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Patent Searching and Data


Title:
MAGNETORESISTIVE ELEMENT, MRAM, AND MAGNETIC SENSOR
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/133107
Kind Code:
A1
Abstract:
This invention provides a magnetoresistive element comprising a magnetization fixation layer with fixed magnetization, a magnetization free layer having reversible magnetization, and a tunnel barrier provided between the magnetization fixation layer and the magnetization free layer. The tunnel barrier is crystalline. At least one of the magnetization free layer and the magnetization fixation layer comprises a high spin polarizability layer and a soft ferromagnetic layer. The high spin polarizability layer is adjacent to the tunnel barrier and is formed of a first alloy as an alloy of a ferromagnetic element capable of developing a body-centered cubic lattice structure, or a ferromagnetic material having an amorphous or microcrystalline structure which is a mixture of the first alloy with a nonmagnetic element. The soft ferromagnetic layer is adjacent to the high spin polarizability layer, is located on the opposite side of the tunnel barrier and is formed of a ferromagnetic material having an amorphous or microcrystalline structure, which is a mixture of an alloy of a ferromagnetic element capable of developing a face-centered cubic lattice structure with a nonmagnetic element.

Inventors:
FUKUMOTO YOSHIYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/057340
Publication Date:
November 06, 2008
Filing Date:
April 15, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NEC CORP (JP)
FUKUMOTO YOSHIYUKI (JP)
International Classes:
H01L43/08; G01R33/09; G11B5/39; H01F10/16; H01F10/30; H01L21/8246; H01L27/105; H01L43/10
Domestic Patent References:
WO2005088745A12005-09-22
Foreign References:
JP2007059879A2007-03-08
JP2006319259A2006-11-24
JP2003283001A2003-10-03
JP2004179187A2004-06-24
Attorney, Agent or Firm:
KUDOH, Minoru (24-10 Minamiooi 6-chome, Shinagawa-ku Tokyo 13, JP)
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Claims:
 固定された磁化を有する磁化固定層と、
 反転可能な磁化を有する磁化自由層と、
 前記磁化固定層と前記磁化自由層との間に介設されたトンネルバリア
とを具備し、
 前記トンネルバリアは結晶性を有し、
 前記磁化自由層及び前記磁化固定層の少なくとも一方は、
  前記トンネルバリアに隣接し、体心立方格子構造を発現する強磁性元素の合金である第1合金、又は、前記第1合金に対して非磁性元素が混合されたアモルファス若しくは微結晶構造を有する強磁性材料から構成された高スピン分極率層と、
  前記高スピン分極率層に隣接して前記トンネルバリアに対して反対側に位置し、面心立方格子構造を発現する強磁性元素の合金と非磁性元素とが混合された、アモルファス又は微結晶構造を有する強磁性材料から構成されたソフト強磁性層
とを備えている
 磁気抵抗素子。
 請求の範囲1に記載の磁気抵抗素子であって、
 前記トンネルバリアは、マグネシウムを含む化合物から構成され、且つ、(001)面への配向が最も高い
 磁気抵抗素子。
 請求の範囲1又は2に記載の磁気抵抗素子であって、
 前記高スピン分極率層に含まれている強磁性元素の合金は、bcc(001)面への配向が最も高い
 磁気抵抗素子。
 請求の範囲1~3のいずれかに記載の磁気抵抗素子であって、
 前記高スピン分極率層に含まれる、強磁性元素に対する非磁性元素の濃度は、前記ソフト強磁性層中の、強磁性元素に対する非磁性元素の濃度よりも低い
 磁気抵抗素子。
 請求の範囲1~4のいずれかに記載の磁気抵抗素子であって、
 前記高スピン分極率層よりも前記ソフト強磁性層の結晶化温度が高い
 磁気抵抗素子。
 請求の範囲5に記載の磁気抵抗素子であって、
 前記高スピン分極率層及び前記ソフト強磁性層の非磁性元素が、B又はCから選択され、
 前記ソフト強磁性層は、さらに第二の非磁性元素を含み、
 前記第二の非磁性元素は、Si,Al,Zr,Nb,Ta,Ti,Mo,W,Hf,Mg,Geからなる群から選択された
 磁気抵抗素子。
 請求の範囲1~6のいずれかに記載の磁気抵抗素子であって、
 前記ソフト強磁性層中の強磁性合金が、Ni X Fe 1-X の組成式を有し、且つ、Xが0.8以上の合金である
 磁気抵抗素子。
 請求の範囲1~6のいずれかに記載の磁気抵抗素子であって、
 前記ソフト強磁性層中の強磁性合金が、Co X Fe 1-X の組成式を有し、且つ、Xが0.8以上の合金である
 磁気抵抗素子。
 請求の範囲1~8のいずれかに記載の磁気抵抗素子であって、
 前記高スピン分極率層中の強磁性合金が、Co X Fe 1-X の組成式を有し、且つ、Xが0.8以下の合金である
 磁気抵抗素子。
 請求の範囲1~8のいずれかに記載の磁気抵抗素子であって、
 前記高スピン分極率層中の強磁性合金が、Co X Fe 1-X の組成式を有し、且つ、Xが80%以下の合金である
 磁気抵抗素子。
 請求の範囲1~10のいずれかに記載の磁気抵抗素子であって、
 前記高スピン分極率層は前記ソフト強磁性層と比較して、結晶配向性が高いことを特徴とする
 磁気抵抗素子。
 請求の範囲1~5、7~11のいずれかに記載の磁気抵抗素子であって、
 前記高スピン分極率層及び前記ソフト強磁性層の非磁性元素が、B又はCを含む
 磁気抵抗素子。
 請求の範囲1~12のいずれかに記載の磁気抵抗素子を備えたメモリセルを含む
 MRAM。
 請求の範囲1~12のいずれかに記載の磁気抵抗素子を備えた
 磁気センサー。
Description:
磁気抵抗素子、MRAM、及び磁気セ ンサー

