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Title:
METHOD OF CONCENTRATING HUMAN MESENCHYMAL STEM CELLS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/031678
Kind Code:
A1
Abstract:
It is intended to provide a method of highly concentrating human mesenchymal stem cells from a mass of cells containing the human mesenchymal stem cells. To highly concentrate human mesenchymal stem cells, CD271+CD90+ cells are collected from a mass of cells containing the human mesenchymal stem cells by using flow cytometry or the like. In the case where the mass of cells contains blood cells (for example, a mass of cells prepared form bone marrow, peripheral blood, etc.), CD45-CD235a-CD271+CD90+ cells are collected. These cell fractions contain highly pure mesenchymal stem cells that have self-renewal capability, self-propagating capability and pluripotency. Therefore, human mesenchymal stem cells can be highly concentrated by collecting the CD271+CD90+ cells from the mass of cells containing the human mesenchymal stem cells.

Inventors:
MATSUZAKI YUMI (JP)
MABUCHI YO (JP)
MORIKAWA SATORU (JP)
OKANO HIDEYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/066169
Publication Date:
March 12, 2009
Filing Date:
September 08, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV KEIO (JP)
MATSUZAKI YUMI (JP)
MABUCHI YO (JP)
MORIKAWA SATORU (JP)
OKANO HIDEYUKI (JP)
International Classes:
C12N5/0775; G01N33/543
Other References:
NAOKI YAMAMOTO ET AL.: "Isolation of multipotent stem cells from mouse adipose tissue.", JOURNAL OF DERMATOLOGICAL SCIENCE, vol. 48, no. 1, 31 August 2007 (2007-08-31), pages 43 - 52, XP022209304
QUIRICI N ET AL.: "Isolation of bone marrow mesenchymal stem cells by anti-nerve growth factor receptor antibodies.", EXP HEMATOL., vol. 30, no. 7, 2002, pages 783 - 791, XP002973273
YOUNG HE ET AL.: "Human reserve pluripotent mesenchymal stem cells are present in the connective tissues of skeletal muscle and dermis derived from fetal, adult, and geriatric donors.", ANAT REC., vol. 264, no. 1, 2001, pages 51 - 62, XP055069134
COVAS DT ET AL.: "Isolation and culture of umbilical vein mesenchymal stem cells.", BRAZ J MED BIOL RES., vol. 36, no. 9, 2003, pages 1179 - 1183, XP002427643
Attorney, Agent or Firm:
ISSHIKI & CO. (12-7 Shinbashi 2-chom, Minato-ku Tokyo 04, JP)
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Claims:
 ヒト間葉系幹細胞を濃縮する方法であって、
 ヒト間葉系幹細胞が含まれる細胞集団から、CD271(LNGFR)及びCD90(Thy-1)を発現しているCD271 + CD90 + 細胞を選別する工程を包含するヒト間葉系幹細胞濃縮方法。
 抗CD271(LNGFR)抗体及び抗CD90(Thy-1)抗体を用いて、CD271 + CD90 + 細胞を選別することを特徴とする請求項1に記載のヒト間葉系幹細胞濃縮方法。
 骨髄から前記細胞集団を調製する工程を包含することを特徴とする請求項1又は2に記載のヒト間葉系幹細胞濃縮方法。
 前記細胞集団を調製する工程が、骨髄をコラゲナーゼで処理する工程を包含することを特徴とする請求項3に記載のヒト間葉系幹細胞濃縮方法。
 G-CSF投与後の末梢血から前記細胞集団を調製する工程を包含することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のヒト間葉系幹細胞濃縮方法。
 CD45及びCD235aを発現していないCD45 - CD235a - 細胞を選別する工程を包含することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のヒト間葉系幹細胞濃縮方法。
 抗CD45抗体及び抗CD235a抗体を用いて、CD45 - CD235a - 細胞を選別することを特徴とする請求項6に記載のヒト間葉系幹細胞濃縮方法。
 フローサイトメトリーを用いて細胞を選別することを特徴とする請求項2又は7に記載のヒト間葉系幹細胞濃縮方法。
 抗CD271抗体と、
 抗CD90抗体と、
を含むことを特徴とするキット。
 さらに、抗CD45抗体と、
 抗CD235a抗体と、
を含むことを特徴とする請求項9に記載のキット。
 さらに、コラゲナーゼを含むことを特徴とする請求項9又は10に記載のキット。
Description:
ヒト間葉系幹細胞濃縮方法

