Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
MAGNETORESISTIVE EFFECT ELEMENT, AND MAGNETIC RANDOM ACCESS MEMORY, AND ITS INITIALIZATION METHOD
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/044644
Kind Code:
A1
Abstract:
A magnetoresistive effect element and a magnetic random access memory comprise a first ferromagnetic layer, an insulating layer provided contiguously thereto, a second ferromagnetic layer provided on the side opposite to the first ferromagnetic layer contiguously to the insulating layer, and at least two third ferromagnetic layers provided near the both ends of the first ferromagnetic layer in the longitudinal direction in contact therewith magnetically. The first through third ferromagnetic layers have magnetic anisotropy in the direction substantially perpendicular to the film surface. The magnetoresistive effect element and the magnetic random access memory are initialized by making the external magnetic field fall down after applying a sufficiently large external magnetic field in the film surface direction thereby introducing a magnetic domain wall in the first ferromagnetic layer. A magnetic random access memory in which the current value required for writing is reduced significantly as compared with 1 mA while maintaining sufficient thermal stability and resistance against disturbance magnetic field, and the memory state can be initialized by an easy process can thereby be provided.

Inventors:
FUKAMI SHUNSUKE (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/067091
Publication Date:
April 09, 2009
Filing Date:
September 22, 2008
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
NEC CORP (JP)
FUKAMI SHUNSUKE (JP)
International Classes:
H01L43/08; H01L21/8246; H01L27/105
Foreign References:
JP2006073930A2006-03-16
JP2007103663A2007-04-19
JP2005191032A2005-07-14
Attorney, Agent or Firm:
KUDOH, Minoru (24-10 Minamiooi 6-chom, Shinagawa-ku Tokyo 13, JP)
Download PDF:
Claims:
 第1強磁性層と、
 前記第1強磁性層の第1表面側に配置される絶縁層と、
 前記絶縁層の前記第1強磁性層とは反対側に配置される第2強磁性層と、
 前記第1強磁性層の長手方向の端部付近に配置され前記第1強磁性層と磁気的に接続する第3強磁性層と、
 前記第1強磁性層の長手方向の端部付近に配置され前記第1強磁性層と磁気的に接続する第4強磁性層
 とを具備し、
 前記第1強磁性層、前記第2強磁性層、前記第3強磁性層及び前記第4強磁性層は、それぞれの膜面に対して水平よりも垂直に近い磁気異方性を有する
 磁気抵抗効果素子。
 前記第1強磁性層が、
 第1の方向に延伸する磁壁移動部と、
 前記磁壁移動部の第1の端部に接続して、前記第1の端部から第2の方向に延伸する第1の磁化固定部と、
 前記磁壁移動部の第2の端部に接続して、前記第2の端部から第3の方向に延伸する第2の磁化固定部とを含み、
 前記第2の方向と前記第3の方向とは反平行な成分を有し、
 前記第1の磁化固定部には前記第3強磁性層が隣接して配置され、
 前記第2の磁化固定部には前記第4強磁性層が隣接して配置され、
 前記第1強磁性層の膜厚方向の中心を通る面である第1の面の、積層方向における平均高さZ1と、
 前記第3強磁性層の膜厚方向の中心を通る面である第2の面の、積層方向における平均高さZ2と、
 前記第4強磁性層の膜厚方向の中心を通る面である第3の面の、積層方向における平均高さZ3の間に、以下の(1)と(2)
(1)Z1<Z2且つZ1<Z3
(2)Z1>Z2且つZ1>Z3
 のうちの一方の関係が満たされる請求の範囲1記載の磁気抵抗効果素子。
 前記第3強磁性層と前記第4強磁性層との各々が外部の配線へと接続される
 請求の範囲1または請求の範囲2に記載の磁気抵抗効果素子。
 前記第1強磁性層の長手方向に前記第3強磁性層と前記第4強磁性層との間に配置され、前記第1強磁性層と電気的に接続された少なくとも2つの電極層を含む電極層群を更に具備し、
 前記電極層群に含まれる電極層のうちの少なくとも2つのうちの各々が外部の配線へと接続される
 請求の範囲1または請求の範囲2に記載の磁気抵抗効果素子。
 前記第1強磁性層の膜厚が1nm以上20nm以下である
 請求の範囲1乃至4のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子。
 前記第1強磁性層の膜厚が10nm以下である
 請求の範囲5記載の磁気抵抗効果素子。
 前記第1強磁性層の膜厚が8nm以下である
 請求の範囲6記載の磁気抵抗効果素子。
 前記第1強磁性層が平面形状の変調を有する
 請求の範囲1乃至7のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子。
 前記第1強磁性層が断面形状の変調を有する
 請求の範囲1乃至7のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子。
 前記第1強磁性層が台形状の断面形状を有し、
 前記台形は、前記第3強磁性層側の辺が、前記第3強磁性層側と反対側の辺よりも長い
 請求の範囲1乃至9のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子。
 前記第3強磁性層に隣接して配置されたピニング層を更に具備する
 請求の範囲1乃至9のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子。
 前記第3強磁性層が隣り合うメモリセル間で共有される
 請求の範囲3記載の磁気抵抗効果素子。
 請求の範囲1乃至12のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子の磁気抵抗効果を用いてデータを記憶する磁気ランダムアクセスメモリ。
 磁気抵抗素子の初期化方法であって、
 前記磁気抵抗素子は、
 第1強磁性層と、
 前記第1強磁性層の第1表面側に配置される絶縁層と、
 前記絶縁層の前記第1強磁性層とは反対側に配置される第2強磁性層と、
 前記第1強磁性層の長手方向の端部付近に配置され前記第1強磁性層と磁気的に接続する第3強磁性層と、
 前記第1強磁性層の長手方向の端部付近に配置され前記第1強磁性層と磁気的に接続する第4強磁性層
 とを具備し、
 前記第1強磁性層、前記第2強磁性層、前記第3強磁性層及び前記第4強磁性層は、それぞれの膜面に対して水平よりも垂直に近い磁気異方性を有し、
 前記磁気抵抗素子の膜面に平行な方向に外部磁界を印加するステップと、
 前記外部磁界の向きを前記膜面に平行な方向から異なる方向に変えることによって前記第1強磁性層内に磁壁を導入するステップ
 とを具備する磁気抵抗素子の初期化方法。
 磁気抵抗効果素子の初期化方法であって、
 前記磁気抵抗素子は、
 第1強磁性層と、
 前記第1強磁性層の第1表面側に配置される絶縁層と、
 前記絶縁層の前記第1強磁性層とは反対側に配置される第2強磁性層と、
 前記第1強磁性層の長手方向の端部付近に配置され前記第1強磁性層と磁気的に接続する第3強磁性層と、
 前記第1強磁性層の長手方向の端部付近に配置され前記第1強磁性層と磁気的に接続する第4強磁性層
 とを具備し、
 前記第1強磁性層が、
 第1の方向に延伸する磁壁移動部と、
 前記磁壁移動部の第1の端部に接続して、前記第1の端部から第2の方向に延伸する第1の磁化固定部と、
 前記磁壁移動部の第2の端部に接続して、前記第2の端部から第3の方向に延伸する第2の磁化固定部とを含み、
 前記第2の方向と前記第3の方向とは反平行な成分である第1の成分を有し、
 前記第1の磁化固定部には前記第3強磁性層が隣接して配置され、
 前記第2の磁化固定部には前記第4強磁性層が隣接して配置され、
 前記第1強磁性層の膜厚方向の中心を通る面である第1の面の、積層方向における平均高さZ1と、
 前記第3強磁性層の膜厚方向の中心を通る面である第2の面の、積層方向における平均高さZ2と、
 前記第4強磁性層の膜厚方向の中心を通る面である第3の面の、積層方向における平均高さZ3の間に、以下の(1)と(2)
(1)Z1<Z2且つZ1<Z3
(2)Z1>Z2且つZ1>Z3
 のうちの一方の関係が満たされ、
 前記第1の成分に略平行な方向に磁界を印加するステップと、
 前記磁界の向きを前記磁気抵抗素子の膜面に平行な方向から異なる方向に変えることによって前記第1強磁性層内に磁壁を導入するステップ
 とを具備する磁気抵抗素子の初期化方法。
Description:
磁気抵抗効果素子、及び磁気ラ ダムアクセスメモリ、及びその初期化方法

 本発明は、磁気抵抗効果素子、及び磁気 ンダムアクセスメモリとその初期化方法に する。特に本発明は磁壁移動方式の磁気抵 効果素子、及び磁気ランダムアクセスメモ とその初期化方法に関する。

 磁気ランダムアクセスメモリ(Magnetic Random  Access Memory;MRAM)は高速動作、および無限回の き換えが可能な不揮発性メモリとして期待 れ、盛んな開発が行われている。MRAMでは記 憶素子として磁性体を用い、磁性体の磁化の 向きに対応させて情報を記憶する。この磁性 体の磁化をスイッチングさせる方法としてい くつかの方式が提案されているが、いずれも 電流を使う点では共通している。MRAMを実用 する上では、この書き込み電流をどれだけ さくできるかが非常に重要である。以下に げる非特許文献1によれば0.5mA以下への低減 さらに好ましくは0.2mA以下への低減が求めら れている。
[非特許文献1]N. Sakimura, et al., “MRAM Cell Te chnology for Over 500MHz SoC,” 2006 Symposium on V LSI Circuits, Digest of Technical Papers, 2006, pp.13 6.

