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Title:
METHOD FOR DESULFURIZING HYDROCARBON OIL AND FUEL CELL SYSTEM USING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/031614
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a method for desulfurizing a hydrocarbon oil such as kerosene or diesel oil which is particularly used for fuel cells. This method does not require a reduction process nor hydrogen, and enables to efficiently desulfurizing a hydrocarbon oil over a temperature range from room temperature to about 100˚C by using a desulfurization agent. Also disclosed is a fuel cell system using such a desulfurization method. Specifically disclosed is a method for desulfurizing a hydrocarbon oil, which is characterized in that a desulfurization agent containing a solid acid obtained by firing an aluminum-containing metal oxide and/or a water-containing metal oxide at a temperature of 200-980˚C and 20-100% by mass of aluminum oxide is brought into contact with a hydrocarbon oil. The desulfurization agent is preferably an aluminum oxide containing a sulfuric acid radical, particularly γ-alumina. Also specifically disclosed is a fuel cell system using such a method for desulfurizing a hydrocarbon oil.

Inventors:
TOIDA YASUHIRO (JP)
HERAI MASATAKA (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/065971
Publication Date:
March 12, 2009
Filing Date:
September 04, 2008
Export Citation:
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Assignee:
JAPAN ENERGY CORP (JP)
TOIDA YASUHIRO (JP)
HERAI MASATAKA (JP)
International Classes:
C10G25/00; B01J20/08; C10G29/16; H01M8/06
Domestic Patent References:
WO2005073348A12005-08-11
Foreign References:
JP3251313B22002-01-28
US4835338A1989-05-30
US2060091A1936-11-10
Attorney, Agent or Firm:
MOEGI PATENT OFFICE (Minato-ku Tokyo, 01, JP)
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Claims:
アルミニウムを含有する金属酸化物及び/又は含水金属酸化物を、200~980℃の温度で焼成して得られる固体酸を含み、酸化アルミニウムを20~100質量%含有する脱硫剤と、炭化水素油とを、水素非存在下で接触させて脱硫することを特徴とする炭化水素油の脱硫方法。
脱硫剤が、硫酸根を含む酸化アルミニウムを含有する請求項1に記載の炭化水素油の脱硫方法。
酸化アルミニウムがγ-アルミナである請求項1又は2に記載の炭化水素油の脱硫方法。
脱硫剤が、ピリジン吸着フーリエ変換赤外分光光度分析により測定したルイス酸点に起因するピーク(1450±5cm -1 )のピーク高さI 1450 に対するブレンステッド酸点に起因するピーク(1540±5cm -1 )のピーク高さI 1540 の比(I 1540 /I 1450 )が、0.12以下である請求項1~3のいずれかに記載の炭化水素油の脱硫方法。
脱硫剤は、硫黄を0.10~3.00質量%含有し、比表面積が150m 2 /g以上であり、かつ細孔容積が0.35ml/g以上である請求項1~4のいずれかに記載の炭化水素油の脱硫方法。
脱硫剤と炭化水素油とを接触させて脱硫する前に、脱硫剤を400~980℃の温度で更に焼成する請求項1~5のいずれかに記載の炭化水素油の脱硫方法。
100℃以下の温度で脱硫剤と炭化水素油とを接触させる請求項1~6のいずれかに記載の炭化水素油の脱硫方法。
炭化水素油が灯油である請求項1~7のいずれかに記載の炭化水素油の脱硫方法。
請求項1~8のいずれかに記載の炭化水素油の脱硫方法を使用することを特徴とする燃料電池システム。
Description:
炭化水素油の脱硫方法及びそれ 用いた燃料電池システム

 本発明は、炭化水素油の脱硫方法に関し 特に燃料電池で使用する水素を発生させる めの原燃料である、灯油や軽油などの炭化 素油の脱硫方法に関する。さらに、本発明 、該脱硫方法を使用した燃料電池システム 関するものである。

 家庭用などの定置式燃料電池で使用する 般灯油の脱硫は、主にニッケル系脱硫剤を2 00℃前後で使用する化学吸着脱硫法が検討さ ているが、加熱のためにエネルギーを消費 ること、起動に時間を要すること、灯油の 化を防止するために加圧条件で行う必要が ること、発生するガス対策のために脱硫後 気液分離槽を設ける必要があること、さら それらのためにシステムが複雑になること どの問題点があった。銅を添加したニッケ 系脱硫剤は、150℃程度のより低温でもある 度の活性を有するが、上記問題を解決する でには至っていない。また、ニッケル系脱 剤はあらかじめ還元処理を施す必要があり 酸素と接触することにより急激な発熱反応 起きて活性が低下することから、保管や停 方法にも課題がある。さらに、ニッケル化 物は毒性を有することから、一般家庭に普 した場合には管理方法を厳格にする必要も るという課題も有する(特許文献1~4)。

 また、製油所で使用されている酸化銅系 硫剤は、120℃前後の比較的低温で、メルカ タン類などの硫黄化合物を含むナフサ留分 脱硫には利用されているが、主にベンゾチ フェン類やジベンゾチオフェン類を含む灯 や軽油などの脱硫に十分な性能を有する酸 銅系脱硫剤は存在しなかった(特許文献5)。

 一方、ゼオライトや活性炭等を常温付近 使用する物理吸着脱硫法も検討されている 、灯油のように硫黄化合物と競争吸着とな 芳香族化合物を含み、特にベンゾチオフェ 類の除去については性能の高い物理吸着剤 存在せず、非常に多くの体積を必要として 用的ではなかった(特許文献6及び7)。

 本発明者らは、固体酸及び/又は遷移金属 酸化物が担持された活性炭、及び銅成分及び 銀成分を含有することを特徴とする炭化水素 油脱硫剤を提案している。しかし、従来の固 体酸は比表面積が小さいために硫黄化合物の 吸着量が少なく、遷移金属酸化物が担持され た活性炭は硫黄濃度が低い場合には吸着量が 少なく、銅成分及び銀成分を含有することを 特徴とする炭化水素油脱硫剤はジベンゾチオ フェン類の吸着量が少なく、いずれも十分な 性能ではなかった(特許文献8~10)。

