溶解、乳化又は分散させて使用 る液体注射剤、及び、使用時に液体に溶解 乳化又は分散させて使用する用時溶解型の 末注射剤が知られている。
 しかし、ピペラシリン又はその塩は、溶液 で不安定であり、ピペラシリン又はその塩 液体注射剤を製造することは難しい。
 またこれまで、ピペラシリンの粉末充填製 には、例えば、凍結乾燥末が用いられてい 。しかしながら、非晶質の固形物は、吸湿 を有し、用時溶解性に劣っていた。更に、 結乾燥による製造は、長時間を要し、製造 ストを上昇させるだけでなく、精製が困難 あるという問題があった。
 特開平2-32082号(特許文献1)及び米国特許出願 公開第2003/028016号(特許文献2)等の公報に、ピ ラシリンの塩を結晶として得たとの記載が るが、それらが結晶であることを示唆する ータは一切記載が無い。本発明者らは、上 文献の実施例を追試したが、ピペラシリン 塩の結晶を得ることはできなかった。これ で、本願記載のピペラシリンの塩の結晶は 全く知られていない。

特開平2-32082号公報

米国特許出願公開第2003/028016号明細書

特開昭51-23284号公報

 本発明は、医薬として優れた作用を有す ピペラシリンナトリウムの新規な結晶及び れを充填した注射用製剤を提供することに る。

 本発明者らは、上記問題を解決すべく、 意研究を重ねた結果、ピペラシリンナトリ ムに結晶体が存在し、その結晶体に結晶多 が存在することを見出し、本発明を完成し 。以下に、本発明を詳細に説明する。

 本発明のピペラシリンナトリウムの新規な 晶は、優れた溶解性を有し、低吸湿性であ ことから、原薬の製造時及び製剤化での充 時の取り扱いが非常に容易である。また、 れらの結晶は、濾過及び乾燥が容易で類縁 質含量が少なく、高純度であり、医薬の原 に適している。更に、これらの結晶は、安 性に優れ、非晶質よりも純度低下、外観の 色(白色度、黄色度)が少ない。
 これらの点より、本発明のピペラシリンナ リウムの新規な結晶及びそれらを充填した 射用製剤は、有用である。

 本発明において、特にことわらない限り 超臨界二酸化炭素とは、二酸化炭素の臨界 度である31.1℃以上及び臨界圧力である7.38MP a以上の超臨界状態の二酸化炭素を;アルキル トンとは、例えば、アセトン、2-ブタノン びメチルイソブチルケトンを;アルキルエス ルとは、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル び酢酸ブチルを;アルコールとは、例えば、 メタノール、エタノール、プロパノール、2- ロパノール、ブタノール、t-ブタノール、 チレングリコール及びプロピレングリコー を;エーテルとは、例えば、テトラヒドロフ ン、1,4-ジオキサン、ジメチルエーテル、ジ エチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、 t-ブチルメチルエーテル及び1,2-ジメトキシエ タンを意味する。

 本発明は、粉末X線回折において、2θで表 される3.7、5.5、7.3、11.6、14.5及び18.0°の回折 度を有するピペラシリンナトリウム・1水和 物の結晶(以下、V型結晶と称する。)並びに粉 末X線回折において、2θで表される5.6、7.8、12 .3、15.5、17.5、23.3、24.8及び28.5°の回折角度を 有するピペラシリンナトリウム・1水和物の 晶(以下、VI型結晶と称する。)に関する。こ らは、これまで知られていなかった新規な 晶である。なお、粉末X線回折による特徴的 なピークは、測定条件によって変動すること がある。そのため、本発明化合物の粉末X線 折のピークは、厳密に解されるものではな 。

 V型結晶、VI型結晶及びピペラシリンナト ウムの凍結乾燥末(以下、非晶質と称する。 )の粉末X線回折の測定結果を図6~8に示す。

粉末X線回折測定条件
使用X線:CuKα
X線検出部:2次元検出器
加電圧:40kV
加電流:40mA
ゴニオメーター: 試料水平型(2軸)
試料ステージ:5軸試料ステージ
コリメーター径:300μmφ
走査軸:2θ
走査範囲:2θ=2.5~57°
試料-検出器距離:25cm
測定時間:180秒

