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Patent Searching and Data


Title:
INTERFERON-β PRODUCTION PROMOTER, AND METHOD FOR PRODUCTION THEREOF
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/005123
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is an interferon-β production promoter. Also disclosed is a method for producing the interferon-β production promoter. The interferon-β production promoter comprises a culture material, a cell or a bacterial ingredient of a lactic acid bacterium as an active ingredient. As the bacterial ingredient, RNA can be used. As the lactic acid bacterium, a bacterium belonging to the genus Lactobacillus, Tetragenococcus, Pediococcus or Streptococcus can be used. The interferon-β production promoter can be produced by culturing a lactic acid bacterium and collecting a culture material, a cellor a bacterial ingredient of the lactic acid bacterium.

Inventors:
KAWASHIMA TADAOMI
KANEKO DAISUKE
MASUDA IKUKO
TSUJI NORIKO
KOSAKA AKEMI
Application Number:
PCT/JP2008/062065
Publication Date:
January 08, 2009
Filing Date:
July 03, 2008
Export Citation:
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Assignee:
KIKKOMAN CORP (JP)
NAT INST OF ADVANCED IND SCIEN (JP)
KAWASHIMA TADAOMI
KANEKO DAISUKE
MASUDA IKUKO
TSUJI NORIKO
KOSAKA AKEMI
International Classes:
A61K35/74; A23L1/30; A23L33/10; A23L33/135; A61K31/7105; A61K35/744; A61P1/16; A61P31/14; A61P31/16; A61P31/20; A61P35/00; A61P37/00; A61P37/04; A61P37/08; A61P43/00
Domestic Patent References:
WO2005115420A12005-12-08
Foreign References:
JPH09124496A1997-05-13
Other References:
KITAZAWA H. ET AL.: "INTERFERON INDUCTION IN MURINE PERITONEAL MACROPHAGE BY STIMULATION WITH LACTOBACILLUS-ACIDOPHILUS", MICROBIOLOGY AND IMMUNOLOGY, vol. 36, no. 3, 1992, pages 311 - 315
MATSUMURA K. ET AL.: "Interferon induction by murine peritoneal macrophage stimulated with Lactobacillus gasseri", ANIMAL SCIENCE AND TECHNOLOGY, vol. 63, no. 11, 1992, pages 1157 - 1159
SOLIS-PEREYRA B. ET AL.: "Role of food in the stimulation of cytokine production", THE AMERICAN JOURNAL OF CLINICAL NUTRITION, vol. 66, no. 2, 1997, pages 521S - 525S
PEREYRA B.S. ET AL.: "Interferon induction by Lactobacillus bulgaricus and Streptococcus thermophilus in mice", EUROPEAN CYTOKINE NETWORK, vol. 2, no. 4, 1991, pages 299 - 303
KABAYAMA S. ET AL.: "Enhancing effects of food components on the production of interferon beta from animal cells suppressed by stress hormones", CYTOTECHNOLOGY, vol. 23, no. 1-3, 1997, pages 119 - 125
Attorney, Agent or Firm:
TSUKUNI, Hajime (22-12 Toranomon 1-chome, Minato-k, Tokyo 01, JP)
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Claims:
 乳酸菌の培養物、菌体又は菌体成分を有効成分とするインターフェロンβ産生促進剤。
 菌体成分がRNAである請求項1記載のインターフェロンβ産生促進剤。
 乳酸菌がラクトバチルス属、テトラジェノコッカス属、ペディオコッカス属又はストレプトコッカス属に属することを特徴とする、請求項1又は2記載のインターフェロンβ産生促進剤。
 請求項1~3のいずれか1項に記載のインターフェロンβ産生促進剤を含む食品。
 乳酸菌を培養し、培養物、菌体又は菌体成分を採取することを特徴とするインターフェロンβ産生促進剤の製造法。
Description:
インターフェロンβ産生促進剤 びその製造法