 硫酸根アルミナの製造方法としては、アル ニウムの水酸化物もしくは酸化物のγ-アル ナ粒子100重量部に、硫酸根含有溶液80重量 以下を散布し、硫酸根を硫黄として0.5~15重 %担持することを特徴とするアルキル化又は 合反応の反応工程で使用される固体酸触媒 製造法が知られているが、炭化水素油の脱 剤としての性能は低かった(特許文献11)。

特公平6-65602号公報

特公平7-115842号公報

特開平6-315628号公報

特開平6-228570号公報

特開2000-42407号公報

特開2003-49172号公報

特開2005-2317号公報

WO2005-073348

WO2007-015391

WO2007-020800

特開平5-96171号公報

 本発明は、炭化水素油の脱硫方法、特に 料電池で使用する水素を発生させるための 燃料である、灯油や軽油などの炭化水素油 脱硫方法について、還元処理や水素を必要 せず、また、常温から100℃程度までの温度 、炭化水素油を効率的に脱硫することがで る脱硫剤による脱硫方法、さらに該脱硫方 を使用する燃料電池システムを提供するこ を課題とする。

 本発明者は、上記課題を解決するために 意研究を進めた結果、アルミニウムを含む 属酸化物及び/又は含水金属酸化物を特定の 温度で焼成して得られる固体酸を含む脱硫剤 を、炭化水素油の脱硫に用いると、効率よく 経済的に脱硫できることを見出し、本発明に 想到した。

すなわち、本発明は、下記の炭化水素油の脱 硫方法、並びに、該脱硫方法を使用した燃料 電池システムに関する。
[1] アルミニウムを含有する金属酸化物及び/ 又は含水金属酸化物を、200~980℃の温度で焼 して得られる固体酸を含み、酸化アルミニ ムを20~100質量%含有する脱硫剤と、炭化水素 とを、水素非存在下で接触させて脱硫する とを特徴とする炭化水素油の脱硫方法。
[2] 脱硫剤が、硫酸根を含む酸化アルミニウ を含有する上記[1]に記載の炭化水素油の脱 方法。
[3] 酸化アルミニウムがγ-アルミナである上 [1]又は[2]に記載の炭化水素油の脱硫方法。
[4] 脱硫剤が、ピリジン吸着フーリエ変換赤 分光光度分析により測定したルイス酸点に 因するピーク(1450±5cm -1 )のピーク高さI 1450 に対するブレンステッド酸点に起因するピー ク(1540±5cm -1 )のピーク高さI 1540 の比(I 1540 /I 1450 )が、0.12以下である上記[1]~[3]のいずれかに記 載の炭化水素油の脱硫方法。

[5] 脱硫剤が、硫黄を0.10~3.00質量%含有し、比 表面積が150m 2 /g以上であり、かつ細孔容積が0.35ml/g以上で る上記[1]~[4]のいずれかに記載の炭化水素油 脱硫方法。
[6] 脱硫剤と炭化水素油とを接触させて脱硫 る前に、脱硫剤を400~980℃の温度で更に焼成 する上記[1]~[5]のいずれかに記載の炭化水素 の脱硫方法。
[7] 100℃以下の温度で脱硫剤と炭化水素油と 接触させる上記[1]~[6]のいずれかに記載の炭 化水素油の脱硫方法。
[8] 炭化水素油が灯油である上記[1]~[7]のいず れかに記載の炭化水素油の脱硫方法。
[9] 上記[1]~[8]のいずれかに記載の炭化水素油 の脱硫方法を使用することを特徴とする燃料 電池システム。

 本発明の脱硫方法によれば、特定の温度 焼成して得られる、酸化アルミニウム(アル ミナ)を含有する脱硫剤、好ましくは固体酸 特には硫酸根を含有するγ-アルミナを含有 る固体酸を含む脱硫剤を、炭化水素油の脱 に用いるものであるから、炭化水素油、特 は灯油や軽油などの炭化水素油と、常温か 100℃程度までの温度で、液相状態で接触さ ることにより、還元処理や水素添加を行わ 、効率よく経済的に脱硫できる。そのため 灯油や軽油に含まれる硫黄化合物を吸着除 する場合には、従来よりもコンパクトな設 で、かつ、より低廉なコストで除去するこ が可能である。さらに、燃料電池の原燃料 して比較的重質な炭化水素油である灯油な の脱硫にも好適に用いることができ、しか その場合起動やメンテナンスが比較的容易 あり、また燃料電池のシステムを簡略化す ことが可能である。

〔脱硫剤〕
 本発明の脱硫方法に用いる脱硫剤は、酸化 ルミニウム(アルミナ)を20~100質量%含有する アルミナ以外に含んでいてもよい成分とし は、固体超強酸の成分として成り得るジル ニウム、タングステン、チタン、ハフニウ 、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ケ 素、錫、ガリウムなどを挙げることができ 。複合酸化物及び/又は含水複合酸化物の形 態でもよいし、単独の酸化物及び/又は含水 化物の部分が混合された形態であってもよ 。例えば、ジルコニア・アルミナ、タング テン酸ジルコニア・アルミナ、チタニア・ ルミナ、ハフニア・アルミナ、酸化バナジ ム・アルミナ、クロミア・アルミナ、酸化 ンガン・アルミナ、酸化鉄・アルミナ、シ カ・アルミナ、酸化錫・アルミナ、酸化ガ ウム・アルミナなどが挙げられる。脱硫剤 のアルミナからなる部分は、20~100質量%、好 しくは40~100質量%、より好ましくは50~100質量 %、特に好ましくは70~100質量%、最も好ましく 80~100質量%である。アルミナが20質量%未満で は、所望の脱硫性能が得られず、アルミナ含 有量は多いほど好ましい。またアルミナは特 に安価であることから、含有量が高いほど経 済的な面からも好ましい。

