Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
FLAME-RETARDANT LEATHER-LIKE SHEET AND PROCESS FOR PRODUCING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/026653
Kind Code:
A1
Abstract:
A flame-retardant leather-like sheet which has a soft texture, excellent surface touch, and excellent appearance. It comprises an entangled nonwoven fabric of ultrafine polyester fibers having an average single-fiber fineness of 0.5 dtex or less and a polymeric elastomer contained in an inner part of the nonwoven fabric.The polymeric elastomer holds a flame retardant absorbed therein. A flame-retardant solution containing bubbles forcedly formed was applied to the back side of the leather-like sheet and caused to be present in regions ranging from the backside to inner parts of the leather-like sheet. The flame retardant is not present on the front side of the leather-like sheet.

Inventors:
YOSHIDA YASUHIRO (JP)
MEGURO MASASI (JP)
YONEDA HISAO (JP)
MAKIYAMA NORIO (JP)
NAKASHIMA TATSUYA (JP)
TATEKAWA YASUMASA (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/066798
Publication Date:
March 06, 2008
Filing Date:
August 29, 2007
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
KURARAY CO (JP)
YOSHIDA YASUHIRO (JP)
MEGURO MASASI (JP)
YONEDA HISAO (JP)
MAKIYAMA NORIO (JP)
NAKASHIMA TATSUYA (JP)
TATEKAWA YASUMASA (JP)
International Classes:
D06N3/00; D06M13/292; D06M15/564; D06N3/14; D06M101/32
Foreign References:
JP2004502040A2004-01-22
JP2004502041A2004-01-22
JP2002242082A2002-08-28
JPS61246048A1986-11-01
JPH0380914B21991-12-26
JPH05302273A1993-11-16
JPH0718584A1995-01-20
JP2004169197A2004-06-17
Other References:
See also references of EP 2058432A4
Attorney, Agent or Firm:
OHTANI, Tamotsu (Bridgestone Toranomon Bldg.6F. 25-2, Toranomon 3-chome, Minato-k, Tokyo 01, JP)
Download PDF:
Claims:
 平均単繊度0.5デシテックス以下のポリエステル極細繊維絡合不織布の内部に、高分子弾性体Aを含有する皮革様シートにおいて、該高分子弾性体Aは難燃剤を吸尽しており、更に難燃剤液を強制的に気泡を含有させた状態で皮革様シートの裏面に塗布し、該難燃剤を皮革様シート裏面から内部に渡って存在させ、かつ皮革様シートの表面側には該難燃剤が存在していないことを特徴とする難燃性皮革様シート。
 高分子弾性体Aに吸尽されている難燃剤及び皮革様シートの裏面に塗布されている難燃剤が共に、非ハロゲン系難燃剤である請求項1に記載の難燃性皮革様シート。
 請求項1に記載の難燃性皮革様シートの表面を起毛処理して得られる難燃性スエード調皮革様シート。
 平均単繊度0.5デシテックス以下のポリエステル極細繊維絡合不織布の内部に、高分子弾性体Aを含有する皮革様シートに、以下(1)及び(2)の工程を順次行うことを特徴とする難燃性皮革様シートの製造方法。
(1)50~100℃の温水中に難燃剤を分散又は溶解した浴中に浸漬し、高分子弾性体Aに難燃剤を吸尽処理する工程
(2)難燃剤液を強制的に気泡を含有させた状態で皮革様シートの裏面に塗布する工程
 難燃剤液中の難燃剤濃度が5~60質量%である請求項4に記載の難燃性皮革様シートの製造方法。
 強制的に気泡を含有させた場合の難燃剤液の見かけ密度が0.1~0.6g/cm 3 となる状態で塗布する請求項4に記載の難燃性皮革様シートの製造方法。
 平均単繊度0.5デシテックス以下のポリエステル極細繊維絡合不織布の内部に高分子弾性体Aを含有し、かつ分散染料で染色された皮革様シートにおいて、該高分子弾性体Aは少なくとも内部に熱水可溶性リン系難燃剤を吸尽しており、更にリン系難燃剤及び高分子弾性体Bからなる組成物が、粒状や塊状が単独あるいは混在した状態、若しくは多孔質の状態、又はそれらが混在した状態で、皮革様シート裏面から内部に渡って存在しており、かつ皮革様シートの表面側には該リン系難燃剤及び高分子弾性体Bが存在していないことを特徴とする難燃性皮革様シート。
 組成物を構成するリン系難燃剤が、リン酸グアニジン系難燃剤、リン酸カルバネート系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、芳香族縮合リン酸エステル系難燃剤、リン酸エステルアミド系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム系難燃剤及びそれらをシリコーン樹脂などで被覆した難燃剤から選ばれた少なくとも1種である請求項7に記載の難燃性皮革様シート。
 熱水可溶性リン系難燃剤が、リン酸エステル系難燃剤、芳香族縮合リン酸エステル系難燃剤、リン酸アミド系難燃剤から選ばれた少なくとも1種である請求項7に記載の難燃性皮革様シート。
 組成物が、直径1~20μmの粒状やそれが多数凝集した直径10~500μmの塊状が単独あるいは混在した状態であるか、若しくは直径1~100μmの微細孔が多数存在する多孔質状であるか、又はそれらが混在した状態である請求項7に記載の難燃性皮革様シート。
 組成物が、直径700~1500μmのドメインからなる非連続状の難燃剤層を形成している請求項7に記載の難燃性皮革様シート。
 平均単繊度0.5デシテックス以下のポリエステル極細繊維絡合不織布の内部に、高分子弾性体Aを含有する皮革様シートに、以下(a)~(c)の工程を順次行うことを特徴とする難燃性皮革様シートの製造方法。
(a)分散染料を含む100~150℃の熱水浴中で染色した後、還元洗浄する工程
(b)熱水可溶性リン系難燃剤を含む50~100℃の温水浴中で、高分子弾性体Aに該熱水可溶性リン系難燃剤を吸尽処理する工程
(c)リン系難燃剤と高分子弾性体B及び界面活性剤からなる溶液に少なくとも直径5~300μmの大きさの気泡を主体として含有する泡加工液にした後、該泡加工液を皮革様シートの裏面側に強制的に塗布する工程
 高分子弾性体Aが水系ポリウレタンである請求項12に記載の難燃性皮革様シートの製造方法。
 高分子弾性体Bが水系ポリウレタンである請求項12に記載の難燃性皮革様シートの製造方法。
 工程(c)の塗布を、グラビア法又はスクリーン法にて行う請求項12に記載の難燃性皮革様シートの製造方法。
 工程(c)の後工程として、機械揉み処理を行う請求項12に記載の難燃性皮革様シートの製造方法。
Description:
難燃性皮革様シート及びその製 方法

