NAKAMURA KEIICHI (JP)
TAKABE HIDEKI (JP)
ABE TOSHIHARU (JP)
MORI TOMOKI (JP)
UEDA MASAKATSU (JP)
OHE TARO (JP)
NAKAMURA KEIICHI (JP)
TAKABE HIDEKI (JP)
ABE TOSHIHARU (JP)
MORI TOMOKI (JP)
UEDA MASAKATSU (JP)
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坑井内で拡管される拡管用油井管であって、 質量%で、C:0.05~0.08%、Si:0.50%以下、Mn:0.80~1.30%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Cr:0.08~0.50%、N:0.01%以下、Al:0.005~0.06%、Ti:0.05%以下、Cu:0.50%以下及びNi:0.50%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成と、 フェライト率が80%以上の組織とを備え、 276~379MPaの降伏強度と16%以上の一様伸びとを有することを特徴とする拡管用油井管。 |
請求項1に記載の拡管用油井管であって、 前記化学組成は、 前記Feの一部に替えて、Mo:0.10%以下、V:0.10%以下、Nb:0.040%以下、Ca:0.005%以下及び希土類元素:0.01%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする拡管用油井管。 |
請求項1又は請求項2に記載の拡管用油井管であって、18%以上の一様伸びを有することを特徴とする拡管用油井管。 |
請求項3に記載の拡管用油井管であって、 焼入れされた後、Ac1点以上の焼戻し温度で焼戻しされることを特徴とする拡管用油井管。 |
請求項1~4のいずれか1項に記載の拡管用油井管であってさらに、 0.7%以下の楕円率と、6.0%以下の偏肉率とを有することを特徴とする拡管用油井管。 |
請求項5に記載の拡管用油井管であって、 冷間加工された後、焼き入れ焼戻しされることを特徴とする拡管用油井管。 |
拡管用油井管の製造方法であって、 質量%で、C:0.05~0.08%、Si:0.50%以下、Mn:0.80~1.30%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Cr:0.08~0.50%、N:0.01%以下、Al:0.005~0.06%、Ti:0.05%以下、Cu:0.50%以下及びNi:0.50%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有する素管を製造する工程と、 前記製造された素管を焼入れ焼戻しして、フェライト率が80%以上の組織と、276~379MPaの強度と、16%以上の一様伸びとを有する拡管用油井管とする焼入れ焼戻し工程とを備えることを特徴とする拡管用油井管の製造方法。 |
請求項7に記載の拡管用油井管の製造方法であって、 前記素管の化学組成は、 前記Feの一部に替えて、Mo:0.10%以下、V:0.10%以下、Nb:0.040%以下、Ca:0.005%以下及び希土類元素:0.01%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする拡管用油井管の製造方法。 |
請求項7又は請求項8に記載の拡管用油井管の製造方法であって、 前記焼入れ焼戻し工程では、焼入れされた前記素管を、Ac1点以上の焼戻し温度で焼戻しして、前記拡管用油井管の一様伸びを18%以上とすることを特徴とする拡管用油井管の製造方法。 |
請求項7~請求項9のいずれか1項に記載の拡管用油井管の製造方法であってさらに、 前記製造された素管を冷間加工して、前記拡管用油井管の楕円率を0.7%以下とし、かつ、偏肉率を6.0%以下にする工程を備え、 前記焼入れ焼戻し工程では、前記冷間加工された素管を焼入れ焼戻しすることを特徴とする拡管用油井管の製造方法。 |
