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Patent Searching and Data


Title:
ELECTROCHROMIC MATERIAL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/136626
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is an electrochromic polymer compound which is composed of a hyperbranched polymer having a moiety exhibiting electrochromic characteristics ascribed to a quaternary pyridinium salt, terephthalic acid diester or biphenyl-4,4'-diester structure.  A varnish and a thin film structure each obtained from the polymer compound, and an electrochromic device are also disclosed.  The electrochromic material has high response speed, while having high coloring efficiency and excellent solubility in various solvents.  In addition, the electrochromic material has excellent repetition stability and can be used for a long time.

Inventors:
NAGAMURA TOSHIHIKO (JP)
SAKANO TAKESHI (JP)
OZAWA MASAAKI (JP)
TANAKA AKIHIRO (JP)
HIRATA OSAMU (JP)
ODOI KEISUKE (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/058645
Publication Date:
November 12, 2009
Filing Date:
May 07, 2009
Export Citation:
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Assignee:
UNIV KYUSHU (JP)
NISSAN CHEMICAL IND LTD (JP)
NAGAMURA TOSHIHIKO (JP)
SAKANO TAKESHI (JP)
OZAWA MASAAKI (JP)
TANAKA AKIHIRO (JP)
HIRATA OSAMU (JP)
ODOI KEISUKE (JP)
International Classes:
C09K9/02; C08F8/30; G02F1/15
Domestic Patent References:
WO2008029688A12008-03-13
WO2004009680A22004-01-29
Foreign References:
JP2003121883A2003-04-23
JP2007163865A2007-06-28
JP2006071767A2006-03-16
JPS6271934A1987-04-02
JP2007537323A2007-12-20
JP2007091882A2007-04-12
Attorney, Agent or Firm:
HANABUSA, Tsuneo et al. (JP)
Sepal Tsuneo (JP)
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Claims:
エレクトロクロミック特性を発現する部分を有するハイパーブランチポリマーからなるエレクトロクロミック材料。
前記エレクトロクロミック特性を発現する部分が、4級ピリジニウム塩からなる化合物に由来するか、又は、テレフタル酸ジエステル構造の部分若しくはビフェニル-4,4’-ジエステル構造の部分であることを特徴とする、請求項1記載のエレクトロクロミック材料。
前記ハイパーブランチポリマーが、下記式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載のエレクトロクロミック材料。
〔式中、R 1 は水素原子又はメチル基を表し、
R 2 はシアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、4-ニトロスチリル基、又は式(2a)、式(2b)又は式(2c)
(式(2a)、式(2b)又は式(2c)中、R 7 はエーテル結合又はエステル結合を含む、炭素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表し、
R 8 乃至R 11 は夫々独立して、水素原子又は、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基を表し、
Y - は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、ClO 4 - 、BF 4 - 、PF 6 - 、CH 3 COO - 、PhSO 3 - 、4-MePhSO 3 - 又はR 12 SO 4 - を表す。(前記式中Phはフェニル基、Meはメチル基、R 12 は炭素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を表す。))
で表される構造を表すか、又は水素原子又は、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基を表し、
R 3 乃至R 6 は夫々独立して、水素原子又は、エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基を表し、又は
R 3 又はR 5 は前記式(2a)、式(2b)又は式(2c)で表される構造を表し、
X - は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、ClO 4 - 、BF 4 - 、PF 6 - 、CH 3 COO - 、PhSO 3 - 、4-MePhSO 3 - 又はR 12 SO 4 - を表し(前記式中Phはフェニル基、Meはメチル基、R 12 は炭素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を表す。)、
A 1 は式(3)
(式(3)中、A 2 はエーテル結合又はエステル結合を含んでいても良い炭素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基を表し、
Z 1 乃至Z 4 は、夫々独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)で表される構造を表し、
nは繰り返し単位構造の数であって2乃至100,000の整数を表す。〕
前記A 1 が、式(4)で表される構造であることを特徴とする請求項3記載のエレクトロクロミック材料。
前記X - 及び前記Y - が、夫々独立して、塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イオンである、請求項3又は請求項4記載のエレクトロクロミック材料。
前記X - 及び前記Y - の何れか一方が塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イオンであり、他方がPhSO 3 - 又は4-MePhSO 3 - であることを特徴とする、請求項3又は請求項4記載のエレクトロクロミック材料。
前記R 7 がエーテル結合を含む炭素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基である、請求項3乃至請求項6のうち何れか一項に記載のエレクトロクロミック材料。
前記R 7 が炭素原子数1乃至10のアルコキシ基で置換された直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素原子数1乃至10のアルキル基である、請求項7に記載のエレクトロクロミック材料。
前記R 7 が炭素原子数1乃至10の分岐鎖状アルコキシ基で置換された炭素原子数1乃至10のアルキル基であって、該分岐状アルコキシ基が酸素原子に結合する炭素原子において分岐しているアルキル基である、請求項8記載のエレクトロクロミック材料。
前記R 7 が2-メトキシエチル基又は2-イソプロポキシエチル基である、請求項8記載のエレクトロクロミック材料。
前記R 7 が2-メトキシエチル基又は2-イソプロポキシエチル基であり、前記X - が臭素イオンであり、前記Y - が4-MePhSO 3 - であることを特徴とする、請求項10記載のエレクトロクロミック材料。
前記R 3 、R 5 、R 9 、R 11 がメチル基であることを特徴とする、請求項11記載のエレクトロクロミック材料。
前記ハイパーブランチポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が、500乃至5,000,000であることを特徴とする、請求項3乃至請求項12のうち何れか一項に記載のエレクトロクロミック材料。
前記ハイパーブランチポリマーが、分子内に2個以上のラジカル重合性不飽和二重結合を有するモノマーAを、該モノマーA 1モルに対して5モル%乃至200モル%の量の重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られるところの高分岐ポリマーの末端に、必要により結合基を介してテレフタル酸ジエステル構造の部分又はビフェニル-4,4’-ジエステル構造の部分を結合してなる高分子化合物であることを特徴とする、請求項1記載のエレクトロクロミック材料。
前記モノマーAが1分子中にビニル基又は(メタ)アクリル基のうち何れか一方を少なくとも2つ有する化合物である、請求項14に記載のエレクトロクロミック材料。
前記モノマーAがジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物である、請求項15に記載のエレクトロクロミック材料。
前記モノマーAがジビニルベンゼン又はエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである、請求項16に記載のエレクトロクロミック材料。
前記重合開始剤Bがアゾ系重合開始剤である、請求項14乃至請求項17のうち何れか一項に記載のエレクトロクロミック材料。
前記重合開始剤Bが2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]である、請求項18に記載のエレクトロクロミック材料。
前記ハイパーブランチポリマーがゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される1,000乃至200,000の重量平均分子量(Mw)を有する高分子化合物である、請求項14乃至請求項19のうち何れか一項に記載のエレクトロクロミック材料。
請求項1乃至請求項20のうち何れか一項に記載のエレクトロクロミック材料が、少なくとも1種の溶剤に溶解又は分散していることを特徴とするワニス。
請求項1乃至請求項20のうち何れか一項に記載のエレクトロクロミック材料を含有する薄膜状構造体。
少なくとも片方が透明である2枚の電極層間に、請求項1乃至請求項20のうち何れか一項に記載のエレクトロクロミック材料を含有する薄膜状構造体が挟まれているエレクトロクロミック素子。
Description:
エレクトロクロミック材料

 本発明は、エレクトロクロミック材料に し、さらに詳述すると、エレクトロクロミ ク特性を発現する化合物をポリマー部分と て有するハイパーブランチポリマーからな エレクトロクロミック材料に関する。

 調光素子や表示素子に応用されるエレク ロクロミック素子は、電圧を印加すると可 的に酸化還元反応が起こり、可逆的に着色 または無色化されるエレクトロクロミズム いう現象を利用した素子である。このエレ トロクロミック素子は、一般に、例えば透 電極基板、エレクトロクロミック層、対極 板が順次設けられている素子により構成さ る。

 これまで、エレクトロクロミック特性を する化合物として、例えば酸化タングステ などの無機化合物が知られており(特許文献 1)、透明電極上に該無機酸化物を真空蒸着法 たはスパッタリング法にて成膜して、エレ トロクロミック素子を作製する方法が提案 れている。しかしながら、この製造方法は 膜形成時に真空技術が必須であり、コスト 高くなるという課題がある。

 より安価で簡単な製造工程により製造でき 素子として、例えばビオロゲン誘導体など らなる有機エレクトロクロミック化合物等 利用した各種エレクトロクロミック素子が 案されている。
 例えば、緑色エレクロトクロミック表示用 オロゲン化合物(特許文献2)、ビオロゲン構 を有する高分子化合物を用いたエレクトロ ロミックミラー(特許文献3)、高分子固体電 質の前駆体成分と反応性ビオロゲン化合物 共重合により得られる電解質層を設けたエ クトロクロミック素子(特許文献4)などが提 されている。

 さらに、陽イオンのドープによりエレク ロクロミック特性を発現させたトリアジン 含有多分岐重合体(特許文献5)、外周部にエ クトロクロミック機能を有する機能性官能 からなる機能性層を有するコア-シェル型ミ クロスフェア(該ミクロスフィアは例えばデ ドリマーやハイパーブランチポリマーであ )の含有層を有するエレクトロクロミック素 (特許文献6)など、ハイパーブランチポリマ のエレクトロクロミック素子への適用も提 されている。

特開昭63-18336号公報

特開平5-170738号公報

特開平11-38454号公報

特開平11-183940号公報

特開平9-302073号公報

特開2003-121883号公報

 これまでに提案されている有機エレクトロ ロミック化合物は、特に表示素子への適用 いう観点から、応答速度や着色効率、繰り し安定性などの点において、従来の表示素 である液晶におけるそれら性能と比して課 を残すものであり、更なる性能向上が求め れるものであった。
 また前述のハイパーブランチポリマー等の 分子化合物を用いた有機エレクトロクロミ ク化合物にあっては、各種有機溶媒に対す 溶解性が低く、使用可能な溶媒が限定され こととなり、素子作製時の薄膜形成が困難 あるなどの問題もあった。

 本発明は、このような事情に鑑みてなさ たものであり、応答速度が速く、高い着色 率を有し、繰り返し安定性に優れ長期使用 能であり、しかも種々の溶媒への溶解性に れるエレクトロクロミック材料を提供する とを目的とする。

 本発明者らは、上記目的を達成するため 鋭意検討を重ねた結果、エレクトロクロミ ク特性を発現する4級ピリジニウム塩含有化 合物に由来する部分、又は、テレフタル酸ジ エステル構造若しくはビフェニル-4,4’-ジエ テル構造の部分をポリマーの一部に有する イパーブランチポリマー、詳細には、上記4 級ピリジニウム塩含有化合物に由来する部分 、又は、テレフタル酸ジエステル構造若しく はビフェニル-4,4’-ジエステル構造の部分を 記ハイパーブランチポリマーの分岐鎖末端 配置させた高分子化合物を用いることで、 れたエレクトロクロミック特性と溶解性に れる高分子材料となり得ることを見出し、 発明を完成した。

 すなわち、本発明は第1観点として、エレク トロクロミック特性を発現する部分を有する ハイパーブランチポリマーからなるエレクト ロクロミック材料に関する。
 第2観点として、前記エレクトロクロミック 特性を発現する部分が、4級ピリジニウム塩 らなる化合物に由来するか、又は、テレフ ル酸ジエステル構造の部分若しくはビフェ ル-4,4’-ジエステル構造の部分であることを 特徴とする、第1観点記載のエレクトロクロ ック材料に関する。
 第3観点として、前記ハイパーブランチポリ マーが、下記式(1)で表される化合物であるこ とを特徴とする第1観点記載のエレクトロク ミック材料に関する。

〔式中、R 1 は水素原子又はメチル基を表し、
R 2 はシアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル 基、4-ニトロスチリル基、又は式(2a)、式(2b) は式(2c)

(式(2a)、式(2b)又は式(2c)中、R 7 はエーテル結合又はエステル結合を含む、炭 素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状又は環状 のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アル ケニル基、アルキニル基、アラルキル基、ア リール基または複素環基を表し、
R 8 乃至R 11 は夫々独立して、水素原子又は、エーテル結 合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素 原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状または環状 のアルキル基を表し、
Y - は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、 ClO 4 - 、BF 4 - 、PF 6 - 、CH 3 COO - 、PhSO 3 - 、4-MePhSO 3 - 又はR 12 SO 4 - を表す。(前記式中Phはフェニル基、Meはメチ 基、R 12 は炭素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状又は 環状のアルキル基を表す。))
で表される構造を表すか、又は水素原子又は 、エーテル結合又はエステル結合を含んでい てもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖 状または環状のアルキル基を表し、
R 3 乃至R 6 は夫々独立して、水素原子又は、エーテル結 合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素 原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状または環状 のアルキル基を表し、又は
R 3 又はR 5 は前記式(2a)、式(2b)又は式(2c)で表される構造 を表し、
X - は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、 ClO 4 - 、BF 4 - 、PF 6 - 、CH 3 COO - 、PhSO 3 - 、4-MePhSO 3 - 又はR 12 SO 4 - を表し(前記式中Phはフェニル基、Meはメチル 、R 12 は炭素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状又は 環状のアルキル基を表す。)、
A 1 は式(3)