 MRAMへの情報の書き込み方法のうちで最も 一般的なのは、磁性記憶素子の周辺に書き込 みのための配線を配置し、この配線に電流を 流すことで発生する磁界によって磁性記憶素 子の磁化の方向をスイッチングさせる方法で ある。この方法は磁界による磁化反転となる ため、原理的には1ナノ秒以下での書き込み 可能であり、高速MRAMを実現する上では好適 ある。しかしながら熱安定性、外乱磁界耐 が確保された磁性体の磁化をスイッチング るための磁界は一般的には数10Oe(エールス ッド)程度となり、このような磁界を発生さ るためには数mA程度の電流が必要となる。 の場合、チップ面積が大きくならざるを得 、また書き込みに要する消費電力も増大す ため、他のランダムアクセスメモリと比べ 競争力で劣ることになる。これに加えて、 子が微細化されると、書き込み電流はさら 増大してしまい、スケーリングの点でも好 しくない。

 近年このような問題を解決する手段とし 、以下の2つの方法が提案されている。一つ 目はスピン注入磁化反転である。これは反転 可能な磁化を有する第1の磁性層と、それに 気的に接続され、磁化が固定された第2の磁 層から構成された積層膜において、第2の磁 性層と第1の磁性層の間で電流を流したとき スピン偏極した伝導電子と第1の磁性層中の 在電子との間の相互作用を利用して第1の磁 性層の磁化を反転する方法である。スピン注 入磁化反転はある電流密度以上のときに起こ ることから、素子のサイズが小さくなれば、 書き込みに要する電流は低減される。すなわ ちスピン注入磁化反転方式はスケーリング性 に優れていると言うことができる。しかしな がら、一般的に第1の磁性層と第2の磁性層の には絶縁層が設けられ、書き込みの際には 較的大きな電流をこの絶縁層に流さなけれ ならず、書き換え耐性や信頼性が課題とな 。また、書き込みの電流経路と読み出しの 流経路が同じになることから、読み出しの の誤書き込みも懸念される。このようにス ン注入磁化反転はスケーリング性には優れ ものの、実用化にはいくつかの障壁がある

 一方で二つ目の方法である電流駆動磁壁移 現象を利用した磁化反転方法は、スピン注 磁化反転の抱える上述のような問題を解決 ることができる。電流駆動磁壁移動現象を 用したMRAMは例えば以下の特許文献1で開示 れている。
[特許文献1]特開2005-191032号公報
 電流駆動磁壁移動現象を利用したMRAMは、一 般的には反転可能な磁化を有する第1の磁性 において、その両端部の磁化が互いに略反 行となるように固定されている。このよう 磁化配置のとき、第1の磁性層内には磁壁が 入される。ここで、以下の非特許文献2で報 告されているように、磁壁を貫通する方向に 電流を流したとき、磁壁は伝導電子の方向に 移動することから、第1の磁性層内に電流を すことにより書き込みが可能となる。
[非特許文献2]A. Yamaguchi, et al., “Real-Space O bservation of Current-Driven Domain Wall Motion in Su bmicron Magnetic Wires,” Physical Review Letters, 20  February, 2004, vol. 92, number 7, pp.077205.
 電流駆動磁壁移動もある電流密度以上のと に起こることから、スピン注入磁化反転と 様にスケーリング性があると言える。これ 加えて、電流駆動磁壁移動を利用したMRAM素 子では、書き込み電流が絶縁層を流れること はなく、また書き込み電流経路と読み出し電 流経路は別となるため、スピン注入磁化反転 で挙げられるような上述の問題は解決される ことになる。

 しかしながら電流駆動磁壁移動を利用したM RAMでは、書き込み電流の絶対値が比較的大き くなってしまうという課題がある。非特許文 献2のほかにも、電流誘起磁壁移動の観測は 多く報告されているが、概ね磁壁移動には1 10 8 [A/cm 2 ]程度の電流密度を要している。この場合、 えば磁壁移動の起こる層の幅を100nm、膜厚を 10nmとした場合の書き込み電流は1mAとなる。 れ以下に書き込み電流を低減するためには 厚を薄くすればよいが、膜厚を薄くすると き込みに要する電流密度は更に上昇してし うことが報告されている(例えば、Japanese Jou rnal of Applied Physics, vol.45, No.5A, pp.3850-3853, (2006)参照)。また細線幅の数10nm以下への低減 は加工技術の点で大いなる困難を伴う。

 また1×10 8 [A/cm 2 ]に近い電流密度を用いて書き込みを行う場 、エレクトロンマイグレーションや温度上 の影響が懸念される。これに加えて電流駆 磁壁移動を利用したMRAMでは、前述のように 1の磁性層においてその両端部の磁化が互い に反平行となるように固定される必要があり 、これを実現するためには複雑なプロセスが 必要となる。これによって製造コストが上昇 する。

 本発明の目的は書き込み電流が1mAよりも 分小さく低減され、且つ電流密度自体も低 され、さらに容易に製造することができる 電流駆動磁壁移動現象を利用したMRAMを提供 することにある。

 本発明による磁気抵抗素子、及び磁気ラ ダムアクセスメモリは、第1強磁性層と、第 1強磁性層の第1表面側に配置される絶縁層と 絶縁層の第1強磁性層とは反対側に配置され る第2強磁性層と、第1強磁性層の長手方向の 部付近に配置され第1強磁性層と磁気的に接 続する第3強磁性層と、第1強磁性層の長手方 の端部付近に配置され第1強磁性層と磁気的 に接続する第4強磁性層とを備える。第1強磁 層、第2強磁性層、第3強磁性層及び第4強磁 層は、それぞれの膜面に対して水平よりも 直に近い磁気異方性を有する。

 第3強磁性層及び第4強磁性層は、具体的 一例としては、以下で説明する実施形態に いて共に第3強磁性層と呼ばれている層に相 する。

 本発明による磁気抵抗素子の初期化方法 、本発明による磁気抵抗素子を初期化する 法であり、膜面に平行な方向に外部磁界を 加するステップと、外部磁界の向きを膜面 平行な方向から変えることによって第1強磁 性層内に磁壁を導入するステップとを備える 。

 電流駆動磁壁移動の起こる第1強磁性層が 、垂直磁化を有する材料から構成されること により、スピン偏極電流を考慮に入れたLLG方 程式のうちの断熱スピントルク項によって小 さな電流密度でも磁壁を駆動することができ る。このとき閾値磁界による影響をほとんど 受けることなく磁壁移動が可能となるため、 高い熱安定性や外乱磁界耐性を維持したまま 書き込みに要する電流を低減することができ る。特に膜厚を薄くすることにより断熱スピ ントルク項による磁壁駆動の閾値電流密度が 低減するため、書き込み時の電流密度は低減 され、書き込み電流が1mAよりも十分小さく低 減されたMRAMを提供することができる。

 これに加えて第1強磁性層に隣接して第3 磁性層を設けることにより、磁壁を容易に 入することができる。第3強磁性層は複数設 られるが、それらの特性は均一でよいため 単純なプロセスで形成することができる。

