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Patent Searching and Data


Title:
METHOD FOR MEASUREMENT OF CONCENTRATION OF ANTIGEN
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/016839
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a detection method which can detect an antigen in a simpler, more efficient and more stable manner and with higher sensitivity even when the antigen has a low molecular weight. The detection of an antigen is carried out by using a fusion protein. The fusion protein comprises the following polypeptides and proteins in this order or in inverse order to this order: a polypeptide containing a VH region of an antibody; a specific protein; a linker peptide; a partner protein which is capable of binding to the protein and whose binding to the protein can be detected; and a polypeptide containing a VL region of the antibody. The fusion protein is so constructed that the binding between the antigen and the polypeptide containing the VH region and the polypeptide containing the VL region induces the binding between the protein and the partner protein.

Inventors:
UEDA HIROSHI (JP)
KOJIMA MIKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/002049
Publication Date:
February 05, 2009
Filing Date:
July 30, 2008
Export Citation:
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Assignee:
JAPAN SCIENCE & TECH AGENCY (JP)
UEDA HIROSHI (JP)
KOJIMA MIKI (JP)
International Classes:
C12N15/09; C07K16/00; C07K19/00; C12N1/15; C12N1/19; C12N1/21; C12N5/10; C12N9/86; G01N21/78; G01N33/53
Foreign References:
JP2000191698A2000-07-11
JP2006523088A2006-10-12
US7160691B22007-01-09
Other References:
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KOJIMA M. ET AL.: "Kotai Koso Yugo Tanpaku o Mochiita Kankyo Osen Busshitsu Shijikin no Sosei", ABSTRACTS OF THE ANNUAL MEETING OF THE SOCIETY FOR BIOTECHNOLOGY, JAPAN, vol. 59TH, 2 August 2007 (2007-08-02), pages 89
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Attorney, Agent or Firm:
HIROTA, Masanori (8-5 Akasaka 2-chom, Minato-ku Tokyo 52, JP)
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Claims:
抗体のV H 領域を含むポリペプチド;所定のタンパク質;リンカーペプチド:前記タンパク質と結合する活性を有し、前記タンパク質との結合の有無が検出可能であるパートナータンパク質;及び、前記抗体のV L 領域を含むポリペプチド;をこの順又はこの順の逆の順で含んでなり、かつ、前記V H 領域を含むポリペプチド及びV L 領域を含むポリペプチドの抗原に対する結合の有無により前記タンパク質と前記パートナータンパク質の結合の有無が生じる融合タンパク質。
所定のタンパク質とパートナータンパク質との組み合わせが、酵素タンパク質のN末端側フラグメントを含むタンパク質と前記酵素タンパク質のC末端側フラグメントを含むタンパク質との組み合わせであり、かつ、前記N末端側フラグメントを含むタンパク質と前記C末端側フラグメントを含むタンパク質との結合の有無を、前記酵素タンパク質の所定の酵素活性の変化により検出可能であることを特徴とする請求項1に記載の融合タンパク質。
酵素タンパク質が、βラクタマーゼであることを特徴とする請求項2に記載の融合タンパク質。
βラクタマーゼのN末端側フラグメントを含むタンパク質が、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、βラクタマーゼのC末端側フラグメントを含むタンパク質が、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質であることを特徴とする請求項3に記載の融合タンパク質。
リンカーペプチドが、Asp-Lys-Serからなるアミノ酸配列であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の融合タンパク質。
所定のタンパク質;リンカーペプチド:パートナータンパク質の配列が、配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の融合タンパク質。
請求項1~6のいずれかに記載の融合タンパク質をコードするDNA。
請求項7に記載のDNAを有する組換えベクター。
請求項8に記載の組換えベクターで形質転換された形質転換細胞。
サンプル中の抗原を検出する方法であって、V H 領域を含むポリペプチド及びV L 領域を含むポリペプチドが前記抗原に結合し得る請求項1~6のいずれかに記載の融合タンパク質又は請求項9に記載の形質転換細胞をサンプルに接触させる工程、及び、前記融合タンパク質又は前記形質転換細胞が発現する融合タンパク質における所定のタンパク質とパートナータンパク質の結合を検出する工程を有することを特徴とする抗原の検出方法。
所定のタンパク質とパートナータンパク質が、互いに結合していない場合に比べて互いに結合すると所定のタンパク質及び/又はパートナータンパク質が発揮する所定の酵素活性が変化するタンパク質である請求項1~6のいずれかに記載の融合タンパク質又は請求項9に記載の形質転換細胞;及び、前記酵素活性の変化を検出し得る発色基質又は発光基質;を備えたことを特徴とする抗原の検出用キット。
Description:
抗原濃度測定法

 本発明は、抗体酵素融合タンパク質、及 、該抗体酵素融合タンパク質を用いた抗原 検出方法に関する。

 抗体を用いた免疫測定法として、酵素標 固相免疫測定法(ELISA)等が広く用いられてい る。しかし、抗原が低分子である場合は、第 一に抗体の抗原結合部位(パラトープ)と抗原 の界面積が小さくなるため、第二に抗原が さすぎて感度の良いサンドイッチ法が適用 きず競合法によって測定せざるを得ないた 、ELISA法等は低分子抗原に対しては感度が 下するという問題があった。そのため、低 子抗原についても非競合的に高感度で測定 得る方法が開発されている。

 例えば、非特許文献1には、低分子である4-h ydroxy-3-nitrophencetyl(NP)を高感度で検出する方法 であって、NPに結合するB1-8抗体のV H 領域ポリペプチド及び大腸菌βガラクトシダ ゼのαフラグメントからなる融合タンパク (V H 領域ポリペプチドはαフラグメントのN末端側 に結合)と、前記抗体のV L 領域ポリペプチド及び大腸菌βガラクトシダ ゼのωフラグメントからなる融合タンパク (V L 領域ポリペプチドはωフラグメントのN末端側 に結合)とを用いた方法が開示されている。 の方法は、一方の融合タンパク質におけるV H 領域ポリペプチドと、他方の融合タンパク質 におけるV L 領域ポリペプチドが、NP抗原を介して相互作 すると、両融合タンパク質におけるαフラ メントとωフラグメントが結合し、その結果 生じるβガラクトシダーゼ活性の上昇(いわゆ る活性相補)を検出することによって、NP抗原 の検出を行う。この方法により、低分子抗原 についても、従来のELISA法に比べて高感度で 定することが可能となった。また、この方 は、通常のELISA法とは異なり、結合しなか た標識2次抗体(非競合法)や標識抗原(競合法) などを洗浄する操作を要することなく測定し 得る測定法(ホモジニアス法)であり、測定装 の自動化が容易で迅速な測定が可能という で、通常のELISA法に比べてメリットがあっ 。しかし、この方法により高感度で測定す には、用いる両融合タンパク質の濃度設定 ある程度正確に行う必要があるなど、検出 簡便性、効率性、安定性などに関して改善 余地があった。

Anal. Chem., 74, 2500-2504 (2002)

 本発明は、上記背景技術を改善したもの 、検出対象である抗原が低分子抗原であっ も、より簡便、効率的、安定性良くかつ高 度で検出し得る検出方法を提供することを 的としている。

 本発明者らは、V H 領域ポリペプチドと酵素タンパク質の一部を 含む融合タンパク質と、V L 領域ポリペプチドと上記酵素タンパク質の残 部を含む融合タンパク質をリンカーペプチド で結合することによって、非特許文献1の方 の不十分な点を顕著に改善し得ることを見 だした。すなわち、本発明者らは、イミダ ロプリド(ICP)を認識する抗体のV H 領域ポリペプチド、βラクタマーゼ(BLA)の一 のポリペプチド、リンカーペプチド、前記BL Aの別の一部のポリペプチド、及び、前記抗 のV L 領域ポリペプチドをこの順で含んでなる融合 タンパク質を発現させた大腸菌と、非常に低 濃度のICP抗原とを接触させたところ、該大腸 菌内のBLA活性がICP抗原の濃度依存的に、かつ 、リンカーペプチドを持たない分子に比べて 著しく感度良く上昇することを見いだし、本 発明を完成するに至った。

 すなわち具体的には本発明は(1)抗体のV H 領域を含むポリペプチド;所定のタンパク質; ンカーペプチド:前記タンパク質と結合する 活性を有し、前記タンパク質との結合の有無 が検出可能であるパートナータンパク質;及 、前記抗体のV L 領域を含むポリペプチド;をこの順又はこの の逆の順で含んでなり、かつ、前記V H 領域を含むポリペプチド及びV L 領域を含むポリペプチドの抗原に対する結合 の有無により前記タンパク質と前記パートナ ータンパク質の結合の有無が生じる融合タン パク質や、(2)所定のタンパク質とパートナー タンパク質との組み合わせが、酵素タンパク 質のN末端側フラグメントを含むタンパク質 前記酵素タンパク質のC末端側フラグメント 含むタンパク質との組み合わせであり、か 、前記N末端側フラグメントを含むタンパク 質と前記C末端側フラグメントを含むタンパ 質との結合の有無を、前記酵素タンパク質 所定の酵素活性の変化により検出可能であ ことを特徴とする前記(1)に記載の融合タン ク質や、(3)酵素タンパク質が、βラクタマー ゼであることを特徴とする前記(2)に記載の融 合タンパク質や、(4)βラクタマーゼのN末端側 フラグメントを含むタンパク質が、配列番号 5に示されるアミノ酸配列からなるタンパク であり、βラクタマーゼのC末端側フラグメ トを含むタンパク質が、配列番号7に示され アミノ酸配列からなるタンパク質であるこ を特徴とする前記(3)に記載の融合タンパク や、(5)リンカーペプチドが、Asp-Lys-Serから るアミノ酸配列であることを特徴とする前 (1)~(4)のいずれかに記載の融合タンパク質や (6)所定のタンパク質;リンカーペプチド:パ トナータンパク質の配列が、配列番号13に示 されるアミノ酸配列からなるタンパク質であ ることを特徴とする前記(1)~(5)のいずれかに 載の融合タンパク質や、(7)前記(1)~(6)のいず かに記載の融合タンパク質をコードするDNA 、(8)前記(7)に記載のDNAを有する組換えベク ーや、(9)前記(8)に記載の組換えベクターで 質転換された形質転換細胞や、(10)サンプル 中の抗原を検出する方法であって、V H 領域を含むポリペプチド及びV L 領域を含むポリペプチドが前記抗原に結合し 得る前記(1)~(6)のいずれかに記載の融合タン ク質又は前記(9)に記載の形質転換細胞をサ プルに接触させる工程、及び、前記融合タ パク質又は前記形質転換細胞が発現する融 タンパク質における所定のタンパク質とパ トナータンパク質の結合を検出する工程を することを特徴とする抗原の検出方法や、(1 1)所定のタンパク質とパートナータンパク質 、互いに結合していない場合に比べて互い 結合すると所定のタンパク質及び/又はパー トナータンパク質が発揮する所定の酵素活性 が変化するタンパク質である前記(1)~(6)のい れかに記載の融合タンパク質又は前記(9)に 載の形質転換細胞;及び、前記酵素活性の変 を検出し得る発色基質又は発光基質;を備え たことを特徴とする抗原の検出用キットに関 する。なお、本明細書中の配列は、5’側か 3’側にかけて記載している。

