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Patent Searching and Data


Title:
PROCESS FOR PRODUCING ADAMANTANE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/139319
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a process for producing adamantane, comprising performing an isomerization reaction in two stages using endo-tetrahydrodicyclopentadiene and/or exo-tetrahydrodicyclopentadiene as a starting material.  The production process is characterized in that, in the first-stage isomerization reaction from endo-tetrahydrodicyclopentadiene(tricyclo[5.2.1.02,6]decane) to exo-tetrahydrodicyclopentadiene(tricyclo[5.2.1.02,6]decane), an HF catalyst alone or two catalysts of an HF catalyst and a BF3 catalyst are used in the absence of a solvent while, in the second-stage isomerization reaction from exo-tetrahydrodicyclopentadiene(tricyclo[5.2.1.02,6]decane) to adamantane(tricyclo[3.3.1.13,7]decane), an HF catalyst and a BF3 catalyst are used in the absence of a solvent.

Inventors:
KAWAI TAKESHI (JP)
KITAMURA MITSUHARU (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/058633
Publication Date:
November 19, 2009
Filing Date:
May 07, 2009
Export Citation:
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Assignee:
MITSUBISHI GAS CHEMICAL CO (JP)
KAWAI TAKESHI (JP)
KITAMURA MITSUHARU (JP)
International Classes:
B01J27/12; C07C5/29; C07C13/615; C07B61/00
Foreign References:
JPS365721B1
JP2001151705A2001-06-05
JP2008019201A2008-01-31
JPS522909A1977-01-11
JPH0331182A1991-02-08
JPS5538935B21980-10-07
JP2001151705A2001-06-05
Other References:
OLAH, GEORGE A. ET AL.: "Superacid- catalyzed isomerization of endo- to exo- trimethylenenorbornane (tetrahydrodicyclopentadiene) and to adamantane", JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY, vol. 51, no. 26, 1986, pages 5410 - 5413, XP008144858
J. ORG. CHEM., vol. 51, no. 26, 1986
See also references of EP 2277843A4
Attorney, Agent or Firm:
KOBAYASHI Hiroshi et al. (JP)
Kobayashi 浩 (JP)
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Claims:
 endo-テトラヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ] デカン)及び/又はexo-テトラヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6  ] デカン)を原料として用いて異性化反応を2段階で行ってアダマンタン(トリシクロ [3.3.1.1 3,7 ] デカン)を製造する方法であって、endo-テトラヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6  ] デカン)からexo-テトラヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6  ] デカン)への一段目の異性化反応では、溶媒不存在下でHF触媒単独あるいはHF触媒およびBF 3 触媒の二種を用い、exo-テトラヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ] デカン)からアダマンタン(トリシクロ [3.3.1.1 3,7 ] デカン)への二段目の異性化反応では、溶媒不存在下でHF触媒およびBF 3 触媒を用いることを特徴とするアダマンタンの製造方法。
 前記一段目の異性化反応で得られる反応生成液中のexo-テトラヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ] デカン)の割合を、原料であるendo-テトラヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6  ] デカン)及び/又はexo-テトラヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6  ] デカン)の合計量の1重量部に対して0.9重量部以上として前記一段目の異性化反応を行う、請求項1に記載のアダマンタンの製造方法。
 前記一段目の異性化反応にHF触媒あるいはHF触媒およびBF 3 触媒の二種を用い、前記二段目の異性化反応に更にBF 3 触媒を追加する、請求項1または2に記載のアダマンタンの製造方法。
 原料であるendo-テトラヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ] デカン)及び/又はexo-テトラヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6  ] デカン)の合計量の1重量部に対して、1.5重量部以下のHF触媒と0.02~0.5重量部のBF 3 触媒を用いる、請求項1から3のいずれかに記載のアダマンタンの製造方法。
 未異性化のexo-テトラヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ] デカン)を回収して再使用する、請求項1から4のいずれかに記載のアダマンタンの製造方法。
 前記一段目の異性化反応における反応温度(T1、℃)と前記二段目の異性化反応における反応温度(T2、単位は℃)が、下記式(1)及び(2)を満たすように温度を制御する、請求項1から5のいずれかに記載のアダマンタンの製造方法。
    0≦T1≦50           (1)
    T1≦T2≦T1+30              (2)
Description:
アダマンタンの製造方法