 本発明は、磁気抵抗素子、MRAM、及び磁気 センサーに関する。

 磁気抵抗素子は、MRAM(Magnetic Random Access  Memory)や、ハードディスク読み取り磁気ヘッ の磁気センサーなどの多くの用途に使用さ る。磁気抵抗素子は、典型的には、磁化が 転可能な強磁性体である磁化自由層と、磁 が固定された強磁性体である磁化固定層、 の間に介設された非磁性層とで構成され、 化固定層に対する磁化自由層の角度によっ 抵抗値が変化する。磁化自由層の反転によ て生じる最大の抵抗変化率は、磁気抵抗比[M R比:(最大抵抗値-最小抵抗値)/最小抵抗値]と て定義される。MR比が大きいほど高い信号変 化が得られるため好適である。非磁性層が導 体の場合はGMR(Giant magnetoresistance)素子と呼ば 、非磁性層が絶縁体の場合はMTJ(magnetic tunne l junction)と呼ばれる。MTJは絶縁層(トンネル リア)を介したトンネル抵抗が変化し、膜面 垂直に電流が流れる。

 磁気抵抗素子をセンサーやMRAMに応用する 際は、高MR比とともに磁化自由層が磁気的に フトであることも重要である。磁化自由層 磁気異方性が大きすぎるとスイッチング磁 Hsw(保磁力)が増大し、MRAMにおいては書き込 電流が増大し問題となる。また磁気センサ においては磁界感度が減少し問題となる。 に微細素子でのスイッチング磁場Hswを決定 る形状磁気異方性は磁化自由層の磁化Msと 厚tの積(Ms・t)の総和に比例する。磁化Msと膜 厚tの積は、一般に、磁化膜厚積と呼ばれて り、磁性膜の性質を表す重要なパラメータ 一つである。

 また磁化自由層の磁歪定数λの低減も重 となる。磁歪定数が大きいと磁気抵抗素子 作製プロセスで生じる応力により不所望な 力誘起磁気異方性が発生し磁気抵抗曲線を 化させ問題となる。

 ソフト性の観点から、磁化自由層にはfcc( face centered cubic)の結晶構造を持つ磁性材料 好適である。fcc磁性材料は結晶磁気異方性 一般的に小さい。特に、Ni組成が80%付近のNiF e合金(パーマロイ)が好適である。パーマロイ は、結晶磁気異方性磁場Hkが小さく磁化Msも さい。加えて、パーマロイは、磁歪定数λを 零にすることができる。

 磁化自由層の形状磁気異方性、結晶磁気 方性、応力誘起磁気異方性は、磁化膜厚積M s・t、結晶磁気異方性磁場Hk、磁歪定数λにそ れぞれ比例し、全ての異方性の容易軸が一致 する場合、スイッチング磁場Hswは各異方性磁 場の和になる。磁化自由層のスイッチング磁 場Hswを低減するためには、磁化膜厚積Ms・t、 結晶磁気異方性磁場Hk、磁歪定数λを可能な り低減することが必要となる。

 磁化固定層に関してもソフト性が望まれ 。たとえば磁化膜厚積Ms・tの総和が小さく ると反強磁性層によって固定されている磁 固定層の磁場強度(交換バイアス磁場)を増 させることが可能であり、同時に微細素子 おいて磁化自由層側に漏れる静磁結合磁場 低減し、磁気抵抗曲線の形状を改善するこ ができる。

 一方、高MR比を得る強磁性層材料として スピン分極率の高いCoFeあるいはCoFeをベース としたCoFeBなどのアモルファス材料が好適で る。特に(001)配向した結晶性MgO層から構成 れたトンネルバリアと(001)配向したbcc(body ce ntered cubic)構造の強磁性合金を組み合わせる とによって高いMR比と低い素子規格化抵抗 得られる。これらの材料をトンネルバリア/ 磁性層界面に用いることが望まれる。

 しかしながらbcc構造の磁性材料は、磁気 なソフト性が悪い。例えばCoFe合金ではCo組 を80%以下にするとbcc構造が得られるが、磁 Msはパーマロイの2倍以上であり、結晶磁気 方性磁場Hk及び磁歪定数λも大きい。さらに 高MR比に重要な(001)配向したbcc磁性膜は、最 面の(110)配向した同磁性膜と比較して原理的 に結晶磁気異方性が大きくなる。ボロン(B)な どの非磁性元素を添加しアモルファス化する ことでソフト性を改善することができるが、 磁化自由層として用いるにはパーマロイと比 較するとまだまだソフト性が悪い。

 パーマロイのようなfcc構造を持つ強磁性 は、ソフト性は良いもののMR比を大幅に低 させるため、MR比の観点からは問題がある。

 強磁性層のソフト性を改善するためにbcc( 001)配向したCoFe合金或いは、それをベースと たCoFeBとパーマロイとを積層させる方法が えられる。しかしながら、MgO(001)バリアを用 いたMTJにおいて、MgOバリア直上の磁化自由層 にCoFeBを用い、その上にパーマロイを積層さ るとMR比が大きく減少することは、例えば 開2006-319259号公報にも指摘されているとおり 、周知である。このような構造は、ソフト性 を得ることができてもMR比が大きく低下し、 ンネル抵抗値も増大するため問題である。 ンネル抵抗が増大すると、読み取り磁気ヘ ドのセンサー部を小さく出来なくなるため ハードディスクを高密度化する上で問題と る。