(式(3)中、A 2 はエーテル結合又はエステル結合を含んでい ても良い炭素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖 状又は環状のアルキレン基を表し、
Z 1 乃至Z 4 は、夫々独立して、水素原子、炭素原子数1 至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアル コキシ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミ ノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。 )で表される構造を表し、
nは繰り返し単位構造の数であって2乃至100,000 の整数を表す。〕
 第4観点として、前記A 1 が、式(4)で表される構造であることを特徴と する第3観点記載のエレクトロクロミック材 に関する。

 第5観点として、前記X - 及び前記Y - が、夫々独立して、塩素イオン、臭素イオン 又はヨウ素イオンである、第3観点又は第4観 記載のエレクトロクロミック材料に関する
 第6観点として、前記X - 及び前記Y - の何れか一方が塩素イオン、臭素イオン又は ヨウ素イオンであり、他方がPhSO 3 - 又は4-MePhSO 3 - であることを特徴とする、第3観点又は第4観 記載のエレクトロクロミック材料に関する
 第7観点として、前記R 7 がエーテル結合を含む炭素原子数1乃至30の直 鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基である 、第3観点乃至第6観点のうち何れか一項に記 のエレクトロクロミック材料に関する。
 第8観点として、前記R 7 が炭素原子数1乃至10のアルコキシ基で置換さ れた直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素原子数 1乃至10のアルキル基である、第7観点に記載 エレクトロクロミック材料に関する。
 第9観点として、前記R 7 が炭素原子数1乃至10の分岐鎖状アルコキシ基 で置換された炭素原子数1乃至10のアルキル基 であって、該分岐状アルコキシ基が酸素原子 に結合する炭素原子において分岐しているア ルキル基である、第8観点記載のエレクトロ ロミック材料に関する。
 第10観点として、前記R 7 が2-メトキシエチル基又は2-イソプロポキシ チル基である、第8観点記載のエレクトロク ミック材料に関する。
 第11観点として、前記R 7 が2-メトキシエチル基又は2-イソプロポキシ チル基であり、前記X - が臭素イオンであり、前記Y - が4-MePhSO 3 - であることを特徴とする、第10観点記載のエ クトロクロミック材料に関する。
 第12観点として、前記R 3 、R 5 、R 9 、R 11 がメチル基であることを特徴とする、第11観 記載のエレクトロクロミック材料に関する
 第13観点として、前記ハイパーブランチポ マーのゲル浸透クロマトグラフィーによる リスチレン換算で測定される重量平均分子 が、500乃至5,000,000であることを特徴とする 第3観点乃至第12観点のうち何れか一項に記 のエレクトロクロミック材料に関する。
 第14観点として、前記ハイパーブランチポ マーが、分子内に2個以上のラジカル重合性 飽和二重結合を有するモノマーAを、該モノ マーA 1モルに対して5モル%乃至200モル%の量 重合開始剤Bの存在下で重合させることによ 得られるところの高分岐ポリマーの末端に 必要により結合基を介してテレフタル酸ジ ステル構造の部分又はビフェニル-4,4’-ジ ステル構造の部分を結合してなる高分子化 物であることを特徴とする、第1観点記載の レクトロクロミック材料に関する。
 第15観点として、前記モノマーAが1分子中に ビニル基又は(メタ)アクリル基のうち何れか 方を少なくとも2つ有する化合物である、第 14観点に記載のエレクトロクロミック材料に する。
 第16観点として、前記モノマーAがジビニル 合物又はジ(メタ)アクリレート化合物であ 、第15観点に記載のエレクトロクロミック材 料に関する。
 第17観点として、前記モノマーAがジビニル ンゼン又はエチレングリコールジ(メタ)ア リレートである、第16観点に記載のエレクト ロクロミック材料に関する。
 第18観点として、前記重合開始剤Bがアゾ系 合開始剤である、第14観点乃至第17観点のう ち何れか一項に記載のエレクトロクロミック 材料に関する。
 第19観点として、前記重合開始剤Bが2,2’-ア ゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロ オンアミド]である、第18観点に記載のエレ トロクロミック材料に関する。
 第20観点として、前記ハイパーブランチポ マーがゲル浸透クロマトグラフィーによる リスチレン換算で測定される1,000乃至200,000 重量平均分子量(Mw)を有する高分子化合物で る、第14観点乃至第19観点のうち何れか一項 に記載のエレクトロクロミック材料に関する 。
 第21観点として、第1観点乃至第20観点のう 何れか一項に記載のエレクトロクロミック 料が、少なくとも1種の溶剤に溶解又は分散 ていることを特徴とするワニスに関する。
 第22観点として、第1観点乃至第20観点のう 何れか一項に記載のエレクトロクロミック 料を含有する薄膜状構造体に関する。
 第23観点として、少なくとも片方が透明で る2枚の電極層間に、第1観点乃至第20観点の ち何れか一項に記載のエレクトロクロミッ 材料を含有する薄膜状構造体が挟まれてい エレクトロクロミック素子に関する。

 本発明のエレクトロクロミック材料は、 答速度が速く、高い着色効率を有し、繰り し安定性に優れ長期使用可能なエレクトロ ロミック特性を有する。また着色効率が極 て高いため、膜厚を薄くしても高いコント ストを得ることができ、一層の薄膜化によ 応答速度向上が達成できる。

 また本発明のエレクトロクロミック材料 、高分子化合物という特性を生かして、簡 な塗布・乾燥操作でそのまま薄膜状の構造 を形成させることが可能である。しかも、 発明のエレクトロクロミック材料は、N,N’- ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホ シド(DMSO)だけでなく、アルコールや水など も可溶であることから、溶媒を限定するこ なくワニスの形態にすることができ、薄膜 の構造体を形成することができる。

図1は本発明のエレクトロクロミック素 子の構成例を示す断面図である。 図2は本発明のエレクトロクロミック素 子の別の構成例を示す断面図である。 図3は実施例1で作製したエレクトロク ミックセル(EC発色層膜厚:300nm)に正電圧又は 電圧を印加した際の、波長530nmにおける透 率の時間変化を示す図である。 図4は実施例1で作製したエレクトロク ミックセル(EC発色層膜厚:300nm)に正負の電圧 繰り返し印加した際の、波長530nmにおける 過率の時間変化を示す図である。 図5は実施例1で作製したエレクトロク ミックセル(EC発色層膜厚:300nm)に電圧を印加 、回路を切断し、再び電圧を印加した際の 波長530nmにおける透過率の時間変化を示す である。 図6は実施例1で作製したエレクトロク ミックセル(EC発色層膜厚:500nm)の電圧印加前 電圧印加2秒後の吸光度変化(400nm乃至800nm)及 びそれらの吸光度の変化量を示す図である。 図7は実施例1で作製したエレクトロク ミックセル(EC発色層膜厚:300nm及び500nm)の電 印加前後の吸光度変化量の吸光度変化(400nm 至800nm)を示す図である。 図8は実施例2で作製したEC基導入量が100%のHBPS -EC-15(OTs - 、Br - )試料で作製したエレクトロクロミック薄膜 、印加電圧-0.2V又は-1.0Vにおける透過率変化( 330nm乃至1050nm)を示す図である。 図9は実施例2で作製した、EC基導入率を種々 化させたHBPS-EC-15(OTs - 、Br - )試料で作製したエレクトロクロミック薄膜 、印加電圧-1.0Vにおける透過率変化(330nm乃至 1050nm)を示す図である。 図10は合成例12で製造した高分岐ポリマー(H-DV B-OH)の 1 H NMRスペクトルの測定結果を示す図である。 図11は合成例12で製造したH-DVB-Iの 1 H NMRスペクトルの測定結果を示す図である。 図12は合成例12で製造したH-DVB-Iの 13 C NMRスペクトルの測定結果を示す図である。 図13は合成例12で製造したH-DVB-EC(Y)の 1 H NMRスペクトルの測定結果を示す図である。 図14は合成例13で製造したH-DVB-EC(M)の 1 H NMRスペクトルの測定結果を示す図である。 図15は実施例3で作製したエレクトロク ロミックセルの印加電圧-3.5Vにおける透過率 化(300nm乃至600nm)を示す図である。

 本発明のエレクトロクロミック材料は、4 級ピリジニウム塩含有化合物に由来する部分 、又は、テレフタル酸ジエステル構造の部分 若しくはビフェニル-4,4’-ジエステル構造の 分をポリマーの一部に有するハイパーブラ チポリマーである。

 本発明で用いられる前記ハイパーブランチ リマーとしては、まずは前記式(1)で表され 構造を有する化合物が挙げられる。
 式(1)中、R 1 は水素原子又はメチル基を表し、R 2 はシアノ基、ニトロ基又は前記式(2a)、式(2b) は式(2c)で表される構造を表すか、又は水素 原子又は、エーテル結合又はエステル結合を 含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状 、分岐鎖状または環状のアルキル基を表す。 R 3 乃至R 6 は夫々独立して、水素原子又は、エーテル結 合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素 原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状または環状 のアルキル基を表し、又は、R 3 又はR 5 は前記式(2a)、式(2b)又は式(2c)で表される構造 を表す。
 X - は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、 ClO 4 - 、BF 4 - 、PF 6 - 、CH 3 COO - 、PhSO 3 - 、4-MePhSO 3 - 又はR 12 SO 4 - を表す(前記式中Phはフェニル基、Meはメチル 、R 12 は炭素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状又は 環状のアルキル基を表す。)。
 nは繰り返し単位構造の数であって、2乃至10 0,000の整数を表す。
 また、A 1 は前記式(3)で表される構造を表す。

 式(2a)、式(2b)又は式(2c)中、R 7 はエーテル結合又はエステル結合を含む炭素 原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状又は環状の アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケ ニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリ ール基または複素環基を表す。
 R 8 乃至R 11 は夫々独立して、水素原子又は、エーテル結 合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素 原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状または環状 のアルキル基を表す。
 そしてY - は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、 ClO 4 - 、BF 4 - 、PF 6 - 、CH 3 COO - 、PhSO 3 - 、4-MePhSO 3 - 又はR 12 SO 4 - を表す(前記式中Phはフェニル基、Meはメチル 、R 12 は炭素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状又は 環状のアルキル基を表す。)。

 式(3)中、A 2 はエーテル結合又はエステル結合を含んでい ても良い炭素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖 状又は環状のアルキレン基を表す。
 Z 1 乃至Z 4 は、夫々独立して、水素原子、炭素原子数1 至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアル コキシ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミ ノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。 )で表される構造を表す。

 前記式(1)中のR 2 乃至R 6 、式(2a)、式(2b)又は式(2c)中のR 8 乃至R 11 、式(3)中のA 2 における直鎖状アルキレン基の具体例として は、メチレン基、エチレン基、ノルマルプロ ピレン基、ノルマルブチレン基、ノルマルヘ キシレン基等が挙げられる。また、前記分岐 鎖状アルキレン基の具体例としては、イソプ ロピレン基、イソブチレン基、2-メチルプロ レン基等が挙げられる。
 さらに、前記環状アルキレン基としては、 素原子数3乃至30の単環式、多環式、架橋環 の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる 具体的には、炭素原子数4以上のモノシクロ 、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペ ンタシクロ構造等を有する基を挙げることが できる。

 前記式(2a)、式(2b)又は式(2c)中のR 7 においてエーテル結合又はエステル結合を含 む、炭素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状又 は環状のアルキル基とは、例えば、前記段落 [0026]で述べた直鎖状、分岐鎖状又は環状のア ルキル基中にエーテル結合又はエステル結合 を含む基を挙げることができる。
 より好ましくは、R 7 はエーテル結合を含む炭素原子数1乃至30の直 鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基である 。特に得られる化合物の吸湿性、潮解性のな さを考慮すると、特に好ましくは炭素原子数 1乃至10のアルコキシ基で置換された炭素原子 数1乃至10のアルキル基、最も好ましくは炭素 原子数1乃至10の分岐鎖状アルコキシ基で置換 された炭素原子数1乃至10のアルキル基であっ て、該分岐鎖状アルコキシ基が酸素原子に結 合する炭素原子において分岐しているアルキ ル基である。
 具体的には、メトキシメチル基、2-メトキ エチル基、エトキシメチル基、2-エトキシエ チル基、イソプロポキシメチル基、2-イソプ ポキシエチル基、sec-ブトキシメチル基、2-s ec-ブトキシエチル基、シクロヘキソキシメチ ル基、1-シクロヘキソキシエチル基、シクロ ントキシメチル基、1-シクロペントキシエ ル基等が挙げられ、好ましくは2-メトキシエ チル基及び2-イソプロポキシエチル基であり 特に好ましくは2-イソプロポキシエチル基 ある。