 本発明は、溶媒不存在下で特定の触媒を使 し、原料としてendo-テトラヒドロジシクロ ンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ] デカン)及び/又はexo-テトラヒドロジシクロ ペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6  ] デカン)からアダマンタン(トリシクロ[3.3. 1.1 3,7 ]デカン)を連続して工業的に有利に製造する 法に関する。以下、endo-テトラヒドロジシ ロペンタジエン及び/又はexo-テトラヒドロジ シクロペンタジエンを単にテトラヒドロジシ クロペンタジエンと略すこともある。

 従来、テトラヒドロジシクロペンタジエン 酸触媒存在下で異性化してアダマンタンを 造する技術は多数知られていた(例えば、特 許文献1、2参照。)。特に、HF触媒およびBF 3 触媒を用いてテトラヒドロジシクロペンタジ エンを異性化してアダマンタンを製造する技 術も良く知られていた(例えば、特許文献3、4 、非特許文献1参照。)。しかしながら、HF触 やBF 3 触媒を用いる従来技術では、アダマンタン生 成量が多い場合にはアダマンタンが固体とし て析出してしまうため、アダマンタンを固体 で得るには反応器を開放せねばならず、また 反応器の開放を避ける場合には析出したアダ マンタンを溶媒に溶解し溶液にする必要があ るため、溶媒の使用が不可避であるという欠 点を有していた。

特公昭52-2909号公報

特公平03-031182号公報

特公昭55-38935号公報

特開2001-151705号公報 J.Org.Chem.,Vol.51,No.26,1986

 本発明の目的は、テトラヒドロジシクロ ンタジエンを異性化してアダマンタンを製 する際に、原料であるテトラヒドロジシク ペンタジエン以外の溶媒不存在下において アダマンタンが固体として析出させずに連 して工業的にアダマンタンを製造できる方 を提供することである。

 本発明者らは、テトラヒドロジシクロペ タジエンを原料とする異性化反応について 意研究を重ねた結果、アダマンタンの収率 制御し反応生成物を液相状態にすることに り、原料であるテトラヒドロジシクロペン ジエン以外の溶媒が不要で、かつ連続して 業的にアダマンタンを製造し得る方法を見 だし本発明に到達した。

 すなわち本発明は、以下の態様を含むもの ある。
(1)endo-テトラヒドロジシクロペンタジエン(ト リシクロ[5.2.1.0 2,6 ] デカン)及び/又はexo-テトラヒドロジシクロ ペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6  ] デカン)を原料として用いて異性化反応を 2段階で行ってアダマンタン(トリシクロ [3.3. 1.1 3,7 ] デカン)を製造する方法であって、endo-テト ラヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5 .2.1.0 2,6  ] デカン)からexo-テトラヒドロジシクロペ タジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6  ] デカン)への一段目の異性化反応では、溶 媒不存在下でHF触媒単独あるいはHF触媒およ BF 3 触媒の二種を用い、exo-テトラヒドロジシク ペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ] デカン)からアダマンタン(トリシクロ [3.3. 1.1 3,7 ] デカン)への二段目の異性化反応では、溶 不存在下でHF触媒およびBF 3 触媒を用いることを特徴とするアダマンタン の製造方法; 

