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Title:
G-PROTEIN-CONJUGATED RECEPTOR HAVING ALTERED LIGAND AFFINITY, AND USE THEREOF
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/146707
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a modified G-protein-conjugated receptor having an altered ligand affinity, which is produced by binding a G-protein-conjugated receptor to a polypeptide comprising the amino acid sequence depicted in SEQ ID NO:1. An agonist or antagonist of the modified G-protein-conjugated receptor can be screened by using a transformant in which the modified G-protein-conjugated receptor is expressed. The modified G-protein-conjugated receptor enables to provide a technique for analyzing the function of a G-protein-conjugated receptor whose identity has not been found yet.

Inventors:
MURAMATSU IKUNOBU (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/059459
Publication Date:
December 04, 2008
Filing Date:
May 22, 2008
Export Citation:
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Assignee:
PHARMACOME LLC (JP)
MURAMATSU IKUNOBU (JP)
International Classes:
C07K14/47; C07K17/02; C07K19/00; C12N1/15; C12N1/19; C12N1/21; C12N5/10; C12N15/09; G01N33/15; G01N33/50
Other References:
HIRAIZUMI-HIRAOKA Y. ET AL.: "Identification of alpha-1L Adrenoceptor in Rabbit Ear Artery", THE JOURNAL OF PHARMACOLOGY AND EXP. THERAPEUTICS, vol. 310, no. 3, 2004, pages 995 - 1002, XP008123092
MURAMATSU I. ET AL.: "Me Oyobi Kekkan ni Okeru alpha1L-adrenergic Receptor Subtype no Dotei", JAPANESE JOURNAL OF OCULAR PHARMACOLOGY, vol. 19, no. 1, 24 June 2005 (2005-06-24), pages 49 - 51, XP008118269
MURAMATSU I. ET AL.: "alpha1 Adrenergic Receptor no Bunrui to alpha1 Shandanyaku no Saishin Joho", YAKUGAKU ZASSHI, vol. 126, 1 March 2006 (2006-03-01), pages 187 - 198, XP008123066
MURAMATSU I. ET AL.: "alpha1-adrenergic Receptor no Hendo to supersensitivity", PHARMACOMETRICS, vol. 66, no. 3/4, 30 July 2004 (2004-07-30), pages 31 - 34, XP008123091
See also references of EP 2154154A4
MURAMATSU, I. ET AL., BR. J. PHARMACOL., vol. 99, 1990, pages 197
MURAMATSU, I. ET AL., PHARMACOL. COMMUN., vol. 6, 1995, pages 23
MORISHIMA, S. ET AL., J. UROL., vol. 177, 2007, pages 377 - 381
MOLENAAR, P.; PARSONAGE, W.A., TRENDS PHARMACOL. SCI., vol. 26, 2005, pages 368 - 375
SAMAHA, A.N. ET AL., J. NEUROSCI., vol. 27, 2007, pages 2979 - 2986
FORD, AP. ET AL., MOL. PHARMACOL., vol. 49, 1996, pages 209
MURATA, S. ET AL., J. UROL., vol. 164, 2000, pages 578
HIRAIZUMI-HIRAOKA, Y. ET AL., J. PHARMACOL. EXP. THER., vol. 310, 2004, pages 995
MURATA, S. ET AL., BR. J. PHARMACOL., vol. 127, 1999, pages 19
GENE, vol. 293, 2002, pages 47 - 57
AM. J. HUM. GENET., vol. 72, 2003, pages 1047 - 1052
"Molecular Cloning: A Laboratory Manual", 2001, COLD SPRING HARBOR LABORATORY
Attorney, Agent or Firm:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK (2-6 Tenjinbashi 2-chome Kita,Kita-k, Osaka-shi Osaka 41, JP)
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Claims:
 Gタンパク質共役型受容体および以下のポリペプチド:
 (1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド; 
 (2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
 (3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;
 (4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
 (5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは
 (6)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有しているポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド
が複合体化した、タンパク質複合体。
 前記Gタンパク質共役型受容体が、アドレナリン受容体、ドーパミン受容体、ムスカリン受容体またはエンドセリン受容体である、請求の範囲1に記載のタンパク質複合体。
 前記アドレナリン受容体がα 1 受容体またはβ 1 受容体である、請求の範囲2に記載のタンパク質複合体。
 前記α 1 受容体がα 1A 受容体である、請求の範囲3に記載のタンパク質複合体。
 前記ドーパミン受容体がD2受容体である、請求の範囲2に記載のタンパク質複合体。
 請求の範囲1に記載のタンパク質複合体を含有している、脂質膜。
 請求の範囲6に記載の脂質膜の作製方法であって、
 Gタンパク質共役型受容体および以下のポリペプチド:
 (1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド; 
 (2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
 (3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;
 (4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
 (5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは
 (6)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有しているポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド
を脂質膜上に共存させる工程を包含する、作製方法。
 請求の範囲1に記載のタンパク質複合体を発現している、形質転換体。
 請求の範囲8に記載の形質転換体の作製方法であって、
 Gタンパク質共役型受容体および以下のポリペプチド:
 (1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド; 
 (2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
 (3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;
 (4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
 (5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは
 (6)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有しているポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド
を細胞に共発現させる工程を包含する、作製方法。
 Gタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する方法であって、
 Gタンパク質共役型受容体および以下のポリペプチド:
 (1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド; 
 (2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
 (3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;
 (4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
 (5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは
 (6)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有しているポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド
を脂質膜上に共存させる工程を包含する、方法。
 リガンド親和性が改変されたGタンパク質共役型受容体の作働薬または拮抗薬をスクリーニングする方法であって、
 Gタンパク質共役型受容体および以下のポリペプチド:
 (1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド; 
 (2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
 (3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;
 (4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
 (5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは
 (6)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有しているポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド
を脂質膜上に共存させてタンパク質複合体を生成する工程、ならびに
 該タンパク質複合体を候補因子とともにインキュベートする工程
を包含する、スクリーニング方法。
 細胞内Ca 2+ 濃度を測定する工程、または細胞内イノシトールリン酸の代謝を測定する工程をさらに包含する、請求の範囲11に記載のスクリーニング方法。
 リガンド親和性が改変されたGタンパク質共役型受容体を発現している形質転換体の作製方法であって、
 Gタンパク質共役型受容体が発現している細胞において、以下のポリペプチド:
 (1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド; 
 (2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
 (3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;
 (4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
 (5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは
 (6)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有しているポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド
の発現を抑制する工程を包含する、作製方法。
 前記ポリペプチドが内因性タンパク質である、請求の範囲13に記載の作製方法。
 前記ポリペプチドの発現を阻害する工程が、RNAi法によって行われる、請求の範囲13に記載の作製方法。
 前記RNAi法が、配列番号5に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを導入することによって行われる、請求の範囲15に記載の作製方法。
 前記細胞が、外因性のGタンパク質共役型受容体を発現させている形質転換体である、請求の範囲13に記載の作製方法。
 Gタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する方法であって、
 Gタンパク質共役型受容体が発現している細胞において、以下のポリペプチド:
 (1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド; 
 (2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
 (3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;
 (4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
 (5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは
 (6)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有しているポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド
の発現を阻害する工程を包含する、方法。
 リガンド親和性が改変されたGタンパク質共役型受容体の作働薬または拮抗薬をスクリーニングする方法であって、
 Gタンパク質共役型受容体が発現している細胞において、以下のポリペプチド:
 (1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド; 
 (2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
 (3)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド;
 (4)配列番号2に記載の塩基配列において1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;
 (5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチド;あるいは
 (6)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を有しているポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドであり、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体のリガンド親和性を改変する活性を有するポリペプチドの発現を阻害する工程、ならびに
 該細胞を候補因子とともにインキュベートする工程
を包含する、スクリーニング方法。
 細胞内Ca 2+ 濃度を測定する工程、または細胞内イノシトールリン酸の代謝を測定する工程をさらに包含する、請求の範囲19に記載のスクリーニング方法。
Description:
リガンド親和性が改変されたGタ ンパク質共役型受容体およびその利用