本発明は、油井管及びその製造方法に関 、さらに詳しくは、坑井内で拡管される油 管及びその製造方法に関する。
石油やガスを生産するための井戸(油井や ガス井)を施工するとき、複数の油井管を坑 内に挿入する。従来の井戸の施工方法は以 のとおりである。ドリルパイプで抗井を所 の深さまで掘削した後、油井管を挿入する 次に、抗井をさらに掘削した後、既に挿入 れている油井管の内径より小さい外径を有 る油井管を挿入する。このように、従来の 工方法では、坑井が深くなるに従い挿入さ る油井管の外径を順次小さくする。換言す ば、油井が深くなるほど、坑井の上部(地表 近部分)に使用される油井管の内径は大きく なる。その結果、掘削面積が増大し、掘削費 が増大する。
掘削面積を低減して掘削費を低減するた の新たな施工方法が、特表平7-507610号公報 び国際公開第WO98/00626号パンフレットに開示 れている。これらの文献に開示された施工 法は以下のとおりである。まず、坑井内に 設された油井管の内径よりも小さい外径を する油井管を坑井内に挿入する。油井管を 既に配設された油井管よりも深く挿入した 、挿入された油井管を拡管し、その内径を に配設された油井管の内径と等しくする。 するに、この施工方法では、油井管が坑井 で拡管される。そのため、油井が深くても 坑井上部に大径の油井管を使用する必要が く、従来の施工方法よりも掘削面積及び鋼 使用量を低減できる。
上述の新たな施工方法で使用される油井 (以下、拡管用油井管という)は、種々の検 がされている。国際公開第WO2004/001076号パン レット、国際公開第WO2005/080621号パンフレッ ト及び特開2002-349177号公報では、拡管後の圧 強度の低下を抑制することを目的とした拡 用油井管が開示されている。また、特開2002 -266055号公報では、耐食性の向上を目的とし 拡管用油井管が開示されている。
ところで、拡管用油井管は、坑井内で拡 されるため、拡管時に均一に変形する性能( 以下、拡管性という)を求められる。優れた 管性を得るためには、加工時にくびれが生 ることなく変形する性能、すなわち、引張 験で評価できる一様伸びが高いことが要求 れる。ここで、一様伸びとは、引張試験の 大荷重点における試験片の歪み(%)である。 に、坑井内で上下に配列された油井管の重 部分となるベル部では、拡管率が最も高く る。ベル部での拡管率を考慮すれば、拡管 油井管の一様伸びは16%以上となるのが好ま い。
特開2002-129283号公報及び特開2005-146414号公 報には、拡管性の向上を目的とした拡管用油 井管が開示されている。特開2002-129283号公報 は、油井鋼管に対して焼入れ焼戻しを実施 ず、かつ、鋼の組織は5~70体積%のフェライ 相と、マルテンサイト相やベイナイト相と った低温変態相とで構成される。これによ 、油井管が優れた拡管性を有するとしてい 。
しかしながら、マルテンサイト相やベイ イト相といった低温変態相が組織内に占め 割合が大きければ、高い一様伸びが得られ いと考えられる。
また、特開2005-146414号公報で開示された 井管は、周知の焼入れと、Ac1温度未満での 知の焼戻しが実施され、かつ、その降伏比 0.85以下とすることにより、優れた拡管性を するとしている。しかしながら、調査の結 、特開2005-146414号公報で開示された油井管 は、16%以上の一様伸びが得られない場合が る。更に、特開2005-146414号公報で開示された 油井管は、実施例の記載では、1.45%以上のMn 含有する。このような高Mn組成は、靭性を低 下するおそれがある。また、このような高Mn 成の焼戻し温度は高いため、脱炭や炉壁の 耗といった問題が生じる可能性がある。
また、拡管用油井管は、特開2002-349177号 報等にも開示されるように、外圧に対する 潰強度、すなわち、コラプス強度が高い方 好ましい。コラプス強度は、油井管の楕円 及び偏肉率の影響を受ける。高いコラプス 度を得るためには、油井管の偏肉を減らし 偏肉率を小さくし、かつ横断面を真円に近 して楕円率を小さくするのが好ましい。
本発明の目的は、優れた拡管性を有する 管用油井管を提供することである。具体的 は、16%以上の一様伸びを有する拡管用油井 を提供することである。
