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Patent Searching and Data


Title:
LOW-MOLECULE DRUG-CONTAINING NANOPARTICLE HAVING SUSTAINED RELEASE NEGATIVELY CHARGED GROUP
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/139804
Kind Code:
A1
Abstract:
This invention provides a low-molecule drug-containing nanoparticle which can realize efficient targeting, has excellent drug sustained release properties, and has side effect reduced by reducing accumulation in the liver. The low-molecule drug-containing nanoparticle having a negatively charged group is produced by hydrophobitizing a low-molecular drug having a negatively charged group with a metal ion, and reacting the hydrophobitized product with poly-L-lactic acid or a poly(L-lactic acid/glycolic acid) copolymer, and a poly-DL- or L-lactic acid-polyethylene glycol block copolymer or a poly(DL- or L-lactic acid/glycolic acid)-polyethyleneglycol block copolymer.

Inventors:
ISHIHARA TSUTOMU (JP)
MIZUSHIMA YUTAKA (JP)
MIZUSHIMA TORU (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/057167
Publication Date:
November 20, 2008
Filing Date:
April 11, 2008
Export Citation:
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Assignee:
LTT BIO PHARMA CO LTD (JP)
ISHIHARA TSUTOMU (JP)
MIZUSHIMA YUTAKA (JP)
MIZUSHIMA TORU (JP)
International Classes:
A61K47/34; A61K9/14; A61K45/00; A61K47/02; A61K47/18; A61K47/22; A61K47/24
Domestic Patent References:
WO2003101493A12003-12-11
WO2005089926A12005-09-29
WO2007074604A12007-07-05
WO2003101493A12003-12-11
WO2004084871A12004-10-07
Foreign References:
JP2006521367A2006-09-21
JP2003527413A2003-09-16
JPH04360825A1992-12-14
JPH1072375A1998-03-17
JPH0278629A1990-03-19
JPH09208494A1997-08-12
JP2003520210A2003-07-02
US4652441A1987-03-24
JPH08217691A1996-08-27
JPS58191714A1983-11-09
JPH09157368A1997-06-17
JPH0278629A1990-03-19
JPH09151136A1997-06-10
JP2006323820W2006-11-29
JPH08217691A1996-08-27
JPH09157368A1997-06-17
JPH0278629A1990-03-19
Other References:
MATSUMOTO J. ET AL.: "Preparation of nanoparticles consisted of poly(L-lactide)-poly(ethylene glycol)-poly(L-lactide) and their evaluation in vitro", INTERNATIONAL JOURNAL OF PHARMACEUTICS, vol. 185, 1999, pages 93 - 101, XP003014177
VERRECCHIA T. ET AL.: "Non-stealth (poly(lactic acid/albumin)) and stealth (poly(lactic acid-polyethylene glycol)) nanoparticles as injectable drug carriers", JOURNAL OF CONTROLLED RELEASE, vol. 36, 1995, pages 49 - 61, XP004037468
See also references of EP 2156848A4
Attorney, Agent or Firm:
KUSAMA, Osamu (7F Iwata Bldg.,5-12, Iidabashi 4-chome, Chiyoda-ku, Tokyo 72, JP)
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Claims:
 陰荷電基を持つ低分子薬物を金属イオンにより疎水化し、これをポリL-乳酸又はポリ(L-乳酸/グリコール酸)共重合体、及びポリDL-又はL-乳酸-ポリエチレングリコールブロック共重合体又はポリ(DL-又はL-乳酸/グリコール酸)-ポリエチレングリコールブロック共重合体と作用させることにより得られる陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
 さらに、塩基性低分子化合物を混合することを特徴とする請求項1に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
 さらに界面活性剤を配合することからなる請求項1又は2に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
 粒子の直径が20~300nm、好ましくは50~200nmである請求項1~3のいずれかに記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
 金属イオンが、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオン、ベリリウムイオン、マンガンイオン又はコバルトイオンの1種又は2種以上である請求項1又は2に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
 陰荷電基を持つ低分子薬物が、前記金属イオンにより疎水化されるためのリン酸基、硫酸基又はカルボキシル基を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
 陰荷電基を持つ低分子薬物が、抗炎症性ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、プロスタグランジン又はその誘導体、抗微生物薬又は抗癌薬である請求項1、2又は6に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
 ポリDL-又はL-乳酸-ポリエチレングリコールブロック共重合体又はポリ(DL-又はL-乳酸/グリコール酸)-ポリエチレングリコールブロック共重合体の重量平均分子量が3,000~30,000である請求項1又は2に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
 塩基性低分子化合物が、(ジメチルアミノ)ピリジン、ピリジン、ピペリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、キヌクリジン、イソキノリン、ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、ナフチルアミン、モルホリン、アマンタジン、アニリン、スペルミン、スペルミジン、ヘキサメチレンジアミン、プトレシン、カダベリン、フェネチルアミン、ヒスタミン、ジアザビシクロオクタン、ジイソプロピルエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミンから選択される1種又は2種以上のものである請求項2に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
 界面活性剤が、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレン(80)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)コレステロールエステル、脂質-ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び脂肪酸-ポリエチレングリコール共重合体から選択される1種又は2種以上のものである請求項3に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
 請求項1~10に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子を有効成分とする非経口投与用製剤。
 製剤が静脈注射用製剤、局所注射用製剤、点鼻剤、点眼剤、吸入剤又は噴霧剤である請求項11に記載の非経口投与用製剤。
 陰荷電基を持つ低分子薬物と金属イオンを溶媒中で混合して疎水性薬物とし、この混合液中にポリL-乳酸又はポリ(L-乳酸/グリコール酸)共重合体、及びポリDL-又はL-乳酸-ポリエチレングリコールブロック共重合体又はポリ(DL-又はL-乳酸/グリコール酸)-ポリエチレングリコールブロック共重合体を加えて混合することを特徴とする請求項1に記載された陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子の製造方法。
 請求項13の製造方法において、さらに塩基性低分子化合物を混合することを特徴とする請求項13に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子の製造方法。
 塩基性低分子化合物が、(ジメチルアミノ)ピリジン、ピリジン、ピペリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、キヌクリジン、イソキノリン、ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、ナフチルアミン、モルホリン、アマンタジン、アニリン、スペルミン、スペルミジン、ヘキサメチレンジアミン、プトレシン、カダベリン、フェネチルアミン、ヒスタミン、ジアザビシクロオクタン、ジイソプロピルエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミンから選択される1種又は2種以上のものである請求項14に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子の製造方法。
Description:
徐放性の陰荷電基を持つ低分子 物含有ナノ粒子