 本発明は、リガンド親和性が改変されたG タンパク質共役型受容体およびその利用に関 するものであり、より詳細には、特定のタン パク質と複合体を形成することによりリガン ド親和性が改変されたGタンパク質共役型受 体およびその利用に関するものである。

 生体での反応の多くは、細胞外の情報が 胞内に伝播されることにより引き起こされ 。膜受容体は、細胞外の情報を細胞内に伝 する入り口の1つであり、7つの細胞膜貫通 を有しているGタンパク質共役型受容体(GPCR) よく知られている。

 GPCRはリガンド(アミノ酸、ペプチド、タン ク質、アミン類など)が結合すると、三量体G タンパク質を介してその情報を細胞内に伝達 する。GPCRと共役するGタンパク質はGs、Gi、Gq どに分類され、それぞれ対応するエフェク ー経路(例えば、cAMP経路、cGMP経路、PLC経路 ど)が異なる。例えば、α1アドレナリン受容 体は主としてGqと共役してエフェクター系で るホスホリパーゼC系を促進して、ジアシル グリセロールとイノシトール3リン酸を増加 せ、細胞内Ca 2+ を増加させ、α2アドレナリン受容体はGiと共 してアデニル酸シクラーゼ系を抑制し、cAMP を減少させる。また、βアドレナリン受容体 Gsと共役してエフェクター系であるアデニ 酸シクラーゼ系を促進させ、cAMPを増加させ 。

 GPCRの生体内での局在は、各受容体によっ て異なる。例えば、α1アドレナリン受容体は 、血管平滑筋、前立腺などに局在し、これら の収縮に重要である。また、脳などの中枢神 経系にも分布していることも知られている。 βアドレナリン受容体は、心臓、脂肪組織な に局在し、心拍増加、脂肪分解に重要であ 。

 GPCRを介する情報伝達系は、生体の恒常性を 制御するとともに、種々の疾患の発症に関与 することが知られている。よって、特定の疾 患の発症に関与するGPCRを同定し、この受容 の活性を調節する薬剤(アゴニスト、アンタ ニストなど)を開発することは、疾患治療に 非常に有効である。
Muramatsu, I. et al. Br. J. Pharmacol., 99: 19 7 (1990) Muramatsu, I. et al. Pharmacol. Commun., 6: 23 (1995) Morishima, S. et al. J. Urol. 117: 377-381 (20 07) Molenaar, P. and Parsonage, W.A. Trends Pharmaco l. Sci., 26: 368-375 (2005) Samaha, A.N. et al., J. Neurosci. 27: 2979-2986  (2007)

 GPCRに関する研究はかなり進んでおり、これ までに数多くのGPCRが同定されている。しか 、表現型が知られていても実体が不明であ GPCRも存在する。例えば、α 1 アドレナリン受容体は、その遺伝子からα 1A 、α 1B 、α 1D の3つのサブタイプに分類されるが、α 1 アドレナリン受容体において、これらとは異 なる表現型(薬理学的な特性)を示すサブタイ (α 1L )が同じ遺伝子から発現することが知られて る。具体的には、このα 1L サブタイプは、代表的なα 1 遮断薬(例えば、prazosin)に対する親和性が低 、組織片結合法を用いてのみその活性を検 し得る(非特許文献1~3参照)。また、β 1 アドレナリン受容体においても、異なる表現 型を示すサブタイプ(β 1H およびβ 1L )が同じ遺伝子から発現することが知られて る(非特許文献4参照)。このようなサブタイ は表現型のみが知られており、その実体は 明である。同様のことが、ドーパミン受容 、ムスカリン受容体またはエンドセリン受 体においても指摘されている(非特許文献5等 参照)。

 本発明は、上記の問題点に鑑みてなされ ものであり、その目的は、実体が明らかに れていないGタンパク質共役型受容体の機能 を解析する技術を提供することにある。

 本発明に係るタンパク質複合体は、Gタン パク質共役型受容体と、(1)配列番号1に記載 アミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)配列 号1に記載のアミノ酸配列において1もしく 数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加 れたアミノ酸配列からなり、かつ複合体化 たGタンパク質共役型受容体のリガンド親和 を改変する活性を有するポリペプチド;(3)配 列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌク オチドにコードされるポリペプチド;(4)配列 号2に記載の塩基配列において1もしくは数 の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩 配列からなるポリヌクレオチドにコードさ るポリペプチドであり、かつ複合体化したG ンパク質共役型受容体のリガンド親和性を 変する活性を有するポリペプチド;(5)配列番 号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポ ヌクレオチドとストリンジェントな条件下 ハイブリダイズし得るポリヌクレオチドに ードされるポリペプチドであり、かつ複合 化したGタンパク質共役型受容体のリガンド 和性を改変する活性を有するポリペプチド; あるいは(6)配列番号2に記載の塩基配列から るポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性 有しているポリヌクレオチドにコードされ ポリペプチドであり、かつ複合体化したGタ パク質共役型受容体のリガンド親和性を改 する活性を有するポリペプチドとが、結合 ていることを特徴としている。

 また、本発明に係るタンパク質複合体の 製方法は、Gタンパク質共役型受容体と、(1) 配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポ ペプチド;(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列 において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、 換もしくは付加されたアミノ酸配列からな 、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容 のリガンド親和性を改変する活性を有する リペプチド;(3)配列番号2に記載の塩基配列 らなるポリヌクレオチドにコードされるポ ペプチド;(4)配列番号2に記載の塩基配列にお いて1もしくは数個の塩基が欠失、置換もし は付加された塩基配列からなるポリヌクレ チドにコードされるポリペプチドであり、 つ複合体化したGタンパク質共役型受容体の ガンド親和性を改変する活性を有するポリ プチド;(5)配列番号2に記載の塩基配列の相 配列からなるポリヌクレオチドとストリン ェントな条件下でハイブリダイズし得るポ ヌクレオチドにコードされるポリペプチド あり、かつ複合体化したGタンパク質共役型 容体のリガンド親和性を改変する活性を有 るポリペプチド;あるいは(6)配列番号2に記 の塩基配列からなるポリヌクレオチドと70% 上の配列同一性を有しているポリヌクレオ ドにコードされるポリペプチドであり、か 複合体化したGタンパク質共役型受容体のリ ンド親和性を改変する活性を有するポリペ チドとを、脂質膜上に共存させる工程を包 することを特徴としている。

