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Patent Searching and Data


Title:
BALL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/132793
Kind Code:
A1
Abstract:
A ball (B) includes a ball body (1) having a spherical surface and also includes at least one ridge (2) protruding from the surface of the ball body (1). The ridge (2) is protruded so that a laminar flow boundary layer formed on the surface of the ball body (1) is forcibly separated and converted to a turbulent flow boundary layer.

Inventors:
ITO SHINICHIRO (JP)
SEO KAZUYA (JP)
ASAI TAKESHI (JP)
YUKI NORIHIRO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/000942
Publication Date:
November 06, 2008
Filing Date:
April 10, 2008
Export Citation:
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Assignee:
MOLTEN CORP (JP)
ITO SHINICHIRO (JP)
SEO KAZUYA (JP)
ASAI TAKESHI (JP)
YUKI NORIHIRO (JP)
International Classes:
A63B41/00; A63B39/00
Foreign References:
JP2005537034A2005-12-08
JP2003513767A2003-04-15
JPS61127764U1986-08-11
Attorney, Agent or Firm:
MAEDA, Hiroshi et al. (5-7Hommachi 2-chome, Chuo-k, Osaka-shi Osaka 53, JP)
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Claims:
 球状の表面を有するボール本体と、
 前記ボール本体の表面から隆起した、少なくとも1の凸部と、
を備えたボール。
 請求項1に記載のボールにおいて、
 前記凸部は、前記ボール本体の表面に形成される層流境界層を強制的に剥離させて乱流境界層に遷移させるように隆起しているボール。
 請求項1又は2に記載のボールにおいて、
 前記凸部は、前記ボール本体を一様流中においたときに層流境界層が剥離する位置よりも流れ方向の前方位置に配置されているボール。
 請求項1~3のいずれか1項に記載のボールにおいて、
 前記凸部は、前記ボール本体の中心を通る所定の仮想軸に対して軸対称に配置されているボール。
 請求項1~4のいずれか1項に記載のボールにおいて、
 前記凸部は、前記ボール本体の飛行時の軌道を所定の軌道に安定化させるよう隆起しているボール。
 請求項1~5のいずれか1項に記載のボールにおいて、
 前記凸部は、前記ボール本体が実質的に無回転で飛行しているときに、当該ボール本体に作用する流体力を低減させることによって前記ボール本体の軌道を安定化させるよう隆起しているボール。
 請求項1~6のいずれか1項に記載のボールにおいて、
 前記凸部は、格子状に配置されているボール。
 請求項1~7のいずれか1項に記載のボールにおいて、
 前記凸部は、互いに異なる2方向それぞれに対して格子状に配置されているボール。
 請求項1~8のいずれか1項に記載のボールにおいて、
 前記ボール本体の表面は、複数のパネルによって形成されているボール。
Description:
ボール

 本発明は、各種の競技や、トレーニング 遊戯、レクリエーション等に用いられる、 が直接的又は間接的に、投げたり、蹴った 、打ったりするボールに関する。

 中実状と中空状とに大別されるボールの 、中空状のボールの構造の1つとして、圧縮 空気が封入されるチューブと、そのチューブ 上にナイロンフィラメント等をあらゆる円周 方向に巻くことで形成された補強層と、その 補強層上に形成されたカバーゴム層と、その カバーゴム層上に接着された複数枚の皮革パ ネルよりなる表皮層と、を備えた構造が知ら れている(例えば特許文献1参照)。この構造の ボールは、貼りボールと呼ばれている。

 また、これとは異なるボール構造として 例えば特許文献2に開示されているように、 複数枚の皮革パネルの端縁同士を縫い合わせ て球状にすることで表皮層を形成すると共に 、その表皮層内にチューブを収納した構造が 知られている。この構造のボールは、縫いボ ールと呼ばれている。

 さらに別のボール構造として、例えば特許 献3には、複数の織布片を互いに縫い合わせ て球状とした織布層内にチューブを収納する と共に、その織布層の表面に複数枚の皮革パ ネルを接着して表皮層を形成した構造のボー ルが開示されている。

米国特許第4333648号明細書

特開平9-19516号公報

国際公開第2004/56424号パンフレット

 ところで、従来のボールは、回転しなが 飛ぶときには、ボールの軌道が比較的安定 ている。このため、競技者は、ボールをね い通りにコントロールすることができる。

 しかしながら、ボールが無回転又は少な 回転(以下、これらを総称して無回転とし、 それ以外の状態を回転と呼ぶ)で飛ぶときに 、その軌道が上下や左右にぶれる現象が見 れる。それによって、ボールが、競技者が らった位置からずれた位置に飛んでいって まう場合がある。つまり、従来のボールは 無回転時におけるボールコントロール性の で問題がある。

