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Title:
STEEL FOR HEAT TREATMENT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/154235
Kind Code:
A1
Abstract:
A steel for heat treatment, which exhibits high strength and high toughness even when the heat treatment (such as quenching and tempering) of the steel is conducted under conventional conditions in an after stage.  The steel for heat treatment contains C: 0.10 to 0.70mass%, Mn: 0.1 to 3.0mass%, Al: 0.005 to 2.0mass%, P: 0.050mass% or less, S: 0.50mass% or less, O: 0.0030mass% or less, N: 0.0200mass% or less, and one or more selected from the group consisting of Ti: 0.30mass% or less and Nb: 0.30mass% or less with the balance being Fe and unavoidable impurities, and has a TH value of 1.0 or above as calculated according to the formula: ({Ti}/48 + {Nb}/93) × 104 and grain diameters of 10μm or below.  {Ti} and {Nb} refer respectively to the contents of Ti and Nb in precipitates of 5 to 100nm in size as determined about their respective extraction residues.

Inventors:
HATANO HITOSHI
KOCHI TAKUYA
Application Number:
PCT/JP2009/061044
Publication Date:
December 23, 2009
Filing Date:
June 17, 2009
Export Citation:
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Assignee:
KOBE STEEL LTD (JP)
HATANO HITOSHI
KOCHI TAKUYA
International Classes:
C22C38/00; C22C38/60; C21D8/02
Domestic Patent References:
WO1999005333A11999-02-04
Foreign References:
JP2004183065A2004-07-02
JPH11181542A1999-07-06
JP2005240175A2005-09-08
JP2006161144A2006-06-22
JP2006307270A2006-11-09
JP2006161142A2006-06-22
Attorney, Agent or Firm:
OGURI Shohei et al. (JP)
Shohei Oguri (JP)
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Claims:
 C:0.10~0.70質量%、
 Mn:0.1~3.0質量%、
 Al:0.005~2.0質量%、
 P:0.050質量%以下、
 S:0.50質量%以下、
 O:0.0030質量%以下、及び
 N:0.0200質量%以下を含み、
 Ti:0.30質量%以下、及びNb:0.30質量%以下よりなる群から選択される1種以上を含み、
 残部がFe及び不可避的不純物からなり、
 下記式1によって算出される値THが1.0以上であり、
 結晶粒径が10μm以下である
 ことを特徴とする熱処理用鋼。
  TH=({Ti}/48+{Nb}/93)×10 4  ・・・(式1)
(但し、前記式1において、{Ti}及び{Nb}は、5~100nmの析出物中に含まれるTi及びNbの含有量(質量%)を示し、それぞれの抽出残渣で測定した量を示す。)
 前記組成に加えて、以下の(a)~(e)群の少なくとも1群を含む請求項1に記載の熱処理用鋼。
(a) Ni:3.0質量%以下、Cu:3.0質量%以下、及びCr:3.0質量%以下よりなる群から選択される1種以上、
(b) Ca:0.0050質量%以下、Mg:0.0050質量%以下、及びREM:0.020質量%以下よりなる群から選択される1種以上、
(c) V:1.0質量%以下、Zr:0.10質量%以下、Ta:0.10質量%以下、及びHf:0.10質量%以下よりなる群から選択される1種以上、
(d) Si:3.0質量%以下、
(e) Mo:2.0質量%以下、及びB:0.0150質量%以下よりなる群から選択される1種以上。
 硬さがHv450以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱処理用鋼。
 硬さがHv450以下であることを特徴とする請求項2に記載の熱処理用鋼。
Description:
熱処理用鋼

 本発明は、焼入れや焼戻しなどの熱処理 施した後に自動車などの輸送機や産業機械 どに用いられる構造材を製造するための熱 理用鋼に関し、特に、前記した熱処理を施 た後に高強度、且つ高靭性を有する熱処理 鋼に関する。

 従来、自動車などの輸送機や産業機械な に用いられる構造材の強度、靭性は、鉄鋼 ーカーから納入された熱処理用鋼をプレス 形等することによって所定の形状に成形し 後、焼入れや焼戻しなどの熱処理を行うこ により、確保されている。特に高強度で高 性が求められる場合には、旧オーステナイ (γ)粒径が5μm以下となるように制御するこ が提案されている。

 例えば、特許文献1には、C:0.25~0.35質量%、 Si:0.5質量%以下、Mn:0.2~1.0質量%、P:0.01質量%以 、S:0.01質量%以下、Al:0.01~0.1質量%、N:0.002~0.01 量%、Ni:7~12質量%を含有し、残部Fe及び不可 不純物からなるか、又は、C:0.25~0.35質量%、Si :0.5質量%以下、Mn:0.2~1.0質量%、P:0.01質量%以下 S:0.01質量%以下、Al:0.01~0.1質量%、N:0.002~0.01質 量%、Ni:7~12質量%を含有し、さらにCr:0.1~1.0質 %、Mo:0.01~1質量%、Ti:0.01~0.05質量%、Nb:0.01~0.05 量%、B:0.0003~0.005質量%のうち一種あるいは二 以上を含有し、残部Fe及び不可避不純物か なる高強度鋼部材が記載されている。この 強度鋼部材は、旧オーステナイト粒径5μm以 の微細粒を有し、引張強さ1400MPa以上であり 、耐遅れ破壊特性に優れている。

