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Patent Searching and Data


Title:
LITHIUM BATTERY AND METHOD FOR MANUFACTURING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/063747
Kind Code:
A1
Abstract:
A lithium battery which has a high capacity even though it use a solid electrolyte. A lithium battery (1) comprises a positive electrode layer (13), a negative electrode layer (14), and a sulfide solid electrolyte layer (SE layer (15)) interposed between the electrode layers (13, 14). The lithium cell (1) is provided, between the positive electrode layer (13) and the SE layer (15), with a positive electrode coating layer (16) and a buffer layer (17) for buffering deflection of lithium ions in the vicinity of the interface of the two layers (13, 15). The positive electrode coating layer (16) of the battery (1) contains LiCoO2 but the positive electrode layer (13) does not contain LiCoO2.

Inventors:
KANDA RYOKO (JP)
OTA NOBUHIRO (JP)
UEMURA TAKASHI (JP)
YOSHIDA KENTARO (JP)
OGAWA MITSUYASU (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/069588
Publication Date:
May 22, 2009
Filing Date:
October 29, 2008
Export Citation:
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Assignee:
SUMITOMO ELECTRIC INDUSTRIES (JP)
KANDA RYOKO (JP)
OTA NOBUHIRO (JP)
UEMURA TAKASHI (JP)
YOSHIDA KENTARO (JP)
OGAWA MITSUYASU (JP)
International Classes:
H01M4/04; H01M4/131; H01M10/052; H01M10/0562; H01M10/36
Foreign References:
JP2003051305A2003-02-21
JP2001052733A2001-02-23
JP2000340257A2000-12-08
JP2003068361A2003-03-07
JP2008218178A2008-09-18
JP2008053135A2008-03-06
JP2008257962A2008-10-23
Other References:
See also references of EP 2214248A4
Attorney, Agent or Firm:
NAKANO, Minoru et al. (1-3 Shimaya 1-chome, Konohana-ku, Osaka-sh, Osaka 24, JP)
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Claims:
 正極層と、負極層と、これら両層の間でリチウムイオンの伝導を媒介する硫化物の固体電解質層とを具えるリチウム電池であって、
 前記正極層と前記固体電解質層との間で正極層側に設けられ、LiCoO 2 を含有する正極被覆層と、
 前記正極層と前記固体電解質層との間で固体電解質層側に設けられ、前記固体電解質層における前記正極被覆層側の界面近傍でのリチウムイオンの偏りを緩衝する緩衝層とを備え、
 前記正極層は、LiCoO 2 を含有しないことを特徴とするリチウム電池。
 請求の範囲第1項に記載されたリチウム電池であって、
 前記緩衝層は、リチウムイオン伝導性酸化物である。
 請求の範囲第2項に記載されたリチウム電池であって、
 前記リチウムイオン伝導性酸化物は、Li x La (2-x)/3 TiO 3 (x=0.1~0.5)、Li 4 Ti 5 O 12 、Li 3.6 Si 0.6 P 0.4 O 4 、Li 1.3 Al 0.3 Ti 1.7 (PO 4 ) 3 、Li 1.8 Cr 0.8 Ti 1.2 (PO 4 ) 3 、Li 1.4 In 0.4 Ti 1.6 (PO 4 ) 3 、LiTaO 3 及びLiNbO 3 からなる群から選択される少なくとも一種以上である。
 請求の範囲第1項から第3項のいずれか一項に記載されたリチウム電池であって、
 前記緩衝層の膜厚が、2nm以上1μm以下である。
 請求の範囲第1項から第3項のいずれか一項に記載されたリチウム電池であって、
 前記正極被覆層の厚さが、2nm以上である。
 請求の範囲第4項に記載されたリチウム電池であって、
 前記正極被覆層の厚さが、2nm以上である。
 請求の範囲第1項から第3項のいずれか一項に記載されたリチウム電池であって、
 前記正極層は、LiAO 2 (Aは、Co、Mn、Al及びNiからなる群から選択される少なくとも一種以上の元素を含む。)及びLiMn 2-X B X O 4 (Bは、Co、Mn、Al及びNiからなる群から選択される少なくとも一種以上の元素を含み、0≦X<1.0)のいずれか一方又は双方を含む。
 請求の範囲第4項に記載されたリチウム電池であって、
 前記正極層は、LiAO 2 (Aは、Co、Mn、Al及びNiからなる群から選択される少なくとも一種以上の元素を含む。)及びLiMn 2-X B X O 4 (Bは、Co、Mn、Al及びNiからなる群から選択される少なくとも一種以上の元素を含み、0≦X<1.0)のいずれか一方又は双方を含む。
 正極層と、負極層と、及びこれらの間に配される硫化物の固体電解質層とを具えるリチウム電池であって、
 さらに、前記正極層と前記固体電解質層との間に、前記正極層を被覆する正極被覆層と、前記固体電解質層の表面に配される緩衝層とを備え、
 前記正極被覆層はLiCoO 2 を含み、
 前記正極層は、LiAO 2 (Aは、Co、Mn、Al及びNiからなる群から選択される少なくとも一種以上の元素を含む(ただし、AがCoのみである場合を除く。)。)及びLiMn 2-X B X O 4 (Bは、Co、Mn、Al及びNiからなる群から選択される少なくとも一種以上の元素を含み、0≦X<1.0)のいずれか一方又は双方を含むことを特徴とするリチウム電池。
 正極層、負極層及び硫化物の固体電解質層を具えるリチウム電池の製造方法であって、
 前記正極層の表面に、LiCoO 2 を含有する正極被覆層を形成する工程、
 前記正極被覆層の表面に、リチウムイオンの偏りを緩衝する緩衝層を形成する工程、及び
 前記緩衝層の表面に、前記固体電解質層を形成する工程を備え、
 前記正極層がLiCoO 2 を含有しないことを特徴とするリチウム電池の製造方法。
Description:
リチウム電池およびその製造方