 CoFeBとパーマロイの間に非磁性の拡散防 層を設ける方法が特開2006-319259号公報に公開 されているが、このような方法だと、より極 限までソフト性を向上させる際に、MR比を著 く減少させてしまう。例えば、トンネルバ ア界面のCoFeBを薄くしようとすると、非磁 の拡散防止層がMgOバリアに近づき、非磁性 がMgOバリアに拡散する。これは、MR比を減少 させてしまう。また、非磁性の拡散防止層を 設けると、スピン分極したトンネル電子の電 子構造を擾乱し、MR比を著しく減少させてし う。加えて、CoFeBを薄く出来ないため、自 層の磁化膜厚積が大きく、十分なソフト性 得ることが困難である。また成膜に関する ストも増大する。

 このように従来技術では、高配向結晶質 リアを用いたMTJにおいて磁化自由層及び磁 固定層の十分なソフト性と高MR比を両立す 方法がない。

 したがって、本発明の目的は、高配向結 質バリアを用いたMTJの磁化自由層や磁化固 層を構成する磁性膜に関して、高MR比を得 がら、且つ、磁気的にソフト性を得ること できる構造を提供することである。

 本発明の一の観点では、磁気抵抗素子が 固定された磁化を有する磁化固定層と、反 可能な磁化を有する磁化自由層と、前記磁 固定層と前記磁化自由層との間に介設され トンネルバリアとを具備する。前記トンネ バリアは結晶性を有している。前記磁化自 層及び前記磁化固定層の少なくとも一方は 高スピン分極率層とソフト強磁性層とを備 ている。高スピン分極率層は、前記トンネ バリアに隣接し、体心立方格子構造を発現 る強磁性元素の合金である第1合金、又は、 前記第1合金に対して非磁性元素が混合され アモルファス若しくは微結晶構造を有する 磁性材料から構成されている。ソフト強磁 層は、前記高スピン分極率層に隣接して前 トンネルバリアに対して反対側に位置し、 心立方格子構造を発現する強磁性元素の合 と非磁性元素とが混合された、アモルファ 又は微結晶構造を有する強磁性材料から構 されている。

 本発明によれば、高配向結晶質バリアを いたMTJの磁化自由層及び/又は磁化固定層に 関してスイッチング磁場を大幅に低減しつつ 、同時に高いMR比と、より低いトンネル抵抗 得る磁気抵抗素子構造を提供することがで る。

図1は、従来のMTJ素子の断面図である。 図2は、第1の実施形態のMTJ素子の構成 示す断面図である。 図3は、第1の実施形態のMTJ素子の他の 成を示す断面図である。 図4は、第2の実施形態のMTJ素子の構成 示す断面図である。 図5は、実施例1の試料の保磁力Hc、磁化 膜厚積Ms・t、MR比、及びトンネル抵抗Rと素子 面積Aの積R・Aを示す表である。 図6は、実施例2の試料のスイッチング 場Hsw、磁化膜厚積Ms・t、MR比、及びトンネル 抵抗Rと素子面積Aの積R・Aを示す表である。

(第1の実施形態)
 図1は、従来のMTJ素子の構造を示す断面図で あり、図2は、本発明の第1の実施形態に係るM TJ素子の構造を示す断面図である。第1の実施 形態では磁化自由層に本発明を用いた構成を 示す。

 図1のMTJ素子1及び図2のMTJ素子2は共に、下 地基板10の上に作製され、下部電極層11と、 強磁性層12と、磁化固定層41と、トンネルバ ア層16と、磁化自由層42と、キャップ層17と 上部電極層18とを備えている。

 下部電極層11は下地基板10の上に形成され ており、磁化固定層41への電気的接続を提供 る経路として機能し、またその表面は平滑 あることが望まれる。下部電極層11は、例 ば、Ta、Ru、Cu、Zr,CuN,TaN、TiNで形成される。

 反強磁性層12は、例えば、PtMn、IrMn、NiMn ような反強磁性体で形成され、磁化固定層41 の磁化を固定する役割を有している。

 磁化固定層41は、例えばCoFeまたはCoFeBの うなスピン分極率の高い強磁性体で形成さ る。磁化固定層41の磁化は、反強磁性層12が 用する交換相互作用によって固定される。 化固定層41は単層の強磁性膜で構成されて よいが、積層フェリ構造で構成されても良 。例えば、磁化固定層41は、強磁性層13、非 性層14、強磁性層15で構成される。典型的に 強磁性層13はCoFe、非磁性層14はRu,Ir,Rh,Ag,Cu,Cr,A uなどで構成され、非磁性層14を介して強磁性 層13と強磁性層15に反強磁性的な磁気結合を 現する。強磁性層15は、CoFe、CoFeBなど高スピ ン分極率材料で形成される。とくにbcc構造を 持つ材料,好適にはCo組成が80%以下のCoFe合金 或いはそれをベースとしたアモルファス、 結晶磁性合金が高MR比を得る上で好適である 。アモルファス、微結晶磁性膜として、CoFe 金に対してB,C,Al,Si,Ge,Zr,Nb,Ta,Nb,W,Hf,Mg,Mo,Cu,Tiか ら選ばれた非磁性元素を添加した強磁性膜が 好適である。

