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Patent Searching and Data


Title:
CHITIN SLURRY AND METHOD FOR PRODUCING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/156109
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a chitin slurry which enables to well disperse chitin in a desired solvent of a wide range. Also disclosed are a method for producing such a chitin slurry and various additives using such a chitin slurry which are used for cosmetic products, food, medical material and the like. Specifically disclosed is a chitin slurry obtained by dispersing chitin in an organic solvent, an acid and/or an aqueous alkaline solution. Also specifically disclosed is a method for producing such a chitin slurry.

Inventors:
TOKURA SEIICHI (JP)
KITAOKA KENJI (JP)
TAMURA HIROSHI (JP)
KODERA FUJI (JP)
NISHIZAWA KUMIKO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/061137
Publication Date:
December 24, 2008
Filing Date:
June 18, 2008
Export Citation:
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Assignee:
CLUSTER TECHNOLOGY CO LTD (JP)
TOKURA SEIICHI (JP)
KITAOKA KENJI (JP)
TAMURA HIROSHI (JP)
KODERA FUJI (JP)
NISHIZAWA KUMIKO (JP)
International Classes:
C08L5/08; A61K8/73; A61K47/36; C08B37/08; C08J3/02; C08K3/22; C08K5/05
Foreign References:
JP2000157104A2000-06-13
JPH01249133A1989-10-04
JPS63190821A1988-08-08
JP2007277491A2007-10-25
JPS5984938A1984-05-16
JP2004027077A2004-01-29
Attorney, Agent or Firm:
TANAKA, Mitsuo et al. (IMP Building3-7, Shiromi 1-chome,Chuo-ku, Osaka-shi, Osaka 01, JP)
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Claims:
 キチンと有機溶媒、酸およびアルカリ水溶液からなる群から選択される溶媒を含んでなり、透過率が10~90%であることを特徴とするキチンスラリー。
 溶媒は、一価または多価アルコールおよび苛性アルカリ類からなる群から選択される、請求項1に記載のキチンスラリー。
 溶媒は、水酸化ナトリウム水溶液、グリセリン、トルエン、シリコーンオイル、エチレングリコールおよびブチレングリコールからなる群から選択される、請求項1に記載のキチンスラリー。
 化粧用添加剤としての請求項1~3のいずれかに記載のキチンスラリー。
 食品用添加剤としての請求項1~3のいずれかに記載のキチンスラリー。
 医療材料用添加剤としての請求項1~3のいずれかに記載のキチンスラリー。
 請求項1~6のいずれかに記載のキチンスラリーを製造する方法であって、
a)ハロゲン化カルシウム水和物の飽和アルコール中にキチンを溶解してキチン溶液を得る工程;
b)キチン溶液を水で希釈し、必要に応じて生成したキチンの沈殿を水洗し、溶液中に含まれるカルシウムイオンとアルコールを水分子で置換して、キチン水和物スラリーを得る工程;
c)キチン水和物スラリーに親水性溶媒を添加し、キチン水和物スラリー中に含まれる水分子を該親水性溶媒で置換して、キチンゲルを得る工程;および
d)キチンゲルに有機溶媒、酸およびアルカリ水溶液からなる群から選択される溶媒を添加し、キチンゲル中に含まれる親水性溶媒を該溶媒で置換して、キチンスラリーを得る工程
を含んでなる、方法。
 工程c)における親水性溶媒は、メタノールおよびエタノールからなる群から選択されるアルコールである、請求項7に記載の方法。
 工程d)における溶媒は、水酸化ナトリウム水溶液およびエチレングリコールからなる群から選択される、請求項7~8のいずれかに記載のキチンスラリー。
Description:
キチンスラリーおよびその製造 法

 本特許出願は、日本国特許出願第2007-161220 に基づくパリ条約上の優先権を主張するも であり、ここに引用することによって、上 出願に記載された内容の全体は、本明細書 一部分を構成する。
 本発明は、キチンが、有機溶媒、酸および/ またはアルカリ中に均一分散したキチンスラ リー、およびその製造方法に関する。

 キチンは、カニやエビなどの甲殻類の殻 昆虫の表皮、キノコなどの細菌細胞壁から られる天然ムコ多糖類であって、地球上に 量に存在する生物資源である。このような チンには、保湿性、生理活性、生体適合性 ど、様々な優れた特性を有することが明ら となってきた。このため、キチンの優れた 性を、繊維、フィルム、化粧品、食品、医 、医用材料等の分野に利用するために、多 の研究がなされている。例えば、キチンを 療用材料として応用した例としては、創傷 覆材としてのユニチカ株式会社から市販さ ているベスキチン(登録商標)が知られてい 。これは、キチンからなる成形体に軟膏剤 含浸させて創傷被覆材を形成したものであ (特許文献1参照)。

 しかしながら、キチンは、その化学構造 由来する強固な水素結合によって、硬い結 構造を形成しているため、難溶性を示すこ が知られている。この難溶性のため、キチ を溶解または良分散させた溶液または分散 を形成することができず、その利用分野は キチンの粉体を基材中へ物理的に練り込ん 成形体とすることによる用途など、極めて 定されたものであった。また、キチンの難 性のため、キチンに化学修飾を施そうとし もそれがスムースに進行せず、これまで、 チンの上記優れた特性を生かすことができ かった。

 そこで、本発明者らは、上記のように難 性であるキチンを溶媒中に溶解または良分 させることができれば、キチンの上記優れ 特性の利用が容易となることに着眼して鋭 検討を行ったところ、メタノールと塩化カ シウム二水塩を用いた特定の溶媒を用いる 、キチンを溶解させることができることを 出すとともに、溶液中に存在するキチンの 子量やアミノ基含量の特性を評価すること 成功した(非特許文献1,2参照)。