V H 領域ポリペプチド及びV L 領域ポリペプチドの抗原に対する結合の有無 による本発明の融合タンパク質の構造変化の 模式図を示す。 本発明の抗体-円順列変異体BLA混成タン パク質発現ベクターのコンストラクト、及び 、該ベクターの調製に用いたコンストラクト を示す図である。 抗体-リンカー欠如円順列変異体BLA混成 タンパク質発現ベクターのコンストラクトを 示す図である。 抗体-リンカー欠如円順列変異体BLA混成 タンパク質発現ベクターの調製に用いたコン ストラクト、及び、該コンストラクトの調製 方法の概要を示す図である。 円順列変異体BLA混成タンパク質発現ベ ターのコンストラクトを示す図である。 ICPの存在下又は非存在下での大腸菌の 育を示す図である。 アンピシリン存在下若しくは非存在下、及び 、ICPやTCPの存在下又は非存在下でのV H -cpBLA-V L /pET26/BL21株の生育を示す図である。 アンピシリン存在下若しくは非存在下、及び 、ICPやTCPの存在下又は非存在下でのV H -split・cpBLA-V L /pET26/C43株の生育を示す図である。 抗原(TCP若しくはICP)存在下又は非存在下で培 したV H -cpBLA-V L /pET26/BL21株の菌体を用いたウェスタンブロッ の結果を示す図である。 V H -cpBLA-V L /pET26/BL21株から部分精製したタンパク質のSDS- PAGEの結果を示す図である。 精製抗体酵素混成タンパク質(V H -cpBLA-V L )のICP結合活性を示す図である。 Nitrocefinを基質とした、精製抗体酵素混成タ パク質(V H -cpBLA-V L )のICP/TCP添加による活性変化を示す図である Fluorocillinを基質とした、精製抗体酵素混成タ ンパク質(V H -cpBLA-V L )のICP/TCP添加による活性変化を示す図である Fluorocillinを基質とした、精製抗体酵素混成タ ンパク質(V H -cpBLA-V L (219))のBGP-C7ペプチド添加による活性変化を示 す図である。 Fluorocillinを基質とした、精製抗体酵素混成タ ンパク質(V H -cpBLA-V L (219))の各種BGPペプチド/ICP/TCP添加による活性 化を示す図である。

 本発明の融合タンパク質としては、抗体のV H 領域を含むポリペプチド;所定のタンパク質; ンカーペプチド:前記タンパク質と結合する 活性を有し、前記タンパク質との結合の有無 が検出可能であるパートナータンパク質;及 、前記抗体のV L 領域を含むポリペプチド;をこの順又はこの の逆の順で含んでなり、かつ、前記V H 領域を含むポリペプチド及びV L 領域を含むポリペプチドの抗原に対する結合 の有無により前記タンパク質と前記パートナ ータンパク質の結合の有無が生じる融合タン パク質であれば特に制限されない。なお、V H 領域を含むポリペプチド及びV L 領域を含むポリペプチドの抗原に対する結合 の有無による本発明の融合タンパク質の構造 変化の模式図を図1に示す。

 本発明の融合タンパク質に用いるV H 領域を含むポリペプチド(以下、「V H 領域ポリペプチド」ともいう。)やV L 領域を含むポリペプチド(以下、「V L 領域ポリペプチド」ともいう。)としては、 定の抗原に特異的に結合する抗体のV H 領域ポリペプチドやV L 領域ポリペプチドであり、かつ、本発明の融 合タンパク質において用いた場合に、V H 領域ポリペプチド及びV L 領域ポリペプチドの抗原に対する結合の有無 により、所定のタンパク質とそのパートナー タンパク質の結合の有無が生じるものであれ ば特に制限されず、例えば4-hydroxy-3-nitrophencet yl(NP)に結合するB1-8抗体のV H 領域ポリペプチド(アミノ酸配列:配列番号1;  塩基配列:配列番号2)やV L 領域ポリペプチド(アミノ酸配列:配列番号3;  塩基配列:配列番号4)、リゾチームに結合する HyHEL-10のV H 領域ポリペプチドやV L 領域ポリペプチド(Nat. Biotechnol., 14, 1714-1718 (1996); J.Immunol. Methods, 224, 171-184 (1999))、イ ミダクロプリド(ICP)に結合する抗体(33C3-1-1:FER M P-17094で寄託されたハイブリドーマから産 されるモノクローナル抗体:特開2000-191698号 報)のV H 領域ポリペプチドやV L 領域ポリペプチド、オステオカルシンC末ペ チドに結合する抗体KTM219のV H 領域ポリペプチドやV L 領域ポリペプチド(Anal. Chem. 79, 6197 (2007))を 好ましく例示することができる。
 なお、本発明の融合タンパク質に用いるV H 領域ポリペプチドやV L 領域ポリペプチドとしては、V H 領域からなるポリペプチドやV L 領域からなるポリペプチドを好ましく例示す ることができ、また、所定の抗原に特異的に 結合する限り、V H 領域の一部に変異や挿入、欠失を導入したポ リペプチドやV L 領域の一部に変異や挿入、欠失を導入したポ リペプチドも用いることができる。該変異、 挿入、欠失としては特に制限されないが、好 ましくは10アミノ酸以下、より好ましくは5ア ミノ酸以下、さらに好ましくは3アミノ酸以 、さらにより好ましくは1アミノ酸以下の変 、挿入又は欠失である。

 本発明の融合タンパク質に用いるV H 領域ポリペプチドやV L 領域ポリペプチドの調製方法としては特に制 限されず、配列公知の抗体から調製してもよ いし、また、慣用のプロトコール(例えば特 2006-523088号公報参照)を用いて、目的抗原に する抗体を作製し、さらに、その抗体のV H 領域ポリペプチドやV L 領域ポリペプチドをコードするDNA配列をクロ ーニングするなどして、本発明の融合タンパ ク質に用いるポリペプチドやそれをコードす るDNA配列を入手し、該DNA配列を適当な細胞で 発現させるなどして調製してもよい。このよ うな方法に従えば、検出対象とする所望の抗 原に特異的に結合し得るV H 領域ポリペプチドやV L 領域ポリペプチドをコードするDNA配列を容易 に入手することができる。例えば、前述の特 表2006-523088号公報には、ヒトIL-8に特異的に結 合する抗体や、そのV H 領域及びV L 領域の配列が記載されている。なお、調製し たV H 領域ポリペプチドやV L 領域ポリペプチドが本発明の融合タンパク質 に好適に用い得るかどうかは、後述の実施例 記載のアッセイを行うことなどにより、容易 に確認することができる。

 本発明の融合タンパク質に用いる所定のタ パク質やそのパートナータンパク質(以下、 併せて「両タンパク質」ともいう。)として 、パートナータンパク質が前記タンパク質 結合する活性を有し、前記タンパク質との 合の有無が検出可能であり、かつ、本発明 融合タンパク質におけるV H 領域ポリペプチド及びV L 領域ポリペプチドの抗原に対する結合の有無 により前記タンパク質と前記パートナータン パク質の結合の有無が生じるものであれば特 に制限されないが、両タンパク質が結合する と、両タンパク質が結合していない場合に比 べて、所定のタンパク質及び/又はパートナ タンパク質が発揮する所定の酵素活性が変 (上昇、低下、発現又は消滅)する組み合わせ (特に、その酵素活性の変化を発色基質や蛍 基質で視覚的に検出できる組み合わせ)等の 両タンパク質の結合の有無を簡便に検出し る組み合わせを好ましく例示することがで 、中でも、酵素タンパク質の一部を含むタ パク質と、前記酵素タンパク質の残部を含 タンパク質であって、両タンパク質が結合 るとその酵素の酵素活性が変化(特に上昇又 は発現)する組み合わせをより好ましく例示 ることができ、特定の酵素のN末端側のフラ メントを含むタンパク質とC末端側のフラグ メントを含むタンパク質であって、両タンパ ク質が結合するとその酵素の酵素活性が変化 (特に上昇又は発現)する組み合わせをさらに ましく例示することができ、大腸菌由来の ガラクトシダーゼのαフラグメントとそのω ラグメントの組み合わせや、大腸菌由来の ラクタマーゼ(BLA)の24位~170位のアミノ酸配列 からなるタンパク質(アミノ酸配列:配列番号5 ; 塩基配列:配列番号6)とその168位~286位のア ノ酸配列からなるタンパク質(アミノ酸配列: 配列番号7; 塩基配列:配列番号8)をよりさら 好ましく例示することができる。なお、上 本発明における所定のタンパク質とパート ータンパク質は便宜上名称を区別している けであり、例えば、上記BLAの24位~170位のア ノ酸配列からなるタンパク質を所定のタン ク質とし、そのBLAの168位~286位のアミノ酸配 からなるタンパク質をパートナータンパク としてもよいし、上記BLAの168位~286位のアミ ノ酸配列からなるタンパク質を所定のタンパ ク質とし、そのBLAの24位~170位のアミノ酸配列 からなるタンパク質をパートナータンパク質 としてもよい。

 本発明における上記両タンパク質が、大 菌由来のβガラクトシダーゼのαフラグメン トとそのωフラグメントの組み合わせの場合 、これらの両フラグメントが結合すると、 わゆる活性相補が生じ、βガラクトシダー 活性が上昇する。βガラクトシダーゼ活性の 上昇は、例えばGalacton-Plus(登録商標)(Applied Bi osystems社製)等の化学発光基質を添加すること により、高感度で検出することができる。ま た、大腸菌由来のβラクタマーゼ(BLA)の24位~17 0位のアミノ酸配列からなるタンパク質とそ 168位~286位のアミノ酸配列からなるタンパク の組み合わせの場合は、これらの両タンパ 質が結合すると、βラクタマーゼ活性が上 する。βラクタマーゼ活性の上昇は、例えば ニトロセフィン等の発色基質を添加したり(Na ture Biotechnol., 20, 619-622 (2002))、Fluorocillin Gr een495/525 beta lactamase substrate (Invitrogen社製) の蛍光基質を添加することにより、高感度 検出することができる。

 この他、本発明の両タンパク質として用 得ると考えられる組み合わせとして、ルシ ェラーゼのN末端側フラグメントとそのC末 側フラグメントであって、両フラグメント 結合するとルシフェラーゼ活性が回復する の(Anal. Chem., 75, 1584-1589 (2003))や、Cre酵素 59位までのフラグメントと60位以降のフラグ ントであって、両フラグメントが結合する Cre活性が回復するもの(Nucleic Acids Research,  31, e131 (2003))や、ジヒドロ葉酸レダクターゼ のN末端側フラグメントとC末端側フラグメン であって、両フラグメントが結合するとジ ドロ葉酸レダクターゼ活性が回復するもの( Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 12141-12146 (1998)) 、GFPのN末端側フラグメントとC末端側フラグ メントを入れ替えて、C末端側フラグメント C末端とN末端側フラグメントのN末端をイン ーション配列(リンカー配列)で連結したGFPの 円順列変異体(circular permutant)(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 11241-11246 (1999))等を例示するこ ができる。