 また、本発明に用いる脱硫剤において、酸 アルミニウム(アルミナ)は、結晶構造が異 る多数の種類があるが、スピネル構造又は ピネル類似構造のγ-アルミナであることが ましい。この構造はX線回折により確認でき 。γ-アルミナとすることにより、硫酸根を 持した場合において硫酸根が安定的に担持 れ、良好な固体酸性を発現する。その結果 脱硫剤に用いたときに優れた脱硫性能を示 。
 特に脱硫活性を向上させるために後述する うに硫酸根を担持させる場合、結晶性の無 活性アルミナでは、固体超強酸性が発現し くいが、γ-アルミナは硫酸根を強力に取り み、良好な固体超強酸性を発現する。活性 ルミナで固体超強酸性が発現しにくい原因 不明であるが、表面が硫酸により溶解する とが考えられる。また、α-アルミナなどで 、比表面積が低く、吸着脱硫剤としての性 が低い。吸着脱硫剤としては比表面積が大 いことが高い脱硫性能を得るためには重要 あることから、アルミナは、比表面積が200m 2 /g以上、さらには300m 2 /g以上のγ-アルミナが好ましい。

 このように、脱硫剤に含有されるアルミ は、硫酸根を含むものが好ましい。すなわ 、本発明に用いる脱硫剤は、硫酸根が担持 れたアルミナ(硫酸根アルミナと言うことが ある)を含むものが好ましく、優れた脱硫性 を示し、炭化水素油中の微量成分、特には 黄化合物及び/又は多環芳香族化合物の吸着 去に好適に使用できる。例えば、灯油や軽 中に含まれる硫黄化合物を、常温から100℃ 度までの温度で吸着除去する脱硫剤として 適である。

 硫酸根を含有する酸化アルミニウム(硫酸 根アルミナ)の調製方法は、アルミナに硫酸 含浸して焼成する含浸法、アルミニウム水 化物及び/又は水和酸化物からなるアルミナ と硫酸アンモニウムなどからなる固体の硫 源とを混合して焼成する混練法でも構わな 。さらに硫酸根アルミナは、アルミン酸ソ ダと硫酸アルミニウムとの中和沈殿及び洗 により、水酸化アルミニウム(擬ベーマイト )を調製する際に、硫黄分を残存させること より得ることもできる。中でも、アルミナ 、特にγ-アルミナに硫酸水溶液を含浸する 浸法が簡便な上に安定した性能が得られる で好ましい。なお、上記のようにアルミナ 製造過程において硫黄分が残留している場 は、含浸法や混練法などにより更に硫酸源 添加することなく、そのまま使用しても良 。硫酸源を添加すればなお好ましい。

 含浸法の場合、アルミナは硫酸水溶液含 前に乾燥することが好ましい。乾燥後に吸 率を測定し、吸水率に対して一定の硫酸水 液を含浸すると、一定の性状の硫酸根アル ナを再現性良く調製できる。また、吸水率 同程度の体積の硫酸水溶液を含浸すると、 酸根の付着ムラを少なくすることができる

 含浸する硫酸水溶液の濃度は、0.01~6mol/L 好ましい。6mol/Lを越える高濃度の硫酸水溶 を用いると、焼成後に残存する硫酸根の量 過剰となる可能性があり、脱離しやすい不 定な硫酸根が形成される。0.01mol/L未満では 所望の脱硫性能が得られないので硫酸根を 持する意味がない。

 以上のように調製したアルミナを含む金 酸化物及び/又は含水金属酸化物を焼成する と、固体酸としての酸点を有効に発現するよ うになる。例えば、固体酸と称される、硫酸 根を担持するアルミナを得ることができる。 この固体酸は炭化水素中の微量成分、特に硫 黄化合物及び/又は多環芳香族化合物の吸着 去剤、例えば脱硫剤の有効成分として好適 使用することができる。焼成は200~980℃の温 で行い、好ましくは400~980℃、より好ましは 700~900℃で行う。200℃よりも低いと、固体酸 しての酸点の発現が十分ではなく、脱硫性 に劣る場合がある。また、硫酸根を担持し 場合は、焼成温度が特に500℃未満では硫酸 弱く吸着した不安定な硫酸根が残存するた に、脱硫性能が高くならない。一方、980℃ りも高いと比表面積の低下が著しく、やは 脱硫性能が低下する場合がある。

 焼成は、例えばロータリーキルンを用い 空気を流しながら行うことができる。空気 流通すると、焼成中に脱離した成分を効率 に除去できるので好ましい。特に硫酸を担 した場合、脱離した硫酸成分が再吸着する とを防止できるため、不安定な硫酸根の形 を低減できるので、脱硫剤として好適な、 酸根アルミナを含有する固体酸の調製に好 しく用いることができる。空気の流速は1~30 m/秒、特に10~20m/秒が好ましい。1m/秒よりも小 さいと硫酸成分や水分の再吸着防止効果が少 なく、30m/秒よりも大きいと均一な温度とす ことが難しい。また、ロータリーキルンを いると焼成時における硫酸根の付着ムラを 減できるというメリットもある。

 脱硫剤として使用される場合、成形体が ましく用いられるので、製造段階で、例え 焼成に先立って、焼成による収縮を見込ん 成形することが好ましい。形状としては、 に限定するものではないが、硫黄化合物の 度勾配を大きくするため、流通式の場合に 脱硫剤を充填した容器前後の差圧が大きく らない範囲で小さい形状が好ましく、球状 円柱状、円筒状、三つ葉状、四葉状などが げられ、リング状やサドル状であってもよ 、特には球状、円柱状、四葉状が好ましい 球状の場合の大きさは、直径が0.5~5mm、特に は、1~3mmが好ましい。円柱状の場合には、直 が0.1~4mm、特には、0.12~2mmで、長さは直径の0 .5~5倍、特には、1~2倍が好ましい。

 以上のようにして得られたアルミナ、γ- ルミナ及びそれらに硫酸根を担持した固体 としてのアルミナ、さらにアルミナ以外の 分を含む固体酸は、そのまま本発明の脱硫 法における脱硫剤として用いることができ 。さらに、シリカ、アルミナ、他のゼオラ トなどの無機微粒子や活性炭などを混合し 、粘土やピッチなどのバインダーを加えて 形及び焼成し、脱硫剤が吸着しにくい硫黄 合物の吸着性能を向上したり、メソ孔及び クロ孔の存在量を増やしたりして硫黄化合 の拡散速度を向上しても良い。また、酸化 属を担持したり混合したりするなど、金属 の複合化により吸着性能を向上させても良 。