 本発明のV型結晶及びVI型結晶は、以下の条 において測定した赤外吸収スペクトルにお る吸収波長(cm -1 )によっても特徴付けられる新規な結晶であ 。V型結晶、VI型結晶及び非晶質の赤外吸収 ペクトル測定結果を図10~12に示す。

赤外吸収スペクトル測定条件
 日本薬局方、一般試験法、赤外吸収スペク ル全反射測定法(ATR法)に従って測定した。

 次に、本発明化合物の有用性を明らかに るため、溶解試験、吸湿性試験、純度試験 純度安定性試験、着色安定性試験及び曝光 定性試験の結果を説明する。

(1)溶解試験
 被験物質として、V型結晶(実施例1)、VI型結 (実施例2)及び非晶質(比較例1)を用いた。
 被験物質2.2gを第一硝子(株)製C2バイアル瓶 入れ、注射用水10mLを添加し、バイアル瓶を 向きに固定し、MRKインキュバスシェイカー 振とうした(振とう幅4cm、振とう速度48回/分 )。完全溶解を肉眼にて判定し、完全溶解に する時間を計測した。試験は、各々3回行い それらの平均値を溶解時間とした。
 結果を表1に示す。

 比較例1の物質の溶解時間は、5分10秒であ った。一方、実施例1及び実施例2の物質の溶 時間は、それぞれ43秒、50秒であった。V型 晶及びVI型結晶は、非晶質よりも短時間で溶 解した。

(2)吸湿性試験
 被験物質として、V型結晶(実施例1)、VI型結 (実施例2)及び非晶質(比較例1)を用いた。
 被験物質を7、11、22、33及び57%相対湿度下、 25℃で3日間放置し、日本薬局方、一般試験法 、水分測定法(カール・フィッシャー法)に従 て水分含量を測定し、重量変化を算出した 結果を表2に示す。

 実施例1及び実施例2の物質は、比較例1の 質よりも重量変化率が小さかった。V型結晶 及びVI型結晶は、非晶質よりも吸湿安定性に れていた。

(3)純度(類縁物質含量)試験
 被験物質として、V型結晶(実施例1)、VI型結 (実施例2)及び非晶質(比較例1)を用いた。
 被験物質の純度を液体クロマトグラフィー によって測定した(平成13年4月4日医薬発第34 0号厚生省医薬安全局長通知)。

副成物I及び分解物I測定条件
検出器:紫外吸光光度計
測定波長:254nm
カラム:Develosil ODS-HG-5、内径4.6×長さ150mm
カラム温度:室温
移動相:21%アセトニトリル緩衝溶液(0.05mol/L酢 、0.025mol/Lトリエチルアミン)
流量:1mL/分

副成物II測定条件
検出器:紫外吸光光度計
測定波長:254nm
カラム:Nucleosil-5C18、内径4.6×長さ150mm
カラム温度:室温
移動相:30%アセトニトリル緩衝溶液(0.05mol/L酢 、0.025mol/Lトリエチルアミン)
流量:1mL/分
 結果を表3に示す。

 実施例1及び実施例2の物質は、比較例1の 質よりも類縁物質含量が少なかった。

(4)純度安定性試験
 被験物質として、V型結晶(実施例1)、VI型結 (実施例2)及び非晶質(比較例1)を用いた。
 被験物質2.2gを第一硝子(株)製C2バイアル瓶 入れ、窒素を充填した後、60℃で保存した。 試験開始後、1週間、2週間及び4週間後に、各 被験物質の純度を高速液体クロマトグラフィ ー法によって測定した(平成13年4月4日医薬発 340号厚生省医薬安全局長通知)。
 結果を表4に示す。

 実施例1及び実施例2の物質は、比較例1の 質よりも副成物I及び分解物I含量の増加が さく、ピペラシリン含量の低下が小さかっ 。V型結晶及びVI型結晶は、非晶質よりも純 の低下が小さく、安定であった。

(5)着色安定性試験
 被験物質として、V型結晶(実施例1)、VI型結 (実施例2)及び非晶質(比較例1)を用いた。
 被験物質2.2gを第一硝子(株)製C2バイアル瓶 入れ、窒素を充填した後、60℃で保存した。 試験開始後、1週間、2週間及び4週間後に、各 被験物質の色差(δE)、白色度(W)及び黄色度(YI) を色差計により測定した。
 結果を表5に示す。