 本発明の融合タンパク質に用いる両タンパ 質としては、上記以外にも、公知の任意の 素タンパク質等を用いることができる。特 の酵素の2つのフラグメントであって、両フ ラグメントが結合していないときはその酵素 活性を発現しないか又は酵素活性が弱く、両 フラグメントが結合すると酵素活性が発現す るか又は酵素活性が上昇する(活性相補する) ラグメントの組み合わせは、公知のprotein-fr agment complementation assays (Nature Biotechnol., 20, 619-622 (2002)やUSP 7, 160, 691)により容易に作 することができ、また、活性相補する両フ グメントがリンカー配列で連結されたもの ある円順列変異体(circular permutant)について 、上述の文献(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 1 1241-11246 (1999))等に基づいて容易に作製する とができる。
 なお、活性相補する両フラグメントは、一 に重複する配列を有していてもよい。

 本発明の融合タンパク質に用いるリンカ ペプチドとしては、本発明に用いる所定の ンパク質とそのパートナータンパク質を該 ンカーペプチドにて連結した場合に、前記 ンパク質とそのパートナータンパク質の結 や、その結合の有無の検出を妨げない限り に制限されないが、本発明の融合タンパク を用いた目的抗原の検出をより高感度で行 ためには、リンカーペプチドの長さを適宜 節することが好ましい。本発明に用いる所 のタンパク質とそのパートナータンパク質 して、大腸菌由来のβラクタマーゼ(BLA)の24 ~170位のアミノ酸配列からなるタンパク質(N 端側フラグメント)とその168位~286位のアミ 酸配列からなるタンパク質(C末端側フラグメ ント)の組み合わせを用いる場合は、そのリ カーペプチドとして、Asp-Lys-Ser(DKS)からなる ミノ酸配列(塩基配列:gacaagagc)を好適に例示 ることができる。リンカーペプチドの好ま いアミノ酸数は、リンカーペプチドのアミ 酸数を変化させた複数のサンプルについて 後述の実施例記載のアッセイを行うことな により、容易に調べることができる。

 本発明の融合タンパク質は、V H 領域ポリペプチド及びV L 領域ポリペプチドの抗原に対する結合や、所 定のタンパク質とそのパートナータンパク質 の結合や、所定のタンパク質とそのパートナ ータンパク質の結合の検出を妨げない限り、 抗体のV H 領域ポリペプチド;所定のタンパク質;リンカ ペプチド:前記タンパク質と結合する活性を 有し、前記タンパク質との結合の有無が検出 可能であるパートナータンパク質;及び、前 抗体のV L 領域ポリペプチド;以外にも、His-Tag等の精製 Tag配列などのポリペプチドを含んでいるこ が、容易に精製し得る点で好ましい。

 本発明の融合タンパク質をコードするDNAと ては、本発明の上記融合タンパク質をコー するDNAである限り特に制限されず、前述のV H 領域ポリペプチド、所定のタンパク質、リン カーペプチド、パートナータンパク質、V L 領域ポリペプチドのDNA配列を、慣用のプロト コールを用いて、この順で配置することによ り構築することができる。本発明の融合タン パク質をコードするDNAとして、具体的には、 V H -cpBLA-V L /pET26ベクターのNcoI-NotI断片を好適に例示する ことができる。

 本発明の組換えベクターとしては、上記の 発明の融合タンパク質をコードするDNAを含 、かつ本発明の融合タンパク質を発現する とができる組換えベクターであれば特に制 されないが、V H -cpBLA-V L /pET26ベクターを好適に例示することができる 。
 本発明の組換えベクターは、本発明のDNAを 現ベクターに適切にインテグレイトするこ により構築することができる。かかる発現 クターとしては、宿主細胞において自立複 可能であるものや、あるいは宿主細胞の染 体中へ組込み可能であるものが好ましく、 た、本発明の遺伝子を発現できる位置にプ モーター、エンハンサー、ターミネーター の制御配列を含有しているものを好適に使 することができる。

 上記発現ベクターのうち、細菌用の発現 クターとしては、例えば、pBTrP2、pBTac1、pBTa c2(いずれもロシュダイアグノスティクス社製 )、pKK233-2(GEヘルスケア社製)、pSE280(Invitrogen社 製)、pGEMEX-1(Promega社製)、pQE-8(QIAGEN社製)、pQE-3 0(QIAGEN社製)、pKYP10(特開昭58-110600)、pKYP200〔Agr c. Biol. Chem., 48, 669 (1984)〕、pLSA1〔Agrc. Blo1 . Chem., 53, 277 (1989)〕、pGEL1〔Proc. Natl. Acad.  Sci. USA, 82, 4306 (1985)〕、pTP5、pC194、pUC18〔 Gene, 33, 103(1985)〕、pUC19〔Gene, 33, 103 (1985) 、pSTV28(タカラバイオ社製)、pSTV29(タカラバ オ社製)、等を例示することができる。細菌 のプロモーターとしては、例えば、trpプロ ーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロ ーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等 の、大腸菌やファージ等に由来するプロモー ター、SP01プロモーター、SP02プロモーター、p enPプロモーター等を挙げることができる。

 本発明の形質転換細胞としては、上記本発 の組換えベクターが導入され、かつ上記本 明の融合タンパク質を発現する形質転換細 であれば特に制限されないが、本発明のV H -cpBLA-V L /pET26組変えベクターを大腸菌BL21(DE3,pLysS)株に 導入して得られるV H -cpBLA-V L /pET26/BL21株を好適に例示することができる。 記形質転換細胞を作製する際の、宿主細胞 の上記本発明の組換えベクターの導入方法 しては、Davisら(BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOG Y, 1986)及びSambrookら(MOLECULAR CLONING: A LABORATOR Y MANUAL, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Pre ss, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)などの多くの 準的な実験室マニュアルに記載される方法 例えば、リン酸カルシウムトランスフェク ョン、DEAE-デキストラン媒介トランスフェク ション、トランスベクション(transvection)、マ クロインジェクション、カチオン性脂質媒 トランスフェクション、エレクトロポレー ョン、形質導入等により行うことができる そして、宿主細胞としては、細菌、酵母、 物細胞等を例示することができるが、XL10-Go ld株やBL21株等の大腸菌、ストレプトミセス、 枯草菌、ストレプトコッカス、スタフィロコ ッカス等の細菌を好適に例示することができ 、大腸菌を特に好ましく例示することができ る。

 本発明の抗原の検出方法としては、サンプ 中の抗原を検出する方法であって、V H 領域ポリペプチド及びV L 領域ポリペプチドが前記抗原に結合し得る本 発明の融合タンパク質又は本発明の形質転換 細胞をサンプルに接触させる工程、及び、前 記融合タンパク質又は前記形質転換細胞が発 現する融合タンパク質における所定のタンパ ク質とパートナータンパク質の結合を検出す る工程を有する方法であれば特に制限されず 、また、抗原としては特に制限されないが、 抗原が分子量1000以下の低分子化合物等であ 場合に、特に本発明の抗原の検出方法のメ ットを享受し得る。上記低分子化合物とし は、イミダクロプリド等のネオニコチノイ 系農薬、ポリ塩化ビフェニル、ビスフェノ ルA等の環境汚染物質、マイコトキシン等の 性物質、オステオカルシンペプチド等の生 物質等を好適に例示することができる。本 明の抗原の検出方法は、これらの物質を抗 として検出し得るため、疾患の臨床診断、 品の毒性検査、環境分析等に有利に応用す ことができる。
 なお、本発明の抗原の検出方法では、通常 ELISA法とは異なり、本発明の融合タンパク 等とサンプルを接触した後の洗浄工程が不 であるため、抗原の検出を非常に簡便、迅 に行うことができる。

 上記の本発明の融合タンパク質又は形質転 細胞のサンプルへの接触は、例えば本発明 融合タンパク質又は形質転換細胞とサンプ とを適当な溶媒に懸濁又は溶解するなどし 行うことができる。ただし、本発明の形質 換細胞をそのまま用いる場合は、形質転換 胞が発現する本発明の融合タンパク質と対 抗原とが接触し得る必要があるため、対象 原が形質転換細胞内に取り込まれるか、又 、形質転換細胞が発現する本発明の融合タ パク質が細胞外へ分泌されることを確認し 用いることが好ましい。一方、本発明の形 転換細胞を破砕して用いる場合は、この点 確認する必要は特にない。
 なお、本発明の抗原の検出方法においては 用いる本発明の融合タンパク質の濃度や形 転換細胞の濃度を適宜調節することが、よ 高い検出感度を得る観点から好ましい。よ 高い検出感度が得られる上記濃度は、融合 ンパク質や形質転換細胞の種類などにより なるため一概にいうことはできないが、上 濃度を段階的に変えて実験を行うことによ 容易に設定することができる。ただし、本 明の融合タンパク質はリンカーペプチドを しているため、本発明の抗原の検出方法は 非特許文献1の方法に比べて、より高い検出 感度をより安定的に得ることができる。

 また、上記所定のタンパク質とパートナ タンパク質の結合の検出は、例えば前記タ パク質及び/又はパートナータンパク質が発 揮する所定の酵素活性の変化(上昇、低下、 現又は消滅)、より好ましくは所定の酵素活 の上昇又は発現を検出することにより、簡 かつ高感度に行うことができる。上記所定 酵素活性の変化の検出は、例えば、反応系 その酵素の基質を含有させて、一定期間経 後の基質量の変化を検出することにより行 ことができるが、より簡便かつ高感度に検 し得る観点から、酵素活性の変化を視覚的 検出し得る発色基質や蛍光基質などを用い ことが好ましい。具体的には、所定のタン ク質とパートナータンパク質が、βガラク シダーゼのαフラグメントとそのωフラグメ トの組み合わせである場合は、Galacton-Plus( 録商標)(Applied Biosystems社製)等の化学発光基 を用いることにより、βガラクトシダーゼ 性の発現や上昇を発光や発光量の増加とし 検出することができ、βラクタマーゼ(BLA)の2 4位~170位のアミノ酸配列からなるタンパク質( N末端側フラグメント)とその168位~286位のアミ ノ酸配列からなるタンパク質(C末端側フラグ ント)の組み合わせの場合は、ニトロセフィ ン等の発色基質や、CCF2/AM, Fluorocillin Green 49 5/525 beta lactamase substrate(Invitrogen社製)等の蛍 光基質を用いることにより、βラクタマーゼ 性の発現や上昇を、発色又は発光や、発色 又は発光量の増加として検出することがで る。発色や発光の有無、発色量や発光量は レーザー顕微鏡等を用いることにより、高 度で検出することができる。