 トンネルバリア層16は結晶質のバリアが 用され、単結晶または、特定の方位が配向 た多結晶膜が好適である。バリアが結晶構 を持ち、特定の面が配向していると、コヒ レントな電子のトンネリングが維持され、MT Jの磁気抵抗が強磁性電極の結晶方位を大き 反映するようになる。これによって、バリ の結晶構造と方位、強磁性電極の結晶構造 方位の組み合わせによって、非常に大きいMR 比を発現することが可能となる。

 大きいMR比が得られる組み合わせの一つ して、強磁性電極にbcc(001)配向した強磁性膜 、トンネルバリア層に(001)配向した結晶質MgO を用いることが好適である。トンネルバリ 層16に(001)配向した結晶質MgOを得る手段とし て、下地の強磁性層15に、bcc(001)配向した強 性層や、アモルファスや微結晶膜を用いる とで、その上に成長させるMgOが(001)に配向し やすくなる。また製膜条件(製膜レート、製 投入電力、基板温度、基板-ターゲット或い 基板―蒸着母材間の距離、製膜中の雰囲気 製膜ガス圧等)によっても最適化することが できる。

 キャップ層17は、磁化固定層41、トンネルバ リア層16、及び磁化自由層42を保護するため 層である。キャップ層17は、例えば、Ta、Ru 形成される。キャップ層17は、トンネル電流 が流れる程度に極めて薄いMgO x とTaの積層膜、或いは窒化物、典型的には、T iNとTaの積層膜で構成すると、磁化自由層と ャップ層が反応しづらくなり耐熱性が向上 る。上部電極層18はTa,Ru,Cu,Al,又はそれらの合 金で形成される。

 図1の従来のMTJ素子1と、図2の第1の実施形 態に係るMTJ素子2では磁化自由層42のみが異な り、あとは共通の構造を有している。図1のMT J素子1では、磁化自由層42を構成する強磁性 19が、CoFeBなどのアモルファス合金、CoFe合金 、またはパーマロイなどのNiFe合金などで構 される。CoFeを含む材料は、MR比は高いもの 、ソフト性が悪い。またパーマロイは、ソ ト性は良いものの、MR比が低い。両者の間を とって非常に薄いCoFeをトンネルバリア層16と の界面に使用した、CoFe/NiFe積層膜も磁化自由 層42として使用され得るが、これでも、充分 良好な特性を得ることはできない。

 一方、図2に示される第1の実施形態に係 MTJ素子2では、磁化自由層42が強磁性層21と強 磁性層22を積層させた構成をとる。トンネル リア層16に接合する強磁性層21は、bcc構造を 持つ強磁性材料,好適にはCo組成が80%以下のCoF e合金であることが好適である。それに代え 、強磁性層21は、bcc構造を持つ強磁性材料を ベースとして非磁性元素B,C,Al,Si,Ge,Zr,Nb,Ta,Nb,W, Hf,Mg,Mo,Cu,Tiとを合金化したアモルファス材料 は微結晶材料が好適である。特に軽元素で るBとCが、MR比に対する悪影響が小さく好適 である。MgO(001)上に成長させることで、これ はbcc(001)に配向、または結晶化する。bcc(001) を維持することが高MR比を維持する上で必須 ある。

 強磁性層21のbcc(001)配向と高スピン分極した 電子状態を乱さないように、その上に成長さ せる強磁性層22の結晶構造が重要となる。さ に強磁性層22はソフト性が要求される。そ で第1の実施形態では、強磁性層22として、fc c構造を持つ強磁性材料をアモルファス化、 は微結晶化させた強磁性層を用いる。強磁 層22がfcc強磁性材料を用いて構成されること によりソフト性を維持できる。かつ、強磁性 層22がアモルファス構造、又は微結晶構造で るため、強磁性層21のbcc(001)配向を物理的に 阻害しない。また強磁性層22がアモルファス 造又は微結晶構造を有しているため、強磁 層21のスピン分極したバンド構造への擾乱 低減できる。このような強磁性層22の構造に よって磁気的にハードな強磁性層21を、高いM R比を保ったまま、非常に薄くできる。具体 には、発明者の実験から、強磁性層21にCo 40 Fe 40 B 20 膜を使用した場合、Co 40 Fe 40 B 20 単層のみでは、その膜厚を1.5nmよりも薄くす とMR比が減少し、70%以下になってしまうが 本実施形態のように、強磁性層22と積層させ た場合には、Co 40 Fe 40 B 20 層の膜厚を1.5nm以下、さらには0.25nmまで薄く ても70%以上のMR比を維持することができる

 強磁性層22を構成するfcc磁性材料として 、Co組成が80%以上のCoFe合金、またはNiFe,NiCo,N iFeCo合金でNi組成が70%以上である組成が好適 ある。また、これらのfcc磁性合金に、B,C,Al,S i,Ge,Zr,Nb,Ta,Nb,W,Mo,Cuのいずれかから選択された 非磁性元素を添加すること得られた、アモル ファス材料、又は微結晶材料も、強磁性層22 構成する材料として好適である。特に軽元 であるBとCを添加することは、MR比に対する 悪影響が小さく好適である。またfcc磁性合金 としては、NiFe合金でNi組成が82%よりも大きい ものが最も優れている。なぜなら、強磁性元 素の合金中で磁化Ms及び結晶磁気異方性磁場H kがもっとも小さい。また、負の磁歪定数λが 得られるから、強磁性層21の正に大きい磁歪 数λを打ち消して、磁化自由層42全体として の実効的な磁歪定数λを零に設定することが 能である。磁化自由層42全体としての磁歪 数λがゼロになることで、MTJ素子2に加えら た、デバイスプロセスに起因した応力の影 を低減することができる。このような材料 な優位点により磁化自由層42を最もソフトに することができる。