 本発明は、固体電解質層を備えるリチウ 電池およびその製造方法に関する。

 携帯機器のような小型電気機器の電源に リチウムイオン二次電池(以下、単にリチウ ム電池と呼ぶ)が利用されている。リチウム 池は、正極層、負極層、及びこれら層の間 リチウムイオンの伝導を媒介する電解質層 備える。

 近年、このリチウム電池として、電解質 に有機電解液を用いない全固体型リチウム 池が提案されている。全固体型リチウム電 は、電解質層として固体電解質層を使用し いるので、有機電解液を用いることに伴う 都合(例えば、電解液の漏れによる安全性の 問題、高温時に有機電解液がその沸点を超え て揮発することによる耐熱性の問題など)が 消される。この固体電解質層には、リチウ イオン伝導性が高く、絶縁性に優れる硫化 系の物質が広く利用されている。

 上述した利点を有する一方で、固体電解 層を用いた全固体型リチウム電池は、有機 解液を使用したリチウム電池と比較して、 電容量が小さい(即ち、出力特性が悪い)と う問題を有していた。この問題の原因は、 チウムイオンが、固体電解質層の硫化物イ ンよりも正極層の酸化物イオンに引き寄せ れ易いため、硫化物固体電解質の正極層側 域に、リチウムイオンが欠乏した層(空乏層) が形成されることにある(非特許文献1を参照) 。そして、リチウムイオンが欠乏することに よって空乏層の領域の電気抵抗値が高くなり 、その結果として、リチウム電池の放電容量 を低減させる。

 このような問題を解決する技術として、非 許文献1や非特許文献2は、正極活物質の表 にリチウムイオン伝導性の酸化物(非特許文 1ではLi 4 Ti 5 O 12 、非特許文献2ではLiNbO 3 )の層(なお、この層は、本発明において緩衝 と呼ぶ層に対応する。)を備えさせることを 開示している。このリチウムイオン伝導性の 酸化物の層が存在することにより、リチウム イオンの移動が制限され、硫化物固体電解質 層における空乏層の形成が抑制される。した がって、リチウム電池の放電容量が低減しな くなる(即ち、出力特性が低下しなくなる)。

Advanced Materials 2006.18,2226-2229 第32回固体イオニクス討論会講演予稿集 P130-131

 ところが、本願発明者らは、上記非特許文 におけるリチウムイオン伝導性の酸化物は 正極活物質がLiCoO 2 のときは空乏層の形成を抑制する効果を十分 に発揮するが、正極活物質が他の正極活物質 (LiCoO 2 を実質的に含まない正極活物質)のときは効 を発揮し難いということを発見した。その め、上記の非特許文献が開示する発明のみ よっては、電池の用途に応じた正極活物質 自由に使用してリチウム電池を作製したい いうニーズに応えることが難しいという問 があった。

 また、上記の非特許文献が開示するリチ ム電池の生産効率は悪い。具体的には、こ らの文献では、静電噴霧法により活物質表 に被覆を形成しているが、この静電噴霧法 、技術的に難しく煩雑である。しかも、被 厚さが厳密に調節されなければ、リチウム 池の性能を低下させる。被覆が厚すぎる場 、正極活物質同士の電子伝導性が確保され 、実質的に電池反応に寄与する正極活物質 量が限定されるためである。

 本発明は、上記の事情に鑑みてなされた 本発明の目的は、固体電解質を用いながら 高容量なリチウム電池を提供すること、及 、リチウム電池の用途に応じた正極活物質 自由に選択できるニーズに応えることであ 。また、本発明の目的は、生産性に優れる チウム電池を提供することである。

 (A)本発明のリチウム電池は、正極層と、負 層と、これら両層の間でリチウムイオンの 導を媒介する硫化物固体電解質層とを具え 。そして、本発明のリチウム電池は、正極 と固体電解質層との間で正極層側に設けら 、LiCoO 2 を含有する正極被覆層と、正極層と固体電解 質層との間で固体電解質層側に設けられ、固 体電解質層における正極被覆層側の界面近傍 でのリチウムイオンの偏りを緩衝する緩衝層 とを備え、正極層は、LiCoO 2 を含有しないことを特徴とする。

 本発明の構成となすことにより、硫化物固 電解質層における空乏層の形成を抑制する とができる。そのため、本発明のリチウム 池は、空乏層の形成を原因とする放電容量 低減を生じにくい。つまり、本発明のリチ ム電池の放電容量は大きい。また、LiCoO 2 を含有する正極被覆層が、緩衝層と正極層と の間に設けられているため、リチウム電池の 用途に応じてLiCoO 2 以外の正極活物質で正極層を形成しても、空 乏層の形成を効果的に抑制することができる 。

 なお、空乏層を抑制する効果を最大限発揮 せたいのであれば、緩衝層と正極層とが直 接触しないようにすることが好ましいが、 部が接触するようにしてもかまわない。
 また、本発明において、正極層がLiCoO 2 を含有しないとは、正極層がLiCoO 2 を実質的に含有しないことを意味するのであ って、正極層に微量にLiCoO 2 を含有するようなリチウム電池を本発明の範 囲から排除する趣旨ではない。