 また、本発明の抗原の検出方法において 本発明の形質転換細胞を用いる場合は、上 所定のタンパク質とパートナータンパク質 結合の検出を、該形質転換細胞の増殖速度 変化を調べることによってより安価に好適 行うこともできる。例えば、所定のタンパ 質とパートナータンパク質が、βラクタマ ゼ(BLA)の24位~170位のアミノ酸配列からなるタ ンパク質(N末端側フラグメント)とその168位~28 6位のアミノ酸配列からなるタンパク質(C末端 側フラグメント)の組み合わせの場合、βラク タマーゼが、その形質転換細胞の宿主細胞の 増殖を妨げるアンピシリンを分解する活性を 有していることを利用して、上記所定のタン パク質とパートナータンパク質の結合を、形 質転換細胞の増殖速度の上昇により検出する ことができる。形質転換細胞の増殖を利用し た増殖アッセイの具体的な方法として、後述 の実施例4に記載されている方法を好適に例 することができる。

 本発明の検出用キットとしては、所定の ンパク質とパートナータンパク質が、互い 結合していない場合に比べて互いに結合す と所定のタンパク質及び/又はパートナータ ンパク質が発揮する所定の酵素活性が変化す るタンパク質である本発明の融合タンパク質 又は本発明の形質転換細胞、並びに、前記酵 素活性の変化を検出し得る発色基質又は発光 基質を備えている限り特に制限されないが、 サンプルが固体である場合にそれを懸濁する ために用いる適当な溶媒をさらに備えていて もよい。

 以下、実施例により本発明をより具体的 説明するが、本発明の技術的範囲はこれら 例示に限定されるものではない。なお、後 の実施例の概要を述べると、実施例1から2 かけて、本発明の融合タンパク質を発現す ベクターを作製し、実施例6において、その 発明の融合タンパク質を発現する形質転換 の増殖アッセイを行い、その比較実験とし 、実施例3において、上記の本発明の融合タ ンパク質の分割変異体(上記の本発明の融合 ンパク質において、リンカーを欠いたもの) 発現するベクターを作製し、実施例7におい て、その分割変異体を発現する形質転換体の 増殖アッセイを行い、別の比較実験の準備と して、実施例4において、上記の本発明の融 タンパク質の抗体分子欠失変異体(上記の本 明の融合タンパク質において、その抗体分 を欠失したもの)を発現するベクターを作製 した。また、実施例5、8、9は、上記の増殖ア ッセイの結果が、cpBLAの活性相補を反映した のであることを確認等する目的で行った。 らに、実施例10、11において、上記の本発明 の融合タンパク質が、その分割変異体や、そ の抗体分子欠失変異体と比較して、抗原存在 下でのBLA活性の上昇が著しいことを確認した 。加えて、実施例12においては、上記の本発 の融合タンパク質における抗体分子を別の 体分子に置き換え、その融合タンパク質が その抗体分子に結合する抗原存在下におい 、その抗原依存的にBLA活性が上昇すること 確認することによって、本発明の融合タン ク質の汎用性を確認した。

[円順列変異体βラクタマーゼ(cpBLA)遺伝子の 製]
 野生型βラクタマーゼ(野生型BLA)のDNA配列を 鋳型としたPCR法により、野生型BLAタンパク質 の24-170位のアミノ酸配列(配列番号5)をコード するDNA断片(配列番号6)と、168-286位のアミノ 配列(配列番号7)をコードするDNA断片(配列番 8)を調製した。より詳細には以下のような 法で調製を行った。

 まず、上記PCR法のプライマーとして、以下 4種類のプライマーを用意した。
BLA24rev(配列番号9:CATTGGGACAAGAGCCACCCAGAAACGCTGGTGAAA)
BLA170for(配列番号10:GGCGATATCGGCTTCATTCAGCTCCGGTTC)
BLA168rev(配列番号11:GGCGATATCAATGAAGCCATACCAAAC)
BLA286for(配列番号12:TGGGTGGCTCTTGTCCCAATGCTTAATCAGTGA)
 BLA24rev及びBLA286forの5’末端にはリンカー配 (配列番号9及び12の7~15番目の塩基配列)を配 し、BLA170for及びBLA168revの5’末端には作製し たDNA断片を挿入するための制限酵素切断部位 としてEcoRVの認識配列(配列番号10及び11の4~9 目の塩基配列)を配置した。
 なお、これらの4種類のプライマーは、Guntas らの報告(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 102, 11224-11 229 (2005))にならい、BLAの活性部位近傍の168位 と170位を新規末端とする遺伝子断片を最終的 に得るべく設計を行った。上記24-170位のアミ ノ酸配列をコードするDNA断片の増幅には、BLA 24rev及びBLA170forを用い、上記168-286位のアミノ 酸配列をコードするDNA断片の増幅には、BLA168 rev及びBLA286forを用いた。

 また、上記PCR法の鋳型として、野生型BLA 伝子をコードするベクターpET20b(+)(メルク社 製)を用い、酵素としてEx-Taq DNAポリメラーゼ (タカラバイオ社製)を用いた。具体的には、5 0pmolずつの2種類のプライマー、10ng pET20b(+)、 0.2mM(反応溶液の最終濃度)dNTPs、10μl Ex-Taq Buf fer、5unit Ex-Taq 1μlを混合して100μlの反応溶 とし、94℃、5分間の後に、94℃で30秒間、56 で30秒間、72℃で1分間からなるサイクルを25 イクル繰り返した後、72℃で10分間反応させ た。このPCRにより、野生型BLAタンパク質の24- 170位のアミノ酸配列をコードするDNA断片と、 168-286位のアミノ酸配列をコードするDNA断片 調製した。次いで、これらの2種類のDNA断片 TAE緩衝液を含む1%アガロースゲルで電気泳 した後、目的のバンドを含むゲルを切り出 、Wizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean-Up Syste m(プロメガ社製)を用いて精製した。

 得られた2種類のDNA断片を用いたoverlap extens ion PCRによって、本来のN末端(24位のアミノ酸 )とC末端(286位のアミノ酸)を、DKSリンカー配 (アミノ酸配列:Asp-Lys-Ser; 塩基配列:gacaagagc) 介して結合し、168位と170位がそれぞれ新た N末端及びC末端であるPCR断片(円順列変異体 伝子)を調製した(図2の左上のコンストラク ;cpBLA)。より詳細には、以下のような方法で 製を行った。
 約100ngずつの2種類のPCR産物(野生型BLAタンパ ク質の24-170位のアミノ酸配列をコードするDNA 断片と、168-286位のアミノ酸配列をコードす DNA断片)、0.2mM(反応溶液の最終濃度)dNTPs、10μ l Ex-Taq Buffer、5unit Ex-Taqを混合して100μlの反 応溶液とし、94℃、5分間の後に94℃で30秒間 58℃で30秒間、72℃で1分間からなるサイクル 10サイクル繰り返した後、72℃で10分間反応 せた。このようにして作製した目的のBLA円 列変異体遺伝子をcpBLA(アミノ酸配列:配列番 号13; 塩基配列:配列番号14)と命名した。

 この後、cpBLAのDNAのみを増幅するため、 きほど得られた反応溶液に2種類のプライマ (BLA168rev及びBLA170for)を50pmolずつ、2.5unitEx-Taq 加え、94℃で5分間の後に、94℃で30秒間、56 で30秒間、72℃で1分間からなるサイクルを25 サイクル繰り返した後、72℃で10分間反応さ た。得られた反応溶液をアガロースゲルに 電気泳動し、目的サイズのDNA断片が増幅さ ていることを確認した。さらに、その目的 イズのバンド部分のゲルを切り出し精製し 。

 精製して得られたDNA断片をpCR4-TOPO(Invitrogen 製)に組み込み、その塩基配列を確認した。 り詳細な手順については以下に述べる。
 pCR4-TOPO Vectorを使ったキットであって、Taq リメラーゼで増幅した3’-dA突出末端を持つP CR産物をクローニング、シーケンスするのに したTOPO TA Cloning Kit for Sequencing(Invitrogen 製)を使用した。1μlのpCR4-TOPO Vectorに対し、 モル量の上記精製DNA断片を加え、さらにSalt  Solutionを1μl加えて室温で30分間放置した。 のligation mixtureを氷上で溶かした大腸菌XL10-G old株(Tet r , δ(mcrA)183, δ(mcrCB-hsdSMR-mrr)173, endA1, supE44,  thi-1, recA1, gyrA96, relA, lac, The, [F’, proAB,  laclqZδM15, Tn10(Tet r ), Tn5(Kan r ), Amy)に加え氷上で30分間放置した後、42℃で 45秒ヒートショックを与え、200μlのSOC培地(1L たり20g bacto tryptone、5g bacto yeast extract、0 .5g NaCl、0.2ml 5N NaOH、20ml 1M グルコース、10 ml 1M MgCl 2 、10ml 1M MgSO 4 )を加え37℃で30分間キュアリングして形質転 し、予め10μlの0.4M IPTGと200μlの10mg/ml X-gal 撒いておいた100μg/mlアンピシリン、1%グルコ ースを含むLB寒天培地プレート(1Lあたり10g ba cto tryptone、 5g bactoyeastextract、5g NaCl、0.2ml  5N NaOH、15g agar)にて37℃で一晩培養した。翌 、白いコロニー、青いコロニー各数個のう 白いコロニーを竹串でつつき、Taqポリメラ ゼ(タカラバイオ)とT3、T7の2本のプライマー を用いてコロニーPCRを行なった。そのPCR産物 をアガロースゲルにて泳動し、目的の大きさ のバンドが確認できたコロニーのみを100μg/ml アンピシリンを含む滅菌LB液体培地(1Lあたり1 0g bacto tryptone、 5g bactoyeastextract、 5g NaCl 0.2ml 5N NaOH)に植菌して、37℃で一晩培養し 。培養して得られた菌体から、Wizard(登録商 ) plus SV Minipreps(プロメガ社製)を用いてプ スミドを抽出し、ABI3100DNAシーケンサーを用 いて、BLA円順列変異体遺伝子(cpBLA)の配列を 認した。このcpBLAを有する上記プラスミドを 、cpBLA/TOPOと命名した。