 このようにして調製した脱硫剤は、硫黄分 0.10~3.00質量%含有し、比表面積が150m 2 /g以上であり、細孔容積が0.35ml/g以上である とが好ましい。硫黄の含有量が0.10質量%未満 の場合は、固体酸としての酸強度に劣るため 、脱硫性能が低くなり好ましくない。また、 硫黄の含有量が3.00質量%を越える場合は、脱 性能が低下する場合がある。

 脱硫剤の比表面積は、硫黄化合物の吸着容 に大きく影響するので、より好ましくは200m 2 /g以上、特に好ましくは250m 2 /g以上である。細孔容積はより好ましくは0.4m l/g以上、特に好ましくは0.5ml/g以上である。 表面積が150m 2 /g未満、細孔容積が0.35ml/g未満の場合は、十 な脱硫性能が得られない。

 更に、本発明の固体酸は、ピリジン吸着フ ーリエ変換赤外線分光光度分析(FT-IR)による 、ルイス酸点に起因するピーク(1450±5cm -1 )のピーク高さI 1450 に対するブレンステッド酸点に起因するピー ク(1540±5cm -1 )のピーク高さI 1540 の比(I 1540 /I 1450 )が0.12以下であることが好ましく、より好ま くは0.01以下である。強い酸点であるルイス 酸点は、ベンゼン環とのπ電子相互作用によ ジベンゾチオフェン類の高い物理吸着性能 有するので、チオフェン類やベンゾチオフ ン類よりもジベンゾチオフェン類を除去す 場合は、ブレンステッド酸点の残存量が少 い方が好ましい。このため、ピーク高さ比( I 1540 /I 1450 )は0.12以下とすることが好ましい。

 また、本発明に用いる固体酸は、250℃か 700℃までの質量減少率(A)に対する、250℃か 1000℃までの質量減少率(B)の比(B/A)が1.3以上 あることが好ましく、より好ましくは1.5以 である。比(B/A)が1.3未満のときは、十分な 硫性能が得られない場合がある。この理由 必ずしも明らかでないが、比(B/A)が大きいこ とは高温でしか脱離しない安定な硫酸根が多 く存在することを示し、比(B/A)が小さいと不 定な硫酸根の残存量が多くなるためである 考えられる。

 また、特定の範囲の細孔直径の占める細 容積は、脱硫性能に影響する。細孔直径10 未満の細孔容積は、硫黄化合物の吸着容量 大きくするために、0.1ml/g以上、特には、0.2m l/g以上とすることが好ましい。また、細孔直 径10Å以上0.1μm未満の細孔容積は、硫黄化合 の細孔内拡散速度を大きくするために、0.05 ml/g以上、特には、0.1ml/g以上とすることが好 しい。細孔直径0.1μm以上の細孔容積は、成 体の機械的強度を高くするために、0.3ml/g以 下、特には、0.25ml/g以下とすることが好まし 。

 なお、通常、比表面積、全細孔容積は、窒 吸着法により、マクロ孔容積は水銀圧入法 より測定される。窒素吸着法は簡便で、一 に用いられており、様々な文献に解説され いる。例えば、鷲尾一裕:島津評論、48 (1) 35-49 (1991)、ASTM (American Society for Testing and  Materials) Standard Test Method D 4365-95 などで る。
 脱硫剤の破壊強度は1kg/ペレット以上、特に は2kg/ペレット以上であることが脱硫剤の割 を生じないので好ましい。通常、破壊強度 、木屋式錠剤破壊強度測定器(富山産業株式 社)等の圧縮強度測定器により測定される。

 本発明の脱硫方法に用いる脱硫剤は、上 のように硫酸根アルミナを含有することが ましい。硫酸根アルミナは固体超強酸触媒 分類される。固体超強酸触媒とは、ハメッ (Hammett)の酸度関数H0が-11.93である100%硫酸よ も酸強度が高い固体酸からなる触媒をいう

 酸強度(Ho)とは、触媒表面の酸点が塩基に プロトンを与える能力あるいは塩基から電子 対を受け取る能力で定義され、pKa値で表わさ れるものであり、既知の指示薬法あるいは気 体塩基吸着法等の方法で測定することができ る。例えば、pKa値が既知の酸塩基変換指示薬 を用いて、固体酸触媒の酸強度を、直接、測 定することができる。p-ニトロトルエン(pKa値 ;-11.4)、m-ニトロトルエン(pKa値;-12.0)、p-ニト クロロベンゼン(pKa値;-12.7)、2,4-ジニトロト エン(pKa値;-13.8)、2,4-ジニトロフルオロベン ン(pKa値;-14.5)、1,3,5-トリクロロベンゼン(pKa ;-16.1)等の乾燥シクロヘキサンあるいは塩化 ルフリル溶液に触媒を浸漬し、触媒表面上 指示薬の酸性色への変色が認められたら、 性色に変色するpKa値と同じかそれ以下の値 ある。触媒が着色している場合には、指示 による測定ができないので、ブタン、ペン ンの異性化活性から推定できることが報告 れている〔表面科学および触媒の研究 90巻  酸系触媒 II("Studies in Surface Science and Cata lysis" Vol.90、ACID-BASE CATALYSIS II)、p.507(1994)〕

〔脱硫方法〕
 本発明の脱硫方法は、上記のようにして得 れた酸化アルミニウム(アルミナ)を20~100質 %含有する脱硫剤を、炭化水素油と接触させ ものである。
 上記のようにして得た脱硫剤は、好ましく 空気雰囲気下に200℃以上の高温、具体的に 200℃以上980℃以下の温度で焼成されて得ら る固体酸を含んでいるので、脱硫性能に優 る。200℃以上の高温で焼成すると脱硫性能 高くなる原因は、必ずしも明確ではないが 200~980℃、好ましくは400~980℃の温度で焼成 ない場合は、弱い酸点(ブレンステッド酸点) が多く残存することが関与しているものと考 えられる。特に、強い酸点(ルイス酸点)はベ ゼン環とのπ電子相互作用によりジベンゾ オフェン類の高い吸着性能を有するので、 オフェン類やベンゾチオフェン類よりもジ ンゾチオフェン類を除去する場合は、ブレ ステッド酸点の残存量が少ない方が好まし 。

