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Patent Searching and Data


Title:
POLLEN ADSORBENT MATERIAL AND MASK
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/153090
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed are a pollen adsorbent material and a mask each of which can adsorb a pollen and a pollen allergen and has an antibacterial property effective on a cold. Specifically disclosed is a pollen adsorbent material which comprises a polymeric material comprising a fiber or a fiber assembly, has a graft side chain on the main chain of the polymeric material, and also has a triiodide ion carried on the graft side chain, wherein the graft side chain is produced by the radiation-induced graft polymerization of a monomer unit having an anion-exchange group and a monomer unit having an alkylamide group.

Inventors:
FUJIWARA KUNIO (JP)
SUGO TAKANOBU (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/060737
Publication Date:
December 18, 2008
Filing Date:
June 12, 2008
Export Citation:
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Assignee:
EBARA CORP (JP)
ENVIRONMENT PURIFICATION RES I (JP)
FUJIWARA KUNIO (JP)
SUGO TAKANOBU (JP)
International Classes:
D06M14/28; A61L9/01; A62B18/02; B01D39/16; B01J20/26; D06M11/09; D06M15/356
Domestic Patent References:
WO2000064264A12000-11-02
Foreign References:
JP2004204401A2004-07-22
JPH09149944A1997-06-10
JPH06158494A1994-06-07
Attorney, Agent or Firm:
ONO, Shinjiro et al. (Section 206New Ohtemachi Bldg.,2-1, Ohtemachi 2-chom, Chiyoda-ku Tokyo 04, JP)
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Claims:
 繊維又は繊維の集合体からなる高分子材料の主鎖上に、アニオン交換基を有するモノマーユニット及びアルキルアミド基を有するモノマーユニットの放射線グラフト重合により形成されるグラフト側鎖を有し、さらに該グラフト側鎖に三ヨウ化物イオンが担持されてなる花粉吸着材。
 前記グラフト側鎖は、アニオン交換基を有するモノマーユニット及びアルキルアミド基を有するモノマーユニットを含む共グラフト重合物である、請求項1に記載の花粉吸着材。
 前記繊維又は繊維の集合体からなる高分子材料の主鎖に結合する前記グラフト側鎖の基部から前記グラフト側鎖の自由端である末端部に向かうにつれて、相対的にアニオン交換基を有するモノマーユニットが多くなる傾斜構造を有する、請求項1又は2に記載の花粉吸着材。
 前記アニオン交換基は、第四級アンモニウム基である、請求項1~3のいずれかに記載の花粉吸着材。
 前記アルキルアミド基は、ピロリドン基又はその誘導体である、請求項1~4のいずれかに記載の花粉吸着材。
 前記繊維又は繊維の集合体からなる高分子材料は、ポリオレフィン系の材料である、請求項1~5のいずれかに記載の花粉吸着材。
 請求項1~6のいずれかに記載の花粉吸着材の上流及び/又は下流に、メルトブロー不織布を具備する花粉吸着用フィルタ。
 前記メルトブロー不織布はエレクトレット(電石)不織布である、請求項7に記載の花粉吸着用フィルタ。
 請求項1~6のいずれかに記載の花粉吸着材の上流及び/又は下流に、カチオン交換基を有する繊維又は不織布を具備する花粉吸着用フィルタ。
 前記カチオン交換基を有する繊維又は不織布は、カチオン交換基を有するモノマーユニットの放射線グラフト重合により形成されるグラフト側鎖を有する、請求項9に記載の花粉吸着用フィルタ。
 請求項1~6のいずれかに記載の花粉吸着材から構成されるフィルタを具備するマスク。
請求項7~10のいずれかに記載の花粉吸着用フィルタを具備するマスク。
Description:
花粉吸着材及びマスク

 本発明は花粉及び花粉アレルゲンを吸着 、かつ風邪にも有効な抗菌性をも具備した 粉吸着材及びマスクに関する。

 風邪と花粉症は季節的には冬から春にか て流行するため、殺菌効果を有する花粉症 マスクは潜在的なニーズを持ち、ウイルス の殺菌効果を併せ持つ花粉吸着材は有用で る。これまで花粉症用マスクに関して様々 技術開発がなされている(例えば、特許文献 1)が、花粉症の原因物質である花粉アレルゲ を効果的に吸着保持することを目的とした 粉吸着材は少なかった。花粉アレルゲンは 花粉の中に存在しており、花粉が割れた際 放出されるデンプン粒に存在するタンパク (アレルゲンタンパク質)と、花粉の外壁に 着した1~2μmの微粒子とを含む。この微粒子 オービクルと呼ばれ、塩基性タンパク質よ 構成されるものであり、喘息の原因と言わ る物質でもある。

 例えば、インフルエンザウイルスのサイ は百数十nmと小さいため、篩(ふるい)効果に よってウイルスを除去するためには、開口部 の小さい(目の細かい)材料を用いる必要があ 。しかし、そのような材料では通気抵抗が しく大きくなり、息苦しさを伴う。そのた 、風邪用マスクにおいては、篩効果よりは 咽喉の保湿性を維持することで風邪を予防 るようにしたものが多い。

 一方、マスクという形態ではないが、ウ ルスを殺菌する殺菌効果を付与したフィル 素材が開発されている(例えば、特許文献2 特許文献3)。

 特許文献1には、正電荷を有する重合体側 鎖が導入されてなる花粉吸着材及び花粉症用 マスクが記載されている。特に、放射線を利 用して、繊維材料に正電荷を有するモノマー 及び正電荷を有しない親水性のモノマーの両 方をグラフト重合したものが好適である。こ のような花粉症用マスクは、静電気を付与し たエレクトレット化材料や薬剤を含浸した不 織布材料とは異なり、長期使用や洗濯後も効 果が維持できるという特長及び咽喉の保湿効 果を有する。また、この花粉吸着材は、花粉 粒子の除去と一部のタンパク吸着保持に有効 である。また、正電荷を持つ官能基として第 四級アンモニウム基を導入することにより、 抗菌効果をも発揮させる態様が記載されてい る。しかしながら、塩基性タンパク質により 構成された(すなわち正電荷を持つ)オービク に対しては、正電荷を持つ官能基では原理 に吸着効果が望めない。