 そして、特許文献1には、鋼を850℃から100 0℃に加熱して熱間加工を行い、700℃以下Ms点 以上の温度域で減面率20~50質量%の仕上げ加工 をして直ちに冷却する工程と、その後の熱処 理でAc3点以上900℃以下に急速加熱して直ちに 冷却する工程と、が記載されている。

 また例えば、特許文献2には、特定の成分組 成と特定条件で焼入れ及び焼戻しされ、オー ステナイト粒度がASTM No.で8.5以上である、耐 遅れ破壊性に優れた高強度鋼が記載されてい る。
 そして、特許文献2には、Ac3点以上に加熱後 焼入れされ、その後580℃以上で且つAc1点以下 の温度でP LN ≧16.8×10 3 を満たす条件で焼戻す旨が記載されている。

 そして例えば、特許文献3には、特定の成分 組成から主に焼入れ焼戻しを行って得られる 焼戻しマルテンサイト組織を有し、このマル テンサイト結晶内の炭化物形状が平均アスペ クト比で3.0以上であるばね用鋼線が記載され ている。
 そして、特許文献3には、焼入れ時及び焼戻 し時の加熱を50~2000℃/sの昇温速度で行い、保 持時間を0.5~30sで行う旨が記載されている。

日本国公開特許公報:11-80903

日本国公開特許公報:61-223168

日本国公開特許公報:2002-194496

 しかしながら、特許文献1に記載の技術は 、熱処理用鋼の合金元素の添加量を多くする 必要があるため高コストになり、製造プロセ スが複雑になるという問題を有する。

 特許文献2に記載の技術は、伸線、冷間圧 延、冷間鍛造などの加工や、焼入れ及び焼戻 しを特定条件で行わなければならないため、 製造プロセスが複雑になるという問題を有す る。

 特許文献3に記載の技術は、昇温速度を速 くし、保持時間を短くする必要があるため、 製造プロセスが複雑になるという問題を有す る。

 そして、特許文献1~3に記載の技術はいず も、熱間圧延を終えた後に特定条件の焼入 や焼戻しを行う必要がある。つまり、顧客 納入された後、顧客の工場でそのような特 条件の焼入れや焼戻しを行う必要があるた 、高強度且つ高靭性を有する熱処理用鋼を 造するのが困難であるという問題がある。

 本発明は前記問題に鑑みてなされたもの あり、本発明の目的は、簡単な製造プロセ で、合金元素の添加量を多くせず、後の工 で通常行われる条件で焼入れや焼戻しなど 熱処理を行っても、旧オーステナイト粒径 5μm以下であり、高強度、且つ高靭性を有す る熱処理用鋼を提供することである。

 本発明者らは、焼入れ前組織を微細化す ことでオーステナイト(γ)の逆変態核生成を 多くすると共に、微細で安定な析出物を予め 析出させておくことでγに変態後の結晶粒の 長を抑制することが可能であることを見出 、本発明を完成させた。

(1)前記課題を解決した本発明に係る熱処理用 鋼は、C:0.10~0.70質量%、Mn:0.1~3.0質量%、Al:0.005~2 .0質量%、P:0.050質量%以下、S:0.50質量%以下、O:0 .0030質量%以下、及びN:0.0200質量%以下を含み、 Ti:0.30質量%以下、及びNb:0.30質量%以下よりな 群から選択される1種以上を含み、残部がFe び不可避的不純物からなり、下記式1によっ 算出される値THが1.0以上であり、結晶粒径 10μm以下であることを特徴とする。
  TH=({Ti}/48+{Nb}/93)×10 4  ・・・(式1)
(但し、前記式1において、{Ti}及び{Nb}は、5~100 nmの析出物中に含まれるTi及びNbの含有量(質 %)を示し、それぞれの抽出残渣で測定した量 を示す。)

 本発明に係る熱処理用鋼は、このように特 の合金組成と、特定の大きさ以下の結晶粒 と、を有し、且つ特定の関係式を満たして 微細で安定な析出物を予め析出させておく とにより、焼入れ前の組織を微細化するこ ができる。これにより、オーステナイト(γ) の逆変態核生成を多くし、且つ微細で安定な 析出物を予め析出させておくことができ、γ 変態後のγ粒の成長を抑制することが可能 なる。つまり、γ粒を微細なまま保持させて おくことが可能となるので破壊の起点となり 難くすることができる。
 この結果、後工程で通常行われる条件で熱 理が行われても、高強度、且つ高靭性を有 る熱処理用鋼を得ることが可能となる。な 、本発明において、高強度とは、引張強度 1.2GPa以上であることであり、高靭性とは、 性脆性遷移温度(vTrs)が-80℃以下であること ある。

(2)本発明に係る熱処理用鋼は、Ni:3.0質量% 下、及びCu:3.0質量%以下よりなる群から選択 れる少なくとも1種を含むのが好ましい。こ れらの元素は、強度及び靭性をより向上させ 、また、耐食性を向上させることができる。

(3)本発明に係る熱処理用鋼は、Ca:0.0050質量 %以下、Mg:0.0050質量%以下、及びREM:0.020質量%以 下よりなる群から選択される少なくとも1種 含むのが好ましい。これらの元素はSと結び いて硫化物を形成し、MnSの伸長を防ぐこと できるので、靭性をより向上させることが きる。