 本発明の活用例として、携帯電話、モバ ルパソコンやPDAに使用される不揮発性の半 体メモリ装置や、自動車などに使用される 揮発性メモリ内蔵のマイコンが挙げられる

図1は本発明の第1の実施の形態に係る 気抵抗効果素子の主要な部分の構造を表す 視図である。 図2は本発明の第1の実施の形態に係る 気抵抗効果素子の主要な部分の構造を表す 面図である。 図3Aから図3Cは本発明の第1の実施の形 に係る磁気抵抗効果素子の第1の初期化過程 模式的に表す断面図である。 図4Aから図4Cは本発明の第1の実施の形 に係る磁気抵抗効果素子の第2の初期化過程 模式的に表す断面図である。 図5Aと図5Bは本発明の第1の実施の形態 係る磁気抵抗効果素子への情報の書き込み 法を説明するための断面図である。 図6はデピン電流密度の膜厚依存性につ いての計算結果である。 図7は温度上昇の電流密度依存性につい ての測定結果である。 図8Aと図8Bは本発明の第1の実施の形態 係る磁気抵抗効果素子からの情報の読み出 方法を説明するための断面図である。 図9は本発明の第1の実施の形態に係る 気メモリセルの1セル分の回路図の例である 図10は本発明の第1の実施の形態に係る 磁気メモリセルのレイアウトの例を表す平面 図である。 図11は本発明の第1の実施の形態に係る 磁気メモリセルのレイアウトの例を表す断面 図である。 図12Aと図12Bは本発明の第1の実施の形 に係る磁気抵抗効果素子における第1の変形 の構造を表す平面図、及び断面図である。 図13Aから図13Dは本発明の第1の実施の 態に係る磁気抵抗効果素子の第2の変形例の 要な部分の構造を表す平面図である。 図14Aと図14Bは本発明の第1の実施の形 に係る磁気抵抗効果素子の第3の変形例の主 な部分の構造を表す断面図である。 図15Aから図15Dは本発明の第1の実施の 態に係る磁気抵抗効果素子の第3の変形例の 要な部分の構造を表す平面図である。 図16Aと図16Bは本発明の第1の実施の形 に係る磁気抵抗効果素子の第4の変形例の主 な部分の構造を表す断面図である。 図17は本発明の第1の実施の形態に係る 磁気抵抗効果素子の第5の変形例の主要な部 の構造を表す断面図である。 図18Aと図18Bは本発明の第1の実施の形 に係る磁気抵抗効果素子の第6の変形例の主 な部分の構造を表す断面図である。 図19は本発明の第1の実施の形態に係る 磁気抵抗効果素子の第7の変形例の主要な部 の構造を表す断面図である。 図20は本発明の第1の実施の形態に係る 磁気抵抗効果素子の第8の変形例の主要な部 の構造を表す断面図である。 図21は本発明の第1の実施の形態に係る 磁気抵抗効果素子の第9の変形例の主要な部 の構造を表す断面図である。 図22は本発明の第1の実施の形態に係る 磁気抵抗効果素子の第10の変形例の主要な部 の構造を表す断面図である。 図23Aと図23Bは本発明の第1の実施の形 に係る磁気抵抗効果素子の第11の変形例の主 要な部分の構造を表す断面図である。 図24Aと図24Bは本発明の第1の実施の形 に係る磁気抵抗効果素子の第12の変形例の主 要な部分の構造を表す斜視図、及び平面図で ある。 図25Aと図25Bは本発明の第1の実施の形 に係る磁気抵抗効果素子の更なる第11の変形 例の主要な部分の構造を表す斜視図、及び平 面図である。 図26は本発明の第2の実施の形態に係る 磁気抵抗効果素子の主要な部分の構造を表す 斜視図である。 図27は本発明の第2の実施の形態に係る 磁気抵抗効果素子の主要な部分の構造を表す 断面図である。 図28Aから図28Cは本発明の第2の実施の 態に係る磁気抵抗効果素子の第1の初期化過 を模式的に表す断面図である。 図29Aから図29Cは本発明の第2の実施の 態に係る磁気抵抗効果素子の第2の初期化過 を模式的に表す断面図である。 図30Aと図30Bは本発明の第2の実施の形 に係る磁気抵抗効果素子への情報の書き込 方法を説明するための断面図である。 図31は本発明の第2の実施の形態に係る 磁気抵抗効果素子の第1の変形例の主要な部 の構造を表す断面図である。 図32は本発明の第2の実施の形態に係る 磁気抵抗効果素子の第2の変形例の主要な部 の構造を表す断面図である。 図33Aと図33Bは本発明の第2の実施の形 に係る磁気抵抗効果素子の第3の変形例の主 な部分の構造を表す断面図である。

 添付図面を参照して、本発明に係る磁気 ンダムアクセスメモリを説明する。本発明 係る磁気ランダムアクセスメモリは、アレ 状に配置された複数の磁気メモリセルを有 ており、各磁気メモリセルは磁気抵抗効果 子を有している。

[第1実施形態]
(磁気メモリセルの構成)
 本発明の第1実施形態に係る磁気抵抗効果素 子80の主要な部分の構造を表す斜視図を図1に 示す。また図1に示したx-y-z座標系におけるx-z 断面図を図2に示す。本発明の第1実施形態に る磁気抵抗効果素子80は、x方向に延伸して けられる第1強磁性層10と、第1強磁性層10に 接して設けられる絶縁層20と、絶縁層20に隣 接して第1強磁性層10とは反対側に設けられる 第2強磁性層30と、第1強磁性層10の両端付近に 磁気的に接して設けられる第3強磁性層15を具 備する。絶縁層20は、第1強磁性層10と第2強磁 性層30に挟まれており、これら第1強磁性層10 絶縁層20、第2強磁性層30によって磁気トン ル接合(MTJ)が形成されている。

 第1強磁性層10、第2強磁性層30、及び第3強 磁性層15は強磁性体により構成される。図2に は第1強磁性層10、第2強磁性層30、及び第3強 性層15の磁気異方性の向きが矢印で示されて いる。図に示されているように、第1強磁性 10、第2強磁性層30、及び第3強磁性層15の磁気 異方性はいずれも図中のz軸に略平行方向を くように設計される。このような磁気異方 を実現させるために、第1強磁性層10、第2強 性層30、及び第3強磁性層15は垂直磁気異方 を有する材料、または積層膜により形成さ ることが好ましい。この場合の積層膜とは 強磁性体同士の積層膜でもよいし、強磁性 と非磁性体からなる積層膜でもよい。

 第2強磁性層30の磁化は実質的にz軸に略平 行方向で一方向に固定される。一方第1強磁 層10のうちの、少なくともx-y面内において第 2強磁性層30とオーバーラップする部分の磁化 は第2強磁性層30の磁化に対して平行、もしく は反平行のいずれかの方向を向く。また第3 磁性層15は第1強磁性層10の両端付近に磁気的 に接続して、好適には二つ設けられる。第3 磁性層15の磁化方向は図のz軸方向に略平行 向でかつ互いに反平行方向を向く。第1強磁 層10、及び第3強磁性層15が上述のような磁 配置にあるとき、第1強磁性層10のうちの第2 磁性層30とx-y面内でオーバーラップする領 の磁化方向に応じて、第1強磁性層10内には 壁が形成される。

 また絶縁層20は絶縁体から構成されるこ が望ましいが、非磁性の導体や半導体によ 構成されても構わない。また図1、2において 第1強磁性層10の両端部、及び第2強磁性層30は 、外部の異なる配線に接続される。ここで第 1強磁性層10の両端部は第3強磁性層15を通って 外部の配線に接続される。このように当該磁 気抵抗効果素子80は3端子の素子となる。また 図1、2には示されていないが、この他に配線 のコンタクトのための電極層を第2強磁性層 30、及び第3強磁性層15に隣接させて設けるこ が望ましい。

(初期化方法)
 次に本発明の第1実施形態に係る磁気抵抗効 果素子80の初期化方法について図3Aから図3C、 および図4Aから図4Cを用いて説明する。当該 気抵抗効果素子80では、第1強磁性層10に磁壁 を導入する必要があり、図3Aから図3C、およ 図4Aから図4Cはその過程を示している。なお 図3Aから図3C、および図4Aから図4Cでは第1強 性層10と第3強磁性層15のみが示されている

 第1強磁性層10に磁壁を導入するためには はじめに磁気抵抗効果素子80に一様かつ十 大きな外部磁界を図のx軸に略平行方向(磁気 抵抗効果素子80を構成する膜の膜面に平行な 向)に印加する。このとき図3Aに示されるよ に、全ての磁気モーメントが外部磁界方向 揃い飽和した状態となる。次にこの状態か 外部磁界をz軸方向の成分を付加することに よって立ち下げる。この立ち下げのスピード は適度に遅いことが望ましい。このとき磁化 の緩和が始まり、第1強磁性層10、第3強磁性 15はいずれもz軸方向の磁気異方性を有する め、はじめに図3Bに示されるように第1強磁 層10のうちの第3強磁性層15との接続面付近の 磁化が第3強磁性層15の磁化と緩やかに繋がる ようにz軸方向に回転を始める。この回転を めた磁化は膜面垂直方向の磁化を有する磁 を形成し、この磁区が第1強磁性層10の中で 長する。ここで、図3Bに示されるように、第 1強磁性層10の中で成長する二つの磁区は互い に反平行方向の磁化を有する。従って、図3C 示されるように、二つの磁区が成長して出 ったとき、そこに磁壁が形成される。以上 本発明の第1実施形態における磁気抵抗効果 素子80の第1の初期化過程である。

 第1の初期化過程によって第1強磁性層10に 導入された磁壁は、図4Aから図4Cに示される うな第2の初期化過程によって所望の位置に 動される。図4Aは第1の初期化過程が終了し 時点での磁化状態の例である。図4Aの状態 おいて例えば+z方向に磁界を印加する。この 磁界は適度に小さいことが望ましい。このと き図4Aにおいて第1強磁性層10の中央付近に形 されていた磁壁は図4Bのように右側に移動 る。また図4Aの状態において例えば-z方向に 界を印加する。このとき図4Aにおいて第1強 性層10の中央付近に形成されていた磁壁は 4Cのように左側に移動する。図4Bと図4Cは異 るメモリ状態に対応しており、このように 4Aのような状態において小さな外部磁界を印 加することにより任意のメモリ状態への初期 化が可能である。なお、ここでは第2の初期 過程でz軸方向の磁界を用いる例を示したが この磁界としてはx-y成分を有していてもよ 。この他、磁界を用いることなく、後に図5 Aと図5Bを用いて説明されるように、書き込み のための電流を導入することによってメモリ 状態を初期化してもよい。

(書き込み方法)
 次に本発明の第1実施形態に係る磁気抵抗効 果素子80への情報の書き込み方法について図5 Aと図5Bを用いて説明する。図5A、図5Bには当 磁気抵抗効果素子80における異なるメモリ状 態(“0”状態と“1”状態)での磁化状態がx-z 面で模式的に示されている。図に示されて るように、“0”状態では第1強磁性層10の中 部が紙面上向きに(図5A)、“1”状態は第1強 性層10の中央部が紙面下向きに(図5B)磁化し いるものと定義する。ただし、磁化方向と モリ状態に関する定義が上述の限りでない とは言うまでもない。