 本発明は、かかる点に鑑みてなされたも であり、その目的とするところは、無回転 における軌道のぶれを抑制して、ボールコ トロール性を高めたボールを提供すること ある。

 前記の課題を解決すべく本件発明者らが 意検討を重ねたところ、無回転時における ールの軌道のぶれはボールの空力特性に起 するという結論に至った。

 具体的には、ボールが無回転で飛んでい ときには、回転時とは異なり、ボールの表 に層流境界層が形成される。層流境界層は ボールの表面に沿って下流に向かうにつれ 次第に発達し、所定の位置でボール表面か 剥離する。その層流境界層が剥離したとき 、条件によっては、ボールの後方位置にカ マン渦が発生する。発生したカルマン渦は ールに対し上下又は左右等の、ボールの飛 方向に直交する方向の力を及ぼす(以下、こ のボールに作用する力を横力とも言う)。つ り、無回転時のボールの軌道のぶれは、カ マン渦が原因であると考えられるのである

 従って、無回転時におけるボールの軌道 ぶれを抑制するためには、カルマン渦の発 を抑制すればよいことになる。

 本件発明者らは、カルマン渦は、層流境 層がボール表面から剥離するときに発生し 乱流境界層が剥離するときには発生しない とに着目して、本発明では、無回転時にボ ル表面に形成される層流境界層が乱流境界 に遷移するように構成し、それによって乱 境界層がボール表面から剥離するようにし 。

 本発明の一側面によると、ボールは、球 の表面を有するボール本体と、前記ボール 体の表面から隆起した、少なくとも1の凸部 と、を備える。

 前記凸部は、前記ボール本体の表面に形 される層流境界層を強制的に剥離させて乱 境界層に遷移させるように隆起している、 とが好ましい。

 前述したように、無回転で飛んでいるボ ル本体の表面には層流境界層が形成される 、ボール本体の表面から隆起する凸部によ て、その層流境界層が強制的に剥離される 共に、ボール本体の表面に乱流境界層が再 着される。

 再付着した乱流境界層は、ボール本体に ける流れ方向の比較的後方位置においてボ ル本体の表面から剥離する。このように、 記構成の球技用ボールでは、ボール本体の 面からは、層流境界層ではなく乱流境界層 剥離するから、カルマン渦の発生が抑制さ る。その結果、無回転時におけるボールの 道は安定する。

 また、乱流境界層は層流境界層に比べて 離し難い性質があり、乱流境界層が剥離す 位置は、層流境界層が剥離する位置に比べ 、流れ方向の後方に位置する。そのため、 流境界層が剥離するときは、ボール本体の 流の乱れ幅は相対的に狭くなり、ボールに 用する抗力が小さくなる。つまり、前記構 のボールは、従来のボールに比べて抗力が さくなることから、飛距離が長くなるとい 付随的な効果も得られる。

 前記凸部は、前記ボール本体を一様流中 おいたときに層流境界層が剥離する位置よ も流れ方向の前方位置に配置されている、 とが好ましい。

 つまり前記凸部は、層流境界層を強制的 剥離させるため、その層流境界層が自然に 離する位置よりも流れ方向の前方位置に配 する必要がある。そうすることによって、 ール本体の表面に形成された層流境界層を 制的に剥離させて乱流境界層に遷移させる とが可能になる。

 前記凸部は、前記ボール本体の中心を通 所定の仮想軸に対して軸対称に配置されて る、ことが好ましい。

 つまり、球状の表面を有するボール本体 、軸対称という形状特性を備えているため その表面に設ける凸部は軸対称に配置する とが好ましい。そうすることによって、仮 軸が流れ方向に一致するようにした状態で 、ボール本体の表面に、層流境界層が仮想 に対し軸対称に形成されるが、その軸対称 層流境界層が、軸対称の凸部によって強制 に剥離されて乱流境界層に遷移する。

 前記凸部は、前記ボール本体の飛行時の 道を所定の軌道に安定化させるよう隆起し いる、ことが好ましい。

 前記凸部は、前記ボール本体が実質的に 回転で飛行しているときに、当該ボール本 に作用する流体力を低減させることによっ 前記ボール本体の軌道を安定化させるよう 起している、としてもよい。