(4)本発明に係る熱処理用鋼は、V:1.0質量%以 下、Zr:0.10質量%以下、Ta:0.10質量%以下、及びHf :0.10質量%以下よりなる群から選択される少な くとも1種を含むのが好ましい。これらの元 はC又はNと結びついて炭化物、窒化物及び/ は炭窒化物を形成してγ粒径を小さくするこ とができ、最終的な組織を微細化することが 可能であるため、靭性をより向上させること ができる。

(5)本発明に係る熱処理用鋼は、Si:3.0質量% 下を含むのが好ましい。この元素は、焼戻 の際に析出するセメンタイトを微細化して 靭性をより向上させることができる。

(6)本発明に係る熱処理用鋼は、Mo:2.0質量% 下、及びB:0.0150質量%以下よりなる群から選 される少なくとも1種を含むのが好ましい。 れらの元素は、焼入れ性を向上させて、強 を向上させることができる。

(7)本発明に係る熱処理用鋼は、硬さがHv450 下であるのが好ましい。このようにすれば 熱処理用鋼が硬すぎないので、焼入れや焼 しなどの熱処理を行う前に伸線、冷間圧延 冷間鍛造などを行う場合であっても、金型 命の短命化を防ぐことが可能となる。

 本発明に係る熱処理用鋼によれば、特定 合金組成、結晶粒径及び関係式を満たすこ により、γに変態後の結晶粒の成長を抑制 ることが可能となる。そのため、後工程で 常行われる条件で熱処理が行われても、引 強度が1.2GPa以上、且つ延性脆性遷移温度(vTrs )が-80℃以下の、高靭性かつ高強度の熱処理 鋼を得ることができる。

結晶粒径が10μm以下である熱処理用鋼( )と、結晶粒径が10μmを超える熱処理用鋼(■ )について、式1によって算出された値THと旧γ 粒径(μm)の関係を示すグラフである。 本発明に係る熱処理用鋼を製造する製 方法の一例を示すフローチャートである。

 以下、本発明に係る熱処理用鋼及びその製 方法について詳細に説明する。
 本発明に係る熱処理用鋼は、C:0.10~0.70質量% Mn:0.1~3.0質量%、Al:0.005~2.0質量%、P:0.050質量% 下、S:0.50質量%以下、O:0.0030質量%以下、及びN :0.0200質量%以下を含み、Ti:0.30質量%以下、及 Nb:0.30質量%以下よりなる群から選択される1 以上を含み、残部がFe及び不可避的不純物か らなり、下記式1によって算出される値THが1.0 以上であり、結晶粒径が10μm以下である。
  TH=({Ti}/48+{Nb}/93)×10 4  ・・・(式1)
 但し、前記式1において、{Ti}及び{Nb}は、5~10 0nmの析出物中に含まれるTi及びNbの含有量(質 %)を示し、それぞれの抽出残渣で測定した を示す。

(C:0.10~0.70質量%)
 Cは焼入れ後の強度を確保するために必須な 元素である。焼入れ後の強度1.2GPaを確保する には、Cの含有量が0.10質量%以上である必要が ある。一方、Cの含有量が0.70質量%を超えると マルテンサイトの靭性が劣化するため、上限 を0.70質量%とする。なお、Cの含有量の下限は 0.15質量%であるのが好ましく、0.25質量%であ のがより好ましい。また、Cの含有量の上限 0.60質量%であるのが好ましく、0.45質量%であ るのがより好ましい。

(Mn:0.1~3.0質量%)
 Mnは焼入れ性を確保し、マルテンサイトの 度を向上させるために必要な元素である。Mn の含有量が0.1質量%未満であると、前記した 果を得ることができない。一方、Mnの含有量 が3.0質量%を超えると、靭性、熱間加工性の 化を招く。なお、Mnの含有量は2.5質量%以下 あるのが好ましく、2.0質量%以下であるのが り好ましい。Mnの含有量は0.2質量%以上であ のが好ましく、0.5質量%以上であるのがより 好ましい。

(Al:0.005~2.0質量%)
 Alは、脱酸剤として使用される元素である 、Alの含有量が0.005質量%未満では効果がなく 、2.0質量%を超えると介在物が多く発生し、 労特性、靭性を劣化させる。そのため、Alの 含有量は2.0質量%以下とする。なお、Alの含有 量は0.10質量%以下であるのが好ましく、0.050 量%以下であるのがより好ましい。Alの含有 は0.010質量%以上であるのが好ましく、0.015質 量%以上であるのがより好ましい。

(P:0.050質量%以下)
 Pは、靭性を劣化させる元素であるため極力 低減することが望ましい。しかしながら、P 鋼中の不純物として0.001質量%以上含有され ことが多く、それより低減しようとすると 別な精錬が必要であるために素材コストが 昇する。従って、靭性を著しく劣化させな 範囲として、Pの含有量は0.050質量%以下とし いる。上記のような素材コストの上昇を抑 する観点からすると、P含有量の下限値は0.0 01質量%である。なお、Pの含有量は0.020質量% 下であるのが好ましく、0.015質量%以下であ のがより好ましい。