 上記構成を有することにより、本発明は Gタンパク質共役型受容体のリガンド親和性 を改変することができる。すなわち、本発明 に係るタンパク質複合体の作製方法は、Gタ パク質共役型受容体のリガンド親和性を改 する方法でもあり得る。

 本発明に係る脂質膜は、上記タンパク質 合体を含有していることを特徴としている 本発明に係る脂質膜の作製方法は、Gタンパ ク質共役型受容体と、(1)配列番号1に記載の ミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)配列番 1に記載のアミノ酸配列において1もしくは 個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加さ たアミノ酸配列からなり、かつ複合体化し Gタンパク質共役型受容体のリガンド親和性 改変する活性を有するポリペプチド;(3)配列 番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレ チドにコードされるポリペプチド;(4)配列番 2に記載の塩基配列において1もしくは数個 塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基 列からなるポリヌクレオチドにコードされ ポリペプチドであり、かつ複合体化したGタ パク質共役型受容体のリガンド親和性を改 する活性を有するポリペプチド;(5)配列番号 2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリ クレオチドとストリンジェントな条件下で イブリダイズし得るポリヌクレオチドにコ ドされるポリペプチドであり、かつ複合体 したGタンパク質共役型受容体のリガンド親 性を改変する活性を有するポリペプチド;あ るいは(6)配列番号2に記載の塩基配列からな ポリヌクレオチドと70%以上の配列同一性を しているポリヌクレオチドにコードされる リペプチドであり、かつ複合体化したGタン ク質共役型受容体のリガンド親和性を改変 る活性を有するポリペプチドとを、脂質膜 に共存させる工程を包含することを特徴と ている。

 さらに、本発明に係る形質転換体は、上 タンパク質複合体を発現していることを特 としている。本発明に係る形質転換体の作 方法は、上記タンパク質複合体を発現させ 工程を包含していることを特徴としており 好ましくは、Gタンパク質共役型受容体をコ ードする遺伝子および上記ポリペプチドをコ ードする遺伝子を、細胞に導入する工程を包 含する。

 上記構成を有することにより、本発明は リガンド親和性が改変されたGタンパク質共 役型受容体の機能解析を容易にする。

 本発明に係るスクリーニング方法は、リガ ド親和性が改変されたGタンパク質共役型受 容体の作働薬または拮抗薬をスクリーニング するために、〔I〕Gタンパク質共役型受容体 、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からな るポリペプチド;(2)配列番号1に記載のアミノ 配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠 失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列か らなり、かつ複合体化したGタンパク質共役 受容体のリガンド親和性を改変する活性を するポリペプチド;(3)配列番号2に記載の塩基 配列からなるポリヌクレオチドにコードされ るポリペプチド;(4)配列番号2に記載の塩基配 において1もしくは数個の塩基が欠失、置換 もしくは付加された塩基配列からなるポリヌ クレオチドにコードされるポリペプチドであ り、かつ複合体化したGタンパク質共役型受 体のリガンド親和性を改変する活性を有す ポリペプチド;(5)配列番号2に記載の塩基配列 の相補配列からなるポリヌクレオチドとスト リンジェントな条件下でハイブリダイズし得 るポリヌクレオチドにコードされるポリペプ チドであり、かつ複合体化したGタンパク質 役型受容体のリガンド親和性を改変する活 を有するポリペプチド;あるいは(6)配列番号2 に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド と70%以上の配列同一性を有しているポリヌク レオチドにコードされるポリペプチドであり 、かつ複合体化したGタンパク質共役型受容 のリガンド親和性を改変する活性を有する リペプチド、とを、脂質膜上に共存させて ンパク質複合体を生成する工程、ならびに II〕このタンパク質複合体を候補因子ととも にインキュベートする工程、を包含すること を特徴としている。本発明に係るスクリーニ ング方法は、細胞内Ca 2+ 濃度を測定する工程、または細胞内イノシト ールリン酸の代謝を測定する工程をさらに包 含することが好ましい。

 本発明に係る形質転換体の作製方法は、 ガンド親和性が改変されたGタンパク質共役 型受容体を発現している形質転換体を作製す るために、Gタンパク質共役型受容体が発現 ている細胞において、以下のポリペプチド:( 1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポ リペプチド;(2)配列番号1に記載のアミノ酸配 において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加されたアミノ酸配列からな り、かつ複合体化したGタンパク質共役型受 体のリガンド親和性を改変する活性を有す ポリペプチド;(3)配列番号2に記載の塩基配列 からなるポリヌクレオチドにコードされるポ リペプチド;(4)配列番号2に記載の塩基配列に いて1もしくは数個の塩基が欠失、置換もし くは付加された塩基配列からなるポリヌクレ オチドにコードされるポリペプチドであり、 かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体 リガンド親和性を改変する活性を有するポ ペプチド;(5)配列番号2に記載の塩基配列の相 補配列からなるポリヌクレオチドとストリン ジェントな条件下でハイブリダイズし得るポ リヌクレオチドにコードされるポリペプチド であり、かつ複合体化したGタンパク質共役 受容体のリガンド親和性を改変する活性を するポリペプチド;あるいは、(6)配列番号2に 記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと 70%以上の配列同一性を有しているポリヌクレ オチドにコードされるポリペプチドであり、 かつ複合体化したGタンパク質共役型受容体 リガンド親和性を改変する活性を有するポ ペプチド、の発現を抑制する工程を包含す ことを特徴としている。

 上記構成を有することにより、本発明は リガンド親和性が改変されたGタンパク質共 役型受容体の機能解析を容易にするとともに 、Gタンパク質共役型受容体のリガンド親和 を改変することができる。すなわち、本発 は、Gタンパク質共役型受容体のリガンド親 性を改変する方法でもあり得る。

 本発明に係る作製方法において、上記ポ ペプチドは内因性タンパク質であることが ましく、上記ポリペプチドの発現を阻害す 工程はRNAi法によって行われることが好まし い。また、上記細胞は、外因性のGタンパク 共役型受容体を発現させている形質転換体 あってもよい。