[抗体-円順列変異体BLA混成タンパク質発現ベ ターの作製]
 ネオニコチノイド系農薬イミダクロプリド( ICP)を認識する抗体(33C3-1-1:FERMP-17094で寄託さ たハイブリドーマから産生されるモノクロ ナル抗体:特開2000-191698号公報)の可変領域を ァージミドベクターpIT2(Nature Biotechnol., 18, 989-994 (2000))に組込み,これを用いて常法に従 い一本鎖抗体(scFv)提示ファージを調製しその 抗原結合能を確認した(scFv(ICP)/pIT2)。このscFv( ICP)/pIT2から、該抗体遺伝子をタンパク質大量 発現用プラスミドベクターに移し替え、scFv(I CP)/pET26を作製した。より詳細には以下のよう な方法で調製を行った。

 scFv(ICP)/pIT2中の抗体遺伝子を、目的タンパ をペリプラズムに分泌させ発現させること でき、かつカナマイシン耐性を示すプラス ドpET26b(+)(メルク社製)に組み込んだ。scFv(ICP) /pIT2と、pET26b(+)1μgに対し、10unit NcoI(New Englan d Biolabs社製)、10unit NotI(New England Biolabs社製 )、5μl 10×NEB Buffer3(New England Biolabs社製)、5 lの0.1% BSA(New England Biolabs社製)に滅菌水を えて50μlにし、37℃で16時間制限酵素処理し 。この制限酵素処理物をアガロースゲル電 泳動を行い切り出し精製したscFv(ICP)遺伝子 片3μlと、同様の制限酵素処理後に切り出し 製したベクター2μlと、Ligation high(東洋紡社 製)5μlを加え、16℃で30分間ライゲーション反 応を行った。ライゲーション反応により得ら れた反応液のうち5μlを用いて、100μlの大腸 TOP10株(F-mcrA, δ(mrr-hsdRMS-mcrBC), φ80lacZδM15, δ lacX74, deoR, recA1, araD139, δ(ara,leu)7697galU, galK , rpsL(Str R )endA1, nupG)を形質転換し、50μg/mlカナマイシ を含むLB寒天培地プレートにて37℃で一晩培 した。翌日、コロニー数個を竹串でつつき Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)とT7 prom oterとT7 terminatorの2本のプライマーを用いて ロニーPCRを行った。そのPCR産物をアガロー ゲルにて泳動し、目的の大きさのバンドが 認できたコロニーのみを50μg/mlカナマイシン を含むLB液体培地4mlに植菌し、37℃で一晩培 した。培養して得られた菌体からscFv(ICP)/pET2 6を抽出した。

 cpBLAをコードするDNA断片を組み込むための 限酵素サイトとして、DraIサイトをscFv(ICP)/pET 26中のリンカー領域にクイックチェンジ(スト ラタジーン社製:登録商標)を用いたPCRにより 入した(図2の右上のコンストラクト)。このD raIサイトで切断することによりscFv(ICP)/pET26は 平滑末端を持つリニアDNAとなり、EcoRV処理に り同じく平滑末端を生じるcpBLA断片を組み むことができる。DraIサイトを導入するPCRは 下のように行った。
 15pmolずつの後述の2種類のプライマー、1ng s cFv(ICP)/pET26、0.2mM(反応溶液の最終濃度)dNTPs、2 .5unit PfuUltraHigh-Fidelity DNA Polymerase(ストラタ ーン社製)、5μl 10×PfuUltra reaction Buffer(ス ラタジーン社製)を混合して50μlの反応溶液 し、95℃、1分間の後に、95℃で30秒間、55℃ 30秒間、68℃で15分間からなるサイクルを18サ イクル繰り返した。用いたプライマーの配列 は以下のとおりである。Dra1rev(配列番号15:GGTG GAGGCGGTTCAGGCTTTAAAGGCAGTGGCGGTGGCGGG)Dra1for(配列番号1 6:CCCGCCACCGCCACTGCCTTTAAAGCCTGAACCGCCTCCACC)
(配列番号15及び16の19~24番目の塩基配列はそ ぞれDraI切断部位である)

 上記PCRにより得られた反応液に1μl DpnIを 加え、37℃で1時間処理してメチル化された鋳 型DNAを分解し、5μlを用いて、100μlの大腸菌TO P10株を形質転換した。これを50μg/mlカナマイ ンを含むLB寒天培地にて37℃で一晩培養し、 翌日生成したコロニー数個を竹串でつついて 50μg/mlカナマイシンを含むLB寒天培地4mlに植 し、37℃で一晩培養した。培養して得られた 菌体からプラスミドを抽出した後、ABI3100DNA ーケンサーを用いて配列を決定し、所定の 置DraIサイトが導入されていることを確認し 。

 次いで、DraIサイトが導入されたscFv(ICP)/pET26 をDraIにて開裂したscFv(ICP)/pET26に、EcoRV処理し たcpBLA断片を組み込み、抗体-円順列変異体酵 素発現ベクターV H -cpBLA-V L /pET26(図2の中央下のコンストラクト)を作製し た。より詳細な手順については以下に述べる 。
 1μg scFv(ICP)/pET26に20unit DraI(New England Biolabs , NEB社製)、10unit Alkaline Phosphatase,Calf Intestin al(NEB社製)、10×NEB Buffer4(NEB社製)に滅菌水を えて50μlにし、37℃で16時間制限酵素処理し 。ベクターのセルフライゲーションを防ぐ め、制限酵素処理と同時にアルカリフォス ァターゼにて末端の脱リン酸化も行った。 た、cpBLA断片が組み込まれたpCR4-TOPOベクター 1μg、20unit EcoRV(NEB社製)、10×NEB Buffer3、5μlの 0.1% BSAに滅菌水を加えて50μlにし、37℃で16時 間制限酵素処理した。この制限酵素処理物を アガロースゲル電気泳動を行い切り出し精製 したscFv(ICP)/pET26ベクター3μlと、同様の制限 素処理後に切り出し精製したcpBLA断片3μlと Ligation high6μlを加え、16℃で30分ライゲーシ ン反応を行った。ライゲーション反応によ 得られた反応液のうち5μlを用いて100μlの大 腸菌TOP10株を形質転換し、50μg/mlカナマイシ を含むLB寒天培地プレートにて37℃で一晩培 した。翌日、コロニー数個を竹串でつつき TaqポリメラーゼとT7プロモーターとBLA170for 2本のプライマーを用いてコロニーPCRを行っ 。そのPCR産物をアガロースゲルにて泳動し 目的の大きさのバンドが確認できたコロニ のみを50μg/mlカナマイシンを含むLB液体培地 4mlに植菌し、37℃で一晩培養した。培養して られた菌体からV H -cpBLA-V L /pET26(抗体-円順列変異体BLA混成タンパク質発 ベクター)を抽出した。

[抗体-分割・円順列変異体BLA混成タンパク質 現ベクターの作製]
 本発明の融合タンパク質におけるリンカー プチドの意義を調べるため、V H -cpBLA-V L 中のリンカーペプチドをコードする配列に代 えて、stopコドン及びRBSをコードする配列を する、V H -split・cpBLA-V L /pET26(抗体-分割・円順列変異体BLA混成タンパ 質発現ベクター)を作製した。該ベクターの コンストラクトを図3に示す。このV H -split・cpBLA-V L /pET26は、図3に示すように、V H -BLAc(V H 領域ポリペプチドと、野生型BLAタンパク質の 168-286位のアミノ酸配列との融合タンパク質) 、BLAn-V L (V L 領域ポリペプチドと、野生型BLAタンパク質の 24-170位のアミノ酸配列との融合タンパク質) 発現するベクターである。V H -split・cpBLA-V L /pET26の作製は、図4に示すような概要にした って、以下のような方法で行なった。

 まず、図4に示すようなコンストラクトのpBR 322を用意した。このpBR322に対して、BLAsigBack( 列番号17:TCACCATCACTAAGAAGGAGATATCATATGAGTATTCAACATTTCC )(5’末端から1~18番目のヌクレオチドがBLAHisFo rとのオーバーラップ領域)及びBLAdraFor(配列番 号18:CGGCGACCGAGTTGCTCTTG)の2種類のプライマーを いてPCRを行い、pBR322のアンピシリン耐性遺 子から、シグナル配列を経て、BLA前半部に 在するDraIサイトまでを増幅してその断片(BLA -DraI断片)を得た。また、pBR322に対して、BLAbsa Back(配列番号19:ATGGAGGCGGATAAAGTTGC)及びBLAHisFor(配 列番号20:CCTTCTTAGTGATGGTGATGATGATGCCAATGCTTAATCAGTGAGGC) (5’末端から1~18番目のヌクレオチドがBLAsigBac kとのオーバーラップ領域)の2種類のプライマ ーを用いてPCRを行い、pBR322のBLA後半部に存在 するBsaIサイトからBLAタンパク質の296位まで 増幅してその断片(BLA-BsaI断片)を得た。なお BLAHisForの5’末端にはHis tag をコードする 列の相補鎖が含まれており、これによってV H -BLAcのC末端に、精製のためのHis tagが付加さ る。BLA-DraI断片やBLA-BsaI断片を増幅するPCRは 以下のように行った。

 50pmolずつの2種類のプライマー(BLA-DraI断片 増幅用として、BLAsigBack及びBLAdraFor;BLA-BsaI断 増幅用としてBLAbsaBack及びBLAHisFor)、10ng pBR322 、0.2mM(反応溶液の最終濃度)のdNTPs、10μl 10´E x-Taq buffer、5unit Ex-Taqを混合して100μlの反応 液とし、95℃、5分間の後に、95℃で30秒間、 50℃で30秒間、72℃で30秒間からなるサイクル 25サイクル繰り返した後、72℃で5分間反応 せた。これらのPCRにより得られたBLA-DraI断片 やBLA-BsaI断片を、TAE緩衝液を含む1.5%アガロー スゲルでそれぞれ電気泳動した後、目的のバ ンドを含むゲルを切り出し精製した。

 次に、精製したBLA-DraI断片及びBLA-BsaI断片に ついて、オーバーラップ・エクステンション PCRを行なうことによって、BLA-DraI断片とBLA-Bsa I断片とを結合させた(図4の中央のコンストラ クト参照)。オーバーラップ・エクステンシ ンPCRは具体的に以下のような方法で行なっ 。
 精製したBLA-DraI断片(約100ng)及びBLA-BsaI断片( 100ng)、0.2mM(反応溶液の最終濃度)のdNTPs、10ml  10´Ex-Taq buffer、5unit Ex-Taqを混合して100mlの 応溶液とし、95℃、5分の後に95℃で30秒間、 55℃で30秒間、72℃で45秒間からなるサイクル 15サイクル繰り返した後、72℃で5分間反応 せて反応液を得た。次いで、目的DNA断片を らに増やすため、得られた反応溶液に、BLAbs aBackプライマー(50pmol)、BLAdraForプライマー(50pm ol)、2.5unit Ex-Taqを添加し、95℃で5分間の後に 、95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で45秒間か らなるサイクルを25サイクル繰り返した後、7 2℃で5分間反応させて反応液を得た。得られ 反応液をアガロースゲル電気泳動し、目的 イズのDNA断片が増幅されていることを確認 た。次いで、目的サイズ近辺のゲルを切り し、目的サイズのDNA断片を精製した。

