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Title:
ATOMIC MICROSCOPE AND INTERACTIVE FORCE MEASURING METHOD USING ATOMIC MICROSCOPE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/087852
Kind Code:
A1
Abstract:
A frequency shift Δf obtained from the FM-AFM can be expressed by a simple linear combination of a component ΔfLR resulting from a long distance interactive force and a component ΔfSR resulting from a short distance interactive force. Thus, a Δf curve on an atomic defect on a sample surface and a Δf curve on a target atomic defect are measured in relatively short distance ranges (S1, S2), respectively, and a difference Δf curve between them is sought. Since the difference Δf curve only results from the short interactive force, well known conversion processing is applied to this toseek an Fcurve indicative of a relationship between force and a distance Z, and from there the short distance interactive force on the target atom is obtained (S4). Since a distance region is made narrow at the measurement of the Δf curve, a measuring time can be shortened. Since only one conversion from the Δf curve to the F curve is adequate for completion, an operation time can be also shortened. Thus, when a short distance interactive force between an atom on a sample surface and a probe is sought, time necessary for the measurement of a Δf curve and operations can be shortened, the accuracy can be also improved, and further the throughput can be improved.

Inventors:
OTA MASAHIRO (JP)
OYABU NORIAKI (JP)
ABE MASAYUKI (JP)
CUSTANCE OSCAR (JP)
SUGIMOTO YOSHIAKI (JP)
MORITA SEIZO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/000001
Publication Date:
July 24, 2008
Filing Date:
January 07, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV OSAKA (JP)
SHIMADZU CORP (JP)
OTA MASAHIRO (JP)
OYABU NORIAKI (JP)
ABE MASAYUKI (JP)
CUSTANCE OSCAR (JP)
SUGIMOTO YOSHIAKI (JP)
MORITA SEIZO (JP)
International Classes:
G01Q30/04; G01Q60/32
Foreign References:
JP2006289542A2006-10-26
Other References:
LANTZ M.A. ET AL.: "Site-specific force-distance characteristics on NaCl(001): Measurements versus atomistic simulations", PHYSICAL REVIEW B, vol. 74, 22 December 2006 (2006-12-22), pages 245426-1 - 245426-9
ABE M. ET AL.: "Room-temperature reproducible spatial force spectroscopy using room-tracking technique", APPLIED PHYSICS LETTERS, vol. 87, 19 October 2005 (2005-10-19), pages 173503-1 - 173503-3
Attorney, Agent or Firm:
KOBAYASI, Ryohei (7th Floor Hougen-Sizyokarasuma Building,37, Motoakuozi-tyo, Higasinotouin Sizyo-sagaru,Simogyo-ku, Kyoto-s, Kyoto 91, JP)
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Claims:
 試料表面に近づけた探針を保持するカンチレバーを共振周波数で振動させたときに、試料表面の原子と探針先端との間に働く相互作用によって変化する前記探針を保持するカンチレバーの振動周波数を検出する周波数変調検出方式の原子間力顕微鏡において、
 a)試料表面の所定領域を一次元的又は二次元的に走査しながら試料表面の凹凸観察像を形成して表示する凹凸観察像取得手段と、
 b)前記凹凸観察像取得手段により表示された凹凸観察像上で少なくとも1つの目的原子及び1つの原子欠陥をユーザーが指定するための指定手段と、
 c)試料表面にあって前記指定手段により指定された目的原子上での、探針先端と試料表面との間の距離Zと前記振動周波数の共振周波数からの変化量(周波数シフト)δfとの関係を示す原子上δfカーブを測定する原子上測定実行手段と、
 d)試料表面にあって前記指定手段により指定された原子欠陥上での、探針先端と試料表面との間の距離Zと前記振動周波数の共振周波数からの変化量δfとの関係を示す欠陥上δfカーブを測定する欠陥上測定実行手段と、
 e)前記原子上δfカーブと前記欠陥上δfカーブとの差である差分δfカーブを計算する差演算手段と、
 f)前記差分δfカーブにおける周波数変化量を相互作用力に変換する演算を行うことにより短距離相互作用力を求める変換演算手段と、
 を備えることを特徴とする原子間力顕微鏡。
 試料表面に近づけた探針を保持するカンチレバーを共振周波数で振動させたときに、試料表面の原子と探針先端との間に働く相互作用によって変化する前記探針を保持するカンチレバーの振動周波数を検出する周波数変調検出方式の原子間力顕微鏡において、
 a)試料表面の所定領域を一次元的又は二次元的に走査しながら試料表面の凹凸観察像を形成する凹凸観察像取得手段と、
 b)前記凹凸観察像を画像解析することで少なくとも1つの目的原子及び1つの原子欠陥を抽出する抽出手段と、
 c)試料表面にあって前記抽出手段により抽出された目的原子上での、探針先端と試料表面との間の距離Zと前記振動周波数の共振周波数からの変化量(周波数シフト)δfとの関係を示す原子上δfカーブを測定する原子上測定実行手段と、
 d)試料表面にあって前記抽出手段により抽出された原子欠陥上での、探針先端と試料表面との間の距離Zと前記振動周波数の共振周波数からの変化量δfとの関係を示す欠陥上δfカーブを測定する欠陥上測定実行手段と、
 e)前記原子上δfカーブと前記欠陥上δfカーブとの差である差分δfカーブを計算する差演算手段と、
 f)前記差分δfカーブにおける周波数変化量を相互作用力に変換する演算を行うことにより短距離相互作用力を求める変換演算手段と、
 を備えることを特徴とする原子間力顕微鏡。
 請求項2に記載の原子間力顕微鏡であって、所定範囲内に含まれる全て又は一部の原子について順次、前記短距離相互作用力を求めることで該所定範囲内の前記短距離相互作用力の分布を示す情報を作成する分布情報作成手段をさらに備えることを特徴とする原子間力顕微鏡。
 試料表面に近づけた探針を保持するカンチレバーを共振周波数で振動させたときに、試料表面の原子と探針先端との間に働く相互作用によって変化する前記探針を保持するカンチレバーの振動周波数を検出する周波数変調検出方式の原子間力顕微鏡において、
 a)試料表面の所定領域を一次元的又は二次元的に走査しながら試料表面の凹凸観察像を形成する凹凸観察像取得手段と、
 b)試料表面にあって決められた位置での、探針先端と試料表面との間の距離Zと前記振動周波数の共振周波数からの変化量(周波数シフト)δfとの関係を示す原子上δfカーブを測定する原子上測定実行手段と、
 c)前記凹凸観察像を画像解析することで前記原子上測定実行手段により測定が行われる又は測定が行われた位置に近接する原子欠陥を抽出する抽出手段と、
 d)試料表面にあって前記抽出手段により抽出された原子欠陥上での、探針先端と試料表面との間の距離Zと前記振動周波数の共振周波数からの変化量δfとの関係を示す欠陥上δfカーブを測定する欠陥上測定実行手段と、
 e)前記原子上δfカーブと前記欠陥上δfカーブとの差である差分δfカーブを計算する差演算手段と、
 f)前記差分δfカーブにおける周波数変化量を相互作用力に変換する演算を行うことにより前記位置における短距離相互作用力を求める変換演算手段と、
 を備えることを特徴とする原子間力顕微鏡。
 請求項4に記載の原子間力顕微鏡であって、所定範囲内に複数設定された各位置について順次、前記短距離相互作用力を求めることで該所定範囲内の前記短距離相互作用力の分布を示す情報を作成する分布情報作成手段をさらに備えることを特徴とする原子間力顕微鏡。
 試料表面に近づけた探針を保持するカンチレバーを共振周波数で振動させたときに、試料表面の原子と探針先端との間に働く相互作用によって変化する前記探針を保持するカンチレバーの振動周波数を検出する周波数変調検出方式の原子間力顕微鏡を用いて、試料表面の原子と探針先端との間に働く短距離相互作用力を測定する測定方法であって、
 a)試料表面の目的原子上での、探針先端と試料表面との間の距離Zと前記振動周波数の共振周波数からの変化量(周波数シフト)δfとの関係を示す原子上δfカーブを測定する原子上測定ステップと、
 b)試料表面の原子欠陥上での、探針先端と試料表面との間の距離Zと前記振動周波数の共振周波数からの変化量δfとの関係を示す欠陥上δfカーブを測定する欠陥上測定ステップと、
 c)前記原子上δfカーブと前記欠陥上δfカーブとの差である差分δfカーブを計算する差演算ステップと、
 d)前記差分δfカーブにおける周波数変化量を相互作用力に変換する演算を行うことにより短距離相互作用力を求める変換演算ステップと、
 を有することを特徴とする、原子間力顕微鏡を用いた相互作用力測定方法。
 請求項6に記載の、原子間力顕微鏡を用いた相互作用力測定方法であって、前記原子上測定ステップ及び前記欠陥上測定ステップでは、最大で1nm以下の距離Zの範囲のδfカーブを求めることを特徴とする、原子間力顕微鏡を用いた相互作用力測定方法。
Description:
原子力顕微鏡及び原子力顕微鏡 用いた相互作用力測定方法

