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Title:
COPPER ALLOY-BASED SLIDE MATERIAL, AND COPPER ALLOY-BASED SLIDE MEMBER
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/136355
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a copper alloy-based slide material which does not contain lead and has improved anti-seizing property and improved surface pressure resistance. Also disclosed is a copper alloy-based slide member. The copper alloy-based slide material comprises: a Cu-containing parent phase (23) which contains 5 to 15 wt% of Sn; and an alloy steel particle (25) which contains a fine carbide (24) and is dispersed in the parent phase (23) at a ratio of 1 to 20 wt% relative to the total weight of the slide material. The slide material has a Vickers hardness (Hv) ranging from 44 to 148 as a macro-hardness.

Inventors:
UEYAMA MASANORI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/057943
Publication Date:
November 13, 2008
Filing Date:
April 24, 2008
Export Citation:
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Assignee:
KOMATSU MFG CO LTD (JP)
UEYAMA MASANORI (JP)
International Classes:
C22C1/05; B22F7/00; C22C1/10; C22C9/02; C22C32/00; F16C33/10; F16C33/12; B22F7/04
Foreign References:
JPS6119750A1986-01-28
JP2001003123A2001-01-09
JP2002285262A2002-10-03
Attorney, Agent or Firm:
SHINJYU GLOBAL IP (1-4-19Minamimori-machi, Kita-k, Osaka-shi Osaka 54, JP)
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Claims:
 Snを5~15重量%含有させたCu系母相中に、微細炭化物を含む合金鋼粒子が総重量に対して1~20重量%の範囲で分散しており、
 マクロ硬度として、Hv44~148の範囲のビッカース硬度を有する、
銅合金系摺動材料。
 前記合金鋼粒子はHv225~430の範囲のビッカース硬度を有する、
請求項1に記載の銅合金系摺動材料。
 前記Cu系母相中に、Mo、Fe系金属間化合物および固体潤滑材の内から選択された1種類または2種類を総重量に対して2重量%以上10重量%以下含む、
請求項1に記載の銅合金系摺動材料。
 前記固体潤滑材は二硫化モリブデン又は黒鉛である、
請求項3に記載の銅合金系摺動材料。
 前記微細炭化物の平均粒径は1μm~5μmであり、
 前記微細炭化物はM 6 C系、M 7 C 3 系およびMC系の少なくとも一つの微細炭化物を含む、
請求項1に記載の銅合金系摺動材料。
 前記合金鋼粒子は高速度工具鋼粒子を含む、
請求項1に記載の銅合金系摺動材料。
 建設機械の走行を司るクローラを回転・保持する機構である転輪の中のブシュに用いられる、
請求項1に記載の銅合金系摺動材料。
 鋼板と、
 前記鋼板上に形成され、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の銅合金系摺動材料からなる摺動層と、
を具備する銅合金系摺動部材。
 鋼板と、
 前記鋼板上に形成され、混合粉末によって焼結接合された銅合金系摺動焼結層と、
を具備し、
 前記混合粉末は、Snを5~15重量%含有させたCu合金粉末に、微細炭化物を含む合金鋼粉末が総重量に対して1~20重量%の範囲で混合された粉末であり、
 前記合金鋼粉末は、Hv225~430の範囲のビッカース硬度を有する、
銅合金系摺動部材。
Description:
銅合金系摺動材料および銅合金 摺動部材

 本発明は、銅系摺動材料および銅合金系 動部材に係わり、特に、鉛を含まない材料 あって耐焼き付き性および耐面圧性を向上 せた銅合金系摺動材料および銅合金系摺動 材に関する。

 近年は、自動車や建設機械、農業機械な に使用される軸受において、より厳しくな 摺動条件での使用に対応するため、高い耐 重性、耐凝着性および耐焼き付き性に優れ 軸受け材料としての銅合金系摺動材料を開 することが求められている。それに加え、 境負荷物質低減を目的として、鉛を含まな 銅系摺動材料の開発が望まれている。