 ルイス酸量とブレンステッド酸量の割合は 一般に、ピリジン吸着フーリエ変換赤外分 光度分析(FT-IR)により相対比較することがで きる。ルイス酸点に起因する吸光度のピーク は1450±5cm -1 に、ブレンステッド酸点に起因する吸光度の ピークは1540±5cm -1 に、ルイス酸とブレンステッド酸との両方に 起因する吸光度のピークは1490±5cm -1 に検出される。従って、ルイス酸点(1450±5cm -1 )のピーク高さをI 1450 、ブレンステッド酸点(1540±5cm -1 )のピーク高さをI 1540 とすると、ルイス酸量に対するブレンステッ ド酸量の比I 1540 /I 1450 を相対比較することで、酸性質の違いが分か る。I 1540 /I 1450 は、0.12以下、好ましくは0.01以下であるとジ ンゾチオフェン類の吸着性能が高い。

 また、一旦、200℃以上の高温で焼成されて られる固体酸を含む脱硫剤を長期間放置す と、吸湿し、ブレンステッド酸点が生成し 、脱硫性能、特にジベンゾチオフェン類の 硫性能が低下する。吸湿した場合には、脱 剤を、200℃以上、好ましくは300℃以上、さ には400℃以上の高温で乾燥すると、良好な ベンゾチオフェン類の脱硫性能を得ること できる。結晶構造が変化するので、980℃を える乾燥は避けるべきである。980℃を超え 温度で乾燥を行うと、特に比表面積が著し 低下する不利益がある。
 脱硫剤の製造後、短い保存期間で殆ど吸湿 ずに脱硫剤を炭化水素油の脱硫に供するの あれば、乾燥を行う必要はない。上記の200 以上980℃の温度での乾燥は、具体的にはロ タリーキルン、トンネルキルン、電気炉な を用いて、処理する脱硫剤の流量、空気流 、系の温度、圧力などの操作条件を適宜調 して行うことができる。

 本発明の脱硫方法は、上記の脱硫剤と炭 水素油とを接触させるものであり、オクタ 、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン どのパラフィン系の炭化水素、ベンゼン、 ルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリ チルベンゼンなどの芳香族系炭化水素、さ に灯油や軽油などの脱硫に用いることがで る。燃料電池などの水素源として炭化水素 を用いる場合、炭化水素油に含まれる硫黄 、水素製造過程で改質触媒の触媒毒である ら厳しく除去する必要がある。本発明の脱 方法は、硫黄化合物を極めて微量濃度まで 減することができるので、灯油又は軽油を ンボード改質燃料として燃料電池自動車に 用する場合、特に好ましく用いることがで る。したがって、本発明の脱硫方法は、燃 電池システムに組み込むことにより、水素 造用の改質触媒を被毒することなく水素を 造して燃料電池に供給することができる。 発明の脱硫方法を組み込んだ燃料電池シス ムは、定置式であっても良いし、可動式(例 えば、燃料電池自動車など)であってもよい

 本発明の脱硫方法は、チオフェン類、ベ ゾチオフェン類及びジベンゾチオフェン類 除去に顕著な効果を有することから、その の硫黄化合物の含有量が少ない炭化水素油 なかでも灯油や軽油がより好ましく使用で る。

 灯油は、炭素数12~16程度の炭化水素を主体 し、密度(15℃)0.790~0.850g/cm 3 、沸点範囲150~320℃程度の油である。パラフ ン系炭化水素を多く含むが、芳香族系炭化 素を0~30容量%程度含み、多環芳香族も0~5容量 %程度含む。一般的には、灯火用及び暖房用 ちゅう(厨)房用燃料として日本工業規格JIS K 2203に規定される1号灯油である。品質として 引火点40℃以上、95%留出温度270℃以下、硫 分0.008質量%以下、煙点23mm以上(寒候用のもの は21mm以上)、銅板腐食(50℃、3時間)1以下、色( セーボルト)+25以上の規定がある。通常、硫 分は数ppmから80ppm以下、窒素分は数ppmから10p pm程度含む。

 軽油は、炭素数16~20程度の炭化水素を主体 し、密度(15℃)0.820~0.880g/cm 3 、沸点範囲140~390℃程度の油である。パラフ ン系炭化水素を多く含むが、芳香族系炭化 素も10~30容量%程度含み、多環芳香族も1~10容 %程度含む。硫黄分は数ppmから100ppm以下、窒 素分は数ppmから数10ppm程度含む。

 脱硫剤と炭化水素油とを接触させる方法 、回分式(バッチ式)でも流通式でも良いが 調製された脱硫剤を容器(反応器)に充填して 炭化水素油を流通する流通式がより好ましい 。

 流通式の場合、接触させる条件としては、 力は、常圧~1.0MPaG、特には常圧~0.1MPaGが好ま しい。脱硫中にガスが発生することは無いの で圧力を高くする必要は無く、均一な流れと なる圧力であれば十分である。
 流れの方向は、下から上(アップフロー)が 流れを均一にできるので好ましい。
 流量は、LHSVで0.001~10hr -1 、特には0.01~1hr -1 が好ましい。見掛けの線速度(炭化水素油の 量を脱硫剤層の断面積で割った値)は、0.001~1 0cm/分、更には0.005~1cm/分、特には0.01~0.1cm/分 好ましい。見掛けの線速度が大きいと、吸 速度(液相から固相への移動速度)に比べて液 相自体の移動速度が大きくなり、液相が吸着 層出口に到達するまでに硫黄分が除去しきれ ず、除去されない硫黄分を含有したまま出口 から流出される問題が生じやすくなる。逆に 見掛けの線速度が小さいと、同一流量であれ ば吸着剤層の断面積が大きくなることから、 液体の分散状態が不良となり、吸着剤層の流 れ方向と直角な断面を通過する炭化水素油の 流速(流量)にムラが生じ、吸着剤層の断面に いて吸着した硫黄分に分布が生じるため、 硫剤への負荷が不均一になり、やはり十分 率的に脱硫することができない。

