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Patent Searching and Data


Title:
AUSTENITIC STAINLESS STEEL EXCELLENT IN INTERGRANULAR CORROSION RESISTANCE AND STRESS CORROSION CRACKING RESISTANCE, AND METHOD FOR PRODUCING AUSTENITIC STAINLESS STEEL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/136354
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is an austenitic stainless steel which is excellent in intergranular corrosion resistance and stress corrosion cracking resistance. This austenitic stainless steel consists of not more than 0.005 wt% of C, not more than 0.5 wt% of Si, not more than 0.5 wt% of Mn, not more than 0.005 wt% of P, not more than 0.005 wt% of S, 15.0-40.0 wt% of Ni, 20.0-30.0 wt% of Cr, not more than 0.01 wt% of N, not more than 0.01 wt% of O and the balance of Fe and unavoidable impurities. The unavoidable impurities contains not more than 3 wt ppm of B.

Inventors:
KIUCHI KIYOSHI (JP)
IOKA IKUO (JP)
KATO CHIAKI (JP)
MARUYAMA NOBUTOSHI (JP)
TSUKATANI ICHIRO (JP)
TANABE MAKOTO (JP)
NAKAYAMA JUMPEI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/057940
Publication Date:
November 13, 2008
Filing Date:
April 24, 2008
Export Citation:
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Assignee:
JAPAN ATOMIC ENERGY AGENCY (JP)
KOBELCO RES INST INC (JP)
KOBE STEEL LTD (JP)
KIUCHI KIYOSHI
IOKA IKUO
KATO CHIAKI
MARUYAMA NOBUTOSHI
TSUKATANI ICHIRO
TANABE MAKOTO
NAKAYAMA JUMPEI
International Classes:
C22C38/00; B21B3/02; C21D8/02; C22C38/54
Foreign References:
JPS60100629A1985-06-04
JPS52117224A1977-10-01
JPH0813095A1996-01-16
JPS59222563A1984-12-14
JPS59222559A1984-12-14
JPS59222563A1984-12-14
JPH06306548A1994-11-01
JPH0790497A1995-04-04
JPH07238315A1995-09-12
JPH07113146A1995-05-02
JPH0813095A1996-01-16
JPS60100629A1985-06-04
JPS63303038A1988-12-09
JPH0559494A1993-03-09
JPH08269550A1996-10-15
JPH09125205A1997-05-13
JPH05179405A1993-07-20
JPH03264651A1991-11-25
JPH1180905A1999-03-26
JPS6369947A1988-03-30
Other References:
See also references of EP 2143815A4
B. ALTERNATIVELY, IRON AGE, vol. 179, 1957, pages 95
"Stainless steel '87", THE INSTITUTE OF METALS, 1987, pages 234
"Materials and Processes", IRON AND STEEL, vol. 6, 1993, pages 732
Attorney, Agent or Firm:
KOTANI, Etsuji et al. (2-2 Nakanoshima 2-chome,Kita-ku, Osaka-sh, Osaka 05, JP)
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Claims:
 C:0.005wt%以下、Si:0.5wt%以下、Mn:0.5wt%以下、P:0.005wt%以下、S:0.005wt%以下、Ni:15.0~40.0wt%、Cr:20.0~30.0wt%、N:0.01wt%以下、O:0.01wt%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼であって、
 前記不可避的不純物に含まれるBが3wtppm以下であることを特徴とする耐粒界腐食性および耐応力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼。
 前記C、P、S、NおよびOの含有量の合計が0.02wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐粒界腐食性および耐応力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼。
 さらにTiを含有し、
 当該Tiの含有量が、前記C、P、S、NおよびOの含有量の合計に対し、化学量論的に等しい量以上であることを特徴とする請求項2に記載の耐粒界腐食性および耐応力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼。
 耐粒界腐食性および耐応力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼材の製造方法であって、
 請求項1~3の何れかに記載の化学組成を有するステンレス鋼の鋼塊を熱間加工するステップと、
 前記熱間加工によって得られたステンレス鋼材を溶体化処理するステップと
を有し、
 前記溶体化処理ステップは、
 1000~1150℃とする第1の温度範囲内の熱処理温度で1分間以上加熱するサブステップと、
 その後、前記第1の温度範囲内の熱処理温度からの急冷または放冷により常温まで冷却するサブステップと
を有することを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼材の製造方法。
 耐粒界腐食性および耐応力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼材の製造方法であって、
 請求項1~3の何れかに記載の化学組成を有するステンレス鋼の鋼塊を熱間加工するステップと、
 前記熱間加工によって得られたステンレス鋼材を溶体化処理するステップと
を有し、
 前記溶体化処理ステップは、
 1000~1150℃とする第1の温度範囲内の熱処理温度で1分間以上加熱するサブステップと、
 前記第1の温度範囲内の熱処理温度からの急冷または放冷による冷却するサブステップと、
 前記冷却または前記冷却後に、650℃以上とする第2の温度範囲内の熱処理温度で10分間以上加熱するサブステップと、
 その後、当該第2の温度範囲内の熱処理温度からの急冷または放冷により常温まで冷却するサブステップと
を有することを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼材の製造方法。
 前記溶体化処理のステップの後に、
 前記ステンレス鋼材を40%以上75%未満の加工度にて冷間加工するステップと、
 その後、700℃以上の温度範囲内の熱処理温度で10分間以上加熱する再結晶化処理のステップと
をさらに有することを特徴とする請求項4または5に記載の耐粒界腐食性および耐応力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼材の製造方法。
 前記冷間加工のステップと前記再結晶化処理ステップの間に、
 前記ステンレス鋼材を500~650℃の温度範囲内の熱処理温度で30分間以上加熱する析出物の歪み時効析出のステップ
をさらに有することを特徴とする請求項6に記載の耐粒界腐食性および耐応力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼材の製造方法。
 
Description:
耐粒界腐食性および耐応力腐食 れ性に優れたオーステナイト系ステンレス およびオーステナイト系ステンレス鋼材の 造方法

 本発明は、高酸化性の金属イオンを含有 る高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環境や 性子照射を受ける高温高圧水中環境といっ 厳しい粒界腐食環境において、優れた耐粒 腐食性および耐応力腐食割れ性を呈するオ ステナイト系ステンレス鋼およびオーステ イト系ステンレス鋼材の製造方法に関する のである。

 従来、オーステナイト系ステンレス鋼は 一般に硝酸のような酸化性の強い酸を含む 境において表面に不動態皮膜を形成するこ で耐食性を発揮することが知られている。 ーステナイト系ステンレス鋼は、例えば、 酸製造プラントにおいては構造材料として 使用済核燃料の再処理プラントにおいては 使用済核燃料を高濃度の硝酸によって溶解 るための溶解槽や前記溶解槽の溶解液を蒸 させて硝酸を回収するための酸回収蒸発缶 どの材料として、使用されている。また、 ーステナイト系ステンレス鋼は、中性子照 を受ける高温高圧水中環境下の軽水炉炉心 材料としても使用されている。

 オーステナイト系ステンレス鋼材が上記使 済核燃料の再処理プラントの溶解槽や酸回 蒸発缶に使用される場合、使用済核燃料か セリウムイオン(Ce 4+ )、ルテニウムイオン(Ru 3+ )、クロムイオン(Cr 6+ )などの金属イオンが硝酸中に混入している で、硝酸製造プラントよりも酸化性がさら 強い。このため、オーステナイト系ステン ス鋼が粒界腐食を伴う腐食を受けやすい。