 実施例1及び実施例2の物質は、比較例1の 質よりも色差が小さく、白色度が大きく、 色度が小さかった。V型結晶及びVI型結晶は 非晶質よりも外観の色の変化が小さく、安 であった。

(6)曝光安定性試験
 被験物質として、VI型結晶(実施例2)及び非 質(比較例1)を用いた。
 被験物質2.2gを第一硝子(株)製C2バイアル瓶 入れ、窒素を充填した後、25℃でD65ランプ(FL R20S-D-EDL-D65/M)を用いて照射(120万lx・hr)した。
 試験開始後及び120万lx・hr照射後に、各被験 物質の純度を高速液体クロマトグラフィー法 によって測定した(平成13年4月4日医薬発第340 厚生労働省医薬安全局長通知)。
 結果を表6に示す。

 実施例2の物質は、比較例1の物質よりも 成物I及び総類縁物質の増加が小さく、ピペ シリン含量の低下が小さかった。VI型結晶 、非晶質よりも純度の低下が小さく、安定 あった。

 次に、本発明のV型結晶及びVI型結晶の製 法について説明する。V型結晶及びVI型結晶 、例えば、以下の製造法で製造することが きる。

[製造法1]V型結晶の製造
 粉末X線回折において、2θで表される6.1、10. 2、12.4、15.1、15.8及び18.6°の回折角度を有す ピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(以 下、III型結晶と称する。)を溶媒の存在下で 臨界二酸化炭素に接触させた後、次いで、 臨界二酸化炭素に接触させることにより、V 結晶を製造することができる。
 III型結晶は、V型結晶の重要な製造中間体で あり、後述の製造法Aにより製造することが きる。
 この製造に用いられる溶媒としては、アル ルケトン、アルキルエステル及びアルコー から選ばれる少なくとも1種の溶媒が挙げら れる。
 アルキルケトンとしては、アセトン、2-ブ ノン及びメチルイソブチルケトンが好まし 、アセトン及び2-ブタノンがより好ましい。
 アルキルエステルとしては、酢酸メチル及 酢酸エチルが好ましく、酢酸メチルがより ましい。
 アルコールとしては、メタノール、エタノ ル、プロパノール及び2-プロパノールが好 しく、エタノール、プロパノール及び2-プロ パノールがより好ましい。
 本製造法において溶媒は、超臨界二酸化炭 と混合し、混合流体として使用する。
 溶媒及び超臨界二酸化炭素の混合比は、溶 の含率が0.1~10(w/w)%が好ましく、1~5(w/w)%がよ 好ましい。

 この製造において、温度は、31.1~80℃が好ま しく、32~60℃がより好ましい。
 この製造において、圧力は、7.38MPa以上が好 ましく、7.4~50MPaがより好ましい。
 この製造において、溶媒の存在下での超臨 二酸化炭素との接触時間は、0.5~20時間が好 しく、1~5時間がより好ましい。超臨界二酸 炭素との接触時間は、0.1~1時間が好ましく 0.1~0.5時間が好ましい。

[製造法2]VI型結晶の製造
 III型結晶またはV型結晶を超臨界二酸化炭素 に接触させることにより、VI型結晶を製造す ことができる。とりわけ、III型結晶は、VI 結晶の重要な製造中間体である。
 この製造において、温度は、31.1~80℃が好ま しく、32~60℃がより好ましい。
 この製造において、圧力は、7.38MPa以上が好 ましく、7.4~50MPaがより好ましい。
 この製造において、時間は、0.5~20時間が好 しく、1~10時間がより好ましい。

 本発明のピペラシリンナトリウムの結晶 、常法にしたがって、注射剤にすることが きる。更に、本発明のピペラシリンナトリ ムの結晶は、公知のβ-ラクタマーゼ阻害剤 例えば、クラブラン酸、スルバクタム及び/ 又はタゾバクタム等と配合して、配合剤とす ることもできる。好ましいβ-ラクタマーゼ阻 害剤としては、タゾバクタムが挙げられ、そ の配合比は、特に限定されないが、タゾバク タム1に対して、ピペラシリンナトリウムの 晶4~8(重量比)が好ましい。