 また前記式(2a)、式(2b)又は式(2c)中のR 7 における炭素原子数1乃至30のヒドロキシアル キル基の例としてはヒドロキシメチル基及び ヒドロキシエチル基等、アルケニル基の例と してはビニル基、1-プロペニル基、1-ブテニ 基及びシンナミル基等、アルキニル基の例 してはエチニル基、1-プロピニル基及び1-ブ ニル基等、そしてアラルキル基の例として ベンジル基及び2-フェニルエチル基等が挙 られる。
 さらにアリール基の例としてはフェニル基 ビフェニル骨格、ターフェニル基およびナ チル基等、複素環基の例としてはピリジル 及びピペリジニル基等が挙げられる。

 前記式(1)中のX - または式(2a)、式(2b)又は式(2c)中のY - は、溶媒への溶解性を考慮すると、夫々独立 して、塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イ オンであることが好ましい。
 或いは、前記X - または式(2a)、式(2b)又は式(2c)中のY - は、何れか一方が塩素イオン、臭素イオン又 はヨウ素イオンであり、他方がPhSO 3 - 又は4-MePhSO 3 - であることが好ましく、特に、前記X - が臭素イオンであり、前記Y - が4-MePhSO 3 - であることが最も好ましい。

 また前記式(3)中のZ 1 乃至Z 4 における炭素原子数1乃至20のアルキル基とし ては、メチル基、エチル基、イソプロピル基 、シクロヘキシル基及びノルマルペンチル基 等が挙げられる。
 また、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基と ては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロ キシ基、シクロヘキソキシ基及びノルマル ントキシ基等が挙げられる。
 上記のZ 1 乃至Z 4 において、特に水素原子又は炭素原子数1乃 20のアルキル基であることが好ましい。

<式(1)で表されるハイパーブランチポリマ の製造方法>
 上記式(1)で表されるハイパーブランチポリ ーは、4級ピリジニウム塩含有化合物と、式 (5)で表されるハイパーブランチポリマー(以 、HBPS-Halとも称する)を反応させることによ 、製造可能である。

 式(5)中、R 1 、A 1 及びnは上述の定義と同義であり、B 1 及びB 2 はハロゲン原子を表し、好ましくは塩素原子 、臭素原子またはヨウ素原子を表す。

 上記式(5)で表されるHBPS-Halは、例えば、分 末端(上記式(5)中、B 1 及びB 2 に相当する基)にジチオカルバメート基を有 る分岐鎖状の光重合性高分子を、例えばジ オカルバメート基を有するスチレン化合物 光重合による合成方法(Koji Ishizu, Akihide Mori , Macromol. Rapid Commun. 21,665-668(2000)、Koji Ishiz u, Akihide Mori, Polymer International 50,906-910(2001) 、Koji Ishizu, Yoshihiro Ohta, Susumu Kawauchi, Macro molecules Vol.35, No.9, 3781-3784(2002))や、ジチオ ルバメート基を有するアクリル化合物の光 合による合成方法(Koji Ishizu, Takeshi Shibuya,  AkihideMori, Polymer International 51,424-428(2002)、Koj i Ishizu, Takeshi Shibuya, Susumu Kawauchi, Macromolec ules Vol.36, No.10, 3505-3510(2002)、Koji Ishizu, Take shi Shibuya, Jaebum Park, Satoshi Uchida, Polymer Int ernational 53,259-265(2004))によって合成し、上記 チオカルバメート基をハロゲン化すること より、製造することができる。

 具体的には、下記式(6)で表されるジチオ ルバメート化合物をリビングラジカル重合 た後、ジチオカルバメート基をハロゲン化 、前記式(5)で表されるHBPS-Halを製造する。

 式(6)中、R 1 及びA 1 は上述の定義と同義であり、R 13 及びR 14 は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至5の ルキル基、炭素原子数1乃至5のヒドロキシ ルキル基又は炭素原子数7乃至12のアリール ルキル基を表し、又は、R 13 とR 14 は互いに結合し、窒素原子と共に環を形成し ていてもよい

 炭素原子数1乃至5のアルキル基としては、 チル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブ チル基、シクロペンチル基、ノルマルペンチ ル基等が挙げられる。
 炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基 しては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシ チル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げら る。
 炭素原子数7乃至12のアリールアルキル基と ては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げ れる。
 また、R 13 とR 14 が互いに結合し、それらと結合する窒素原子 と共に形成する環としては、四乃至八員環が 挙げられる。そして、環としてメチレン基を 四乃至六個含む環が挙げられる。また、酸素 原子又は硫黄原子と、4乃至6個のメチレン基 含む環も挙げられる。
 R 13 とR 14 が互いに結合し、それらと結合する窒素原子 と共に形成する環の具体例としては、ピペリ ジン環、ピロリジン環、モルホリン環、チオ モルホリン環、ホモピペリジン環等が挙げら れる。

 上記式(6)で表される化合物のリビングラ カル重合は、塊状重合、溶液重合、懸濁重 、乳化重合等の公知の重合形式により行な ことができるが、有機溶媒溶液中での溶液 合が好ましい。

 溶液重合の場合は、式(6)で表されるジチオ ルバメート化合物を溶解可能な有機溶媒溶 中で、任意の濃度で重合反応を行なうこと できる。この場合、溶液中において式(6)で されるジチオカルバメート化合物の濃度は 意であるが、例えば、1乃至80質量%であり、 好ましくは2乃至70質量%であり、より好まし は5乃至60質量%である。
 有機溶媒としては、式(6)で表されるジチオ ルバメート化合物を溶解可能な有機溶媒で れば特に制限はなく、例えば、ベンゼン、 ルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳 族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジエ ルエーテル等のエーテル系化合物、アセト 、メチルエチルケトン、メチルイソブチル トン、シクロヘキサノン等のケトン系化合 、ノルマルヘプタン、ノルマルヘキサン、 クロヘキサン等の脂肪族炭化水素類等が挙 られる。これらの有機溶媒は一種を用いて よいし、二種以上を混合して用いてもよい

 式(6)で表されるジチオカルバメート化合 のリビングラジカル重合は、有機溶媒溶液 、加熱又は紫外線等の光照射によって行な ことができるが、紫外線等の光照射によっ 行なうことが好ましい。光照射は、低圧水 ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ラン 、キセノンランプ等の紫外線照射ランプを 用して、反応系の内部又は外部から照射す ことによって行なうことができる。

 リビングラジカル重合においては、重合開 前には反応系内の酸素を十分に除去する必 があり、窒素、アルゴンなどの不活性気体 系内を置換するとよい。
 重合時間としては、0.1乃至100時間であり、 ましくは1乃至50時間であり、より好ましく 3乃至30時間である。通常、重合時間の経過 共にモノマー(式(6)で表されるジチオカルバ メート化合物)の転化率は増加する。重合温 は特に制限されないが、0乃至200℃であり、 ましくは10乃至150℃であり、より好ましく 20乃至100℃である。

 式(6)で表されるジチオカルバメート化合 のリビングラジカル重合時には、分子量や 子量分布を調整するために、メルカプタン 、スルフィド類等の連鎖移動剤や、二硫化 トラエチルチウラムなどのスルフィド化合 を使用することができる。さらに、所望に り、ヒンダードフェノール類などの酸化防 剤、ベンゾトリアゾール類などの紫外線吸 剤、4-tert-ブチルカテコール、ハイドロキノ ン、ニトロフェノール、ニトロクレゾール、 ピクリン酸、フェノチアジン、ジチオベンゾ イルジスルフィド等の重合禁止剤も使用でき る。

 さらに、リビングラジカル重合時には、 分かれ度や重合度を調整するために、ジチ カルバメート基を有していない公知のビニ モノマー又は不飽和二重結合を有する化合 を添加することもできる。これらは、式(6) 表されるジチオカルバメート化合物の総量 対して50モル%未満の割合で使用することが きる。これらの具体例としては、スチレン 、ビニルビフェニル類、ビニルナフタレン 、ビニルアントラセン類、アクリル酸エス ル類、メタクリル酸エステル類、アクリル ミド類、メタクリルアミド類、ビニルピロ ドン類、アクリロニトリル類、マレイン酸 、マレイミド類、ジビニル化合物類及びト ビニル化合物類が挙げられる。

 なお、上記式(6)で表されるジチオカルバ ート化合物は、下記の式(7)で表される化合 と式(8)で表される化合物との求核置換反応 より容易に得ることができる。

 式(7)中、R 1 及びA 1 は上述の定義と同義であり、Dは脱離基を表 。脱離基としてはフルオロ基、クロロ基、 ロモ基、ヨード基、メシル基、トシル基等 挙げられる。式(8)中、R 13 及びR 14 は上述の定義と同義であり、Mはリチウム、 トリウム又はカリウムを表す。
 本求核置換反応は、通常上記二種類の化合 を両方溶解できる有機溶媒中で行なうこと 好ましい。反応後、水/非水系有機溶媒によ る分液処理や、再結晶処理によって式(6)で表 されるジチオカルバメート化合物を高純度で 得ることができる。また、式(6)で表されるジ チオカルバメート化合物は、Macromol.Rapid Commu n. 21,665-668(2000)又はPolymer International 51,424-428 (2002)に記載の方法を参照して製造することも できる。
 式(6)で表されるジチオカルバメート化合物 具体例はN,N’-ジエチルジチオカルバミルメ チルスチレン等が挙げられる。

 上述のようにして得られるジチオカルバメ ト基を分子末端に有するハイパーブランチ リマーを、ハロゲン原子に置換することに って、前記式(5)で表されるハイパーブラン ポリマーを得ることができる。
 ハロゲン化の方法は、ジチオカルバメート をハロゲン原子に変換することができる方 であれば、特に制限はない。本反応で使用 きるハロゲン化剤としては、塩素、N-クロ コハク酸イミド、塩素化イソシアヌール酸 塩化スルフリル、tert-ブチルハイポクロリド 、三塩化リン、五塩化リン、トリフェニルホ スフィンジクロリド、塩化第二銅、五塩化ア ンチモン等の塩素化剤、臭素、N-ブロモコハ 酸イミド、N-ブロモグルタルイミド、N,N’,N ’’-トリブロモイソシアヌル酸、N,N’-ジブ モイソシアヌル酸ナトリウム、N,N’-ジブロ モイソシアヌル酸カリウム、N,N’-ジブロモ ソシアヌル酸、N-ブロモイソシアヌル酸ナト リウム、N,N’-ジブロモヒダントイン、N-ブロ モヒダントインカリウム、N,N’-ジブロモヒ ントインナトリウム、N-ブロモ-N’-メチルヒ ダントイン、1,3-ジブロモ-5,5’-ジメチルヒダ ントイン、3-ブロモ-5,5’-ジメチルヒダント ン、3-ブロモ-5,5’-ジメチルヒダントイン、1 -ブロモ-5,5’-ジメチルヒダントインナトリウ ム、1-ブロモ-5,5’-ジメチルヒダントインカ ウム、3-ブロモ-5,5’-ジメチルヒダントイン トリウム、3-ブロモ-5,5’-ジメチルヒダント インカリウム等の臭素化剤、ヨウ素、N-ヨー コハク酸イミド、ヨウ素酸カリウム、過ヨ 素酸カリウム、過ヨウ素酸、ヨウ素酸等の ウ素化剤を使用することができる。ハロゲ 化剤の使用量は、ハイパーブランチポリマ 内のジチオカルバメート基の数に対して1乃 至20倍モル当量、好ましくは1.5乃至15倍モル 量、より好ましくは2乃至10倍モル当量であ ばよい。置換反応の条件としては、反応時 0.01乃至100時間、反応温度0乃至300℃から、適 宜選択される。好ましくは反応時間0.1乃至10 間、反応温度20乃至150℃である。

 分子末端のジチオカルバメート基をハロ ン原子に置換する反応は、水又は有機溶剤 で行なうことが好ましい。使用する溶剤は 前記のジチオカルバメート基を有するハイ ーブランチポリマーとハロゲン化剤とを溶 可能なものが好ましい。また、該溶剤がジ オカルバメート基を有するハイパーブラン ポリマーを製造する際に使用する溶剤と同 ものであると、反応操作も簡便になり好ま い。