(2)前記一段目の異性化反応で得られる反応生 成液中のexo-テトラヒドロジシクロペンタジ ン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ] デカン)の割合を、原料であるendo-テトラヒ ドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6  ] デカン)及び/又はexo-テトラヒドロジシク ペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6  ] デカン)の合計量の1重量部に対して0.9重 部以上として前記一段目の異性化反応を行 、上記(1)に記載のアダマンタンの製造方法;
(3)前記一段目の異性化反応にHF触媒単独ある はHF触媒およびBF 3 触媒の二種を用い、前記二段目の異性化反応 に更にBF 3 触媒を追加する、上記(1)または(2)に記載のア ダマンタンの製造方法;
(4)原料であるendo-テトラヒドロジシクロペン ジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ] デカン)及び/又はexo-テトラヒドロジシクロ ペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6  ] デカン)の合計量の1重量部に対して、1.5 量部以下のHF触媒と0.02~0.5重量部のBF 3 触媒を用いる、上記(1)から(3)のいずれかに記 載のアダマンタンの製造方法;
(5)未異性化のexo-テトラヒドロジシクロペン ジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ] デカン)を回収して再使用する、上記(1)か (4)のいずれかに記載のアダマンタンの製造 法;
(6)前記一段目の異性化反応における反応温度 (T1、℃)と前記二段目の異性化反応における 応温度(T2、℃)が、下記式(1)及び(2)を満たす うに温度を制御する、上記(1)から(5)のいず かに記載のアダマンタンの製造方法。
    0≦T1≦50           (1)
   T1≦T2≦T1+30         (2)

 本発明のアダマンタンの製造方法によれば テトラヒドロジシクペンタジエンを原料と てHF触媒単独またはHF触媒とBF 3 触媒の二種で異性化反応をする際に、先ずexo -テトラヒドロジシクロペンタジエン(以下、e xo-TCDと略すことがある)を合成しておいて、 いで、アダマンタンのexo-TCDに対する溶解度 endo-テトラヒドロジシクロペンタジエン(以 、endo-TCDと略すことがある)に対する溶解度 合計溶解度以下にアダマンタンの収率を制 することで、生成したアダマンタンを析出 せずに、連続して工業的にアダマンタンを 造することができる。上記exo-TCDの融点は-91 ℃であり、常温で液体であるため、生成した アダマンタンを溶解する溶媒としての特性が 大きいが、endo-TCDは常温で固体のためその特 は小さい。

 また、原料であるexo-TCD及び/又はendo-TCD以外 の脂肪族炭化水素などを溶媒に用いると、超 強酸のHF触媒やBF 3 触媒により該溶媒が変質する可能性があるが 、本発明では原料であるexo-TCD及び/又はendo-TC D以外の溶媒を用いない製造方法であること ら、溶媒やその変質物を除去する工程が不 となりコスト的に有利にアダマンタンを製 することができる。

図1は、アダマンタン(以下、ADMと略す とがある)のTCDに対する溶解度(mol%=ADM mol/(exo -TCD+endo-TCD+ADM)mol)×100)を測定した結果を示す ラフである。

 以下に、本発明について詳しく説明する。
 本発明は、endo-テトラヒドロジシクロペン ジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ] デカン)及び/又はexo-テトラヒドロジシクロ ペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6  ] デカン)を原料として用いて異性化反応を 2段階で行ってアダマンタン(トリシクロ [3.3. 1.1 3,7 ] デカン)を製造する方法であって、下記ス ーム1に示すように、endo-テトラヒドロジシ ロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6  ] デカン)からexo-テトラヒドロジシクロペ タジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6  ] デカン)への一段目の異性化反応では、溶 媒不存在下でHF触媒単独あるいはHF触媒およ BF 3 触媒の2種を用い、exo-テトラヒドロジシクロ ンタジエン(トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ] デカン)からアダマンタン(トリシクロ [3.3. 1.1 3,7 ] デカン)への二段目の異性化反応では、溶 不存在下でHF触媒およびBF 3 触媒を用いることを特徴とするアダマンタン の製造方法である。