 上記のようにして得られたキチン溶液は 高塩濃度とメタノールの毒性のため、これ そのままの形態で一般的な用途に展開する とはできず、従って、例えば、化粧品、食 、医薬、医用材料等の分野において、キチ を直接利用し、あるいは、必要に応じてキ ンに化学修飾を施した後にこれを利用する めには、上記キチン溶液を所望の各用途に いて必要とされる溶媒中に完全に溶解また 良分散させる技術の開発が求められていた

特開2003-265591号公報 Akihiro Shirai, Kiyohisa Takahashi, Ratana Rujira vanit, Norio Nishi and Seiichi Tokura, Title: Chitin and Chitosan: The Versatile Environmentally Friendly  Modern Materials "Regeneration of Chitin Using New So lvent System", Ed. Mat B Zakaria, Wan Mohamed Wan M uda, Md Pauzi Abdullah, Pb. Universiti Kebangsaan Mal aysia Press, 1995 Seiichi Tokura and Norio Nishi, Title: Chitin a nd Chitosan: The Versatile Environmentally Friendly Mo dern Materials "Specification and Characterization of  Chitin and Chitosan", Ed. Mat B Zakaria, Wan Mohamed  Wan Muda, Md Pauzi Abdullah, Pub. Universiti Kebang saan Malaysia Press, 1995

 本発明は、キチンを所望の広範囲な溶媒 に良分散させ得るキチンスラリー、その製 方法、該キチンスラリーを用いた化粧用、 品用などの各種添加剤を提供することを課 とする。

 本発明の主たる態様および好ましい態様は 以下を包含する。
〔1〕 キチンと有機溶媒、酸およびアルカリ 水溶液からなる群から選択される溶媒を含ん でなり、透過率が10~90%であることを特徴とす るキチンスラリー。
〔2〕 溶媒は、一価または多価アルコールお よび苛性アルカリ類からなる群から選択され る、〔1〕に記載のキチンスラリー。
〔3〕 溶媒は、水酸化ナトリウム水溶液、グ リセリン、トルエン、シリコーンオイル、エ チレングリコールおよびブチレングリコール からなる群から選択される、〔1〕に記載の チンスラリー。
〔4〕 化粧用添加剤としての〔1〕~〔3〕のい ずれかに記載のキチンスラリー。
〔5〕 食品用添加剤としての〔1〕~〔3〕のい ずれかに記載のキチンスラリー。
〔6〕 医療材料用添加剤としての〔1〕~〔3〕 のいずれかに記載のキチンスラリー。
〔7〕 〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のキチン スラリーを製造する方法であって、
a)ハロゲン化カルシウム水和物の飽和アルコ ル中にキチンを溶解してキチン溶液を得る 程;
b)キチン溶液を水で希釈し、必要に応じて生 したキチンの沈殿を水洗し、溶液中に含ま るカルシウムイオンとアルコールを水分子 置換して、キチン水和物スラリーを得る工 ;
c)キチン水和物スラリーに親水性溶媒を添加 、キチン水和物スラリー中に含まれる水分 を該親水性溶媒で置換して、キチンゲルを る工程;および
d)キチンゲルに有機溶媒、酸およびアルカリ 溶液からなる群から選択される溶媒を添加 、キチンゲル中に含まれる親水性溶媒を該 媒で置換して、キチンスラリーを得る工程
を含んでなる、方法。
〔8〕 工程c)における親水性溶媒は、メタノ ルおよびエタノールからなる群から選択さ るアルコールである、〔7〕に記載の方法。
〔9〕 工程d)における溶媒は、水酸化ナトリ ム水溶液およびエチレングリコールからな 群から選択される、〔7〕~〔8〕のいずれか 記載のキチンスラリー。

実施例3において、異なったエタノール 置換度による熱特性プロファイル(示唆熱)を す(縦軸は示唆熱(DTA)でArbitrary Unit、横軸は 度、EtOHの%は推定エタノール含有量を表す) 実施例3において、エタノール置換前の 純粋な水和キチンスラリーの熱特性プロファ イルを示す。 実施例3において、エタノール置換度21% のキチンスラリーの熱特性プロファイルを示 す。 実施例3において、エタノール置換度46% のキチンスラリーの熱特性プロファイルを示 す。 実施例3において、エタノール置換度63% のキチンスラリーの熱特性プロファイルを示 す。 実施例3において、エタノール置換度85% のキチンスラリーの熱特性プロファイルを示 す。 実施例3において、エタノール置換度91% のキチンスラリーの熱特性プロファイルを示 す。 実施例3において、エタノール置換度95% のキチンスラリーの熱特性プロファイルを示 す。 実施例3において、エタノール置換度97% のキチンスラリーの熱特性プロファイルを示 す。 実施例3において、エタノール置換度10 0%のキチンスラリーの熱特性プロファイルを す。

 上記のように、メタノールと塩化カルシ ム二水塩を用いた特定の溶媒(以下、カルシ ウム溶媒とも称する)を用いて得られたキチ 溶液中では、溶媒がキチンの硬い結晶構造 崩してキチン分子内部まで浸透した結果、 解状態が得られたものであって、溶媒和の 果による溶解であることが判明した。そこ 、本発明者らは、第一の発見において、ま キチン溶液を水で希釈することによって、 ルシウム溶媒が水分子と置換したキチン水 物スラリー(以下、水和キチンゲル、水和キ ンスラリーと称することもある)が生成する ことを見出した。

 第二の発見として、次に、上記の水和キ ンゲルにおいて、キチン分子の周囲に凝集 ている水分子を特定のアルコールで置換し アルコール和したキチンスラリーを得るこ によって、このキチンスラリーを利用して その後に、キチンスラリー中のアルコール 、該アルコールと親和性の高い他の有機溶 と順次置換することが可能となり、所望の 々な用途に展開することのできる各種の溶 和したキチンを分散させ得ることを見出し 。