 より具体的には、強磁性層22は、(Ni X Fe 1-X ) 1-Y M Y の組成式で表される材料で形成されることが 好適である。ここで、Mは非磁性元素であり B,C,Al,Si,Ge,Zr,Nb,Ta,Nb,W,Hf,Mg,Mo,Cuから一つ以上の 元素が選択される。Xは82%以上が好適である 、Mの材料によってλが若干負にシフトする 合があり、より確実に負の磁歪定数λを得る にはXは80%以上のNiFe合金を使用すれば良い。M の組成としては、強磁性層22が微結晶、また アモルファス化し、且つ、強磁性を失わな 範囲が好適であり、Yは40~5%が好適である。

 以上に説明されているように、本実施形 のMTJ素子2の磁化自由層42では微結晶構造、 モルファス構造を得るために強磁性層に非 性元素が添加される。一般に非磁性元素濃 が増大するほど飽和磁化や異方性磁場が減 し、強磁性層はソフトになる。しかしなが 強磁性層21に関しては添加する非磁性濃度 増大するほどMR比は減少する。従って強磁性 層21の非磁性層濃度は大きくはできない。一 強磁性層22に関してはMR比には大きく寄与し ない。よって強磁性層22の非磁性元素の濃度 強磁性層21よりもより高く設定することが 適である。そうすることで磁化自由層42はよ りソフトになる。

 本実施形態では、磁化自由層がアモルフ ス合金、微結晶合金で構成されており、熱 理温度を増大するとやがては磁化自由層が 晶化してしまう。その際、強磁性層21はMgO(0 01)によりbcc(001)に結晶化し易いが、強磁性層2 2が先に結晶化すると、強磁性層21のbcc(001)へ 配向、結晶化が阻害される。従って強磁性 22を強磁性層21よりも高い結晶化温度を持つ ように作製することでこのような問題を回避 することができる。

 そのような構成を得るためには強磁性層2 1の非磁性元素をB、Cなどの軽元素のみで構成 することが好ましい。強磁性層21は高いMR比 望まれ、軽元素であるCやBは、MR比に対して 悪影響は小さい。さらに、強磁性層22を、B Cなどの軽元素に加えて、さらに第二の非磁 性元素として、これらの軽元素に対して、強 磁性層22を構成する強磁性元素よりも結合し すい非磁性元素を加えると良い。軽元素で るBやCは、これらの第二の非磁性元素によ て安定にトラップされる。具体的にそのよ な第二の非磁性元素は、Si,Al,Zr,Nb,Ta,Ti,Mo,W,Hf, Mg,Geから選択される。このような材料構成に って、少なくとも強磁性層21よりも強磁性 22は、非磁性元素が抜けにくく結晶化温度が 高くなる。

 さらに結晶化温度を高める観点からも、 磁性層22の非磁性元素の添加濃度は非磁性 素の添加濃度に比べて大きい方が良い。強 性層21が強磁性層22と同種類の非磁性元素を 用した場合、意図的に強磁性層21と比較し 強磁性層22の非磁性元素濃度を大きくするこ とにより、強磁性層21が先に結晶化し、そのb cc(001)への結晶化が保障される。

 強磁性層22の結晶化温度を一層に高める 成として、強磁性層22を酸化物、窒素化物を 含むアモルファス合金、微結晶合金とするこ とも好適である。具体的には、酸素、または 窒素雰囲気中で、fcc構造を持つ強磁性元素合 金を成膜することで強磁性層22を形成する。 たより結晶化温度を高めるには強磁性合金 素に対して、強磁性元素よりも酸素あるい 窒素と結合しやすい非磁性元素を添加した 金を、酸素含有雰囲気、あるいは窒素含有 囲気で成膜すると良い。そのような非磁性 素は、Si,Al,Zr,Nb,Ta,Ti,Mo,Hf,Mg,W,Hf,Mg,Geから選択 される。これらの非磁性元素は強磁性元素と 比較して安定に酸素及び窒素に結合する。非 磁性酸化物、非磁性窒化物が強磁性層と混合 されて形成されるアモルファス合金、微結晶 合金を使用する方が、非磁性元素のみが混合 されている場合よりも結晶温度が高くなり、 熱安定性が向上する。強磁性層22の作製方法 して、酸素含有雰囲気、窒素含有雰囲気中 作製する方法以外にも、スパッタターゲッ 自体を狙いとする組成を持つ窒化物、酸化 としても良い。また、強磁性層22は、酸化 よりも窒素化物である方が、トンネルバリ 層16/強磁性層21の界面を酸化してMR比を劣化 せる恐れがないので好適であり、MR比の観 から材料として優れている。