 本発明は、細胞表面抗原を用いてヒト間 系幹細胞を濃縮する方法に関する。

 間葉系幹細胞は、骨芽細胞、骨細胞、脂 細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、ストローマ細 、腱細胞等間葉系細胞への多分化能及び自 増殖能を有しているため、骨や軟骨、筋肉 の再生医療への応用が期待されている。

 従来、間葉系幹細胞は、骨髄等の組織か 得た細胞を長期間培養した後に、培養皿に 着した細胞を増殖することによって単離さ ていた。そのため、培養条件が異なったり 実験者の習熟度が悪かったり、個々の手法 異なったりすると、最終的に得られる間葉 幹細胞の分化能にばらつきが生じていた。 のことは間葉系幹細胞の純度や品質を管理 る上で大きな問題となっていた。

 そこで、間葉系幹細胞を表面抗原マーカ を用いて単離する技術が開発され、これま に、CD10、CD13、CD73(ecto-5' nucleotidase, SH3, SH4 )、CD105(endoglin, SH2)、 CD166(ALCAM)等が間葉系幹 細胞の陽性マーカーとして、CD34、CD45等が陰 マーカーとして同定されており、最近では さらにCD271(LNGFR)、CD140b(PDGFR-β)、CD340(HER-2/erb B2)、CD349(frizzled-9)等が利用されている(Buhring  Hans-Jorg, et al, Novel markers for the prospective  isolation of human MSC, Annals of the New York Acad emy of Sciences, annals-1392-000, Haematopoietic Stem  Cells VI, 10-Nov-2006.)が、高純度で均一な間葉 幹細胞を得るにはまだ不十分であった。

 このような現状から、自己複製能、自己 殖能、及び多分化能を兼ね備えた間葉系幹 胞を、より高純度かつ均一に分離する方法 望まれていた。

 そこで、本発明は、ヒト間葉系幹細胞が まれる細胞集団から、ヒト間葉系幹細胞を 度に濃縮する方法、及びそれに用いられる ットを提供することを目的とする。

 本発明者らは、以下の実施例に示すように フローサイトメトリーを用いてヒト骨髄に まれる細胞集団からCD45及びCD235aを発現せず 、CD271及びCD90を発現しているCD45 - CD235a - CD271 + CD90 + 細胞を回収して解析を行ったところ、この細 胞分画には、高いCFU-F (線維芽細胞コロニー 成単位)活性を有し、かつ、骨芽細胞、軟骨 細胞、及び脂肪細胞等に分化し得る能力を有 する間葉系幹細胞が高純度に含まれているこ とを見出し、本発明を完成するに至った。

 すなわち、本発明にかかるヒト間葉系幹細 濃縮方法は、ヒト間葉系幹細胞を濃縮する 法であって、ヒト間葉系幹細胞が含まれる 胞集団から、CD271(LNGFR)及びCD90(Thy-1)を発現 ているCD271 + CD90 + 細胞を選別する工程を包含する。前記方法は 、抗CD271(LNGFR)抗体及び抗CD90(Thy-1)抗体を用い 、CD271 + CD90 + 細胞を選別してもよい。ここで、前記方法は 、骨髄から前記細胞集団を調製する工程や、 G-CSF投与後の末梢血から前記細胞集団を調製 る工程を包含してもよい。なお、前記細胞 団を調製する工程は、骨髄をコラゲナーゼ 処理する工程を包含していてもよい。

