Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
COOKING TOOL AND METHOD FOR MANUFACTURE THEREOF
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/093715
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a cooking tool comprising a base material and a thin film formed on the surface of the base material. The thin film comprises silicon (Si), zirconium (Zr) and oxygen (O), wherein, when the amounts of silicon (Si) and zirconium (Zr) are calculated in terms of the contents of silicon oxide (SiO2) and zirconium oxide (ZrO2), respectively, the weight-based percentage of silicon oxide (SiO2) relative to the total amount of zirconium oxide (ZrO2) and silicon oxide (SiO2) is 50% by weight or less.

Inventors:
SHIGERU KEIJIRO (JP)
MAEDA DAISAKU (JP)
METSUGI YASUNORI (JP)
YAZAWA AKIRA (JP)
MARUYAMA TAISHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/051381
Publication Date:
August 07, 2008
Filing Date:
January 30, 2008
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
SUMITOMO OSAKA CEMENT CO LTD (JP)
SHIGERU KEIJIRO (JP)
MAEDA DAISAKU (JP)
METSUGI YASUNORI (JP)
YAZAWA AKIRA (JP)
MARUYAMA TAISHI (JP)
International Classes:
F24C14/00; A47J36/02; A47J36/04; C23C26/00; F24C15/00
Foreign References:
JP2005281443A2005-10-13
JP2007019588A2007-01-25
JP2007099474A2007-04-19
JP2007252352A2007-10-04
JP2002019007A2002-01-22
JP2005170057A2005-06-30
JP2006015754A2006-01-19
JP2005321108A2005-11-17
JP2006016236A2006-01-19
Other References:
See also references of EP 2116774A4
Attorney, Agent or Firm:
SHIGA, Masatake et al. (Marunouchi Chiyoda-k, Tokyo 20, JP)
Download PDF:
Claims:
 基体と、この基体の表面に形成された薄膜とを備えてなる調理器具であって、
 前記薄膜は、ケイ素(Si)と、ジルコニウム(Zr)と、酸素(O)とを含有し、前記ケイ素(Si)を酸化ケイ素(SiO 2 )に、前記ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO 2 )に、それぞれ換算したときの、前記酸化ケイ素(SiO 2 )の、前記酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と前記酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する重量百分率が50 重量 %以下であることを特徴とする調理器具。
 前記薄膜は更にリン(P)を含有し、かつ、前記リン(P)は前記薄膜の少なくとも表層部に分布してなることを特徴とする請求項1記載の調理器具。
 基体と、この基体の表面に形成された薄膜とを備えてなる調理器具であって、
 前記薄膜は、ジルコニウム(Zr)と、酸素(O)と、リン(P)とを含有し、かつ、前記リン(P)は前記薄膜の少なくとも表層部に分布してなることを特徴とする調理器具。
 ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物、ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物、及び平均粒子径が20nm以下の酸化ジルコニウムの群から選択される1種または2種以上のジルコニウム成分と、ケイ素成分と、溶媒とを含み、前記ジルコニウム成分を酸化ジルコニウム(ZrO 2 )に、前記ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )にそれぞれ換算したときの、前記酸化ケイ素(SiO 2 )の、前記酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と前記酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する重量百分率が50重量%以下である塗布液を、基体の表面の少なくとも一部に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を100℃以上の温度にて熱処理することを特徴とする調理器具の製造方法。
 前記塗布液は更にリン(P)成分を含むことを特徴とする請求項4記載の調理器具の製造方法。
ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物、ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物及び平均粒子径が20nm以下の酸化ジルコニウムの群から選択される1種または2種以上のジルコニウム成分と、ケイ素成分と、溶媒とを含み、前記ジルコニウム成分を酸化ジルコニウム(ZrO 2 )に、前記ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )にそれぞれ換算したときの、前記酸化ケイ素(SiO 2 )の、前記酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と前記酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する質量百分率が50質量%以下である塗布液を、基体の表面の少なくとも一部に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を100℃以上の温度にて熱処理して薄膜とし、この薄膜上にリン(P)成分を含む溶液または分散液を塗布して100℃以上の温度にて熱処理することにより前記リン(P)成分を前記薄膜の少なくとも表層部に含有せしめることを特徴とする調理器具の製造方法。
 ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物、ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物及び平均粒子径が20nm以下の酸化ジルコニウムの群から選択される1種または2種以上のジルコニウム成分と、リン成分と、溶媒とを含む塗布液を、基体の表面の少なくとも一部に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を100℃以上の温度にて熱処理することを特徴とする調理器具の製造方法。
ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物、ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物及び平均粒子径が20nm以下の酸化ジルコニウムの群から選択される1種または2種以上のジルコニウム成分と、溶媒とを含む塗布液を、基体の表面の少なくとも一部に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を100℃以上の温度にて熱処理して薄膜とし、この薄膜上にリン(P)成分を含む溶液または分散液を塗布して100℃以上の温度にて熱処理することにより前記リン(P)成分を前記薄膜の少なくとも表層部に含有せしめることを特徴とする調理器具の製造方法。
 前記ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物は、ジルコニウムアルコキシドと、エタノールアミン、β-ジケトン、β-ケト酸エステル及びカルボン酸の群から選択される1種または2種以上の化合物との反応生成物であることを特徴とする請求項4~8記載の調理器具の製造方法。
前記ジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物は、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物と、エタノールアミン、β-ジケトン、β-ケト酸エステル及びカルボン酸の群から選択される1種または2種以上の化合物との反応生成物であることを特徴とする請求項4~8記載の調理器具の製造方法。
Description:
調理器具及びその製造方法

 本発明は、調理器具及びその製造方法に関 、特に、調理中に付着した食品の焦げ付き れや油汚れを、水拭き程度で簡単に除去す ことが可能な調理器具、及び、この調理器 を簡単な装置で簡便に製造することが可能 製造方法に関するものである。
 また、本発明は、防汚性製品及びその製造 法に関し、特に、食品等の有機物が、食品 加熱調理する際の熱を受けることで生じる げ付き汚れが製品の基体上に固着すること 防止することができ、また、300℃以上の高 下で焦げ付き汚れが固着したとしても容易 水洗除去することができるという防汚性を えた調理器具及びその製造方法に関するも である。
 本願は、2007年1月30日に日本に出願された特 願2007-019588号、2007年4月5日に日本に出願され 特願2007-099474号及び2007年9月27日に日本に出 された特願2007-252352号に基づき優先権を主 し、その内容をここに援用する。

 従来、焼肉用プレートやオーブン皿等の加 を要する調理器具においては、食品の焦げ き汚れを簡単に除去するために、例えば、 化ジルコニウムを主成分とする薄膜を基体 表面に成膜した調理器具が提案されている( 例えば、特許文献4参照)。
 また従来から、二酸化ケイ素、酸化ジルコ ウム及びリン酸を含む薄膜を製品の基体の 面上に成膜し、この薄膜中にリチウムイオ を分散状態で含有してなる防汚性製品が提 されている(例えば、特許文献1~3)。この防 性製品は汚れ難く、また、一旦汚れたとし も汚れが落ち易いとされている。
 そして、このような特性を備えた防汚性製 の製造方法としては、製品の基体上に成膜 れた二酸化ケイ素、酸化ジルコニウムを含 薄膜にリチウム化合物を加熱下にて接触さ て、リチウムイオンを前記薄膜の表面から 部に拡散させることにより、薄膜中にリチ ムイオンを分散状態で含有させる方法が提 されている。

特開2002-019007号公報

特開2005-170057号公報

特開2006-015754号公報

特開2005-321108号公報

 しかしながら、上述した従来の調理器具に いては、食品の焦げ付き汚れは比較的簡単 除去することができるものの、油汚れにつ ては、水拭き程度の作業では容易に除去す ことができないという問題点があった。
 そこで、食品の焦げ付き汚れはもちろんの と、油汚れをも簡単に除去することができ 調理器具の出現が強く望まれていた。

 また、上述した従来の防汚性製品では、一 、製品に焦げ付き汚れが固着すると、この げ付き汚れを除去するためには擦り落とす の物理的方法を用いざるを得ないが、この 理的方法を用いた場合、製品の表面を傷つ る虞があり、製品の基体上への焦げ付き汚 の固着を有効に防止することができないと う問題点があった。
 さらに、上述した従来の調理器具では、250 以下の低温下で焦げ付いた食品の焦げ付き れは比較的簡単に除去することができるも の、300℃以上の高温下で焦げ付いた食品の げ付き汚れは簡単には除去することができ 、この焦げ付き汚れを除去するためには、 記の防汚性製品と同様、擦り落とす等の物 的方法を用いざるを得ないが、この物理的 法を用いた場合、調理器具の表面を傷つけ 虞があるという問題点があった。

 本発明は、上記の課題を解決するためにな れたものであって、調理中に付着した食品 焦げ付き汚れや油汚れを、水拭き程度で簡 に除去することができる調理器具及びその 造方法を提供することを目的とする。
 また、本発明は、食品等の有機物に起因す 焦げ付き汚れの固着を防止することができ 300℃以上の高温下で焦げ付き汚れが固着し としても、容易に水洗除去することができ 防汚性製品及びその製造方法、その中でも に、調理器具及びその製造方法を提供する とを目的とする。

 本発明者等は、上記の課題を解決するた に鋭意検討を行った結果、基体の表面のう 、少なくとも、食品に触れる虞のある部分 たは油汚れが生じる虞のある部分に、ケイ (Si)と、ジルコニウム(Zr)と、酸素(O)とを含 する特定組成の薄膜を成膜すれば、調理中 付着した食品の焦げ付き汚れや油汚れを、 拭き程度で簡単に除去することができるこ を見出した。 また、本発明者等は基体の表 面に、ケイ素(Si)とジルコニウム(Zr)と酸素(O) リン(P)とを含有する特定組成の薄膜、ジル ニウム(Zr)と酸素(O)とリン(P)とを含有する特 定組成の薄膜、のいずれかを形成すれば、食 品等の有機物に起因する焦げ付き汚れが基体 の表面に固着するのを防止することができ、 また、この焦げ付き汚れが基体上に固着した としても容易に水洗除去することができるこ とを見出し、本発明を完成するに至った。

 すなわち、本発明は、基体と、この基体の 面に形成された薄膜とを備え、前記薄膜は ケイ素(Si)と、ジルコニウム(Zr)と、酸素(O) を含有し、前記ケイ素(Si)を酸化ケイ素(SiO 2 )に、前記ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウ (ZrO 2 )に、それぞれ換算したときの、前記酸化ケ 素(SiO 2 )の、前記酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と前記酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する重量百分率が50重量%以下 ある薄膜を成膜してなる調理器具である。
 本発明の調理器具において、前記薄膜は更 リン(P)を含有し、かつ、前記リン(P)は前記 膜の少なくとも表層部に分布してなること 好ましい。
 本発明は、基体と、この基体の表面に形成 れた薄膜とを備え、前記薄膜は、ジルコニ ム(Zr)と、酸素(O)と、リン(P)とを含有し、か つ、前記リン(P)は前記薄膜の少なくとも表層 部に分布してなることを特徴とする調理器具 である。

 本発明の調理器具において、前記重量百分 は、1重量%以上かつ40重量%以下であること 好ましい。
 本発明の調理器具において、前記重量百分 は、1重量%以上かつ20重量%以下であること より好ましい。
 本発明の調理器具において、前記重量百分 は、20量%を超えかつ40重量%以下であること してもよい。
 本発明の調理器具において、前記薄膜の厚 は、0.01μm以上かつ10μm以下であることが好 しい。