 磁化自由層42に関して、図3に示されてい ように、非磁性層を含む多層膜構造を使用 ても良い。図3のMTJ素子3では、磁化自由層42 が、トンネルバリア層16の上部に順次に形成 れた、強磁性層21、強磁性層22、非磁性層23 及び強磁性層24で構成されている。強磁性 21、強磁性層22には、既に説明した構成が採 される。強磁性層24は、強磁性層21と強磁性 層22の積層膜に対して非磁性層23を介して磁 的に結合されている。非磁性層23は、非磁性 層14と同種の材料、具体的には、Ru,Ir,Rh,Ag,Cu,C rなどが使用され得る。非磁性層23としてこれ らの材料を使用すると、非磁性層23の膜厚の 大と共に、非磁性層23は、強磁性的な磁気 合を示したり、反強磁性的な磁気結合を示 たりを繰り替える。磁気結合の大きさは、 厚の増大と共に減衰する。特に反強磁性的 磁気結合が発現するように非磁性層23の膜厚 が設定されている場合、磁化自由層42は、積 フェリ自由層として機能する。一方、非磁 層23の膜厚が強磁性的な磁気結合が発現す ように設定されている場合は、磁化自由層42 は、積層フェロ自由層として機能する。磁化 自由層42は、目的に応じて、積層フェリ自由 、積層フェロ自由層の何れかとして機能さ てもよい。いずれの場合でも、磁化自由層4 2のスイッチング磁場Hswの低減など、反転特 を改善することができる。強磁性層24は、磁 気的にソフトであることが好ましく、パーマ ロイなどのfcc合金、またはfcc合金をベースと したアモルファス、微結晶材料が使用される 。また、強磁性層22と同種の材料を使用して 良い。

(第2の実施形態)
 図4は、本発明の第2の実施形態に係るMTJ素 4の構成を示す断面図である。第2の実施形態 では、磁化固定層に本発明を適用した構成が 提示される。

 MTJ素子4は、下地基板10の上に作製、下部 極層11と、反強磁性層12と、磁化固定層41と トンネルバリア層16と、磁化自由層42と、キ ャップ層17と、上部電極層18とを備えている

 下部電極層11及び反強磁性層12は、第1の 施形態と同様の機能を持つように、且つ、 様の材料で構成される。

 磁化固定層41は、強磁性層25と強磁性層26 積層膜を備えている。強磁性層25と強磁性 26は、第1の実施形態で説明した、強磁性層22 及び強磁性層21と、それぞれ同一の機能をも 、同一の材料が使用される。磁化固定層41 、強磁性層25と強磁性層26のみで構成されて 良く、また、図4に示されるように、強磁性 層13、非磁性層14、強磁性層25、強磁性層26の で形成された積層フェリ構成が使用されて 良い。トンネルバリア層16に対して遠い位 に強磁性層25が形成され、強磁性層25として 、fcc磁性材料をアモルファス化又は微結晶 させた強磁性層が用いられる。強磁性層25 fcc磁性材料で構成されることによりソフト を維持される。そして強磁性層25がアモルフ ァス又は微結晶構造であるため、トンネルバ リアに近い位置に形成された強磁性層26のbcc( 001)配向を阻害しない。強磁性層25と強磁性層 26の積層膜は、その多くがfcc材料で占められ いるため、従来のbcc材料のみで構成される 化固定層よりも磁化膜厚積が小さくなり、 換バイアス磁場が向上し、磁化自由層への 磁結合も低減し、MTJの特性が改善する。

 トンネルバリア層16、キャップ層17、上部 電極層18は実施の形態1と同一の構成が使用さ れる。

 磁化自由層42に関しては、bcc磁性材料でbc c(001)配向するように成膜されるか、bcc磁性材 料のアモルファス、微結晶材料で構成するこ とが、高MR比を得る上で好適である。MR比を としても磁化自由層42のソフト性を得たい場 合は、パーマロイなどのソフト性にすぐれた fcc構造を持つ材料が使用される。その場合に おいても、トンネルバリアがアモルファスの AlOバリアより構成されたMTJと比較して十分に 大きなMR比が得られる。磁化自由層42に関し も、第1の実施形態で説明した磁化自由層の 成を採用することにより、高MR比とソフト をより改善することができる。

 まとめれば、本発明の一実施形態の磁気 抗素子は、固定された磁化を有する磁化固 層と、反転可能な磁化を有する磁化自由層 、前記磁化固定層と前記磁化自由層との間 介設されたトンネルバリアとを具備する。 記トンネルバリアは結晶性を有している。 記磁化自由層及び前記磁化固定層の少なく も一方は、高スピン分極率層とソフト強磁 層とを備えている。高スピン分極率層は、 記トンネルバリアに隣接し、体心立方格子 造を発現する強磁性元素の合金である第1合 金、又は、前記第1合金に対して非磁性元素 混合されたアモルファス若しくは微結晶構 を有する強磁性材料から構成されている。 フト強磁性層は、前記高スピン分極率層に 接して前記トンネルバリアに対して反対側 位置し、面心立方格子構造を発現する強磁 元素の合金と非磁性元素とが混合された、 モルファス又は微結晶構造を有する強磁性 料から構成されている。

 前記トンネルバリアは、マグネシウムを む化合物から構成され、且つ、(001)面への 向が最も高いことが好ましい。

 前記高スピン分極率層に含まれている強 性元素の合金は、bcc(001)面への配向が最も いことが好ましい。

 前記高スピン分極率層に含まれる、強磁 元素に対する非磁性元素の濃度は、前記ソ ト強磁性層中の、強磁性元素に対する非磁 元素の濃度よりも低いことが好ましい。

 前記ソフト強磁性層中の強磁性合金は、Ni X Fe 1-X の組成式を有し、且つ、Xが0.8以上の合金で ることが好ましい。その代わりに、前記ソ ト強磁性層中の強磁性合金は、Co X Fe 1-X の組成式を有し、且つ、Xが0.8以上の合金で ることも好ましい。

 前記高スピン分極率層中の強磁性合金は、C o X Fe 1-X の組成式を有し、且つ、Xが0.8以下の合金で ることが好ましい。その代わりに、前記高 ピン分極率層中の強磁性合金が、Co X Fe 1-X の組成式を有し、且つ、Xが80%以下の合金で ることも好ましい。