 脱硫処理を行う温度は、常温付近が好ま く-20~120℃、特には-10~100℃、更には0~60℃が ましい。120℃を超えると物理吸着性能が低 することから、主にルイス酸点への物理吸 により除去するジベンゾチオフェン類に対 て十分な脱硫性能が得られない。一方、-20 未満では反応活性(化学吸着性能)が低下す ことから、特にチオフェン類やベンゾチオ ェン類の脱硫性能が低下してしまう。

 炭化水素油中の水分やアルコールなどの 酸素化合物が脱硫性能を低下させる場合も るので、脱硫剤と接触させる前に、モレキ ラーシーブなどの脱水剤により、炭化水素 をあらかじめ脱水処理することがより好ま い。

 チオフェン類は、1個以上の硫黄原子を異原 子として含む複素環式化合物のうち、複素環 が五原子環又は六原子環で且つ芳香性をもち (複素環に二重結合を2個以上有し)、さらに複 素環がベンゼン環と縮合していない硫黄化合 物及びその誘導体である。複素環同士が縮合 した化合物も含む。チオフェンは、チオフラ ンとも呼ばれ、分子式C 4 H 4 Sで表わせる、分子量84.1の硫黄化合物である その他の代表的なチオフェン類として、メ ルチオフェン(チオトレン、分子式C 5 H 6 S、分子量98.2)、チアピラン(ペンチオフェン 分子式C 5 H 6 S、分子量98.2)、チオフテン(分子式C 6 H 4 S 2 、分子量140)、テトラフェニルチオフェン(チ ネサル、分子式C 20 H 20 S、分子量388)、ジチエニルメタン(分子式C 9 H 8 S 2 、分子量180)及びこれらの誘導体が挙げられ 。

 ベンゾチオフェン類は、1個以上の硫黄原子 を異原子として含む複素環式化合物のうち複 素環が五原子環又は六原子環で且つ芳香性を もち(複素環に二重結合を2個以上有し)、さら に複素環が1個のベンゼン環と縮合している 黄化合物及びその誘導体である。ベンゾチ フェンは、チオナフテン、チオクマロンと 呼ばれ、分子式C 8 H 6 Sで表わせる、分子量134の硫黄化合物である その他の代表的なベンゾチオフェン類とし 、メチルベンゾチオフェン、ジメチルベン チオフェン、トリメチルベンゾチオフェン テトラメチルベンゾチオフェン、ペンタメ ルベンゾチオフェン、ヘキサメチルベンゾ オフェン、メチルエチルベンゾチオフェン ジメチルエチルベンゾチオフェン、トリメ ルエチルベンゾチオフェン、テトラメチル チルベンゾチオフェン、ペンタメチルエチ ベンゾチオフェン、メチルジエチルベンゾ オフェン、ジメチルジエチルベンゾチオフ ン、トリメチルジエチルベンゾチオフェン テトラメチルジエチルベンゾチオフェン、 チルプロピルベンゾチオフェン、ジメチル ロピルベンゾチオフェン、トリメチルプロ ルベンゾチオフェン、テトラメチルプロピ ベンゾチオフェン、ペンタメチルプロピル ンゾチオフェン、メチルエチルプロピルベ ゾチオフェン、ジメチルエチルプロピルベ ゾチオフェン、トリメチルエチルプロピル ンゾチオフェン、テトラメチルエチルプロ ルベンゾチオフェンなどのアルキルベンゾ オフェン、チアクロメン(ベンゾチア-γ-ピラ ン、分子式C 9 H 8 S、分子量148)、ジチアナフタリン(分子式C 8 H 6 S 2 、分子量166)及びこれらの誘導体が挙げられ 。

 ジベンゾチオフェン類は、1個以上の硫黄原 子を異原子として含む複素環式化合物のうち 、複素環が五原子環又は六原子環で且つ芳香 性をもち(複素環に二重結合を2個以上有し)、 さらに複素環が2個のベンゼン環と縮合して る硫黄化合物及びその誘導体である。ジベ ゾチオフェンはジフェニレンスルフィド、 フェニレンスルフィド、硫化ジフェニレン も呼ばれ、分子式C 12 H 8 Sで表わせる、分子量184の硫黄化合物である 4-メチルジベンゾチオフェンや4,6-ジメチル ベンゾチオフェンは、水素化精製における 脱硫化合物として良く知られている。その の代表的なジベンゾチオフェン類として、 リメチルジベンゾチオフェン、テトラメチ ジベンゾチオフェン、ペンタメチルジベン チオフェン、ヘキサメチルジベンゾチオフ ン、ヘプタメチルジベンゾチオフェン、オ タメチルジベンゾチオフェン、メチルエチ ジベンゾチオフェン、ジメチルエチルジベ ゾチオフェン、トリメチルエチルジベンゾ オフェン、テトラメチルエチルジベンゾチ フェン、ペンタメチルエチルジベンゾチオ ェン、ヘキサメチルエチルジベンゾチオフ ン、ヘプタメチルエチルジベンゾチオフェ 、メチルジエチルジベンゾチオフェン、ジ チルジエチルジベンゾチオフェン、トリメ ルジエチルジベンゾチオフェン、テトラメ ルジエチルジベンゾチオフェン、ペンタメ ルジエチルジベンゾチオフェン、ヘキサメ ルジエチルジベンゾチオフェン、ヘプタメ ルジエチルジベンゾチオフェン、メチルプ ピルジベンゾチオフェン、ジメチルプロピ ジベンゾチオフェン、トリメチルプロピル ベンゾチオフェン、テトラメチルプロピル ベンゾチオフェン、ペンタメチルプロピル ベンゾチオフェン、ヘキサメチルプロピル ベンゾチオフェン、ヘプタメチルプロピル ベンゾチオフェン、メチルエチルプロピル ベンゾチオフェン、ジメチルエチルプロピ ジベンゾチオフェン、トリメチルエチルプ ピルジベンゾチオフェン、テトラメチルエ ルプロピルジベンゾチオフェン、ペンタメ ルエチルプロピルジベンゾチオフェン、ヘ サメチルエチルプロピルジベンゾチオフェ などのアルキルジベンゾチオフェン、チア トレン(ジフェニレンジスルフィド、分子式C 12 H 8 S 2 、分子量216)、チオキサンテン(ジベンゾチオ ラン、ジフェニルメタンスルフィド、分子 C 13 H 10 S、分子量198)及びこれらの誘導体が挙げられ 。