 本発明は薬物含有ナノ粒子に関し、さら 詳しくは患部ターゲッティング及び徐放性 優れ、かつ肝臓集積を低減し、血中滞留性 高めた陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ 子に関する。

 従来から、乳酸・グリコール酸共重合体( 以後、「PLGA」と記す場合もある)、または乳 重合体(以後、「PLA」と記す場合もある)の イクロ粒子ないしナノ粒子に薬物を封入す 研究が種々行われている。

 例えば、米国特許第4652441号公報(特許文 1)には生物活性ポリペプチドを含有するPLGA のマイクロカプセル及びその製法が開示さ ている。また、特表平10-511957号公報(特許文 2)には、種々の薬物を含有する血管内投与 能なPLGA等のナノ粒子が開示されている。さ に、特開平8-217691号公報(特許文献3)には、 溶性ペプチド性生理活性物質の水不溶性又 水難溶性多価金属塩を、PLGA等のマイクロカ セルに封入した徐放性製剤が開示されてい 。

 しかしながら、これらの先行特許におい は、陰荷電基を持つ低分子薬物を金属イオ により疎水化したのち、PLA又はPLGAとポリエ チレングリコール(以後、「PEG」と記す場合 ある)とを結合したPLA-PEGブロック共重合体又 はPLGA-PEGブロック共重合体に封入することに いてはなんら言及されていない、

 本特許出願人による出願である国際公開W O2003/101493号公報(特許文献4)には、薬物をPLGA はPLAの微粒子に封入し、当該微粒子の表面 界面活性剤を吸着させた製剤が記載されて る。また、同じく本特許出願人による出願 ある国際公開WO2004/84871号公報(特許文献5)に 、金属イオンにより疎水化した陰荷電基を つ低分子医薬品をPLGA又はPLAナノ粒子に封入 、当該ナノ粒子の表面に界面活性剤を吸着 せた製剤が記載されている。

 しかしながら、特許文献4に開示されてい る微粒子は薬物の封入率が低く、初期バース トを生じるため徐放性が不充分であり、また 、特許文献5に開示されているナノ粒子は封 率が向上され、初期バーストが改善された のの、静脈投与において薬物が肝臓に滞留 るという不都合が生じた。

 ポリ乳酸又はポリ(乳酸/グリコール酸)共 合体とポリエチレングリコールとからなる ロックコポリマーに関しては、特開昭58-1917 14号公報(特許文献6)に親水性ポリマーである リエチレングリコールと、疎水性ポリマー あるポリ乳酸とのブロックコポリマーにつ て記載されており、また特開平9-157368号公 (特許文献7)にポリ乳酸-ポリエチレングリコ ル-ポリ乳酸からなる三元ブロック共重合体 の精製方法が記載されている。

 ポリ乳酸又はポリ(乳酸/グリコール酸)共 合体とポリエチレングリコールとからなる ロックコポリマーを医薬組成物の素材とし 利用した例としては、特開平2-78629号公報( 許文献8)には、乳酸及び/又はグリコール酸 共重合体とポリエチレングリコールとの共 合体にポリペプタイドを含有された医薬組 物が記載されており、特開平9-151136号公報( 許文献9)には、ポリ乳酸-ポリエチレングリ ール共重合体と蛋白質の含有溶液について 載されている。

 しかしながら、陰荷電基を持つ低分子薬 を金属イオンにより疎水化し、これをポリ 酸-ポリエチレングリコールブロック共重合 体、又はポリ(乳酸/グリコール酸)-ポリエチ ングリコールブロック共重合体とを作用さ ることにより得られる陰荷電基を持つ低分 薬物を含有するナノ粒子については知られ いない。

 そこで本特許出願人は、陰荷電基を持つ 分子薬物を金属イオンにより疎水化し、こ をポリ乳酸-ポリエチレングリコールブロッ ク共重合体又はポリ(乳酸/グリコール酸)-ポ エチレングリコールブロック共重合体、及 ポリ乳酸又はポリ(乳酸/グリコール酸)共重 体とを作用させることにより得られるナノ 子に封入することにより、患部ターゲッテ ング及び徐放性に優れ、なおかつ肝臓集積 低減し、血中滞留性を高めた薬物含有ナノ 子について特許出願した(国際特許出願番号P CT/JP2006/323820)。