 TCDには二種類の立体異性体(exo-TCD、endo-TCD )が存在するが、本発明においては、exo-TCDま はendo-TCDは単独でも、両者の混合物でも原 として使用できる。一般にTCDは、シクロペ タジエンのDiels-Alder反応物であるジシクロペ ンタジエン(DCPD)を水添反応することにより得 られるが、ジシクロペンタジエン(DCPD)の水添 反応ではendo-TCDが優先的に得られる(endo則、 キーム2)。

 しかしながら、endo-TCDの融点は78℃と高く、 100%のendo-TCDを液相状態で取り扱うには温度を 融点以上に保持しなければならない。一方、 HF触媒単独あるいはHF触媒およびBF 3 触媒の二種を用いるとendo-TCDから融点の低いe xo-TCD(-91℃)に異性化することが分かっており この異性化反応を充分に進行させた場合、 応液中に残存するTCDは殆どexo-TCDである。こ こで言う充分な反応進行とは、TCDが高い転化 率(endo-TCD→exo-TCDへの異性化や、TCDから別な のへの変化)を有することやアダマンタンが い収率で得られることを指すものではなく 本発明における異性化反応条件において充 な滞留時間を経て、その条件下でのアダマ タン収率が、当該条件で想定しうるアダマ タン収率に対して高い割合となる状態を指 ものである。

 本発明は、endo-TCDからexo-TCDに殆ど異性化 せ、かつ、アダマンタンの収率を制御する とで2段階の異性化反応を液相状態にするこ とを達成し、工業的に連続してアダマンタン を製造することを可能とした。endo-TCDからexo- TCDに殆ど異性化させるとは、具体的には、前 記一段目の異性化反応で得られる反応生成液 中のexo- TCDの割合を、原料であるendo- TCD及 /又はexo- TCDの合計量の1重量部に対して0.9重 量部以上とすることである。

 反応条件によってはendo-TCDがexo-TCDに異性 する前にexo-TCDからアダマンタンが生成して しまい、反応生成液中にendo-TCDが多く残存し 液相状態にならないことがあるが(endo-TCDの 点は78℃であり、常温では固体)、本発明は その様な異性化反応の進行をコントロール きることに技術的特徴がある。また、反応 成液中には融点の低いexo-TCDが溶媒として有 効に作用するため、反応生成液中のexo-TCDを 収し、再使用すれば、endo-TCDを新たな原料と して供給する場合にも当該反応温度で生成す るアダマンタンが溶解するように、exo-TCDとen do-TCDの比率を制御する必要がある。すなわち 当該反応温度が低いほど、またendo-TCDの共存 が多いほど、1段目の異性化反応によりexo-TC Dを増やすことにより、反応生成液を液相状 に保持することができる。更に未異性化のex o-TCDを回収し、再使用することにより、アダ ンタンの実質収率(アダマンタンの収率を、 exo-TCDに対するアダマンタンの溶解度以下(例 ば、15~20mlo%)に抑制し、回収exo-TCDの異性化 応から得られるアダマンタンの収率を考慮 ると、実質収率≒アダマンタン選択率とな )を高くすることができる。

 上記スキーム1と2に示されるように、異 化反応はendo- TCD→exo- TCD→アダマンタンの 序で起こり、endo- TCD→アダマンタンへの異 性化反応は起こらない。アダマンタンを溶解 する能力の高いexo- TCDが無くなり、アダマン タンを溶解する能力の低いendo- TCDが残存す 共存状態は、アダマンタンが固体として析 するトラブルの危険性が高くなる。従って 先ず一段目の異性化反応である endo- TCD→ex o- TCD を完結(exo- TCDの割合が 0.9重量部以上 )させた後、exo- TCD→アダマンタンへの二段 の異性化反応を行えば、アダマンタンの固 析出のトラブルは回避できるというのが、 発明の技術的特徴である。