 高酸化性の金属イオンを含有する高温の 酸環境下でオーステナイト系ステンレス鋼 を使用するため、以下のような対策が知ら ている。先ず、粒界腐食の原因であるCr欠 層の集成を抑制するため、オーステナイト ステンレス鋼の炭素含有量が極力低くされ 。また、必要に応じて、オーステナイト系 テンレス鋼に少量のNbが添加される。さらに 、オーステナイト系ステンレス鋼材に溶体化 処理が施される。

 また、オーステナイト系ステンレス鋼の 食性を向上させる手法として、例えば、特 文献1~7に記載の技術がある。

 特許文献1には、C:0.005wt%以下、Si:0.4wt%以 、Mn:0.1~12wt%、P:0.005wt%以下、Ni:7~28wt%、Cr:15~30w t%、N:0.06~0.30wt%を含有し、残部が実質的にFeか らなるオーステナイト系ステンレス鋼が開示 されている。このオーステナイト系ステンレ ス鋼は、含有するPの量を限定することで、P 粒界偏析を抑え、オーステナイト系ステン ス鋼の耐粒界腐食性を改善している。

 特許文献2には、C:0.015wt%以下、Si:0.5wt%以 、Mn:2wt%以下、P:0.015wt%以下、Ni:10~22wt%、Cr:15~3 0wt%、Al:0.01wt%以下、Ca:0.002~0.010wt%以下を含有 、残部が実質的にFeからなるオーステナイト 系ステンレス鋼が開示されている。このオー ステナイト系ステンレス鋼は、含有するSi、P およびAlの量を限定すると共に、Caを適量添 することで、優れた耐加工フロー腐食性を している。また、このオーステナイト系ス ンレス鋼は、優れた熱間加工性および高温 酸中での優れた耐食性を呈している。

 特許文献3には、C:0.02wt%以下、Si:0.5wt%以下 、Mn:0.5wt%以下、P:0.03wt%以下、S:0.002wt%以下、Ni :10~16wt%、Cr:16~20wt%、Mo:2.0~3.0wt%、N:0.06~0.15wt%を 有し、残部が実質的にFeからなるオーステ イト系ステンレス鋼が開示されている。こ オーステナイト系ステンレス鋼は、[Ni]+60[N] 4[Mo]≧7を満足し、さらにCaおよびCeのいずれ か一方または両方を、単独または合計で2×[S] ~0.03(wt%)含有することで、トンネル状腐食に する優れた耐食性を呈している。尚、記号[X ]は元素Xの鋼中含有率(wt%)を示す。

 特許文献4には、酸化性の金属イオンを含 有する耐高温硝酸腐食性に優れたオーステナ イト系ステンレス鋼の製造方法が開示されて いる。具体的には、650℃から950℃の範囲内の 温度において1分以上加熱する熱処理を施す 次に、その熱処理の温度が650℃から850℃未 の場合には、急冷または放冷することによ 常温まで冷却する。一方、その熱処理の温 が850℃から950℃の場合には、急冷すること より常温まで冷却する。これにより、この ーステナイト系ステンレス鋼は、優れた耐 温硝酸腐食性を呈している。

 また、特許文献5には、B含有量が30wtppm以 であり、オーステナイト粒径をdとするとき 、B(wtppm)×d(μm)≦700を満足するオーステナイ 系ステンレス鋼およびその製造方法が開示 れている。このオーステナイト系ステンレ 鋼は、B(wtppm)×d(μm)を関数とする所定の温度 上に加熱し、溶体化処理を行うことにより 優れた耐粒界腐食性および耐粒界応力腐食 れ性を呈している。

 特許文献6には、C:0.02wt%以下、Si:0.8wt%以下 、Mn:2.0wt%以下、P:0.04wt%以下、S:0.03wt%以下、Ni: 6~22wt%、Cr:13~27wt%、Al:0.1wt%以下、Cu:0.3wt%以下、 N:0.1wt%以下を含有し、残部が実質的にFeから るオーステナイト系ステンレス鋼が開示さ ている。このオーステナイト系ステンレス は、1.5[Ni]+[Mn]+65([C]+[N])―5[Si]―2.5≦52-2.3([Ni]+ [Mn])-200([C]+[N])などを満足し、含有するBが5wtpp m以下であり、さらにTi、Nb、V、HfおよびTaの から選択される1種または2種以上の元素の合 計が1.0wt%以下にすることで、冷間の加工若し くは変形後において、優れた耐硝酸腐食性を 呈している。

 特許文献7には、清浄な粒界を作り出すこ とからなるオーステナイト系ステンレス鋼の 製造方法が開示されている。具体的には、オ ーステナイト系ステンレス鋼に対し、加工度 40%以上の冷間加工を施す。次に、得られた冷 間加工材を再結晶温度未満の温度、かつ炭化 物が析出する温度に保持し、Pなどの粒界偏 が生じない温度域で再結晶化させる。これ より、このオーステナイト系ステンレス鋼 、酸化剤が含まれる硝酸溶液の腐食環境下 あっても優れた耐食性を呈している。

 一方、オーステナイト系ステンレス鋼材が 性子照射を受ける高温高圧水中環境下の軽 炉炉心に使用される場合、長期の放射線照 により粒界型応力腐食割れ(IGSCC)に対する感 受性が増大する。例えば、溶体化処理した固 溶状態のオーステナイト系ステンレス鋼は、 中性子照射のない炉心外において耐粒界型応 力腐食割れ性を有するが、炉心内において高 レベルの照射、特に中性子照射量で1.0×10 21 n/cm 2 程度以上の照射を受けた場合はそのような抵 抗性は失われていく。このような割れは照射 誘起応力腐食割れ(IASCC)と称して、近年古い 水炉で問題にされつつある。

 この問題を解決する手法として、例えば 特許文献8および9には、オーステナイト系 テンレス鋼の構成元素の含有量を調整する 法が開示されている。また、特許文献10には 、粒界型応力腐食割れの原因となる結晶粒界 への炭化物の析出を抑制するため、化学組成 として、Cを0.03wt%以下に制限し、固溶度の大 なNを0.15wt%以下含有したNi-Crオーステナイト 系ステンレス鋼を1100~1300℃の温度範囲で加熱 することにより、単位粒界当たりの炭化物の 析出量を低減して粒界近傍のCr欠乏量を低減 、かつCr欠乏領域を分散させた鋼およびそ 製造方法が開示されている。

 特許文献11には、C:0.005~0.08wt%以下、Mn:0.3wt% 下、Si+P+S:0.2wt%以下、Ni:25~40wt%、Cr:25~40wt%、Mo+ W:5.0wt%以下、Nb+Ta:0.3wt%以下、Ti:0.3wt%以下、B:0. 001wt%以下などの化学組成を有するオーステナ イト系ステンレス鋼を、1000~1150℃の温度範囲 での溶体化処理、さらに30%までの冷間加工、 その後600~750℃の温度範囲で100時間まで加熱 理を施した耐中性子劣化に優れた高Niオース テナイト鋼が開示されている。この高Niオー テナイト鋼は少なくとも1×10 22 n/cm 2 までの中性子照射を受けた後においても270~35 0℃で70~160気圧の高温高圧水または高温高圧 素飽和水中で、優れた耐応力腐食割れ性を している。また、この高Niオーステナイト鋼 の室温から400℃までの平均膨張係数は15~19×10 -6 /Kの範囲にある。