 本発明は、インターフェロンβ産生促進 及びその製造法に関する。

 インターフェロンβは免疫細胞が抗ウィル 機能を作用させるうえで、最初に産生され 生理活性物質である。インターフェロンβが 樹状細胞、マクロファージ等の抗原提示細胞 から産生されることでインターフェロン・レ ギュラトリー・ファクター7の発現量が上昇 、それによりインターフェロンαの産生やイ ンターロイキン12等の様々な炎症性サイトカ ンの産生が誘導され、Th1型免疫が誘導され 。それによりインターフェロンγの産生も 導される。これらのことから、インターフ ロンβはTh1型免疫の誘導において最も重要な 物質であると考えられる。
 インターフェロンβの産生が促進されると Th1型免疫への誘導、免疫細胞の活性化、ウ ルスに対する感染抵抗性の増強が起こる。 って、インターフェロンβの産生促進剤は、 免疫賦活剤、抗I型アレルギー剤、B型及びC型 肝炎の治療剤、或いは癌免疫療法剤などとし て使用可能である。さらに加齢に伴って生じ る免疫力の低下も補うことができる。
 乳酸菌の摂取により、インターフェロンα 産生が促進されることは公知である(例えば 特許文献1、非特許文献1参照)。また、テト ジェノコッカス属に属する乳酸菌がインタ フェロンγの産生を促進することも公知で る(例えば、特許文献2参照)。ただし、乳酸 がインターフェロンβの産生を促進すること は知られていない。
 インターフェロンβは抗腫瘍作用、抗ウィ ス作用、細胞増殖・分化の調節作用等を有 ることから、抗癌治療、B型及びC型肝炎治療 など種々の疾病の治療に用いられている。イ ンターフェロンβは経口摂取により用いられ が、経口摂取では体内に吸収されづらく、 分な効果を期待できなかった。さらに、連 して摂取することで白血球数の減少、血小 数の減少、脱毛、発熱、痛み、疲労感等の 作用を招くという問題がある。このため、 作用が少なく、安全性の高いインターフェ ンβ産生促進剤の提供が求められていた。

特開平9-188627号公報

特開2006-028047号公報 「食品と開発 Vol.42, No.5」2007年、p.85-87

 本発明は、インターフェロンβ産生促進 及びその製造法の提供を課題とする。

 本発明者らは、種々の属に属する乳酸菌が インターフェロンβ産生を促進することを 出し、本発明を完成した。すなわち本発明 、以下に関する。
(1)乳酸菌の培養物、菌体又は菌体成分を有効 成分とするインターフェロンβ産生促進剤。
(2)菌体成分がRNAである上記(1)記載のインター フェロンβ産生促進剤。
(3)乳酸菌がラクトバチルス属、テトラジェノ コッカス属、ペディオコッカス属、ストレプ トコッカス属又はビフィドバクテリウム属に 属することを特徴とする、上記(1)又は(2)記載 のインターフェロンβ産生促進剤。
(4)上記(1)~(3)のいずれか1項に記載のインター ェロンβ産生促進剤を含む食品。
(5)乳酸菌を培養し、培養物、菌体又は菌体成 分を採取することを特徴とするインターフェ ロンβ産生促進剤の製造法。

 本発明により、インターフェロンβ産生 進剤及びその製造法が提供された。該イン ーフェロンβ産生促進剤は、免疫賦活剤、抗 I型アレルギー剤、B型及びC型肝炎の治療剤、 或いは癌免疫療法剤として好適に使用できる 。

種々の乳酸菌の菌体による、腹腔滲出 クロファージ細胞のインターフェロンβ産 促進試験の結果を示す図である。 種々の乳酸菌の菌体による、マウス骨 由来樹状細胞のインターフェロンβ産生促 試験の結果を示す図である。 乳酸菌テトラジェノコッカス・ハロフ ラスの菌体及びRNaseA処理をした菌体による 骨髄由来樹状細胞のインターフェロンβ産 促進試験の結果を示す図である。 乳酸菌テトラジェノコッカス・ハロフ ラスの菌体及びRNaseA処理をした菌体による 骨髄由来樹状細胞のインターロイキン12産 促進試験の結果を示す図である。 乳酸菌テトラジェノコッカス・ハロフ ラスの菌体による、TLR3ノックアウトの骨髄 由来樹状細胞のインターフェロンβ産生促進 験の結果を示す図である。 乳酸菌テトラジェノコッカス・ハロフ ラスの菌体による、TRIFノックアウトの骨髄 由来樹状細胞のインターフェロンβ産生促進 験の結果を示す図である。 乳酸菌テトラジェノコッカス・ハロフ ラスの菌体による、インターフェロンβ試 のインターロイキン12産生促進試験の結果を 示す図である。 乳酸菌テトラジェノコッカス・ハロフ ラスの菌体による、インターロイキン12p35mR NA発現量促進試験の結果を示す図である。 乳酸菌テトラジェノコッカス・ハロフ ラスの菌体による、インターロイキン12p40mR NA発現量促進試験の結果を示す図である。 乳酸菌テトラジェノコッカス・ハロフ ィラスの菌体による、インターフェロン・レ ギュラトリー・ファクター7mRNA発現量促進試 の結果を示す図である。 乳酸菌テトラジェノコッカス・ハロフ ィラスの菌体による、インターフェロンγ発 細胞の増加と、抗インターフェロンβ抗体 よる抑制の結果を示す図である。