 従来の建設機械の走行部の軸受け用材料 は、非焼き付き性を向上させ、良好な摺動 性を呈する材料としてCu-Sn-Pb(鉛青銅)系材料 、例えばCu-10Sn-10Pb(LBC-3)が使用されている(例 ば特許文献1参照)。

 しかし、上記鉛青銅系材料には鉛が含ま ているため、軸受けから油が漏れた場合に とともにPbも環境へ流出することが考えら 、環境への負荷が大きくなる。近年では、 に環境への配慮の必要性が高まり、Pbを含ま ない摺動材料が要望されている。そのため、 Pbの代替材料としてAgやBiが提案されている( えば特許文献2参照)。

 さらに、樹脂等の非金属材料を摺動表面 摺動層としてオーバレイを設けることで、P bの馴染み性や非焼き付き性を確保すること 考えられている(例えば特許文献3参照)。

 また、青銅に黒鉛や二硫化モリブデン等 固体潤滑材を大量に混入し、耐焼き付き性 高潤滑性を確保した銅系摺動材料も提案さ ている。しかし、この銅系摺動材料は、焼 性が悪く、高い機械的強度を確保すること できない。

 また、摺動材料に必要な馴染み性(低摩擦係 数)と耐摩耗性の向上を狙い、Sn量を調整した 軟質金属母相中に、セラミック粉末のような 硬質粒子を分散させた技術もある。しかし、 この摺動材料では、軟質金属母相と硬質粒子 との接着力が不足している上に硬度差が大き い事により、硬質粒子が剥離する現象が起こ り、剥離した硬質粒子の浮遊物が相手軸をア タックし翻って摺動性能を低下させる欠点が ある。

特開2002-295473号公報(0003段落)

特開2002-60869号公報(請求項1、2)

特開2004-307960号公報(0002段落)

 ところで、前述したようにPbの代替材料 してAgやBiが提案されているが、単純にPbの 替として軟質金属のAgやBiを用いても、Pbほ の耐焼き付き性は期待できない。すなわち 軟質金属のAgやBiでは、現状品以下の耐焼き き性・耐面圧性しか望めず、現在のより過 になる摺動下での要求品質を満たすことが きない。さらにAgやBiは、材料コスト的にも Pbに比べ遥かに高い。

 また、前述したように摺動表面に摺動層 してオーバレイを設けても、オーバレイが 脂だけでは、耐荷重性および耐摩耗性が不 分であり、過酷な摺動条件では使用できず 使用条件が限られるという問題があり、さ に放熱性が悪いため、例えば油温度が上昇 るといった問題が生じる。

 本発明は上記のような事情を考慮してな れたものであり、その目的は、鉛を含まな 材料であって耐焼き付き性および耐面圧性 向上させた銅合金系摺動材料および銅合金 摺動部材を提供することにある。

 上記課題を解決するため、本発明に係る 合金系摺動材料は、Snを5~15重量%含有させた Cu系母相中に、微細炭化物を含む合金鋼粒子 総重量に対して1~20重量%の範囲で分散して り、マクロ硬度としてHv44~148の範囲のビッカ ース硬度を有する。

 また、上述した本発明に係る銅合金系摺 材料では、前記合金鋼粒子がHv225~430の範囲 ビッカース硬度を有することが望ましい。

 また、本発明に係る銅合金系摺動材料に いて、前記Cu系母相中に、Mo、Fe系金属間化 物および固体潤滑材の内から選択された1種 類または2種類を総重量に対して2重量%以上10 量%以下含むことも可能である。

 また、本発明に係る銅合金系摺動材料に いて、前記固体潤滑材は二硫化モリブデン は黒鉛であってもよい。

 また、本発明に係る銅合金系摺動材料にお て、前記微細炭化物の平均粒径は1μm~5μmで り、前記微細炭化物はM 6 C系、M 7 C 3 系およびMC系の少なくとも一つの微細炭化物 含むことも可能である。