 本発明は、難燃性皮革様シート及びその製 方法に関する。
 より詳細には、柔軟な風合い、優れた表面 ッチ及び外観を有する難燃性皮革様シート び該難燃性皮革様シートの効率的な製造方 に関するものである。

 皮革様シートは、従来から、インテリア、 類、靴、鞄、手袋、乗物用座席の上張材な の様々な用途に利用されている。
 そのうちでも、鉄道車両用座席、自動車用 席、航空機用座席、船舶用座席などの乗物 座席、あるいはクッションシート、ソファ 、椅子などのインテリアの上張材といった 野では、柔軟な風合や審美な表面外観を有 ることは勿論のこと、各種堅牢度や耐久性 耐磨耗性のみならず、優れた難燃性を兼ね えた素材、特に、スエード調皮革様シート 材が強く求められている。

 従来、繊維質シートを基材とする皮革様シ トに難燃性能を付与する方法としては、基 を構成する繊維自体にリン化合物などを含 させる方法や、塩素や臭素を主体としたハ ゲン化合物やアンチモン化合物からなる難 剤微粒子をバインダーによって基材の裏面 へ付着させる方法が一般的であり、特に、 細繊維不織布を基材とする皮革様シートの 合には、繊維自体が細くて弱いため、繊維 度を低下させる前者の方法ではなく、後者 方法を用いることが主流であった。
 しかしながら、後者の方法は、毒性や焼却 の有害物質発生などの危険性が指摘され、 界的に使用が大幅に制限される傾向にある 法である。
 スエード調皮革様シートの難燃加工技術と て、主に、車両用座席や航空機用座席の上 材としての開発技術であるが、難燃剤をバ クコートする方法が開示されている(例えば 、特許文献1及び2参照)。
 しかしながら、この方法では、得られる皮 様シートは風合いが硬化し、高級感に劣る 向がある。
 また、伸びが固定されるため、複雑な形を たシート形状への追随ができ難い傾向があ 。

 また、難燃剤を染色後の仕上げ工程で含浸 与する方法やポリウレタンに難燃剤を混合 る方法が開示されている(例えば、特許文献 3参照)。
 しかしながら、これらの方法では、難燃性 を発揮させるために難燃剤を多量に付着さ る必要があり、表面のベタツキ感、風合い 低下する場合がある。
 更に、後者では、ポリウレタン樹脂として 耐光性が低下する傾向にあり、特に、厳し 耐光性能が要求される乗物用座席の上張材 して用いられるシートとしては十分とは言 ない。
 一般的には、ポリウレタンに難燃剤などの 加剤を付与する方法では、難燃性能と樹脂 能の両立は困難な場合が多い。

 また、リン系難燃剤を熱可塑性合成繊維に 重合させることにより、染色時の難燃剤の 出や糸物性の劣化を克服した技術も開示さ ている(例えば、特許文献4参照)。
 しかしながら、この方法は、コスト的な問 より、リン共重合繊維の割合に制約がかか 、高い難燃性とコストを両立することは難 ものであった。

 また、ポリエステル系繊維構造物の難燃加 技術として、染色同浴にて、難燃剤を繊維 吸尽させる方法も公知である(例えば、特許 文献5参照)。
 しかしながら、この方法では、ポリエステ を染色するため、染色時に130℃前後の高温 水中で処理する必要があり、難燃剤若しく 難燃剤を分散させている界面活性剤などの 解、変質により染色装置内部の汚染が生じ く、生産性の低いものとなり易い。

特公平3―80914号公報

特公平5-302273号公報

特開平7-18584号公報

特開2004―169197号公報

特開2004-316035号公報

 本発明は、表面外観を損なうことがなく 柔軟な風合いと優れた難燃性能をもつ皮革 シート及び該難燃性皮革様シートの製造方 を提供することを目的とするものである。

 本発明者らは、乗物用座席、クッション ート、ソファー、椅子などのインテリア製 の上張材などに好適に用いられる、柔軟な 合いと難燃性能に優れた皮革様シートを得 べく、鋭意努力検討した結果、本発明を完 するに至った。

 すなわち、本発明は、
1.平均単繊度0.5デシテックス以下のポリエス ル極細繊維絡合不織布の内部に、高分子弾 体Aを含有する皮革様シートにおいて、該高 分子弾性体Aは難燃剤を吸尽しており、更に 燃剤液を強制的に気泡を含有させた状態で 革様シートの裏面に塗布し、該難燃剤を皮 様シート裏面から内部に渡って存在させ、 つ皮革様シートの表面側には該難燃剤が存 していないことを特徴とする難燃性皮革様 ート、
2.高分子弾性体Aに吸尽されている難燃剤及び 皮革様シートの裏面に塗布されている難燃剤 が共に、非ハロゲン系難燃剤である上記1に 載の難燃性皮革様シート、
3.上記1に記載の難燃性皮革様シートの表面を 起毛処理して得られる難燃性スエード調皮革 様シート、
4.平均単繊度0.5デシテックス以下のポリエス ル極細繊維絡合不織布の内部に、高分子弾 体Aを含有する皮革様シートに、以下(1)及び (2)の工程を順次行うことを特徴とする難燃性 皮革様シートの製造方法、
(1)50~100℃の温水中に難燃剤を分散又は溶解し た浴中に浸漬し、高分子弾性体Aに難燃剤を 尽処理する工程
(2)難燃剤液を強制的に気泡を含有させた状態 で皮革様シートの裏面に塗布する工程
5.難燃剤液中の難燃剤濃度が5~60質量%である 記4に記載の難燃性皮革様シートの製造方法
6.強制的に気泡を含有させた場合の難燃剤液 見かけ密度が0.1~0.6g/cm 3 となる状態で塗布する上記4に記載の難燃性 革様シートの製造方法、
7.平均単繊度0.5デシテックス以下のポリエス ル極細繊維絡合不織布の内部に高分子弾性 Aを含有し、かつ分散染料で染色された皮革 様シートにおいて、該高分子弾性体Aは少な とも内部に熱水可溶性リン系難燃剤を吸尽 ており、更にリン系難燃剤及び高分子弾性 Bからなる組成物が、粒状や塊状が単独ある は混在した状態、若しくは多孔質の状態、 はそれらが混在した状態で、皮革様シート 面から内部に渡って存在しており、かつ皮 様シートの表面側には該リン系難燃剤及び 分子弾性体Bが存在していないことを特徴と する難燃性皮革様シート、
8.組成物を構成するリン系難燃剤が、リン酸 アニジン系難燃剤、リン酸カルバネート系 燃剤、リン酸エステル系難燃剤、芳香族縮 リン酸エステル系難燃剤、リン酸エステル ミド系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム系 燃剤及びそれらをシリコーン樹脂などで被 した難燃剤から選ばれた少なくとも1種であ る上記7に記載の難燃性皮革様シート、
9.熱水可溶性リン系難燃剤が、リン酸エステ 系難燃剤、芳香族縮合リン酸エステル系難 剤、リン酸アミド系難燃剤から選ばれた少 くとも1種である上記7に記載の難燃性皮革 シート、
10.組成物が、直径1~20μmの粒状やそれが多数 集した直径10~500μmの塊状が単独あるいは混 した状態であるか、若しくは直径1~100μmの微 細孔が多数存在する多孔質状であるか、又は それらが混在した状態である上記7に記載の 燃性皮革様シート、
11.組成物が、直径700~1500μmのドメインからな 非連続状の難燃剤層を形成している上記7に 記載の難燃性皮革様シート、
12.平均単繊度0.5デシテックス以下のポリエス テル極細繊維絡合不織布の内部に、高分子弾 性体Aを含有する皮革様シートに、以下(a)~(c) 工程を順次行うことを特徴とする難燃性皮 様シートの製造方法、
(a)分散染料を含む100~150℃の熱水浴中で染色 た後、還元洗浄する工程
(b)熱水可溶性リン系難燃剤を含む50~100℃の温 水浴中で、高分子弾性体Aに該熱水可溶性リ 系難燃剤を吸尽処理する工程
(c)リン系難燃剤と高分子弾性体B及び界面活 剤からなる溶液に少なくとも直径5~300μmの大 きさの気泡を主体として含有する泡加工液に した後、該泡加工液を皮革様シートの裏面側 に強制的に塗布する工程
13.高分子弾性体Aが水系ポリウレタンである 記12に記載の難燃性皮革様シートの製造方法 、
14.高分子弾性体Bが水系ポリウレタンである 記12に記載の難燃性皮革様シートの製造方法 、
15.工程(c)の塗布を、グラビア法又はスクリー ン法にて行う上記12に記載の難燃性皮革様シ トの製造方法、
16.工程(c)の後工程として、機械揉み処理を行 う上記12に記載の難燃性皮革様シートの製造 法
を提供するものである。