 特許文献12には、C:0.05wt%以下、Si:1.0~4.0wt% Mn:0.3wt%以下、Ni:6~22wt%、Cr:18~23wt%、Cu:1~3wt%、M o:0.3~2.0wt%、N:0.05wt%以下含有し、S量を0.004wt%以 下まで低減させ、0.0005~0.005wt%の微量Bを添加 、さらにCaとMgの1種または2種を[S]≦[Mg]+1/2、 [Ca]≦0.007だけ添加し、残部が実質的にFeから る高合金オーステナイト系ステンレス鋼を 示している。この鋼は優れた耐食性を損な ことなく熱間加工性を著しく改善している とが開示されている。

 特許文献13には、一方向凝固法によりオ ステナイト系ステンレス鋼のランダム結晶 界を排除して単結晶とする方法が開示され いる。

 特許文献14には、C:0.02wt%以下、N:0.6wt%以下、 Si:1.0wt%以下、P:0.040wt%以下、S:0.030wt%以下、Mn:2 .0wt%以下、Mo:3.0wt%以下、Ni:12~26wt%、Cr:16~26wt%を 含有し、室温でオーステナイト相またはフェ ライト相がオーステナイト母相中に10体積%以 下であり、該母相はサブ結晶粒を有し、さら に対応方位関係からのずれが小さく規則度が 高い結晶粒界の単結晶からなるオーステナイ ト系ステンレス鋼を開示している。このオー ステナイト系ステンレス鋼は耐食性、耐応力 腐食割れ性および優れた機械的性質を呈して いる。

特開昭59-222563号公報

特開平06-306548号公報

特開平07-090497号公報

特開平07-238315号公報

特開平07-113146号公報

特開平08-013095号公報

特開昭60-100629号公報

特開昭63-303038号公報

特開平05-059494号公報

特開平8-269550号公報

特開平09-125205号公報

特開平05-179405号公報

特開平03-264651号公報

特開平11-80905号公報

 オーステナイト系ステンレス鋼が、伝熱 中の硝酸溶液を伝熱管の外側からの加熱沸 により溶解液中から硝酸を回収しようとす サーモサイフォン方式の酸回収蒸発缶で使 された場合、硝酸の蒸発および熱分解に伴 高酸化性イオン生成と還元反応による溶解 が同時に起こる。このため、オーステナイ 系ステンレス鋼の腐食環境は沸騰伝熱面腐 となる。これにより、同一金属表面温度の 漬腐食の場合よりも腐食速度が増大し、そ 腐食速度は時間漸増傾向を示すという厳し 環境である。このため、特許文献1~7に記載 オーステナイト系ステンレス鋼材またはそ 製造方法を使用しても激しい粒界腐食が生 る問題が依然として残っている。

 具体的には、特許文献1ではPの含有量を 定することで、特許文献2および3ではSとの 合力の強いCaやCeを添加することで、MnSの形 が抑制され、圧延方向に進展したMnSに起因 るトンネル状腐食の発生を抑制することが 来ると開示している。しかしながら、Sの粒 界への偏析が抑えられて、粒界腐食の抑制に 対しても有効とある記載されているのみで、 具体的な記述はない。また、特許文献4およ 5では、経済性のみが考慮されており、安定 て良好な耐硝酸腐食性が得られるとは考え くい。

 特許文献6には、B含有量が5wtppm以下、且 、Ti、Nb、V、HfおよびTaの中から選択される1 または2種以上の元素の合計含有量が1.0wt%以 下のオーステナイト系ステンレス鋼が開示さ れている。しかしながら、特許文献6の試験 、65%の沸騰硝酸のみの中に48時間ずつ浸漬と いうマイルドな腐食条件下で行っている。こ の試験は、使用済み核燃料の再処理プラント で使用される高酸化性の金属イオンを含有す る腐食環境を模擬した評価試験であり、ステ ンレス鋼の耐食性の優劣選定には適さない。 また、B量について、通常の不純物元素とし 低ければ良い程度の扱いであり、実施の形 における実施例と比較例とで、オーステナ ト系ステンレス鋼に含有されるBは同レベル あるため、B含有量を制限する必要性に関す る知見は見あたらない。

 特許文献7には、加工度40%以上で冷間加工 した後、再結晶温度未満でかつ炭化物が析出 する温度域に保持し、さらにPなどの粒界偏 が生じない温度域で再結晶化させる加工熱 理が開示されているが、鋼中のC量の規定が 分でない。このため、冷間加工後、一旦、 界腐食の原因となるCr系炭化物を均一分散 せているが、多量に析出するCr系炭化物まわ りのCr欠乏層が腐食促進の原因となる。また 当該熱処理はP、S、N、Oなどの、粒界に偏析 する不純物元素の無害化に対しては何ら効果 がない。そして、特許文献7に記載された技 ではPなどの粒界に偏析する不純物元素の量 規定が十分でなく、かつ何ら対策が施され いない。そのため所望の耐食性が得られる は考えられない。

 また、オーステナイト系ステンレス鋼材 中性子照射を受ける高温高圧水中環境下の 水炉炉心に使用される場合、特許文献8~13に 記載のオーステナイト系ステンレス鋼材では 、十分な耐食性を得ることができないという 問題があった。

 具体的には、特許文献8~10に記載された技 術は、成分調整で粒界型応力腐食割れを防止 を図るため、Cr欠乏層とともに粒界腐食の原 となる不純物を低減していない。そのため 照射環境下で発生する応力腐食割れを本質 に解決することができない。

 特許文献11に記載された技術では、P、S、 Si、Nb、Ta、TiおよびBについてはいずれも少な い方が好ましく、Nb、TaおよびTiは脱酸剤とし て用いた場合の不純物レベル以下としての規 定であり、耐応力腐食割れ性改善のために積 極的に調整したものではない。また、Mnおよ Bについては発明当時の製鋼技術で実用上可 能な最低限の値として、B量を0.001wt%以下と規 定しているが、実施例におけるB量の最低値 0.0003wt%に留まっている。B量が0.0003wt%未満の 合の耐応力腐食割れ性に対する効果は不明 ある。さらに、耐応力腐食割れ性を劣化さ るもっとも重要な構成成分であるC量の低減 が充分ではないため、必ずしも良好な耐応力 腐食割れ性が得られない。

 特許文献12では、B量の下限値は熱間加工 を改善する観点から0.0005wt%に限定され、上 値は粒界腐食性の劣化を招かない観点から0 .005wt%に限定されていることから、耐食性を 極的に改善するものではないのは明らかで る。

 特許文献13の単結晶化の製法は、鋳造条 、特に引出速度に制限があり、工業的には 難であり、特に大型部材への適用が困難で る。

 特許文献14には、ステンレス鋼の製造方 として、歪み焼鈍法、タンマン法、ブリッ マン法、浮遊帯溶融法、一方向凝固法、連 鋳造法があり、比較的大きな該鋼を得るた には一方向凝固法または連続鋳造法が好ま いと開示されている。しかし、具体的製造 件が欠けており、サブ結晶粒を有する単結 の金属組織を得るための実現性が疑わしい また、鋼成分、特にNi含有量が中性子照射環 境下でのスェリングを抑制するのに充分な量 ではなく、所望の耐照射性が得られるとは考 えられない。