 本発明は、原子間力顕微鏡(AFM=Atomic Force Microscopy)、特に周波数変調検出方式の原子間 力顕微鏡(FM-AFM=Frequency Modulation-AFM)と、原子 顕微鏡を用いて探針が試料表面の近傍にあ 場合に両者の間に作用する短距離相互作用 を測定するための相互作用力測定方法に関 る。

 原子間力顕微鏡(AFM)は、先鋭な探針と試 表面との間に作用する力をカンチレバーの 位から測定し、探針を試料表面に沿って一 元的又は二次元的に走査することで試料表 の形状等の情報を取得する装置である。こ AFMの1つとして周波数変調検出方式のFM-AFMが られている。FM-AFMでは、試料表面に原子レ ルの距離まで近づけた探針を保持するカン レバーをその機械的共振周波数で以て振動 せ、探針と試料表面との間に働く相互作用 によって生じる共振周波数の変化(周波数シ フトδf)を検出する。この周波数シフトδfは 針と試料表面との距離Zに依存するため、周 数シフトδfを一定に維持しながら、試料表 を試料上の法線方向に直交する面内で二次 走査(例えばラスタースキャン)することに り、試料表面の凹凸観察像(δf一定像)を得る ことができる。

 後述するように探針と試料表面との間の 互作用力から様々な情報を得ることが可能 あるものの、FM-AFMでは相互作用力を直接的 実験により求めることはできない。そこで 上述のように周波数シフトδfと探針-試料表 面間距離Zとの関係(以下「δfカーブ」という) を測定し、例えば非特許文献1乃至3などに記 されている理論に基づく変換計算を行うこ で、相互作用力Fと探針-試料表面間距離Zと 関係(以下「Fカーブ」という)を求めるよう する。また相互作用力Fはポテンシャルの勾 配であるという関係を利用して、Fカーブか 探針-試料表面間のポテンシャルエネルギー ーブを推定することもできる。

 探針と試料表面との間の相互作用力には、 別して、主として距離Zが数nmから数十nmで る範囲で働く遠距離相互作用力(F LR =Long-Range Force)と、距離Zが1nm以下のごく近傍 働く短距離相互作用力(F SR =Short-Range Force)とがあり、この両者の和が全 互作用力(F total =Total Force)として働く。遠距離相互作用力F LR としては、探針と試料表面との間のファン・ デル・ワールス力F vdw や、探針と試料表面との間の接触電位差に起 因する静電気力F ele などが挙げられる。一方、短距離相互作用力 F SR としては、例えば半導体原子間に働く共有結 合力などが挙げられる。短距離相互作用力F SR は、試料表面の原子分解能での凹凸観察に寄 与するだけでなく、探針先端の原子レベルの 構造を反映することが知られており(非特許 献4参照)、また原子種の短距離相互作用力F SR の相違から原子種の同定に利用できることも 報告されている(非特許文献5参照)。

 こうしたことから、原子レベルでの試料に する様々な情報を得るために、短距離相互 用力F SR を高い精度で測定できる技術が近年、求めら れている。原子間力顕微鏡を利用して、試料 表面に存在する目的原子上で作用する短距離 相互作用力F SR を測定するための従来の一般的な手順(非特 文献6参照)を概略的に説明する。図14はこの 順を示すフローチャート、図15はδfカーブ びFカーブの一例を示すグラフである。

 まず、探針と試料表面との間の接触電位差 計測し、この接触電位差を補償するような イアス電圧を探針と試料表面との間に印加 ることで静電気力F ele が無視できる状態とする(ステップS11)。遠距 相互作用力F LR はファン・デル・ワールス力F vdw と静電気力F ele とが支配的であるため、静電気力F ele がないものとみなせる状態では、遠距離相互 作用力F LR はファン・デル・ワールス力F vdw が主であるとすることができる。