 また、本発明に係る銅合金系摺動材料に いて、前記合金鋼粒子は高速度工具鋼粒子 含むことが好ましい。

 また、上述した本発明に係る銅合金系摺 材料は、建設機械の走行を司るクローラを 転・保持する機構である転輪の中のブシュ 用いられることも可能である。

 本発明に係る銅合金系摺動部材は、鋼板 、摺動層と、を具備する。摺動層は、前記 板上に形成され、請求項1乃至6のいずれか 項に記載の銅合金系摺動材料からなる。

 本発明に係る銅合金系摺動部材は、鋼板 、銅合金系摺動焼結層と、を具備する。銅 金系摺動焼結層は、前記鋼板上に形成され 混合粉末によって焼結接合される。前記混 粉末は、Snを5~15重量%含有させたCu合金粉末 、微細炭化物を含む合金鋼粉末が総重量に して1~20重量%の範囲で混合された粉末であ 。また、前記合金鋼粉末は、Hv225~430の範囲 ビッカース硬度を有する。

本発明の実施の形態による建設機械の 例としての油圧ショベルの全体を示す斜視 である。 図1に示すクローラを備えた走行装置を 示す構成図である。 下転輪のブシュを示す斜視図である。 (A)は、本発明の実施の形態による銅合 系摺動材料の焼結体の組織を模式的に示す であり、(B)は、銅合金系摺動材料のマクロ 度と高速度工具鋼粒子の硬度とCu系母相の 度について説明するための図である。 定速摩擦摩耗試験機を示す模式図であ 。 M2を添加した各種材料についての焼付 面圧と摩擦係数の関係を示す図である。 M2(FP:ファインパウダー)を添加した各種 材料についての面圧と摩擦係数の関係を示す 図である。 実施例8の銅合金系摺動材料の組織を示 す写真である。 実施例19の銅合金系摺動材料の組織を す写真である。

符号の説明

 1 履帯
 2 履板
 3 履帯リンク
 4 連結ピン
 5 トラックフレーム
 6 アイドラ
 7 スプロケット
 8 下転輪
 9a,9b 下転輪装置
 10 走行装置
 13 上部旋回体
 14 ブーム
 15 アーム
 16 バケット
 17 ブーム連結装置
 18 アーム連結装置
 19 バケット連結装置
 20 下転輪のブシュ
 21 油圧ショベル
 22 作業機
 23 Cu系母相
 24 微細炭化物
 25 高速度工具鋼粒子
 26 粒子間距離
 27 テストピース(試験片)
 28 試料ディスク
 29,38 フリー軸受け
 30 取り付けソケット
 31 ガイド軸
 32 ガイドホルダー
 33 ロードセル
 34 カップリング
 35 監視用圧力計
 36 エアチューブ
 37 フリー軸
 39 ペロシリンダー
 40 ストレンゲージ
 41~43 ビッカース硬度計の針

 以下、図面を参照して本発明の実施形態 ついて説明する。

 図1は、本発明の実施の形態による建設機 械の一例としての油圧ショベルの全体を示す 斜視図である。図2は、図1に示すクローラを えた走行装置を示す構成図である。図3は、 下転輪のブシュ20を示す斜視図である。

 図1に示すように、本実施の形態に係る油 圧ショベル21の作業機22は上部旋回体13を備え ており、上部旋回体13はブーム連結装置17に ってブーム14に連結されている。ブーム14は ーム連結装置18によってアーム15に連結され ており、アーム15はバケット連結装置19によ てバケット16に連結されている。また、油圧 ショベル21は、走行を司るクローラを備えた 行装置10を有している。

 油圧ショベルの下部には図2に示すような左 右一対の走行装置10が配設されている。
走行装置10は履帯1を有する。履帯1は、履板2 ボルトで締着された又は溶接で接合された 履帯リンク3を連結ピン4により環状に連結 て構成されている。