 ここで、正極層と固体電解質層との間に 極被覆層と緩衝層を形成する方法として、 式法(物理的蒸着法や化学的蒸着法など)や 湿式法(例えば、塗布法やスクリーン印刷法 ど)などの公知の層形成方法を使用すること ができる。これらの公知の手法は、活物質表 面に被覆を施す手法よりもはるかに簡単であ るため、リチウム電池が生産性よく製造され る。

 (B)本発明のリチウム電池に備わる緩衝層 しては、リチウムイオン伝導性酸化物が好 である。リチウムイオン伝導性の化合物と ては、酸化物と硫化物とが一般的である。 かし、緩衝層を硫化物とする場合、緩衝層 おける正極層側に空乏層が生じる虞がある で、緩衝層を酸化物とする方が好ましい。

 (C)本発明において、リチウムイオン伝導性 化物としては、Li x La (2-x)/3 TiO 3 (x=0.1~0.5)、Li 4 Ti 5 O 12 、Li 3.6 Si 0.6 P 0.4 O 4 、Li 1.3 Al 0.3 Ti 1.7 (PO 4 ) 3 、Li 1.8 Cr 0.8 Ti 1.2 (PO 4 ) 3 、LiNbO 3 、LiTaO 3 、Li 1.4 In 0.4 Ti 1.6 (PO 4 ) 3 などを挙げることができる。緩衝層を構成す るこれらの化合物は、正極被覆層中に拡散し ていることが好ましい。上記化合物が正極被 覆層に拡散していると、空乏層の形成を抑制 する効果に加えて、正極層と緩衝層との密着 性が向上する。これらの化合物は、単独ある いは組み合わせて利用することができる。

 上記酸化物のうち、Li x La (2-x)/3 TiO 3 (x=0.1~0.5)のリチウムイオン伝導度が高いので これが緩衝層として採用された場合は、放 容量の大きなリチウム電池となる。また、 衝層としてLiNbO 3 を採用することも、リチウム電池の放電容量 を向上させる効果を奏する。

 また、上記酸化物のなかには、結晶状態よ もアモルファス状態のときにリチウムイオ 伝導性が良くなるものが存在する。例えば Li x La (2-x)/3 TiO 3 、LiNbO 3 、LiTaO 3 などは、アモルファス状態で高いリチウムイ オン伝導性を示す。特に、Li x La (2-x)/3 TiO 3 は、結晶状態およびアモルファス状態の両方 で、高いリチウムイオン伝導性を示す。緩衝 層がアモルファス状態であることを示す指標 としては、X線回折図の半値幅を規定するこ が挙げられる。

 (D)本発明において、緩衝層の厚さは、2nm以 1μm以下とすることが好ましい。
 緩衝層にリチウムイオンを伝導する性質が るとはいえ、緩衝層のリチウムイオン伝導 は、リチウムイオンの輸送に特化した固体 解質層のそれに比べて低い。そのため、緩 層の厚さが1μmを超える場合、この緩衝層に よりリチウムイオンの移動が阻害されるので 、好ましくない。また、薄型でありながら、 用途に応じた放電容量を有する電池を製造す るために、正極層の厚さをできるだけ大きく したいというニーズがあり、この観点からも 緩衝層厚さは、1μm以下とすることが好まし 。一方で、緩衝層厚さが薄すぎると、固体 解質層における電荷の偏りを抑制する効果 小さくなるので、緩衝層厚さは、2nm以上と ることが好ましい。

 (E)本発明において、正極被覆層の厚さは、2 nm以上とすることが好ましい。正極被覆層の さが薄すぎると、空乏層の形成を抑制する 果が小さくなる。一方、正極被覆層厚さの 限は特に限定されない。これは、正極被覆 が正極活物質であるLiCoO 2 を主として構成されているので、この被覆層 の厚さが厚くなっても電池の性能が低下し難 いためである。但し、電池の規格により、電 池の各層の積層厚さには上限があるため、正 極被覆層が厚すぎると相対的に正極層の厚さ を薄くしなければならず、用途に応じて正極 活物質を選択した意味が薄れてしまう。従っ て、正極被覆層厚さの上限は、正極層厚さの 50%以下とすることが好ましい。

 (F)本発明において、正極層は、LiAO 2 (Aは、Co、Mn、Al及びNiからなる群から選択さ る少なくとも一種以上の元素を含む。)及びL iMn 2-X B X O 4 (Bは、Co、Mn、Al及びNiからなる群から選択さ る少なくとも一種以上の元素を含み、0≦X< ;1.0)のいずれか一方又は双方を含むことが好 しい。
 このような構成とすることにより、固体電 質を用いながらも、高容量でサイクル特性 優れるリチウム電池を得ることができる。

 (G)本発明は、正極層と、負極層と、及びこ らの間に配される硫化物の固体電解質層と 具えるリチウム電池であって、さらに、正 層と固体電解質層との間に正極層を被覆す 正極被覆層と、固体電解質層の表面に配さ る緩衝層とを備え、正極被覆層はLiCoO 2 を含み、正極層は、LiAO 2 (Aは、Co、Mn、Al及びNiからなる群から選択さ る少なくとも一種以上の元素を含む(ただし AがCoのみである場合を除く。)。)及びLiMn 2-X B X O 4 (Bは、Co、Mn、Al及びNiからなる群から選択さ る少なくとも一種以上の元素を含み、0≦X< ;1.0)のいずれか一方又は双方を含むことを特 とする。
 本発明において、正極被覆層は、正極層の べての面を被覆することが好ましい。しか 、一部を被覆している場合も当該被覆して る部分に関しては、本発明の効果を奏する
 なお、本発明においても、正極層に含まれ る「LiAO 2 (Aは、Co、Mn、Al及びNiからなる群から選択さ る少なくとも一種以上の元素を含む(ただし AがCoのみである場合を除く。)。)」におい 、「AがCoのみである場合を除く」とは、正 層がLiCoO 2 を実質的に含有しないことを意味するのであ って、正極層にごく微量にLiCoO 2 を含有するようなリチウム電池を本発明の範 囲から排除する趣旨ではない。