 本発明に係るスクリーニング方法は、リガ ド親和性が改変されたGタンパク質共役型受 容体の作働薬または拮抗薬をスクリーニング するために、〔I〕Gタンパク質共役型受容体 発現している細胞において、以下のポリペ チド:(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列か なるポリペプチド;(2)配列番号1に記載のアミ ノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸 欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配 からなり、かつ複合体化したGタンパク質共 型受容体のリガンド親和性を改変する活性 有するポリペプチド;(3)配列番号2に記載の 基配列からなるポリヌクレオチドにコード れるポリペプチド;(4)配列番号2に記載の塩基 配列において1もしくは数個の塩基が欠失、 換もしくは付加された塩基配列からなるポ ヌクレオチドにコードされるポリペプチド あり、かつ複合体化したGタンパク質共役型 容体のリガンド親和性を改変する活性を有 るポリペプチド;(5)配列番号2に記載の塩基 列の相補配列からなるポリヌクレオチドと トリンジェントな条件下でハイブリダイズ 得るポリヌクレオチドにコードされるポリ プチドであり、かつ複合体化したGタンパク 共役型受容体のリガンド親和性を改変する 性を有するポリペプチド;あるいは、(6)配列 番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレ チドと70%以上の配列同一性を有しているポ ヌクレオチドにコードされるポリペプチド あり、かつ複合体化したGタンパク質共役型 容体のリガンド親和性を改変する活性を有 るポリペプチド、の発現を阻害する工程、 らびに〔II〕該細胞を候補因子とともにイ キュベートする工程、を包含することを特 としている。本発明に係るスクリーニング 法は、細胞内Ca 2+ 濃度を測定する工程、または細胞内イノシト ールリン酸の代謝を測定する工程をさらに包 含することが好ましい。

 本発明において、上記タンパク質複合体を 成するGタンパク質共役型受容体は、アドレ ナリン受容体、ドーパミン受容体、ムスカリ ン受容体またはエンドセリン受容体であるこ とが好ましく、上記アドレナリン受容体はα 容体であってもβ受容体であってもよい。 た、上記ドーパミン受容体はD2受容体である であることが好ましい。なお、上記α受容体 α 1 受容体であることが好ましく、さらにはα 1A サブタイプであることがより好ましく、好ま しい実施形態において、本発明に係るタンパ ク質複合体は、アドレナリン受容体のα 1L サブタイプまたはβ 1L サブタイプである。

 本発明の他の目的、特徴、および優れた は、以下に示す記載によって十分分かるで ろう。また、本発明の利点は、添付図面を 照した次の説明によって明白になるであろ 。

種々の濃度の[ 3 H]-silodosinの、α 1L 細胞に対する飽和結合曲線を示す図である。 (a)は、α 1L 細胞およびα 1A 細胞のprazosinに対する感受性を示す図である (b)は、α 1L 細胞、α 1L 細胞のホモジネートおよびα 1A 細胞のホモジネートを用いた、prazosinに対す 感受性を示す図である。

 〔1:タンパク質複合体〕
 本発明は、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)と 特定のポリペプチドとのタンパク質複合体を 提供する。本明細書中で使用される場合、用 語「複合体」は複数の物質があわさって一体 をなしているものが意図され、「複合体化」 は「一体化」と交換可能に使用される。なお 、複合体を形成する複数の物質は、近接して 相互作用していればよく、互いに結合してい ても結合していなくてもよい。好ましい実施 形態において、本発明に係るタンパク質複合 体は、GPCRと特定のポリペプチドとが近接し 相互作用している状態であり、その結果、 ガンド親和性が改変されたGPCRとして機能す 。

 本明細書において、特定のポリペプチドと 互作用してリガンド親和性が改変されるGPCR としてアドレナリン受容体(特に、α 1A サブタイプ)を例に挙げて本発明を説明する 、本発明を構成するGPCRはアドレナリン受容 に限定されないことを、本明細書を読んだ 業者は容易に理解する。また、当業者であ ば、本発明を構成するGPCRの配列情報を容易 に入手し得る。

 受容体として最も初期に同定されたアド ナリン受容体(AR)は、生体において最も重要 な受容体の1つであり、自律神経系(交感神経 )の働きを司ることが知られている。アドレ ナリン受容体は、アドレナリン、ノルアドレ ナリンなどが結合することにより、様々な部 位において平滑筋の収縮および代謝の亢進を 引き起こし、血圧および脈拍の上昇、瞳孔の 散大、血中ブドウ糖の上昇といった生体反応 を惹起する。

 研究の進歩や様々な新しい薬物の開発に伴 、アドレナリン受容体は様々なタイプに分 されることが明らかになってきた。アドレ リン受容体は、古くは、イソプロテレノー 、フェントラミンなどの薬物に対する反応 の違いからα受容体とβ受容体に分類され、 さらに、薬理学的なサブタイプ(α 1 受容体、α 2 受容体、β受容体)に分類された。各受容体は 、組織ごとに異なった分布を示し、異なった 働きをしていることが知られている。例えば 、α 1 アドレナリン受容体は、血管平滑筋、前立腺 などの収縮において特に重要な働きをするこ とが知られており、脳など中枢神経系にも分 布して意識および情動の調節に関与している ことが知られている。

 ヒトゲノム解析が終わり、多くのタンパク の構造および機能が遺伝子レベルで示され ようになった。α 1 アドレナリン受容体の遺伝子においてもα 1A 、α 1B 、α 1D の3つのサブタイプが同定された。これらの 伝子によるサブタイプ分類は、薬理学的な ブタイプ分類とよく一致することが知られ いる。このように、基本的には1つの遺伝子 ら1種類のサブタイプ受容体タンパク質が生 成されると考えられている。

 しかし、α 1 アドレナリン受容体において、薬理学的なサ ブタイプのいずれにも属さない受容体が存在 することが、以前より指摘されている。この 未知のα 1 サブタイプは、代表的なα 1 遮断薬(例えば、prazosin)に対する親和性が低 ため、α 1L サブタイプと呼ばれるが、その遺伝子は未だ クローニングされていない。

 α 1 アドレナリン受容体の分類および薬物選択性 を表1に示す。

 なお、表1に示した各化合物の効果について の典拠を以下に示す。
1. Muramatsu, I. et al. Pharmacol. Commun., 6: 23 ( 1995)
2. Ford, AP. et al. Mol. Pharmacol., 49: 209 (1996)
3. Murata, S. et al. J. Urol., 164: 578 (2000)
4. Hiraizumi-Hiraoka, Y. et al. J. Pharmacol. Exp. T her., 310: 995 (2004)
5. Murata, S. et al. Br. J. Pharmacol., 127: 19 (1 999)。

 近年、薬理学的機能実験および薬理学的結 実験によって、種々の哺乳動物の下部尿路 (ヒト前立腺など)においてα 1L サブタイプの活性が検出されている。α 1L サブタイプの機能を明らかにすることは、α 1 アドレナリン受容体を標的とした、哺乳動物 の下部尿路系に対する従来の治療をより発展 させるために重要である。しかしながら、こ のようなα 1L サブタイプ活性は、組織をホモジナイズして 行う従来の結合実験では検出されなかった。 ホモジナイズした組織からはα 1L サブタイプ活性が検出されないということは 、組織からのα 1L サブタイプの精製が非常に困難であることを 意味する。α 1L サブタイプの実体を明らかにしない限り、α 1L サブタイプの機能解析、特に受容体の活性を 調節する薬剤(アゴニスト、アンタゴニスト ど)を開発することは非常に困難である。