 前記凸部は、格子状に配置してもよい。 た、前記凸部は、互いに異なる2方向それぞ れに対して格子状に配置してもよい。ここで 、その格子は一定間隔としてもよい。

 前記ボール本体の表面は、複数のパネル よって形成されている、としてもよい。

 表面が複数のパネルによって形成された ール本体は、そのパネルとパネルと間に窪 が形成される。そのため、ボール本体の表 に凹凸が形成されることになる。予め凹凸 形成された表面を有するボール本体に対し 前述した凸部を設けることにより、無回転 におけるボールの軌道のぶれを抑制すると う作用効果が、より一層、顕著になる。

 以上説明したように、本発明によると、 回転時にボール本体の表面に形成される層 境界層を、その表面で隆起する凸部によっ 乱流境界層に遷移させることで、ボールの 道のぶれの原因であるカルマン渦の発生が 制されるから、無回転時のボールの軌道を 定にすることができる。その結果、ボール コントロール性を高めることができる。

図1は、本発明の実施形態に係るバレー ボールを示す斜視図である。 図2は、バレーボールの一部断面図(図1 II-II断面図)である。 図3は、図2とは異なる構造のバレーボ ルの一部断面図である。 図4は、図2及び図3とは異なる構造のバ ーボールの一部断面図である。 図5の上図は、ボールの表面から層流境 界層が剥離する様子を示す説明図であり、図 5の下図は、凸部によって層流境界層から遷 した乱流境界層がボールの表面から剥離す 様子を示す説明図である。 図6は、ボール本体に対する凸部の位置 を説明するための説明図である。 図7は、凸部の別構成を示す正面図であ る。 図8は、凸部のさらに別の構成を示す正 面図である。 図9は、凸部のさらに別の構成を示す正 面図である。 図10は、凸部のさらに別の構成を示す 大斜視図である。 図11Aは、格子状に配置する凸部のさ に別の構成を示す概念図である。 図11Bは、格子状に配置する凸部のさ に別の構成を示す概念図である。 図11Cは、格子状に配置する凸部のさ に別の構成を示す概念図である。 図11Dは、格子状に配置する凸部のさ に別の構成を示す概念図である。 図11Eは、格子状に配置する凸部のさ に別の構成を示す概念図である。 図12は、実施例に係る、各ボールの空 特性の実験結果を示す図である。 図13Aは、従来例のボールに作用する 力を測定した実験結果を示す図である。 図13Bは、実施例4のボールに作用する 力を測定した実験結果を示す図である。 図13Cは、格子状の凸部を有するボー に作用する横力を測定した実験結果を示す である。

符号の説明

1 ボール本体
14 皮革パネル
2 凸部
B バレーボール

 以下、本発明の実施形態を図面に基づい 説明する。尚、以下の好ましい実施形態の 明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、そ 適用物或いはその用途を制限することを意 するものではない。

 図1は、本実施形態に係るボールを示して いる。ここでは、バレーボールを例に、ボー ルについて説明する。尚、ボールはバレーボ ールに限らない。例えば、サッカーボール、 ハンドボール、及び、バスケットボール等の 他の競技に用いられるボールであってもよい 。

 前記バレーボールBは、ボール本体1と、 ール本体1の表面から隆起した凸部2と、を備 えている。

 ボール本体1は、図2、図3又は図4に示すよ うに、本実施形態では、いわゆる貼りボール の構造を有している。すなわち、ボール本体 1は、球形中空のチューブ11、チューブ11の表 を被覆する補強層12、補強層12上に被覆され た、例えば天然ゴムからなるカバーゴム層13 及び、カバーゴム層13の表面に接着剤を介 て接着された複数枚(このバレーボールBでは 18枚)の皮革パネル14からなり、ボール本体1の 球面状の表面を形成する表皮層15、を含んで 成される。

 前記チューブ11は、例えばブチルゴム等 、空気非透過性弾性体からなる。チューブ11 には、図示省略のバルブを介して圧縮空気が 封入される。

 前記補強層12は、数千m分の長さのナイロ フィラメント等をチューブ11上にあらゆる 周方向に巻回した糸巻き層、又は、複数枚 織布片を球形に縫い合わせた布層よりなる この補強層12によって、ボールとしての品質 が安定化する。つまり、この補強層12によっ 、ボール本体1の真球性、耐久性、球状維持 性、及び、経時変化に対する強度、がそれぞ れ向上する。