 本発明は、ジルコニウムアルコキシド、ジ コニウムアルコキシドの加水分解物、ジル ニウムアルコキシドのキレート化合物、ジ コニウムアルコキシドの加水分解物のキレ ト化合物及び平均粒子径が20nm以下の酸化ジ ルコニウムの群から選択される1種または2種 上のジルコニウム成分と、ケイ素成分と、 媒とを含み、前記ジルコニウム成分を酸化 ルコニウム(ZrO 2 )に、前記ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )にそれぞれ換算したときの、前記酸化ケイ (SiO 2 )の、前記酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と前記酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する重量百分率が50重量%以下 ある塗布液を、基体の表面の少なくとも一 に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この 布膜を100℃以上の温度にて熱処理する調理 具の製造方法である。

 本発明の調理器具の製造方法において、 記塗布膜は、200℃以上の温度にて熱処理す ことが好ましい。

 本発明の調理器具の製造方法において、 記塗布液は更にリン(P)成分を含むことが好 しい。

  本発明は、ジルコニウムアルコキシド、 ルコニウムアルコキシドの加水分解物、ジ コニウムアルコキシドのキレート化合物、 ルコニウムアルコキシドの加水分解物のキ ート化合物及び平均粒子径が20nm以下の酸化 ルコニウムの群から選択される1種または2 以上のジルコニウム(Zr)成分と、ケイ素(Si)成 分と、溶媒とを含み、前記ジルコニウム(Zr) 分を酸化ジルコニウム(ZrO 2 )に、前記ケイ素(Si)成分を酸化ケイ素(SiO 2 )に、それぞれ換算したときの、前記酸化ケ 素(SiO 2 )の、前記酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と前記酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する質量百分率が50質量%以下 ある塗布液を、前記基体の表面の少なくと 一部に塗布して塗布膜を形成し、次いで、 の塗布膜を100℃以上の温度にて熱処理して 膜とし、次いで、この薄膜の上にリン(P)成 を含む溶液または分散液を塗布して100℃以 の温度にて熱処理することにより前記リン(P )成分を前記薄膜の少なくとも表層部に含有 しめる調理器具の製造方法である。

  本発明は、ジルコニウムアルコキシド、 ルコニウムアルコキシドの加水分解物、ジ コニウムアルコキシドのキレート化合物、 ルコニウムアルコキシドの加水分解物のキ ート化合物及び平均粒子径が20nm以下の酸化 ルコニウムの群から選択される1種または2 以上のジルコニウム(Zr)成分と、リン(P)成分 、溶媒とを含む塗布液を、前記基体の表面 少なくとも一部に塗布して塗布膜を形成し 次いで、この塗布膜を100℃以上の温度にて 処理する調理器具の製造方法である。
 本発明は、ジルコニウムアルコキシド、ジ コニウムアルコキシドの加水分解物、ジル ニウムアルコキシドのキレート化合物、ジ コニウムアルコキシドの加水分解物のキレ ト化合物及び平均粒子径が20nm以下の酸化ジ ルコニウムの群から選択される1種または2種 上のジルコニウム(Zr)成分と、溶媒とを含む 塗布液を、前記基体の表面の少なくとも一部 に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗 布膜を100℃以上の温度にて熱処理して薄膜と し、次いで、この薄膜の上にリン(P)成分を含 む溶液または分散液を塗布して100℃以上の温 度にて熱処理することにより前記リン(P)成分 を前記薄膜の少なくとも表層部に含有せしめ る調理器具の製造方法である。

 本発明の調理器具の製造方法において、前 ジルコニウムアルコキシドのキレート化合 は、ジルコニウムアルコキシドと、エタノ ルアミン、β-ジケトン、β-ケト酸エステル びカルボン酸の群から選択される1種または 2種以上の化合物との反応生成物であること 好ましい。
 本発明の調理器具の製造方法において、前 ジルコニウムアルコキシドの加水分解物の レート化合物は、ジルコニウムアルコキシ の加水分解物と、エタノールアミン、β-ジ トン、β-ケト酸エステル及びカルボン酸の から選択される1種または2種以上の化合物 の反応生成物であることが好ましい。

 本発明の調理器具によれば、基体の表面の なくとも一部に、ケイ素(Si)と、ジルコニウ ム(Zr)と、酸素(O)とを含有する特定組成の薄 を成膜したので、調理中に付着した食品が げ付いたり、油汚れが付着した場合におい も、これら食品の焦げ付き汚れや油汚れを 拭き程度で簡単に除去することができる。 に、前記重量百分率が1重量%~20重量%のとき 、食品の焦げ付き汚れの除去性が顕著に優 る。勿論、油汚れの除去容易性、薄膜の耐 性も良好である。また、前記重量百分率が20 重量%超~40重量%のときは、油汚れの除去性が 著に優れる。勿論、食品の焦げ付き汚れの 去容易性、薄膜の耐水性も良好である。
 また、本発明の防汚性製品、つまり調理器 によれば、基体の表面に、ケイ素(Si)とジル コニウム(Zr)と酸素(O)とリン(P)とを含有する 定組成の薄膜、ジルコニウム(Zr)と酸素(O)と ン(P)とを含有する特定組成の薄膜、のいず かを形成するので、基体の表面に形成され 薄膜が、食品等の有機物に起因する焦げ付 汚れに対して優れた防汚性を有することに り、食品等の有機物に起因する焦げ付き汚 の固着を防止することができ、また、300℃ 上の高温下で焦げ付き汚れが固着した場合 あっても、この焦げ付き汚れを容易に水洗 去することができる。また、この薄膜は、 汚れ、水垢、動物の排泄物(例えば、糞)等 他の種類の汚れに対しても、優れた防汚性 備えている。

 本発明の調理器具の製造方法によれば、 体の表面の少なくとも一部に、ケイ素(Si)と 、ジルコニウム(Zr)と、酸素(O)とを含有する 定組成の薄膜を成膜した調理器具を、簡単 装置で簡便に製造することができる。

 また、本発明の防汚性製品、つまり調理 具の製造方法によれば、食品等の有機物に 因する焦げ付き汚れの固着を防止すること でき、また、300℃以上の高温下で焦げ付き れが固着した場合であっても、この焦げ付 汚れを容易に水洗除去することができ、さ に、油汚れ、水垢、動物の排泄物(例えば、 糞)等の他の種類の汚れに対しても優れた防 性を備えた防汚性製品を、簡便かつ安価に 製することができる。

本発明の第2の実施形態の防汚性製品を 示す断面図である。 本発明の第3の実施形態の防汚性製品を 示す断面図である。 本発明の第4の実施形態の防汚性製品を 示す断面図である。 本発明の第5の実施形態の防汚性製品を 示す断面図である。

符号の説明

 1 防汚性製品 2 基体 3 薄膜 3a 表層部  11 防汚性製品 12 薄膜 21 防汚性製品 22  薄膜 22a 表層部 31 防汚性製品 32 薄膜

 本発明の調理器具及びその製造方法を実施 るための最良の形態について説明する。
 なお、この形態は、発明の趣旨をより良く 解させるために具体的に説明するものであ 、特に指定のない限り、本発明を限定する のではない。

 「第1の実施形態」
 本実施形態の調理器具は、調理器具の本体 構成する基体の表面の少なくとも一部、す わち、この表面のうち少なくとも食品が触 る虞のある領域または油汚れが生じる虞の る領域に、ケイ素(Si)と、ジルコニウム(Zr) 、酸素(O)とを含有し、前記ケイ素(Si)を酸化 イ素(SiO 2 )に、前記ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウ (ZrO 2 )に、それぞれ換算したときの、前記酸化ケ 素(SiO 2 )の、前記酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と前記酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する重量百分率が1重量%以上か つ40重量%以下である薄膜を成膜している。前 記重量百分率は、50重量%以下であっても良い 。

 この調理器具とは、例えば、屋内のキッチ や調理場等の厨房で使用されるフライパン 鍋、調理用プレート、魚焼き用グリルの水 れ皿、焼き網等はもちろんのこと、コンロ 板、コンロ部品、ストーブ(stove)部品、オー ブン内部品等、食品の調理に用いられる各種 器具及び各種厨房設備の付帯部品を総称した ものであり、この各種器具には、グリル、オ ーブン、トースター等の食品を収容して加熱 調理する加熱調理機器の加熱調理室内の天板 や内壁面を含む。
 この調理器具の材質としては、鋼、ステン ス鋼、アルミニウム、銅等の金属材料、ガ ス、ジルコニア等のセラミックス材料、琺 等の金属-セラミックス複合材料等、種類を 問わない。

 この薄膜を成膜する領域としては、少なく も、食品が触れる虞のある領域または油汚 が生じる虞のある領域とする必要があるが 表面全体に洩れなく上記の薄膜を成膜した 成としてももちろんかまわない。
 ここで、薄膜の組成を、ケイ素(Si)を酸化ケ イ素(SiO 2 )に、ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO 2 )に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(S iO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する重量百分率を50重量%以下 した理由は、酸化ケイ素(SiO 2 )の重量百分率が50重量%を越えると、油汚れ 水拭き程度で除去できるものの、食品の焦 付き汚れは水拭き程度では除去することが きないからである。

 ここで、前記重量百分率を1重量%以上かつ20 重量%以下の範囲に限定すると、食品の焦げ き汚れの除去容易性が特に優れたものとな 。もちろん、油汚れの除去容易性、薄膜の 水性も良好である。
 また、前記重量百分率を20量%を超えかつ40 量%以下の範囲に限定すると、油汚れの除去 が特に優れたものとなる。もちろん、食品 焦げ付き汚れの除去容易性、薄膜の耐水性 良好である。

 この薄膜の組成を撥水性及び親水性の点か 考えると、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )は表面に親水基(-OH)を有しないので撥水性を 示すが、酸化ケイ素(SiO 2 )は、表面に親水基(-OH)を有するので親水性を 示す。したがって、撥水性を示す酸化ジルコ ニウム(ZrO 2 )に、重量百分率が1重量%~40重量%となるよう 酸化ケイ素(SiO 2 )を導入すると、この酸化ケイ素(SiO 2 )含有酸化ジルコニウム(ZrO 2 )からなる薄膜は、適度な撥水性と親水性と 兼ね備えたものとなる。前記重量百分率は 50重量%以下であっても良い。

 この薄膜の厚みは、0.01μm以上かつ10μm以下 あることが好ましい。
 この薄膜の厚みが0.01μmを下回ると、防汚性 の付与(食品の焦げ付き汚れや油汚れの除去 易性)が不充分となるので好ましくなく、一 、厚みが10μmを越えると、薄膜の耐衝撃性 低下してクラックが入り易く、また、透明 が低下して調理器具自体の色調等の意匠性 低下するので好ましくない。

 この調理器具は、例えば、次のような第1の 製造方法により製造することができる。
 すなわち、ジルコニウムアルコキシド、ジ コニウムアルコキシドの加水分解物、ジル ニウムアルコキシドのキレート化合物、ジ コニウムアルコキシドの加水分解物のキレ ト化合物及び平均粒子径が20nm以下の酸化ジ ルコニウムの群から選択される1種または2種 上のジルコニウム成分と、ケイ素成分と、 媒とを含み、前記ジルコニウム成分を酸化 ルコニウム(ZrO 2 )に、前記ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )にそれぞれ換算したときの、前記酸化ケイ の、前記酸化ジルコニウムと前記酸化ケイ の合計量に対する重量百分率が1重量%以上か つ40重量%以下である第1の塗布液を、基体の 面の少なくとも一部に塗布して塗布膜を形 し、次いで、この塗布膜を大気中、200℃以 の温度にて熱処理する。前記重量百分率は 50重量%以下であっても良い。また、前記塗 膜の熱処理は、大気中に限らず、他の雰囲 中で行っても良く。さらに、前記塗布膜の 処理は、100℃以上の温度にて行っても良い

 この塗布液においては、上記のジルコニ ムアルコキシドとしては、特に制限される のではないが、例えば、ジルコニウムテト ノルマルブトキシド、ジルコニウムテトラ ロポキシドを例示することができる。これ ジルコニウムテトラノルマルブトキシドや ルコニウムテトラプロポキシドは、適度な 水分解速度を有し、しかも、取り扱い易い で、膜質が均一な薄膜を成膜することがで る。