米国特許第4652441号公報

特表平10-511957号公報

特開平8-217691号公報

国際公開WO2003/101493号公報

国際公開WO2004/84871号公報

特開昭58-191714号公報

特開平9-157368号公報

特開平2-78629号公報

特開平9-151136号公報

 本発明は、前記PCT/JP2006/323820の発明をさ に改良したものであり、陰荷電基を持つ低 子薬物を患部に効率的にターゲッティング 、薬物徐放性に優れ、かつ肝臓集積を低減 ることにより副作用を軽減させた、特にPCT/J P2006/323820比べて徐放性に優れた陰荷電基を持 つ低分子薬物含有ナノ粒子を提供することを 課題とする。

 かかる課題を解決するべく、本発明者らは 意検討した結果、陰荷電基を持つ低分子薬 を金属イオンにより疎水化し、ポリL-乳酸 はポリ(L-乳酸/グリコール酸)共重合体、及び ポリDL-又はL-乳酸-ポリエチレングリコールブ ロック共重合体又はポリ(DL-又はL-乳酸/グリ ール酸)-ポリエチレングリコールブロック共 重合体とを作用させることにより得られる陰 荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子が、患 部ターゲッティング及び徐放性に優れ、なお かつ肝臓集積を低減し、血中滞留性に優れ、 特に徐放性に優れることを確認して、本発明 を完成するに至った。
 特に、本発明は、ポリDL-乳酸又はポリ(DL-乳 酸/グリコール酸)共重合体の代わりにL体であ るポリL-乳酸又はポリ(L-乳酸/グリコール酸) 重合体を使用することにより徐放性効果が 層優れていることが特徴である。

 したがって本発明は、患部ターゲッティン 及び徐放性に優れ、肝臓集積を低減するこ により副作用を軽減し、さらに血中滞留性 優れた陰荷電基を持つ低分子薬物を含有す ナノ粒子を提供する。
 さらに本発明は、当該ナノ粒子を有効成分 する静脈注射用製剤、局所注射用製剤、点 剤、点眼剤、吸入剤、噴霧剤などの非経口 与用製剤を提供する。

 より具体的には、本発明は以下の構成から る。すなわち、
(1)陰荷電基を持つ低分子薬物を金属イオンに より疎水化し、これをポリL-乳酸又はポリ(L- 酸/グリコール酸)共重合体、及びポリDL-又 L-乳酸-ポリエチレングリコールブロック共 合体又はポリ(DL-又はL-乳酸/グリコール酸)- リエチレングリコールブロック共重合体と 用させることにより得られる陰荷電基を持 低分子薬物含有ナノ粒子;
(2)さらに、塩基性低分子化合物を混合するこ とを特徴とする上記1に記載の陰荷電基を持 低分子薬物含有ナノ粒子;
(3)さらに界面活性剤を配合することからなる 上記1又は2に記載の陰荷電基を持つ低分子薬 含有ナノ粒子;
(4)粒子の直径が20~300nm、好ましくは50~200nmで る上記1~3のいずれかに記載の陰荷電基を持 低分子薬物含有ナノ粒子;
(5)金属イオンが、亜鉛イオン、鉄イオン、銅 イオン、ニッケルイオン、ベリリウムイオン 、マンガンイオン又はコバルトイオンの1種 は2種以上である上記1又は2に記載の陰荷電 を持つ低分子薬物含有ナノ粒子;
(6)陰荷電基を持つ低分子薬物が、前記金属イ オンにより疎水化されるためリン酸基、硫酸 基又はカルボキシル基を有していることを特 徴とする上記1又は2に記載の陰荷電基を持つ 分子薬物含有ナノ粒子;
(7)陰荷電基を持つ低分子薬物が、抗炎症性ス テロイド、非ステロイド性抗炎症薬、プロス タグランジン又はその誘導体、抗微生物薬又 は抗癌薬である上記1、2又は6に記載の陰荷電 基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子;
(8)ポリDL-又はL-乳酸-ポリエチレングリコール ブロック共重合体又はポリ(DL-又はL-乳酸/グ コール酸)-ポリエチレングリコールブロック 共重合体の重量平均分子量が3,000~30,000である 上記1又は2に記載の陰荷電基を持つ低分子薬 含有ナノ粒子;
(9)塩基性低分子化合物が、(ジメチルアミノ) リジン、ピリジン、ピペリジン、ピリミジ 、ピラジン、ピリダジン、キノリン、キヌ リジン、イソキノリン、ビス(ジメチルアミ ノ)ナフタレン、ナフチルアミン、モルホリ 、アマンタジン、アニリン、スペルミン、 ペルミジン、ヘキサメチレンジアミン、プ レシン、カダベリン、フェネチルアミン、 スタミン、ジアザビシクロオクタン、ジイ プロピルエチルアミン、モノエタノールア ン、ジエタノールアミン、トリエタノール ミン、エチルアミン、ジエチルアミン、ト エチルアミン、メチルアミン、ジメチルア ン、トリメチルアミン、トリエチレンジア ン、ジエチレントリアミン、エチレンジア ン、トリメチレンジアミンから選択される1 又は2種以上のものである上記2に記載の陰 電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子;
(10)界面活性剤が、ホスファチジルコリン、 リオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレー 、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラ ウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタ モノステアレート、ポリオキシエチレン(20) ルビタンモノパルミテート、ポリオキシエ レン(20)ソルビタントリオレート、ポリオキ シエチレン(80)オクチルフェニルエーテル、 リオキシエチレン(20)コレステロールエステ 、脂質-ポリエチレングリコール、ポリオキ シエチレン硬化ヒマシ油及び脂肪酸-ポリエ レングリコール共重合体から選択される1種 は2種以上のものである上記3に記載の陰荷 基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子;
(11)上記1~10に記載の陰荷電基を持つ低分子薬 含有ナノ粒子を有効成分とする非経口投与 製剤;
(12)製剤が静脈注射用製剤、局所注射用製剤 点鼻剤、点眼剤、吸入剤又は噴霧剤である 記11に記載の非経口投与用製剤;
(13)陰荷電基を持つ低分子薬物と金属イオン 溶媒中で混合して疎水性薬物とし、この混 液中にポリL-乳酸又はポリ(L-乳酸/グリコー 酸)共重合体、及びポリDL-又はL-乳酸-ポリエ レングリコールブロック共重合体又はポリ( DL-又はL-乳酸/グリコール酸)-ポリエチレング コールブロック共重合体を加えて混合する とを特徴とする上記1に記載された陰荷電基 を持つ低分子薬物含有ナノ粒子の製造方法;
(14)上記13の製造方法において、さらに塩基性 低分子化合物を混合することを特徴とする上 記13に記載された陰荷電基を持つ低分子薬物 有ナノ粒子の製造方法;
(15)塩基性低分子化合物が、(ジメチルアミノ) ピリジン、ピリジン、ピペリジン、ピリミジ ン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、キヌ クリジン、イソキノリン、ビス(ジメチルア ノ)ナフタレン、ナフチルアミン、モルホリ 、アマンタジン、アニリン、スペルミン、 ペルミジン、ヘキサメチレンジアミン、プ レシン、カダベリン、フェネチルアミン、 スタミン、ジアザビシクロオクタン、ジイ プロピルエチルアミン、モノエタノールア ン、ジエタノールアミン、トリエタノール ミン、エチルアミン、ジエチルアミン、ト エチルアミン、メチルアミン、ジメチルア ン、トリメチルアミン、トリエチレンジア ン、ジエチレントリアミン、エチレンジア ン、トリメチレンジアミンから選択される1 種又は2種以上のものである上記14に記載の陰 荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子の製造 方法;