 前記皮革パネル14は、天然皮革又は人工 革からなり、それぞれ所定の短冊形状を有 ている。皮革パネル14は、ボール本体1の表 を、上下、左右、及び前後の、ボール本体 中心を通りかつ互いに直交する6軸(以下、各 軸を中心軸と呼ぶこともある)それぞれの方 に6分割したときに略四角形状に形成される 領域内に3枚、その周縁部同士を互いに接し た状態で配置される。そうしてボール本体1 表面が皮革パネル14によって覆われることで 、前記表皮層15が形成される。

 尚、図示は省略するが、各皮革パネル14 、その裏面の周縁部が厚み方向に斜めに削 れている。このことによって、ボール本体1 表面において皮革パネル14の周縁部同士が 合する箇所には、横断面略V字状の窪みが形 されることになる。すなわち、前記バレー ールBの表面には、予め所定の凹凸が形成さ れている。

 尚、図2~図4は、理解容易のために、ボー 本体1の断面を模式的に描いている。図例で は各層の厚みを互いに略同じに描いているが 、各層の厚みは、実際は互いに異なるもので ある。

 前記凸部2は、本実施形態のバレーボール Bには、図1及び図6(尚、図6では皮革パネル14 図示を省略している)に示すように、上下、 右、及び前後の互いに直交する6軸それぞれ の方向に対応して6つ、形成されている。尚 図例では、5つの凸部2が図示され、図におい てボール本体1の裏側に配置される1つの凸部 図示していない。各凸部2は、それに対応す る軸を中心とした円形状に、連続して形成さ れている。

 各凸部2は、例えば以下のようにして、ボ ール本体1の表面に形成すればよい。すなわ 、例えば図2に示すように、カバーゴム層13 対し一体的に、径方向の外方に突出する突 部13aを形成する。この突条部13aによって、 のカバーゴム層13上に接着した皮革パネル14 ボール本体1の径方向外方に隆起するため、 ボール本体1の表面から隆起する凸部2が形成 れることになる。

 尚、前記の突条部13aは、カバーゴム層13 一体成形により形成してもよいが、突条部13 aの形成は一体成形に限るものではない。例 ば図示は省略するが、カバーゴム層13の表面 に、所定の高さを有する突条部材を接着等に よって取り付けることによっても、前記の突 条部13aを形成することができる。

 これとは異なり、例えば図3に示すように 、皮革パネル14に対し一体的に、その表面か 突出する突条部14aを形成することによって ボール本体1の表面から隆起する凸部2を形 してもよい。

 また、前記の突条部14aを皮革パネル14と 体成形するのではなく、例えば図4に示すよ に、皮革パネル14の表面に、突条部材14bを えば接着によって取り付けることによって ボール本体1の表面から隆起する凸部2を形成 するようにしてもよい。

 ボール本体1の表面から隆起する各凸部2 、図5に示すように、ボール本体1の表面に形 成される層流境界層を強制的に剥離させると 共に、そのボール本体1の表面に乱流境界層 再付着させる機能を有する。

 すなわち、バレーボールBが無回転で飛ん でいるときには、図5の上図に示すように、 のボール本体1の表面に層流境界層が形成さ る。その層流境界層はボール本体1の表面に 沿って下流に向かうにつれて発達する。そう して、流れ方向の所定の位置において、層流 境界層はボール本体1の表面から剥離するこ になる。この層流境界層が剥離したときに 条件によっては、ボール本体1の後方にカル ン渦が発生する。発生したカルマン渦は、 ール本体1に対して、上下や左右の、流れ方 向に直交する方向の力を作用させるため、ボ ールの軌道にぶれが生じることになる。

 これに対し、図5の下図に示すように、前 記凸部2を備えたバレーボールBは、その凸部2 がボール本体1の表面に形成された層流境界 を強制的に剥離させると共に、ボール本体1 表面に乱流境界層を再付着させる。これに って、ボール本体1の表面からは乱流境界層 が剥離することになるため、カルマン渦の発 生は抑制される。従って、ボールが無回転で あっても、ボールの軌道のぶれが抑制されて その軌道は安定になる。