 本発明は、上記問題を鑑みてなされたも であり、その目的は、高酸性イオンを含む 濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環境および 性子照射を受ける高温高圧水中環境の両環 下において、優れた耐粒界腐食性および耐 力腐食割れ性を呈するオーステナイト系ス ンレス鋼およびオーステナイト系ステンレ 鋼材の製造方法を提供することである。

 上記目的を達成する本発明の一局面に係 耐粒界腐食性および耐応力腐食割れ性に優 たオーステナイト系ステンレス鋼は、C:0.005 wt%以下、Si:0.5wt%以下、Mn:0.5wt%以下、P:0.005wt% 下、S:0.005wt%以下、Ni:15.0~40.0wt%、Cr:20.0~30.0wt% N:0.01wt%以下、O:0.01wt%以下を含有し、残部はF eおよび不可避的不純物からなるオーステナ ト系ステンレス鋼であって、前記不可避的 純物に含まれるBが3wtppm以下であることを特 とするものである。

 上記目的を達成する本発明の他の局面に る耐粒界腐食性および耐応力腐食割れ性に れたオーステナイト系ステンレス鋼材の製 方法は、上記化学組成を有するステンレス の鋼塊を熱間加工するステップと、前記熱 加工によって得られたステンレス鋼材を溶 化処理するステップとを有し、前記溶体化 理ステップは、1000~1150℃とする第1の温度範 囲内の熱処理温度で1分間以上加熱するサブ テップと、その後、前記第1の温度範囲内の 処理温度からの急冷または放冷により常温 で冷却するサブステップとを有することを 徴とするものである。

 上記目的を達成する本発明の他の局面に る耐粒界腐食性および耐応力腐食割れ性に れたオーステナイト系ステンレス鋼材の製 方法は、上記化学組成を有するステンレス の鋼塊を熱間加工するステップと、前記熱 加工によって得られたステンレス鋼材を溶 化処理するステップとを有し、前記溶体化 理ステップは、1000~1150℃とする第1の温度範 囲内の熱処理温度で1分間以上加熱するサブ テップと、前記第1の温度範囲内の熱処理温 からの急冷または放冷による冷却するサブ テップと、前記冷却または前記冷却後に、6 50℃以上とする第2の温度範囲内の熱処理温度 で10分間以上加熱するサブステップと、その 、当該第2の温度範囲内の熱処理温度からの 急冷または放冷により常温まで冷却するサブ ステップとを有することを特徴とするもので ある。

図1Aは、Coriou腐食試験における腐食速 とB量の関係を示したグラフである。図1Bは Coriou腐食試験における粒界侵食深さとB量の 係を示したグラフである。 図2は、CBB試験で使用する治具を示した 図である。

 本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭 研究を重ねた。その結果、腐食の起点とな オーステナイト系ステンレス鋼の結晶粒界 おける不純物元素、特にBを極力低減するこ と、望ましくは完全に除去することが、高酸 化性イオンを含む高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱 面腐食環境や軽水炉炉心のように中性子照射 を受ける高温高圧水中環境といった厳しい粒 界腐食環境下において、粒界腐食および応力 腐食割れに対する耐食性を高め得ることを知 見し、本発明を完成した。

 本発明で特定した成分設計にいたった経 を含めて、本実施の形態を図1A、図1Bおよび 図2に基づいて以下に説明する。

 先ず、粒界腐食や応力腐食割れのもっと 大きな発生要因である粒界へのCr系炭化物 析出に伴うCr欠乏層の生成に対して、従来対 策のひとつであるC量の低減のみでは、溶接 どの加熱による鋭敏化や放射線環境下での 射誘起析出のような事態が避けられないこ を知見した。

 具体的には、鋼中のCr含有量を20wt%以上に した場合、炭化物析出に伴う欠乏層生成後も 、Cr含有量は不働態皮膜の生成に必要な12wt% 度を確保できる。しかしながら、高酸化性 オンを含む高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐 環境下での過不働態腐食や中性子照射を受 る高温高圧水中環境下での粒界損傷を完全 避けることができなかった。

 その原因のひとつは、不純物元素であるB が結晶粒界に偏析して粒界結合エネルギーを 低下させるためと考えられる。そこで、図1A よび1Bに示すように、腐食速度および粒界 食深さとB含有量との関係を調査し、Bの含有 量を3wtppm以下とすることで粒界腐食や応力腐 食割れを抑制できることを知見した。

 B添加によりオーステナイト系ステンレス 鋼の高温延性が向上することが知られている 。例えば、特開昭63-069947号公報では、6~25wtppm のBを添加することによってクリープ破断延 を改善する技術が提案されている。さらに 2wtppm以上のB添加によって熱間延性が改善さ ることが「IronAge」vol.179(1957),p.95に報告され ている。このように、Bは高温延性や熱間加 性の向上に対して有効な元素と言われてい 。しかしながら一方で、B添加によりオース ナイト系ステンレス鋼の耐食性が劣化する とが報告されている。

 「Stainless steel‘87」,The Institute of Metals, London,(1987),p.234にオーステナイト系ステンレ 鋼の耐粒界腐食性を維持するためB量を低減 せることが提案されており、Bを約25wtppm添 すると通常の溶体化処理においても粒界にCr 硼化物が析出して耐粒界腐食性が劣化するこ とが報告されている。さらに、「材料とプロ セス」,鉄と鋼,vol.6(1993),p.732では、高温高濃 硝酸中におけるオーステナイト系ステンレ 鋼の耐粒界腐食性を高水準に維持するため は、B含有量を9wtppm以下に低減する必要があ ことが報告されている。以上のように、Bは 粒界に偏析するとともにCrに富む硼化物を形 して耐粒界腐食性を劣化させることが知ら ている。このように、特許文献7に開示され た技術を含めて、従来の不純物レベルの鋼で は、その悪影響はもっと少ない場合で、B含 量が5wtppmを超えると耐粒界腐食性の劣化が れ始め、10wtppmを超えると特に顕著になると れている。

 B添加による問題点は上述のとおりである が、本発明者らは、B含有量そのものの更な 低減が重要であることを知見した。この理 は定かではないが、10wtppm程度と推定されるB の結晶粒界への固溶限以下の含有量で粒界損 傷に顕著な改善がみられる。このことから、 硼化物の形成よりも結晶粒界への固溶そのも のが悪影響をもたらすと推定される。なお、 本発明のように極めて微量のB量の効果が知 できたのは、分析装置・技術や製鋼技術の 展によるところが大きい。従来の化学分析 は2wtppm程度が検出限界であったのに対し、GD -MS分析法によりwtppm以下のB含有量を正確に分 析できるようになり、微量B量と粒界腐食や 力腐食割れの関係が明確になった。また、 常のオーステナイト系ステンレス鋼の溶製 は合金鉄およびスクラップなどの原料から2~ 5wtppm程度混入することが避けられなかったが 、分析技術の発展によりB含有量の少ない原 の選別が可能になり、さらに酸化精錬など 製鋼技術の発達によりB含有量の低いオース ナイト系ステンレス鋼の溶製が可能となっ いる。