(1)インターフェロンβ産生促進剤
 本発明のインターフェロンβ産生促進剤は 乳酸菌の培養物、菌体又は菌体成分を有効 分とする。乳酸菌とは、例えば、ラクトバ ルス属、テトラジェノコッカス属、ペディ コッカス属又はストレプトコッカス属の乳 菌である。
 インターフェロンβ産生促進活性を示す限 、有効成分である乳酸菌の培養物、菌体又 菌体成分は、どのような方法で調製された のでもよい。乳酸菌の菌体は、培養物を遠 分離等して培地を除去することにより得ら る。菌体成分とは、例えば、乳酸菌が生産 るRNAであり、具体的には1本鎖RNA又は2本鎖RNA である。乳酸菌のRNAは通常の分画方法によっ て得ることができる。
 免疫賦活、或いは感染抵抗性増強を目的と て本発明のインターフェロンβ産生促進剤 摂取する場合、その摂取量は、摂取者の症 や体格に合わせて適宜設定すればよい。テ ラジェノコッカス属に属する乳酸菌の菌体 有効成分とする場合、その摂取量は、例え 1~1000mg/体重60kg/日である。
 有効成分である乳酸菌の培養物、菌体又は 体成分は単独で使用してもよいし、飲食品 医薬品に添加して使用することもできる。

(2)インターフェロンβ産生促進剤の製造法
 本発明のインターフェロンβ産生促進剤は 乳酸菌を培養し、培養物、菌体又は菌体成 を採取することにより得られる。有効成分 あるインターフェロンβ産生促進活性を示す 成分が得られる限り、乳酸菌の培養条件や、 有効成分である培養物、菌体又は菌体成分の 採取方法は特に限定されない。
 以下に、ペディオコッカス・ペントサセウ NRIC1915(財団法人 野田産業科学研究所より 手)の菌体を有効成分とするインターフェロ β産生促進剤の製造法を例示する。
 まず、例えばMRS培地にペディオコッカス・ ントサセウスを植菌し、25~37℃で24~72時間培 養する。培養後の培地を、限外ろ過膜や遠心 濃縮機によって培地を除去して集菌する。得 られた菌体を、水や食塩水等で洗浄する。
 上記のようにして得られた菌体、或いは菌 を水や食塩水に懸濁した菌体懸濁液は、本 明のインターフェロンβ産生促進剤として 用可能である。

〔マウス腹腔浸出マクロファージを用いた各 種乳酸菌のインターフェロンβ産生促進試験
 表1に示す乳酸菌を使用し、インターフェロ ンβ産生促進試験を実施した。

1.乳酸菌懸濁液の調製
 MRS培地に各種乳酸菌を1×10 7 個/mlとなるように接種した。テトラジェノコ ッカス属は、食塩10%を含有するMRS培地に1×10 7 個/mlとなるように接種した。30℃で48~72時間 置培養した後、95℃で10分間の煮沸殺菌を行 た。その後、遠心濃縮機によって培地を除 して集菌した。生理食塩水にて菌体を洗浄 、細胞培養用のRPMI培地に波長600nmで吸光度 0.125となるように懸濁し、乳酸菌懸濁液を 製した。

2.インターフェロンβ産生促進試験
 調製した乳酸菌懸濁液のインターフェロン 産生促進活性を、マウス(8~12週齢BALB/c、雄、 チャールズリバー社)より採取、調製した腹 滲出マクロファージ細胞を用いて評価した
(1)腹腔滲出マクロファージ細胞の採取、調製
 チオグリコレート2mlを腹腔内に投与し、刺 したマウスから、投与3日後に無菌的に腹腔 滲出マクロファージを採取した。採取したマ クロファージを独自に調整したFBS溶液にて洗 浄後、細胞数を測定し、2×10 6 個/mlの濃度になるようにRPMI 1640培地で調製 た。調整したマクロファージ細胞溶液を96穴 組織培養プレートに1穴当たり100μlを播種し 。これにRPMI 1640培地、あるいは上記の濃度 調整した乳酸菌菌体懸濁液をそれぞれ1穴当 たり100μl加え、37℃の5%炭酸ガス培養器内で 養し、共培養開始後3時間、6時間の培養上清 を回収した。
(2)インターフェロンβ産生促進活性の測定
 上記のように経時的に回収した培養上清を 上清を経時的に回収し、インターフェロン 測定キット(PBL社製)を用い、エンザイムイム ノアッセイにより測定した。