本発明者らは、種々の調査を行った結果 拡管用油井管が高い一様伸び、特に、16%以 の一様伸びを有するためには、以下の事項( 1)及び(2)が必要であることを見出した。
(1)金属組織中のフェライト率は80%以上と る。フェライト相は軟らかいため、金属組 中のフェライト率を高めることにより、高 一様伸びが得られる。
(2)降伏強度を276~379MPaの範囲に調整する。 これにより、油井管として必要な強度が得ら れ、かつ、高い一様伸びが得られる。
本発明者らはさらに、拡管用油井管が18% 上の一様伸びを有するためには、上記(1)及 (2)に加えて、以下の事項(3)を満たすことが 効であることを見出した。
(3)焼入れ焼戻しを実施し、かつ、焼戻し 度は、Ac1点以上とする。ここで、焼戻し処 の具体的な工程は以下のとおりである。焼 れ後の拡管用油井管をAc1点以上の焼戻し温 に昇温する。昇温後、所定時間均熱する。 熱後、拡管用油井管を空冷する。以上の処 を行うことにより、18%以上の高い一様伸び 得られる。その理由は定かではないが、焼 戻し温度をAc1点以上とすることにより、均 中にオーステナイト相が析出し、これによ 、鋼中の結晶粒が微細化するためと考えら る。
本発明者らはさらに、焼入れ焼戻し処理 前に、素管を冷間加工すれば、上述の一様 びを維持したまま、拡管用油井管の楕円率 び偏肉率を減少でき、その結果、拡管用油 管のコラプス強度を向上できることを見出 た。
本発明は以上の知見に基づいて完成され ものであり、その要旨は以下のとおりであ 。
本発明による拡管用油井管は、坑井内で 管される。拡管用油井管は、質量%で、C:0.05 ~0.08%、Si:0.50%以下、Mn:0.80~1.30%、P:0.030%以下、S :0.020%以下、Cr:0.08~0.50%、N:0.01%以下、Al:0.005~0.0 6%、Ti:0.05%以下、Cu:0.50%以下及びNi:0.50%以下を 有し、残部はFe及び不純物からなる化学組 と、フェライト率が80%以上の組織とを備え 。拡管用油井管はさらに、276~379MPaの降伏強 と、16%以上の一様伸びとを有する。ここで うフェライト率は、フェライト面積率であ 。
本発明の拡管用油井管の化学組成は、Fe 一部に替えて、Mo:0.10%以下、V:0.10%以下、Nb:0. 040%以下、Ca:0.005%以下及び希土類元素(REM):0.01% 以下からなる群から選ばれる1種又は2種以上 含有してもよい。
好ましくは、拡管用油井管は18%以上の一 伸びを有する。また、好ましくは、拡管用 井管は、焼入れされた後、Ac1点以上の焼戻 温度(すなわち、いわゆる2相域の温度)で焼 しされる。
好ましくは、本発明の拡管用油井管の楕 率は、0.7%以下であり、かつ、偏肉率は6.0% 下である。
この場合、拡管用油井管のコラプス強度 向上する。
好ましくは、本発明の拡管用油井管は、 間加工された後、焼入れ焼戻しされる。こ で、冷間加工は、たとえば、冷間抽伸によ 行われる。
この場合、16%以上の一様伸びが維持され つ、拡管用油井管の楕円率が0.7%以下となり 、偏肉率が6.0%以下となる。
本発明による拡管用油井管の製造方法は 質量%で、C:0.05~0.08%、Si:0.50%以下、Mn:0.80~1.30% 、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Cr:0.08~0.50%、N:0.01% 以下、Al:0.005~0.06%、Ti:0.05%以下、Cu:0.50%以下及 びNi:0.50%以下を含有し、残部はFe及び不純物 らなる化学組成を有する素管を製造する工 と、製造された素管を焼入れ焼戻しして、 ェライト率が80%以上の組織と、276~379MPaの降 強度と、16%以上の一様伸びとを備えた拡管 油井管とする焼入れ焼戻し工程とを備える
なお、素管の化学組成は、Feの一部に替 て、上述の選択元素(Mo、V、Nb、Ca、REM)を1種 上含有してもよい。