 すなわち本発明は、陰荷電基を持つ低分 薬物を金属イオンにより疎水化し、この疎 化された薬物を、ポリL-乳酸又はポリ(L-乳 /グリコール酸)共重合体、及びポリDL-又はL- 酸-ポリエチレングリコールブロック共重合 体又はポリ(DL-又はL-乳酸/グリコール酸)-ポリ エチレングリコールブロック共重合体と作用 させることによりナノ粒子に封入した陰荷電 基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子を作製する ことを特徴とする。

 本発明が提供する陰荷電基を持つ低分子薬 含有ナノ粒子は、陰荷電基を持つ低分子薬 を患部ターゲッティングし、薬物の徐放性 優れ、さらに肝臓集積を低減することによ 副作用を軽減し、さらにまた血中滞留性に れており、特に徐放性において優れている ポリDL-乳酸又はポリ(DL-乳酸/グリコール酸) 重合体の代わりにL体であるポリL-乳酸又は リ(L-乳酸/グリコール酸)共重合体を使用す 場合に徐放性効果が一層優れていることが 発明の特徴である。
 したがって、これまで十分に達成されてい かった陰荷電基を持つ低分子薬物のターゲ ティング及び徐放性を向上させ、さらに肝 集積による副作用を軽減し、さらに血中濃 を向上させるものである。

実施例4における、ローダミンを封入したナ 粒子の細胞内取り込みの蛍光顕微鏡写真で る。 図中、写真A)はローダミンのみ添加、 真B)はPLLAのみから調製されたローダミン及 PGE 1 封入ナノ粒子、写真C)はPLLA及びPDLLA-PEGから調 製したローダミン及びPGE 1 ナノ粒子の濃度分布を表す。なお、スケール バーは50μmを表す。

 本発明の態様である陰荷電基を持つ低分 薬物含有ナノ粒子は、陰荷電基を持つ低分 薬物を金属イオンにより疎水化し、この疎 化した薬物をポリL-乳酸又はポリ(L-乳酸/グ コール酸)共重合体、及びポリDL-又はL-乳酸- ポリエチレングリコールブロック共重合体又 はポリ(DL-又はL-乳酸/グリコール酸)-ポリエチ レングリコールブロック共重合体と作用させ ることにより得られる。また、界面活性剤を 配合してもよく、界面活性剤を配合すること により、生成したナノ粒子を安定化すること ができる。