 本発明の難燃性皮革様シートは、表面外観 損なうことなく、柔軟な風合いと優れた難 性能を有する。
 また、本発明によれば、該難燃性皮革様シ トを効率的に製造することができる。

 本発明に用いられる皮革様シートを構成す 繊維としては、表面磨耗物性、諸堅牢度及 耐劣化性などの観点からポリエステル繊維 挙げられる。
 また、皮革様シートとした場合に皮革様の 合いが得られる点、更に、スエード調皮革 シートとした場合に優れた触感及び細かな イティング効果が得られる点から、平均単 度が0.5デシテックス以下の極細繊維である とが必要である。
 平均単繊度は、好ましくは0.3デシテックス 下、より好ましくは0.0001デシテックス以上0 .2デシテックス以下である。
 極細繊維は、単成分を用いた直接紡糸から られるもの、あるいは、少なくとも2種類の ポリマーからなる極細繊維発生型繊維を経由 して得られるものである。
 極細繊維発生型繊維としては、例えば、海 分が溶剤又は分解することで島成分がフィ リル化する抽出型繊維あるいは機械的に又 処理剤によって各ポリマーからなる極細繊 にフィブリル化する分割型繊維などが挙げ れる。
 極細繊維発生型繊維は、必要に応じて、延 、熱処理、機械捲縮、カットなどの処理工 を経て、繊度1~15デシテックス、好ましくは 5~14デシテックス、より好ましくは8~13デシテ クスの短繊維とするか、あるいは繊度1~13デ シテックス、好ましくは1~10デシテックス、 り好ましくは1~8デシテックスの長繊維とす 。
 極細繊維を構成するポリマーとしては、ポ エチレンテレフタレート、ポリトリメチレ テレフタレート、ポリブチレンテレフタレ ト、又はそれらの共重合体や変性物などの 融紡糸可能なポリエステル類から選ばれる なくとも1種類のポリマーが挙げられる。
 また、抽出型繊維で抽出又は分解除去され 成分は、極細繊維成分と溶剤又は分解剤に する溶解性又は分解性を異にし、極細繊維 分との相溶性の小さいポリマーであり、か 紡糸条件下で極細繊維成分より溶融粘度が さいか、あるいは表面張力が小さいポリマ である必要がある。
 このようなポリマーとしては、例えば、ポ エチレン、ポリスチレン又はポリビニルア コールなどが挙げられる。
 本発明においては、環境汚染、溶解時の収 特性などを総合的に考慮すると、熱水で溶 可能なポリビニルアルコールを用いること 好ましい。
 また、上記極細繊維は、本発明の効果を損 わない限り、カーボンブラックなどに代表 れる顔料で着色したり、あるいは公知の繊 添加剤を添加したりすることもできる。

 次に、得られた短繊維あるいは長繊維を繊 絡合不織布とする。
 上記の繊維が短繊維の場合、カードで解繊 、ウェッバーを通すか、スラリーにしてこ を集積させてウエブを形成し、又、長繊維 場合、スパンボンド法などにより紡糸と同 にウエブを形成する。
 得られたウエブは、所望の重さ、厚さに積 し、次いで、必要に応じて、ニードルパン 、高速水流などの公知の方法により仮絡合 理が行われる。
 上記ウエブの目付は、目的とする皮革様シ トの目付に応じて設定されるが、通常、80~2 000g/m 2 の範囲、好ましくは100~1500g/m 2 の範囲、より好ましくは200~1000g/m 2 の範囲である。
 また、車両用座席の上張材用途の場合、皮 様シートの強度を維持するために、上記不 布に織編物を挿入することが好ましい。
 その際の織編物としては、特に限定はなく 公知のポリマーからなる繊維を選ぶことが きる。
 また、ニードルパンチの際は、織編物との 合性確保の点から、織編物と積層する前の エブに対し、通常、パンチ数20~100パンチ/cm 2 の範囲のニードルパンチを施すこともできる 。
 パンチ数としては、好ましくは25~80パンチ/c m 2 、より好ましくは30~60パンチ/cm 2 である。
 なお、ここでいうパンチ数とは、ニードル ンチ工程を通してウエブの単位面積当たり 突き刺したフェルト針の累計本数を意味し 例えば、フェルト針が10本/cm 2 の密度で配置されたニードルボードをウエブ へ50回突き刺した場合、そのニードルパンチ 程でのパンチ数は500パンチ/cm 2 である。