 前記高スピン分極率層は前記ソフト強磁 層と比較して、結晶配向性が高いことが好 しい。

 また、前記高スピン分極率層及び前記ソ ト強磁性層の非磁性元素は、B又はCを含む とが好ましい。

 また、前記高スピン分極率層よりも前記 フト強磁性層の結晶化温度が高いことが好 しい。この場合、前記高スピン分極率層及 前記ソフト強磁性層の非磁性元素が、B又は Cから選択され、前記ソフト強磁性層は、さ に第二の非磁性元素を含み、前記第二の非 性元素は、Si,Al,Zr,Nb,Ta,Ti,Mo,W,Hf,Mg,Geからなる から選択されていることが好ましい。

 以上に説明された構成を有するMTJ素子は MRAMのメモリセルや、磁気センサーとして好 適に使用される。以下では、本発明の実施例 を説明する。

(実施例1)
(MTJにおける磁化自由層膜磁気特性、及び、 気抵抗)
 熱酸化膜付きのSi基板上にマグネトロンス ッタによってMTJ積層膜を成膜した。MTJ積層 の構成は、基板/Ta(5nm)/PtMn(20nm)/Co 90 Fe 10 (2.5nm)/Ru(0.9nm)/Co 40 Fe 40 B 20 (3nm)/MgO(1.8nm)/磁化自由層/Ru(3nm)/Ta(100nm)である

 MTJ積層膜としては、以下の8種類の磁化自由 層を有する試料1~8が作製された。
試料1(比較例):Co 40 Fe 40 B 20 (2nm)
試料2(比較例):Co 40 Fe 40 B 20 (1.5nm)
試料3(比較例):Co 40 Fe 40 B 20 (1nm)
試料4(比較例):Ni 82 Fe 18 (4nm)
試料5(比較例):Co 40 Fe 40 B 20 (1nm)/NiFe(3nm)
試料6(比較例):Co 40 Fe 40 B 20 (0.5nm)/NiFe(3nm)
試料7(本発明):Co 40 Fe 40 B 20 (1nm)/Co 63 Fe 7 B 30 (1nm)
試料8(本発明):Co 40 Fe 40 B 20 (1nm)/Ni 64 Fe 16 B 20 (1nm)

 基板に上記MTJ積層膜を製膜後、275℃、5時 間、1.2Tの磁場熱処理を行い、磁気異方性を 与した。そして振動式磁力計(VSM)によって磁 化曲線を測定した。また光梃子法を用いて磁 歪定数λを評価した。

 またこれらのMTJ積層膜をKrFリソグラフィ イオンミリングを用いて、複数のMTJ素子に 工した。MTJ素子の形状は0.32um×0.8umの楕円で ある。これらを直流四端子法によって、1mVバ イアスでのMR比を測定した。

 測定された保磁力Hc、磁化膜厚積Ms・t、MR 比、トンネル抵抗Rと素子面積Aの積R・Aを図5 示す。

 試料1~3は、典型的なbcc-Co 50 Fe 50 合金をベースとしたアモルファス磁化自由層 を備えている。試料1は、2nmのCo 40 Fe 40 B 20 で磁化自由層が構成されており、磁化自由層 の膜厚が薄く設定されている。試料1の磁化 由層は、試料4のNiFe磁化自由層に比べて飽和 磁化がほぼ2倍と大きいため、膜厚が1/2にも わらず、試料1の磁化自由層の磁化膜厚積Ms tは、試料4の磁化自由層の磁化膜厚積Ms・tに かなり近い。その代わり、試料1の磁化自由 のMR比は、175%と最も大きい。保持力Hcについ ては、試料1の磁化自由層は、試料4のNiFe磁化 自由層に比べて2倍以上に大きい。さらにこ らの結晶磁気異方性磁場Hkも20(Oe)と大きく、 磁歪定数λも20ppmと大きかった。一方、試料4 NiFe磁化自由層は、結晶磁気異方性磁場Hkが4 (Oe)と小さく磁歪定数λが0.3ppmであった。これ らの膜特性から、試料1のCo 40 Fe 40 B 20 の磁化自由層のスイッチング磁場Hswは、試料 4のNiFe磁化自由層よりも大きくなる。これを 善するために試料2、試料3のようにCo 40 Fe 40 B 20 の膜厚を減らして磁化膜厚積Ms・tを低減して いくと、MR比が大きく減少し、試料3の膜厚が 1nmのCo 40 Fe 40 B 20 の磁化自由層では、MR比は2%となり、さらに 化曲線やMR曲線では明瞭な強磁性ヒステリシ スが観測できなかった。このようにCoFeB単層 は磁化自由層を薄くすることができない。

 試料4のNiFe磁化自由層は、ソフト性は優れ もののMR比が54%であり、100%以上の巨大なMR比 を得ることができない。さらに、トンネル抵 抗(R)と素子面積(A)の積R・Aも最も高く、MTJ素 の抵抗を低減することが難しい。これは、N iFeがfcc合金であり、原理的にδ 1 バンドの高いスピン分極に起因するトンネリ ングが実現できないことに起因している。

 磁化自由層のソフト性と高MR比を両立する 的で、試料5、試料6のようにNiFe膜とCo 40 Fe 40 B 20 膜を積層させてソフト性を得ようとしてもMR は65%まで減少してしまう。試料6のようにCoF eBを薄くすると、MR比は39%とNiFe以下になって まった。