 また、上記沸騰伝熱面腐食環境下での過 働態腐食や上記高温高圧水中環境下での粒 損傷の原因のひとつとして、結晶粒界に偏 するC、P、S、N、Oなどの不純物元素の影響 考えられる。そこで、Bの含有量を3wtppm以下 した場合に、C、P、S、N、Oなどの不純物元 の総量を0.02wt%以下とすることで粒界腐食や 力腐食割れを抑制できることを知見した。 れら不純物元素の総量を0.02wt%以下にした場 合に粒界損傷が著しく改善される理由は明ら かではない。これらの元素の結晶粒界への作 用や析出物を生成する場合の形態は異なるが 、現在の分析・解析技術では、本発明のよう な微量の元素の存在状態を個々に区別するこ とは不可能である。しかしながら、結晶粒界 に偏析・固溶している不純物元素が悪影響を もたらすのは間違いないと推定される。

 そして、必要に応じてC、P、S、N、Oなどの 純物元素の影響を完全に無害化するために Ti含有量をC、P、S、NおよびOの総量に対して 学量論的等しい量以上に添加してTiC、TiN、F eTiP、TiS、TiO 2 のようなTi系の炭化物や窒化物、その他化合 として析出させることが有効であることを 見した。これにより粒界腐食や応力腐食割 をさらに抑制できた。

 結晶粒界に偏析するC、P、S、N、Oなどの不 物元素は極力少ないほうが望ましいが、現 の精錬技術ではこれらを完全に除去するこ は困難であると共に、経済的ではない。上 のような不純物元素を極力減らすためには 定化元素(不純物元素を固定化する元素)を添 加することが有効であるが、これらの不純物 元素を無害化するためにはTiがもっとも望ま い。Tiを添加することにより後述の電子ビ ム溶解法などでは除去しきれないC、P、S、N OなどをTiC、FeTiP、TiS、TiN、TiO 2 のようなTi系の化合物とすることにより、粒 に固溶元素として偏析することを抑制する とができる。従来技術には、安定化元素と てNbなどが挙げられているが、Nbを添加して も当該発明のオーステナイト系ステンレス鋼 の存在量の範囲内ではNbC以外の化合物を生成 するのは困難であるため、効果が限定される 。なお、Tiの添加量は、C、P、S、NおよびOの 量に対して化学量論的に等しい量以上であ 必要がある。

 また、上記化学組成を有するオーステナ ト系ステンレス鋼材を、その製造工程での 処理によりオーステナイト粒の均一化およ 炭化物などの均一分散させることで、粒界 食および応力腐食割れを抑制できることを 見した。耐粒界腐食性および耐応力腐食割 性改善効果をより発揮させるためには、そ 板材もしくは管材の製造工程(例えば、熱間 加工工程)において、1000~1150℃の温度範囲内 1分以上加熱し、さらに当該熱処理温度から 冷または放冷により常温まで冷却するか、 却途中もしくは再加熱して650℃以上の温度 囲内で10分以上加熱・保持することが有効 ある。また、Ti添加効果をより確実なものと し、さらに生成したTi系の化合物の分布状態 結晶粒界の存在位置との関係を異なるもの するため、1000~1150℃の温度範囲内で1分以上 加熱し、さらに当該熱処理温度から急冷また は放冷により常温まで冷却する。溶体化処理 を施した後、40%以上75%未満の加工率にて冷間 加工を施し、次いで750℃以上の温度範囲内に おいて10分以上加熱・保持することにより再 晶化させることも有効である。なお、本発 のように反応に係わるC、P、S、N、Oなどの 純物元素が少ない化学組成では、反応速度 に析出反応が充分に進行しない可能性があ ため、40%以上75%未満の加工率での冷間加工 、500~650℃の温度範囲内において30分以上加 ・保持する歪時効析出処理を施した後、次 で750℃以上の温度範囲内において10分以上加 熱・保持することも有効である。

(ステンレス鋼の化学組成)
 C:0.005wt%以下
 Cは、熱処理または溶接を施した際に、結晶 粒界にCr系の炭化物を析出する。これにより その結晶粒界の近傍にCrの欠乏した領域が 成される。この状態で腐食環境下に置かれ と、その領域が選択的に腐食される粒界腐 が起きる。よって、オーステナイト系ステ レス鋼の耐硝酸腐食性および耐応力腐食割 性を劣化させる原因となる。本実施の形態 おいては、Tiの添加および加工熱処理により 無害化を図るが、オーステナイト系ステンレ ス鋼にCの含有量が多い場合には、ミクロ的 Cr系炭化物を析出する可能性があるため、C 0.005wt%以下、より好ましくは0.003wt%以下とす 。

 Si:0.5wt%以下
 Siは、脱酸剤として有効であるため、0.5wt% 下とする。しかし、粒界腐食の観点からは きるだけ低くすることが望ましく、より好 しくは0.3wt%以下である。

 Mn:0.5wt%以下
 Mnは、オーステナイト相安定度を高めて耐 性に有害なδ-フェライトの生成や加工誘起 態を防止する効果があるが、0.5wt%を超えて 所望の効果が得られないばかりか、固溶状 のMnとして、かえって腐食を促進するので、 0.5wt%以下とする。より好ましくは0.3wt%以下で ある。

 P:0.005wt%以下
 Pは粒界偏析することが知られており、Pの 有量を増加すると耐粒界腐食性や耐応力腐 割れ性が劣化する。このため、その含有量 低い方が望ましく、0.005wt%以下、より好まし くは0.003wt%以下とする。

 S:0.005wt%以下
 Sの増加は硫化物の生成を促進し、それらを 基点とする選択的な腐食により、耐粒界腐食 性や耐応力腐食割れ性、さらに耐孔食性を劣 化させる。このため、その含有量は低い方が 望ましく、0.005wt%以下、より好ましくは0.003wt %以下とする。

 Ni:15.0~40.0wt%
 Niは、オーステナイト組織を安定させ、ま 粒界腐食や応力腐食割れを抑制するために 要な元素である。しかし、含有量が15wt%未満 では十分なオーステナイト組織を確保するこ とができず、さらに中性子照射環境下での耐 スェリング性を得ることができない。一方、 40wt%を越えると高価となるため、15.0~40.0wt%が ましい。オーステナイト組織の安定性から より好ましくは18.0wt%以上である。また、ス ェリング抑制の観点から、より好ましくは38. 0wt%以下である。

 Cr:20.0~30.0wt%
 Crは、不働態皮膜を形成してステンレス鋼 耐食性を確保するため必要な元素である。 働態皮膜形成の観点からは、JIS規格の代表 ステンレス鋼であるSUS304やSUS316系ステンレ 鋼のように16%程度含有すれば良い。しかし 再処理プラントのように高酸化性イオンを む高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環境下 の過不働態腐食環境下や軽水炉炉心のよう 中性子照射を受ける高温高圧水中環境下で 分な耐食性を確保するには20wt%が必要である 。一方、30wt%を越えると、Crリッチの脆化相 析出するため、それらを避けて完全オース ナイト組織にするためのNi含有量を増加しな くてはならなくなり、コストの上昇を招くの で20.0~30.0wt%が望ましい。耐食性の観点から、 より好ましくは22.0wt%以上である。また、よ 好ましくは28.0wt%以下である。