 特許文献2には、マスク材料ではなく強塩 基性アニオン交換樹脂にヨウ素を担持させて なる抗菌性フィルタが記載されている。この タイプのヨウ素担持材料は、ヨウ素と微生物 との直接接触によりヨウ素の殺菌作用が効く ので過剰なヨウ素の周辺への拡散を抑えるこ とができる。しかし、ヨウ素が担持されてい る材料表面が他の微生物や塵埃によって覆わ れてしまうと、もはやヨウ素と微生物との直 接接触が妨げられるようになり、ヨウ素の殺 菌作用が及ばず、却って生物の温床になる場 合が多い。

 特許文献3には、有機高分子材料にN-アルキ -N-ビニルアルキルアミドから誘導される単 を含む重合体側鎖を導入し、三ヨウ化物イ ンを担持させてなる強い殺菌能力をもつ有 高分子殺菌材料が記載されている。重合体 鎖上のN-アルキル-N-ビニルアルキルアミド ら誘導される単位、すなわちアルキルアミ 基と三ヨウ化物イオンの相互作用が弱いの 、徐々にヨウ素が放出(徐放)される。使用条 件にも左右されるが、放出されたヨウ素が周 辺に拡散して金属表面を腐食するので、ヨウ 素担持量や保持性及び殺菌材料の使用条件に 十分な注意が必要である。

特開2004-204401号公報

特開平11-276823号公報

国際公開WO00/064264号

 本発明の課題は、花粉及び花粉アレルゲ を吸着し、かつ風邪にも有効な抗菌性を発 する花粉吸着材及びマスクを提供すること ある。

 花粉を吸着する花粉症用マスクとしては マスク構成材料に正電荷を持たせることで 粉を吸着させることが可能である(特許文献 1)が、同時に花粉症の原因となるアレルゲン あるオービクルをも効果的に吸着させるこ は不可能であった。実際には、花粉内部に 在するタンパク質の捕捉についても考慮す 必要がある。

 さらに風邪予防にも効果を持たせるには 正電荷を付与する第四級アンモニウム基を 成するアルキル基の炭素数を調整すること よって材料自体の抗菌性を持たせることが きる(特許文献2)が、材料表面が他の微生物 塵埃によって覆われるとその抗菌性は失わ 、吸着した花粉が材料表面を覆った場合で っても同様に抗菌性が失われてしまう。

 有機高分子材料上のアルキルアミド基に ウ素(三ヨウ化物イオン)を担持させると、 ウ素の徐放によって周囲雰囲気中でも殺菌 果を発揮できる(特許文献3)が、徐放のコン ロール及び放出されたヨウ素についても考 すべき課題を有し、花粉の吸着には直接的 作用がない。

 上記のような既存技術は花粉吸着と殺菌( 抗菌)について個別の効果を求めた材料であ から、両者の効果を発揮させるためには、 れぞれの材料を組み合わせて使用すること 足りるようにも思える。しかしながら、実 にはそれぞれの効果が十分に発揮されず、 ってそれぞれの材料を製造するための工程 びコストが増加し、さらにはそれぞれの材 を重ね合わせて使用すると十分な通気性を 保することが困難であるという新たな課題 判明した。

 発明者らはこれらの状況に鑑み、鋭意研 を重ねて、単一材料上に、官能基と強塩基 基とを担持させ、さらに三ヨウ化物イオン 担持させることによって、官能基による正 荷によって負に帯電している花粉を吸着除 し、強塩基性基に担持されているヨウ素に る抗菌作用と、アルキルアミド基と三ヨウ 物イオンによるヨウ素の徐放による殺菌作 と、を兼備させ得ることを見出した。この うな材料を用いることにより、材料表面に 触した細菌等に対する殺菌効果(デマンド型 殺菌)と、材料表面に堆積した塵埃や花粉に って離間した細菌等に対する殺菌効果(徐放 殺菌)とを併せ持ち、花粉粒子の吸着だけで なく、さらに花粉粒子から放出されるアレル ゲンタンパク質吸着をも効果的に吸着するこ とができるという相乗効果があることがわか った。いずれも微小な構造上の特徴による効 果であるため、単純にマクロ的に組み合わせ ることによって、それぞれの機能をもつ材料 を配置した場合、例えばそれらを層状に重ね て使用する場合や、それぞれを細片状に一材 料に分散させて製造して使用する場合には得 られない効果である。

 具体的には、本発明によれば、繊維又は 維の集合体からなる高分子材料の主鎖上に アニオン交換基を有するモノマーユニット びアルキルアミド基を有するモノマーユニ トの放射線グラフト重合により形成される ラフト側鎖を有し、さらに該グラフト側鎖 三ヨウ化物イオンが担持されてなる花粉吸 材が提供される。

 本発明の花粉吸着材は、高分子材料の主 上にグラフト側鎖としてアニオン交換基を 入して正に帯電させることで、負に帯電し 花粉を効果的に静電吸着することができる また、アルキルアミド基をグラフト側鎖に 入することで、花粉が分解したときに放出 れるアレルゲンタンパク質をも吸着させる とができる。さらに、アニオン交換基は親 基であるため、繊維全体として親水性が上 し保湿性も高まる。さらに、三ヨウ化物イ ンが担持されているので、微生物やウイル も殺菌でき、さらに表面に花粉や塵埃が堆 した場合にもアルキルアミド基から徐放さ るヨウ素により殺菌能力を維持することが きる。