 本発明においては、得られた繊維絡合不織 の内部(絡合空間)に、高分子弾性体Aを含有 せることが皮革様の風合い及び充実感と機 的物性の向上の点から行われる。
 高分子弾性体Aとしては、皮革様シートに用 いられる高分子弾性体であれば特に限定する ことは無く、例えばポリウレタン樹脂、アク リル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポ リエステル、ネオプレン、シリコーン樹脂、 ポリアミノ酸などの合成樹脂または天然高分 子樹脂、またはそれらの混合物等を挙げるこ とができ、中でもポリウレタン樹脂、アクリ ル樹脂、またはそれらの混合物や共重合物を 用いることが好ましい。
 そして、風合いや充実感の点からポリウレ ンがより好ましい。さらに必要によっては 料、染料、架橋剤、充填剤、可塑剤、各種 定剤などを添加してもよい。
 その際、ジメチルホルムアミドなどで代表 れるポリウレタンの良溶剤に溶解したポリ レタン溶液を含浸後、湿式凝固し乾燥する 法や、溶剤を用いない水系エマルジョンと てポリウレタンを含浸後、感熱凝固し乾燥 る方法のいずれも採用することができるが 後工程で難燃剤を吸尽させる、すなわち水 媒体として水溶化させた難燃剤を高分子弾 体Aの内部へ含有させる際の処理安定性の点 では、水系エマルジョンであるポリウレタン が好ましい。
 また、繊維絡合不織布と高分子弾性体Aとの 質量比が50/50~98/2となるように高分子弾性体A 含有させることが風合と機械物性が両立す 点、更には、必要な量の難燃剤を安定的に 分子弾性体Aに吸尽させる、すなわち高分子 弾性体Aの内部に含有させる点で好ましく、 の質量比は50/50~90/10であることがより好まし い。
 なお、繊維絡合不織布が極細繊維発生型繊 の場合は、極細繊維化後の質量比として含 させる。
 また、繊維絡合不織布を構成する繊維が、 細繊維発生型繊維の場合には、公知の方法 より、高分子弾性体Aを含有させる前あるい は後に極細化処理を行うことによって、皮革 様シートを作製する。

 上記方法で得られた皮革様シートを用いて スエード調皮革様シートを作製する際には スライス、バフィングなどにより所望の厚 に調整した後、必要に応じて高分子弾性体 溶液やエマルジョン、又は溶剤などの公知 処理剤を塗布して繊維を所望の状態に固定 た表面をサンドペーパーなどによる公知の 法でバフィングすることにより上記繊維は 毛され、更に染色することにより、目的の エード調皮革様シートとすることができる
 また、銀面を有する銀付調皮革様シートを 製する際には、同様の方法を用いて、厚み 調整した後に、公知の方法により銀面層を 成することにより銀付調皮革様シートを得 ことができる。

 本発明の難燃加工方法は、上記方法により られた平均単繊度0.5デシテックス以下、好 しくは0.3デシテックス以下、より好ましく 0.0001デシテックス以上0.2デシテックス以下 ポリエステル極細繊維絡合不織布の内部に 高分子弾性体Aを含有する皮革様シートに対 して、以下の(1)及び(2)の工程を順次行うもの である。
(1)50~100℃の温水中に難燃剤を分散又は溶解し た浴中に浸漬し、高分子弾性体Aに難燃剤を 尽処理する工程
(2)難燃剤液を強制的に気泡を含有させた状態 で皮革様シートの裏面に塗布する工程
 先ず、本発明においては、上記工程(1)は、 色工程の後に行われるものである。
 本発明の他の難燃加工方法は、上記方法に り得られた平均単繊度0.5デシテックス以下 好ましくは0.3デシテックス以下、より好ま くは0.0001デシテックス以上0.2デシテックス 下のポリエステル極細繊維絡合不織布の内 に、高分子弾性体Aを含有する皮革様シート に対して、以下(a)~(c)の工程を順次行うもの ある。
(a)分散染料を含む100~150℃の熱水浴中で染色 た後、還元洗浄する工程
(b)熱水可溶性リン系難燃剤を含む50~100℃の温 水浴中で、高分子弾性体Aに該熱水可溶性リ 系難燃剤を吸尽処理する工程
(c)リン系難燃剤と高分子弾性体B及び界面活 剤からなる溶液に少なくとも直径5~300μmの大 きさの気泡を主体として含有する泡加工液に した後、該泡加工液を皮革様シートの裏面側 に強制的に塗布する工程
 本工程(1)あるいは(b)において、皮革様シー を構成する高分子弾性体Aに選択的に難燃剤 を吸尽させること、即ち高分子弾性体Aの内 に選択的に難燃剤を含有させることができ 。
 吸尽処理時間は、吸尽効率の点から、10~60 であることが好ましい。
 より好ましくは20~60分、更に好ましくは20~40 分である。
 本発明において、染色工程の後に吸尽工程 行う理由は、ポリエステルの染色温度は、 常、100℃を超えて、125℃~140℃の高温で行わ れるが、このような高温度域で染色と同時に 難燃剤を吸尽処理する一般的な難燃加工方法 では、皮革様シートに吸尽されずに残った難 燃剤あるいは難燃剤中に存在する乳化乃至分 散している添加剤、特に、界面活性剤などが タール状になり易く、このため染色槽汚染が 甚大となるからである。
 また、染色と同時に同浴で難燃剤を極細繊 に吸尽させた場合、繊維強度の低下や堅牢 の低下は通常のレギュラーポリエステルよ 大きくなるからである。
 吸尽温度が50℃以上であると、難燃剤ある は添加剤、特に乳化剤を含有する難燃剤が に微分散あるいは溶解し、難燃剤が効果的 吸尽される状態とすることができる。
 更に、吸尽温度が50℃以上であると、高分 弾性体Aに、充分、かつ選択的に、難燃剤を 尽させることができる。
 一般に、皮革様シートを構成する高分子弾 体Aのガラス転移点は、皮革様シートの風合 いの点から-60~0℃の範囲のものが用いられる 、吸尽時の温度が50℃以上であれば高分子 性体のガラス転移温度より少なくとも50℃以 上となるため、高分子弾性体Aへ充分に難燃 を吸尽させることができる。
 難燃剤を高分子弾性体Aにより吸尽させる観 点から、吸尽温度は60℃以上が好ましい。
 また、吸尽温度は、上述のように、難燃剤 染色槽汚染の観点から100℃以下とする必要 あるが、極細繊維を構成する成分のガラス 移温度より更に低く設定した方が好ましい 合がある。
 この理由は、吸尽時の温度が極細繊維を構 するポリマーのガラス転移温度より高くな ばなるほど、極細繊維の方に難燃剤が吸尽 れ易くなり、選択的に高分子弾性体Aに難燃 剤を選択的に吸尽させることが困難となるた めである。
 更に、本発明においては、染色後に吸尽処 を行うため、吸尽処理の浴温度が極細繊維 ガラス転移温度より高くなる場合、繊維中 染料が浴中に放出されて、高分子弾性体Aへ 移行し、色目の変化や染色堅牢度の低下を招 き易いからである。
 従って、吸尽温度が極細繊維を構成する成 のガラス転移温度以下の場合、選択的に高 子弾性体Aに難燃剤を吸尽させることが可能 となり、本発明の効果を十分に発揮する。
 そして、極細繊維のガラス転移温度より30 以下であることが好ましく、更に20℃以下で あることが好ましく、特に10℃以下が好まし 。
 極細繊維が一般的に使用されることの多い リエチレンテレフタレートからなる場合、 ラス転移点温度が81℃であることより、吸 処理温度は80℃以下であることが好ましい。
 以上より、吸尽処理温度は、高分子弾性体A のガラス転移温度、極細繊維を構成する成分 のガラス転移温度などを考慮して、50~100℃の 範囲で設定すればよい。