 次に、原子間力顕微鏡を用い、遠距離相互 用力F LR のみが探針-試料表面間に働く原子欠陥(Defect) 上でδfカーブを取得する。δfカーブは図15(a) 示すように、横軸に探針-試料表面間距離Z とり、縦軸に周波数シフトδfをとった図で る。探針と試料表面との間に働く相互作用 が引力である場合には、周波数シフトδfは の値となり、距離Zを大きくしてゆくに従い0 に漸近する。原子欠陥上でのδfカーブをδf Defect カーブとする(ステップS12)。原子欠陥の位置 試料表面のFM-AFM凹凸観察像から視覚的に認 することができる。ここで、例えば非特許 献2に記載の、δfカーブからFカーブへの変 理論を適用するためには、周波数シフトδf ほぼ0となるような十分に遠い距離までの範 のδfカーブを測定する必要がある。この距 は一般的に数十nm程度である。

 上記公知の変換理論に基づいて周波数シフ δfから相互作用力Fへの変換演算を行い、δf Defect カーブから原子欠陥上での相互作用力と探針 -試料表面間の距離Zとの関係を示すF Defect カーブを得る(ステップS13)。Fカーブは図15(b) 示すように、横軸に探針-試料表面間距離Z とり、縦軸に相互作用力Fをとった図である

 試料表面を平面、探針の先端を球であると 定したファン・デル・ワールス力モデル等 用い、F Defect カーブに対しフィッティングを行い、仮定し たモデルの妥当性を確認する。これにより、 遠距離相互作用力F LR のフィッティングカーブが決定される(ステ プS14)。但し、実際には、短距離相互作用力F SR のみを求めるのが目的である場合には、遠距 離相互作用力F LR のフィッティングカーブを求める必要はなく F Defect カーブをそのまま用いてもよい。

 続いて、原子間力顕微鏡を用いて、目的と る原子上でδfカーブを取得する。このδfカ ブは短距離相互作用力F SR と遠距離相互作用力F LR との両方を反映したものである。このδfカー ブをδf Atom カーブとする(ステップS15)。目的原子の位置 試料表面のFM-AFM凹凸観察像から決めること できる。このδf Atom カーブも上記δf Defect カーブと同様に数十nm程度までの範囲での測 を必要とする。

 ステップS13と同様に上記変換理論に基づい 周波数シフトδfから相互作用力Fへの変換を 行い、δf Atom カーブから、目的原子上での相互作用力と探 針-試料表面間の距離Zとの関係を示すF Atom カーブを得る(ステップS16)。 

 F Atom カーブは遠距離相互作用力と短距離相互作用 力との和を反映したものであるので、F Atom カーブからステップS14で求めた遠距離相互作 用力F LR のフィッティングカーブ(又はF Defect カーブ)を差し引くことでF SR カーブを算出し、このF SR カーブから目的原子上での短距離相互作用力 F SR を求める(ステップS17)。

 しかしながら、上述した従来の短距離相互 用力F SR の算出方法には次のような幾つかの問題点が ある。

(1)例えば半導体表面とシリコン製の探針との 間の接触電位差は通常±1V程度であり、上記 テップS11では、これに相当するような適当 バイアス電圧を探針-試料表面間に印加する とにより静電気力F ele を実験的に最小にするようにしている。しか しながら、このようにバイアス電圧を印加し ても静電気力F ele が完全にゼロになるとは限らないため、その 影響が無視できず精度を低下させる可能性が ある。また、イオン結晶のような絶縁性試料 の場合には探針先端と試料表面との間にバイ アス電圧を印加することが困難であるために 、接触電位差の補償が実質的に不可能である 。

(2)多くのFM-AFMでは、探針-試料表面間の微 な距離の制御を行うために圧電素子(ピエゾ 子)が使用されている。その場合、長い距離 範囲のδfカーブを取得するためには圧電素子 への印加電圧を大きく変化させる必要がある が、そうすると圧電素子のクリープ(印加電 を一定に維持しても緩やかな変位が生じる 象)が問題となり易く、位置制御の精度の低 が懸念される。また、長い距離範囲のδfカ ブを取得するには測定に時間が掛かり、熱 よる探針や試料の膨張に伴う探針-試料表面 間距離のドリフトの影響が顕著になる。こう したことから、δfカーブを測定すべき距離範 囲はできるだけ狭いことが望ましい。

(3)非特許文献2に記載の手法を用いたδfカ ブからFカーブへの変換を行う際には、コン ュータの演算速度にも依るが数分から数十 の演算時間を要する。例えば米国インテル 製のXeon 3GHzデュアルプロセッサを搭載した ワークステーションを用いた場合、1024ポイ トのδfカーブからFカーブへの変換を行うの 5分以上の時間が掛かる。上記の従来方法で は、こうした時間の掛かる計算をステップS13 及びS16の2回行う必要があり、これが解析時 を一層長くすることになる。特に、或る1点 けの短距離相互作用力を求める場合であれ よいが、複数点の短距離相互作用力を求め いような場合には非常に時間が掛かり実用 に乏しい。

デュリング(U. Durig)、「エクストラクテ ング・インタラクション・フォーシズ・ア ド・コンプリメンタリー・オブザーバブル ・イン・ダイナミック・プローブ・マイク スコピー(Extracting interaction forces and complem entary observables in dynamic probe microscopy)」、 プライド・フィジックス・レターズ(Applied P hysics Letters) vol. 76(2000), pp. 1203 ギエシブル(F. J. Giessibl)、「ア・ダイレ クト・メソッド・トゥー・カルキュレイト・ ティップ-サンプル・フォーシズ・フロム・ リクエンシー・シフツ・イン・フリクエン ー-モデュレーション・アトミック・フォー ・マイクロスコピー(A direct method to calcula te tip-sample forces from frequency shifts in frequen cy-modulation atomic force microscopy)」、アプライ ・フィジックス・レターズ(Applied Physics Let ters) vol. 78(2001), pp. 123 サダール(John E. Sader)ほか1名、「アキュ レイト・フォーミュラーズ・フォー・インタ ラクション・フォース・アンド・エナジー・ イン・フリクエンシー・モデュレーション・ フォース・スペクトロスコピー(Accurate formula s for interaction force and energy in frequency modu lation force spectroscopy)」、アプライド・フィ ックス・レターズ(Applied Physics Letters) vol.  84(2004), pp. 1801 大藪(Noriaki Oyabu)ほか7名、「シングル・ トミック・コンタクト・アドヒージョン・ ンド・ディシペイション・イン・ダイナミ ク・フォース・マイクロスコピー(Single Atom ic Contact Adhesion and Dissipation in Dynamic Force Microscopy)」、フィジカル・レビュー・レター ズ(Physical Review Letters) vol. 96(2006), pp. 16101 杉本(Yoshiaki Sugimoto)ほか6名、「リアル・ トポグラフィー,アトミック・リラクゼイシ ン, アンド・ショート-レンジ・ケミカル・ ンタラクションズ・イン・アトミック・フ ース・マイクロスコピー:ザ・ケース・オブ ・ジ・α-Sn/Si(111)-(√3×√3)R30°・サーフェス(R eal topography, atomic relaxations, and short-range ch emical interactions in atomic force microscopy: The c ase of the α-Sn/Si(111)-(√3×√3)R30° surface)」 フィジカル・レビューB(Physical Review B) vol. 73(2006), pp. 205329 ランツ(M. A. Lantz)ほか7名、「クォンテ テイティブ・メジャーメント・オブ・ショ ト-レンジ・ケミカル・ボンディング・フォ シズ(Quantitative Measurement of Short-Range Chemica l Bonding Forces)」、サイエンス(Science) vol. 291 (2001), pp. 2580