 灯油や軽油に含まれる主な硫黄化合物は ベンゾチオフェン類及びジベンゾチオフェ であるが、チオフェン類、メルカプタン類( チオール類)、スルフィド類、ジスルフィド 、二硫化炭素などを含む場合もある。これ の硫黄化合物の定性及び定量分析には、ガ クロマトグラフ(Gas Chromatograph:GC)-炎光光度 出器(Flame Photometric Detector:FPD)、GC-原子発光 出器(Atomic Emission Detector:AED)、GC-硫黄化学 光検出器(Sulfur Chemiluminescence Detector:SCD)、GC- 誘導結合プラズマ質量分析装置(Inductively Coup led Plasma Mass Spectrometer:ICP-MS)などを用いるこ とができるが、質量ppbレベルの分析にはGC-ICP -MSが最も好ましい(特開2006-145219号公報参照)

 チオフェン類とベンゾチオフェン類は硫 原子を異原子として含む複素環の反応性が く、固体酸存在下で、複素環の解裂や複素 と芳香環との反応、或いは、分解が容易に こる。ジベンゾチオフェン類はチオフェン の両側にベンゼン環が結合していることか 、チオフェン類やベンゾチオフェン類に比 て反応性が低い。従来の固体酸、例えば、 酸根ジルコニアやタングステン酸ジルコニ では、ジベンゾチオフェン類の脱硫性能が かった。本発明に用いる脱硫剤は、高い比 面積、大きな細孔容積、及びルイス酸点に り、ジベンゾチオフェン類に対しても高い 硫性能を有する。

 以下本発明を実施例によりさらに具体的 説明するが、本発明はそれに限定されるも ではない。

〔脱硫剤の調製〕
 アルミナ原料(押出し成形品)として次の2種 のγ-アルミナを用いた。
アルミナA(断面四つ葉の柱状、長径1.3mm、平 長さ約5mm、比表面積241m 2 /g、細孔容積0.72ml/g)、
アルミナB(断面四つ葉の柱状、長径1.3mm、平 長さ約5mm、比表面積302m 2 /g、細孔容積0.72ml/g)、
アルミナC(断面円形の柱状、長径0.8mm、平均 さ約3mm、比表面積289m 2 /g、細孔容積0.71ml/g)
 各アルミナは、γ-アルミナ粉末を3.5%硝酸水 溶液と混練し、押し出し成形した後、130℃で 一晩乾燥した。
 アルミナはそれぞれ表1に記した「含浸硫酸 水溶液濃度」の硫酸水溶液を用いて硫酸根を 含浸させ、乾燥させた後、表1に記した焼成 度で焼成して固体酸を調製し、得られた固 酸を脱硫剤1~13として脱硫実験に使用し評価 た。

 硫酸根を担持する場合には、硫酸根の付着 ラを防ぐためにアルミナの吸水率を測定し それに相当する量の硫酸水溶液を含浸した すなわち、乾燥アルミナの質量W1を測定し イオン交換水を十分に含浸した後、遠心分 器で十分に脱水し、含水アルミナの質量W2を 測定した。次の式(1)により乾燥アルミナに対 する吸水率[質量%]を算出した。
 吸水率[質量%]=100×(W2-W1)/W1     (1)
 それぞれのアルミナに吸水率に相当する量 硫酸水溶液をスプレイ法で含浸させ、次い 、ロータリーキルンを用いて、空気流速17m/ 秒で、表1に示す焼成温度(400~900℃)まで1時間 昇温し、所定の焼成温度に達したらその温 で1時間保持して焼成した後、デシケーター 内で室温まで放冷した。

 なお、表1において、含浸硫酸水溶液濃度が 「なし」の脱硫剤は、硫酸の含浸処理をしな いことを示し、同様に焼成温度が「なし」の 脱硫剤は、焼成を行わず、130℃の乾燥のみで あることを示す。
 表1には脱硫剤の調製条件に加えて、得られ た脱硫剤の性状(比表面積、細孔容積、硫黄 有率、質量減少率など)も示した。
 室温から250℃から700℃までの質量減少率(A) 及び250℃から1000℃までの質量減少率(B)は、 熱質量測定(装置:セイコーインスツルメンツ TG/DTA6300R、リファレンス側:開放Ptパン5mmφ×2 .5mm、試料側:開放Ptパン5mmφ×2.5mm及び試料約15 mg、測定雰囲気:空気200ml/分、温度条件:50℃か ら1000℃まで10℃/分で昇温)により、250℃にお るサンプル質量W0と700℃(又は1000℃)でのサ プル質量Wから次の式(2)により質量減少率[質 量%]として算出した。
 質量減少率[質量%]=100×(W0-W)/W0     (2)
 そして、250℃から700℃までの質量減少率(A) 対する250℃から1000℃までの質量減少率(B)の 比(B/A)を求めて、質量減少率(A)と(B)と伴に比( B/A)を表1に示した。