 本発明の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナ 粒子は、ナノ粒子を形成するために使用す 生分解性高分子として、L異性体であるポリ L-乳酸又はポリ(L-乳酸/グリコール酸)共重合 を使用することをひとつの特徴とする。
 ポリ-L-乳酸はポリ-DL-乳酸に比し、有機溶媒 への溶解性が異なり、また結晶性が高いこと が知られている。本発明では、ポリ-L-乳酸を 、ポリDL-又はL-乳酸-ポリエチレングリコール ブロック共重合体又はポリ(DL-又はL-乳酸/グ コール酸)-ポリエチレングリコールブロック 共重合体と共に混合しナノ粒子を形成させる ことにより、ポリ-L-乳酸の水相での結晶化を 抑止し、安定に分散可能なナノ粒子を調製す ることができる。
 ポリ-L-乳酸は、アセトンに不溶性であるた 、その溶解性を上げるために、アセトン/ジ オキサンあるいはアセトン/テトラヒドロフ ンの混合液を使用して、ナノ粒子を調製し 。

 上記の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナ 粒子は、界面活性剤を配合していてもよく 界面活性剤を配合することにより、生成し ナノ粒子を安定化し、粒子間の凝集を抑止 ることができる。

 上記により提供される本発明の陰荷電基 持つ低分子薬物含有ナノ粒子は、静脈注射 製剤、局所注射用製剤、点鼻剤、点眼剤、 入剤、噴霧剤などの非経口投与用製剤とす ことにより、投与することができる。

 本発明が提供する陰荷電基を持つ低分子薬 含有ナノ粒子は、以下のとおり作製するこ ができる。
 すなわち、陰荷電基を持つ低分子薬物と金 イオンを、有機溶媒又は含水有機溶媒の溶 中で混合して疎水性薬物とし、この混合液 にポリL-乳酸又はポリ(L-乳酸/グリコール酸) 共重合体、さらにポリDL-又はL-乳酸-ポリエチ レングリコールブロック共重合体又はポリ(DL -又はL-乳酸/グリコール酸)-ポリエチレングリ コールブロック共重合体を加えて攪拌し、こ の溶液を水中に添加、拡散することにより調 製することができる。

 また、ポリL-乳酸又はポリ(L-乳酸/グリコ ル酸)共重合体、さらにポリDL-又はL-乳酸-ポ リエチレングリコールブロック共重合体又は ポリ(DL-又はL-乳酸/グリコール酸)-ポリエチレ ングリコールブロック共重合体を溶媒に溶解 した溶液と、陰荷電基を持つ低分子薬物の水 溶液、及び金属イオン水溶液を同時に加えて 混合しても同様のナノ粒子を調製することが できる。

 ポリDL-又はL-乳酸-ポリエチレングリコー ブロック共重合体又はポリ(DL-又はL-乳酸/グ リコール酸)-ポリエチレングリコールブロッ 共重合体をナノ粒子の表面修飾剤として用 ることで、ポリL-乳酸又はポリ(L-乳酸/グリ ール酸)共重合体の水相における結晶化を抑 制し、その結果、粒子の大きさが均一で安定 なナノ粒子を得ることができる。

 使用される金属イオンとしては、亜鉛イ ン、鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオン ベリリウムイオン、マンガンイオン、コバ トイオンのいずれかであり、それらの水溶 金属塩の1種又は2種以上が使用される。そ なかでも好ましくは亜鉛イオン、鉄イオン あり、塩化亜鉛、塩化鉄などが好ましく使 できる。

 上記の反応に使用される溶媒としては、 セトン、アセトニトリル、エタノール、メ ノール、プロパノール、ジメチルホルムア ド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、 トラヒドロフランなどの有機溶媒、あるい これらの含水溶媒であり、アセトン、ジメ ルホルムアミド、ジオキサン、テトラヒド フランが好ましい。

 陰荷電基を持つ低分子薬物は、上記の金 イオンと結合して疎水化され易いように分 内にリン酸基、硫酸基又はカルボキシル基 有していることが好ましく、また分子量が1 ,000以下であることが好適である。

 そのような陰荷電基を持つ低分子薬物とし は、種々の薬物を挙げることができるが、 かでも水溶性の抗炎症性ステロイド、非ス ロイド性抗炎症薬、プロスタグランジン又 その誘導体、抗微生物薬、又は抗癌薬が好 であり、より具体的には、リン酸ベタメタ ン、リン酸デキサメタゾン、リン酸プレド ゾロン、リン酸ヒドロコルチゾン、コハク プレドニゾロン、コハク酸ヒドロコルチゾ などの抗炎症性ステロイド;ロキソプロフェ ン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ジク ロフェナック、フェンブフェンなどの非ステ ロイド性抗炎症薬;プロスタグランジンE 1 、プロスタグランジンE 2 又はその誘導体;バンコマイシン、コハク酸 ロラムフェニコール、ラタモキセフ、セフ ロム、リン酸クリンダマイシン、カルモナ などの抗微生物薬;ビンクリスチン、ビンブ スチンなどの抗癌薬などが挙げられるが、 れらに限定されるものではない。