 次に、V型結晶及びVI型結晶の重要な製造 間体であるIII型結晶について説明する。III 結晶は、優れた溶解性を有し、低吸湿性で り、かつ、非晶質よりも粉末の嵩が小さく 帯電性が小さいことから、原薬の製造時及 製剤化での充填時の取り扱いが非常に容易 ある。また、これらの結晶は、濾過及び乾 が容易で類縁物質含量が少なく、高純度で り、医薬の原薬としても適している。

 III型結晶の有用性を明らかにするため、 解試験、吸湿性試験及び純度試験を上記と 様の試験方法で行った。溶解試験において III型結晶は、非晶質よりも短時間で溶解し 。また、吸湿性試験において、III型結晶は 非晶質よりも吸湿安定性に優れていた。さ に、純度試験おいて、III型結晶は、非晶質 りも類縁物質含量が少なかった。

 次に、III型結晶の製造法について説明す 。III型結晶は、例えば、次に示す製造法に り製造することができる。

[製造法A]III型結晶の製造
 ピペラシリン・1水和物又はその塩の溶液に 塩基を添加することにより、III型結晶を製造 することができる。
 この製造に用いられる溶媒としては、アル ルケトン、エーテル及びアルキルエステル ら選ばれる少なくとも1種の溶媒、N,N-ジメ ルホルムアミド並びに水の混合溶媒が挙げ れる。
 アルキルケトンとしては、アセトン、2-ブ ノン及びメチルイソブチルケトンが好まし 、アセトン及び2-ブタノンがより好ましい。
 エーテルとしては、テトラヒドロフラン、1 ,2-ジメトキシエタン、t-ブチルメチルエーテ 及び1,4-ジオキサンが好ましく、テトラヒド ロフラン及び1,2-ジメトキシエタンがより好 しい。
 アルキルエステルとしては、酢酸メチル及 酢酸エチルが好ましく、酢酸メチルがより ましい。
 混合溶媒としては、アルキルケトン、エー ル及びアルキルエステルから選ばれる少な とも1種の溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド びに水の混合溶媒が好ましく、アセトン、2- ブタノン、メチルイソブチルケトン、テトラ ヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、酢酸 チル及び酢酸エチルから選ばれる少なくと 1種の溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド並びに 水の混合溶媒がより好ましく、アセトン、2- タノン、テトラヒドロフラン及び酢酸メチ から選ばれる少なくとも1種の溶媒、N,N-ジ チルホルムアミド並びに水の混合溶媒が更 好ましい。
 有機溶媒及び水の混合比は、特に限定され いが、例えば、有機溶媒の含率が50~99(v/v)% 好ましく、80~99(v/v)%がより好ましく、95~99(v/v )%が更に好ましい。
 また、有機溶媒の混合比は、特に限定され いが、例えば、アルキルケトン及びN,N-ジメ チルホルムアミドの混合溶媒では、アルキル ケトンの含率が60~95(v/v)%が好ましく、70~95(v/v) %がより好ましく、80~95(v/v)%が更に好ましい。
 エーテル及びN,N-ジメチルホルムアミドの混 合溶媒では、エーテルの含率が60~95(v/v)%が好 しく、70~95(v/v)%がより好ましく、80~95(v/v)%が 更に好ましい。
 アルキルエステル及びN,N-ジメチルホルムア ミドの混合溶媒では、アルキルエステルの含 率が60~95(v/v)%が好ましく、70~95(v/v)%がより好 しく、80~95(v/v)%が更に好ましい。

 ピペラシリン・1水和物又はその塩の溶液は 、例えば、ピペラシリン・1水和物又はその をアルキルケトン、エーテル及びアルキル ステルから選ばれる少なくとも1種の溶媒、N ,N-ジメチルホルムアミド並びに水の混合溶媒 に溶解することによって調製することができ る。
 ピペラシリン・1水和物は、例えば、特開昭 51-23284号公報(特許文献3)記載の方法で製造す ことができる。
 ピペラシリンの塩としては、例えば、ナト ウム塩及びトリエチルアミン塩が挙げられ 。
 ピペラシリンナトリウムは、例えば、特開 51-23284号公報(特許文献3)記載の方法で製造 ることができる。
 溶液を調製する時の温度は、特に限定され いが、0~30℃が好ましく、5~20℃がより好ま い。