 また、ジルコニウムアルコキシドの加水 解物としては、特に制限されるものではな が、例えば、ジルコニウムテトラノルマル トキシドの加水分解物、ジルコニウムテト プロポキシドの加水分解物を例示すること できる。この加水分解物の加水分解率とし は、特に制限はなく、0モル%超~100モル%の範 囲内のものを使用することができる。

 これらジルコニウムアルコキシドやジルコ ウムアルコキシドの加水分解物は、吸湿性 高く、不安定であり、貯蔵安定性も充分で いので、取り扱う際には、非常に注意を要 る。
 そこで、取り扱いの容易さの点では、これ ジルコニウムアルコキシドやジルコニウム ルコキシドの加水分解物をキレート化した ルコニウムアルコキシドのキレート化合物 ジルコニウムアルコキシドの加水分解物の レート化合物が好ましい。

 上記のジルコニウムアルコキシドのキレ ト化合物としては、ジルコニウムアルコキ ドと、モノエタノールアミン、ジエタノー アミン、トリエタノールアミン等のエタノ ルアミン、アセチルアセトン等のβ-ジケト 、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、 ロン酸ジエチル、フェノキシ酢酸エチル等 β-ケト酸エステル、酢酸、乳酸、クエン酸 安息香酸、リンゴ酸等のカルボン酸の群か 選択される1種または2種以上の加水分解抑 剤(化合物)との反応生成物を例示することが できる。ここで、加水分解抑制剤とは、ジル コニウムアルコキシドとキレート化合物を形 成し、このキレート化合物の加水分解反応を 抑制する作用を有する化合物のことである。

 また、ジルコニウムアルコキシドの加水 解物のキレート化合物としては、ジルコニ ムアルコキシドと、モノエタノールアミン ジエタノールアミン、トリエタノールアミ 等のエタノールアミン、アセチルアセトン のβ-ジケトン、アセト酢酸メチル、アセト 酸エチル、マロン酸ジエチル、フェノキシ 酸エチル等のβ-ケト酸エステル、酢酸、乳 、クエン酸、安息香酸、リンゴ酸等のカル ン酸の群から選択される1種または2種以上 加水分解抑制剤(化合物)との反応生成物を例 示することができる。加水分解抑制剤の定義 は、上述した通りである。

 この加水分解抑制剤の、ジルコニウムアル キシドまたはジルコニウムアルコキシドの 水分解物に対する割合は、このジルコニウ アルコキシドまたはジルコニウムアルコキ ドの加水分解物に含まれるジルコニウム(Zr) の0.5モル倍~4モル倍、好ましくは1モル倍~3モ 倍が好ましい。
 割合が0.5モル倍よりも少ないと、塗布液の 定性が不充分なものとなるからであり、一 、4モル倍を超えると、熱処理した後におい ても加水分解抑制剤が薄膜中に残留し、その 結果、薄膜の硬度が低下するからである。

 これらジルコニウムアルコキシドのキレ ト化合物、ジルコニウムアルコキシドの加 分解物のキレート化合物としては、ジルコ ウムアルコキシドまたはジルコニウムアル キシドの加水分解物を溶媒中に溶解し、さ に加水分解抑制剤を添加し、得られた溶媒 にてキレート化反応を生じさせたものであ てもよい。

 上記のケイ素成分としては、熱処理によ 酸化ケイ素となり得るケイ素化合物であれ 特に制限はないが、例えば、コロイダルシ カ、ケイ素アルコキシド、ケイ素アルコキ ドの加水分解物を例示することができる。 の加水分解物の加水分解率としては、特に 限はなく、0モル%超~100モル%の範囲内のもの を使用することができる。

 上記の溶媒としては、上述したジルコニ ム成分及びケイ素成分を溶解または分散さ ることのできる溶媒であれば、特に制限な 用いることができ、例えば、水、メタノー 、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノー ル等の低級アルコールが好適である。特に、 溶媒として水を用いる場合、アルコキシドの 加水分解量以上の量の水を含有させると、塗 布液の安定性が低下するので好ましくない。

 ここで、ジルコニウム成分としてジルコニ ムアルコキシドおよび/またはジルコニウム アルコキシドの加水分解物を用いる場合、あ るいは、ケイ素成分としてシリコンアルコキ シドおよび/またはシリコンアルコキシドの 水分解物を用いる場合には、このジルコニ ム成分またはケイ素成分の加水分解反応を 御する触媒を添加してもよい。
 この触媒としては、塩酸、硝酸等の無機酸 クエン酸、酢酸等の有機酸等を例示するこ ができる。また、この触媒の添加量は、通 、塗布液中のジルコニウム成分及びケイ素 分の合計量に対して0.01~10重量%程度が好ま い。なお、触媒の過剰の添加は、熱処理の に熱処理炉を腐食する虞があるので好まし ない。

 この点、ジルコニウム成分としてジルコ ウムアルコキシドのキレート化合物または ルコニウムアルコキシドの加水分解物のキ ート化合物を用い、ケイ素成分としてコロ ダルシリカを用いると、加水分解反応を制 する触媒である酸を添加する必要がなく、 たがって、熱処理の際に熱処理炉を腐食す 虞がないので好ましい。

 この塗布液においては、ジルコニウム成分 ケイ素成分の合計の含有率は、ジルコニウ 成分を酸化ジルコニウム(ZrO 2 )に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )にそれぞれ換算したときの、酸化ジルコニ ムと酸化ケイ素の合計の含有率が1重量%以上 かつ10重量%以下であることが好ましい。
 合計の含有率が1重量%を下回ると、所定の 厚の薄膜を形成することが困難となり、一 、合計の含有率が10重量%を超えると、所定 膜厚を超えて薄膜が白化したり、剥離する 因となるので好ましくない。

 次いで、上記の塗布液を、調理器具の本 を構成する基体の表面の少なくとも一部、 なわち、少なくとも、食品が触れる虞のあ 領域または油汚れが生じる虞のある領域に 塗布する。塗布方法としては特に制限はな 、スプレー法、ディップ法、刷毛塗り法等 適用できる。塗布に当たっては、塗布膜の みを、熱処理後の膜厚が0.01μm~10μmの範囲に なるように調製することが好ましい。

 このようにして得られた塗布膜を、大気中 200℃以上、より好ましくは400℃以上、さら 好ましくは500℃以上の温度にて熱処理する
 熱処理温度が高すぎると、基体が変形する があるため、熱処理温度を調理器具を構成 る基体の材質に応じて調整する。熱処理時 雰囲気は特に制限されず、通常、大気雰囲 中で行う。

 このようにして得られた薄膜は、下記の(1)~ (4)のいずれかの組成を有している。
(1)ケイ素(Si)原子とジルコニウム(Zr)原子が酸 (O)原子を介して結合した下記式(1)
にて表される化学結合を分子骨格中に有する ケイ素-ジルコニウム酸化物により構成され このケイ素-ジルコニウム酸化物が三次元網 構造を形成した無機物質。

(2)ジルコニウム(Zr)原子同士が酸素(O)原子を して結合した下記式(2)
にて表される化学結合を分子骨格中に有する ジルコニウム酸化物により構成され、このジ ルコニウム酸化物が三次元網目構造を形成し 、この三次元網目構造の中にケイ素酸化物の 微粒子が閉じ込められた無機物質。

(3)ケイ素酸化物微粒子とジルコニウム酸化物 微粒子が互いに分散している無機物質。
(4)上記の(1)~(3)のいずれか1種または2種以上の 無機物質が混在した状態のもの。

 以上説明したように、本実施形態の調理器 によれば、基体の表面の少なくとも一部に ケイ素(Si)と、ジルコニウム(Zr)と、酸素(O) を含有し、ケイ素(Si)を酸化ケイ素(SiO 2 )に、ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO 2 )に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(S iO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する重量百分率が1重量%以上か つ40重量%以下である薄膜を成膜したので、水 拭き程度で、食品の焦げ付き汚れはもちろん のこと、油汚れも簡単に除去することができ る。前記重量百分率は、50重量%以下であって も良い。
 また、上記の薄膜は、高屈折率材料である 化ジルコニウム(ZrO 2 )を主成分としたので、屈折率が大きく、深 のある反射が得られ、見た目にも美しく、 匠性も向上したものとなる。

 本実施形態の調理器具の製造方法によれば ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウム ルコキシドの加水分解物、ジルコニウムア コキシドのキレート化合物、ジルコニウム ルコキシドの加水分解物のキレート化合物 び平均粒子径が20nm以下の酸化ジルコニウム の群から選択される1種または2種以上のジル ニウム成分と、ケイ素成分と、溶媒とを含 、ジルコニウム成分を酸化ジルコニウム(ZrO 2 )に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )にそれぞれ換算したときの、酸化ケイ素の 酸化ジルコニウムと酸化ケイ素の合計量に する重量百分率が1重量%以上かつ40重量%以下 である塗布液を、基体の表面の少なくとも一 部に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この 塗布膜を大気中、200℃以上の温度にて熱処理 するので、本実施形態の調理器具を、簡単な 装置で簡便に製造することができる。前記重 量百分率は、50重量%以下であっても良い。ま た、前記塗布膜の熱処理は、大気中に限らず 、他の雰囲気中で行っても良く。さらに、前 記塗布膜の熱処理は、100℃以上の温度にて行 っても良い。

「第2の実施形態」
 図1は、本発明の第2の実施形態の防汚性製 を示す断面図であり、この防汚性製品1は、 汚性製品の本体を構成する基体2と、この基 体2の表面のうち少なくとも焦げ付き汚れが 着する虞のある領域に、ケイ素(Si)とジルコ ウム(Zr)と酸素(O)とリン(P)とを含有する薄膜 3が形成され、この薄膜3の少なくとも表層部3 aにはリン(P)が分布している。

 防汚性製品1としては、特に制限されるも のではないが、食品等の有機物に起因する焦 げ付き汚れに対して防汚性が要求される製品 であればよく、例えば、キッチン、厨房で使 用されるフライパン、鍋、調理用プレート、 魚焼き用グリルの水入れ皿、焼き網等の各種 調理器具は勿論のこと、コンロ天板、コンロ 部品、ストーブ(Stove)部品、オーブン内部品 、食品の調理に用いられる各種調理機器、 を総称したものである。

 基体2は、防汚性製品1の本体を構成する ので、その形状は、目的とする器具、機器 部材等の形状や仕様により様々な形状のも が選択使用される。また、その材質として 、鋼、ステンレス鋼等の各種金属、低熱膨 性結晶化ガラス等の各種耐熱ガラスを含む ラミックス、琺瑯等の金属-セラミックス複 物等、100℃以上の温度での熱処理が可能で れば種類を問わない。

 薄膜3は、ケイ素(Si)と、ジルコニウム(Zr)と 酸素(O)と、リン(P)とを含有し、ケイ素(Si)を 酸化ケイ素(SiO 2 )に、ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO 2 )に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(S iO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する質量百分率が50質量%以下 好ましくは1質量%以上かつ20質量%以下であり 、かつ、リン(P)は、この薄膜3の少なくとも 層部3aに分布している。
 このリン(P)を含む表層部3aが、焦げ付き汚 等に対して優れた防汚性を有している。ま 、この表層部3aは、酸化ケイ素(SiO 2 )を含有しているので、耐水性、基体2に対す 密着性に優れている。

 ここで、酸化ケイ素(SiO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する質量百分率を50質量%以下 した理由は、酸化ケイ素(SiO 2 )の質量百分率が50質量%を越えると、焦げ付 汚れが固着するのを防止することができな なり、しかも、一旦固着した焦げ付き汚れ 水拭き程度では除去することができなくな からである。
 特に、酸化ケイ素(SiO 2 )の質量百分率が1質量%以上かつ20質量%以下の 場合には、焦げ付き汚れの固着をより一層効 率よく防止することができ、また、300℃以上 の高温下で焦げ付き汚れが固着したとしても 、この焦げ付き汚れをより一層効率よく容易 に水洗除去することができるので好ましい。