 今、上述のような磁化状態のとき、“0” 状態では磁壁は第1強磁性層10の右側に、“1 状態では磁壁は第1強磁性層10の左側に形成 れる。本発明では第1強磁性層10を流れる電 の符号を変えることにより、前記磁壁を第1 磁性層10内で移動させて書き分けることを 徴とする。例えば図5Aの“0”状態において x軸の正の方向に電流を流し、紙面の右から に伝導電子が流れる場合、第1強磁性層10の 側にあった磁壁は、伝導電子によるスピン ランスファートルクを受け、伝導電子と同 方向に移動し、第1強磁性層10の左側に至る また図5Bの“1”状態において、x軸の負の方 向に電流を流し、紙面の左から右に伝導電子 が流れる場合、第1強磁性層10の左側にあった 磁壁は、伝導電子によるスピントランスファ ートルクを受け、伝導電子と同じ方向に移動 し、第1強磁性層10の右側に至る。このように して“0”状態から“1”状態へ、及び“1”状 態から“0”状態への書き込みができる。

 また例えば図5Aに示された“0”状態にお てx軸の負の方向に電流を流した場合、つま り“0”を書き込んだ場合、磁壁はx軸の正の 向に移動しようとするが、図5Aで示されて る磁壁の位置よりも右側では電流密度が低 するため、この磁壁移動は起こらない。す わち、オーバーライトが可能であると言え 。或いは、第3強磁性層15の磁化が十分にハ ドであり、第1強磁性層10において磁壁移動 より紙面上向きに磁化反転を起こしても、 流が切られたときに再び元の状態、すなわ 紙面下向きを向く状態に回復するように設 すれば、上述のようなオーバーライトは可 となる。この回復の手段としては、第3強磁 層15との磁気的相互作用が利用でき、また 1強磁性層10と第3強磁性層15の位置関係、大 関係によってもコントロールできる。

 本実施形態では、情報の書き込みの際に 壁移動が起こる層が垂直方向に磁気異方性 有することが特徴である。スピントランス ァートルクを考慮に入れたLLG方程式を用い マイクロマグネティクス計算から、垂直磁 異方性を有する材料で形成される磁壁は面 磁気異方性を有する材料で形成される磁壁 比べると、電流で駆動する場合に必要とな 電流密度は十分小さく、一方磁界で駆動す 場合に必要となる磁界は十分大きくなるこ がわかった。

 スピントランスファートルクを考慮に入れ LLG方程式は、例えば以下の文献に記載され いる。
 A. Thiaville, et al., “Micromagnetic understanding of current-driven domain wall motion in patterned na nowires,” Europhysics Letters, 23 February 2005 (pub lished online), vol. 69, Number 6, pp.990-996.
 この文献によれば、左辺を磁化の時間変化( ∂m/∂t)としたとき、右辺は[1]磁界によるト クを表す項、[2]ダンピング項、[3]断熱スピ トルク項、[4]非断熱スピントルク項により 成される。ここでマイクロマグネティクス 算から垂直磁気異方性を有する材料で形成 れる磁壁は1×10 8 [A/cm 2 ]程度の電流密度においても[3]の断熱スピン ルク項により駆動され、一方で面内磁化膜 場合には1×10 8 [A/cm 2 ]程度の電流密度では[4]の非断熱スピントル 項がなければ磁壁は駆動されないことがわ った。ここで[3]の断熱スピントルク項によ 磁壁駆動の場合、過度に大きくないピニン のときには、ピニング磁界に依存せずに磁 はピンサイトからデピンできることが知ら ている。

 従って、[3]の断熱スピントルク項での磁 駆動が不可能な面内磁気異方性を有する材 に比べて、[3]の断熱スピントルク項での磁 移動が可能な垂直磁気異方性を有する材料 、強い磁壁のピニングと低電流密度による 壁駆動を両立させ易いことがわかる。すな ち垂直磁気異方性を有する材料を用いるこ により、熱安定性として十分な値を保った で書き込みに要する電流を低減することが 能であることがわかる。

 これに加えて垂直磁気異方性を有する材料 形成される磁壁を駆動するために必要な電 密度は、細線の膜厚が薄くなるほど小さく ることがマイクロマグネティクス計算から かった。図6はこの計算結果を示している。 図の縦軸は十分大きな閾値磁界を有するピン サイトによってピニングされた磁壁がピンサ イトからデピンするのに必要な電流密度を意 味している。左側の縦軸で示されているuは 効的なスピン偏極電流密度を意味しており 以下の[数1]で表される。
[数1]
 また右側の縦軸にはM S =500[emu/cm 3 ]、P=0.5とした場合の電流密度jの値が示され いる。一般的に1×10 8 [A/cm 2 ]以上の電流密度を用いる場合、エレクトロ マイグレーション等の影響が顕在化するた 、素子への適用は現実的ではない。図6を見 と膜厚が20nm以下のときデピンに要する電流 密度は1×10 8 [A/cm 2 ]以下になっていることから、垂直磁化膜を いた磁壁移動型MRAMを製造する上では、第1強 磁性層10の膜厚の上限は20nmと言える。

 また書き込み電流密度が大きい場合には、 レクトロンマイグレーションの他にも発熱 影響等も懸念される。図7は磁性材料に電流 を印加したときの温度上昇を抵抗の上昇を測 定することで見積もった結果である。MRAMに き込みを行う際の温度上昇は、動作保障温 、MTJの信頼性や素子の寿命を考慮すると、12 0℃以下、より好適には60℃以下であることが 望ましい。図6を見ると温度上昇が120℃、及 60℃となるのはそれぞれ電流密度が約0.7×10 8 [A/cm 2 ]、0.6×10 8 [A/cm 2 ]のときである。このような電流密度での磁 のデピンが可能な膜厚範囲は、図6からそれ れ10nm、8nm以下であることがわかる。すなわ ち、第1強磁性層10の膜厚は好適には10nm以下 より好適には8nm以下であることが好ましい

 また第1強磁性層10の膜厚の下限は約1nmで る。これは膜厚が約1nm以下になると室温で 安定な垂直磁化を維持できなくなることに る(Applied Physics Letters, vol. 90, pp. 132507,(20 07)参照)。

(読み出し方法)
 次に本発明の第1実施形態に係る磁気抵抗効 果素子80からの情報の読み出しについて図8A 図8Bを用いて説明する。これまでに述べたよ うに、本実施形態では第1強磁性層10の磁化方 向で情報を記憶し、また第1強磁性層10の中央 部は絶縁層20を介して第2強磁性層30に接続さ る。本発明に係る磁気抵抗効果素子80では 報の読み出しに磁気抵抗効果を利用する。 なわち、図8Aと図8Bの場合、第1強磁性層10と 第1強磁性層10に絶縁層20を介して接続され 第2強磁性層30の間で電流を流すことにより モリ状態を読み出すことができる。例えば 8Aのように第1強磁性層10の中央部の磁化の向 きと第2強磁性層30の磁化の向きが平行のとき には低抵抗状態が実現される。一方図8Bのよ に第1強磁性層10の中央部の磁化の向きと第2 強磁性層30の磁化の向きが反平行のときには 抵抗状態が実現される。

(効果)
 本実施形態によれば、熱安定性、外乱磁界 性に優れ、且つ書き込みに要する電流が低 され、さらにスケーリング性に優れた磁気 ンダムアクセスメモリを容易な製造プロセ で提供することができる。これは、第1強磁 性層10の磁化方向が垂直方向を向き、且つそ 膜厚が低減され、さらに第1強磁性層10に隣 して、膜面垂直方向に磁気異方性を有する 3強磁性層15が設けられることに因っている ここでは、面内磁化膜を用いた磁壁移動で き込みを行う磁気ランダムアクセスメモリ 、垂直磁化膜を用いた磁壁移動で書き込み 行う磁気ランダムアクセスメモリでの素子 特性について概算して比較した結果を示す

 面内磁化膜を用いた磁壁移動素子において 素子幅(w)を100nm、膜厚(t)を10nm、磁壁のピン イトの幅の半分(q 0 )を40nmとし、また飽和磁化(M S )を800[emu/cm 3 ]、スピン分極率(P)を0.7、磁壁のピンサイト 閾値磁界(H C )を50[Oe]とする。一方、垂直磁化膜を用いた 壁移動素子では、素子幅(w)を100nm、膜厚(t)を 2nm、磁壁のピンサイトの幅の半分(q 0 )を15nmとし、また飽和磁化(M S )を500[emu/cm 3 ]、スピン分極率(P)を0.5、磁壁のピンサイト 閾値磁界(H C )を1000[Oe]とする。なお、ピンサイトの幅につ いてはマイクロマグネティックシミュレーシ ョンを用いて求めた値である。

 上述のような値を仮定した場合、まず系の ネルギーバリアの大きさ(δE)はM S H C q 0 wtで概算できる。結果として系の熱安定性指 となるδE/k B Tは面内磁化膜、垂直磁化膜ともに40となる。 ここでk B はボルツマン定数でTは絶対温度である。