好ましくは、焼入れ焼戻し工程では、焼 れされた素管を、Ac1点以上の焼戻し温度で 戻しして、拡管用油井管の一様伸びを18%以 とする。
好ましくは、本発明による拡管用油井管 製造方法はさらに、製造された素管を冷間 工して、拡管用油井管の楕円率を0.7%以下と し、かつ、偏肉率を6.0%以下にする工程を備 る。また、焼入れ焼戻し工程では、前記冷 加工された素管を焼入れ焼戻しする。
以下、本発明の実施の形態を詳しく説明 る。本発明による拡管用油井管は、以下の 学組成と金属組織とを備える。以降、元素 関する%は質量%を意味する。
1.化学組成
C:0.05~0.08%
炭素(C)は、鋼の強度を向上する。C含有量が
0.05%未満であれば、本発明に必要な降伏強度
得られない。一方、C含有量が0.08%を超える
、一様伸びが低下する。したがって、C含有
量は0.05~0.08%である。
Si:0.50%以下
珪素(Si)は鋼を脱酸する。また、焼戻し軟化
抵抗を高めて鋼の強度を向上する。しかしな
がら、Si含有量が0.50%を超えると、鋼の熱間
工性が低下する。したがって、Si含有量は0.5
0%以下である。上述の効果をより有効に得る
めに、好ましいSi含有量は0.1%以上である。
だし、Si含有量が0.1%未満であっても上述の
果はある程度得られる。
Mn:0.80~1.30%
マンガン(Mn)は鋼の焼入れ性を高め、鋼の強
度を向上する。Mn含有量が0.80%未満であれば
本発明に必要な強度が得られない。一方、Mn
含有量が1.30%を超えると、鋼中の偏析が増加
、鋼の靭性が低下する。したがって、Mn含
量は0.80~1.30%である。好ましいMn含有量は1.20~
1.30%である。
P:0.030%以下
リン(P)は不純物である。Pは、粒界に偏析す
ることで鋼の靭性を低下する。そのため、P
有量はなるべく少ない方が好ましい。そこ
、P含有量は0.030%以下とする。好ましいP含有
量は0.015%以下である。
S:0.020%以下
硫黄(S)は不純物である。Sは、Mn又はCaと結
して介在物を形成する。形成された介在物
熱間加工時に延伸され、その結果、鋼の靭
が低下する。そのため、S含有量はなるべく
ない方が好ましい。そこで、S含有量は0.020%
以下とする。好ましいS含有量は0.0050%以下で
る。
Al:0.005~0.06%
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Al含有
が0.005%未満であれば、脱酸不足により鋼の
浄度が低下し、その結果、鋼の靭性が低下
る。一方、Al含有量が0.06%を超えた場合も、
鋼の靭性が低下する。したがって、Al含有量
0.005~0.06%である。好ましいAl含有量は0.02~0.06
%である。なお、本明細書でいうAl含有量は、
酸可溶Al(sol.Al)の含有量を意味する。
N:0.01%以下
窒素(N)は不純物である。Nは、AlやTi、Nbと結
合して窒化物を形成する。AlNやTiNが多量に析
出すれば、鋼の靭性が低下する。そのため、
N含有量はなるべく少ない方が好ましい。そ
で、N含有量は0.01%以下とする。
Cr:0.08~0.50%
クロム(Cr)は、鋼の焼入れ性を向上する。Cr
さらに、耐炭酸ガス腐食性を向上する。Cr
有量が0.08%未満であれば、耐炭酸ガス腐食性
が低下する。一方、Cr含有量が増加すれば、
大な炭化物が形成されやすくなるため、Cr
有量の上限は0.50%とする。したがって、Cr含
量は0.08~0.50%である。好ましいCr含有量は0.08
~0.35%であり、さらに好ましくは、0.08~0.25%で
る。
Ti:0.05%以下
チタン(Ti)はNと結合してTiNを形成し、高温
における結晶粒粗大化を抑制する。しかし
Ti含有量が0.05%を超えると、Cと結合してTiCを
形成し、その結果、鋼の靭性が低下する。し
たがって、Ti含有量は0.05%以下とする。なお
上述の結晶粒粗大化を抑制する効果は、Ti含
有量が0.001%程度の不純物レベルである場合で
もある程度認められるが、Ti含有量が0.005%以
の場合に、より顕著に現れる。
Cu:0.50%以下
銅(Cu)は固溶強化により鋼の強度を向上する