 このように従来技術ではソフト性と高MR を両立することができない。

 これに対して、試料7、試料8では、bcc-Co 50 Fe 50 合金をベースとしたアモルファスCo 40 Fe 40 B 20 膜(1nm)に対して、fcc-Co 90 Fe 10 合金をベースとしたアモルファスCo 63 Fe 7 B 30 膜(1nm)及びfcc-Ni 80 Fe 20 合金をベースとしたNi 64 Fe 16 B 20 膜(1nm)をそれぞれ積層させた構成である。試 5、試料6のような結晶質のNiFe膜とCo 40 Fe 40 B 20 膜と直接に積層させた構成と比較して、試料 7、試料8のMTJ素子のMR比は遥かに大きく100%以 を保っている。さらに試料7、試料8共に、 化自由層の磁化膜厚積Ms・tと保磁力Hcは小さ く、試料4のNiFe磁化自由層と比較しても小さ 。試料8の磁化自由層は、試料7のCo 90 Fe 10 ベースのアモルファス強磁性層の代わりに、 Ni 80 Fe 20 ベースのアモルファス強磁性層を採用するこ とで、磁化膜厚積Ms・tを大幅に低減して最も 小さい値を保ちながら、MR比は115%を維持して いる。またMTJ素子抵抗も、NiFe磁化自由層を 用するMTJ素子と比べて低く、試料7、8の構造 は、MTJ素子の抵抗を低くすることが容易であ る。このように、本発明は、従来技術にくら べて、磁化自由層にソフト強磁性層を付加し たり、トンネルバリア界面のbcc-CoFeベースの 磁性層を薄くしても、低い素子抵抗や高いM R比を維持することができる。これは、本発 が、ソフト化による磁化自由層の積層構造 変化に対してbcc-CoFe(001)/MgO(001)/bcc-CoFe(001)の 晶構造をより安定に維持することが可能で り、CoFe強磁性層のδ 1 バンドによるコヒーレントな電子のトンネリ ングを維持することができた結果である。

(実施例2)
(MTJにおけるスイッチング磁場と磁気抵抗比)
 実施例1と同様の手順により、MTJ素子を作製 した。素子形状は0.32um×0.8umの楕円である。MT Jの膜構成は基板/Ta(5nm)/PtMn(20nm)/Co 90 Fe 10 (2.5nm)/Ru(0.9nm)/Co 40 Fe 40 B 20 (3nm)/MgO(1.8nm)/磁化自由層/Ru(3nm)/Ta(100nm)である MTJ素子としては、以下の5種類の磁化自由層 を有する試料9~13が作製された。
試料9(従来例):Co 40 Fe 40 B 20 (2nm)
試料10(従来例):Co 35 Fe 35 B 30 (2nm)
試料11(従来例):Ni 82 Fe 18 (4nm)
試料12(本発明):Co 40 Fe 40 B 20 (1nm)/Co 63 Fe 7 B 30 (1nm)
試料13(本発明):Co 40 Fe 40 B 20 (0.5nm)/Co 63 Fe7B 30 (1nm)
 試料9~13のそれぞれについて、120個のMTJ素子 が作製された。作成されたMTJ素子に対して外 部磁場と直流4端子法(バイアス電圧:100mV)によ ってMR曲線を測定した。

 図6に、100mVのバイアス電圧で測定されたMR と、トンネル抵抗Rと、スイッチング磁場Hsw 平均値を示す。Co 40 Fe 40 B 20 の磁化自由層を有する試料9は、MR比は152%と も大きいが、スイッチング磁場Hswも45(Oe)と も大きい。試料9に対してB組成を増やして、 磁化膜厚積Ms・tを下げた試料10は、スイッチ グ磁場Hswが24(Oe)と大きく低減したが、MR比 92%と大きく減少した。

 試料11のNiFe磁化自由層は、スイッチング 場Hswが22(Oe)と小さいが、MR比も44%と大きく 少した。また、トンネル抵抗Rと素子面積Aの 積R・Aも最も大きい。試料11は、ソフト性は られるが、高抵抗、且つ、低MR比である。

 本発明の試料12、試料13の磁化自由層は、bcc -Co 50 Fe 50 をベースとした磁気的にハードなCo 40 Fe 40 B 20 層と、fcc-Co 90 Fe 10 をベースとし、さらにB組成を増やして磁化Ms を下げ、且つ、結晶化温度を上げた磁気的に ソフトなCo 63 Fe 7 B 30 (1nm)の2層膜で構成されている。試料13は、特 Co 40 Fe 40 B 20 層の膜厚を低減してソフト化を狙った構成で ある。

 試料12は、試料9に対してスイッチング磁場H swが31(Oe)と大幅に低減し、且つ、MR比は、132% 大きな値を維持している。試料13はスイッ ング磁場Hswが18(Oe)と最も小さい値が得られ 且つMR比は102%と大きい。これはCo 40 Fe 40 B 20 層を0.5nmと薄くしても、bcc-CoFe(001)への結晶化 が維持され、δ 1 バンドのコヒーレントなトンネルが行われて いることを示している。このように、本発明 によれば高MR比を発現するが磁気的にハード あるbccベースの強磁性合金を、高いMR比を ちながら薄層化することが可能であり、そ 結果、高いMR比を保ったまま、MTJの磁化自由 層のスイッチング磁場を大幅に低減できるこ とが、実験によって示された。

 以上、実施形態及び実施例を参照して本 発明を説明したが、本発明は、上記実施形 及び実施例に限定されるものではない。本 発明の構成や詳細には、本願発明のスコー 内で当業者が理解し得る様々な変更をする とができる。

 この出願は、2007年4月24日に出願された日 本出願特願2007-114187号を基礎とする優先権を 張し、その開示の全てをここに取り込む。