 B:3wtppm以下
 Bは、本発明を構成するもっとも重要な因子 である。基本的には不純物元素であり、粒界 に偏析して耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性 を劣化させるため、出来るだけ少ないことが 望ましい。従来の分析技術では0.0003wt%以下の B含有量については判別できなかった。しか 、最近の分析手法を駆使して、本発明者ら より微量のBと耐食性の関係を明確にし、そ 結果、0.0003wt%以下に低減することにより粒 腐食や応力腐食割れを完全に抑制できるこ を知見した。この観点からB量を3wtppm(0.0003wt %)以下とする。なお、より好ましくは1.5wtppm 下である。

 N:0.01wt%以下
 O:0.01wt%以下
 NおよびOは、いずれも耐粒界腐食性や耐応 腐食割れ性を劣化させるため、その含有量 できるだけ低い方が望ましく、それぞれ0.01w t%を上限とする。Nについては、より好ましく は0.005wt%以下である。Oについては、より好ま しくは0.005wt%以下である。

 C+P+S+O+N:0.02wt%以下
 不純物元素であるC、P、S、OおよびNそれぞ の含有量を上記制限条件のように個々に限 しても、これらの合計が0.02wt%を超えると良 な耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性が得ら ないため、上限値は0.02wt%とする。より好ま しい上限値は0.015wt%である。

 なお、不純物元素の総量が0.02wt%以下とい う高純度のオーステナイト系ステンレス鋼塊 を溶製する方法は特に限定しないが、溶製工 程の組合せの中に電子ビーム溶解法を適用す ることが有効な手段のひとつである。オース テナイト系ステンレス鋼塊の製造過程におい て電子ビーム溶解法を適用することにより、 オーステナイト結晶粒界に偏析するC、P、S、 N、Oなどの不純物元素ばかりでなく、揮発性 高いアルカリ基金属含有量をも極力低減し 超高清浄度を得ることができる。なお、電 ビーム溶解の原料電極となる事前の溶製方 についても特に限定せず、一次溶解原料の 度に合わせて最適な溶製方法を選定すれば い。

 Ti:含有量が、C、P、S、NおよびOの合計に対 、化学量論的に等しい量以上
 Tiは本発明を構成する重要な因子であり、 界腐食の原因となるC、P、S、N、Oなどの不純 物元素をTiC、TiN、FeTiP、TiS、TiO 2 のようなTi系の炭化物や窒化物、その他化合 とすることにより完全に無害化するために 加する。電子ビーム溶解法などを採用する とにより、鋼塊段階においてこれらの不純 元素の含有量は既に極めて低いレベルにな ている。しかし、本発明者らの検討による 電子ビーム溶解で除去しきれない微量の不 物元素が粒界腐食に悪影響をおよぼすこと 知見した。このため、これらを完全に無害 するためにTiを添加することがより効果的 ある。従って、Ti含有量としては、C、P、S、 N、Oの全てがTiC、TiN、FeTiP、TiS、TiO 2 のようなTi系の炭化物や窒化物、その他化合 となるための化学量論的に等しい量以上が ましい。具体的には、
 Ti(wt%)≧(48/12)C(wt%)+(48/31)P(wt%)+(48/32)S(wt%)+(48/14 )N(wt%)+(48/16)×(1/2)O(wt%)
である。また、希薄元素の動的析出反応を考 慮すると0.05wt%以上が好ましい。一方、多量 添加するとコストの上昇を招くので、0.3wt% 下が好ましい。

(電子ビーム溶解法)
 本実施の形態において、鋼塊の製造過程で 子ビーム溶解法を採用している。電子ビー 溶解は基本的にはドリップ溶解法とコール ハース溶解法に大別される。ドリップ溶解 は原料電極の先端に電子ビームを照射し、 成した液滴を直接水冷胴鋳型に落下させて 層凝固させる方法である。また、コールド ース溶解法は原料先端で生成した液滴を一 コールドハースと呼ばれる水冷の浅い銅製 器に溜め、ここからオーバーフローさせた 湯を水冷胴鋳型に注いでスターティングブ ックと称する土台の上に積層凝固させる方 である。本実施の形態においては、どちら 溶解法を用いてもよい。

 電子ビーム溶解法の規定条件について記述 る。溶解中の蒸発による精製効果を達成す ためにはチャンバー内の真空度を1×10 -2 Pa以上にする必要がある。しかし、真空度を めすぎると本発明を構成する元素であるCr どの揮発性の高い元素が蒸発して成分調整 困難になるばかりか、工業的な実現が困難 なるため、1×10 -4 Pa以下が望ましい。なお、原料電極となる素 はステンレス鋼の溶製法として広く知られ いるAOD法(アルゴン酸素脱炭法)、VOD法(真空 素脱炭法)を採用しても良く、特殊精錬とし ての真空誘導溶解(Vacuum Induction Melting)法、 気浮揚誘導溶解(Cold Crucib1e Induction Melting) などを採用しても良い。

(製造方法)
 本実施の形態において、オーステナイト系 テンレス鋼の板材もしくは管材の製造工程( 例えば、熱間加工工程)で、1000~1150℃の温度 囲内の熱処理温度で1分以上加熱処理を行う その後の溶体化処理として、1000~1150℃の温 範囲内の熱処理温度からの急冷または放冷 より常温まで冷却する。なお、溶体化処理 して、冷却もしくは冷却後の再加熱によっ 650℃以上の温度範囲内の熱処理温度となっ 後、10分以上の間、加熱によって650℃以上 温度範囲内の熱処理温度となるように保持 行うものであってもよい。これにより、オ ステナイト相の均一化をはかり、オーステ イト系ステンレス鋼における化学組成限定 よる耐粒界腐食性および耐応力腐食割れ性 善効果をより発揮させることができる。

 また、溶体化処理の後、冷間加工(冷間圧 延)および再結晶処理を行ってもよい。冷間 工を行うことで、炭化物析出のサイトとな 転位を多量に導入することができる。また 再結晶処理は、冷間加工後の熱処理によっ 、析出物を均一に分散析出させると共に再 晶化させる。

 具体的に、冷間加工について説明する。 出サイトとしての転位を十分に導入するた の冷間加工における加工度(加工率)は40%以 である。また、加工度を必要以上に高くし も導入される転位密度が飽和するばかりか 過度の加工によりオーステナイト相がマル ンサイト相に歪誘起変態する。このため、 業的な加工処理が困難になると共に、後の 結晶化処理において均一なオーステナイト 織が得られず、耐粒界腐食性や耐応力腐食 れ性が劣化する。よって、冷間加工におけ 加工度は75%未満とする。

 次に、再結晶処理について説明する。加 組織を再結晶させるための温度は、鋼の加 度、すなわち導入された転位密度や回復・ 結晶過程の転位の移動を妨げる炭化物分散 態に依存する。このため、本発明の鋼組成 よび組織状態では700℃以上で10分以上保持 る必要がある。一方、温度が高すぎる場合 得られた再結晶オーステナイト粒の粗大化 よって強度が低下する。さらに析出物が凝 ・粗大化し、再結晶オーステナイト粒界に 布する。これらにより、耐粒界腐食性およ 耐応力腐食割れ性が劣化する。よって再結 化温度は900℃以下が望ましい。