 さらに、本発明にかかるヒト間葉系幹細胞 縮方法は、CD45及びCD235aを発現していないCD4 5 - CD235a - 細胞を選別する工程を包含してもよい。前記 方法は、抗CD45抗体及び抗CD235a抗体を用いて CD45 - CD235a - 細胞を選別してもよい。

 また、本発明にかかるヒト間葉系幹細胞 縮方法は、フローサイトメトリーを用いて 胞を選別することもできる。

 本発明にかかるキットは、抗CD271抗体と CD90抗体とを含む。前記キットは、さらに、 CD45抗体と抗CD235a抗体とを含んでいてもよい 。また、前記キットは、さらに、コラゲナー ゼを含んでいてもよい。

 なお、「(特定の)細胞を濃縮する」とは 細胞集団中で、当該特定の細胞の比率を高 ることを言う。

本発明の一実施例において、ヒト骨髄 胞と、PI、抗CD45抗体、抗CD235a抗体、抗CD271 体、及び抗CD90抗体との反応性を、フローサ トメトリーを用いて解析した結果を示す図 ある。 本発明の一実施例において、ヒト骨髄 ら回収される間葉系幹細胞の回収率に対す コラゲナーゼ処理の効果を示す図である。 本発明の一実施例において、フローサイトメ トリーを用いてCD45 - CD235a - CD271 + CD90 + 細胞を回収し、当該細胞の多分化能を検討し た結果を示す図である。 本発明の一実施例において、CD45 - CD235a - CD271 + CD90 + 細胞が骨髄以外の組織にも存在することを、 フローサイトメトリーを用いて解析した結果 を示す図である。

 以下に、本発明の実施の形態において実 例を挙げながら具体的かつ詳細に説明する 、本発明はこれらに限定されるものではな 。

 市販の試薬キットや測定装置を用いる場 には、特に説明が無い場合、それらに添付 プロトコールを用いる。

 なお、本発明の目的、特徴、利点、及び のアイデアは、本明細書の記載により、当 者には明らかであり、本明細書の記載から 当業者であれば、容易に本発明を再現でき 。以下に記載された発明の実施の形態及び 体的な実施例等は、本発明の好ましい実施 様を示すものであり、例示又は説明のため 示されているのであって、本発明をそれら 限定するものではない。本明細書で開示さ ている本発明の意図ならびに範囲内で、本 細書の記載に基づき、様々に修飾ができる とは、当業者にとって明らかである。

 (1)ヒト間葉系幹細胞濃縮方法
 本明細書において、間葉系幹細胞とは、CFU- F(線維芽細胞コロニー形成単位)活性を有し、 かつ、骨芽細胞、骨細胞、脂肪細胞への多分 化能を有する細胞である。なお、この間葉系 幹細胞は、分化誘導の条件によって、軟骨細 胞、筋肉細胞、ストローマ細胞、腱細胞等へ も分化することができると考えられる。

 本発明者らは、ヒト間葉系幹細胞が含まれ 細胞集団から、CD271 + CD90 + 細胞分画を選別することにより、間葉系幹細 胞を高度に濃縮することを可能にした。なお 、ヒト間葉系幹細胞が含まれる細胞集団に血 球系細胞が含まれる場合は、非血球系の細胞 を選別するために、CD45 - CD235a - 細胞を選別する工程を加えてもよい。

 以下、具体的なヒト間葉系幹細胞濃縮方 について説明する。

 本発明のヒト間葉系幹細胞濃縮方法は、 胞集団調製工程、及びヒト間葉系幹細胞選 工程を含む。

 (i)細胞集団調製工程
 本工程では、フローサイトメトリーやアフ ニティー・クロマトグラフィーによってヒ 間葉系幹細胞が含まれる細胞集団を調製す 。この細胞集団は、ひきつづき表面抗原の 現による選別操作がなされるため、この調 過程で、個々の細胞をばらばらに分離し、 必要な細胞を除去しておくことが好ましい

 この細胞集団を得るための材料は特に限 されないが、例えば、骨髄や末梢血(G-CSF投 後の末梢血を含む)等が挙げられる。なお、 骨髄は、脊椎、胸骨、腸骨等の骨髄を用いれ ばよい。