 ハロゲン化の方法としては、有機溶剤溶 中、臭素等のハロゲン化剤を使用して、加 還流することによって行なう反応が好まし 。有機溶剤としては、本反応の進行を著し 阻害しないものであれば良く、酢酸等の有 酸系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン エチルベンゼン、オルトジクロロベンゼン の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン ジエチルエーテル等のエーテル系化合物、 セトン、メチルエチルケトン、メチルイソ チルケトン、シクロヘキサノン等のケトン 化合物、クロロホルム、ジクロロメタン、1 ,2-ジクロロエタン、ノルマルヘプタン、ノル マルヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭 化水素類等が使用できる。これらの溶剤は一 種を用いてもよいし、二種またはそれ以上を 混合して用いてもよい。また、ジチオカルバ メート基を分子末端に有するハイパーブラン チポリマーの質量に対して0.2乃至1,000倍質量 好ましくは1乃至500倍質量、より好ましくは 5乃至100倍質量、最も好ましくは10乃至50倍質 の有機溶剤を使用することが好ましい。ま 、この反応では反応開始前には反応系内の 素を十分に除去する必要があり、窒素、ア ゴン等の不活性気体で系内を置換するとよ 。反応条件としては、反応時間0.01乃至100時 間、反応温度0乃至200℃から、適宜選択され 。好ましくは反応時間0.1乃至5時間、反応温 20乃至150℃である。

 反応後は系内に残存するハロゲン化剤を 解処理することが望ましいが、その際、チ 硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等の還 剤の水溶液、又は水酸化ナトリウム、水酸 カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ 溶液を用いることが出来る。また、エチレ 、プロピレン、ブテン、シクロヘキセン等 不飽和結合を含む化合物と反応させてもよ 。使用量は用いたハロゲン化剤に対して、0 .1乃至50当量、好ましくは、0.5乃至10当量、よ り好ましくは1乃至3当量であれば良い。上述 ような反応によって得られた分子末端にハ ゲン原子を有するハイパーブランチポリマ は、反応溶液中から溶剤留去又は固液分離 より溶剤と分離することができる。また、 応溶液を貧溶剤中へ加えることにより分子 端にハロゲン原子を有するハイパーブラン ポリマーを沈殿させ、粉末として回収する ともできる。

 こうして得られた式(5)で表される分子末 にハロゲン原子を有するハイパーブランチ リマー(HBPS-Hal)を4級ピリジニウム塩含有化 物と反応させることにより、式(1)で表され エレクトロクロミック特性を発現する部分 有する高分子化合物を製造する。

 式(5)で表されるHBPS-Halと反応させる前記4 ピリジニウム塩含有化合物としては、例え ピリジン及びその誘導体、ビオロゲン及び の誘導体等からなる塩が挙げられ、前記塩 しては、例えば、ハロゲン化物塩(塩化物塩 、臭化物塩、ヨウ化物塩等)、過ハロゲン酸 (過塩素酸塩、過臭素酸塩、過ヨウ素酸塩等) 、有機酸塩(酢酸塩、スルホン酸塩、ベンゼ スルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホ 酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等)、無機酸 (硫酸塩、硝酸塩、四フッ化ホウ酸塩、六フ 化リン酸塩、酢酸塩等)等が挙げられる。中 でも好ましくは塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化 物塩、過塩素酸塩、酢酸塩、ベンゼンスルホ ン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、スルホン 塩、四フッ化ホウ酸塩、六フッ化リン酸塩 が挙げられ、最も好ましくは、塩化物塩、 化物塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエ スルホン酸塩、スルホン酸塩、四フッ化ホ 酸塩である。

 特に好ましい化合物として、例えば、4,4’- ビピリジニウム誘導体、2,2’,6,6’-テトラメ ル-4,4’-ビピリジニウム誘導体、4-シアノピ リジニウム誘導体、4-トリフルオロメチルピ ジニウム誘導体、4-ニトロスチリルピリジ ウム誘導体等の上記塩類を挙げることがで る。
 また下記一般式で表される化合物等も好適 化合物として挙げることができる。

 上記式中、Pはビピリジニウム基の窒素原子 に対して4位又は2位で結合したチオフェニル 、フリル基、ビチオフェニル基、ターチオ ェニル基、フルオレニル基、ピレニル基、 リレニル基、ビニル基又は単結合を表し、R a及びRbはそれぞれ独立してアルキル基、ポリ (テトラメチレンオキシ)基、ヒドロキシアル ル基、アルケニル基、アルキニル基、アラ キル基、アリール基又は複素環基を表し、Q - は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、 ClO 4 - 、BF 4 - 、PF 6 - 、CH 3 COO - 、PhSO 3 - 、4-MePhSO 3 - 又はR 12 SO 4 - を表す(前記式中Phはフェニル基、Meはメチル 、R 12 は炭素原子数1乃至30の直鎖状、分岐鎖状又は 環状のアルキル基を表す。)。

 前記式(5)で表されるHBPS-Halと前記4級ピリジ ウム塩含有化合物との反応は、有機溶剤中 、対応する塩基の存在下で行うことができ 。対応する塩基の量は、前記式(5)で表され HBPS-Hal中のハロゲン原子の1モル当量に対し 0.1乃至20倍モル当量、好ましくは0.5乃至10倍 モル当量、より好ましくは1乃至5倍モル当量 使用される。
 使用する溶剤は、前記4級ピリジニウム塩含 有化合物と前記式(5)で表されるHBPS-Halを溶解 能なものであればよく、さらに、反応後の 分子化合物を溶解しない溶剤であればより ましい。例えば、ベンゼン、トルエン、キ レン、エチルベンゼン、オルトジクロロベ ゼン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロ ラン、ジエチルエーテル等のエーテル系化 物、アセトン、メチルエチルケトン、メチ イソブチルケトン、シクロヘキサノン等の トン系化合物、クロロホルム、ジクロロメ ン、1,2-ジクロロエタン、ノルマルヘプタン 、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン等の脂 肪族炭化水素類、N,N’-ジメチルホルムアミ 、N,N’-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2- ロリドン等のアミド系化合物、ジメチルス ホキシド等が使用できる。これらの溶剤は 種を用いてもよいし、二種以上を混合して いてもよい。また、使用量は、式(5)で表さ るHBPS-Halの質量に対して0.2乃至1,000倍質量、 ましくは1乃至500倍質量、より好ましくは5 至100倍質量、最も好ましくは10乃至50倍質量 有機溶剤を使用することが好ましい。
 また、この反応では反応開始前には反応系 の酸素を十分に除去する必要があり、窒素 アルゴン等の不活性気体で系内を置換する よい。
 反応条件としては、反応温度0乃至300℃、反 応時間0.01乃至100時間から適宜選択される。 ましくは反応温度20乃至150℃、反応時間0.1乃 至10時間である。

 このようにして製造された式(1)で表され ハイパーブランチポリマーである本発明の レクトロクロミック材料は、ゲル浸透クロ トグラフィーによるポリスチレン換算で測 される重量平均分子量Mwが500乃至5,000,000で り、好ましくは1,000乃至1,000,000であり、より 好ましくは2,000乃至500,000であり、最も好まし くは3,000乃至100,000である。また、分散度:Mw( 量平均分子量)/Mn(数平均分子量)としては1.0 至7.0であり、好ましくは1.1乃至6.0であり、 り好ましくは1.2乃至5.0である。

 また、本発明のエレクトロクロミック材 としては、前述の式(1)で表されるハイパー ランチポリマーのほか、分子内に2個以上の ラジカル重合性不飽和二重結合を有するモノ マーAを、該モノマーA 1モルに対して5モル% 至200モル%の量の重合開始剤Bの存在下で重合 させることにより得られるところの高分岐ポ リマー(以降、H-DVB-OHとも称する)の末端に、 要により結合基を介して、テレフタル酸ジ ステル構造の部分又はビフェニル-4,4’-ジエ ステル構造の部分を結合してなる高分子化合 物を挙げることができる。

 前記分子内に2個以上のラジカル重合性不 飽和二重結合を有するモノマーAは、ビニル 又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なく とも2つ有することが好ましく、特にジビニ 化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物であ ることが好ましい。なお、本明細書において 、(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレ ト化合物とメタクリレート化合物の両方を う。例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル とメタクリル酸をいう。

 このようなモノマーAとしては、例えば、以 下の(A1)乃至(A7)に示した有機化合物が例示さ る。
(A1)ビニル系炭化水素:
(A1-1)脂肪族ビニル系炭化水素類;イソプレン ブタジエン、3-メチル-1,2-ブタジエン、2,3-ジ メチル-1,3-ブタジエン、1,2-ポリブタジエン、 ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン 等
(A1-2)脂環式ビニル系炭化水素;シクロペンタ エン、シクロヘキサジエン、シクロオクタ エン、ノルボルナジエン等
(A1-3)芳香族ビニル系炭化水素;ジビニルベン ン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン トリビニルベンゼン、ジビニルビフェニル ジビニルナフタレン、ジビニルフルオレン ジビニルカルバゾール、ジビニルピリジン
(A2)ビニルエステル、アリルエステル、ビニ エーテル、アリルエーテル、ビニルケトン:
(A2-1)ビニルエステル;アジピン酸ジビニル、 レイン酸ジビニル、フタル酸ジビニル、イ フタル酸ジビニル、イタコン酸ジビニル、 ニル(メタ)アクリレート等
(A2-2)アリルエステル;マレイン酸ジアリル、 タル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、 ジピン酸ジアリル、アリル(メタ)アクリレー ト等
(A2-3)ビニルエーテル;ジビニルエーテル、ジ チレングリコールジビニルエーテル、トリ チレングリコールジビニルエーテル等
(A2-4)アリルエーテル;ジアリルエーテル、ジ リルオキシエタン、トリアリルオキシエタ 、テトラアリルオキシエタン、テトラアリ オキシプロパン、テトラアリルオキシブタ 、テトラメタリルオキシエタン等
(A2-5)ビニルケトン;ジビニルケトン、ジアリ ケトン等
(A3)(メタ)アクリル酸エステル:
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、 リエチレングリコールジ(メタ)アクリレー 、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレー ト、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリ ート、トリメチロールプロパントリ(メタ) クリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリ レート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ) クリレート、アルコキシチタントリ(メタ) クリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ) クリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオール (メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ( メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ( タ)アクリレート、トリシクロデカンジメタ ールジ(メタ)アクリレート、ジオキサング コールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ- 1-アクリロイルオキシ-3-メタクリロイルオキ プロパン、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリ イルオキシプロパン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)ア リロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオ ン、ウンデシレノキシエチレングリコール (メタ)アクリレート、ビス[4-(メタ)アクリロ ルチオフェニル]スルフィド、ビス[2-(メタ) クリロイルチオエチル]スルフィド、1,3-ア マンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3 -アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレ ート等
(A4)ポリアルキレングリコール鎖を有するビ ル系化合物:
ポリエチレングリコール(分子量300)ジ(メタ) クリレート、ポリプロピレングリコール(分 量500)ジ(メタ)アクリレート等
(A5)含窒素ビニル系化合物:
ジアリルアミン、ジアリルイソシアヌレート 、ジアリルシアヌレート、メチレンビス(メ )アクリルアミド、ビスマレイミド等
(A6)含ケイ素ビニル系化合物:
ジメチルジビニルシラン、ジビニルメチルフ ェニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、 1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン 1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラフェニルジシラザ 、ジエトキジビニルシラン等
(A7)含フッ素ビニル系化合物:
1,4-ジビニルパーフルオロブタン、1,4-ジビニ オクタフルオロブタン、1,6-ジビニルパーフ ルオロヘキサン、1,6-ジビニルドデカフルオ ヘキサン、1,8-ジビニルパーフルオロオクタ 、1,8-ジビニルヘキサデカフルオロオクタン 等

 これらのうち好ましいものは、上記(A1-3) の芳香族ビニル系炭化水素化合物、(A2)群の ビニルエステル、アリルエステル、ビニルエ ーテル、アリルエーテルおよびビニルケトン 、(A3)群の(メタ)アクリル酸エステル、(A4)群 ポリアルキレングリコール鎖を有するビニ 系化合物、並びに(A5)群の含窒素ビニル系化 物であり、特に好ましいのは、(A1-3)群に属 るジビニルベンゼン、(A2)群に属するフタル 酸ジアリル、(A3)群に属するエチレングリコ ルジ(メタ)アクリレート、1,3-アダマンタン メタノールジ(メタ)アクリレート、並びに(A5 )群に属するメチレンビス(メタ)アクリルアミ ドであり、これらの中でもジビニルベンゼン 及びエチレングリコールジ(メタ)アクリレー がより好ましい。