 また、冷間加工後の再結晶化処理前に炭 物などを効率良く均一分散させるために析 処理を施してもよい。このとき、反応論的 は500℃以上の温度域において30分以上加熱 保持することが望ましい。一方、温度が高 ほど炭化物の析出は短時間に生じるが、高 ぎると炭化物析出に先立って回復・再結晶 起こる。このため、折角導入した転位をサ トとする析出が不可能となり、炭化物など 結晶粒界に優先的に析出するため均一分散 ず、さらに粗大化をもたらす。その結果、 れた耐粒界腐食性および耐応力腐食割れ性 得られなくなる。以上のような観点から、 化物析出処理は500~650℃の温度範囲内の熱処 温度において30分以上加熱・保持すること 望ましい。

実施例
 以下に、実施例を挙げて本発明をより具体 に説明する。なお、本発明は、実施例によ 、何ら限定されるものではない。

(実験1)
 表1に示す化学組成を有するオーステナイト 系ステンレス鋼150kgを真空誘導溶解(VIM)し、 空中で金型に鋳込み、鋳塊を得た。表1に示 化学組成の各元素の単位は、Bの重量百万分 率(wtppm)を除き、すべて重量百分率(wt%)である 。次に、真空溶解した鋳塊から電極を削りだ し、電子ビーム再溶解(EB)を施して円柱鋳塊 した。さらに、鍛造および熱間圧延により さ6mmの板材に仕上げた後、1050℃×1/2時間(h) 条件にて溶体化処理を施した6mmの板材を得 。これらを供試材として、金属イオンを含 する高濃度沸騰硝酸溶液中での粒界腐食状 を模擬したCoriou腐食試験、また高温高圧水 での応力腐食割れ状況を模擬した低歪速度 張試験(SSRT)およびCBB試験を行った。低歪速 引張試験およびCBB試験については、中性子 射誘起析出状況などを模擬するため、これ の試験の前に620℃×100時間の鋭敏化熱処理を 施した。

 Coriou腐食試験はCr 6+ イオンを1.0g/L添加した500mlの8規定沸騰硝酸溶 液を用い、液を更新しながら24時間を1バッチ とする浸漬試験を4バッチ行い、腐食減量を 定して腐食速度などを評価した。低歪速度 張試験は平行部直径3mm、標点問距離20mmの試 片を用い、高温高圧水中(飽和酸素濃度8wtppm 、70kgf/cm2、290℃)、歪み速度:0.5μm/minの条件に て実施した。

 CBB試験は厚さ2mm、幅10mm、長さ50mmの試験片 用い、オートクレーブ中で図2に示す治具に 、高温高圧水中(飽和酸素濃度8wtppm、70kgf/cm 2 、290℃)に500時間浸漬して実施した。試験片1 すきまを付けるためのグラファイトファイ ーウール2とともにホルダー3間に挟み付け ルト穴4を挿入し、ホルダー3間にアールを付 けて締め付けた。尚、本実施の形態において は、ホルダーが、100Rに湾曲した箇所を有し いる。浸漬後、試験片を取出し、試験片の 面観察から割れ発生の有無を評価した。

 金属イオンを含有する高濃度沸騰硝酸溶液 での耐粒界腐食性については、Coriou腐食試 での次の基準で評価した。
  優:腐食速度が3.00g/m 2 ・h以下であって、粒界侵食深さが25μm以下。
  良:腐食速度が3.00g/m 2 ・h以下であって粒界侵食深さが25μmを超えて 30μm以下。
  劣:腐食速度が3.00g/m 2 ・hを超えるか、粒界侵食深さが30μmを超える 。

 高温高圧水中での耐応力腐食割れ性につい は、SSRT腐食試験およびCBB試験での次の基準 で評価した。
  優:SSRT腐食試験にて破断時間が250時間以上 かつ粒界破面率が20%以下であって、CBB試験に て粒界腐食が発生しない。
 良:SSRT腐食試験にて破断時間が250時間以上 つ粒界破面率が20%を越えて25%以下であって CBB試験にて粒界腐食が発生しない。
  劣:SSRT腐食試験にて破断時間が250時間未満 または粒界破面率が25%より大きいか、CBB試験 にて粒界腐食が発生する。

 表2に評価後試験結果を示す。鋼番A~Dおよ び鋼番K~Lは、C量が0.005wt%以下、Si量が0.5wt%以 、Mn量が0.5wt%以下、P量が0.005wt%以下、S量が0 .005wt%以下、Ni量が15.0~40.0wt%、Cr量が20.0~30.0wt% N量が0.01wt%以下、O量が0.01wt%以下、B量が3wtpp m以下であり、本発明の実施例である。一方 鋼番E~G、Mは比較例であってB量が3wtppmを超え ているものである。鋼番H、Iは比較例であっ Cr量が20.0wt%未満かつNi量が15.0wt%未満のもの ある。鋼番Jは比較例であってCr量が30.0wt%を 超えるものである。鋼番N~Qは比較例であって 、C量が0.005wt%を超えているか、P量が0.005wt%を 超えているか、S量が0.005wt%を超えているか、 N量が0.01wt%を超えているか、O量が0.01wt%を超 ているかのいずれかである。鋼番R、Sは比較 例であってSi量が0.5wt%を超えているか、Mn量 0.5wt%を超えているかのいずれかである。表2 ら、鋼番A~Dおよび鋼番K~Lは、鋼番E~Jおよび 番M~Sと比べて、良好な耐粒界腐食性および 応力腐食割れ性を有することが分かる。

 鋼番A~Sのうち、いわゆる25Cr-20Ni系(Cr含有 が約25wt%かつNi含有量が約20wt%であって、C量 が0.005wt%以下、Si量が0.5wt%以下、Mn量が0.5wt%以 下、P量が0.005wt%以下、S量が0.005wt%以下である 鋼種)に該当する鋼番A~G、L及びMについて、Cor iou腐食試験における腐食速度とB量の関係を 1Aに示す。また、この25Cr-20Ni系に該当する鋼 番A~G、L及びMについて、Coriou腐食試験におけ 粒界侵食深さとB量の関係を図1Bに示す。図1 Aおよび1Bから、B量が3wtppmを超えると、腐食 度および粒界侵食深さが急激に増大するこ が分かる。また、B量が等しい場合には、Ti 添加することで、腐食速度および粒界侵食 さがさらに抑制されることが分かる。

(実験2)
 表1の鋼番B、KおよびLを用いて、表3に示す うな種々の条件にて6mmの板材を製造した。 造略号1は真空誘導溶解(VIM)し、真空中で金 に鋳込み、鋳塊を得たものであり、他の製 略号(2~8)はさらに電子ビーム再溶解(EB)を施 たものである。鍛造および熱間圧延により 上げた板材を溶体化処理後、さらに加工熱 理(冷間加工-再結晶化処理、または冷間加工 -炭化物析出処理-再結晶化処理)を施した(冷 加工率が異なるものは溶体化処理時の板厚 調整した)。これらを用いて、高酸化性の金 イオンを含有する高濃度沸騰硝酸溶液中で 粒界腐食状況を模擬してCoriou腐食試験、ま 高温高圧水中での応力腐食割れ状況を模擬 て低歪速度引張試験(SSRT)およびCBB試験を行 た。低歪速度引張試験およびCBB試験につい は、中性子照射誘起析出状況などを模擬す ため、これらの試験の前に620℃×100時間の 敏化熱処理を施した。