 本発明の花粉吸着材において、グラフト 鎖を成長させる主鎖となる高分子材料は、 維又は繊維の集合体からなる。具体的には リオレフィン系の材料であることが好まし 、ポリエチレン、ポリプロピレン共重合体 のポリオレフィン系の材料が好ましい。特 放射線照射による劣化が少ないポリエチレ が好ましく、結晶部が多い高密度ポリエチ ンがさらに好ましい。また、主鎖となる高 子材料はこれらの材料に限定されず、他の 成高分子材料やセルロース系繊維等の天然 分子材料であってもよい。繊維の形態とし は、単繊維であっても複合繊維であっても い。これらの繊維の集合体を好適に用いる とができ、織布、不織布のいずれも用いる とができる。

 本発明の花粉吸着材に導入されるアニオ 交換基は、第四級アンモニウム基であるこ が好ましい。第四級アンモニウム基を導入 た場合には、導入量にもよるが、花粉吸着 のゼータ電位が+15~50mVと大きいので、弱塩 性アニオン交換基を有するモノマーを使用 る場合と比べて、隣接するグラフト側鎖間 反発が強くなり、花粉のアレルゲンタンパ 質の吸着に都合がよい。特に、第四級アン ニウム基を有するモノマーとアルキルアミ 基を有するモノマーとを所定の混合比で共 ラフト重合を行うと、グラフト側鎖の基部 は非イオン性親水基であるアルキルアミド が多くなり、グラフト側鎖の末端には第四 アンモニウム基が多くなる傾斜構造が形成 れる。グラフト重合物の構造モデルとして 中央に主鎖があり、その主鎖の周囲を無数 グラフト側鎖が枝状にとりまくモデルを考 た場合、ゼータ電位が高い官能基(第四級ア モニウム基)がグラフト側鎖の外側に多いた め、隣接するグラフト側鎖同士の静電的な反 発によりグラフト側鎖全体が大きく広がり、 グラフト側鎖間に空間が生じると考えられる 。その結果、花粉から放出されたアレルゲン タンパク質は、グラフト側鎖の内側で効果的 に吸着される。内側には非イオン性親水基で あるアルキルアミド基が多いこともアレルゲ ンタンパク質の吸着に都合がよい。また、第 四級アンモニウム基はヨウ素を吸着するので 、アルキルアミド基から放出されるヨウ素が 周辺へ拡散するのを抑える効果を奏する点で も有利である。

 負に帯電する花粉を吸着することができ アニオン交換基としては、低級のアミノ基( 第二級アミノ基、第三級アミノ基)も用いる とができる。低級のアミノ基を有するモノ ーとしては、ジメチルアミノエチルメタク レート(DMAEMA)、ジエチルアミノエチルメタク リレート(DEAEMA)、ジメチルアミノプロピルア リルアミド(DMAPAA)等を用いることができる 第四級アンモニウム基を有するモノマーと ては、ビニルベンジルトリメチルアンモニ ムクロライド(VBTAC)を好ましく用いることが きる。また、ジメチルアミノプロピルアク ルアミドやジメチルアミノメタアクリルア ドなどのアミド系モノマーを第四級アンモ ウム化したモノマーも好適に利用できる。 タクリル酸グリシジルをトリメチルアミン 酸塩や硫酸塩で第四級アンモニウム化した ノマーなども利用できる。

 本発明の花粉吸着材に導入されるアルキ アミド基は、ピロリドン基又はその誘導体 あることが好ましい。アルキルアミド基を するモノマーとしては、アクリルアミド、N ,N-ジメチルアクリルアミド、イソプロピルア クリルアミド、N-ビニルピロリドン又はそれ の誘導体の中から選択して利用することが きるが、この範囲に限定されるわけではな 。この中でもN-ビニルピロリドン又はその 導体を含むモノマーが好ましい。アルキル ミド基は、三ヨウ化物イオンを弱い相互作 で吸着し、担持量にもよるが微量を徐放す ことができる。徐放されたヨウ素は、近傍 存在する微生物、ウィルス等を殺菌し、マ ク材料を衛生的な状態に維持できるという 点がある。また、アレルゲンタンパク質の 着にも有効に働く。

 本発明の花粉吸着材には、グラフト側鎖に らに三ヨウ化物イオンが担持されている。 なわち、両方のモノマーユニットに三ヨウ 物イオン(ヨウ素)が担持され、アニオン交 基と比較的強固に結合した三ヨウ化物イオ とアルキルアミド基に弱く結合した三ヨウ 物イオンからヨウ素が放出され、両方のヨ 素によって効果的に殺菌できる。三ヨウ化 イオンの担持量は、抗菌性が発揮できる量 よく、多量に担持する必要はない。通常、 持量として5~200μg/cm 2 あればよい。すなわち、5μg/cm 2 未満では抗菌性はあまり期待できず、一方、 200μg/cm 2 を越える場合にはヨウ素の徐放量が多くなり 、放出されたヨウ素による影響(着色、金属 の腐食等)が現れるおそれがある。

 本発明の花粉吸着材は、放射線グラフト 合法を用いて製造することができる。放射 グラフト重合法は既存の高分子基材にその 状を保持したまま、グラフト側鎖を導入で るので好ましい。特に、放射線照射によっ ラジカルを基材の表面ばかりでなく内部に で生成できるので、多量のグラフト側鎖を 入できる。さらにそのグラフト側鎖にはイ ン交換基等の官能基を多量に付与すること できる。高分子基材とグラフト側鎖は共有 合で強固に結合しているため、物理的、化 的に安定である。放射線の線源としては、 ンマ線、電子線、紫外線、ベータ線、アル ァ線などが利用できるが、ガンマ線や電子 が工業的に有利である。

 放射線グラフト重合の方法としては、高 子基材とモノマーの共存下に放射線を照射 る同時照射、あらかじめ高分子基材に放射 を照射した後、モノマーを接触させる前照 グラフト重合法があり、いずれの方法も利 できるが、基材と結合しない重合物の生成 が小さい前照射グラフト重合法が好ましい また、モノマーと基材との接触方法により モノマー溶液に基材を浸漬させたまま重合 行う液相グラフト重合法、モノマーの蒸気 基材を接触させて重合を行う気相グラフト 合法、基材をモノマー溶液に浸漬した後モ マー溶液から取り出して気相中で反応を行 せる含浸気相グラフト重合法などを挙げる とができるが、いずれの方法も本発明にお て用いることができる。