 また膜厚が10nmで閾値磁界が50Oeの面内磁化 のデピン電流密度は、マイクロマグネティ クシミュレーションによればu=300[m/s]程度と り、これは約6×10 8 [A/cm 2 ]に相当する。本来このような電流密度は発 やエレクトロンマイグレーション効果の観 から素子に通ずることは非現実的ではある 、ここでは比較のためにこの値を用いる。 のとき、面内磁化膜での素子への書き込み 流は6[mA]となる。

 一方垂直磁化膜で膜厚を2nm、閾値磁界を1000 [Oe]とした場合のデピン電流密度は、図6よりu =10[m/s]程度と読み取ることができ、これは、 2×10 7 [A/cm 2 ]に相当する。このとき素子への書き込み電 は0.04[mA]となる。このように、垂直磁化膜を 第1強磁性層10に用いることによって、書き込 み電流の大幅な低減が実現されることがわか る。

 なお、ここで用いたパラメータはあくまで 目安であり、他の値を用いることもできる 従って、書き込みに要する電流値や、熱安 性δE/k B Tもそれに応じて変化するが、電流値と熱安 性は概ね連動して変化するため、上述のよ な面内磁化膜と垂直磁化膜での書き込み電 の大小関係が大幅に覆ることはない。

 また、通常MRAMを製造する上では、磁気シ ールド等を具備する必要があるが、垂直磁化 膜を用いた場合には、磁気シールドを省略す ることができ、これによって低コスト化がも たらされる。これは、一般的な垂直磁化膜は 結晶磁気異方性が十分大きいため、外乱磁界 に対する耐性が面内磁化膜に比べて極めて大 きいためである。

 また膜厚の低減で、書き込みに必要な電 密度は減少するため、膜厚を薄くすること 発熱の影響を軽減でき、動作保障温度範囲 広げることができる上、素子の寿命、信頼 も飛躍的に向上する。

 さらに本実施形態によれば、第3強磁性層 15を第1強磁性層10の両端部に隣接して設ける とによって、第1強磁性層10に容易に磁壁を 入することができる。第1強磁性層10の両端 に接続される複数の第3強磁性層15の材料特 は均一でよいため、インテグレーションプ セスにおいて同時に作製することができ、 れによって工程数が低減され、製造コスト 低減される。

(回路構成、レイアウト)
 次に本発明の第1実施形態に係る磁気メモリ セル90の回路構成、及びレイアウト方法につ て図9、図10、及び図11を用いて説明する。

 図9は本発明に係る磁気メモリセル90の1ビ ット分の回路の構成例を示している。本発明 では磁気抵抗効果素子80は3端子の素子となる ことを述べたが、そのうちの第2強磁性層30に 接続される端子は読み出しのためのグラウン ド線101に接続され、一方第3強磁性層15に接続 される2つの端子は、異なる二つのトランジ タ100a、100bの一方のソース/ドレインに接続 れる。またトランジスタ100a、100bの他方のソ ース/ドレインは書き込みのためのビット線10 2a、102bに接続され、またゲート電極はワード 線103に接続される。さらに図9に示した磁気 モリセル90はアレイ状に配置され、周辺回路 へと接続され、磁気ランダムアクセスメモリ が形成される。

 次に図9に示された回路での書き込み、読み 出し方法について説明する。まず書き込みを 行う場合には、ワード線103を“high”にし、 ランジスタ100a、100bを“ON”にする。またビ ト線102a、102bのいずれか一方を“high”にし 他方を“ground”とする。ビット線102aのどち らを“high”にし、どちらを“ground”にする で第1強磁性層10を流れる電流の方向が変わ ため、磁気抵抗効果素子80への情報の書き込 みが可能となる。

 また、読み出しの際には、ワード線103を high”にし、トランジスタ100a、100bを“ON” する。またビット線102a、102bのいずれか一方 を“high”にし、他方を“open”とする。この きビット線102a、102bのいずれか一方から磁 抵抗効果素子80を貫通する電流がグラウンド 線101へと流れるため、磁気抵抗効果による高 速での読み出しが可能となる。ただし、図9 示された回路、及びここで述べられた回路 設定は本発明を実施する方法の一例に過ぎ 、他の回路構成による実施も可能である。

 図9に示されたような回路により構成され る磁気メモリセル90は図10、図11に示されるよ うにしてレイアウトが可能である。図10は磁 メモリセル90のレイアウト方法の例を示すx- y平面図であり、図11は図10におけるA-B間のx,y- z断面図である。ただし、ここで示されてい のは一例に過ぎず、他のレイアウト方法を いても磁気メモリセルを製造することは可 である。例えば図10、図11ではトランジスタ1 00a、100bはy方向に沿って設けられているが、 れはx方向に沿って設けられても良い。この 場合にはワード線103はトランジスタのゲート 電極と接続されるように突起が形成されるこ とが望ましい。

(材料)
 ここでは各層の材料について例示する。な 、ここで示される材料は全て例であり、実 には図2に示されるような磁化状態が実現で きればいかなる材料を用いてもよい。

 まず第1強磁性層10、第2強磁性層30、及び 3強磁性層15の材料はFe、Co、Niのうちから選 される少なくとも一つの材料を含むことが ましい。さらにPtやPdを含むことで垂直磁気 異方性を安定化することができる。これに加 えて、B、C、N、O、Al、Si、P、Ti、V、Cr、Mn、Cu 、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Ag、Hf、Ta、W、Re Os、Ir、Au、Smなどを添加することによって 望の磁気特性が発現されるように調整する とができる。具体的にはCo、Co-Pt、Co-Pd、Co-Cr 、Co-Pt-Cr、Co-Cr-Ta、Co-Cr-B、Co-Cr-Pt-B、Co-Cr-Ta-B Co-V、Co-Mo、Co-W、Co-Ti、Co-Ru、Co-Rh、Fe-Pt、Fe-Pd 、Fe-Co-Pt、Fe-Co-Pd、Sm-Co、Gd-Fe-Co、Tb-Fe-Co、Gd-Tb -Fe-Coなどが例示される。この他、Fe、Co、Niの うちから選択されるいずれか一つの材料を含 む層が、異なる層と積層されることにより垂 直方向の磁気異方性を発現させることもでき る。具体的にはCo/Pd、Co/Pt、Co/Ni、Fe/Auの積層 などが例示される。

 また絶縁層20は絶縁体から構成されるこ が望ましい。具体的にはMg-O、Al-O、Al-N、Ni-O Hf-Oなどが例示される。ただし、この他に半 導体や金属材料を用いても本発明は実施でき る。具体的にはCr、Al、Cu、Znなどが例示され 。

(第1の変形例)
 図12Aと図12Bは本発明の第1実施形態に係る磁 気抵抗効果素子80の第1の変形例の構造を模式 的に示している。第1の変形例では、第1強磁 層10の中に磁壁のピンサイト12が形成される 。

 磁壁を強く拘束するためには、図12Aに示 れるように、x-y面内での平面形状の変調が 用できる。図12Aはノッチをパターニングし 実施形態であるが、この他突起等を設けて よい。また図では細線の両側にノッチが設 られているが、これは片側でも構わない。

 また図12Bに示されるように、x-z断面での 面形状の変調によって実施することもでき 。図12Bでは二つの実施形態が示されている 上段のように磁壁のピンサイト12となる部 のみが他の部分に対して段差を持っていて よい。下段のように第1強磁性層10の両端部 全体が中央部に対して段差を持っていても い。

 この他、図示はされていないが、磁壁の ンサイト12の材料特性を第1強磁性層10に対 て局所的に変化させることによっても磁壁 拘束することができる。このような材料特 の変化は、異なる材料を用いることによっ 実施することもできるし、異元素を注入す 、あるいは欠陥等を導入することによって 実施することができる。

(第2の変形例)
 図13Aから図13Dは本発明の第1実施形態に係る 磁気抵抗効果素子80の第2の変形例の構造を模 式的に示している。第2の変形例は、第1強磁 層10の形状に関し、これによって安定した2 状態が実現される。

 垂直磁化膜の場合、第1強磁性層10のうち 第3強磁性層15との接点付近から離れた位置 磁壁が停止する状態がさして不安定にはな ない。このような状態は“0”と“1”の中 の状態であり、回避しなければならない。 ころで磁壁は、系全体のエネルギーを下げ ために、その面積がなるべく小さくなる方 に動こうとする。従って、第1強磁性層10の 央付近が他の部分よりも幅が広ければ、そ は不安定となるため、上述のような中間状 は回避できる。図13Aから図13Dに示された模 図はいずれもこの概念に基づいている。加 て、図13Dのように第1強磁性層10が両端に行 に従って広くなるように形成することによ 、所定の位置での磁壁をより安定化するこ ができる。

 なお、図13Aから図13Dでは平面形状を変調 せる例が示されているが、この他に中央部 膜厚を厚くするなど断面形状の変調によっ 中間状態を効果的に回避することもできる

(第3の変形例)
 図14Aと図14B、および図15Aから図15Dは本発明 第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子80の第3 の変形例の構造を模式的に示している。第3 変形例は、第1強磁性層10と第3強磁性層15の 置関係、及び大小関係に関する。

 本発明の実施形態に係る磁気抵抗効果素 80では、第1強磁性層10の長手方向の両端付 に第3強磁性層が磁気的に接している。この 件が成立していれば、第1強磁性層10と第3強 磁性層15の位置関係と大小関係は任意である