 反応温度は高くし過ぎるとアダマンタンへ 異性化反応速度が上がり、アダマンタンが く生成するため固体として析出してしまう 従って、反応温度は2段階の異性化反応を液 相状態に保つと同時にアダマンタンの収率を 抑えることが必要である。2段階の異性化反 を液相状態に保つにはアダマンタンの収率 抑えることが必要であるが、一段目の異性 工程は主にendo-TCDを殆どexo-TCDにする工程、 段目の異性化工程は主にexo-TCDをアダマンタ に異性化する工程である。具体的には、一 目の工程の反応温度(T1)は0~50℃が好ましく より好ましくは20~40℃である。二段目の工程 の反応温度(T2)は一段目の工程の反応温度(T1) りも0~30℃高いことが好ましい。
    0≦T1≦50           (1)
    T1≦T2≦T1+30              (2)
 二段目の工程の反応温度を等しく或いは0~30 ℃高くすることで、反応速度が上がりアダマ ンタンの収率が向上する。一方、二段目の工 程の反応温度を高くし過ぎるとアダマンタン が固体として析出すると同時に、析出を防止 するためには反応時間(滞留時間)を短く制御 なければならず、工業的には困難であり、 用的でない。またアダマンタンの選択性も くなることがあるため好ましくない。

 本発明の反応時間(滞留時間)は、1~15時間 好ましく、3~12時間がより好ましい。この範 囲より短い場合は、endo-TCDからexo-TCDの異性化 反応の進行が不十分となるため、アダマンタ ンの収率を上げることができない。また、こ の範囲より長い場合は、アダマンタンの収率 が上がり、アダマンタンが固体として析出す るトラブルの危険性が高くなる。

 HF触媒は、原料であるendo-TCD及び/又はexo-T CDの合計量の1重量部に対して1.5重量部以下の 範囲で用いることが好ましく、0.3~1.2重量部 範囲で用いることがより好ましい。HF触媒を 1.5重量部より多く用いるとアダマンタンが収 率良く得られるが、アダマンタンが固体とし て析出する危険性が増大し、さらにHF触媒の 離と回収にコストが掛かるため工業的に実 的でない。

 また、BF 3 触媒は、原料であるendo-TCD及び/又はexo-TCDの 計量の1重量部に対して0.02~0.5重量部の範囲 用いることが好ましく、0.05~0.3重量部の範囲 で用いることがより好ましい。BF 3 触媒を0.5重量部より多く用いるとアダマンタ ンの収率が向上するが、アダマンタンが固体 として析出する危険性が増大し、さらに高沸 点化合物も多く副生するので、分離精製工程 のコストを考えると工業的に実用的でない。

 本発明においては、前記一段目の異性化反 にHF触媒単独あるいはHF触媒およびBF 3 触媒の二種を用い、前記二段目の異性化反応 に更にBF 3 触媒を追加して使用することが好ましい。1 目の異性化反応に使用するHF触媒は、そのま ま二段目の異性化反応でもHF触媒として作用 る。

 本発明においては、分離と精製工程で得 れた未異性化のexo-TCDを反応器へ再度供給す る設備があることが好ましい。

 また、異性化反応終了後、静置することで ダマンタンを含む有機層と副生する高沸点 合物を含むHF・BF 3 触媒層との2層に分離することから、液々分 する設備があることがより好ましい。また 液々分離せずに、そのままヘプタン等の炭 水素類を還流させた蒸留塔に供給して、塔 よりHF・BF 3 触媒、塔低よりアダマンタンを含む有機成分 を回収してもよい。

 本発明においては、2段階の異性化反応を 液相状態にするため、2段階の異性化反応終 後のアダマンタン収率(生成量)はexo-TCDの溶 度とendo-TCDの溶解度の合計量以下にすること が好ましい。