 本発明は上記のような様々な課題を解決 るために成されたものであり、その目的と るところは、δfカーブを測定する距離範囲 狭くするとともにその測定に要する時間を 縮化して圧電素子のクリープや熱の影響を 減することができる原子間力顕微鏡及び原 間力顕微鏡を用いた相互作用力測定方法を 供することにある。

 また本発明の他の目的とするところは、 性能のコンピュータを利用しても時間を要 ていた演算時間を短縮化することによりス ープットを向上させ、特に試料表面上の多 点の短距離相互作用力を容易に得ることを 能とした原子間力顕微鏡及び原子間力顕微 を用いた相互作用力測定方法を提供するこ にある。

 本願発明者は、過去の研究に基づく技術的 検討と考察の結果、周波数シフトδfが、遠 離相互作用力F LR に由来する周波数シフトδf LR と短距離相互作用力F SR に由来する周波数シフトδf SR との単純な線形結合で表すことができるとの 新たな知見を得た。この知見によれば、或る 原子上の短距離相互作用力を求める作業は、 従来行われているように、目的原子上と原子 欠陥上とで得られた2つのδfカーブをそれぞ 独立に変換して2つのFカーブを求め、この2 のFカーブの差を計算するという手順を踏ま 、2つのδfカーブの段階で差を計算し、その 結果得られた1つの差のδfカーブを変換して1 のFカーブを求める、という手順で済ますこ とができる。

 即ち、本発明に係る原子間力顕微鏡を用い 相互作用力測定方法は、試料表面に近づけ 探針を保持するカンチレバーを共振周波数 振動させたときに、試料表面の原子と探針 端との間に働く相互作用によって変化する 記探針を保持するカンチレバーの振動周波 を検出する周波数変調検出方式の原子間力 微鏡を用いて、試料表面の原子と探針先端 の間に働く短距離相互作用力を測定する測 方法であって、
 a)試料表面の目的原子上での、探針先端と 料表面との間の距離Zと前記振動周波数の共 周波数からの変化量(周波数シフト)δfとの 係を示す原子上δfカーブを測定する原子上 定ステップと、
 b)試料表面の原子欠陥上での、探針先端と 料表面との間の距離Zと前記振動周波数の共 周波数からの変化量δfとの関係を示す欠陥 δfカーブを測定する欠陥上測定ステップと
 c)前記原子上δfカーブと前記欠陥上δfカー との差である差分δfカーブを計算する差演 ステップと、
 d)前記差分δfカーブにおける周波数変化量 相互作用力に変換する演算を行うことによ 短距離相互作用力を求める変換演算ステッ と、
 を有することを特徴としている。

 目的原子上で得られるδfカーブは、遠距離 互作用力に由来する周波数シフトδf LR と短距離相互作用力に由来する周波数シフト δf SR との和を反映したものであり、一方、原子欠 陥上では短距離相互作用力は働かないため遠 距離相互作用力に由来する周波数シフトδf LR のみを反映したものであると考えることがで きる。したがって、両δfカーブの差をとった 差分δfカーブは短距離相互作用力に由来する 周波数シフトδf SR のみを反映したものである。この差分δfカー ブをFカーブに変換する際に既に遠距離相互 用力の影響はないものとみなせるので、変 理論を適用するために、短距離相互作用力 働く距離範囲で差分δfカーブが得られてい ば十分である。

 こうしたことから、上記原子上測定ステ プ及び上記欠陥上測定ステップでは、最大 1nm以下の距離Zの範囲のδfカーブを求めるよ うにすればよい。実際には、1nmまで必要とさ れることは少なく、0.5nm以下の距離Zの範囲の δfカーブであれば十分であることが多い。し たがって、δfカーブを測定すべき距離範囲は 従来方法に比べてかなり狭くて済む。

 上記目的原子や原子欠陥はFM-AFMで得られ 凹凸観察像で視覚的に確認することができ 。そこで、上記のような方法で短距離相互 用力を求めるための目的原子の位置や原子 陥の位置については、ユーザーが凹凸観察 を見ながら手動で指定する方法と、例えば 像認識などを利用して凹凸観察像から自動 に抽出する方法とが考えられる。

 即ち、上記発明に係る相互作用力測定方法 実施する、本発明に係る原子間力顕微鏡の 1の態様は、試料表面に近づけた探針を保持 するカンチレバーを共振周波数で振動させた ときに、試料表面の原子と探針先端との間に 働く相互作用によって変化する前記探針を保 持するカンチレバーの振動周波数を検出する 周波数変調検出方式の原子間力顕微鏡におい て、
 a)試料表面の所定領域を一次元的又は二次 的に走査しながら試料表面の凹凸観察像を 成して表示する凹凸観察像取得手段と、
 b)前記凹凸観察像取得手段により表示され 凹凸観察像上で少なくとも1つの目的原子及 1つの原子欠陥をユーザーが指定するための 指定手段と、
 c)試料表面にあって前記指定手段により指 された目的原子上での、探針先端と試料表 との間の距離Zと前記振動周波数の共振周波 からの変化量(周波数シフト)δfとの関係を す原子上δfカーブを測定する原子上測定実 手段と、
 d)試料表面にあって前記指定手段により指 された原子欠陥上での、探針先端と試料表 との間の距離Zと前記振動周波数の共振周波 からの変化量δfとの関係を示す欠陥上δfカ ブを測定する欠陥上測定実行手段と、
 e)前記原子上δfカーブと前記欠陥上δfカー との差である差分δfカーブを計算する差演 手段と、
 f)前記差分δfカーブにおける周波数変化量 相互作用力に変換する演算を行うことによ 短距離相互作用力を求める変換演算手段と
 を備えることを特徴としている。