 これらの材料から目的の細胞集団を調製 る際、例えば骨髄のように、この材料が間 系幹細胞を巻き込んだ細胞塊になっている 合には、含まれている細胞を解離するため 、材料に対してピペッティング等による物 的処理や、酵素等による化学的処理を行え よい。酵素としては、トリプシン、コラゲ ーゼ等、常法で用いられている酵素が使用 きるが、コラゲナーゼで処理することが好 しい。解離処理後、完全に個々の細胞に分 せず、細胞塊が残るような場合など、メッ ュ等を用いて細胞塊を除去することが好ま い。

 また、末梢血から目的の細胞集団を得る 合のように、材料に赤血球が混入している 合には、予め赤血球を溶血しておくことが ましい。そのための方法は特に限定されな が、例えば、材料を低張溶液(例えば、水等 )で処理すればよい。

 このように、用いる材料に対して適切な 理を行って、ヒト間葉系幹細胞が含まれる 胞集団を調製する。

 (ii)ヒト間葉系幹細胞選別工程
 本工程では、「(i)細胞集団調製工程」で調 した細胞集団を用い、CD271 + CD90 + 細胞を生きたまま選別する。

 ここで、CD271 + CD90 + 細胞を選別する方法は、特に限定されない。 例えば、CD271(LNGFR)は、ニューロトロフィン(NG F、BDGF、NT-3、NT-4)をリガンドとするレセプタ なので、いずれかのリガンドをin vitroで発 させて精製したタンパク質を用いたアフィ ティー・クロマトグラフィーによってCD271 + 細胞を選別することができるが、簡便さの点 で、以下のように抗体を用いるのが好ましい 。

 本工程に用いられる抗体は、CD271 + CD90 + 細胞を選別することが可能な、抗CD271抗体及 抗CD90抗体である。例えば、フローサイトメ トリーを用いる場合には、FITC、PE、APC等の異 なる蛍光色素で標識された抗CD271抗体と抗CD90 抗体を、適宜組み合わせて用いることにより 、生細胞を短時間で選別することが可能にな る。フローサイトメトリー以外にも、磁気ビ ーズを用いる方法やアフィニティー・クロマ トグラフィーを用いる方法によって、CD271 + CD90 + 細胞を生細胞のまま選別することが可能であ る。抗体の種類(モノクローナル抗体かポリ ローナル抗体か、IgGかIgMか、抗体分子かFab 片か、等)、及び抗体の濃度に関しては、使 者が、細胞集団の種類、抗体の活性、抗体 使用方法等によって適宜選択することがで る。


 なお、これらの方法を用いる前に、予め、 細胞を染色する蛍光色素(例えば、PI(プロピ ジウムアイオダイド))を細胞集団と反応させ 蛍光で染色された細胞を除去することによ 、死細胞を除去してもよい。

 また、細胞集団に血球細胞が含まれている 合には、CD45 - CD235a - 細胞を選別する工程を含むことが好ましい。 選別方法は特に限定されないが、同様に、蛍 光標識抗体を用いたフローサイトメトリーや 磁気ビーズやアフィニティー・クロマトグラ フィーを用いる方法によって、細胞集団から CD45 - CD235a - 細胞を選別することができる。なお、CD45 - CD235a - 細胞の選別は、CD271 + CD90 + 細胞の選別前であっても、選別と同時であっ ても、選別後であっても構わない。