 本発明の花粉吸着材の製造には、アニオ 交換基を有するモノマーとアルキルアミド を有するモノマーという2種類のモノマーを 用いるため、共グラフト重合法と逐次グラフ ト重合法を用いることができる。共グラフト 重合法は、両方のモノマーを混合したモノマ ー液を調製し、それを用いてグラフト重合さ せる方法である。逐次グラフト重合法は、い ずれか一方のモノマーのみを含むモノマー液 を各々調製し、一方ずつグラフト重合させる 方法である。前者によると、共重合したグラ フト側鎖が高分子基材上に付与され、一方、 後者によると、片方のモノマーユニットから なる重合体であるグラフト側鎖が高分子基材 上に付与される構造になる。また、後者の場 合、一方のグラフト側鎖上に他方のグラフト 側鎖が付与される構造になる部分も同時に生 じる。本発明の花粉吸着材においては、ヨウ 素の吸着・徐放という相反する作用を発揮さ せるため、共グラフト重合法を用いることが 好ましい。また、共グラフト重合法では、放 射線照射とグラフト重合の2工程で共重合し グラフト側鎖を高分子基材上に付与するこ ができるので製造工程が簡略化できるとい 利点もある。

 本発明の花粉吸着材の製造においては、 鎖上にアニオン交換基を直接グラフト重合 せる方法だけでなく、アニオン交換基を導 することのできるモノマーをグラフト重合 せて、グラフト重合後にアニオン交換基を 入してもよい。アニオン交換基を導入する とのできるモノマーとしては、スチレン、 ロロメチルスチレン、ビニルピリジン、メ クリル酸グリシジル等があり、例えば、ク ロメチルスチレンをグラフト重合した後に 基材をトリメチルアミン水溶液に浸漬して 四級アンモニウム化を行うことによって、 塩基性アニオン交換基である第四級アンモ ウム基を基材に導入することができる。

 次に、三ヨウ化物イオンの担持は、アニ ン交換基を有するモノマーユニット及びア キルアミド基を有するモノマーユニットを むグラフト重合材料に、三ヨウ化物イオン 含む液、例えばヨウ素ヨウ化カリウム溶液 接触させることにより行うことができる。 ヨウ化物イオンをグラフト重合材料に担持 せる準備工程として、アニオン交換基を塩 からOH型に変換するためにグラフト重合材 をアルカリ性水溶液に浸漬後、イオン交換 等の純水ですすいでもよい。この担持方法 よって、アニオン交換基とアルキルアミド の両方に三ヨウ化物イオンを担持すること でき、さらにアニオン交換基がOH型(再生型) なるため、徐放する要素をより効果的に吸 保持できる。しかし、三ヨウ化物イオンを 和になるまで担持する必要はなく、使用条 や用途等より当業者が決定することができ 。すなわち、抗菌機能、花粉除去機能など の機能を優先するかは適宜選択することが きる。

 また、本発明の花粉吸着材は、前記繊維 は繊維の集合体からなる高分子材料の主鎖 結合する前記グラフト側鎖の基部から前記 ラフト側鎖の自由端である末端部に向かう つれて、相対的にアニオン交換基を有する ノマーユニットが多くなる傾斜構造を有す ことが好ましい。このような傾斜組成構造 共グラフト側鎖は、そのグラフト側鎖の基 に花粉のアレルゲンタンパク質を効果的に 着できるので好ましい。

 このような傾斜構造を有するグラフト側 は、アニオン交換基を有するモノマーとア キルアミド基を有するモノマーとを所定の 合比で共グラフト重合(グラフト側鎖部分が 共重合となる重合方法)を行うことにより得 ことができる。グラフト重合速度がモノマ の種類によって異なるため、グラフト重合 開始地点である主鎖と結合する基部に近い 分には重合速度の速いモノマー単位が多く まれ、一方、グラフト重合の終了地点であ グラフト側鎖の自由端である末端に近い部 には重合速度の遅いモノマー単位が多く含 れることになり、異なるモノマーユニット ら成長したグラフト側鎖が存在するという 斜構造が得られる。

 本発明の花粉吸着材においては、アルキ アミド基を有するモノマーに対するアニオ 交換基を有するモノマーの比(モル分率)を ましくは0.05~5:1(アニオン交換基を有するモ マー:アルキルアミド基を有するモノマー)の 範囲で調製した混合モノマー液を共グラフト 重合することにより得た傾斜構造が好ましい 。モル分率の値がこの範囲にある場合、グラ フト側鎖同士の正電荷による反発によって、 グラフト側鎖群全体が拡張するように作用す る。このとき、グラフト側鎖間にアレルゲン タンパク質が容易に入り込むことのできる空 間ができる。この空間の周囲には、グラフト 側鎖のアルキルアミド基が多く存在するので 、表面が親水性であるアレルゲンタンパク質 は、この空間内に効果的に吸着される。しか しながら、この値が小さくなると、例えば0.0 5未満の場合、正の電荷が小さくなるため、 粉の吸着効果が低下するとともに、グラフ 側鎖同士の正の電荷による反発が弱くなる で、グラフト側鎖が収縮し、アレルゲンタ パク質の吸着効果も低下する。一方、この が大きくなると、例えば5以上になると、正 電荷が大きく花粉の吸着力は大きくなるが 担持させた三ヨウ化物イオンのほとんどが ニオン交換基に強固に吸着するので、相対 にアルキルアミド基に吸着する三ヨウ化物 オンが減少するだけでなく、アルキルアミ 基から放出されるヨウ素もアニオン交換基 トラップされるようになり、ヨウ素徐放量 極端に小さくなる。また、アレルゲンタン ク質の吸着効果も小さくなる。