 ポリDL-又はL-乳酸-ポリエチレングリコー ブロック共重合体(DL-体をPDLLA-PEG、L-体をPLLA -PEGということもある)又はポリ(DL-又はL-乳酸/ グリコール酸)-ポリエチレングリコールブロ ク共重合体(DL-体をPDLLGA-PEG、L-体をPLLGA-PEGと いうこともある)は、ポリDL-乳酸(PDLLAという ともある)若しくはポリL-乳酸(PLLAということ もある)又はポリ(DL-乳酸/グリコール酸)共重 体(PDLLGAということもある)若しくはポリ(L-乳 酸/グリコール酸)共重合体(PLLGAということも る)(これらの重合体をブロックAという)とポ リエチレングリコール(PEGということもある)( ブロックBという)とを、エチレンジメチルア ノプロピルカルボジイミドなどの縮合剤の とで反応させることにより、生成すること できるが、市販されている同様のブロック 重合体を使用してもよい。

 ブロック共重合体の構成としてはA-Bタイ 、A-B-Aタイプ、B-A-Bタイプのいずれであって も本発明の目的を達成することができる。ま た、これらのブロック共重合体の重量平均分 子量は3,000~30,000であることが好ましい。

 また、本発明の陰荷電基を持つ低分子薬 含有ナノ粒子は、ポリDL-又はL-乳酸-ポリエ レングリコールブロック共重合体又はポリ( DL-又はL-乳酸/グリコール酸)-ポリエチレング コールブロック共重合体に対するポリL-乳 又はポリ(L-乳酸/グリコール酸)共重合体の混 合比を高くすると、大きなナノ粒子が生成さ れ、かつ薬物のナノ粒子への封入率が増加す る傾向にある。

 本発明の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナ 粒子おいて、さらに塩基性低分子化合物を 合することにより薬物のナノ粒子への封入 が増加し、10%程度まで封入することができ 。
 このような塩基性低分子化合物としては(ジ メチルアミノ)ピリジン、ピリジン、ピペリ ン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、 ノリン、キヌクリジン、イソキノリン、ビ (ジメチルアミノ)ナフタレン、ナフチルアミ ン、モルホリン、アマンタジン、アニリン、 スペルミン、スペルミジン、ヘキサメチレン ジアミン、プトレシン、カダベリン、フェネ チルアミン、ヒスタミン、ジアザビシクロオ クタン、ジイソプロピルエチルアミン、モノ エタノールアミン、ジエタノールアミン、ト リエタノールアミン、エチルアミン、ジエチ ルアミン、トリエチルアミン、メチルアミン 、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリ エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、 エチレンジアミン、トリメチレンジアミン等 を挙げることができ、好ましくは、2級又は3 アミン類であり、ジエタノールアミンが特 好ましい。

 かくして調製された陰荷電基を持つ低分 薬物含有ナノ粒子に界面活性剤を配合して よく、界面活性剤を配合することにより、 成したナノ粒子を安定化し、かつ粒子間の 集を抑制することができる。したがって、 ノ粒子を含有する製剤の製剤化工程にとっ 好ましいものとなる。

 使用される界面活性剤としては、ホスフ チジルコリン、ポリオキシエチレン(20)ソル ビタンモノオレート、ポリオキシエチレン(20 )ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエ レン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリ キシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテー ト、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリ レート、ポリオキシエチレン(80)オクチルフ ニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)コレ ステロールエステル、脂質-ポリエチレング コール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 び脂肪酸-ポリエチレングリコール共重合体 をあげることができ、これらの界面活性剤 ら選択される1種又は2種以上を使用するの 好ましい。

 本発明が提供する陰荷電基を持つ低分子薬 含有ナノ粒子にあっては、その粒子の直径 20~300nmの範囲内であり、好ましくは50~200nmで あり、それぞれの薬物が目的とするターゲッ ト患部に依存して、その粒子径を決定するこ とができる。
 例えば、薬物を関節炎、癌、閉塞性動脈硬 症などに使用する場合には、50~200nmの粒径 有するナノ粒子を静脈注射することが好ま い。この粒径は、PDLLA-PEG若しくはPLLA-PEG又は PDLLGA-PEG若しくはPLLGA-PEGを溶解する溶媒、好 しくはアセトン又はジオキサンの量を調節 ることにより調整することができ、アセト 又はジオキサンの量を多くすることにより さな粒径のナノ粒子が得られる。また、ナ 粒子の粒径が大きくなるほど薬物の封入率 高くなる傾向にある。

 かくして調製した本発明の陰荷電基を持 低分子薬物含有ナノ粒子は、ナノ粒子の溶 又は懸濁液を、遠心分離、限外濾過、ゲル 過、フィルター濾過、ファイバー透析など 操作により適宜精製した後、凍結乾燥して 得、保存される。

 その際、凍結乾燥した製剤を再懸濁して 与できるようにするため安定化剤及び/又は 分散化剤を加えて凍結乾燥されることが好ま しく、そのような安定化剤、分散化剤として はショ糖、トレハロース、カルボキシメチル セルロースナトリウムなどが好ましく使用さ れる。

 本発明が提供する陰荷電基を持つ低分子 物含有ナノ粒子は、静脈注射用製剤、局所 射用製剤、点鼻剤、点眼剤、吸入剤、噴霧 などの非経口投与用製剤の医薬品として使 され、なかでも静脈注射用製剤とすること 、当該ナノ粒子の特性、効果をより良く発 することができる。