 本発明者らは、アダマンタンのexo-TCDに対す るADM溶解度(S exo)は、exo-TCDが高濃度ほど高い ことを実験で確認し(図1参照)、反応温度(T、 位は℃)と下記式(3)を満たすことを見いだし た。
       S exo = 0.169×T+7.4      (3)
 またendo-TCDに対するADM溶解度(S endo)は、反 温度(T、単位は℃)と下記式(4)を満たし、か 、式(3)と加成性が成り立つことを見いだし 。すなわち、合計ADM溶解度=ADM溶解度(S exo)+ ADM溶解度(S endo)、となる。
       S endo = 0.071×T+3.6     (4)

 具体的には、TCD中のexo-TCDが99%、endo-TCDが1 %の混合TCD(以下exo-TCD(99)と略す)の純度80%に対 80℃においては合計ADM溶解度20mol%、50℃にお いてはexo-TCD(99)の純度84%に対し合計ADM溶解度1 6mol%、25℃においてはexo-TCD(99)の純度89%に対し 合計ADM溶解度11mol%であり、またTCD中のexo-TCD 71%, endo-TCDが29%の混合TCD(以下exo-TCD(71)と略す )の純度81.5%に対し80℃においては合計ADM溶解 18.5mol%、50℃においてはexo-TCD(71)の純度86.1% 対し合計ADM溶解度13.9mol%、25℃においてはexo- TCD(71)の純度90.4%に対し合計ADM溶解度9.6mol%で るため、この合計ADM溶解度以下にアダマン ン収率(生成量)を制御することが好ましい。

 反応生成液は、アダマンタン、exo-TCD、endo-T CD、副生の高沸点化合物、およびHF触媒とBF 3 触媒を含む液体の混合物として得られる。先 に述べた様に、反応生成液は静置するとアダ マンタンを含む有機層と副生する高沸点化合 物を含むHF・BF 3 触媒層の2層に分離するので、液々分離によ 有機層を取得することができる。分離したHF ・BF 3 触媒層は、炭化水素類(例えばベンゼン、ト エン、ヘキサン、ヘプタン等)を還流させた 留塔に供給することにより熱的に回収する とができる。その場合、塔頂よりBF 3 触媒、塔頂の凝縮器よりHF触媒が得られる。

 また同様に、反応生成液の全量を、炭化 素類を還流させた蒸留塔に供給することで アダマンタンを含む有機成分が得られる。 の場合には、塔底部より炭化水素類を含む 液が得られる。

 得られたアダマンタンを含む有機成分ま は有機層は、中和・水洗後、アダマンタン 含む溶液とし、必要であれば溶媒留去後、 却晶析等の常套的手段によりアダマンタン 精製し、分離・取得することができる。

 次に実施例によって、本発明を具体的に説 する。なお、本発明は、これらの実施例に り制限されるものではない。反応生成物を 下の条件にてガスクロマトグラフィー装置( GC装置)で分析した。
 装置:GC-17A(SHIMADZU株式会社製)
 使用カラム:HR-1(信和化工株式会社製)
 分析条件:Injection Temp. 310℃   Detector Temp.  310℃
 カラム温度:100℃、0分保持→5℃/分で320℃ま で昇温→320℃、0分保持
 検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
 方法:反応生成液を純水(自社調達品)及びヘ タン(試薬:和光純薬工業株式会社製)の入っ ポリプロピレン製受器に抜き出した。その 、水の量は仕込んだHF触媒に対して充分な であればよく、ヘプタンは仕込んだTCDの3倍 量を目安とした。その後、静置し液々分離 ることでアダマンタン含有の有機層を分取 、2%水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリ ムは試薬:和光純薬工業株式会社製、純水は 自社調達品)で1回、温水で2回洗浄した。得ら れた有機層1gに対し、内標のジベンジル(試薬 :和光純薬工業株式会社製)0.1gを加えGC注入し 。TCDの転化率、アダマンタンの収率および ダマンタンの選択率は、以下の計算式によ 求めた。
 TCD転化率(mol%)=100-未反応TCD(exo-TCD +endo-TCD)
 アダマンタン収率(mol%)=アダマンタン生成量
 アダマンタン選択率(mol%)=アダマンタン収率 /TCD転化率×100 