 薄膜3の厚みは、0.001μm以上かつ10μm以下で ることが好ましい。
 この薄膜3の厚みが0.001μmを下回ると、防汚 の付与、すなわち焦げ付き汚れに対する防 性及び固着した焦げ付き汚れの除去容易性 不充分となり、一方、厚みが10μmを上回る 、薄膜3自体の耐衝撃性が低下してクラック 入り易くなるので好ましくない。
 特に、干渉色の発生を防止するためには、 膜3の厚みを0.1μm以下とするのが好適である 。

 この表層部3aの厚みは、後述する第2の製造 法の「第2の工程」における熱処理条件によ り決定されるが、通常の熱処理条件下では、 薄膜3の表面から少なくとも0.0001μm以上、好 しくは0.005μm以上である。また、この表層部 3aにおけるリン(P)の濃度は、特に制限される のではないが、0.001質量%以上かつ10質量%以 、好ましくは0.1質量%以上かつ10質量%以下で あり、この薄膜3の表面から深さ方向に向か て徐々に低濃度となるような濃度勾配を有 ている。
 この表層部3aにおけるリン(P)の濃度が0.001質 量%を下回ると、300℃以上の高温下で焦げ付 て固着した焦げ付き汚れは水拭き程度では 去することができず、一方、表層部3aにおけ るリン(P)の濃度が10質量%を上回ると、薄膜3 耐水性、耐摩耗性が低下するので好ましく い。

 このような表層部3aを有する薄膜3が形成さ た防汚性製品1は、焦げ付き汚れの固着が有 効に防止され、300℃以上の高温下で焦げ付い た焦げ付き汚れであっても、水拭き程度で簡 単に除去することができる。
 しかも、この表層部3aを有する薄膜3は、耐 性にも優れている。

 この薄膜3の表層部3aが防汚効果を発揮する 由は、表層部3aの構成成分であるケイ素(Si) ジルコニウム(Zr)、リン(P)の各原子と酸素(O) 原子との結合状態と密接に関連すると考えら れる。
 ここで、代表的な2種類の結合状態について 説明する。
(1)下記の構造式(3)に示すように、1つのケイ (Si)原子が4つの酸素(O)原子と化学結合してお り、各々の酸素(O)原子が結合手を一本持って いる場合。

 この場合、酸素(O)原子の結合手の一部が 素と結合して水酸基(-OH)となり、親水性を す。薄膜3の表層部3aが親水性を示すと、た ぱく質などに代表される親水性の有機質物 が熱作用を受けて焦げ付いた場合、焦げ付 汚れがより強固に固着する。

(2)下記の構造式(4)に示すように、1つのジル ニウム(Zr)原子が3つの酸素(O)原子と化学結合 しており、これらの酸素(O)原子のうち1つの 素(O)原子とは二重結合しており、その他の 素(O)原子はそれぞれ結合手を一本持ってい 場合。

 この場合、これらの酸素(O)原子の結合手 一部が水素と結合して水酸基(-OH)となり、 水性を示す。薄膜3の表層部3aが親水性を示 と、たんぱく質などに代表される親水性の 機質物質が熱作用を受けて焦げ付いた場合 焦げ付き汚れがより強固に固着する。

 このようなケイ素(Si)原子と酸素(O)原子との 化学結合、及びジルコニウム(Zr)原子と酸素(O )原子との化学結合を有する薄膜3中にリン(P) 含まれると、例えば、下記の構造式(5)に示 ように、リン(P)が酸素(O)原子の結合手と脱 縮合反応により架橋され、更に二重結合が じる。この二重結合は水酸基(-OH)ではない めに、ある程度の撥水性を示す。

 その結果、薄膜3の表層部3aは焦げ付き汚 に対して適度の親水性と撥水性を具備する ととなり、よって、焦げ付き汚れの基体2と の密着性が低下し、焦げ付き汚れの固着が有 効に防止され、300℃以上の高温下で焦げ付い た焦げ付き汚れであっても、水拭き程度で簡 単に除去することができる。

 この防汚性製品1は、例えば、次のような第 2の製造方法により作製することができる。
 すなわち、この第2の製造方法は、ジルコニ ウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシ ドの加水分解物、ジルコニウムアルコキシド のキレート化合物及びジルコニウムアルコキ シドの加水分解物のキレート化合物及び平均 粒子径が20nm以下の酸化ジルコニウムの群か 選択される1種または2種以上のジルコニウム (Zr)成分と、ケイ素(Si)成分と、溶媒とを含み ジルコニウム(Zr)成分を酸化ジルコニウム(Zr O 2 )に、ケイ素(Si)成分を酸化ケイ素(SiO 2 )に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(S iO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する質量百分率が50質量%以下 好ましくは1質量%以上かつ20質量%以下である 第2の塗布液を、基体2の表面に塗布して塗布 を形成し、次いで、この塗布膜を100℃以上 温度にて熱処理して薄膜とする第1の工程と 、次いで、この薄膜の上にリン(P)成分を含む 溶液または分散液を塗布して100℃以上、好ま しくは200℃以上の温度にて熱処理することに よりリン(P)成分を薄膜に含有せしめる第2の 程とを有している。

 この第2の塗布液における上記のジルコニ ウムアルコキシドとしては、特に制限される ものではないが、例えば、ジルコニウムテト ラノルマルブトキシド、ジルコニウムテトラ プロポキシドを例示することができる。これ らジルコニウムテトラノルマルブトキシドや ジルコニウムテトラプロポキシドは、適度な 加水分解速度を有し、しかも、取り扱い易い ので、膜質が均一な薄膜を形成することがで きる。

 また、上記のジルコニウムアルコキシド 加水分解物としては、特に制限されるもの はないが、例えば、ジルコニウムテトラノ マルブトキシドの加水分解物、ジルコニウ テトラプロポキシドの加水分解物を例示す ことができる。この加水分解物の加水分解 としては、特に制限はなく、0モル%超~100モ %の範囲内のものを使用することができる。

 これらジルコニウムアルコキシドやジル ニウムアルコキシドの加水分解物は、吸湿 が高く、非常に不安定であり、さらには、 の第2の塗布液の貯蔵安定性も劣っているの で、これらジルコニウムアルコキシドやジル コニウムアルコキシドの加水分解物をキレー ト化したジルコニウムアルコキシドのキレー ト化合物、ジルコニウムアルコキシドの加水 分解物のキレート化合物を用いることが好ま しい。

 上記のジルコニウムアルコキシドのキレ ト化合物としては、ジルコニウムアルコキ ドと、モノエタノールアミン、ジエタノー アミン、トリエタノールアミン等のエタノ ルアミン、アセチルアセトン等のβ-ジケト 、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、 ロン酸ジエチル、フェノキシ酢酸エチル等 β-ケト酸エステル、酢酸、乳酸、クエン酸 安息香酸、リンゴ酸等のカルボン酸の群か 選択される1種または2種以上の加水分解抑 剤との反応生成物を例示することができる ここで、加水分解抑制剤とは、ジルコニウ アルコキシドとキレート化合物を形成し、 のキレート化合物の加水分解反応を抑制す 作用を有する化合物のことである。

 また、ジルコニウムアルコキシドの加水 解物のキレート化合物としては、ジルコニ ムアルコキシドと、モノエタノールアミン ジエタノールアミン、トリエタノールアミ 等のエタノールアミン、アセチルアセトン のβ-ジケトン、アセト酢酸メチル、アセト 酸エチル、マロン酸ジエチル、フェノキシ 酸エチル等のβ-ケト酸エステル、酢酸、乳 、クエン酸、安息香酸、リンゴ酸等のカル ン酸の群から選択される1種または2種以上 加水分解抑制剤との反応生成物を例示する とができる。加水分解抑制剤の定義は、上 した通りである。

 この加水分解抑制剤の、ジルコニウムアル キシドまたはジルコニウムアルコキシドの 水分解物に対する割合は、このジルコニウ アルコキシドまたはジルコニウムアルコキ ドの加水分解物に含まれるジルコニウム(Zr) の0.5モル倍~4モル倍、好ましくは1モル倍~3モ 倍が好ましい。
 割合が0.5モル倍よりも少ないと、塗布液の 定性が不充分なものとなるからであり、一 、4モル倍を上回ると、熱処理した後におい ても加水分解抑制剤が薄膜中に残留し、その 結果、薄膜の硬度が低下するからである。

 これらジルコニウムアルコキシドのキレ ト化合物、ジルコニウムアルコキシドの加 分解物のキレート化合物としては、ジルコ ウムアルコキシドまたはジルコニウムアル キシドの加水分解物を溶媒中に溶解し、さ に加水分解抑制剤を添加し、得られた溶媒 にてキレート化反応を生じさせたものであ てもよい。

 上記のケイ素成分としては、熱処理によ 酸化ケイ素となり得るケイ素化合物であれ 特に制限はないが、例えば、コロイダルシ カ、ケイ素アルコキシド、ケイ素アルコキ ドの加水分解物を例示することができる。 の加水分解物の加水分解率としては、特に 限はなく、0モル%超~100モル%の範囲内のもの を使用することができる。

 上記の溶媒としては、上述したジルコニ ム成分及びケイ素成分を溶解または分散さ ることのできる溶媒であれば、特に制限な 用いることができ、例えば、水、メタノー 、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノー ル等の低級アルコールの他、エチレングリコ ールモノメチルエーテル、エチレングリコー ルモノエチルエーテル等のエーテル類(セロ ルブ類)、アセトン、ジメチルケトン、ジエ ルケトン等のケトン類、エチレングリコー 等のグリコール類、高級アルコール類、エ テル類等を挙げることができる。特に、溶 として水を用いる場合、アルコキシドの加 分解量以上の量の水を含有させると、塗布 の安定性が低下するので好ましくない。

 ここで、ジルコニウム成分としてジルコニ ムアルコキシドおよび/またはジルコニウム アルコキシドの加水分解物を用いる場合、あ るいは、ケイ素成分としてケイ素アルコキシ ドおよび/またはケイ素アルコキシドの加水 解物を用いる場合には、このジルコニウム 分またはケイ素成分の加水分解反応を制御 る触媒を添加してもよい。
 この触媒としては、塩酸、硝酸等の無機酸 クエン酸、酢酸等の有機酸等を例示するこ ができる。また、この触媒の添加量は、通 、塗布液中のジルコニウム成分及びケイ素 分の合計量に対して0.01~10質量%程度が好ま い。なお、触媒の過剰の添加は、熱処理の に熱処理炉を腐食する虞があるので好まし ない。

 この点、ジルコニウム成分としてジルコ ウムアルコキシドのキレート化合物または ルコニウムアルコキシドの加水分解物のキ ート化合物を用い、ケイ素成分としてコロ ダルシリカを用いると、加水分解反応を制 する触媒である酸を添加する必要がなく、 たがって、薄膜を形成する際に熱処理を行 熱処理炉を腐食する虞がないので好ましい

 この塗布液においては、ジルコニウム成分 ケイ素成分の合計の含有率は、ジルコニウ 成分を酸化ジルコニウム(ZrO 2 )に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )にそれぞれ換算したときの、酸化ジルコニ ムと酸化ケイ素の合計の含有率が0.1質量%以 かつ10質量%以下であることが好ましい。
 合計の含有率が0.1質量%を下回ると、所定の 膜厚の薄膜を形成することが困難となり、一 方、合計の含有率が10質量%を上回ると、膜厚 が所定の膜厚を超えて薄膜が白化したり、剥 離する原因となるので好ましくない。