 難燃剤は、吸尽処理されるので、水分散液 は水溶液の状態の難燃剤液に調製可能な難 剤である必要があり、難燃性皮革様シート 難燃剤による堅牢度低下を防止するために 25℃では、水に難溶・不溶など親和性が低 て固形状態の難燃剤であることが好ましく 25℃では非水溶性であり、かつ上記吸尽処理 温度において水溶性となる熱水可溶性難燃剤 であることがより好ましい。
 吸尽させる難燃剤の濃度としては、皮革様 ートの質量に対し、通常、1~30%owfである。
 難燃剤の濃度は、好ましくは2~25%owf、より ましくは3~20%owfである。
 なお、「%owf」は難燃剤等の皮革様シートに 対する濃度の単位(百分率)である。
 難燃剤濃度が1%owf以上であると、充分な難 効果を得るための、工程(2)あるいは工程(c) おける、皮革様シートの裏面に塗布する難 剤の量が少なくなり、風合いが柔らかくな 、皮革様シートの風合いが損なわれること ない。
 また、難燃剤濃度が30%owf以下であると、吸 されず、不要な難燃剤の量が減少すること よりコストが低下し、又、吸尽されず、染 浴中に残存する難燃剤の量が減少し、吸尽 理槽が汚染され難くなる。
 なお、吸尽処理後の乾燥は、特に限定がな 、公知の乾燥方法を用いることができる。
 本発明の難燃剤の吸尽処理は、染色後であ ば、用途や他の工程の必要に応じて、適宜 うことができるが、吸尽した難燃剤の脱落 防止、あるいは、処理工程を極力簡略化す ために、染色、還元、中和終了後の染色槽 行うことが好ましい。

 次に、上記工程(2)あるいは上記工程(c)は、 燃剤液を強制的に気泡を含有させた状態の 加工液とした上でこれを皮革様シートの裏 に塗布後乾燥し、該難燃剤を皮革様シート 面から内部に渡って存在させ、かつ皮革様 ートの表面側には該難燃剤を存在させない うに行うものであり、好ましい存在状態と ては、粒状や塊状が単独あるいは混在した 態、若しくは多孔質の状態、又はそれらが 在した状態である。
 皮革様シートの裏面に塗布する際の難燃剤 は、含有させた気泡の安定性の点から水分 液又は水溶液であることが好ましく、上記 た好ましい存在状態にするためには、難燃 と高分子弾性体B及び界面活性剤からなる水 分散液であることが好ましい。
 高分子弾性体Bとしては、高分子弾性体Aで げられた高分子弾性体を用いることができ が、得られる皮革様シートの風合い、機械 性および耐久性のてんでポリウレタンが好 しく、予め含有している高分子弾性体Aを溶 せずに、非連続状に存在させ易い点で水系 リウレタンが好ましく用いられる。
 ポリウレタンの種類としては特に限定する となく、公知のポリエステル系、ポリエー ル系、ポリカーボネート系またはそれらの 合物や共重合物等が挙げられる。
 また、難燃剤液中の難燃剤濃度は、気泡の 現性、更には、皮革様シートに対する難燃 の付与と風合の両立の点を考慮すると、通 、難燃剤と高分子弾性体Bを合計した組成物 の濃度で5~60質量%である。
 すなわち、難燃剤濃度が5%以上であると、 分な難燃性能を示すに必要な難燃剤を塗布 ることが容易であり、溶媒を除去するため 乾燥効率が向上し易く、皮革様シートの難 性効果が十分となる。
 また、難燃剤濃度が60%以下であると、塗布 た難燃剤が皮革様シート内部に十分に浸透 、皮革様シート裏面付近に偏った状態で固 することがなく、皮革様シートの風合いが なわれない。
 難燃剤濃度は、好ましくは10~60質量%、より ましくは20~50質量%である。
 本発明においては、難燃剤液を皮革様シー の裏面に塗布する際、高分子弾性体Aに難燃 剤が吸尽されたスエード調皮革様シートの、 裏面から泡状(気泡を含有させた状態で)の難 剤液を浸透させるといった特殊な塗布方法 採用することによって、特に、スエード調 革様シートの表層まで難燃剤が到達せず、 燃剤組成物が、粒状や塊状が単独あるいは 在した状態、若しくは多孔質の状態、又は れらが混在した状態で、皮革様シート裏面 ら内部に渡って存在することから表面の優 たタッチや風合いと難燃効果を両立するこ が可能となる。

 本発明において用いる難燃剤としては、含 ロゲン系難燃剤による環境ホルモン汚染低 を考慮すると、非ハロゲン系難燃剤が挙げ れ、リン系難燃剤が好ましい。
 吸尽処理用難燃剤としては、リン酸エステ 系、芳香族縮合リン酸エステル系、リン酸 ミド系難燃剤などを挙げることができるが 難燃剤自身の加水分解による皮革様シート 劣化促進を避ける観点から、芳香族縮合リ 酸エステル系、リン酸アミド系が好ましい
 また、皮革様シート裏面塗布用難燃剤とし は、リン酸グアニジン系、リン酸カルバネ ト系、リン酸エステル系、芳香族縮合リン エステル系、リン酸エステルアミド系、ポ リン酸アンモニウム系難燃剤及びそれらを リコーン樹脂などで被覆した難燃剤などの ハロゲン系難燃剤を挙げることができる。
 上記の難燃剤自身の加水分解による皮革様 ートの劣化促進を避けること及び水溶性の 燃剤の場合、処理した布帛上に水滴を落と たときにシミになりやすいことから、少な とも25℃では非水溶性であるものがより好 しく、該観点からは、芳香族縮合リン酸エ テル系、リン酸エステルアミド系難燃剤、 リコーン樹脂などで被覆したポリリン酸ア モニウム系難燃剤がさらに好ましい。
 また、皮革様シートが難燃性を有するため 必要な難燃剤の含有量は、難燃剤中のリン 有量にも左右されるため難燃剤の種類によ 異なるが、難燃性と風合を両立させる観点 ら、通常、難燃剤の固形分濃度で、難燃剤 尽量1~40g/m 2 、裏面塗布量5~60g/m 2 、トータル含有量6~80g/m 2 の範囲である。
 好ましくは難燃剤吸尽量5~35g/m 2 、裏面塗布量10~60g/m 2 、トータル含有量15~75g/m 2 、より好ましくは難燃剤吸尽量10~30g/m 2 、裏面塗布量 10~50g/m 2 、トータル含有量20~70g/m 2 である。
 なお、裏面に塗布する難燃剤液としては、 布処理後の皮革様シートからの難燃剤の脱 を防ぐために、目的とする難燃性はもちろ のこと、皮革様シートとして要求される風 い、物性などの本発明の効果を損なわない 囲で、高分子弾性体Bを難燃剤のバインダー として用いた組成物とすることも好ましい。
 高分子弾性体Bは、バインダーとして用いる 場合は、水系ポリウレタンであるのが好まし く、エマルジョン形態であるのがより好まし い。