 本発明者らは、実体が不明なα 1L サブタイプが、α 1A サブタイプ分子に何らかの副次的な分子が結 合することによって構成されていると考えた 。すなわち、α 1L サブタイプを構成しているα 1A サブタイプ分子とその副次的な分子は、組織 をホモジナイズすることによって両者間の相 互作用が解かれ、その結果、α 1L サブタイプがα 1A サブタイプにその特性を変化させると考えた 。鋭意検討を行った結果、本発明者らは、特 定のタンパク質がα 1A サブタイプに結合すること、およびこのタン パク質をα 1A サブタイプとともに培養細胞に共発現させる とα 1L サブタイプの表現型が発現することを確認し た。すなわち、本発明者らは、α 1L サブタイプがタンパク質複合体からなること を見出し、この複合体を構成するタンパク質 を特定することにより、本発明を完成するに 至った。

 一実施形態において、本発明は、アドレナ ン受容体のα 1L サブタイプを形成するタンパク質複合体を提 供する。すなわち、本実施形態に係るタンパ ク質複合体は、アドレナリン受容体のα 1L サブタイプである。本実施形態によれば、実 体が明らかになったα 1L サブタイプの関連するあらゆる疾患に対する 治療を提供することができる。

 本実施形態に係るタンパク質複合体を構 するポリペプチドは、CRELD(cysteine-rich with E GF-like domains)1αタンパク質としてすでに公知 あり、そのミスセンス変異が房室中隔欠損 関連することが示唆されている(Gene 293: 47- 57 (2002)、Am. J. Hum. Genet. 72: 1047-1052 (2003)) このポリペプチドの配列情報はNCBIアクセッ ション番号NM_015513として提供され、本明細書 において配列番号1(アミノ酸配列)および配列 番号2(塩基配列)として示される。すなわち、 本実施形態に係るタンパク質複合体を構成す るポリペプチドは、配列番号1に記載のアミ 酸配列からなるポリペプチドであっても、 列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌク オチドにコードされるポリペプチドであっ もよい。

 なお、本実施形態に係るタンパク質複合 を構成するポリペプチドは、配列番号1に記 載のアミノ酸配列からなるポリペプチドに限 定されず、その活性を保持した変異体ポリペ プチドであってもよい。変異体ポリペプチド としては、例えば、配列番号1に記載のアミ 酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が 失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列 らなり、かつGPCRと複合体化してそのGPCRの ガンド親和性を改変する活性を有するポリ プチドが挙げられる。

 当業者は、当該分野の技術常識を用いれ 、特定のポリペプチドのアミノ酸配列にお て1もしくは数個のアミノ酸を欠失、置換も しくは付加した変異体ポリペプチドを容易に 作製し得る。また、当業者は、本明細書の記 載および技術常識に基づけば、その変異体ポ リペプチドが元のポリペプチドと同じ活性を 保持しているか否かを、容易に確認し得る。

 また、本実施形態に係るタンパク質複合 を構成するポリペプチドをコードするポリ クレオチドは、配列番号2に記載の塩基配列 からなるポリヌクレオチドに限定されず、複 合体化したGPCRのリガンド親和性を改変する 性を保持しているポリペプチドをコードす 変異体ポリヌクレオチドであればよい。変 体ポリヌクレオチドとしては、例えば、(1) 列番号2に記載の塩基配列において1もしくは 数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された 塩基配列からなるポリヌクレオチド、(2)配列 番号2に記載の塩基配列の相補配列からなる リヌクレオチドとストリンジェントな条件 でハイブリダイズし得るポリヌクレオチド あるいは(3)配列番号2に記載の塩基配列から るポリヌクレオチドと70%、好ましくは80%、 り好ましくは85%、またはそれ以上の配列同 性を有しているポリヌクレオチドが挙げら るがこれらに限定されない。

 当業者は、当該分野の技術常識を用いれ 、特定のポリヌクレオチドの塩基配列にお て1もしくは数個の塩基を欠失、置換もしく は付加した変異体ポリヌクレオチド、特定の ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件 下でハイブリダイズし得る変異体ポリヌクレ オチド、または特定のポリヌクレオチドと70% 以上の配列同一性を有している変異体ポリヌ クレオチドを容易に作製し得る。また、当業 者は、本明細書の記載および技術常識に基づ けば、その変異体ポリヌクレオチドがコード するポリペプチドが、元のポリヌクレオチド がコードするポリペプチドと同じ活性を保持 しているか否かを、容易に確認し得る。

 本明細書中で使用される場合、用語「ス リンジェントなハイブリダイゼーション条 」は、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホル ムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三 トリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5 ×デンハート液、10%硫酸デキストラン、およ 20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて4 2℃で一晩インキュベーションした後、約65℃ にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄することが 図される。

 なお、具体的なハイブリダイゼーション 順は、当該分野において周知の方法(例えば 、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第3版,J.Sa mbrookおよびD.W.Russll編,Cold Spring Harbor Laborator y,NY(2001)」(本明細書中に参考として援用され 。)に記載されている方法)に従って行われ ばよい。

 このように、本発明に係るタンパク質複 体を構成するGPCRとしてアドレナリン受容体 を例に挙げて本発明を説明したが、本発明に 係るタンパク質複合体は、GPCRと、(1)配列番 1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチ ;(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列におい 1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もし は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ 合体化したGタンパク質共役型受容体のリガ ンド親和性を改変する活性を有するポリペプ チド;(3)配列番号2に記載の塩基配列からなる リヌクレオチドにコードされるポリペプチ ;(4)配列番号2に記載の塩基配列において1も くは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加 れた塩基配列からなるポリヌクレオチドに ードされるポリペプチドであり、かつ複合 化したGタンパク質共役型受容体のリガンド 親和性を改変する活性を有するポリペプチド ;(5)配列番号2に記載の塩基配列の相補配列か なるポリヌクレオチドとストリンジェント 条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレ チドにコードされるポリペプチドであり、 つ複合体化したGタンパク質共役型受容体の リガンド親和性を改変する活性を有するポリ ペプチド;あるいは(6)配列番号2に記載の塩基 列からなるポリヌクレオチドと70%以上の配 同一性を有しているポリヌクレオチドにコ ドされるポリペプチドであり、かつ複合体 したGタンパク質共役型受容体のリガンド親 和性を改変する活性を有するポリペプチドと が、複合体化していればよいといえる。すな わち、本発明に係るタンパク質複合体を構成 するGPCRはアドレナリン受容体に限定されず ドーパミン受容体、ムスカリン受容体また エンドセリン受容体であってもよい。また 当業者であれば、本発明を構成するGPCRの配 情報を公知のデータベースから容易に入手 得るので、当業者は、本明細書の記載およ 技術常識に基づいて、所望のタンパク質複 体を容易に作製し得る。