 次いで、この第2の塗布液を基体2の表面 塗布する。塗布方法としては特に制限はな 、スプレー法、ディップ法、刷毛塗り法等 適用できる。塗布に当たっては、塗布膜の みを、熱処理後の膜厚が0.001μm~10μmの範囲に なるように調製することが好ましい。

 このようにして得られた塗布膜を100℃以上 より好ましくは200℃以上の熱処理温度にて 通常、0.1時間以上かつ24時間以下の熱処理 間、熱処理し、薄膜3とする。
 熱処理温度が100℃を下回るか、熱処理時間 不足すると、得られた薄膜3の膜強度が低下 するので好ましくない。一方、熱処理温度が 高すぎたり、熱処理時間が長すぎたりすると 、基体2が変形する虞があるため、熱処理温 及び熱処理時間を基体2の材質に応じて調整 る。熱処理時の雰囲気は特に制限されず、 常、大気雰囲気中で行う。

 次いで、リン(P)成分を、水あるいは有機溶 に溶解または分散させて、リン(P)成分を含 溶液または分散液を作製する。
 このリン(P)成分としては、リン酸、ポリリ 酸、メタリン酸等のリン酸類、リン酸ナト ウム、リン酸水素ナトリウム等のリン酸塩 ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリ ム、ポリリン酸水素ナトリウム、メタリン 水素ナトリム等の縮合リン酸塩、リン酸エ テル等のリン酸化合物等、リン(P)を分子骨 中に有するリン化合物であればよく、特に 限はない。
 この溶液または分散液の溶媒としては、リ (P)成分を溶解または分散させることのでき 溶媒であればよく、水あるいは有機溶媒が げられ、この有機溶媒には特に制限はない
 このリン(P)成分を、水あるいは有機溶媒に 解または分散させる。有機溶媒には特に制 はない。

 このリン(P)成分を含む溶液または分散液に けるリン(P)の濃度は特に制限されないが、 ましくは、0.01質量%以上かつ10質量%以下で る。
 このリン(P)成分の濃度が0.01質量%を下回る 、本発明の特徴的な効果である防汚性が充 に達成されず、一方、リン(P)成分の濃度が10 質量%を上回ると、表層部3aの表面が粗面化さ れ、表面祖れが生じる虞がある。
 また、このリン(P)を含む溶液または分散液 は、塗布性を改善するために界面活性剤を 有してもよい。

 このリン(P)成分を含む溶液または分散液を 薄膜3の上に塗布する。
 塗布方法としては特に制限はなく、スプレ 法、ディップ法、刷毛塗り法等が適用でき 。また、この溶液または分散液を塗布する の塗布量については、薄膜3に十分に防汚性 を付与することができる量であればよく、特 に制限は無い。

 次いで、このリン(P)成分を含む溶液または 散液を塗布した薄膜3を、100℃以上、好まし くは200℃以上の温度にて0.1時間~24時間熱処理 し、リン(P)成分を薄膜3に含浸せしめる。
 ここで、熱処理温度が100℃を下回るか、熱 理時間が不足すると、薄膜3の膜強度が不充 分となり、薄膜3の表層部3aにおけるリン(P)成 分の含有量が不足し、防汚性の効果が達成さ れないからである。なお、熱処理温度が高す ぎたり、熱処理時間が長すぎたりすると、基 体2が変形する虞があるため、熱処理温度及 熱処理時間を基体2に応じて調整する。熱処 時の雰囲気は特に制限されず、通常、大気 囲気中で行う。
 なお、このリン(P)成分を薄膜3に含浸せしめ る熱処理は、前記薄膜3が100℃以上の高温状 にあれば、新たな熱処理工程を別途設ける 要はない。
 熱処理後、残渣が残ることがあるが、これ 水洗などで容易に取り除くことができる。

 以上説明したように、本実施形態の防汚 製品によれば、食品等の有機物に起因する げ付き汚れの固着を防止することができ、 た、300℃以上の高温下で焦げ付き汚れが固 した場合であっても、この焦げ付き汚れを 易に水洗除去することができる。

 本実施形態の防汚性製品の製造方法によ ば、食品等の有機物に起因する焦げ付き汚 の固着を防止することができ、300℃以上の 温下で焦げ付き汚れが固着した場合であっ も、この焦げ付き汚れを容易に水洗除去す ことができる防汚性製品を、特殊な装置や 程を必要とすることなく、簡便かつ安価に 製することができる。

「第3の実施の形態」
 図2は、本発明の第3の実施形態の防汚性製 を示す断面図であり、この防汚性製品11が第 2の実施形態の防汚性製品1と異なる点は、第2 の実施形態の防汚性製品1では、ケイ素(Si)と ルコニウム(Zr)と酸素(O)とリン(P)とを含有す る薄膜3を形成し、この薄膜3の少なくとも表 部3aにリン(P)を分布したのに対し、本実施 態の防汚性製品11では、ケイ素(Si)とジルコ ウム(Zr)と酸素(O)とリン(P)とを所定の割合で 有する薄膜12を形成し、この薄膜12中にリン (P)を略均一に分布した点である。

 この薄膜12の組成は、ケイ素(Si)とジルコニ ム(Zr)と酸素(O)とリン(P)を含み、ケイ素(Si) 酸化ケイ素(SiO 2 )に、ジルコニウム(Zr)を酸化ジルコニウム(ZrO 2 )に、それぞれ換算したときの酸化ケイ素(SiO 2 )の、酸化ケイ素(SiO 2 )と酸化ジルコニウム(ZrO 2 )の合計量に対する質量百分率が50質量%以下 好ましくは1質量%以上かつ20質量%以下であり 、かつ、リン(P)は薄膜12中に略均一に分布し いる。
 そして、このリン(P)を含む薄膜12全体が優 た防汚機能を備えており、防汚性の薄膜と っている。また、薄膜12は酸化ケイ素(SiO 2 )を含有しているので、耐水性及び基体2に対 る密着性に優れている。

 ここで、酸化ケイ素(SiO 2 )の、酸化ケイ素(SiO 2 )と酸化ジルコニウム(ZrO 2 )の合計量に対する質量百分率を50質量%以下 した理由は、酸化ケイ素(SiO 2 )の質量百分率が50質量%を上回ると、焦げ付 汚れの固着を防止することができなくなり 固着した焦げ付き汚れを水拭き程度では除 することができなくなるからである。
 特に、酸化ケイ素(SiO 2 )の質量百分率を1質量%以上かつ20質量%以下と すると、焦げ付き汚れの固着をより一層効率 よく防止することができ、また、300℃以上の 高温下で焦げ付き汚れが固着したとしても、 この焦げ付き汚れをより一層効率よく容易に 水洗除去することができるので好ましい。

 この薄膜12中におけるリン(P)の濃度は、特 制限されるものではないが、0.001質量%以上 つ10質量%以下が好ましく、より好ましくは0. 01質量%以上かつ10質量%以下、さらに好ましく は0.1質量%以上かつ10質量%以下である。
 この薄膜12におけるリン(P)の濃度が0.001質量 %を下回ると、300℃以上の高温下で焦げ付い 固着した焦げ付き汚れは水拭き程度では除 することができず、一方、リン(P)の濃度が10 質量%を上回ると、薄膜12の耐水性、耐摩耗性 が低下するので好ましくない。

 薄膜12の厚みは、0.001μm以上かつ10μm以下で ることが好ましい。
 この薄膜12の厚みが0.001μmを下回ると、防汚 性の付与、すなわち焦げ付き汚れに対する防 汚性及び固着した焦げ付き汚れの除去容易性 が不充分となり、一方、厚みが10μmを上回る 、薄膜12自体の耐衝撃性が低下してクラッ が入り易くなるので好ましくない。
 特に、干渉色の発生を防止するためには、 膜12の厚みを0.1μm以下とするのが好適であ 。

 この薄膜12が形成された防汚性製品11は、焦 げ付き汚れの固着が有効に防止され、300℃以 上の高温下で固着した焦げ付き汚れであって も、水拭き程度で簡単に除去することができ る。
 しかも、この薄膜12は、耐久性にも優れて る。
 この薄膜12が防汚効果を発揮する理由は、 2の実施形態の薄膜3の表層部3aと同様の理由 よる。

 この防汚性製品11は、例えば、次のような 3の製造方法により作製することができる。
 すなわち、この第3の製造方法は、ジルコニ ウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシ ドの加水分解物、ジルコニウムアルコキシド のキレート化合物及びジルコニウムアルコキ シドの加水分解物のキレート化合物及び平均 粒子径が20nm以下の酸化ジルコニウムの群か 選択される1種または2種以上のジルコニウム (Zr)成分と、ケイ素(Si)成分と、リン(P)成分と 溶媒とを含み、ジルコニウム(Zr)成分を酸化 ジルコニウム(ZrO 2 )に、ケイ素(Si)成分を酸化ケイ素(SiO 2 )に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(S iO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する質量百分率が50質量%以下 好ましくは1質量%以上かつ20質量%以下である 第3の塗布液を、基体2の表面に塗布して塗布 を形成し、次いで、この塗布膜を100℃以上 温度にて熱処理する工程を有している。

 この第3の塗布液におけるリン(P)成分の濃度 は、特に制限されないが、リン(P)成分をリン (P)に、ジルコニウム成分を酸化ジルコニウム (ZrO 2 )に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )に、それぞれ換算したときの、リン(P)の酸 ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する質量百分率が0.001質量%以 かつ10質量%以下であることが、得られる薄 12が防汚性に優れ、焦げ付き汚れの固着をよ り一層効率よく防止することができ、また、 300℃以上の高温下で焦げ付き汚れが固着した としても、この焦げ付き汚れをより一層効率 よく、しかも容易に水洗除去することができ るので好ましい。

 この第3の塗布液におけるジルコニウムア ルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの加 水分解物、ジルコニウムアルコキシドのキレ ート化合物、ジルコニウムアルコキシドの加 水分解物のキレート化合物、加水分解抑制剤 、ケイ素成分、溶媒、触媒、リン(P)成分につ いては、第2の実施形態の第2の塗布液におけ 各成分と同様である。

 この第3の塗布液を基体2の上に塗布する方 としては、特に制限はなく、スプレー法、 ィップ法、刷毛塗り法等が適用できる。
 次いで、この第3の塗布液を塗布した基体2 、100℃以上、好ましくは200℃以上の温度に 0.1時間~24時間熱処理し、基体2上に薄膜12を 成する。

 ここで、熱処理温度が100℃を下回るか、熱 理時間が不足すると、薄膜12の膜強度が不 分となるからである。なお、熱処理温度が すぎたり、熱処理時間が長すぎたりすると 基体2が変形する虞があるため、熱処理温度 び熱処理時間を基体2に応じて調整する。熱 処理時の雰囲気は特に制限されず、通常、大 気雰囲気中で行う。
 熱処理後、残渣が残ることがあるが、これ 水洗などで容易に取り除くことができる。

 この防汚性製品11は、第2の実施形態の第2 の製造方法によっても作製することができる 。すなわち、上述した第2の製造方法の「第2 工程」における熱処の際に、リン(P)成分を む溶液または分散液を、薄膜の深部(底部) で充分に浸透させ、熱処理を施すことによ 、リン(P)との化学反応を薄膜の深部におい も生起させる。

 本実施形態においても、第2の実施形態と同 様の効果を奏することができる。
 しかも、薄膜12中にリン(P)を略均一に分布 たので、防汚性製品11の表面における防汚性 の面内均一性が向上したものとなる。

「第4の実施の形態」
 図3は、本発明の第4の実施形態の防汚性製 を示す断面図であり、この防汚性製品21が第 2の実施形態の防汚性製品1と異なる点は、第2 の実施形態の防汚性製品1では、ケイ素(Si)と ルコニウム(Zr)と酸素(O)とリン(P)とを含有す る薄膜3を形成し、この薄膜3の少なくとも表 部3aにリン(P)を分布したのに対し、本実施 態の防汚性製品21では、ジルコニウム(Zr)と 素(O)とリン(P)とを含有する薄膜22を形成し、 この薄膜22の少なくとも表層部22aにリン(P)を 布した点である。