 結果を図1に示す。共培養の開始後6時間 において、テトラジェノコッカス属、ラク バチルス属、ペディオコッカス属、ロイコ ストック属及びストレプトコッカス属の乳 菌が、腹腔滲出マクロファージ細胞のイン ーフェロンβ産生を促進することが確認され た。以上により、乳酸菌の菌体が、インター フェロンβ産生促進剤として有用であること 示された。

 〔骨髄由来樹状細胞を用いた各種乳酸菌の ンターフェロンβ産生促進試験〕
 表2に示す乳酸菌を使用し、インターフェロ ンβ産生促進試験を実施した。

1.乳酸菌懸濁液の調製
 MRS培地に各種乳酸菌を1×10 7 個/mlとなるように接種した。テトラジェノコ ッカス属は、食塩10%を含有するMRS培地に1×10 7 個/mlとなるように接種した。30℃で48~72時間 置培養した後、95℃で10分間の煮沸殺菌を行 た。その後、遠心濃縮機によって培地を除 して集菌した。生理食塩水にて菌体を洗浄 、細胞培養用のRPMI培地に乳酸菌懸濁液を調 製した。

2.インターフェロンβ産生促進試験
(1)骨髄由来樹状細胞懸濁液の調製
 骨髄由来樹状細胞は、BALB/cマウスもしくはC 57BL/6マウスをイソフルラン吸入麻酔下に頸椎 脱臼して安楽死させた後、下肢から大腿骨、 頸骨を取り出し、氷冷した1%ウシ胎児血清(FCS ,非動化したもの)加RPMI1640培地(Sigma社製)の入 た細胞培養用6cm ディッシュ(BD FALCON社製) 入れた。1%FCS加RPMI1640を注入して骨髄を押し した後、懸濁した。得られた細胞懸濁液を ルストレイナー(40μm, BD FALCON)で濾過した 、440×gで5分間遠心分離した。

 溶血バッファー(5mL,0.155M NH 4 Cl,0.01M Tris, pH7.5)を加え5分間氷上に置いた後 、1%FCS加RPMI11640(5mL)を加えて遠心分離し、1%FCS 加RPMI1640でさらに2回洗浄した。phycoerythrin(PE) 識抗I-A抗体(Clone M5/114.14.2, BD Pharmingen社製,  0.2mg/mL)、PE標識抗CD4抗体(Clone GK1.5, BD Pharmi ngen社製,0.2mg/mL)及びPE標識抗CD8抗体(Clone 53-6.7 ,BD Pharmingen社製,0.2mg/mL)をMACS running bufferで れぞれ1000倍希釈した抗体カクテル(100μL/10 7  cells)及びウサギIgG(50μg/mL, Zymed社製)を加え 氷上で30分間静置した。

 MACS running bufferで1回洗浄した後、抗PE magne tic beads(20μL/10 7  cells,Miltenyi社製)とMACS running buffer(80μL/10 7  cells)を加え、4~8℃で15分間静置した。反応 の20倍量のMACS running bufferで1回洗浄した後 MACS running buffer(0.5mL/10 8  cells)に懸濁し、自動磁気分離システム(Auto  MACS, Miltenyi社製)を用いてネガティブフラク ョンを分離した。分離した細胞を1%FCS加RPMI16 40培地で1回洗浄した後、顆粒球単球コロニー 刺激因子(GM-CSF)加基本培地に懸濁した。基本 地は、ペニシリン(100,000 U/L,明治製菓社製) ストレプトマイシン(100mg/L,明治製菓社製)、 2-メルカプトエタノール(50μM,Gibco社製)、L-グ タミン酸(2mM,ナカライテスク社製)、HEPES(20mM ,同仁化学研究所製)加RPMI1640培地(Gibco社製)に 働化したFCS(Hyclone社製)を10%添加したものを いた。