(S:0.50質量%以下)
 Sは、靭性を劣化させる。しかしながら、S 鋼中の不純物として0.001質量%以上含有され ことが多く、それより低減しようとすると 別な精錬が必要であるために素材コストが 昇する。その一方で、Sを含有させることに りMnSが形成され、切削性を改善するという 果を有する。従って、要求特性に応じて切 性が必要な場合は、Sを含有することが望ま しい。しかし、Sの含有量が0.50質量%を超える と、靭性が著しく低下する。そのため、Sの 有量は0.50質量%以下とする。切削性が必要と されない場合には、上記のような素材コスト の上昇を抑制する観点からすると、S含有量 下限値は0.001質量%である。また、切削性が 要とされる場合には、S含有量は0.01質量%以 であることが好ましい。
なお、Sの含有量は0.20質量%以下であるのが好 ましく、0.10質量%以下であるのがより好まし 。

(O:0.0030質量%以下)
 Oは、靭性を劣化させる元素であるため極力 低減することが望ましい。しかしながら、O 鋼中の不純物として0.0001質量%以上含有され ことが多く、それより低減しようとすると 別な精錬が必要であるために素材コストが 昇する。従って、靭性を著しく劣化させな 範囲として、Oの含有量は0.0030質量%以下と る。上記のような素材コストの上昇を抑制 る観点からすると、O含有量の下限値は0.0001 量%である。なお、Oの含有量は0.0020質量%以 であるのが好ましく、0.0015質量%以下である のがより好ましい。

(N:0.0200質量%以下)
 Nは、鋼中の不純物として通常0.0005質量%以 混入している。鋼中にTi、Zr、Ta、Hfが含有さ れている場合は、これらとNが窒化物を形成 て粗大介在物となり、疲労特性を劣化させ ため、なるべくNを含有しないのが好ましい そのため、Nの含有量は0.0200質量%以下とし いる。なお、Nの含有量は0.0100質量%未満であ るのが好ましく、0.0070質量%以下であるのが り好ましく、0.0035質量%以下であるのがさら 好ましい。

(Ti:0.30質量%以下、Nb:0.30質量%以下)
 Ti及びNbは、本発明で最も重要な元素であり 、これらのうちの少なくとも1種を含む必要 ある。Ti及びNbは、C及び/又はNと結びついて オーステナイト中でも安定な炭化物、窒化 、炭窒化物などの微細な析出物を形成し、 ーステナイト粒の成長を抑制する。但し、 れらの元素の含有量が多くなりすぎると、 熱時に未固溶となるものが多くなり、微細 析出物を形成するという効果が小さくなる かりか、粗大炭化物が破壊の起点となり靭 を劣化させる。そのため、Ti及びNbの含有量 はそれぞれ0.30質量%以下とする。なお、Ti及 Nbの含有量は0.10質量%以下であるのが好まし 、0.08質量%以下とするのがより好ましい。 た、Ti及びNbの含有量は0.02質量%以上である が好ましく、0.04質量%以上であるのがより好 ましい。

(残部がFe及び不可避的不純物)
 残部はFe及び不可避的不純物である。不可 的不純物としては、例えば、Sn,Sbなどが挙げ られる。

(TH=({Ti}/48+{Nb}/93)×10 4 :1.0以上)
 下記式1で算出される値THは、5~100nmの析出物 中のTiとNbのモル量の和を意味しており、本 明で最も重要なパラメータである。
  TH=({Ti}/48+{Nb}/93)×10 4  ・・・(式1)
 Ti、Nbを含む析出物(炭窒化物)は、オーステ イト中で安定であり、γ粒の成長を抑制す 。その程度は一般的に、体積分率/析出物粒 に比例すると言われている。体積分率はTi Nbのモル量の和に比例する。従って、前記式 1が成り立つ。

 なお、前記式1において、{Ti}及び{Nb}は、5 ~100nmの析出物中に含まれるTi及びNbの含有量( 量%)を示している。かかる大きさの析出物 含まれるTi及びNbの含有量が靭性及び耐遅れ 壊特性に与える影響は、非常に大きい。Ti びNbを含む析出物の大きさが5nm未満であると 、非常に微細であるため、一部がγ変態時に 固溶するとともに、結晶粒が異常に粗大化 る異常粒成長などの原因にもなる。また、T i及びNbを含む析出物の大きさが100nmを超える 、粗大すぎるため、結晶粒の数が少なくな とともに、破壊の起点となり、靭性、耐遅 破壊特性を劣化させる原因にもなる。

 {Ti}及び{Nb}は、それぞれの抽出残渣で測定 た量を示すものであり、合金中に添加され Ti及びNbの量を示すものではない。抽出残渣 のTi及びNbの含有量は、例えば、電解抽出さ れた残渣の化学分析を行うことで測定するこ とができる。
 電解抽出は、例えば、10%アセチルアセトン- 1%テトラメチルアンモニウムクロリド-メタノ ール溶液を電解液として用いて、200A/m 2 以下の電流下で行う。そして、抽出残渣中の Ti及びNbの含有量は、0.1μm及び2.0μmのポリカ ボネート製のフィルターを用いることによ 測定することができる。つまり、0.1μmのフ ルターで得られた量から2.0μmのフィルター 得られた量を引くことで、5~100nmの析出物に まれるTi量及びNb量({Ti}、{Nb})を求めること できる。