。しかし、Cu含有量が過剰に多ければ、鋼が
化し、含有量が0.50%を超えると、鋼が顕著
脆化する。したがって、Cu含有量は0.50%以下
する。なお、Cu含有量が0.01%以上であれば、
上述の鋼の強度を向上する効果が顕著に現れ
る。
Ni:0.50%以下
ニッケル(Ni)は、鋼の靭性を向上するととも
に、Cuが共存する場合Cuに起因した鋼の脆化
抑制する。しかし、Ni含有量が0.50%を超えれ
、その効果は飽和する。したがって、Ni含
量は0.50%以下とする。Ni含有量が0.01%以上で
れば、上述の効果が顕著に現れる。
なお、化学組成の残部は、Fe及び不純物 らなる。
本発明の拡管用油井管はさらに、必要に じて、Feの一部に替えてMoを含有する。
Mo:0.10%以下
モリブデン(Mo)は任意添加元素である。Moは
焼入れ性を高めることにより、鋼の強度を
上する。Moはさらに、P等による脆化を抑制
る。しかしながら、Moが過剰に含有されれ
、粗大な炭化物が形成される。したがって
Mo含有量は0.10%以下である。上記効果を有効
得るために、好ましいMo含有量は、0.05%以上
である。ただし、Mo含有量が0.05%未満であっ
も、上記効果をある程度得ることができる
本発明の拡管用油井管はさらに、必要に じて、Feの一部に替えてNb及びVからなる群 ら選ばれた1種又は2種を含有する。
Nb:0.040%以下
V:0.10%以下
ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)は、いずれも任
意添加元素である。これらは、いずれも鋼の
強度を向上する。具体的には、Nbは、炭窒化
を形成することにより、鋼の強度を向上す
。Vは、炭化物を形成することにより、鋼の
強度を向上する。しかしながら、Nbが過剰に
有されれば、偏析や伸延粒が発生する。ま
、Vが過剰に含有されれば、鋼の靭性が低下
する。したがって、Nb含有量は0.040%以下であ
、V含有量は0.10%以下である。上述の効果を
効に得るために、好ましいNb含有量は0.001%
上であり、好ましいV含有量は0.02%以上であ
。ただし、含有量が上述の下限値未満であ
ても、上記効果をある程度得ることができ
。
本発明の拡管用油井管はさらに、必要に じて、Feの一部に替えてCa及び希土類元素(RE M)からなる群から選ばれた1種又は2種以上を 有する。
Ca:0.005%以下
REM:0.01%以下
カルシウム(Ca)及びREMは、いずれも任意添加
元素である。Ca及びREMは、硫化物の形態制御
寄与し、その結果、鋼の靭性を向上する。
かしながら、Ca含有量が0.005%を超える場合
又はREM含有量が0.01%を超える場合、介在物が
多量に発生する。したがって、Ca含有量は0.00
5%以下であり、REM含有量は0.01%以下である。
述の効果を有効に得るために、好ましいCa含
有量は0.001%以上であり、好ましいREM含有量は
0.001%以上である。ただし、Ca含有量及びREM含
量が上述の下限値未満であっても、上記効
をある程度得ることができる。
2.金属組織
金属組織内のフェライト率は、80%以上であ
。ここで、フェライト率とは、フェライト
積率であり、以下の方法で測定される。拡
用油井管の任意の箇所から試料を採取する
採取された試料を機械研磨した後、研磨さ
た試料を4%ピクリン酸アルコール溶液中で
ッチングする。光学顕微鏡を用いてエッチ
グされた試料表面を観察し、フェライト率
ASTM E562に準じたポイントカウント法により
定する。
なお、金属組織内のうち、フェライト相 除く他の部分は、低温変態相からなる。低 変態相は、ベイナイト、マルテンサイト及 パーライトのうちの1種又は2種以上を含む
本発明による拡管用油井管は、軟らかい ェライト相が金属組織に占める割合が大き ため、16%以上の一様伸びが得られると考え れる。フェライト率が80%未満であれば、フ ライト相よりも硬い低温変態相の割合が増 するため、一様伸びが16%未満となる。
3.降伏強度
鋼の降伏強度は、276MPa~379MPaの範囲内とする
。ここで、降伏強度とは、ASTM規格に基づく0.