 (H)本発明は、正極層、負極層及び硫化物の 体電解質層を具えるリチウム電池の製造方 であって、正極層の表面に、LiCoO 2 を含有する正極被覆層を形成する工程、正極 被覆層の表面にリチウムイオンの偏りを緩衝 する緩衝層を形成する工程、及び緩衝層の表 面に固体電解質層を形成する工程を備える。 ここで、正極層がLiCoO 2 を含有しないことを特徴とする。
 正極層、正極被覆層、緩衝層、固体電解質 の形成に際しては、真空蒸着法、スパッタ ング法、イオンプレーティング法、レーザ ブレーション法、熱CVD法、プラズマCVD法な が用いられる。本発明のように形成し、さ には、前述の方法によって形成することに り、本発明であるリチウム電池を効率よく 産することができる。
 なお、前述と同様に、本発明において、正 層がLiCoO 2 を含有しないとは、正極層がLiCoO 2 を実質的に含有しないことを意味するのであ って、正極層にごく微量にLiCoO 2 を含有するようなリチウム電池を本発明の範 囲から排除する趣旨ではない。

 本発明のリチウム電池の構成を採用する とにより、リチウム電池の用途に応じて正 活物質を自由に選択したとしても、効果的 、空乏層の形成が抑制され、リチウム電池 放電容量は低減しない。結果として、本発 のリチウム電池の放電容量は大きい。

実施形態1に記載の本発明リチウム電池 の縦断面図である。 実施形態2に記載の本発明リチウム電池 の縦断面図である。

符号の説明

 1,2 リチウム電池
 10,20 基板
 11,21 正極集電体層 12,22 負極集電体層
 13,23 正極層 14,24 負極層
 15,25 固体電解質層(SE層)
 16,26 正極被覆層
 17,27 緩衝層

 以下、本発明の実施形態を図に基づいて 明する。

 以下に説明する実施形態のリチウム電池 、一般的なリチウム電池に備わる正極集電 層、正極層、固体電解質層、負極層及び負 集電体層に加えて、さらに正極層と固体電 質層との間に配置される正極被覆層と緩衝 を備える。以下にその代表的な2つの構成を 例示すると共に、各層についても詳説する。

 <実施形態1 積層構造>
 ≪全体構成≫
 図1は、本実施の形態におけるリチウム電池 の縦断面図である。このリチウム電池1は、 板10上に、正極集電体層11、正極層13、正極 覆層16、緩衝層17、固体電解質層(SE層)15、負 層14、負極集電体層12の順に積層された構成 を有する。

 ≪各構成部材≫
 各構成部材の説明にあたっては、一般的な チウム電池に備わる基板10、正極集電体層11 、正極層13、SE層15、負極層14および負極集電 層12を先に説明する。そして、本発明のリ ウム電池の特徴部である正極被覆層16、緩衝 層17について説明する。

  (基板)
 基板10は、後述する各層を支持する絶縁性 部材である。基板10としては、例えば、ポリ フェニレンサルファイド(PPS)などを利用する とができる。その他、基板10として、SrTiO 3 、MgO、SiO 2 などのセラミックを利用することができる。 セラミックであれば、後述する各層を形成す る際に気相蒸着法などを使用しても熱による 損傷が生じ難い。なお、リチウム電池の形態 によっては、基板10を省略することができる 例えば、袋状の外装容器に積層体を収納し 電池とする構成であれば、基板10は特に必 ではなく、次段で述べる正極集電体11が基板 を兼ねる構成とすることができる。

  (正極集電体層)
 正極集電体層11は、所定の厚さを有する金 膜である。正極集電体層11としては、アルミ ニウム(Al)、ニッケル(Ni)、これらの合金、ス ンレスから選択される1種が好適に利用でき る。金属膜からなる集電体11は、PVD法(物理的 気相蒸着法)又はCVD法(化学的気相蒸着法)によ り形成することができる。特に、所定のパタ ーンに金属膜(集電体)を形成する場合、適宜 マスクを用いることで、容易に所定のパタ ンの集電体を形成することができる。その 、金属箔を絶縁性の基板に圧着することで 正極集電体層を形成しても良い。

  (正極層)
 正極層13は、リチウムイオンの吸蔵及び放 を行う活物質を含む層である。特に、酸化 、例えば、ニッケル酸リチウム(LiNiO 2 )、マンガン酸リチウム(LiMn 2 O 4 )、オリビン型鉄リン酸リチウム(LiFePO 4 )、LiNi 0.5 Mn 0.5 O 2 、Li(Ni 0.8 Co 0.15 Al 0.05 )O 2 、LiNi 1/3 Mn 1/3 Co 1/3 O 2 若しくはLiNi 0.5 Mn 1.5 O 4 、又はこれらの混合物を好適に使用すること ができる。
 これらのうち、LiNi 0.5 Mn 1.5 O 4 を使用すると5V級の正極を形成できるので、 電圧で放電可能な全固体型リチウム電池に る。LiNiO 2 を使用すると、高容量の全固体型リチウム電 池となる。LiMn 2 O 4 を使用すると、LiMn 2 O 4 が安価であるため、低コストの全固体型リチ ウム電池となる。なお、本発明では、正極活 物質として一般的に使用されるLiCoO 2 は、後述する正極被覆層16を構成する化合物 あるので、実質的に使用しない。