 走行装置10は、車両前後方向に沿って配 されたトラックフレーム5と、トラックフレ ム5の前後両端方向に回転自在に取り付けら れたアイドラ6及びスプロケット7とを備えて る。また、アイドラ6及びスプロケット7の で、トラックフレーム5の下部には、上下揺 自在に且つ回転自在に支持された前後1対の 下転輪8,下転輪8を有する3組の下転輪装置9aと 、上下揺動自在に且つ回転自在に支持された 1つの下転輪8を有する下転輪装置9bとがそれ れ設けられている。下転輪装置9a,9bそれぞれ の下転輪8は、履帯リンク3の踏面部に当接し 転動するようになっている。

 本実施の形態による銅合金系摺動材料は 建設機械の走行を司るクローラの保持・回 機能を果す転輪中の巻きブシュに使用され 例えば図3に示す下転輪のブシュ20に使用さ る。

 次に、銅合金系摺動材料の詳細について 4(A)を参照しつつ説明する。図4(A)は、本実 の形態による銅合金系摺動材料の焼結体の 織を模式的に示す図である。

 銅合金系摺動材料は、Snを5~15重量%含有さ せたCu系母相23中に、微細炭化物24を含む合金 鋼粒子である高速度工具鋼粒子25が総重量に して1~20重量%の範囲(より好ましくは、5~15重 量%の範囲)で分散した材料である。Cu系母相23 中に高速度工具鋼粒子25が適度に分散された 織にすることで、耐荷重性、耐面圧性、耐 き付き性を向上させた銅合金系摺動材料が られる。なお、高速度工具鋼(SKH)粒子25の他 に、前記合金鋼粒子の例としては、合金工具 鋼(SKD(熱間ダイス鋼用)、SKS(切削工具用、冷 ダイス鋼用)、SKT(熱間ダイス鋼用))が挙げら る。

 前記微細炭化物24の平均粒径は1μm~5μmであ 、前記微細炭化物24はM 6 C系、M 7 C 3 系およびMC系の少なくとも一つの微細炭化物 含むものである。例えば、M 6 C系の微細炭化物として(Fe,Mo) 6 C、M 7 C 3 系の微細炭化物としてCr 7 C 3 、MC系の微細炭化物としてWCやVCなどが挙げら れる。また、微細炭化物24はHv1500~2500のビッ ース硬度を有している。なお、粒径の測定 は、顕微鏡法による粒径の計測のうちフェ ー(Feret)径により粒径を求めている。フェレ 径とは、粒子をはさむ一定方向の二本の平 線の間隔をいう。

 微細炭化物24の平均粒径を5μm以下にする 由は次のとおりである。微細炭化物24はビ カース硬度Hv1000を超える粒子であるため、 動時の相手材を大きくアタックするおそれ ある。そこで、微細炭化物24の平均粒径を5μ m以下にすることにより相手材へのアタック を軽減することができるからである。

 前記高速度工具鋼粒子25は焼結時の熱処 によりHv225~430の範囲のビッカース硬度を有 るように調整されている。そのため、銅合 系摺動材料が摺動面に用いられた際に材料 焼き付きを抑えるだけでなく、シャフトな の相手材をアタックすることなく、且つ耐 圧を十分確保することができる。

 高速度工具鋼粒子25の硬度をHv225~430の範 とする理由は次のとおりである。パーライ 組織である鋳鉄を摺動時の相手シャフトと て用いる場合があるため、相手シャフトに するアタック性を考えて、添加物の硬度は 手シャフトの硬度同等以下にすることが好 しい。しかし、Hv225未満であると、耐面圧性 の向上、耐摩耗性の向上として添加される硬 質粒子である高速度工具鋼粒子の効果が減る からである。また、銅合金系摺動材料のマク ロ硬度をHv148程度に抑えるには、約20体積%ま 添加を許容する高速度工具鋼粒子の硬度はH v430である。