 これらの非経口投与用製剤の調製に使用 れる基剤、その他の添加剤成分としては、 剤学的に許容され、使用されている各種基 、成分を挙げることができる。具体的には 生理食塩水、単糖類、二糖類、糖アルコー 類、多糖類などの糖類;ヒドロキシエチルセ ルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、 メチルセルロースなどの高分子添加剤;イオ 性又は非イオン性界面活性剤;などが剤型に じて適宜選択され、使用することができる

 以下に本発明を実施例により詳細に説明 るが、本発明はこれらの実施例に限定され ものではない。

実施例1 : ポリDL-乳酸-ポリエチレングリコ ルブロック共重合体(PDLLA-PEG)の合成
 メトキシ-PEG40g(Mw5200、日本油脂社製)、D、L- クチド40g(Purac社製)、オクチル酸スズ(400mg) 二口丸底フラスコに入れ十分に混合した。 圧ポンプにて脱気後、オイルバスにて110℃ 加熱し溶解した。溶解後155℃に昇温し、4時 反応させた。反応物(固形物)を冷却後、250mL 程度のジクロロメタンに溶解し、氷冷したイ ソプロパノール2.5Lに徐添加で再沈精製し、 結乾燥することでポリDL-乳酸-ポリエチレン リコールブロック共重合体(PDLLA-PEG)を合成 た。合成物は、ゲルろ過クロマトグラフィ (GPC)あるいはプロトンNMRにて評価した。

 GPCから、メトキシ-PEGに比べ分子量の増大が 認められ、またプロトンNMRからポリ乳酸の存 在が確認できたことから、PDLLA-PEGが合成され た。また、D,L-ラクチドの量を変えて上記と 様に操作し、分子量の異なるPDLLA-PEGを得た
 さらに、D,L-ラクチドをD,L-ラクチドとグリ ライドの混合物に変更した以外は上記と同 に操作して、PDLLGA-PEGを合成した。

実施例2 : プロスタグランジンE 1 (PGE 1 )を封入したPLLAとPDLLA-PEGからなる ノ粒子の製造法
 PLLA(多木化学社製)を所定量計り、225μLのジ キサンに溶解した。実施例1で合成したPDLLA- PEGを所定量計り、アセトン175μLに溶解し、前 記のジオキサン溶液とともに混合した。この 混合液に、5mgのPGE 1 を溶解した250μLのアセトン溶液を添加し、つ づいて所定量のジエタノールアミンを溶解し た100μLのアセトン溶液を添加した。直ちに、 500mMの無水塩化第二鉄アセトン溶液を所定量 えて混和し、室温で10分間放置した。50mLの ンプル瓶に25mLの水を入れ2cmのスターラーバ ーで攪拌しながら、そこに26G注射針をつけた 3mLシリンジで上記の反応液を徐々に滴下した (スターラー回転数:1000rpm、注射針:26G、シリ ジ:ニプロ3mL、滴下速度:48L/hr)。得られた懸 液に500mMのEDTA水溶液(pH7)を2.5mL及び200mg/mLのTw een80[ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノ レート]水溶液を12μL添加した。限外濾過(YM-5 0、アミコン社製)にて濃縮後、50mMのEDTA水溶 (pH7)を添加し、再び濃縮を行った(これを2回 返した)。得られた濃縮懸濁液を超音波照射 30秒後、遠心(1000rpm、5分)にて凝集塊を除去し 、動的光散乱測定装置で粒径測定及び粒子内 のPGE 1 の封入量をHPLCにて定量した。

 塩化第二鉄とジエタノールアミンの使用量 よるナノ粒子へのPGE 1 の封入率の関係を表1に、塩化第二鉄の添加 によるナノ粒子へのPGE 1 の封入率の関係を表2に、PDLLA-PEGとPLLAの混合 合におけるナノ粒子の粒径及びPGE 1 の封入率の関係を表3に示した。

表1:鉄量を一定(7.5μmol)使用して、ジエタノー ルアミン量を変えて調製したナノ粒子のPGE 1 封入率

 表1の結果から判明するように、PGE 1 封入率は、ジエタノールアミン量に影響され ており、封入率を上げるための最適のジエタ ノールアミン量が存在していた。

表2:鉄の総添加量を変えて調製したナノ粒子 PGE 1 の封入率

 表2に示した結果から判明するように、PGE 1 封入率は、添加した鉄量に影響されており、 鉄量が増加するほど封入率が上昇していた。

表3:PDLLA-PEGとPLLAの混合比を変えて調製したナ ノ粒子の粒径及びPGE 1 封入率

 表3に示した結果から判明するように、PDLLA- PEGのPLLAに対する混合比が高いほど、小さな 子が調製できるが、PGE 1 の封入率は低くなった。
 また、上記表1~3中のいずれの粒子において 、PDLLA-PEGを用い粒子を調製することにより 水中でもPLLAが結晶化せず、粒径維持が可能 な安定な粒子が調製できた。

実施例3 : プロスタグランジンE 1 (PGE 1 )を封入したPLLAとPDLLA-PEGからなる ノ粒子の徐放性
 実施例2において、PGE 1 を5mg、PLLAを13mg、PDLLA-PEGを12mg、ジエタノール アミンを4.7mg及び塩化第二鉄を7.5μmol使用し 以外は同様の方法によりPGE 1 を封入したPLLAとPDLLA-PEGからなるナノ粒子(PLLA 粒子という)を作製した。
 対照として、PLLAの代わりにDL-体であるポリ DL-乳酸(PDLLA)を使用することにより、PGE 1 を封入したPDLLAとPDLLA-PEGからなるナノ粒子(PDL LA粒子という)を作製した。