 ところで、上述した化合物を含む正極層13 、その結晶構造を規定することで、リチウ イオン伝導性を向上させることができる。 えば、正極層13の活物質として層状岩塩型構 造をとる化合物(例えば、LiNiO 2 、LiNi 0.5 Mn 0.5 O 2 、Li(Ni 0.8 Co 0.15 Al 0.05 )O 2 、LiNi 1/3 Mn 1/3 Co 1/3 O 2 )を採用する場合、当該正極層の面指数の比 (003)/(101)<10とすることが好ましい。この規 定により、(101)配向が強い結晶構造、即ち、a b軸配向がc軸配向よりも強い結晶構造となり 正極層13のリチウムイオン伝導性が向上す 。
 さらに、正極層13の活物質として層状岩塩 構造をとる化合物を採用した場合は、その 造が正極被覆層の構造(本発明において、正 被覆層はLiCoO 2 を含有するから、層状岩塩型構造である。) 同じとなるから正極被覆層とのなじみが良 。その結果、正極層13と正極被覆層との間の リチウムイオン伝導性が向上する効果、及び サイクル特性が向上するという効果が得られ る。この観点から、正極層13の活物質として 、スピネル構造を有する活物質より層状岩 型構造の活物質の方が優れる。したがって 正極層13の活物質としては、とくに、Li(Ni 0.8 Co 0.15 Al 0.05 )O 2 、LiNi 1/3 Mn 1/3 Co 1/3 O 2 が好適である。なお、これらの活物質の充放 電に伴う体積変化は、LiCoO 2 のそれより小さい。

 正極層13は、さらに導電助剤を含んでい も良い。導電助剤としては、例えば、アセ レンブラックといったカーボンブラック、 然黒鉛、熱膨張黒鉛、炭素繊維、酸化ルテ ウム、酸化チタン、アルミニウムやニッケ などの金属繊維からなるものが利用できる 特に、カーボンブラックは、少量で高い導 性を確保できて好ましい。

 上述した正極層13の形成方法としては、乾 法、例えば、蒸着法、イオンプレーティン 法、スパッタリング法、レーザアブレーシ ン法等を使用できる。
 また、正極層13の形成方法として、湿式法 例えば、塗布法やスクリーン印刷法などを 用できる。正極層を湿式法で形成する場合 ポリテトラフルオロエチレンやポリフッ化 ニリデンなどの結着剤を正極層に含有させ も良い。

  (負極集電体層)
 負極集電体層12は、負極層14の上に形成され る金属膜である。負極集電体層12としては、 (Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、及び これらの合金から選択される1種が好適に利 できる。なお、負極集電体層12も、正極集電 体層11の場合と同様に、PVD法やCVD法で形成す ことができる。

  (負極層)
 負極層14は、リチウムイオンの吸蔵及び放 を行う活物質を含む層で構成する。例えば 負極層14として、Li金属及びLi金属と合金を 成することのできる金属よりなる群より選 れる1つ若しくはこれらの混合物、又は合金 好適に使用できる。Liと合金を形成するこ のできる金属としては、アルミニウム(Al)、 リコン(Si)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、及びイン ウム(In)よりなる群より選ばれる少なくとも 一つ(以下、合金化材料という)が良い。

 このような元素を含有した負極層は、負 層自体に集電体としての機能を持たせるこ ができ、かつリチウムイオンの吸蔵・放出 力が高く好ましい。特に、シリコン(Si)はリ チウムを吸蔵・放出する能力がグラファイト (黒鉛)よりも大きく、電池のエネルギー密度 高くすることができる。

 また、負極層としてLi金属との合金相を いることで、Li金属と合金化した合金化材料 とLiイオン伝導性の固体電解質層との界面で Liイオンの移動抵抗が低減される効果があ 、第1サイクル目の充電初期における合金化 料の高抵抗化が緩和される。

 さらに、合金化材料の金属単体を負極層 した場合には、第1サイクル目の充放電サイ クルにおいて、充電容量に対して放電容量が 大幅に小さくなる問題があるが、予めLi金属 合金化材料とを合金化した負極層材料を用 ることにより、この不可逆容量は殆どなく る。このことにより、正極活物質量を不可 容量分だけ余分に充填する必要がなくなり リチウム電池の容量密度を向上させること できる。

 上述した負極層14の形成方法は、気相蒸 法を好適に利用することができる。その他 金属箔をSE層の上に重ねて、プレスあるいは 電気化学的手法によりSE層上に密着させ、負 層を形成しても良い。

  (SE層)
 本発明において、SE層15は、硫化物で構成さ れるLiイオン伝導体である。このSE層15は、Li オン伝導度(20℃)が10 -5 S/cm以上あり、かつLiイオン輸率が0.999以上で ることが好ましい。特に、Liイオン伝導度 10 -4 S/cm以上あり、かつLiイオン輸率が0.9999以上で あれば良い。また、SE層15は、電子伝導率が10 -8 S/cm以下であることが好ましい。
 SE層15の材質としては、硫化物、例えば、Li P、S、OからなるLi-P-S-Oや、Li 2 SとP 2 S 5 とからなるLi-P-Sのアモルファス膜あるいは多 結晶膜などで構成することが好ましい。特に 、Li 2 SとP 2 S 5 とからなるLi-P-Sで構成したSE層15とする場合 このSE層15と負極層14との間の界面抵抗値が 下するので、リチウム電池の性能が向上す 。