 GM-CSFはマウスGM-CSF遺伝子を導入したplasmacyto ma X63-Ag8(J558L-GM-CSF)の培養上清を基本培地に10 %添加した。細胞液をトリパンブルー(Gibco社 )で懸濁し、血球計算板を用いて細胞数を計 した後、細胞培養用6ウェルプレート(BD FALC ON社製)に1.2×10 6 /4mL/ウェルとなるように分注し、培養した。 養開始後3日目及び6日目に培地を2mL吸引除 して新しいGM-CSF加基本培地を2mL加え、培養 始後8日目に浮遊細胞を未成熟樹状細胞とし 回収した(CD11c陽性細胞>85%)。細胞を1%FCS加 RPMI1640培地で3回洗浄した後、基本培地に懸濁 し、骨髄由来樹状細胞懸濁液とした。

 (2)インターフェロンβ産生促進活性の測定
 上記のようにして得た2種類の細胞懸濁液と 、乳酸菌懸濁液とを一定の割合(骨髄由来樹 細胞数:乳酸菌数=1:50)で混合し、共培養を行 た。培養6時間後に上清を回収し、実施例1 同様にエンザイムイムノアッセイにより、 清中インターフェロンβ濃度を測定した。
 結果を図2に示す。図に示すように各種乳酸 菌、ビフィドバクテリウム属よりインターフ ェロンβの産生が確認された。

〔テトラジェノコッカス属に属する乳酸菌の インターフェロンβ産生促進試験〕
1.乳酸菌懸濁液の調製
 乳酸菌としてテトラジェノコッカス・ハロ ィラスTh221(Tetragenococcus halophilus Th221)を使 した。当該菌株は、独立行政法人 産業技術 総合研究所 特許生物寄託センターに寄託さ ており、その受託番号は、FERM AP-21310であ 。
 まず、食塩10%を含有したMRS培地にテトラジ ノコッカス・ハロフィラスTh221を1×10 7 個/mlとなるように接種した。30℃で48~72時間 置培養した後、95℃で10分間の煮沸殺菌を行 た。生理食塩水にて菌体を洗浄後、生理食 水に1×10 9 個/mlとなるように懸濁し、乳酸菌懸濁液を調 製した。

2.RNaseA処理
 上記乳酸菌懸濁液に10μg/mlとなるようにRNase A(Sigma社製 Ribonuclease A from bovine pancreas)を 加し、1時間、37℃でインキュベートを行っ 。その後、生理食塩水にて菌体を洗浄し、 び生理食塩水に1×10 9 個/mlとなるように懸濁し、乳酸菌懸濁液を調 製した。
3.インターフェロンβ産生促進試験
 上記にて調製した乳酸菌懸濁液のインター ェロンβ産生促進活性及びインターロイキ 12産生促進活性を、6週齢BALB/cマウス(日本エ エルシー社製)より採取、調製した骨髄由来 樹状細胞を用いて評価した。

(1)骨髄由来樹状細胞懸濁液の調製
 骨髄由来樹状細胞は、BALB/cマウスをイソフ ラン吸入麻酔下に頸椎脱臼して安楽死させ 後、下肢から大腿骨、頸骨を取り出し、実 例2と同様に調整した。

(2)インターフェロンβ産生促進活性の測定
 上記のようにして得た2種類の細胞懸濁液と 、乳酸菌懸濁液とを一定の割合(骨髄由来樹 細胞数:乳酸菌数=1:50)で混合し、共培養を行 た。上清を経時的に回収し、実施例1と同様 にエンザイムイムノアッセイにより、上清中 インターフェロンβ濃度を測定した。
 結果を図3に示す。乳酸菌懸濁液が骨髄由来 樹状細胞のインターフェロンβ産生を促進し 乳酸菌懸濁液のRNaseA処理によりインターフ ロンβ産生促進活性が低下した。
 以上から、インターフェロンβ産生促進活 の有効成分がRNAであることが示された。