 表4に評価試験結果を示す。表4から、鋼 B、KまたはLに対して製造略号3、5または7の 理を施した場合、すなわち、1050℃で30分間 体化処理をした後に700℃で1時間再加熱した 合(製造略号3)、加工熱処理工程において冷 率60%で冷間加工した場合(製造略号5)及び加 熱処理工程において冷間加工後かつ再結晶 理前に600℃で10時間析出処理を施した場合( 造略号7)には、他の製造略号(1、2、4、6およ び8)の処理を施した場合と比べて、CBB試験に いても粒界腐食は発生せず、良好な耐粒界 食性が得られることが分かる。

 以上詳述した本発明の一局面は、C:0.005wt% 以下、Si:0.5wt%以下、Mn:0.5wt%以下、P:0.005wt%以 、S:0.005wt%以下、Ni:15.0~40.0wt、Cr:20.0~30.0wt%、N: 0.01wt%以下、O:0.01wt%以下を含有し、残部はFeお よび不可避的不純物からなるオーステナイト 系ステンレス鋼であって、不可避的不純物に 含まれるBが3wtppm以下であることを特徴とす 耐粒界腐食性および耐応力腐食割れ性に優 たオーステナイト系ステンレス鋼である。

 上記構成によると、Bの含有量を3wtppm以下 とすることで、粒界腐食を低減し、応力腐食 割れを十分に抑制することができる。

 また、Cの含有量を0.005wt%以下とすること 、Cr系炭化物の析出を抑えることができる また、Siを0.5wt%以下含有させることで、脱酸 作用をもたらすことができる。また、Mnを0.5w t%以下含有させることで、δ-フェライトの生 や加工誘起変態を低減することができる。 た、Pの含有量を0.005wt%以下とすることで、 粒界腐食性および耐応力腐食割れ性の劣化 低減することができる。また、Sの含有量を 0.005wt%以下とすることで、耐粒界腐食性、耐 力腐食割れ性および耐孔食性の劣化を低減 ることができる。

 また、Niの含有量を15.0wt%以上含有させる とでオーステナイト組織を安定させ、また 界腐食や応力腐食割れを抑制することがで る。また、Niの含有量を40.0wt以下とするこ で、コストの低減を図ることができる。ま 、Crの含有量を20.0wt%以上とすることで、例 ば、再処理プラントのように高酸化性イオ を含む高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環 下での過不働態腐食環境下や軽水炉炉心の うに中性子照射を受ける高温高圧水中環境 で十分な耐食性を確保することができる。 た、Crの含有量を30.0wt%以下とすることで、Cr リッチの脆化相の析出を抑えることができる 。また、NおよびOの含有量をそれぞれ0.01wt%以 下とすることで、耐粒界腐食性および耐応力 腐食割れ性の劣化を低減することができる。

 また、前記オーステナイト系ステンレス は、前記C、P、S、NおよびOの含有量の合計 0.02wt%以下であることが、良好な耐粒界腐食 および耐応力腐食割れ性を得ることができ 点で好ましい。

 また、前記オーステナイト系ステンレス鋼 、さらにTiを含有し、当該Tiの含有量が、前 記C、P、S、NおよびOの合計量の合計に対し、 学量論的に等しい量以上であることが、粒 腐食の原因となる不純物元素であるC、N、P SおよびOをTiC、TiN、FeTiP、TiSおよびTiO 2 のようなTi系の炭化物や窒化物、その他化合 とすることにより完全に無害化することが きる点で好ましい。

 また、本発明の他の一局面は、耐粒界腐 性および耐応力腐食割れ性に優れたオース ナイト系ステンレス鋼材の製造方法であっ 、上記化学組成を有するステンレス鋼の鋼 を熱間加工するステップと、前記熱間加工 よって得られたステンレス鋼材を溶体化処 するステップとを有し、前記溶体化処理ス ップは、1000~1150℃とする第1の温度範囲内の 熱処理温度で1分間以上加熱するサブステッ と、その後、前記第1の温度範囲内の熱処理 度からの急冷または放冷により常温まで冷 するサブステップとを有することを特徴と るオーステナイト系ステンレス鋼材の製造 法である。

 上記構成によると、溶体化処理によりオ ステナイト相の均一化をはかり、オーステ イト系ステンレス鋼における化学組成限定 よる耐粒界腐食性および耐応力腐食割れ性 善効果をより発揮させることができる。

 また、本発明の他の一局面は、耐粒界腐 性および耐応力腐食割れ性に優れたオース ナイト系ステンレス鋼材の製造方法であっ 、上記化学組成を有するステンレス鋼の鋼 を熱間加工するステップと、前記熱間加工 よって得られたステンレス鋼材を溶体化処 するステップとを有し、前記溶体化処理ス ップは、1000~1150℃とする第1の温度範囲内の 熱処理温度で1分間以上加熱するサブステッ と、前記第1の温度範囲内の熱処理温度から 急冷または放冷による冷却するサブステッ と、前記冷却または前記冷却後に、650℃以 とする第2の温度範囲内の熱処理温度で10分 以上加熱するサブステップと、その後、当 第2の温度範囲内の熱処理温度からの急冷ま たは放冷により常温まで冷却するサブステッ プとを有することを特徴とするオーステナイ ト系ステンレス鋼材の製造方法である。

 上記構成によると、第1の温度範囲内での 溶体化処理によりオーステナイト相の均一化 をはかり、溶体化処理後に第2の温度範囲内 の熱処理によりTi系析出物の生成をはかり、 オーステナイト系ステンレス鋼における化学 組成限定による耐粒界腐食性および耐応力腐 食割れ性改善効果をより発揮させることがで きる。

 また、前記オーステナイト系ステンレス 材の製造方法は、前記溶体化処理のステッ の後に、前記ステンレス鋼材を40%以上75%未 の加工度にて冷間加工するステップと、そ 後、700℃以上の温度範囲内の熱処理温度で1 0分間以上加熱する再結晶化処理のステップ をさらに有することが好ましい。

 上記構成によると、冷間加工を施すこと 、析出サイトとしての転位を十分に導入す ことができると共に、過度の加工によりオ ステナイト相がマルテンサイト相に歪誘起 態することを防ぐことができる。これによ 、工業的な加工処理が困難になるのを抑制 、その後の再結晶化処理において均一なオ ステナイト組織を得ることができる。また 再結晶化処理において、均一なオーステナ ト組織を得た結果、優れた耐粒界腐食性お び耐応力腐食割れ性を得ることができる。

 また、前記オーステナイト系ステンレス の製造方法は、前記冷間加工のステップと 記再結晶化処理ステップの間に、前記ステ レス鋼材を500~650℃の温度範囲内の熱処理温 度で30分間以上加熱する析出物の歪み時効析 のステップをさらに有することが好ましい

 上記構成によると、冷間加工を施した後 あって再結晶化処理前に析出物の歪み時効 出を行うことで、炭化物などを効率良く均 分散させることができる。

 以上、本発明の実施例を説明したが、具 例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定 るものではなく、具体的構成などは、適宜 計変更可能である。また、発明の実施の形 に記載された、作用および効果は、本発明 ら生じる最も好適な作用および効果を列挙 たに過ぎず、本発明による作用および効果 、本発明の実施の形態に記載されたものに 定されるものではない。

 本発明のオーステナイト系ステンレス鋼 用いれば、高酸性イオンを含む高濃度硝酸 液の沸騰伝熱面腐食環境および中性子照射 受ける高温高圧水中環境の両環境下におい 、耐粒界腐食性および耐応力腐食割れ性の 方を確実に向上することができる。