 ここで、ボール本体1に設ける凸部2の数 ついては、特に限定されるものではなく、 部2は、少なくとも1つあればよい。但し、凸 部2によって、ボール本体1の重心位置が偏心 ないことが望ましい。このバレーボールBで は、ボール本体1に対して、上下、左右及び 後の6軸を設定することによって、6個の凸部 2を設けているが、ボール本体1に対して適宜 数の軸を均等に設定し、それぞれの軸に対 して凸部2を設けてもよい。

 次に、前記各凸部2の配置位置や形状につ き、好ましい位置及び形状を、図6等を参照 ながら説明する。

 各凸部2は、前述したように、ボール本体 1の中心を通る6軸のそれぞれに対して、その 心軸を中心とした円形状に配置されている( 図6参照)。従って、各凸部2は、当該中心軸に 対して軸対称にされている。これは、球状表 面を有するボール本体1が、軸対称性を有し いるためである。

 ここで、円形状の各凸部2は、その一周に 亘って連続している必要はない。例えば図7 示すように、各凸部2は適宜の数に分割され いてもよい。図7では、各凸部2を、凸部2同 が互いに交差する位置において分けること よって、各凸部2は、長短合わせて8つの部 2-1~2-8に分割されている。

 また例えば、図8に示すように、点状の多 数の突起2a,2a,…を円形状に並べて配置するこ とによって、前記の凸部2を形成するように てもよい。

 さらに、各凸部2は円形状に配置するに限 らず、例えば図9に示すように紙面に直交す 中心軸方向に見て、中心軸周りの角度θによ って径Dが周期的に変化するような形状に配 してもよい。尚、図9では、理解容易のため 、1つの凸部2のみを図示しているが、前述 たように、凸部2の数に制限はない。また、 示は省略するが、各凸部2は、中心軸周りに 、円形状ではなく波形状となるように配置し てもよい。尚、図7、図8、図9に示す凸部の特 徴を互いに組み合わせることも可能である。

 例えばボール本体1の中心を通る中心軸を 多数設定すると共に、その各中心軸に対応し て、図8に示す点状の多数の突起2a,2a,…を、 形状や波形状に並べて配置することによっ 、前記の凸部2を多数形成してもよい。その 果として、多数の突起2aが、ボール本体1の 状表面の全体に亘って配置されるようにし もよい。さらに、例えば図10に、バレーボ ル(ボール本体1)の表面を拡大して示すよう 、凸部2を、各皮革パネル14において、互い 直交する2方向それぞれに対して格子状とな ように配置してもよい。これは、線状の凸 2を多数配置したことと等価である。凸部2 格子は、一定間隔としてもよい。こうした ールは、前述したように乱流境界層の再付 によってカルマン渦の発生を抑制するとい 効果が得られることは勿論のこと、詳しく 後述するが、ボールの表面粗さ(ラフネス)が 増大することによって、球速の広い範囲に亘 ってボールの軌道が安定になるという効果が 得られる。

 凸部2の格子状配置の別の例として、図11A ~11Eを挙げることができる。具体的に図11Aで 、凸部2を#形状に配置すると共に、それを互 いに直交する2方向それぞれに対し並べて配 している。また、図11Bでは、比較的短い線 状の凸部2を、互いに直交する2方向それぞれ に対し並べて配置している。さらに、図11Cで は、凸部2をバツ状に配置すると共に、それ 互いに直交する2方向それぞれに対し並べて 置している。加えて、図11Dでは、比較的長 線分状の凸部2を、1方向に並べて配置して る。ここで凸部2の間隔は、同図に示すよう 周期的に変化させてもよいし、等間隔であ てもよい。さらに、図11Eでは、凸部2をV字 に配置すると共に、それを互いに直交する2 向それぞれに対し並べて配置している。

 また、前記各凸部2の、流れ方向(図6の白 きの矢印参照)に対する位置(L)は、ボール本 体1を一様流中においたときに層流境界層が 然に剥離する位置(つまり、図5の上図におい て、層流境界層が剥離する位置に対応する) りも、上流側の位置となるように設定すれ よい。これは、前記凸部2によって、ボール 体1の表面に形成される層流境界層を強制的 に剥離させて、乱流境界層に遷移させる必要 があるためである。

 以上説明したように、前記のバレーボー Bは、ボール本体1の表面から隆起する凸部2 よって、無回転で飛んでいるときのカルマ 渦の発生が抑制される。このため、ボール 軌道が安定し、競技者のねらい通りにボー が飛ぶようになる。つまり、前記のバレー ールBは、無回転時におけるボールコントロ ール性が高い。