(実施例1)
 電磁攪拌装置、加熱装置、ガス及び液供給 、反応物排出口を備えた内容積0.5Lのハステ ロイ製オートクレーブ2台を接続した連続2段 反応器を用いてTCDの異性化反応を行った。1 段目の反応器にHF触媒(試薬:森田化学工業株 会社製)300gを仕込み、2段目の反応器にHF触媒 を300g仕込んだ。加熱装置で1段目の反応器を3 0℃まで、2段目の反応器を50℃まで昇温した ついで1段目の反応器にexo/endo異性体の比が0. 285、純度99.2%のTCD(自社調達品)を2.80g/min.の割 で、HF触媒を2.06g/min.の割合で、BF 3 触媒(試薬:ステラケミファ株式会社製)を0.14g/ minの割合で別々に供給した。原料の1重量部 TCDに対して、0.74重量部のHF触媒と0.05重量部 BF 3 触媒に相当し、平均滞留時間は1時間であっ 。
 ついで1段目の反応器中の液面を一定に保ち つつ、1段目の反応器より2段目の反応器への 移送を開始し、同時に2段目の反応器中の液 面を一定に保つように流量を制御した。1段 の反応器への原料と触媒供給を始めてから4. 5時間後(平均滞留時間の4.5倍に相当)にサンプ リングを実施した。1段目の反応器における 応生成液の組成は、exo-TCDが86 mol%、アダマ タンが9 mol%、endo-TCDが0.5 mol%であった。原 の1重量部のTCDに対して、exo-TCD は0.99重量部 、86/(86+0.5)=0.99となり、endo-TCD は0.006重量部 0.5/(86+0.5)=0.006となった。また2段目の反応器 おける反応生成液の組成は、exo-TCDが75 mol% アダマンタン が15.5 mol%、endo-TCDが0.5 mol% あった。原料の1重量部のTCDに対して、exo-TCD  は0.99重量部、75/(75+0.5)=0.99となり、endo-TCD  0.007重量部、0.5/(75+0.5)=0.007となった。従っ 、2段連続異性化反応後の反応生成液の組成 ら、TCD転化率は、100-(75+0.5)=24.5 mol%であり アダマンタン収率15.5 mol%、アダマンタン選 率は15.5/24.5×100=63.2 mol%であった。

(実施例2)
 endo-TCDであって純度99.5%のTCDを原料に用いた 以外は、実施例1と同様の操作を行った。1段 の反応器における反応生成液の組成は、exo- TCDが87 mol%、アダマンタンが9 mol%、endo-TCDが0 .8mol%であった。原料の1重量部のTCDに対して exo-TCD は0.99重量部、87/(87+0.8)=0.99であり、end o-TCD は0.009重量部、0.8/(87+0.8)=0.009であった。 また2段目の反応器における反応生成液の組 は、exo-TCDが75 mol%、アダマンタン が15.2mol% endo-TCDが0.5 mol%であった。原料の1重量部のT CDに対して、exo-TCD は0.99重量部、75/(75+0.5)=0.9 9であり、endo-TCD は0.007重量部、0.5/(75+0.5)=0.00 7であった。従って、2段連続異性化反応後の 応生成液の組成から、TCD転化率は、100-(75+0. 5)=24.5 mol%、アダマンタン収率15.2 mol%、アダ ンタン選択率は、15.2/24.5×100=62.0 mol%であっ た。

(実施例3)
 exo-TCDであって純度99.4%のTCDを原料に用いた 外は、実施例1と同様の操作を行った。1段 の反応器における反応生成液の組成は、exo-T CDが86 mol%、アダマンタンが10 mol%であった。 原料の1重量部のTCDに対して、exo-TCD は1.00重 部、86/(86+0)=1.00であった。また2段目の反応 における反応生成液の組成は、exo-TCDが75 mo l%、アダマンタン が15.6mol%であった。従って 、2段連続異性化反応後の反応生成液の組成 ら、TCD転化率は、100-75=25 mol%、 アダマンタ ン収率15.2 mol%、アダマンタン選択率は、15.2/ 25×100=60.8mol%であった。