 また、ピペラシリンの塩の溶液は、例えば ピペラシリン・1水和物をアルキルケトン、 エーテル及びアルキルエステルから選ばれる 少なくとも1種の溶媒、N,N-ジメチルホルムア ド並びに水の混合溶媒に溶解し、この溶液 炭酸水素ナトリウム、2-エチルヘキサン酸 トリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸 トリウム、酪酸ナトリウム及びトリエチル ミンなどの試薬を添加することによっても 調製することができる。
 試薬の使用量は、特に限定されないが、ピ ラシリン・1水和物に対して、1当量が好ま い。
 ピペラシリンの塩の溶液を調製する時の温 は、特に限定されないが、0~30℃が好ましく 、5~20℃がより好ましい。

 このようにして調製したピペラシリン・1水 和物又はその塩の溶液に塩基を添加すること により、III型結晶を製造することができる。
 塩基としては、酢酸ナトリウム、プロピオ 酸ナトリウム、酪酸ナトリウム及び2-エチ ヘキサン酸ナトリウムが好ましく、プロピ ン酸ナトリウム及び2-エチルヘキサン酸ナト リウムがより好ましい。
 塩基の添加量は、ピペラシリン・1水和物に 対して、1当量が好ましい。
 添加及び結晶化の温度は、特に限定されな が、0~30℃が好ましく、5~20℃がより好まし 。
 結晶化を行う時の溶媒量は、特に限定され いが、ピペラシリン・1水和物又はその塩に 対して、5~20倍量が好ましい。
 この製造において、III型結晶の種晶を使用 ることもでき、その量は、特に限定されな 。

 以下、代表的な実施例を挙げて本発明を具 的に説明するが、これらの実施例は、本発 を何ら制限するものではない。
 混合流体における混合比は、重量比である

参考例1
 ピペラシリンナトリウム2.0gを2-ブタノン2mL N,N-ジメチルホルムアミド3.8mL及び水0.6mLの 合液に加え、2-ブタノン10mLを滴下した。不 物を濾去した後、5℃で24時間静置した。結 を濾取し、2-ブタノン3mL、N,N-ジメチルホル アミド0.9mL及び水0.1mLの混合液、2-ブタノン6m L、99%アセトン6mLで洗浄し、ピペラシリンナ リウム・1水和物の結晶(III型結晶)1.7gを得た これをIII型結晶の種晶とした。
含水率:3.2%
IR(ATR)1772,1715cm -1
粉末X線回折のパターンは、参考例2と一致し 。

参考例2
 ピペラシリン・1水和物300gを2-ブタノン600mL N,N-ジメチルホルムアミド180mL及び水45mLの混 合液に加えた。この溶液に10~20℃でプロピオ 酸ナトリウム53.8gを添加した。不溶物を濾 した後、2-ブタノン450mLを滴下し、次いで、I II型結晶の種晶を添加し、15~20℃で2時間撹拌 た。次いで、2-ブタノン1050mLを滴下し、15~20 ℃で1時間、5~10℃で2時間撹拌した。結晶を濾 取し、2-ブタノン291mL、N,N-ジメチルホルムア ド6mL及び水3mLの混合液、2-ブタノン300mLで洗 浄し、ピペラシリンナトリウム・1水和物の 晶(III型結晶)300gを得た。
含水率:3.3%
IR(ATR)1771,1715cm -1
 走査型電子顕微鏡写真を図1、粉末X線回折 パターンを図5、赤外吸収スペクトル(ATR法) 図9に示す。

実施例1
 フィルター付き圧力容器(内径68mm、長さ180mm )にピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶( III型結晶)50gを入れ、40℃、20MPaで混合流体(二 酸化炭素:酢酸メチル=96:4)を1時間導入(流速2.4 kg/h)した。次いで、同温度、同圧力で二酸化 素を0.5時間導入(流速2.4kg/h)した。脱圧し、 ペラシリンナトリウム・1水和物の結晶(V型 晶)50gを得た。
含水率:2.8%
IR(ATR)1772,1716cm -1
 走査型電子顕微鏡写真を図2、粉末X線回折 パターンを図6、赤外吸収スペクトル(ATR法) 図10に示す。