 このような溶媒は、極性、非極性を問わ 、多種多様な溶媒の組み合わせが可能であ 、後述のとおり、例えば、ジメチルホルム ミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジ チルアセトアミド(DMAc)、ニトロベンゼン、 チレングリコール等がこれに含まれる。こ ように、極性、非極性を問わず、多種多様 溶媒を組み合わせることにより、キチン分 の環境を任意に変えることが可能となり、 の結果、キチンの化学修飾に好適な環境を 供できることがわかった。

 本発明において、溶媒中に分散させるべき チンとは、一般に、カニやエビなどの甲殻 の殻、昆虫の表皮、イカなどの骨格、キノ などの細菌細胞壁から得られる多糖類(ポリ N-アセチル-D-グルコサミン)であって、通常は 、粉体の性状を有している。本発明では、市 販されている任意のキチンを使用することが でき、微生物を利用して製造されたものであ ってもよい。また、α型およびβ型を含むい なる立体構造を有するものであってもよい 本発明におけるキチンの重量平均分子量は 好ましくは5×10 3 ~5×10 6 、より好ましくは5×10 4 ~5×10 6 、さらに好ましくは5×10 4 ~5×10 5 の範囲である。

 本発明のキチンスラリーにおいて、キチン 分散させ得る媒体は、キチンスラリーの用 や使用目的に応じて、有機溶媒、酸および/ またはアルカリ水溶液が選択される。
 キチンスラリーの用途や使用目的としては 例えば、繊維、フィルム、不織布、化粧品 食品、医薬、医用材料等の用途において配 物中に添加すべき形態におけるキチンの分 溶媒として使用するものであってもよいし 若しくは、キチンをさらに化学修飾するた の原料(環境調整剤)として使用するもので ってもよい。

 有機溶媒としては、極性溶媒および非極性 いずれを使用することも可能であり、例え 、アルコール類、ベンゼン、ニトロベンゼ 、トルエン、キシレン、ナフタレン、エチ ベンゼン、スチレン、アニリン、ニトロベ ゼンなどの芳香族化合物、ジエチルエーテ 、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、ア トニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジ メチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキ ド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、シリ ーンオイル等がこれに含まれる。
 このようなアルコール類としては、メタノ ル、エタノール、1-プロパノール、2-プロパ ノール、1-ブタノール、イソブチルアルコー 、2-ブタノール、t-ブタノール、アリルアル コール等の一価アルコール、並びにエチレン グリコール、プロピレングリコール、ジプロ ピレングリコール、ブチレングリコールなど のグリコール類およびグリセリン等の多価ア ルコールがこれに含まれる。

 酸は、アシル化、アルキル化等、触媒反応 目的などで使用されるものであって、例え 過塩素酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸 が挙げられる。
 アルカリは、アシル化、アルキル化反応中 体合成の目的などで使用されるものであっ 、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウ 、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム 水酸化リチウム、水酸化バリウム等が挙げ れる。

 本発明における上記溶媒としては、好適 は、一価または多価アルコールおよび苛性 ルカリ類からなる群から選択される。なか も、中性で均一分散性を発現させる観点か 、エチレングリコール、水酸化ナトリウム 使用することが好ましい。また、水酸化ナ リウム等のアルカリ類は、キチンのアシル やアルキル化への中間体であるが、脱アセ ル化を起こさないために、出来るだけ低濃 とすることが好ましい。

 キチンスラリー中のキチン含量は、その 用目的や用途に応じて任意に設定し得るが 通常は0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以 、より好ましくは1重量%以上、さらに好まし くは2重量%以上に設定し、通常は15重量%以下 好ましくは6重量%以下、より好ましくは5重 %以下、さらに好ましくは3重量%以下に設定 る。

 従来、キチンの難溶性ゆえに、キチンを溶 中に分散させることは極めて困難とされて たが、本発明によるキチンスラリーは、通 、溶媒中にキチンが膨潤状態で均一に良分 したものである。
 そのような本発明のキチンスラリーは、可 域分光光度計によって測定される550nmでの 視光線透過率は、10~90%であるという特徴を する。好適には、本発明のキチンスラリー 可視光線透過率は40%以上であり、より好ま くは60%以上である。本発明のキチンスラリ の可視光線透過率は、通常90%以下であるが ある場合には80%以下、別の場合には70%以下 あり得る。

 スラリー中に分散するキチンの粒度は、 ましくは1~100μm、より好ましくは5~50μm、さ に好ましくは5~10μmである。スラリー中に分 散するキチンの粒度は、例えば顕微鏡によっ て測定することができる。

 本発明のキチンスラリーは、繊維、フィル 、不織布、化粧品、食品、医薬、医用材料 用途を含む、様々な用途に使用でき、その うな用途には、各種添加剤としての用途、 しくは、キチンをさらに化学修飾するため 原料(環境調整剤)としての用途が含まれる
 このような添加剤としては、保湿性、生理 性、生体適合性など、キチンの様々な優れ 特性を付与し得る、化粧用、食品用または 療材料用の添加剤として本発明のキチンス リーを使用するのが特に有利である。

 キチンのさらなる化学修飾としては、キ ンを直接または間接に化学修飾して、例え カルボキシル基、アミノ基、水酸基、ハロ ン基、アミノエチル基、リン酸基、硫酸基 芳香族誘導体などの官能基を導入すること 含まれる。O-アルキル化反応でカルボキシ 基やメチル基等を導入することも、本発明 おけるキチンの化学修飾の範囲に含まれる 例えば、O-アルキルキチン誘導体を脱N-アセ ル化してO-アルキルキトサンとすること、O- アルキルキトサンのアミノ基をさらに化学修 飾して別種の官能基を導入することも、本発 明におけるキチンの化学修飾の範囲に含まれ る。