4.インターロイキン12産生促進活性の測定
 上記で回収した上清のインターロイキン12 度をエンザイムイムノアッセイにより測定 た。エンザイムイムノアッセイは、ラット マウスインターロイキン12抗体(Pharmingen 社 )を0.2M、pH6.0のリン酸緩衝液で2μg/mlに調製し た溶液を、96穴組織培養プレート1穴当たり100 μl加え、室温で一晩放置しラット抗マウスイ ンターロイキン12抗体を各穴に付着させたプ ートを用いて行った。培養上清を1穴当たり 100μl加え室温で90分間放置し、培養上清のマ スインターロイキン12をプレートに付着し ラット抗マウスインターロイキン12抗体と結 合させた。
 洗浄後ラットビオチン化抗マウスインター イキン12抗体(Pharmingen 社製)を加え、プレー トに結合させたマウスインターロイキン12に 合させた。洗浄後ストレプトアビジンで標 したペルオキシダーゼ酵素(Vector 社製)を加 え、ビオチンと結合させた。TMB基質溶液(Moss/ コスモバイオ 社製)を1穴当たり100μl加え、 温で20分間反応させ、反応を0.5N塩酸で停止 、マイクロプレートリーダーで吸光度450nmを 測定し、リコンビナントマウスインターロイ キン12(Pharmingen 社製)で作成した標識曲線か 、培養上清中のインターロイキン12の濃度を 求めた。
 結果を図4に示す。インターフェロンβとイ ターロイキン12の産生促進活性の間に高い 関が見られ、インターフェロンβの産生と共 にTh1型免疫誘導に関わるインターロイキン12 産生が誘導された。以上より、乳酸菌の刺 によりインターフェロンβ産生が促進され それにより免疫調節作用が誘導されること 確認された。

〔TLR3ノックアウトマウスを使用したインタ フェロンβ産生促進試験〕
 乳酸菌の構成成分を認識するToll様受容体(TL R)に着目し、2本鎖RNAを認識するTLR3をノック ウトしたマウス(6~12週齢C57BL/6、雌、兵庫医 大学より分与)を用いて、インターフェロン 産生促進活性を評価した。骨髄由来樹状細 の調製、乳酸菌の調製、インターフェロンβ 産生促進活性の測定は実施例2と同様の方法 行った。共培養開始後12、24時間目の上清中 インターフェロンβ濃度を測定した。

 結果を図5に示す。TLR3をノックアウトし 細胞においてインターフェロンβ産生促進活 性が低下した。以上により、インターフェロ ンβ産生促進活性にTLR3が関わっていること、 即ち、インターフェロンβ産生促進活性の有 成分に乳酸菌の2本鎖RNAが関わっていること が示された。

〔TRIFノックアウトマウスを使用したインタ フェロンβ産生促進試験〕
 TRIFというアダプター分子はTLR3からのシグ ルを伝達する。このアダプター分子をノッ アウトしたマウス(6~12週齢C57BL/6、雌、兵庫 科大学より分与)を用いて、実施例3と同様に インターフェロンβ産生亢進活性を評価した 骨髄由来樹状細胞の調製、乳酸菌の調製、 ンターフェロンβ産生促進活性の測定は実 例2と同様の方法で行った。共培養開始後12 24時間目の上清のインターフェロンβ濃度を 定した。

 結果を図6に示す。TRIFをノックアウトし 細胞においてインターフェロンβ産生促進活 性が低下した。以上により、乳酸菌によるイ ンターフェロンβ産生促進活性がTRIFを経由す るシグナルであることが確認された。

〔食品の製造例〕
 ペディオコッカス・ペントサセウスNRIC1915 を、100mlのMRS培地で30℃、24時間培養した後 生理食塩水中に分散、遠心分離することに り、菌体ペーストを得た。

 これを無調整豆乳(紀文フードケミファ製 )に添加し、30℃で24時間培養することにより ヨーグルト様食品を得た。

〔インターフェロンβ中和試験〕
 インターフェロンβとインターロイキン12の 間に高い相関が確認されたことから、ラット 由来抗マウスインターフェロンβ抗体(Yamasa社 製)を80μg/mlとなるように培養液に添加し、骨 髄由来樹状細胞より培養上清中へ分泌された インターフェロンβを中和したときのインタ ロイキン12産生量を測定した。
 骨髄由来樹状細胞の調製、乳酸菌の調製、 ンターロイキン12産生促進活性の測定は、 施例3と同様の方法で行った。
 インターロイキン12p35、インターロイキン12 p40、インターフェロン・レギュラトリー・フ ァクター7のmRNA発現量は、定量的リアルタイ PCR法により測定を行った。
 mRNAの抽出は、共培養開始6時間目にRNeasy Min i Kit(Qiagen社製)を用いて行った。その後、総R NA量が300ngとなるように抽出液を分取後、ExScr ipt RNA PCR Kit(Takara社製)を用いて逆転写反応 行い、cDNAを得た。