 また、本発明によれば、上記花粉吸着材 上流及び/又は下流に、メルトブロー不織布 を具備する花粉吸着用フィルタも提供される 。メルトブロー不織布はエレクトレット(電 )不織布であることが好ましい。メルトブロ 不織布は、構成する繊維径を小さくするこ ができ、通気抵抗の小さい不織布でも花粉 の粒子阻止効果が高く、花粉症マスク素材 してよく利用されている。メルトブロー不 布を本発明の花粉吸着材と併用することで さらに効果的な花粉症及び風邪向けマスク 材としてのフィルタを構成することができ 。さらにメルトブロー不織布にエレクトレ ト化処理を施し、帯電させたものはさらに 率的に花粉等の粒子阻止が可能であり、本 明の花粉吸着用フィルタに好適である。

 メルトブロー不織布を併用する場合には 上流からメルトブロー不織布、本発明の花 吸着材の順に重ねて使用することによって 本発明の花粉吸着材の効果を長期間維持す ことが可能となる。また、各材料の間に別 材料が装填されていても良い。例えば、活 炭を含む素材を最下流に配置することも可 である。それぞれ、どの機能を優先するか うかは使用環境や用途によって適宜製造に 映させることができる。

 さらに、本発明によれば、上記花粉吸着 の上流及び/又は下流に、カチオン交換基を 有する繊維又は不織布を具備する花粉吸着用 フィルタも提供される。カチオン交換基を有 する繊維又は不織布は、カチオン交換基を有 するモノマーユニットの放射線グラフト重合 により形成されるグラフト側鎖を有すること が好ましい。カチオン交換基としては、負の 電荷がより大きいスルホン酸基が好ましい。 スルホン酸基を有するモノマーとしては、ス チレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタ リルスルホン酸及びこれらの塩等を挙げるこ とができる。有機高分子基材にスルホン酸基 を有するグラフト側鎖を導入するには、スル ホン酸基を有するモノマーをグラフト重合さ せる方法と、グラフト重合させたグラフト側 鎖にスルホン酸基を導入することのできるモ ノマーをグラフト重合させ、次の工程でグラ フト側鎖をスルホン化してスルホン酸基を導 入する方法とがあり、いずれの方法を用いて も良い。グラフト重合後にスルホン酸基を導 入することができるモノマーとしては、メタ クリル酸グリシジル、スチレン、アクリロニ トリル、アクロレイン、クロロメチルスチレ ン等を挙げることができる。例えば、高分子 基材にスチレンをグラフト重合した後に、硫 酸やクロロスルホン酸を反応させてスルホン 化することによって、強酸性カチオン交換基 であるスルホン酸基をグラフト重合体側鎖上 に導入することができる。カチオン交換基と してスルホン酸基を有する不織布は、第四級 アンモニウム基を有するモノマーユニットか ら遊離してアミン臭が発生してもこれを効果 的に除去できるので好ましい。ビニルベンジ ルトリメチルアンモニウムクロライドのグラ フト重合物は第四級アンモニウム基が塩型で あるため、比較的安定であるが、突発的な使 用状況においてはアミン臭発生が問題になる 場合がある。この対策としても有効である。

 カチオン交換基を有する繊維又は不織布は に帯電するので、正に帯電している塩基性 オービクルを静電的に吸着しやすい。花粉 子に吸着している微粒子であるオービクル 、マスクの取り扱い時に受ける機械的衝撃 摩擦等、及び高湿度下や水分との接触によ 花粉破壊によって容易に剥離する。カチオ 交換基を有する繊維又は不織布を、アニオ 交換基を有する本発明の花粉吸着材とは別 に製造し、それぞれ繊維状のものを混合し 不織布とするか、あるいはそれぞれ不織布 のものを重ね合わせて複合化することで、 発明の花粉吸着材の機能を損なうことなく オービクルの吸着除去機能を付加すること できる。また、開口径の大きい不織布を利 でき、息苦しさを感じさせずにオービクル 吸入を極力抑えることができるので花粉症 マスクとしての使用に適している。マスク するためには、少なくとも装着時に息苦し を感じないようすることが重要である。プ ーツ加工などろ過面積を増加する方法も考 し、目付け10~50g/m 2 の不織布が適当である。この目付けより大き いとマスク装着時の通気抵抗が大きくなり、 息苦しさを感じさせる。この目付け以下の場 合は、通気抵抗は小さくなるが、花粉や塵埃 などのろ過機能が小さくなりマスクの機能を 果たすことができない。

 したがって、本発明によれば、上記花粉 着材から構成されるフィルタを具備するマ ク及び花粉吸着用フィルタを具備するマス も提供される。

 本発明の花粉吸着材は、花粉だけでなく 花粉粒子内部に存在するアレルゲンタンパ 質をも効果的に吸着し、かつ抗菌性を保持 ることができる。本発明の花粉吸着材にお ては、材料に接触した微生物及びウイルス だけでなく、徐放するヨウ素によって材料 傍の雰囲気にも殺菌効果を作用させること できる。本発明の花粉吸着材を具備するマ クは、花粉症用と風邪用の両者の効果を発 することができる。

 本発明の花粉吸着材をマスクとして使用 た場合、呼気は湿度が高いので、グラフト 鎖は水分を吸着し、花粉の割れを促進する このとき、花粉が割れることによってアレ ゲンタンパク質が放出されるが、アルキル ミド基の作用によってアレルゲンタンパク を効果的に吸着するので有効である。