 精製して得られたDNA断片をpCR4-TOPO(Invitrogen 製)に組み込み、その塩基配列を確認した。 り詳細な手順については以下に述べる。
 pCR4-TOPO Vectorを使ったキットであって、Taq リメラーゼで増幅した3’-dA突出末端を持つP CR産物をクローニング、シーケンスするのに したTOPO TA Cloning Kit for Sequencing(Invitrogen 製)を使用した。1μlのpCR4-TOPO Vectorに対し、 モル量の上記精製DNA断片を加え、さらにSalt  Solutionを1μl加えて室温で30分間放置した。 のligation mixtureを氷上で溶かした大腸菌XL10-G old株(Tet r ,δ(mcrA)183, δ(mcrCB-hsdSMR-mrr)173, endA1, supE44, th i-1, recA1, gyrA96, relA, lac, The, [F’, proAB, la clqZδM15, Tn10(Tet r ), Tn5(Kan r ), Amy)に加え氷上で30分間放置した後、42℃で 45秒ヒートショックを与え、200μlのSOC培地(1L たり20g bacto tryptone、5g bacto yeast extract、0 .5g NaCl、0.2ml 5N NaOH、20ml 1M グルコース、10 ml 1M MgCl 2 、10ml 1M MgSO 4 )を加え37℃で30分間キュアリングして形質転 し、予め10μlの0.4M IPTGと200μlの10mg/ml X-gal 撒いておいた100μg/mlアンピシリン、1%グルコ ースを含むLB寒天培地プレート(1Lあたり10g ba cto tryptone、 5g bacto yeast extract、5g NaCl、0.2 ml 5N NaOH、15g agar)にて37℃で一晩培養した。 翌日、白いコロニー、青いコロニー各数個の うち白いコロニーを竹串でつつき、Taqポリメ ラーゼ(タカラバイオ)とT3、T7の2本のプライ ーを用いてコロニーPCRを行なった。そのPCR 物をアガロースゲルにて泳動し、目的の大 さのバンドが確認できたコロニーのみを100μ g/mlアンピシリンを含む滅菌LB液体培地(1Lあた り10g bacto tryptone、 5g bacto yeast extract、5g  NaCl、0.2ml 5N NaOH)に植菌して、37℃で一晩培 した。培養して得られた菌体からプラスミ を抽出し、ABI3100DNAシーケンサーを用いて、 述の精製DNA断片の配列を決定し、その配列 、分割・円順列変異体BLA(split・cpBLA)(図4の 央のコンストラクト参照)であることを確認 た。このsplit・cpBLAを有する上記プラスミド を、split・cpBLA/TOPOと命名した。

 1μgのsplit・cpBLA/TOPOに対し、10unitのDraI、5μl NEBuffer2を添加し、さらにmilliQ水を添加して5 0μlに調整し、この溶液を37℃で6時間処理後 5unitのBsaIを添加し、これを50℃で一晩静置し て制限酵素処理を行った。1μgのsplit・cpBLA/TOP Oに代えて、1μgのV H -cpBLA-V L /pET26を用いて、同様に、DraI及びBsaIで制限酵 処理を行なった。制限酵素処理して得られ それぞれの溶液をアガロースゲルにて泳動 て精製したDNA溶液各5μlにLigation high ver.2( 洋紡社製)をそれぞれ10μl添加し、16℃で30分 ライゲーション反応を行った。このライゲ ション反応により得られた反応液のうち5μl を用いて、100μlの大腸菌TOP10株を形質転換し 50μg/mlのカナマイシンを含むLB寒天培地プレ ートにて37℃で一晩培養した。翌日、シング コロニーを4mlのLBKにてさらに一晩培養後、 られた菌体からプラスミドを抽出し、その ラスミドのDNA配列を確認した。DNA配列を確 した複数のプラスミドの中から、V H -cpBLA-V L /pET26におけるBsaIサイト・DraIサイト間の配列 、split・cpBLAにおけるBsaIサイト・DraIサイト の配列に置換されたプラスミド(図4)を見い し、このプラスミドをV H -split・cpBLA-V L /pET26と命名した(図3)。

[円順列変異体BLAタンパク質発現ベクターの 製]
 本発明の融合タンパク質の1つであるV H -cpBLA-V L /pET26のコントロールとして、抗体遺伝子を持 たない、cpBLAのみの発現ベクター(円順列変異 体BLAタンパク質発現ベクター:cpBLA/pET26)(図5) 作製した。より詳細には以下のような方法 作製を行った。

 実施例1で作製したcpBLA/TOPOを鋳型とするPCR よって、末端にNcoIサイトとXhoIサイトが付加 されたcpBLA遺伝子を増幅し、pET26b(+)に組み込 だ。このPCRは以下のように行なった。
 50pmolのBLA168Ncorev(配列番号21:CATGCCATGGGCAATGAAGCC ATACCAAAC)(5’末端から5~10番目のヌクレオチド NcoIサイト)、50pmolのBLA170Xhofor(配列番号22:CCGCT CGAGGGCTTCATTCAGCTCCGGTTC)(5’末端から4~9番目のヌ レオチドがXhoサイト)、10ngのV H -cpBLA-V L /TOPO(V H -cpBLA-V L をpCR4-TOPOに組み込んだプラスミド)、0.2mM(反 溶液の最終濃度)のdNTPs、10μlの10´Ex-Taq buffer 、5unitのEx-taqを混合して100mlの反応溶液とし 94℃で5分間の後に、94℃で30秒間、65℃で30秒 間、72℃で1分間からなるサイクルを25サイク 繰り返した後、72℃で10分間反応させて反応 液を得た。得られた反応液をアガロースゲル 電気泳動して精製を行った後、NcoI及びXhoIに 制限酵素処理した。この制限酵素処理した 液をアガロースゲル電気泳動し、精製を行 た。精製したDNA断片を、同じくNcoI及びXhoI 理並びに精製を行ったpET26b(+)に組み込んで cpBLA/pET26とした(図5)。

[ICPの大腸菌に対する毒性の確認]
 まず、後述の実施例6の増殖アッセイの前提 として、ICPが大腸菌に対して毒性あるいは増 殖促進活性がないことを調べるため、高濃度 のICPを含む培地中での野生型BL21(DE3,pLysS)株の 増殖を以下の方法により調べた。
 BL21(DE3,pLysS)株を、37μg/mlのクロラムフェニ ールを含むLB寒天培地プレートにおいて30℃ て一晩培養して生成したコロニーを竹串で つき、37μg/mlのクロラムフェニコールを含 LB液体培地4mlに植菌し、27℃で一晩培養した この前培養液40μlを、37μg/mlのクロラムフェ ニコール、100ng/mlのICPを含むLB液体培地4mlに 菌し、27℃で一晩培養しながら、Mini photo518R (タイテック社製)にて660nmにおける濁度の経 変化を測定した。また、ICPを含まないこと 外は同じLB液体培地を用いて、同様に濁度の 経時変化を測定した。その結果を図6に示す 図6から分かるように、大腸菌BL21(DE3,pLysS)株 、ICPの有無に関わらずほぼ同様の増殖曲線 示した。したがって、ICPの大腸菌に対する 性および増殖促進活性はないと考えられる

[V H -cpBLA-V L 発現株を用いた増殖アッセイ]
 V H -cpBLA-V L (抗体酵素混成タンパク質)の発現株が、目的 原の有無の検出に用い得るかどうかを調べ ために、この抗体酵素混成タンパク質の目 抗原であるICP、およびICPの類似体でICPより 差反応性が低いことが確認されているチア ロプリド(TCP)を用いて、目的抗原が抗体酵 混成タンパク質に結合した場合に発揮され BLA活性の基質となり得るアンピシリンを用 た増殖アッセイを行った。より詳細には以 のような方法で行った。

 まず、V H -cpBLA-V L (抗体酵素混成タンパク質)の発現株の作製を った。
0.5μg V H -cpBLA-V L /pET26を用いて100μlのBL21(DE3, pLysS)株(F-, ompT,  hsdSB, (rB-, mB-), dcm, gal, λ(DE3), pLysS, Cmr)を 質転換し、50μg/mlのカナマイシンと37μg/mlの クロラムフェニコールを含むLB寒天培地プレ トにて30℃で一晩培養することにより、抗 酵素混成タンパク質発現株(V H -cpBLA-V L /pET26/BL21株)を作製した。一晩培養した上記LB 天培地プレートに生じたコロニーを竹串で つき、50μg/mlのカナマイシンと37μg/mlのクロ ラムフェニコールを含むLB液体培地4mlに植菌 、27℃で一晩培養した。この前培養液4μlを 50μg/mlのカナマイシン、37μg/mlのクロラムフ ェニコール、1mM IPTG、0又は100μg/mlのアンピ リン、0-10ng/mlのICP又はTCPを含むLB液体培地4ml に植菌し、27℃で33時間培養しながら、Mini ph oto 518Rにて660nmにおける濁度の経時変化を測 した。その結果を図7に示す。

 図7から分かるように、100μg/mlアンピシリ ンを含むLB培地において、測定開始後24時間 後から5-10ng/mlで,また30時間前後から1ng/mlと う低濃度でICP濃度依存的な増殖が確認され 。これに対し、TCPは同濃度のICPを添加した 合よりも遅れて30時間前後から増殖がみられ 、10ng/mlTCPを添加した場合に、1ng/ml ICPを添加 した場合と同程度の有意な増殖がみられた。 一方、アンピシリンを含まない培地において は、アンピシリン含有培地よりも早く、抗原 の種類、濃度によらずほぼ同様の増殖が見ら れた(図7)。なお、日本の農作物における含有 農薬の基準値は20-5000ng/mlであり(http://m5.ws001.s quarestart.ne.jp/zaidan/agrdtl.php?a_inq=8800)、今回の 果は、本発明の誘導タンパク質が対象抗原 対して十分な感度を有しているといえる。

[V H -split・cpBLA-V L 発現株等を用いた増殖アッセイ]
 上記実施例6のアッセイにおいて、V H -cpBLA-V L /pET26に代えて、V H -split・cpBLA-V L /pET26を用い、また、BL21(DE3,pLysS)株に代えて、 毒性の高いタンパク質の過剰発現に適してい る大腸菌C43(DE3)株(Lucigen社製)を用いて、該株 の発現を試みた。具体的には、0.5μgのV H -split・cpBLA-V L /pET26を用いて、C43(DE3)株を形質転換し、50μg/m lのカナマイシンを含むLB寒天培地プレートに て30℃で一晩培養することにより、V H -split・cpBLA-V L 発現株(V H -split・cpBLA-V L /pET26/C43株)を作製した。一晩培養した上記LB 天培地プレートに生じたコロニーを竹串で つき、50μg/mlのカナマイシン含むLB(LBC)液体 地4mlに植菌し、27℃で一晩培養した。この前 培養液10μlを、1mMのIPTG、0又は10μg/mlのアンピ シリン、10ng/mlのICP又はTCPを含むLBKC液体培地1 mlに植菌し、27℃で45時間培養した後の660nmに ける濁度をMini photo 518Rにて測定した。そ 結果を図8に示す。図8から分かるように、ア ンピシリン非添加時には、増殖の差は見られ なかったものの、実施例6の場合より低い10μg /mlのアンピシリン添加時に、ようやくICP依存 的な増殖が確認された。しかし,100μg/mlのア ピシリン添加時,および10ng/ml未満のICPあるい はTCP添加時には有意な増殖を確認することが 出来なかった。更にBL21(DE3,pLysS)株を用いた場 合には増殖が見られなかったことから,V H -split・cpBLA-V L ではV H -cpBLA-V L に比べ低い抗原依存的酵素活性しか得られず ,その結果低い抗原検出感度しか得られない のと考えられた。