 また、前記の凸部2は、ボール本体1の表 に形成される層流境界層を乱流境界層に遷 させている。このように乱流境界層が剥離 る場合は、層流境界層が剥離する場合に比 て、図5の下図に示すように、ボール後方に ける流れの乱れ幅が狭くなってボールの抗 が低下する。従って、前記のバレーボールB では、ボールの飛距離が伸びるという付随的 な効果も得られる。

 次に、具体的に実施した実施例について 明する。先ず、18枚の皮革パネルが表面に られた市販のバレーボール(直径206mm)と、そ 表面に凹凸がなく平滑な表面を有する、直 が200mmのボール(以下、スムースボールと呼 する)と、をそれぞれ用意した。

 そうして、市販のバレーボールそのもの 従来例とする一方で、その市販のバレーボ ルの表面に、直径が0.45mmの断面円形状を有 る線条部材を、所定の中心軸を中心とする 所定の直径(図6のD参照)の円形状となるよう に貼り付けることによって、ボールの表面か ら隆起する凸部を有するバレーボール(実施 1~4)を作成した。

 具体的に実施例1は、直径が109mmである凸 が、1つ設けられたボールであり、実施例2 、直径Dが151mmである凸部が、1つ設けられた ールであり、実施例3は、直径Dが187mmである 凸部が、1つ設けられたボールである。また 実施例4は、直径Dが187mmである凸部が、6軸そ れぞれに対応して6つ設けられたボールであ 。

 また、前記スムースボールそのものを比 例1とすると共に、実施例と同様に、そのス ムースボールの表面における所定の位置に、 直径が0.45mmの断面円形状を有する線条部材を 、円形状となるように貼り付けたボールを作 成した(比較例2)。具体的に比較例2は、直径D 151mmである凸部が、1つ設けられたボールで る。各実施例、従来例、及び各比較例の諸 を、表1にまとめて示す。

 前記の各例に対し風洞実験を行うことによ て、各例のボールの空力特性を調べた。具 的には、風速を4m/secから20m/secまで、2m/sec刻 みで変化させ、その各風速において、風洞の 吹き出し口近傍に配置したボールの抗力を計 測した。ここで、凸部が形成された各例(実 例1~4及び比較例2)のボールは、図5の下図に すように、凸部に対応する中心軸が流れ方 に一致すると共に、その凸部が流れ方向に 対するような向きに配置した。そうして、 例についての、レイノルズ数Reに対する抗力 係数Cdの変化を調べた。尚、レイノルズ数Re 、Re=ρ×v×d/μであり、抗力係数Cdは、Cd=D/(1/2 ρ×v 2 ×(πd 2 /4))である。ρは空気密度〔kg/m 3 〕、vは流速〔m/s〕、dはボール直径〔m〕、μ 粘性係数〔Pa・s〕、Dは発生する抗力〔N〕 ある。

 ここで、ボールの表面から層流境界層が 離しているときには、その剥離位置が比較 上流側の位置になることで、ボール後方に ける流れの乱れ幅が広くなり、ボールの抗 は相対的に高くなる(図5の上図参照)のに対 、ボールの表面から乱流境界層が剥離して るときには、その剥離位置が比較的下流側 位置になることで、ボール後方における流 の乱れ幅が狭くなって、ボールの抗力が相 的に低くなる(図5の下図参照)。

 従って、抗力係数Cdが大きく低下するレ ノルズ数(臨界レイノルズ数)が小さいボール は、低速域でも表面に乱流境界層が形成され ると共に、その乱流境界層がボール表面から 剥離していることになるから、カルマン渦の 発生が抑制されているボールということがで きる。

 前記の各実施例、従来例、及び各比較例に いて行った風洞実験の結果を、図12に示す 先ず、同図において、従来例及び比較例1を 較すると、比較例1は、その臨界レイノルズ 数が、従来例の臨界レイノルズ数に比べて大 幅に高い(従来例の臨界レイノルズ数は1.5×10 5 程度、比較例1の臨界レイノルズ数は2.5×10 5 程度)。すなわち、表面が平滑な比較例1では 比較的高い流速まで、ボールの表面に層流 界層が形成されてそれが剥離することによ 、カルマン渦が発生し易い。従って、比較 1は、無回転時に軌道がぶれやすいボールで ある。