 ルイス酸量とブレンステッド酸量の割合は ピリジン吸着フーリエ変換赤外分光光度分 (FT-IR)装置(Nicolet社製Avatar360)により分析した 。試料約0.0070gを10mmφのディスク状に成型し セルに固定して、500℃で1時間真空排気した 、30℃に冷却して真空下でリファレンスの 定を行い、100℃に昇温して5分間ピリジンを 着させた。150℃に昇温し、1時間真空排気を 行うことで物理吸着していたピリジンを除去 した後に、30℃に冷却して真空下でサンプル 測定を行い、得られたデータとリファレン データを用いてフーリエ変換により吸光度 示した。ルイス酸点に起因する吸光度のピ クは1450±5cm -1 に、ブレンステッド酸点に起因する吸光度の ピークは1540±5cm -1 に、ルイス酸とブレンステッド酸との両方に 起因する吸光度のピークは1490±5cm -1 に検出された。ルイス酸点に起因するピーク (1450±5cm -1 )のピーク高さをI 1450 、ブレンステッド酸点に起因するピーク(1540 5cm -1 )のピーク高さをI 1540 とし、ルイス酸量に対するブレンステッド酸 量の比I 1540 /I 1450 を表1に示した。

〔浸せき式脱硫実験〕
 上記のようにして調製した脱硫剤1~13を用い 、灯油への浸せき式脱硫実験(実施例1~11及び 較例1~2)を実施した。
 それぞれの脱硫剤に対する灯油の質量比率( 液固比)を4、30及び240として、灯油中に脱硫 を浸せきし、10℃にて7日間静置して十分に 着平衡状態とさせた後、灯油を取り出し、 の硫黄分を燃焼酸化-紫外蛍光法で分析した 浸せき前後の灯油の硫黄分の値から、次の (2)により吸着除去した硫黄分の割合を脱硫 [%]として算出した。
 脱硫率[%]=100×(S1-S2)/S1     (2)
 式中、S1及びS2は、それぞれ浸せき前及び浸 せき後の灯油の硫黄分を示す。

 灯油は、ジャパンエナジー社製の2種類の灯 油(灯油A及び灯油B)を用いた。灯油Aの物性は 沸点範囲157.0~270.0℃、密度(15℃)0.7984g/ml、芳 香族分18.0容量%、飽和分81.8容量%、オレフィ 分0.2容量%、硫黄分13.6質量ppm、軽質硫黄化合 物(ベンゾチオフェンよりも軽質の硫黄化合 )に由来する硫黄分0.02質量ppm、ベンゾチオフ ェン類(ベンゾチオフェン、及びベンゾチオ ェンよりも重質でありジベンゾチオフェン りも軽質の硫黄化合物)に由来する硫黄分9.1 量ppm、ジベンゾチオフェン類(ジベンゾチオ フェン、及びジベンゾチオフェンよりも重質 の硫黄化合物)に由来する硫黄分4.5質量ppm、 び窒素分0.5ppm以下であった。また、灯油Bは 沸点範囲146.5~278.0℃、密度(15℃)0.7944g/ml、芳 香族分17.8容量%、飽和分82.2容量%、オレフィ 分0.0容量%、硫黄分5.6質量ppm、軽質硫黄化合 (ベンゾチオフェンよりも軽質の硫黄化合物 )に由来する硫黄分0.03質量ppm、ベンゾチオフ ン類(ベンゾチオフェン、及びベンゾチオフ ェンよりも重質でありジベンゾチオフェンよ りも軽質の硫黄化合物)に由来する硫黄分2.8 量ppm、ジベンゾチオフェン類(ジベンゾチオ ェン、及びジベンゾチオフェンよりも重質 硫黄化合物)に由来する硫黄分2.8質量ppm、及 び窒素分0.5ppm以下であった。
 浸せき式脱硫実験の結果を表2に示す。表2 り、本発明の脱硫方法(実施例1~11)によれば 灯油の種類に関係なく、極めて高い脱硫率 得られることが分かる。

〔流通式脱硫実験〕
 脱硫剤13を35g秤量し、長さ600mm、内容積54ml カラムに充填した。25℃で、灯油Bを0.1ml/分 流して流通式脱硫実験を実施した(実施例12) カラムから流出した脱硫済みの灯油を上記 実験と同様に燃焼酸化-紫外蛍光法で硫黄分 を分析した。その結果、脱硫灯油の硫黄分は カラムから灯油の流出開始から40時間にわた 定量下限(20質量ppb)以下であり、本発明の脱 硫方法は、流通式脱硫においても極めて高い 脱硫率を示すことが認められた。

〔試験方法〕
 上記で特に説明をしていない、脱硫剤と灯 の物性等の測定は、次の試験方法に準じて った。
・蒸留性状:JIS K2254に準拠して測定した。
・密度(15℃):JIS K2249に準拠して測定した。
・炭化水素の成分組成(芳香族分、飽和分、 レフィン分):英国石油協会(The Institute of Pet roleum)規格IP標準法391/95(屈折率検出器を用い 高速液体クロマトグラフによる中間留出物 芳香族炭化水素の分析)に準拠して測定した
・硫黄分(全硫黄分):燃焼酸化-紫外蛍光法で 析した。
・硫黄化合物タイプ分析(ベンゾチオフェン り軽質な留分中の硫黄分、ベンゾチオフェ 類、ジベンゾチオフェン類、):GC-ICP-MSで分析 した。
・窒素分:JIS K2609に記載の微量電量滴定法に 拠して測定した。

・アルミナ含有量:試料をアルカリ融解した のを酸性溶液中に溶解し、ICP-AES(誘導結合プ ラズマ発光分析装置)で分析した。
・アルミナの種類:X 線回折で分析した。
・硫黄含有量:燃焼酸化して、二酸化硫黄の 外線吸収強度を測定することで分析した。
・比表面積:窒素吸着法により測定し、BET(Brun ouer-Emmett-Teller)法により算出した。
・細孔容積:窒素吸着法により測定した。

 本発明は、特定の固体酸を含む脱硫剤を いることから、灯油や軽油などの炭化水素 を、水素非存在下、100℃以下の低い温度で 効率よく経済的に脱硫できる。従って、本 明の方法は灯油や軽油に含まれる硫黄化合 を極めて微量濃度まで低減することに有用 あり、脱硫された炭化水素油は燃料電池の 燃料として好適に用いることができる。ま 、本発明の脱硫方法を燃料電池システムに み込むことによって、起動やメンテナンス 比較的容易で、かつコンパクトな燃料電池 ステムを提供することできる。