 次に、本発明のキチンスラリーを製造する 法について説明する。本発明のキチンスラ ーの好適な製造方法は、
a)ハロゲン化カルシウム水和物の飽和アルコ ル中にキチンを溶解してキチン溶液を得る 程;
b)キチン溶液を水で希釈し、必要に応じて生 したキチンの沈殿を水洗し、好適には水洗 くり返し、溶液中に含まれるカルシウムイ ンとアルコールを水分子で置換して、キチ 水和物スラリーを得る工程;
c)キチン水和物スラリーに親水性溶媒を添加 、キチン水和物スラリー中に含まれる水分 を該親水性溶媒で置換して、キチンゲルを る工程;および
d)キチンゲルに有機溶媒、酸およびアルカリ 溶液からなる群から選択される溶媒を添加 、キチンゲル中に含まれる親水性溶媒を該 媒で置換して、キチンスラリーを得る工程
を含んでなる。

 上記の工程a)では、ハロゲン化カルシウム 和物で飽和させたアルコール中にキチンを 解してキチン溶液を得る。溶媒としてハロ ン化カルシウム水和物で飽和させたアルコ ルを用いることにより、難溶性を示すキチ の硬い結晶構造を崩して溶媒をキチン分子 部まで浸透させることが可能となり、溶媒 が生じた結果拡がった分子構造になり、溶 状態のキチン溶液を得ることができる。
 ある実施形態においては、キチン粉末を上 の溶媒中に、好ましくは0.1~5%(w/v)、より好 しくは0.5~2%(w/v)となるような濃度で添加し、 好ましくは20~70℃、より好ましくは40℃~70℃ 温度で、還流下充分撹拌しながら溶解させ 。使用するキチンの分子量の大きさに応じ 、溶媒中のキチン濃度を調節することが好 しい。

 上記の工程b)では、工程a)で得たキチン溶液 を水で希釈し、必要に応じて生成したキチン の沈殿を水洗し、溶液中に含まれるカルシウ ムイオンとアルコールを水分子で置換して、 キチン水和物スラリーを得る。
 ある実施形態においては、工程a)で得たキ ン溶液を室温に冷却後、濾布(ネル)で不溶部 を除去する。その後、蒸留水で希釈する。そ の際の希釈濃度は、好ましくは0.001~0.5%(w/v)、 より好ましくは0.001~0.01%(w/v)である。蒸留水 希釈すると通常キチンが沈澱するので、こ を集めて十分水洗をして、アルコール(メタ ール)とカルシウムイオンを除去する。最終 的に、遠心法によって、通常は0.1%(w/v)以上、 好ましくは1(w/v)以上、より好ましくは2(w/v)以 上であって、通常は15%(w/v)以下、好ましくは6 (w/v)以下、より好ましくは5(w/v)以下、さらに ましくは4(w/v)以下に、水分を調節して、キ ン水和物スラリーないしは水和キチンゲル 得ることができる。

 上記の工程c)では、工程b)で得たキチン水和 物スラリーに親水性溶媒を添加し、キチン水 和物スラリー中に含まれる水分子を該親水性 溶媒で置換して、溶媒和したキチンゲルを得 る。
 工程c)において、キチン水和物スラリーに 加すべき親水性溶媒としては、例えばメタ ール、エタノール、1-プロパノール、2-プロ ノール、1-ブタノール、イソブチルアルコ ル、2-ブタノール、t-ブタノール、アリルア コール等の一価アルコールを挙げることが きるが、これらに限定されない。本発明に いては、特にメタノールおよびエタノール らなる群から選択されるアルコールを使用 ると、キチン水和物スラリー中に含まれる 分子との置換を好適に完結させることがで る。

 ある実施形態においては、工程b)で得た チン水和物スラリーに好ましくは10~100%(v/v) より好ましくは90~100%(v/v)となるような濃度 アルコールを添加して充分に撹拌し、30分~1 間静置した後、遠心分離して、所定容量の ラリーに調節する。この操作を数回、好ま くは2~4回繰り返して、キチン水和物スラリ 中に含まれる水分子との置換を完結させる とにより、アルコール溶媒中のキチンゲル 得ることができる。

 ある実施形態においては、上記の遠心分 操作に代えて、またはこれに加えて、置換 の溶媒の沸点と置換後の溶媒の沸点の差異 利用して蒸留によって溶媒置換を実施する とができる。蒸留による溶媒置換は、とり け、高粘度の溶媒を用いる場合およびキチ の濃度を高めたい場合に、効率よく溶媒置 を行うことができることから好ましい。蒸 による溶媒置換を実施する場合、置換後の 媒が置換前の溶媒より沸点が明確に高い領 にあることが重要である。例えば、キチン 和物スラリーからエタノール和キチンに溶 置換し、溶媒を低沸点のエタノールとする とによって、蒸留による溶媒置換を容易に 用することができる。

 以上の操作によって得たアルコール溶媒 のキチンゲルを溶媒置換素地キチンとして アルコールと親和性の高い他の有機溶媒、 およびアルカリ水溶液からなる群から選択 れる溶媒と順次置換することによって、本 明による最終的なキチンスラリーを好適に ることができる。