 以上のようにして、ヒト間葉系幹細胞が含 れる細胞集団から、CD271 + CD90 + 細胞を選別する。

 (2)本発明のヒト間葉系幹細胞濃縮方法の有 性
 現在、再生医療の分野では、移植組織が他 (ドナー)から供与される場合、ドナー不足 移植組織の拒絶反応が問題となっている。 かしながら、本発明のヒト間葉系幹細胞濃 方法は、患者自身の、骨髄、末梢血、又はG- CSF投与後の末梢血等から、患者自身の間葉系 幹細胞を高度に濃縮することができる。従っ て、本発明のヒト間葉系幹細胞濃縮方法を用 いれば、患者自身の少量の組織から、患者自 身の間葉系幹細胞を効率よく選別することが でき、この細胞を、骨芽細胞、骨細胞、脂肪 細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、ストローマ細胞 、腱細胞等へ再生させたい部位に自家移植す れば、所望の細胞や組織を効果的に再生する ことができると共に、ドナー不足や拒絶反応 等の問題を解消することもできる。

 (3)キット
 本発明の方法を用いてヒト間葉系幹細胞を 便に濃縮できるように、抗CD271抗体及び抗CD 90抗体を、キット化してもよい。ヒト間葉系 細胞を濃縮する際に、血球細胞を除去した 場合には、上記キットに、抗CD45抗体、抗CD2 35a抗体を含ませてもよい。また、所望の材料 から細胞集団を効率よく調製するために、上 記キットに、コラゲナーゼ等の酵素を含ませ てもよい。なお、これらの抗体は、市販のも のでも、当業者に公知の技術によって作製し たものでもよい。

 以下、実施例を用いて、以上に説明した 施態様を具体的に説明するが、これは例示 あって、本発明をこの実施例に限定するも ではない。

 <実施例1:CD45 - CD235a - CD271 + CD90 + 細胞の選別>

 (1)細胞集団の調製
 材料は、呼吸器外科の手術時に余剰になっ ヒト肋骨片を使用した。また、材料が不足 た場合には、Cambrex社より購入した骨髄(カ ログ番号:2M-125C,2M-125D)も使用した。


 まず、肋骨片(1cm×1cm)を、PBSで洗浄し、外科 用ハサミを用いて細かくきざんだ後、HBSS + (calcium- and magnesium-free Hanks-balanced salt soluti on supplemented with 2% FCS, 10 mM HEPES, and 1% p enicillin/streptomycin)に懸濁し、液体部分を吸引 て除去した。


 次に、残った骨片をハサミでさらに細かく んだ後、その骨片を0.2%コラゲナーゼ溶液(Wa ko 032-10534 10mM HEPESと1% P/S)に入れ、振盪機 、37℃で1時間インキュベートした。なお、 ントロールとして、0.2%コラゲナーゼ溶液を れないで残った骨片を処理し、同様の実験 行った。


 最後に、コラゲナーゼ処理したサンプルを セルストレーナー(ファルコン2350)で濾過し 骨の破片を除去した後、得られた細胞懸濁 を4℃で7分間遠心分離(×1200rpm)した。遠心分 離後、細胞集団に混入している赤血球を除去 するため、ペレットに1mlの水(SigmaW3500)を入れ て5~10秒間攪拌した後、レスキュー溶液(4%FBS 2×PBS Sigma D1408)に再懸濁した。このサンプ を再度セルストレーナーで濾過し、赤血球 破片を除去し、ヒト骨髄細胞懸濁液を得た


 なお、Cambrex社より購入した骨髄は、液体窒 素にて凍結された状態で保存し、実験ごとに 解凍して使用した。はじめに、HBSS + 溶液にDNaseIを加えた溶液(以下、DNaseI HBSS + 溶液とする)を37℃の恒温槽にて温めた。凍結 骨髄(2M-125C、2M-125D)が入ったバイアルを37℃の 恒温槽につけ、最後のひとかけらが残るくら いまで(約1、2分間)すばやく解凍した。骨髄 胞をDNaseI HBSS + 溶液にて懸濁し15ml遠沈管に移した。さらに ータルボリュームが10mlになるまでDNaseI HBSS + 溶液加え、室温で7分間遠心分離(×1200rpm)した 。遠心分離後、細胞ペレットを崩さないよう にピペットで上清を除去し、新たなDNaseI HBSS + 溶液1mlで再懸濁し、ヒト骨髄細胞懸濁液を得 た。