 また、本発明の花粉吸着材を、カチオン 換基としてスルホン酸基を有する不織布と 用した場合には、アンモニアやニコチン、 ールなどタバコの悪臭成分に対しても有効 あるため、タバコ臭対策としても機能しう 複合マスクとしての機能も有する。本発明 花粉吸着材は、マスク、空気清浄機、掃除 、エアコン等のフィルタ用途として利用で るだけでなく、室内においてはカーテン、 ゅうたん、マットなど繊維製品に適用し、 粉、塵埃、ダニなどのアレルゲン吸着用材 として利用できる。さらに拡張した用途と て、台所、風呂場及びトイレの衛生対策、 臭剤としても各種使用方法が考えられる。 発明の花粉吸着材の主たる構成要素である 材上の官能基は、放射線グラフト重合によ て導入されている。すなわち、放射線グラ ト重合によるアニオン交換基、アルキルア ド基及びカチオン交換基は基材と共有結合 介して強固に結合しているため、化学的に 定である。そのため、洗浄や再生操作によ て、性能を回復することができ、繰り返し 用が可能である。

 以下、実施例により本発明を更に詳細に 明するが、本発明はこれらに限定されるも ではない。

図1は、花粉吸着実験で用いた花粉吸着 除去試験装置の概略説明図である。 図2は、脱臭性能評価実験で用いた脱臭 試験用評価装置の概略説明図である。 図3は、微粒子除去性能評価実験で用い た微粒子除去性能評価試験装置の概略説明図 である。 図4は、抗菌性評価実験で用いた流通試 験装置の概略説明図である。

[花粉吸着材の製造]
(1)三ヨウ化物イオン担持花粉吸着材1
 直径15μmでポリエチレン鞘/ポリプロピレン の複合繊維より構成された目付け25g/m 2 、厚み0.15mmの熱融着不織布(日本バイリーン )を20cm角(1.03g)に切り取り、電子線150kGyを窒 雰囲気で照射した。次に、ビニルベンジル リメチルアンモニウムクロライド(VBTAC、セ ミケミカル社製)5g(=0.024mmol)、N-ビニルピロリ ドン5g(0.045mmol)に水を加えて50gとしたモノマ 混合溶液を調製した。モノマー混合溶液100mL に、先の照射済み不織布を数分間含浸させた 後、取り出した。この不織布を内容積約500mL ガラス製反応容器に入れ、窒素雰囲気、50 にて5時間反応させた。反応容器から取り出 た不織布を純水1Lで5回洗浄した後、真空乾 を行った。重量増加率から算出したグラフ 率は76%であった。この不織布5cm角を切り取 、水酸化ナトリウム5%水溶液、100mLに30分間 漬して再生させた。洗浄後、塩化ナトリウ 1%水溶液、100mLに15分間浸漬してイオン交換 応を行わせた。この液を滴定することによ 、中性塩分解容量0.97meq/gの強塩基性アニオ 交換不織布が得られたことがわかった。ゼ タ電位は+55mVであった。

  三ヨウ化物イオンの担持
 市販の試薬0.5mol/Lのヨウ素溶液を100倍希釈 た。この希釈ヨウ素液4mLと水46mLを加え、全 50mLとした液に、上記で作製した強塩基性ア ニオン交換不織布を10分間浸漬させた。不織 は白色から褐色に変化し、ヨウ素が担持で たことを確認した。その後、水1Lを用いて3 洗浄し、乾燥した。この不織布の有効ヨウ 担持量は43μg/cm 2 であった。
(2)三ヨウ化物イオン担持花粉吸着材2
 上記(1)と同様の不織布基材に、同様の放射 照射を行った後、VBTACに代えてジメチルア ノプロピルアクリルアミドの4級化物モノマ (DMAPAA-Q、(株)KOHJIN製)とN-ビニルピロリドン 用いてグラフト重合を行った。グラフト率 61%であり、中性塩分解容量0.81meq/g、ゼータ 位+48mV、有効ヨウ素担持量が39μg/cm 2 の強塩基性アニオン交換不織布が得られた。
(3)強酸性カチオン交換不織布の製造
 上記(1)で使用した不織布と同じ不織布を利 して、同様の放射線照射を行った後、メタ リル酸グリシジル100%液に浸漬し、取り出し て、(1)と同様の容器に装填し、50℃で3時間反 応させた。アセトン洗浄後、真空乾燥を行い 、グラフト率を測定したところ、グラフト率 113%であることがわかった。次に、亜硫酸ナ リウム8%、亜硫酸水素ナトリウム4%、イソプ ピルアルコール5%、水83%の溶液に浸漬し、80 ℃で12時間反応を行いスルホン化させた。水 浄、5%塩酸による再生を30分間行った。中性 塩分解容量が2.34meq/gの強酸性カチオン交換不 織布が得られた。
(4)傾斜構造の確認
 上記(1)で使用した不織布と同じ不織布を10cm 角(約0.5g)に切り出して、電子線150kGyを窒素雰 囲気で照射した。次に、ビニルベンジルトリ メチルアンモニウムクロライド(VBTAC、セイミ ケミカル社製)5g(=0.024mol)、N-ビニルピロリド (NVP)5g(0.045mol)に水を加え50gとしたモノマー混 合溶液を調製した。このモノマー混合溶液500 mLに、先の照射済み不織布5枚を数分間含浸さ せた後、取り出した。この不織布5枚をそれ れ内容積500mLのガラス製グラフト反応容器5 に1枚ずつ入れ、窒素雰囲気、50℃で反応さ た。反応時間15分、30分、60分、120分、240分 過後にそれぞれグラフト重合された不織布 1枚ずつ取り出し、反応後の不織布を純水で 分洗浄した後、真空乾燥を行った。重量増 率からグラフト率を算出したところ、順に2 9.8%、60.4%、83.2%、102.9%及び136.1%であった。こ ら不織布を水酸化ナトリウム5%水溶液100mLに 30分間浸漬して再生させた。洗浄後、塩化ナ リウム1%水溶液、100mLに15分間浸漬してイオ 交換反応を行わせた。この液を滴定するこ により、中性塩分解容量を求めた。さらに 中性塩分解容量からVBTACのグラフト率を算 した。また、全体のグラフト率を100としてVB TAC及びNVPの存在比率を算出した。結果を表1 示す。