 例えば図14Aに示されるように第3強磁性層 15は第1強磁性層10に対してx軸方向で外側には み出すようにして設けられてもよい。また図 14Bに示されるように第1強磁性層10が第3強磁 層15に対して外側にはみ出すように設けられ てもよい。また図15Aに示されるように第3強 性層15は第1強磁性層10に対して同じ幅で設け られてもよい。図15Bに示されるように第1強 性層10よりも細く設けられてもよい。あるい は図15Cに示されるように第1強磁性層10よりも 大きく設けられてもよい。さらには図15Dに示 されるように第3強磁性層15は第1強磁性層10の 各両端付近において二つ以上設けられてもよ い。第1強磁性層10と第3強磁性層15の位置関係 、大小関係を適当に調整することによって、 実現される磁化状態やピンポテンシャルの強 さをコントロールすることができる。

(第4の変形例)
 図16Aと図16Bは本発明の第1実施形態に係る磁 気抵抗効果素子80の第4の変形例の構造を模式 的に示している。第4の変形例は、第3強磁性 15の断面形状に関する。

 第3強磁性層15のx-z断面での断面形状は任 である。例えば図16Aに示されるように平行 辺形の断面形状を有していてもよい。また 図16Bに示されるように台形の断面形状を有 ていてもよい。また図16Bでは台形状の第3強 磁性層15の上底は下底よりも長く描かれてい 。この図と反対に、下底の方が長くてもよ 。同様に図16Aの平行四辺形の側面は第1強磁 性体10に向って内側に傾くような傾斜を有し いる。この図と反対に、外側に傾斜してい もよい。

 第3強磁性層15の断面形状を適切に調整す ことによって、実現される磁化状態やピン テンシャルの強さをコントロールすること できる。また図3Aから図3Cに示される初期化 過程をより安定化することができる。

(第5の変形例)
 図17は本発明の第1実施形態に係る磁気抵抗 果素子80の第5の変形例の構造を模式的に示 ている。第5の変形例は第1強磁性層10の断面 形状に関する。第1強磁性層10の断面形状は任 意である。但し、図17に示されるように台形 の断面形状を有し、x-z断面で形成される台 において、第3強磁性層15側の辺が第3強磁性 層15とは反対側の辺よりも長く設計されるこ が好ましい。これは、図17のような台形状 断面形状を有している場合には、図3Aから図 3Cで示される第1の初期化過程がより容易に進 行するためである。

 第1強磁性層10の断面形状は製造プロセス 適宜調整することによりコントロールでき 。例えばイオンビームミリングでパターニ グする場合、イオンビームの入射角度を調 することにより、台形の断面形状を実現す ためのテーパー状の加工が可能である。

(第6の変形例)
 図18Aと図18Bは本発明の第1実施形態に係る磁 気抵抗効果素子80の第6の変形例の構造を模式 的に示している。第6の変形例では第1強磁性 10と第3強磁性層15の間に導電層116が設けら る。

 導電層116は強磁性体により構成されても いし、非磁性体により構成されてもよい。 た導電層116は図18Aに示されるように第3強磁 性層15に接する部分のみに設けられてもよい 、図18Bに示されるように第1強磁性層10の一 の全体を覆うように隣接して設けられても い。

 導電層116を設けることによって、第1強磁 性層10と第3強磁性層15の磁気結合の大きさを 整することができる。これによって実現さ る磁化状態やピンポテンシャルの強さをコ トロールすることができる。また図3Aから 3Cに示される初期化過程を制御することがで きる。

 加えて、導電層116は第1強磁性層10の下地 の役割を兼ねることができる。これによっ 第1強磁性層10の磁気特性を調整することが きる。さらには第3強磁性層15のキャップ層 役割を兼ねることもできる。これによって 造プロセスが容易になる。

 導電層116の材料としては様々なものを用 ることができる。例えばRuなどのRKKY相互作 を示す材料を用いることによって第1強磁性 層10と第3強磁性層15をRKKY相互作用で磁気結合 させることができる。また極薄のTaなどの非 性体を用いることもできる。またJournal of  Magnetism and Magnetic Materials, vol.247, pp.153-158,( 2002)によれば、垂直磁気異方性材料では、そ 下地となる層の選択によって、磁性層の垂 方向の磁気特性が大きく変化し、その中でC o-Cr-Pt-Taが垂直磁気異方性材料の下地層とし 好適であることが記されている。Co-Cr-Pt-Taは 磁気モーメントを有するため第1強磁性層10と 第3強磁性層15を磁気的に強く結合させること ができる上、第1強磁性層10の下地層として第 1強磁性層10の特性を向上させることもできる 。この他、Ni-Fe、Co-Feなどの一般的な強磁性 を用いてもよい。

 また図18Aと図18Bにおける導電層116として ピン偏極率の高い強磁性体を用いることに り、書き込みに要する電流密度を低減する とができる。これは磁壁駆動に必要な電流 度は、伝導電子のスピン偏極率が高いほど さくなり、伝導電子のスピン偏極率は、伝 電子の流れる強磁性体のスピン偏極率が高 ほど高くなるためである。

(第7の変形例)
 図19は本発明の第1実施形態に係る磁気抵抗 果素子80の第7の変形例の構造を模式的に示 ている。第7の変形例では第3強磁性層15の第 1強磁性層10と隣接しない面の少なくとも一部 分に隣接してピニング層40が設けられる。

 ピニング層40は第3強磁性層15の磁化方向 一方向に固定する。そのためにピニング層40 の材料としては永久磁石材料や反強磁性層材 料が望ましい。具体的にはPt-Mn、Ir-Mn、Fe-Mn、 Ni-Mn、Mn-Rhなどが例示される。

 第3強磁性層15に隣接してピニング層40を けることによって第3強磁性層15の磁化を安 化することができ、書き込みエラーなどを 避することができる。また磁化状態やピン テンシャルの強さをコントロールすること できる。

(第8の変形例)
 図20は本発明の第1実施形態に係る磁気抵抗 果素子80の第8の変形例の構造を模式的に示 ている。第8の変形例は、絶縁層20と第1強磁 性層10との界面、或いは第2強磁性層30との界 のうちの少なくとも一部分に高分極層70ま は高分極層71が挿入されることを特徴とする 。

 本実施形態では情報の読み出しに磁気抵 効果を利用する。このとき情報記憶層とな 第1強磁性層10と参照層となる第2強磁性層30 スピン分極率が高いほど、高い磁気抵抗効 比が発現され、大きな読み出し信号が得ら る。本変形例では絶縁層20の界面に高分極 70または高分極層71を挿入することにより、 気抵抗効果に影響を及ぼす第1強磁性層10、 び第2強磁性層30の見かけ上のスピン分極率 増大させることができ、結果として高い磁 抵抗効果比を得ることができる。

 なお、高分極層70または高分極層71の材料 は垂直磁気異方性を有する材料を用いてもよ い。しかし、膜面方向の磁気異方性を有する 材料であっても、その膜厚が十分に薄ければ 第2強磁性層30や第1強磁性層10との磁気的な相 互作用により膜面垂直方向に磁化させること ができ、系の磁化状態は乱されない。具体的 に用いる材料としては、Co、Fe、Co-Feなどが例 示される。さらに、これらの材料にその他の 元素を添加することで所望の特性が得られる ように調整することができる。

 さらに、図20において絶縁層20の成長の下 地となる高分極層70は、それに用いる材料の 択によっては、特定の絶縁層20の結晶配向 制御する制御層としての役割を併せ持たせ こともできる。例えば、近年トンネル磁気 合において絶縁層として(001)配向したMgOを用 いたときに非常に大きな磁気抵抗効果比が発 現されることが報告されているが、このMgOの (001)配向は、例えば高分極層70としてCo-Fe-Bを いることによって実現することができる。

(第9の変形例)
 図21は本発明の第1実施形態に係る磁気抵抗 果素子80の第9の変形例の構造を模式的に示 ている。第9の変形例は第3強磁性層15と第2 磁性層30の位置関係に関する。図1から図20で は第3強磁性層15と第2強磁性層30は第1強磁性 10に対して互いに反対側の面に配置される例 を示したが、この位置関係は任意であり、例 えば図21のように第1強磁性層10の同じ面に隣 していてもよい。

(第10の変形例)
 図22は本発明の第1実施形態に係る磁気抵抗 果素子80の第10の変形例の構造を模式的に示 している。第10の変形例は、第1強磁性層10の なくとも第3強磁性層15と接する部分以外の が、絶縁層20を介して、第2強磁性層30に接 されることを特徴とする。

 本実施形態では情報の書き込みの際には 1強磁性層10に直接電流を流す。このとき第1 強磁性層10の発熱による動作の不安定性や素 の寿命の低下が懸念される。ここで第1強磁 性層10が熱伝導率の高い材料となるべく多く 面で接しているときに放熱が起こり易くな 、発熱の影響は軽減できる。なお、図22で 第1強磁性層10に対して、第3強磁性層15と接 る面とは反対側の面の全面が絶縁層20を介し て第2強磁性層30と接しているが、絶縁層20、 び第2強磁性層30の形状、及び配置は任意で る。