 薄膜22の厚みは、0.001μm以上かつ10μm以下で ることが好ましい。
 この薄膜22の厚みが0.001μmを下回ると、防汚 性の付与、すなわち焦げ付き汚れに対する防 汚性及び固着した焦げ付き汚れの除去容易性 が不充分となり、一方、厚みが10μmを上回る 、薄膜22自体の耐衝撃性が低下してクラッ が入り易くなるので好ましくない。
 特に、干渉色の発生を防止するためには、 膜22の厚みを0.1μm以下とするのが好適であ 。

 この表層部22aの厚みは、後述する第4の製造 方法の「第2の工程」における熱処理条件に り決定されるが、通常の熱処理条件下では 薄膜22の表面から少なくとも0.0001μm以上、好 ましくは0.005μm以上である。また、この表層 22aにおけるリン(P)の濃度は、特に制限され ものではないが、0.001質量%以上かつ10質量% 下、好ましくは0.1質量%以上かつ10質量%以下 であり、この薄膜22の表面から深さ方向に向 って徐々に低濃度となるような濃度勾配を している。
 この表層部22aにおけるリン(P)の濃度が0.001 量%を下回ると、300℃以上の高温下で焦げ付 て固着した焦げ付き汚れは水拭き程度では 去することができず、一方、表層部22aにお るリン(P)の濃度が10質量%を上回ると、薄膜2 2の耐水性、耐摩耗性が低下するので好まし ない。

 このような表層部22aを有する薄膜22が形成 れた防汚性製品21は、焦げ付き汚れの固着が 有効に防止され、300℃以上の高温下で焦げ付 いた焦げ付き汚れであっても、水拭き程度で 簡単に除去することができる。
 しかも、この表層部22aを有する薄膜22は、 久性にも優れている。

 この表層部22aが防汚効果を発揮する理由は 表層部22aの構成成分であるジルコニウム(Zr) 、リン(P)の各原子と酸素(O)原子との結合状態 と密接に関連すると考えられる。
 すなわち、下記の構造式(6)に示すように、1 つのジルコニウム(Zr)原子は、3つの酸素(O)原 と化学結合しており、これらの酸素(O)原子 うち1つの酸素(O)原子とは二重結合しており 、その他の酸素(O)原子はそれぞれ結合手を一 本持っている。

 これらの酸素(O)原子の結合手の一部が水 と結合して水酸基(-OH)となり、親水性を示 こととなる。薄膜22の表層部22aが親水性を示 すと、たんぱく質などに代表される親水性の 有機質物質が熱作用を受けて焦げ付いた場合 、焦げ付き汚れがより強固に固着する。

 このようなジルコニウム(Zr)原子と酸素(O)原 子との化学結合を有する薄膜22中にリン(P)が まれると、下記の構造式(7)に示すように、 ン(P)が酸素(O)原子の結合手と脱水縮合反応 より架橋され、更に二重結合が生じる。こ 二重結合は水酸基(-OH)ではないために、あ 程度の撥水性を示す。

 その結果、薄膜22の表層部22aは焦げ付き れに対して適度の親水性と撥水性を具備す こととなり、よって、焦げ付き汚れの基体2 の密着性が低下し、焦げ付き汚れの固着が 効に防止され、300℃以上の高温下で焦げ付 た焦げ付き汚れであっても、水拭き程度で 単に除去することができる。

 この防汚性製品21は、例えば、次のような 4の製造方法により作製することができる。
 すなわち、この第4の製造方法は、ジルコニ ウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシ ドの加水分解物、ジルコニウムアルコキシド のキレート化合物及びジルコニウムアルコキ シドの加水分解物のキレート化合物及び平均 粒子径が20nm以下の酸化ジルコニウムの群か 選択される1種または2種以上のジルコニウム (Zr)成分と、溶媒とを含む第4の塗布液を、基 2の表面に塗布して塗布膜を形成し、次いで 、この塗布膜を100℃以上の温度にて熱処理し て薄膜とする第1の工程と、次いで、この薄 の上にリン(P)成分を含む溶液または分散液 塗布して100℃以上、好ましくは200℃以上の 度にて熱処理することによりリン(P)成分を 膜に含有せしめる第2の工程とを有している

 この第4の塗布液における上記のジルコニ ウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシ ドの加水分解物、ジルコニウムアルコキシド のキレート化合物、ジルコニウムアルコキシ ドの加水分解物のキレート化合物、加水分解 抑制剤、溶媒、触媒については、第2の実施 態の第2の塗布液における各成分と同様であ 。

 この第4の塗布液を基体2の上に塗布する方 としては、特に制限はなく、スプレー法、 ィップ法、刷毛塗り法等が適用できる。
 次いで、この第4の塗布液を塗布した基体2 、100℃以上、好ましくは200℃以上の温度に 0.1時間~24時間熱処理し、基体2上に薄膜22を 成する。

 ここで、熱処理温度が100℃を下回るか、 処理時間が不足すると、薄膜22の膜強度が 充分となるからである。なお、熱処理温度 高すぎたり、熱処理時間が長すぎたりする 、基体2が変形する虞があるため、熱処理温 及び熱処理時間を基体2に応じて調整する。 熱処理時の雰囲気は特に制限されず、通常、 大気雰囲気中で行う。

 次いで、この薄膜22上に、リン(P)成分を含 溶液または分散液を塗布する。このリン(P) 分を含む溶液または分散液は、第2の実施形 のリン(P)成分を含む溶液または分散液と同 である。
 このリン(P)成分を含む溶液または分散液を 膜22の上に塗布する塗布方法としては、特 制限はなく、スプレー法、ディップ法、刷 塗り法等が適用できる。

 次いで、このリン(P)成分を含む溶液または 散液を塗布した薄膜22を、100℃以上、好ま くは200℃以上の温度にて0.1時間~24時間熱処 し、リン(P)成分を薄膜22に含浸せしめる。
 ここで、熱処理温度が100℃を下回るか、熱 理時間が不足すると、薄膜22の膜強度が不 分となり、薄膜22の表層部22aにおけるリン(P) 成分の含有量が不足し、防汚性の効果が達成 されないからである。なお、熱処理温度が高 すぎたり、熱処理時間が長すぎたりすると、 基体2が変形する虞があるため、熱処理温度 び熱処理時間を基体2に応じて調整する。熱 理時の雰囲気は特に制限されず、通常、大 雰囲気中で行う。
 なお、このリン(P)成分を薄膜22に含浸せし る熱処理は、前記薄膜22が100℃以上の高温状 態にあれば、新たな熱処理工程を別途も設け る必要はない。
 熱処理後、残渣が残ることがあるが、これ 水洗などで容易に取り除くことができる。
 本実施形態においても、第2の実施形態と同 様の効果を奏することができる。

「第5の実施の形態」
 図4は、本発明の第5の実施形態の防汚性製 を示す断面図であり、この防汚性製品31が第 3の実施形態の防汚性製品11と異なる点は、第 3の実施形態の防汚性製品11では、ケイ素(Si) ジルコニウム(Zr)と酸素(O)とリン(P)とを所定 割合で含有する薄膜12を形成し、この薄膜12 中にリン(P)を略均一に分布したのに対し、本 実施形態の防汚性製品31では、ジルコニウム( Zr)と酸素(O)とリン(P)とを所定の割合で含有す る薄膜32を形成し、この薄膜32中にリン(P)を 均一に分布した点である。
 そして、このリン(P)を含む薄膜32全体が優 た防汚機能を備えており、防汚性の薄膜と っている。

 この薄膜32中におけるリン(P)の濃度は、特 制限されるものではないが、0.001質量%以上 つ10質量%以下が好ましく、より好ましくは0. 1質量%以上かつ10質量%以下である。
 この薄膜32中におけるリン(P)の濃度が0.001質 量%を下回ると、300℃以上の高温下で焦げ付 て固着した焦げ付き汚れは水拭き程度では 去することができず、一方、リン(P)の濃度 10質量%を上回ると、薄膜32の耐水性、耐摩耗 性が低下するので好ましくない。

 薄膜32の厚みは、0.001μm以上かつ10μm以下で ることが好ましい。
 この薄膜32の厚みが0.001μmを下回ると、防汚 性の付与、すなわち焦げ付き汚れに対する防 汚性及び固着した焦げ付き汚れの除去容易性 が不充分となり、一方、厚みが10μmを上回る 、薄膜32自体の耐衝撃性が低下してクラッ が入り易くなるので好ましくない。
 特に、干渉色の発生を防止するためには、 膜32の厚みを0.1μm以下とするのが好適であ 。

 この薄膜32が形成された防汚性製品31は、焦 げ付き汚れの固着が有効に防止され、300℃以 上の高温下で焦げ付いて固着した焦げ付き汚 れであっても、水拭き程度で簡単に除去する ことができる。
 しかも、この薄膜32は、耐久性にも優れて る。
 この薄膜32が防汚効果を発揮する理由は、 4の実施形態の薄膜22と同様の理由による。

 この防汚性製品31は、例えば、次のような 5の製造方法により作製することができる。
 すなわち、この第5の製造方法は、ジルコニ ウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシ ドの加水分解物、ジルコニウムアルコキシド のキレート化合物及びジルコニウムアルコキ シドの加水分解物のキレート化合物及び平均 粒子径が20nm以下の酸化ジルコニウムの群か 選択される1種または2種以上のジルコニウム (Zr)成分と、リン(P)成分と、溶媒とを含む第5 塗布液を、基体2の表面に塗布して塗布膜を 形成し、次いで、この塗布膜を100℃以上の温 度にて熱処理する工程を有している。

 この第5の塗布液におけるリン(P)成分の濃度 は、特に制限されないが、リン(P)成分をリン (P)に、ジルコニウム成分を酸化ジルコニウム (ZrO 2 )に、それぞれ換算したときの、リン(P)の酸 ジルコニウム(ZrO 2 )に対する質量百分率が0.001質量%以上かつ10質 量%以下であることが、得られる薄膜32が防汚 性に優れ、焦げ付き汚れの固着をより一層効 率よく防止することができ、また、300℃以上 の高温下で焦げ付き汚れが固着したとしても 、この焦げ付き汚れをより一層効率よく、し かも容易に水洗除去することができるので好 ましい。

 この第5の塗布液におけるジルコニウムア ルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの加 水分解物、ジルコニウムアルコキシドのキレ ート化合物、ジルコニウムアルコキシドの加 水分解物のキレート化合物、加水分解抑制剤 、溶媒、触媒、リン(P)成分については、第2 実施形態の第2の塗布液における各成分と同 である。

 この第5の塗布液を基体2の上に塗布する方 としては、特に制限はなく、スプレー法、 ィップ法、刷毛塗り法等が適用できる。
 次いで、この第5の塗布液を塗布した基体2 、100℃以上、好ましくは200℃以上の温度に 0.1時間~24時間熱処理し、基体2上に薄膜32を 成する。

 ここで、熱処理温度が100℃を下回るか、熱 理時間が不足すると、薄膜32の膜強度が不 分となるからである。なお、熱処理温度が すぎたり、熱処理時間が長すぎたりすると 基体2が変形する虞があるため、熱処理温度 び熱処理時間を基体2に応じて調整する。熱 処理時の雰囲気は特に制限されず、通常、大 気雰囲気中で行う。
 熱処理後、残渣が残ることがあるが、これ 水洗などで容易に取り除くことができる。