 作製したPLLA粒子又はPDLLA粒子をリン酸緩衝 /ウシ血清(等量ずつの混合液)中に分散し、3 7℃でインキュベートした。両粒子の徐放性 測定するために、経時的に粒子内に残存し いるPGE 1 量をHPLCにより定量した。
 その結果を表4に示した。

表4:PGE1ナノ粒子からの放出(徐放性)

ND:未検出

 表4に示した結果から判明するように、PLLA(L 体)から調製したナノ粒子では、PDLLA(DL体)か 調製したナノ粒子に比べ、よりゆっくりと 長期間PGE 1 を放出するので、徐放性に優れていることが 判明する。

実施例4:プロスタグランジンE 1 (PGE 1 )を封入したPLLAとPDLLA-PEGからなる ノ粒子の細胞内への取り込み
 蛍光色素であるローダミンを封入したナノ 子は、アセトン溶液にローダミンを添加し こと以外は、実施例3と同じ方法により調製 した。また対照として、PDLLA-PEGを用いずに、 PLLAのみからなるローダミン及びPGE 1 封入ナノ粒子を同様に調製した。得られたそ れぞれのナノ粒子をRAW細胞(マウスマクロフ ージ様細胞)に添加し、37℃で2時間インキュ ート後、細胞を蛍光顕微鏡により観察した

 その結果を図1に示した。図1から明らか ように、対照であるPLLAのみから調製された ノ粒子では顕著に細胞内に取り込まれたの 対し、PLLA及びPDLLA-PEGから調製したナノ粒子 では細胞内への取り込みが抑制された。

 図1において、青はDAPI(4’,6-ジアミノ-2-フェ ニルインドール)による核染色、赤はローダ ンの分布を表す。また、写真A)はローダミン のみ添加、写真B)はPLLAのみから調製されたロ ーダミン及びPGE 1 封入ナノ粒子、写真C)はPLLA及びPDLLA-PEGから調 製したローダミン及びPGE 1 ナノ粒子の濃度分布を表す。スケールバーは 50μmを表す。

実施例5:リン酸ベタメタゾンを封 したPLLAとPDLLA-PEGからなるナノ粒子の製造法
 PLLA(多木化学社製)を36mg計り、450μLのジオキ サンに溶解した。実施例1で合成したPDLLA-PEG 14mgおよびジエタノールアミン7.5mg計りアセ ン1050μLに溶解し、前記のジオキサン溶液と もに混合した。この混合液に1M塩化亜鉛水 液68μLを添加し、続いて350mg/mLのリン酸ベタ サゾン水溶液28μLを添加した。室温にて30分 程度静置した。50mLのサンプル瓶に25mLの水を れ2cmのスターラーバーで攪拌しながら、そ に26G注射針をつけた3mLシリンジで上記の反 液を徐々に滴下した(スターラー回転数:1000r pm、注射針:26G、シリンジ:ニプロ3mL、滴下速 :48L/hr)。得られた懸濁液に0.5Mクエン酸ナト ウム水溶液(pH7)500μLおよびTween80[ポリオキシ チレン(20)ソルビタンモノオレート]水溶液(2 00mg/mL)水溶液を125μL添加した。限外濾過(YM-50 アミコン社製)にて濃縮後、水を添加し、再 び濃縮を行った(これを2回繰返した)。得られ た濃縮懸濁液を超音波照射30秒後、遠心(1000rp m、5分)にて凝集塊を除去した。

 得られたナノ粒子の粒径を動的光散乱測 装置で測定し、リン酸ベタメタゾンのナノ 子内への封入率をHPLCで定量した。

 その結果、リン酸ベタメタゾンのナノ粒 内への封入率は8.6重量%で粒径は約100nmであ 、PLLAとPDLLA-PEGの粒子にリン酸ベタメタゾン を封入したナノ粒子が調製された。

実施例6:リン酸プレドニゾロンを 入したPLLAとPDLLA-PEGからなるナノ粒子の製造 法
 上記実施例5と同様の方法により、PLLA(多木 学社製)、実施例1で合成したPDLLA-PEG、ジエ ノールアミンをアセトンに溶解し、PLLAのジ キサン溶液とともに混合した。この混合液 1M塩化亜鉛水溶液を添加し、続いてリン酸 レドニゾロン水溶液を添加し、その後実施 5と同様に処理を行い、リン酸プレドニゾロ 封入ナノ粒子を得た。
 得られたナノ粒子の粒径を動的光散乱測定 置で測定し、リン酸プレドニゾロンのナノ 子内への封入率をHPLCで定量した結果、封入 率は8.5重量%で粒径は約100nmであり、PLLAとPDLLA -PEGの粒子にリン酸プレドニゾロンを封入し ナノ粒子が調製された。

 以上記載したように、本発明の陰荷電基 持つ低分子薬物含有ナノ粒子は、陰荷電基 持つ低分子薬物を患部ターゲッティングし 薬物の徐放性に優れ、さらに肝臓集積を低 することにより副作用を軽減し、さらに血 滞留性に優れているので、医薬品として有 であり、その産業上の利用可能性は多大な のである。