2%オフセット耐力である。降伏強度が379MPaを
えると、一様伸びが16%未満となる。一方、
伏強度が276MPa未満であれば、油井管として
要な強度が得られない。したがって、降伏
度は276MPa~379MPaとする。
4.楕円率及び偏肉率
本発明の拡管油井管では、好ましくは、楕
率が0.7%以下であり、かつ、偏肉率が6.0%以
である。
楕円率は、以下の式(1)で定められる。
楕円率(%)=(最大外径Dmax-最小外径Dmin)/平均外
径Dave×100 (1)
ここで、最大外径Dmax、最小外径Dmin及び平
外径Daveは、たとえば、以下の方法で測定さ
る。拡管用油井管の任意の横断面において
同一円の外径を22.5°おきに測定する。これ
より、16(=360°/22.5°)個の外径が測定される
測定された16個の外径のうち、最大の外径を
Dmaxとし、最小の外径をDminとする。また、測
された16個の外径の平均をDaveとする。
偏肉率は、以下の式(2)で定められる。
偏肉率(%)=(最大肉厚Tmax-最小肉厚Tmin)/平均肉
厚Tave×100 (2)
ここで、最大肉厚Tmax、最小肉厚Tmin及び平
肉厚Taveは、たとえば、以下の方法で測定さ
る。拡管用油井管の任意の横断面において
肉厚を11.25°おきに測定する。これにより、
32(=360°/11.25°)個の肉厚が測定される。測定さ
れた32個の肉厚のうち、最大の肉厚をTmaxとし
、最小の肉厚をTminとする。また、測定され
32個の肉厚の平均をTaveとする。
後述するとおり、熱間加工された素管を 焼入れ焼戻しする前に冷間加工すれば、0.7% 以下の楕円率と6.0%以下の偏肉率とを有する 管用油井管が得られる。このような拡管用 井管は、幾何学的に均一性が高い。そのた 、コラプス強度が高く、耐圧潰性に優れる より好ましくは、楕円率は0.5%以下であり、 肉率は5.0%以下である。
なお、上述では、16個の外径と32個の肉厚 とを測定したが、同一円周上を8以上に等分 、各等分点で外径及び肉厚を測定すれば、 定数は特に制限されない。
5.製造方法
本発明の拡管用油井管の製造方法の一例を
明する。上記化学組成の鋼を溶製し、ビレ
トを製造する。製造されたビレットを加工
て素管を製造する(素管製造工程)。素管製
工程では、たとえば、熱間加工により素管
製造する。具体的には、ビレットを穿孔圧
して素管とする。又はビレットを熱間押出
て素管としてもよい。
製造された素管に対して、焼入れ焼戻し 実施して、本発明の拡管用油井管とする(焼 入れ焼戻し工程)。焼入れ温度は、周知の温 (Ac3点以上)とする。一方、焼戻し温度は、好 ましくは、Ac1点以上とする。焼戻しの好まし い具体的工程は以下の通りである。焼入れ後 の素管をAc1点以上の焼戻し温度に昇温する。 昇温後、焼戻し温度で所定時間(たとえば12.5m mの肉厚を有する素管の場合、約30分)均熱す 。均熱後、素管を空冷する。
焼戻し温度をAc1点以上とすれば、一様伸 が18%以上となる。その理由は定かではない 、焼き戻し温度をAc1点以上とすることによ 、均熱中にオーステナイト相が析出し、こ により、鋼中の結晶粒が微細化するため、 様伸びが18%以上になると考えられる。
好ましい焼戻し温度の上限はAc3点である 焼戻し温度がAc3点を超えれば、拡管用油井 の強度が低下する。したがって、好ましい 戻し温度は、Ac1点以上Ac3点未満である。
なお、焼戻し温度がAc1点未満であっても フェライト率を80%以上とし、降伏強度を276~ 379MPaとすれば、16%以上の一様伸びが得られる 。