 上記の工程d)では、工程c)で得たキチンゲル に、有機溶媒、酸およびアルカリ水溶液から なる群から選択される溶媒を添加し、キチン ゲル中に含まれる親水性溶媒を該溶媒で置換 して、溶媒和したキチンスラリーを得る。
 工程d)で使用する有機溶媒、酸およびアル リ水溶液としては、キチンを分散させたキ ンスラリーの用途や使用目的に応じて、適 選択される。
 キチンスラリーの用途や使用目的としては 例えば、繊維、フィルム、不織布、化粧品 食品、医薬、医用材料等の用途において配 物中に添加すべき形態におけるキチンの分 溶媒として使用するものであってもよいし 若しくは、キチンをさらに化学修飾するた の原料(環境調整剤)として使用するもので ってもよい。
 特に、キチンを溶媒中に良分散させて本発 のキチンスラリーを構成することによって キチンを配合すべき所望の目的物に対して 保湿性、生理活性、生体適合性など、キチ の様々な優れた特性を付与し得る。なかで 、化粧用、食品用または医療材料用の添加 として本発明のキチンスラリーを使用する が特に有利である。

 有機溶媒としては、極性溶媒および非極性 いずれを使用することも可能であり、例え 、アルコール類、ベンゼン、ニトロベンゼ 、トルエン、キシレン、ナフタレン、エチ ベンゼン、スチレン、アニリン、ニトロベ ゼンなどの芳香族化合物、ジエチルエーテ 、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、ア トニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジ メチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキ ド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、シリ ーンオイル等がこれに含まれる。
 このようなアルコール類としては、メタノ ル、エタノール、1-プロパノール、2-プロパ ノール、1-ブタノール、イソブチルアルコー 、2-ブタノール、t-ブタノール、アリルアル コール等の一価アルコール、並びにエチレン グリコール、プロピレングリコール、ジプロ ピレングリコール、ブチレングリコールなど のグリコール類およびグリセリン等の多価ア ルコールがこれに含まれる。

 酸は、アシル化、アルキル化等、触媒反応 目的などで使用されるものであって、例え 過塩素酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸 が挙げられる。
 アルカリは、アシル化、アルキル化反応中 体合成の目的などで使用されるものであっ 、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウ 、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム 水酸化リチウム、水酸化バリウム等が挙げ れる。

 本発明における上記溶媒としては、好適 は、一価または多価アルコールおよび苛性 ルカリ類からなる群から選択される。なか も、中性で均一分散性を発現させる観点か 、エチレングリコール、水酸化ナトリウム 使用することが好ましい。また、水酸化ナ リウム等のアルカリ類は、キチンのアシル やアルキル化への中間体であるが、脱アセ ル化を起こさないために、出来るだけ低濃 とすることが好ましい。

 キチンスラリー中のキチン含量は、その 用目的や用途に応じて任意に設定し得るが 通常は0.1重量%以上、好ましくは05重量%以上 、より好ましくは1重量%以上、さらに好まし は2重量%以上に設定し、通常は15重量%以下 好ましくは6重量%以下、より好ましくは5重 %以下、さらに好ましくは4重量%以下、より らに好ましくは3重量%以下、特に好ましくは 2重量%以下に設定する。

 本発明において、キチン水和物スラリー ら他の溶媒へ、そして最終目的の溶媒まで 媒置換を実施する際、以下に示す溶媒置換 展測定法を用いることによって、目的とす 溶媒への置換の進展(すなわち置換の度合い )および目的とする溶媒への置換の完了を確 することができる。

〔溶媒置換進展測定法〕
1.本発明の方法に従って得られた水和キチン ラリーを、示差熱測定装置(株式会社 島津 作所製、「島津示差熱・熱重量同時測定装 」DTG-60)を使用して、空気雰囲気下で室温か ら400℃(昇温速度5℃/min)まで熱特性を測定し 加熱重量減分析(TGA)および示差熱分析(DTA)を う(以下、DTA-TGとも称する。)。
2.置換目的の溶媒について、上記と同様にし 熱特性を測定する。
3.本発明の方法に従って溶媒置換を実施する
4.上記溶媒置換によって得られたキチンのス リーまたはゲルについて、上記と同様にし 熱特性を測定する。
5.示差熱分析(DTA)によって得られた溶液の吸 ピークから、置換度合いを確認する。
6.最終目的の溶媒まで上記の溶媒置換と熱測 を繰り返すことによって、最終目的とする 媒への置換が完了したことを確認する。

 また、以下の方法を用いることによって、 発明によるキチンスラリーが最終目的の溶 まで置換されて溶媒和した状態であること 確認することができる。
1.本発明の方法に従って得られたキチン水和 スラリーまたはキチンゲルについて、上記 同様にして熱特性を測定し示差熱プロファ ルを得る。同様にして、キチン水和物スラ ーまたはキチンゲルに用いられた水または 媒の示差熱プロファイルを得る。さらに、 終目的とする溶媒の示差熱プロファイルを る。
2.本発明の方法に従って溶媒置換を実施する
3.上記溶媒置換によって得られた最終目的の チンスラリーを24時間以上室温で静置し、 離が生じないことを目視で確認する。
4.最終目的のキチンスラリーの熱特性を測定 示差熱プロファイルを得る。
5.上記の各示差熱プロファイルを比較するこ によって、最終目的の溶媒に置換されてい ことを確認する。
6.最終目的のキチンスラリーを室温にて30日 上静置し、分離や沈殿などがないことを目 にて確認し、安定な状態の溶媒和したキチ スラリーとなっていることを確認する。

 本発明のキチンスラリーには、必要に応 て、甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤 酸化防止剤、漂白剤、調味料、苦味料等、 味料、強化剤、香料、香辛料、製造用剤、 素、ガムベース、光沢剤、乳化剤、増粘剤 皮膜形成剤、金属イオン封鎖剤、アルカリ 、油性原料、保湿剤、薬剤、植物抽出エキ 等の添加物を配合させることができる。こ 場合の添加物の添加量は、目的に応じて適 選択することができる。