 前記重合開始剤Bとしては、好ましくはアゾ 系重合開始剤が用いられる。アゾ系重合開始 剤としては、例えば以下の(1)~(5)に示す化合 を挙げることができる。
(1)アゾニトリル化合物:
2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-ア ビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾ ス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾ ス-1-シクロヘキサンカルボニトリル、2,2’- ゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニト ル、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリ 等;
(2)アゾアミド化合物:
2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキ メチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミ ド}、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキ ブチル)]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス [2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオン ミド]、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メ ルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチ ル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビ (N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミ )等;
(3)環状アゾアミジン化合物:
2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロ ン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2- ミダゾリン-2-イル)プロパン]ジスルフェート ジヒドレート、2,2’-アゾビス[2-[1-(2-ヒドロ シエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]-プロパン] ヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダ ゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イ ミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジヒド クロリド等;
(4)アゾアミジン化合物:
2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン) ヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボ キシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テ ラヒドレート等;
(5)その他:
2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾ ス-4-シアノバレリン酸、2,2’-アゾビス(2,4,4 -トリメチルペンタン)、1,1’-アゾビス(1-アセ トキシ-1-フェニルエタン)等。

 上記アゾ系重合開始剤の中でも、10時間半 期温度が30乃至120℃であるアゾ系重合開始剤 が好ましい。
 このような条件に当てはまるアゾ系重合開 剤として、上記アゾ系重合開始剤の中でも 特に2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシ エチル)プロピオンアミド]が好ましい。

 前記重合開始剤Bは、前記分子内に2個以 のラジカル重合性不飽和二重結合を有する ノマーA 1モルに対して5モル%乃至200モル%の で使用され、好ましくは20モル%乃至150モル% 、より好ましくは50モル%乃至100モル%の量で 用される。

 前記H-DVB-OHの製造に際し、前述のモノマーA 対して所定量の重合開始剤Bの存在下で重合 させる際、該重合方法としては公知の方法、 例えば溶液重合、分散重合、沈殿重合、及び 塊状重合等が挙げられ、中でも溶液重合また は沈殿重合が好ましい。特に分子量制御の点 から、有機溶媒中での溶液重合によって反応 を実施することが好ましい。
 このとき用いられる有機溶媒としては、ベ ゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼ 、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶媒;n- キサン、n-ヘプタン、ミネラルスピリット シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭 水素系溶媒;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ メチル、メチレンジクロライド、クロロホ ム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パ クロロエチレン、オルトジクロロベンゼン のハロゲン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル 、メトキシブチルアセテート、メチルセロソ ルブアセテート、エチルセロソルブアセテー ト、プロピレングリコールモノメチルエーテ ルアセテート等のエステル系またはエステル エーテル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラ ドロフラン、1,4-ジオキサン、エチルセロソ ブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコ ルモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒; アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソ ブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン、シクロヘ キサノン等のケトン系溶媒;メタノール、エ ノール、n-プロパノール、イソプロパノール 、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタ ール、2-エチルヘキシルアルコール、ベンジ ルアルコール等のアルコール系溶媒;N,N’-ジ チルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトア ミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシ 等のスルホキシド系溶媒、N-メチル-2-ピロリ ドン等の複素環式化合物系溶媒、ならびにこ れらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
 これらのうち好ましいのは、芳香族炭化水 系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒 エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコー 系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶 等である。

 中でも、大気圧下において90乃至200℃の 点を有する有機溶媒を用いることが好まし 、例えばトルエン、キシレン、オルトジク ロベンゼン、酢酸ブチル、1,4-ジオキサン、N ,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチル セトアミド、プロピレングリコールモノメ ルエーテル、プロピレングリコールモノメ ルエーテルアセテート等が特に好ましい有 溶媒として挙げられる。

 上記重合反応を有機溶媒の存在下で行う場 、重合反応物全体における有機溶媒の含量 、好ましくは1質量%~300質量%、さらに好まし くは10質量%~100質量%である。
 重合反応は常圧、加圧密閉下、または減圧 で行われ、常圧下で行うのが好ましい。

 重合反応は、前述の重合開始剤Bの10時間半 期温度より25℃以上高い温度で実施され、 り具体的には、前記モノマーA、前記重合開 剤B及び有機溶媒を含む溶液を、該重合開始 剤Bの10時間半減期温度より25℃以上高い温度 保たれた該有機溶媒中へ滴下することによ 、重合反応を行うことが好ましい。
 また、より好ましくは前記有機溶媒の還流 度で重合反応を実施することが好ましい。
 なお、重合反応の終了後、得られたH-DVB-OH 任意の方法で回収し、必要に応じて洗浄等 後処理を実施することができる。反応溶液 らH-DVB-OHを回収する方法としては、再沈殿等 の方法が挙げられる。

 このようにして得られるH-DVB-OHの重量平 分子量(以下Mwと略記)は、ゲル浸透クロマト ラフィーによるポリスチレン換算で好まし は1,000~2000,000、さらに好ましくは5,000~100,000 最も好ましくは10,000~50,000である。

 続いて、得られたH-DVB-OHを、(a)テレフタ 酸ジエステル構造を有する化合物もしくは のハロゲン化物誘導体、モノカルボン酸誘 体と反応させる工程、或いは、(b)フェニル ステル構造を有する化合物のハロゲン化物 導体と反応させた後に、フェニルエステル 造を有するボロン酸誘導体を反応させる工 を経て、エレクトロクロミック特性を発現 る部分を有する高分子化合物を製造する。

 上記(a)工程は、具体的には(i)塩基の存在下 、H-DVB-OHとテレフタル酸ジエステル構造を するハロゲン化物誘導体とを溶媒中で縮合 応させる方法、(ii)酸触媒存在下、H-DVB-OHと レフタル酸ジエステル構造を有する化合物 モノカルボン酸誘導体とを溶媒中で縮合さ る方法がある。

 上記の(i)テレフタル酸ジエステル構造を有 るハロゲン化物誘導体とは、例えばメチル- 4-(クロロカルボニル)ベンゾエート、エチル-4 -(クロロカルボニル)ベンゾエート、プロピル -4-(クロロカルボニル)ベンゾエート、ブチル- 4-(クロロカルボニル)ベンゾエート、ペンチ -4-(クロロカルボニル)ベンゾエート、ヘキシ ル-4-(クロロカルボニル)ベンゾエート、メチ -4-(ブロモカルボニル)ベンゾエート、エチ -4-(ブロモカルボニル)ベンゾエート、プロピ ル-4-(ブロモカルボニル)ベンゾエート、ブチ -4-(ブロモカルボニル)ベンゾエート、ペン ル-4-(ブロモカルボニル)ベンゾエート、ヘキ シル-4-(ブロモカルボニル)ベンゾエート、メ ル-4-(ヨードカルボニル)ベンゾエート、エ ル-4-(ヨードカルボニル)ベンゾエート、プロ ピル-4-(ヨードカルボニル)ベンゾエート、ブ ル-4-(ヨードカルボニル)ベンゾエート、ペ チル-4-(ヨードカルボニル)ベンゾエート、ヘ キシル-4-(ヨードカルボニル)ベンゾエート等 挙げられる。
 また、この工程で用いる塩基としては、N,N -ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)、トリエチ ルアミン(TEA)、或いはジアザビシクロウンデ ン(DBU)等が挙げられる。
 また、反応に用いられる溶媒としては、ジ チルスルホキシド(DMF)、テトラヒドロフラ (THF)、トルエン酢酸エチル、或いはこれらの 混合溶媒を用いることができる。
 反応は通常、室温~150℃の反応温度で、10分~ 48時間の反応時間で実施する。
 得られた化合物は任意の方法で、例えば再 殿等の方法により回収し、必要に応じて洗 等の後処理を実施する。

 上記の(ii)テレフタル酸ジエステル構造を有 する化合物、モノカルボン酸誘導体としては 、メチル-4-(ヒドロキシカルボニル)ベンゾエ ト、エチル-4-(ヒドロキシカルボニル)ベン エート、プロピル-4-(ヒドロキシカルボニル) ベンゾエート、ブチル-4-(ヒドロキシカルボ ル)ベンゾエート、ペンチル-4-(ヒドロキシカ ルボニル)ベンゾエート、ヘキシル-4-(ヒドロ シカルボニル)ベンゾエート、1,4-ジメトキ カルボニルベンゼン、1,4-ジエトキシカルボ ルベンゼン、1,4-ジプロポキシカルボニルベ ンゼン、1,4-ジブトキシカルボニルベンゼン 1,4-ジペンチルオキシカルボニルベンゼン、1 ,4-ジヘキシルオキシカルボニルベンゼン等が 挙げられる。
 またこの工程で用いられる酸触媒としては 塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、p-トルエンス ホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ タンスルホン酸、四塩化チタン、テトラメ キシチタン、テトラエトキシチタン、テト プロポキシチタン、テトラブトキシチタン が挙げられる。
 またこの工程で用いる溶媒としては、前記( i)工程で用いたものを使用できる。この反応 通常、室温~150℃の反応温度で、10分~48時間 反応時間で実施する。
 得られた化合物は任意の方法で、例えば再 殿等の方法により回収し、必要に応じて洗 等の後処理を実施する。

 上記(b)工程は、塩基又は酸触媒の存在下、 媒中で、H-DVB-OHとフェニルエステル構造を するハロゲン化物誘導体とを反応させ、ハ ゲン化アリール中間体を得る。
 ここで使用されるフェニルエステル構造を するハロゲン化物誘導体としては、例えば4 -ヨードベンゾイルクロリド、4-クロロベンゾ イルクロリド、4-ブロモベンゾイルクロリド 4-ヨードベンゾイルブロミド、4-クロロベン ゾイルブロミド、4-ブロモベンゾイルブロミ ,4-ヨードベンゾイルヨーダイド、4-クロロ ンゾイルヨーダイド、4-ブロモベンゾイルヨ ーダイド、4-クロロ安息香酸、4-ブロモ安息 酸、4-ヨード安息香酸、4-クロロ安息香酸メ ル、4-ブロモ安息香酸メチル、4-ヨード安息 香酸メチル、4-クロロ安息香酸エチル、4-ブ モ安息香酸エチル、4-ヨード安息香酸メチル 等が挙げられる。
 またこの工程で用いる塩基並びに溶媒とし は、前記(a)(i)工程で用いたものを使用でき 。この反応は通常、室温~150℃の反応温度で 、10分~48時間の反応時間で実施し、得られた 間体を再沈殿等の任意の方法で回収、精製 る。

 上記ハロゲン化アリール中間体を、続いて パラジウム触媒と塩基の存在下で、フェニ エステル構造を有するボロン酸誘導体とク スカップリング反応させる(鈴木カップリン グ反応)。
 ここで使用されるフェニルエステル構造を するボロン酸誘導体としては、例えば4-メ キシカルボニルフェニルボロン酸ピナコー エステル、4-メトキシカルボニルフェニルボ ロン酸エチレングリコールエステル、4-メト シカルボニルフェニルボロン酸、4-メトキ カルボニルフェニルボロン酸ジメチルエス ル、4-メトキシカルボニルフェニルボロン酸 ジエチルエステル、4-エトキシカルボニルフ ニルボロン酸ピナコールエステル、4-エト シカルボニルフェニルボロン酸エチレング コールエステル、4-エトキシカルボニルフェ ニルボロン酸、4-エトキシカルボニルフェニ ボロン酸ジメチルエステル、4-エトキシカ ボニルフェニルボロン酸ジエチルエステル が挙げられる。
 また、上記パラジウム触媒としては、テト キス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0 )(Pd(PPh 3 ) 4 )、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジ ウム(0)(Pd 2 (DBA) 3 )等が挙げられる。
 さらに、このクロスカップリング反応で使 される塩基としては、炭酸カリウム、炭酸 トリウム、炭酸リチウム、炭酸水素カリウ 、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム トリエチルアミン(TEA)、N,N’-ジメチル-4-ア ノピリジン(DMAP)、或いはジアザビシクロウ デセン(DBU)等が挙げられる。
 通常このクロスカップリング反応は、室温~ 150℃の反応温度で、1~48時間の反応時間で実 され、得られた化合物は再沈殿等の任意の 法で回収、精製することができる。

<ワニス及び薄膜構造体の製造方法>
 本発明のエレクトロクロミック材料を含有 る薄膜構造体を形成する具体的な方法とし は、まず、エレクトロクロミック材料を溶 に溶解又は分散してワニスの形態(膜形成材 料)とし、該ワニスを基板上にキャストコー 法、スピンコート法、ブレードコート法、 ィップコート法、ロールコート法、バーコ ト法、ダイコート法、インクジェット法、 刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等) 等によって塗布し、その後、ホットプレート 又はオーブン等で乾燥して成膜する。
 これらの塗布方法の中でもスピンコート法 好ましい。スピンコート法を用いる場合に 、単時間で塗布することができるために、 発性の高い溶液であっても利用でき、また 均一性の高い塗布を行うことができるとい 利点がある。