(第11の変形例)
 図23Aと図23Bは本発明の第1実施形態に係る磁 気抵抗効果素子80の第11の変形例の構造を模 的に示している。第11の変形例は第1強磁性 10、絶縁層20、及び第2強磁性層30の積層順に する。図11では第1強磁性層10は第2強磁性層3 0に対して基板110側に配置されるが、本変形 では第2強磁性層30が第1強磁性層10に対して 板側に配置される。

 ここで第2強磁性層30の形状は図23Aに示さ るように第1強磁性層10よりも小さく形成さ てもよい。あるいは図23Bに示されるように 1強磁性層10よりも大きく形成されてもよい 図23Bのような構造を用いた場合には、第10 変形例で述べたように発熱の影響を軽減で るほか、第2強磁性層30から第1強磁性層10へ 磁束の影響を低減することができる。

(第12の変形例)
 図24Aと図24Bは本発明の第1実施形態に係る磁 気抵抗効果素子80の第12の変形例の構造を模 的に示している。図24Aは第12の変形例の斜視 図である。図24Bはその平面図である。第12の 形例では第1強磁性層10は第1の方向(図中のx 方向)に延伸して設けられる磁壁移動部10cと 、磁壁移動部10cの一方の端部に接続して第2 方向(図中の+y方向)に略平行に延伸して設け れる第1の磁化固定部10aと、磁壁移動部10cの 他方の端部に接続して第2の方向とは反平行 向(図中の-y方向)に略平行に延伸して設けら る第2の磁化固定部10bにより構成される。ま た第1の磁化固定部10a、第2の磁化固定部10bに それぞれ第1の第3強磁性層15a、第2の第3強磁 性層15bが隣接してかつ同じ面に設けられる。 また図では省略されているが、磁壁移動部10c には絶縁層が隣接し、さらに前記絶縁層に隣 接して第2強磁性層が設けられる。

 第12の変形例でも、上述のような初期化 程により第1強磁性層10内にひとつの磁壁を 入することができる。但しこの場合、第1の 期化過程においては、十分大きな外部磁界 図中のy軸に略平行方向に印加される。この 磁界によってy方向に飽和した磁化が図3Aから 図3Cで示されるような過程で緩和されたとき 磁化状態が図24Bでは矢印で示されている。 24Bに示されるように、磁壁移動部10cの磁化 向は定まらないが、磁壁移動部10cと第1磁化 固定部10a、および磁壁移動部10cと第2磁化固 部10bの境界付近の磁化は必ずz軸方向で反平 方向を向く。これによって、磁壁移動によ 書き込みが可能となる。

 また図24Aと図24Bでは第1磁化固定部10a、お よび第2磁化固定部10bの長手方向は磁壁移動 10cの長手方向に対して膜面内で垂直方向に かれているが、これはいかなる角度であっ も構わない。例えば、第1磁化固定部10a、第2 磁化固定部10bの長手方向が磁壁移動部10cの長 手方向と平行になるとき、本変形例は図1、 2に示される形態に一致する。

 本変形例では、第1の第3強磁性層、第2の 3強磁性層の材料や形状、膜厚、及び第1磁 固定部10a、及び第2磁化固定部10bの長手方向 磁壁移動部10cの長手方向のなす角を調整す ことにより、磁壁のピンポテンシャルを調 することができる。

(初期化磁界の角度)
 第11の変形例や、この後述べられる第2実施 態で示されるように、本発明の実施形態で 第1強磁性層10の形状や第1強磁性層10と第3強 磁性層15の位置関係には任意性がある。とこ で本発明の実施形態においては、第1強磁性 層10に第3の強磁性層15が磁気的に隣接し、膜 長手方向への磁界を印加することにより、 モリ状態の初期化を行うことが特徴である ここでは膜面長手方向への初期化が可能な 1強磁性層10の好適な形状、第3強磁性層15の 1強磁性層10に対する好適な位置、及び第1の 初期化過程における外部磁界の印加方向に関 する好適な条件について主に図2、図24Aと図24 Bを用いて説明する。

 まず、本発明の実施形態に係る磁気抵抗 果素子80においては第1強磁性層10は第1の方 (図中のx軸方向)に延伸して設けられる磁壁 動部10cと、磁壁移動部10cの第1の端部に接続 して、第2の方向(図2では-x方向、図24Aと図24B は+y方向)に延伸して設けられる第1の磁化固 定部10aと、磁壁移動部10cの第2の端部に接続 て第3の方向(図2では+x方向、図24Aと図24Bでは -y方向)に延伸して設けられる第2の磁化固定 10bからなる。ここで第2の方向と第3の方向は 平行ではなく、反平行な成分である第1の成 (図2ではx成分、図3Aから図3Cではy成分)を有 る。また第1の磁化固定部10aには第1の第3強 性層15aが磁気的に隣接して設けられ、第2の 化固定部10bには第2の第3強磁性層15bが磁気 に隣接して設けられる。

 ここで第1の第3強磁性層15a、第2の第3強磁 性層15bは、第1強磁性層10に対して積層方向に おいて異なる高さで且つ同じサイドに設けら れる。すなわち、第1強磁性層10の膜厚方向の 中心を通る面を第1の面S1、第1の第3強磁性層1 5aの膜厚方向の中心を通る面を第2の面S2、第2 の第3強磁性層15bの膜厚方向の中心を通る面 第3の面S3としたとき、S1、S2、S3のz座標の平 値をそれぞれ第1の高さZ1、第2の高さZ2、第3 の高さZ3すると、Z1<Z2且つZ1<Z3が成り立た なくてはならない。あるいは、Z1>Z2且つZ1&g t;Z3が成り立たなくてはならない。なお、図2 Z1>Z2且つZ1>Z3の例であり、図21はZ1<Z2 つZ1<Z3の例である。

 上述のような第1強磁性層10と第3強磁性層 15の位置関係のときに、第1の初期化過程では 十分大きな外部磁界を第1の成分(図2ではx成 、図3Aから図3Cではy成分)の方向に略平行に 加する。この磁界によって飽和した第1強磁 層10の磁化が緩和する過程で、第3強磁性層1 5との磁気的相互作用により第1強磁性層10の には少なくとも一つの磁壁が形成される。

 このようなことから本発明においては図2 5Aと図25Bに示されるような更なる第11の変形 も可能である。図25Aは斜視図、図25Bは平面 を示している。本変形例では、第1の磁化固 部10aが延伸して設けられる第2の方向とは図 25Bのs方向である。また第2の磁化固定部10bが 伸して設けられる第3の方向とは図25Bのt方 である。また第2の方向(s方向)と第3の方向(t 向)の平行成分は図25A、図25Bのy成分であり 反平行成分である第1の成分とはこの場合x成 分である。従って、x方向に略平行に十分大 な磁界を印加した後、緩和した場合、図25B 紙面に矢印で示されるような磁化配置が実 され、メモリ状態の初期化が可能であるこ がわかる。

[第2実施形態]
(磁気メモリセルの構成)
 本発明の第2実施形態に係る磁気抵抗効果素 子80の主要な部分の構造を表す斜視図を図26 示す。また図26に示したx-y-z座標系におけるx -z断面図を図27に示す。本発明の第2実施形態 係る磁気抵抗効果素子80は、x方向に延伸し 設けられる第1強磁性層10と、第1強磁性層10 隣接して設けられる絶縁層20と、絶縁層20に 隣接して第1強磁性層10とは反対側に設けられ る第2強磁性層30と、第1強磁性層10の両端付近 に磁気的に接して設けられる第3強磁性層15と 、第1強磁性層10の両端付近で、且つ第3強磁 層15よりも内側において、第1強磁性層10に電 気的に接して設けられる電極層200を具備する 。絶縁層20は、第1強磁性層10と第2強磁性層30 挟まれており、これら第1強磁性層10、絶縁 20、第2強磁性層30によって磁気トンネル接 (MTJ)が形成されている。

 第2実施形態における第1強磁性層10、第2 磁性層30、第3強磁性層15、及び絶縁層20の材 特性、磁化方向、位置関係等については第1 実施形態と同じであるので、ここでは省略す る。なお、図27では第1強磁性層10、第2強磁性 層30、第3強磁性層15の磁気異方性の方向の例 矢印で示されている。

 第2実施形態の第1実施形態との違いは、 数の電極層200が設けられることにある。そ て本実施形態においては、複数の電極層200 うちの2つ、及び第2強磁性層30が外部の異な 配線に接続される。このように第2実施形態 においても磁気抵抗効果素子80は3端子の素子 となる。

 電極層200は電気抵抗の小さな導体材料に り構成されることが望ましい。具体的にはC u、Alなどが例示される。また、異なる材料の 積層膜により構成されてもよい。

(初期化方法)
 次に本発明の第2実施形態に係る磁気抵抗効 果素子80の初期化方法について図28Aから図28C および図29Aから図29Cを用いて説明する。当 磁気抵抗効果素子80では、第1強磁性層10に 壁を導入する必要があり、図28Aから図28C、 よび図29Aから図29Cはその過程を示している なお、これらの図では第1強磁性層10、第3強 性層15、及び電極層200のみが示されている