 この第1の態様の原子間力顕微鏡によれば 、試料表面上における任意の位置にある目的 原子についての短距離相互作用力を求めるこ とができる。また、原子欠陥上では遠距離相 互作用力のみが働くが、一般に遠距離相互作 用力は数十~数百nm(或いはそれ以上)の距離で 響を受けるため、δfカーブを測定する目的 子と原子欠陥の位置が互いに離れていると 試料表面の凹凸又は形状などの影響で、働 遠距離相互作用力に違いが生じることがあ 得る。これに対し、上記態様の原子間力顕 鏡によれば、ユーザーが自らの判断で目的 子に最も又は相対的に近接した原子欠陥を 択して測定に供することができる。したが て、高い精度で以て短距離相互作用力を算 することができる。

 また上記発明に係る相互作用力測定方法を 施する、本発明に係る原子間力顕微鏡の第2 の態様は、試料表面に近づけた探針を保持す るカンチレバーを共振周波数で振動させたと きに、試料表面の原子と探針先端との間に働 く相互作用によって変化する前記探針を保持 するカンチレバーの振動周波数を検出する周 波数変調検出方式の原子間力顕微鏡において 、
 a)試料表面の所定領域を一次元的又は二次 的に走査しながら試料表面の凹凸観察像を 成する凹凸観察像取得手段と、
 b)前記凹凸観察像を画像解析することで少 くとも1つの目的原子及び1つの原子欠陥を抽 出する抽出手段と、
 c)試料表面にあって前記抽出手段により抽 された目的原子上での、探針先端と試料表 との間の距離Zと前記振動周波数の共振周波 からの変化量(周波数シフト)δfとの関係を す原子上δfカーブを測定する原子上測定実 手段と、
 d)試料表面にあって前記抽出手段により抽 された原子欠陥上での、探針先端と試料表 との間の距離Zと前記振動周波数の共振周波 からの変化量δfとの関係を示す欠陥上δfカ ブを測定する欠陥上測定実行手段と、
 e)前記原子上δfカーブと前記欠陥上δfカー との差である差分δfカーブを計算する差演 手段と、
 f)前記差分δfカーブにおける周波数変化量 相互作用力に変換する演算を行うことによ 短距離相互作用力を求める変換演算手段と
 を備えることを特徴としている。

 この第2の態様の原子間力顕微鏡では、所 定範囲内に含まれる全て又は一部の原子につ いて順次、前記短距離相互作用力を求めるこ とで該所定範囲内の前記短距離相互作用力の 分布を示す情報を作成する分布情報作成手段 を備える構成としてもよい。

 この第2の態様の原子間力顕微鏡によれば 、個々の原子の1個ずつについて自動的に短 離相互作用力を求めることができるので、 えば原子直上での力の相違を調べたり、或 範囲内に含まれる全ての原子直上の力のマ ピング図を作成したりすることが容易に行 る。

 なお、上述したように原子上のδfカーブ 定の位置と原子欠陥上のδfカーブ測定の位 とは近いほうが望ましいから、上記抽出手 は、任意の目的原子に対し最も近接する原 欠陥を選択する等、目的原子と原子欠陥と 抽出に際し条件を課すようにするとよい。

 さらにまた上記発明に係る相互作用力測定 法を実施する、本発明に係る原子間力顕微 の第3の態様は、試料表面に近づけた探針を 保持するカンチレバーを共振周波数で振動さ せたときに、試料表面の原子と探針先端との 間に働く相互作用によって変化する前記探針 を保持するカンチレバーの振動周波数を検出 する周波数変調検出方式の原子間力顕微鏡に おいて、
 a)試料表面の所定領域を一次元的又は二次 的に走査しながら試料表面の凹凸観察像を 成する凹凸観察像取得手段と、
 b)試料表面にあって決められた位置での、 針先端と試料表面との間の距離Zと前記振動 波数の共振周波数からの変化量(周波数シフ ト)δfとの関係を示す原子上δfカーブを測定 る原子上測定実行手段と、
 c)前記凹凸観察像を画像解析することで前 原子上測定実行手段により測定が行われる は測定が行われた位置に近接する原子欠陥 抽出する抽出手段と、
 d)試料表面にあって前記抽出手段により抽 された原子欠陥上での、探針先端と試料表 との間の距離Zと前記振動周波数の共振周波 からの変化量δfとの関係を示す欠陥上δfカ ブを測定する欠陥上測定実行手段と、
 e)前記原子上δfカーブと前記欠陥上δfカー との差である差分δfカーブを計算する差演 手段と、
 f)前記差分δfカーブにおける周波数変化量 相互作用力に変換する演算を行うことによ 前記位置における短距離相互作用力を求め 変換演算手段と、
 を備えることを特徴としている。

 この第3の態様の原子間力顕微鏡では、原 子の直上における短距離相互作用力を求める のではなく、試料表面上で予め決められた位 置(例えば試料上の法線に直交する面内で2軸 向のそれぞれに所定間隔毎に設定された位 など)における短距離相互作用力を求める。 したがって、厳密には原子上でのδfカーブを 測定しているとは限らず、原子欠陥上である 可能性もあるし、原子の上ではあっても直上 ではない可能性も高い(但し、ここでは原子 陥上である確率は低いので、便宜上、「原 上δfカーブ」を測定しているということと る)。

 この第3の態様の原子間力顕微鏡の場合、 所定範囲内に複数設定された各位置について 順次、前記短距離相互作用力を求めることで 該所定範囲内の前記短距離相互作用力の分布 を示す情報を作成する分布情報作成手段を備 える構成とするのが好ましい。

 第3の態様の原子間力顕微鏡では、例えば 試料表面上に仮想的に描いた格子の交点の位 置の短距離相互作用力のマッピング図を作成 することが容易に行える。これにより、試料 の表面構造をより詳しく調査することができ る。

 本発明に係る原子間力顕微鏡及び原子間 顕微鏡を用いた相互作用力測定方法によれ 、遠距離相互作用力の一要素である静電気 の影響は計算の過程で消失するので、静電 力の影響を無視するための、つまりは探針- 試料表面間の接触電位差を補償するためのバ イアス電圧を印加する必要がない。したがっ て、例えば絶縁性の試料のようにバイアス電 圧を印加することが困難であるような試料で も、静電気力の影響を受けずに短距離相互作 用力を求めることができる。