Ac1点及びAc3点は、フォーマスタ試験によ 求めることができる。フォーマスタ試験で 、変態点測定装置(フォーマスタ)を用いて 試験片の熱膨張量を測定し、測定された熱 張量に基づいて変態点(Ac1点、Ac3点)を求める 。
好ましくは、素管製造工程の後であって 焼入れ焼戻し工程の前に、冷間加工工程が 施される。冷間加工工程では、製造された 管を冷間加工する。冷間加工は、たとえば 冷間での縮径加工であり、より具体的には 冷間抽伸やコールドピルガーミル等による 間圧延により行われる。より好ましくは、 間加工は冷間抽伸により行われる。冷間加 することにより、拡管用油井管の楕円率を0 .7%以下とし、偏肉率を6.0%以下とする。
なお、冷間加工工程前に、前記素管に対 て焼入れ焼き戻し等の熱処理が施されても い。また、上述の方法で製造される拡管用 井管は、継目無鋼管であるが、本発明の拡 用油井管は、電縫鋼管に代表される溶接管 あってもよい。ただし、溶接管では溶接部 耐食性に問題が生じる場合もあり得るので 本発明の拡管用油井管は、好ましくは、継 無鋼管である。
[実施例1]
表1に示した化学組成を有する複数の丸ビレ
ットを製造した。
各丸ビレットから試験片を採取し、採取 れた試験片を用いてフォーマスタ試験を実 し、各鋼種のAc1点(℃)を求めた。求めたAc1 を表1に示す。
鋼種A~Eの複数の丸ビレットを加熱炉で加熱
た。加熱された複数の丸ビレットを穿孔圧
して複数の継目無鋼管(素管)を製造した。
目無管の公称外径は203.2mmであり、公称肉厚
12.7mmであった。製造された継目無鋼管に対
て、表2に示す焼入れ温度(℃)及び焼戻し温
(℃)で、焼入れ焼戻しを実施し、拡管用油
管を製造した。焼戻し処理での均熱時間は30
分であった。表2中の試験番号13及び14の丸ビ
ットについては、穿孔圧延し、公称外径が2
19.1mm、公称肉厚が14.5mmの継目無鋼管とした。
そして、製造された継目無鋼管に対して18.4%
断面減少率で冷間抽伸を実施し、公称外径
203.2mm、公称肉厚が12.7mmの継目無鋼管とした
。ここで、断面減少率(%)は、以下の式(3)で定
義した。
断面減少率(%)=(冷間抽伸前の継目無鋼管の
面積-冷間抽伸後の継目無管の断面積)/冷間
伸前の継目無管の断面積×100 (3)
さらに、冷間抽伸された継目無鋼管に対し
、焼入れ焼戻しを実施した。
[フェライト率の測定]
表2に示す試験番号1~14の拡管用油井管のフ
ライト率を以下の方法で求めた。各拡管用
井管から組織観察用の試験片を採取した。
取された試験片を機械研磨し、研磨された
験片を4%ピクリン酸アルコール溶液中でエッ
チングした。光学顕微鏡(500倍)を用いてエッ
ング後の試料表面を観察した。このとき、
察される領域の面積は約36000μm 2
であった。観察された領域内でフェライト率
(%)を求めた。フェライト率はASTM E562に準拠
たポイントカウント法により求めた。求め
フェライト率(%)を表2に示す。
[引張試験]
試験番号1~14の拡管用油井管の各々から、引
張試験片を採取し、引張試験を実施した。具
体的には、各拡管用油井管の長手方向から外
径6.35mm、平行部長さ25.4mmの丸棒試験片を採取
した。採取された丸棒試験片に対して、常温
で引張試験を実施した。引張試験により得ら
れた降伏強度(MPa)を表2中の「YS」欄に、引張
度(MPa)を表2中の「TS」欄に、一様伸び(%)を
1中の「一様伸び」欄にそれぞれ示す。ASTM規
格に基づく0.2%オフセット耐力を降伏強度(YS)
した。また、引張試験の最大荷重点におけ
試験片の歪みを一様伸び(%)とした。
[試験結果]
表2を参照して、試験番号8~10、13及び14の油
管は、化学組成、金属組織(フェライト率)