 (2)抗体反応

 上記方法によって得られたヒト骨髄細胞懸 液を、2.5~5×10 7 cells/mlの濃度になるようにHBSS + に懸濁した。


 次に、ヒト骨髄細胞2.5~5×10 7 cellsに対して、1倍希釈FITC標識抗ヒトCD45抗体( DAKO)を50μl、1倍希釈FITC標識抗ヒトCD235a(Glycopho tinA)抗体(DAKO)を50μl、1倍希釈PE標識抗ヒトCD271 (low-affinity nerve growth factor receptor)抗体(Milten yi Biotec)を50μl、及び1倍希釈APC標識抗CD90(Thy-1 )抗体(BD Biosciences Pharmingen)を50μl加え、氷上 て30分間反応させた。


 反応後、上記細胞懸濁液に10ml HBSS+を加え その懸濁液を4℃で7分間遠心分離(×1200rpm)し 。上清を捨てて得られたペレットに2μg/ml p ropidium iodide (PI)(Sigma Chemical Co.)含有HBSS+を れ、1×10 7 cell/mlの濃度になるように懸濁した。この懸 溶液に対し、滅菌した60mm以下のナイロンメ シュフィルター(Miltenyi Biotec)を用いて、懸 液中の細胞塊をとり除き、得られた細胞浮 液を以下のフローサイトメトリーによる解 (FACS解析)に使用した。


 なお、上記抗体の細胞への非特異的な結合 検定するためのコントロールには、FITC標識 抗MouseIgG1,kappa抗体(eBioscience)、PE標識抗 Mouse  IgG1 抗体(eBioscience)、APC標識抗 MouseIgG1,kappa抗 体(eBioscience)を用いた。


 (3)ヒト間葉系幹細胞の分画

 抗体と反応させた骨髄細胞を、各抗体の反 性によりFACSを用いて分画した。FACSには、48 8nmアルゴンレーザー、600~650nm REDレーザーが 載されているMoFlo及びFACS Vantageを使用した


 まず、1×10 5 イベント分のデータを取り込み、PI陽性細胞 ゲートアウト(図1(a))した。次にCD45 - CD235a - 分画にゲート(図1(b))を設定した。最後に、横 軸をCD90 (Thy-1)と、縦軸をCD271 (LNGFR)とし、共 陽性分画にゲートを設定した。その後、CD45 - CD235a - CD271 + CD90 + 細胞、CD45 - CD235a - CD271 + CD90 - 細胞、CD45 - CD235a - CD271 - CD90 + 細胞、CD45 - CD235a - CD271 - CD90 - 細胞、CD45 - CD235a - CD271 + 細胞、CD45 - CD235a - CD271 - 細胞、CD45 - CD235a - CD90 + 細胞、CD45 - CD235a - CD90 - 細胞に分画し、これらの細胞を回収した。な お、非血球細胞数に対して、CD45 - CD235a - CD271 + CD90 + 細胞は0.04%、CD45 - CD235a - CD271 + CD90 - 細胞は1.73%、CD45 - CD235a - CD271 - CD90 + 細胞は0.1%、CD45 - CD235a - CD271 - CD90 - 細胞は98%であった(図1(c)を参照のこと)。

 <実施例2:CD45 - CD235a - CD271 + CD90 + 細胞の機能解析>

 (1)コラゲナーゼ処理の効果

 まず、コラゲナーゼ処理を行った細胞懸濁 及びコラゲナーゼ処理を行わない細胞懸濁 を用い、ソーティングによって得られたCD45 - CD235a - CD271 + CD90 + 細胞分画の細胞を増殖培養液(DMEM: GIBCO11885 +  20%FBS:Hyclone +b FGF+10mM HEPES +1%P/S)に懸濁し 。そのうち、96穴培養皿のウエルあたり、5× 10 3 、1×10 4 、1×10 5 個の細胞を播種し、37℃ 5%CO 2 インキュベーターにて培養した。4日後に培 上清を除去し、新しい増殖培養液を入れた 培地交換は3~4日ごとに行なった。10日後、細 胞がコンフルエントになったウエルを数え、 その割合を図2に表した。