(実施例4)
 回収したexo-TCDであって純度98.0%のTCDを原料 用いた以外は、実施例1と同様の操作を行っ た。1段目の反応器における反応生成液の組 は、exo-TCDが84mol%、アダマンタンが10 mol%で った。原料の1重量部のTCDに対して、exo-TCD  1.00重量部、84/(84+0)=1.00であった。また2段目 の反応器における反応生成液の組成は、exo-TC Dが72 mol%、アダマンタン が15.4mol%であった 従って、2段連続異性化反応後の反応生成液 組成から、TCD転化率は、100-72=28mol%、アダマ ンタン収率は15.2 mol%、アダマンタン選択率 、15.2/28×100=54.3mol%であった。

(実施例5)
 実施例1と同様な設備を用いて異性化反応を 行った。1段目の反応器にHF触媒(試薬:森田化 工業株式会社製)300gを仕込み、2段目の反応 にHF触媒を300g仕込んだ。加熱装置で1段目の 反応器を50℃まで、2段目の反応器を50℃まで 温した。ついで1段目の反応器にexo/endo異性 の比が0.285、純度99.2%のTCD(自社調達品)を0.11 g/min.の割合で、HF触媒を0.50g/min.の割合で供給 した。原料の1重量部のTCDに対して、4.4重量 のHF触媒に相当し、平均滞留時間は8.2時間で あった。
 ついで1段目の反応器中の液面を一定に保ち つつ、1段目の反応器より2段目の反応器への 移送を開始し、BF 3  触媒(試薬:ステラケミファ株式会社製)を0.01 g/minの割合で供給(原料の1重量部のTCDに対し 、0.10重量部のBF 3 に相当、平均滞留時間は8.2時間)し、同時に2 目の反応器中の液面を一定に保つように流 を制御した。1段目の反応器への原料と触媒 供給を始めてから12時間後(平均滞留時間8.2時 間の1.5倍)にサンプリングを実施したところ 1段目の反応器における反応生成液の組成は exo-TCDが86 mol%、アダマンタンが0.3 mol%、endo -TCDが8.9 mol%であった。原料の1重量部のTCDに して、exo-TCD は0.91重量部、86/(86+8.9)=0.91で り、endo-TCD は0.094重量部、8.9/(86+8.9)=0.094で った。また、2段目の反応器における反応生 液の組成は、exo-TCDが76 mol%、アダマンタン が14.9mol%、endo-TCDが0.5 mol%であった。原料の1 重量部のTCDに対して、exo-TCD は0.99重量部、76 /(76+0.5)=0.99であり、endo-TCD は0.007重量部、0.5/ (76+0.5)=0.007であった。従って、2段連続異性化 反応後の反応生成液の組成から、TCD転化率は 、100-(76+0.5)=23.5 mol%、アダマンタン収率は14.9  mol%、アダマンタン選択率は、14.9/23.5×100=63. 4 mol%であった。

(比較例1)
 1段目の反応器は使用せず、2段目の反応器 みを使用して、50℃、1段で異性化反応を行 た以外は、実施例1と同様の条件で操作を行 た。その結果、反応器への原料と触媒供給 始めてから1時間後に2段目の反応器出口が まった。そこで反応器出口を開放し反応生 液を分析したところ、反応生成液の組成は exo-TCDが45.0 mol%、アダマンタン収率 が15.0mol %、endo-TCDが30.5mol%であった。前記式(3)及び(4) ら算出されるアダマンタンのTCDに対する合 ADM溶解度は12.3mol%であるため、アダマンタ 収率(生成量)がその溶解度を超えたことによ りアダマンタンが固体として析出し、詰まっ たことが分かった。