 SE層15の形成方法としては、固相法や気相 蒸着法を使用することができる。固相法とし ては、例えば、メカニカルミリング法を使用 して原料粉末を作製し、この原料粉末を焼結 して形成することが挙げられる。一方、気相 蒸着法としては、例えば、PVD法、CVD法が挙げ られる。具体的には、PVD法としては、真空蒸 着法、スパッタリング法、イオンプレーティ ング法、レーザアブレーション法が、CVD法と しては、熱CVD法、プラズマCVD法などが挙げら れる。気相蒸着法によりSE層を形成した場合 固相法によりSE層を形成した場合よりも、SE 層の厚さを薄くすることができる。

  (正極被覆層)
 正極層13上に設けられる正極被覆層16は、LiC oO 2 を含有する層である。また、正極被覆層16は 導電助剤や結着剤などのLiCoO 2 以外の物質を含有していても良い。この正極 被覆層16は、正極層13と後述する緩衝層17との 間で緩衝層17によるSE層15における空乏層の形 成を抑制する効果を補助する。正極被覆層16 役割については、緩衝層17の説明のときに 述する。

 正極被覆層16の厚さは、2nm以上であるこ が好ましい。この厚さが小さいと、空乏層 形成を抑制する効果が低下する。逆に、正 被覆層16の厚さが厚すぎると、近年の電池の 薄型化・小型化の要請に応えることが難しい 。従って、正極被覆層16の厚さは、リチウム 池の構造や用途などを考慮して最適な値を 択すれば良い。

 なお、正極被覆層16が設けられても、リチ ム電池の性能はほとんど低下しない。正極 覆層16に含有されるLiCoO 2 は、本来、正極活物質であり、正極層13と正 被覆層16との間でリチウムイオンの伝導が 端に低下することはないからである。

  (緩衝層)
 緩衝層17は、上記SE層15から正極層13にリチ ムイオンが大量に移動することを防止して SE層15と正極層13との界面において電荷の偏 を緩衝し、この界面近傍のSE層15に空乏層が じることを防止する層である。
 緩衝層17は、酸化物からなることが好まし 。具体的には、Li x La (2-x)/3 TiO 3 (x=0.1~0.5)、Li 4 Ti 5 O 12 、Li 3.6 Si 0.6 P 0.4 O 4 、Li 1.3 Al 0.3 Ti 1.7 (PO 4 ) 3 、Li 1.8 Cr 0.8 Ti 1.2 (PO 4 ) 3 、LiNbO 3 、LiTaO 3 または、Li 1.4 In 0.4 Ti 1.6 (PO 4 ) 3 などを単独あるいは組み合わせて使用できる 。これらの化合物の一部、例えば、Li x La (2-x)/3 TiO 3 、LiNbO 3 、LiTaO 3 は、アモルファスの状態とすると、リチウム イオン伝導度が向上する。上記酸化物の中で も、Li x La (2-x)/3 TiO 3 (x=0.1~0.5)は、結晶状態およびアモルファスの 態の両方でリチウムイオン伝導度が約10 -3 S/cmという非常に優れたリチウムイオン伝導 を有するので、緩衝層17として採用したとき に、電池の性能を向上させることができる。
 その他、LiNbO 3 も、アモルファスの状態でリチウムイオン伝 導度が10 -5 S/cm以上という非常に優れたリチウムイオン 導性を有する。LiNbO 3 がアモルファスの状態であることを示す指標 としては、X線回折において、2θが22~25°の範 で半値幅が5°以下のピークが存在しないこ が挙げられる。なお、緩衝層の形成時に上 化合物が結晶構造をとる温度とすると、緩 層を構成する化合物が正極被覆層に拡散し ぎて、緩衝層がもろくなる虞がある。

 ところで、緩衝層17を構成するこれらの化 物は、正極層活物質(酸化物)がLiCoO 2 のときに、SE層15から正極層13にリチウムイオ ンが極端に移動することを防止する効果を発 揮するが、LiCoO 2 以外のときには、あまり効果を発揮しない。 そのため、正極層13がLiCoO 2 以外の化合物で構成されている場合、正極層 とSE層との間に緩衝層を設けても空乏層の形 を抑制する効果は低い。これに対して、本 施形態では、正極層13と緩衝層17との間にLiC oO 2 を含有する正極被覆層16が設けられているた 、緩衝層17による空乏層の形成が効果的に 制される。

 緩衝層17を構成する化合物の一部は、正 被覆層16中に拡散していることが好ましい。 上記化合物の正極被覆層16への拡散度合いを 節することで、空乏層の形成を抑制できる 共に、正極被覆層16と緩衝層17との密着性を 向上させることができる。

 また、緩衝層17の厚さは、1μm以下であるこ が好ましい。緩衝層が厚すぎると、この緩 層17がSE層15と比較してリチウムイオン輸率 低いため、正・負極間のリチウムイオンの り取りの障害となって電池の性能が低下す 虞があるし、リチウム電池の薄型化の障害 もなるからである。
 緩衝層17が2nm以上ある場合、空乏層の形成 抑制される。より確実に空乏層の形成を抑 したいときは、緩衝層厚さを5nm以上とする 良い。

 緩衝層17の電子伝導度は、10 -5 S/cm以下であることが好ましい。電子伝導度 上記のように規定することで、緩衝層17にお ける分極を抑制し、空乏層の形成を抑制する ことができる。なお、上記の化合物を採用す れば、上記の電子伝導度をほぼ満たす緩衝層 17とすることができる。