 上記ワニスの形態において使用する溶媒と ては、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジ チルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタ ール、プロパノール、水、テトラヒドロフ ン(THF)またはトリクロロメタン等が挙げら る。これら溶媒は単独で使用してもよく、2 類以上の溶媒を混合してもよい
 また上記溶媒に溶解又は分散させる濃度は 意であるが、エレクトロクロミック材料と 媒の総質量(合計質量)に対して、エレクト クロミック材料の濃度は0.001乃至90質量%であ り、好ましくは0.002乃至80質量%であり、より ましくは0.005乃至70質量%である。
 形成された本発明のエレクトロクロミック 料からなる層の厚さは、通常0.01μm乃至50μm 好ましくは0.1μm乃至20μmである。
 また、必要であれば、本発明のエレクトロ ロミック材料に加えて、さらに発色を助長 る化合物を併用して膜又は層を形成しても い。

<エレクロトクロミック素子の製造方法>
 本発明のエレクトロクロミック素子は、少 くとも1枚は透明な2枚の導電基板と、これ 基板間の挿設されたイオン導電性物質層と このイオン伝導性物質層と前記いずれかの 電基板との間に挿設された、エレクトロク ミック発色層より構成される。前記エレク ロクロミック発色層は、本発明のエレクト クロミック材料を含有することを特徴とす 。本発明のエレクトロクロミック素子の代 的な構成例を図1に示す。

 図1に示すように、本発明のエレクトロクロ ミック素子は、一例として、透明基板1の一 の面に透明電極層2が形成された透明導電基 の面上に、エレクトロクロミック発色層3を 形成した第一の積層体と、透明基板6の一方 面に透明電極層5が形成された第二の積層体( 透明導電基板)とを、第一の積層体のエレク ロクロミック発色層3と、第二の積層体の透 電極層5が向き合うように適当な間隔で対向 させ、ここにイオン導電性物質を有するイオ ン導電性物質層4を挟持させてなる。
 そして上記素子は、電極間に電圧を印加す ことによりエレクトロクロミック現象を生 させ、発色・消色を起こすことができる。 圧印加手段としては公知のものを利用する とができる。

 本発明のエレクトロクロミック素子を構成 る各膜および層の形成方法としては、特に 定されるものではなく、膜及び層を形成す 慣用の方法によって作製可能である。
 例えば図2に示すように、透明基板1の一方 面に透明電極層2が形成された透明導電基板 してITO付きガラス基板を採用し、該基板上 例えば前述の<薄膜構造体の製造方法> 例示した方法でエレクトロクロミック材料 含有するエレクトロクロミック発色層3を形 し、第一の積層体(積層板A)を作製する。な 、該ITO付きガラス基板は、前記第二の積層 (積層板B)でもある。
 この積層板Aのエレクトロクロミック発色層 3と、積層板Bの透明電極層5を1乃至1000μm程度 間隔で対向させ、注入口を除いた周辺をシ ル材7でシールし、注入口付きの空セルを作 製する。この注入口より、液状のイオン導電 性物質を注入し、注入口を適宜封止すること により、イオン導電性物質層4を形成し、エ クトロクロミック素子を完成させる。
 あるいは、前記積層板Aの発色層3(又は積層 Bの電極層5)上に液状のイオン導電性物質を 下し、滴下したイオン導電性物質に積層板B の電極層5(又は積層板Aの発色層3)が接するよ に積層板B(又は積層板A)を重ね、周辺をシー ルすることによってエレクトロクロミック素 子を完成させる。

 本発明のエレクトロクロミック素子のイオ 導電性物質層4に用いるイオン導電性物質と は、通常室温で1×10 -7 S/cm以上のイオン伝導度を示す物質であるこ が好ましい。イオン導電性物質としては特 限定されず、液状イオン導電性物質、ゲル イオン導電性物質或いは固体状イオン導電 物質等を挙げることができる。
 このなかでも、例えば液状のものとして、 媒に塩類、酸類、アルカリ類等の支持電解 を溶解したもの等を用いることができる。 記溶媒としては、支持電解質を溶解できる のであれば特に限定されないが、特に極性 するものが好ましい。具体的には水や、メ ノール、エタノール、プロピレンカーボネ ト、エチレンカーボネート、ジメチルスル キシド、ジメトキシエタン、アセトニトリ 、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、 -バレロラクトン、スルホラン、N,N’-ジメチ ルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラ ヒドロフラン、プロピオンニトリル、グルタ ロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセ トニトリル、N,N’-ジメチルアセトアミド、 チルピロリジノン、ジオキソラン、トリメ ルホスフェイト、ポリエチレングリコール の有機極性溶媒が挙げられる。これらは、 用に際して単独もしくは混合物として使用 きる。
 支持電解質としての塩類は、特に限定され 、各種のアルカリ金属塩、アルカリ土類金 塩などの無機イオン塩や4級アンモニウム塩 や環状4級アンモニウム塩などがあげられ、 体的にはLiClO 4 、LiSCN,LiBF 4 、LiAsF 6 、LiCF 3 SO 3 、LiPF 6 、LiI、NaI、NaSCN、NaClO 4 、NaBF 4 、NaAsF 6 、KSCN,KCl等のLi、Na、Kのアルカリ金属塩等や (CH 3 ) 4 NBF 4 、(C 2 H 5 ) 4 NBF 4 、(n-C 4 H 9 ) 4 NBF 4 、(C 2 H 5 ) 4 NBr、(n-C 4 H 9 ) 4 NBr、(C 2 H 5 ) 4 NClO 4 、(n-C 4 H 9 ) 4 NClO 4 等の4級アンモニウム塩および環状4級アンモ ウム塩等、もしくはこれらの混合物が好適 ものとして挙げられる。

 また本発明のエレクトロクロミック素子 おいて、前記積層板Aと積層板Bとの間隔を 定間隔に確保するためにスペーサーを用い ことができる。スペーサーとしては特に限 されないが、ガラス、ポリマー等で構成さ るビーズ、ファイバーまたはシートを用い ことができる。スペーサーは対向する導電 板の間隙に挿入したり、あるいは、導電基 の電極上に樹脂等の絶縁物で構成される突 状物を形成する方法等により設けることが きる。

 本発明のエレクトロクロミック素子は、上 の構成や製造方法に何等限定されるもので なく、更に他の構造又は要素を備えていて よい。
 他の構造又は要素としては、例えば、紫外 反射層や紫外線吸収層などの紫外線カット 、エレクトロクロミックミラー向け用途の 合にはミラー層全体、もしくは各膜層の表 保護を目的とするオーバーコート層等を挙 ることができる。

 以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具 的に説明するが、これら実施例は本発明を 等制限するものではない。

 以下の合成例及び実施例で用いた試薬の入 先及び測定装置は以下のとおりである。
[試薬]
・4,4’-ビピリジル(>98.0%) 東京化成工業(株 )
・トリエチレングリコールモノメチルエーテ ル(>98.0%) 東京化成工業(株)
・エチレングリコールモノイソプロピルエー テル(>99.0%) 東京化成工業(株)
・p-トルエンスルホン酸クロリド(>97.0%) 和 光純薬工業(株)
・HBPS-Br(ハイパーブランチポリ(ビニル-4-ベン ジルブロミド)) 日産化学工業(株)
・4-ヘキシルアニリン(>98.0%) 和光純薬工業 (株)
・ジビニルベンゼン(DVB) 新日鐵化学(株)(DVB-9 60)
・2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエ ル)プロピオンアミド] 大塚化学(株)(VA-086、1 0時間半減期温度:86℃)
・4-ヨードベンゾイルクロリド アルドリッ 社
・4-メトキシカルボニルフェニルボロン酸ピ コールエステル アルドリッチ社
・メチル-4-(クロロカルボニル)ベンゾエート 東京化成工業(株)

[測定装置]
(1)分光光度計:
 (株)日立ハイテクノロジーズ 日立分光光度 計U-4100
(2) 1 H NMRスペクトル(合成例1~5、合成例7~10):
 ブルカー社 AVANCE400(400MHz)
(3) 1 H NMRスペクトル、 13 C NMRスペクトル(合成例11~12)
 日本電子データム(株) JNM-ECA700
 溶媒:CDCl 3 又はDMSO
 内部標準:テトラメチルシラン
(4)光源:
 浜松ホトニクス(株) キセノンランプ E7536
(5)光学フィルタ:
 東芝硝子(株)(現:旭テクノガラス(株))
(6)検出器:
 オプトシリウス(株) Ocean Optics USB4000
(7)ポテンシオスタット:
 (有)日厚計測 ポテンシオスタット NPGS-301
(8)ファンクションジェネレータ:
 (株)エヌエフ回路設計ブロック ファンクシ ョンジェネレータ FG-121B
(9)スピンコーター:
 (有)共和理研 K-359SD-2 SPINNER
(10)レーザー顕微鏡
 (株)キーエンス 超深度形状測定顕微鏡 VK-8 510
(11)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
 東ソー(株) HLC-8220 GPC
 カラム:Shodex(登録商標) KF-804L、KF-805L
 カラム温度:40℃
 溶媒:テトラヒドロフラン
 検出器:RI

[1]合成例1:HBPS-EC8(OTs - 、Br - )の合成

<2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル p-トシレートの合成>
 反応器にTHF 50mL、水 50mLに溶解させたNaOH 3 .185g、トリエチレングリコールモノメチルエ テル 10.00g(61mmol)を加え、0℃で撹拌した。
 40mLのTHFに溶解させたp-トシルクロリド 12.85 g(67mmol)を反応器にゆっくり滴下し、滴下後、 室温に戻して終夜撹拌した。希硫酸で溶液を 酸性にした後、ジクロロメタンで抽出し、飽 和食塩水で3回洗浄後、有機相を硫酸マグネ ウムで乾燥、ろ過した。ろ液を濃縮、シリ ゲルカラム(溶媒 ヘキサンのみ→ヘキサン: ロロホルム=4:1)で精製して無色の液体2-[2-(2- メトキシエトキシ)エトキシ]エチル p-トシレ ート 14.35g(41mmol)を得た(収率:67%)。

<{1-[2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチ ル]-4,4’-ビピリジニウム}p-トシレートの合成 >
 窒素雰囲気下、反応器に4,4’-ビピリジル 7 88mg(5.05mmol)、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキ ]エチル p-トシレート 2.20g(6.20mmol)、アセト ニトリル 50mLを加え、室温で1時間撹拌し、 けて60℃で終夜還流した。
 室温に戻した後、溶媒を留去し、シリカゲ カラム(溶媒 メタノール:アセトン=4:6)で精 して黄色の液体{1-[2-(2-(2-メトキシエトキシ) エトキシ)エチル]4,4’-ビピリジニウム}p-トシ レート 1.396mg(2.73mmol)を得た(収率:54%)。

<HBPS-EC-8(OTs - 、Br - )の合成>
 窒素雰囲気下、反応器にHBPS-Br 234mg(1.18mmol ニット)、{1-[2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキ シ)エチル]4,4’-ビピリジニウム}p-トシレート  733mg(1.43mmol)、N,N’-ジメチルホルムアミド 5 0mLを加え、室温で30分間撹拌後、続けて60℃ 終夜還流した。
 室温に戻した後、溶媒を留去し、テトラヒ ロフランで洗浄して、黄色の固体HBPS-EC-8(OTs - 、Br - )を得た。EC基の導入率は 1 H NMR測定より85%であった。

[2]合成例2:HBPS-EC-10(OTs - 、Br - )の合成

<2-メトキシエチル p-トシレートの合成>
 反応器にTHF 60mL、1.5M NaOH水溶液 100mL、2-メ トキシエタノール 7.66g(100mmol)を加え、0℃で 拌した。40mLのTHFに溶解させたp-トシルクロ ド 21.264g(110mmol、1.1eq)を反応器にゆっくり 下し、滴下後、室温に戻して終夜撹拌した 希硫酸で溶液を酸性にした後、酢酸エチル 抽出し、飽和食塩水で3回洗浄後、有機相を 酸マグネシウムで乾燥、ろ過した。ろ液を 縮、シリカゲルカラム(溶媒 ヘキサン:酢酸 エチル=4.1)で精製して無色の液体である2-メ キシエチル p-トシレート 12.618g(54.8mmol)を得 た(収率:55%)。