 このようにして求められた{Ti}、{Nb}を前 式1に代入することによって、値THが算出さ る。算出された値THが1.0未満であると、オー ステナイトの微細化効果が少ないために、後 工程で通常行われる条件で熱処理が行われた 場合に強度及び靭性を向上させることができ ない。なお、値THは2.0以上が好ましく、3.0以 がより好ましい。

(結晶粒径:10μm以下)
 結晶粒径は、熱処理後の旧γ粒径に大きな 響を与える。結晶粒径が小さいほど、熱処 後の旧γ粒径を小さくすることが可能となる 。そのため、結晶粒径は10μm以下としている 結晶粒径が10μmを超えると、熱処理後の旧γ 粒径を5μm以下とすることができない。なお 結晶粒径は3μm以下であるのが好ましく、2μm 以下であるのがより好ましい。

 本発明においては、結晶粒径は以下のよう して測定される。
 熱処理用鋼の鋼片を用意し、当該鋼片の板 中央部(板厚方向において板厚の1/2の位置) 、熱間圧延方向に平行な断面についてEBSP(後 方散乱電子回折像)による結晶方位解析を行 。そして、傾角が15度以上の境界を結晶粒界 として、結晶粒径を決定する。測定領域は、 200μm角、測定ステップ0.1μm間隔とする。測定 方位の信頼性を示すコンフィデンス・インデ ックス(Confidence Index)が0.1以下の測定点は解 対象から除外する。また、結晶粒径が0.4μm 下の結晶粒径については測定ノイズと判断 、平均結晶粒径計算の対象から除外する。 晶粒径はこのように測定することができる

 ここで、値THと結晶粒径の関係について 明する。図1は、結晶粒径が10μm以下である 処理用鋼(◇)と、結晶粒径が10μmを超える熱 理用鋼(■)について、式1によって算出され 値THと、熱処理後の旧γ粒径(μm)の関係を示 グラフである。なお、熱処理は、焼入れ条 (加熱温度:850℃、保持時間:60秒)、焼戻し条 (加熱温度:450℃、保持時間1800秒)で行った。

 図1に示すように、値THが1.0以上であって 、結晶粒径が10μmを超える熱処理用鋼(■)は 、熱処理後の旧γ粒径が5μmを超えてしまうこ とが分かる。また、結晶粒径が10μm以下であ 熱処理用鋼(◇)であっても、値THが1.0未満で ある場合は、熱処理後の旧γ粒径が5μmを超え てしまうことが分かる。いずれの場合も、熱 処理後の旧γ粒径が5μmを超えているので、高 強度及び高靭性を得ることができないことが 分かる。

 図1に示すように、熱処理後の鋼板が高強 度及び高靭性を備えるためには、つまり、熱 処理後の旧γ粒径を5μm以下とするためには、 値THが1.0以上、且つ熱間圧延後の結晶粒径が1 0μm以下である必要があることが分かる。

(Ni,Cu,Cr:3.0質量%以下)
 本発明に係る熱処理用鋼は、Ni:3.0質量%以下 、及びCu:3.0質量%以下よりなる群から選択さ る少なくとも1種を含むのが好ましい。
 Ni、Cu及びCrは、強度及び靭性を改善すると もに、耐食性を改善する効果のある元素で り、要求される特性に応じて添加すること できる。しかし、Ni、Cu及びCrの含有量があ 一定以上を超えるとその効果が著しく小さ なるので、Ni、Cu及びCrのそれぞれの含有量 3.0質量%以下とする。なお、Ni、Cu及びCrのそ れぞれの含有量は1.5質量%以下であるのが好 しく、1.2質量%以下であるのがより好ましい また、Ni、Cu及びCrのそれぞれの含有量は0.20 質量%以上であるのが好ましく、0.50質量%以上 であるのがより好ましい。

(Ca,Mg:0.0050質量%以下、REM:0.020質量%以下)
 また、本発明に係る熱処理用鋼は、Ca:0.0050 量%以下、Mg:0.0050質量%以下、及びREM:0.020質 %以下よりなる群から選択される少なくとも1 種を含むのが好ましい。
 Ca、Mg及びREM(希土類元素)は、それぞれ硫化 を形成し、MnSの伸長を防ぐことで靭性を改 する効果を有し、要求特性に応じて添加す ことができる。Ca、Mg及びREMはそれぞれある 一定以上を超えて添加すると、却って靭性を 劣化させてしまう。そのため、Caの含有量は0 .0050質量%以下、Mgの含有量は0.0050質量%以下、 REMの含有量は0.020質量%以下とする。また、Ca 含有量は0.0030質量%以下、Mgの含有量は0.0030 量%以下、REMの含有量は0.010質量%以下とする のが好ましい。また、CaおよびMgのそれぞれ 含有量は、0.0005質量%以上であるのが好まし 、REMの含有量は、0.0010質量%以上であるのが 好ましい。
 なお、REMとしては、例えば、Ce、Laなどが挙 げられ、複数の希土類元素が含まれた合金、 つまりミッシュメタルの状態で投入すること もできる。