 第2実施形態においても第1実施形態にお る初期化方法と同様な原理を用いてメモリ 態の初期化を行う。すなわち、第1強磁性層1 0に磁壁を導入するためには、はじめに磁気 抗効果素子80に一様かつ十分大きな外部磁界 を図のx軸に略平行方向に印加する。このと 図28Aに示されるように、全ての磁気モーメ トが外部磁界方向に揃い飽和した状態とな 。次にこの状態から外部磁界をz軸方向の成 を加えることにより立ち下げる。この立ち げのスピードは適度に遅いことが望ましい このとき磁化の緩和が始まり、第1強磁性層 10、第3強磁性層15はいずれもz軸方向の磁気異 方性を有するため、はじめに図28Bに示される ように第1強磁性層10のうちの第3強磁性層15と の接続面付近の磁化が第3強磁性層15の磁化と 緩やかに繋がるようにz軸方向に回転を始め 。この回転を始めた磁化は膜面垂直方向の 化を有する磁区を形成し、この磁区が第1強 性層10の中で成長する。ここで、図28Bに示 れるように、第1強磁性層10の中で成長する つの磁区は互いに略反平行方向の磁化を有 る。従って、図28Bに示されるように、二つ 磁区が成長して出会ったとき、そこに磁壁 形成される。以上が本発明の第2実施形態に ける磁気抵抗効果素子80の第1の初期化過程 ある。

 第1の初期化過程によって第1強磁性層10に 導入された磁壁は、図29Aから図29Cに示される ような第2の初期化過程によって所望の位置 移動される。図29Aは第1の初期化過程が終了 た時点での磁化状態の例である。図29Aの状 において、例えば後述する書き込み電流を 数の電極層200の間で通ずる(図中の破線矢印 方向)。このとき電流の方向によって図29Bま は図29Cのいずれかのメモリ状態に初期化す ことができる。この他、後に述べるように 1強磁性層10の中に磁壁のピニングサイトを けた場合、第1実施形態で示したようにz軸方 向の磁界を用いて第2の初期化過程を行うこ もできる。

(書き込み方法)
 次に本発明の第2実施形態に係る磁気抵抗効 果素子80への情報の書き込み方法について図3 0Aと図30Bを用いて説明する。図30A、図30Bには 該磁気抵抗効果素子80における異なるメモ 状態(“0”状態と“1”状態)に対応する磁化 態がx-z断面で模式的に示されている。図に されているように、“0”状態では第1強磁 層10の中央部が紙面上向きに(図30A)、“1”状 態は第1強磁性層10の中央部が紙面下向きに( 30B)磁化しているものと定義する。ただし、 化方向とメモリ状態に関する定義が上述の りでないことは言うまでもない。

 今、上述のような磁化状態のとき、“0” 状態では磁壁は第1強磁性層10の右側の第2の 極層200bとの接点付近に、“1”状態では磁壁 は第1強磁性層10の左側の第1の電極層200aとの 点付近に形成されている。第2実施形態にお いても第1実施形態と同様に電流によって磁 を移動させることで書き込みを行う。例え 図30Aの“0”状態において、第1の電極層200a ら第2の電極層200bに向かって電流を流し、紙 面の右から左に伝導電子が流れる場合、第1 磁性層10の右側で第2の電極層200bとの接点付 にあった磁壁は、伝導電子によるスピント ンスファートルクを受け、伝導電子と同じ 向に移動し、第1強磁性層10の左側の第1の電 極層200aとの接点付近に至る。また図30Bの“1 状態において、第2の電極層200bから第1の電 層200aに向かって電流を流し、紙面の左から 右に伝導電子が流れる場合、第1強磁性層10の 左側の第1の電極層200aとの接点付近にあった 壁は、伝導電子によるスピントランスファ トルクを受け、伝導電子と同じ方向に移動 、第1強磁性層10の右側の第2の電極層200bと 接点付近に至る。このようにして“0”状態 ら“1”状態へ、及び“1”状態から“0”状 への書き込みができる。

 ここで例えば“0”状態から“1”状態へ 遷移のときには磁壁は第1強磁性層10におい 第2の電極層200bとの接点付近から第1の電極 200aの接点付近にまで移動するが、この第1の 電極層200aとの接点付近を越えて更に左方向 と移動することはない。これは、書き込み 流は第1強磁性層10から第1の電極層200aへと流 れるため、図において第1の電極層200aよりも 側では電流が流れず、磁壁は移動できない めである。

 また第1実施形態と同様に第2実施形態にお てもオーバーライトは可能である。
 さらに書き込み特性をより安定化させるた には、図12Aと図12Bに示されるような磁壁の 定点を第1強磁性層10と電極層200との接点付 に意図的に形成してもよい。

 (読み出し方法)
 本発明の第2実施形態に係る磁気抵抗効果素 子80からの情報の読み出し方法は、第1実施形 態と同様に磁気抵抗効果を利用して行う。そ の方法は第1実施形態と共通するのでここで 省略する。

(第1の変形例)
 図31は本発明の第2実施形態に係る磁気抵抗 果素子80の第1の変形例の構造を模式的に示 ている。第1の変形例では、第3強磁性層15と 電極層200が第1強磁性層10の異なる面に隣接し て設けられる。また第1強磁性層10と第3強磁 層15は磁気的に結合していればよく、その間 に異なる層が挿入されてもよい。

 第1の変形例では電極層200と第3強磁性層15 が異なるレイヤーに設けられるため、製造が 容易となる。例えば、初めに電極層200を形成 した後、第1強磁性層10、絶縁層20、及び第2強 磁性層30を成膜、パターニングし、その後第3 強磁性層15を成膜、パターニングすることに り製造することができる。

 また、図31で示されているように電極層20 0と第3強磁性層15は異なるレイヤーに設けら るため、x-y平面において互いにオーバーラ プしていてもよい。すなわち、電極層200と 3強磁性層15のスペースに関する製造プロセ 上の制約がなくなるため、セル面積を低減 ることができる。

 また、第2実施形態においては、磁壁は第 1強磁性層10のうち、電極層200との接点付近に おいてピニングされる。ここで第1の変形例 用いることにより、第3強磁性層15からの漏 磁束でピニングすることができる。漏れ磁 の大きさは第3強磁性層15に用いる材料の飽 磁化や膜厚、及び第3強磁性層15と電極層200 位置関係によりコントロールすることがで るため、これによってピンポテンシャルの きさを制御でき、安定した動作が可能な素 を容易に設計することができる。

(第2の変形例)
 図32は本発明の第2実施形態に係る磁気抵抗 果素子80の第2の変形例の構造を模式的に示 ている。前述のように第1強磁性層10と第3強 磁性層15は磁気的に結合していればよく、空 的には離れていてもよい。第2の変形例にお いては、第1強磁性層10と第3強磁性層15は空間 的に隔離して設けられる。

 図32のような第1強磁性層10と第3強磁性層1 5の位置関係においても図28Aから図28C、およ 図29Aから図29Cに示されるような初期化方法 より、磁壁を導入できることがマイクロマ ネティックシミュレーションにより確認さ ている。

 第2の変形例では第3強磁性層15を隔離して 設けることができるため、素子、プロセスの 設計の自由度が高まり、製造が容易となる。

(第3の変形例)
 図33Aと図33Bは本発明の第2実施形態に係る磁 気抵抗効果素子80の第3の変形例の構造を模式 的に示している。図33Aと図33Bでは、複数のセ ルがx-z断面図で示されている。第3の変形例 おいては第3強磁性層15が隣接するビット間( 接するメモリセル間)で共有される。ここで 、図33Aのように第3強磁性層15は隣接する第1 磁性層10に対して空間的に接して設けられて もよいし、図33Bのように空間的に隔離されて 設けられてもよい。なお、図33Aに示されるよ うに空間的に接して設けられる場合、第3強 性層15の材料としては電気抵抗の大きな強磁 性薄膜が用いられることが望ましい。これは 、書き込み電流が隣り合うビットに流れるこ とを防ぐためである。電気抵抗の大きな強磁 性薄膜としては、Co-Pt-CrとSiO 2 のグラニュラー膜などが例示される。第3の 形例では第3強磁性層15を共有することによ 、セル面積が低減される。

(その他の変形例)
 この他、第2実施形態においても第1実施形 で挙げたような変形例を用いることができ 。例えば、磁壁の安定点を形成するために 図12Aと図12Bに示されるようなノッチや段差 設けてもよく、また安定動作のために図13A ら図13Dのように第1強磁性層10の平面形状を 切に設計することができる。また図24Aと図24 B、および図25Aと図25Bに示されるように第1強 性層10が屈折した平面形状を有し、第1の磁 固定部10aから磁壁移動部10cを通って第2の磁 化固定部10bへ向かう各部位の中央線において 、第1強磁性層10は第3強磁性層15と隣接する領 域よりも内側で電極層200と隣接してもよい。 この他にも様々な組み合わせが可能となるが 、説明が重複するので省略する。

 当業者は上記実施形態の様々な変形を容 に実施することができる。したがって、本 明は上記実施形態に限定されることはなく 請求の範囲やその均等物によって参酌され 最も広い範囲で解釈される。

 この出願は、2007年10月4日に出願された日 本出願特願2007-260590号を基礎とする優先権を 張し、その開示の全てをここに取り込む。