 〔2:タンパク質複合体を含有している脂質 〕
 本発明はまた、GPCRと特定のポリペプチドと のタンパク質複合体の作製方法を提供する。 本発明に係るタンパク質複合体の作製方法は 、GPCRおよび特定のポリペプチドを脂質膜上 共存させる工程を包含することを特徴とし いる。すなわち、本発明は、タンパク質複 体を含有している脂質膜およびその作製方 を提供する。

 本発明に係る脂質膜は、上述したタンパ 質複合体を含有していることを特徴として る。本発明に係る脂質膜は、天然由来の脂 膜であっても、人工の脂質膜であってもよ 。脂質膜が天然由来である場合、脂質膜は 体膜であることが意図され、脂質膜が人工 ある場合は、脂質膜は脂質平面膜またはリ ソームであることが意図される。

 1つの局面において、本発明に係る脂質膜 は、本発明に係るタンパク質複合体を構成す るポリペプチドをコードするポリヌクレオチ ドが導入された形質転換体の生体膜であり得 る。このような形質転換体は、上記ポリペプ チドが生体膜状に発現され得るように、上記 ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを生物 中に導入することによって取得される。なお 、形質転換体に用いられる生物は、原核生物 であっても真核生物であってもよい。

 他の局面において、本発明に係る脂質膜 、本発明に係るタンパク質複合体を構成す ポリペプチドを含有している脂質二重層で り得る。脂質二重層は、極性脂質(特にリン 脂質)が二層となった膜状の構造である。脂 二重層構造が二次元構造として安定化する は球状であるが、末端を水分子から隔離す ば平面構造になり得る。本明細書中で使用 れる場合、人工的に作製される脂質二重層 うち球状のものをリポソーム、平面状のも を脂質平面膜という。当該分野において、 工的な脂質二重層は、膜タンパク質(例えば チャネルタンパク質)の活性をin vitroで測定 する際に使用されている。このように、当業 者は、脂質平面膜を容易に作製し得、目的の タンパク質(ポリペプチド)を脂質平面膜に保 させ得る。また、リポソームは、ベジクル も称される脂質人工膜であり、脂質(例えば 、リン脂質)の懸濁液を激しく攪拌して分散 せた後に超音波処理を施すことにより作製 れ得る。当該分野において、リポソームを いた研究は広く行われており、細胞膜モデ として利用されたり、薬物送達(DDS)の手段の 一つとして利用されたりしている。このよう に、当業者は、リポソームを容易に作製し得 、目的のタンパク質(ポリペプチド)をリポソ ムに保持させ得る。

 一実施形態において、本発明は、アドレナ ン受容体のα 1L サブタイプを含有している脂質膜を提供する 。上述したように、アドレナリン受容体のα 1L サブタイプは、アドレナリン受容体のα 1A サブタイプとCRELD1αタンパク質とのタンパク 複合体である。アドレナリン受容体のα 1A サブタイプおよびCRELD1αタンパク質はいずれ 膜結合型のタンパク質であり、上述したよ に、ホモジナイズ(膜破壊)することによっ 互いの相互作用が解かれてしまう。すなわ 、両者を脂質膜上に配置しかつ保持するこ により、互いの相互作用が発現される。

 本実施形態に係る脂質膜が生体膜である場 、本実施形態に係る脂質膜の作製方法は、 ドレナリン受容体のα 1L サブタイプを発現する形質転換体を作製する 方法でもあり得、アドレナリン受容体のα 1A サブタイプとCRELD1αタンパク質とを共発現す 工程を包含すればよいといえる。アドレナ ン受容体のα 1A サブタイプの配列情報はNCBIアクセッション 号U03866またはNM_000680として提供され、本明 書において配列番号3(アミノ酸配列)および 列番号4(塩基配列)として示される。すなわ 、本実施形態に係るタンパク質複合体の作 方法は、配列番号2に記載の塩基配列からな ポリヌクレオチドを含むベクターと配列番 4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチ ドを含むベクターとを用いて宿主を形質転換 する工程を包含すればよい。

 上記ベクターは、目的のポリヌクレオチ を作動可能に連結した発現ベクターである とが好ましい。本明細書中で使用される場 、用語「作動可能に連結」は、目的のペプ ド(またはタンパク質)をコードするポリヌ レオチドが、プロモータなどの制御領域の 御下にあって、このペプチド(またはタンパ 質)を宿主中で発現し得る形態にあることが 意図される。目的のペプチドをコードするポ リヌクレオチドを発現ベクターに「作動可能 に連結」して所望のベクターを構築する手順 は当該分野において周知である。また、発現 ベクターを宿主に導入する方法もまた、当該 分野において周知である。よって、当業者は 、容易に所望のペプチドを宿主内に生成させ ることができる。

 本明細書中で使用される場合、用語「形 転換体」は、細胞、組織または器官だけで く、生物個体もまた意図される。形質転換 対象となる生物としても、特に限定されな が、各種微生物、植物および動物が挙げら る。なお、本発明に係る形質転換体は、少 くとも、本発明に係るタンパク質複合体を 成するポリペプチドをコードするポリヌク オチドが導入されており、これらのポリペ チドを発現していればよいといえる。すな ち、発現ベクター以外の手段によって生成 れた形質転換体も、本発明の技術的範囲に まれる点に留意すべきである。また、本発 に係る形質転換体は、本発明に係るタンパ 質複合体を構成するポリペプチドが安定的 発現していることが好ましいが、目的のポ ペプチドが一過性に発現するものであって よい。なお、本実施形態に係るタンパク質 合体を共存させた形質転換体を用いれば、 主細胞内のセカンドメッセンジャーの動態 観察することによりこの複合体の作働薬ま は拮抗薬をスクリーニングすることができ 。

 本実施形態に係る脂質膜が人工の脂質膜で る場合、本実施形態に係る脂質膜の作製方 は、アドレナリン受容体のα 1L サブタイプを含有している脂質平面膜または リポソームを作製する方法でもあり得、より 詳細には、アドレナリン受容体のα 1A サブタイプとCRELD1αタンパク質とを人工の脂 膜上に再構成する工程を包含すればよいと える。当業者は、当該分野の技術常識に従 ば、膜タンパク質を人工の脂質膜上に容易 再構成することができる。本実施形態に係 タンパク質複合体を共存させた人工の脂質 を用いれば、この複合体のリガンド親和性 測定することができる。

 〔3:脂質膜の利用〕
 上述した脂質膜の作製方法が、タンパク質 合体の作製方法であり得、GPCRのリガンド親 和性を改変する方法でもあり得ることを、当 業者は容易に理解する。すなわち、本発明は 、GPCRのリガンド親和性を改変する方法を提 する。

 また、本発明に係る脂質膜を用いれば、 ガンド親和性が改変されたGPCRの作働薬また は拮抗薬をスクリーニングすることができる 。すなわち、本発明は、リガンド親和性が改 変されたGPCRの作働薬または拮抗薬をスクリ ニングする方法を提供する。