 なお、同様の増殖アッセイを、cpBLA発現 (cpBLA/pET26/BL21株やcpBLA/pET26/C43株)を用いて行 ったところ、いずれのcpBLA発現株においても 、抗原依存的な増殖は見られず、アンピシリ ン非添加時には、抗原の有無にかかわらず増 殖し、アンピシリン添加時にはすべてのサン プルにおいて増殖しなかった。

[Western blottingによる抗体酵素混成タンパク質 発現の確認]
 実施例6の増殖アッセイでは、培地中の抗原 の有無や違いによって、V H -cpBLA-V L (抗体酵素混成タンパク質)の発現量が変化し ことにより増殖速度の違いが生じた可能性 否定することはできないため、抗BLA抗体を いたWestern blottingにより、抗体酵素混成タ パク質発現株中の抗体酵素混成タンパク質 発現量の確認を行った。より詳細には以下 ような方法で行った。

 抗体酵素混成タンパク質発現株(V H -cpBLA-V L /pET26/BL21株)を50μg/mlカナマイシンと37μg/mlク ラムフェニコールを含むLB液体培地4mlに植菌 し、27℃で一晩培養した。この前培養液4μlを 、50μg/mlカナマイシン、37μg/mlクロラムフェ コール、1mM IPTG、10 ng/mlのICP又はTCPを含むLB 液体培地4mlに植菌し、27℃で一晩培養した。 た、ICP、TCPのいずれも含まないこと以外は 一の方法で一晩培養した。これらの培養に りOD660が0.6程度にまで上昇した培養液100μl 15000rpmにて5分間遠心して菌体を回収し、SDS-P AGEを行った。泳動後のゲル中のタンパク質の バンドをニトロセルロース膜(バイオラッド 製)に転写した後、このニトロセルロース膜 イムノブロック(大日本住友製薬社製)にて4 で一晩静置してブロッキングを行った。こ ニトロセルロース膜を、PBS-T(10mM リン酸、1 45mM NaCl、5mM KCl、pH7.2、0.1%Tween-20)にて5分間 洗浄することを3回繰り返した後、1/5000希釈 たウサギ抗BLAポリクローナル抗体(Chemicon社 )を含む5%イムノブロック溶液にて室温で1時 間反応させた。反応後のニトロセルロース膜 を、PBS-Tにて3回洗浄した後、1/5000希釈したHRP -Goat anti Rabbit 1gを含む5%イムノブロック溶 に浸して室温で1時間反応させた。反応後の トロセルロース膜をPBS-Tにて3回洗浄した後 そのHRP活性をSuperSignal WestPico Chemiluminescent Substrate(Pierce社製)にて検出した。その結果を 図9に示す。レーン1はICP存在下で培養した菌 サンプルを、レーン2はTCP存在下で培養した 菌体サンプルを、レーン3はICP、TCPのいずれ 抗原(Ag)も含まない培地で培養した菌体サン ルを表す。

 図9から分かるように、抗原の種類を問わず 、すべてのサンプルにおいて58kD付近にほぼ 量のタンパク質(V H -cpBLA-V L )の発現が確認された(図9)。したがって、抗 (特にICP)添加による増殖速度の上昇は、抗体 酵素混成タンパク質(V H -cpBLA-V L )の発現量の増加によるものではなく、抗原 合による抗体酵素混成タンパク質の構造安 化がもたらす酵素活性上昇によるものと考 られる。

[SDS-PAGEやWestern blottingによる抗体酵素混成タ パク質発現の確認]
 抗体酵素混成タンパク質発現株(V H -cpBLA-V L /pET26/BL21株)において、抗体酵素混成タンパク 質(V H -cpBLA-V L )が実際に発現されているかを確認するため 、抗体酵素混成タンパク質発現株からの抗 酵素混成タンパク質の部分精製を行った。 り詳細には以下のような方法で行った。

 抗体酵素混成タンパク質発現株(V H -cpBLA-V L /pET26/BL21株)を50μg/mlカナマイシンと37μg/mlク ラムフェニコールを含むLB液体培地4mlに植菌 し、27℃で一晩培養した。この培養液を50μg/m lカナマイシン、37μg/mlクロラムフェニコール を含むLB液体培地(LBKC液体培地)250mlに植菌し O.D 600 が約0.6に達したとき1M IPTGを250μl加えて発現 誘導後、27℃でさらに16時間培養した。その 後、培養液を4℃条件下6000gで10分間遠心して 収した上清に107.5gの硫酸アンモニウムを加 4℃で一晩静置し、可溶性タンパク質を沈殿 させた。この溶液を4℃条件下10000gで20分間遠 心して上清を廃棄し、沈殿を10ml TALON Buffer(5 0mM リン酸、300mM NaCl、pH7.0)にて懸濁した。 れに200μlのTALON金属アフィニティーカラム( ロンテック社製)を加え、説明書に従いバッ /重力方式カラム精製法によりタンパク質を 精製した。タンパク質の溶出にはElution Buffer (125mM イミダゾール、50mM リン酸、300mM NaCl pH7.0)を用いた。この濃縮タンパク質を用い SDS-PAGEを行った結果を図10に示す。

 図10から分かるように、レーン5の58kD付近に おいて、目的タンパク質である抗体酵素混成 タンパク質(V H -cpBLA-V L )の分子量に相当するバンドを確認した。

 また、BL21(DE3,pLysS)株を、V H -cpBLA-V L /pET26、V H -split・cpBLA-V L /pET26、cpBLA/pET26のそれぞれのベクターにて形 転換して得られたV H -cpBLA-V L /pET26/BL21株、V H -split・cpBLA-V L /pET26/BL21株、cpBLA/pET26/BL21株を、前述のLBKC液 培地4mlにそれぞれ植菌し、27℃で一晩培養し た。この培養液をLBKC液体培地250mlに植菌し、 O.D 600 が約0.6に達したとき1M IPTGを250μl加えて発現 誘導後、27℃でさらに16時間培養した。その 後、培養液を4℃条件下6000gで10分間遠心して 収した上清に107.5gの硫酸アンモニウムを加 4℃で一晩静置し、可溶性タンパク質を沈殿 させた。この溶液を4℃条件下10000gで20分間遠 心して上清を廃棄し、沈殿を10ml TALON Buffer(5 0mM リン酸、300mM NaCl、pH7.0)にて懸濁した。 れに200μlのTALON金属アフィニティーカラム( ロンテック社製)を加え、説明書に従いバッ /重力方式カラム精製法によりタンパク質を 精製した。タンパク質の溶出にはElution Buffer (125mM イミダゾール、50mM リン酸、300mM NaCl pH7.0)を用いた。この濃縮タンパク質溶液10μl を用いてSDS-PAGEを行なった後、上記実施例8と 同様の方法でWestern blottingを行なった結果、 的タンパク質の理論値付近の位置にそれぞ バンドを確認することができた。すなわち V H -cpBLA-V L /pET26/BL21株については、58kD付近にV H -cpBLA-V L と考えられるバンドが確認され、V H -split・cpBLA-V L /pET26/BL21株については、28kD付近にV H -BLAc、31kD付近にBLAn-V L と考えられるバンドが確認され、cpBLA/pET26/BL2 1株については、30kD付近にcpBLAと考えられる ンドが確認された。

[抗体酵素混成タンパク質(V H -cpBLA-V L )等の抗原結合能の確認]
 抗体酵素混成タンパク質(V H -cpBLA-V L )が実際に抗原(ICP)に結合する能力を有してい るかどうか確認するために、以下のELISA実験 行った。
 10μg/mlのICP-BSA又はBSAを含むPBS溶液をFalcon3912 マイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で16 時間静置した。マイクロプレートから溶液を 廃棄した後、そこに25%イムノブロックを含む PBSを200μl加え、室温で2時間置いてブロッキ グを行った。次いで、マイクロプレートをPB S-Tで洗浄した後、上記実施例9で得られた50μg /mlの精製抗体酵素混成タンパク質(V H -cpBLA-V L )と5%イムノブロックを含むPBSを100μl加え室温 で、90分間静置した。ここまでの操作で固相 された抗体酵素混成タンパク質(V H -cpBLA-V L )を検出するために、マイクロプレートをPBS-T 洗浄後、5%イムノブロックを含むPBSで1/2000に 釈したHRP標識PentaHis(QIAGEN社製、東京)を加え 室温で1時間静置した。その後マイクロプレ トをPBS-Tで三回洗浄した後、あらかじめ調製 した酵素反応溶液(50ml ELISA buffer、TMBZ(in DMSO )500μl、H2O2 10μl)を各wellへ100μlずつ添加して 応を開始した。暗所で5分間反応させた後、 3.2N H 2 SO 4 を50μlずつ添加して反応を止め、プレートリ ダーで吸光度を測定した(450nm)。

 また、上記のELISA実験の方法において、V H -cpBLA-V L に代えて、V H -split・cpBLA-V L (V H -BLAc及びBLAn-V L )又はcpBLAを用いて、同様のELISA実験を行い、 様に吸光度を測定したその結果を図11に示 。図11から分かるように、cpBLAの場合と比較 ると、V H -cpBLA-V L 、V H -split・cpBLA-V L のいずれの場合も、有意なICP-BSA特異的な結 が確認されたが、V H -cpBLA-V L の場合はV H -split・cpBLA-V L の場合と比較しても顕著なICP-BSA特異的結合 が認められた。なお、V H -split・cpBLA-V L においてはV H -BLAcとBLAn-V L の両方にHis tagが存在することを考慮すると V H -split・cpBLA-V L と比較したV H -cpBLA-V L のシグナルの高さは、図11に示されている以 のものがある。また、cpBLAにおいては、ICP( 原)の有無にかかわらず、同程度の低いシグ ナルを示していることから、BLAのコンフォメ ーションが崩れ、非特異に結合している可能 性がある。

[抗体酵素混成タンパク質(V H -cpBLA-V L )の抗原結合による活性変化]
 抗体酵素混成タンパク質(V H -cpBLA-V L )が抗原に結合することによって、実際に酵 活性の変化(上昇)が生じているかどうか確認 するために、発色基質Nitrocefin(Calbiochem社製) は蛍光基質Fluorocillin (Invitrogen社製)、及び、 実施例9で濃縮したV H -cpBLA-V L を用いて以下の実験を行った。