 難燃剤液を皮革様シートの裏面に塗布する には、難燃剤が裏面から内部に浸透し表面 存在しないように調整し易いことを考量し 強制的に気泡を含有させた状態、例えば、 拌した難燃剤液の見掛け密度が、通常、0.1~ 0.6g/cm 3 となる状態で塗布し、次に、乾燥して溶媒を 除去する。
 難燃剤液の見掛け密度は、好ましくは0.15~0. 5g/cm 3 、より好ましくは0.2~0.5g/cm 3 である。
 難燃剤液の見掛け密度を0.1g/cm 3 以上とすると、皮革様シートの体積当りの難 燃剤含有量が確保され、難燃性能を示すに必 要な量の難燃剤を塗布することが可能となる 。
 また、難燃剤液の見掛け密度を0.6g/cm 3 以下とすると、難燃剤液は気泡を含んだ状態 を保持することができる。
 難燃剤液の発泡方法としては、例えば、機 的発泡方法が挙げられるが、その際、発泡 として、通常、1~5質量%のカチオン系界面活 性剤などで代表される公知の界面活性剤を加 えるのが好ましい。
 界面活性剤の添加量としては、好ましくは1 .5~5質量%、より好ましくは1.5~4質量%である。
 このような界面活性剤を添加することによ 、気泡は均一な大きさで安定的に難燃剤液 に含有させることが可能となり、上記した ましい状態、すなわち粒状や塊状が単独あ いは混在した状態、若しくは多孔質の状態 又はそれらが混在した状態で難燃剤を含有 せるためには、皮革様シートを構成する極 繊維の繊維径とのバランスから、少なくと 泡の直径が5~300μmの範囲にある気泡が主体 して含有された泡加工液である必要があり 好ましくは直径が7~250μmの範囲にある気泡が 主体として含有された泡加工液であり、より 好ましくは直径が10~150μmの範囲にある気泡が 主体として含有された泡加工液であり、最も 好ましいのは、含有される気泡の主体となる ものの直径が12~100μmの範囲にあるような泡加 工液である。
 直径が上記のような好適な範囲にあり、か 均一な大きさの気泡が主体として含有され ような泡加工液であれば、本発明の効果を なわない範囲で、前記主体となる気泡より きな径の気泡が含まれていてもよい。
 主体となる気泡の大きさが直径で5~300μmの 囲にある泡加工液とは、後述する所定の方 により泡加工液を観察したときに、観察視 内を占める気泡の少なくとも50%以上、好ま くは70%以上、より好ましくは90%以上の気泡 、径が5~300μmの範囲にある気泡であるような 泡加工液のことである。
 難燃剤液を皮革様シート裏面に塗布し、そ 難燃剤の含有量(塗布量)をコントロールす 方法としては、通常、皮革様シート上に気 を有する難燃剤の水分散液又は水溶液を吐 し、それをナイフにて含有量を管理する方 、又は、皮革様シート裏面上に位置するメ シュロールの内部から外側へ吐出された気 を有する難燃剤液を、メッシュロールのメ シュの大きさ、メッシュロールと皮革様シ トの間のクリアランス調整あるいはロール 印圧調整により含有量をコントロールしな ら塗布する方法、いわゆるスクリーン法や カップやスリットが彫刻されたグラビアロ ル表面によって計量した液を転写により塗 する方法、いわゆるグラビア法などを用い ことが好ましい。

 難燃剤液を塗布した後の皮革様シートの 燥方法としては、通常、テンター乾燥機な 巾変化を制御しながらの乾燥が好ましい。

 上記したような塗布方法及び乾燥方法をと ことで、皮革様シートの裏面側に塗布され 難燃剤若しくは難燃剤及び高分子弾性体Bを 、本発明に特有の状態で存在させることがで きる。
 本発明に特有の状態とは、直径1~20μmの粒状 やそれが多数凝集した直径10~500μmの塊状が単 独あるいは混在した状態であるか、若しくは 直径1~100μmの微細孔が多数存在する多孔質状 あるか、又はそれらが混在した状態である
 これら種々の状態は、特に塗布する難燃剤 の見掛け密度や粘度、気泡の直径といった 質や、難燃剤液の含有量の局所的な大小、 燃剤液が塗布された皮革様シート側の局所 な表面状態、さらには塗布後の乾燥手段や 燥条件に応じて変化するので、所望の難燃 や風合いに応じて適宜条件設定することに り制御可能である。
 具体例としては、難燃剤液の含有量が局所 に少ない部分は、粒状やそれが凝集した塊 で存在する傾向にあり、それより多く含有 せると多孔質状の形態となる。
 前記するような本発明に特有の状態で難燃 若しくは難燃剤及び高分子弾性体Bを存在さ せることにより、皮革様シートとしての風合 いを損なうことなく、又塗布した難燃剤の難 燃性能を十分に発揮させることができる。
 さらに、皮革様シートとしての風合いの観 からは、皮革様シートの裏面側に塗布され 難燃剤若しくは難燃剤及び高分子弾性体Bは 、直径700~1500μmのドメインからなる非連続状 難燃剤層を形成していることが好ましい。
 このような難燃剤層は、上記工程(2)あるい 上記工程(c)における塗布方法としてグラビ 法やスクリーン法を採用して適宜条件を調 したり、上記工程(2)あるいは上記工程(c)の 工程として、機械揉み処理を行ったりする とにより形成可能である。

 次に、本発明を実施例により更に詳細に 明するが、本発明は、これらの例によって んら限定されるものではない。

 極細繊維の平均単繊度の測定は、下記の方 で算出した。
 平均単繊度(デシテックス)=D×(R/2) 2 ×π×10 6
 但し、Rは、極細繊維束中の極細繊維の平均 直径(cm)(基体断面を走査型電子顕微鏡で撮影 、無作為に10本の極細繊維束を選び出し、 極細繊維束断面中の極細繊維から任意の極 繊維を万遍なく繊維束断面から20本選び出し 、その直径を測定して、得られる平均値)で り、Dは、極細繊維を構成するポリマーの比 である。
 また、燃焼性の評価は、社団法人自動車技 会制定のシート表皮用材料の試験方法(JASO  M 403-88)に記載する測定方法に従った。
 難燃剤液の見掛け密度の測定方法は、発泡 せた難燃剤液を500mlメスシリンダーに採取 、その体積と質量を測定することによって 出した。
 また、難燃剤液に含有させた気泡の径は、3 0~150倍程度の低倍率から800~3000倍程度の高倍 までの広い倍率範囲において連続的に倍率 変えながら観察可能な光学顕微鏡を用いて 難燃剤液を100~1000倍の範囲における種々の倍 率にて難燃剤液を観察することで評価した。
 なお、難燃剤液の観察は、乾燥により液の 態が変わらない内に手早く行った。