実施例2
 フィルター付き圧力容器(内径68mm、長さ180mm )にピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶( III型結晶)200gを入れ、40℃、40MPaで二酸化炭素 を4時間導入(流速2.4kg/h)した。脱圧し、ピペ シリンナトリウム・1水和物の結晶(VI型結晶) 200gを得た。
含水率:2.8%
IR(ATR)1764,1721cm -1
 走査型電子顕微鏡写真を図3、粉末X線回折 パターンを図7、赤外吸収スペクトル(ATR法) 図11に示す。

実施例3
 フィルター付き圧力容器(内径68mm、長さ180mm )にピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶( III型結晶)100gを入れ、60℃、20MPaで二酸化炭素 を3時間導入(流速2.4kg/h)した。脱圧し、ピペ シリンナトリウム・1水和物の結晶(VI型結晶) 100gを得た。
含水率:3.1%
IR(ATR)1764,1721cm -1
粉末X線回折のパターンは、実施例2と一致し 。

実施例4
 フィルター付き圧力容器(内径68mm、長さ180mm )にピペラシリンナトリウム・1水和物の結晶( V型結晶)30gを入れ、40℃、20MPaで二酸化炭素を 3時間導入(流速2.4kg/h)した。脱圧し、ピペラ リンナトリウム・1水和物の結晶(VI型結晶)30g を得た。
含水率:3.3%
IR(ATR)1764,1721cm -1
粉末X線回折のパターンは、実施例2と一致し 。

比較例1(凍結乾燥)
 ピペラシリン・1水和物90gを水180mLに加えた 炭酸水素ナトリウム14gを6~10℃で2時間で添 した。不溶物を濾去した後、凍結乾燥し、 ペラシリンナトリウム(非晶質)89gを得た。
含水率:0.5%
IR(ATR)1765,1713cm -1
 走査型電子顕微鏡写真を図4、粉末X線回折 パターンを図8、赤外吸収スペクトル(ATR法) 図12に示す。

比較例2(特開平2-32082号公報、実施例追試)
 ピペラシリン・1水和物1.1gをアセトン30mLに 解し、2-エチルヘキサン酸ナトリウム0.33gの 酢酸エチル10mL溶液を室温下、10分間で滴下し た。固体を濾取し、酢酸エチル20mLで洗浄し ピペラシリンナトリウム(非晶質)1.0gを得た
含水率:0.5%
IR(ATR)1764,1714cm -1
 粉末X線回折のパターンは、比較例1と類似 、明確なピークは認められなかった。

比較例3(米国特許出願公開第2003/028016号明細 、Example 1追試)
 ピペラシリン・1水和物3.0gをアセトン45mL及 メタノール0.45mLの混合液に加えた。水0.06mL 加えた後、2-エチルヘキサン酸ナトリウム0. 99gのアセトン11mL及び水0.06mLの混合溶液を室 下、30分間で滴下した。次いで、アセトン21m L及び水0.06mLの混合液を滴下し、0~3℃で2時間 拌した。固体を濾取し、アセトン20mLで洗浄 し、ピペラシリンナトリウム(非晶質)2.0gを得 た。
含水率:0.5%
IR(ATR)1764,1713cm -1
 粉末X線回折のパターンは、比較例1と類似 、明確なピークは認められなかった。

製剤例1
 実施例1で得たピペラシリンナトリウム・1 和物の結晶(V型結晶)をガラス製バイアルに 分け充填(1g/vial、2g/vial)し、減圧下でゴム栓 て密封し、更にアルミキャップで巻き締め 、ピペラシリンナトリウム・1水和物の注射 用製剤を得た。

製剤例2
 実施例2で得たピペラシリンナトリウム・1 和物の結晶(VI型結晶)をガラス製バイアルに 分け充填(1g/vial、2g/vial)し、減圧下でゴム栓 にて密封し、更にアルミキャップで巻き締め し、ピペラシリンナトリウム・1水和物の注 用製剤を得た。