 本発明のキチンスラリーは、キチンおよび トサンの適用分野に適用することが可能で る。すなわち、以下の適用分野に適用する とができる。
(1)化粧品分野:ヘルスケア、スキンケア、ヘ ケア、オーラルケア、アンチエイジング用 のクリーム、クレンジング等(保湿剤、増粘 、炎症抑制、紫外線、ヘアダメージ抑制、 膚ダメージ抑制、皮膚再生)、忌避剤等、
(2)食品分野:腸内代謝改善(乳酸菌増殖、乳糖 消化に必要なβガラクシトーゼの生産促進) 免疫力増強、パンのふくらみ向上、ヒアル ン酸産生促進、変形関節症の予防・改善用 の健康食品、機能性食品等、
(3)医療分野:創傷治癒剤(材)、不織布、人工皮 膚、手術用縫合糸、クリーム、医薬品(薬、 織布形状でがん細胞増殖抑制、免疫増強作 (がん細胞増殖抑制や日和見感染菌-Lisera mono cytogenesに対する防御効果)、乳酸菌増殖、乳 の消化に必要なβガラクシトーゼの生産促進 、ヒアルロン酸産生促進、変形関節症の予防 ・改善、炎症改善、治癒(口内炎、歯肉炎、 槽膿漏等も含む)、鎮痛抑制剤、止血剤、殺 剤)、生体材料(骨、歯等)等、
(4)植物分野:土壌改良材、植物防除材等、
(5)バイオ分野:細胞増殖用基材等、
(6)成形材料分野:プラスチック製品へのフィ ー(増粘剤、生分解素材)、天然素材成形品、 フィルム等、
(7)増粘剤等。

 以下、本発明の有効性について実施例を げて説明するが、本発明はこれらに限定さ るものではない。なお、以下の実施例にお る物性の評価方法は以下の通りである。

1.キチンスラリーの透過率
 キチンスラリーの透過率は、以下の条件で 550nmでの可視光線透過率を測定することに り行った。
 セル:0.1cmまたは1.0cmのガラスセル
 測定方法:生成するゲルを上記ガラスセル中 に注入、または、ゲルを所定のガラス板に塗 布して、550~600nmの可視光中で光透過性を測定 した。

〔調製例1:カルシウム溶媒の調製〕
 100mLの市販一級メタノールに、塩化カルシ ム・2水塩約84gを加えて40~50℃で約4時間撹拌 、その後約15時間、室温にて放置した。次 、濾布を使ったろ過によって不溶部を除去 、得られた溶液を、カルシウム溶媒とした

〔調製例2:溶媒置換素地キチンの調製〕
 キチン粉末(品番:キチンTC-L、重量平均分子 1×10 5 、株式会社共和テクノス製)2gを100mLのカルシ ム溶媒に40~50℃で還流下に充分撹拌しなが 溶解させた。室温に冷却後、濾布(ネル)で不 溶部を除去した後、1Lの蒸留水で希釈した。 チンが沈澱したため、これを集めて十分に 洗し、メタノールとカルシウムイオンを除 した。その後、遠心脱水機(H-1.22、株式会社 コクサン製)を用いて遠心法により、水洗し カルシウム塩を完全に除去した。水分を調 して、100mLの水和キチンゲル(キチン水和物 ラリー)を得た。カルシウム塩の完全除去に いては、電導計を用い、濾液の電導度が脱 オン水と同じであることを確認した。

 次に、このキチン水和物スラリー100mLに50 mLのエタノールを加えて充分撹拌し、30~60分 静置後、遠心分離機(CN-820、アズワン株式会 製)を用いて遠心分離を行い、100mLのスラリ に容量を調節した。この操作を3~5回繰り返 て水分子との置換を完結させ、キチンが均 分散したキチンゲルを得た。

〔実施例1:EG溶媒和スラリーとしてのキチン ラリーの調製〕
 調製例2で得た100mLのキチンゲル(溶媒和素地 キチン)に、室温下で、50mLのエチレングリコ ルを加えて充分撹拌した。0.5~1時間静置し 後、遠心分離機(CN-820、アズワン株式会社製) を用いて遠心分離を行い、100mLの試料を得た この操作を20回繰り返して溶媒置換を完結 せた。得られた溶媒和スラリーとしてのキ ンスラリーは、0.1cm厚のガラス板にこのスラ リーを塗布後パワーメーター(407A,Spectra-Physics 社製)を用いて透過率を測定した結果、以下 特性を有していた。
  透過率:エチレングリコールを対照として7 1%
 化粧用、食品用または医療材料用の添加剤 して使用するため、キチンスラリーを30分 オートクレーブ処理(120℃)して滅菌した。

〔実施例2:アルカリを溶媒とするキチンスラ ーの調製〕
 調製例2で得た100mLのキチンゲル(溶媒和素地 キチン)に、4~35%(w/w)の範囲で各種濃度の水酸 ナトリウム水溶液を加えた。これを-20℃の 度で一夜凍結させた後、室温で解凍してか 、550nmでの透過率を測定した。
 その結果を表1に示す。

 表1に示すように、キチンスラリー含有水酸 化ナトリウム水溶液は、6%(w/w)NaOH濃度で早く ほぼ透明になり、マーセル化が進んだこと 示唆した。
 一方、キチン粉末を、直接、水酸化ナトリ ム水溶液に分散させようと試みたが、18%(w/w )NaOH濃度としても、透過率は2%程度であり、 明液は得られなかった(比較例1)。すなわち 本発明によるキチンスラリーでは、水和が 分に進行していることを示唆している。