 まず、実施例9で濃縮したV H -cpBLA-V L タンパク質溶液 5μl、10μg/mlのICP又はTCP 5μl 及び、1mM Nitrocefinを含むPBS 90μlを混合し、 室温で18時間暗所に静置した。その後、その 応液について490nmの吸光度を測定すること よって、βラクタマーゼの活性の変化を調べ た。また、ICPやTCPに代えてPBSを用いた場合( 12中の「PBS」の項目)や、V H -cpBLA-V L タンパク質溶液を添加しなかった場合(図12中 の「Nitrocefin」の項目)についても同様に490nm 吸光度を測定した。その結果を図12に示す。 図12から分かるように、ICPを添加したサンプ において、これを加えなかったサンプル(「 TCP」、「PBS」、「Nitrocefin」)と比較して有意 シグナル上昇が観察された。すなわち、ICP 存的なβラクタマーゼ活性の上昇が認めら た。また、TCPを添加したサンプルにおいて 、ICP、TCPのいずれも添加しなかったサンプ (「PBS」)に比較してわずかながら有意な信号 増加が観察された(n=2)。これにより、抗原添 により混成タンパク質の酵素活性が活性化 れたと考えられる。

 次に、発色基質Nitrocefinに代えて蛍光基質Flu orocillinを用いて同様の実験を行なった。具体 的には、実施例9で濃縮したV H -cpBLA-V L タンパク質溶液 5μl、10μg/mlのICP又はTCP 5μl 混合し、4℃にて30分間インキュベーション た後に、10μM Fluorocillinを含むPBS 90μlを添 し、室温で30分間反応を行なった後に、マイ クロプレートリーダーGenios Pro(TECAN社製)を用 いて、485nmで励起し、535nmの蛍光を測定した V H -cpBLA-V L タンパク質溶液を添加しなかった場合の測定 値をバックグラウンドとして引いた値を図13 示す。図13から分かるように、ICPを添加し サンプルにおいて、これを加えなかったサ プル(「TCP」、「PBS」)と比較して有意なシグ ナル上昇が観察された。すなわち、ICP依存的 なβラクタマーゼ活性の上昇が認められた。

[抗ペプチド抗体酵素混成タンパク質を用い ペプチドの検出例]
 本発明の融合タンパク質(抗体酵素混成タン パク質)を用いた抗原検出システムの汎用性 確かめるため、上記のFvとは異なる抗体Fvを する抗体酵素混成タンパク質を用いた検出 を構築し、同様の抗原依存的酵素活性変化 見られるかどうか検証した。すなわち、実 例3で作製したV H -cpBLA-V L /pET26におけるVHおよびVL遺伝子を、抗オステ カルシンC末ペプチド抗体KTM219(Anal. Chem. 79, 6197 (2007))由来のものに置き換えた抗体酵素 成タンパク質を用いて、抗原ペプチドの検 実験を行なった。この実験は具体的には以 のような方法で行なった。

 まずV H -cpBLA-V L /pET26のVL遺伝子の交換、および3‘側に存在す る不要なXhoIサイトの除去のため、KTM219のVL遺 伝子を以下のプライマーを用いて増幅した。 50pmolのMKback2A(配列番号23:GCGCAAGCTCAGTCGACGGAYATTGTG MTSACMCARWCTMCA)(5’末端から12~17番目のヌクレオ ドがSalIサイト)、50pmolのVkNotFor(配列番号24:AT GGTGCTCGACTGCGGCCGCCCGTTTTAT)、10ngのpKST2(KTM219;Anal. C hem. 79, 6197 (2007))、0.2mM(反応溶液の最終濃度 )のdNTPs、10μlの10´Ex-Taq buffer、5unitのEx-Taqを 合して100mlの反応溶液とし、94℃で5分間の後 に、94℃で30秒間、65℃で30秒間、72℃で1分間 らなるサイクルを25サイクル繰り返した後 72℃で10分間反応させて反応液を得た。更に られた反応液をアガロースゲル電気泳動に り精製した。次に同様にして50pmolのNotdXback( 配列番号25:GCAGTCGAGCACCATCACCACCACCAC)、50pmolのpETDr a3For(配列番号26:TGAGTGTTGTTCCAGTTTGG)、10ngのV H -cpBLA-V L /pET26を用いてpET26のNotI-DraIII領域を含む断片 増幅し、得られた反応液を同様に精製した

 精製して得られたこれらのDNA断片、および プライマーとしてMKback2AとpETDra3Forを用いて 実施例1と同様にオーバーラップ・エクステ ンションPCRを行い、得られたPCR産物を精製し た後、該PCR産物を制限酵素SalIおよびDraIIIで 理して精製し、SalI-DraIII断片を得た。このSal I-DraIII断片を、同じくSalIおよびDraIII処理並び に精製を行なったV H -cpBLA-V L /pET26に組み込み、該プラスミドをV H (ICP)-cpBLA-V L (219)/pET26とした。このプラスミドの配列を確 後、同様にしてプライマーM13RV(配列番号27:C AGGAAACAGCTATGAC)およびJH1(配列番号28:ACTGCTCGAGACGGT GACCGTGGTCCC)、およびテンプレートとしてpKST2(KT M219)を用いてKTM219VH遺伝子をPCR増幅し、得ら たPCR産物をNcoI及びXhoIにて制限酵素処理して 精製し、NcoI-XhoI断片を得た。このNcoI-XhoI断片 を、同じくNcoI及びXhoI処理並びに精製を行っ V H (ICP)-cpBLA-V L (219)/pET26に組み込み、該プラスミドをV H -cpBLA-V L /pET26(219)とした。

[不溶性タンパク質の発現と精製、およびリ ォールディング]
 V H -cpBLA-V L /pET26(219)でBL21(DE3, pLysS)株を形質転換し、50μg /mlのカナマイシンと37μg/mlのクロラムフェニ ールを含むLB寒天培地プレートにて30℃で一 晩培養し、抗体酵素混成タンパク質発現株(V H -cpBLA-V L /pET26(219)/BL21株)を作製した。コロニーを竹串 つつき、50μg/mlのカナマイシンと37μg/mlのク ロラムフェニコールを含むLB液体培地(LBCK培 )4mlに植菌し、37℃で一晩培養した。この前 養液250μlをLBCK培地250mlに植菌して37℃で培養 し、OD 600 が0.6に達した時点で終濃度1mMのIPTGを添加し 37℃で更に一晩培養した。その後、培養液を 4℃条件下6000gで10分間遠心して回収し、25mlの TALON Bufferに懸濁、氷上での超音波処理によ 菌体を破砕し、2.5μlのBenzonase(Novagen社製)お び終濃度1mMのMgCl 2 を加え氷上30分反応させてDNAを分解した後、6 000g10分間遠心して上清をとり除いた。その後 残ったペレットに25mlの1%TritonX-100、1mM EDTAを えボルテックスし、6000g10分遠心する操作を 3回繰り返して不溶性画分を洗浄した。

 洗浄した沈殿(不溶性画分)を10ml 6M塩酸グ アニジン(GdnHCl)を含むTALON Bufferにて懸濁した 。この懸濁液に200μlのTALON金属アフィニティ カラム(メルク社製)を加え、説明書に従っ 変性条件でのバッチ/重力方式カラム精製法 よりタンパク質を精製した。タンパク質の 出にはElution Buffer(200mM イミダゾール、50mM リン酸、300mM NaCl、5.4M GdnHCl,pH7.0)を用いた

 溶出液中のタンパク質量をUVで定量し、溶 液のうち150μl(約320μgのタンパク質を含む)を 分取し、終濃度10mMの2メルカプトエタノール 同1mM EDTAを加え、30℃で30分間おいたのち、 Slide-A-Lyzer透析カセット(MW 10kcutoff, Pierce 社 )に移した。透析は、J. Immunol. Methods 219, 1 19 (1998)記載の透析外液(後述の透析外液1~5)な らびに方法に従って、500mLの透析外液に対し 4℃で24時間ずつ計5回行い、最後に、4℃、15 krpmにて10min遠心して最終的に約1.7mlの可溶化 ンプルを得た。この可溶化サンプルには、3 .7μMの抗体酵素混成タンパク質(V H -cpBLA-V L (219))が含まれていた。
透析外液1:50mM TrisHCl,3M GdnHCl,200mM NaCl,1mM EDTA ,pH8.0;
透析外液2:50mM TrisHCl,2M GdnHCl,200mM NaCl,1mM EDTA ,pH8.0;
透析外液3:50mM TrisHCl,1M GdnHCl,200mM NaCl,1mM EDTA ,180μM GSSG,400mM L-アルギニン,pH8.0;
透析外液4:50mM TrisHCl,0.5M GdnHCl,200mM NaCl,1mM ED TA,pH8.0;
透析外液5:50mM TrisHCl,200mM NaCl,1mM EDTA,pH8.0;

 [抗体酵素混成タンパク質の活性測定]
 上記により調製した抗体酵素混成タンパク (V H -cpBLA-V L (219))を用い、Fluorocillinを用いて活性測定を行 った。50μlのPBS中に終濃度0-2000ng/mlの抗原ペ チドBGP-C7、および終濃度300nMの抗体酵素混成 タンパク質を混合し、黒色マイクロプレート ウェルに分注した。これに50μL PBS中の2μM Fl uorocillinを加えて28℃で60分反応させ、反応液 蛍光強度(485nmの励起光照射による535nmの蛍 強度)を測定した。なおこの際、抗体酵素混 タンパク質を加えない対照実験を行い、こ らのウェルの蛍光強度をバックグラウンド して減算した。この結果、図14に示すよう BGP-C7濃度依存的に有意な蛍光強度の増加が られた。なお、本実験の測定は3連で行なっ 。図14中の黒丸は測定値の平均値を表し、 ラーバーは1SDを示す。

 また、抗原としてBGP-C7以外のもの(BGP-C8,BG P-C10,ICP,TCP各終濃度1μg/ml)を用いて、同様の実 験を行った。その結果を図15に示す。図15の 果から分かるように、KTM219を用いたオープ サンドイッチELISAで検出が可能なBGP-C8、BGP-C1 0(Anal. Chem. 79, 6197 (2007))では信号強度が増 したのに対し、特異的に認識されないICP、TC PではPBSと同じ信号強度しか得られなかった なお、本実験の測定も3連で行なった。図15 のグラフの値は測定値の平均値を表し、エ ーバーは1SDを示す。

 以上の実験結果より、本発明の融合タン ク質(抗体酵素混成タンパク質)を用いた抗 検出システムの汎用性と、目的抗原に対す 特異性が示された。

 本発明によれば、検出対象である抗原が 分子抗原であっても、より簡便、効率的、 定性良くかつ高感度で検出することができ 。また、本発明の抗原の検出方法は、通常 ELISA法とは異なり、結合しなかった標識2次 体(非競合法)や標識抗原(競合法)などを洗浄 する操作を要することなく測定し得る測定法 (ホモジニアス法)であり、測定装置の自動化 容易で(操作が簡便で熟練を要さずに)迅速 測定が可能という点で、通常のELISA法に比べ て非常に大きなメリットがある。そのため、 本発明は、臨床診断、食品検査、環境分析等 における免疫測定系にきわめて有用に用いる ことができる。