実施例1
(絡合不織布の作製)
 エチレン単位を10モル%含有し、けん化度98.4 モル%、融点210℃のポリビニルアルコール(PVA) 共重合体(株式会社クラレ製エクセバール)を 成分に用い、固有粘度0.65dl/g(フェノ-ル/テ ラクロロエタンの等質量混合溶液を用いて 30℃で測定)のイソフタル酸単位を8モル%含有 したポリエチレンテレフタレ-ト(融点234℃、 ラス転移温度81℃)チップを島成分とし、島 分が37島となるような溶融複合紡糸用口金(0 .25φ、550ホール)を用い、海成分/島成分質量 率=30/70の質量比率、口金温度250℃で吐出し 糸した。
 該紡糸繊維をローラープレート方式を用い 通常の条件により延伸し、海島型複合繊維 得た。
 得られた繊維の紡糸性、連続ランニング性 延伸性は、良好で全く問題がなかった。
 この海島型複合繊維を、捲縮機で捲縮を付 し、51mmにカットしてステープル化した。
 この海島型複合繊維ステープルは、単繊度4 .13デシテックス、強度3.2cN/デシテックス、伸 度40%と良好であった。
 上記ステープルを使用して、カード、クロ ラッパーの工程を経て、ウエブを作製し、 絡合処理として40パンチ/cm 2 のニードルパンチを行い、目付265g/m 2 の極細繊維発生型繊維からなる絡合不織布を 得た。

(平織物の作製)
 84デシテックス/36fの仮撚り加工を施したポ エステル性の糸に、600T/mの追加撚糸加工を た後、織り密度82本×76本/inch(2.54cm)で織り加 工を行い、目付55g/m 2 の平織物を得た。

(絡合不織布及び織物の3次元繊維絡合体の作 )
 上記絡合不織布に、平織物を順に積層し、 ングルバーブのフェルト針を使用して、最 に絡合不織布側から1200パンチ/cm 2 、次いで織物側から400パンチ/cm 2 のパンチ数でニードルパンチを行い絡合不織 布及び平織物を絡合一体化させて、目付385g/m 2 の3次元繊維絡合体を得た。
 ニードルパンチの際、絡合不織布側から突 刺したフェルト針の突き刺し深さは、バー が平織物を貫通する深さとし、平織物側か 突き刺したフェルト針の突き刺し深さは、 ーブが絡合不織布側の表面には突き出ない さとした。

(スエード調皮革様シートの作製)
 得られた3次元繊維絡合体を205℃、熱風量42. 5cm 3 /min・m 2 、速度3m/minで乾熱収縮処理を行い、3次元繊 絡合体を175℃の金属プレスロールで見かけ 度を0.340g/cm 3 (厚み1.54mm)とした後、ポリウレタン含浸液と て、水系ポリウレタンエマルジョン10質量% (日華化学株式会社製 APC-28、ガラス転移温 -25℃)を上記3次元繊維絡合体に含浸後、ピ クアップ率100%になるようにマングルで絞っ 。
 その後、連続的にビンテンター乾燥機で150 、5分30秒間加熱乾燥することで、3次元繊維 絡合体の内部に高分子弾性体Aを含有させた
 この3次元繊維絡合体を更に熱水90℃中に浸 ・絞液を繰り返し、海成分のPVAを除去し乾 後、更にピンテンター乾燥機で120℃で加熱 燥した。
 その後、絡合不織布側の表面をサンドペー ーにて研削し、起毛処理を行い、厚さ0.85mm 目付395g/m 2 のスエード調皮革様シートを得た。

(スエード調皮革様シートの染色及び難燃処 )
 得られたスエード調皮革様シートを薄緑色 なるように分散染料を用い130℃で、1時間液 流染色し、還元、中和処理を行った。
 次に、染色したスエード調皮革様シートを 染色前質量に対し10%owf(固形分4%)のビゴール FV-1010(大京化学株式会社製、固形分40質量%、 ン酸エステルアミド系難燃剤、25℃では固 であり80℃の熱水には可溶な熱水可溶性)を 有する難燃剤液中に浸漬し、90℃、30分間吸 処理を行った後、120℃で乾燥した。
 吸尽前後のシートの質量変化から難燃剤吸 量が11g/m 2 であることを確認した。
 また、別に、ネオステッカーHF-680C(日華化 株式会社製、固形分40質量%、カプセル化ポ リン酸アンモニウム系難燃剤、水系ポリウ タンバインダー含有)に、カチオン界面活性 からなる発泡剤(明成化学株式会社社製、メ イフォーマーF-210)を3質量%添加して、見かけ 密度が0.3g/cm 3 になるように機械発泡させて、全気泡の90~95% が17~75μmの直径の範囲にあるような均一な大 さの気泡を含有させた難燃剤水溶液からな 泡加工液を得た。
 この泡加工液を、開孔率40%、開孔径1140μmの メッシュロール内部から吐出し、吸尽処理後 のスエード調皮革様シートの裏面に、スクリ ーン法により泡加工液量で50g/m 2 塗布した。
 なお、その際のメッシュロールとの間隔は0 .4mmになるように調整した。
 その後、連続的にピンテンター乾燥機で140 、3分間加熱乾燥後、得られたシートの裏面 に塗布された難燃剤固形分は20g/m 2 であることを確認した。
 得られた難燃性スエード調皮革様シートの 面の立毛部分には、難燃剤によるタックや メリが認められず、難燃性が付与された皮 様シートでありながら、乗物用座席やイン リアの上張材として優れた風合い、タッチ びライティング効果を維持していた。
 また、難燃剤の塗布状態を確認するために 走査型電子顕微鏡を用いて難燃性スエード 皮革様シートの断面を観察したところ、立 面の近辺には難燃剤が存在せず、裏面から み方向に中央部分以下に存在していた。
 また、走査型電子顕微鏡を用いて難燃性ス ード調皮革様シートの裏面を観察したとこ 、裏面全体に難燃剤からなる直径1000~1200μm 度の大きさのドメインが非連続状態で多数 せ集まった難燃剤層を形成しており、ドメ ン同士の間の難燃剤が少ない領域は、直径2 ~10μm程度の種々の大きさをもつ粒状やそれが 多数凝集した直径25~300μm程度の種々の大きさ をもつ塊状が、単独あるいは混在した状態で 難燃剤が主に存在していた。
 また、前記ドメイン表面を観察すると、直 10~70μm程度の大きさの微細孔が多数存在す 多孔質状であり、ドメイン間にはドメイン 欠片と思われる直径150~300μm程度の大きさで 孔質状の難燃剤も多数存在していた。
 更に、難燃性スエード調皮革様シートの燃 試験を行ったところ、その結果は自消であ 、乗物用座席やインテリアの上張材として 分な難燃性能が認められた。