 グラフト重合初期には主としてNVPがグラフ 重合し、反応時間が長くなるにつれてVBTAC グラフト重合が増加していることがわかる グラフト側鎖は、高分子材料の主鎖に結合 るグラフト側鎖の基部から自由端である末 部に向かって成長するから、グラフト側鎖 基部にNVP(アルキルアミド基)が多く導入され 、末端部にVBTAC(アニオン交換基)が多く導入 れる傾斜構造が形成されているといえる。
(5)傾斜構造(アニオン交換基とアルキルアミ 基とのモル分率)
 上記(1)で使用した不織布と同じ不織布を10cm 角(約0.5g)に切り出して、電子線150kGyを窒素雰 囲気で照射した。次に、ビニルベンジルトリ メチルアンモニウムクロライド(VBTAC、セイミ ケミカル社製)とN-ビニルピロリドン(NVP)との ノマー混合溶液を約1g含浸させた後、取り した。モノマー混合溶液中のVBTACとNVPとのモ ル分率は表2に示すように変動させた。ガラ 製グラフト重合容器内窒素雰囲気下50℃で4 間反応させた後、不織布を取り出して、反 後の不織布を純水で十分洗浄した後、真空 燥を行った。

 VBTAC/NVPモル分率が小さくなるほど中性塩分 容量が小さく、ゼータ電位も小さくなる。 た、VBTAC/NVPモル分率が0.05~5の間で、中性塩 解容量0.1~1meq/g、ゼータ電位25~60mVのグラフ 重合不織布が得られた。モル分率が0.05より さい場合中性塩分解容量が小さく、ゼータ 位も小さかった。モル分率が5を超えると、 グラフト率が小さくなる(モノマー消費率も さくなる)ばかりでなく、VBTACの大半がグラ トに利用されなかった(モノマーの利用効率 悪かった)。

 微粒子、細菌類は負に帯電している場合が いので、ゼータ電位が正の大きな値ほど静 吸着力が強い。また、互いに隣接するグラ ト鎖の反発力が強いので、グラフト鎖間に 小なタンパクを吸着保持できる。しかしな ら、モル分率が5以上の場合には、グラフト 率が小さくなると同時にモノマーの利用効率 も小さくなるため、経済性に問題が生じる。
[花粉吸着実験1]
 上記(1)で作製した花粉吸着材(三ヨウ化物イ オン担持花粉吸着材1及び2)を評価用フィルタ として図1に示す花粉吸着除去試験装置を使 して花粉吸着除去試験を行った。熟成した の雄花からスギ花粉を採取した花粉を用い 。メルトブロー不織布として、平均繊維径4. 0μm、目付け40g/m 2 、厚み0.1mmの非エレクトレット不織布を用い 。真空ポンプを稼動させ、空気の吸引量を1 5L/分(フィルタ装着部の径25mmφに対し、LV0.5m/ )に調整した。次に採取した花粉試料約10mg( 粉個数として51400個相当)を約1分間かけ少量 ずつ花粉投入口から投入した。

 花粉はフィルタ評価試験装置の内壁、配 等に付着しやすいので、評価用フィルタを 着せずに花粉を投入し、下流の排気処理用 ィルタ(孔径0.45μm、47mmφ、ミリポア社製)に 捉させ、このフィルタ上に捕捉された花粉 を計測して、5回の平均値21300個を入口実効 粉数とした。

 花粉数の計測は、排気処理用フィルタを り出し、花粉染色のためカルベラ液(グリセ リン5mL、エチルアルコール10mL、純水15mL、塩 性フクシン飽和水溶液2~3滴の混合液)を用い て染色した後、実体顕微鏡で観察し、排気処 理用フィルタ上の花粉数を計測した。

 次に、評価用フィルタを装着して花粉を 入し、下流の排気処理用フィルタに捕捉さ た花粉数を計測した評価用フィルタ入口の 効花粉数と、評価用フィルタ上に捕捉した 粉数とから除去率を計算すると花粉吸着材1 及び2ともに平均99.4%であった。

比較例1

 本発明の花粉吸着材に代えて、未処理の 反不織布を使用して花粉除去試験を行った ころ、花粉除去率は93.2%と低い値であった

比較例2

 上記(1)花粉吸着材製造例で使用した三ヨ 化物イオン担持前の不織布で花粉除去試験 行ったところ、花粉除去率は99.4%と高い値 維持していた。このことから、三ヨウ化物 オンの担持に関わらず、アニオン交換基と ルキルアミド基を有するグラフト側鎖によ 花粉吸着性能が維持・発揮されることがわ る。

[花粉吸着実験2]
 図1の評価装置において、評価用フィルタ装 着部に本発明の花粉吸着材を取り付け、花粉 吸着材の下流側に上記(3)で製造した強酸性カ チオン交換不織布を取り付けて、花粉吸着実 験1と同様の実験を行った。花粉除去率は99.6% であった。

 さらに、排気処理用フィルタ部に装着し 孔径0.45μmのフィルタ(ミリポア社製)を取り し、純水100mL、次に生理食塩水100mLで洗浄し た。その液を孔径0.2μmのニュークリポアフィ ルタでろ過し、ろ紙上に捕捉された粒子を走 査型電子顕微鏡(SEM)で2000倍に拡大して観察し た。花粉由来のオービクルと呼ばれる1μm前 の粒子が視野に数個観察された。

比較例3

 強酸性カチオン交換不織布に代え、原反 織布を取り付けて、実施例2と同様の実験を 行った。花粉除去率は99.5%であったが、SEM観 による1μm前後の粒子が視野に50個以上観察 れた。

 以上より、本発明の花粉吸着材には優れ 花粉除去効果があり、本発明の花粉吸着材 強酸性カチオン交換不織布との併用により 花粉のオービクル除去にも効果があること 確認できた。

[抗菌性試験]
 上記(1)で製造した花粉吸着材1の抗菌性をJIS  L1902 「繊維製品の抗菌性試験方法」に記載 の菌液吸収法と菌転写法に準拠して調べた結 果を表3に示す。