 その結果、いずれの細胞密度においても、 髄をコラゲナーゼ処理することにより、CD45 - CD235a - CD271 + CD90 + 細胞は、高い回収率で回収された。


(2)CD271 + CD90 + 選別の効果
 実施例1に示す各分画に対して、増殖培養液 (DMEM: GIBCO11885 + 20%FBS:Hyclone +b FGF+10mM HEPES  +1%P/S)に懸濁した細胞100~8000個を35mm培養皿に 種し、37℃ 5%CO 2 インキュベーターにて培養した。4日後に培 上清を除去し、新しい増殖培養液を入れた 培地交換は3~4日ごとに行なった。10日後、位 相差顕微鏡にて培養皿を観察し、50個以上の 胞からなるコロニーをカウントした。この うにして、播種した細胞の個数のうち、い つの細胞がコロニーを形成したかを測るこ により、CFU-F(線維芽細胞コロニー形成単位) 活性を有する細胞の頻度を比較した。なお、 WBM(whole bone marrow)とは全骨髄細胞を示す。


<表1>


 その結果、表1に示す通り、CD90 + 細胞のみ、あるいはCD271 + 細胞のみによる選別に比べ、CD271 + CD90 + 細胞による選別によって、CFU-F(線維芽細胞コ ロニー形成単位)活性を有する細胞は、それ れ約50倍及び約27倍濃縮できることが分かっ 。一方、WBM、CD90 - 細胞のみ、CD271 - 細胞のみによる選別では、CFU-F活性を有する 胞は認められなかった。また、WBM100000個を1 00mm培養皿に、CD90 - 細胞300000個をT75培養フラスコに、CD271 - 細胞240000個をT75培養フラスコに播種して、上 記と同様の実験を行ったが、CFU-F活性を有す 細胞は認められなかった。

 さらに、文献(Aslan H, Zilberman Y, Kandel L, e t al. Osteogenic differentiation of noncultured immuno isolated bone marrow-derived CD105 +  cells. Stem Cells. 2006;24:1728-1737.、及びQuirici  N, Soligo D, Bossolasco P, et al. Isolation of bone  marrow mesenchymal stem cells by anti-nerve growth  factor receptor antibodies. Exp Hematol. 2002;30:783-79 1.)に記載の数値と比較しても、CD105 + 細胞のみ(Aslan H, Zilberman Y, Kandel L, et al.  Osteogenic differentiation of noncultured immunoisolated  bone marrow-derived CD105 +  cells. Stem Cells. 2006;24:1728-1737.)、あるいはCD 271 + 細胞のみ(Quirici N, Soligo D, Bossolasco P, et al . Isolation of bone marrow mesenchymal stem cells by  anti-nerve growth factor receptor antibodies. Exp He matol. 2002;30:783-791.)による選別に比べ、CD271 + CD90 + 細胞による選別によって、CFU-F活性を有する 胞の濃縮率は、はるかに高かった。なお、 105抗体は内皮細胞、初期のBリンパ球、単球 を認識する抗体である。


<表2>


 (2)分化アッセイ

 (i)骨芽細胞への分化

 (a)分化誘導

 CFU-Fアッセイを行った後のCD271 + CD90 + 細胞を継代し、コンフルエントになった状態 で、培地を増殖培養液から骨芽細胞誘導培地 (CAMBREX PT-4120)に交換し、37℃ 5%CO 2 インキュベーターにて培養した。3~4日ごとに 新しい骨分化誘導培地に交換し、2週間分化 導を行った。


 (b)染色

 分化誘導した細胞を4%PFAにて室温で10分間固 定し、その後、PBSで5分間の洗浄を3回行った アルカリフォスファターゼ(ALP)基質キット あるヒストファイン(株式会社ニチレイバイ サイエンス Code,415161)を用いて、骨芽細胞 染色を行なった。 