 本発明に係るスクリーニング方法は、上 したタンパク質複合体を脂質膜上に生成す 工程、およびこのタンパク質複合体を候補 子とともにインキュベートする工程を包含 ることを特徴としている。なお、本明細書 で使用される場合、「インキュベートする は複数の物質を共存させかつ互いに十分接 し得る状態に置くことが意図される。

 好ましい実施形態において、本発明に係る クリーニング方法は、目的のGPCRを含有して いる形質転換体(例えば、アドレナリン受容 のα 1L サブタイプを発現させた細胞)を候補因子と もにインキュベートする工程を包含する。 実施形態に係るスクリーニング方法では、 胞におけるセカンドメッセンジャーの変動( えば、Gタンパク質がGsまたはGiの場合はcAMP 、Gqの場合はイノシトール3リン酸およびCa 2+ 濃度)を測定することにより、目的のGPCR(例え ば、アドレナリン受容体のα 1L サブタイプ)の作働薬または拮抗薬をスクリ ニングすることができる。

 アドレナリン受容体のα 1L サブタイプの作働薬は、失禁治療薬、散瞳薬 、緑内障治療薬、中枢刺激薬として利用可能 であり、アドレナリン受容体のα 1L サブタイプの拮抗薬は、排尿障害治療薬、レ イノー病治療薬、微小循環障害治療薬、降圧 薬、中枢抑制薬、腎血流改善薬、利尿薬とし て利用可能である。また、アドレナリン受容 体のβ 1L サブタイプは心臓病に関連し、ドーパミンD2 容体やムスカリン受容体は中枢神経疾患に 連することが知られているので、これらの 働薬または拮抗薬もまた有用である。

 〔4:ノックダウン細胞およびその利用〕
 本発明はまた、GPCRとタンパク質複合体を形 成するポリペプチドをノックダウンした形質 転換体およびその作製方法を提供する。本発 明に係る形質転換体の作製方法は、内因性の ポリペプチドの発現を阻害する工程を包含す ることを特徴としている。

 例えば、GPCRと複合体化してタンパク質複 合体を形成するポリペプチドの1つであるCRELD 1αタンパク質は種々の細胞に発現している。 よって、内因性のCRELD1αタンパク質の発現を 害した形質転換体は、上記タンパク質複合 の機能を解析したり標的化合物(例えば、作 働薬または拮抗薬)をスクリーニングしたり る際に用いるコントロール細胞として非常 有用である。本項で述べるノックダウン細 は単独で利用されてもよいが、上述のタン ク質複合体またはタンパク質複合体含有脂 膜とともに利用されることが好ましい。な 、対象の細胞に発現しているGタンパク質共 型受容体は、内因性であっても外因性であ てもよい。

 1つの局面において、本発明は、Gタンパク 共役型受容体が発現している細胞において 因性のCRELD1αタンパク質の発現を阻害する工 程を包含し得る。これにより、細胞に発現し ていたGタンパク質共役型受容体のリガンド 和性を改変することができる。すなわち、 発明に係る形質転換体の作製方法は、リガ ド親和性が改変されたGタンパク質共役型受 体を発現している形質転換体の作製方法で り得、Gタンパク質共役型受容体のリガンド 親和性を改変する方法でもあり得る。一実施 形態において、本発明は、アドレナリン受容 体のα 1L サブタイプを発現している細胞における内因 性のCRELD1αタンパク質の発現を阻害する工程 包含し得る。これにより、α 1L サブタイプの表現型を示す細胞をα 1A サブタイプの表現型を示す細胞に改変し得る 。

 内因性のCRELD1αタンパク質の発現を阻害 る手法としては、RNAi法を用いることが好ま い。RNAi法は当該分野において周知の技術で あり、例えば、配列番号5に示される塩基配 からなるオリゴヌクレオチドを目的の細胞 導入することによって内因性のCRELD1αタンパ ク質の発現を首尾よく阻害することができる 。なお、配列番号5に示される塩基配列から るオリゴヌクレオチドを目的の細胞に導入 るためのベクターを用いる場合は、配列番 6に示される塩基配列からなるオリゴヌクレ チドをアンチセンスに用いることが好まし が、これに限定されない。

 本発明はさらに、上述した形質転換体を いることを特徴とする、リガンド親和性が 変されたGタンパク質共役型受容体の作働薬 または拮抗薬をスクリーニングする方法を提 供する。

 本発明は上述した各実施形態に限定され ものではなく、請求項に示した範囲で種々 変更が可能であり、異なる実施形態にそれ れ開示された技術的手段を適宜組み合わせ 得られる実施形態についても本発明の技術 範囲に含まれる。

 また、本明細書中に記載された学術文献 よび特許文献の全てが、本明細書中におい 参考として援用される。

 〔1.構築物〕
 ヒトアドレナリン受容体alpha-1A遺伝子(ADRA1A) を、ヒト前立腺ライブラリからPCR法を用いて クローニングした。クローニングした遺伝子 は、全長1465bpであり、ORF配列が従来報告され ているヒトalpha-1A遺伝子(NCBIアクセッション 号:U03866またはNM_000680)と完全に一致した。ま た、その前後の配列も、Hirasawa et al. (1993) 報告のものと一致した。

 CRELD1α遺伝子を、ヒト前立腺cDNAライブラ からクローニングした。配列決定の結果、 ローニングした遺伝子は、Rupp et al. (2002) 報告したもの(NCBIアクセッション番号:NM_0155 13)と一致した。

 次いで、ADRA1A遺伝子のコード領域をpIRES(C lontech社Catalog番号 PT3266-5)のマルチクローニ グサイトAのEcoRI制限酵素サイトにサブクロ ニングした。また、CRELD1αのコード領域をpIR ESのマルチクローニングサイトBのXbaI制限酵 サイトにサブクローニングした。なお、遺 子の両端にはサブクローニングのために制 酵素のアダプターを付加した。

 〔2.形質転換体の作製〕
 通常の方法で上記のベクターを増幅/精製し 、Chinese Hamster卵巣由来細胞であるCHO-K1細胞 、Lipofectamine 2000(Invitrogen社)を用いて、製造 者のプロトコールに従ってトランスフェク した。トランスフェクトの2日後より、抗生 物質ジェネティシン(G418) 1200μg/mlをDMEM培地 添加した。トランスフェクトしなかった細 、すなわち、Lipofectamine 2000などの操作を全 同様に行い、ベクターのみを加えなかった 胞が完全に死滅するG418の濃度は、1000μg/ml あった。G418耐性細胞を1穴あたり平均0.5個の 細胞が入るように希釈懸濁して、96穴プレー に分注し、単一コロニーを選択した。この 作を3回繰り返すことにより、ADRA1A遺伝子と CRELD1α遺伝子を共発現したstable clone(α 1L 細胞)を作製した。また、コントロールとし 、ADRA1A遺伝子のみを安定発現した細胞(α 1A 細胞)およびCRELD1α遺伝子のみを安定発現した 細胞(CRELD1α細胞)を作製した。