製剤例3
 実施例1で得たピペラシリンナトリウム・1 和物の結晶(V型結晶)をプラスチック製ダブ バッグ(複室容器)に小分け充填(2g/bag)し、ヒ トシール溶着にて密封し、ピペラシリンナ リウム・1水和物の注射用キット製剤を得た 。

製剤例4
 実施例2で得たピペラシリンナトリウム・1 和物の結晶(VI型結晶)をプラスチック製ダブ バッグ(複室容器)に小分け充填(2g/bag)し、ヒ ートシール溶着にて密封し、ピペラシリンナ トリウム・1水和物の注射用キット製剤を得 。

製剤例5
 実施例1で得たピペラシリンナトリウム・1 和物の結晶(V型結晶)4g及びタゾバクタムナト リウム0.5gをガラス製バイアルに小分け充填(4 .5g/vial)し、減圧下でゴム栓にて密封し、更に アルミキャップで巻き締めし、ピペラシリン ナトリウム・1水和物及びタゾバクタムナト ウムの注射用製剤を得た。

製剤例6
 実施例2で得たピペラシリンナトリウム・1 和物の結晶(VI型結晶)4g及びタゾバクタムナ リウム0.5gをガラス製バイアルに小分け充填( 4.5g/vial)し、減圧下でゴム栓にて密封し、更 アルミキャップで巻き締めし、ピペラシリ ナトリウム・1水和物及びタゾバクタムナト ウムの注射用製剤を得た。

製剤例7
 実施例1で得たピペラシリンナトリウム・1 和物の結晶(V型結晶)4g及びタゾバクタムナト リウム0.5gをプラスチック製ダブルバッグ(複 容器)に小分け充填(4.5g/bag)し、ヒートシー 溶着にて密封し、ピペラシリンナトリウム 1水和物及びタゾバクタムナトリウムの注射 キット製剤を得た。

製剤例8
 実施例2で得たピペラシリンナトリウム・1 和物の結晶(VI型結晶)4g及びタゾバクタムナ リウム0.5gをプラスチック製ダブルバッグ(複 室容器)に小分け充填(4.5g/bag)し、ヒートシー 溶着にて密封し、ピペラシリンナトリウム 1水和物及びタゾバクタムナトリウムの注射 用キット製剤を得た。

ピペラシリンナトリウム・1水和物の結 晶(III型結晶)の走査型電子顕微鏡写真(倍率100 0倍)である。 ピペラシリンナトリウム・1水和物の結 晶(V型結晶)の走査型電子顕微鏡写真(倍率1000 )である。 ピペラシリンナトリウム・1水和物の結 晶(VI型結晶)の走査型電子顕微鏡写真(倍率1000 倍)である。 ピペラシリンナトリウム(非晶質)の走 型電子顕微鏡写真(倍率200倍)である。 ピペラシリンナトリウム・1水和物の結 晶(III型結晶)の粉末X線回折パターンである。 ピペラシリンナトリウム・1水和物の結 晶(V型結晶)の粉末X線回折パターンである。 ピペラシリンナトリウム・1水和物の結 晶(VI型結晶)の粉末X線回折パターンである。 ピペラシリンナトリウム(非晶質)の粉 X線回折パターンである。 ピペラシリンナトリウム・1水和物の結 晶(III型結晶)の赤外吸収スペクトル(ATR法)で る。 ピペラシリンナトリウム・1水和物の 晶(V型結晶)の赤外吸収スペクトル(ATR法)であ る。 ピペラシリンナトリウム・1水和物の 晶(VI型結晶)の赤外吸収スペクトル(ATR法)で る。 ピペラシリンナトリウム(非晶質)の赤 吸収スペクトル(ATR法)である。

 本発明のピペラシリンナトリウムの新規な 晶は、優れた溶解性を有し、低吸湿性であ ことから、原薬の製造時及び製剤化での充 時の取り扱いが非常に容易である。また、 れらの結晶は、濾過及び乾燥が容易で類縁 質含量が少なく、高純度であり、医薬の原 に適している。更に、これらの結晶は、安 性に優れ、非晶質よりも純度低下、外観の 色(白色度、黄色度)が少ない。
 これらの点より、本発明のピペラシリンナ リウムの新規な結晶及びそれらを充填した 射用製剤は、有用である。