 その結果、図3に示すように、桃色~赤色に まった骨芽細胞が認められ(図3では、灰色~ 色に相当)、骨芽細胞へ分化することが示さ た。


 (ii)脂肪細胞分化アッセイ

 (a)分化誘導

 CFU-Fアッセイを行った後のCD271 + CD90 + 細胞を継代し、コンフルエントになった状態 で、培地を増殖培養液から脂肪細胞誘導培地 (CAMBREX PT-4135)に交換し、37℃ 5%CO 2 インキュベーターにて培養した。3日後に脂 細胞維持培地(CAMBREX PT-4122)に交換し、その 3~4日ごとに脂肪細胞誘導培地と脂肪細胞維 培地とを交互に交換し、2週間分化誘導を行 た。


 (b)染色

 分化誘導した細胞を4%PFAにて室温で10分間固 定し、その後、PBSで5分間の洗浄を3回行った オイルレッドO染色溶液(武藤化学株式会社, Lot No,060822)を用いて、脂肪細胞の染色を行 た。 

 その結果、図3に示すように、赤色に染まっ た脂肪細胞の油滴が認められ(図3では、灰色~ 黒色に相当)、脂肪細胞へ分化することが示 れた。


 (iii)軟骨分化アッセイ

 (a)分化誘導

 CFU-Fアッセイを行った後のCD271 + CD90 + 細胞を継代し、細胞数が2×10 5 cellsになったところで、これらの細胞を軟骨 胞誘導培地(CAMBREX PT-4121)に懸濁し、15ml遠沈 管に移した後、5分×150gで遠心した。上清を 去し、軟骨細胞誘導培地+TGF-β3(CAMBREX PT-4124) +BMP-6(R&D Systems 507-BP/CF)に懸濁した。5分×1 50g遠心した後、ペレット状の細胞をそのまま 37℃・5%CO 2 インキュベーターにて培養した。3~4日ごとに 新しい軟骨分化誘導培地と交換し、3週間分 誘導を行った。


 (b)染色

 分化誘導した細胞塊を4%PFAにて室温で1時間 定し、その後、PBSで5分間の洗浄を3回行っ 。次いで、細胞塊をパラフィン包埋し、6μm スライスした。0.05%トルイジンブルー溶液(p H4.1 Wako 209-14545)を用いて、切片を染色した  

 その結果、図3に示すように、紫色に染まっ た軟骨に特有な多糖類が認められ(図3では、 色~黒色に相当)、軟骨への分化が明らかに った。


 このように、CD45 - CD235a - CD271 + CD90 + 細胞は、間葉系細胞である骨芽細胞、軟骨細 胞、脂肪細胞への分化能を有する。そして、 ヒト骨髄に含まれる細胞集団から、CD45 - CD235a - CD271 + CD90 + 細胞を選別すれば、ヒト間葉系幹細胞を高度 に濃縮することができる。


 <実施例3:間葉系幹細胞が存在する組織の 討>

 本実施例では、間葉系幹細胞は、骨髄、末 血、及びG-CSF投与後の末梢血には存在する 、臍帯血には存在しないことを示す。 

 ヒト臍帯血、末梢血、及びG-CSF投与後の末 血は、廃棄される患者検体を使用した。ま 、実施例1に記載の方法を用いて、ヒト臍帯 、末梢血、及びG-CSF投与後の末梢血から細 集団を調製し、FACS解析を行った。 

 その結果、図4に示すように、CD45 - CD235a - CD271 + CD90 + 細胞は、CD45陰性CD235a陰性分画にゲートを設 した場合、骨髄中では0.01~0.04%、G-CSF投与後 末梢血では0~0.015%、末梢血では0~0.008%含まれ いた。一方、CD45 - CD235a - CD271 + CD90 + 細胞は、臍帯血には含まれていなかった。

 本発明によって、ヒト間葉系幹細胞が含 れる細胞集団から、ヒト間葉系幹細胞を高 に濃縮する方法、及びそれに用いられるキ トを提供することができるようになった。




 
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