 〔3.結合実験〕
 結合実験に用いた薬物とその正式化学名は 下の通り。silodosin, prazosin, tamsulosin, RS-1705 3 (N-[2-(2-cyclopropylmethoxyphenoxy)ethyl]-5-chloro-α,α- dimethyl-1H-indole-3-ethanamine hydrochloride), BMY 7378 (8-[2-[4-(2-methoxyphenyl)-1-piperazinyl]ethyl]8-azaspiro[4 ,5]decane7,9-dione dihydrochloride)。

 放射性リガンド[ 3 H]-silodosinを用いた薬理学的結合法にてStable c loneを検討した。全細胞法whole cell binding meth odにて、実験を行った。即ち、実験2~3日前に ミコンフルエントになるように細胞を播種 、氷冷PBSで2回洗浄した後に、スクレーパー にて細胞を掻き取った。回収した細胞を、Kre bs-HEPES溶液に再懸濁し、[ 3 H]-silodosinおよび必要に応じて他の薬剤ととも に、4℃で4時間インキュベートした。その後 細胞を、ポリエチレンイミンで前処理したW hatmann GC/Fフィルタで濾過/洗浄し、液体シン レーションカウンタにて、放射能を測定し 。非特異的結合を、30μM phentolamine存在下で の結合と評価した。

 〔A〕全細胞法による飽和結合実験
 α 1L 細胞に対して、種々の濃度(30~500pM)の[ 3 H]-silodosinの結合を調べた(図1)。図1は全細胞 で得られた飽和結合曲線を示す。[ 3 H]-silodosinのα 1L 細胞に対する特異的結合は、最大結合量(Bmax)  134fmol/mg proteinであり、Kd値 843pM(pK D =9.1)であった。

 〔B〕競合結合実験
 silodosinはα 1A サブタイプとα 1L サブタイプにしか高親和性に結合しないこと が知られている。ここで、高親和性とは、Kd が1nM以下であることを意味する。α 1L 細胞に発現する受容体の薬理学的特性を同定 するため、300pM [ 3 H]-silodosinの結合部位に対するprazosinの競合結 実験を、全細胞結合実験法を用いて行った 対照には、α 1A 細胞を用いた。上記の通り、この濃度では、 [ 3 H]-silodosinはα 1A サブタイプおよびα 1L サブタイプにしか結合することができない。

 図2の(a)の競合曲線に示すように、α 1L 細胞は、大部分(88%以上)の受容体が、prazosin 対して低い感受性を示した(pK i =7.6)。また、RS-17053に対しても同様に感受性 低く、かつtamsulosinに対しては高い感受性を していた。また、BMY 7378に対しては、低い 受性しか示さなかった(表2)。これに対し、 ントロールとして用いたα 1A 細胞のprazosin(図2)、tamsulosin、RS-17053に対する 受性(pK i 値)はそれぞれ9.5、9.9、8.8と高値であり、こ まで報告されているα 1A の特性と一致した(表2)。

 なお、表中、α 1L 細胞、α 1L 細胞およびヒト前立腺組織片での[ 3 H]-silodosin結合に対する競合薬物の阻害定数(K i )を、-logK i (pK i )の値として示す。ただし、[ 3 H]-silodosinは、飽和結合曲線より求めたpK D 値(解離平衡定数)を示す(数値は3~4例の平均値 )。

 また、図2の(b)には、α 1L 細胞とα 1L 細胞のホモジネートを用いてprazosinに対する 受性を調べた結果を示す。ホモジネートに いては、α 1L 細胞は、prazosinに対してα 1A 細胞と同様の高い感受性を示した。この事実 は、前立腺や脳などの組織をホモジナイズす ると、α 1L 受容体が観察されなく事実とよく一致する。

 表2に、上記結果とヒト前立腺などで得られ ている結果を対比して示す。ADRA1A遺伝子とCRE LD1α遺伝子を共発現させたα 1L 細胞の受容体特性は、α 1A 受容体とはまったく異なるもので、ヒト前立 腺などで報告されているα 1L 受容体に薬理学的特性はよく一致した。した がって、α 1L 細胞はα 1A 細胞と異なり、生体でのα 1L 受容体を発現した細胞系と考えられた。

 〔4.細胞内Ca 2+ 測定実験〕
 さらに、α 1A 細胞に内因性に発現している可能性のある、 CRELD1αの影響を完全に取り除くために、RNAi法 を用いて、CRELD1αの発現をノックダウンした 胞(以下、KD細胞)を作製した。RNAi法を用い 遺伝子発現を抑制するために、市販のpSilence r TM 4.1-CMV hygro(Ambion社)に対して、その取扱説明 に従って、chinese hamster CRELD1αのmRNAのコー 領域を含んだオリゴヌクレオチド(センス配 ;GATCCAGGCGACTTAGTGTTCACCTTCAAGAGAGGTGAACACTAAGTCGCCTTTA: 列番号5、アンチセンス配列;AGCTTAAAGGCGACTTAGTG TTCACCTCTCTTGAAGGTGAACACTAAGTCGCCTG:配列番号6)を挿入 たベクターを作製し、上述したα 1A 細胞に上記と同様の手法でトランスフェクト した。このKD細胞を用いて、蛍光色素Fura-2を いた蛍光比測光法により、ノルアドレナリ に対する細胞内Ca 2+ 応答を調べた。KD細胞のノルアドレナリンに るCa 2+ 応答のpEC 50 値は、7.9であった。一方、この細胞を、プラ ゾシン10 -8 Mにて2分間予め処置しておくと、ノルアドレ リンに対するCa 2+ 応答の用量反応曲線は右方に移動し、プラゾ シンのpK B 値は9.3と計算された。このことから、KD細胞 おけるノルアドレナリンに対するCa 2+ 応答は、α 1A サブタイプの特性と一致した。

 このように、α 1A サブタイプの遺伝子を発現させたCHO細胞にお ける内因性のCRELD1αの発現をRNAi法にて抑制す ると、完全にα 1A 受容体特性を示した。なお、CHO細胞にα 1A サブタイプの遺伝子を発現させてCa 2+ 応答などの受容体機能を調べた実験が、これ までにいくつか存在する。しかし、それらの 実験で示された受容体特性については、必ず しも一致した見解が得られていなかった。

 本発明を用いれば、実体が不明であったG タンパク質共役型受容体を明らかにし、この 受容体が関連するあらゆる疾患に対する治療 を提供することができる。また、Gタンパク 共役型受容体のリガンド親和性を改変する とができる。

 発明の詳細な説明の項においてなされた 体的な実施形態または実施例は、あくまで 、本発明の技術内容を明らかにするもので って、そのような具体例にのみ限定して狭 に解釈されるべきものではなく、本発明の 神と次に記載する請求の範囲内において、 ろいろと変更して実施することができるも である。

 α 1L -ARは、下部尿路系に発現していることが明ら かになっており、我々の開発したα 1L -AR発現細胞は、前立腺肥大や失禁などの排尿 障害に対する治療薬の開発に極めて有用なも のであると考えられる。また、α 1L -ARの関連するあらゆる疾患に対する治療薬の スクリーニング法としても、極めて有用であ ると考えられる。