(V:1.0質量%以下、Zr,Hf,Ta:0.10質量%以下)
 さらに、本発明に係る熱処理用鋼は、V:1.0 量%以下、Zr:0.10質量%以下、Ta:0.10質量%以下、 及びHf:0.10質量%以下よりなる群から選択され 少なくとも1種を含むのが好ましい。
 Vは、C及び/又はNと結びついて炭化物や炭窒 化物を形成して析出物を強化する元素である 。また、Vはオーステナイト中でも析出し、γ 粒径を小さくする効果もある。但し、Vの含 量が1.0質量%を超えると加熱時に未固溶とな Vが多くなり、前記した効果が小さくなるば かりか、粗大炭化物が破壊の起点となってし まい靭性を低下させる。そのため、Vの含有 は1.0質量%以下とする。なお、Vの含有量は0.6 0質量%以下とするのが好ましく、0.50質量%以 とするのがより好ましく、0.3質量%以下とす のがさらに好ましい。また、Vの含有量は0.0 5質量%以上であるのが好ましく、0.10質量%以 であるのがより好ましい。
 他方、Zr、Hf及びTaは、Nと結びついて窒化物 を形成し、安定で加熱時におけるγ粒径の成 を抑制して最終的な金属組織を微細化し、 性を改善する効果がある。但し、Zr、Hf及び Taの含有量が0.10質量%を超えると、窒化物が 大化し、疲労特性を劣化させるため好まし ない。これらのことから、Zr、Hf及びTaの含 量は0.10質量%以下とする。なお、Zr、Hf及びTa の含有量は0.050質量%以下であるのが好ましく 、0.025質量%以下であるのがより好ましい。ま た、Zr、Hf及びTaのそれぞれの含有量は0.005質 %以上であるのが好ましい。

(Si:3.0質量%以下)
 本発明に係る熱処理用鋼は、Si:3.0質量%以下 を含むのが好ましい。
 Siは脱酸剤であり、さらに焼戻しの際に析 するセメンタイトを微細化して靭性を向上 せる。Al、Mnなど他の脱酸剤を添加する場合 、Siを添加しなくてもよい。Siの含有量が3.0 質量%を超えると靭性の劣化や熱間加工性の 化を招くため、Siの含有量の上限は3.0質量% する。なお、Siの含有量は2.5質量%以下であ のが好ましく、2.0質量%以下であるのがより ましい。また、Siの含有量が0.1質量%未満で 脱酸効果を発揮し難いため、Siの含有量は 0.10質量%以上であるのが好ましく、0.5質量% 上であるのがより好ましい。

(Mo:2.0質量%以下、B:0.0150質量%以下)
 本発明に係る熱処理用鋼は、Mo:2.0質量%以下 、及びB:0.0150質量%以下よりなる群から選択さ れる少なくとも1種を含むのが好ましい。
 Moは、焼入れ性を確保し、マルテンサイト 強度を向上させる元素である。しかし、Moの 含有量が多すぎると、靭性、熱間加工性の劣 化を招く。そのため、Moの含有量は2.0質量%以 下とする。なお、Moの含有量は1.0質量%以下で あるのが好ましく、0.5質量%以下であるのが り好ましい。Moの含有量は0.1質量%以上であ のが好ましく、0.2質量%以上であるのがより ましい。
 Bは、微量の添加により焼入れ性を大きく改 善し、マルテンサイト組織を得るためには非 常に効果の大きい元素である。Bの含有量が0. 0150質量%を超えると、熱間加工性が劣化する そのため、Bの含有量は0.0150質量%以下とす 。なお、Bの含有量は0.0050質量%以下であるの が好ましく、0.0035質量%以下であるのがより ましい。また、Bの含有量は0.0005質量%以上で あるのが好ましい。

(硬さ:Hv450以下)
 本発明に係る熱処理用鋼は、硬さがHv(ビッ ース硬さ)450以下であるのが好ましい。
 硬さとは、外力に対する抵抗力の大きさを う。硬さがHv450を超えて高すぎると、焼入 や焼戻しなどの熱処理を行う前に伸線、冷 圧延、冷間鍛造などを行う場合、金型寿命 短命化を招くおそれがある。そのため、硬 はHv450以下とする。なお、硬さは、Hv400以下 あるのが好ましく、Hv350以下であるのがよ 好ましい。
 硬さは、JIS Z 2244に規定のビッカース硬さ 験方法に準拠して測定を行った。硬さを3点 測定し、平均値を求めるのが好ましい。

 つまり、本発明に係る熱処理用鋼によれば 焼入れ前の組織を微細化することによって の逆変態核生成を多くし、且つ微細で安定 析出物を予め析出させておくことでγに変態 後のγ粒の成長を抑制することができる。そ 結果、後工程で通常行われる条件で焼入れ 焼戻しなどの熱処理が行われても、高強度 つ高靭性を有する熱処理用鋼を提供するこ ができる。
 焼入れ前組織の微細化は、熱間圧延時のγ 径を微細化するとともに、加工γから変態さ せることにより行うことができる。また、焼 入れ前組織の微細化は、凝固時または均熱処 理の加熱時に微細で安定な析出物、例えばTi Nbなどの炭窒化物を微細に析出させておき 熱間圧延時の加熱温度を低くして熱間圧延 も加工発熱を抑えるようにすることにより うことができる。これにより、熱間圧延時 おける加熱初期のγ粒を微細化させるととも に、熱間圧延時にγ粒の再結晶を抑えること でき、また、歪が蓄積された加工γも得る とができるので、前記した効果を得ること できる。