 尚、高速度工具鋼粒子の硬度を実測した 果を表1に示す。

 

 また、銅合金系摺動材料のマクロ硬度はH v44~148の範囲のビッカース硬度を有している 銅合金系摺動材料のマクロ硬度をHv44~148の範 囲とする理由は次の通りである。マクロ高度 がHv44未満の場合、自摩耗量が増大して母材 変形してしまうからである。なお、高面圧 負荷される場合など、母材の変形に関して り過酷な条件化においては、マクロ硬度がHv 75以上であることが望ましい。また、マクロ 度がHv148を超えると、馴染み性が落ち、摩 係数が上昇して耐面圧が低下してしまうか である。

 図4(B)は、銅合金系摺動材料のマクロ硬度 と高速度工具鋼粒子の硬度とCu系母相の硬度 ついて説明するための図である。

 銅合金系摺動材料のマクロ硬度とは、高 度工具鋼粒子25とCu系母相23の両者を含む領 にビッカース硬度計の針41を押し付けて測 した硬度をいう。また、高速度工具鋼粒子 硬度とは、高速度工具鋼粒子25にビッカース 硬度計の針42を押し付けて測定した硬度をい 。また、Cu系母相の硬度とは、Cu系母相23の の領域にビッカース硬度計の針43を押し付 て測定した硬度をいう。

 また、前記高速度工具鋼粒子25の平均粒 は150μm以下が好ましく、より好ましくは100μ m以下である。

 高速度工具鋼粒子25の平均粒径は5~20μmと り細かい場合でも従来技術に比べて十分な ドバンテージがある。つまり、同じ重量%の 高速度工具鋼粒子25をCu系母相23に添加した場 合、平均粒径が20μm以下とより細かいと、平 粒径が20μmより大きい場合に比べてマクロ 度が落ち、摩擦係数が低くなって摺動時の 熱は下がる傾向にある。

 高速度工具鋼粒子25の分散度合いは、粒 間距離26が200μm以下で分散していることが望 ましい。これにより母相23のミクロ凝着が生 た場合でも、高速度工具鋼粒子25が分散し いる事で、凝着が止まりマクロ的には繋が ない。200μm以上の分散距離であると、Cu系母 相23のミクロ凝着の進展を止める役割を果た 事ができず、その効果が得られない。より ましいのは粒子間距離26が100μm以下である

 前記高速度工具鋼粒子25の含有量を1~20重 %の範囲とする理由は次のとおりである。高 速度工具鋼粒子25の含有量が1重量%未満であ と、高速度工具鋼粒子25が全てCu系母相23に 溶し、Cu系母相23に微細炭化物24が分散して るだけの状態となり、高速度工具鋼粒子25の 耐焼き付き性を向上させる効果がなくなる。 また、高速度工具鋼粒子25の含有量が20重量% 超えると、銅合金系摺動材料からなる摺動 が頑固となり(硬度が高くなり)、そのため 馴染み性を損ない逆に摩擦係数を上げてし う原因となり好ましくない。

 前記Snを5~15重量%含有させる理由は次のと おりである。前記銅合金系摺動材料を鋼板に 焼結接合させて摺動部材を作製する場合、固 液共存温度域で液相焼結を実施することにな るが、Snの含有量が5重量%未満であると、固 相線が900℃以上となり、900℃以上の温度で 焼結では、鋼板の変形が大きくなり、且つ 械的性質が落ちてしまうからである。一方 焼結接合後、焼結体の密度アップのための 延を実施するが、Snが15重量%を超えると、圧 延性が著しく悪くなり、圧延加工が困難にな り、焼結体の緻密化を促進することができな いからである。また、Snが15重量%を超えると 平衡状態図からγ相やδ・η相といった金属 化合物相が析出しやすくなり、そのため、 織が脆くなる他、摩擦特性が落ちるからで る。