〔実施例3:エタノールを溶媒とするキチンス リーの調製〕
 調製例1および調製例2と同様にして、キチ 水和物スラリー(キチン濃度5.6重量%)を得た このキチン水和物スラリー80gを遠心分離機( 上遠心機H103N、株式会社コクサン製)にて2600 r.p.m.で遠心分離を行い、水を分離した(上部 水、下部にキチン)。その後、上澄み部分の を廃棄した。次に、廃棄された水と同重量 エタノールを下部のキチンに添加して混合 た。得られたスラリー中のエタノールと水 割合(重量比)は0.21:0.79であった。そして、 記と同じ条件で遠心分離を行った。分離さ た上澄み液を廃棄し、廃棄された液と同重 のエタノールを添加して混合した。
 分離した上澄み液の水とエタノールの構成 は遠心分離前のキチンスラリー中の同構成 と同じであると仮定して、エタノールを添 および混合後のキチンスラリー中の水とエ ノールの構成比を計算すると0.54:0.46であっ 。

 ここで、上記の計算方法について、下記例 挙げて説明する。
a.100gの純粋なキチンスラリーから水50gを分離 し(単純化のため、キチンの構成比を0とする) 、エタノール50gを添加および混合したとする と、エタノール50重量%・水50重量%が混合され たキチンとなる。
b.さらに遠心分離して溶液50gを分離したとす と、この分離した溶液の構成比は遠心分離 の溶液(エタノール50重量%・水50重量%混合キ チン)と同じで、水25g、エタノール25gであっ と仮定する。さらにエタノール50gを添加す と、水が25g、エタノールが75gであるため、 タノール75重量%(水25重量%)のキチンと計算さ れる。
c.上記の計算を繰り返す。

 上記の操作を繰り返しながら、上述の方法 従って熱特性を測定し(DTA-TGA)、対応する示 熱プロファイルを得た。エタノール置換前( エタノール置換度0%)および様々なエタノール 置換度のキチンスラリーにおける熱特性プロ ファイルを図1~図5に示す。エタノール置換度 は、遠心分離機でキチン水和物スラリーを濃 縮後にエタノールを加え、よく撹拌後一分静 置し、さらに遠心分離機による濃縮およびエ タノールの追加を繰り返した際の、上澄み液 を差し引いたエタノール分率の計算値である 。図1では、右から、水→エタノールキチン とエタノール置換度に応じて示差熱ピーク 移動したことが判る。なお、縦軸の熱量は 定量によって変化するため、ここでは、ピ ク温度(横軸)が移動したことが重要である。
 これらの結果から、キチンスラリーの温度 ークが水側からエタノール側に移動してい ことが判り、最終的に、ピークとしての水 分がほぼなくなっていることが確認できた 従って、置換の進展が熱特性の測定によっ 確認された。
 このように、溶媒置換の進展に伴って、示 熱のピークが置換前の溶媒(この場合は水) ら置換後の溶媒(この場合はエタノール)へ移 動することが確認された。この実施例によっ て得られた溶媒和したキチン(キチンスラリ )の透過率は81%であった。

〔実施例4:蒸留法を使用した、グリセリンを 媒とする高濃度キチンスラリーの調製〕
 実施例3と同様にして、エタノールを溶媒と するキチンスラリー(キチン濃度3.5重量%)を得 た。このエタノール和キチン18.20gとグリセリ ン(シグマアルドリッチジャパン製 試薬特級  グリセロール)28.94gを混合した。次いで、ホ ットプレートを用いて上記混合溶液をグリセ リン和キチンの濃度が6.6重量%になるように11 0℃で1時間20分間加熱蒸留し、混合溶液の重 が30gとなるように調節した。実施例3と同様 して熱特性を測定したところ(DTA-TGA)、エタ ールからグリセリンへ溶媒置換されている とが確認された。この実施例によって得ら た溶媒和したキチン(キチンスラリー)の透 率は90%であった。

〔実施例5:真空ロータリーエバポレーターを 用する蒸留による溶媒置換〕
 調製例1および調製例2と同様にして、キチ 水和物スラリー(キチン濃度4重量%)を得た。 のキチン水和物スラリー500gとエタノール135 0gを混合し遠心分離を行うことによって、エ ノール和キチン1677gを作製した。得られた タノール和キチンにグリセリン713gを混合し 。混合物を2つに分け、真空ロータリーエバ ポレータ(EYELA社製)を用いて、各混合物を真 および80℃にて蒸留することにより、グリセ リン和キチン(キチン濃度2~4重量%)670gを得た 実施例3と同様にして熱特性を測定したとこ (DTA-TGA)、グリセリンへ溶媒置換されている とが確認された。この実施例によって得ら た溶媒和したキチン(キチンスラリー)の透 率は90%であった。
 上記実施例の結果、大量のグリセリン和キ ンを作製するために、真空ロータリーエバ レーターを使用した蒸留による溶媒置換が 効であることが判った。

〔実施例6:蒸留法を使用した、ブチレングリ ールを溶媒とする高濃度キチンスラリーの 製〕
 調製例1および調製例2と同様にして、キチ 水和物スラリー(キチン濃度2重量%)を得た。 のキチン水和物スラリー20.0833gとブチレン リコール4.64gを混合した。混合物をホットプ レート上で65℃にて加熱し、4.79gグラムまで 留を行うことにより、キチン濃度が8%の高濃 度ブチレングリコールキチンを得た。実施例 3と同様にして熱特性を測定したところ(DTA-TGA )、ブチレングリコールへ溶媒置換されてい ことが確認された。この実施例によって得 れた溶媒和したキチン(キチンスラリー)の透 過率は51%であった。