 この緩衝層は、PVD法あるいはCVD法などの 相蒸着法により形成することができる。

 ≪リチウム電池の製造方法≫
 本実施形態のリチウム電池を製造するには 各層を支持する基板10の上に、正極集電体 11、正極層13、正極被覆層16、緩衝層17、SE層1 5、負極層14、負極集電体層12の順に積層する とで作製する。また、正極集電体層11、正 層13、正極被覆層16、緩衝層17およびSE層15を 層した積層体を作製すると共に、この積層 とは別個に負極集電体層12と負極層14とから なる積層体を作製し、これら二つの積層体を 重ね合わせることでリチウム電池1を作製し も良い。

 なお、上述した2つの積層体を重ね合わせる ときは、積層体同士の接触面に、リチウム含 有塩を溶解したイオン液体からなる溶液を塗 布しても良い。この溶液としては、リチウム イオン伝導性が高く(好ましくは10 -4 S/cm以上)、電子伝導性が低い(好ましくは10 -8 S/cm以下)ものを使用する。この溶液は、電子 導性がほとんど無く、イオン伝導性に優れ ので、SE層15にピンホールが生じたとしても 、正極と負極の短絡を防止することができる 。

 ≪実施形態1の効果≫
 以上の構成を備えるリチウム電池1は、正極 層13とSE層15との間に正極被覆層16と緩衝層17 設けるだけで、SE層15から正極層13へのリチ ムイオンの偏りを抑制し、SE層15において空 層が形成されることを抑制することができ 。また、正極被覆層16と緩衝層17は、正極層 13上に積層するだけで良いので、非常に簡単 つ効率的にリチウム電池を作製することが きる。さらに、正極層13に含有させる活物 を自由に選択できるので、用途に応じたリ ウム電池を製造することができる。

 <実施形態2 部分積層構造>
 ≪全体構成≫
 図2は、本実施形態のリチウム電池の縦断面 図を示す。このリチウム電池2は、絶縁性の 板20の上に、正極集電体層21、負極集電体層2 2、正極層23、負極層24、SE層25、正極被覆層26 よび緩衝層27を備える。各層21~27の材質や形 成方法は、実施形態1と同様のものを使用で る。このリチウム電池2は、図2に示すように 、各層21~27が、階段状に配されている。以下 図に基づいて、具体的な各層の配置状態を 板上から順に説明する。

 ≪各構成部材≫
  (基板)
 基板20は、各層を支持する薄板である。基 20の材料としては、実施形態1と同様のもの 使用できる。

  (正極集電体層および負極集電体層)
 正・負極集電体層21,22は、基板20上に並列し て設けられた薄膜である。両集電体層21,22の は、所定の間隔が開けられており、基板20 中央部には、集電体層21,22が存在しない。

  (正極層)
 正極層23は、正極集電体層21の一部と、基板 20における集電体層21,22が設けられていない 分の一部を覆うように設けられている。こ 例では、正極層23のうち、集電体層21上の部 が薄く、基板20上の部分が厚くなっており 正極層23の上面は面一である。

  (正極被覆層)
 正極被覆層26は、正極層23と緩衝層27とが直 接触しないように、正極層23の上面と側面 一部を覆うように設けられている。この例 正極被覆層26は、均一的な厚さである。
  (緩衝層)
 緩衝層27は、SE層25と正極被覆層26とが直接 触しないように、正極被覆層26の上面と側面 の大部分を覆うように設けられている。この 例の緩衝層27は、均一的な厚さである。

  (SE層)
 SE層25は、基板20において、緩衝層27の上面 側面の大部分と、集電体層21,22および正極層 23が設けられていない基板20の部分とを覆う うに設けられている。つまり、電池を上面 したときに、SE層25が、正極層23と重なって けられている。この実施形態のSE層25は、正 層23の部分で階段状に形成されている。

  (負極層)
 負極層24は、SE層25の一部と負極集電体層22 一部とを覆うように設けられている。負極 24は、均一的な厚さであり、一部がSE層25の 段側部分の上に形成され、他部がSE層25の下 側部分の上及び負極集電体層22上に配され いる。つまり、両極層23,24は、電池2を上面 したとき、一部が重って配される。

 このように各層21~27を部分的に重複させ 形成することで、各層21~27は、図2に示すよ に階段状に配され、層が最も多く重なり合 ている箇所(正極層23、正極被覆層26、緩衝層 27、SE層25、負極層24が積層されている箇所)の 層数が5層であり、全ての層21~27を重複させた 場合の層数よりも少ない。ちなみに、集電体 層21,22において正極層23、負極層24が設けられ ずに露出した部分は、外部との間で電力の授 受を行うリード部として利用することができ る。

 なお、この例では、集電体層が二つとも 板に接する構成としたが、負極集電体層を 負極層上面のうち、階段状に下がった位置( 下段側部分)に設けてもかまわない。また、 の例では、各極用の集電体層を具える構成 したが、電極層が合金などからなり、電極 自体が集電体機能を有する場合、集電体層 設けなくても良いので、積層する層の数を らに減らすことができる。

 ≪実施形態2の効果≫
 本実施形態のリチウム電池2は、上記実施形 態1と同様に、高容量で生産性に優れた薄型 リチウム電池である。また、上述のように リチウム電池2は、各層が全て重なり合う構 ではなく、部分的に重なり合う構造である め、嵩が比較的小さいことから、実施形態1 のリチウム電池よりも薄型の電池とできる。