 以上に説明した本発明に係る熱処理用鋼 、例えば、図2に示すように、鋳造工程S1と 均熱分塊工程S2と、熱間圧延工程S3と、を含 む製造方法によって好適に製造することがで きる。なお、図2は、本発明に係る熱処理用 を製造する製造方法の一例を示すフローチ ートである。

 鋳造工程S1は、C:0.10~0.70質量%、Mn:0.1~3.0質 %、Al:0.005~2.0質量%、P:0.050質量%以下、S:0.50質 量%以下、O:0.0030質量%以下、及びN:0.0200質量% 下を含み、Nb:0.30質量%以下、及びTi:0.30質量% 下よりなる群から選択される1種以上を含み 、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋳塊( 鋼塊)を鋳造する工程である。

 鋳造工程S1においては、要求される特性に じて、Ni:3.0質量%以下、Cu:3.0質量%以下、及び Cr:3.0質量%以下よりなる群から選択される1種 上を含有させることができる。また、Ca:0.00 50質量%以下、Mg:0.0050質量%以下、及びREM:0.020 量%以下よりなる群から選択される1種以上を 含有させることもできる。またさらに、V:1.0 量%以下、Zr:0.10質量%以下、Ta:0.10質量%以下 及びHf:0.10質量%以下よりなる群から選択され る1種以上を含有させることもできる。さら は、Si:3.0質量%以下を含有させることもでき Mo:2.0質量%以下、及びB:0.0150質量%以下よりな る群から選択される1種以上を含有させるこ もできる。
 なお、これらの合金成分や合金組成等につ ての説明は既に詳述しているので、その説 を省略する。

 次いで、均熱分塊工程S2は、鋳造した鋳塊 1250~1350℃で1時間以上均熱処理し、所定の大 さに切り分けて分塊にする工程である。
 このような条件で鋳塊を均熱処理すること よって、Nb及びTiの固溶が分塊時に促進され るため、その後の冷却で微細な炭化物、窒化 物、炭窒化物を析出させることが可能となる 。
 均熱処理の温度が1250℃未満では、Nb、Tiが 分に固溶しない。一方、均熱処理の温度が13 50℃を超えるとスケールが多量に発生し、キ 発生の原因となる。
 なお、均熱分塊工程S2は、1300℃以上で2時間 以上行うのが好ましい。

 熱間圧延工程S3は、均熱処理した分塊を、85 0~1000℃で1時間以下再加熱し、熱間圧延した 、700℃まで3℃/秒以上の冷却速度で冷却した 後、700℃~450℃で90秒以上保持する工程である 。この工程により、本発明に係る熱処理用鋼 を製造することができる。
 このように、比較的低温で熱間圧延を行う とによって、均熱処理の加熱時に微細に析 させた析出物も成長することなく、微細な ま保持させることが可能となる。

 850℃未満で分塊を再加熱すると、熱間圧延 の変形抵抗が大きくなり、熱間圧延効率が くなる。一方、1000℃を超えた温度で分塊を 再加熱すると、熱間圧延時に合金成分が固溶 してしまい、再析出で微細になっていた炭化 物、窒化物、炭窒化物が粗大化してしまう。
 なお、分塊の熱間圧延とその直後の保持は 900℃以下で30分間以内に行うことが好まし 。

 そして、3℃/秒以上の冷却速度で、700℃ま 強制的に冷却することで、フェライトの粗 化を防止して微細な金属組織を得ることが きる。700℃までの冷却速度が3℃/秒未満であ ると、前記した効果を得ることができない。
 なお、冷却速度は6℃/秒以上であるのが好 しい。

 また、700℃~450℃で90秒以上保持することに り、微細なフェライト、ベイナイト、或い パーライト、セメンタイトの生成を促進し 硬質組織の生成を防ぐことができる。700℃~ 450℃での保持時間が90秒未満であると、これ の生成を促進することができない。なお、5 00℃以下で変態させた場合は、マルテンサイ などの硬質組織が生成するため、冷間加工 どが必要な場合は好ましくない。
 700℃~450℃での保持時間は180秒以上であるの が好ましい。

 前記した熱処理用鋼製造方法によれば、 定の合金組成及び製造条件により、γに変 後の結晶粒の成長を抑制することができ、 工程で通常行われる条件で熱処理が行われ も1.2GPa以上の高強度、且つ延性脆性遷移温 (vTrs)が-80℃以下の高靭性を得ることが可能 熱処理用鋼を製造することができる。

 次に、本発明の要件を満たした実施例に いて、本発明の要件を満たさない比較例と 比して、本発明の効果を説明する。

 まず、表1に示す合金組成の鋼を小型溶製 炉で溶解し、鋳造し、表2に示す条件で均熱 塊、熱間圧延を行い、実施例1~22及び比較例1 ~6に係る板厚16mmの鋼片を得た。これらの鋼片 を使用し、表2に示す条件で焼入れ、焼戻し( 処理)を行った。