〔実施例7:トルエンを溶媒とするキチンスラ ーの調製〕
 実施例3と同様にして、エタノールを溶媒と するエタノール和キチンスラリー(キチン濃 5重量%)を得、実施例3と同様の手順で以下の うにしてエタノールとトルエンの置換を行 た。得られたエタノール和キチン58gを遠心 離機(卓上遠心機H103N、株式会社コクサン製) にて2600r.p.m.で遠心分離を行い、水を分離し (上部にエタノール、下部にキチン)。その後 、上澄み部分のエタノールを廃棄した。次に 、廃棄されたエタノールと同重量のトルエン を下部のキチンに添加して混合した。そして 、上記と同じ条件で遠心分離を行った。分離 された上澄み液を廃棄し、廃棄された液と同 重量のトルエンを添加して混合した。
 上記の操作を繰り返しながら、上述の方法 従って熱特性を測定し(DTA-TGA)、対応する示 熱プロファイルを得、最終的に、ピークと てのエタノール部分がほぼなくなっている とが確認できた。この実施例によって得ら た溶媒和したキチン(キチンスラリー)の透 率は81%であった。

〔実施例8:シリコーンオイルを溶媒とするキ ンスラリーの調製〕
 実施例3と同様にして、エタノールを溶媒と するエタノール和キチンスラリー(キチン濃 6.5重量%)を得た。このエタノール和キチン4g シリコーンオイル4mlを混合し遠心分離を行 た後、上澄みを廃棄した。得られた分離物 シリコーンオイル4mlを添加し、遠心分離後 上澄み液を廃棄した。この操作を4回繰り返 した後、得られた分離物にシリコーンオイル 4mlを添加し、ホットプレート(65℃)上でエタ ールを蒸留した。実施例3と同様にして熱特 を測定したところ(DTA-TGA)、シリコーンオイ へ溶媒置換されていることが確認された。 の実施例によって得られた溶媒和したキチ (キチンスラリー)の透過率は39%であった。

〔実施例9:シリコーンオイルを溶媒とするキ ンスラリーの調製〕
 実施例3と同様にして、エタノールを溶媒と するエタノール和キチンスラリー(キチン濃 6.5重量%)を得た。このエタノール和キチン4g 変性シリコーンオイル(東レ・ダウコーニン グ株式会社製 SH556 Fluid、フェニル変性)4mlを 混合し遠心分離を行った後、上澄みを廃棄し た。得られた分離物に変性シリコーンオイル 4mlを添加し、遠心分離後、上澄み液を廃棄し た。この操作を4回繰り返した後、得られた 離物に変性シリコーンオイル4mlを添加し、 ットプレート(65℃)上でエタノールを蒸留し 。実施例3と同様にして熱特性を測定したと ころ(DTA-TGA)、変性シリコーンオイルへ溶媒置 換されていることが確認された。この実施例 によって得られた溶媒和したキチン(キチン ラリー)の透過率は82%であった。

〔比較例1〕
 調製例1および調製例2と同様にして、キチ 水和物スラリー(キチン濃度 5.9重量%)を得た 。50ml試験管に、このキチン水和物スラリー20 mlと、これと同量のトルエンを加えた。ホッ プレートを用いて加熱し沸騰した水中に試 管を入れ、保温しながら1時間撹拌した。し かしながら、キチン水和物スラリーとトルエ ンが混合せず、トルエン中で小さな凝集物と なったため、トルエンを溶媒とするキチンス ラリーは得られなかった。
 この結果から、キチン水和物スラリーから タノール置換してエタノール和キチンを得 ことなく、キチン水和物スラリーから直接 ルエンへの置換を試みた場合には、溶媒和 状態が得られず、トルエンを溶媒とするキ ンスラリーは得られないことが判った。す わち、予め、キチン水和物スラリーからエ ノール置換してエタノール和キチンを得る とが溶媒置換のために有効であることが判 た。

〔比較例2〕
 調製例1および調製例2と同様にして、キチ 水和物スラリー(キチン濃度5.9重量%)を得た 50ml試験管に、このキチン水和物スラリー20ml と、これと同量のトルエンを加えた。ホット プレートを用いて加熱し沸騰した水中に試験 管を入れ、保温しながら1時間撹拌した。キ ン水和物スラリーとトルエンの混合物中に タノールを添加し、10分間撹拌した。溶媒中 に大きな凝集はなく分散していたが、撹拌を 止めると沈殿が生じたため、最終的にトルエ ンを溶媒とするキチンスラリーは得られなか った。
 この結果から、キチン水和物スラリーから タノール置換してエタノール和キチンを得 ことなく、単にエタノールをトルエンと混 しても、トルエンへの溶媒置換はできない とが判った。すなわち、予め、キチン水和 スラリーからエタノール置換してエタノー 和キチンを得ることが溶媒置換のために有 であることが判った。

〔比較例3〕
 調製例1および調製例2と同様にして、キチ 水和物スラリー(キチン濃度8.9重量%)を得た このキチン水和物スラリー50gと、これと同 のグリセリンを混合した。次いで、実施例4 同様にして、ホットプレートを用いて上記 合溶液を110℃で3時間10分間加熱し、蒸留を った。実施例3と同様にして熱特性を測定し たところ(DTA-TGA)、グリセリン和キチンのDTA曲 線に加えて水と推定される吸熱のショルダー が観察された。
 この結果から、グリセリンの場合には、水 キチンスラリーから直接グリセリン和キチ に置換されうるが、水和状態も残っている 判断した。これは水和が強固のためにグリ リンへの置換が効率的に行われないためで ると考えられる。よってグリセリンの場合 エタノール和キチンを介さなくとも置換自 は可能であるが、非効率であり、また水和 態が解消されない低品質のグリセリン和キ ンとなった。すなわち、予め、キチン水和 スラリーからエタノール置換してエタノー 和キチンを得ることが溶媒置換のために有 であることが判った。