 以下、実施形態1(図1を合わせて参照)にお いて説明した構成でコインセル型のリチウム 電池(試料1)を実際に作製し、放電容量を測定 した。また、比較となるコインセル型のリチ ウム電池(試料101,102)を作製し、その放電容量 を測定した。但し、作製したリチウム電池は 、正極集電体11が基板10を兼ねる構成とした

 <試料1>
 試料1として、正極層13に含有させる正極活 質にLiNi 0.5 Mn 1.5 O 4 を使用したリチウム電池1を作製した。リチ ム電池に備わる各層の構成および膜厚は、 下の通りである。
 正極集電体層11 …SUS316、0.5mm(基板10として 役割を兼ねる)
 正極層13    …LiNi 0.5 Mn 1.5 O 4 、1μm
 正極被覆層16  …LiCoO 2 、20nm
 緩衝層17    …LiNbO 3 、15nm
 SE層15     …Li 2 S-P 2 S 5 、3μm
 負極層14    …Li、1μm
 負極集電体層12 …SUS316、0.5mm

 <試料101>
 試料101として、正極被覆層16と緩衝層17のう ち、正極被覆層16を設けず、緩衝層17のみを けたリチウム電池を作製した。試料101は、 極被覆層16を設けていないこと以外は、試料 1のリチウム電池と同様である。

 <試料102>
 試料102として、正極被覆層16と緩衝層17の両 方を有さない従来のリチウム電池を作製した 。試料102は、正極被覆層16と緩衝層17を設け いないこと以外は、試料1と同様である。

 <評価>
 上述した試料1と試料101,102のリチウム電池 放電容量を測定することで、リチウム電池 性能を評価した。測定条件は、充放電電流0. 02μA/cm2、充電終了電圧:4.8V、放電終了電圧:3V ある。

 <評価の結果>
 試料1の放電容量は140mAh/g、試料101の放電容 は50mAh/g、試料102の放電容量は20mAh/gであっ 。この結果から、従来のリチウム電池であ 試料102に対して、緩衝層を設けた試料101の 池は、放電容量が大きかった。そして、こ 試料101よりも、緩衝層に加えて正極被覆層 設けた試料1のリチウム電池の方が、放電容 が大きかった。
 本発明の電池(試料1)とその他の電池(試料101 ,102)との相違点は、正極被覆層と緩衝層の両 を具えているか否かという点のみであるの 、これら両層が、SE層における空乏層の形 を抑制し、その結果、リチウム電池の高容 化を実現していることが明らかになった。

 次に、以下の試料2、試料3及び試料103のリ ウム電池を作製した。これらのリチウム電 について、放電容量の測定及びサイクル特 の評価を行った。
 <試料2>
 試料2として、正極層13に含有させる正極活 質にLiNi 1/3 Mn 1/3 Co 1/3 O 2 を使用したリチウム電池1を作製した。その チウム電池に備わる各層の構成および膜厚 、以下の通りとした。
 正極集電体層11 …Al、0.1μm
 正極層13    …LiNi 1/3 Mn 1/3 Co 1/3 O 2 、60μm
 正極被覆層16  …LiCoO 2 、20nm
 緩衝層17    …LiNbO 3 、15nm
 SE層15     …Li 2 S-P 2 S 5 、10μm
 負極層14    …Li、10μm
 負極集電体層12 …SUS316、0.5mm

 <試料3>
 試料3は、正極層13に含有させる正極活物質 Li(Ni 0.8 Co 0.15 Al 0.05 )O 2 を使用したこと以外は、試料2のリチウム電 と同様とした。

<試料103>
 試料103は、正極層13に含有させる正極活物 にLiFePO 4 を使用したこと以外は、試料2のリチウム電 と同様とした。

<評価>
 サイクル試験の条件は、充電電圧を4.2Vとし 、カットオフ電圧を3.0Vとし、電流密度を0.05m A/cm 2 とした。ただし、試料103の充電電圧;4.0V、カ トオフ電圧;2.5Vとした。
 また、サイクル試験における1サイクル目に おいて、リチウム電池の放電を開始した後の 60秒間において生じる電圧降下から、リチウ 電池の電池抵抗(ω・cm 2 )を算出した。
 また、100サイクル後の充放電効率(100サイク ル時の放電容量/100サイクル時の充電容量)、 び容量維持率(100サイクル時の放電容量/サ クル試験中の最大放電容量)を測定した。
<評価の結果>
 以上の測定の結果を、表1に示す。

表1から、試料2、3、103のいずれのリチウム電 池においても、初期容量は、それぞれの正極 活物質が本来有する放電容量を示すことが明 らかとなった。また、正極層の構造が正極被 覆層の構造と同じである試料2及び試料3のサ クル特性は、そうでない試料103のサイクル 性より優れていることが明らかとなった。
 なお、試料103について、試験を中止したの にリチウム電池を解体したところ、正極層 正極被覆層との間で部分剥離を生じていた

 なお、上述した実施の形態は、本発明の要 を逸脱することなく、適宜変更することが 能である。例えば、リチウム電池を構成す 正極層、固体電解質層、負極層の配置には 上述した実施の形態以外のものとして、正 層と負極層とが電池を上面視したときに重 しない配置(非積層構造)とすることも考え れる。どのような形状を選択するにしても 正極層と固体電解質層とが直接接触しない うに、両層の間に正極被覆層と緩衝層を設 るようにすれば良い。
 また、本出願は、2007年11月13日に出願され 日本特許出願(特願2007-294843号)に基づいてお 、その全体が引用により援用される。また ここに引用されるすべての参照は、全体と て取り込まれる。

 本発明のリチウム電池は、携帯機器など 電源として好適に利用することができる。