 表3より、本発明の花粉吸着材1では、黄色 どう球菌をはじめ5種類の微生物に対し、菌 少値で4以上(菌数で4桁以上)ときわめて高い 抗菌性が認められた。

 5種類の微生物に対し、静菌活性値は4以上 減少(生菌数で4桁以上の減少)を示し、高い 菌性が認められた。また、花粉吸着材2につ ても花粉吸着材1と同様に、5種類の微生物 対し、静菌活性値は4以上の減少(生菌数で4 以上の減少)を示し、高い抗菌性が認められ 。

比較例4

 上記(1)花粉吸着材製造例で使用した原反 織布及び三ヨウ化物イオン担持前の不織布( アニオン交換基とアルキルアミド基をグラフ ト重合させたもの)を使用して、実施例3と同 の抗菌性試験を行った。いずれの不織布も 菌数の増加が2桁以上(菌数108以上)と著しく 抗菌性は認められなかった。

[脱臭性能]
 図2に示す50mmφのフィルタ装着部を有する脱 臭試験用評価装置に本発明の花粉吸着剤1、 粉吸着材1及び強酸性カチオン交換不織布を 着して、脱臭試験を行った。被験ガスはア モニア(塩基性ガス)及び酢酸(酸性ガス)とし て、ガス発生用のパーミエータを用いて行っ た。タバコ煙については、実際にタバコを燃 焼させ、二次側(出口)で臭いをかぐ官能試験 評価した。

 ガス濃度の分析は、フィルタ装着部の前 に取り付けたサンプリング口より北川式ガ 検知管(光明理化学工業社製)の先端を挿入 て吸引し、検知管の着色程度により判定し 。

 以上の結果より、本発明の花粉吸着材は塩 性ガス及び酸性ガスの高い除去効果を有す ことが確認できた。また、タバコ臭の脱臭 も効果があることがわかった。タバコ煙の 験後にフィルタを取り出すと、強酸性カチ ン交換不織布が茶褐色に変色しており、ニ チン、タール分の吸着が確認できた。

 また、本発明の花粉吸着材1を市販のマス クの内側に装着し、その上から直接口と接触 しないようガード用の不織布を重ね、マスク を試作した。6時間装着した後、取り外し、 日再使用したところ、口臭は感じられなか た。比較実験として、三ヨウ化物イオン担 前の不織布(アニオン交換基とアルキルアミ 基をグラフト重合させたもの)を取り付けた ところ、口臭が残存するため、再使用できな かった。花粉吸着材2についても同様の結果 得た。

 以上から、本発明の花粉吸着材は、殺菌 果のみならず脱臭効果にも優れていること 確認できた。

[微粒子除去性能]
メルトブロー不織布を利用する実施例
 図3に示す微粒子除去性能評価試験装置を用 い、微粒子の除去性能試験を行った。装置は 通常の化学実験室の実験台に設置し、室内に 浮遊する微粒子を評価装置に導入した。流速 はLV0.5m/秒に調整した。評価装置のフィルタ 積は9cm 2 (直径34mmφ)、評価用フィルタは、上流側から にメルトブロー不織布、花粉吸着材、カチ ン交換不織布となるように挟み込んだ。比 実験として、花粉吸着材に代えて原反不織 を用いた場合も同様に測定した。

 原反不織布のみの場合には微粒子の除去性 が低く、特に1μm未満の微粒子に対してはメ ルトブロー不織布を用いてもあまり改善が見 られない。一方、本発明の花粉吸着材の場合 には、単独でも良好な微粒子除去性能を示す が、メルトブロー不織布との組み合わせによ って、さらに改善されることがわかる。この ことから、本発明の花粉吸着材とメルトブロ ー不織布を併用することで、細菌類や塵埃な ど微粒子除去性能も格段に良くなることが確 認できる。

[抗菌性評価]
 フィルタ流通試験法での評価
 図4に示す花粉除去性能評価装置において、 排気処理用フィルタ部のミリポアフィルタの 上流側に花粉吸着材を装着した後、評価用フ ィルタ装着部に何もフィルタを装着せず、花 粉を約10mg投入し、花粉吸着材に捕捉させた この花粉吸着材を図4に示す流通試験装置に 着し、一次側に大腸菌、MRSAの所定濃度溶液 をネブライザで噴霧しながら10L/分の流量で 内空気を1ヶ月にわたり流通させた。花粉吸 材を取り出し、生理食塩水20mLを加えキャッ プをしたバイアル瓶で振とうした。この液1mL を採取し、寒天培地を用いたコロニー計数法 により菌濃度を測定した。結果を表8に示す

 花粉吸着材には花粉のほか室内空気中に含 れる雑菌が付着したにもかかわらず、生菌 観察されず、良好に殺菌されていることが かる。
[ヨウ素の徐放性評価]
 花粉吸着材1及び2を温度25℃に制御され、遮 光された恒温室に静置し、120日経過後の長期 保存性を調べたところ表9の通りであり、低 率が小さかった。

[花粉アレルゲンタンパク質吸着性能]
 花粉吸着材1(0.6m×20m)を切断し、一般住宅の4 畳半の洋室(ベッド、じゅうたんあり)のカー ンに10m、床(じゅうたん上)に10mを貼り付け 2月末から3月にかけて、花粉アレルゲン吸着 性能を調べた。

 室内の空気をエアーサンプラーで吸引し (10L/分で5時間)。045μmのフィルタに捕捉され たアレルゲン(タンパク質)を抽出し、抽出液 酵素免疫測定法(ELISA法)にて簡易測定した。 花粉吸着材1を使用しなかった場合には抽出 は濃い黄色を呈していたが、花粉吸着材1を 用した場合には、黄色の着色が認められな った。

 本発明の花粉吸着材1によるスギ花粉の花 粉症原因物質(スギ花粉アレルゲンCryj1)吸着 果が確認された。