実施例2
 実施例1において、平織物を積層せずに絡合 不織布のみから3次元繊維絡合体を作製し、 熱収縮後の密度を0.45g/m 3 とした以外は、実施例1と同様に難燃剤塗布 理までを行い、さらにその後でエアータン ラーを用いて機械揉み処理を行って難燃性 エード調皮革様シートを得た。
 得られた難燃性スエード調皮革様シートの 面の立毛部分には、難燃剤によるタックや メリが認められず、難燃性が付与された皮 様シートでありながら、靴、鞄やインテリ として優れた風合い、タッチ及びライティ グ効果を維持していた。
 また、難燃剤の塗布状態を確認するために 走査型電子顕微鏡を用いて難燃性スエード 皮革様シートの断面を観察したところ、立 面の近辺には難燃剤が存在せず、裏面から み方向に中央部分以下に存在していた。
 また、走査型電子顕微鏡を用いて難燃性ス ード調皮革様シートの裏面を観察したとこ 、裏面全体に難燃剤からなる直径800~1100μm 度の大きさのドメインが非連続状態で多数 せ集まった難燃剤層を形成しており、ドメ ン同士の間の難燃剤が少ない領域は、直径2~ 10μm程度の種々の大きさをもつ粒状やそれが 数凝集した直径25~300μm程度の種々の大きさ もつ塊状が、単独あるいは混在した状態で 燃剤が主に存在していた。
 また、前記ドメイン表面を観察すると、直 10~70μm程度の大きさの微細孔が多数存在す 多孔質状であり、ドメイン間にはドメイン 欠片と思われる直径70~300μm程度の大きさで 孔質状の難燃剤が実施例1より多く存在して た。
 更に、難燃性スエード調皮革様シートの燃 試験を行ったところ、その結果は自消であ 、靴、鞄やインテリアとしては十分な難燃 能が認められた。

比較例1
 実施例1において、高分子弾性体Aへの難燃 吸尽処理を行わない以外は、実施例1と同様 処理を行ってスエード調皮革様シートを得 。
 得られたスエード調皮革様シートの表面の 毛部分には、難燃剤によるタックやヌメリ 認められず、乗物用座席やインテリアの上 材として十分に優れた風合いを維持してい 。
 また、難燃剤の塗布状態を確認するために 走査型電子顕微鏡を用いてスエード調皮革 シートの断面を観察したところ、立毛面の 辺には難燃剤が存在せず、裏面から厚み方 に中央部分以下に存在していた。
 また、走査型電子顕微鏡を用いてスエード 皮革様シートの裏面を観察したところ、裏 全体に実施例1と同様の難燃剤層が存在して いた。
 しかしながら、スエード調皮革様シートの 焼試験を行ったところ、その結果は易燃で り、乗物用座席やインテリアの上張材とし は難燃性能が不充分であった。

比較例2
 実施例1において、高分子弾性体Aへの難燃 吸尽処理を行わず、かつ皮革様シート裏面 の泡加工液塗布量を150g/m 2 に変更した以外は、実施例1と同様の処理を ってスエード調皮革様シートを得た。
 得られたスエード調皮革様シートの表面の 毛部分には、難燃剤によるタックやヌメリ 認められず、又、スエード調皮革様シート 燃焼試験を行ったところ、その結果は自消 あったものの、実施例1の難燃性スエード調 皮革様シートに比べると座屈感があり、折れ 易く、硬い風合いであって、乗物用座席やイ ンテリアの上張材としては好ましくないレベ ルの風合いであった。

比較例3
 実施例1において、皮革様シート裏面への難 燃剤塗布を行わない以外は、実施例1と同様 処理を行ってスエード調皮革様シートを得 。
 得られたスエード調皮革様シートの表面の 毛部分には、難燃剤によるヌメリが認めら ず、乗物用座席やインテリアの上張材とし 優れた風合いを維持していた。
 しかしながら、スエード調皮革様シートの 焼試験を行ったところ、その結果は易燃で り、乗物用座席やインテリアの上張材とし は難燃性能が不充分であった。

比較例4
 実施例1において、高分子弾性体Aへの吸尽 難燃剤の量を40%owf(固形分16%)とし、かつ皮革 様シート裏面への泡加工液塗布を行わなかっ た以外は、実施例1と同様の処理を行ってス ード調皮革様シートを得た。
 得られたスエード調皮革様シートの表面の 毛部分は、高分子弾性体Aに吸尽されなかっ た過剰量の難燃剤が付着しているためか、実 施例1の難燃性スエード調皮革様シートに比 ると表面のタッチは粗く、風合いは若干固 であって、乗物用座席やインテリアの上張 としては明確にレベルが劣るものであった
 また、スエード調皮革様シートの燃焼試験 行ったところ、その結果は遅燃であり、乗 用座席やインテリアの上張材として難燃性 は不充分であった。
 更に、吸尽処理後の染色槽の内部を観察す と、吸尽されないで残った難燃剤による槽 壁面の汚染が著しいものであった。

比較例5
 実施例1において、難燃液を発泡させずに皮 革様シート裏面へ塗布した以外は、実施例1 同様の処理を行ってスエード調皮革様シー を得た。
 得られたスエード調皮革様シートは、燃焼 験を行ったところ、その結果が自消であり 乗物用座席やインテリアの上張材として十 な難燃性能が認められた。
 しかし、スエード調皮革様シートの表面の 毛部分には、難燃剤によるタックやヌメリ 若干認められ、かつ実施例1の難燃性スエー ド調皮革様シートに比べると風合いが硬く損 なわれていて、乗物用座席やインテリアの上 張材としては明確にレベルが劣るものであっ た。
 難燃剤の塗布状態を確認するために、走査 電子顕微鏡でスエード調皮革様シートの断 を観察したところ、立毛表面の近辺にまで 布した難燃剤が存在していた。
 また、走査型電子顕微鏡を用いてスエード 皮革様シートの裏面を観察したところ、難 剤はシート内部に浸透せず、裏面の表面全 に付着しており、その付着状態は皮膜状で って、粒状や塊状、多孔質状などの状態は どみられず、又ドメインの形成もみられな った。

 本発明の難燃性スエード調皮革様シート 、柔軟な風合いと優れた難燃性能を有する め、乗物用座席や、クッションシート、ソ ァー及び椅子などのインテリア製品の上張 などに特に有用である。