 また、従来、目的原子上及び原子欠陥上 それぞれ、数nmから数十nmの距離範囲でのδf カーブを求める必要があったが、本発明によ れば、0.5nmからたかだか1nm程度の距離範囲で δfカーブを測定すればよくなる。この結果 探針を振動させるための圧電素子に印加す 電圧の変化量が小さくて済み、圧電素子の リープを減らして距離制御の精度を高める とができる。それに伴い、探針が試料表面 接触して探針が破損するような事故も抑止 きる。また、δfカーブの測定の所要時間も 縮できるので、測定中の探針-試料表面間の 距離の熱ドリフトの影響も抑えることができ る。

 さらにまた、従来、δfカーブからFカーブ への変換の演算処理が2回必要であったが、 発明によればこの演算処理が1回で済む。こ 演算処理に要する時間は比較的長いため、 算処理回数が半分で済むことで結果を得る での時間を短縮することができる。この時 短縮効果と上記のようにδfカーブの測定自 の所要時間の短縮効果とを合わせて、スル プットの改善を図ることができる。

 また、測定のスループットの向上や解析 容易になることから、試料表面上の短距離 互作用力の二次元的なマッピング測定や、 距離相互作用力から求まるポテンシャルの 次元的なマッピング測定も行い易くなる。

本発明の一実施形態である原子間力顕 鏡を用いた短距離相互作用力測定方法の手 を示すフローチャート。 図1に示した測定方法を説明するための 概念図。 試料表面の原子上及び原子欠陥上での fカーブの測定結果の一例を示す図。 Si(111)7×7再構成表面の超高真空中にお るFM-AFM凹凸観察画像。 図4の試料のアドアコム上のδfカーブ、 コーナホール上のδfカーブ及び両者の差によ るカーブを示す図。 本発明の測定方法により求めた短距離 互作用力と従来方法で求めた短距離相互作 力との比較のための図。 静電気力の有無による短距離相互作用 の算出結果の相違を説明するためδfカーブ 示す図。 静電気力の有無による短距離相互作用 の算出結果の相違を説明するためFカーブを 示す図。 本発明の一実施例である原子間力顕微 の概略構成図。 図9に示した原子間力顕微鏡を利用し 短距離相互作用力測定動作を説明するため 図。 本発明の他の実施例である原子間力顕 微鏡の概略構成図。 図11に示した原子間力顕微鏡を利用し 短距離相互作用力測定動作を説明するため 図。 さらに他の実施例による原子間力顕微 鏡を利用した短距離相互作用力測定動作を説 明するための図。 原子間力顕微鏡を用いた従来の短距離 相互作用力測定方法の手順を示すフローチャ ート。 原子間力顕微鏡を用いた従来の短距離 相互作用力測定方法を説明するためのδfカー ブ及びFカーブを示す図。

符号の説明

1…カンチレバー
2…探針
3…圧電素子
4…加振制御部
5…試料支持台
6…垂直位置走査部
7…水平位置走査部
8…変位検出部
9…FM復調部
10…垂直位置制御部
11…水平位置制御部
12…主制御部
13…操作部
14…表示部
15…画像処理部
16…相互作用力算出処理部
17…原子/欠陥識別処理部

 まず、本発明に係る短距離相互作用力の測 方法の原理を説明する。前述のように、原 間力顕微鏡において探針先端と試料表面と 間に働く総合的な相互作用力F total は短距離相互作用力F SR と遠距離相互作用力F LR との和で表せることが知られている。また、 遠距離相互作用力F LR は通常、ファン・デル・ワールス力F vdw と静電気力F ele とが支配的あり、これら2つの力の和で表す とができる。したがって、次の(1)式が成り つ。

 一方、周波数シフトδfと相互作用力Fとの関 係は、非特許文献3によると次の(2)式で表さ る。
 ここで、aは探針を保持するとともに振動さ せるカンチレバーの振動振幅、kはカンチレ ーのばね定数、f 0 は共振周波数である。いま、この(2)式のFに(1 )式のF total を代入すると、次の(3)式となる。

 この(3) 式で、次の(4)、(5)式のようにおけ 、
(3)式は次の(6)式に書き換えることができる。
 (6)式は、周波数シフトδfが、遠距離相互作 力F LR に由来する周波数シフトδf LR と短距離相互作用力F SR に由来する周波数シフトδf SR との線形結合で表されることを意味している 。

 一方、周波数シフトδfから相互作用力Fへの 変換式は、上記非特許文献2において次の(7) で示されている。
 但し、ここで、ω(z)=δf(z)/f 0

 この(7)式に次の(8)式を代入すれば、(9)式が られる。
 (4)式、(5)式の関係から、(9)式において右辺 1項が短距離相互作用力F SR 、右辺第2項が遠距離相互作用力F LR に対応することが分かる。

 以上のことから、短距離相互作用力F SR は、ω SR (z)=δf SR /f 0 から求められることが分かる。

 具体的に、本発明の一実施形態による測定 法では、図1に示すフローチャートに従った 手順で短距離相互作用力F SR を求める。図2はこの測定方法を説明するた の、探針を保持するカンチレバー及び試料 面付近の模式図である。

 まず、FM-AFMにより、図2(a)に示すように短距 離相互作用力F SR が働かない原子欠陥上でのδfカーブ(δf Defect カーブ)を取得する(ステップS1)。具体的には 探針2の先端と試料Sの表面との間の距離Zを ど0に近い状態(例えば0.1nm程度)から1nm程度 での範囲で少しずつ変化させたときの共振 波数fの変化量、つまり周波数シフトδfを測 する。その結果、例えば図3中に実線で示す ようなδf Defect カーブが得られる。

 次に、同じFM-AFMにより、図2(b)に示すように 、遠距離相互作用力F LR と短距離相互作用力F SR との両方が働く目的原子上でのδfカーブ(δf Atom カーブ)を取得する(ステップS2)。その手法は 定位置が異なるほかは、δf Defect カーブの取得時と同じである。その結果、例 えば図3中に一点鎖線で示すようなδf Atom カーブが得られる。

 δf Defect カーブは遠距離相互作用力F LR に由来する周波数シフトδf LR であり、δf Atom カーブは遠距離相互作用力F LR に由来する周波数シフトδf LR と短距離相互作用力F SR に由来する周波数シフトδf SR との和δf LR +δf LR である。したがって、δf Defect カーブとδf Atom カーブとの差は短距離相互作用力F SR に由来する周波数シフトδf SR となる筈である。そこで、δf Atom カーブからδf Defect カーブを差し引いて差分カーブを求める(ス ップS3)。この差分カーブは短距離相互作用 F SR のみに由来するものであるとみなせるからδf SR カーブであり、これから上述の例えば非特許 文献2に基づく理論に従った変換演算を実行 て、相互作用力Fカーブを得る。そして、こ Fカーブから目的原子上の短距離相互作用力 F SR を求める(ステップS4)。例えば、後述のよう Fカーブには明確な最小値が存在するから、 の最小値を短距離相互作用力F SR とすることができる。