 この防汚性製品31は、第4の実施形態の第4の 製造方法によっても作製することができる。 すなわち、上述した第4の製造方法の「第2の 程」における熱処の際に、リン(P)成分を含 溶液または分散液を、薄膜の深部(底部)ま 充分に浸透させ、熱処理を施すことにより リン(P)との化学反応を薄膜の深部において 生起させる。
 本実施形態においても、第3の実施形態と同 様の効果を奏することができる。

 本発明の第1~5の実施形態において、印刷法 用いて塗布液を基板上に塗布し、熱処理後 膜厚が50nm~500nmの範囲内である略均一な厚み となるように成膜すると、光の干渉を利用し て、薄膜の厚みに応じた任意の単一色調に薄 膜を着色することができる。例えば、薄膜の 厚さが、10~60nmで透明、60~90nmで銀色、90~150nm 金色、150~190nmで紫、190~240nmで青、240~280nmで 、280~320nmで黄色、それ以上で玉虫色が得ら る。 また、前記の印刷法としては、略均一 な厚みに塗布可能である印刷法であれば特に 制限はないが、例えばインクジェット印刷法 、スクリーン印刷法。また、塗布液中にチタ ンアルコキシド等のチタン成分、ハフニウム アルコキシド等のハフニウム成分、イットリ ウムアルコキシド等のイットリウム成分を少 量添加すると着色が鮮やかとなる。
 また、本発明の第1~5の実施形態において、 均粒径が20nm以下の酸化ジルコニウム微粒子 としては特に制限がないが、平均粒径が10nm 下のものが機械的特性に優れた薄膜を100℃~3 00℃程度の比較的低温度の熱処理により容易 形成し得るので好ましい。
 このような酸化ジルコニウム微粒子は、例 ば、特開2006-016236号公報に記載された製造 法により安価、かつ多量に製造することが き、また、住友大阪セメント(株)により市販 されている。

 以下、実施例及び比較例により本発明を具 的に説明するが、本発明はこれらの実施例 よって限定されるものではない。
「実施例1」
 ジルコニウムテトラブトキシド6重量部、ア セト酢酸エチル3重量部、2-プロパノール90.9 量部を室温(25℃)下で30分混合し、ジルコニ ムテトラブトキシドとアセト酢酸エチルと キレート化合物を生成させた。次いで、こ 溶液にテトラメトキシシラン0.1重量部を添 し、塗布液を得た。
 この塗布液における、ジルコニウム成分を 化ジルコニウム(ZrO 2 )に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(S iO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する重量百分率は2重量%であっ た。

 次いで、この塗布液を、結晶化ガラス製の ンロ天板(いわゆるガラストップ)上に塗布 (固形分換算)が3g/m 2 となるようにスプレー塗装し、大気雰囲気中 、500℃にて20分間、熱処理して、コンロ天板 に薄膜を成膜し、実施例1の調理器具を得た 。
 この薄膜の厚みは1μmであり、コンロ天板の 表面は、薄膜の成膜前よりも光沢が増し、美 しい表面を示した。

 次いで、この調理器具の防汚性(食品の焦げ 付き汚れや油汚れの除去容易性)及び耐水性 評価した。評価結果を表1に示す。
 なお、評価項目及び評価方法は次のとおり ある。
・ 焦げ付き汚れの除去容易性
 調理器具(結晶化ガラス製のコンロ天板)の 面に醤油を10ml滴下し、大気中、300℃にて1時 間加熱し、醤油を焦げ付かせた。次いで、水 を含ませた布を用いてこの焦げ付きを水拭き し、除去の容易性を評価した。

(2)油汚れの除去容易性
 調理器具(結晶化ガラス製のコンロ天板)の 面に廃てんぷら油1mlを滴下し、水を含ませ 布切れでこの廃てんぷら油を水拭きし、「 たつき残り」を指先で確認し、除去の容易 を評価した。

(3)耐水性
 調理器具(結晶化ガラス製のコンロ天板)を 水道水を沸騰させた沸騰水中に24時間浸漬し た後、薄膜を指先で擦り、薄膜の剥離状況を 評価した。

「実施例2」
 2-プロパノールを90.4重量部に、テトラメト シシランを0.6重量部に変更した他は、実施 1に準じて実施例2の塗布液を得た。
 この塗布液における、ジルコニウム成分を 化ジルコニウム(ZrO 2 )に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(S iO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する重量百分率は10重量%であ た。

 次いで、この塗布液を用いて、実施例1に準 じて実施例2の調理器具を得た。
 この薄膜の厚みは1μmであり、コンロ天板の 表面は、薄膜の成膜前よりも光沢が増し、美 しい表面を示した。
 この実施例2の調理器具の防汚性(食品の焦 付き汚れや油汚れの除去容易性)及び耐水性 実施例1に準じて評価した。評価結果を表1 示す。

「実施例3」
 2-プロパノールを89.9重量部に、テトラメト シシランを1.1重量部に変更した他は、実施 1に準じて実施例3の塗布液を得た。
 この塗布液における、ジルコニウム成分を 化ジルコニウム(ZrO 2 )に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(S iO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する重量百分率は18重量%であ た。

 次いで、この塗布液を用いて、実施例1に準 じて実施例3の調理器具を得た。
 この薄膜の厚みは1μmであり、コンロ天板の 表面は、薄膜の成膜前よりも光沢が増し、美 しい表面を示した。
 この実施例3の調理器具の防汚性(食品の焦 付き汚れや油汚れの除去容易性)及び耐水性 実施例1に準じて評価した。評価結果を表1 示す。

 ジルコニウムテトラブトキシドを2.3重量部 、アセト酢酸エチルを1.2重量部に、2-プロ ノールを96.0重量部に、テトラメトキシシラ を0.5重量部に変更した他は、実施例1に準じ て実施例4の塗布液を得た。
 この塗布液における、ジルコニウム成分を 化ジルコニウム(ZrO 2 )に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(S iO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する重量百分率は25重量%であ た。

 次いで、この塗布液を用いて、実施例1に準 じて実施例4の調理器具を得た。
 この薄膜の厚みは1μmであり、コンロ天板の 表面は、薄膜の成膜前よりも光沢が増し、美 しい表面を示した。
 この実施例4の調理器具の防汚性(食品の焦 付き汚れや油汚れの除去容易性)及び耐水性 実施例1に準じて評価した。評価結果を表1 示す。

「実施例5」
 ジルコニウムテトラブトキシドを2.0重量部 、アセト酢酸エチルを1.0重量部に、2-プロ ノールを96.3重量部に、テトラメトキシシラ を0.7重量部に変更した他は、実施例1に準じ て実施例5の塗布液を得た。
 この塗布液における、ジルコニウム成分を 化ジルコニウム(ZrO 2 )に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(S iO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する重量百分率は35重量%であ た。

 次いで、この塗布液を用いて、実施例1に準 じて実施例5の調理器具を得た。
 この薄膜の厚みは1μmであり、コンロ天板の 表面は、薄膜の成膜前よりも光沢が増し、美 しい表面を示した。
 この実施例5の調理器具の防汚性(食品の焦 付き汚れや油汚れの除去容易性)及び耐水性 実施例1に準じて評価した。評価結果を表1 示す。

「実施例6」
 平均粒径が5nmの酸化ジルコニウム微粒子が2 -プロパノール中に分散した、濃度が1.8重量% 分散液99.6重量部に、0.4重量部のテトラメト キシシランを添加し、塗布液を得た。この塗 布液中における、前記ケイ素成分を酸化珪素 (SiO 2 )に換算したときの、酸化ケイ素(SiO 2 )の、前記酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と前記酸化珪素(SiO 2 )の合計量に対する重量百分率は10重量%であ た。
 この塗布液を用い、塗布量を固形分換算で0 .5g/m 2 にした他は、実施例1に準じて、実施例6の調 器具を得た。薄膜の厚みは0.1μmであった。
 この実施例6の調理器具の防汚性(食品の焦 付き汚れや油汚れの除去容易性)及び耐水性 実施例1に準じて評価した。評価結果を表1 示した。

「比較例1」
 ジルコニウムテトラブトキシド6重量部、2- ロパノール93重量部、60重量%の硝酸1重量部 混合して、塗布液を得た。
 次いで、この塗布液を用いて、実施例1に準 じて比較例1の調理器具を得た。
 この薄膜の厚みは1μmであった。
 この比較例1の調理器具の防汚性(食品の焦 付き汚れや油汚れの除去容易性)及び耐水性 実施例1に準じて評価した。評価結果を表1 示す。

「比較例2」
 ジルコニウムテトラブトキシドを1.7重量部 、アセト酢酸エチルを0.8重量部に、2-プロ ノールを96.6重量部に、テトラメトキシシラ を0.9重量部に変更した他は、実施例1に準じ て比較例2の塗布液を得た。
 この塗布液における、ジルコニウム成分を 化ジルコニウム(ZrO 2 )に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(S iO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する重量百分率は45重量%であ た。

 次いで、この塗布液を用いて、実施例1に準 じて比較例2の調理器具を得た。
 この薄膜の厚みは1μmであった。
 この比較例2の調理器具の防汚性(食品の焦 付き汚れや油汚れの除去容易性)及び耐水性 実施例1に準じて評価した。評価結果を表1 示す。

 表1によれば、実施例1~3では、食品の焦げ付 き汚れの除去容易性が特に優れており、また 、油汚れの除去容易性、薄膜の耐水性も良好 なものであった。
 また、実施例4、5では、油汚れの除去性が に優れており、食品の焦げ付き汚れ、薄膜 耐水性も良好なものであった。
 これに対して、比較例1では、食品の焦げ付 き汚れの除去容易性は良好であるものの、油 汚れの除去容易性、薄膜の耐水性は共に不良 であった。また、比較例2では、油汚れの除 容易性、薄膜の耐水性は優れているものの 食品の焦げ付き汚れの除去容易性が不良で った。
 したがって、食品の焦げ付き汚れの除去容 性、油汚れの除去容易性、薄膜の耐水性の ずれも良好なのは、薄膜中のSiO 2 量が50重量%以下、好ましくは1重量%~40重量%の 範囲であることが分かった。

「実施例7」
 ジルコニウムテトラブトキシド10重量部、 セチルアセトン5重量部、2-プロパノール84.5 量部を混合し、ジルコニウムテトラブトキ ドとアセチルアセトンとのキレート化合物 生成させた。次いで、この溶液にテトラメ キシシラン0.5重量部を添加し、塗布液を得 。
 この塗布液における、ジルコニウム成分を 化ジルコニウム(ZrO 2 )に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(S iO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する重量百分率は7.2重量%であ た。

 次いで、この塗布液を、結晶化ガラス製の ンロ天板上に塗布量(固形分換算)が1.5g/m 2 となるようにスプレー塗装し、大気雰囲気中 、600℃にて10分間、熱処理して、コンロ天板 に薄膜を成膜し、実施例7の調理器具を得た 。
 この薄膜の厚みは0.5μmであり、コンロ天板 表面は、薄膜の成膜前よりも光沢が増し、 しい表面を示した。

「実施例8」
 ジルコニウムテトラアセチルアセトネート1 5重量部、30重量%のコロイダルシリカを含む2- プロパノール分散液0.5重量部、ブチル-β-オ シエチルエーテル(ブチルセロソルブ)84.5重 部を混合し、塗布液を得た。
 この塗布液における、ジルコニウム成分を 化ジルコニウム(ZrO 2 )に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(S iO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する重量百分率は4重量%であっ た。

 次いで、この塗布液を、琺瑯製オーブン皿 に塗布量(固形分換算)が0.3g/m 2 となるようにディップ塗装し、大気雰囲気中 、500℃にて30分間、熱処理して、オーブン皿 に薄膜を成膜し、実施例8の調理器具を得た 。
 この薄膜の厚みは0.1μmであり、琺瑯製オー ン皿の表面は、薄膜の成膜前よりも光沢が し、美しい表面を示した。