 なお、銅合金系摺動材料のマクロ硬度は 前記高速度工具鋼粒子25の含有量および前 Snの含有量の両方の影響を受ける。従って、 前記高速度工具鋼粒子25の含有量および前記S nの含有量は、それぞれ上記の範囲を満たし 且つ、銅合金系摺動材料のマクロ硬度がHv44~ 148の範囲となるように定められる必要がある 。

 従来の鉛入り青銅系摺動材料では、高面 時の耐疲労性に劣り、かつ摺動表面が高温 なると鉛の流出や枯渇により、耐焼き付き が保持できなくなり、高温・高面圧下では 即座に焼き付き現象が起こる。これに対し 本実施の形態による銅合金系摺動材料では Cu系母相23に高速度工具鋼粒子25が適度に分 していることで、この高速度工具鋼粒子25 凸部となり、軟質なCu系母相23が凹部となる その結果、このミクロの凹凸が摺動表面に 散していることから潤滑油を保持できるの 、油潤滑性を向上させることができる。ま 、高速度工具鋼は、高温・高面圧下におい も焼き付き性は落ちず、鉛・Biなどの軟質 がないので、繰り返し荷重による疲労の起 となることがなく、耐疲労性も向上してい 。さらに、高速度工具鋼粒子はCu系母相と冶 金学的に接合しており、粒子の脱落の問題も 無く、引張強度などの機械的性質を十分確保 することができる。

 Cu10Sn母相に、高速度工具鋼粉末の一例と て、M2粉末(三菱製鋼製粉末;Fe-4Cr-5Mo-6W-1V-11C) を添加した時の摺動特性の向上(耐焼き付き 圧や摩耗量)を定速摩擦摩耗試験にて確認し 。このM2粉末の硬度は、上記の表1のとおり ある。実施例1~29それぞれの試料の組成、比 較例1~4の組成および定速摩擦摩耗試験の結果 を表2に示す。評価は、摩擦係数、耐面圧、 摩耗量、硬度のすべてを加味して総合判断 た。

 

 (テストピースの作製方法)
 ベース材粉末、添加主元素粉末、添加第2元 素粉末を表2に示す成分となるように秤量す 。次いで、各粉末が均一に混合されるよう 混合機で混合する。ここで、ベース材粉末 、Cu粉末、Cu20Sn粉末、及び燐青銅粉末の混合 物からなる。添加主元素粉末としては、上述 した高速度工具鋼粉末であるM2粉末の他に、M 2(FP)を用意した。M2(FP)は、平均粒径が小さい 速度工具鋼粉末(ファインパウダー)である M2の化学組成を表3に示す。また、M2の粉末特 性を表4に示す。なお、M2粉末の平均粒径は150 μm以下であり、M2(FP)の平均粒径は、45μm以下 ある。添加第2元素粉末は、Mo、Fe-Mo、MoS2、 銅MoS2、黒鉛、又は、これらのうちの2種の 合物からなる。Mo、Fe-Mo、MoS2の各粉末の平均 粒径は5μm以下である。鍍銅MoS2は平均粒径が4 5μm以下のものを用いた。また、黒鉛は、平 粒径が約100~150μmのものを用いた。

 

 次いで、混合された混合粉末を鋼板上に 布する。

 次いで、800℃~870℃の範囲内の温度で焼結 することにより、鋼板上に混合粉末を焼結接 合させる。これにより、鋼板上に焼結層が形 成される。

 次に、焼結層に5~30%の圧下率が負荷され 程度で圧延を行う。これにより、焼結層が 密化される。より焼結を進行させ、緻密化 図るために、前記の800℃~870℃の範囲内の温 で焼結する工程と5~30%の圧下率で圧延を行 工程を再度実施しても良い。そして、平板 態から定速摩擦摩耗試験用のテストピース 切り取る。