 上記手順に従った測定方法による具体的 測定結果の一例を、従来の測定方法と比較 て説明する。

 測定対象である試料表面としてSi(111)7X7再 構成表面を用いた。図4は超高真空中におけ 上記試料表面のFM-AFM凹凸観察像である。走 範囲は8nm×8nmである。試料表面(1層目)には12 のSiアドアトム原子(吸着した原子)から成る 菱形のユニットセルが存在し、そのユニット セルの四隅にはコーナーホールと呼ばれる原 子欠陥が見られる。

 この試料表面について、探針-試料表面間の 接触電位差を測定したところ、22.5mVと非常に 小さかった。そこで探針-試料表面間に印加 るバイアス電圧は0とした(なお、本発明によ る測定方法ではバイアス電圧の印加は不要で あるが、従来方法での測定も同時に行うため にバイアス電圧を考慮した)。その条件の下 、短距離相互作用力F SR 及び遠距離相互作用力F LR に由来するδfカーブとして図4中のアドアト 原子上でのδf Atom カーブを取得するとともに、遠距離相互作用 力F LR のみに由来するδfカーブとして図4中のコー ーホール上でのδf Defect カーブを取得した。こうして得た2つのδfカ ブ(δf Atom カーブ及びδf Atom カーブ)と両者の差のカーブを図5に示す。上 のようにこの差分カーブはδf SR カーブであるから、これに上記の変換処理を 施してF SR カーブを算出した。

 一方、従来方法では図14のフローチャート 示したように、δf Defect カーブとδf Atom カーブとをそれぞれ変換処理してF Defect カーブとF Atom カーブを求め、F Defect カーブについてフィッティングを行ってF LR フィッティングカーブを求めた。図6に本発 により求めたF SR カーブと従来方法により求めたF SR カーブとを示す。このとき、それぞれの短距 離相互作用力F SR の最小値は本発明で-2.31nN、従来方法で-2.45nN 求まり、両者の差は6%に過ぎない。この結 から、本発明によれば従来方法で得られる 果とほぼ同じ結果を得られることが分かる

 上記測定例は、探針-試料表面間の接触電位 差が非常に小さいことから静電気力F ele が無視できる状態であると考えられる。そこ で静電気力F ele が無視できない状態である場合を想定するた めに、探針-試料表面間に擬似的に静電気力 加えるべく試料にバイアス電圧を印加した 態での測定を行った。

 図7には、バイアス電圧が0Vである場合とバ アス電圧を-500mVとした場合でのそれぞれの 分δfカーブを示す。差分δfカーブはよい一 をしていることが分かる。また、図8はその 2つの差分δfカーブをそれぞれ相互作用力に 換して求めたF SR カーブである。バイアス電圧が0Vであるとき 短距離相互作用力F SR の最小値は-2.31nN、バイアス電圧が-500mVであ ときの短距離相互作用力F SR の最小値は-2.41nNであってその差は4%にすぎず 、よく一致していることが分かる。即ち、探 針-試料表面間に無視できない程度の静電気 が存在する場合であっても、その静電気力 補償するようなバイアス電圧印加を行うこ なく高い精度で短距離相互作用力F SR を求めることができる。また、図7及び図8か 、差分δfカーブ及びF SR カーブはいずれも距離Zが1nm以上ではほぼ0で ることから、本発明の測定方法では、1nm程 以下の距離範囲でδfカーブの測定を行えば 分にであることが分かる。

 次に本発明に係る短距離相互作用力測定 法を利用したFM-AFMの一実施例を図9、図10に り説明する。図9は本実施例によるFM-AFMの概 略ブロック構成図、図10は測定動作を説明す ための図である。

 図9において、その長さが例えば100~200μm 微小な板ばねのようなカンチレバー1の一端 は探針2が設けられ、カンチレバー1の他端 は加振部としての圧電素子3が取り付けられ いる。圧電素子3は加振制御部4から印加さ る電圧により微小変位し、これによりカン レバー1をその共振周波数で以て振動させる カンチレバー1の固有の共振周波数frは、カ チレバー1のばね定数がk、探針の質量がmで るときに、おおよそfr=1/2π×√(k/m)である。

 測定対象である試料Sは試料支持台5上に 置され、試料支持台5は垂直位置走査部6によ り垂直方向(Z軸方向)に移動自在であり、また 水平位置走査部7により水平面内の2次元方向( X軸方向及びY軸方向)に移動自在である。共振 周波数fr及び所定の振幅で探針2を振動させつ つ試料Sの表面に近づけると、探針2と試料S表 面との間に力学的な相互作用が働く。この相 互作用力によってカンチレバー1の共振周波 frは変化する。この変化量、つまり周波数シ フトδfは探針2と試料S表面との間に引力が作 した場合には負の値となり、斥力が作用し 場合には正の値となる。

 変位検出部8は探針2の機械的な変位を検 するものであり、例えば光源と2分割(又は4 割)の光検出器と該光検出器の複数の検出信 を演算処理する演算回路とから成る。変位 出部8による変位検出信号はFM(周波数変調) 調部9に入力され、FM復調部9は変位検出信号 対しFM復調を行って共振周波数の変化量、 まり周波数シフトδfを検出する。FM復調部9 、例えば位相同期ループ(PLL)、インダクタ及 びキャパシタを用いた共振回路、各種フィル タなどにより構成することができる。

 加振制御部4はカンチレバー1が上記のよ な共振周波数で振動するように圧電素子3に 圧を印加する。この状態で垂直位置走査部6 により試料Sをz方向に移動させることで探針2 の先端に試料Sを近づけると、前述のように 針2と試料Sとの間に働く力学的な相互作用に よりカンチレバー1の実効的なばね定数が変 し共振周波数が変化する。この変化は探針2( カンチレバー1の一端)の変位量に現れるから FM復調部9は変位検出部8による変位検出信号 に基づいて共振周波数の変化量(周波数シフ δf)を検出し、この検出信号を垂直位置制御 10、主制御部12及び相互作用力算出処理部16 与える。