 表1及び表2に示す条件で作製した実施例1~22 び比較例1~6に係る鋼片について、熱間圧延 の値TH(5~100nmの析出物中に含まれるTi,Nb量)、 結晶粒径(μm)及び硬さHvを評価した。また、 常行われる条件の焼入れ、焼戻し(熱処理)を 行った後の各鋼片の鋼材特性、すなわち、引 張強度(GPa)、靭性(延性脆性遷移温度(vTrs(℃))) 及び旧γ粒径(μm)を評価した。これらの結果 表2に示す。
 なお、実施例1~22及び比較例1~6に係る鋼片の 熱間圧延後の値TH、結晶粒径、硬さHv、熱処 を行った後の引張強度、靭性、旧γ粒径は以 下のようにして評価した。

(1)値TH(5~100nmの析出物中に含まれるTi,Nb量)
 熱間圧延後の鋼片の1/2の位置からサンプル 採取し、電解抽出された残渣の化学分析を こなった。電解抽出は、10%アセチルアセト -1%テトラメチルアンモニウムクロリド-メタ ノール溶液を電解液として用いて200A/m 2 以下の電流下で抽出し、アドバンテック社製 のポリカーボネート材質の、0.1μm及び2.0μmの フィルターを用いて行った。0.1μmフィルター で得られた量から2.0μmフィルターで得られた 量を引くことにより、5~100nmの析出物に含ま るTi,Nb量({Ti}、{Nb})を求めた。
 値THは、下記式1により算出した。
  TH=({Ti}/48+{Nb}/93)×10 4  ・・・(式1)
 値THが1.0以上のものを合格とした。

(2)熱間圧延後の結晶粒径
 熱間圧延後の結晶粒径は、鋼片の板厚中央 (板厚方向において板厚の1/2の位置)で、熱 圧延方向に平行な断面についてEBSP(後方散乱 電子回折像)による結晶方位解析を行うこと より評価した。なお、傾角が15度以上の境界 を結晶粒界として、結晶粒径を決定した。測 定領域は200μm角、測定ステップ0.1μm間隔とし た。測定方位の信頼性を示すコンフィデンス ・インデックス(Confidence Index)が0.1以下の測 点は、解析対象から除外した。また、結晶 径が0.4μm以下の結晶粒径については測定ノ ズと判断し、平均結晶粒径計算の対象から 外した。熱間圧延後の結晶粒径が10μm以下の ものを合格とした。

(3)熱間圧延後の硬さ
 (2)と同様に、鋼片の板厚中央部においてビ カース硬さの測定を3点で行い、平均値を求 めて硬さを評価した。加工の容易性の観点か ら、硬さ(ビッカース硬さ)がHv450以下のもの より好ましいものとした。なお、硬さは、JI S Z 2244に規定のビッカース硬さ試験-試験方 に準拠して測定した。

(4)引張強度
 引張強度は、JIS Z 2241に規定の引張試験に 拠して行った。引張強度が1.2GPa以上のもの 合格とした。

(5)靭性
 靭性は、2mmのVノッチを形成したJIS3号試験 を用いて、シャルピー衝撃試験を行い、延 脆性遷移温度(vTrs(℃))を求めることによって 靭性を評価した。靭性は、vTrs(℃)が-80℃以下 のものを合格とした。なお、シャルピー衝撃 試験は、JIS Z 2242に規定の金属材料のシャル ピー衝撃試験方法に準拠して行った。

(6)旧γ粒径
 熱処理後の鋼片の板厚方向に1/2の位置から ンプルを採取し、山本科学工具研究社製のA GS液を用いて3~5分間腐食させた後、切断法に 評価した。旧γ粒径が5μm以下を合格とした なお、旧γ粒径は、JIS G 0551に規定の鋼-結 粒度の顕微鏡試験方法に準拠して測定した

 表2に示すように、実施例1~22は、本発明 要件を満たすため、熱間圧延後の値TH、結晶 粒径、硬さHv、熱処理を行った後の引張強度 靭性、旧γ粒径が優れていた(総合評価:◎又 は○)。なお、実施例5は、熱間圧延後の硬さ 高く、加工性にやや難があったものの、熱 理後の強度が高く、靭性も高かったため、 合的に合格となった(総合評価:△)。

 一方、比較例1~6は、本発明の要件、特に均 分塊の条件、熱間圧延の条件、及び冷却条 のいずれかを満たさないため、熱間圧延後 値THが1.0未満となった。そのため、比較例1~ 6は、熱間圧延後の結晶粒径、熱処理を行っ 後の引張強度、靭性、旧γ粒径のいずれかに おいて良好でない結果となった(総合評価:×)
 具体的には、比較例1,2,4は、均熱分塊時の 熱温度が低く、熱間圧延後の値THが低かった 。また、比較例3は、熱間圧延時の加熱温度 高く、熱間圧延後の値THが低かった。比較例 5は、熱間圧延時の加熱時間が長く、熱間圧 後の値THが低かった。そして、比較例6は、 間圧延後の冷却速度が遅く、熱間圧延後の 径が大きかった。

 以上、本発明の熱処理用鋼について、発 を実施するための最良の形態及び実施例に り詳細に説明したが、本発明の趣旨はこれ 限定されるものではなく、特許請求の範囲 記載に基づいて広く解釈されなければなら いことはいうまでもない。本出願は2008年6 19日出願の日本特許出願(特願2008-160987)に基 くものであり、その内容は参照としてここ 取り込まれる。

 S1  鋳造工程
 S2  均熱分塊工程
 S3  熱間圧延工程




 
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