降伏強度が本発明の範囲内であったため、
様伸びが16%以上となった。さらに、試験番
9、10及び14の油井管は、焼戻し温度がAc1点以
上であったため、一様伸びが18%以上となった
。
また、試験番号13の楕円率は、0.22%であり 、偏肉率は3.66%であった。また、試験番号14 楕円率は、0.21%であり、偏肉率は2.22%であっ 。
つまり、試験番号13及び14の楕円率は、0.7 %以下であり、偏肉率は6.0%以下であった。な 、楕円率及び偏肉率は、上記4.に示した方 で求めた。
一方、試験番号1~3の油井管は、Mn含有量 本願発明の上限を超えたため、一様伸びが16 %未満であった。特に試験番号3の油井管は、 属組織、降伏強度が本願発明の範囲内であ たものの、化学組成のMn含有量が外れたた 、一様伸びが16%未満となった。
試験番号4~6、11及び12の油井管は、化学組 成が本発明の範囲外であるため、一様伸びが 16%未満となった。
試験番号7の油井管は、化学組成は本発明 の範囲内であったものの、フェライト率及び 降伏強度が本発明の範囲外であったため、一 様伸びが16%未満となった。
[実施例2]
複数の拡管用油井管を製造し、製造された
管用油井管の楕円率及び偏肉率を調査した
具体的には、表1に示す鋼種Eの化学組成を
する8本の丸ビレットを準備した。8本中4本
丸ビレットを熱間で穿孔圧延して、公称外
が203.2mm、公称肉厚が12.7mmの継目無鋼管とし
。製造された継目無鋼管を950℃の焼入れ温
で焼入れした。そして、焼入れ後に650℃の
戻し温度で焼戻しして拡管用油井管とした
以下、これら4本の拡管用油井管を熱間加工
材1~4という。
一方、他の4本の丸ビレットは、以下の方 法で拡管用油井管に製造された。まず、熱間 で穿孔圧延して、公称外径が219.1mm、公称肉 が14.5mmの継目無鋼管とした。続いて、製造 れた継目無鋼管に対して18.4%の断面減少率で 冷間抽伸を実施し、継目無鋼管の公称外径を 203.2mm、公称肉厚を12.7mmとした。冷間抽伸後 920℃の焼入れ温度で焼入れし、640℃~740℃の 戻し温度で焼戻しして拡管用油井管とした 以下、これらの拡管用油井管を冷間加工材1 ~4という。
熱間加工材1~4及び冷間加工材1~4に対して 実施例1と同様にフェライト率、降伏強度及 び一様伸びを測定した。その結果、熱間加工 材及び冷間加工材のいずれも、フェライト率 が80%以上であり、降伏強度は276~379MPaであっ 。また、一様伸びは、いずれも16%以上であ た。
さらに、熱間加工材1~4及び冷間加工材1~4の
円率及び偏肉率を調査した。具体的には、
述の4.に記載の方法で、16個の外径を測定し
、最大外径Dmax、最小外径Dmin、平均外径Daveを
求めた。そして、式(1)を用いて楕円率を求め
た。また、4.に記載の方法で、32個の肉厚を
定し、最大肉厚Tmax、最小肉厚Tmin、平均肉厚
Taveを求めた。そして、式(2)を用いて偏肉率
求めた。調査結果を表3及び図1に示す。図1
の「○」は熱間加工材を示し、「●」は冷
加工材を示す。
以上、本発明の実施の形態を説明したが 上述した実施の形態は本発明を実施するた の例示に過ぎない。よって、本発明は上述 た実施の形態に限定されることなく、その 旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形 を適宜変形して実施することが可能である
本発明の拡管用油井管は、広く油井管に 用可能であり、特に、坑井内で拡管される 井管に適用可能である。
Next Patent: PAPER-MAKING SHOE-PRESS BELT