「実施例9」
 ジルコニウムテトラブトキシド10重量部、 セチルアセトン5重量部、2-プロパノール84重 量部を混合し、ジルコニウムテトラブトキシ ドとアセチルアセトンとのキレート化合物を 生成させた。次いで、この溶液にテトラエト キシシラン1重量部を添加し、塗布液を得た
 この塗布液における、ジルコニウム成分を 化ジルコニウム(ZrO 2 )に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(S iO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する重量百分率は8.6重量%であ た。

 次いで、この塗布液を、セラミック製焼肉 レート上に塗布量(固形分換算)が1.5g/m 2 となるようにディップ塗装し、大気雰囲気中 、700℃にて50分間、熱処理して、この焼肉プ ート上に薄膜を成膜し、実施例9の調理器具 を得た。
 この薄膜の厚みは0.5μmであり、焼肉プレー の表面は、薄膜の成膜前よりも光沢が増し 美しい表面を示した。

 実施例7~9それぞれの調理器具の表面に卵白 塗りつけ、大気雰囲気中、350℃にて1時間加 熱し、焦げ付かせた。次いで、水を含ませた 布を用いてこの焦げ付きを水拭きしたところ 、簡単に拭き取ることができた。
 また、実施例7~9それぞれの調理器具の表面 廃てんぷら油を滴下し、水を含ませた布切 でこの廃てんぷら油を水拭きしたところ、 単に拭き取ることができた。
 以下の実施例及び比較例では、防汚性製品 してコンロ用天板を用いた。
「実施例10」
 ジルコニウムテトラブトキシド6質量部、ア セト酢酸エチル3質量部、2-プロパノール90.9 量部を室温(25℃)下で30分混合し、ジルコニ ムテトラブトキシドとアセト酢酸エチルと キレート化合物を生成させた。次いで、こ 溶液にテトラメトキシシラン0.1質量部を添 し、得られた溶液をエチレングリコールモ ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)にて10倍 希釈し、実施例10の塗布液を得た。

 この塗布液における、ジルコニウム成分を 化ジルコニウム(ZrO 2 )に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(S iO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する質量百分率は2質量%であっ た。

 次いで、この塗布液を結晶化ガラス製のコ ロ天板上に、100g/m 2 の塗布量にてスプレー塗装し、大気雰囲気中 、500℃にて20分間熱処理して焼き付け、コン 天板上に薄膜を形成した。この薄膜の厚み 0.1μmであった。
 次いで、このコンロ天板を、1質量%(P換算) トリポリ燐酸ナトリウム水溶液に浸漬して 薄膜の表面を充分に濡した後、引き上げ、 らに、このコンロ天板を、大気雰囲気下、25 0℃にて20分間熱処理した。次いで、水洗して 薄膜上の残渣を取り除き、実施例10のコンロ 天板を得た。
 このコンロ用天板の薄膜の表面におけるリ (P)の含有率を電子プローブマイクロアナラ ザ(EPMA)を用いて測定したところ、0.1質量%で あった。

 また、この実施例10のコンロ用天板の防汚 を「焦げ付き汚れの除去容易性」にて評価 た。評価方法は、次のとおりである。
「焦げ付き汚れの除去容易性」
 薄膜の表面に1mLの醤油を滴下し、次いで、( 1)大気中、250℃にて1時間、(2)大気中、350℃に て1時間、のそれぞれの条件の下で焦げ付か た。次いで、水を含ませた布切れでこの焦 付きを水拭きし、除去の容易性を評価した 評価結果を表1に示す。表1中の「含浸」とは 、第2の製造方法によったことを示す。

「実施例11」
 ジルコニウムテトラブトキシドを1.7質量部 、アセト酢酸エチルを0.8質量部に、2-プロ ノールを96.6質量部に、テトラメトキシシラ を0.9質量部にそれぞれ変更した他は、実施 10に準じて実施例11の塗布液を得た。
 この実施例11の塗布液における、ジルコニ ム成分を酸化ジルコニウム(ZrO 2 )に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(S iO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する質量百分率は45質量%であ た。

 次いで、この実施例11の塗布液を用いた他 、実施例10に準じて実施例11のコンロ用天板 得た。この薄膜の厚みは0.1μmであった。
 この実施例11のコンロ用天板の薄膜の表面 おけるリン(P)の含有率を電子プローブマイ ロアナライザ(EPMA)を用いて測定したところ 0.1質量%であった。
 さらに、この実施例11のコンロ用天板の防 性を実施例11に準じて評価した。評価結果を 表1に示す。

「実施例12」
 ジルコニウムテトラブトキシド6質量部、ア セト酢酸エチル3質量部、2-プロパノール91質 部を室温(25℃)下で30分混合し、ジルコニウ テトラブトキシドとアセト酢酸エチルとの レート化合物を生成させた。次いで、この 液をエチレングリコールモノブチルエーテ (ブチルセロソルブ)にて10倍に希釈し、実施 例12の塗布液を得た。

 次いで、この実施例12の塗布液を用いた他 、実施例10に準じて実施例12のコンロ用天板 得た。この薄膜の厚みは0.1μmであった。
 この実施例12のコンロ用天板の薄膜の表面 おけるリン(P)の含有率を電子プローブマイ ロアナライザ(EPMA)を用いて測定したところ 0.1質量%であった。
 さらに、この実施例12のコンロ用天板の防 性を実施例10に準じて評価した。評価結果を 表1に示す。表1中の「含浸」とは、第4の製造 方法によったことを示す。

「実施例13」
 実施例10の塗布液に、リン(P)成分としてリ 酸トリメチルを添加して実施例13の塗布液を 得た。ただし、リン(P)成分の添加量は、リン 酸トリメチルをリン(P)に、ジルコニウム成分 を酸化ジルコニウム(ZrO 2 )に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )に、それぞれ換算したときの、リン(P)の酸 ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する質量百分率を1質量%とした 。

 次いで、この実施例13の塗布液を用いた他 、実施例10に準じて実施例13のコンロ用天板 得た。ただし、実施例13の塗布液中には、 ン(P)成分としてリン酸トリメチルが予め添 されているので、トリポリリン酸処理は施 なかった。この薄膜の厚みは0.1μmであった
 この実施例13のコンロ用天板の薄膜の表面 おけるリン(P)の含有率を電子プローブマイ ロアナライザ(EPMA)を用いて測定したところ 1質量%であった。
 さらに、この実施例13のコンロ用天板の防 性を実施例10に準じて評価した。評価結果を 表1に示す。表1中の「塗布」とは、第3の製造 方法によったことを示す。

「実施例14」
 実施例12の塗布液に、リン(P)成分としてリ 酸トリメチルを添加して実施例14の塗布液を 得た。ただし、リン(P)成分の添加量は、リン 酸トリメチルをリン(P)に、ジルコニウム成分 を酸化ジルコニウム(ZrO 2 )に、それぞれ換算したときの、リン(P)の酸 ジルコニウム(ZrO 2 )に対する質量百分率を1質量%とした。

 次いで、この実施例14の塗布液を用いた他 、実施例12に準じて実施例14のコンロ用天板 得た。ただし、実施例14の塗布液中には、 ン(P)成分としてリン酸トリメチルが予め添 されているので、トリポリリン酸処理は施 なかった。この薄膜の厚みは0.1μmであった
 この実施例14のコンロ用天板の薄膜の表面 おけるリン(P)の含有率を電子プローブマイ ロアナライザ(EPMA)を用いて測定したところ 1質量%であった。
 さらに、この実施例14のコンロ用天板の防 性を実施例10に準じて評価した。評価結果を 表1に示す。表1中の「塗布」とは、第5の製造 方法によったことを示す。

「実施例15」
 平均粒径が5nmの酸化ジルコニウム微粒子が に分散した分散液(濃度;5質量%)を琺瑯製の ンロ天板上に、固形分換算で0.5g/m 2 の塗布量にてスプレー塗装し、大気雰囲気下 、250℃の温度にて30分間熱処理して焼付け、 ンロ天板上に薄膜を形成した。この薄膜の みは0.1μmであった。
 次いで、このコンロ天板上に、1質量%(P)換 のトリポリリン酸ナトリウム水溶液をスプ ー塗装し、再度、大気雰囲気下、250℃の温 の30分間熱処理した。水洗して薄膜上の残渣 を取り除き、実施例15のコンロ用天板を得た
 このコンロ用天板の薄膜の表面におけるリ (P)の含有量を電子プローブマイクロアナラ ザー(EPMA)を用いて測定したところ、0.1質量% であった。
 さらに、この実施例15のコンロ用天板の防 性を実施例10に準じて評価した。評価結果を 表2に示す。

「比較例3」
 ジルコニウムテトラブトキシドを1.5質量部 、アセト酢酸エチルを0.8質量部に、2-プロ ノールを96.6質量部に、テトラメトキシシラ を1.1質量部にそれぞれ変更した他は、実施 1に準じて比較例3の塗布液を得た。
 この比較例3の塗布液における、ジルコニウ ム成分を酸化ジルコニウム(ZrO 2 )に、ケイ素成分を酸化ケイ素(SiO 2 )に、それぞれ換算したときの、酸化ケイ素(S iO 2 )の、酸化ジルコニウム(ZrO 2 )と酸化ケイ素(SiO 2 )の合計量に対する質量百分率は55質量%であ た。

 次いで、この比較例3の塗布液を用いた他は 、実施例10に準じて比較例3のコンロ用天板を 得た。この薄膜の厚みは0.1μmであった。
 この比較例3のコンロ用天板の防汚性を実施 例10に準じて評価した。評価結果を表1に示す 。表1中の「含浸」とは、第2の製造方法によ たことを示す。

「比較例4」
 実施例10の塗布液を結晶化ガラス製のコン 天板上に、100g/m 2 の塗布量にてスプレー塗装し、大気雰囲気中 、500℃にて20分間熱処理して焼き付け、コン 天板上に薄膜を形成した。この薄膜の厚み 0.1μmであった。
 次いで、この薄膜上に、5質量%の水酸化リ ウム溶液を50g/m 2 の塗布量にて塗布し、大気雰囲気中、250℃の 温度にて20分間熱処理し、表面にリチウムを 有する薄膜が形成されたコンロ用天板を得 。
 この比較例4のコンロ用天板の防汚性を実施 例10に準じて評価した。評価結果を表1に示す 。

 表2によれば、実施例10~14のコンロ用天板で 、250℃、350℃のいずれの条件下においても 焦げ付き汚れの除去が容易であり、比較例3 ~4のコンロ用天板と比べて防汚性に優れてい ことが分かった。
 また、比較例3、4では、250℃及び350℃にお る焦げ付き汚れの除去容易性は共に、不良 しくは極めて不良であった。

 本発明の調理器具は、基体の表面の少なく も一部に、ケイ素(Si)と、ジルコニウム(Zr) 、酸素(O)とを含有する特定組成の薄膜を成 したことにより、調理中に付着した食品の げ付き汚れや油汚れを水拭き程度で簡単に 去することができたものであるから、食品 調理に用いられる調理器具や各種厨房設備 付帯部品はもちろんのこと、この調理器具 外の防汚性が要求される各種部材や各種部 等に対しても適用可能であり、その工業的 義は極めて大きいものである。
 また、本発明の防汚性製品、つまり調理器 は、その主要部を構成する基体の表面に、 イ素(Si)とジルコニウム(Zr)と酸素(O)とリン(P )とを含有する特定組成の薄膜、ジルコニウ (Zr)と酸素(O)とリン(P)とを含有する特定組成 薄膜、のいずれかを形成することにより、 品等の有機物に起因する焦げ付き汚れが基 の表面に固着するのを防止することができ また、この焦げ付き汚れが基体上に固着し としても容易に水洗除去することができる のであるから、コンロ用天板等の各種調理 器は勿論のこと、各種調理器具にも適用可 であり、その工業的意義は極めて大きいも である。