<1-(2-メトキシエチル)-[4,4’]ビピリジニル-1 -イウム p-トシレートの合成>
 窒素雰囲気下、反応器に4,4’-ビピリジル 7 81mg(5.00mmol)、2-メトキシエチル p-トシレート 1.725g(7.50mmol、1.5eq)、N,N’-ジメチルホルムア ド 50mLを加え、室温で30分間撹拌後、続け 60℃で終夜還流した。
 室温に戻した後、溶媒を留去し、シリカゲ カラム(溶媒 メタノール:アセトン=4:6)で精 して黄色の液体1-(2-メトキシエチル)-[4,4’] ピリジニル-1-イウム p-トシレート914mg(2.36mm ol)を得た(収率:47%)。

<HBPS-EC-10(OTs - 、Br - )の合成>
 窒素雰囲気下、反応器にHBPS-Br 202mg(1.01mmol ニット)、1-(2-メトキシエチル)-[4,4’]ビピリ ニル-1-イウム p-トシレート 467mg(1.20mmol、1. 2eq)、N,N’-ジメチルホルムアミド 50mLを加え 室温で20分間撹拌後、続けて60℃で終夜還流 した。
 室温に戻した後、溶媒を留去し、アセトン 洗浄して黄色の固体HBPS-EC-10(OTs - 、Br - )を得た。EC基の導入率は 1 H NMR測定より91%であった。

[3]合成例3:HBPS-EC-15(OTs - 、Br - )の合成

<2-イソプロポキシエチル p-トシレートの 成>
 反応器にTHF 70mL、2.6M NaOH水溶液 50mL、2-(1- チルエトキシ)エタノール 10.468g(101mmol)を加 え、0℃で撹拌した。
 70mLのTHFに溶解させたp-トシルクロリド 20.82 5g(109mmol、1.1eq)を反応器にゆっくり滴下し、 下後、室温に戻して終夜撹拌した。希硫酸 溶液を酸性にした後、ジエチルエーテルで 出し、飽和食塩水で3回洗浄後、有機相を硫 マグネシウムで乾燥、ろ過した。ろ液を濃 、シリカゲルカラム(溶媒 ヘキサン→クロ ホルム)で精製して無色の液体2-イソプロポ シエチル p-トシレート 16.059g(62.2mmol)を得 (収率:62%)。

<1-(2-イソプロポキシエチル)-[4,4’]ビピリ ニル-1-イウム p-トシレートの合成>
 窒素雰囲気下、反応器に4,4’-ビピリジル 1 .594g(10.2mmol)、2-イソプロポキシエチル p-トシ レート 3.988g(15.4mmol)、N,N’-ジメチルホルム ミド 60mLを加え、室温で30分間撹拌後、続け て60℃で終夜還流した。
 室温に戻した後、溶媒を留去し、シリカゲ カラム(溶媒 アセトン→メタノール:アセト ン=1:1)で精製して粘性の高い黄色の液体1-(2- ソプロポキシエチル)-[4,4’]ビピリジニル-1- ウム p-トシレート 2.132g(5.14mmol)を得た(収 :51%)。

<HBPS-EC-15(OTs - 、Br - )の合成>
 窒素雰囲気下、反応器にHBPS-Br 196mg(0.984mmol ニット)、1-(2-イソプロポキシエチル)-[4,4’] ビピリジニル-1-イウム p-トシレート 619mg(1.4 9mmol、1.5eq)、クロロホルム 80mLを加え、室温 30分間撹拌後、続けて60℃で終夜還流した。
 室温に戻した後、溶媒を留去し、アセトン 洗浄して黄色固体のHBPS-EC-15(OTs - 、Br - )459mgを得た。EC基の導入率は 1 H NMR測定より85%であった。

[4]合成例4:HBPS-EC-13(I - 、Br - )の合成

<2-ヘキシル-1-ヨードデカンの合成>
 反応器に2-ヘキシル-1-クロロデカン 2.682g(10 .3mmol)、ヨウ化ナトリウム 7.483g(49.9mmol、4.8eq) 、アセトン 100mLを加え、60℃で終夜還流した 。室温に戻してアセトンを留去し、酢酸エチ ルで抽出後、飽和食塩水で3回洗浄した。有 相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し 濃縮、真空乾燥させ、深赤色の液体2-ヘキシ ル-1-ヨードデカン 3.075g(8.73mmol)を得た(粗収 :85%)。

<[1-(2-ヘキシルデシル)-4,4’-ビピリジニウ ]ブロミドの合成>
 窒素雰囲気下、反応器に4,4’-ビピリジル 4 99mg(3.19mmol)、2-ヘキシル-1-ヨードデカン 1.496g (4.25mmol、1.3eq)、N,N’-ジメチルホルムアミド  10mL、アセトニトチル 40mLを加え、30分間室温 で撹拌し、続けて60℃で2日間還流した。室温 に戻した後、溶媒を留去した。残渣を少量の THFに溶解してヘキサンで再沈殿、減圧ろ過を 2回繰り返すことで、黄色の固体[1-(2-ヘキシ デシル)-4,4’-ビピリジニウム]ブロミド 61mg( 120μmol)を得た(収率:4%)。

<HBPS-EC-13(I - 、Br - )の合成>
 アルゴン雰囲気下、反応器にHBPS-Br 23mg(120μ molユニット)、[1-(2-ヘキシルデシル)-4,4’-ビ リジニウム]ブロミド 61mg(120μmol、1.2eq)、ク ロホルム 50mLを加え、30分間室温で撹拌し 続けて60℃で終夜還流した。室温に戻した後 、飽和食塩水で3回洗浄し、有機相を硫酸マ ネシウムで乾燥させた後、ろ過、濃縮、真 乾燥させることで、赤褐色の固体HBPS-EC-13(I - 、Br - )得た。EC基の導入率は 1 H NMR測定より42%であった。

[5]合成例5:HBPS-EC-2(Br - 、I - )の合成
<HBPS-EC-2(Br - 、I - )の合成>

 上記スキームに従って、前述の製造手順に ってHBPS-EC-2(Br - 、I - )を製造した。
 得られたHBPS-EC-2(Br - 、I - )は室温に戻したところ、溶媒(DMF)中で不溶化 した。

[6]合成例6:HBPS-EC-3(2Br - )の合成

 上記スキームに従って、前述の製造手順に ってHBPS-EC-3(2Br - )を製造した。
 得られたHBPS-EC-3(2Br - )は室温に戻したところ、溶媒(DMF)に難溶であ った。

[実施例1:エレクトロクロミック評価]
 前記合成例3で製造したHBPS-EC-15(OTs - 、Br - )(以降、単にHBPS-EC-15とも称する)を用いて下 方法にて図2に示す構成にてエレクトロクロ ック(EC)セルを作製し、評価した。

[成膜方法]
<膜厚300nmのHBPS-EC-15の薄膜作製>
 5質量%のHBPS-EC-15 メタノール溶液を調製し ITOガラス基板(2.0cm×1.5cm)上にスピンコート法 (2,000rpm、1分間)によってエレクトロクロミッ (EC)発色層を成膜し、100℃で24時間真空乾燥 た。レーザー顕微鏡にて膜厚を算出した(300 nm)。
<膜厚500nmのHBPS-EC-15の薄膜作製>
 10質量%のEBPS-EC-15 メタノール溶液を調製し ITOガラス基板(2.0cm×1.5cm)上にスピンコート (2,000rpm、3分間)によってEC発色層を成膜し、1 00℃で24時間真空乾燥した。レーザー顕微鏡 て膜厚を算出した(500nm)。

[ECセル作製方法]
 1時間アルゴンバブリングにより脱気した0.1 Mテトラブチルアンモニウムブロミド シクロ ヘキサノン溶液 1μLを、マイクロピペッター を用いて前述のHBPS-EC-15の各薄膜上に滴下し この上にITOガラス基板を重ね合わせ、パラ ィルムでシールすることにより、エレクト クロミック(EC)セルを作製した。

[ECセル評価法]
 製造したECセル(色変化部分は1.5cm×1.5cm)に、 乾電池2個を用いて電圧3.2Vを印加し、530nmに ける透過率、又は、400nm乃至800nmの吸光度変 を測定した。
 光源はキセノンランプ(光学フィルターを用 いて400nm以下の波長をカット)を使用し、Ocean Optics USB4000を用いて検出した。正・負極の り替えは、乾電池にスイッチを取り付けて 動で行った。

1)ECセルの着色・消色時間評価(応答速度、図3 )
 HBPS-EC-15層の膜厚が300nmのECセルを用い、HBPS- EC-15薄膜を成膜したITOガラス基板を負極、対 するITOガラス基板を正極として電圧3.2Vを印 加したところ、即座に着色(紫色)が観測され 。このとき、着色にかかった時間は<1.4秒 であった。
 更に、HBPS-EC-15薄膜を成膜したITOガラス基板 側に正極、対向するITOガラス基板側に負極の 反転した電圧3.2Vを印加すると、着色は即座 消去された。このとき、消色にかかった時 は<1.0秒であった。
 すなわち、本セルが着色(<1.4秒)・消色(< ;1.0秒)共に非常に優れた応答速度を有してい ことが確認された。
 なお、波長530nmにおいて、本ECセルの透明時 の透過率は0.72、紫色呈色時の透過率は0.5で った。

2)ECセルの繰り返し特性評価(図4)
 前記<1)ECセルの着色・消色時間評価>で 用したセルを用いて、5秒毎に着消色(正負 電圧印加)を繰り返した。着色・消色を10回 上(200秒間)行なっても消え残りなどが発生す ることはなく、本セルが繰り返し特性にも優 れることが確認された。

3)ECセルの着色持続時間評価(メモリー特性、 5)
 前記<1)ECセルの着色・消色時間評価>で 用したセルを用い、セルに電圧を印加して 色化した後、回路を切断して電圧を除去し ところ、切断後も20秒間着色状態を維持し 。
 その後、正負を反転して電圧を印加したと ろ即座に消色され、また、消え残りも生じ ことはなかった。すなわち、本セルが少な とも20秒以上の着色状態のメモリー特性を し、逆電圧印加により自在に消色可能であ ことが確認された。

4)ECセルの吸光度の変化量(図6、図7)
 HBPS-EC-15層の膜厚が300nm又は500nmのECセルを用 い、電圧印加前、電圧印加2秒後の吸光度変 (400nm乃至800nm)を測定し、印加前後の吸光度 変化量を算出した。図6に膜厚500nmのECセルを 用いた際の電圧印加前、印加後及び変化量の 吸光度を、また、図7に膜厚300nm及び膜厚500nm れぞれの印加前後の吸光度変化量を示した
 HBPS-EC-15層の膜厚300nm及び500nmのいずれのECセ ルも、520~530nm波長付近に吸収極大が見られ、 このときの吸光度(変化量)は、ぞれぞれ、0.2( 膜厚:300nm)、0.5(膜厚:500nm)であった。この結果 は、本セルが紫色に着色していること、そし て膜厚500nmのECセルの着色がより濃いもので ることを示すものであった。なお、EC層膜厚 と吸光度(変化量)の結果は、試料の局所的不 一性などのために必ずしも比例関係にある けではない。
 そしてこの520~530nm波長付近の吸収は、ビオ ゲンのラジカルカチオンダイマー由来の吸 であるとみられ、この結果は、HBPS-EC-15の末 端に位置するビピリジニウム基が容易にラジ カルカチオンダイマーを形成することを示唆 するものであった。

[合成例7~10:EC基の導入量を種々変化させたHBPS -EC-15(OTs - 、Br - )の合成]

[7]合成例7:HBPS-EC-15(10%)(OTs - 、Br - )の合成
 窒素雰囲気下、反応器にHBPS-Br 985mg(5mmolユ ット)、前記合成例3の手順に従い得られた1-( 2-イソプロポキシエチル)-[4,4’]ビピリジニル -1-イウム p-トシレート 207mg(0.5mmol)及びDMF 50 mlを加え、60℃で24時間撹拌した。溶媒を濃縮 し、反応液をDMF 10ml及びメタノール 5mlに溶 した後、酢酸エチル 200mlで再沈殿させた。 沈殿物をろ過、乾燥して、黄色固体980mg(収率 82%)を得た。EC基の導入率は 1 H NMR測定により17%であった。
 上記黄色固体 980mgに、N-メチルイミダゾー  1.1ml(13.5mmol)及びDMF 50mlを加え、60℃で24時 撹拌した。溶媒を濃縮し、反応液をDMF 5ml びメタノール 5mlに溶解し、酢酸エチル 200m lで再沈殿させた。沈殿物をろ過、乾燥して 褐色固体のHBPS-EC-15(10%)(OTs - 、Br - )636mgを得た。