 このようにして実施例1~29および比較例の テストピースが作製される。

 (定速摩擦摩耗試験機の概要)
 図5は、定速摩擦摩耗試験機を示す模式図で ある。

 この定速摩擦摩耗試験機は、テストピー (試験片)27を押し付ける試料ディスク28を有 ている、この試料ディスク28はフリー軸受 29,38およびフリー軸37によって回転可能に取 付けられている。テストピース27は取り付 ソケット30によって取り付けられている。取 り付けソケット30はガイド軸31に取り付けら ており、ガイド軸31はガイドホルダー32によ て保持されている。ガイド軸31はロードセ (荷重計測用)33およびカップリング34を介し ペロシリンダー39に接続されており、ペロシ リンダー39には監視用圧力計35およびエアチ ーブ36が接続されている。また、前記ガイド ホルダー32は、フリー軸37およびペンディン ロードセル(摩擦係数計測用)を保持している 。ガイドホルダー32にはストレンゲージ40が り付けられており、ストレンゲージ40にはス トッパーが取り付けられている。なお、試料 ディスク28は摺動時の相手材となる材料が用 られる。また、摺動面積は5×5mm角である。

 (定速摩擦摩耗試験方法)
 図5に示す定速摩擦摩耗試験機において、0.5 m/秒の一定速度で回転する試料ディスク28に し付けたテストピース27を表5に示す各荷重 10分保持しながら面圧を10~800kg/cm 2 までステップ状に昇圧した後、摩擦係数およ び摩耗量でリミット値を超えた時を焼付きと して限界PV値を測定した。摩擦係数は昇圧直 の値を測定した。この際、80℃のエンジン イル(昭和シェル石油(株)製 リムラD SAE10W) 、回転する試料ディスク28の全面から摺動面 に強制的に供給した。摩耗量については試験 後のテストピースを実測した。このように摺 動テストを実施した結果は表2および図6、図7 に示している。図6は、M2を添加した各種材料 についての焼付き面圧と摩擦係数の関係を示 す図である。図7は、M2(FP:ファインパウダー) 添加した各種材料についての面圧と摩擦係 の関係を示す図である。

 

 表2において、定速摩擦摩耗試験結果の各耐 面圧は、定速摩擦摩耗試験機のトルクリミッ トで停止した時の面圧(kg/cm 2 )であり、実施例1~29については焼付きがなか た。但し、比較例1~4については焼付きで停 した。また、自摩耗量は単位がμmである。

 表2および図6、図7によれば、M2材料を添加 ることで、M2材料を添加していない比較例1 りも2倍以上の耐焼付き面圧が向上すること 確認された。また、M2材料の添加量は、摩 係数、耐面圧、自摩耗量などのバランスか 10重量%あたりが適当であることが分かった また、MoやMoS 2 、FeMoを添加することで、耐焼付き性を向上 せることができ、摩擦係数も低下する傾向 あることが分かった。また、M2粉末は、細か い粒径の方が大きい粒径に比べてマクロ硬度 が低下し、馴染み性が向上するため、摩擦係 数が低下する傾向にあることが確認された。 また、実施例1~29のすべては、比較例2 以上 耐焼付き性、耐摩耗性を有することが確認 れた。

 (組織写真)
 図8は、実施例8の銅合金系摺動材料の組織 示す写真である。図9は、実施例19の銅合金 摺動材料の組織を示す写真である。

 同じ重量%のM2粉末を添加した場合でも、 9に示すように添加するM2粉末の粒径が細か と、図8に示す粒径が大きい場合に比べて、 相手材へのアタック性を低下させることがで きると考えられる。

 尚、本発明は上記実施の形態および上記 施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱し い範囲内で種々変更して実施することが可 である。

 以上説明したように本発明によれば、鉛 含まない材料であって耐焼き付き性および 面圧性を向上させた銅合金系摺動材料およ 銅合金系摺動部材を提供することができる