 また、比較例1及び比較例2を比較すると、 較例2では、臨界レイノルズ数が1.4×10 5 程度になり、比較例1に比べて大幅に小さく って従来例と同程度になっている。これは ボールの表面に凸部を設けることによって その凸部によって比較的低い流速において ボールの表面に形成された層流境界層が乱 境界層に遷移して、それが剥離するように ったと考えられる。従って、ボールの表面 設けた凸部は、カルマン渦の発生を抑制す 機能を有している。

 次に、各実施例と従来例とを比較すると、 施例1~4では、臨界レイノルズ数がそれぞれ 1.2×10 5 程度、0.9×10 5 程度、0.6×10 5 程度、0.6×10 5 程度となり、従来例の臨界レイノルズ数(1.5× 10 5 程度)に比べてそれぞれ小さくなっている。 って、各実施例のボールは、従来例のボー に比べて、より低い流速においてボールの 面に形成された層流境界層が乱流境界層に 移するようになって、その乱流境界層が剥 している。つまり、各実施例のボールは、 来例によりも低速域で乱流境界層が剥離す ため、従来例よりもカルマン渦の発生が抑 される。換言すれば、各実施例のボールは 従来例よりも、無回転時における軌道のぶ が抑制されることになる。

 特に実施例4のボールは、抗力係数Cdの値 、レイノルズ数の増大に対し単調に減少し いる。このことは、前述した凸部による層 境界層から乱流境界層への遷移を早める効 に加えて、複数の凸部を設けたことに伴う ールの表面粗さ(ラフネス)の増大によって レイノルズ数の変化に対して層流境界層か 乱流境界層への遷移が穏やかになる効果も られることを示している。従って、実施例4 ような複数の凸部を備えたボールは、低速 のみならず、高速域においてもボール軌道 安定性が向上することで、球速の広い範囲 亘ってボールの軌道が安定することが予想 れる。

 また、前記従来例及び実施例4のボールに ついて風洞実験を行うことによって、ボール に作用する横力の時間変動を計測した。この 結果を、図13A及び13Bに示す。これによると、 従来例のボールには、横力が振動的に作用す ると共に、その振幅は比較的大きかった(図13 A参照)のに対し、実施例4のボールには横力の 振動がほとんど生じないことが確認された( 13B参照)。さらに、図10に示すような、格子 の凸部を形成したボールについても風洞実 を行って横力の時間変動を計測した。この 果を、図13Cに示す。これによると、このボ ルも、実施例4のボールと同様に、横力の振 がほとんど生じないことが確認された。こ 結果より、実施例4のボール等は、従来例の ボールと比較して、ボール軌道が安定するこ とが実際に確認された。

 尚、前述したように、本発明が適用可能 ボールはバレーボールBに限らない。本発明 は、その他、競技用、トレーニング用、遊戯 用、レクリエーション用等の、各種のボール に適用可能である。尚、競技用ボールとして は特に、サッカーボール、ハンドボール、バ スケットボール等が具体例として挙げること ができる。

 また、ボールの構造も、貼りボールに限 されるものではない。本発明は、各種の構 のボールに対して適用することが可能であ 。例えば中空のボールに限らず、中実のボ ルに対して本発明を適用することも可能で る。

 また、貼りボール以外の中空のボールの 造としては、例えば、複数枚の皮革パネル 端縁同士を縫い合わせて球状とした表皮層 、その表皮層内に収納したチューブとを含 構造の、いわゆる縫いボールを、具体例と て挙げることができる。この縫いボールに 発明を適用するときには、皮革パネルに対 一体に突条部を形成することによって凸部 設けてもよいし、皮革パネルの表面に突条 材を接着等によって取り付けることによっ 凸部を設けてもよい。

 また、中空のボールの構造としては、例 ば、複数の織布片を互いに縫い合わせて球 とした織布層内にチューブを収納すると共 、その織布層の表面に複数枚の皮革パネル 接着した構造も、別の具体例として挙げる とができる。この構造のボールに本発明を 用するときには、前記縫いボールと同様に 皮革パネルに突条部を一体に形成するか、 革パネルに突条部材を接着等によって取り けるか、すればよい。また、例えば織布層 突条部材を貼り付けると共に、その上に皮 パネルを接着することによって、ボール表 から隆起する凸部を設けてもよい。

 以上説明したように、本発明は、無回転 におけるボールの軌道のぶれを抑制して、 ールコントロール性を高めることができる ら、各種のボールに有用である。