[8]合成例8:HBPS-EC-15(20%)(OTs - 、Br - )の合成
 窒素雰囲気下、反応器にHBPS-Br 985mg(5mmolユ ット)、前記合成例3の手順に従い得られた1-( 2-イソプロポキシエチル)-[4,4’]ビピリジニル -1-イウム p-トシレート 415mg(1mmol)及びDMF 50ml を加え、60℃で36時間撹拌した。溶媒を濃縮 、反応液をDMF 10ml及びメタノール 5mlに溶解 した後、酢酸エチル 200mlで再沈殿させた。 殿物をろ過、乾燥して、黄色固体1.3g(収率100 %)を得た。EC基の導入率は 1 H NMR測定により24%であった。
 上記黄色固体 1gに、N-メチルイミダゾール 0.8ml(10mmol)及びDMF 70mlを加え、60℃で24時間撹 拌した。溶媒を濃縮し、反応液をDMF 5mlに溶 し、酢酸エチル 200mlで再沈殿させた。沈殿 物をろ過、乾燥して、褐色固体のHBPS-EC-15(20%) (OTs - 、Br - )600mgを得た。

[9]合成例9:HBPS-EC-15(50%)(OTs - 、Br - )の合成
 窒素雰囲気下、反応器にHBPS-Br 1.182g(6mmolユ ット)、前記合成例3の手順に従い得られた1- (2-イソプロポキシエチル)-[4,4’]ビピリジニ -1-イウム p-トシレート 1.244g(3mmol)及びDMF 60 mlを加え、60℃で36時間撹拌した。溶媒を濃縮 し、反応液をDMF 10mlに溶解し、酢酸エチル 5 00mlで再沈殿させた。沈殿物をろ過、乾燥し 、黄色固体2.34g(収率96%)を得た。
 上記黄色固体1gに、N-メチルイミダゾール 0 .8ml(10mmol)及びDMF 70mlを加え、60℃で24時間撹 した。溶媒を濃縮し、反応液をDMF 5mlに溶解 し、酢酸エチル 200mlで再沈殿させた。沈殿 をろ過、乾燥して、褐色固体のHBPS-EC-15(50%)(O Ts - 、Br - )705mgを得た。

[10]合成例10:HBPS-EC-15(80%)(OTs - 、Br - )の合成
 窒素雰囲気下、反応器にHBPS-Br 394mg(3mmolユ ット)、前記合成例3の手順に従い得られた1-( 2-イソプロポキシエチル)-[4,4’]ビピリジニル -1-イウム p-トシレート 995mg(2.4mmol)及びDMF 30 mlを加え、60℃で24時間撹拌した。溶媒を濃縮 し、反応液をDMF 5mlに溶解し、酢酸エチル 20 0mlで再沈殿させた。沈殿物をろ過、乾燥して 、黄色固体1.06g(収率76%)を得た。
 上記黄色固体 1.06gに、N-メチルイミダゾー  0.8ml(10mmol)及びDMF 70mlを加え、60℃で24時間 撹拌した。溶媒を濃縮し、反応液をDMF 5mlに 解し、酢酸エチル 200mlで再沈殿させた。沈 殿物をろ過、乾燥して、褐色固体のHBPS-EC-15(8 0%)(OTs - 、Br - )880mgを得た。

[11]合成例11:HBPS-EC-15(100%)(OTs - 、Br - )の合成
 窒素雰囲気下、反応器にHBPS-Br 196mg(0.98mmol ニット)、前記合成例3の手順に従い得られた 1-(2-イソプロポキシエチル)-[4,4’]ビピリジニ ル-1-イウム p-トシレート 743mg(1.77mmol)及びク ロロホルム 80mlを加え、室温で30分間撹拌後 60℃で24時間撹拌した。溶媒を濃縮し、アセ トンで洗浄して、黄色固体のHBPS-EC-15(100%)(OTs - 、Br - )548mg(収率90%)を得た。

[実施例2:EC基の導入量制御によるエレクトロ ロミック特性の評価]
 合成例7乃至合成例11で製造した、EC基の導 率を変化させた各HBPS-EC-15を用い、下記方法 てエレクトロクロミック薄膜を作製し、そ エレクトロクロミック特性のEC基導入量率 存性について評価を行った。

[成膜方法]
 10質量%のHBPS-EC-15(OTs - 、Br - )/DMF溶液を夫々調製し、ITOガラス基板(1.0cm×2. 0cm)上にスピンコート法(600rpmで10秒間、続い 2,500rpmで20秒間)によって、エレクトロクロミ ック(EC)発色層を成膜し、室温で12時間真空乾 燥させEC薄膜とした。

[EC薄膜評価方法]
 製造したEC薄膜にポテンシオスタットを接 し、作用電極にEC薄膜を成膜したITOガラス、 対極に白金電極、参照極にAg/Ag + 電極を用いた3電極系で測定した。電圧を-0.2V から-1.0V間で変化させ、330nmから1050nm間の透 率を測定した。
 なお測定にはオーシャンオプティクス製HR-4 000を用いた。

[EC薄膜の透過率の変化]
 EC基導入量が100%のHBPS-EC-15(OTs - 、Br - )試料で作製したEC薄膜を用い、印加電圧-0.2V 15秒保持した後の透過率と、印加電圧-1.0Vで 15秒保持した後の透過率を測定した結果を図8 に示す。
 図8に示す通り、印加電圧を-1.0Vとしたとき 波長520nm乃至530nm付近に透過率の極小が見ら れた。
 また、図9にEC基導入量を種々変化させたHBPS -EC-15(OTs - 、Br - )試料で作製したEC薄膜の印加電圧-1.0Vにおけ 透過率を示す。
 図9に示す通り、EC基の導入量が50%乃至100%の 試料において、波長520nm乃至530nm付近に透過 の極小が見られ、このときの透過率は其々 94%(EC基導入量50%)、84%(EC基導入量80%)、77%(EC基 導入量100%)であった。尚、EC基導入量10%乃至20 %の試料においては透過率の変化は殆ど見ら なかった。
 この結果は、本EC薄膜が紫色に着色してい こと、そしてEC基導入量が多いものほど着色 がより濃いものであることを示すものであっ た。

[12]合成例12:H-DVB-EC(Y)の合成

<高分岐ポリマー(H-DVB-OH)の合成>
 500mLの反応フラスコにN,N’-ジメチルアセト ミド(DMAc)174gを仕込み、攪拌しながら5分間 素を流し込んで窒素置換し、フラスコ内温 が120℃になるまで加熱した。
 別の200mLの反応フラスコに、DVB 6.51g(50mmol) 2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチ )プロピオンアミド] 14.4g(50mmol)及びDMAc 230g 仕込み、攪拌しながら5分間窒素を流し込み 窒素置換を行った。
 前述の500mL反応フラスコ中の120℃に加熱さ ているDMAc中に、DVB及び2,2’-アゾビス[2-メチ ル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド] 仕込まれた前記200mLの反応フラスコから、 下ポンプを用いて、70分間かけて内容物を滴 下した。滴下終了後、さらに30分間撹拌した
 次に、この反応液を、ロータリーエバポレ ターを用いてDMAcを留去し、濃縮操作を行っ た。その後、THF 585gを添加してポリマーをス ラリー状にて沈降させ、デカンテーションに より分取した。再度、このスラリーをメタノ ール 40gに溶解させ、THF 585g中にポリマーを 殿させた。沈殿物をろ過により分取し、真 乾燥にて乾燥後、白色粉末の目的物8.1gを得 た。得られた目的物の 1 H NMRスペクトルの測定結果を図10に示す。ゲ 浸透クロマトグラフィーによるポリスチレ 換算で測定される重量平均分子量Mwは23,600 分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量) 1.22であった。

<H-DVB-Iの合成>
 300mLの反応フラスコにH-DVB-OH 3.0g(11.5mmol/OH基 ユニット)、N,N’-ジメチル-4-アミノピリジン 2.1g(17.2mmol)及びトリエチルアミン 2.3g(23.0mmol )を仕込み、DMF/THF=1/1(質量比)混合溶媒120mLを えて溶解し、氷浴下にて1時間撹拌した。反 溶液中に4-ヨードベンゾイルクロリド 4.6g(1 7.2mmol)を加え、徐々に室温まで昇温させ、20 間撹拌した。反応溶液から不溶物をろ過に り除去した後、濾液を濃縮し、メタノール  300mL中にポリマーを沈殿させた。ろ過により 殿物を分取し、真空乾燥にて乾燥後、白色 末の目的物5.0gを得た。得られた目的物の 1 H NMRおよび 13 C NMRスペクトルの測定結果を図11及び図12に す。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポ スチレン換算で測定される重量平均分子量Mw は24,600、分散度:Mw/Mnは1.23であった。

[H-DVB-EC(Y)の合成]
 100mLの反応フラスコにH-DVB-I 2.0g(4.07mmol/ヨウ 素基ユニット)及び4-メトキシカルボニルフェ ニルボロン酸ピナコールエステル 1.3g(4.88mmol )を仕込み、DMF 60mLを加えて溶解させた後、 酸カリウム 2.81g(20.4mmol)を添加した。次いで 、攪拌しながら5分間窒素を流し込んだ後、 トラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウ ム(0) 47mg(0.041mmol)を加え、90℃にて2時間撹拌 た。ろ過により不溶物を除去した後、ロー リーエバポレーターを用いて溶媒を留去し 。その後、メタノール 100mL中にポリマーを 沈殿させ、ろ過により沈殿物を分取し、真空 乾燥にて乾燥後、白色粉末の目的物1.9gを得 。得られた目的物の 1 H NMRスペクトルの測定結果を図13に示す。ゲ 浸透クロマトグラフィーによるポリスチレ 換算で測定される重量平均分子量Mwは26,000 分散度:Mw/Mnは2.14であった。

[13]合成例13:H-DVB-EC(M)の合成

 100mLの反応フラスコに合成例12で調製したH-D VB-OH 1.1g(4.0mmol/OH基ユニット)、N,N’-ジメチル -4-アミノピリジン 0.73g(6.0mmol)及びトリエチ アミン 0.82g(8.0mmol)を仕込み、DMF/THF=1/1(質量 )混合溶媒 42mLを加えて溶解させ、氷浴下に て1時間撹拌した。反応溶液中にメチル4-(ク ロカルボニル)ベンゾエート 1.2g(6.0mmol)を加 、徐々に室温まで昇温させ、20時間撹拌し 。反応溶液から不溶物をろ過により除去し 後、濾液を濃縮し、メタノール 150mLを加え ポリマーを沈殿させた。ろ過により沈殿物 分取し、真空乾燥にて乾燥後、白色粉末の 的物0.89gを得た。得られた目的物の 1 H NMRスペクトルの測定結果を図14に示す。ゲ 浸透クロマトグラフィーによるポリスチレ 換算で測定される重量平均分子量Mwは15,700 分散度:Mw/Mnは1.26であった。

[実施例3:エレクトロクロミック評価]
 前記合成例12で製造したH-DVB-EC(Y)を用いて、 図2に示す構成に準じてエレクトロクロミッ (EC)セルを作製し、評価した。

[製膜方法]
 H-DVB-EC(Y)の2質量%クロロホルム溶液をそれぞ れ調製し、ITOガラス基板(2.6cm×2.2cm)上にスピ コート法(2,000rpm、1分間)によってEC発色層を 成膜し、40℃で24時間乾燥した。レーザー顕 鏡にて膜厚を算出した(H-DVB-EC(Y):200nm、H-DVB-EC (M):200nm)。

[ECセル作製方法]
 室温にて炭酸プロピレン 10mLに過塩素酸リ ウム 2gを溶解した後、ポリメタクリル酸メ チル 10g及びアセトニトリル 30mLを加え、110 に加熱した。更にアセトニトリル 30mLを少 ずつ加えながら完全に溶解させ、電化輸送 ル電解質(CTゲル溶液)を作成した。
 CTゲル溶液を前述のH-DVB-EC(Y)の薄膜上にそれ ぞれ滴下し、その上にITOガラス基板を重ね合 わせ、40℃のホットプレート上で24時間乾燥 せて、エレクトロクロミック(EC)セルを作成 た。

[ECセル評価]
 製造したECセルに-3.5Vの電圧を印加し、300乃 至600nmの吸光度変化を測定した。
 光源はキセノンランプを用い、熱カットフ ルタとUVカットフィルタを通した光をOcean O ptics USB 4000で1分毎に検出した。

 H-DVB-EC(Y)を用いたECセルの吸光度変化を図15 示す。
 図15に示す通り、360nm付近に吸収極大が見ら れ、この結果は本ECセルが黄色に着色してい ことを示すものであった。

1・・・透明基板          6・・・透明 板
2・・・透明電極層         7・・・シー 材
3・・・エレクトロクロミック発色層 A・・ 積層板A(第一の積層体)
4・・・イオン導電性物質層     B・・・積 層板B(第二の積層体)
5・・・透明電極層