 これを用い、Sybr Premix Ex Taq(Takara社製)に り定量的リアルタイムPCRを行った。各mRNAに する特異的なプライマーとして、インター イキン12p35は、センス 5’-CTTAGCCAGTCCCGAAACCT-3 ’(配列番号1)、アンチセンス 5’-TTGGTCCCGTGTGA TGTCT-3’(配列番号2)、インターロイキン12p40は 、センス 5’-GTTCAACATCAAGAGCAGTAGCA-3’(配列番号 3)、アンチセンス 5’-CTGCAGACAGAGACGCCATT-3’(配 番号4)、インターフェロン・レギュラトリ ・ファクター7は、センス 5’-ACAGGGCGTTTTATCTTG CG-3’(配列番号5)、アンチセンス 5’-TCCAAGCTCC CGGCTAAG-3’(配列番号6)、βアクチンは、センス  5’-GCTACAGCTTCACCACCACAG-3’(配列番号7)、アンチ センス 5’-GGTCTTTACGGATGTCAACGTC-3’(配列番号8) 用い、Mx3000P(Stratagene社製)により測定した。 発現量は、βアクチンの発現量にて標準化 行い、刺激前に対する相対発現量を求めた
 インターフェロンβを中和することにより ンターロイキン12産生量が減少した。結果を 図7に示す。

 mRNA発現量は、インターロイキン12p35が減少 ており、インターフェロンβがインターロ キン12p35に影響を与えていることが示された 。結果を図8に示す。
 一方、インターロイキン12p40の発現量に影 はなかった。結果を図9に示す。
 また、インターフェロンβにより誘導され インターフェロン・レギュラトリー・ファ ター7の発現量も減少していた。結果を図10 示す。
 以上から、テトラジェノコッカス・ハロフ ラスTh221の刺激により骨髄由来樹状細胞か 産生されたインターフェロンβが、インター ロイキン12p35産生を誘導することによりイン ーロイキン12の産生促進に関わっているこ が示された。

〔乳酸菌によるインターフェロンβを介した ンターフェロンγ産生細胞の誘導〕
 骨髄由来樹状細胞とCD4 +  T細胞の共培養を行なうとき、乳酸菌のイン ターフェロンβ産生促進作用によりインター ェロンγ産生細胞が誘導されるかを確認し 。
 骨髄由来樹状細胞の調製、乳酸菌の調整は 施例3と同様に行なった。また、CD4 +  T細胞はDO11.10マウスの脾臓から調製した。DO 11.10マウスの脾臓を採取後、メッシュにより り潰し、脾臓細胞を得た。その後、抗マウ CD4ビーズ(Miltenyi)と30分間インキュベートし Auto MACS(Miltenyi)により、CD4 +  T細胞を得た。
 96ウェルプレートにおいて1ウェル当たり1×1 0 5 個の骨髄由来樹状細胞と5×10 5 個のCD4 +  T細胞及び5×10 6 個のテトラジェノコッカス・ハロフィラスTh2 21を培養した。ラット由来抗マウスインター ェロンβ抗体(Yamasa社製)を80μg/mlとなるよう 培養液に添加し、骨髄由来樹状細胞より培 上清中へ分泌されたインターフェロンβを 和した。コントロール抗体として、抗ラッ IgG1抗体を用いた。
 培養開始3日目に培地交換を行い、7日目に ローサイトメトリー FACS Aria(BD社製)を用い 、インターフェロンγ産生細胞、インター イキン4産生細胞の割合を調べた。測定には マウスインターフェロンγ抗体(BD Pharmingen) 抗マウスインターロイキン4抗体(BD Pharmingen )を用いた。
 結果を図11に示す。テトラジェノコッカス ハロフィラスTh221の刺激によりインターフェ ロンγ産生細胞の割合が増加した。また、抗 ンターフェロンβ抗体により、インターフ ロンγ産生細胞の誘導が抑制された。このこ とから、乳酸菌の刺激により、インターフェ ロンβを介してインターフェロンγ産生細胞 誘導されることが確認された。

 本発明により、インターフェロンβ産生 進剤が提供された。該インターフェロンβ産 生促進剤は、免疫賦活剤、抗I型アレルギー 、B型及びC型肝炎の治療剤、或いは癌免疫療 法剤に使用できる。