 垂直位置制御部10は垂直位置走査部6を制 することにより、z軸方向の探針2と試料Sと 間の距離Zを変化させるものである。一方、 水平位置制御部11は水平位置走査部7を制御す ることにより、x軸及びy軸の2軸方向に試料S 移動させることで、試料S上で探針2による測 定位置を走査するものである。垂直位置制御 部10及び水平位置制御部11はいずれも主制御 12により統括的に制御される。

 例えば試料S上の所定の二次元領域の凹凸 観察像を得る場合、垂直位置制御部10はFM復 部9から与えられる周波数シフトδfが一定と るように垂直位置走査部6を駆動して試料支 持台5をz軸方向に変位させる。同時に水平位 制御部11は、探針2による測定位置が上記所 の二次元領域内で移動するように水平位置 査部7を走査する。このときz軸方向の変位 δzは試料Sの表面の凹凸や形状に応じた値と るから、画像処理部15は水平位置制御部11に より設定される試料S上のx軸及びy軸方向の位 置を示すアドレスと変位量δzとから、凹凸観 察像を作成する。これにより、例えば図10に すような凹凸観察像を作成することができ 。

 相互作用力算出処理部16は、FM復調部9か 与えられる周波数シフトδf、垂直位置制御 10で設定される探針-試料表面間距離Z、及び 平位置制御部11により設定される試料S上のx 軸及びy軸方向の位置を示すアドレスを受け 、上述したような所定の演算処理を行って 距離相互作用力を算出するものである。ま 主制御部12には、ユーザーが操作する操作部 13と、二次元画像を表示可能な表示部14とが 続されている。

 なお、主制御部12、画像処理部15、相互作 用力算出処理部16などの機能の一部又は全て 、パーソナルコンピュータにインストール れた専用の制御・処理ソフトウエアを実行 ることにより実現することができる。

 この実施例によるFM-AFMにより短距離相互 用力を測定する場合には次のようにする。 ず、ユーザーは操作部13により試料S上の所 の領域の凹凸観察像を取得するように指示 与える。これに応じて主制御部12は上述し ように各部を制御することで、図10に示すよ うな凹凸観察像を取得し、これを表示部14の 面上に表示させる。ユーザーはこの凹凸観 像を確認して、短距離相互作用力を調べた 目的原子の位置を例えば画面上に重畳表示 れた矢印P1で指示することで指定する。ま 、原子欠陥の位置も例えば画面上に重畳表 された矢印P2で指示することで指定する。一 般的には、このとき目的原子にできるだけ近 い位置にある原子欠陥を指定することが望ま しい。もちろん、目的原子と原子欠陥の位置 の指定は例えばx軸-y軸上のアドレス等で直接 指定してもよい。

 主制御部12は上記指定を受けて、まず指 された原子欠陥が探針2先端の直下に来るよ に水平位置制御部11を制御し、これにより 平位置走査部7が駆動されて試料Sがx-y面内で 移動する。その後に、主制御部12は垂直位置 御部10により垂直位置走査部6を駆動し、探 2の先端と試料Sとの間の距離Zが例えば0.1nm 度にごく近接するように試料Sをz軸方向に移 動させる。そして、その状態から距離Zを少 ずつ大きくしながら(例えば1nmまで)周波数シ フトδfを検出し、距離Zと周波数シフトδfと 相互作用力算出処理部16に読み込ませる。こ れにより、原子欠陥上のδfカーブが求まる。

 次に、主制御部12は指定された目的原子 探針2先端の直下に来るように水平位置制御 11を制御し、これにより水平位置走査部7が 動されて試料Sがx-y面内で移動する。そして 、上記と同様にして距離Zを例えば0.1~1nmの範 で少しずつ変化させながら周波数シフトδf 検出し、距離Zと周波数シフトδfとを相互作 用力算出処理部16に読み込ませる。これによ 、目的原子上のδfカーブが求まる。

 相互作用力算出処理部16は2つのδfカーブ ら差分δfカーブを計算し、この差分δfカー に対し変換処理を施すことでFカーブを算出 し、このFカーブから短距離相互作用力を求 て表示部14に表示する。これにより、ユーザ ーが指定した目的原子の直上の短距離相互作 用力が求まり、必要に応じて、任意の位置の 原子の上の短距離相互作用力を求めることが できる。

 上記実施例のFM-AFMではユーザーが目視で 凸観察像を見て目的原子や原子欠陥の位置 指定する必要があるが、それぞれの画像上 形態や色の特徴を捉えて自動的に測定位置 決める構成とすることもできる。図11はこ した他の実施例によるFM-AFMの概略ブロック 成図であり、図9と同一又は相当する構成要 には同一の符号を付してある。上記実施例 相違する主な点は、画像処理部15で形成さ る凹凸観察像に対し画像認識処理を実行し 原子の位置と原子欠陥の位置とを自動的に 別する原子/欠陥識別処理部17を備えること ある。

 原子/欠陥識別処理部17は、例えば図12(a) 示すような凹凸観察像に対する処理を実行 て図12(b)に示すように原子位置(原子の中心 置)及び欠陥位置を特定し、それぞれの位置 x軸-y軸のアドレスを求める。そして、主制 部12は原子/欠陥識別処理部17により指示さ た原子位置及び欠陥位置を用いて上述した うな短距離相互作用力を算出するための測 及び演算を実行するように各部を制御する 例えば図12(b)に示した各原子位置とそれに最 も近接する欠陥位置とを一組として短距離相 互作用力を求める。図12(b)に示したような領 内で位置が特定された全ての原子の直上の 距離相互作用力が得られるので、これに基 いて原子直上の短距離相互作用力の分布画 (例えば等高線画像など)を作成することが きる。

 また、上記実施例では原子直上の短距離 互作用力を求めて例えばその分布画像の作 が可能であるが、試料上の例えば所定の二 元的な領域内で予め決められた位置の短距 相互作用力を求めてその分布画像の作成を う構成とすることもできる。一例として図1 3に示すように、x軸方向にdx間隔、y軸方向にd y間隔の格子の交点を測定位置に定め、この 定位置を原子位置とみなし、その原子位置 該原子位置に最も近い欠陥位置とを一組と て短距離相互作用力を求めることで、上記 定位置毎の短距離相互作用力を求めること できる。これによれば、原子直上ではなく その直上から外れた位置(原子上部側の傾斜 上)の短距離相互作用力の分布画像を作成す ることができる。

 なお、上記実施例は本発明の一例にすぎ 、本発明の趣旨の範囲で適宜、変形、修正 追加を行っても本願請求の範囲に包含され ことは明らかである。